説明

多孔性メンブレンを製造する方法及び該メンブレンを包含する防水性で高度に通気性のファブリック

メンブレン層として疎水性プラスチック(例えばPVDF)に基づいた高度に通気性があり且つ防水性のファブリックを製造する方法。この新規なファブリックは、その他のPVDF及びePTFEメンブレンよりもより高い水蒸気処理能力及びより良い防水性を可能とさせる。このことは、孔隙寸法の制御を介して達成され、従ってスポンジ状の多孔性構造を製造し、プレストレスをかけてメンブレン及びその後に積層されるファブリックをソフトなものとさせ、且つ顕微鏡的に折り重ねた構造とさせ、それは多孔性媒体に対して表面積を増加させ、従ってより高い処理能力、防水性及び快適性を得ている。更に、本発明は、孔隙寸法分布、増加させた孔隙率及びゲル化プロセス期間中のプレストレス緩和を制御する方法を提供している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性の高分子メンブレン、特に疎水性のメンブレンを製造する方法及びこのような方法の生産物に関するものである。重要な側面において、それは防水性で且つ高度に通気性のファブリックを形成するために多孔性層として高度に疎水性のプラスチックを使用してメンブレンの孔隙寸法、密度、及びプレストレス特性(柔軟性を包含する)等の物理的特性を制御することを組み込んだメンブレン製造方法、及びそれにより製造されるファブリックに関するものである。
【0002】
高度に通気性があり且つ防水性のファブリックは、現在、「Gore−Tex」(登録商標)ファブリックにおけるように疎水性層としての「Teflon」(登録商標)ポリマーメンブレン、又はポリウレタン等のその他の物質に基づくものである。「Teflon」(登録商標)ポリマーは入手可能な最も疎水性の物質であるが、どの溶媒もそれを溶解することが出来ず、従って加熱している間に薄い「Teflon」(登録商標)シートを数回物理的に引き伸ばし、繊維状の構造を形成し、次いで幾つかのこのようなシートを重ね合わせて多孔性のメンブレンを形成することによって多孔性メンブレン構造を構成する。「Teflon」(登録商標)シートから多孔性メンブレンを作成するその他の方法は、最大孔隙直径及び密度の制御を与えることが可能であるが、「Gore−Tex」(登録商標)メンブレン程通気性のあるものではない。「Gore−Tex」(登録商標)タイプのメンブレンを製造するコストは非常に高い。
【0003】
ポリウレタンのようなその他の物質は溶媒に基づいてナイフでスプレッドし且つベーキングするプロセスを使用することが可能である。フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)は「Teflon」(登録商標)ポリマーに次ぐ次に良い疎水性物質であり、且つそれは制限した数の溶媒を有している。このことは、Nichaels(米国特許第3,615,024号及び第6,112,908号)に記載されているような伝統的な溶媒/非溶媒プロセスを該メンブレンを製造するために使用可能であることを意味している。業界の研究所において探査中のこのことに関連する多数のパラメータが存在している。非溶媒はリーチング即ち浸出時間を減少させるために溶媒と高度に混和性でなければならない。メンブレン製造業者の間でアルコールに基づいた非溶媒が非常にポピュラーである。溶媒との混和性を増加させるために高温において水を使用することが可能であり、従ってゲル化時間を減少させる。
【0004】
然しながら、従来、多孔性メンブレンのストレス即ち応力の緩和に対して何等注意が払われていなかった。その製造期間中に、PVDFメンブレンはストレスがかけられ且つ脆性となり、従って多数回の折り曲げ動作の後に破壊する蓋然性があり、従ってファブリックに対しての適切な疎水性層としてそれを資格のないものとさせる。他の物質は同等の疎水性特性を有するものではない。PVDFは非常に低い表面張力を有しており、「Teflon」(登録商標)ポリマーよりも僅かに超えるものに過ぎない。「Teflon」(登録商標)ポリマーは18dynes/cmの表面張力を有しており且つPVDFは25dynes/cmである。これらの物質は他の物質(例えば、ポリウレタン)に比べて著しくすぐれている。PVDFメンブレンは薄い上部層の下側に空胞ポケット構造を有するように構成することが可能であり、それは水蒸気の通過に対して広げられた表面積を与え、スキン層上により大きな孔隙寸法を有することの必要性なしにGoreメンブレンよりもより多くの通気性を有するものとさせる可能性がある。より小さな孔隙は防水性を改善する。従来技術のいずれもが、通常硬質であり且つ脆性であり、従って通気性があり防水性のファブリックの疎水性層として使用するのに適したものでないメンブレンのテクスチャを制御する方法を開示するものではない。
【背景技術】
【0005】
溶媒/非溶媒プロセスを使用して製造される全ての多孔性メンブレンは、かなりの部分米国特許第3,615,024号(Michaels’024)の教示に従うものであり、該特許は固体との溶媒及び非溶媒の関係及び多孔性メンブレンのゲル化のために従うべきプロセスを記載している(該特許の図1参照)。然しながら、該特許は孔隙構造及びメンブレンの柔軟性に影響を与えるゲル化ステップ期間中におけるプレストレス問題が存在することを言及するものではない。Michaels’024の通り、逆浸透のためにセルロースアセテート及びセルロースナイトレートを使用する薄いスキンを具備する多孔性メンブレンは既に存在していた。当時の逆浸透メンブレンは、乾燥していると固く且つ破れ易く、且つ濡れているとソフトで弾力性があり、且つ大量の水を吸収することが可能なものであった。特に、Michaels’024は海水の低温熱蒸留に関するものであった。疎水性メンブレンのプレストレス緩和に対処することの必要性がないものであった。
【0006】
米国特許第3,240,683号及び第3,406,096号(Rodgers)は疎水性メンブレンを使用する熱蒸留に関するものである。これらのRodgers特許は、孔隙直径が1.0乃至2.0ミクロンの範囲内のものであるべきことを特定しているが、メンブレンをどのように製造するかを教示するものではない。それらは、孔隙直径が小さ過ぎると蒸気流れの処理能力を妨げ、且つ大き過ぎると、メンブレン表面上の静水圧が強制的に水を貫通させるものであることを記載している。ゲル化プロセス期間中におけるメンブレンの応力緩和については何等記載するものではない。
【0007】
米国特許第4,265,713号(Cheng)及び第4,419,242号、第4,316,772号、第4,419,187号(Cheng et al.)において記載されているように、本出願人は、疎水性メンブレンは疎水性孔隙内への海水の浸透を阻止する薄い親水性層によって被覆されるべきであることを発見した。孔隙の開口を被覆する親水性層は、疎水性孔隙を液体によって浸透させるような油又はその他の湿潤可能な媒介物による汚染を防止する。メンブレンのプレストレス緩和についてはこれらの従来の特許において何等記載されていない。
【0008】
米国特許第6,112,908号(Michaels’908)は前述した米国特許第4,419,242号及び第4,419,187号の複合層構造について記載している。Michaels’908における多数の記録されている引用例は塩水の熱蒸留に対する複合メンブレン構造を取扱っている。
【0009】
米国特許第3,962,153号及び第4,187,390号(Gore)はストレッチ即ち引き伸ばした「Teflon」(登録商標)(テトラフルオロエチレンポリマー)多孔性メンブレンに関するものであり、その場合に、Hyper−A接着剤層を親水性物質として使用して疎水性層を使用することが可能である。
【0010】
液体フィルタリングのための米国特許第6,146,747号(Wang et al.)は基板としてPVDFメンブレンを使用している。何故ならば、PVDFは多数の化学物質が該物質をアタックするか又はそれを溶解させることを阻止することが可能だからである。然しながら、PVDFの疎水性特性のために、フィルタは、孔隙を最初に浸透させるためにアルコールのような湿潤性能媒体物を必要とし、その後にフィルタ中の液体が続く。このことは、PVDFのマイクロフィルタとしての適用を制限していた。Wang et al.特許はDMACを溶媒としてPVDF溶液へPVPのような少量(2%未満)の親水性ポリマーを添加し、次いでMichaelsの溶媒/非溶媒ゲル化プロセスを行い、液体濾過を回避させるために湿潤媒介物を使用することなしに親水性特性を具備するPVDFに基づいたメンブレンを得ることを記載している。多孔性メンブレンの応力緩和については何等記載していない。
