多孔質酸化チタン構造体及び多孔質酸化チタン構造体の製造方法
【課題】本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】酸化チタンを含有し、かつ、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔と、アスペクト比が１．１以下の球状空孔とを有し、前記扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍであり、前記球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである多孔質酸化チタン構造体。
【解決手段】酸化チタンを含有し、かつ、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔と、アスペクト比が１．１以下の球状空孔とを有し、前記扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍであり、前記球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである多孔質酸化チタン構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法及び該多孔質酸化チタン構造体を用いた光触媒に関する。
【背景技術】
【０００２】
酸化チタン等に代表される光触媒は、有害化学物質の分解及び除去、超親水性、水素生成等の優れた機能を有し、環境浄化、省エネルギーや新エネルギー等への用途が期待され、環境、エネルギー及び経済においてバランスの取れた持続可能な社会構築に貢献する素材であると目されている。
酸化チタン薄膜を形成する方法としては、コーティング法、浸漬法、スパッタリング法や酸素ガス雰囲気内に加熱蒸発させた金属蒸気を導入して反応させる熱ＣＶＤ法等が知られている。コーティング法では、有機系バインダに酸化チタン粉末を少量分散してスラリーとし、このスラリーを膜状に塗布して光触媒を形成する。しかしながら、膜中に有機系バインダが存在すると、光触媒活性が損なわれ、充分な光触媒活性が得られないという問題があった。これは、表層に析出した二酸化チタン粒子のみが光触媒活性に関与するに過ぎないためであると考えられる。
【０００３】
これに対して、充分な付着強度を持たせ、かつ、光触媒活性を維持するためには、素材表面に光触媒膜を直接形成する技術が有効である。特許文献１には、気化させたチタンアルコキシドを担体となる不活性ガスとともに、大気圧開放下で加熱された基材表面に吹き付けることで、基材表面に二酸化チタンからなる結晶配向膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、このような方法で得られる酸化チタン結晶配向膜を有する材料は、基材表面に形成された膜の表層が緻密に形成されているため、充分な光触媒活性を得ることができなかった。
【０００４】
また、特許文献２には、大気開放型化学気相析出法を用いて所定の膜厚及び気孔率を有する多孔質光触媒膜を作製する方法が開示されている。この方法では、大気開放下にて基材に原料ガスを吹き付けて、金属酸化物等の薄膜を形成することで、多孔質光触媒膜を作製しているが、実際には形成される空孔を所望の形状に制御することは極めて困難であった。また、この方法では、大気開放型ＣＶＤ装置等の特殊で大型の製造装置を必要とし、製造工程も複雑なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特許第３４５５６５３号公報
【特許文献２】特開２００５−２７９３６６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法及び該多孔質酸化チタン構造体を用いた光触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、酸化チタンを含有し、かつ、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔と、アスペクト比が１．１以下の球状空孔とを有し、前記扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍであり、前記球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである多孔質酸化チタン構造体である。
以下に本発明を詳述する。
【０００８】
本発明者は、鋭意検討の結果、多孔質酸化チタン構造体において、アスペクト比が大きく、平均長径が所定範囲内の扁平状空孔を構造体内に形成することで、光触媒に用いた場合に光拡散効果を向上させることが可能となることを見出した。
更に、このような扁平状空孔に所定の球状空孔を併せて形成することで、気体の通過を促進させ、より優れた光触媒機能を実現可能な多孔質酸化チタン構造体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【０００９】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔を有する。
酸化チタンが光触媒として働くためには、紫外線（波長約４００ｎｍ以下）が必要となるが、空孔のアスペクト比を１．３５以上の扁平状とすることで、強い光散乱を起こし紫外線を有効に活用することができ、その結果、光触媒機能を向上させることができる。
また、光触媒に用いた場合に、ガスの移動距離が長くなることで、光触媒活性点が多くなり、有機分子等の物質の吸着能が高くなるため、充分な光触媒活性が得られる。
上記アスペクト比が１．３５未満であると、比表面積が小さくなり、光触媒機能が低下する。上記アスペクト比の好ましい下限は１．５、好ましい上限は５である。
なお、上記アスペクト比は、長径の長さを短径の長さで割った値であり、その値が１に近いほど、形状は真球に近くなる。
上記アスペクト比は、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析して、空孔の長径及び短径を測定することで求めることができる。
【００１０】
上記扁平状空孔は、平均アスペクト比が１．３６〜４．９６の範囲内であることが好ましい。これにより、更に光触媒機能を向上させることが可能となる。
【００１１】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍである。上記扁平状空孔の平均長径が３００ｎｍ未満であると、紫外線散乱が不充分となることがある。上記扁平状空孔の平均長径が１０００ｎｍを超えると、扁平状空孔が大きすぎて、強度が不足してガス抜けの原因となる。好ましくは３２０〜９７０ｎｍである。
なお、上記平均長径は、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析することで測定することができる。
