説明

多孔質フィルターのための完全性試験方法

バブルポイントを有する多孔質フィルター材料を含むフィルターの完全性を試験するための方法であって、該フィルターが、予期される特有の液流量を有し、該方法が、流体のための入口と流体のための出口とを備えるフィルター固定具を用意する工程と、該フィルター固定具の該入口と該出口との間に該多孔質フィルターを組み込む工程と、該多孔質フィルター材料の細孔を湿潤液で充填するために該材料を湿潤する工程と、該多孔質フィルターの媒体と該流体出口との間に、液で該フィルター固定具を充填する工程と、該フィルターの該バブルポイントよりも低い圧力で、該フィルター固定具の該流体入口にガスを提供することによって該フィルター固定具を加圧する工程と、該フィルター固定具からの液流量を測定する工程とを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
膜のような多孔質材料はろ過装置として用いられて、有用性のある最終生産物から望ましくない汚染物質を取り除くことができる。 医薬産業、食品加工業及びバイオテクノロジー産業は、ろ過装置がある性能基準を満たすことを必要とする。完全性試験は、装置が望ましい性能基準を満たすことを保証するための手段を提供する。ろ過膜の装置を用いた場合に、完全性試験は、膜があるサイズのディフェクト(欠陥)がないことを保証し、ディフェクト(欠陥)の存在は最終生産物を汚染させることになるのでデバイス性能を劣化させることとなる。
【0002】
1つの公知の完全性試験の方法はガス−液体拡散試験であり、この試験は、ろ過装置が1つの面から加圧されて所定の設定圧がフィルターのバブルポイント以下である場合に、液で湿潤された多孔質フィルターを通過するガスの流れを測定するものである。装置にディフェクト(欠陥)がないならば、ガス流量の測定値は所定の圧力において比較的低くなる。なぜならば、測定された流れは主に拡散流であり、バルクガス流(気体流)ではないからである。ところが、ディフェクト(欠陥)を有するデバイスは、比較的大きなバルクガス流量を示し、そのバルクガスは、多孔質フィルターのディフェクト(欠陥)を通過して流れるガスが原因である。
【0003】
大きな多孔質フィルター面積を備える複数の円形部がある大きなハウジングに関しては、フィルター材料を通過する拡散流は度々非常に大きいので、その拡散流は、小さなディフェクト(欠陥)が原因であるバルク流とは区別することができない。
【0004】
同様に、米国特許No.7,306,729で述べられている膜のような極端に薄い膜を用いている装置は、本質的には膜を通過する高い拡散流を有し、その高い拡散流がディフェクト(欠陥)による流れを認識するのを困難にさせている。それゆえ、大きなろ過装置に対するガス-液体拡散試験の有用性が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、増幅した感度を提供することができる完全性試験方法に対するニーズがある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、気体-液体の拡散試験で用いられる装置の略図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従った方法を実行するために用いられる装置の略図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に従った方法を実行するために用いられる装置の略図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に従った方法を実行するために用いられる装置の略図である。
【図5】図5は、本発明の方法によって測定された、膜の円板フィルターの圧力の関数としての拡散流量を示す。
【図6】図6は、本発明の実施態様によって測定された、プリーツのカートリッジフィルターの時間の関数としての拡散流量の減衰を示す。
【図7】図7は、プリーツのカートリッジフィルターについての気体-液体拡散試験と、本発明の方法との比較を示す。
【図8】図8は、ピンホールがあるカートリッジフィルターとピンホールがないカートリッジフィルターとに対して、本発明によって測定された圧力の関数としての液体質量流量を示す。
【図9】図9は、気体-液体拡散試験と本発明の方法との拡散流量の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、多孔質フィルター材料の完全性を試験するための方法に関する。更に特には、本発明の方法は、大面積フィルターと通常の面積のフィルターを高拡散流量で試験するために必要である増強された検出感度を提供する。その方法は単純であって、かつ、早いものである。そして、その方法は、エンドユーザーの生産環境に容易に組み込まれることを可能とする。
