説明

多孔性強塩基性アニオン交換体及びその製造方法

【課題】 新規な、耐熱性に優れた多孔性強塩基性アニオン交換体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 スチレン系重合体において、4級アンモニウム塩基を有する構造単位及び不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有し、比表面積が1〜500m/gであることを特徴とする多孔性強塩基性アニオン交換体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な多孔性強塩基性アニオン交換体及びその製造方法に関し、詳細には、耐熱性に優れた多孔性強塩基性アニオン交換体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔型のイオン交換樹体としてはスチレンとジビニルベンゼンの共重合体から製造した物が知られている。特許文献1や特許文献2では、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体を重合する際に多孔化剤としてtert−アミルアルコールを共存させ共重合体を得た後、アニオン交換基、カチオン交換基を導入してイオン交換体を得ている。この際に使用されるモノマー、多孔化剤の種類は多数挙げられているが、多孔質体を形成させるに当たり多孔化剤を選択する指標が明解には示されていない。このため、多孔質型のイオン交換体を得ようとするときには試行錯誤の上で多孔化剤の種類を選択する必要があった。
【0003】
一方、特許文献3および特許文献4には耐熱性を有する強塩基性アニオン交換体が記載されているが、ここで実際に製造されているのはゲル型のみであり、これらの樹脂について多孔化する場合に使用できる多孔化剤については何の示唆もなされていなかった。
【特許文献1】米国特許第4256840号公報
【特許文献2】米国特許第4501826号公報
【特許文献3】特開平4−349941号公報
【特許文献4】特開平7−289912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、多孔性を有し、かつ、耐熱性に優れたアニオン交換体が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、耐熱性を有する強塩基性アニオン交換体を多孔化する際に使用可能な多孔化剤について検討を行った結果、上記請求項2に記載の多孔化剤によれば、耐熱性を有し、かつ、多孔化された強塩基性アニオン交換体が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、下記一般式(I)で表される4級アンモニウム塩基を有する構造単位及び不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有し、比表面積が1〜500mgである多孔性強塩基性アニオン交換体、
【0007】
【化3】

【0008】
(一般式(I)中、Aは炭素数3〜8の直鎖状アルキレン基又は炭素数4〜9のアルコキシメチレン基を表し、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R及びRは炭素数1〜4の炭化水素基、Xはアンモニウム基に配位した対イオンを表し、また、ベンゼン環はアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0009】
および、多孔化剤として、下記一般式(II)で表される構造単位の前駆モノマーのCLogP値との差が約1.7以上である有機溶媒の1種又は2種以上を使用することを特徴とする請求項1記載の多孔性強塩基性アニオン交換体の製造方法に存する。
【0010】
【化4】

【0011】
(一般式(II)中、Aは前記一般式(I)と同義を表し、Zはハロゲン原子、水酸基、トシル基又はNR及びRは前記一般式(I)と同義を表す)を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多孔性を有し、かつ、耐熱性に優れた強塩基性アニオン交換体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体は、請求項1に記載の一般式(I)で表される4級アンモニウム塩基を有する構造単位及び不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有する。
【0014】
一般式(I)において、Aは炭素数3〜8の直鎖状アルキレン基又は炭素数4〜9のアルコキシメチレン基を表わすが、上記の直鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられ、上記のアルコキシメチレン基としては、ブトキシメチレン基、ペントキシメチレン基等が挙げられる。
【0015】
Aが上記の定義を有しない場合、例えば、Aがメチレン基又はエチレン基の様に短鎖の場合、アニオン交換基(NR)は短鎖を通じてベンゼン環の影響を受け、その結果、十分な耐熱性が得られず、しかも、塩基度が低下する。塩基度の低下については、アニオンよりも脂肪族アミンのほうが塩基度が高いという事実からも十分予想される。一方、Aがノニレン基のように長鎖の場合、イオン交換基あたりの構造単位の分子量が大きくなり、その結果、単位重量当たりのイオン交換容量が低下するため、イオン交換体として不利である。
