説明

多孔成形体

【課題】 この発明は、消臭・殺菌作用を具備した多孔成形体を提供することを目的としている。
【解決手段】 可塑性物に薄隔壁2を介して、一方向へ向いて貫通する多数の細孔3が形成されて硬化された成形体5細孔3の薄隔壁2に、酸化チタン層4が形成されている多孔成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔成形体に係り、セラミック等成形体に多数の細孔が、同一方向を向いて貫通形成され、細孔の薄隔壁に酸化チタン層が形成された多孔成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多孔セラミックとして、例えば椰子殻活性炭、木炭等が知られ、消臭材として使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記椰子殻活性炭、木炭は形状が不特定で、前後に気流が通過しない。また細片や粉末となり、取扱いに困難という難点がある。また汚れが付着すると除去しにくいという難点がある。この発明は、任意の形状にすることができ、消臭・殺菌作用があり、美的に掛置することができ、また水洗をしても消臭・殺菌効果が変らない、多孔成形体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の多孔成形体は、薄い隔壁を介して多数の貫通孔が形成された成形体細孔の薄隔壁に、酸化チタン層が形成された多孔成形体に係る。発明の具体的な内容は次の通りである。
【0005】
(1) 可塑性物に薄隔壁を介して、一方向へ向いて貫通する多数の細孔が形成されて、硬化された成形体細孔の薄隔壁に、酸化チタン層が形成されている多孔成形体。
【0006】
(2) 前記細孔は、孔形の大きさが貫通方向へ段階的に大小違差されて貫通されていること、を特徴とする請求項1に記載された多孔成形体。
【0007】
(3) 酸化チタンを含有する可塑性物を押出成形し、薄隔壁を介して、一方向へ向いて貫通する多数の細孔が形成され、硬化された成形体からなる、多孔成形体。
【0008】
(4) 前記可塑性物は陶土で、成形体はセラミックである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載された多孔成形体。
【0009】
(5) 前記可塑性物は、合成樹脂である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載された多孔成形体。
【0010】
(6) 前記成形体には、薄隔壁の前面に色模様が形成されている、前記(1)〜(5)のいずれかに記載された多孔成形体。
【0011】
(7) 前記成形体には、主細孔の配列の中に、大きさの異なった異細孔による孔模様が形成されている、前記(1)〜(6)のいずれかに記載された多孔成形体。
【0012】
(8) 前記成形体は、靴底中敷形に形成されている、前記(1)〜(6)のいずれかに記載された多孔成形体。
【0013】
(9) 前記成形体は、具象物形に形成されている、前記(1)〜(8)のいずれかに記載された多孔成形体。
【0014】
(10) 前記成形体の外周部に、額枠が装着されている、前記(1)〜(9)のいずれかに記載された多孔成形体。
【0015】
(11) 前記成形体は、多角立方状に形成され、袋に多数収容されている、前記(1)〜(6)のいずれかに記載された多孔成形体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、次のような効果がある。
【0017】
(1) 請求項1に記載された発明の多孔成形体は、成形体に多数形成された細孔の薄隔壁に、酸化チタン層が形成されており、細孔は同一方向を向いているので、空気の流通性に優れ、空気との接触面積が広く、例えばトイレや犬小屋などに置くとき、空気に含まれている臭気は、細孔薄隔壁の酸化チタンの触媒作用によって分解され、短時間で消臭される。また風呂場などに置くとき、カビ菌の除菌をすることができる。
【0018】
(2) 請求項2に記載された発明の多孔成形体は、細孔の大きさが、前から後にかけて途中で大きさが大小に変化しているので、隣同士の細孔が連通しているところもあり、薄隔壁の面積が大きいので、酸化チタン層の付着面積も大きく、消臭効果も大きい。
【0019】
(3) 請求項3に記載された発明の多孔成形体は、酸化チタンを含有する可塑性物を押出成形して形成するので、全域に平均的に酸化チタンが分布しており、行程が簡略される。
【0020】
(4) 請求項4に記載された発明の多孔成形体は、陶土で製造されるので、セラミックとなり、長年の使用にも美しく耐用される。
【0021】
(5) 請求項5に記載された発明の多孔成形体は、合成樹脂製であるので、落下させても破損しにくく、耐久性に優れている。
【0022】