【0008】
図1は、標準的な気体-液体拡散試験を示し、その試験は、フィルター媒体中の欠陥を検出するために、今日、工業上、一般的に用いられている。試験は、湿潤の多孔質フィルター(10)を通る気体流量を測定する。フィルターデバイスの多孔質フィルター材料は、まず液体で湿らせる。湿らせる液体は、典型的にはアルコール、水又は他の液体である。システムは、入口(22)側でガス、典型的にはエアー又は窒素で加圧する。入口(22)側のガス流量は、試験圧力で測定される。
【0009】
拡散試験の目的は、バブルポイントよりも低い圧力でガスがフィルターを通って流れる速度を測定することである。フィルターのバブルポイントは、最も大きな細孔の毛細管圧として定義される。毛細管圧は、フィルター材料における湿潤液の接触角、湿潤液体の表面張力、並びに細孔の大きさ及び形状によって決定される。バブルポイントより低い差圧で、フィルターの全ての細孔は湿潤液で充填されるべきである。拡散試験中に、フィルターの細孔よりも大きい欠陥は湿らないで、そして、フィルターを通るガスの流れを可能にして、それを測定する。
【0010】
拡散試験で測定されたガス流(気体流)が、フィルター製造業者によって推奨されるガス流(気体流)より小さいならば、フィルターデバイスには、ディフェクト(欠陥)がないと考えられる。測定されたガス流(気体流)が、フィルター製造業者によって推奨される拡散性ガス流(気体流)を超えるならば、フィルターデバイスには、ディフェクト(欠陥)があると考えられる。
【0011】
試験の重大な欠点はフィルターを横切るとガス圧が異なる場合に、フィルターの高圧側のガスがフィルターの液中に吸収されて、フィルター厚み方向に拡散し、そして、脱着する。フィルターを通過したガスのこの流れは、フィルターのディフェクト(欠陥)を通過したガス流(気体流)の測定を妨害する。拡散性フローによるその妨害は、特には、大面積のカートリッジ及び薄膜に対して顕著であってよい。例えば、15psiの異なる圧力でカートリッジを通過する拡散性流量は、典型的なフィルターカートリッジについては、およそ20cc/minでよい。
【0012】
拡散試験における、拡散性のガス流量は、一般的には、フィックの法則に基づくものであり、その法則は、以下に示される式を用いて述べることができる。
【0013】
【数1】

【0014】
Q=多孔質フィルターを通過したガスの拡散性流量であり、A=多孔質フィルターの表面積であり、K=多孔質フィルター材料の多孔度及び屈曲度に依存する形状ファクターであり、D=湿潤液中のガスの拡散係数であり、L=液経路長であり、ΔΡ=多孔質フィルター通過した圧勾配であり、H=ヘンリーの法則の定数である。
【0015】
上記の方法において、経路長、Lは、多孔質フィルターの湿潤液の厚みによって定義される。フィルターが充分に湿潤液で湿っているならば、経路長はフィルター厚みと等しい。例えば、約50ミクロンの厚みを有するフィルター材料のような薄膜の多孔質フィルター材料に対して、液経路長、Lは約50ミクロン未満であり、それによって、試験中に拡散性のガス流(気体流)、Qが大きくなる。このことによって、ディフェクト(欠陥)を通過するバルクのガス流(気体流)と、膜の液を通過する拡散性のガス流(気体流)との区別をすることが困難となる。式1によって示されるように、大きな表面積、Aを有する多孔質フィルターのフィルターデバイスについても、拡散性のガス流(気体流)が大きくてよい。このことによっても、1つ以上のディフェクト(欠陥)によって、拡散性フローとバルクのガス流(気体流)とを区別することが困難となる。それゆえに、ガス-液体拡散試験の実用的適用が制限される。ところが、下記に述べられる本発明の完全性試験の方法は、ガス-液体拡散試験の感度が劇的に改良されることを示す。
【0016】
本発明の第1の実施形態にしたがって、本発明の方法を実行するために用いられる装置は、概略的に図2に示される。フラットディスク要素又はプリーツ状のカートリッジ要素の形態の多孔質フィルターサンプル(40)は、入口(44)と出口(46)との間の試験固定具(42)に組み込まれる。サンプルは、一定の継続時間の間、そのサンプルを通過する液を勢いよく流すことによって湿潤液で湿らせる。好ましくは、湿潤液は、膜又は最終製品に不利に影響を及ぼさないように選択される。親水性膜については、水又はアルコールが湿潤液として用いられてよい。疎水性膜については、イソプロピルアルコール(IPA)又はメタノールを含むアルコール溶液が用いられてよい。サンプルの下流側(48)と出口(46)との間の試験固定具の一部は湿潤液(50)で満たされる。