【0016】
また、Aは、構造上、スチレン残基のm−位またはp−位に導入されることが好ましい。o−位に導入された場合でも、ベンゼン環と置換基(ANR)との立体的な影響が少ないと考えられるが、架橋剤との共重合の際の立体障害を考慮した場合、Aは、m−位またはp−位に導入することが好ましい。
【0017】
一般式(I)において、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表すが、これらのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
及びRは炭素数1〜4の炭化水素基を表すが、上記のようなアルキル基のほか、アルケニル基等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、単位重量当たりの交換容量の低下をできるだけ少なくする観点から、R、R及びRがメチル基であるトリメチルアンモニウム塩基(I型強塩基性樹脂)又はRがヒドロキシエチル基、R及びRがメチル基であるジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩基(II型強塩基性樹脂)が好ましい。
【0019】
一般式(I)において、Xはアンモニウム基に配位した対イオンを表すが、その具体例としては、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、硫酸イオン、NO、OH、p−トルエンスルホン酸イオン等のアニオンが挙げられ、アニオンが硫酸イオンの様に2価である場合は、一般式(I)で表される構造単位2分子に対してアニオン1分子が結合する。
【0020】
また、一般式(I)において、ベンゼン環は上記のようなアルキル基又は塩素、臭素、沃素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0021】
本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体の構成単位である不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられる。これらの中では、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0022】
本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体において、前記一般式(I)で示される構造単位及び不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位の割合は、特に制限されない。しかし、前記一般式(I)で示される構造単位の割合が少な過ぎる場合はイオン交換容量が低下し、また、不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位の割合が少な過ぎる場合は高膨潤性となって単位体積当たりのイオン交換容量が低下す
るばかりでなく、細孔も発達しにくくなる。従って、上記の各構造単位の比率は、イオン交換容量、膨潤性、強度などを勘案して適宜選択される。
【0023】
なお、本発明において、強塩基性アニオン交換体を構成する全構造単位(前駆全モノマー)中、前記一般式(I)で示される構造単位(前駆モノマー)の割合は、通常5〜99モル%、好ましくは50〜98モル%の範囲とされ、不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位(前駆モノマー)の割合は、通常0.5〜60モル%、好ましくは2%〜50モル%の範囲とされる。
【0024】
本発明の強塩基性アニオン交換体の有する重量当たりの中性塩基交換容量は、通常1.0〜6.0meq/g、好ましくは1.0〜5.5meq/gの範囲であり、体積当たりのイオン交換容量は、水分含有率により異なるが、通常0.1〜2.1meq/mlの範囲である。ここで、meq/gとは乾燥樹脂重量当たりのミリ当量を表し、meq/mlとは含水樹脂体積当たりのミリ当量を表す。
【0025】
次に、本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体の製造方法について説明する。本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体は、公知のイオン交換体製造技術に準じて、前記一般式(II)で示される構造単位の前駆モノマーと不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーとを重合開始剤の存在下に懸濁重合し、必要に応じ、得られた球状架橋重合体に強塩基アニオン交換基を導入することによって製造することができる。
【0026】
前記一般式(II)で示される構造単位は、前記一般式(I)で示される構造単位の前駆体である。前記一般式(II)において、Aは前記一般式(I)と同義を表し、Zは塩素、臭素、沃素等のハロゲン原子、水酸基、トシル基(トルエンスルホン酸基)又はNR(R及びRは前記一般式(I)と同義を表す)を表す。
【0027】