【００１２】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、アスペクト比が１．１以下の球状空孔を有する。
上記アスペクト比が１．１以下の球状空孔を有することで、光触媒に用いた場合、多孔質酸化チタン構造体内部における気体の通過が促進され、光触媒機能を向上させることができる。
上記アスペクト比が１．１を超えると、気体が通過しにくくなり、光触媒機能が低下する。上記アスペクト比の好ましい上限は１．０９である。
なお、上記アスペクト比は、上記扁平状空孔と同様の方法で求めることができる。
【００１３】
上記球状空孔は、平均アスペクト比が１．００〜１．０８の範囲内であることが好ましい。
これにより、更に光触媒機能を向上させることが可能となる。
【００１４】
本発明の多孔質酸化チタン構造体では、上記アスペクト比が１．１以下の球状空孔の個数が全体の８０％以上であることが好ましい。上記アスペクト比が１．１以下の球状空孔が８０％未満であると、充分な気体通過性が得られないことがある。
【００１５】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである。上記球状空孔の平均長径が１ｎｍ未満であると、球状空孔が小さすぎて、充分な気体通過性が得られない。上記球状空孔の平均長径が１００ｎｍを超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。好ましくは５〜１００ｎｍである。
【００１６】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、扁平状空孔と球状空孔との比率が１：１〜１０：１であることが好ましい。１：１よりも、扁平状空孔が少ないと、充分な紫外線散乱が得られないことがあり、１０：１よりも、扁平状空孔が多いと、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。好ましくは、１：１〜９：１である。
なお、扁平状空孔と球状空孔との比率は、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析して、扁平状空孔の合計面積と、球状空孔の合計面積の比率で表す。
【００１７】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の具体例を図１及び図２に示す。
なお、本発明の多孔質酸化チタン構造体は、これらの具体例に限定されるものではない。
【００１８】
図１は、単層からなる多孔質酸化チタン構造体である。
図１に示すように、多孔質酸化チタン構造体１１は、アスペクト比が１．３５以上で、平均長径が３００〜１０００ｎｍである扁平状空孔１２と、アスペクト比が１．１以下で、平均長径が１〜１００ｎｍである球状空孔１３とを有する。このような単層構造とすることで、例えば、光触媒に用いた場合に、気体を充分に透過させて気体を浄化することができる。
【００１９】
また、図２は、複数の層からなる多孔質酸化チタン構造体である。
図２に示すように、多孔質酸化チタン構造体２１は、アスペクト比が１．３５以上で、平均長径が３００〜１０００ｎｍである扁平状空孔２２を有する層（扁平状空孔層）と、アスペクト比が１．１以下で、平均長径が１〜１００ｎｍである球状空孔２３を有する層（球状空孔層）とからなる。また、球状空孔２３を有する層が基板と直接接する構造となっている。
このような複数の層からなる構造とすることで、球状空孔２３を有する層が高い比表面積を有することとなり、例えば、光触媒として用いる場合に、扁平状空孔２２を有する層で浄化しきれなかった気体を、球状空孔２３を有する層で浄化することができる。
【００２０】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、空隙率の好ましい下限が４０％、好ましい上限が８５％である。上記空隙率が４０％未満であると、充分な紫外線散乱が得られないことがあり、８５％を超えると、多孔質酸化チタン構造体の強度が弱くなり耐久性の面で使用に耐えないためである。好ましくは５０％〜８０％である。
なお、上記空隙率は、例えば、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析することで測定することができる。また、かさ密度を算出した後、二酸化チタンのアナターゼ構造における真密度を用いて算出することもできる。
【００２１】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、比表面積が５０〜１０００ｍ２／ｇであることが好ましい。上記比表面積が５０ｍ２／ｇ未満であると、多孔質酸化チタン構造体の光触媒活性点が少なくなるため、充分な光触媒活性が得られず、１０００ｍ２／ｇを超えると、作製するのは技術的に難しく、歩留まり等の面でコスト的に成り立たないため、実用的ではない。
【００２２】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の厚みの好ましい下限は０．０５μｍ、好ましい上限は３０μｍである。上記厚みが０．０５μｍ未満であると、多孔質酸化チタン構造体の強度が不充分であることに加えて充分な光学活性が得られず、３０μｍを超えると、製造コストが上昇してしまうことがある。
なお、本発明の多孔質酸化チタン構造体が図２に示すような２層構造である場合は、扁平状空孔層の厚みが０．０５〜２０μｍ、球状空孔層の厚みが０．０５〜１０μｍであることが好ましい。
【００２３】
本発明の多孔質酸化チタン構造体を構成する酸化チタン粒子としては、特に限定されず、例えば、通常ルチル型の二酸化チタン粒子、アナターゼ型の二酸化チタン粒子、ブルッカイト型の二酸化チタン粒子及びこれら結晶性二酸化チタンを修飾した二酸化チタン粒子等を用いることができる。
【００２４】
上記酸化チタン粒子の粒子径としては、一次粒子の平均粒子径の好ましい下限が３．５ｎｍ、好ましい上限が４０ｎｍであり、より好ましい下限は５ｎｍ、より好ましい上限は３０ｎｍである。上記範囲内とすることで、充分な比表面積を得ることができ、また電子と正孔の再結合を防ぐことができる。また、粒子径分布の異なる２種類以上の微粒子を混合してもよい。
【００２５】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、例えば、酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子としては、架橋性モノマーに由来するセグメントを５重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が３００％以上であるものを用い、上記球状空孔用造孔樹脂粒子としては、架橋性モノマーに由来するセグメントを２０重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が２００〜２５０％であるものを用いる方法によって製造することができる。このような多孔質酸化チタン構造体の製造方法もまた本発明の１つである。
