説明

多孔質ウォッシュコート結合繊維基体及び製造方法

【課題】
【解決手段】
多孔質基体と、多孔質基体の製造方法とが開示されている。この方法は、繊維材料と、少なくとも1種の押出助剤と、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体とを提供する工程を含む。それら繊維材料、少なくとも1種の押出助剤、および少なくとも1種のウォッシュコート前駆体は混合されて押出バッチが提供される。この押出バッチが押し出されて素地基体が成型される。素地基体は焼結されて多孔質剛性基体と、繊維材料の少なくとも一部を被膜するウォッシュコートが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質基体で利用されるウォッシュコートの(in-situ)形成に関する。特には、繊維材料で形成された多孔質ウォッシュコート結合基体及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質基体は様々な濾過プロセスおよび分離プロセスに利用されている。例えば、基体上に固着された触媒物質を備えた多孔質基体は粒子排出物を減少させたり、有害排気ガスを毒性が弱化されたガスに変換するために一般的に利用されている。利用形態によっては、化学反応も中間化合物または最終化合物の合成における有用な機能である。比較的に高い孔質性(例:空間率)および比較的に高い熱衝撃抵抗性(例:低熱膨張率のため)を備えた基体は非常に高い効率および有用性を提供するであろう。
【0003】
一般的に多孔度(空隙率、空孔率)とは物質全体に対する物質内の空隙の割合として定義される。例えば、50%の多孔度を有する基体は、基体の体積の半分が空隙または空間である。多孔度が高いほど基体の密度は低くなる。利用形態が高動作温度を必要とする場合にこの特徴は有利である。例えば、基体が高動作温度を必要とする触媒プロセスで使用されるとき、低熱質量の基体は高熱質量の基体よりも短時間で高動作温度に加熱され、触媒の活動停止時間が短縮されるであろう。
【0004】
多孔性は濾過作用および排気制御にとって重要であるが、対象ガス(気体)が同時的に高透過性ではない濾過媒体を通過しなければならない場合には、高多孔質基体であってもフィルタとしての機能性が低い。一般的に透過度は物質が流体を透過させる能力の数値として定義される。例えば、排気物処理利用では、排気ガスが基体を通過できなければ高多孔度の基体であっても乗物排気ガスを効果的に濾過して変換することはできない。従って、良好な通流性を得るためには内部の空孔部が全体を通じて相互連結されていることが重要である。
【0005】
典型的には触媒反応支持体として使用される基体はウォッシュコートすなわち大面積キャリアコーティングによって被覆されている。この被膜にはその後に貴金属または触媒物質の追加または含浸を介して触媒機能が付加される。ウォッシュコートは、触媒物質の分散および安定化のための大面積を提供する。排気ガスを制御するために一般的に利用されるようなハニカム構造基体においては、ウォッシュコートはハニカム導通路の壁全体に塗膜される。このような全通形態においては、ウォッシュコート被膜の限界量は塗膜による導通路サイズの縮減に影響を受けて変動する背圧によって定められる。多孔質気体においては、特にフィルタとして壁面流形態に設計されている場合には、ウォッシュコート物質が多孔質基体の空隙を部分的に塞ぐため、ウォッシュコートの限界量は、多孔度および透過度の減少により影響を受ける背圧によって決定される。
【0006】
ウォッシュコートの材料は、典型的にはアルミナ粉末及び/又は他の耐熱酸化物のごときウォッシュコート物質のコロイド縣濁液の水性スラリーを利用するか、溶液ベースのコーティング法により塗膜される。スラリーを利用する方法では、ウォッシュコート物質は酸性化された水を主成分とした溶液内に分散され、高せん断混合手段を用いて混合される。ウォッシュコート物質の粒径は、基体に適用されたときに適切な接着性と貫通性とを付与するように注意深く決定すべきである。スラリーの粘性も同様に注意深く制御されなければならない。スラリーは典型的には基体内に溶液を注入することで塗膜される。その後に塗膜は乾燥されて仮焼される。溶液を利用する方法では、一般的には水溶液内の溶解塩の形態であるウォッシュコート成分が基体に塗膜あるいは塗布され、乾燥され、その後に焼成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セラミック粉末材料の押出成型および続くウォッシュコートの積層を利用する方法は、環境制御産業で利用されるセラミック基体の製造には効果的であり、費用に対する効果が高い方法であることが証明されている。しかしながら、過剰に使用すれば基体の強度が低下し、機能性も損なわれるため、押出成型されたセラミック粉末材料の多孔度には限界が存在する。さらに、焼成された基体の多孔性は成型後の触媒積層処理によって減少する。すなわち、ウォッシュコート及び/又は貴金属触媒物質が成型基体に塗布され、基体内の空隙または空孔部を充填するであろう。