【0017】
サンプルは、ガス(ガスは、空気、窒素又は他のガスでよい。)で、入口(44)から圧力をかけてよい。ガス圧は所定の割合でゆっくりと増加し、サンプルを通過するガス流量は、サンプルの下流側の液流の速度を測定することによって決定される。流れの速度は、はかり(52)又は別の測定機器を用いて、変位した湿潤液の質量を連続的にモニタリングすることによって測定される。本発明のこの実施形態において、拡散ガス流(気体流)の影響は本質的に取り除かれる。拡散しているガスは、下流の液カラムの体積膨張に寄与せず、そして、液流に至ることはない。フィルターのディフェクト(欠陥)を通過して移動するガスから生じるガスバブルだけが液変位に寄与して、はかりで流量が測定されることとなる。
【0018】
図3で表される本発明の試験では、多孔質フィルター媒体が、まず、脱気水で湿潤される。これは、三方弁(71)を設置することによってフィルターの上流に向かい、送水管(72)まで実行され、三方弁を設置することによって、フィルターの下流に向かい(73)、フィルターループまで実行される。水は、水源(75)からポンプ(79)によってくみ上げられて、脱気装置(77)と多孔質フィルター媒体(40)とを通過する。図2、3及び4の略図は、フィルターの上方向のガス入口と下方向の液とを有する試験装置構造体を示すが、ガスが固定具の底部から進入するように固定具が逆さまになってもよい。このことは、膜を貫通するガスが膜表面に堆積することを防止するので有利な点がある。多孔質フィルター媒体が湿潤された後、試験の準備が整うこととなる。
【0019】
多孔質フィルター媒体への水流は、水システム方向の3方向バルブ(73)をバイパス管(74)方向に設定することによって停止されて、フィルターと貯留タンクと間で3方向バルブ(71)を調節することによって圧縮ドライ空気(CDA)管までフィルターを開放する。一旦、フィルターへの水流が停止されて、エアー管がフィルターまで開放されると、フィルターから外方向に延びた管は3方向バルブ(81)を排水タンクの方向に設定することによって排水タンクに向けられる。このことによって、はかりを水浸しにすることなく、水が圧縮空気によってフィルターハウジングから押出されることを可能とする。出口管を排水タンクに切り替えることによって、システムは加圧の準備に入る。
【0020】
マスフロー(質量流量)コントローラー(MFC)と貯留タンクとの間のバルブ(83)は閉じられて、そのシステムの加圧を開始する。圧力が上がるにつれて、フィルターハウジング(42)から水を押出して排水タンク(84)に入れ込むこととなる。水の流れが停止すると、3 方向バルブ(81)をはかり方向に調節することによって、外方向の管は排水タンクから、はかり(91)に切り替わる。
【0021】
一旦、フィルターハウジングが空となり、外方向の管がはかりに切り替わると、実際の試験が始まる。試験が進むにつれて、しばらくの間、はかりの測定値は非常にゆっくりとであるが大きくなる。最終的には、はかりの質量は急速に大きくなり始めて、水がもう一度、フィルターから流れ出て、バブルポイントに到達する。
【0022】
別の実施形態として、図2で示される装置もまた、本発明の方法を実行するために用いられる。ところが、この実施形態においては、所定の割合で連続的に圧力を増加させる代わりに、サンプルは上流側で加圧されて一定圧力に保たれる。液流量は時間をかけて測定される。
【0023】
別の実施形態として、図2で示される装置もまた、本発明の方法を実行するために用いられる。この実施形態においては、圧力は徐々に増加して、それぞれの増加の後に確定期間一定に保たれる。例えば、圧力は、5分毎に0.5psiずつ増加してもよい。
【0024】
別の実施形態として、図4に示される装置は本発明を実行するために用いられる。この実施形態では、フィルターを通過するガス流(気体流)は、フィルターの下流で液流量を測定するよりは、むしろフィルターの上流で測定される。
【0025】
本発明の方法のこの実施形態では、式(1)で定義される液経路長、Lの実質的な増大は、実質的に、サンプルを通過する拡散性ガス流(気体流)、Qを小さくする。拡散流を軽減することは、完全性試験方法の感度を改良する。例えば、Lが50μm(0.005cm)であるより、むしろ1cmであるならば、拡散に対する経路長は200倍の割合で増大する。それ故に、拡散流は200倍の割合で減少する。多孔質フィルターを通過する拡散性ガス流(気体流)が実質的に小さくなるように管路の大きさは選択されてよい。ガス流(気体流)の拡散性成分を軽減することによって、本試験の感度は標準的なガス-液の拡散試験の感度よりも改良される。