【００２６】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程を有する。
【００２７】
上記有機溶剤は溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である。
上記有機溶剤の溶解度パラメータが７．５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２未満であると、酸化チタンが均一に分散しないことがあり、１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２を超えると、スクリーン印刷可能な粘度のペーストを作製できないことがある。
上記有機溶剤としては、具体例には例えば、メタノール、エタノール、１−プロパノール、２−プロパノール、テルピネオール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアミン、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【００２８】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを５重量％以上含有する重合体からなる。
【００２９】
上記架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ（メタ）アクリレート、１，６−ヘキサンジオールジ（メタ）アクリレート、ネオペンチルグリコールジ（メタ）アクリレート、トリメチロールプロパントリ（メタ）アクリレート、テトラメチロールメタントリ（メタ）アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ（メタ）アクリレート等のアクリル系多官能性モノマー、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。これら架橋性モノマーは単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。
【００３０】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子を構成する重合体は、上記架橋性モノマーに由来するセグメントと他のモノマーに由来するセグメントとを有する共重合体であってもよい。
上記他のモノマーは特に限定されず、例えば、メチル（メタ）アクリレート、エチル（メタ）アクリレート、プロピル（メタ）アクリレート、ｎ−ブチル（メタ）アクリレート、ｔｅｒｔ−ブチル（メタ）アクリレート、イソブチル（メタ）アクリレート、シクロヘキシル（メタ）アクリレート、２−エチルヘキシル（メタ）アクリレート、イソボルニル（メタ）アクリレート、ｎ−ステアリル（メタ）アクリレート、ベンジル（メタ）アクリレート等が挙げられる。
また、上記他のモノマーには、ポリオキシアルキレン構造を有する（メタ）アクリルモノマーを用いてもよい。上記ポリオキシアルキレン構造は特に限定されず、例えば、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシメチルエチレン構造、ポリオキシエチルエチレン構造、ポリオキシトリメチレン構造、ポリオキシテトラメチレン構造等が挙げられる。
上記単官能（メタ）アクリルモノマーのなかでも、より低温で分解することができることから、メチルメタクリレートが好適である。
なお、本明細書中において「（メタ）アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【００３１】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子を構成する重合体における上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合の下限は５重量％である。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合が５重量％未満であると、有機溶剤に対する膨潤度が高過ぎて粒子形状を失い、扁平状空孔を形成できないことがある。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合のより好ましい下限は５重量％、好ましい上限は５０重量％である。
【００３２】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子は、上記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が３００％以上である。上記膨潤度を３００％以上とすることで、アスペクト比が１．３５以上の空孔を有する多孔質酸化チタン構造体を好適に製造することができる。
上記膨潤度が３００％未満であると、扁平状空孔のアスペクト比が１に近づき、光散乱効果が落ちて光触媒効果が低下する。
上記膨潤度の好ましい下限は４００％である。
なお、上記膨潤度は、計量した試料を所定の有機溶剤に添加し、２４時間静置後、最初に加えた試料の重量に対する試料に取り込まれた有機溶剤の重量の割合を算出することにより測定することができる。
【００３３】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径は、好ましい下限は２５０ｎｍ、好ましい上限は９５０ｎｍである。上記平均粒子径が２５０ｎｍ未満であると、光拡散効果が不足することがあり、９５０ｎｍを超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は３００ｎｍ、より好ましい上限は８００ｎｍである。
なお、上記平均粒子径は、体積平均粒子径であり、例えば、動的光散乱式粒度分布計（Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ｓｉｚｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍｓ社製、「ＮＩＣＯＭＰ ｍｏｄｅｌ ３８０ ＺＬＳ−Ｓ」）を用いることにより測定することができる。
【００３４】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子の添加量の好ましい下限は上記酸化チタンペーストに対して１重量％、好ましい上限は５０重量％である。上記添加量が１重量％未満であると、扁平状空孔が少なく光散乱効果が不足することがあり、５０重量％を超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は２重量％、より好ましい上限は３５重量％である。
【００３５】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを２０重量％以上含有する重合体からなる。
