説明

多価不飽和脂肪酸エマルションを含む安定な飲料製品

少なくとも1種の飲料ベースおよび少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸エマルションを含む飲料製品であって、該エマルションは連続液相、乳化剤、および多価不飽和脂肪酸源ならびに分散剤を含む混合物を含む不連続液相を含み、前記多価不飽和脂肪酸源は少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含むが、前記混合物中の前記脂肪酸源の前記分散剤に対する重量比は約9:1から約1:10の範囲である、飲料製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国特許法第119号第(e)項により、2006年9月6日出願の米国仮特許出願第60/824,709号、2007年2月5日出願の米国仮特許出願第60/888,256号、および2007年7月6日出願の米国仮特許出願第60/948,338号に対する優先権を主張する、2007年9月5日出願の米国特許出願第11/850,158号の部分継続出願であり、それらの開示を参照により明示的に本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は少なくとも1種の飲料ベースおよび少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸エマルションを含む飲料製品に関する。
【背景技術】
【0003】
多価不飽和脂肪酸(長鎖多価不飽和脂肪酸(LC‐PUFA)を含む)、とくに長鎖オメガ3脂肪酸(例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびエイコサペンタエン酸(EPA))は、健康効果の中でもとりわけ、認知機能を向上させ、心臓血管の健康を維持することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。最近の認定された研究は、オメガ3脂肪酸は冠状動脈性心疾患のリスクを低減するのに効果的であることも示した(非特許文献2参照)。また、消費者の動向は、多価不飽和脂肪酸を含む製品への需要が増加していることを示す。
【0004】
オメガ3脂肪酸のような必須脂肪酸は、人間の食生活に必要な栄養素である。しかしながら、オメガ3脂肪酸は人間の体内では合成されず、魚、クルミ、コケモモ、麻、亜麻、チーア、シソ、スベリヒユ、および藻類を含む特定の植物および動物の油のような天然の供給源に含まれる。オメガ3脂肪酸は体内で合成されないので、食物または栄養補助食品を通じてしか、オメガ3脂肪酸およびその健康効果を得ることはできない。往々にして、食生活をオメガ3脂肪酸で補うことは、魚臭および/または魚味を有する栄養補助食品の摂取を伴う。
【0005】
オメガ3脂肪酸は体内で変性し、炎症および他の細胞機能に作用するエイコサイド、心的状態、行動および炎症に作用する内在性カンナビノイド、レゾルビン、イソフラン、イソプロスタン、エポキシエイコサトリエン酸(EET)、およびニューロプロテクチンDを生成する。また、オメガ3脂肪酸は細胞内シグナル伝達に作用する脂質ラフトを形成し、DNAに作用して転写因子NFκB、すなわち炎症性サイトカインを活性化または阻害する。
【0006】
特定の条件下で保存している間に、多価不飽和脂肪酸は不安定になり、分解するおそれがある。よって、消費者に提供するため、多価不飽和脂肪酸を機能性食品および飲料製品に導入する様々な手段を用い、多価不飽和脂肪酸の分解を低減または解消しようと試みてきた。例えば、製品は(スプレッドおよびソフトカプセル用の)バルク油、(シリアルバー用の)粉末状オメガ3、(シリアルバー、ヨーグルトおよび飲料用の)マイクロカプセル化したオメガ3油、および(飲料用の)リポソーム/エマルション濃縮物として生産されている。乳化剤としてホエータンパク質を用いる食品にオメガ3脂肪酸を分散させる技術、および油を多く装填できるリポソームを用いて多価不飽和脂肪酸を送達する技術も開発されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】von Schacky,C.,“Omega‐3 Fatty Acids and Cardiovascular Disease,” Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care 7,no.2(2004年3月):131〜6およびSimopoulos,A.P.,“Essential Fatty Acids in Health and Chronic Disease,” American Journal of Clinical Nutrition 79,no.3(2004年3月):523〜4
【非特許文献2】“FDA Announces Qualified Health Claims for Omega‐3 Fatty Acids”FDA News,2004年9月8日、www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01115.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のエマルション技術、すなわち食品等級の乳化剤(例えば、アラビアゴムまたはレシチン)を用いてオメガ3脂肪油を均質化する技術では、油粒子サイズが大きい不安定なエマルションになる。多価不飽和脂肪酸は酸化しやすく、それは飲料のような組成物の官能特性に悪影響を及ぼし得るため、これらの組成物中で多価不飽和脂肪酸の物理的安定性および化学的安定性の両方を維持することはとくに困難である。また、最近の研究によると、高度に酸化した脂質を含む食品の摂取は健康に悪影響を及ぼし得るので、こうした酸化は望ましくない。
【0009】
さらに、これらの脂肪酸エマルションの消費者への提供を促進するには、多価不飽和脂肪酸を含む組成物の均質化による典型的なエマルションの処理は大型の混合機、保存庫、および輸送要件を要する。従って、オメガ3脂肪酸を、不安定になったり分解したりすることなく消費者に提供することが望ましい。
【0010】
とくに、オメガ3脂肪酸を手軽な飲料製品として消費者に提供することが望ましい。オメガ3脂肪酸を飲料製品に含有させめるための、少なくともいくつかの従来の試みでは、栄養素の大部分が沈殿物として存在し、よってすべての栄養素をを連続的且つ完全に摂取することができなかった。例えば、乳タンパク質ベースのオメガ3粉末は酸度の高いジュース中にてすぐに沈殿してしまう。ペクチンまたは他の親水コロイドを加え、粉末を懸濁および保護したままにすることができる。しかしながら、親水コロイドを使用すると、飲料の粘度が上昇する。親水コロイドを加えることなく、非乳タンパク質ベースのオメガ3粉末をジュースに添加することができるが、とくに、透明なジュースおよびジュース飲料中に、重い沈殿物が観察された。他の研究成果をジュースに適用したが、加工および/または保存中に強い魚感および魚味が発生するという結果に終わった。よって、オメガ3脂肪酸が低温殺菌後も分散し、見た目が良く、安定なままであり、および/または高い生物学的利用能を示す、栄養価の高い飲料製品を消費者に提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも1種の飲料ベースおよび少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸エマルションを含む飲料製品組成物に関するものであり、エマルションは連続液相、乳化剤、および、少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含む多価不飽和脂肪酸源ならびに分散剤を含む混合物を含む不連続液相を含み、混合物中の多価不飽和脂肪酸源の分散剤に対する重量比は約9:1から約1:10の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】50mg(低用量)または100mg(高用量)のDHAを含む約180mLの本発明の飲料製品を毎日約6週間摂取した後の健康な4〜6才および7〜12才の子供の血漿リン脂質(PL)DHA含量への影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以上で要約したように、この開示は、飲料製品組成物、とくに本明細書に記載する少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸エマルションを含むジュース飲料および多価不飽和脂肪酸の生物学的利用能を向上させた安定な飲料製品の生産方法を含む。本発明の実施形態による安定なエマルションの形成は、LC‐PUFAの酸化、および関連する魚臭を抑制または低減する。また、安定なエマルションの形成は、見た目が良く、より完全な健康飲料を提供するため、それを本発明の特定の実施形態の飲料製品に含有させることを可能にする。特定の実施形態では、エマルションはエマルション濃縮物を含む。本発明の実施形態を飲料エマルション濃縮物、飲料等として生成することにより、多価不飽和脂肪酸、とくにLC‐PUFA、およびその健康効果を、安定な、良好に分散した形態で消費者に提供することができる。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、生物学的利用能の高いPUFAを非沈殿形態で有する飲料製品を提供し、消費者が飲料中のPUFAをより完全に摂取できるようにする。本発明者らは、PUFA、とくにLC‐PUFA、およびとくにDHAのようなオメガ3脂肪酸を含む、本明細書に記載のエマルションを加えた飲料ベースを含むような製品を摂取することで、血漿リン脂質(PL)DHA含量が増加し得ることを見出した。こうした研究結果は少なくとも約180mLを摂取した健康な4〜6才および7〜12才の子供において示された。少なくともいくつかの本発明の実施形態は、従って、その製品の毎日摂取すると6週間後に血漿PL DHA含量を少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約32%、少なくとも約40%、または少なくとも約47%(総脂肪酸のモル%)増加させることができる製品を提供することができる。図1に示すように、50g(低用量)または100g(高用量)のDHAを含む、本明細書に記載のエマルションを含む本発明の少なくともいくつかの実施形態の飲料製品約180mlを毎日摂取すると、6週間後に血漿PL DHA含量が大きく増加した(総脂肪酸のモル%で示す)。飲料ベースに組み込まれているエマルション中にPUFAを導入することにより、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、血漿PL DHA含量の効果的に増加させるため、飲料中のPUFAをより完全に摂取するための新規方法を提供することができる。