(6) 請求項6に記載された発明の多孔成形体は、成形体に色模様が形成されているので、消臭作用があり、装飾品として使用することができる。
【0023】
(7) 請求項7に記載された発明の多孔成形体は、主たる細孔の配列の中に、大きさの異った異細孔による孔模様が形成されているので、模様がはっきりしていて、1行程で孔模様を表現することができる。
【0024】
(8) 請求項8に記載された発明の多孔成形体は、成形体が靴底中敷形に形成されているので、使用後の靴の中に入れておくと、靴中の消臭をさせることができる。
【0025】
(9) 請求項9に記載された発明の多孔成形体は、成形体が具象物形に形成されているので、装飾置物として使用して、室内の消臭をすることができる。
【0026】
(10) 請求項10に記載された発明の多孔成形体は、成形体の外周部に、額枠が装着されているので、壁面などに掛吊ることができる。
【0027】
(11) 請求項11に記載された発明の多孔成形体は、成形体が、略サイコロ状の多角立方形に形成されているので、植木鉢の側などに置くと、酸化チタンの酸によって、ナメクジ、ダンゴ虫などの排除をすることができる。また袋に多数収容されるとき、多孔成形体を壁などに掛吊したり、犬猫の寝床などにおくことができる。また立沸しの浴槽の中に入れて、湯垢や水の汚れを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
多孔成形体の、同方向を向く多数の細孔内の薄隔壁に酸化チタン層を形成させる。
【実施例1】
【0029】
本願発明の実施の形態例を、図面を参照して説明する。図1は本発明に係る多孔成形体の斜視図、図2は要部拡大平面図である。
【0030】
図1において、多孔成形体(1)は、可塑性物の一っとして陶土が選択され、陶土を押出成形により、薄隔壁(2)を介して、1方向を向く多数の細孔(3)を並列形成した棒体とし、これを任意の厚さに裁断して、板体の成形体(5)に形成されている。板体の面積は、例えば1辺5cm〜20cmなど、成形機の大きさによって選択される。細孔(3)は細かく多数なので、細孔(3)の薄隔壁(2)の総面積は広い。
【0031】
板体の裁断板厚は、用途によって2mm〜3cm等任意に設定することができる。板体の正面形状は、図1では方形であるが、三角、丸、動物形、その他の具象形等、任意に設定される。薄隔壁(2)の厚みは薄い方が好ましいが、素材が陶土であるため、崩れないように、例えば0.5mm〜1mmの範囲で設定される。
【0032】
細孔(3)は、表面積を広くするために細かい方が好ましいが、1mm〜2mm等任意に設定される。細孔(3)の正面形状は、図1では方形であるが、例えば丸孔、三角形、六角形、ハート形、千鳥形など任意に設定される。
【0033】
板体に形成された後、素焼をして後、酸化チタン分散溶液の中に浸して、細孔(3)内の薄隔壁(2)表面に、酸化チタン微粉末層(4)が、図2に示すように形成されてセラミックの多孔成形体(1)に形成される。このままでも使用することができるが、剥離しないようにするためには、2通りの手段が使用される。
【0034】
1っは、前記酸化チタン微粉末分散溶液を付着させて後、窯炉で180℃〜800℃の加熱をする。あるいは、酸化チタン微粉末分散溶液中にアクリル樹脂を添加しておき、付着させてからアクリル樹脂を架橋反応させて、硬化させる。酸化チタン層(4)の厚みは15μ〜20μで十分である。
あるいは、酸化チタン微粉末を陶土に混合して練り、押出し成形をする。
【0035】
酸化チタンは、正方結晶系のアナターゼ型(低温系)とルチル型(高温系)が、300nm〜400nmの紫外線により、光触媒反応を持ち、強い親水性と強い酸化力とをもっている。その結果、触媒作用により、空気中の臭気を分解し、また殺菌、防汚作用を有している。使用についてはアナターゼ型が好ましい。
【0036】
酸化チタン分散液は、例えばアナターゼ型微粉末を、アルコールと水の溶液中に分散させたものが使用される。酸化チタン分散液は、噴霧器による噴射、刷毛塗布、侵漬等により多孔成形体に付着させ、乾燥させる。
【0037】
図3は、セラミックの成形体(5)の周囲に、額枠(6)を固定した壁掛けとしての多孔成形体(1)の正面図、図4はその左側面を示す。額枠(6)は、前後枠(6a)(6b)の間に、成形体(5)が、細孔(3)を前後に向けて挟装されている。額枠(6)の上部には、掛吊部(6c)が形成されて、釘などに掛吊ることができる。
【0038】
図4に示す状態で、多孔成形体(1)を、例えばトイレの壁に掛けると、突体(6d)が壁面に当り、壁面と額枠(6)の間に間隙が生じる。すると、成形体(5)の前面と背面とでは、気圧が異なる(気温の高い方が気圧が低い)ので、気圧の高い方から低い方へと、細孔(3)を通って空気が流通して、気流の中に含まれている臭気物質が、細孔(3)内の薄隔壁(2)における、酸化チタンの触媒作用によって分解されて、消臭される。