【0008】
加えて、焼成されたセラミックハニカム基体へのウォッシュコートの積層は処理工程を複雑化し、ウォッシュコートを利用する基体の製造コストを上昇させる。一般的に、多量のウォッシュコート積層が必要なときには、複数回のウォッシュコート積層ステップが必要となり、ウォッシュコート積層コストを上昇させ、ウォッシュコートの均質性を低減させる。
【0009】
従って、ウォッシュコート及び/又は触媒が製造工程時に提供される高多孔質フィルタ基体に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は多孔質ウォッシュコート結合繊維基体を提供する。
【0011】
一般的に、本発明の1形態による多孔質ウォッシュコート結合繊維基体を製造する方法は、繊維材料を提供するステップと、少なくとも1種の押出助剤(補助剤)を提供するステップと、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体(前駆物質)を提供するステップとを含む。これら繊維材料、少なくとも1種の押出助剤および少なくとも1種のウォッシュコート前駆体は押出物質のバッチ(以降“押出バッチ”)を提供するように混合される。押出バッチは素地基体を形成するように押出成型される。この素地基体は、多孔質で強固である基体を形成し、繊維材料表面を少なくとも部分的に塗膜したウォッシュコートを形成するように焼成される。
【0012】
この方法は以下の特徴の1以上を有する。実施形態によっては、流体は、繊維、少なくとも1種の押出助剤および少なくも1種のウォッシュコート前駆体で成る押出バッチと混合される。
【0013】
この繊維材料は、金属繊維、金属間繊維、ポリマー繊維、およびセラミック繊維の中から選択される一種以上を含む。この少なくとも1種のウォッシュコート前駆体は、酸化ナトリウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、灰チタン石、沸石、アルミナゾル、ベーマイト、酸化セリウム、酸化ルテニウム、シリカ、シリカゾル、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、活性炭素、酸化バリウム、および酸化チタンから選択される1以上の物質である。この剛質基体(硬質基体)は40%以上の多孔質度を有することができる。
【0014】
素地基体の焼成は素地基体の乾燥を含む。素地基体は加熱され、少なくとも1種の押出助剤の一部を揮発させる。素地基体は焼結され、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体と繊維材料とを結合する。素地基体は1000℃以下で焼結される。素地基体は焼結されて、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体と繊維材料との間にガラス結合及び/又はセラミック結合を提供し、剛質基体を堅牢化する。
【0015】
別実施形態では、炭素粒子または樹脂粒子等である揮発物質または有機物質等の空孔形成剤が添加され、多孔質度を増大させる。さらに、ウォッシュコート物質と繊維とに対して、乾燥ステップ、加熱ステップあるいは焼成ステップの後に構造物を剛質化し、強度を高めるコロイドゾルおよびセラミックセメントのごとき剛質増強剤を加えることができる。
【0016】
一般的に、本発明の別な形態では、繊維材料、少なくとも1種の押出助剤、および少なくとも1種のウォッシュコート前駆体の押出組成物を含んだ多孔質ウォッシュコート結合繊維基体が提供される。この押出組成物は焼成され、繊維材料間が結合されることで強度と多孔質性が増大される。
【0017】