【0015】
(飲料ベース)
本明細書で用いる「飲料ベース」の語は、本発明の飲料に含まれる液体の種類を指す。本発明の実施形態によれば、飲料ベースとしては、果肉入りおよび果肉なし柑橘および非柑橘系フルーツジュース、フルーツ飲料、野菜ジュース、野菜飲料、牛乳、豆乳、茶、水、スポーツ飲料、フレーバー水、エネルギー飲料、コーヒー、スムージー、ヨーグルト飲料、ココアならびにこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。飲料ベースは炭酸または非炭酸とすることもできる。
【0016】
本発明の特定の実施形態によれば、飲料ベースは1つ以上のフルーツジュースまたはフルーツ飲料を含むことができる。フルーツジュースとしては、オレンジジュース、グレープフルーツジュース、リンゴジュース、赤ブドウジュース、白ブドウジュース、ナシジュース、コンコードブドウジュース、パイナップルジュース、ザクロジュース、クランベリージュース、パッションフルーツジュース、ライムジュース、レモンジュース、マンゴージュース、グアバジュース、バナナジュース、レッドカラントジュース、ブラックカラントジュース、カシューアップルジュース、カンタロープメロンジュース、アプリコットジュース、ブラックベリージュース、コケモモジュース、デューベリージュース、グーズベリージュース、クラブアップルジュース、プルーンジュース、プラムジュース、キウイジュース、イチゴジュース、ブルーベリージュース、レッドラズベリージュース、ブラックラズベリージュース、チェリージュース、スイカジュース、モモジュース、ネクタリンジュース、ローガンベリージュース、ハネデューメロンジュース、パパイヤジュース、ボイゼンベリージュース、ヤングベリージュース、ルバーブジュース、グアナバナジュース、アサイージュース、ゴジジュース、イチジクジュース、エルダーベリージュース、ナツメヤシジュース、カランボラジュース、アセロラジュース、マルメロジュース、ビルベリージュース、タンジェリンジュース、またはこれらのいずれかの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。フルーツ飲料は上述のフルーツジュースのいずれかの風味を提供し、0%より多いが100%より少ないフルーツジュースを含む。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは1つ以上の野菜ジュースまたは野菜飲料を含むことができる。野菜ジュースとしては、トマトジュース、ビートジュース、ニンジンジュース、セロリジュース、またはこれらのいずれかの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。野菜飲料は上述の野菜ジュースのいずれかの風味を提供し、0%より多いが100%より少ない野菜ジュースを含む。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは、これらに限定されないが、全乳、2%牛乳、1%牛乳、無脂肪乳、またはこれらのいずれかの組合せを含む牛乳を含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは、これらに限定されないが、純豆乳、4%豆乳、2%豆乳、1%豆乳、無脂肪豆乳、いずれかの様々な脂肪率の豆乳、またはこれらのいずれかの組合せを含む豆乳を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは、これらに限定されないが、緑茶、黒茶、ウーロン茶、白茶、紅茶、ハーブ茶、カフェイン入り茶、カフェイン抜き茶、熱茶、冷茶、またはこれらのいずれかの組合せを含む茶を含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは、これらに限定されないが、コーラおよびソーダを含む炭酸飲料を含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは、これらに限定されないが、通常のカフェイン入りコーヒー、カフェイン控えめまたはカフェイン抜きコーヒー、アイスコーヒー、エスプレッソ、カプチーノ、ラテ、およびこれらの組合せを含むコーヒーを含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは、これらに限定されないが、蒸留水、天然水、濾水、フレーバー水、およびこれらの組合せを含む水を含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、飲料ベースは、スムージー、ヨーグルト飲料、ココア、エネルギー飲料、スポーツ飲料、およびこれらの組合せのような他の飲料製品を含むことができる。
【0025】
(エマルション)
本明細書で用いる「エマルション濃縮物」とは、エマルション濃縮物中の乳化剤および不連続液相の濃度より低い乳化剤および不連続液相の濃度を有する最終生成物のエマルションを生成するのに用いることができる、エマルションを指す。例えば、エマルション濃縮物は飲料ベースと混合して本発明の飲料製品を形成することができる飲料エマルション濃縮物を含むことができる。とくに、エマルション濃縮物は、さらなる均質化を必要とせずに、連続液相中に容易に分散する。エマルション濃縮物の形成により、消費者が摂取するために最終エマルション形態に添加して飲料製品に含める前の保存および輸送のため、LC‐PUFAを安定したコンパクトな形態で保存することができる。また、エマルション濃縮物の均質化は 消費者が摂取する最終エマルション形態の均質化よりも小さい規模で行うことができる。よって、設備費用の低減が実現される。
【0026】
本発明のエマルションの実施形態は、連続液相、乳化剤、および不連続液相を含む。本明細書で用いる「エマルション」とは、連続液相および不連続液相の不混和性混合物を指す。本明細書で用いる「連続液相」とは、不連続液相が分散しているエマルションの部分を指す。従って、本明細書で用いる「不連続液相」とは、連続液相中に分散し、それと混合することができない多数の不連続要素を指す。また、不連続液相の実施形態は、分散剤およびLC‐PUFA源を含む混合物を含む。LC‐PUFA源は、少なくとも1種のLC‐PUFAを含む。本明細書で用いる「分散剤」とは、連続液相中での本発明のエマルションの安定性を向上、および/または本発明の不連続液相の分散し易さを向上させるいずれかの物質を指す。本明細書で用いる「LC‐PUFA」とは、長い脂肪族末端を有するいずれかの多価不飽和カルボキシル酸または有機酸を指す。また、当業者であれば、LC‐PUFAを含む本明細書に記載の実施形態は、LC‐PUFAの代わりに、またはそれと組み合わせて短鎖多価不飽和脂肪酸もしくは中鎖多価不飽和脂肪酸のような他の多価不飽和脂肪酸を含むことができることを理解することができるだろう。
【0027】
本明細書で用いる「乳化剤」とは、エマルションが形成されると、不連続液相が連続液相中に十分に分散したままであるように、エマルションの安定性を向上させるいずれかの物質を指す。本発明のエマルションの特定の実施形態では、乳化剤は連続液相、または不連続液相、またはその両方に少なくとも部分的に溶解可能であってもよい。
【0028】
本発明の実施形態では、連続液相は、LC‐PUFA、不連続液相、および乳化剤と混合可能ないずれかの液体であってもよい。いくつかの実施形態では、連続液相は、LC‐PUFAを消費者にもたらすことができるように摂取可能な消費者製品であってもよいが、これに限定されない。よって、本発明の特定の実施形態によれば、連続液相としては、水、炭酸水、シロップ、ダイエット飲料、炭酸清涼飲料、フルーツジュース、野菜ジュース、アイソトニック飲料、非アイソトニック飲料、フルーツジュースを含む清涼飲料、コーヒー、茶、他の水性液体、医薬品賦形剤、天然甘味料、合成甘味料、カロリー甘味料、ノンカロリー甘味料、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アスコルビン酸、クエン酸、食物繊維、乳製品、大豆製品、等、およびこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