【0039】
酸化チタンは、光エネルギーによって、空気中の水分や酸素から、強力の酸化分解力を持つ働きを作り出し、酸化力で殺菌作用もあるので、空気中に浮遊しているカビ菌、その他の菌も殺菌される。また空気中のガスなどの汚れ物質も、酸化チタンの触媒作用によって分解される。また、酸化チタンの親水性により、空気中の微細な埃も吸着される。
【0040】
定期的に多孔成形体(1)を水洗すると、酸化チタンの親水性により、成形体(5)に付着している汚れは、水だけで除去されて、元通りに使用することができる。再使用するときは、直射日光に当てて、細孔(3)に紫外線をよく当てる。
【実施例2】
【0041】
図5は、実施例2を示す多孔成形体(1)の正面図である。前例と同じ部位には同じ符号を付して説明を省略する。この実施例2は、成形体(5)の前面に、色模様(7)が形成されている。該色模様(7)は、例えば陶器用の顔料で、手描き、型使用吹きつけ、捺染(含シルクスクリーン)等で染付けて焼付ける。これによって、トイレなどの壁に掛けて、飾額となり和みを与えることができる。ここでいう色模様(7)とは、文字も含むものとする。
【実施例3】
【0042】
図6は、実施例3を示す多孔成形体(1)の正面図である。前例と同じ部位には、同じ符号を付して説明を省略する。この実施例3は、成形体(5)の主たる細孔(3)の配列の中に、大きさの異なった異細孔(3a)が部分的に配列されて、孔模様(8)が形成されている。
【0043】
この異細孔(3a)の薄隔壁(2)にも酸化チタン層(4)が形成される。この孔模様(8)は、細孔(3)と同様に押出成形なので同時に形成することができ、コスト負担にならない。孔模様(8)は前記色模様(7)と組合わせることができる。
【実施例4】
【0044】
図7は実施例4を示す多孔成形体(1)の正面図である。前例と同じ部位には、同じ符号を付して説明を省略する。この実施例3は、額枠(6)の前後面に格子(6e)をつけたものである。
これによって、セラミックの成形体(5)に衝撃が加えられても、割れにくくなる。従って、犬小屋の中に掛吊ったり、猫の寝床の下に敷いても破損されにくい。
【実施例5】
【0045】
図8は、実施例5を示す消臭具の平面図である。前例と同じ部位には同じ符号を付して説明を省略する。この実施例4は、多孔成形体(1)を靴底中敷の形状に形成したものである。厚みは5mm前後である。これは、外から帰って来て脱いだ靴の中に、納れておくものである。図7で判るように、底面は凹凸が形成されている。
【0046】
これによって、靴の中の臭気が、細孔(3)内における薄隔壁(2)の酸化チタンの触媒作用によって分解されて、消臭される。押出成形なので、この形で長く押し出されたものを、適宜の厚みに裁断されて焼成される。
【実施例6】
【0047】
図9は、実施例6を示す多孔成形体の正面図である。前例と同じ部位には同じ符号を付して説明を省略する。この実施例5は、成形体(5)を魚形の置物に形成された多孔成形体(1)である。表面には、単色あるいは多彩色模様を形成することができる。あるいは細孔(3)をウロコ形に形成することができる。置物としては、動物形、乗物形、その他具象物形が選択される。
【実施例7】
【0048】
図10は、実施例7を示す多孔成形体の正面図である。前例と同じ部位には同じ符号を付して説明を省略する。この実施例7は、多孔成形体(1)が小さな略サイコロ状の、多角立方体に形成されているものである。大きさは、例えば1辺1cm〜3cmなど任意である。着色をしておき、多色の組合わせにすることができる。
【0049】
この多角立方体状成形体(5)からなる多孔成形体(1)は、例えば植木鉢の側に置くと、酸化チタン層(4)の酸化力によってナメクジ、ダンゴ虫などを排除することができる。
また籠や袋に入れて、犬小屋に吊ったり、下駄箱の中、押入の中、トイレなどに吊る。また浴槽の中にいれて、立沸しの湯の湯垢よごれを除去することができる。
【実施例8】
【0050】
図11は実施例8を示す多孔成形体の正面図、図12は額枠をつけた正面図である。前例と同じ部位には同じ符号を付して説明を省略する。
この実施例8における成形体(5)は、大きさの異なる細孔(3)が、網目状に広がり、かつ前から後方向にかけて、大きさの異なる細孔(3)が重なって前後に貫通しているので、隣同士の細孔(3)が部分的に連通しており、あたかも網を数枚重ねたように、左右上下方向にも細孔(3)が貫通形成されている。
【0051】
これによって、細孔(3)の薄隔壁(2)の面積は著しく広くなり、薄隔壁(2)に酸化チタン層(4)が形成されるとき、消臭効果が大きくなる。この実施例8の多孔成形体(1)は、正面も凹凸になるため、楕円形などにするとき、踵用の垢すり具にすることができ、酸化チタン層(4)の触媒作用により、殺菌性に優れて、不潔になりにくい。
