説明

外装板

【課題】 高い漏水防止性能と、耐強風性能を実現し得る外装板の提供。
【解決手段】 帯状に成形された板状材料を全長に亘って等断面形状となる様に折り曲げ成形した外装板において、左方の端部に略平坦な鍔部1を段下がりに備え、右方の端部に鍔部1が収まる下はぜ部2を備え、中間部に略コの字状のリブ部3を備えてなり、鍔部1は、鍔1aの右端に上から左方へ反り返った鉤壁1bを備え、下はぜ部2は、鍔1aが定着する底壁2aとその左側及び右側の壁を有する略凹状に構成され、左側の壁として、鍔部1を引き入れる上下引込壁2b,2c、上引込壁2bの左端から立ち上がる係止壁2d、及び係止壁2dの上端から左下方へ傾斜し下引込壁2cの左端に連続する誘導壁2eを備え、右側の壁として、底壁2aの右端から立ち上がった起立壁2fを備えていることを特徴とする外装板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装板に用いられる角波の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外装板に用いられる角波は、定寸幅の外装板を一部重ね合わせつつ貼り合せるものである。
この様な外装板の主な問題点は、躯体に対する外装板の固定方法、並びに連結部の強度、及び連結部におけるはぜの重なり部分や、ビス孔(釘孔を含む。以下、ビス孔と記す。)からの風雨の侵入である。
例えば、下記特許文献1に開示された外装板は、ビスを上はぜ部で覆うことにより漏水がなくなり防水性の向上を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−10187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、より強い風雨にも耐えて、はぜの重なり部分やビス孔からの漏水を防止し、しかも、強風による外装板の浮きを回避し得る構造とはいえない。
【0005】
本発明は、簡単な構造を以って、より高い漏水防止性能と、耐強風性能を実現し得る外装板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明による外装板は、帯状に成形された板状材料を全長に亘って等断面形状となる様に折り曲げ成形した外装板であって、左方の端部に略平坦な鍔部を段下がりに備え、右方の端部に鍔部が収まる下はぜ部を備え、中間部に略コの字状のリブ部を備えてなり、鍔部は、鍔の右端に上から左方へ反り返った鉤壁を備え、下はぜ部は、鍔が定着する底壁とその左側及び右側の壁を有する略凹状に構成され、左側の壁として、鍔部を引き入れる上下引込壁、上引込壁の左端から立ち上がる係止壁、及び係止壁の上端から左下方へ傾斜し下引込壁の左端に連続する誘導壁を備え、右側の壁として、底壁の右端から垂直に、又は左上に立ち上がった起立壁を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記係止壁は、上引込壁の左端から右上に立ち上がる形態としても良い。
尚、上記構造の左右は、外装板の上下を入れ替えることによって反転する相対的な位置関係を示したものである。
【発明の効果】
【0008】
左方の端部に略平坦な鍔部を段下がりに備え、右方の端部に鍔部が収まる下はぜ部を備える構成により、躯体の壁面に下はぜ部をビス止めした後に、当該下はぜ部に鍔部を収めることで、ビス及びビス孔を隠し、ビス孔からの漏水を防止することができる。
【0009】
また、下はぜ部に、底壁の右端から垂直に、又は左上に立ち上がった起立壁を備えることによって、はぜの重なり部分から進入した雨水が躯体の壁面に流れることを防止できる。
【0010】
鍔部に、鍔の右端に上から左方へ反り返った鉤壁を備え、下はぜ部に、鍔部を引き入れる上下引込壁、上引込壁の左端から立ち上がる係止壁、及び係止壁の上端から左下方へ傾斜し下引込壁の左端に連続する誘導壁を備える構造を採ることによって、躯体の壁面に葺かれた外装板が強風で躯体の壁面から浮き上がり引き離されそうになった際、鍔部の鉤壁が誘導壁に沿って係止壁に導かれ、鉤壁と係止壁とが相互に掛かり合って、下はぜ部から鍔部が離脱すること、即ち、外装板が躯体から剥がれることを防止できる。前記係止壁を、上引込壁の左端から右上に立ち上がる形態とすれば、鉤壁と係止壁との係かり合いの安定度が高まることとなる。
【0011】
以上の如く、上記外装板によれば、より強い風雨にも耐えて、はぜの重なり部分やビス孔からの漏水を防止し、強風による外装板の浮きを回避し得る外装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1(A)(B)(C)(D)】本発明による外装板の一例を示す全体断面図、及び要部拡大断面図である。
【図2(A)(B)(C)(D)】本発明による外装板の一例を示す全体断面図、及び要部拡大断面図である。
【図3(A)(B)(C)】本発明による外装板の連結構造の一例を示す要部断面図である。
【図4(A)(B)(C)】本発明による外装板の連結構造の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による外装板の実施の形態を図面に基づき説明する。
図に示す外装板は、長方形状に裁断された板状材料を全長に亘って等断面形状となる様に折り曲げ成形したものである。
【0014】
この外装板は、中間部に略コの字状のリブ部3を備え、左方の端部に略平坦な鍔部1を備え、右方の端部に鍔部1が収まる下はぜ部2を備えている(図1(A)又は図2(A)参照。)。尚、場合によっては、中間部に浅いリブ8を適宜設けることもできる。
【0015】
鍔部1は、中間部からリブ部3の深さと同程度段下がりとなる様に延出し、鍔1aの右端に上から左方へ反り返った鉤壁1bを備えている(図1(B)又は図2(B)参照。)。
【0016】
一方、下はぜ部2は、鍔1aが定着する底壁2aとその左側及び右側の壁を有する略凹状に構成されている。
底壁2aは、中間部からリブ部3の深さと同程度段下がりとなる位置に存在し、中間部と底壁2aを結ぶ左側の壁は、鍔部1を引き入れる上引込壁2b及び下引込壁2c、上引込壁2bの左端から真上又は右上に立ち上がる係止壁2d、及び係止壁2dの上端から左下方へ傾斜し下引込壁2cの左端に連続する誘導壁2eを備え(図1(C)又は図2(C)参照。)、右側の壁は、底壁2aの右端から真上又は左上に立ち上がった起立壁2fである(図1(D)又は図2(D)参照。)。
【0017】
以上の如く構成された外装板は、躯体の側壁面にその壁面分の枚数を、鍔部1と下はぜ部2とを重合させつつ連続して張り付ける作業を行うこととなる(図3及び図4参照。)。
【0018】
鍔部1を左に置き、下はぜ部2を右において貼付作業を行う場合においては、先ず、最も左側に位置する外装板(以下、最初の外装板と記す。)の鍔部1をビス止めするか、若しくは最初の外装板の鍔部1を収容する為の下はぜ部2を備えた終端材で保持する。
【0019】
この様に最初の外装板の鍔部1を固定した状態で、同外装板の下はぜ部2を躯体の側壁面にビス止めする(図3(A)又は図4(A)参照。)。この際、用いるビスは、頭部が下はぜ部2の底壁2aから出来るだけ突出しないものとする。以上の工程により、最初の外装板の左右両側の縁部が躯体の壁面に固定される。
【0020】
続いて、次の外装板の鍔部1を最初の外装板の下はぜ部2の左側の壁に差し込み(図3(B)又は図4(B)参照。)、当該外装板の下はぜ部2を躯体の側壁面にビス止めする。この作業によれば、躯体の側壁面に下はぜ部2が定着し、ビス止めされない鍔部1は、最初の外装板の下はぜ部2の左側の壁に保持されている条件の下でフリーとなる(図3(C)又は図4(C)参照。)。
【0021】
この工程を、目的とする躯体の側壁面の前面を張り終えるまで繰り返すと、上下引込壁2b,2cの存在で、下はぜ部2と鍔部1の重合部4への風雨の直接的な侵入が防止でき、鍔部1の鉤壁1b、及び下はぜ部2の起立壁2fが水返しとなり、躯体の側壁面への水の侵入を防止しつつ、鍔部1における鉤壁1b−鍔1a−立ち上がり壁5によって形成される溝6と、下はぜ部2における誘導壁2e−下引込壁2c−底壁2a−起立壁2fによって形成される溝7を通じて排水することができる外装構造が、目的とする躯体の側壁面に形成される。
【0022】
また、強風により外装板に浮きが生じた場合であっても、鉤壁1bを係止壁2dで保持することによって、躯体の側壁面に、外装板が強固に止められることとなる(図3(C)又は図4(C)参照)。
【符号の説明】
【0023】
1 鍔部,1a 鍔,1b 鉤壁,
2 下はぜ部,2a 底壁,2b 上引込壁,2c 下引込壁,2d 係止壁,
2e 誘導壁,2f 起立壁,
3 リブ部,4 重合部,5 立ち上がり壁,
6 溝(鍔部),7 溝(下はぜ部),
8 リブ,