【0026】
また、本発明のフィルター完全性試験の方法は、FlowRatio(FR)を用いて述べられてもよい。所定の圧力において、FRは、本発明の方法を用いて測定された流れの標準的なガス-液体拡散試験を用いて測定された拡散流に対する比として定義される。FRは、試験方法の感度とは逆の関係にある。例えば、0.1の流量比は、本発明の方法の感度は標準的なガス-液の拡散試験の感度より10倍で改良されることを示す。感度が少なくとも2倍、好ましくは少なくも10倍、より好ましくは少なくとも100倍で増大するように、管路の大きさは選択されてよい。
【0027】
本発明の方法は、特に限定されることはないが、フラット膜ディスク、プリーツカートリッジ、積層ディスクカートリッジ、プレートフレームカートリッジ、フルートシート、チューブ、ファイバー、螺旋状にねじれたモジュール等を含む、様々なフィルターデバイスで用いられてよい。本発明の方法は、広範囲である定格の細孔サイズを含む幾つかのポリマー膜に適用できる。例えば、ポリマー膜としては、特に限定されることはないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナイロン、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、ポリスルフォンとセルロースとのエステル等から作られる膜が挙げられる。本発明の方法は疎水性膜及び親水性膜の両方の膜のために用いられてよい。
【実施例】
【0028】
実施例1
本発明の完全性試験の方法を、米国特許7,306,729の教示にしたがって作製された延伸PTFE(ePTFE)膜を用いて実行した。膜は2.6ガーレー秒のエアー流と、1.6グラム/m2の単位面積当たりの質量を有した。47mm径を有する、この膜のフラットディスクを試験固定具に組み込んだ。約5分間、サンプルを循環させることによってIPAで湿潤をした。図2及び3で述べられるように、サンプルの下流側と出口との間の試験固定具の一部を、湿潤液のIPAで充填して液管路を作り出した。
【0029】
サンプルを湿潤して試験装置の下流部分をIPAで充填した後、サンプルを、エアーを用いて加圧をした。エアー圧をゆっくりと10psi/minの割合で増加させた。変位したIPAを容器に集めて、そのIPAの質量をはかり(Model CPA324S, Sartorius Corporation)を用いて毎秒測定をした。IPAの質量流量をIPAの密度で割ることによって、IPAの流量を体積ガス流量に変換をした。
【0030】
図5は圧力の関数として体積液流量(cc/min単位)を示す。図5に示されるように、領域A-Bは、膜サンプルを通過した流量が非常に小さく、0.04cc/min未満の平均値を示した。B-Cの領域で、サンプルのバブルポイントに到達した。バルクのガス流(気体流)が示されて、流れが圧力と共に特徴的に増加していることが示された。
【0031】
実施例2
本発明の完全性試験の方法を、親水性PVDFフィルター(0.1μmの定格細孔サイズ、DuraporeTM、Millipore Corporation)を用いて実行した。約5分間、サンプルを循環させることによってIPAで湿潤をした。上記で述べたように、サンプルの下流側と出口との間の試験固定具の一部を、湿潤液のIPAで充填して液管路を作り出した。サンプルを、エアーを用いて加圧をした。エアー圧をゆっくりと10psi/minの割合で増加させた。変位したIPAを容器に集めて、そのIPAの質量を、はかりを用いて10秒毎に測定をした。質量流量をIPAの密度で割ることによって、質量流量を体積液流量に変換をした。図5は圧力の関数として体積液流量(cc/min単位)を示す。図5に示されるように、領域D-Eでは膜サンプルを通過した測定流量が非常に小さく、0.015cc/min未満の平均値であった。領域E-Fで、サンプルのバブルポイントに到達した。バルクのガス流(気体流)が示されて、流れが圧力と共に特徴的に増加していることが示された。
【0032】
実施例3
本発明の完全性試験の方法を、PVDFフィルターカートリッジを用いて実行した。市販のカートリッジ(DuraporeTM、0.22μmの定格細孔サイズ、Millipore Corporation)を試験固定具(Part Number CSF 786-226, Shelco Filters)に組み込んだ。60分間、サンプルを循環させることによってIPAで湿潤をした。上記で述べられるように、サンプルの下流側と出口との間の試験固定具の一部を、IPAで充填して液管路を作り出した。サンプルを、エアーを用いて加圧をした。エアー圧を10psiで一定に保った。変位したIPAを容器に集めて、そのIPAの質量を、はかりを用いて10秒毎に測定をした。質量流量をIPAの密度で割ることによって、質量流量を体積液流量に変換をした。図6は時間の関数として体積液流量(cc/min単位)の減衰を示す。図6に示されるように、この技術を用いて測定をすることが可能であり、液流量が0.03cc/minとうころまで低下した。
