説明

多孔質成形体の製造方法

本発明は、a)本質的に内部空隙率既知の粒子でなる触媒活性粉体の供給、b)粉体をボール状又は球状の非弾性的細孔形成剤及び/又はバインダーとよく混合、c)工程b)からの混合物の成形体への成形、d)工程c)で調製された成形体の焼成、という工程を備えた、触媒活性多孔質成形体を製造する方法に関する。本発明はさらに上記発明の方法によって製造された成形体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高い細孔容積、高い力学的安定性など、特に要求される特性を有する成形体へと粉体を成形することは、とりわけ固体触媒の製造分野において大きな課題となっている。
【0003】
これは、例えばゼオライト、例えば疑ベーマイト、粘土材料など、いわゆる“固有間隙率”を既に有する触媒活性粉体から例えば形成された成形体に特に関する。“固有間隙率”−換言すると、もともと微細孔を有するそのような材料の固有細孔容積−は、例えば水銀ポリシメータなどの当業者に知られた一般的な方法によって測定され得る。
【0004】
高い細孔容積率は、触媒作用において反応混合物の迅速な転化に好都合であり、さらには、触媒作用の低減、故に例えば特に圧力損失を触媒作用の過程において非常に低い水準となるようにすべく、高い力学的安定性が、技術的理由により要求されている。
【0005】
良好な触媒作用に必要とされるそのような成形体の最も重要な2つの特性、具体的には最適細孔容積及び最適力学的安定性は、1つの成形体において常に同時に満足され得るものではない。しばしば、高い細孔容積を備えた成形体は、低い力学的安定性を有し、また、高い力学的安定性を備えた成形体は、一般的に低い細孔容積を有する。
【0006】
それゆえ一般的に、従来技術では、それら最適値に関する2つのパラメータの間で妥協がなされている。そのような成形体触媒の高い細孔容積は、成形体を成形する工程でセルロース、小麦粉、油分などの可燃性有機物質を加えることによって調製され得ることが知られている(特許文献1)。一般的に、これらの成形体は、出発原料の適当な混合物を押出成形することによって調製される。押出成形物の焼成により、これら有機性添加物が除去され、それらが燃焼し尽くした後、成形体の力学的安定性を低下させる空隙又は細孔が残る。
【0007】
【特許文献1】独国特許公開公報第102 19 879号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、そのような有機性添加物は、特に非晶性炭素が用いられた場合には常に残渣なく燃焼するわけではなく、それゆえ、焼成された成形体は、焼成後の有機性添加物を除去するために複雑な手段によりしばしば後処理されなければならない。
【0009】
そこで、高い力学的安定性と高い細孔容積とを兼ね備えた多孔質成形体の製造方法を提供することが本発明の目的である。本発明に従った方法によって調製される多孔質成形体の後処理を回避することがさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、
a)本質的に内部空隙率既知の粒子で構成される粉体を供給し、
b)楕円球形又は球形の形状を有する非弾性的細孔形成剤と粉体をよく混合し、
c)工程b)の混合物を成形体へと成形し、
d)工程c)で調製された成形体を焼成する、
の工程を備えた多孔質成形体の製造方法による発明によって達成される。
【0011】
非弾性的細孔形成剤の添加により、押出成形機内で好ましくは行われる成形工程の圧力を上げることが例えば可能であり、混合物に存在する押出成形のための水又は溶媒は、圧縮されて型から出されるが、輸送細孔又はより大きな細孔は、非弾性的細孔形成剤が押出成形における圧力に抵抗することにより、付与された圧力によって閉じられない。
【0012】
本発明に関して、“非弾性的細孔形成剤”との用語は、型から押し出されることなく外圧に耐え得るという意味で理解される。“内部空隙率既知の”という表現は、そのような粒子(出発原料)に本来存在する内部空隙率が正確に決定されていることを意味しており、ゼロではないが、0.5cm3/g未満であり、好ましくは、0.4cm3/g未満であり、さらに好ましくは、0.2cm3/g未満である。
【0013】
成形後、非弾性的細孔形成剤は、0.5cm3/gを超える高い細孔容積を有する多孔質成形体を作製するために焼成により除去される。同時に、本発明の方法によって製造された多孔質成形体は、押出成形機内で有利に高圧力が達成されるが、非弾性的細孔形成剤の使用と続く焼成との結果、細孔が同様に形成されることにより、1.7kg/cmより高い力学的特性を有する。
【0014】
好ましくは、本発明の方法の工程b)の前に、引き続く工程を大幅に簡便にする、工程a)からの粉体を水性スラリーに調製することを行う。
【0015】
本発明によれば、非弾性的細孔形成剤は、驚くことに焼成の間に残渣なく燃焼する。これは、本発明に従った方法によって調製された多孔質成形体の複雑な後処理工程を回避する。これは、このように調製された形成体の触媒過程の使用におけるコーキングを、有機性細孔形成剤の使用によって調製された従来の形成体よりも低い水準とし、触媒サイクルにおける本発明の触媒形成体の再生までの耐用期間が長くなり、従来通り調製された成形体と比べて、より長い期間において短い再生サイクルで済むことができる。