【００３６】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子を構成する重合体における上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合の下限は２０重量％である。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合が２０重量％未満であると、有機溶剤に対する膨潤度が高く、球状空孔を形成できないことがある。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合のより好ましい下限は２０重量％、好ましい上限は８０重量％である。
【００３７】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子は、上記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が２００〜２５０％である。上記膨潤度を上記範囲内とすることで、アスペクト比が１．１以下の球状空孔を好適に形成することができる。
上記膨潤度が２５０％を超えると、扁平状空孔のみが存在する酸化チタン構造体となる。
上記膨潤度の好ましい範囲は２００〜２４０％である。
なお、上記膨潤度は、計量した試料を所定の有機溶剤に添加し、２４時間静置後、最初に加えた試料の重量に対する試料に取り込まれた有機溶剤の重量の割合を算出することにより測定することができる。
【００３８】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径は、好ましい下限は５ｎｍ、好ましい上限は１００ｎｍである。上記平均粒子径が５ｎｍ未満であると、形成される空孔が小さすぎて、充分な気体通過性が得られなくなり、１００ｎｍを超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は７ｎｍ、より好ましい上限は９０ｎｍである。
なお、上記平均粒子径は、体積平均粒子径であり、例えば、動的光散乱式粒度分布計（Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ｓｉｚｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍｓ社製、「ＮＩＣＯＭＰ ｍｏｄｅｌ ３８０ ＺＬＳ−Ｓ」）を用いることにより測定することができる。
【００３９】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子の添加量の好ましい下限は上記酸化チタンペーストに対して１重量％、好ましい上限は５０重量％である。上記添加量が１重量％未満であると、球状空孔が少なく、充分な気体通過性が得られなくなることがあり、５０重量％を超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下したり、比表面積が小さくなり気体の浄化能力が落ちてしまったりすることがある。より好ましい下限は５重量％、より好ましい上限は３５重量％である。
なお、上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子と球状空孔用造孔樹脂粒子との添加量の比（重量比）は、１：１〜１０：１であることが好ましい。
【００４０】
上記酸化チタン粒子については、上述した通りである。
上記酸化チタンペーストは、バインダ樹脂を含有することが好ましい。上記バインダ樹脂として、例えば、エチルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、ポリビニルブチラール（ＰＶＢ）、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【００４１】
上記酸化チタンペーストを調製する方法としては、上記酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、有機溶剤及びバインダ樹脂を、例えば、２本ロールミル、３本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、ディスパー、プラネタリーミキサー、自転公転式攪拌装置、ニーダー、押し出し機、ミックスローター、スターラー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【００４２】
本発明の酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタンペーストを塗工する工程を有する。
上記酸化チタンペーストを塗工する方法としては特に限定されないが、上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子の形状を維持したまま塗工できることから、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。
【００４３】
上記スクリーン印刷工程におけるスクリーン版の目開きの大きさ、スキージアタック角、スキージ速度、スキージ押圧力等については、適宜設定することが好ましい。
【００４４】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有する。
【００４５】
上酸化チタンペーストの乾燥及び焼成は、塗工する基板の種類等により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整することができる。例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下、５０〜８００℃程度の範囲内で、１０秒〜１２時間程度行うことが好ましい。また、乾燥及び焼成は、単一の温度で１回又は温度を変化させて２回以上行ってもよい。
【００４６】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、例えば、酸化チタン粒子、扁平状造孔樹脂粒子、球状造孔樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、上記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、上記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、上記扁平状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．３５以上であり、上記球状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．１以下である方法によっても製造することができる。このような別の態様の製造方法もまた本発明の１つである。
【００４７】