Aがアルキレン基である前記一般式(II)で示される構造単位の前駆モノマー(アルキルスペーサー型モノマー)は公知の方法で合成できる。例えば、ハロゲン化スチレン(クロロスチレン、ブロモスチレン等)、クロロメチルスチレン(m及びp体の混合物であってもよい)又はビニルフェネチルハライドと金属マグネシウムとの反応によってグリニャール試薬を得、1,ω−ジハロゲノアルカンとカップリングさせる。
【0028】
上記のカップリング反応の際、反応を効率的に行うため、ハロゲン化銅(塩化銅、臭化銅、沃化銅)、LiCuCl、アミン等の触媒を使用することができる。また、アルキルスペーサー型モノマーは、ω−ハロゲノアルキルベンゼン誘導体をアセチル化した後、ビニル基を導入する方法等によっても合成することができる。
【0029】
Aがアルコキシメチレン基である前記一般式(II)で示される構造単位の前駆モノマー(エーテルスペーサー型モノマー)も、公知の方法によって合成することができる。例えば、ビニルベンジルアルコールと1,ω−ジハロゲノアルカンとの反応により、ハロゲノアルコキシメチルスチレン誘導体に変換する方法によって合成することができる。
【0030】
なお、本発明において、懸濁重合は、前記一般式(II)で示される構造単位の前駆モノマー、不飽和炭化水素基含有架橋性モノマー及び多孔化剤を含有する懸濁溶液について行われるが、この際、本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体の機能を低下させない範囲において、必要に応じて、第3のモノマー成分を共重合成分として併用してもよい。
【0031】
上記の第3の共重合成分としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン、ポリアルキルスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル等が挙げられ、その使用量は、上記の必須のモノマーの合計量に対し、通常50モル%以下、
好ましくは20モル%以下とされる。また、前記一般式(II)で示される構造単位の前駆モノマーを合成する際に副生するビスビニルフェニルエタン、ビスビニルベンジルエーテル、ビスビニルフェニルブタン等も架橋剤として使用することができる。
【0032】
本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体の製造において使用される多孔化剤としては、一般式(II)で示される構造単位の前駆モノマーのCLogP値との差が約1.7以上である有機溶媒の1種又は2種以上を使用することができる。CLogP値は、米国カリフォルニア州ポモナ大学によって開発されたもので、溶質の1−オクタノール/水系における分配計数の対数値を計算により求めた値である。混合溶媒の場合、CLogP値は、各々の値の和の平均値である。なお、CLogP値に関する詳細は特開平6−126195号公報に記載されている。
【0033】
一般的にイオン交換体の製造に使用されるモノマーであるスチレンのCLogP値は、2.87である。スチレンを用いた場合に多孔化剤として使用可能な有機溶剤でも、本発明で用いるモノマーで構成される共重合体に対しては、良溶媒となり、細孔が充分に発達しない場合がある。具体的には、スチレンの場合多孔化剤として用いられるイソオクタンが、本発明の上記一般式(II)においてA=(CH4、Z=Clで表されるモノ
マから構成される共重合体には、多孔化剤として作用しない。本発明の上記一般式(II)においてA=(CH4、Z=Clで表されるモノマーのCLogP値は4.67
であ。一方、イソオクタンのCLogP値4.54である。さらに後述の実施例で示すように、CLogP値が1.22のイソアミルアルコールや、CLogP値が2.81の2−エチルヘキシルアルコールは、本発明においても多孔化剤として作用する。また、前記一般式(II)で示されるモノマーとCLogP値の差が大きい有機溶剤を選択することが好ましい。
【0034】
本発明において好ましい多孔化剤の具体例としては、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン、デカン、ドデカン、デカリン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、ブチルベンゼン、トルエン、クロルベンゼン、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール,tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、iso−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−ヘキサノール,2−メチル−1−ペンタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2−ブタノン、2−ペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。好ましくは、2−エチルヘキシルアルコール、iso−アミルアルコール、4−メチル−2−ペンタノールである。
【0035】
