説明

多周波平面アンテナ

【課題】簡易な構成で多周波共用のアンテナを実現することができる多周波平面アンテナを提供すること。
【解決手段】放射すべき第1の無線信号の波長によって決定される大きさをもつ平板形状の第1放射素子14と、誘電体を介して第1放射素子14に略平行配置され、放射すべき第2の無線信号の波長によって決定され第1放射素子14の平板形状よりも小さい平板形状の第2放射素子15とを備え、第1放射素子14および第2放射素子15の略中央は、給電線16の内部導体17によって共通接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、簡易な構成で多周波の信号を輻射することができる多周波平面アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロストリップアンテナなどの平面アンテナは、小型軽量であることから車載用のアンテナとして用いられている。この平面アンテナは、UHF帯からマイクロ波帯に多用され、接地導体板に平行配置された矩形板あるいは円形板などが放射素子として機能する(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−305409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された多周波共有平面アンテナ装置では、各放射導体に対してそれぞれ給電線を接続しており、構成が複雑であり、コストがかかるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で多周波共用のアンテナを実現することができる多周波平面アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる多周波平面アンテナは、放射すべき第1の無線信号の波長によって決定される大きさをもつ平板形状の第1放射素子と、誘電体を介して前記第1放射素子に略平行配置され、放射すべき第2の無線信号の波長によって決定され前記第1放射素子の平板形状よりも小さい平板形状の第2放射素子と、誘電体を介して前記第2放射素子に略平行配置された接地導体板と、を備え、前記第1放射素子および前記第2放射素子の略中央は、給電線の内部導体によって共通接続されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる多周波平面アンテナは、上記の発明において、誘電体を介して前記第2放射素子に平行配置されるとともに前記給電線の内部導体に共通接続され、第3の無線信号の波長によって決定される平板形状の第3放射素子をさらに設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3にかかる多周波平面アンテナは、上記の発明において、前記第1の無線信号と前記第2の無線信号との波長間隔あるいは前記第1〜第3の無線信号の各波長間隔を狭めて広帯域の反射特性を持たせたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4にかかる多周波平面アンテナは、上記の発明において、前記第2放射素子あるいは前記第3放射素子と前記接地導体板との間の誘電体は、空気であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる多周波平面アンテナでは、放射すべき第1の無線信号の波長によって決定される大きさをもつ平板形状の第1放射素子と、誘電体を介して前記第1放射素子に略平行配置され、放射すべき第2の無線信号の波長によって決定され前記第1放射素子の平板形状よりも小さい平板形状の第2放射素子とを備え、前記第1放射素子および前記第2放射素子の略中央が、給電線の内部導体によって共通接続されるようにしているので、
給電線およびこの内部導体の構成が容易になり、従来の多周波平面アンテナのアンテナ特性を維持しつつ、コストを低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態である多周波平面アンテナについて説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は、この発明の実施の形態である多周波平面アンテナの断面図である。また、図2は、図1に示した多周波平面アンテナの平面図である。さらに、図3は、図1に示した多周波平面アンテナの斜視図である。図1〜図3において、この多周波平面アンテナ1は、接地導体板11上に平行配置された矩形板の天板12を有する。天板12の上面には銅で形成された矩形板の第1放射素子14が設けられるとともに、天板12の下面には銅で形成された矩形板の第2放射素子15が設けられ、第1放射素子14と第2放射素子15との間は、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂や、ガラス繊維が入ったテフロンなどの誘電体によって形成されている。
【0013】
接地導体板11の貫通孔11aには、同軸ケーブルによって実現される給電線16が挿通され、外部導体18は、接地導体板11に接続されるとともに、内部導体17は、第2放射素子15の中央部分の貫通孔を介して導通接続されるとともに、その上部の第1放射素子14まで達して第2放射素子14に導通接続される。なお、貫通孔11aにコネクタを設け、このコネクタによって給電線16を固着するようにしてもよい。
【0014】
第2放射素子15の隅と接地導体板11との間には整合帯21が接続され、さらに、天板12と接地導体板11との間の複数箇所には、誘電体で形成された保持部材24が設けられ、接地導体板11に対する天板の位置関係を保持するようにしている。この場合、天板12と接地導体板11との間には、誘電体としての空気が満たされるが、上述したPPE樹脂などの誘電体を満たすようにしてもよい。
