説明

多孔質モノリス材料に収縮性支持材を用いる方法および装置

【課題】液体の流れが多孔質基材の中を通る流れのみに限定され、分離、触媒反応、ろ過などにおいて優れた性能を有する物品を提供する。
【解決手段】物品が、無機材料で作られた支持体に収容されている、または結合されている多孔質無機基材を含み、多孔質基材および支持体は、多孔質基材と支持体との間に液密状態の接触が形成されるように、支持体を多孔質基材上へと収縮させるのに効率的な温度まで加熱されることを特徴とする、製品および装置ならびにその形成および使用の方法が提供される。好ましい態様では、多孔質無機基材は、孔隙率が少なくとも5%であり、ゾルゲル法により形成される多孔質モノリスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析または分取用途および化学処理または触媒反応において有用な構成材、ならびにその作製および使用の方法一般に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質モノリス材料は、ろ過、吸着、および触媒反応などの様々な用途に用いられている。このような材料は、多孔質媒体を支持し同時に保護する収容チューブなどの支持構造と直接接触して、当該支持構造にしばしば組み込まれて含まれ、また一部の用途については、液体または気体の流れを閉じ込める。特定の処理の適切な機能のためには、液体(または気体)を多孔質モノリスを通して流れるように閉じ込め、多孔質モノリスとその支持構造との間に存在する間隙を液体が流れる際に生じるおそれがある、多孔質モノリスの周囲の流れを最小限にすることが重要である場合がある。多孔質モノリスとその支持構造との間隙を通じた漏出は、多孔質材料と液体(または気体)とそこに存在するあらゆる構成材との不十分または制御不完全な接触、クロマトグラフィーピークの拡散拡大、不十分な吸着または触媒反応などをもたらすおそれがある。これらの問題を回避するためには、流体とその構成材の多孔質モノリスとの接触が所望のとおり制御できるよう、多孔質モノリスの端とその支持構造との間の液密(液体がもれる隙間がない)状態または気密状態の接触を提供することが必要である。
【0003】
用途およびその用途に適切な特定材料の選択に応じて、支持構造に関連している多孔質モノリスを含む用途に適した構造を作るために、様々な組立工程が用いられてもよい。しかし、これらの構造の多くは、多孔質モノリスの収縮のために多孔質モノリスが関連する支持体から離れてしまい、端周囲での過度の漏出に見舞われる。例えば、溶媒および高温に対して耐性を有することから、ガラスまたはセラミックなどの無機材料が頻繁に用いられる。これらの材料を用いる構造の製造は、しばしば高温処理工程の使用が必要である。この理由および他の理由から、多孔質材料はしばしば製造中に著しく収縮する。硬質の支持体材料を使用することにより、全製造工程の完了後に内壁に過度の間隙を出現させ、多孔質材料の支持構造に対する固定が不安定になるおそれがある。
【0004】
これらの問題に対する一つの解決策は、収縮して、収容されているまたは関連している多孔質モノリス材料と密接な接触をもたらすことができる収縮性の支持体を提供することである。収縮性ポリマーは周知であり、広範に使用されている。シートの形態では、これらは真空の形成および「収縮ラッピング」において用いられる。チューブの形態では、これらは、ほぼ円柱状の部品の保護、絶縁、および/または支持用の外層の形成に、特に電気用途に頻繁に用いられる。しかし、このようなポリマー材料は、材料の熱および/または化学的耐性が用途に適合しないことから、多くの用途で使用できない。
【0005】
精密金属の製作において一般的な手法は、外部部品の内径を内部部品の外径よりもやや小さく作ることである。外部部品を加熱することにより、内部部品の挿入が可能になるのにちょうど十分なサイズに外部部品のサイズを大きくすることができる。冷却すると、2つの部品は、漏出のない密接な接触および結合剤を用いない堅い結合をもたらす「締まりばめ」の状態になる。しかし、このような手法は、組み付けられるべき2つの部品のサイズが非常に厳密な許容範囲に保てる場合のみに適しており、これは多孔質モノリス材料では不可能であるかもしれない。
【0006】
同様の手法が、真空管、電球などのガラス壁内の電気的なまたは他の金属の貫通接続に用いられる。金属ロッドまたはワイヤーが、穴またはガラス管を通じて挿入される。ガラスが軟化するまで加熱され、穴または間隙が金属の周囲で縮小して真空気密の密閉を形成する。したがって、金属部品に対して密閉をもたらす収縮性媒体としてガラスを使用することが当該技術で知られているにもかかわらず、多孔質モノリス材料を収容しまたは支持している壁と多孔質モノリスとの間に密閉を提供するためには使用されてこなかった。対照的に、ガラスはゾルゲル法により形成される多孔質モノリスを作製するための容器および型として使用されてきたが、乾燥およびか焼の際に多孔質モノリスが支持体の中でゆるみを生じる。この問題は解決されていない。
【0007】
ガラスのゾルゲル法は、オーバークラッドチューブを備えた光ファイバーの製造に用いられている。例えば、Yoonらに対する下記特許文献1およびWangらに対する下記特許文献2は、光ファイバーのオーバークラッドチューブを形成するための、ゾルゲル材料のチューブ状の型への成型、および円筒状のコア部分およびコア部分を同軸状に取り巻くチューブ状のクラッド部分を含むゾルゲル法で生成されたロッドについて述べている。Flemingらに対する下記特許文献3は、オーバークラッドチューブ、基材チューブ、および光ファイバー自体の形成を目的とするゾルゲル材料を押し出す押出過程について述べている。押し出されたチューブは、次に、光ファイバー作製のための加熱を含む、通常の加工条件が施される。しかし、これらの文献には、分析または分取装置などにおける使用に適している、多孔質モノリスとそれを収容する壁との間が液密状態で接触している多孔質モノリスコアを提供するための方法については述べられていない。実際、細孔の存在がファイバーの光学的透明度および透過率を低下させ、したがって光ファイバーの特性に望ましくないことから、光ファイバーの製造で使用されている過程は、多孔質モノリス材料における孔隙率を保持したままでは不適合である。
【0008】
毛細管内部に多孔質モノリスを形成するゾルゲル加工も知られている。しかし、溶融石英の毛細管は融点が非常に高く、モノリスを形成しさらに加工(例えば、乾燥およびか焼)される際に毛細管が多孔質モノリスとの接触を維持するように収縮する十分な高温で毛細管および多孔質モノリスを加熱するのは、まさに光ファイバーの作製の場合のようにモノリスの多孔性を破壊するだろう。そのため、代替の解決方法が模索されてきた。例えば、Nakanishiらに対する下記特許文献4は、キャピラリークロマトグラフィーカラムを作る過程について述べており、そのなかで、毛細管内部の多孔質材料は多孔質材料のゲル化ケイ酸構成材に対する毛細管壁の親和性の効果により毛細管と液密状態で接触しているとされている。この特許は、多孔質材料と毛細管との間に液密状態の接触を形成するために収縮性PTFE毛細管を用いることについても述べている。しかし、PTFEは、ゾルゲル法で形成された脆い多孔質モノリスに対する十分な支持を提供せず、またゾルゲルモノリスをか焼し有機不純物を除去する十分な温度にまで加熱することができない。さらに、該特許文献は内表面に必要とされる毛細管の特別な処理を教示している。
【0009】
Nakanishiらに対する下記特許文献5は、溶融石英の毛細管内部に多孔質モノリスを形成のための同様の過程について述べている。Malikらに対する下記特許文献6も、毛細管の壁に対するモノリスの化学的固定について述べている。さらに、Malikに対する下記特許文献7は、溶融石英の毛細管の内部に形成されたゾルゲル固定相の調製について述べており、毛細管の内部表面上のシラノール基との縮合反応の結果として、ゾルゲルが毛細管の壁に化学的に結合されていることを報告している。毛細管は、さらに350℃まで加熱して処理することもできる。しかし、前述の手法は、毛細管に存在するような小さいサイズを扱う場合のみで有用であり、そのような直径は、一般的に1mm未満であり、典型的には0.1mm未満である。例えば、Malikにより使用された溶融石英の毛細管の最大径は、わずか直径0.25mmであり、このような小さい直径は用途および方法の実用性を限定する。
【0010】
多孔質モノリスとそれを収容する構造との間の漏出および間隙を最小化する上で、特にゾルゲル法を用いて調製する際に直面する、もう一つの問題は、製造過程の乾燥工程の間に、収縮または亀裂が生じることである。乾燥の間に発生する毛細管のストレス(応力)を減らすためにモノリスの細孔サイズを大きくすることに焦点を当てた、亀裂を減らす方法が試みられてきた。例えば、Popeに対する下記特許文献8は、シリカ粒子を移動させて多孔質ゲルマトリクスの小さい細孔を埋めて平均細孔サイズを大きくすると報告されている、熱水エージング処理をゲルに施すことについて述べている。Wangに対する下記特許文献9は、液体除去過程の第1段階の終了時のゲルの密度は、約15%ないし35%の間の線寸法の収縮に相当すると述べている。しかし、これらの追加加工工程は時間がかかり、製造するには製品が高価すぎる。
【0011】
Hollowayに対する下記特許文献10は、収縮が最小限であるヒドロゾルを収容する、クロマトグラフィーカラムの作製方法について述べており、このヒドロゾルが、第1の体積、およびモノリスを形成するために導入されたあとの第2の体積を有するとすると、第2の体積は第1の体積の少なくとも約95%であることを述べている。ヒドロゾルは、SiO濃度が約5g/ml未満、または約3g/mlないし5g/mlの間であると述べられている。特許はさらに、シネレシス(離液)防止とSiO濃度が低すぎることに起因する脆いシリカの生成との間のバランスをとらなければならないと述べている。ヒドロゾルがヒドロゲルに進む際のこの「シネレシス」の減少または体積の縮小は、移動相が固定相の一部を効果的にバイパスする時に引き起こされる問題であって、クロマトグラフィー分離の間の構成成分の分離不良を引き起こす分解能の問題を回避すると報告されている。しかし、収縮を低減させて多孔質モノリスを生成するためのこれらの過程は、ゲル組成、孔隙率、および細孔サイズ分布の制御を犠牲にして機械的強度に欠けた多孔質モノリス材料を生成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,922,099号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0148053号明細書
【特許文献3】米国特許第6,080,339号明細書
【特許文献4】米国特許第6,562,744号明細書
【特許文献5】米国特許第6,531,060号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0213732号明細書
【特許文献7】米国特許第6,783,680号明細書
【特許文献8】米国特許第5,023,208号明細書
【特許文献9】米国特許第6,620,368号明細書
【特許文献10】米国特許第6,210,570号明細書
【特許文献11】米国特許第7,125,488号明細書
【特許文献12】米国特許第4,323,654号明細書
【特許文献13】米国特許第3,926,649号明細書
【特許文献14】米国特許第7,141,675号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2003/0150811号明細書
【特許文献16】米国特許第5,009,688号明細書
【特許文献17】米国特許第5,624,875号明細書
【特許文献18】米国特許第6,207,098号明細書
【特許文献19】米国特許第5,100,841号明細書
【特許文献20】米国特許第6,398,962号明細書
【特許文献21】米国特許第6,541,539号明細書
【特許文献22】米国特許第6,592,764号明細書
【特許文献23】米国特許第6,884,822号明細書
【特許文献24】米国特許第7,026,362号明細書
【特許文献25】米国特許第7,125,912号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2006/0131238号明細書
【特許文献27】米国特許第3,480,616号明細書
【特許文献28】米国特許第6,797,174号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2003/0230524号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Mikail,R外(1968)J. Colloid Interface Sci. 26, 45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、多孔質モノリス材料の外部表面に適用でき、間隙を最小限にし、より密接な接触をもたらし、漏出を低減する収縮性支持体材料が依然として必要とされている。