本発明には少なくとも1つの以下の特徴が含まれる。実施形態によっては、押出組成物は流体を含む。ウォッシュコート前駆体物質は繊維材料をコーティングする結合相物質として作用する。実施形態によっては、ウォッシュコートは多孔質基体内に存在する空孔容積の一部を占める。
【0018】
繊維材料は、金属繊維、中間金属繊維、ポリマー繊維または樹脂繊維、炭素繊維およびセラミック繊維を少なくとも1種含んでいる。少なくとも1種のウォッシュコート前駆体物質は、酸化ナトリウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、灰チタン石、沸石、アルミナゾル、べーマイト、酸化セリウム、酸化ルテニウム、シリカ、シリカゾル、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、活性炭素、酸化バリウム、および酸化チタンのうちの少なくとも1種含んでいる。多孔質基ウォッシュコート結合基体は焼成後に40%以上の多孔質度を有することができる。
【0019】
多孔質ウォッシュコート結合繊維基体は焼成され、押出組成物が乾燥される。焼成時に、基体内の剛性増強剤は構造物の安定性と強度を高めるように作用し、押出組成物は加熱されて、少なくとも1種の押出助剤及び/又は空孔形成剤の少なくとも一部を揮発させる。押出組成物は焼結され、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体物質と繊維材料との間を結合する。押出組成物は1000℃以下の温度で焼結される。押出組成物は焼結されて、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体物質と繊維材料との間にガラス結合及び/又はセラミック結合を提供する。
【0020】
本発明のいくつかの形態の詳細は添付図面と以下の記述において解説されている。本発明の他の特徴と利点は以下の詳細な説明、添付図面および「請求の範囲」から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】多孔質ウォッシュコート結合繊維基体の1例示的製造方法を示すフローチャートである。
【図2】素地基体の焼成の1例示的方法を示すフローチャートである。
【図3】ハニカム断面を有した1例示的基体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1、図2および図3で示す1例示的多孔質ウォッシュコート結合繊維基体300は、ここで解説する1例示方法(100)によって形成できる。多孔質ウォッシュコート結合繊維基体を形成する方法(100)は、繊維材料を提供するステップ(110)を含む。一般的に繊維は1以上のアスペクト比を有する材料であると定義される。一方、値が約1であるアスペクト比を有する粒体は粉末であると定義される。アスペクト比とは繊維長を繊維径で割った値である。繊維径は約0.2から30ミクロンの範囲である。しかし、フィルタとして使用する場合には、繊維径は典型的には約3ミクロンから10ミクロンである。繊維は、例えば、取り扱いの利便性のため、混合物内に繊維の均等分布を提供するよう、および完成基体に望む特性を付与するように任意の長さに切断または挽切できる。続く混合ステップ(140)の際に繊維に付与されるせん断力は少なくとも繊維の一部を短くする。押出成型ステップ後の最終状態で繊維は約1から1000の間で所望のアスペクト比を有することができる。別実施形態では繊維のアスペクト比は約1から100000の範囲である。繊維材料は、金属繊維、金属間繊維、高温ポリマー繊維、樹脂繊維、炭素及び/又はセラミック繊維、例えば、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミケイ酸繊維、グラファイト繊維、生物溶解性繊維、アルミケイ酸カルシウム繊維、アルミケイ酸バリウム繊維、ホウケイ酸繊維、炭素繊維、ニッケル繊維、およびチタン繊維、等々から選択される。さらに、高表面積繊維、例えば高表面積アルミナ繊維も使用可能である。
【0023】
