説明

外部端子接合部の突起形状

【課題】封口板のリベットに外部端子を抵抗溶接するに際して、車載用として耐えるに十分な強度を備えた外部端子接合部の突起形状を提供する。
【解決手段】小孔10aの周りに複数のスリット10bを放射状に設けた形状の貫通部10を外部端子またはその素材に形成し、貫通部10に小孔10aの周縁部を折り曲げることにより溶接用の突起を形成した外部端子接合部の突起形状であって、外部端子またはその素材の厚さをt、突起の厚さをt’、小孔10aの内径寸法をφA、貫通部10の内径寸法をφB、スリット10bの幅をdとして、
(イ) t’/t=0.5〜0.7
(ロ) φB/φA<2.5
(ハ) d<0.7φA
の関係を充足させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池またはコンデンサ、キャパシタ等の圧力容器に用いられる封口板において、特に過酷な条件(例えば車載用)に耐える特性すなわち、耐振性を向上させるために案出した外部端子接合部の突起形状に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、従来から、硬質の封口板51に設けた貫通孔52にリベット53を挿入し、外部端子54を上から重ねて、位置ずれや電気的特性を低下させることなく、外部端子54をリベット53に溶接接合して固定する方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、この接合方法によると、外部端子54接合部の形状は、その表面にバリ状の凸部55を設けただけであって、この凸部55が極めて小さいことから、車載用として耐えるに十分な強度を得られず、よって信頼性に乏しい溶接状態となる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−164259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、封口板のリベットに外部端子を抵抗溶接するに際して、車載用として耐えるに十分な強度を備えた外部端子接合部の突起形状を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の突起形状は、小孔の周りに複数のスリットを放射状に設けた形状の貫通部を外部端子またはその素材に形成し、前記貫通部にバーリング加工を施して前記小孔の周縁部を折り曲げることにより溶接用の突起を形成した外部端子接合部の突起形状であって、前記外部端子またはその素材の厚さ寸法をt、突起の厚さ寸法をt’、小孔の内径寸法をφA、バーリング加工後におけ貫通部の内径寸法をφB、スリットの幅寸法をdとして、
(イ) t’/t=0.5〜0.7
(ロ) φB/φA<2.5
(ハ) d<0.7φA
の関係を充足することを特徴とするものである。
【0007】
上記構成における(イ)(ロ)および(ハ)の各条件は、本願発明者らの鋭意研究の結果としてこれらを特定したものであって、(イ)について、
t’/t<0.5
であると、突起自体の強度が不足し、
t’/t>0.7
であると、突起の高さ寸法を大きく採ることができない。
また、(ロ)について、
φB/φA≧2.5
であると、亀裂が入り易い。
また、(ハ)について、
d<0.7φA
としたのは、
d≧0.7φA
とすると、突起の高さ寸法(H)が小さくなってしまうことを理由とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0009】
すなわち、上記構成を備えた本発明の突起形状においては、以上の理由により接合強度を最大限に発現させ、かつ接合により発生する端子間抵抗値(電気的特性)を最小にすることができる。したがって所期の目的どおり、過酷な条件である車載用として耐えるに十分な強度を備えた外部端子接合部の突起形状を提供することができる。
【実施例】
【0010】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る突起形状を備えた封口板1の要部断面を示しており、この封口板1は以下のように構成されている。
【0012】
(1)リベット部
すなわち先ず、当該封口板1は、電極として機能するリベット(電極端子とも称する)2を有しており、このリベット2は一般に円柱または円筒状に形成されている。また、封口板本体3との密着性を高めるため、リベット2の外周面2aには環状の鍔部4が一体成形されており、更にこの鍔部4の軸方向端面4aであって図上上面および下面の何れか一方または双方(図では双方)に環状の係合溝5が形成されている。
【0013】
また、リベット2の外側端面(図上上面)2bの中心位置には、外部端子6を差し込むための円柱状を呈する差込み用突起(軸部またはカシメ部とも称する)7が外方(図上上方)へ向けて一体成形されている。
【0014】
また、このリベット2は、封口板本体3に対してインサート成形により一体化されている。また、このリベット2は図示はしないが、一般に二本が一組として封口板本体3に一体化されているが、その設置本数は特に限定されるものではない。
【0015】