本発明においては、CLogP値が上記範囲内にある多孔化剤を1種又は2種以上使用することが必要であるが、CLogP値が1.7未満の有機溶媒をこれに混合させて使用することも可能である。この場合、混合割合は重量比でCLogP値が1.7未満の有機溶媒を約50%以下とするのが好ましい。
なお、多孔化剤の使用量としては、生成共重合体に多孔性を与えるのに十分な量であれば良く、モノマー総量に対する架橋性モノマーの割合や、使用する多孔化剤の種類により適宜選択できるが、一般的には、モノマー総量に対して、0.1〜200重量%用いられる。
【0036】
重合時に添加する重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロ−パーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等
が用いられ、通常、全モノマーに対して0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%程度用いられる。その際の重合温度は、重合開始剤の種類や濃度により異なるが、通常は、40〜100℃の範囲で選択される。
【0037】
なお、懸濁重合の際、多孔化剤、重合開始剤のほかに、分散剤、懸濁剤、pH調整剤を反応系に添加することも可能である。分散剤としては、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ソーダ、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等が添加される。また、pH調整剤として、NaOHやホウ酸、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸ナトリウム等が使用され、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム等の無機塩類も使用される。
【0038】
上記のようにして得られた共重合体は、特開平4−349941号公報及び特開平7−289912号公報に記載された方法に従って、アンモニウム基を導入し、その後公知の方法により、塩型を各種アニオン型に変えることにより本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体が得られる。
【0039】
本発明の多孔性強塩基性アニオン交換体は、内部に細孔を有する多孔質体であり、比表面積は、BET法による窒素吸着法による測定で、1〜500m/g、好ましくは、10〜40m/gである。また、細孔容積は、水銀厚入法で0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.2ml/gである。
なお、本発明のイオン交換体は、粒子状のもの以外に、塊状、粉末状、繊維状等あらゆる形状のものが含まれる。
【0040】
本発明の多孔型強塩基性アニオン交換体は、種々の用途に使用され、イオン交換体が使用される一般的な用途に用いられる。
【0041】
イオン交換体が使用される水処理用途、特に水の脱塩に好適に用いられる。脱塩方法は、本発明で得られるアニオン交換体を水又は水溶液と接触させることにより行われる。接触の方法は従来の水処理方法が採用され、例えば流動床、撹拌タンク、バッチタンク、並流または向流カラムを用いるバッチ式、半バッチ式、連続式又は半連続式方法で行うことができる。この時に、耐熱性が優れているため、温水、熱水の処理にも使用することが可能である。また、塩基性の触媒としても使用することが可能である。多孔型であるために、ゲル型のものより表面積が大きいので、反応速度を促進させる意味で有利な場合がある。触媒として使用する時に、耐熱性が優れているためにこれまで使用できなかった高温域での反応にも使用が可能である。
【0042】
また、多孔性であるため耐有機汚染性にも優れ、各種用途において、その機能が長く持続する。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載において、比表面積はBET法による窒素吸着法により、また、平均細孔半径及び細孔容積は水銀厚入法により測定した。イオン交換容量は、ダイヤイオンマニュアル(三菱化学社発行)に従って測定した(meq/gは、乾燥樹脂重量当たりのミリ当量を表す)。
【0044】
実施例1
4−クロロブチルスチレン49.1gと高純度ジビニルベンゼン4.6g(新日鐵化学製、純度81.5%、架橋度10mol%)を混合し、更に2−エチルヘキシルアルコールを(51.68ml)43.0g、重合開始剤としてAIBNを溶解した後、ポリビニルアルコールと硫酸ナトリウムを溶解した脱塩水中に分散した後、70℃で6時間、さら
に100℃で2時間重合した。重合後、共重合体を取り出し、メタノールで洗浄した。得られた共重合体の比表面積を測定したところ、26.3m/gであった。
【0045】
実施例2
4−クロロブチルスチレン49.1gと高純度ジビニルベンゼン4.6g(架橋度10mol%)を混合し、更に(iso−アミルアルコール)3−メチル−1−ブタノール41.8gと重合開始剤としてBPOを溶解した後、ゼラチンと硫酸ナトリウムを溶解した脱塩水中に分散した後、80℃で6時間、さらに100℃で2時間重合した。重合後、共重合体を取り出しメタノールで洗浄した。得られた共重合体の比表面積を測定したところ、18.8m/gであった。
【0046】
比較例1