【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に成形された板状材料を全長に亘って等断面形状となる様に折り曲げ成形した外装板において、
左方の端部に略平坦な鍔部(1)を段下がりに備え、右方の端部に鍔部(1)が収まる下はぜ部(2)を備え、中間部に略コの字状のリブ部(3)を備えてなり、
鍔部(1)は、鍔(1a)の右端に上から左方へ反り返った鉤壁(1b)を備え、
下はぜ部(2)は、鍔(1a)が定着する底壁(2a)とその左側及び右側の壁を有する略凹状に構成され、
左側の壁として、鍔部(1)を引き入れる上下引込壁(2b,2c)、上引込壁(2b)の左端から立ち上がる係止壁(2d)、及び係止壁(2d)の上端から左下方へ傾斜し下引込壁(2c)の左端に連続する誘導壁(2e)を備え、
右側の壁として、底壁(2a)の右端から垂直に、又は左上に立ち上がった起立壁(2f)を備えていることを特徴とする外装板。
【請求項2】
前記係止壁(2d)は、上引込壁(2b)の左端から右上に立ち上がることを特徴とする請求項1に記載の外装板。

【図1(A)(B)(C)(D)】
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【図2(A)(B)(C)(D)】
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【図3(A)(B)(C)】
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【図4(A)(B)(C)】
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【公開番号】特開2010−255287(P2010−255287A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106406(P2009−106406)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(390033710)株式会社かな和工業 (12)
【Fターム(参考)】