したがって、本発明の主たる目的は、クロマトグラフィー、ろ過、精製、触媒反応などのために用いられる多孔質材料の外部表面に適用することができる無機収縮性支持体を提供することによって、前述の技術上の必要性に取り組むことである。このような材料を用いる構造の製造方法も必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、無機材料で作られた支持体に収容されている、または結合されている多孔質無機基材(支持された多孔質基材)を含む、製品または装置(もしくは製品または装置の構成部品)が提供され、前記多孔質基材および支持体は、多孔質基材と支持体との間に液密状態の接触が形成されるように、支持体を多孔質基材上へと収縮させるのに効率的な温度まで加熱される。したがって、前記物品は、多孔質基材を通した限定された(閉じ込められた)液体の流れを提供し、液体の流れは多孔質基材をバイパスすることはできないことから、分離、触媒反応、ろ過などにおいて優れた性能を提供する。
【0016】
好ましくは、多孔質無機基材の総孔隙率は少なくとも5%である。一部の実施形態では、多孔質基材は少なくとも60%の総孔隙率により特徴づけられており、また一部のさらなる実施形態では、多孔質基材は約85%ないし約97%の総孔隙率により特徴づけられている。一部の実施形態では、多孔質基材は約2nmないし約100nmのメソ細孔モード分布により特徴づけられており、別の実施形態では、多孔質基材は約8nmないし約50nmのメソ細孔モード分布、および少なくとも約0.2cc/g(cm/g)、より好ましくは約0.5cc/g(cm/g)のメソ細孔により特徴づけられている。特に好ましい実施形態では、多孔質無機基材は、無機材料を含み総孔隙率が少なくとも5%である多孔質モノリス(「支持された多孔質モノリス」)である。一部の実施形態では、多孔質モノリスは約2nmないし約100nmのメソ細孔モード分布により特徴づけられており、別の実施形態では、多孔質モノリスは約8nmないし約50nmのメソ細孔モード分布、および少なくとも約0.2cc/g(cm/g)、より好ましくは約0.5cc/g(cm/g)のメソ細孔により特徴づけられている。しかし、多孔質無機基材の孔隙率および具体的な細孔特性は限定されず、特定の用途に適合するように選択することができる。
【0017】
特定の実施形態では、支持体を多孔質無機基材上へと収縮させるのに効率的な温度は、支持体を収縮させて多孔質無機基材との液密状態の接触形成を可能にする、支持体を軟化させるのに効率的な温度(例えば、軟化温度)である。好ましくは、支持体を多孔質モノリス上へと収縮させるのに効率的な温度は、多孔質モノリスの細孔分布に影響を与えない。特定の実施形態では、支持体を多孔質モノリス上へと収縮させるのに効率的な温度は約2000℃未満であり、より好ましくは約1000℃未満である。
【0018】
特定の実施形態では、支持体の内部(例えば、未加熱の末端部)に真空が施され、真空の適用は収縮が生じる温度の低下をもたらす。多孔質無機基材(任意で所望の組成、孔隙率および/または細孔特性をもつ、モノリスまたは非モノリス基材の選択)および支持体(特定の軟化温度をもつ)の適切な選択、ならびに適切な条件(例えば、支持体に適用される真空の有無)で収縮工程を実施することにより、所望の孔隙率および/または細孔特性ならびに多孔質基材と支持体との間の液密状態の接触を有する、物品または装置を得ることができる。
【0019】
一部の実施形態では、多孔質無機基材および支持体は、初期的には間隙により分離されており、支持体の軟化に効率的な温度まで加熱する際に、間隙が最小限になり多孔質基材と支持体とが液密状態で接触するように支持体が多孔質無機基材上へと収縮する。さらなる実施形態では、多孔質無機基材は、支持体と多孔質モノリスとの間に間隙が存在することなく支持体内に形成され(例えば、ゾルゲルモノリスが形成される)、か焼される際の多孔質モノリスの収縮と同時に、または多孔質モノリスがか焼される後に、少なくとも最終処理温度に達したときに支持体と多孔質モノリスとの間の間隙がなくなるように、支持体を収縮させるために次の加熱が行われる。いくつかの実施形態では、過程のあらゆる段階で支持体と多孔質モノリスとの間の間隙がない。別の実施形態では、支持体に、収縮が生じる温度を下げるのに十分な真空が施される。
【0020】
一部の好ましい実施形態では、多孔質無機基材および支持体は円柱(円筒)状の形状である。特定の実施形態では、支持体は約1mmより大きい内径を備える。さらなる実施形態では、支持体は約1mm未満の内径を備える。特に好ましい実施形態では、物品は、クロマトグラフィー、触媒反応、吸着、ろ過、燃料電池、光電子工学、センサー技術、または水素貯蔵に、また最も好ましくは、クロマトグラフィーカラムとしてクロマトグラフィーにおける使用に適合される。
【0021】
一部の態様では、多孔質無機基材は、無機材料または無機‐有機ハイブリッド材料を含み、特定の実施形態では、無機材料はガラスまたはセラミック材料を含む。好ましくは、無機材料は、好ましくはSi、Ge、Sn、Al、Ga、Mg、Mb、Co、Ni、Ga、Be、Y、La、Pb、V、Nb、Ti、Zr、Ta、W、Hfの酸化物、またはそれらの組合せから選択された金属または半金属酸化物を含む。
【0022】
ある態様では、多孔質無機基材は、ゾルゲルを形成するゾルゲル反応をすることができる水酸(ヒドロキシル)基または加水分解性リガンドを有する一つ以上のゾルゲル前駆物質を用いるゾルゲル法により形成された多孔質モノリスである。適した加水分解性リガンドとしては、それだけに限定されないが、ハロゲン、アルコキシ、アミノまたはアシルオキシなどがあげられる。特定の実施形態では、ゾルゲル前駆物質はさらに有機置換基を含むこともでき、例えばアルコキシシラン、ハロシラン、アシルオキシシラン、またはアミノシランなどのオルガノシラン類を含み、さらに例えば、飽和または不飽和ヒドロカルビル置換基、アリール置換基、またはそれらの混合などの有機置換基を含むこともできる。典型的なアルコキシシラン類としては、例えばアルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、フェニルアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルアルコキシシラン、もしくはナフチルトリアルコキシシラン、またはそれらの混合物などを挙げることができる。有機置換基を含むゾルゲル前駆物質は、有機ゲルマニウム類などのその他の有機金属化合物、または有機置換されたチタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、もしくはバナジウムアルコキシドなども含むことができる。別の好ましい実施形態では、シランはトリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランを含むシラン類の混合物である。別の実施形態では、多孔質モノリスは、モノリスを形成するように改変された粒子から形成される。
【0023】
特定の実施形態では、結合相の導入(例えば、オルガノシランまたはエンドキャップ試薬との反応を介して)によって、触媒的機能性の導入(例えば、プラチナ(白金)、酵素などのタンパク質、リボザイムなどの核酸)によって、構造再設計(リモデリング)(例えば、マトリクス溶解触媒、または熱水処理を用いて)によって、またはセンサー(感知剤)の導入(例えば、色素または酵素)によって、多孔質モノリスの孔隙率、化学的性質、吸着性、または触媒反応の特性が改変されるが、これらの用途にのみに限定はされない。あるいは、多孔質モノリスは、触媒機能性、結合相、構造再設計、またはセンサーなどを提供する、改変された特性をもたらす構成材を用いて形成することもできる。
【0024】
特定の実施形態では、支持体はガラスまたはセラミック材料を含む無機材料から作られる。好ましくは、支持体は非多孔質である。特定の実施形態では、支持体はゾルゲル法を用いて形成される。
一部の態様では、物品はポリマーの外層をさらに含み、ネジ付きの末端部を備えることができる。好ましくは、ポリマーの外層は液晶ポリマー、熱可塑性ポリマー樹脂、または熱硬化性ポリマー樹脂である。特定の実施形態では、ポリマー外被覆は、ポリアリールエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0025】
さらなる実施形態では、無機支持体と液密状態で接触している多孔質無機基材を含む物品の形成方法であって、a)多孔質無機基材を、無機材料を含む収縮性支持体に組み付ける工程と、b)多孔質基材と支持体との間が液密状態で接触するように、支持体を多孔質無機基質上へと収縮させるのに効率的な温度まで物品を加熱することによって、支持体を多孔質無機基材上へと収縮させる工程とを含むことを特徴とする、方法が提供される。
【0026】
ある態様では、多孔質無機基材は無機材料または無機‐有機ハイブリッド材料を含み、特定の実施形態では、無機材料はガラスまたはセラミック材料を含む。好ましくは、無機材料は、好ましくはSi、Ge、Sn、Al、Ga、Mg、Mb、Co、Ni、Ga、Be、Y、La、Pb、V、Nb、Ti、Zr、Ta、W、Hfの酸化物、またはそれらの組合せから選択された金属または半金属酸化物を含む。
【0027】
好ましい態様では、多孔質無機基材は、ゾルゲルを形成するゾルゲル反応をすることができる水酸(ヒドロキシル)基または加水分解性リガンドを有する一つ以上のゾルゲル前駆物質を用いる、ゾルゲル法により形成された多孔質モノリスである。適した加水分解性リガンドとしては、それだけに限定されないが、ハロゲン、アルコキシ、アミノまたはアシルオキシなどが挙げられる。特定の実施形態では、ゾルゲル前駆物質はさらに有機置換基を含むこともでき、例えばアルコキシシラン、ハロシラン、アシルオキシシラン、またはアミノシランなどのオルガノシラン類を含み、さらに例えば、飽和または不飽和ヒドロカルビル置換基、アリール置換基、またはそれらの組み合わせなどの有機置換基を含むこともできる。別の実施形態では、多孔質モノリスは、モノリスを形成するように改変された粒子から形成される。
【0028】
好ましくは、物品は、無機材料から作られる支持体内に無機多孔質モノリス固定相を含むクロマトグラフィーカラムであり、このクロマトグラフィーカラムの製造方法は、多孔質無機モノリスと支持体との間の液密状態の接触を提供する。クロマトグラフィーカラムの作製に使用される場合、好ましくは、この方法はクロマトグラフィー効率の上昇、ならびに分離、およびピークの形状、ピークの高さなどの改善を示し、ならびに多孔質無機基材と支持体との間に液密状態の接触を提供しない先行技術の方法に対して、容易で製造コストが低いカラムを提供する。
【0029】
特定の実施形態では、多孔質モノリスは、前記収縮性支持体とは別に形成され、収縮前に支持体の内部に挿入される。さらなる実施形態では、多孔質モノリスは、収縮前に前記収縮性支持体の内部で形成される。
好ましくは、収縮性支持体は、ガラスまたはセラミックなどの無機材料から形成される。特定の実施形態では、収縮性支持体は、ゾルゲル法により作られる。
【0030】
特定の実施形態では、物品は、クロマトグラフィー、触媒反応、吸着、分離、ろ過、燃料電池、光電子工学、センサー技術、または水素貯蔵に、またより好ましくは、クロマトグラフィーにおける使用に適合される。一部の実施形態では、方法は、ガラス、金属、もしくはポリマー、またはそれらの組合せを含む外部保護層を提供することをさらに含む。ポリマーの外部層は、被覆、収縮、押出、またはオーバーモールド法など、当該技術で周知のあらゆる方法により適用することができる。好ましい実施形態では、この物品はクロマトグラフィー、ろ過または精製、触媒反応、環境または医療用センシング、燃料電池におけるエネルギー生成、水素貯蔵、光電子工学装置における光学スイッチに使用される。
【0031】
特定の好ましい実施形態では、ガラス管の内部に入れられている多孔質モノリスを含むクロマトグラフィーカラムが提供され、このクロマトグラフィーカラムは、ゾルゲルから多孔質モノリスを形成しガラス管へ組み付け、多孔質モノリスとガラス管との間が液密状態で接触するように、ゾルゲルをか焼しガラス管を収縮させるために組付部品を加熱したものである。特定の実施形態では、多孔質モノリスはガラス管の内部で形成され、か焼される。一部の実施形態では、加熱は、ゾルゲルを乾燥させ、ゾルゲルをか焼し、ガラス管を収縮させる複数の段階で実施される。さらなる実施形態では、加熱は単一の温度がプログラムされた工程で実施される。
【0032】