【0011】
米国特許第6,126,826号(Pacheco et al.)は溶媒と少量の共溶媒とを使用してメンブレンを製造し、次いでそれを溶媒/非溶媒混合物と置換させる制御プロセスを記載している。該特許は、メンブレンの孔隙寸法は溶液の温度により制御することが可能であること、及び孔隙構造はより単純であることを記載しており、そのことは同一の流体の流量に対して圧力降下がより小さいことを意味している。この場合も、記載されたプロセス及び製品においてのプレストレス緩和については何等記載されていない。該特許は、更に、圧力降下は非常に小さいので流れは圧力差によって制御されるのではなく相対的湿度及びメンブレンの多孔性密度によって制御されるものであり低圧降下は熱蒸気処理能力にとって関係がないことを記載している。このことが、全ての孔を被覆する親水性物質の薄いコーティングが蒸気の流量を著しく変化させなかったことの理由である。
【0012】
米国特許第4,863,788号(George L. Bellairs、Chris E. Nowak、Mahner Parekh)は複雑な多層メンブレンを記載している。それは非溶媒浴の表面張力の調節によっての柔軟性及び孔隙寸法及び分布の制御について教示するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
広義に述べると、本発明の1つの目的は、孔隙特性及び柔軟性等の所望のメンブレン特性を発現させるべく制御した溶媒/非溶媒プロセスによって多孔性メンブレン、特に疎水性メンブレンを製造する新規で且つ改良した方法を提供することである。
【0014】
別の目的とするところは、防水性のために制御した孔隙寸法分布を有しており且つ快適性のために高い蒸気処理能力を有している薄い多孔性の疎水性及び好適にはPVDFのメンブレン上に織った又は不織のバッキングを包含する防水性ファブリックを提供することである。付加的な目的とするところは、その形成期間中に多孔性構造の制御されたプレストレス緩和によって達成される良好な手触りでソフトなファブリックを提供することである。
【0015】
更なる目的とするところは、ファブリックを浸透することなしに帽子、布ジャケット、靴等にあたる60MPHの嵐におけるものと等価な少なくとも水圧に対して水の浸透を阻止する疎水性で多孔性のメンブレンを製造すること、ファブリック及び親水性コーティングを具備する「Teflon」(登録商標)ePTFEメンブレンと同様であるか又はそれより良い割合で典型的な人間の体及び大気温度下において水蒸気を通過させることが可能な疎水性で多孔性のメンブレン、即ち4000g/m2/日乃至10,000g/m2/日の範囲内においてこのような条件下において水蒸気を通過させることが可能なメンブレンを製造すること、布としての快適性を提供するのに充分にソフトであり、即ち衣服業界においてその用語が使用される場合に良好な「手触り」として特性付けられる疎水性で多孔性のメンブレンを提供すること、及び疎水性において「Teflon」(登録商標)ポリマーに次ぐ疎水性物質から構成されたこのような多孔性メンブレンを提供することである。
【0016】
更に別の目的とするところは、接着剤層を使用すること無しに又はこのような接着剤層に対して最小の条件でもって織った又は不織のファブリック上にこのようなメンブレンをコーティングすることが可能であることである。
【0017】
その他の目的とするところは、物質の通気性を阻止することなしに孔隙上にコーティングした非常に薄い疎水性層を具備するこのようなメンブレンを提供し、それにより該メンブレンが60乃至100mphの風速での雨に耐えることが可能であるように防水性を改善すること、メンブレン表面の機械的摺擦を防止するために疎水性層が緩いネット物質へ取り付けられているこのようなメンブレンを提供すること、及び孔隙が50乃至3000ナノメータの直径であるこのようなメンブレンを提供することである。
【0018】
付加的な目的とするところは、メンブレン形成のゲル化プロセス期間中にプレストレスを与えることによりメンブレンの柔らかさを制御することである。このことは、Kynarホモポリマー460、1000シリーズ、700シリーズ及び370;Kynarコポリマー2500シリーズ、2750/2950シリーズ、2800/2900シリーズ、2850シリーズ、及び3120シリーズ、Solef1015、Solef21216、Solef6020、Solef3108、Solef3208、Solef8808、Solef11008、Solef11010、Solef21508、Solef31008、Solef31508、Solef32008、Solef60512、Solef1006、Solef1008、Solef1010、Solef1012、Solef1015/0078、Solef6008、Solef6010、Solef6012、Hylar301F、Hylar460/461、Hylar5000の如き異なるPVDF製品の選択により行うことが可能である。
【0019】
別の目的とするところは、付加的な弾力性及び更なる柔らかさのためにPVDF物質内に、添加剤(可塑剤としてではなく)として例えば「Viton」(登録商標)フルオロエラストマー等の少量の弗素含有エラストマー、又は例えばセバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、及びその他の「スプリング状」構造を具備する長鎖ジカルボン酸エステル等の物質を組込んだこのようなメンブレンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これら及びその他の目的のために、本発明は、第一の側面においては、広義に多孔性メンブレンを製造する方法を提供することを意図しており、その方法は、溶媒内にメンブレン形成用ポリマーの溶液を供給し、該溶液のフィルムを確立し、且つ該ポリマーに対する非溶媒を包含する液体物質を該フィルムと接触させて該溶液から溶媒を浸出させ且つ該ポリマーをゲル化させて該メンブレンを形成することを包含しており、その場合に、その改良は、形成したメンブレンにおいて少なくとも1つの予め選択した物理的特性(例えば、柔らかさ又は多孔度特性)を発現させるためにゲル化期間中に該メンブレンが露呈されるストレス即ち応力を制御することを包含している。
【0021】
重要な特定な実施例において、該ストレスを制御するステップが、ゲル化期間中に該メンブレンを圧縮ストレスに露呈させることを包含している。ゲル化期間中の圧縮ストレス(本明細書においては、メンブレンの圧縮プレストレスとしても時折言及している)はメンブレンを脆性なものではなく、ソフトで且つ柔軟性のあるものとさせ、又孔隙寸法を減少させる傾向がある。
【0022】
ゲル化期間中にストレスを制御するステップは、溶液の表面張力に関連して液体物質(即ち、非溶媒)の表面張力を制御することにより有益的に実施される。従って、該液体物質は少なくとも2つの液体の混合物とすることが可能であり、且つ該液体物質の表面張力は、該液体物質における2つの液体の相対的な割合の選択によって制御することが可能である。該液体物質が該溶液の表面張力よりも大きな表面張力を有している場合には、メンブレンはゲル化期間中に圧縮ストレス即ち応力に露呈される。該液体物質(非溶媒)の表面張力は、製造されるメンブレンの所望の柔らかさ即ち柔軟性を与えるため、同時に、満足のいく通気性(メンブレンを介しての気体の流れ)に対し充分な孔隙寸法を達成することを可能とするために、与えられた溶媒/非溶媒システムに対して選択することが可能である。
【0023】
非溶媒の表面張力が溶液の表面張力より小さい場合には、ゲル化期間中にメンブレンは引っ張り応力に露呈され(引っ張りプレストレス)、製造されるメンブレンを脆性なものとさせ、圧縮プレストレスの場合におけるよりもより大きな孔隙を有している。「ストレス緩和」という用語は、本明細書においては、引っ張りプレストレスを防止するか又は減少させるように与えられた溶媒/非溶媒システムにおいて非溶媒の表面張力を選択することを特に意味するものとして使用されている。溶媒と非溶媒とが同一の表面張力を有している場合には、ゲル化期間中にメンブレン上にストレスは存在せず、その結果、メンブレンを介しての気体の流れに対するチャンネルが接続することがない。
【0024】