少なくとも1種の押出助剤も提供される(120)。典型的には有機結合剤等の押出助剤は、例えば粒体の縣濁液に加えられると、例えば粒体の分散または凝集を介して縣濁液の流動性の調整に有益に作用するポリマー物質である。水溶性有機結合剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースは押出方法に有利に作用する。その他の結合剤及び/又は複数の結合剤の混合物であっても利用は可能である。例えば、押出形態においては流動性が過度に高い縣濁液に対して結合剤を加えて濃度を上昇させたり、あるいは縣濁液の粘性を増加させることができる。可塑性縣濁液は比較的に高いせん断強度を有する。これは押出成型に有利である。押出形態では、結合剤は可塑性を提供する補助や、材料の押出成型に役立つ所望の流動特性を獲得する補助を提供する。さらに、結合剤は、押出成型基体の予備焼成または素地の強度の改善を助ける。ここでは有機結合剤の追加が解説されているが、他の押出助剤及び/又は添加剤であっても繊維混合物または縣濁液の流動性の制御に役立つであろう。
【0024】
最終構造物の結合のために他の物質を混入し、最終基体構造物内で最終ウォッシュコート物質の被膜を現場形成させるために、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体が提供される(130)。ウォッシュコート前駆体は、混合物の流動性調整の補助、最終焼成基体の多孔性増大の補助、および最終焼成基体の強度増強の補助も提供する。ウォッシュコート前駆体は球状、長形状、繊維状または不定形形状でよい。ウォッシュコート前駆体は、焼成されることで、“製造後ウォッシュコート”として普通に使用される材料に変換されるような単一物質または複数物質の組み合わせでよい。例えば、ウォッシュコート前駆体物質は酸化ナトリウム(NaO)、燐酸アルミニウム(AlPO)、硝酸アルミニウム(AlNO)、塩化アルミニウム(AlCl)、灰チタン石(CaTiO)、沸石(アルミノケイ酸ナトリウム系物質)、アルミナゾル(AlOOH)、ベーマイト(γ−Al)、シリカ(SiO)、酸化セリウム(CeOまたはCeO)、酸化ルテニウム(RuO)、および酸化チタン(TiO)である。しかし、その他のウォッシュコート前駆体物質であっても利用できる。例えば、シリカゾル、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ハフニウム(HfO)、活性炭素、または酸化バリウム(BaO)である。
【0025】
ウォッシュコート前駆体物質は、繊維の縣濁および分散を援助することで、以下でさらに詳細に解説するように混合物または押出バッチの流動性の調整を援助する。ウォッシュコート前駆体すなわちウォッシュコート物質は溶液の形態で加えることもできる。これは乾燥ステップおよび焼成ステップの後にウォッシュコートを結晶化する。ウォッシュコート前駆体は様々な形態で空孔の形成も助ける。例えば、ウォッシュコート前駆体は、繊維を重合形態に再配列し、焼成時に繊維間の適した結合を促すことで繊維の整合性と配向性を助けるであろう。繊維の配列は最終焼成基体の強度の増加を助ける。ウォッシュコート前駆体は、焼成ステップ(170)の最中に繊維間の結合を促進するコロイドゾルまたはセラミックセメントのごとき剛性増強剤を含むことができる。さらに、ウォッシュコート前駆体は、繊維表面のエッチングまたは化学反応によって、及び/又は焼成ステップ中にナノスケールまたはミクロスケールのウォッシュコート層を繊維表面に形成することによって繊維表面を改質することができる。例えば、ウォッシュコート前駆体物質130の微小粒体を繊維表面に分散し、焼成ステップ(170)中に繊維表面に結合させる(以下で詳述)。このように繊維表面は結合されたウォッシュコート粒体により増強される。さらに、繊維表面に分散されたウォッシュコート前駆体物質130を繊維と反応させ、繊維表面の局所改質をもたらす化合物を合成する。このように、繊維表面は焼成ステップ(170)中に改質でき、増強された表面及び/又は化学組成物質を提供する。
【0026】
ウォッシュコート前駆体物質は様々な方法で提供できる(130)。例えば、沸石が最終焼成基体の望ましい酸化触媒である実施形態においては、沸石がウォッシュコート前駆体物質として提供される(130)。あるいは焼成および処理で沸石となるベーマイト(γ−Al)や酸化ナトリウム(NaO)のごとき物質がウォッシュコート前駆体物質として提供される(130)。沸石ウォッシュコートを生成する別方法には、ウォッシュコート前駆体として沸石成分を含むゾルゲルの使用が関与する。沸石成分が関与するこのゾルゲルは焼成中に沸石を形成させるであろう。
【0027】