特定の実施形態では、連続液相は酸性であってもよい。1つの実施形態では、連続液相は約2から約7の範囲のpHを有することができる。別の実施形態では、連続液相は約2.5から約5のpHを有することができる。
【0030】
特定の実施形態では、連続液相は少なくとも1種のポリフェノールを含む。ポリフェノールは、LC‐PUFAの分解を抑制または低減することができ、脂質酸化を防止する。よって、ポリフェノールは、消費者がLC‐PUFAのにおいまたは味を知覚することを防止することもできる。また、ポリフェノールは、心臓血管疾患および癌を防ぐのに効果的であるとも認められている(Arts and Hollman,“Polyphenols and Disease Risk in Epidemiologic Studies,”Am J Clin Nutr 2005;81(suppl):317S〜25S参照)。
【0031】
この発明の実施形態に適切なポリフェノールの例としては、植物、茶葉、果実、野菜、およびカカオを含む様々な食物に元々含まれているポリフェノールが挙げられるが、これらに限定されず、合成してもよく、または合成物であってもよい。例えば、ポリフェノールはフェノール酸またはフラボノイドを含むことができる。フェノール酸の例としては、桂皮酸または安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。この発明の実施形態で用いることができるフラボノイドとしては、例えば、フラボノール、フラボン、フラバノン、フラバノール、イソフラボン、アントシアニジン、タンニン、およびスチルベンが挙げられる。
【0032】
特定の実施形態では、ポリフェノールは、例えば、ケルセチン、プロアントシアニジン、カテキン、レスベラトロール、およびプロシアニジンのようなフラボノイドを含むことができる。他の実施形態では、ポリフェノールは、(+)カテキン、(−)エピカテキン、(−)エピカテキンガレート、(−)エピガロカテキン、およびエピガトカテキンガレートを含む群から選択されるカテキンを含むことができる。特定の実施形態では、適切なポリフェノールは、以下の表1に記載された抗酸化剤のような市販の抗酸化剤中のエマルションに含めることができる。
【0033】
【表1】

【0034】
本発明の特定の実施形態によれば、ポリフェノールはエマルション中にエマルションの約0.01重量%からエマルションの約10重量%の範囲の量で存在することができる。より具体的には、ポリフェノールはエマルション中にエマルションの約0.01重量%からエマルションの約5重量%の範囲の量で存在することができる。さらにより具体的には、ポリフェノールはエマルション中にエマルションの約0.1重量%からエマルションの約3重量%の量で存在することができる。
【0035】
特定の実施形態では、連続液相は追加的に水分散性生理活性物質をさらに含むことができる。本明細書で用いる「水分散性生理活性物質」とは、水中に分散および溶解可能な物質を指す。本発明の実施形態に適切な水分散性生理活性物質としては、例えば、ルテイン、β‐カロチン、(例えば、トマトの)リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、(例えば、パパイヤの)パパインのような酵素、(例えばオランダカラシの)カロチノイド、(例えば、バジルまたはローズマリーの)オイカリプトール、(例えば、バジルの)オイゲロール、(例えば、ショウガの)ジンゲロール、(例えば、オートムギの)アベナコシド、(例えば、ブルーベリーの)没食子酸もしくは(例えば、ローズマリーの)ローズマリー酸のようなフェノール酸、(例えば、ブルーベリー、ブドウ種子、ブドウ、マテ茶、または緑茶の)ケルセチンのような(例えば、オランダカラシまたはヤナギの)フラボノイド、(例えば、緑茶の)カテキン、(例えば、ブドウ種子、ブドウ、またはブルーベリーの)アントシアニン、(例えば、アカツメクサの)フィトエストロゲン、または(例えば、グレープフルーツの)ナリンギン、(例えば、オートムギの)クマリン、(例えば、ブドウ種子、緑茶、ガラナ、またはマテ茶の)プロアントシアニジン、(例えば、ウコンの)クルクミノイド、カラメル着色剤、(例えば、キュウリの)ビタミンEもしくは(例えば、アルファルファの)ビタミンKのようなビタミン類、およびこれらの組合せ、またはUV光を吸収するいずれかの天然もしくは合成の食品等級の有色もしくは無色物質、あるいは適切な水分散性生理活性物質であると当業者であれば理解するいずれかの他の物質が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施形態に用いることができるさらなる水分散性生理活性物質は、参照により本明細書に組み込むものとする、“Lipid Oxidation”by E.N.Frankel,209〜298,2nd Edition,The Oily Press,2005に記載されている。本発明の特定の実施形態によれば、水分散性生理活性物質は、連続液相中に連続液相の約0重量%から連続液相の約20重量%の範囲の量で存在することができる。本発明の他の実施形態によれば、水分散性生理活性物質は、連続液相中に約50mgから約100mgの範囲の量で存在することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、理論に拘束されないが、水分散性生理活性物質は、光酸化に対する保護を提供して、多価不飽和脂肪酸の酸化を低減または抑制する。水溶性生理活性物質はいくらかのUV光を吸収し、従って多価不飽和脂肪酸がさらされる光が少なくなると考えられている。摂取可能な本発明のいくつかの実施形態では、水溶性生理活性物質はエマルションを摂取した消費者の皮膚の一部に潤いを与えることができる。
【0037】
本発明の実施形態はまた、連続液相中に分散することができ、LC‐PUFA源および分散剤を含む混合物を含む、不連続液相を含む。不連続液相は、連続液相中と不混和性である。
【0038】
本発明の実施形態に適切なLC‐PUFA源は、エマルション中に分散可能な少なくとも1種のLC‐PUFAを含むいずれかのLC‐PUFA源を含む。本発明の特定の実施形態によれば、LC‐PUFA源はLC‐PUFA油もしくはLC‐PUFA粉末、またはこれらの組合せであってもよい。適切なLC‐PUFA油は、例えば、藻類、魚、動物、植物またはこれらの組合せから抽出することができる。本明細書では、LC‐PUFA油を含むエマルションのこうした実施形態にて、混合物を「油混合物」と称する。本発明の実施形態のLC‐PUFA油としては、例えば、オメガ3脂肪酸油、オメガ6脂肪酸油およびオメガ9脂肪酸油が挙げられる。この発明の実施形態に適切なオメガ3脂肪酸油の例としては、α‐リノレン酸油、エイコサペンタエン酸油、ドコサヘキサエン酸油、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、オメガ3脂肪酸を合成することができる。この発明の実施形態に適切なオメガ6脂肪酸油としては、γ‐リノレン酸油およびアラキドン酸油が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、適切なオメガ3‐脂肪酸油としては、魚油(例えば、メンハーデン油、マグロ油、サケ油、カツオ油、およびタラ油)、微細藻類ドコサヘキサエン酸油、微細藻類オメガ3油、等、またはこれらの組合せが挙げられる。魚油は、原油または精製油であってもよく、また酵素処理をしてもよい。特定の実施形態では、適切なオメガ3脂肪酸油としては、市販の(メリーランド州コロンビアのMartekの)微細藻類DHA油、(テキサス州ヒューストンのOmega Proteinの)OmegaPure、(イリノイ州シャナホンのLipid Nutritionの)Marinol C‐38、(ノヴァスコシア州ダートマスのOcean Nutritionの)カツオ油およびMEG‐3、(ドイツ、ホルツミンデンのSymriseの)Evogel、(コネチカット州ウィルトンのAristaの)マグロまたはサケの魚油、(ノースカロライナ州リサーチトライアングルパークのOmegaSourceの)OmegaSource 2000、メンハーデンの魚油およびタラの魚油のようなオメガ3脂肪酸油が挙げることができる。
【0039】
エマルションがエマルション濃縮物を含む特定の実施形態では、LC‐PUFA源は、エマルション濃縮物中にエマルション濃縮物の約0.5重量%からエマルション濃縮物の約35重量%の範囲の量で存在する。より具体的には、LC‐PUFA源は、エマルション濃縮物中にエマルション濃縮物の約2重量%からエマルション濃縮物の約30重量%の範囲の量で存在する。さらに具体的には、LC‐PUFA源は、エマルション濃縮物中にエマルション濃縮物の約5重量%からエマルション濃縮物の約20重量%の範囲の量で存在する。さらに具体的には、LC‐PUFA源は、エマルション濃縮物中にエマルション濃縮物の約15重量%からエマルション濃縮物の約20重量%の範囲の量で存在する。
【0040】
特定の実施形態では、LC‐PUFA源はエマルション中に、エマルションの約0.002重量%からエマルションの約35重量%の範囲の量で存在する。より具体的には、LC‐PUFA源は、エマルション中にエマルションの約0.005重量%からエマルションの約30重量%の範囲の量で存在する。さらにより具体的には、LC‐PUFA源は、エマルション中にエマルションの約0.01重量%からエマルションの約20重量%の範囲の量で存在する。
【0041】