【0052】
前記各実施例は可塑性物として、セラミックについて説明したが、陶土に変えて、合成樹脂による押出成形で多孔の成形体を形成し、細孔中に酸化チタン層を形成することができる。この場合、樹脂に酸化チタン粉末を混入して、細孔内に付着させて硬化させることができる。
【0053】
なおこの発明は、前記実施例に限定されるものではなく、目的に沿って適宜設計変更をすることができる。可塑性物として、溶融ガラスを使用することができる。成形について、押出成形の他に型押成形も当然にできる。各実施例の部分を適宜組合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、ペット用の消臭具としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る多孔成形体の斜視図である。
【図2】図1における多孔成形体の要部拡大正面図である。
【図3】本発明に係る多孔成形体の正面図である。
【図4】図3における左側面図である。
【図5】本発明に係る実施例2の多孔成形体の正面図である。
【図6】本発明に係る実施例3の多孔成形体の正面図である。
【図7】本発明に係る実施例4の多孔成形体の正面図である。
【図8】本発明に係る実施例5の多孔成形体の正面図である。
【図9】本発明に係る実施例6の多孔成形体の正面図である。
【図10】本発明に係る実施例7の多孔成形体の正面図である。
【図11】本発明に係る実施例8の多孔成形体の正面図である。
【図12】本発明に係る実施例8の多孔成形体の正面図である。
【符号の説明】
【0056】
(1)多孔成形体
(2)薄隔壁
(3)細孔
(4)酸化チタン層
(5)成形体
(6)額枠
(6a)前枠
(6b)後枠
(6c)掛吊部
(6d)突体
(6e)格子
(7)色模様
(8)孔模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑性物に薄隔壁を介して、一方向へ向いて貫通する多数の細孔が形成されて硬化された、成形体の細孔の薄隔壁に、酸化チタン層が形成されていることを特徴とする多孔成形体。
【請求項2】
前記細孔は、孔形の大きさが貫通方向へ段階的に大小違差されて貫通形成されていることを特徴とする、請求項1に記載された多孔成形体。
【請求項3】
酸化チタンを含有する可塑性物を押出成形し、薄隔壁を介して、一方向へ向いて貫通する多数の細孔が形成され、硬化された成形体からなること、を特徴とする多孔成形体。
【請求項4】
前記可塑性物は陶土で、成形体はセラミックであること、を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された、多孔成形体。
【請求項5】
前記可塑性物は、合成樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載された多孔成形体。
【請求項6】
前記成形体には、薄隔壁前面に色模様が形成されていること、を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された、多孔成形体。
【請求項7】
前記成形体には、主細孔の配列の中に、大きさの異なった異細孔による孔模様が形成されていること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された、多孔成形体。
【請求項8】
前記成形体は、靴底中敷形に形成されていること、を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載された、多孔成形体。
【請求項9】
前記成形体は、具象物形に形成されていること、を特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載された、多孔成形体。
【請求項10】
前記成形体の外周部に、額枠が装着されていること、を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載された、多孔成形体。
【請求項11】
前記成形体は、多角立方状に形成され、袋に多数収容されていること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された、多孔成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−696(P2007−696A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180581(P2005−180581)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(505234834)合資会社 ヨシヒコ (1)
【Fターム(参考)】