他の実施形態では、アルミナ(例:ビーマイト(γ−Al))及び/又は燐酸アルミニウム(AlPO)、硝酸アルミニウム(AlNO)、および塩化アルミニウム(AlCl)のごときアルミニウムゾルがウォッシュコート前駆体として提供される(130)。アルミナ及び/又はアルミニウムゾルがウォッシュコート前駆体として提供されると、そのウォッシュコート前駆体は焼成時にアルミナ及び/又はガラス層(例:燐酸ガラス)を形成する。アルミナ及び/又はガラス相は繊維間の結合を助け、繊維間にネットワーク構造を形成する。これで強度および多孔質性の向上がもたらされる。
【0028】
他の実施形態では、酸化セリウム(CeOまたはCeO)、酸化ルテニウム(RuO)、および酸化チタン(TiO)が単独またはアルミナとの組み合わせでウォッシュコート前駆体として使用される。酸化セリウム、酸化ルテニウムおよび酸化チタンがウォッシュコート前駆体として提供されると(130)、セリウム、ルテニウムおよびチタンは焼成中に還元される。酸化セリウム、酸化ルテニウムおよび酸化チタン化合物の還元は繊維表面改質をもたらす。すなわち原子スケールで繊維表面を変質させる。例えば、アルミナ繊維、またはアルミノケイ酸繊維のごときアルミナベースの繊維表面の銅はCuAlOxを形成する。さらに、ウォッシュコート前駆体に含まれる酸化ナトリウムはアルミナ、またはβ−アルミナの同型形態の形成を増加させる。
【0029】
繊維、少なくとも1種の押出助剤、および少なくとも1種のウォッシュコート前駆体が混合される(140)。これら繊維と、少なくとも1種の押出助剤(例:有機結合剤)と、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体の混合(140)は、液体で繊維を縣濁させる。混合物の縣濁を助けるために液体も、繊維、少なくとも1種の押出助剤および少なくとも1種のウォッシュコート前駆体と混合される(150)。繊維が縣濁されると、縣濁液の流動性は、押出成型のために必要に応じてさらに調整される。必要ならば、繊維、有機結合剤、ウォッシュコート前駆体および流体が、例えば高せん断ミキサを使用して混合される(140、150)。これで比較的に高い繊維分散が提供され、特定の処理形態、例えば、押出成型のために所望の可塑性の提供が補助される。縣濁液が約60体積%以下の繊維を含む場合、得られる基体は約45%以上の多孔質度を有する。脱イオン水が縣濁液として利用できる。イオン溶液のごとき他の液体の利用も可能である。
【0030】
混合物に含まれる繊維、少なくとも1種の押出助剤、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体、液体および任意の他の物質は押出成型され(160)、素地基体(未焼成体)を形成する。これら繊維、少なくとも1種の押出助剤、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体および液体の混合物は、たとえば、ピストン押出器、単スクリュまたはオーガ押出器または双スクリュ押出器を使用して押し出される(160)。この繊維、押出助剤、ウォッシュコート前駆体、液体および他の物質の混合物は、例えば、“ハニカム構造断面”310を形成するように設計されている押出型から押し出される(160)。このハニカム断面310は一般的に、基体300の縦方向に走行する空孔320を有する。一般的にはハニカム断面310を有する基体300は平方インチあたりの空孔320数により定義される。
【0031】
押し出された(160)素地基体は焼成されて(170)繊維間が安定結合され、多孔質ウォッシュコート結合繊維基体が形成される。焼成ステップ(170)はいくつかのプロセスを含むことができる。それらプロセスは、例えば別々なプロセスとして存在することも、単一の焼成プロセスの一貫として存在することもできる。例えば蒸発させることによって液体の大部分を除去するために素地基体は乾燥される(200)。乾燥ステップ(200)は、ガス圧蓄積または不均一収縮に起因する欠陥を制御するために制御される。乾燥ステップ(200)は、対流、通気または赤外線乾燥機のごとき制御手段によって外気内でも可能であり、または焼炉内等内で乾燥させても良い。
【0032】
素地基体の焼成ステップ(170)は素地基材の加熱ステップ(210)も含むことができる。素地基材が加熱されると(210)、押出助剤は焼失を開始する。ほとんどの有機結合剤は約200℃から400℃の範囲で焼失する。温度の増加はポリマー内の炭化水素または他の有機物質を分解して揮発させ、重量を減少させる。同様に、塩化アルミニウム内の塩素は全て揮発し、酸化と結合のためにアルミニウム粒子を残す。有機結合剤は燃尽し、化学揮発が繊維同士の接触またはウォッシュコート前駆体と繊維との接触を促し、開放型空孔ネットワークを構築する。