いくつかの実施形態では、分散剤は、ビタミンE、パルミチン酸アスコルビル、ローズマリー抽出物、テルペン、香味油、植物油、または精油等、およびこれらの組合せから選択される。特定の実施形態によれば、精油は、柑橘油、リーフ油、スパイス油、果皮油、およびこれらの組合せであってもよい。この発明の実施形態に適切な精油の例としては、レモン油、オレンジ油、ライム油、グレープフルーツ油、マンダリン油、橙皮油、ハッカ油、ペパーミント油、ローズマリー油、亜麻仁油、クランベリー種子油、ベルガモット油、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。分散剤がテルペンを含む実施形態では、適切なテルペンとしては、d‐リモネン、l‐リモネン、dl‐リモネン(すなわち、99重量%を超えるdl‐リモネン)、オレンジ留出油(すなわち、97重量%を超えるdl‐リモネン)およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態では、混合物はさらに増量剤を含むことができる。本発明の実施形態に適切な増量剤としては、例えば、臭素化植物油、エステルガムおよび他のウッドロジン、スクロースジアセテートへキサイソブチレート(SAIB)、精製したダンマルゴム、グアナバワックス、安息香酸ベンジル、ポリグリセリルエステル、三安息香酸グリセリル、ならびにこれらの組合せが挙げられる。特定の実施形態では、連続液相はさらに糖を含む。本発明の実施形態に適切な糖の例としては、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、またはこれらの組合せが挙げられる。糖を含む連続液相の例としては、カロリー甘味料を有する炭酸飲料、フルーツジュース、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、連続液相はまた、高甘味度甘味料を含むことができる。適切な高甘味度甘味料の例としては、ズルコシドA、ズルコシドB、ルブソシド、ステビア、ステビオシド、モグロサイドIV、モグロサイドV、羅漢果甘味料、シアメノサイド、モナチンおよびその塩(モナチンSS、RR、RS、SR)、クルクリン、グリシルリジン酸およびその塩、タウマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、ヘルナンズルシン、フィロズルチン、グリシフィリン、フロリジン、トリロバチン、バイユノサイド、オスラジン、ポリポドサイドA、プテロカリオシドA、プテロカリオシドB、ムクロジオシド、フロミソサイドI、ペリアンドリンI、アブルソサイドA、シクロカリオシドI、スクラロース、アセスルファームカリウムまたは他の塩、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、ネオヘスペリジン、ジヒドロカルコン、シクラメート、ネオテーム、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アルパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-3-メチルブチル]-L-α-アスパチル]-L-フェニルアラニン-1-メチルエステル、N-[N-[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、これらの塩、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0044】
理論に拘束されないが、こうした実施形態の増量剤は、不連続液相がエマルションの上部に浮いて凝集しないように不連続液相の密度を増加させる。こうした機能性は、連続液相が連続液相の密度を増加させ得る糖を含む実施形態でとくに有用である。よって、糖の存在により連続液相の密度が増加する場合、連続液相と不連続液相との密度の相違が大きくなり、その結果、増量剤がなければエマルションの上に上昇する傾向を有する密度の低い不連続液相をもたらす。
【0045】
特定の実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約1%から約50%の範囲の量で存在する。他の実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約5%から約35%の範囲の量で存在する。
【0046】
増量剤が臭素化植物油(BVO)を含む実施形態では、増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約1%から約30%の範囲の量で存在する。より具体的には、臭素化植物油(BVO)増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約5%から約20%の範囲の量で存在することができる。増量剤がウッドロジンのグリセリルエステル(すなわち、エステルガム)を含む実施形態では、増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約1%から約50%の範囲の量で存在する。より具体的には、ウッドロジン増量剤のグリセルエステルは、不連続液相中に不連続液相の約5%から約35%の範囲の量で存在することができる。増量剤がスクロースジアセテートヘキサイソブチレート(SAIB)を含む実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約1%から約50%の範囲の量で存在する。より具体的には、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート増量剤は不連続液相中に不連続液相の約5%から約35%の範囲の量で存在することができる。増量剤が精製ダンマルゴムを含む実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約1%から約50%の範囲の量で存在する。より具体的には、精製ダンマルゴム増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約5%から約35%の範囲の量で存在することができる。増量剤がグアナバワックスを含む実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約1%から約50%の範囲の量で存在する。より具体的には、グアナバワックス増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約5%から約35%の範囲の量で存在することができる。増量剤が安息香酸ベンジルを含む実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約1%から約40%の範囲の量で存在する。より具体的には、安息香酸ベンジル増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約5%から約30%の範囲の量で存在することができる。増量剤がポリグリセリルエステルを含む実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約1%から約50%の範囲の量で存在する。より具体的には、ポリグリセリルエステル増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約5%から約35%の範囲の量で存在することができる。増量剤が三安息香酸グリセリルを含む実施形態では、増量剤は不連続液相中に不連続液相の約1%から約30%の範囲の量で存在する。より具体的には、三安息香酸ベンジル増量剤は、不連続液相中に不連続液相の約5%から約25%の範囲の量で存在することができる。
【0047】
一般的に、混合物中の分散剤の量は、LC‐PUFAの味またはにおいを隠すだけではなく、安定なエマルションを生成するのに十分でなければならない。とくに、分散剤の量は酸化安定性を提供し(すなわち、LC‐PUFAの酸化を抑制または低減し)、得られるエマルションを安定させるのに十分でなければならない。いくつかの実施形態では、混合物中のLC‐PUFA源の分散剤に対する重量比は、約9:1から約1:10の範囲とすることができる。より具体的には、混合物中のLC‐PUFA源の分散剤に対する重量比は、約5:1から約1:1の範囲とすることができる。さらに具体的には、混合物中のLC‐PUFA源の分散剤に対する重量比は、約4:1から約3:1の範囲とすることができる。
【0048】
エマルションがエマルション濃縮物を含む特定の実施形態では、混合物はエマルション濃縮物中にエマルション濃縮物の約0.5重量%からエマルション濃縮物の約35重量%の範囲の量で存在することができる。より具体的には、混合物はエマルション中にエマルション濃縮物の約2重量%からエマルション濃縮物の約30重量%の範囲の量で存在する。さらにより具体的には、混合物はエマルション濃縮物中にエマルション濃縮物の約5%からエマルション濃縮物の約20重量%の範囲の量で存在する。さらにより具体的には、混合物はエマルション濃縮物中にエマルション濃縮物の約10重量%からエマルション濃縮物の約20重量%の範囲の量で存在する。
【0049】