【0016】
非弾性的細孔形成剤は、好ましくは、例えばポリスチレン又はポリスチレン樹脂、ポリウレタン、ポリプロピレン又はポリプロピレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン共重合体又はポリプロピレン−ポリエチレン樹脂などの球状樹脂粒子又は球状高分子粒子で本質的に構成されている。他の幾何学的な形状のものが同様に当然のごとく本発明において用いられ得るが、そのようなものは製造条件の点で製造がより困難である。好ましくは、0.5〜2μmの平均直径を有する樹脂粒子、より好ましくは、0.7〜1.5μmのものが採用される。これに関して、“樹脂”という用語は、明確な軟化点又は融点のない実質的に非晶性の高分子製品を含むものとして理解される。
【0017】
特に好ましいさらなる実施形態では、球状樹脂粒子は、10〜100μmの粒子直径を有する本質的に球状の塊を形作る。球状樹脂粒子は、この塊においてほぼ規則的な基礎構造を形作る。本文中における“球状”との用語は、トポロジー的意味で理解され、即ち、例えば立方体、ひずんだ球状体、卵形状など、球状と同位のものとして空間内で定義され得る形状を含んでいる。
非弾性的細孔形成剤は、バインダーを用いて本発明の工程b)における好ましくは粉体の水性スラリーへ加えられ、よく混合されることが好ましい。
【0018】
水性スラリーの固形分に基づく非弾性的細孔形成剤の量は、重量で1〜30%の間、好ましくは、重量で5〜20%の間、より好ましくは、重量で10〜15%の間である。水性スラリーの固形分に基づく、付加的に加えられるバインダーの量は、本発明に従って調製される成形体の高い凝結能を達成するために、同様に重量で50〜80%の間であり、好ましくは、重量で10〜70%の間、より好ましくは、重量で15〜60%の間である。さらには、バインダーには、成形体の強度を上げるために、アクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリルなどのアクリル樹脂も水性スラリーの固形分に基づく重量で0.1〜30%加えられ得る。
【0019】
このようにして調製される本発明の混合物は、押出成形機における圧力が特に効果的に設定され得ることから、とりわけ力学的に安定で耐久性のある成形体が調製されるように、好ましくは、押出成形により成形される。
【0020】
本発明に従った方法における成形体の焼成での焼成温度は、通常、400℃と600℃との間である。400℃未満では、−細孔形成剤に応じて−ときには約450℃であっても、バインダー及び/又はさらなる添加物、及び非弾性的細孔形成剤は、通常、燃焼し切らないか、又は完全には転化せず;約600℃を超える温度では、例えばゼオライト好ましくはモレキュラーシーブ、リン酸アルミニウムなどの即ち多孔質材料は、熱応力によって損傷を受ける。成形体の触媒作用の性能はこのように低下する。しかしながら、最後の残渣を燃焼し切るためには、600℃より高い温度も本発明に従って短時間用いられ得ることが強調される。しかし、熱によって引き起こされる成形体の損傷、それ故の最初からの触媒活性の悪化を排除するため、600℃と700℃との間の温度は、本発明に従って調製される成形体にはあまり長い期間作用させるべきでない。
【0021】
好ましくは、最初の工程において、空隙率既知の粉体は、例えば二酸化ケイ素のゾルゲルコロイドと混合される。ゾルゲルは本質的にアルカリ金属がないこと、即ち、重量で0.1%未満のアルカリ金属化合物を含むことが特に好ましい。アルカリ金属含有ゾルゲルを用いることも可能であるが、この場合、本発明の成形体における金属イオン交換を行うために、焼成された成形体の例えば硝酸とのさらなる後処理が必要である。ゾルゲルを加える場合の他の重要な因子としては、通常10〜20nmの範囲内にある一次粒子の大きさがある。
【0022】
本発明の目的は、本発明の方法によって作製された触媒活性成形体によっても解決される。この成形体は、0.15cm3/gより高い間隙率を備え、好ましくは0.35cm3/gより高い間隙率を備え、より好ましくは0.45cm3/gより高い間隙率を備え、さらに、1.7kg/cm2より高い力学的安定性を備えている。
【0023】
本発明の成形体は、下記表1に示すように、7.5nm〜15000nmの直径を有する細孔において全容積に対して、異なる細孔直径を有する細孔の割合の百分率分布を有する。この分布は、第一に、触媒反応を遂行するための最適な空隙率を保証し、第二に、成形体の所要強度をも可能とする:
【0024】
【表1】

【0025】
特に好ましい割合は、7.5〜14nmの細孔直径を有する細孔が7〜12%、最も好ましくは7.5〜10%であり、14〜80nmの細孔直径を有する細孔が12〜29%、最も好ましくは15〜25%であり、80〜1750nmの細孔直径を有する細孔が60〜80%、最も好ましくは65〜75%であり、1750〜15000nmの細孔直径を有する細孔が0.3〜1.5%、最も好ましくは0.5〜1%である。
【0026】
本発明の方法を実施例に従って下記に説明するが、この実施例は限定されて解釈されるものではない。
【実施例】