【0033】
1実施形態においては、ウォッシュコート物質で製造されている中空球体が空孔形成材料として使用できる。この場合、加熱されると中空球体は溶解し、結合されたウォッシュコート繊維基体を残す。これら球体は、例えばシリカ、アルミナあるいは他の組成物で製造できる。
【0034】
乾燥素地基体は焼結され(220)、繊維間を結合させる。焼結ステップ(220)には一般的に基体の構造安定化が関与する。これは、強度を備えた塊体を形成するために繊維間を結合することを特徴とする。焼結ステップ(220)中に複数の結合形態が発生する。焼結ステップ(220)中に発生する結合タイプは複数の要因によって決定される。例えば、開始物質の種類および焼結時間と焼結温度である。典型的には、ガラス結合とセラミック結合が、少なくとも1種のウォッシュ前駆体と繊維材料との間で提供されるであろう。ガラス結合は繊維同士の交差部におけるガラス相すなわち非結晶相の形成を特徴とする。その他の場合には、ガラスとセラミックの結合および共有結合または酸化物結合が繊維間の領域の構造一体化により提供される。ガラスとセラミックの結合および共有結合/酸化物結合は重なり合う繊維間の結晶成長および質量移動を特徴とする。ガラス結合は典型的には共有結合/酸化物結合よりも低温で発生する。
【0035】
ウォッシュコート前駆体の種類によっては、焼結は一定の温度範囲で実施できる。沸石および沸石化する材料、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、および塩化アルミニウムがウォッシュコート前駆体として使用される実施形態では、焼結ステップは1000℃以下の酸化雰囲気中または還元雰囲気中で実施される。焼成中には焼結温度を、ウォッシュコート前駆体が大型粒子に凝集する温度以下に維持することが必要である。様々な実施形態では、焼結ステップは約450℃から600℃の温度で実行される。酸化セリウム、酸化ルテニウムおよび酸化チタンをウォッシュコート前駆体として使用した原子スケールでの繊維のエッチングの達成には、焼結ステップは還元雰囲気中及び/又は酸素分圧雰囲気中にて、約1200℃にて実行される。この還元雰囲気または酸素分圧雰囲気は焼成中にセリウム、ルテニウムおよびチタンの原子価変動をもたらす。
【0036】
前述内容は本発明の説明を目的としており、本発明を限定しない。本発明の範囲は「請求の範囲」において定義されている。これら以外の実施形態も本発明の範囲内である。例えば、様々なウォッシュコート前駆体が利用できる。さらに、所望する結果によっては、それぞれのウォッシュコート前駆体を酸化雰囲気内または還元雰囲気内で焼結することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料を提供するステップと、
少なくとも1種の押出助剤を提供するステップと、
少なくとも1種のウォッシュコート前駆体を提供するステップと、
前記繊維材料と、前記少なくとも1種の押出助剤と、前記少なくとも1種のウォッシュコート前駆体とを混合して押出バッチを提供するステップと、
前記押出バッチを押し出して素地基体を成型するステップと、
前記素地基体を仮焼して多孔質剛性基体を形成し、前記繊維材料の少なくとも一部を被膜したウォッシュコートを形成するステップと、
を含んで成ることを特徴とする多孔質ウォッシュコート結合繊維基体の製造方法。
【請求項2】
繊維材料と、少なくとも1種の押出助剤と、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体とが混合された押出バッチに液体を混合するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記繊維材料は、金属繊維、中間金属繊維、高温ポリマー繊維、樹脂繊維、炭素繊維、およびセラミック繊維の中から選択される少なくとも1種の繊維を含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のウォッシュコート前駆体は、酸化ナトリウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、灰チタン石、沸石、アルミナゾル、べーマイト、酸化セリウム、酸化ルテニウム、シリカ、シリカゾル、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、活性炭素、酸化バリウム、および酸化チタンの中から選択される少なくとも1種の化合物を含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質剛質基体は40%を超える多孔質度を有していることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記素地基体の仮焼ステップは、