特定の実施形態では、混合物はエマルション中にエマルションの約0.001重量%からエマルションの約35重量%の範囲の量で存在することができる。より具体的には、混合物はエマルション中にエマルションの約0.005重量%からエマルションの約30重量%の範囲の量で存在することができる。さらに具体的には、混合物はエマルション中にエマルションの約0.01重量%からエマルションの約20重量%の範囲の量で存在することができる。さらに具体的には、混合物はエマルション中にエマルションの約0.02重量%からエマルションの約20重量%の範囲の量で存在することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、混合物は倍油をさらに含むことができる。特定の実施形態では、倍油はさらに酸化安定性を向上させ、不連続液相の粒子サイズを小さくすることにより粒子サイズ分布を改善する。本発明の実施形態に適切な倍油としては、4倍ベルガモット油、ベルガプテンを含まないベルガモット油、テルペンを含まないグレープフルーツ油、4倍グレープフルーツ油、5倍グレープフルーツ油、6倍グレープフルーツ油、10倍グレープフルーツ油、高アルデヒドグレープフルーツ油、5倍グレープフルーツジュース抽出物、7倍グレープフルーツジュース抽出物、テルペンを含まないレモン油、2倍レモン油、3倍レモン油、5倍レモン油、10倍レモン油、13倍レモン油、精製5倍レモン油、精製10倍レモン油、セスキテルペンを含まないレモン油、FCを含まないレモン油、蒸留3倍ライム油、蒸留4倍ライム油、蒸留5倍ライム油、テルペンを含まない蒸留ライム油、セスキテルペンを含まない蒸留ライム油、蒸留精製5倍ライム油、冷圧3倍ライム油、冷圧4倍ライム油、冷圧5倍ライム油、冷圧10倍ライム油、テルペンを含まない冷圧ライム油、4倍マンダリン油、5倍マンダリン油、10倍マンダリン油、テルペンを含まないオレンジ油、2倍オレンジ油、3倍オレンジ油、4倍オレンジ油、5倍オレンジ油、7倍オレンジ油、8倍オレンジ油、10倍オレンジ油、15倍オレンジ油、20倍オレンジ油、25倍オレンジ油、30倍オレンジ油、5倍オレンジジュース抽出物、8倍オレンジジュース抽出物、3倍タンジェリン油、5倍タンジェリン油、テルペンを含まないタンジェリン油、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。このように、いくつかの実施形態では、不連続液相はテルペンを含まない油を含むことができる。
【0051】
本発明の特定の実施形態によれば、倍油は不連続液相中に不連続液相の約1重量%から不連続液相の約60重量%の範囲の量で存在することができる。より具体的には、倍油は不連続液相中に不連続液相の約7.5重量%から不連続液相の約45重量%の範囲の量で存在することができる。さらにより具体的には、倍油は不連続液相中に不連続液相の約10重量%から不連続液相の約40重量%の範囲の量で存在することができる。
【0052】
本発明の代替実施形態では、エマルションは、連続液相、乳化剤、ならびに多価不飽和脂肪酸源および倍油を含む混合物を含む不連続液相を含むことができる。このように、本発明の特定の代替実施形態では、エマルションは分散剤を含まなくてもよい。むしろ、倍油は、多価不飽和脂肪酸の分散が抑制または低減される安定なエマルションを形成するのに役立つ。
【0053】
特定の実施形態では、不連続液相はまた、中鎖トリグリセリドを含むことができる。特定の実施形態では、中鎖トリグリセリドは、さらに酸化安定性を向上させ、不連続液相の粒子サイズを小さくすることにより粒子サイズ分布を改善する。本発明の特定の実施形態によれば、中鎖トリグリセリドは、不連続液相中に不連続液相の約1重量%から不連続液相の約60重量%の範囲の量で存在することができる。より具体的には、中鎖トリグリセリドは、不連続液相中に不連続液相の約7.5重量%から不連続液相の約40重量%の範囲の量で存在することができる。さらにより具体的には、中鎖トリグリセリドは、不連続液相中に不連続液相の約10重量%から不連続液相の約30重量%の範囲の量で存在することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、不連続液相は、油溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、またはビタミンK)、植物化学物質、および他の脂質栄養素のような他の成分を含むこともできる。
【0055】
特定の実施形態では、不連続液相は、油分散性生理活性物質をさらに含むことができる。本明細書で用いる「油分散性生理活性物質」とは、油中に分散可能および溶解可能な物質を指す。本発明の実施形態に適切な油分散性生理活性物質としては、例えば、(例えば、トマトの)ルテインおよびアスタキサンチンのような酸化カロチノイド、β‐カロチンおよびリコピンのような非酸化カロチノイド、ならびにこれらの組合せ、またはUV光を吸収するいずれかの天然もしくは合成の食品等級の有色または無色物質が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、適切な油分散性生理活性物質としては、例えば、(例えば、パパイヤの)パパインのような酵素、(例えば、オランダカラシの)カロチノイド、(例えば、バジルまたはローズマリーの)オイカリプトール、(例えば、バジルの)オイゲロール、(例えば、ショウガの)ジンゲロール、(例えば、オートムギの)アベナコシド、(例えばブルーベリーの)没食子酸または(例えば、ローズマリーの)ローズマリー酸のようなフェノール酸、(例えば、ブルーベリー、ブドウ種子、ブドウ、マテ茶、または緑茶の)ケルセチンのような(例えば、オランダカラシまたはヤナギの)フラボノイド、(例えば緑茶の)カテキン、(例えば、ブドウ種子、ブドウ、またはブルーベリーの)アントシアニン、(例えば、アカツメクサの)フィトエストロゲン、(例えば、グレープフルーツの)ナリンギン、(例えば、オートムギの)クマリン、(例えば、ブドウ種子、緑茶、ガラナ、またはマテ茶の)プロアントシアニジン、(例えば、ウコンの)クルクミノイド、カラメル着色剤、および当業者であれば適切な水分散性生理活性物質であると理解することができるいずれかの他の物質を挙げることができる。本発明の実施形態に用いることができるさらなる油分散性生理活性物質は、“Lipid Oxidation” by E.N.Frankel,209〜298,2nd Edition,The Oily Press,2005に記載されている。本発明の特定の実施形態によれば、油分散性生理活性物質は、不連続液相中に不連続液相の約0重量%から不連続液相の約20重量%の範囲の量で存在ことができる。本発明の他の実施形態によれば、油分散性生理活性物質は、不連続液相中に約50mgから約100mgの範囲の量で存在ことができる。いくつかの実施形態では、理論に拘束されないが、油分散性生理活性物質は、光酸化に対する保護を提供して、多価不飽和脂肪酸の酸化を低減または抑制する。油分散性生理活性物質は、多価不飽和脂肪酸がさらされる光が少なくなるようにいくらかのUV光を吸収すると考えられる。摂取可能な本発明のいくつかの実施形態では、油分散性生理活性物質はエマルションを摂取する消費者の皮膚の一部に潤いを与えることができる。
【0056】
他の実施形態では、不連続液相は油混合物抗酸化剤を含むこともできる。本発明の実施形態に適切な油混合物抗酸化剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、tert‐ブチルヒドロキノン(TBHQ)、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態によれば、油混合物抗酸化剤は不連続液相中に不連続液相の約0重量%から不連続液相の約5重量%の範囲の量で存在することができる。
【0057】
本発明の実施形態は、不連続液相が粒子の形態でエマルション中に存在するエマルションを含む。いくつかの実施形態では、これらの不連続液相粒子は約0.1μmから約1.5μmの平均粒子サイズを有する。より具体的には、不連続液相粒子は約0.1μmから約1.0μmの平均粒子サイズを有することができる。さらにより具体的には、不連続液相粒子は約0.15μmから約0.7μmの平均粒子サイズを有することができる。
【0058】
本発明で用いることができる乳化剤としては、エマルションに用いるLC‐PUFAおよび分散剤と混合可能ないずれかの乳化剤が挙げられる。天然または合成乳化剤は、本発明の実施形態に適切であり得る。本発明の特定の実施形態によれば、乳化剤は変性天然乳化剤であってもよい。すなわち、乳化剤は、化学的変性、酵素変性、物理的変性、またはこれらの組合せによる乳化剤であってもよい。飲料のような消費者組成物にエマルションを用いる実施形態では、乳化剤は食品等級の乳化剤である。この発明の実施形態に適切な他の乳化剤の例としては、ペクチン、β‐ペクチン、ガティゴム、変性アラビアゴム(例えば、メリーランド州ベルキャンプのTIC GumsのTicamulsion(登録商標))、アカシアゴム(例えば、ニュージャージー州ブリッジウォータのColloidies Naturels International(CNI)のEficacia(登録商標))、キラヤ抽出物(例えば、カリフォルニア州サンディエゴのDesert Kingおよびニュージャージー州ブリッジウォータのNational Startch ChemicalのQ Naturale100)、(例えば、ニュージャージー州ブリッジウォータのNational Starch & Chemicalの)変性食品デンプン、ポリソルベート(すなわちトゥイーン)、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)のような共乳化剤、およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