別の態様の製造方法では、平均アスペクト比が１．３５以上である扁平状造孔樹脂粒子、及び、平均アスペクト比が１．１以下である球状造孔樹脂粒子を用いることが特徴部分である。上記扁平状造孔樹脂粒子及び状造孔樹脂粒子を用いることで、所望の空孔形状を有する酸化チタン構造体を簡便に製造することができる。
上記平均アスペクト比が１．３５より低い扁平状造孔樹脂粒子を用いたり、上記平均アスペクト比が１．１より大きい球状造孔樹脂粒子を用いたりした場合、所望の空孔形状を有する酸化チタン構造体を製造することができない。
【００４８】
上記平均アスペクト比が１．３５以上である扁平状造孔樹脂粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、扁平状造孔樹脂粒子を重合する際に、モノマーと重合溶媒とのＳＰ値差が２．５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２以上である組み合わせのモノマーと重合溶媒を用いて、重合する方法等が用いられる。このような方法を用いることで、重合初期にポリマーと重合溶媒との相分離が急激に起こり、重合溶媒を放出して扁平化した扁平状造孔樹脂粒子を得ることができる。また、シェルの厚みに偏りのある中空粒子になった後に赤血球状に扁平化することで扁平化した扁平状造孔樹脂粒子を作製することができる。
更に、モノマー中の架橋成分比率を高くすることによっても、重合初期にポリマーと重合溶媒との相分離が急激に起こるため、扁平化した扁平状造孔樹脂粒子を作製することができる。
なお、上記球状造孔樹脂粒子については、従来公知の方法で作製することができる。
また、上記扁平状造孔樹脂粒子の平均長径は、３００〜１０００ｎｍであることが好ましく、上記球状造孔樹脂粒子の平均長径は１〜１００ｎｍであることが好ましい。
【００４９】
なお、上記扁平状造孔樹脂粒子及び球状造孔樹脂粒子以外の材料や、製造工程については基本的に本発明の酸化チタン構造体の製造方法と同じであるが、別の態様の製造方法においては、扁平状造孔樹脂粒子及び球状造孔樹脂粒子が膨潤するものでなくてもよい。また、使用する有機溶剤についても溶解度パラメータ７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２であるものに限られない。
従って、扁平状造孔樹脂粒子及び球状造孔樹脂粒子や有機溶剤の材質選択の範囲が広がり、より安価な方法で酸化チタン構造体を作製することが可能となる。
【００５０】
本発明の多孔質酸化チタン構造体を用いて光触媒を作製することができる。このようにして得られた光触媒は、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することができる。このような光触媒もまた本発明の１つである。
【発明の効果】
【００５１】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法及び該多孔質酸化チタン構造体を用いた光触媒を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】本発明の多孔質酸化チタン構造体の一例を示す模式図である。
【図２】本発明の多孔質酸化チタン構造体の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【００５３】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【００５４】
（実施例１）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシプロピレンジメタクリレート５重量部（ポリオキシプロピレンユニット数＝約４；日油社製、ブレンマーＰＤＰ−２５０）、メタクリル酸イソブチル９５重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、ノニオン系界面活性剤ＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち０．５重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ７４４ｎｍであった。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の粒子径（体積平均粒子径）は、動的光散乱式粒度分布計（Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ｓｉｚｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍｓ社製、「ＮＩＣＯＭＰ ｍｏｄｅｌ ３８０ ＺＬＳ−Ｓ」）を用いることにより測定した。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を、下記の方法で測定したところ、４７０％であった。
【００５５】
［膨潤度測定］
造孔樹脂粒子１ｇを遠沈管に計量し、メチルエチルケトンを、遠沈管も含めて合計３０ｇになるように添加する。２４時間静置後、遠心分離にて粒子を沈降させて上澄みの溶媒を捨てた。膨潤した造孔樹脂粒子の重量を計量し、下記式（１）にて膨潤度を求めた。
膨潤度（％）＝（粒子内の有機溶剤の重量／最初に加えた造孔樹脂粒子の重量）×１００ （１）
【００５６】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート３５重量部、メタクリル酸メチル６５重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち５０重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ６８ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２３７％であった。
【００５７】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液２．６７重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．４重量部）及び球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．２重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．０３重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００５８】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００５９】