【0027】
用いた内部空隙率既知の触媒活性粉体は、ゼオライトNH4-MFI 500とした。2.5kgのゼオライトを1.6Lの脱塩水と混合してスラリーを得て、さらに1.563kgのコロイダルシリカ(Ludox HS40)を加えた。また、50gのメチルセルロース(Methocel F4M)を加え、非弾性的細孔形成剤として500gのポリスチレン樹脂(粒子直径0.8μmのAlmatex Muticle PP 600)を加えた。また、50gのアクリロニトリル樹脂(Dualite E135-040D)を加えた。混合物をよく混合したあと、触媒活性を有する成形体を得るべく、押出成形機(Fuji, Pandal Co., Ltd., Japan)で押出成形し、次に120℃の空気の存在下で3時間乾燥した。続いて、成形体を時間あたり60℃の昇温速度で550℃まで温度を上げて焼成し、この温度を5時間維持した。最後に、成形体を再び室温まで冷却した。
【0028】
仮にアルカリ金属が工程中で取り除かれない場合、押出成形物は、アルカリ金属を減少させるために、必要に応じて次に示すように硝酸で後処理することもできる。
【0029】
18188gの脱塩水に硝酸(52.5%)をpH2になるまで混ぜた。希酸を80℃まで加熱し押出成形物(2500g)を加え、この混合物を80℃で5時間維持した。酸のpHを連続的に測定し、pHが2より大きくなった場合はpH2になるまで新しい硝酸を加えた。硝酸(52.5%)の消費量:29g。5時間後、押出成形物は、繰り返し7500gの脱塩水で洗浄し、洗浄後の水の導電率が100μsより小さくなるようにした。その後、押出成形物を80℃に加熱されたpH=2の希釈硝酸に再び5時間入れ、酸のpHを新しい硝酸を加えることによりpH=2に維持した。硝酸(52.5%)の消費量:19.8g。押出成形物は、7500gの脱塩水で繰り返し洗浄し、洗浄後の水の導電率が100μsより小さくなるようにした。乾燥及び焼成を上記のようにおこなった(120℃=>60℃/時間=>550℃で5時間=>冷却)。
【0030】
成形体の分析により、下記表に示す結果が得られた。細孔容積(空隙率)(PV)は、ドイツ工業規格DIN 66133に準じ、最高圧2000バールで水銀ポロシメータにより決定した。
【0031】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)内部空隙率既知の粒子で構成される触媒活性粉体を供給し、
b)楕円球形又は球形の形状を有する非弾性的細孔形成剤と粉体をよく混合し、
c)工程b)の混合物を成形体へと成形し、
d)工程c)で調製された成形体を焼成する、
の工程を備えた触媒活性多孔質成形体の製造方法。
【請求項2】
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン及び/又はその混合物でなるポリマー又はコポリマーを非弾性的細孔形成剤として用いる請求項2記載の方法。
【請求項3】
工程b)の前に、工程a)からの粉体の水性スラリーを調製することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
非弾性的細孔形成剤を水性スラリーの固形分に対して1〜30重量%加えることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
成形を押出成形によっておこなうことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
焼成を450℃と600℃との間の温度、より好ましくは500℃と600℃との間の温度で工程d)中におこなうことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程b)の前、途中、又は後にバインダーも加えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
バインダーを水性スラリーの固形分に対して5〜80重量%加えることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
バインダーが0.1重量%未満のアルカリ金属化合物を含んでいることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載された方法によって得られる成形体。
【請求項11】
成形体が0.5cm3/gより大きい細孔容積を備えていることを特徴とする請求項10記載の成形体。
【請求項12】
成形体が1.7kg/cm2より高い力学的安定性を備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の成形体。

【公表番号】特表2009−513478(P2009−513478A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538296(P2008−538296)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010486
【国際公開番号】WO2007/051601
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】