本発明方法において、本明細書に記載した手順において具体化されているように、ポリマーは疎水性メンブレンを形成し、且つ溶媒及び非溶媒は混和性である。非常に好適には、そのポリマーはPVDFである。その溶液は、又、形成されるメンブレンが軽微な割合のエラストマーを含有するような量弗素含有エラストマーを包含することが可能である。該溶媒は、例えば、DMAC又はDMSOとすることが可能であり、該非溶媒は水とメタノール及びエタノールのうちの少なくとも1つとの混合物を有することが可能である。後者の場合には、非溶媒の表面張力は、メタノール又はエタノールと相対的に水の割合を増加又は減少させることにより、夫々、増加又は減少される。例えば、水とメタノール又はエタノールとの相対的な割合は、液体物質が溶媒の表面張力よりも大きな表面張力を有するものであり、それにより形成されるメンブレンをゲル化期間中に圧縮ストレスに露呈させるものとすることが可能である。
【0025】
本発明は、特定の意味において、ソフトで防水性で通気性のあるファブリックを製造する方法を包含しており、その方法は、溶媒内にPVDFの溶液を供給し、該溶液のフィルムを確立し、且つPVDFに対する非溶媒を包含する液体物質を該フィルムと接触させて該溶液から溶媒を浸出させ且つPVDFをゲル化させて多孔性の疎水性メンブレンを形成させることを包含しており、該溶媒及び非溶媒は混和性であり、該液体物質は該溶液の表面張力より大きな表面張力を有しており、従って該メンブレンはゲル化期間中に圧縮ストレスに露呈される。ある有益的な又は好適な実施例においては、該フィルムは該溶媒内に僅かに溶解するファブリック上に該溶液をコーティングさせ、それにより製造されるメンブレンを接着剤を使用することなしに該ファブリック上に固定させることによって確立される。更に、本方法は、製造される疎水性メンブレンの表面上に薄い親水性層を適用するステップを包含している。又、上述したように、弗素含有エラストマーを該溶液中に包含させることが可能であり、その場合に製造されるメンブレンは軽微な割合の該エラストマーを包含している。
【0026】
本方法の実施例において、メンブレンが60mphの風と等価な圧力における水滴に耐えるように製造されるメンブレン内に孔隙特性を与えるため、メンブレンが通常の人間の体及び大気温度において4,000と10,000g/m2/日の間の水蒸気の量を通過させることが可能であるように製造されるメンブレン内に孔隙特性を与えるため、及び/又は製造されるメンブレンにおいて100と1000nmとの間の孔隙寸法を与えるために、溶液の表面張力に関連して液体物質の表面張力が選択される。
【0027】
本発明は、更なる側面においては、小さな孔隙を具備する薄い外側スキンと大きな孔隙を有しており前記スキン下側のより厚い層とを有しているソフトで多孔性の疎水性メンブレンを提供することを意図しており、多数の空胞が前記スキンの直下に形成されており、該メンブレンは前述した方法により製造され、且つ対向した表面を具備するファブリック層を有する通気性があり防水性のファブリックを提供することを意図しており、前述した疎水性メンブレンは前記ファブリック層の1つの表面に固定されており、且つ薄い親水性層がメンブレンのスキンにわたってコーティングされている。メンブレンの機械的摺擦を防止するために該親水性層に対して緩いネット物質を取付けることが可能である。
【0028】
本発明の付加的な説明として、高い水蒸気の蒸発処理能力が高性能メンブレンに対して重要であることを理解することが可能である。従来、PVDFメンブレンはDMAC等の溶媒中に20%を超えることのない固体PVDFとメタノールアルコールの非溶媒浴を含有する溶液から構成される。該メンブレンは、通常、Michaels’024に記載されるような薄いスキン構造を有しており、それが最初に非溶媒と接触する個所の表面上に大きな孔隙直径を有している。平均孔隙直径が減少する迷路のような多孔性構造がこのスキンの下側に存在している。多孔率及び最大孔隙直径は、該溶液中の固体の量によって制御される。結果的に得られるメンブレンは疎水性メンブレンとして脱塩適用例に対して良好に動作するが、非常に固く且つ折り曲げた場合に破れる場合がある。
【0029】
本発明に通ずる発見は、溶媒と同一のDMACを具備する固体濃度を使用してPVDFメンブレンを製造することから発生したものであるが、非溶媒として温めた水を伴うものであった。これらの条件下において、メンブレンがスキン層の下側に空胞を具備する薄いスキンを形成し、且つメンブレン構造はスポンジ状で且つ圧縮ストレス下にあることが判明した。どれ程シャープに又は何回それを折り曲げるか又は丸めたとしても、それは破れることなくソフトで頑丈なままである。
【0030】
更に判明したことであるが、空胞のために、同等の最大孔隙直径でもって流量は「Millipore」(登録商標)メンブレン等の市販されているメンブレンにおけるよりも一層高い。
【0031】
然しながら、そのプロセスは簡明なものではなく、非溶媒として水を使用する場合には、圧縮応力が表面孔隙直径を約0.1ミクロンへ減少させ且つ又薄いスキン表面上の孔隙の数を減少させ、従って蒸気の流量は著しく減少される。
【0032】
本出願人に特許されているように(米国特許第4,419,242号、第4,265,713号、第4,316,772号、第4,419,187号)、疎水性層の汚染を防止するために、親水性層の薄いコーティングが必要とされる。この薄いスキン構造は、節及び繊維構造を有するGoreメンブレンよりもコーティングに対してより良いテクスチャを与える。
【0033】
更に判明したことであるが、ファブリックがPVDFに対して使用される同一の溶媒により僅かに溶解することが可能である場合には、直接的なナイフによる溶液のコーティングとそれに続く非溶媒浴内へ浸すことによって、ファブリックとPVDFメンブレンとの間に接着剤層を設ける必要性なしにメンブレンをファブリックへ固定させる。
【0034】
以下の開示は、固体濃度、溶媒のタイプ、使用される固体に関しての表面張力の制御、進出時間対厚さ、浴温度、溶液温度、乾燥温度、ベーキング時間、ベーキング温度等の全てのメンブレン製造パラメータをカバーする広範な研究作業を記載する。この調査の結果、最も高い蒸気流量においての最も小さな孔隙寸法を与えしかもファブリックの消費者に対し「手触り」感を与えるのに充分にソフトなメンブレンを形成するパラメータが確立されている。
【0035】
更に判明したことであるが、「Viton」(登録商標)フルオロエラストマー等の弗素を含有するエラストマーを使用することは付加的な弾力性を有するPVDFを提供する。「Viton」(登録商標)フルオロエラストマーはPVDFに対して使用されるものと同一の溶媒において溶解性があり、且つ凝塊した小さな塊として沈殿すること無しにPVDFと共に多孔性の構造を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は本発明の防水性で通気性のあるファブリックの1実施例の構成を例示しており、ファブリック外側層、疎水性水蒸気透過層、水の浸透を防止するために両側における小さな孔隙表面構造、及び機械的摺擦を防止するためにネット保護層(不図示)を取付けることが可能な親水性コーティングを包含している。外側層ファブリックは織った又は不織構造とすることが可能であり且つ湿潤を防止するためのコーティングを有することが可能である。薄い多孔性の下側は大きな空胞があり、それらは蒸気の透過を改善させる。
【0037】
図2はファブリックの柔らかさを測定する手段を例示している。柔らかさはファブリックの自然の垂れ下がり角度として測定される。固いメンブレンは突き出るが非常に柔らかいメンブレンは90度下側に垂れ下がる。殆どのメンブレンがこれら2つの限界の間の角度で垂れ下がる。従って、垂れ下がり角度が相対的な固さの比較を与える。
【0038】
図3は液体−固体相互作用の測定を説明する図である。左側は親水性の固体であり右側は疎水性の固体である。接触角度はθである。cos(θ)が正である場合には、その表面は疎水性であり、且つcos(θ)が負である場合には、その表面は親水性である。表面張力はヤングの式、
γ(b,s)−γ(a,s)=γ(b,a)・cos(θ)に従って計算することが可能であり、尚γ(b,s)は固体との流体(液体又は気体)の表面張力であり、γ(a,s)は空気との固体の表面張力であり、γ(b,a)は空気との流体の表面張力であり、且つθは接触角度である。
【0039】
図4は本発明のファブリックの1例の(A)PVDF層を「Gore−Tex」(登録商標)ファブリックにおいて使用されている(B)Gore「Teflon」(登録商標)メンブレンと比較した走査電子顕微鏡写真である。Goreメンブレンは節から放射する繊維の構造を有しており、サブミクロンの平均孔寸法を得るために幾つかの層が重ねられている。典型的な孔は狭く且つ隣接する繊維の間に長く横たわっている。液圧のために繊維の変位がないものと仮定すると、平均孔直径は水力直径を基礎に計算することが可能である。一方、PVDFメンブレン上の孔隙は丸く且つその水力直径は孔の実際の直径である。