さらなる態様では、試料中の被分析物の混合物の分離方法が提供され、当該方法は、a)ガラス管の内部に入れられた多孔質モノリスを含むクロマトグラフィーカラムであって、多孔質モノリスとガラス管との間が液密状態で接触するように、前記カラムが、ガラス管を収縮させるために加熱されたものである、クロマトグラフィーカラムを提供する工程と、b)試料をクロマトグラフィーカラムに適用する工程と、c)クロマトグラフィーカラムを移動相で溶出する工程と、d)クロマトグラフィーカラムから溶出する分離された被分析物を回収する工程とを含むことを特徴とする。
【0033】
本発明のさらなる目的、利点、および新たな特徴は、以下の説明の一部分に述べられ、一部は下記の試験で当業者に明らかになるか、または、本発明の実践により学ばれるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】多孔質モノリスロッドが収縮性チューブに挿入され、加熱されてチューブをロッド上に収縮させる、本発明の一実施形態を示す。
【図2】ゾルゲル法により収縮性チューブ内で多孔質モノリスが形成され、多孔質モノリスおよびチューブをともに加熱してロッドをか焼し、収縮性チューブをロッド上に収縮させる、本発明の第二の実施形態を示す。
【図3A】各末端部にネジ付き取付具を備えている熱可塑性オーバークラッドを示した、クロマトグラフィー用に適合するようにされている本発明の実施形態を示す。
【図3B】図3Aに示されているクロマトグラフィーカラムにおける横断面であり、外側の熱可塑性オーバークラッド、収縮性チューブ、および内部の多孔質モノリスを示す。
【図4】実施例1の実施形態により実施された、被分析物の優れた分離を明示しているクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
I.定義および概要
本発明を詳細に述べる前に、本発明は他に明示されない限りは、特定の無機基材、ゾルゲル調合、ガラス、多孔質媒体、表面処理、クロマトグラフィー方法、ろ過および精製構造、または触媒反応構造などに限定されないことが理解されるべきであり、それらは変化してもよい。また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態のみについて述べることを目的として、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解されるべきである。
【0036】
本明細書および特許請求の範囲において用いられるように、単数形の「一つの(a)」「一つの(an)」および「前記(the)」は、文脈が明らかにそうでないと指示しない限りは、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。すなわち、例えば、「金属酸化物(a metal oxide)」という言及は2種以上の金属酸化物を含み、「支持体(a support)」という言及は2つ以上の支持体を含む、などである。
【0037】
数値の範囲が与えられている場合、上限と下限の間の範囲に挟まれた各値で、文脈が別の態様で明示しない限りは下限値の単位の10分の1まで、およびその提示された範囲内において他に提示された、または間に挟まれた値は、本発明の範囲内に含まれることが理解される。これらのより狭い範囲の上限および下限値は、独立して狭い範囲内に含まれてもよく、提示された範囲内の明確に除外されるあらゆる制限を前提として、本発明の範囲内にも含まれる。述べられた範囲が一つまたは両方の限界値を含む場合、その含まれた限界値のいずれか一方または両方を除く範囲も、本発明に含まれる。
【0038】
本明細書で用いられるように、「孔隙率」の用語は、多孔質無機基材において開口しており、固体材料で占められていない体積(容積)の割合を示し、気体(例えば、窒素もしくは空気、もしくは気体移動相)または液体(例えば、液体移動相)で占められる体積の割合を含むことが出来る。一般的に孔隙率は少なくとも5%であるが、孔隙率は特定の用途に相応しいように選択することもできる。
【0039】
本明細書で用いられるように、「マクロ細孔」の用語は、直径が約0.05μm(50nm、または500Å)を越える細孔を表し、「メソ細孔」の用語は、直径が約2nmないし50nm(20Å〜500Å)の細孔を表し、「ミクロ細孔」の用語は、直径が約2.0nm(20Å)未満の細孔を表す。
本明細書で用いられるように、「総細孔体積(容積)」の用語は、モノリスの細孔の総体積を表し、通常、cm/gまたはcc/gで表される。総細孔体積は、水銀圧入測定法により測定することができ、Hgが高圧下で細孔に注入される。
【0040】
「BET表面積」の用語は、BET法による表面積の測定を表し、一点または多点分析のいずれかにより測定することができる。例えば、多点窒素吸着測定は、Micromeritics TriStar 3000装置(Norcross,GA)で実施できる。次に、比表面積を多点BET法により算出することができ、モード細孔径は細孔体積分布の対数微分のうち最も頻度が高い直径である(dV/dlog(D)対D)。メソ細孔体積は、P/P=0.98における一点総細孔体積として算出される。
【0041】
「モノリス」の用語は、ある体積に詰め込まれた不連続な粒子の集合とは対照的に、単一要素内に連続的な相互結合している細孔構造をもつ多孔質の三次元材料を表す。
本明細書で用いられるように、「液密状態の接触」の用語は、液体の流れが、支持体によって多孔質無機基材を通した流れのみに制限されるよう支持体が収縮して、支持体と多孔質無機基材とが接触し、実質的に液体が多孔質無機基材と支持体との間を流れない状態を表す。液密状態の接触は、気密状態の接触も含む。また、液密状態の接触は、多孔質基材および支持体が密接な接触状態になった時点で形成することができる、支持体と基材との間の化学的結合(例えば、シラノール縮合)も含むことができる。例えば、クロマトグラフィーでの使用に適用された場合、液密状態の接触は、被分析物の分離およびピークの左右対称の形状の出現により実証することができる。多孔質無機基材と支持体との間の移動相の漏出は、被分析物の分離状態が良好でないか分離されない、そしてピークの形状が悪いという結果をもたらす。優れた分離およびピークの形状が、実施例4で得られており、したがって、本方法を用いて液密状態の接触が達成可能であることを実証している。
【0042】
本発明は、クロマトグラフィーカラム、ろ過、触媒反応構造、光学装置(導波路など)、燃料電池、水素貯蔵装置など、独特の物品およびその形成方法に関し、多孔質無機基材と非多孔性無機支持構造との間に液密状態の接触が提供される。本発明の発明者は、驚くべきことに、収縮性無機材料を加熱して、多孔質基材の外部表面と液密状態で接触するよう収縮または縮小することができ、その結果、優れた特性および性能をもたらすことを発見した。実務家は、クロマトグラフィーカラムおよび同様の装置の作製にこれらの材料を広範囲にわたって用いてきたが、本発明の発明者は、無機支持体を加熱して、多孔質ガラスモノリスなどの多孔質基材の外部表面と液密状態で接触するよう収縮させることができ、またこの特性を、優れた性能をもち、使用および製造が容易な製品の製造に使用できることを、発明者が現在知る限り、初めて発見した。
【0043】
したがって、無機材料から作られる支持体の内部に収容されている、または支持体によって結合されている多孔質無機基材を含む支持された多孔質基材が提供され、前記多孔質基材および支持体は、多孔質モノリスと支持体との間が液密状態で接触するように、支持体を多孔質基材上に収縮させるのに効率的な温度まで加熱される。したがって、物品は、多孔質基材を通した流れのみに制限された液体の流れを提供し、液体の流れは多孔質基材をバイパスすることができず、その結果、分離、触媒反応、ろ過などにおいて優れた性能を提供する。好ましくは、多孔質無機基材は多孔質モノリスであり、したがって、支持された多孔質モノリスが提供される。
【0044】
記載されている方法は、孔隙率が高い構造とともに使用される場合、脆いまたは使用環境条件の影響を受けやすい基材、腐食性の溶媒または気体を使用する用途、高温で操作する用途、およびガラスまたはセラミック材料が好まれるまさにあらゆる用途、ならびに端の漏出が許容出来ない場合において特に有用である。本明細書に記載される装置および方法は、液体(流体)の流れを多孔質ベッド、特にモノリスベッドのみを通した流れに限定する用途に特に有用であり、多孔質基材と支持構造との間の密接な接触は、この2つの間に液体を流れさせない、すなわち、それらの間に液密状態の接触があることから有利である。
【0045】
このような構造は、個別のあらゆる用途の必要性に適したあらゆるサイズまたは形状であってもよい。例えば、クロマトグラフィー用途では、構造は、直径が細い(例えば、10μm〜1mmの内径)毛細管の形であり、特に分析的用途において有用である可能性があり、一方、クロマトグラフィー分取用途においては、構造は、より直径が太い(例えば、内径が1mm以上、6インチ以下、もしくはそれより大きい)チューブなど、より大きいものである可能性がある。理論的にはサイズには制限はなく、装置の寸法はもっぱら実際の用途の制約から決定することができる。一部の用途では、さらに一層太い直径のチューブが用いられてもよく、非チューブ状の構造も使用されてもよい。より小さい構造が、微細加工装置用にも検討されてもよい。本発明は、十分な材料および加工される部品の処理に十分なサイズの加工機器のみを必要とする任意の適切なサイズ範囲内で部品を作製するために応用することもできる。
【0046】
多孔質基材および収縮性支持体両方の材料は、一連の市販の供給源または適合するようにした特注生産品から選択することもできる。例えば、無機多孔質基材は、無機クロマトグラフィー媒体、フィルター媒体、燃料電池の構成要素、センサーおよびセンサーアレイ、光電子工学装置、水素貯蔵媒体または触媒支持媒体を、任意で、特定の分析的測定、化学処理、吸着過程、光学特性などを可能にするのに適したあらゆる表面処理とともに含むこともできる。多孔質無機基材は、液体または気体の流れがある状態で使用するために、孔隙率が制御された媒体としての役割を果たすこともでき、特定のサイズの粒子を機械的にろ過する役割を果たしてもよく、または精製、触媒反応、エネルギー生成用などに、表面積が大きい反応または吸着表面としての役割を果たしてもよい。
【0047】
同様に、収縮性支持体は、加熱することによって収縮または縮小させることができ、多孔質無機基材を損なわない、任意の適した材料から製造することができる。例えば、許容可能な加工温度で軟化し十分に収縮する限りは、任意のガラスまたはセラミック材料または金属類が適しているかもしれない。特定の実施形態では、ゾルゲル成型または押出法により作られたガラスまたはセラミック管が用いられる。また、支持体は特定の用途に有用であるなら、支持体自体が多孔質であってもよい。好ましい実施形態では、ガラスまたはセラミック管は、従来の押し出しによるまたは引き出しによる製品であってもよい。
【0048】
一般的に、2つの基本的な方法を用いて、多孔質基材を支持体基材と液密状態で接触させるよう組み立てる。図1Aを参照すると、一実施形態において、多孔質無機基材である多孔質モノリス10は、まず適切な方法により作製することができる。次に、それを収縮性支持体11の開口部に挿入することができる。組立部品に対して熱が与えられ、支持体と多孔質モノリスとの間に液密状態の接触を備える構造12を形成するように、支持体11が収縮して多孔質モノリス10に対し液密状態の接触をもたらす。
【0049】
図1Bを参照すると、別の実施形態において、多孔質無機基材は、収容する支持体22を、適した前駆物質材料20で満たすことによって、その場で作製することもできる。好ましい実施形態では、前記前駆物質材料は、密閉24により支持体内に保持されるゾルゲルであり、その場で乾燥させることができる、もしくは乾燥を早めるために加熱することができる、またはその両方とすることもできる。予め乾燥されていない場合には、組立部品に施される熱は、多孔質無機基材をモノリス乾燥ゲル21へとさらに変化させることもできる。望まれる場合、か焼温度へのさらなる加熱により、多孔質モノリスをさらにか焼することができる。加熱は、支持体を多孔質モノリスと液密状態で接触する完成した構造23へと収縮させる役割も果たす。所望の変化が生じる温度範囲および時間は、支持体基材が最終サイズまで収縮する前に多孔質モノリスが乾燥および収縮を完了するように、容易に調節することができる。
【0050】
特定の実施形態では、多孔質基材は、モノリスではない多孔質固体であってもよい。例えば、多孔質基材10は、圧縮された多孔質粒子で形成することもできる。図1Aに説明されるように、支持体は、収縮して支持体11と液密状態で接触することができる。
図1Bで明らかにされる基本的な過程は、非モノリス多孔質媒体を用いて使用することもできる。支持体22は、粒子が塊になるか融合し、粒子状の多孔質基材がモノリスになるように、表面反応により、または焼結によりさらに改変することもできる粉末またはビーズなどの粒子で満たすこともできる。上記工程を組み合わせて用いることもできる。
【0051】