【0033】
実施例4
本発明の完全性試験の方法を、延伸PTFEフィルターカートリッジを用いて実行した。W. L. Gore & Associatesによって生産された、PartNumberGMM109の市販のePTFE膜を、2つのポリプロピレン支持物の間にサンドウィッチして、その後、当該技術分野で公知である方法を用いて、10インチのプロピレンカートリッジ要素にした。カートリッジの効果的なろ過領域は6.9ft2であった。カートリッジのODとIDは、それぞれ、2.45インチと1.65インチであった。カートリッジを、試験固定具(Part Number CSF 786-226, Shelco Filters)に組み込んだ。約60分間、サンプルを循環させることによってIPAで湿潤をした。上記で述べられるように、サンプルの下流側と出口との間の試験固定具の一部を、IPAで充填して液管路を作り出した。サンプルを、エアーを用いて加圧をした。エアー圧をゆっくりと0.25psi/minの割合で増加させた。変位したIPAを容器に集めて、そのIPAの質量を、はかりを用いて10秒毎に測定をした。質量流量をIPAの密度で割ることによって、質量流量を体積液流量に変換をした。図7は圧力の関数として体積流量(cc/min単位)の減衰を示す。図7に示されるように、カートリッジサンプルを通過する液流量は、1cc/min未満であった。
【0034】
実施例5
本発明の完全性試験の方法を、親水性PVDFフィルターカートリッジ(DuraporeTM、0.22μmの定格細孔サイズ、Millipore Corporation)を用いて実行した。カートリッジを試験固定具(Part Number CSF 786-226, Shelco Filters)に組み込んだ。約60分間、カートリッジサンプルを循環させることによって70/30(IPA/水)の混合物で湿潤をした。上記で述べられるように、サンプルの下流側と出口との間の試験固定具の一部を、70/30(IPA/水)の混合物で充填して液管路を作り出した。エアー圧を約5psiの増量分でゆっくりと増加させて、約5分間その圧力で保った。最後に、変位したIPA/水の混合物を容器に集めて、そのIPA/水の混合物の質量をはかり(Model CPA324S, Sartorius Corporation)を用いて測定をした。質量流量をIPA/水の混合物の密度で割ることによって、質量流量を体積液流量に変換をした。図7は圧力の関数として体積流量(cc/min単位)を示す。図7に示されるように、カートリッジサンプルを通過する液流量は、0.5cc/min未満であった。
【0035】
10psiの圧力において、実施例及び比較例1による液流量データを用いて、FRを計算すると0.00189であった。このFRの値は、約529倍で試験方法感度が改良されたことを示す。
【0036】
実施例6
この実施例は、ディフェクト(欠陥)フィルターを正確に特定することについての本発明の有用性を示す。本発明の完全性試験の方法を、親水性PVDFフィルター材料を含む、0.22μmのMillipak-100(Millipore Corporation Part # MPGL10ZW1)の積層ディスクフィルターユニットを用いて実行した。そのユニットを試験固定具に組み込んだ。2〜3分間、そのユニットを循環させることによって脱気水でカートリッジサンプルを湿潤した。ユニットを、エアーを用いて加圧した。エアー圧をおよそ2psi/minuteの割合でゆっくりと増加させた。連続的に、変位した水を容器に集めて水の質量をはかり(Model CPA324S, Sartorius Corporation)を用いて測定をした。水の質量流量は50psiまでの圧力に対して0.2g/min未満であった。図8に示されるように、質量流量は0.2g/minをはるかに超えて、フィルターが約53psiのバブルポイントを有していることを示した。同一ロットによる同一フィルターユニットは、フィルター保持試験によって測定されるように、>8.9のLog Retention Value(LRV)を有した。
【0037】