リベット2の材質は、アルミニウム電解コンデンサでは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金等の成形材料であるが、電池では、亜鉛、鉄またはニッケル等の金属の成形材料によって成形されている。
【0016】
(2)封口板本体
また、当該封口板1は、高分子材料からなる封口板本体3を有している。この封口板本体3は、一般にプレート状であって平面円形、楕円形または略方形等に形成されており、この封口板本体3に上記リベット2が厚さ方向に貫通するように埋設されている。また、この封口板本体3は、図示しない圧力容器の開口部等に封着されるものである。
【0017】
高分子材料からなる封口板本体3の成形材料としては、樹脂材料、エラストマー(ゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂材料とゴムの混合物またはブロック共重合体またはグラフト共重合体等の弾性体)、樹脂材料とエラストマーの積層板材料等が用いられる。
【0018】
樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂、メタロセン触媒にて重合したポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶性樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、ガラス繊維、炭素繊維またはウィスカー等の繊維状充填剤、炭素粒子、マイカ、ガラスビーズ等の粒子状充填剤等の充填剤・補強材、金属酸化物または加工助剤等が適宜配合される。
【0019】
エラストマーとしては、ゴム材料では、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ビニル変性ブチルゴム、エチレンプロピレン系ゴム、フッ素系ゴム、アクリル系ゴム、水素添加ニトリルゴム等の飽和系ゴムが挙げられ、架橋剤、充填剤、可塑剤または老化防止剤等を適宜配合する。また熱可塑性エラストマーでは、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン・イソプレンブロック共重合体等が挙げられ、ブロック共重合方法、グラフト共重合方法、動的架橋方法等で製造され、架橋剤、可塑剤、老化防止剤または充填剤を適宜配合する。樹脂材料とゴムの混合物またはブロック共重合体またはグラフト共重合体等のエラストマーでは、フェノール系樹脂と水素化ニトリルゴム、フェノール系樹脂とアクリルゴム、ブチルゴムまたはフッ素ゴム等との混合物等が挙げられる。
【0020】
上記高分子材料は、要求される耐熱性に応じて適宜選択される。当該実施例では、耐熱性およびコストの面で熱硬化性樹脂の一つであるフェノール樹脂を用いた。
【0021】
上記(1)で製作したリベット2を、封口板本体3を成形する成形型(図示せず)内に必要数インサートし、射出成形等により一体成形する。また、封口板本体3の外周部には必要に応じて、Oリング等の弾性体(図示せず)を装着するための段差状または溝状の装着部(図示せず)を設けるが、弾性体は、封口板本体3を成形するときに同時成形することにしても良い。尚、当該実施例では、封口板本体3とリベット2との密着性を確保する観点から両者を一体成形しているが、これに限られるものではなく、別体タイプであっても良い。
【0022】
(3)外部端子
また、当該封口板1は、リベット2の外側端面2bに接合される外部端子6を有している。この外部端子6は、その形状として平面状の取付部8と、例えば傾斜面状を呈する端子部9とを一体に有しており、前者の平面状取付部8には、これをリベット2の差込み用突起7に差し込むための孔状の貫通部(リベット穴とも称する)10が設けられている。さらに、この貫通部10の周縁部または周縁部近傍には、所定の大きさよりなる溶接用突起(突起部とも称する)11がリベット2側(図上下方)へ向けて設けられており、この突起11の形状を最適に特定するのが本発明の最大の目的である。
【0023】
外部端子6の材質は、銅または銅系の合金、例えばC1020等であり、表面処理として錫メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、亜鉛メッキ、金メッキ等を施したものである。または、鉄または鉄系の合金、例えばSPCC、SECC、SGC、SPHC等であり、表面処理として錫メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、亜鉛メッキ等を施したものであっても良い。
【0024】
突起11は、これを以下のようにして形成する。
【0025】
すなわち先ず、図2(A)に示すように、外部端子6の平面状取付部8を構成する厚さt:0.8mmの薄板に、小孔10aの周りに4本のスリット10bを放射状に設けた平面十字形状の貫通部10を形成する。小孔10aは薄板を厚さ方向に貫通しており、スリット10bもそれぞれ薄板を厚さ方向に貫通している。小孔10aの平面形状は円形であって、その内径寸法φAは1.5mmとする。スリット10bの幅dは0.6mmとする。180度対称位置における一対のスリット10bの端から端までの長さCは3.3mmとする。この長さCは、突起11形成後、4本の突起11よりなる円筒(但し、突起11毎に周方向に分断されている)の外径寸法φC(図3参照)に相当することになる。