（実施例２）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシエチレンジメタクリレート２重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝約９；日油社製、ブレンマーＰＤＥ−４００）、トリメチロールプロパントリアクリレート１０重量部、メタクリル酸イソブチル８８重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、ノニオン系界面活性剤ＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち１重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ３２０ｎｍであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％エタノール分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を測定したところ、３４２％であった。
【００６０】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシエチレンジメタクリレート１０重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝約９；日油社製、ブレンマーＰＤＥ−４００）トリメチロールプロパントリアクリレート３０重量部、メタクリル酸メチル６０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１６（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち４０重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ９３ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％エタノール分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２１５％であった。
作製した扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例１と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た（膜厚：５μｍ）。
【００６１】
（実施例３）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート１０重量部、メタクリル酸メチル９０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、ノニオン系界面活性剤ＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち０．５重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ５８９ｎｍであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテトラヒドロフランに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％テトラヒドロフラン分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のテトラヒドロフラン中での膨潤度を測定したところ、５２１％であった。
【００６２】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシプロピレンジメタクリレート５重量部（ポリオキシプロピレンユニット数＝約４；日油社製、ブレンマーＰＤＰ−２５０）、トリメチロールプロパントリアクリレート４５重量部、メタクリル酸イソブチル５０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１６（第一工業製薬社製）１重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち５５重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ４９ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテトラヒドロフランに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％テトラヒドロフラン分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のテトラヒドロフラン中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２０６％であった。
【００６３】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液４重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．６重量部）及び球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．６６重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．１重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００６４】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００６５】
（実施例４）
（扁平状空孔層用酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、実施例１で得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液４重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．６重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより扁平状空孔層用酸化チタンペーストを調製した。
【００６６】
（球状空孔層用酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、実施例１で得られた球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．３重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．０４５重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより球状空孔層用酸化チタンペーストを調製した。
【００６７】
その後、ガラス基板に、得られた球状空孔層用酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで球状空孔層を形成した（膜厚：２．５μｍ）。