同一のフィルターユニットにダメージを与えて、10マイクロリットルの注射器(Hamilton Part #80030)の先端部を用いて、ユニットの開口口を通過する一つのピンホールを作り出した。出来るだけ小さいディフェクト(欠陥)を作り出さなければいけないことに注意されたい。上記で述べた試験手順を繰り返した。図8に示されるように、<5psiの圧力でさえ、水の質量流量は0.2g/minを超えた。約9.6psiの圧力において、質量流量は0.2g/minをはるかに超えて、フィルターが約9.6psiのバブルポイントを有し、ディフェクト(欠陥)フィルターであることを示した。ディフェクト(欠陥)フィルターのLRVは有意に減少して、測定すると5.9であった。
【0038】
Millipakのフィルターカートリッジによる粒子保持を以下ように測定をした。50ml/minの流量で、フィルターを高純度水で循環させた。光学粒子カウンター(Particle Measuring Systemss LiquiLaz-S02)をループに含めて、粒子濃度を測定した。500nmのポリスチレンラテックス粒子(Duke Scientific Cat # 3500A)の懸濁液を循環している水のフィルタの上流部に注入をした。注入速度を選択して、フィルターの上流側で4.0E6/mLの粒子濃度を得た。ダメージを受けたフィルター及びダメージを受けていないフィルターの下流側でそれぞれの粒子濃度を測定すると、4.6/mL及び<0.05/mLであった。これらの濃度に基づいて、それぞれのフィルターのLog Reduction Values (LRVs)を計算すると、5.9及び>8.9であった。
【0039】
実施例7
本発明の完全性試験の方法を、図4で述べられた実施態様にしたがって、親水性PVDFフィルターカートリッジ(DuraporeTM、0.22μmの定格細孔サイズ、Millipore Corporation)を用いて実行した。カートリッジを試験固定具(Part Number CSF 786-226, Shelco Filters)に組み込んだ。約45分間、カートリッジサンプルを循環させることによって70/30のIPA/水の混合物で湿潤をした。図3で述べられたように、サンプルの下流側と出口との間の試験固定具の一部を、IPA/水の混合物で充填して液管路を作り出した。その液管路は、12"長の5/8インチ径で、続いて28インチ長の1インチ径で、続いて88インチ長の1/4インチ径のチューブであった。エアー圧をゆっくりと増加させて、約20分間所定の圧力で保った。流量と圧力との測定のためにSartocheck4(Sartorius AG)を用いた。図9は圧力の関数としてのエアー流量を示す。
【0040】
10psiの圧力において、この実施例及び比較例1によるエアー流量データを用いて、FRを計算すると0.0303であった。このFRの値は、約33倍で試験方法感度が改良されたことを示す。
【0041】
比較例1
標準的なガス-液体拡散試験を、実施例5及び7で述べられたカートリッジを用いて実行した。この試験を、Sartocheck4TM(Sartorius AG)を用いて実行した。カートリッジを試験固定具(Part Number HU11 U7TY00SOS, Sartorius Stedin Biotech)に組み込んだ。カートリッジを70/30のIPAの水の混合物で湿潤をし、ある試験圧下で、エアーで入口に圧力をかけた。エアー圧を約5psiの増量分で増加させた。フィルターの下流側のガス流(気体流)を、試験圧で測定をした。図7及び図9は圧力の関数としてのガス流量(気体流量)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バブルポイントを有する多孔質フィルター材料を含むフィルターの完全性を試験するための方法であって、該フィルターが、予期される特有の液流量を有し、該方法が、
流体のための入口と流体のための出口とを備えるフィルター固定具を用意する工程と、該フィルター固定具の該入口と該出口との間に該多孔質フィルターを組み込む工程と、
該多孔質フィルター材料の細孔を湿潤液で充填するために該材料を湿潤する工程と、
該多孔質フィルターの媒体と該流体出口との間に、液で該フィルター固定具を充填する工程と、
該フィルターの該バブルポイントよりも低い圧力で、該フィルター固定具の該流体入口にガスを提供することによって該フィルター固定具を加圧する工程と、