これらの実施形態のいずれかにおいて、支持体の内部を真空にし、真空が存在しない状態で必要とされるよりも一層低い温度で、支持体を、多孔質無機基材上に収縮させることもできる。例えば、約20水銀柱インチの真空処理は、収縮に必要な軟化温度を約100から150℃下げるために提供することもできる。本発明の開示に照らして、支持体に対する軟化温度および多孔質モノリスに対するか焼または焼結温度を、真空を施す場合、または施さない場合の条件下で適切に選択できることを、当業者は容易に想定することができる。
【0052】
前述の実施形態のいずれかにおいて、適切である場合は、支持体の収縮の前または後のいずれかで表面改変を実施してもよい。例えば、結合相を多孔質無機基材に導入することもでき、または残留シラノールを低減するために、多孔質無機基材をエンドキャップ化することもできる。一般的に、任意の有機部分の導入は、加熱を避けるために収縮工程が実施された後に行われる。例えば、Liに対する上記特許文献11に述べられているように、表面の準備および極性結合相の導入も、この段階で実施することができる。
【0053】
さらに、保護を提供するおよび/または完成した物品を機器に容易に組み入れられるように、さらに任意で外部保護層または被覆(例えば、ガラス、金属またはポリマー層)が、被覆、成型、オーバーモールド法またはその他の方法により施されてもよい。好ましくは、外部ポリマー層は、液晶ポリマー、熱可塑性ポリマー樹脂、または熱硬化性ポリマー樹脂である。特定の実施形態では、ポリマー外被覆は、ポリアリールエーテルエーテルケトン(PEEK)である。所望の任意の用途の機器へ容易に組み立てられるように、ネジ付き末端部、または流入アダプターなどの形状を備えた物品を提供するために、ポリマー外被覆を用いることもできる。
【0054】
図2に示されるように、ネジ付き末端部30を備えた熱可塑性樹脂層は、クロマトグラフィーカラム31を形成するために、支持された多孔質基材上にオーバーモールドすることもできる。断面図は、収縮性ガラスまたはセラミックのチューブが、多孔質モノリスを、熱可塑性樹脂外部層の内部に含んでいることを示している。他の実施形態では、プラスチックまたはゴム被覆が、浸漬、スプレー、または加熱収縮により施される場合もある。同様に、物品の周りを包むこと、または挿入または別の方法により、他の材料が、完成した支持基材上に組み立てられてもよい。
【0055】
図3は、図2について述べられたように液晶ポリマー被覆を用いて形成された、実際のクロマトグラフィーカラムの写真を示す。図3Bでは、図3Aのクロマトグラフィーカラムを切断することにより得られる断面が示されている。断面は、多孔質モノリスが支持体と液密状態で接触しており、多孔質モノリスと支持体との間に間隙が見えず、したがって、クロマトグラフィー分離を行うのに適したクロマトグラフィーカラムが提供されていることを示している。
【0056】
様々な態様および実施形態が以下にさらに詳細に説明されよう。
II.支持体
支持体は、多孔質無機基材を支持することができる、および/または内部に収容することができる、および適した温度で軟化することができるという使用目的に適した任意の形状およびサイズとすることができる。支持体の形状は、制限無しに、実質的に平面的または湾曲し、チューブ状または円筒状、正方形またはひし形などの形状であってもよい。軟化温度に加熱することによって支持体が多孔質無機基材と液密状態の接触を提供するかぎりは、支持体は、多孔質無機基材を取り巻いて収容する壁の形にすることもでき、または認識可能な壁構造が欠けたバルク形状とすることもできる。
【0057】
支持体は、基材に対して支持と制御を提供し、多孔質無機基材を関連する機器と接触して配置されるか、または関連する機器と機能的な関係を築くことができるようにする意味で、多孔質無機基材を「収容」する。基材は、脆くてもよく、かつ/または曝露されている、もしくは曝露されていない空気もしくは特定の気体もしくは液体などの制御された環境条件下に維持される必要があってもよく、また支持体は特定用途での使用の所望の機械的、化学的、電気的などの環境を提供するために基材を収容することもできる。例えば、支持体が、多孔質基材の表面を損傷させずに、もしくは多孔質基材にとって望ましくない環境条件に曝露させずに多孔質基材を筺体または別の装置に挿入する手段を提供する場合、または多孔質基材を機器の一部にすることができる場合には、多孔質無機基材は支えられる。
【0058】
一部の実施形態では、多孔質無機基材は円柱状であり、支持体はチューブ状であって、多孔質基材を軸に沿って収容しているが、どちらかの末端部が開口している、または部分的に開口している。しかしながら、多孔質基材は、支持体の両末端部に収容されてもよく、または例えば支持体が多孔質基材の表面全体ではなく一部を覆っている場合には、一部分のみが収容されてもよい。さらなる実施形態では、多孔質基材は、実質的に平面状または二次元的とすることもでき、支持体は、前記基材を、制限無しに、一方の面のみ、または両面、または端のみを収容することもできる。実際、当業者は、本明細書に述べられている用途のために、多孔質基材および支持体の数多くの考えられる配置および形状を容易に想定することができる。
【0059】
好ましい実施形態では、支持体は多孔質モノリスを収容するためのチューブの形で提供される。一実施例において、支持体はゾルゲルモノリスから当該技術で周知の任意の方法により形成することができる。例えば、チューブ状の支持体は、ゾルゲルチューブが形成され、亀裂の形成を低減するために外側から乾燥される、Yoonに対する上記特許文献1に述べられている過程や、例えば、Flemingに対する上記特許文献3に述べられている、ゾルゲル押出過程により形成することができる。
【0060】
別の好ましい実施形態では、支持体は、例えば低融点ホウケイ酸ガラスなどのガラスから形成されたチューブの形であり、多孔質無機基材は、多孔質モノリスであり、ガラスチューブの内部の多孔質モノリスの組立においては、組立部品がガラスチューブの軟化点まで加熱され、ガラスチューブは軟化または融解して多孔質モノリスとガラスチューブとの間に液密状態の接触を備えた組立部品を形成する。
【0061】
別の実施形態では、必要に応じて、さらなる支持体を含むこともできる。例えば、多孔質無機基材は、ガラスチューブ内部で組み立てることもでき、組立部品全体を、第二のより大きいガラスチューブの内部に配置することもできる。保護、または完成した装置もしくは機器に組み立てられる必要がある場合、追加の外部保護層(例えば、金属またはポリマー)が含まれてもよい。所望の形状および支持される基材との接触を提供するために、追加層をさらに改変するために、さらなる加工工程(例えば、加熱して焼きなまし、焼き戻し、または収縮させる)も可能である。
【0062】
当業者は、所望の融解または軟化温度、厚さ、形状、機械的および/または電気的特性、酸/塩基/溶媒に対する耐性などを備えた、適切な支持体および支持体の組成を容易に想定することができるだろう。一般的な支持体は、シリカをベースとするガラスを含み、このガラスは純粋なもの(例えば、石英)であっても、または所望の品質を提供するために、適したドーパントでドープされてもいてもよい。例えば、光学的品質のガラス、光ファイバーなどの作製に使用される溶融石英は、およそ1800〜2000℃の高温で融解し、1580℃で軟化し、およそ1700℃の低い温度で収縮することができる。非シリカ成分の存在がガラスの熱特性を低下させる。例えば、ホウケイ酸ガラスはおよそ750〜900℃のより低い温度で軟化し、一方、ソーダガラスはおよそ700℃で軟化する。表1は、一部の代表的なガラスとそれらが軟化するおよその温度とを示す。ガラスの特性を変化させる様々な量の添加物が存在するため、示されたデータは、一部のガラスについてはおおよその値であり、より正確な軟化温度を確認するために、技術仕様書が製造業者から入手可能である。例えば、DURAN(登録商標)の軟化温度は825℃であり、一方、PYREX(登録商標)の軟化温度は812℃である。
【0063】
【表1】

【0064】
一部の更なるガラスは、本発明の範囲の代表であるが、本発明はいずれかの特定のガラスに限定はされない。例えば、AF45(Schott North America,Inc.,Elmsford,NY)は、BaOおよびAlが高い割合で含まれる無アルカリホウケイ酸ガラスである。D263Tは、高純度の原材料を用いて製造されるホウケイ酸ガラスである。VYCOR(登録商標)は、Corning Specialty Materials,Corning.NYにより販売されている高温での用途(900℃以下)に適している96%石英ガラスに対する商標である。ガラスの軟化温度は、一般的にそのTg(ガラス転移温度)よりも約200℃高い。
【0065】
低温融解ガラスとしては、例えば、高い屈折率および500℃以下のガラス転移温度を備えた、成型オプティクス用のアルカリ-Ta-B-Pガラスについて述べる、Tickに対する上記特許文献12で述べられているものなどが挙げられる。別の例としては、P:Bを15:1ないし6:1の比で含み、SiOおよびAlなどの微量成分を少ない比率でのみ含み、また好ましくは、LiO、NaOおよびKOなどの少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を、MgO、CaOおよびBaOなどの少なくとも1種類のアルカリ土類酸化物または亜鉛酸化物とともに含有するアルカリホウリン酸ガラスである、Rayに対する上記特許文献13に述べられているものである。このガラスは、225℃未満のガラス転移温度を示し、100℃で様々な水溶性を示すと報告された。
【0066】
当業者は、水溶性の高低、融解または軟化温度など、所望の特性を備えたガラスを容易に決定することができる。一部の用途に関して、非水性溶媒のみが使用されるため、もしくは溶媒が全く使用されない(例えば、ガスを適用する用途)ために水溶性が高いガラスが許容可能である場合や、またはガラス支持体が最終的に溶出するのが望ましい特性である場合もある。
III.多孔質無機基材
もし収縮性支持体内に多孔質無機基材を入れるために使用する状況下において、多孔質無機基材が安定しているなら、多孔質無機基材は、任意の多孔質のセラミック、ガラス、金属などを含むこともできる。多孔質無機基材は、過程に伴う温度および圧力に対して化学的および機械的に耐性を有する、すなわち、変形しにくく、蒸発しにくく、または融解しにくいことにより、使用条件に対して安定である。
【0067】
多孔質無機基材は、構成において粒子ではなくモノリスであることが好ましい。好ましくは、多孔質無機基材の全孔隙率は、少なくとも5%である。一部の実施形態では、多孔質基材は、全孔隙率が少なくとも60%であることにより特徴づけられ、また一部の更なる実施形態では、多孔質基材は、全孔隙率が約85%ないし約97%であることにより特徴づけられる。特に好ましい実施形態では、多孔質無機基材は、無機材料を含む多孔性モノリスであって、全孔隙率が少なくとも5%である多孔質モノリスである。一部の実施形態では、多孔質モノリスは、メソ細孔モード分布が約2nmないし約50nmであり、他の実施形態では、多孔質モノリスは、メソ細孔のモード分布が約20nmないし約50nmであり、メソ細孔体積が少なくとも0.2cc/gであり、さらに好ましくは、少なくとも1.0cc/gであることにより特徴づけられる。しかし、多孔質無機基材の孔隙率および具体的な細孔の特性は限定されず、特定の用途に適するように選択することができる。
【0068】
モノリス材料は、高温での使用に適したあらゆる材料のモノリス形態を含むことができ、セラミック、ガラス、または金属などで作ることもできる。また、多孔質モノリスは、当該技術で周知の方法で作製することもできる。例えば、一部の実施形態では、多孔質モノリスは、銀、銅、チタン、またはコバルトなどの金属を含むことができ、Tappanに対する上記特許文献14においてナノ多孔質金属発泡体の製造に関して述べられているように作製することもできる。好ましい実施形態では、多孔質モノリス材料は、ゾルゲル法により作製されるガラスまたはセラミックである。
【0069】
A.ゾルゲルモノリス
ゾルゲル前駆物質としては、ゾルゲル反応を受けてゾルゲルを形成する加水分解性リガンドを備えた、金属および半金属化合物などが挙げられる。適した加水分解性リガンドとしては、制限無しに、水酸基、アルコキシ基、ハロ基、アミノ基、またはアシルアミノ基などが挙げられる。ゾルゲル反応に関係する最も一般的な金属酸化物はシリカであるが、ゾルゲルを形成する反応を行うことができる反応性金属酸化物、ハロゲン化合物、アミンなどを含むジルコニア、バナジア、チタニア、ニオブ酸化物、タンタル酸化物、タングステン酸化物、スズ酸化物、ハフニウム酸化物、およびアルミナ、またはそれらの混合物もしくは複合物などの他の金属および半金属も有用である。ゾルゲル前駆物質に組み込むことができるさらなる金属原子としては、制限無しに、マグネシウム、モリブデン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ベリリウム、イットリウム、ランタン、スズ、鉛およびホウ素などが挙げられる。