エマルションがフルーツジュースまたはフルーツジュース(例えば、オレンジジュースまたはグレープフルーツジュース)を含む飲料を含む実施形態では、柑橘油が連続液相中に存在することができ、これはエマルションの化学的安定性を補助し、よって分散剤をエマルションにさらに添加する必要はない。連続液相が炭酸飲料のような酸性組成物を含む特定の実施形態では、乳化剤は炭水化物系高分子を含むことができる。適切な炭水化物系の高分子の例としては、アカシアゴム、変性食品デンプン、ガティゴム、ペクチン(例えば、β‐ペクチン)、変性アカシアゴム、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0060】
特定の実施形態では、乳化剤は、エマルション中にエマルションの約0.0002重量%からエマルションの約45重量%の範囲の量で存在する。他の実施形態では、乳化剤は、エマルション中にエマルションの約0.001重量%からエマルションの約25重量%の範囲の量で存在する。さらに他の実施形態では、乳化剤は、エマルション中にエマルションの約0.01重量%からエマルションの約20重量%の範囲の量で存在する。さらに他の実施形態では、乳化剤はエマルション中にエマルションの約5重量%からエマルションの約20重量%の範囲の量で存在する。
【0061】
いくつかの実施形態では、エマルションは安定剤を含み、エマルションをさらに安定させ、また味覚プロファイルを改善、および/またはエマルションの保存寿命を向上させることもできる。この発明の実施形態に適切な安定剤の例としては、ビタミンC、ローズマリー抽出物、茶ポリフェノールおよびブドウ種子抽出物のような果実および野菜源由来のポリフェノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸ジナトリウム塩、ならびにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態では、安定剤は、連続液相中、不連続液相中、またはその両方で少なくとも部分的に溶解可能であってもよい。1つの実施形態では、安定剤を含むエマルションは3ヵ月を超える保存寿命を有する。本明細書で用いる「保存寿命」とは、エマルションの実施形態を保存し、消費者が使用するのに適切な状態を維持する期間を指す。
【0062】
他の実施形態では、エマルションは、油相と懸濁媒質との間の表面張力をさらに減少させる界面活性剤をさらに含み、それによりエマルションの安定性およびエマルションの均質性を向上させる。この発明の実施形態に適切な界面活性剤の例としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩(DSS)、中鎖トリグリセリド(MCT)、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施形態では、界面活性剤は、連続液相中、不連続液相中、またはその両方で少なくとも部分的に溶解可能であってもよい。
【0063】
本発明の特定の実施形態によれば、エマルションの生成方法は、第1の液体を用意する工程と、第2の液体を用意する工程と、第1の液体、第2の液体、および乳化剤を混合してエマルションを形成する工程とを含む。第2の液体の実施形態は、長鎖多価不飽和脂肪酸源および分散剤を含む混合物を含む。長鎖多価不飽和脂肪酸源の特定の実施形態は、少なくとも1種の長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。特定の実施形態では、エマルションは、第1の液体を含む連続液相および第2の液体を含む不連続液相を含む。エマルションの実施形態は、上述のエマルションのいずれかであってもよい。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、第1の液体は、上述の連続液相の実施形態に適切な同じ成分を含むことができる。第2の液体の実施形態は、上述の分散剤のいずれかに類似した分散剤を含むことができる。また、第2の液体の実施形態に含まれるLC‐PUFA源は、上述のLC‐PUFA源のいずれかであってもよい。さらに、第2の液体の実施形態は、上述の不連続液相の実施形態に適切な同じ成分を含むことができる。適切な乳化剤は、上述の乳化剤と類似のものであってもよい。
【0065】
本発明の実施形態は、混合工程が、第1の液体、第2の液体、および乳化剤を順番にまたは同時に混合することを含む方法を含む。例えば、特定の実施形態では、分散剤を長鎖多価不飽和脂肪酸源と混合して第2の液体中で混合物を形成し、次に第1の液体、第2の液体、および乳化剤を混合してエマルションを形成する。別の例として、特定の実施形態では、分散剤をLC‐PUFA源および乳化剤と混合して第2の液体中で混合物を形成し、次に第1の液体および第2の液体を混合してエマルションを形成する。
【0066】
特定の実施形態では、混合工程は、乳化剤を第1の液体に混入し、分散剤を多価不飽和脂肪酸源と混合して第2の液体中に混合物を形成し、次に第1の液体および第2の液体を均質化してエマルションを形成することを含む。例えば、第1の液体および乳化剤を用い、粘液または乳化剤溶液を形成することができる。次に、第1の液体および乳化剤を含む粘液を、多価不飽和脂肪酸と混合した分散剤を含む第2の液体と混合し、プレエマルションを形成することができる。その後、プレエマルションを均質化し、エマルションを形成することができる。
【0067】
また、いくつかの実施形態では、均質化プロセスによって第1の液体、第2の液体、および乳化剤を同時に混合することができる。さらに他の実施形態では、混合工程は、第1の液体の一部、第2の液体および乳化剤を含むエマルション濃縮物を形成し、次に第1の液体の残りの部分をエマルション濃縮物に添加して不連続液相および連続液相を含むエマルションを形成することを含む。
【0068】
本開示はまた、第1の液体を用意する工程と、第2の液体を用意する工程と、第1の液体、第2の液体、および乳化剤を混合してエマルション濃縮物を形成する工程とを含むエマルションの生成方法を提供する。第2の液体の実施形態は、長鎖多価不飽和脂肪酸源および分散剤を含む混合物を含む。エマルション濃縮物は、エマルション濃縮物がすぐに分散してエマルションを形成する第3の液体に添加することがでる。特定の実施形態では、安定なエマルションを形成するために、エマルション濃縮物を第3の液体とともに均質化する必要はない。第1の液体および第3の液体の実施形態は、上述した連続液相の成分を含むことができる。特定の実施形態では、エマルションは、例えば、飲料、ハーブ組成物、または医薬組成物を含むことができる。
【0069】
本発明の実施形態はまた、噴霧乾燥した、噴霧乾燥して被覆した、または噴霧乾燥して凝集したエマルションを含むことができる。当業者であれば、実施形態に係るエマルションは、噴霧乾燥の技術分野で既知のいずれかの方法により噴霧乾燥することができることを理解されたい。また、当業者であれば、実施形態に係る噴霧乾燥したエマルションは、他の成分で被覆または凝集することができることを理解することができる。例えば、噴霧乾燥したエマルションの実施形態は、糖およびマルトデキストリンまたはこれらの組合せで被覆または凝集することができる。さらに、当業者であれば、実施形態に係る噴霧乾燥したエマルションは、被覆または凝集の技術分野で既知のいずれかの方法により被覆または凝集することができることを理解されたい。特定の実施形態では、噴霧乾燥した、噴霧乾燥して被覆した、および/または被覆乾燥して凝集したエマルションを、エマルションが分散して液体エマルションを形成する液体組成物に添加することができる。例えば、噴霧乾燥する、噴霧乾燥して被覆する、または噴霧乾燥して凝集する実施形態に係るエマルジョンを飲料に添加し、飲料エマルションを形成することができる。
【0070】
本発明の方法の実施形態にて生成されたエマルションは安定しており、長鎖多価不飽和脂肪酸を酸化から保護する。また、本発明の実施形態に係るエマルションは、バルク油と比較して、多価不飽和脂肪酸の生物学的利用能を向上させることができる。
【0071】
理論に拘束されないが、特定の実施形態では、十分な量の分散剤が不連続液相の粘度および表面張力を低下させ、これによりエマルションの均質化効率が向上すると考えられる。よって、連続液相と不連続液相との粘度の差が、乳化/均質化プロセスの有効性を測定する際に役立つ。LC‐PUFA油のようなLC‐PUFA源は疎水性かつ粘性であるので、これらの特性が均質化の有効性を低下させ得る。従って、分散剤を不連続液相に含め、不連続液相の粘度をLC‐PUFA源の粘度より低い粘度まで低下させる。分散剤を不連続液相に含めることはまた、LC‐PUFA源の表面張力より低い表面張力を有する不連続液相をもたらす。その結果、LC‐PUFA源を含む不連続液相は、より容易にエマルション中に分散する。
【0072】
さらに、不連続液相の粒子サイズを小さくし、連続液相の粘度を上昇させることで、エマルションの安定性を向上させることができる。分散剤をエマルションに添加してLC‐PUFA源を有する混合物を形成することも、不連続液相の粒子サイズを小さくし、均質化の効率を向上させる。
【0073】
さらに、ストークスの法則は、不連続液相の密度がエマルションの安定性に影響を及ぼすことを示す。とくに、ストークスの法則は、連続液相と不連続液相との間の密度差を小さくすることにより、エマルションの安定性を向上させることができることを示す。分散剤を不連続液相に添加することにより、不連続液相の密度を調節することができる。いくつかの実施形態では、LC‐PUFAは第1の密度を有し、分散剤は第1の密度より小さい第2の密度を有する。そのため、特定の実施形態では、不連続液相中の分散剤の割合が高いと、不連続相の密度は低くなる。例えば、ほぼすべての不連続相が分散剤およびLC‐PUFA油の混合物を有する第2の液体を含む実施形態では、混合物中の分散剤の割合が上昇する(すなわち、LC‐PUFA油の割合が低下する)につれて、不連続液相の密度は低下する。