該フィルター固定具からの液流量を測定する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記フィルター固定具からの測定された前記液流量を、予期される前記液流量と比較する工程を更に含み、測定された前記液流量が予期される前記液流量を超えるならば前記フィルターが前記試験に不合格である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルター固定具の前記入口でガス圧を増大させる工程と、前記液の管路で前記液流の量を測定する工程と、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加圧工程が、異なる圧力段階で圧力を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加圧工程が一定の割合で圧力を増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記加圧工程が、圧力を制御して前記入口で一定な圧力を維持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フィルターがフラットディスククのフィルター材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルターがプリーツ材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
バブルポイントを有する多孔質フィルター材料を含むフィルターの完全性を試験するための方法であって、該方法が、
流体のための入口と流体のための出口とを備えるフィルター固定具を用意する工程と、該フィルター固定具の該入口と該出口との間に該多孔質フィルターを組み込む工程と、
該多孔質フィルター材料の細孔を湿潤液で充填するために該材料を湿潤する工程と、
該多孔質フィルターの媒体と該流体出口との間に、液で該フィルター固定具を充填する工程と、
該フィルターの該バブルポイントよりも低い圧力で、該フィルター固定具の該流体入口にガスを提供することによって該フィルター固定具を加圧する工程と、
該フィルター固定具から変位した該液の質量を秤量する工程と、
該変位した液の体積からガス流量を計算する工程と、
を含む、方法。
【請求項10】
多孔質フィルターの完全性を試験するための方法であって、該方法が、
流体のための入口と流体のための出口とを備えるフィルター固定具を用意する工程と、
該固定具に該多孔質フィルターを配置する工程と、
該フィルターの材料の細孔を湿潤液で湿潤する工程と、
該フィルターの該バブルポイントよりも低い圧力のガスで、該フィルターを加圧する工程と、
該フィルターの下流で液流量を測定する工程と、
を含み、
改良点が、該フィルターの下流に液管路を用意する工程及び該管路で該液流量を測定する工程を含む、
方法。
【請求項11】
前記管路が、0.1未満のFlow Ratioの測定結果を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バブルポイントを有する多孔質フィルター材料を含むフィルターの完全性を試験するための方法であって、該方法が、
流体のための入口と流体のための出口とを備えるフィルター固定具を用意する工程と、該フィルター固定具の該入口と該出口との間に該フィルターを組み込む工程と、
該フィルター材料の細孔を湿潤液で湿潤する工程と、
該多孔質フィルターの媒体と該流体出口との間に、該湿潤液で該フィルター固定具を充填する工程と、
該多孔質フィルター材料の下流に、該湿潤液で充填された液管路を用意する工程と、
該フィルターの該バブルポイントよりも低い圧力で、該フィルター固定具の該流体入口にガスを提供することによって該フィルター固定具を加圧する工程と、
該固定具中のガス流量を測定する工程と、
を含み、
該液管路が、膜を通過する拡散流を減らすために選択される拡散経路長を有する、
方法。
【請求項13】
測定された前記ガス流量を予期される前記ガス流量と比較する工程を更に含み、測定された前記ガス流量が予期される前記ガス流量と同じか、又は少ない場合には、前記フィルターが前記試験に合格であり、測定された前記ガス流量が予期される前記ガス流量を超えるならば前記フィルターは前記試験に不合格である、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−505824(P2013−505824A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531024(P2012−531024)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/049965
【国際公開番号】WO2011/038095
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】