【0070】
好ましい金属酸化物およびアルコキシド類としては、それだけに限定されないが、テトラメチルオルソシラン(TMOS)、テトラエチルオルソシラン(TEOS)、フルオロアルコキシシラン、またはクロロアルコキシシランなどのケイ素アルコキシド類、ゲルマニウムアルコキシド類(テトラエチルオルソゲルマニウム(TEOG)など)、バナジウムアルコキシド類、アルミニウムアルコキシド類、ジルコニウムアルコキシド類、およびチタニウムアルコキシド類などが挙げられる。同様に、金属ハロゲン化合物、アミン類、およびアシルオキシ誘導体も、ゾルゲル反応に使用することができる。
【0071】
好ましい実施形態では、ゾルゲル前駆物質は、ケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、もしくはハフニウムのアルコキシド、またはそれらの混合物である。特に好ましい実施形態では、ゾルゲル前駆物質は、シランである。より好ましい実施形態では、ゾルゲル前駆物質は、TEOSまたはTMOSなどのシランである。
【0072】
特定の実施形態では、ゾルゲル前駆物質は、有機置換基をさらに含むこともできる。したがって、有機置換基を含むゾルゲル前駆物質から作製されるゾルゲルモノリスは、無機‐有機ハイブリッドモノリス材料を含む。有機置換基を含むゾルゲル前駆物質としては、制限無しに、飽和または不飽和ヒドロカルビル置換基を有する、アルキルトリアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシランなど、アリール置換基を有する、フェニルアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルアルコキシシラン、またはナフチルトリアルコキシシラン、またはそれらの混合物などの有機シラン類などが挙げられる。有機置換基を含むゾルゲル前駆物質は、有機ゲルマニウム類、または有機置換されたチタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、もしくはバナジウムアルコキシドなどのその他の有機金属化合物も含むことができる。適したヒドロカルビル置換基は、C1-100またはさらに典型的にはC1-30とすることもできる。別の好ましい実施形態では、シランはトリアルコキシシランおよびテトラアルコキシシランを含むシラン類の混合物である。また、ゾルゲルモノリスの表面を、アルキルシランまたはエンドキャップ試薬などを含む結合相などの有機置換基などで修飾することもできる。これらの実施形態では、ゾルゲルモノリスは、所望の有機機能性を破壊しない温度で処理されなければならず、または有機置換基は有機置換基を破壊する温度での加熱後に付加されなければならない。
【0073】
さらなる実施形態では、多孔質モノリスは、修飾され、融合または焼結されてモノリス材料を作製する粒子から作製することもできる。例えば、Walterに対する上記特許文献15は、報告によると、まず多孔質無機/有機ハイブリッド粒子を形成し、多孔質ハイブリッド粒子の細孔構造を改変し、多孔質ハイブリッド粒子を融合してモノリス材料を形成し、細孔構造を改変するために任意でさらに熱水処理によるモノリスの処理を伴う、多孔質無機/有機ハイブリッド材料を形成するための過程について述べている。このような実施形態では、多孔質モノリスは、使用される粒子の組成に応じて、無機物または無機‐有機ハイブリッド材料のいずれかとすることができる。
【0074】
一部の実施形態では、多孔質モノリス材料は、Nakanishiに対する上記特許文献16〜18、Wadaに対する上記特許文献19、Cabreraに対する上記特許文献20などに述べられているようなゾルゲル法により作製することができる。例えば、上記特許文献16は、溶解した有機ポリマーは、金属アルコキシドまたはそのオリゴマーの加水分解および重合の間に相分離して多孔質産物が製成されると報告している。多孔質ゲルは、か焼して、ゲルを機械的強度が向上したSiO型の多孔質セラミックに転換するために加熱される。Yangらに対する上記特許文献21に述べられているような、ゾルゲルから形成される、階層的に秩序だって配列された多孔質酸化物を形成する特定の構造、またはStuckyらに対する上記特許文献22に述べられているような、メゾスコピックに秩序だって配列された材料も、本明細書に記載されているように有利に使用することができる。
【0075】
多孔質モノリスを形成する別の方法としては、Wangに対する上記特許文献23〜25に述べられているものが挙げられる。これらの特許は、HFの使用によってサイズがより大きい細孔の形成を促進でき、その結果、ゲルモノリスの亀裂が入りやすい傾向を低減すると述べている。しかし、これらの発明者らは、HFなどの触媒の使用は、ゲル化時間も短縮し、処理時間が不十分になる可能性があるか、または泡については、ゲル外に拡散し、そのため、生成されるゲルの質が低下することを指摘している。キセロゲルモノリスの製造方法は、金属アルコキシドを含む第1の溶液、触媒を含む第2の溶液を調製する工程、ならびに実質的に室温より低温である第3の溶液のための混合温度に少なくとも一方の溶液の温度を冷却するように、第1および第2の溶液をともに混合する工程を含むと記載されている。そのように行う場合、室温と比較して、混合温度では混合物のゲル化時間が著しく長いことが報告されている。
【0076】
好ましい実施形態では、ゾルゲルモノリスは、メソ細孔およびマクロ細孔が存在してミクロ細孔が欠けていることで特徴づけられる孔隙率が高い多孔質モノリスを生成する、同時係属の上記特許文献26に述べられている方法により作製される。
B.ポロゲン
ポロゲンは、多孔質モノリスの作製において、ゾルゲル法を用いる場合の補助剤として使用することができる。例えば、Nakanishiに対する上記特許文献16では、ゾルゲル前駆物質の加水分解および重合の際に細孔を導入するために、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、またはポリビニルピロリドンなどの溶解した有機ポリマーを使用することについて報告している。相分離した部分が存在する状態でのゾルゲルモノリスの作製は、ゾルゲルモノリスの孔隙率を上昇させるマクロ細孔および/または大きなメソ細孔を有するゾルゲルモノリスをもたらし、優れた溶媒流速をもたらす。
【0077】
一実施形態において、ポロゲンは親水性ポリマーとすることができる。ゾルゲル形成溶液中の親水性ポリマーの量および親水性は、形成されるマクロ細孔の細孔体積およびサイズに影響を及ぼし、一般的に、特定の分子量の範囲は必要とされないが、分子量約1,000ないし約1,000,000g/molの間が好ましい。ポロゲンは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸)から選択することができ、またアミノ酸のポリマー、および酢酸セルロースなどのセルロースエーテルまたはエステルなどの多糖などを含むこともできる。好ましくは、ポリマーは最大約1,000,000g/molまでの分子量を有するPEGである。
【0078】
ポロゲンは、ホルムアミドなどのアミド溶媒、またはポリ(アクリルアミド)などのアミドポリマー、または非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、両親媒性界面活性剤、またはそれらの混合物などの界面活性剤とすることもできる。好ましい界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であるPluronic F68(Poloxamerとしても知られている)である。
【0079】
典型的な界面活性剤は、ポリエチレングリコール400モノステアレート、ポリオキシエチレン-4-ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン-20-ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン-20-ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン-20-モノラウレート、ポリオキシエチレン-40-ステアレート、オレイン酸ナトリウムなど、HLB値が10〜25の間であるものである。
【0080】
非イオン性界面活性剤としては、一部の実施形態において好ましく、例えば、ステアリン酸ポリオキシル40、ステアリン酸ポリオキシル50、ステアリン酸ポリオキシル100、ジステアリン酸ポリオキシル12、ジステアリン酸ポリオキシル32、ジステアリン酸ポリオキシル150などのステアリン酸ポリオキシル、およびその他Myrj(商標)シリーズの界面活性剤、またはそれらの混合物などが挙げられる。ポロゲンとして有用なさらに別のクラスの界面活性剤は、ポロキサマーとしても知られる、一般式、HO(CO)(-CO)(CO)Hを有し、PluronicおよびPoloxamerの商標で市販されている、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドのトリブロック共重合体である。その他の有用な界面活性剤としては、糖エステル界面活性剤や、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレートおよびその他のSpan(商標)シリーズの界面活性剤などのソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレートなどのグリセロール脂肪酸エステル;高分子量脂肪族アルコールのポリオキシエチレンエーテル(例えば、Brij30、35、58、78および99)などのポリオキシエチレン誘導体;ステアリン酸ポリオキシエチレン(自己乳化)、ポリオキシエチレン40ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン75ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン6ソルビトール蜜蝋誘導体、ポリオキシエチレン20ソルビトール蜜蝋誘導体、ポリオキシエチレン20ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン50ソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン23ラウリルエーテル、ブチル化ヒドロキシアニソールを含むポリオキシエチレン2セチルエーテル、ポリオキシエチレン10セチルエーテル、ポリオキシエチレン20セチルエーテル、ポリオキシエチレン2ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン20ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン21ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン40ステアレート、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシエチレン100ステアレート;ポリオキシエチレン4ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリステアレート、およびその他Tween(商標)シリーズの界面活性剤などのソルビタンの脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体;レシチン類などのリン脂質およびリン脂質脂肪酸誘導体;脂肪族アミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド;例えば水素化パーム油モノグリセリド、水素化大豆油モノグリセリド、水素化パーム油ステアリンモノグリセリド、水素化植物モノグリセリド、水素化綿実油モノグリセリド、精製パーム油モノグリセリド、部分水素化大豆油モノグリセリド、綿実油モノグリセリドサンフラワー油モノグリセリド、サンフラワー油モノグリセリド、キャノーラ油モノグリセリド、コハク酸化モノグリセリド、アセチル化モノグリセリド、アセチル化水素化植物油モノグリセリド、アセチル化水素化ココナッツ油モノグリセリド、アセチル化水素化大豆油モノグリセリドなどのプロピレングリコールモノエステルおよびモノグリセリド;グリセロールモノステアレート、水素化大豆油を含むモノグリセリド、水素化パーム油を含むモノグリセリド、コハク酸化モノグリセリドおよびモノグリセリド、モノグリセリドおよび菜種油、モノグリセリドおよび綿実油、プロピレングリコールモノエステル・ソディウム・ステアロイル・ラクチレート・シリコンジオキサイドを含むモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ポリオキシエチレンステロイドエステル;エチレンオキサイドで重合したオクチルフェノールから生成され、商標中の数字「100」が構造中のエチレンオキサイド単位の数と間接的に関連しており(例えば、Triton X-100(商標)は、平均分子量が625で、分子あたりの平均エチレンオキサイド単位がN=9.5である)、市販品には少量しか存在しない低モルおよび高モルの付加を有する、Triton-Xシリーズの界面活性剤;ならびに、Igepal CA-630(商標)およびNonidet P-40M(NP-40(商標)、N-ラウロイルサルコシン、Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)を含むTriton X-100(商標)と同様の構造を有する化合物などが挙げられる。界面活性剤分子中のあらゆる炭化水素鎖は、飽和、不飽和、水素化または脱水素化することもできる。