【0015】
ここで、第1放射素子14は、第1の無線周波数、たとえば800MHz帯の無線信号を輻射できる矩形平板であり、第2放射素子15は、第2の無線周波数、たとえば2GHz帯の無線信号を輻射できる矩形平板である。この場合、第1放射素子14と第2放射素子15とは、1つの給電線16の内部導体17によってその中央部が共通接続されているので、1つの給電線16のみで多周波共用の平面アンテナを実現することができる。
【0016】
また、図4に示すように、さらに第3放射素子31を多層化して設けることによって第3の無線周波数の無線信号を輻射することができる。同様にして、天板12に4つ以上の放射素子を多層化するようにしてもよい。
【0017】
放射すべき各無線周波数を適切に近接させることによって、広帯域の反射特性をもたせる平面アンテナが実現され、その周波数帯をカバーできる利得を得ることができる。
【0018】
もちろん、各無線周波数を十分に近くして設定することによって、各周波数の輻射を共用できる平面アンテナが実現される。
【0019】
なお、図5および図6に示すように、整合帯21に替えて整合帯22を設けるようにしてもよい。この整合帯22は、補助放射素子15と接地導体板11との間の内部導体であるアンテナ部23の途中から接地導体板11に向けて金属部材が接地される。
【0020】
また、図7は、図1に示した2周波共用の多周波平面アンテナのリターンロスの周波数依存性を示す図である。図7に示すように、周波数f1,f2の2つの共振周波数近傍でリターンロスが−30dB程度まで小さくなり、従来の多周波平面アンテナと同様な反射特性を得ることができる。さらに、図8は、図4に示した3周波共用の多周波平面アンテナのリターンロスの周波数依存性を示す図である。図8に示すように、周波数f1,f2,f3の3つの共振周波数近傍でリターンロスが−30dB程度まで小さくなり、従来の多周波平面アンテナと同様な反射特性を得ることができる。
【0021】
この実施の形態では、1つの給電線16の内部導体17に各放射素子が共通接続されるので、多周波平面アンテナ自体の構成が簡易になり、従来のアンテナ特性を維持しつつ、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態である多周波平面アンテナの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した多周波平面アンテナの平面図である。
【図3】図1に示した多周波平面アンテナの斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態の変形例である多周波平面アンテナの構成を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態の変形例である平面アンテナの構成を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態の変形例である平面アンテナの構成を示す平面図である。
【図7】図1に示した2周波共用の多周波アンテナにおけるリターンロスの周波数依存性を示す図である。
【図8】図4に示した3周波共用の多周波アンテナにおけるリターンロスの周波数依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1,2 多周波平面アンテナ
11 接地導体板
12 天板
13 誘電体
14 第1放射素子
15 第2放射素子
16 給電線
16a 貫通孔
17 内部導体
18 外部導体
21,22 整合帯
23 アンテナ部
24 保持部材
31 第3放射素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射すべき第1の無線信号の波長によって決定される大きさをもつ平板形状の第1放射素子と、
誘電体を介して前記第1放射素子に略平行配置され、放射すべき第2の無線信号の波長によって決定され前記第1放射素子の平板形状よりも小さい平板形状の第2放射素子と、
誘電体を介して前記第2放射素子に略平行配置された接地導体板と、
を備え、前記第1放射素子および前記第2放射素子の略中央は、給電線の内部導体によって共通接続されることを特徴とする多周波平面アンテナ。
【請求項2】
誘電体を介して前記第2放射素子に平行配置されるとともに前記給電線の内部導体に共通接続され、第3の無線信号の波長によって決定される平板形状の第3放射素子をさらに設けたことを特徴とする請求項1に記載の多周波平面アンテナ。
【請求項3】
前記第1の無線信号と前記第2の無線信号との波長間隔あるいは前記第1〜第3の無線信号の各波長間隔を狭めて広帯域の反射特性を持たせたことを特徴とする請求項1または2に記載の多周波平面アンテナ。
【請求項4】
前記第2放射素子あるいは前記第3放射素子と前記接地導体板との間の誘電体は、空気であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の多周波平面アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−287524(P2006−287524A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103661(P2005−103661)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】