【0026】
次いで、図2(B)に示すように、この貫通部10に、外径寸法φE:2.3mmのパンチ21を押し込んでバーリング加工を施し、小孔10aの周縁部であってスリット10b間の部位を折り曲げて、図3に示すように、4本の突起11を形成する。4本の突起11よりなる円筒の内径寸法すなわちバーリング加工後における貫通部10の内径寸法φBは、パンチ21の外径寸法φEに合わせて2.3mmとなり、円筒の外径寸法φCは上記したとおり、一対のスリット10bの端から端までの長さCに合わせて3.3mmとなる。また、突起11の高さHは1mmとなる。
【0027】
以下、突起11の高さHを1mmとする必要性を述べる。
【0028】
すなわち、突起11は、リベット2に対して抵抗溶接されるものであって、突起高さHと接合後の端子間抵抗値およびねじり強度の関係を図4に示す。突起11の高さHが大きくなると、端子間抵抗値は小さくなり、ねじり強度は大きくなる。すなわち、端子間抵抗値およびねじり強度ともに突起11の高さHが1mmの場合が一番望ましい結果となる。一方、この外部端子6が接合するリベット2の外径寸法は2.2mmを想定しているため、端子6の穴径(バーリング加工後における貫通部10の内径寸法φB)を2.3mmよりも大きくすることは望ましくなく、結果として、突起高さH:1mmは、製造することができる最大の高さである。以上の結果から、突起高さは1mmの場合が一番望ましいことがわかる。
【0029】
また、突起11の数は、ねじり強度との関係から、図5に示すように、2個以上で4個が最も望ましいが、端子6の厚さtと端子6自体の大きさによって、適切な数が決まるので、状況に応じて適宜選択する。
【0030】
また、図2および図3に示したように、平面状取付部8の厚さをt、突起11の厚さをt’、小孔10aの内径寸法をφA、バーリング加工後における貫通部10の内径寸法をφB、突起11の高さをH、スリット10bの幅寸法をdとして、
(イ) t’/t=0.5〜0.7
(ロ) φB/φA<2.5
(ハ) d<0.7φA
の関係を充足させるのが肝要であることは、上記したとおりである。
【0031】
突起高さHについては、
t’/t=0.5〜0.7
の範囲、好ましくは
t’/t=0.6
において、Hが最大になるHとBとの組み合わせ、図6からして、
t’/t=0.6
の場合には、
H/φB=0.4
の関係を満たせば良い。
【0032】
尚、突起11は、外部端子6をリベット2に押し付けながらの抵抗溶接がなされることにより、図1に示したようにリベット2に埋め込まれ、強固な接合状態が実現されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係る突起形状を有する封口板の要部断面図
【図2】突起の製造工程を示す図であって、(A)は貫通部の平面図、(B)は図2(A)におけるA−A線断面図
【図3】バーリング加工後の断面図
【図4】接合後の突起高さ(プロジェクション高さ)と端子間抵抗値およびねじり強度の関係を示すグラフ図
【図5】突起の数とねじり強度の関係を示すグラフ図
【図6】t’/tとH/φBの関係を示すグラフ図
【図7】従来例に係る図であって、(A)は封口板の分解斜視図、(B)は封口板の要部断面図、(C)は封口板の他の例を示す要部断面図
【符号の説明】
【0034】
1 封口板
2 リベット
3 封口板本体
4 鍔部
5 係合溝
6 外部端子
7 差込み用突起
8 取付部
9 端子部
10 貫通部
10a 小孔
10b スリット
11 溶接用突起(突起)
21 パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小孔(10a)の周りに複数のスリット(10b)を放射状に設けた形状の貫通部(10)を外部端子(6)またはその素材に形成し、前記貫通部(10)にバーリング加工を施して前記小孔(10a)の周縁部を折り曲げることにより溶接用の突起(11)を形成した外部端子接合部の突起形状であって、
前記外部端子(6)またはその素材の厚さ寸法をt、突起(11)の厚さ寸法をt’、小孔(10a)の内径寸法をφA、バーリング加工後におけ貫通部(10)の内径寸法をφB、スリット(10b)の幅寸法をdとして、
(イ) t’/t=0.5〜0.7
(ロ) φB/φA<2.5
(ハ) d<0.7φA
の関係を充足することを特徴とする外部端子接合部の突起形状。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−93380(P2006−93380A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276460(P2004−276460)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】