【0074】
LC‐PUFA源を含む安定なエマルションを生成することのさらなる利点は、長鎖多価不飽和脂肪酸源を有するエマルションを形成することにより、LC‐PUFAの分解または酸化の少なくとも一部が抑制または低減されることである。特定の実施形態では、長鎖多価不飽和脂肪酸源を有するエマルションを形成することにより、長鎖多価不飽和脂肪酸の分解がほぼすべて抑制または低減される。よって、理論に拘束されないが、LC‐PUFAがにおいまたは味を有する実施形態では、少なくとも1種の長鎖多価不飽和脂肪酸を有するエマルションを形成すると、少なくとも1種の長鎖多価不飽和脂肪酸源のにおいまたは味(例えば魚臭)がほぼ隠れると考えられる。分散剤をLC‐PUFA源と混合することも、LC‐PUFA源の酸化を低減する。例えば、極性の高い分散剤は、LC‐PUFA源と連続液相との間に保護層を形成すると考えられている。また、ビタミンE、パルミチン酸アスコルビル、およびローズマリー抽出物のような抗酸化分散剤は、LC‐PUFAを酸化から保護するのに役立つと考えられている。さらに、LC‐PUFAの分解を低減すると、エマルションの保存寿命が長くなる。
【0075】
使用時には、本発明のエマルションの実施形態は、摂取、または他の方法で消費者に導入することができる飲料製品組成物、ハーブ組成物、医薬組成物、等の組成物中で機能することができ、LC‐PUFAおよびその有利な特性は高い生物学的利用能を示す。エマルションを摂取する実施形態では、本発明は、LC‐PUFAがほぼ、完全に溶解可能であり、消費者の味覚または嗅覚で検知不可能であり、完全摂取が可能である、飲料ベースおよび上述のエマルションを含む飲料製品を提供する。よって、消費者は、望ましくないにおい、味、または類似特性がほぼない状態で、LC‐PUFA、とくにオメガ3脂肪酸、すなわちDHAおよびEPAを摂取することができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態によると、多価不飽和脂肪酸を飲料に導入することは様々な方法で行うことができる。とくに、多価不飽和脂肪酸は混合器中でエマルションを飲料ベースに添加することにより飲料中に導入することができる。別の方法は、エマルションを低温殺菌前に最終飲料製品に添加することを含むことができる。これらの方法のいずれかにより、栄養価の高い飲料を提供し、見た目が良く、生物学的利用能の高いオメガ3脂肪酸のような所望の多価不飽和脂肪酸を提供する、最終飲料製品を消費者に提供する。
【0077】
PUFAまたはLC‐PUFAを本発明のいくつかの実施形態に係る飲料に導入するために混合器を用いる場合、既知の剪断混合器を用いることができる。例えば、LC‐PUFAエマルションを水または別の飲料ベースおよび他の成分(例えば、ビタミン、等)と混合するのに低剪断混合器を用意することができる。すべての成分を一緒に混合すると、混合物全体を低温殺菌装置に通した後、充填または包装する。
【0078】
特定の実施形態では、PUFAまたはLC‐PUFAを飲料製品に導入するのに混合を用いない場合、低温殺菌前にエマルションを飲料ベースに導入することができる。換言すると、エマルション以外のすべての成分を混合することができる。次にエマルションを混合物に添加した後、混合物を充填または包装するために低温殺菌することができる。PUFAまたはLC‐PUFAを低温殺菌した飲料ベース混合物に組み込み、最終的な充填または包装製品を生産することもできる。
【0079】
本発明のエマルションは水溶性であり、PUFAまたはLC‐PUFAを沈殿することなく飲料ベースへ容易に分散させる。飲料ベースとして酸度の高い飲料(例えばオレンジジュース、ザクロジュース、等)を用いても、均質化し、エマルション粒子をとくに小さく分散可能にした場合、エマルションは飲料の保存寿命を通してその安定性を維持することができる。例えば、以下の表により示すように、保存寿命保存した3週間、9週間、または11週間後、本発明の飲料製品のいくつかの実施形態はそれらに組み込まれたPUFAまたはLC‐PUFAがほぼ失われないことを示した。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【実施例】
【0082】
他の実施形態を、この開示の範囲をいかなる意味でも限定しないものと解釈される実施例において、以下でさらに示す。一方で、本明細書の記載を読むと、本開示の範囲および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者であれば想起することができる様々な他の実施形態、変形、およびその均等物を用いることができることを明確に理解することができるだろう。
【実施例1】
【0083】
油添加剤のDHAエマルションの平均粒子サイズ分布への影響
【0084】
以下の表4および表5の処方を用い、2つの250gのエマルションを生成したが、表中、MCTは中鎖トリグリセリドであり、ODはオレンジ留出物である。
【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
はじめに600mlビーカー中のバッチの含水量を増量して粘液を調製することにより、エマルションを調製した。ビーカーをプロペラ式撹拌機の下に置いた。安息香酸ナトリウムを混合渦に添加し、乳化剤溶液を3分間混合した。クエン酸を混合渦に添加し、乳化剤溶液を3分間混合した。乳化剤を混合渦に徐々に添加し、撹拌を1時間継続した。乳化剤溶液をテーブル上に1晩配置き、泡を分離させた。
【0088】
濾過した乳化剤溶液(粘液を100メッシュスクリーンに通した)をプロペラ式撹拌機の下に置き、DHA油とオレンジ留出物、中鎖トリグリセリド、および/または倍油との油混合物を混合渦に徐々に添加し、粗エマルションを生成することにより、プレエマルションを調製した。粗エマルション溶液を高剪断混合機(Polytron PT3100またはPri Sci 250)に移した。混合速度を4に設定し、乳化剤溶液を2分間混合してプレエマルションを得た。
【0089】
NanoMizerに通して脱イオン水を流し、プランジャ速度を調節して31MPa(4500psi)という均質化圧力を達成することにより、エマルションを調製した。プレエマルションを所望の均質化圧力で2回均質化した。必要に応じて、プランジャ速度を調節し、所望の均質化圧力を達成した。次にエマルションを包装し、冷蔵状態で保存した。表6および表7はエマルションの粒子サイズの測定結果をまとめ、オレンジ留出物、中鎖トリグリセリドおよび/または倍油をDHA油に添加すると、DHA油の乳化し易さを大幅に改善することができることを示す。
【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【実施例2】
【0092】
実施例1の手順を用い、17.5%のEficaiaまたは17.5%のTicamulsion 2010A、dl‐リモネン、および15%のMartek DHA油を含むオメガ3脂肪酸の水中油型エマルションを調製した。オメガ3脂肪酸油はMartek Bioscienceから供給され、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、大豆レシチンおよびローズマリー抽出物の抗酸化混合系で安定させた。特殊等級のアラビアゴムであるEficaciaはCNIより提供された。変性アラビアゴムのTicamulsion 2010AはTIC Gumより供給された。成分はすべて、それ以上精製せずに用いた。
【0093】
Omnionの食品安定性分析器(FSA)を用い、オメガ3脂肪酸エマルションの脂質酸化を遅延させる抗酸化効果を測定した。FSAは高温(最高150℃)および触媒、専用の重金属錯体の組合せを用いて加速酸化試験を行った。その組合せの酸化加速度は、実際の保存寿命試験より数百倍速く設定した。FSAの計器は、試料セルのヘッドスペース(容積〜40ccまたは酸素分子〜2×1020個)で酸素濃度を測定した。FSAを用いる方法は、高圧の純酸素および高温を用いる従来の酸素ボンベを用いる方法よりはるかに感度が高かった。酸化安定分析についてのFSAの終点は、添加した抗酸化剤が消費され、脂質の自己酸化が開始して加速する、酸素濃度対時間曲線の変曲点(急な勾配変化)により決定した。また、終点は通常、試験対象の基質がヘッドスペース酸素の〜5%または酸素分子〜1019個を消費するのにかかる時間を示した。
【0094】
SafTest(登録商標)システムを用い、自家生成したオメガ3エマルションの酸化分解を分析した。SafTest(登録商標)システムは(安全性の理由からベンゼンメタノールをイソプロパノールに置き換えて改良したチオシアン酸第二鉄を用いる方法に基づく)比色法であり、AOAC認証を得ている。SafTest(登録商標)システムは、試験対象のエマルションの過酸化物価を迅速に測定し、その結果は表8および表9に要約する。このように、その結果は、DHAエマルションに油およびポリフェノールを添加すると、酸化分解が低減することを示した。
【0095】
【表8】

【0096】
【表9】

【0097】