次いで、球状空孔層に、得られた扁平状空孔層用酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで扁平状空孔層を形成し（膜厚：２．５μｍ）、多孔質酸化チタン構造体を得た。
【００６８】
（実施例５）
（扁平状造孔樹脂粒子の製造）
ジビニルベンゼン１００重量部、ノルマルヘプタン７０重量部、過酸化ベンゾイル１重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水９００重量部、アニオン系界面活性剤ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム（第一工業製薬製、ネオコールＳＷ−Ｃ）５重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより２０分間乳化させた後、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、７５℃１２時間反応させ、扁平状造孔樹脂粒子スラリーを得た。ＳＥＭにより求めた扁平状造孔樹脂粒子の平均長径は４５０ｎｍであり、平均短径は３０６ｎｍであった。また、扁平状造孔樹脂粒子の平均アスペクト比は１．４７であった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。
【００６９】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール２５重量部、得られた扁平状造孔樹脂粒子分散液３．２０重量部（扁平状造孔樹脂粒子０．４８重量部）及び実施例３で得られた球状造孔樹脂粒子分散液２．４７重量部（球状造孔樹脂粒子０．３７重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００７０】
（実施例６）
（扁平状造孔樹脂粒子の製造）
トリメチロールプロパントリメタクリレート５０重量部、アクリロニトリル２５重量部、
ポリオキシエチレンジメタクリレート２５重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝１；日本油脂社製、ブレンマーＰＤＥ−５０）、シクロヘキサン６０重量部、酢酸エチル５重量部、過酸化ベンゾイル１重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水６００重量部、
アニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム（第一工業製薬製、ハイテノールＮＦ−１７）５重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより２０分間乳化させた後、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、７５℃８時間反応させ、扁平状造孔樹脂粒子スラリーを得た。
ＳＥＭにより求めた扁平状造孔樹脂粒子の平均長径は９２０ｎｍであり、平均短径は４４２ｎｍであった。また、扁平状造孔樹脂粒子の平均アスペクト比は２．０８であった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
【００７１】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール２５重量部、得られた扁平状造孔樹脂粒子分散液１．６７重量部（扁平状造孔樹脂粒子０．２５重量部）及び実施例４で得られた球状造孔樹脂粒子分散液１．２７重量部（球状造孔樹脂粒子０．１９重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００７２】
（比較例１）
モノマー成分として、ジビニルベンゼン３０重量部、スチレン７０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ネオゲンＳ−２０Ｆ（第一工業製薬社製）１重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち８重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ１５０ｎｍであった。得られた造孔樹脂粒子のスラリーの溶媒を、遠心分離を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定したところ、１８１％であった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例１と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た（膜厚：５μｍ）。
【００７３】
（比較例２）
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート１０重量部（ポリテトラメチレングリコールユニット数＝約１；日立化成社製、ＦＡ−１２４Ｍ）、メタクリル酸イソブチル４５重量部、メタクリル酸メチル４５重量部を混合したモノマー１００重量部全量と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル１重量部とを混合、撹拌した混合溶液の全量を、水溶性乳化剤としてＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）１重量％と０．０２重量％ハイドロキノンを含有するイオン交換水４００重量部に添加し、ホモジナイザーにて乳化して、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、上記で得られた乳化懸濁液の全量を一括して投入し、重合器を６０℃まで昇温して重合を開始した。８時間重合した後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ２．５μｍであった。得られた分散液の溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、造孔樹脂粒子の１５重量％エタノール分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を測定したところ、３５５％であった。
【００７４】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール２５重量部、得られた扁平状造孔樹脂粒子分散液４．３３重量部（扁平状造孔樹脂粒子０．６５重量部）及び実施例２で得られた球状造孔樹脂粒子分散液０．６７重量部（球状造孔樹脂粒子０．１重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した。
【００７５】
（比較例３）