【0040】
時速60マイルで移動しており且つ「Teflon」(登録商標)メンブレンに突き当たる水滴は透過するためには0.35ミクロンの孔隙直径を必要とする。PVDFの場合には、その直径は0.31ミクロンである。表面張力単位はdyne/cmである。
【0041】
図5は非溶媒として水を使用し且つ溶媒がDMACである場合の溶媒/非溶媒技術によって製造されたPVDFメンブレンの例のSEM写真を示しており、(a)メンブレンを成形した金属支持体と接触している表面、(b)多孔性媒体の内部構造、(c)最初に非溶媒と接触する表面である。
【0042】
水は非常に高い表面張力(75dynes/cm)を有しており、従って相反転プロセスは圧縮下で物質を形成させる。水銀は全てのうちで最も高い表面張力を有しているが、水銀は溶質から溶媒を引き出すためにDMACと混合することは不可能である。(b)において、多孔性メンブレンの断面であるが、強く薄いスキン層を見ることが可能である。非溶媒浴との接触が固体を表面へ牽引し且つ空胞構造を残存させ、それが後の時間に固化されている。この空胞構造は柔らかさ及び蒸気透過を改善するが、フィルタ適用に対しては望ましいものではない。(a)において、非溶媒内への溶媒の拡散プロセスの遅い劣化がより大きな表面孔隙直径を発生し且つ薄いスキン層は存在しない。良好な防水性は多孔性内部の小さな孔隙直径に依存する。
【0043】
多孔性構造が圧縮下で固化され、従ってメンブレンの曲げは、基本的に、圧縮前のストレスを解放し、そのことがメンブレンがソフトである理由である。曲げ作用期間中にどの表面も引っ張りに露呈されることがないので、メンブレンは又強靭であり且つ壊れることなく繰り返し屈曲させることが可能である。
【0044】
図6は非溶媒浴として60%の水と40%のメタノールの混合物を使用した一連のSEM写真を示しており、(a)非溶媒と最後に相互作用する所謂「マット」表面、(b)多孔性断面、(c)非溶媒混合物と最初に接触する表面である。メタノールはエーテル(17dynes/cm)以外で最も低い表面張力を有しており(18dynes/cm)、エーテルは室温において非常に高い蒸気圧を有しており、従って、混合物中のエーテルの最終的な量は精密に知ることは不可能である。低い表面張力液体としてのメタノール及び高い表面張力液体としての水でもって、濃度比を変化させることは非溶媒表面張力を制御する1つの方法を与える。このことは、圧縮からずっと引っ張りまで固化期間中にメンブレンにプレストレスを与えることを可能とする。
【0045】
図7はDMAC溶液を純粋のメタノールアルコールへ露呈させた場合のメンブレンのSEM写真を示しており、(a)マット表面、(b)多孔性構造、(c)最初に非溶媒と接触する表面である。薄いスキン層は存在しておらず且つ孔隙は比較的大きい。メンブレンの多孔性構造は引っ張り露呈され、従ってそれを曲げることは表面に引っ張り応力を付加し且つ破壊する。このメンブレンは表面上の引っ張りのためにボール紙程度に固いものである。このメンブレンは濾過適用例において有用であるがファブリック適用例には適したものではない。
【0046】
図8は溶質との疎水性及び親水性非溶媒の相互作用の間の差異を例示している。通常、固体表面上に形成する水滴が固体表面との液体の疎水性相互作用を示す。液体と固体との間の接触角度が90度より小さい場合には、その表面相互作用は疎水性であり、それが90度より大きい場合には、それは親水性である。液体中に挿入した毛細管によって教科書において一般的に説明されている。液体がその管内を上昇すると、それは親水性である(図8a)。液体が押し下げられる場合には、その管の物質は疎水性である(図8c)。接触角度及び液体が管内を上昇するか又は潜る高さ又は深さが液体と管物質との間の相互作用的表面張力の精密な尺度を与える。
【0047】
図8a及び8cは固体毛細管での液体の表面張力を測定する方法のうちの1つを例示している。親水性相互作用は液柱を毛細管内へ引き上げ且つ疎水性相互作用は液体を押し下げる。接触角度θ及び液体レベルhにおける差異が表面張力を計算することを可能とする。液柱の全重量はρghπr2である。相互作用する表面張力に起因するバランス力はγ(b,s)πdcos(θ)に等しい。従って、既知の値のdと共にh及びθを測定することによりγ(b,s)が与えられる。
【0048】
固体物質が非溶媒と接触している溶液内に溶解される場合に、その非溶媒が制限なしにその溶媒を吸収することが可能である場合には、その溶媒から固体が沈殿される。固体と非溶媒との間の拒絶力はそれらの間の疎水性反応から発生し且つゲル化期間中に固体を圧縮すべく作用する。従って、結果的に得られる固体の多孔性構造体上に圧縮プレストレスが存在する(図8d)。一方、非溶媒が親水性であり且つ沈殿された固体表面と非溶媒との間の吸引力に露呈される場合には、固体は溶質から引き離され且つ多孔性構造は引っ張り力に露呈される(図8b)。
【0049】
従って、非溶媒の表面張力を変化させることはメンブレンの多孔性構造に影響を与える。ここに例示したように判別したことであるが、PVDFに対して最も高い表面張力を有する純粋な水浴は圧縮構造及び薄いスキン及び空胞を発生させる。スキン層における最大孔隙寸法は、多孔率が高い場合であっても非常に小さい。平均孔隙寸法も小さく、そのことは低い蒸気透過を与える(与えられた圧力差においてのN2流れとして測定される)。このような物質はフィルタ適用例を有しているかもしれないが衣服用の高度に通気性のあるメンブレンとして適したものではない。その構造を図5に示してある。他方の極限においては、非溶媒浴が純粋のメタノールである場合には、メンブレン構造は引っ張りに露呈される。薄いスキンが形成されることはない。表面上の孔隙寸法は非常に大きく且つ多孔性構造は高度に蒸気に対して透過性である。1つの問題は、メンブレンが最大引っ張り状態にあり、従ってそれを僅かに折り曲げるとその表面に過剰なストレスを与え且つ破壊する場合がある。別の問題は、孔隙寸法が水滴に対する効果的な障壁としては大き過ぎるということである。大きな孔隙は、又、親水性層で被覆することが困難である。図6は中間的な場合を例示しており、その場合には、制御された非溶媒表面張力が0.3ミクロンより小さな最大孔隙寸法を発生するが未だに高度に多孔性であり、N2流れによって測定される透過率は純粋メタノール浴において製造される物質の約55乃至60%であるが、純粋な水浴内で製造されたものと同等の孔隙寸法を有しており(然しながら、表面上により多くの孔隙を有している)、純粋水浴メンブレンの場合におけるよりも何倍も大きなN2流量を与える。従って、本発明においては、「制御された表面張力非溶媒浴」の特徴で例示され、その場合にPVDF固体が沈殿して良好な流量及び300ナノメータより大きくない孔隙寸法を具備し且つファブリック適用のために良好な「手触り」を与えるのに充分なソフトなメンブレンを形成する。
【0050】
図9(a)は多孔性メンブレンに対する溶媒/非溶媒ゲル化プロセスに対するMichaels’024からの古典的な相線図である。このプロセスはポイントAにおけるポリマー溶媒溶液でスタートする。これを非溶媒内に浸漬させると、そのプロセスはA−Bのラインによって示した経路を追従する(その詳細は拡散率及び非溶媒の特性に依存する)。Bにおいて、該混合物は境界に到達しそこでそれは二相となり(液体及びゲル)且つ多孔性構造となる。次いで、該混合物のゲル部分がBからDへ移動し、そのポイントにおいて、濃度限界に到達しているので該ポリマーは最早溶媒内に溶解することは不可能である。液相はBからGへ移動する。
【0051】
図9(b)は3次元相平衡状態図としての溶媒/非溶媒プロセスの完全なる関係を例示している。溶媒及びポリマーの溶液に関する非溶媒の表面張力が多孔性構造に影響を与える。基本的に、それは平衡面としてMichaelsの状態図を使用しており、且つ非溶媒の表面張力が溶質表面張力よりも低い場合には上方へ傾斜され、孔隙寸法はより大きく且つメンブレンは引っ張り下にあり且つ固く硬質なものとなる。一方、非溶媒の表面張力が溶液表面張力よりも大きい場合には、Michaelsの三角形は下方向へ投影され、メンブレンは圧縮下となり、従って孔隙は通常より小さく且つ物質はよりソフトである。
【0052】
図10は、DMACにおける固体濃度、溶質温度、水温度、及び純粋なメタノールから純粋な水への水とメタノールとの混合物を変化させることによって得られたデータの寄せ集めである。最大孔隙寸法N2流量は15psidの一定の圧力差において測定してある。必要性に依存して、メンブレンは高度に防水性で且つソフトなものとすることが可能であり、又は高いN2流量を有し且つ防水性がより少なく且つ固いものとすることが可能である。寄せ集めたデータは単に例示的なものとして使用してある。