緑茶ポリフェノール(GTP)を用い、エマルションの実施形態におけるオメガ3油の酸化による異味発生を遅延させるGTPの抗酸化剤効果を検査した。表10は、DHA油および様々な添加剤で強化したファンタオレンジゼロの現行の保存安定性評価を示す。その結果は、GTPを含む試験試料では、環境中で12週間保存した後魚臭および魚味は発生しなかったことを示す。しかしながら、ビタミンCのみを含む試験試料では、環境中で3週間保存した後魚味および魚臭が発生した。また、100人の消費者による官能試験の結果は、DHA油およびビタミンC/EDTAで強化したファンタオレンジでは、環境中で12週間保存した後わずかな魚臭および魚味がするが、異味は冷却剤を用いることで隠すことができることを示す。従って、オメガ3エマルションおよびオメガ3強化飲料に、ビタミンCおよびEDTAの代わりに緑茶ポリフェノールを用い、脂質の酸化を遅延させ、保存安定性を確実にすることができるはずである。
【0098】
【表10】

RT:室温(〜23℃)
【実施例3】
【0099】
実施例1の手順を用い、表11の処方に従って200kgのオメガ3脂肪酸の安定な水中油型エマルションを生成した。
【0100】
【表11】

【実施例4】
【0101】
以下の表12の処方を用い、17.5%のTicamulsion 2010Aを含むオメガ3脂肪酸の水中油型エマルションを調製した。スクロースジアセテートへキサイソブチレートを増量剤として用いた。
【0102】
【表12】

【0103】
はじめに2000mlビーカー中のバッチの含水量を増量して粘液を調製することにより、エマルションを調製した。ビーカーをプロペラ式撹拌機の下に置いた。安息香酸ナトリウムを混合渦に添加し、乳化剤溶液を3分間混合した。クエン酸を混合渦に添加し、乳化剤溶液を3分間混合した。乳化剤を混合渦に徐々に添加し、撹拌を1時間継続した。乳化剤溶液をテーブル上に1晩置き、泡を分離させた。
【0104】
乳化剤溶液をプロペラ式撹拌機の下に置き、DHA油、スクロースジアセテートへキサイソブチレート、オレンジ留出物、中鎖トリグリセリドおよび/または倍油の油混合物を混合渦に徐々に添加し、粗エマルションを生成することにより、プレエマルションを調製した。粗エマルション溶液を高剪断混合機Polytron PT3100に移した。混合速度を410,000rpmに設定し、乳化剤溶液を2分間混合してプレエマルションを得た。
【0105】
APV1000ホモジナイザに通して脱イオン水を流し、均質化圧力を4500psiに調節することにより、エマルションを調製した。プレエマルションを所望の均質化圧力で2回均質化した。必要に応じて、プランジャ速度を調節し、所望の均質化圧力を達成した。次にエマルションを包装し、冷蔵状態で保存した。得られたエマルションは、平均粒子サイズが0.173μmの不連続液相を有した。
【0106】
以上は本発明の特定の実施形態に関係するものであり、以下の特許請求の範囲で規定されるこの発明の範囲から逸脱することなく、種々に変更することができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の飲料ベースおよび少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸エマルションを含む飲料製品であって、
前記エマルションは、連続液相と、乳化剤と、少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含む多価不飽和脂肪酸源ならびに分散剤を含有する混合物を含む不連続液相を含み、
前記混合物中の前記多価不飽和脂肪酸源の前記分散剤に対する重量比は約9:1から約1:10の範囲である、飲料製品。
【請求項2】
前記分散剤がビタミンE、パルミチン酸アスコルビル、ローズマリー抽出物、テルペン、香味油、植物油、精油、およびこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項3】
前記分散剤がd‐リモネン、l‐リモネン、dl‐リモネン、オレンジ留出油、およびこれらの組合せを含む群から選択されるテルペンを含む、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項4】
前記乳化剤が炭水化物系高分子を含む、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項5】
前記炭水化物系高分子がアカシアゴム、変性食品デンプン、ガティゴム、ペクチン、β‐ペクチン、変性アカシアゴム、およびこれらの組合せを含む群から選択される、請求項4に記載の飲料製品。
【請求項6】
前記乳化剤がキラヤ抽出物を含む、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項7】
前記連続液相が約2から約7のpHを有する、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項8】
前記不連続液相が4倍ベルガモット油、ベルガプテンを含まないベルガモット油、テルペンを含まないグレープフルーツ油、4倍グレープフルーツ油、5倍グレープフルーツ油、6倍グレープフルーツ油、10倍グレープフルーツ油、高アルデヒドグレープフルーツ油、5倍グレープフルーツジュース抽出物、7倍グレープフルーツジュース抽出物、テルペンを含まないレモン油、2倍レモン油、3倍レモン油、5倍レモン油、10倍レモン油、13倍レモン油、精製5倍レモン油、10倍レモン油、セスキテルペンを含まないレモン油、FCを含まないレモン油、蒸留3倍ライム油、蒸留4倍ライム油、蒸留5倍ライム油、テルペンを含まない蒸留ライム油、セスキテルペンを含まない蒸留ライム油、蒸留精製5倍ライム油、冷圧3倍ライム油、冷圧4倍ライム油、冷圧5倍ライム油、冷圧10倍ライム油、テルペンを含まない冷圧ライム油、4倍マンダリン油、5倍マンダリン油、10倍マンダリン油、テルペンを含まないオレンジ油、2倍オレンジ油、3倍オレンジ油、4倍オレンジ油、5倍オレンジ油、7倍オレンジ油、8倍オレンジ油、10倍オレンジ油、15倍オレンジ油、20倍オレンジ油、25倍オレンジ油、30倍オレンジ油、5倍オレンジジュース抽出物、8倍オレンジジュース抽出物、3倍タンジェリン油、5倍タンジェリン油、テルペンを含まないタンジェリン油、およびこれらの組合せを含む群から選択される少なくとも1種の倍油をさらに含む、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項9】
前記不連続液相が中鎖トリグリセリドをさらに含む、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項10】
前記連続液相が少なくとも1種のポリフェノールをさらに含む、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項11】
前記少なくとも1種のポリフェノールが緑茶抽出物を含む、請求項10に記載の飲料製品。
【請求項12】
前記多価不飽和脂肪酸源がα‐リノレン酸油、エイコサペンタエン酸油、ドコサヘキサエン酸油、およびこれらの組合せを含む群から選択されるオメガ3脂肪酸油を含む、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項13】
前記製品の摂取後、血漿リン脂質DHA含量が少なくとも総脂肪酸の約20モル%増加する、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項14】
前記製品が少なくとも約3週間の保存寿命を示す、請求項1に記載の飲料製品。
【請求項15】
少なくとも1種の飲料ベースを用意する工程と
連続液相、乳化剤、および多価不飽和脂肪酸源ならびに分散剤を含む混合物を含む不連続液相を含むエマルションを用意する工程であって、前記多価不飽和脂肪酸源は少なくとも1種の多価不飽和脂肪酸を含み、前記混合物中の前記多価不飽和脂肪酸源の前記分散剤に対する重量比は約9:1から約1:10の範囲である、工程と
を含む、飲料製品中の多価不飽和脂肪酸の生物学的利用能を向上させる方法。
【請求項16】
前記エマルションがβ‐カロチン、酵素、カロチノイド、オイカリプトール、オイゲロール、ジンゲロール、アベナコシド、フェノール酸、フラボノイド、クマリン、プロアントシアニジン、クルクミノイド、ビタミンE、ビタミンK、またはこれらの組合せをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記不連続液相がルテインを含む油分散性生理活性物質をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の飲料製品を提供することにより消費者の血漿リン脂質DHA含量を増加させる方法。
【請求項19】
前記消費者が1日当たり少なくとも180mLを毎日少なくとも約6週間摂取する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記血漿リン脂質DHA含量が総脂肪酸の少なくとも約20モル%増加する、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2012−500628(P2012−500628A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523851(P2011−523851)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/052224
【国際公開番号】WO2010/021820
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(391026058)ザ コカ・コーラ カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
【Fターム(参考)】