【0081】
特に好ましい界面活性剤のファミリーは、エチレンオキサイド:プロピレンオキサイド:エチレンオキサイドのa:b:aトリブロック共重合体である、ポロキサマー界面活性剤である。「a」および「b」は、ポリマー鎖の各ブロックについてのモノマー単位の平均数を示す。これらの界面活性剤は、ニュージャージー州、マウントオリーブのBASF Corporationから、様々な分子量、ならびに「a」および「b」ブロックの様々な値で市販されている。例えば、Lutrol(登録商標)F127は、分子量の範囲が9,840ないし14,600を示し、「a」がおよそ101で、「b」がおよそ56であり、Lutrol(登録商標)F87は、分子量が6,840ないし8,830を示し、「a」が64で、「b」が37であり、Lutrol(登録商標)F108は、平均分子量が12,700ないし17,400を示し、「a」が141で、「b」が44であり、Lutrol(登録商標)F68は、平均分子量が7,680ないし9,510を示し、「a」の値が約80で、「b」の値が約27である。
【0082】
糖エステル界面活性剤は、糖脂肪酸モノエステル、糖脂肪酸ジエステル、トリエステル、テトラエステル、またはそれらの混合物を含むが、モノエステルおよびジエステルが最も好ましい。好ましくは、糖脂肪酸モノエステルは、6ないし24の炭素原子を有する脂肪酸を含み、直鎖状もしくは分岐、または飽和または不飽和のCないしC24の脂肪酸であってもよい。CないしC24の脂肪酸は、好ましくはステアレート、ベヘネート、ココエート、アラキドネート、パルミテート、ミリステート、ラウレート、カルプレート、オレエート、ラウレート、およびそれらの混合物から選択され、偶数または奇数の炭素を任意の部分的な範囲または組合せで含むこともできる。好ましくは、糖脂肪酸モノエステルは、スクロース、マルトース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、ラクトース、ソルビトール、トレハロース、またはメチルグルコースなどの、少なくとも1種類の単糖ユニットを含む。スクロースエステルなどの二糖エステルが最も好ましく、スクロース・ココエート、スクロース・モノオクタノエート、スクロース・モノデカノエート、スクロース・モノラウレートまたはジラウレート、スクロース・モノミリステート、スクロース・モノパルミテートまたはジパルミテート、スクロース・モノステアレートおよびジステアレート、スクロース・モノオレエートまたはジオレエートまたはトリオレエート、スクロース・モノリノレートまたはジリノレート;スクロース・ペンタオレエート、ヘクサオレエート、ヘプタオレエート、またはオクトオレエートなどのスクロースポリエステル;ならびにスクロース・パルミテート/ステアレートなどのエステル混合物などが挙げられる。
【0083】
これらの糖エステル界面活性剤の特に好ましい例としては、様々なモノエステル、ジエステル、およびモノ/ジエステル混合物の名称であるCrodesta F10、F50、F160、およびF110の名称でParsippany,NJのCroda Inc社から販売されている、スクロース・ステアレートを含み、上記特許文献27に記載されているような、エステル化の程度を制御する方法により製造されるものが挙げられる。
【0084】
Mitsubishi社からのRyoto Sugar esterの名称で販売されているものも使用されてもよく、例えば、参照番号B370は、20%のモノエステルおよび80%のジエステル、トリエステルおよびポリエステルからなるスクロース・ベヘネートに相当する。Goldschmidt社から「Tegosoft PSE」の名称で販売されている、スクロース・モノパルミテートおよびジパルミテート/ステアレートが用いられてもよい。これらの様々な製品の混合物が用いられてもよい。糖に由来しない別の化合物とともに、糖エステルも混合中に存在してもよく、また好ましい例としては、ソルビタン・ステアレートの混合物および「Arlatone 2121」の名称でICI社から販売されているスクロース・ココエートの混合物が挙げられる。その他の糖エステルとしては、例えば、グルコース・トリオレエート;ガラクトース・ジオレエート、トリオレエート、テトラオレエートもしくはペンタオレエート;アラビノース・ジリノレエート、トリリノレエートもしくはテトラリノレエート;またはキシロース・ジリノレエート、トリリノレエートもしくはテトラリノレエート;あるいはそれらの混合物などが挙げられる。その他の脂肪酸の糖エステルとしては、メチルグルコースのエステル、メチルグルコースのジステアレートおよびTegocare 450の名称でGoldschmidt社から販売されているポリグリセロール-3のジステアレートなどが挙げられる。メチルO-ヘキサデカノイル-6-D-グルコシドおよびO-ヘキサデカノイル-6-D-マルトースなどのグルコースまたはマルトースのモノエステルも含むことができる。一部のその他の糖エステル界面活性剤としては、オキシエチレン化脂肪酸エステルなどが挙げられ、その糖としては、Amerchol社から「Glucamate SSE20」の名称で販売されているPEG-20メチルグルコース・セスキステアレートなどのオキシエチレン化誘導体などが挙げられる。
【0085】
界面活性剤の特性の一つは、HLB値、または親水性親油性バランス値である。この値は、界面活性剤分子の相対的親水性および相対的疎水性を示す。一般的に、HLB値がより高いほど界面活性剤の親水性が高く、一方、HLB値がより低いほど疎水性が高い。Lutrol(登録商標)分子については、例えば、エチレンオキサイドの割合が親水性部分に相当し、プロピレンオキサイドの割合が疎水性の割合に相当する。Lutrol(登録商標)F127、F87、F108、およびF68のHLB値は、それぞれ22.0、24.0、27.0、および29.0である。好ましい糖エステル界面活性剤は、約3ないし約15の範囲のHLB値を与える。
IV.多孔質無機基材の細孔構造の特性解析
細孔サイズ分布曲線は、細孔直径(D)(dV/dlogD)に対する細孔体積(容積)(V)の導関数を細孔直径(D)に対してプロットすることにより決定することができる。モード細孔径は、細孔サイズ分布曲線のdV/dlogDの値が最大(示された最大ピーク)である細孔サイズである。この細孔サイズ分布曲線は、例えば、いくつかの方程式にしたがって、窒素ガスの吸収の測定によって得られる吸着等温線から導き出される。吸着等温線測定法は、一般的に、試料を液体窒素温度まで冷却し、窒素ガスを導入し、固定容量法または重量測定法により、吸着された窒素ガス量を測定する過程を伴う。導入された窒素ガスの圧力は次第に上昇し、各平衡圧における窒素ガスの吸着をプロットして吸着等温線を作成する。細孔サイズ分布曲線は、Cranston-Inklay法、Dollimore-Heal法、BET法、BJH法などに関する方程式にしたがって、この吸着等温線から導き出すことができる。
【0086】
本明細書に記載しているように、総表面積およびミクロ細孔体積は、Micromeritics TriStar 3000などの機器を用いて好都合に測定することができる。上記非特許文献1に述べられるとおり、総表面積は、BET法を用いて好ましく算出され、ミクロ細孔体積はtプロット法を用いて算出される。tプロット法は、試料中のミクロ細孔の存在の検出およびその体積測定に用いることができる。tプロットは、吸着膜の平均膜厚(t)に対してプロットした窒素吸着(v/g)の曲線である(x軸が平均膜厚で、y軸が吸着である)。窒素吸着量対層の厚さは、ミクロ細孔またはメソ細孔が存在しなければ直線状である。逆に、ミクロ細孔の存在は、特定の厚さにおける窒素吸着の喪失によって検出することができ、到達可能な表面積をそれ以上提供しない細孔の直径を算出することができる。
V.支持多孔質無機基材の作製方法
さらなる実施形態では、a)多孔質無機基材を、無機材料を含む収縮性支持体に組み立て、組立部品を提供する工程と、b)多孔質無機基材と支持体との間が液密状態で接触するように、支持体を多孔質基材上に収縮させるのに効率的な(効果がある)温度まで組立部品を加熱することによって、支持体を多孔質基材上に収縮させる工程とを含むことを特徴とする、支持多孔質基材の形成方法が提供される。
【0087】
好ましくは、多孔質基材は、ガラス、セラミック、または金属などの無機材料を含む多孔質モノリスである。一部の好ましい実施形態では、多孔質モノリスは、ゾルゲル法により作られた多孔質ガラスモノリスである。別の実施形態では、多孔質モノリスは、モノリスを形成するよう修飾(改変)された粒子から形成される。
特定の実施形態では、多孔質基材または多孔質モノリスは、前記収縮性支持体とは別に形成され、収縮前にその中に挿入される。更なる実施形態では、多孔質無機基材または多孔質モノリスは、収縮の前に、前記収縮性支持体の内部で形成される。多孔質無機基材は、充填、被覆、含浸、クラッディング、巻き付け、またはその他の当該技術分野において承認されている手法などにより、特定の装置の要件に応じて導入されてもよい。
【0088】
好ましくは、収縮性支持体は、ガラスまたはセラミックなどの無機材料から形成される。特定の実施形態では、収縮性支持体はゾルゲル法により作られる。
特定の実施形態では、多孔質無機基材上に支持体を収縮させるのに効率的な温度は、支持体を軟化させ(例えば、軟化温度)、多孔質無機基材と液密状態で接触を形成するように支持体の収縮を可能にするのに効率的な温度である。好ましくは、支持体を多孔質モノリス上に収縮させるのに効率的な温度は、多孔質モノリスの細孔分布にまったく影響を及ぼさないか、または限られた影響のみを与える。特定の実施形態では、支持体を多孔質モノリス上に収縮させるのに効率的な温度は、約2000℃未満であり、さらに好ましくは約1000℃未満である。
【0089】
一部の実施形態では、多孔質無機基材および支持体は、初期的に、例えば、多孔質基材が別に形成されチューブ状の支持体に挿入される際などに生じている間隙により分離されており、支持体が効率的に軟化する温度に加熱する際に、この間隙が最小限になり多孔質基材と支持体とが液密状態で接触するように、支持体が多孔質無機基材上に収縮する。さらに、多孔質基材は、支持体内で形成されてもよく、乾燥および/またはか焼される際に支持体基材との接触から分離する。次に、間隙が最小限になり両者の間が液密状態で接触するように支持体を多孔質基材上に収縮させるために加熱を行うことができる。あるいは、多孔質基材は、支持体の内部で形成されて両者の間に間隙が存在せず、少なくとも加熱処理の完了時点で両者の間に間隙がなくなるように、それに続く加熱の工程は、多孔質基材の収縮と同時にか焼するか、または多孔質基材のか焼後のいずれかで支持体を収縮させる。一部の実施形態では、工程のあらゆる段階で両者の間に間隙はない。好ましい実施形態では、基材は多孔質モノリスであり、さらに好ましくは、多孔質ガラスモノリスである。他の実施形態では、支持体に、収縮が生じる温度を下げるのに十分な真空が施される。
【0090】
特定の実施形態では、真空は支持体の内部、例えばチューブの一方の末端部(例えば、未加熱の末端部)に施され、真空の適用は収縮が生じる温度の低下をもたらす。多孔質無機基材(モノリスまたは非モノリス基材、任意で所望の組成、孔隙率、および/または細孔特性の選択)および支持体(特定の軟化温度をもつ)の適切な選択、ならびに適切な条件(例えば、支持体への真空適用の有無)での収縮工程の実施により、所望の孔隙率、および/または細孔特性、ならびに多孔質基材と支持体との間の液密状態の接触を備えた物品または装置を得ることができる。
【0091】
多孔質基材と液密状態の接触へと支持体が効率的に収縮する温度の下側の範囲は特に限定されず、所望かつ真空適用の程度によって制御される多孔質基材の特性、および支持体の軟化温度に基づいて選択することができる。効率的な温度は、少なくとも100℃であり、さらに好ましくは、温度は約200℃と2000℃との間である。特定の実施形態では、効率的な温度は約100℃と400℃との間である。他の実施形態では、効率的な温度は約200℃と900℃との間である。さらに他の実施形態では、効率的な温度は約400℃と1000℃との間である。他の実施形態では、効率的な温度は約300℃と700℃との間である。