【0053】
以下の表において、表1はPVDFを溶解させるために使用することが可能な溶媒のリストを与えている。表2は非溶媒の例とそれらの表面張力である。これらはPVDFに対する非溶媒として使用することが可能であるが溶媒内においても良好に溶解する。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
図11は非溶媒浴温度の関数としての最大孔隙寸法及びN2流れの編集したものである。水の表面張力は温度に逆比例することが知られている。温度は、又、平均分子運動の尺度であり、低温は低い平均分子運動を意味し従って拡散を遅滞化させる。このことはMichaels’024における記載と対比される。
【0057】
図12は左側のPVDFメンブレン上のPVA(ポリビニルアルコール)コーティングと右側のコーティング無しとの比較である。この写真は、蒸気の透過が最大孔隙寸法によって影響されるばかりでなく、表面上及び多孔性構成体の多孔率の関数でもあることを例示している。PVAコーティングは孔隙の開口を被覆し且つより高い破裂強度を有しており、そのことは、更に、該メンブレンの実際的な防水性を増加させる。最善の性能は300ナノメータの最大孔隙寸法において発生しているものと思われる。又、Goreメンブレンの不規則な孔隙と異なり、これらの孔隙は丸いものであることを理解することが可能である。
【0058】
図13はファブリックの断面を示しており、それはPVDF多孔性層を有しており、その中に大きな空胞が埋め込まれていて拡大された表面を形成しており且つPVA親水性コーティングが設けられている。これは製造することが可能な1例に過ぎない。
【0059】
図14は非溶媒浴内におけるメンブレンゲル化期間中の浸漬時間の効果を示している。ゲル化は拡散プロセスであり、その場合に溶媒が溶質から引き出されてゲルを残存させてメンブレンを形成する。これは、浸漬時間が最終的な多孔性構造に影響を与えることを示している。この例においては、該プロセスは非溶媒が片側から溶液に浸透することを許容するに過ぎない。ファブリック上のコーティングの場合には、非溶媒は両側から入る場合があり、従って浸漬時間は半分になる。より薄いコーティングも拡散時間を節減させる。最後に、対流条件下では浸漬時間が著しく減少されるという点において物質の移動は伝熱と類似している。
【0060】
図15(a),(b),(c)及び図16は非溶媒浴内において純粋な水から純粋なメタノールへ変化する水とメタノールの異なる混合物に対しての与えられた固体濃度(図15においては15%、図16において20%)に対してのN2流れの典型的な例である。純粋な水を使用した場合に得られる0.1ミクロン直径未満の結果的に得られる小さな孔隙寸法は、高い水に対する抵抗性を与えるが、差圧下でのN2流れはより遅い。然しながら、それは非常にソフトである。純粋なメタノールで水がない場合には、孔隙寸法は1.0ミクロンに近付き且つN2流れは高いがメンブレンは引っ張り下にあり、従って、壊れ易い。プロット中においてほぼ中間に示したように、最大の孔隙寸法は約9.3ミクロンであり且つ未だに高いN2流れが存在している。溶媒と非溶媒との中間混合物で製造したファブリックは妥当な弾性を有している。
【0061】
上の図から、高い表面張力の非溶媒が低い表面張力へ向かって行くことの効果(図9(b)に記載してある)、孔隙寸法を増加させ且つ多孔率密度を減少させる(増加された窒素の流量により示されるように)ことを理解することが可能であり、スキン層とのメンブレン内への遷移点において孔隙寸法及び窒素流量において顕著な窪みが存在している。この点を超えて、より大きな孔隙寸法及び窒素流量へ戻る。この窪みは図9(b)に例示したようにほぼ溶質表面張力において発生している。又、溶液を準備する場合にメモリ効果が関与することも興味のあることであり、即ち溶液がより高い温度(例えば56℃)において用意された場合には、室温において行われたとしてもキャスティングは33℃において用意した溶液からのものよりもより小さな孔隙寸法を有している。より高い非溶媒浴温度は孔隙寸法及び多孔率を変化させ、非溶媒内への溶媒の拡散率を浴温度によって制御することが可能であることを表わしている。高い固体含有率においては、該窪みは溶媒表面張力に対してより近くに発生し且つその窪み効果はより顕著でなくなる。
【0062】
バブルの周りに形成する壁は蒸気又は窒素ガスが流れることを可能とするために破壊せねばならない。非溶媒及び溶液が同じ表面張力を有している場合には、引っ張り力によって又は圧縮力によってのいずれかによりウエブを引き離す力は存在せず、連通することのない完全なバブル構造となる。
【0063】
図17はファブリックコーティングマシンの典型的な構成を例示している。それは溶媒の濃度勾配が存在するように対流非溶媒浴をセットアップするために物質移動技術を使用している。溶媒の含有量は非溶媒浴の入口において高く且つ溶媒浴の出口端において低いか又は溶媒は存在しない。PVDF及び「Viton」(登録商標)フルオロエラストマーに対する低表面張力溶媒は迅速な溶媒拡散及びすぐさまのゲル化を防止することが可能である。非溶媒がコーティングされたフィルムに浸透するに従い、非溶媒混合物内の溶媒含有量が一定の割合で減少し、従って多孔性構造が可及的に一様のままに止まることが望ましい。拡散率を制御することにより、メンブレン及び最終的なファブリックの孔隙寸法、多孔率及び柔らかさを制御することが可能である。
【0064】
この簡単化した図は溶媒の高い濃度が存在する端部において非溶媒浴内へのコーティングしたファブリックの入口を示しており、これは非溶媒浴(時折デベロッパー浴と呼ばれる)の排出により制御され、且つ純粋な非溶媒が他方の端部においてデベロッパータンクへ添加され、そこでコーティングされたファブリック又はメンブレンがデベロッパータンクから取り出され且つ乾燥トンネル内へ移動する。純粋な非溶媒液の量はタンクの液体レベルを一定に維持するためにモニタされる。例えば、非溶媒がメタノールである場合には(それは非常に低い表面張力を有している)、それはファブリック出口においてデベロッパータンクへ入り、且つ溶媒がDMACである場合には、それは拡散によりメタノールと混合される。高い濃度のDMACはその場所において非溶媒の表面張力を増加させ、従ってその表面張力は純粋なメタノール液体よりもより高く、従って結果的に得られる多孔性メンブレンはより低い引っ張り応力を有しており且つより小さな孔隙寸法を有するものであって且つよりソフトである。
【0065】
別の例として、非溶媒が純粋な水である場合には、コーティングしたフィルムがデベロッパータンクへ入る場所において、比較的高い濃度を有する溶媒(例えば、DMAC)は水の表面張力を低下させ、従って、メンブレン表面における圧縮応力を低下させ、従って非常に小さな孔隙を有する非常に緻密なスキン表面を形成することはなく、その代わりに、高い多孔率を有する中程度の孔隙直径を有している。該メンブレンは、尚且つ、衣服の目的のために適切な程度の柔らかさを有している。
【0066】
図17において、151はファブリックのロールであり、152はコーティングされるべき引っ張り状態にあるファブリックである。153はナイフコーターであり且つ154は非溶媒タンク即ちデベロッパータンクである。155は非溶媒液内に浸漬された引っ張り状態にあるコーティングしたファブリックを案内する多数のローラーであり、156はファブリックの流れと反対方向における非溶媒流れを案内する多数のバッフルであり、157は非溶媒供給部であり、且つ158は溶媒回復プロセスである。
【0067】
新規なPVDFメンブレン製造方法は、曲げられた場合に引っ張り応力に露呈されることがなく、従って破壊することがないように僅かに圧縮モードでストレスがかけられ、関節型の壁なしでスポンジ状の構造を具備し水滴直径においてナノメータ範囲から10ミクロンの制御された孔隙寸法を有するように構成されている。
【0068】
該スポンジ構造は、高度に蒸気透過性であるように50%を超えて空とすべきである。メンブレンの出口側における薄いスキンの下側において、本構造は大きなポケットを有しており、それはその実効面積を増加させ、従って高度に水蒸気に対して透過性である。この薄いスキンは液体の水の浸入を防止する。「Gore−Tex」(登録商標)物質と異なり、本メンブレンは直接的にファブリック上にコーティングされており且つそれに接着されているものではない。それは、又、よりソフトである。薄い親水性層が本願出願人の前の米国特許第4,419,187号、第4,476,024号、第4,419,242号、第4,265,713号、第4,316,772号に記載されているようにPVDFメンブレン上にコーティングされており、且つ、オプションとして、その上にネット保護層が設けられている。