前記素地基体の乾燥と、
少なくとも1種の押出助剤の少なくとも一部を揮発させる前記素地基体の加熱と、
少なくとも1種のウォッシュコート前駆体と繊維材料とを結合させるための前記素地基体の焼結と、
を含んでいることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記素地基体は1000℃未満の温度で焼結されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のウォッシュコート前駆体と繊維材料との間にガラス結合とセラミック結合の少なくともいずれか1つ以上の結合を形成すべく素地基体が焼結されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項9】
多孔質ウォッシュコート結合繊維基体であって、繊維材料と、少なくとも1種の押出助剤と、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体物質とを含んだ押出組成物であって、前記繊維材料との間に強度と多孔質性とを提供する結合組成を形成すべく仮焼される押出組成物で成ることを特徴とする基体。
【請求項10】
前記押出組成物は液体を含んでいることを特徴とする請求項9記載の基体。
【請求項11】
前記ウォッシュコート前駆体物質は繊維材料を被膜する結合相物質として機能することを特徴とする請求項9記載の基体。
【請求項12】
前記繊維材料は金属繊維とセラミック繊維の少なくとも1つ以上の繊維を含んでいることを特徴とする請求項9記載の基体。
【請求項13】
前記少なくとも1種のウォッシュコート前駆体物質は、酸化ナトリウム、燐酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、灰チタン石、沸石、アルミナゾル、べーマイト、酸化セリウム、酸化ルテニウム、シリカ、シリカゾル、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、活性炭素、酸化バリウム、および酸化チタンの中から選択される少なくとも1種の化合物を含んでいることを特徴とする請求項9記載の基体。
【請求項14】
前記少なくとも1種のウォッシュコート前記体物質は空孔形成剤を含有することを特徴とする請求項13記載の基体。
【請求項15】
前記多孔質ウォッシュコート結合繊維基体は、仮焼後に40%を超える多孔質度を有することを特徴とする請求項9記載の基体。
【請求項16】
前記素地基体は、押出組成物を乾燥させ、少なくとも1種の押出助剤の少なくとも一部を揮発させるように前記押出組成物を加熱して少なくとも1種のウォッシュコート前駆体物質と繊維材料とを結合させるように前記押出組成物を焼結すべく仮焼されていることを特徴とする請求項9記載の基体。
【請求項17】
前記押出組成物は1000℃未満で焼結されていることを特徴とする請求項16記載の基体。
【請求項18】
前記押出組成物は、少なくとも1種のウォッシュコート前駆体物質と繊維材料との間にガラス結合とセラミック結合の少なくともいずれか1つ以上の結合を形成すべく焼結されていることを特徴とする請求項16記載の基体。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−537948(P2010−537948A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524164(P2010−524164)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/075318
【国際公開番号】WO2009/032971
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(507280435)ジーイーオー2 テクノロジーズ,インク. (12)
【Fターム(参考)】