【0092】
例えば、低軟化温度ガラスは所望のミクロ細孔サイズ分布および表面積を備えた構造を有する多孔質モノリスとともに用いることができ、収縮工程はミクロ細孔構造が損なわれないように比較的低い温度(例えば、200℃)で実施することができる。メソ細孔サイズ分布はミクロ細孔分布よりも高温による影響を受けにくいことから、軟化温度がより高いガラスは所望のメソ細孔分布を有する多孔質基材とともに使用することができる。多孔質基材の細孔の特性が特に限定されなければ、支持体の軟化温度は特に限定されず、特定の用途に望まれるように、より高温またはより低温の軟化温度を使用することができる。
【0093】
以下の実施例において、収縮に用いられる温度は850℃であり、この温度は、使用されるホウケイ酸ガラス支持体および作製される高孔隙率のゾルゲルモノリスに許容可能な収縮温度である。一方、これらの実施形態について、効率的な温度範囲は、約400℃ないし約1000℃とすることができる。
VI.用途および使用方法
本明細書に記載する物品および装置は、クロマトグラフィーカラム用、例えば逆浸透ろ過、限外ろ過、分取ろ過などのろ過膜、マイクロタイタープレート、スカベンジャー樹脂、固相有機合成支持体、燃料電池、センサーアレイ、光電子装置、水素貯蔵装置などのための材料など、分離および触媒科学において幅広い種々の最終用途がある。好ましい実施形態において、用途はクロマトグラフィーの分野であり、物品および装置は支持体と固定相としての役割を果たす多孔質無機基材との間の液密状態の接触を提供し、クロマトグラフィー装置はピークの広がりが減少させクロマトグラフィー効率が増大することから溶出プロファイルの向上を示す。別の実施形態では、用途は触媒反応の分野であり、多孔質基材は酵素または金属などの触媒機能性をさらに含む。特定の有利な実施形態では、物品は、例えばHPLCに一般的に使用されるクロマトグラフィーカラムなどの、クロマトグラフィー装置である。
【0094】
通常、TLCおよびマイクロフルイディクスなどの用途は、支持体との接触を形成する際に分離および望ましくない漏出を引き起こす多孔質モノリスの収縮が不十分であるため、収縮性支持体は必要としない。しかし、例えば、多孔質モノリスの収縮がかなりある場合、または多孔質モノリスと支持体との間の液体の漏出が許容できない動作をもたらす場合、収縮性支持体の使用は最適な機能に必要とされる液密状態の接触を回復させることができる。例えば、マイクロフルイディクスのチャネル内部に形成されたゾルゲルがマイクロフルイディクスの支持体基材との接触から分離する場合、収縮支持体の使用により、マイクロフルイディクス装置の最適な機能に必要とされる液密状態の接触を回復させることができる。
【0095】
したがって、一実施形態において、液体クロマトグラフィー(HPLCを含む)を行うための、ガラス支持体内に収容されている多孔質モノリスを含み、さらに、必要な末端接続具、管などの付加により液体クロマトグラフィー用に適合された、クロマトグラフィーカラムが提供される。
さらなる実施形態では、毛細管の内部に収容されている多孔質モノリスを含む固定相を含み、毛細管および多孔質モノリスがともに例えば、か焼などの収縮が施される、キャピラリークロマトグラフィーカラムが提供される。
【0096】
さらなる態様では、試料中の被分析物の混合物の分離方法が提供され、前記方法は、a)クロマトグラフィーカラム、特に、ガラス管の内部に入れられた多孔質無機基材を含むクロマトグラフィーカラムであって、多孔質無機基材とガラス管との間が液密状態で接触するようにカラムがガラス管を収縮させるために加熱される、クロマトグラフィーカラムを提供する工程と、b)試料をクロマトグラフィーカラムに適用する工程と、c)クロマトグラフィーカラムを移動相で溶出する工程と、d)クロマトグラフィーカラムから溶出する分離された被分析物を回収する工程とを含むことを特徴とする。好ましくは、多孔質基材は多孔質モノリスである。適した分離は、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、イオン対クロマトグラフィー、逆相イオン対クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、キラル認識クロマトグラフィー、パーフュージョンクロマトグラフィー、電気クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、マイクロカラム液体クロマトグラフィー、キャピラリークロマトグラフィー、キャピラリーゾーン電気永動(CZE)、ナノLC、オープンチューブラー液体クロマトグラフィー(OTLC)、キャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)、液固クロマトグラフィー、分取クロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、沈殿液体クロマトグラフィー、結合相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー質量分析、ガスクロマトグラフィー、マイクロフルイディクスに基づく分離、チップに基づく分離または固相抽出分離を用いて行うことができる。
【0097】
本発明の物品および方法は、クロマトグラフィーカラムまたはその他の装置の形で、クロマトグラフィー用途および分析的分離用途において有利に使用することができる。前記装置は流れの特性が向上し、背圧が低下し、細孔サイズ分布が制御され、またシラノール残留物の可能性が低減されて、塩基性被分析物のピークのテーリングが排除されている。例えば、多孔質モノリスは、キャピラリーカラム、カートリッジシステム、または従来のHPLCシステムなどに組み込むことができる。本明細書に記載される基材は、例えばモノリス吸着剤のように実質的に硬質であり、クラッディングする間にデッドスペースが生じるおそれがあり、デッドスペースがなく圧力に安定なように、カラム、フィルター、またはカートリッジなどを提供する基材またはモノリスのクラッディングは、困難であるおそれがある。一実施形態において、例えば、モノリス吸着剤を含み、少なくとも一方の末端部にキャップが組み込まれたクラッドカラム、および少なくとも一つの分割されている支持ネジと溶離剤の供給および排出用の接続のために支持ネジ上にネジで締められる少なくとも一つの末端部ピースとから成る接続システムについて記載する上記特許文献28に述べられているように、基材またはゾルゲルモノリスをカートリッジの作製に用いることができる。あるいは、基材または多孔質モノリスは、カートリッジシステムにキャップを使用せずに組み込むこともできる。本明細書に記載されるような収縮性支持体の使用、および支持体を多孔質基材上に収縮させるための加熱が、システム向上のために提供される。
【0098】
特に有利な実施形態では、クロマトグラフィー装置は、HPLCカラムなどのクロマトグラフィーカラムである。図3Bは、ガラス管内の多孔質ゾルゲルモノリスの断面の顕微鏡写真を示している。管は、初期的に、内径が1.8mmであり、直径が1.2mmのか焼された多孔質モノリス上に収縮された。多孔質モノリス構造、およびモノリスと管との間に間隙がない液密状態の接触を見ることができる。このようなクロマトグラフィー装置は、HPLC分離に、向上したクロマトグラフィー性能とともに有利に適用することができる。
【0099】
支持多孔質モノリスも、平面支持体とともに平面的な用途(例えば、TLCなど)に、またはマイクロフルイディクス装置などの装置の構成要素として、ならびにろ過装置およびろ過膜、固相抽出の媒体、マイクロタイタープレート、燃料電池、光電子工学装置など、その他の潜在的に可能性がある平面的な配置で使用することができる。制限無しに、棒状、球、空洞または充填された構造(例えば、中空管)、平面状シート、繊維、チップ、マイクロサイズもしくはナノサイズのワイヤー、またはクロマトグラフィー、吸着、触媒反応もしくはその他の用途に有用なその他の有用な形状など、任意の形状を形成することができる。支持多孔質基材は、細孔構造または表面ケミストリーを修飾するために処理を行うこともできる。例えば、ポリマー、有機的または無機的な相および/または層を、多孔質基材の表面上に結合させおよび/または被覆して、特定の吸着または触媒反応特性を提供することもできる。
【0100】
支持多孔質基材は、ろ過、固相合成、バイオリアクター、触媒反応、樹脂、センサー装置、医療装置および薬剤もしくはその他の活性薬剤移送プラットホーム、燃料電池、光電子工学装置などの他の用途に用いることもできる。このような用途を実行するための装置の作製にも、当該方法は適用可能である。支持多孔質基材は、無機だけでなく有機または生体構成要素を含むことができる。支持多孔質モノリスは、超微細孔無機/有機および/または生体ハイブリッド材料を含む固定相として使用することができる。固定相は、本明細書に記載するように、特定の装置の要件に応じて、その場での重合、または挿入および多孔質モノリス上への支持体の収縮により導入することもできる。好ましい実施形態では、多孔質モノリスは、このような装置においてその場で形成される。別の好ましい実施形態では、多孔質ゾルゲルモノリスは型の中で形成され、多孔質モノリス上への支持体の収縮のために、支持体に移動され、任意で使用目的部位で形成される。
【0101】
特定の実施形態では、本発明の多孔質ゾルゲルモノリスは、典型的には小さいカラム内径(内径、<100ミクロン)および流速が遅い(<300nL/分)移動相を使用する、キャピラリーおよびマイクロフルイディクス用途の装置の作製方法において使用することができる。キャピラリークロマトグラフィー、キャピラリーゾーン電気遊泳法(CZE)、ナノLC、オープンチューブラー液体クロマトグラフィー(OTLC)、およびキャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)は、従来の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に対して数多くの利点を提供する。これらの利点は、高分解効率、高速分離、小体積試料の分析、および2次元手法のカップリングを含む。しかし、これらの用途は、本明細書に述べる超微細孔ゾルゲルモノリスから、さらに速い流速およびより均一で制御可能な細孔サイズ分布の可能性をもたらすという、利益をさらに得ることができる。
【0102】
迅速な試料分析のために、マイクロチップベースの分離装置が開発された。マイクロチップベースの分離装置の例としては、キャピラリー電気泳動、キャピラリー電気クロマトグラフィー、および高速液体クロマトグラフィーなどの装置が挙げられる。例えば、プレート上に溝を形成し、溝の中にモノリスバイモーダル細孔構造を有するシリカゲルを形成することによって、ゾルゲルモノリスは、クロマトグラフィーチップに組み込むことができる。代表的なクロマトグラフィーチップおよび、その形成方法および使用方法については、Naohiroに対する上記特許文献29に述べられている。これらおよびその他の分離装置は、高速で解析を行うことができ、その他の従来の分析的機器と比較して精度および信頼性の向上をもたらされる。他の従来の分離装置と比較して、これらのマイクロチップベースの分離装置は試料処理能力がより高く、試料および試薬の消費は低減し、かつ化学廃液物が低減した。マイクロチップベースの分離装置の液体の流速範囲は、大部分の用途でおよそ分速1〜300ナノリットルからである。本明細書に記載する超微細孔ゾルゲルモノリスは、これらのマイクロフルイディクス設計に組み込むことができ、マイクロチップベースの分離装置上のマクロチャネル内にモノリス吸着剤を提供し、その結果マイクロチップ用途に対する一層速い流速も同様に提供する。
VII.本発明の利点
本発明の物品および方法は、次のいくつかの利点および特性を含む。
【0103】
本明細書に記載するように収縮により加工されたガラスまたはセラミックチューブは、同等の金属またはプラスチックチューブよりも内表面がより平滑である。より平滑な内表面は、クロマトグラフィーなどの用途で優れた結果をもたらし、エッジ効果を低減して(基材ベッドと収容壁との間ではなく)基材ベッドの中を通る、より均一な移動相の流れをもたらす。その結果として、本明細書に記載する方法によって作製されたクロマトグラフィーカラムは、ピーク形状が改善し、拡散による広がりが低減し、より高いクロマトグラフィー効率を提供する。
【0104】
さらに、本発明の装置および方法は、多孔質無機基材と支持体との間の液密状態の接触を提供する。クロマトグラフィーカラムの作製に使用する場合、この方法はクロマトグラフィー効率を増大させ、分離、ピークの形状、ピークの高さなどを向上させる。さらに、装置および方法は、優れた流速をもたらし、分離時間を短くする。同様に、装置および方法は、装置の優れた流動特性の効果により、優れた触媒反応効率を提供できる。
【0105】