【0069】
従来の溶媒/非溶媒メンブレンの製造は、Michaels’024の図1に示されている教示に従うものである。成功するメンブレンの製造は、溶媒中の固体の濃度と非溶媒により除去される溶媒の百分率との間の関係にある。該溶媒は1つを超える液体を混合物とすることが可能である。該非溶媒は該溶媒と非常に混和性があるものが選択され、強い相互拡散係数を有している。
【0070】
Michaels’024によって対処されていなかったことは、溶媒/非溶媒の割合及び固体溶液と相対的な非溶媒の表面張力である。
【0071】
典型的に、非溶媒はメタノール又はエタノールであり、それらはPVDFに対して親水性である。該溶媒はDMAC又はMDSO等の有機化合物である(表1参照)。固化プロセスが迅速に溶媒を引っ張り出し(浸出プロセス)、従って表面層の上に孔隙が形成する。その多孔性構造を引っ張り力の下でストレスをかけ、その結果より大きな孔隙直径を具備する強いが脆性のメンブレンが得られる。
【0072】
非溶媒が水である場合には(それはPVDFに関して高度に疎水性である)、固化プロセスが溶媒を除去し且つ圧縮下において多孔性構造とさせる。小さな孔隙寸法及び蒸気浸透表面積を拡張する空胞を下側に具備するスキン層が形成される。該多孔性構造の残部は圧縮下にあり、従ってメンブレンが折り曲げられた場合に、圧縮応力を解放させ且つメンブレンはソフトで且つしなやかとなる。溶媒と非溶媒との間の拡散率は、温度依存性であり且つ固体濃度依存性であることが判明している。結果的に得られるメンブレンは構造が密であり且つ多孔性ではない。
【0073】
更に発見されたことであるが、該プロセスはPVDF溶液に対して非溶媒混合物の表面張力が圧縮から引っ張りまでずっとメンブレン構造上に種々の程度のストレスを加えるように、メタノール又は別の親水性非溶媒を水又は別の疎水性非溶媒と混合することによって制御することが可能である。更に、固体濃度、溶質温度及び非溶媒表面張力及び温度を変化させることにより、孔隙寸法及び柔軟性を顧客により特定されるように制御することが可能である。このことは「Teflon」(登録商標)ePTFE構造におけるよりも良い通気性及びより良い防水性を具備するPVDFメンブレンを製造することを可能とする。
【0074】
本発明は、更に、以下の仮定的な例により例示される。
【0075】
例1
10%乃至20%固体含有の範囲におけるPVDF粉末を表1にリストした溶媒のうちの1つと混合容器内において溶解される。PVDFは粉末形態にある。撹拌機構を具備する容器のカバーの下で粉末状に溶媒を添加することはこの混合を実施することとなる。該溶液は何等の固体粉末が見えなくなるまで完全に拡散されるべきである。該溶液は、通常、ファインメッシュを介してフィルタさせ、次いで、真空ポンプにより脱ガス容器内へ引っ張り込まれる。次いで、空気が流入され、そのことは該容器を圧縮させる。真空下においての液体表面の上昇がなくなるまで(脱ガスのために)このプロセスを繰り返す。
【0076】
予め混合した溶液は、湿気が入り込むのを回避すべく密封して維持される場合には、かなり良好な在庫寿命を有している。
【0077】
ファブリックをコーティングすべき場合には、ファブリックを予めクリーニングし且つ全ての粒子及び飛び出している不所望の微細な繊維を除去する。そのファブリックをコーティングすべきナイフコーティング装置上に装填する。PVDFの溶液をナイフコーターへ供給し、その際にファブリックをそれを介して牽引する。ファブリックを予め決定した厚さへコーティングさせ、そのことは自動制御することが可能である。コーティングされたファブリックは、次いで、非溶媒溶液内へ浸漬させる。ファブリックは溶媒の殆どを完全に除去するのに充分に長い間浸漬させ、次いで、引っ張り状態で乾燥チャンネル内へ供給する。その後に、親水性コーティング、ネット構造、又は「Scotchgard」(登録商標)等の撥水剤のスプレイオンの付加等の更なる処置のための準備がなされる。次いで、ファブリックを配送又は格納のために巻き上げることが可能である。
【0078】
例2
非溶媒が水であり且つ溶媒が、例えば、DMSO又はDMACである。これは非溶媒の表面張力の減少、従って溶液からの溶媒の拡散率の減少を発生させる。
【0079】
例3
ファブリックを溶媒の含有率が高い非溶媒浴の端部において供給する。それがデベロッパータンクの他方の端部に到達するまでに、溶媒濃度はほぼセロであり、従って全ての溶媒がファブリックから除去される。次いで、該ファブリックを乾燥テント内へ供給して全ての非溶媒を除去する。溶媒含有率はタンクのファブリック供給端部からの排液によって制御される。
【0080】
経験が示すところによれば、ファブリックが高度に疎水性の非溶媒浴を介して供給される場合には、ゲル化期間中における多孔性構造の圧縮力が収縮を発生するために、それは強い圧縮下にある。それがゲル化されると、何等かの損傷なしでシワの入った表面を引き伸ばすことは不可能である。
【0081】
非溶媒浴が親水性である場合には、ファブリックの緊張が取除かれた場合に多孔性構造がその応力を緩和させることが可能であるようにファブリックはいまだに充分に高い緊張を必要とする。
【0082】
本発明の好適実施例は、非溶媒表面張力及び溶媒中に溶解している疎水性物質の固体の濃度を使用して、疎水性多孔性メンブレン又はファブリック上のコーティングした層を製造する方法である。非溶媒の表面張力は柔らかさの制御のために、多孔性構造における最大孔隙直径、孔隙率及びプレストレスを制御するために使用される。1つの可能性は、表面張力制御のための手段として高い表面張力の水と混合した低い表面張力の溶媒を使用することである。別の方法は、殆どの液体がより高い温度においてより低い表面張力を有しているので、デベロッパー浴温度を制御することによるものである。
【0083】
本プロセスにおける別のステップは、ゲル化プロセス期間中に溶質からの溶媒の拡散率を制御する溶媒濃度勾配を確立するようにインシチューで非溶媒と混合することにより溶質及び固体の溶液から溶媒を浸出させることである。このことは孔隙率を一定に維持する。
【0084】
PVDFを疎水性物質として使用して、最大孔隙直径が0.05乃至0.1ミクロンの範囲内に入るようにこのプロセスを制御することが可能である。溶液中の固体濃度を変化させることにより、その他の所望の孔隙直径を得ることも可能である。
【0085】
結果的に得られるメンブレンが種々の精度のプレストレス及び圧縮力の下にあるようにPVDFメンブレンを高い水の濃度非溶媒液中において成長させ、そのことは、どのようにメンブレンをソフトとさせるかである。
【0086】
溶媒中の固体濃度は10%乃至25%へ変化させることが可能であり、その結果、孔隙率は所望により変化させることが可能である。
【0087】
多孔性構造を一様なものとさせるために、溶媒の一定の拡散率が必要とされる。非溶媒浴温度は12.5%乃至17%の固体濃度の充分なる余裕で一様な小さな孔隙を製造させるために低いものとすべきである。
【0088】
孔隙の汚染を発生することなしに親水性コーティングを適用することが可能であるように孔隙は可及的に丸いものとすべきである。
【0089】
60mphの雨滴速度で防水性であるために、最大PVDFメンブレン孔隙寸法は0.3ミクロン未満とすべきである。
【0090】
100mph雨滴速度に対して防水性であるために、最大孔隙寸法はPVDFメンブレンに対して0.15ミクロンとすべきである。
【0091】
本メンブレンの通気性は少なくとも4,000g/m2/日より大きなもの、好適には5,800g/m2/日乃至15,000g/m2/日の範囲内とすべきである。
【0092】
コーティングしたファブリックとして、通気性は3,600g/m2/日より大きなものとすべきであり且つ100psia静圧において防水性であり且つ米国陸軍ユニフォーム仕様に合格するのに充分にソフトなものとすべきである。最善の性能のファブリックとして、防水性は60mph雨滴速度より良いものであり且つ通気性は6000g/m2/日を超えるものとすべきである。
【0093】
「Teflon」(登録商標)樹脂の代わりにPVDF及びその他の疎水性プラスチックから構成される疎水性メンブレンは以下に記載するような多くの適用例を有している。
【0094】