4−クロロブチルスチレン49.1gとジビニルベンゼン4.6g(架橋度10mol%)を混合し、更にイソオクタン35.8gと重合開始剤としてBPOを溶解した後、ヒドロキシエチルセルロースを溶解した脱塩水中に分散し、70℃で6時間、さらに100℃で2時間重合した。重合後、共重合体を取り出しメタノールで洗浄した。得られた共重合体の比表面積を測定したところ、0.8m/gしかなく、細孔構造が十分発達していない事を確認した。
【0047】
比較例2
4−クロロブチルスチレン49.1gとジビニルベンゼン4.6g(架橋度10mol%)を混合し、更にジクロロエタン65.0gと重合開始剤としてBPOを溶解した後、ヒドロキシエチルセルロースを溶解した脱塩水中に分散し、70℃で6時間、さらに100℃で2時間重合した。重合後、共重合体を取り出しメタノールで洗浄した。得られた共重合体の比表面積は測定不可能であった。また、細孔構造が十分発達していない事を確認した。
【0048】
実施例3
4−クロロブチルスチレンとジビニルベンゼン、4−メチル−2−ペンタノールを表1に示すように、適当量混同し、架橋度の異なる共重合体を作製した。但し、重合開始剤はAIBNを使用し、ゼラチン、PAS−A(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄共重合物、日東紡績株式会社製)を溶解した脱塩水を、亜硝酸ナトリウムとホウ酸でpHを9.5〜10.5に調整した中にモノマー混合液を分散させた後 70℃、18時間重合した。得られた共重合体は、メタノール、THF、塩化メチレンで順に洗浄した。得られた共重合体を、メタノール80mlとトリメチルアミン30%水溶液240mlの混合液中で、密閉反応器中で4時間、80℃に加熱する事により、トリメチルアンモニウム基を有するイオン交換樹脂を得た。表1にイオン交換容量と比表面積を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例4
4−ブロモブトキシメチルスチレン22gとジビニルベンゼン1.3g(純度55%)を混合し、これと同量の4−メチル−2−ペンタノールとn−オクタンの混合液を添加し、重合開始剤はAIBNを使用し、ゼラチン、PAS−A(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−二酸化硫黄共重合物、日東紡績株式会社製)を溶解した脱塩水を、亜硝酸ナトリウムとホウ酸でpHを9.5〜10.5に調整した中にモノマー混合液を分散させた後、70℃、18時間重合した。表2に、4−メチル−2−ペンタノールとイソオクタンの比率を示す。
【0051】
得られた多孔質の共重合体を、メタノール、THF、塩化メチレンで順に洗浄し、ろ過した後、減圧乾燥した。乾燥樹脂20gを1,4−ジオキサン200ml中に入れ1時間膨潤させた後、30%トリメチルアミン水溶液200mlを滴下し50℃で15時間反応させ、トリメチルアンモニウム基を有するイオン交換樹脂を得た。得られたイオン交換樹脂の細孔物性は、表2の通りであった。
【0052】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、多孔性を有し、かつ、耐熱性に優れた強塩基性アニオン交換体を得ることができるため、当該分野において産業上の利用可能性は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される4級アンモニウム塩基を有する構造単位及び不飽和炭化水素基含有架橋性モノマーから誘導される構造単位を含有し、比表面積が1〜500m/gである多孔性強塩基性アニオン交換体。
【化1】

(一般式(I)中、Aは炭素数3〜8の直鎖状アルキレン基又は炭素数4〜9のアルコキシメチレン基を表し、Rは水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、R及びRは炭素数1〜4の炭化水素基、Xはアンモニウム基に配位した対イオンを表し、また、ベンゼン環はアルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【請求項2】
比表面積が10〜500m/gである請求項1に記載の多孔性強塩基性アニオン交換体。
【請求項3】
多孔化剤として、下記一般式(II)で表される構造単位の前駆モノマーのCLogP値との差が約1.7以上である有機溶媒の1種又は2種以上を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔性強塩基性アニオン交換体の製造方法。
【化2】

(一般式(II)中、Aは前記一般式(I)と同義を表し、Zはハロゲン原子、水酸基、トシル基又はNR(R及びRは前記一般式(I)と同義を表す)を表す。)

【公開番号】特開2007−51297(P2007−51297A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256468(P2006−256468)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【分割の表示】特願平9−47714の分割
【原出願日】平成9年3月3日(1997.3.3)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】