高い処理および操作温度に耐えることができ、優れた溶媒耐性が提供される。
同時係属の上記特許文献26に述べられている超微細孔ゾルゲルモノリスなどの、脆い可能性がある高孔隙率モノリス媒体に良好な支持体が提供される。
支持体は、外部プラスチック構造の製作が十分可能なものである。
目標の直径を達成し、多孔質基材におけるあらゆる収縮を補償するための支持体の収縮が容易に制御される。この方法は、非常に様々な寸法の部品について作業するにあたり、容易に見積もることができる。
【0106】
ガラス支持体の内部表面に対する表面修飾、または多孔質モノリスをガラス支持体に接着させるための追加のゲル化工程は、もはや行う必要がない。結果として、製造過程全体が単純で費用効率が高く、かつ再現性が高い。
以下の各実施例では、用いられる数字(例えば、量、温度など)に関して正確を期するよう努めたが、多少の実験誤差および逸脱(偏差)について説明すべきであろう。他に明示されない限り、温度は℃で、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。すべての溶媒はHPLC用のものを購入し、すべての反応は、他に明示されない限りは、大気中で規定通りに実行された。
【実施例】
【0107】
実施例1
液密状態で接触している多孔質モノリスおよび支持体の作製
1.1gの水、3.6gのメタノール、2.1gの試薬用アルコール、および0.96gのHF(2.6M)の混合物に非イオン界面活性剤Pluronic F68(0.44g、BASF)を溶解した。撹拌しながら、5.0mlのテトラエトキシシラン(TEOS)を前記溶液に加え、均一な混合物を作製した。5分後、内径(ID)が1.6mmのポリマー管にゾルを注入した。30分後、ゾルは白色のゲルになり、次に、このゲルを熟成(エージング)、乾燥して、加熱炉に移し、約550℃の温度で一晩、か焼した。か焼する前に、ゲルを管から除去した。
【0108】
多孔質モノリスの最終的な外径は、約1.2mmだった。BET表面積、メソ細孔体積、およびモード径の測定は、Micromeritics TriStar 3000を用いて実施し、BET表面積は約400m/g、メソ細孔体積は1.1cm/g、およびメソ細孔の直径は約100Åだった。総細孔体積は、水銀圧入測定法により約5.0cm/gと推定した。
【0109】
次に、上述のように形成されたシリカモノリスをID(内径)が1.8mmのホウケイ酸ガラスの管(Corning. Inc. Corning, NY)に挿入し、ゲルの柱面がガラスで密閉されるまで加熱炉で850℃の温度で加熱処理を施した。
ゲルの柱面が完全に密閉された後、ガラス管および多孔質モノリスをクロマトグラフィーカラムとしての使用に適した100mmの長さの小片に切断した。この小片を液晶ポリマー(LCP)で外側被覆し、取り付けのために両末端部にねじ山をつけた。次に、余分なガラスを切り落とし、所望のカラム長である50mmまで研磨した。
【0110】
結果として得られたクロマトグラフィーカラムを図3Aに示す。カラムの断面(図3Bに示す)は、多孔質モノリスとガラス管との間に、カラムのクロマトグラフィーの性能を妨げるおそれがある間隙が無いことを示している。クロマトグラフィーの性能は、実施例4に述べたとおり試験を行った。
実施例2
液密状態で接触している多孔質モノリスおよび支持体の作製
混合物は、実施例1に従って調製した。すなわち、1.1gの水、3.6gのメタノール、2.1gの試薬用アルコール、および0.96gのHF(2.6M)の混合物に非イオン界面活性剤Pluronic F68(0.44g、BASF)を溶解した。撹拌しながら5.0mlのTEOSを前記溶液に加え、均一な混合物を作製した。
【0111】
5分後、IDが2.4mmのガラス管にゾルを注入した。30分後、ゾルは白色のゲルになり、次に、このゲルを熟成、乾燥して、約550℃の温度でか焼した。ガラス管内部のシリカモノリスは2.4mmから約2.0mmに収縮し、この時点でガラス管内で緩んでいた。
次に、ゲルおよびガラス管を850℃の温度で加熱処理を施した。ゲルの柱面が完全に密閉された後、ガラスカラムを100mmの長さの小片に切断し、実施例1で述べたように、この小片を液晶ポリマーで外側被覆し、取り付けのために両末端部にねじ山をつけた。次に、余分なガラスを切り落とし、所望のカラム長である50mmまで研磨した。
実施例3
液密状態で接触している多孔質モノリスおよび支持体の作製
実施例1に従ったプロトコルを、以下を変更して繰り返した。すなわち、内部に多孔質モノリスを備えているホウケイ酸ガラス管の一方の末端部を、管のみの末端でガラスを融解して密閉した。ガラスが冷却したら、管の開口端を真空(約20水銀柱インチ)状態にし、多孔質モノリスを内部に備えているガラス管を、ガラス管が軟化し、外部の大気圧の力で収縮して内部のシリカモノリスが密封される温度まで、加熱した。真空を用いることで、真空がない場合よりも低温で収縮させることができ、収縮工程に適した温度範囲を広げることができる。
実施例4
液密状態で接触している多孔質モノリスおよび支持体のクロマトグラフィーの性能
この手順が多孔質モノリスと支持体との間の液密状態の接触をもたらしたかどうかを判定するために、実施例1で作製されたクロマトグラフィーカラムのクロマトグラフィーの性能を試験した。カラムのサイズは1.2mm(ID)×50mm長であり、移動相は99%のヘキサンおよび1%のイソプロピルアルコールから成り、流速は50μl/分で、判定は254nmでのUV吸光度を用いて行った。被分析物は、トルエン、ジエチルフタレート、ジメチルフタレートであった。結果を図4に示す。
【0112】
図4に示すように、被分析物は分離され、移動相の流れがカラムのモノリスベッドを通した流れに限定されたことを示す左右対照のピークを示しており、したがって、多孔質モノリスとガラス管との間には液密状態の接触があった。もし多孔質モノリスとガラス管との間に液密状態の接触がなかったとしたら、分離されなかったか、または不完全な分離が観察されたであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料で作られた支持体に収容されている多孔質無機基材を含む物品であって、前記多孔質基材および支持体は、前記多孔質基材と前記支持体との間に液密状態の接触が形成されるように、前記支持体を前記多孔質基材上へと収縮させるのに効率的な温度まで加熱されたものであることを特徴とする物品。
【請求項2】
前記多孔質無機基材は、多孔質モノリスであることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記支持体は、収縮が生じる前記温度を下げるのに十分な真空が施されたものであることをさらに特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
当該物品は、クロマトグラフィー、触媒反応、吸着、ろ過、燃料電池、光電子工学、センサー技術、または水素貯蔵における使用に適合していることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記多孔質無機基材は、無機材料または無機‐有機ハイブリッド材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記無機材料は、金属または半金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
無機多孔質基材は、ゾルゲル法により形成された多孔質モノリスであることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記多孔質基材の孔隙率、化学的性質、吸着性、または触媒反応の特性が改変されていることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記改変が、結合相の導入、触媒的機能性の導入、構造再設計、またはセンサーの導入から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の物品。
【請求項10】
無機材料で作られた前記支持体は、ガラスまたはセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
保護外部層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
無機支持体と液密状態で接触している多孔質無機基材を含む物品の形成方法であって、
a)多孔質無機基材を、無機材料を含む収縮性支持体に組み付ける工程と、
b)前記多孔質基材と前記支持体との間が液密状態で接触するように、前記支持体を前記多孔質基材上へと収縮させるのに効率的な温度まで前記物品を加熱することによって、前記支持体を前記多孔質基材上へと収縮させる工程と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記多孔質無機基材は、Si、Ge、Sn、Al、Ga、Mg、Mb、Co、Ni、Ga、Be、Y、La、Pb、V、Nb、Ti、Zr、Ta、W、Hfの酸化物、またはそれらの組合せから選択される金属または半金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質無機基材は、モノリスであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質無機基材は、ゾルゲル法により作られることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔質モノリスは、モノリスを形成するように改変された粒子から形成されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔質モノリスは、前記収縮性支持体とは別に形成され、収縮前に前記支持体の内部に挿入されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記多孔質モノリスは、収縮前に前記収縮性支持体の内部で形成されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記収縮性支持体は、ガラスまたはセラミックであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
収縮が生じる前記温度を下げるのに十分な真空が、前記支持体に施されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記多孔質無機基材と前記支持体との間の前記液密状態の接触が、
a)前記多孔質無機基材を、無機材料を含む支持体に組み付ける工程と、
b)前記支持体を前記多孔質基材上へと収縮させるのに効率的な温度まで当該物品を加熱することによって、前記支持体を前記多孔質基材上に収縮させる工程と
を含む方法により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
ガラス管の内部に入れられている多孔質無機モノリスを含むクロマトグラフィーカラムであって、ゾルゲルから前記多孔質無機モノリスを形成し、前記多孔質無機モノリスをか焼し前記ガラス管内へ組み付け、前記多孔質無機モノリスと前記ガラス管との間が液密状態で接触するように、ガラス管を収縮させるために組付部品を加熱したものであることを特徴とするクロマトグラフィーカラム。
【請求項23】
前記多孔質無機モノリスは、前記ガラス管を収縮させるために前記組付部品を加熱する前に、前記ガラス管の内部で形成され、か焼されたものであることを特徴とする、請求項22に記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項24】
試料中の被分析物の混合物の分離方法であって、当該方法は、
a)ガラス管の内部に入れられた多孔質無機基材を含むクロマトグラフィーカラムであって、前記多孔質無機基材と前記ガラス管との間が液密状態で接触するように、前記カラムが、ガラス管を収縮させるために加熱されたものである、クロマトグラフィーカラムを提供する工程と、
b)前記試料を前記クロマトグラフィーカラムに適用する工程と、
c)前記クロマトグラフィーカラムを移動相で溶出する工程と、
d)前記クロマトグラフィーカラムから溶出する前記分離された被分析物を回収する工程と
を含むことを特徴とする前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−521673(P2010−521673A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553725(P2009−553725)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/056535
【国際公開番号】WO2008/112702
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】