1.PVDFメンブレンの最も大きな利点のうちの1つは、防水性及び通気性のパーティションを与えるために異なる形状に成形させることが可能であるということである。特に、それは、皮膚の傷を手当てするための人工皮膚として使用することが可能である。殆ど包帯は傷が呼吸するために綿のチーズクロスパッド外側に小さな孔を有している。それは、患者が大きな皮膚面積を損傷した場合例えば火傷の患者の場合には問題である。第一に、手当ては傷口に引っ付くものではない。何故ならば、手当てを代えることは非常に苦痛な経験となる場合があるからである。第二に、付加的な腫れ無しで自然に適切な治癒が行われるようにその区域は水が蒸発することを可能とすべきである。該人工皮膚は異物が不意に傷付けられた表面に触ることを防止することが可能であり、従って病原菌が蓄積することを防止することが可能である。体の傷付いた表面は非常に異常な輪郭を有している。「Teflon」(登録商標)メンブレンは予め製造されねばならず、ある輪郭に適合するのには困難である。上述した溶媒/非溶媒メンブレン製造プロセスの場合には、PVDFとの溶媒のコーティングを皮膚へ適用することが可能であり且つ非溶媒、好適には水ですぐさま洗うことが可能である。該溶媒は毒性のないものとすべきであり、例えば
DMSOであり、最も適切な非溶媒は水である。DMSOは非常に高い拡散率で人間の皮膚を浸透する。時々、薬剤とDMSOとの混合物が、その薬剤が注射なしで体に沁み込むことを可能とするために使用される。DMSOの副作用のうちの1つは、患者がすぐさま口内においてニンニクの味がするということである。このプロセスが非常に迅速に実施され、且つ患者が大量の水を飲む場合には、DMSOは体から排出される。DMSOは、一時期、関節炎の患者において関節の腫れを減少させることに役立つものと考えられた。この火傷した皮膚の上にインシチューで形成する人工皮膚は折れた骨の上のギプス包帯のようなものである。体温が微小孔隙から水を追い出し且つ疎水性のメンブレンを残す。
【0095】
2.その疎水性の性質のために、PVDF多孔性メンブレンは、例えば、自動車エンジンのエアーインテークフィルタとして、又はより適切には小型航空機エンジン用のエアーインテークフィルタとしてのエアーフィルタにおいて使用することが可能である。このメンブレンは不織紙バッキングを有しており、滴状での水がインテークマニフォールド内に入ることを許容することはない。
【0096】
3.薄い紙のバッキング上のPVDFのエキストラに薄いコーティングは、患者のベッド周りの病院において使用される布カーテンを置換させることが可能である。このことは親水性表面に取り付く傾向のある病原菌による汚染を減少させる。薬剤又はその他の流体により汚された場合には、そのカーテンを捨てることが可能である。
【0097】
4.このPVDFメンブレンは、超音波を使用して縫い付けることが可能であり、そのことは「Teflon」(登録商標)メンブレンの場合に言えることではない。水で充填されたPVDFメンブレンバッグは、パッケージの湿気含有率を維持するために使用することが可能である。ある食品製品は、パッケージを乾燥状態に維持し且つ食品をパリッとした状態及び味の良い状態に維持するために乾燥剤を有している。一方、湿気雰囲気に維持されることを必要とする食品も存在している。例えば、パン及び生鮮フルーツはそれらをフレッシュで湿気た状態に維持するためにPVDFから作られた密封した水で充填したバッグから利点が得られる。その他の例は長距離配送するために花をパッケージングすることであり、水が多過ぎると荷物は重過ぎ、湿気が充分でないと花は枯れてしまう。同様の考慮事項がエキゾチックなフルーツ及び野菜に適用する。
【0098】
5.本メンブレンは、徐放性薬剤パッチをパッケージするために使用することが可能である。薬剤及びその溶媒に基づいた化学物質と相互作用することのない物質を見つけることは困難である。溶媒に基づいた化学物質がPVDFと相互作用することがない限り、問題は存在しない。幸運なことに(表1参照)、PVDFを溶解する化学物質の数は非常に制限されている。
【0099】
上の例は可能な適用例のうちの全てのうちの2,3のものに過ぎない。この製品は上述した例の適用例に制限されるものではない。
【0100】
高度に通気性があり且つ防水性のファブリックは雨具、運動用衣服、靴のカバリング、帽子等にとって望ましいものである。疎水性物質としてPVDFを使用するソフトで多孔性であり且つ防水性のファブリックを製造するための幾つかの試みがなされたが、それらは成功しなかった。本発明は、何年ものデータの編集に基づいて、孔隙直径、孔隙率及び柔らかさを制御することを可能とする。メンブレンをソフトにさせるためにPVDFへフルオロエラストマーとして「Viton」(登録商標)を添加することが可能であるが、「Viton」(登録商標)エラストマーは非常に高価であり、従って正しい非溶媒浴表面張力と僅かな又は全くない「Viton」(登録商標)エラストマーとの組み合わせを使用すべきである。必要とされる柔らかさの程度に依存して、例えばセバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチルのような「スプリング状」構造を具備する長鎖ジカルボン酸エステル等のその他の可塑剤を使用することが可能であり、それらはPVDFの疎水性特性を非常に劣化させることはない。このことは、防水性で且つ高度に通気性があり、高品質のファブリックであるのに充分な柔らかさがあるが「Teflon」(登録商標)に基づいたファブリックよりも著しく廉価な理想的なファブリックを提供する。「Teflon」(登録商標)物質は、PVDFよりもより低い表面張力を有しているという点において僅かな利点を有しているが、どの溶媒も「Telfon」(登録商標)樹脂を溶解することは出来ず、従ってそれは物理的な手段によって、従って、高コストで製造されねばならない。PVDFファブリックは、製造するコストがより低いばかりでなく、「Teflon」(登録商標)に基づいたファブリックより性能が良い。その理由のうちの1つは、上述したように、本発明は、孔隙寸法範囲及びファブリックの柔らかさについての全体的な制御を可能とすることである。又、「Teflon」(登録商標)に基づいたファブリックは、最終的なファブリック構造を積層するために接着剤を使用せねばならない。PVDFのメンブレンゲル化期間中におけるプレストレス制御が所望の最終的な製品を与える。
【0101】
要するに、本発明は、就中、溶媒/非溶媒プロセスを使用してPVDF又は同様の比較的不活性なプラスチックからメンブレンを製造する方法を提供しており、その場合に、孔隙寸法及びその他の構造的な特性を溶媒/非溶媒濃度、キャスティング浴温度、溶媒/非溶媒浴温度、固体割合及び浴時間等のパラメータを変化させることにより制御することが可能であり、且つ少量の添加物(「Viton」(登録商標)フルオロエラストマー)を弾力性を改善するために添加させることもさせないことも可能である。本発明方法は、衣服にとって適切なソフトなファブリックを製造することが可能である。それは媒介物としての接着剤を必要とすることなしにファブリック上に直接的にコーティングさせることが可能であり、及び/又は縫い合わせることも可能な疎水性メンブレンを製造することが可能である。60mphの風と等価な圧力における水滴に耐えることが可能であり、通常の人間の体及び大気温度において4,000g/m2/日と10,000g/m2/日の間の水蒸気の量を通過させることが可能であり、且つ100nmと1000nmとの間の孔隙寸法を有している疎水性メンブレンを製造することが可能である。更に、本発明方法により、高度に疎水性であるが、メンブレンの通気性に影響を与えることがないが防水性を改善する非常に薄い親水性の層で被覆したメンブレンを製造することが可能である。
【0102】
理解すべきことであるが、本発明は本明細書に特に記載した特徴及び実施例に制限されるべきものではなく、その精神から逸脱することなしにその他の態様で実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の防水性で通気性のあるファブリックの例示的実施例を示した断面図。
【図2】柔らかさの尺度を例示した概略図。
【図3】固体表面上の液体の疎水性及び親水性特性の尺度を例示した概略図。
【図4】(a)及び(b)は、夫々、本発明のPVDFメンブレンの1例とGore「Teflon」(登録商標)ePTFEメンブレンの走査電子顕微鏡(SEM)写真。
【図5】(a),(b),(c)は溶媒としてDMACを非溶媒として水を使用した15%固体濃度でのPVDFメンブレンのSEM写真であり、(a)はそのメンブレンの固体表面側であり、(b)は断面であり、(c)は表面層である。
【図6】(a),(b),(c)は非溶媒としての60%の水と40%のメタノールでのDMAC溶媒内の15%の固体でのPVDFメンブレンのSEM写真であり、(a)はそのメンブレンの固体表面側であり、(b)は断面であり、(c)は表面層である。
【図7】(a),(b),(c)は非溶媒として0%の水と100%のメタノールでのDMAC溶媒中における15%の固体でのPVDFメンブレンのSEM写真であり、(a)は表面層であり、(b)は断面であり、(c)はそのメンブレンの固体表面側である。
【図8】固化期間中の溶質と相互作用する非溶媒表面張力を示した概略図(均一に溶解した固体を具備する溶媒)。
【図9a】溶媒と、非溶媒と、ポリマーの相互作用を示した多孔性メンブレンを製造するためのMichael’024溶媒/非溶媒方法のゲル化プロセスに対する相線図。
【図9b】図9aの相互作用に加えて相互作用表面張力とプレストレス制御とを示した本願において記載したゲル化プロセスの相線図。
【図10】混合物の表面張力を制御するファクタ及びその最大孔隙直径及び孔隙率に与える影響(与えられた圧力差においてのN2流量により測定)に関するデータのグラフィック編集。
【図11】メンブレン最大孔隙寸法及び孔隙率に関しての非溶媒浴温度の影響を示したグラフ。
【図12】親水性コーティングとしてPVAでコーティングしたPVDFメンブレンの複合構造を例示した顕微鏡写真。
【図13】メンブレン表面積を拡張する手段としての空胞を示した顕微鏡写真。
【図14】非溶媒浴内における静的浸漬時間の孔隙寸法に与える影響を示したグラフ。
【図15】(a),(b),(c)は100%の水(高い表面張力)から100%のメタノール(低い表面張力)への水とメタノールの割合を変化させることにより制御される非溶媒表面張力を有する第一表面上の最大孔隙寸法(N2流量により測定)の変化を示した各グラフ。
【図16】(a),(b),(c)は100%の水(高い表面張力)から100%のメタノール(低い表面張力)への水とメタノールの割合を変化させることにより制御される非溶媒表面張力を有する第一表面上の最大孔隙寸法(N2流量により測定)の変化を示した各グラフ。
【図17】溶媒含有率が非溶媒浴の入口において高く且つ該非溶媒浴の出口端部において低い(又は溶媒が存在しない)ように溶媒の勾配濃度が存在するように対流非溶媒浴を構成するために物質の移動技術を使用したファブリックコーティング装置の典型的な構成の高度に簡単化した概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性メンブレンを製造する方法において、溶媒内にメンブレン形成用ポリマーの溶液を供給し、前記溶液のフィルムを確立し、且つ前記ポリマー用の非溶媒を包含する液体物質を前記フィルムと接触させて前記溶液から溶媒を浸出させ且つ前記ポリマーをゲル化させて前記メンブレンを形成することを包含しており、形成されるメンブレンにおいて少なくとも1個の予め選択した物理的特性を発現させるためにゲル化期間中に前記メンブレンが露呈されるストレスを制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、前記少なくとも1個の予め選択した物理的特性が柔らかさ又は孔隙率特性である方法。
【請求項3】
請求項1において、前記ストレスを制御するステップが、前記メンブレンをゲル化期間中に圧縮ストレスへ露呈させることを包含している方法。
【請求項4】
請求項1において、前記ゲル化期間中にストレスを制御するステップが、前記液体物質の表面張力を前記溶液の表面張力に関連して制御することを包含している方法。
【請求項5】
請求項4において、前記液体物質が少なくとも2つの液体の混合物であり、且つ前記液体物質の表面張力が前記液体物質における前記2つの液体の相対的な特性の選択により前述した如くに制御される方法。
【請求項6】
請求項4において、前記液体物質が前記溶液の表面張力より大きな表面張力を有しており且つ前記メンブレンをゲル化期間中に圧縮ストレスに露呈させる方法。
【請求項7】
請求項1において、前記ポリマーが疎水性メンブレンを形成する方法。
【請求項8】
請求項7において、前記溶媒及び前記非溶媒が混和性である方法。
【請求項9】
請求項7において、前記ポリマーがPVDFである方法。
【請求項10】
請求項9において、前記溶液が、更に、弗素を含有するエラストマーを包含しており、その量は形成されるメンブレンが軽微な割合の前記エラストマーを含有するものである方法。
【請求項11】
請求項9において、前記溶媒がDMAC又はDMSOである方法。
【請求項12】
請求項9において、前記非溶媒が水及びメタノールとエタノールとからなるグループから選択した少なくとも1つの液体の混合物を有している方法。
【請求項13】
請求項12において、前記液体物質における水及び前記1つの液体の相対的な割合が、前記液体物質が前記溶媒の表面張力よりも大きな表面張力を有するようなものであり、それにより形成するメンブレンをゲル化期間中に圧縮ストレスに露呈させる方法。
【請求項14】
請求項13において、前記溶媒がDMAC又はDMSOである方法。
【請求項15】
ソフトで防水性で通気性のファブリックを製造する方法において、溶媒内にPVDFの溶液を供給し、前記溶液のフィルムを確立し、且つPVDF用の非溶媒を包含する液体物質を前記フィルムと接触させて前記溶液から溶媒を浸出させ且つPVDFをゲル化させて多孔性疎水性のメンブレンを形成することを包含しており、前記溶媒及び非溶媒が混和性であり、前記液体物質が前記溶液の表面張力より大きな表面張力を有しており、前記メンブレンがゲル化期間中に圧縮ストレスに露呈される方法。
【請求項16】
請求項15において、前記フィルムが前記溶液を前記溶媒において僅かに溶解するファブリック上にコーティングすることにより確立し、それにより接着剤を使用することなしにファブリック上に製造したメンブレンを固定させる方法。
【請求項17】
請求項15において、更に、製造した疎水性メンブレンの表面上に薄い親水性層を適用するステップを包含している方法。
【請求項18】
請求項15において、弗素を含有するエラストマーが前記溶液内に包含されており、且つ製造されるメンブレンが軽微な割合の前記エラストマーを含有している方法。
【請求項19】
請求項15において、前記液体物質の表面張力が、前記溶液の表面張力と関連して、前記メンブレンが60mphの風に等価な圧力における水滴に耐えるように製造されるメンブレン内に孔隙特性を与えるべく選択されている方法。
【請求項20】
請求項15において、前記液体物質の表面張力が、前記溶液の表面張力と関連して、前記メンブレンが通常の人間の体及び大気温度において4000と10000g/m2/日の間の水蒸気の量を通過させることが可能であるように製造されるメンブレン内に孔隙特性を与えるべく選択されている方法。
【請求項21】
請求項15において、前記液体物質の表面張力が、前記溶液の表面張力と関連して、製造されるメンブレンにおいて100と1000nmの間の孔隙寸法を与えるべく選択されている方法。
【請求項22】
請求項15において、前記非溶媒が、製造されるメンブレンにおいて少なくとも1つの予め選択した物理的特性を発現するための圧縮ストレスを与える相対的な割合において水及びメタノールとエタノールのうちの少なくとも1つの混合物を有していることを特徴とする方法。
【請求項23】
ソフトで多孔性の疎水性メンブレンにおいて、小さな孔隙を具備する薄い外側スキン及び前記スキン下側の大きな孔隙を具備しているより厚い層を有しており、多数の空胞が前記スキンの直下に形成されており請求項3の方法によって製造されているメンブレン。
【請求項24】
通気性で防水性のファブリックにおいて、対向した表面を具備しているファブリック層、前記ファブリック層の1つの表面へ固定されており請求項23において定義される疎水性メンブレン、及び前記スキンにわたりコーティングされた薄い親水性層、を有しているファブリック。
【請求項25】
請求項24において、更に、前記メンブレンの機械的摺擦を防止するために前記親水性層に取付けた緩いネット物質を包含しているファブリック。
【請求項26】
請求項25において、前記メンブレンが軽微な割合の弗素を含有するエラストマーを包含しているファブリック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−526350(P2007−526350A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517435(P2006−517435)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/019600
【国際公開番号】WO2004/112934
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505468026)
【氏名又は名称原語表記】Cheng, Dah Yu
【Fターム(参考)】