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、実施例１で得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液３．３重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．５重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００７６】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００７７】
（比較例４）
メタクリル酸メチル１００重量部を、アニオン系界面活性剤（ハイテノールＬＡ−１０、第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち５０重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間掛けて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ８２ｎｍであった。得られた造孔樹脂粒子のスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定しようとしたが、メチルエチルケトンに樹脂粒子が溶解してしまい測定できなかった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例１と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た（膜厚：５μｍ）。
【００７８】
（比較例５）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシエチレンジメタクリレート２重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝約９；日油社製、ブレンマーＰＤＥ−４００）、トリメチロールプロパントリアクリレート４０重量部、メタクリル酸イソブチル５８重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ネオゲンＳ−２０Ｆ（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち１重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ２３３ｎｍであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定したところ、２７６％であった。
【００７９】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート３０重量部、メタクリル酸メチル７０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち８重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ１９８ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２２４％であった。
【００８０】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液２．６７重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．４重量部）及び球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．６６重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．１重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００８１】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００８２】
＜評価＞
実施例１〜６及び比較例１〜５で得られた多孔質酸化チタン構造体について以下の評価を行った。結果を表１及び２に示した。
【００８３】
（１）空孔径（平均長径、平均短径）及び平均アスペクト比
得られた多孔質酸化チタン構造体について、ＳＥＭを用いて厚み方向の切断面を撮影し、得られた写真から５０個分の孔を無作為に抽出し、空孔径（長径及び短径）をそれぞれ計測した。また、測定した長径及び短径からアスペクト比を算出した。
次いで、得られたデータに基づいて、５０個の孔のうち、扁平状空孔（アスペクト比１．３５以上）及び球状空孔（アスペクト比１．１以下）の個数をそれぞれ計数するとともに、扁平状空孔及び球状空孔の比率（合計面積比）を算出した。
更に、「扁平状空孔」及び「球状空孔」のそれぞれについて、「平均アスペクト比」、「平均長径」及び「平均短径」を算出した。
なお、「扁平状空孔」、「球状空孔」を有しない場合は、表１に「−」で示した。
【００８４】
（２）多孔質酸化チタン構造体の空隙率
まず、多孔質酸化チタン構造体の重量（Ａ）と膜厚（Ｂ）を測定した後、かさ密度（Ｃ）を下記式（２）を用いて算出した。
かさ密度（Ｃ）＝Ａ（ｍｇ）／［Ｂ（μｍ）×３０×３０］×１０３ （２）
次いで、得られたかさ密度から下記式（３）を用いて空隙率を算出した。
空隙率（％）＝（１−Ｃ（ｇ／ｃｍ３）／３．８４）×１００ （３）
なお、二酸化チタンのアナターゼ構造における真密度は３．８４ｇ／ｃｍ３とした。
【００８５】
（３）多孔質酸化チタン構造体の比表面積測定
得られた多孔質酸化チタン構造体の比表面積を、ＢＥＴ式比表面積計（Ｓｙｓｍｅｘ社製 ＡＵＴＯＳＯＲＢシリーズ）を用いて測定した。
【００８６】
（４）光触媒性能
得られた多孔質酸化チタン構造体について、光触媒性能評価試験法ＩＩａガスバックＡ法（光触媒製品技術協議会）に準拠した方法によって光触媒性能を求めた。なお、この方法では、アセトアルデヒドの分解活性を指標とする。
【００８７】
【表１】
【表２】
【産業上の利用可能性】
【００８８】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供できる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法及び該多孔質酸化チタン構造体を用いた光触媒に関する。
【背景技術】
【０００２】
酸化チタン等に代表される光触媒は、有害化学物質の分解及び除去、超親水性、水素生成等の優れた機能を有し、環境浄化、省エネルギーや新エネルギー等への用途が期待され、環境、エネルギー及び経済においてバランスの取れた持続可能な社会構築に貢献する素材であると目されている。
酸化チタン薄膜を形成する方法としては、コーティング法、浸漬法、スパッタリング法や酸素ガス雰囲気内に加熱蒸発させた金属蒸気を導入して反応させる熱ＣＶＤ法等が知られている。コーティング法では、有機系バインダに酸化チタン粉末を少量分散してスラリーとし、このスラリーを膜状に塗布して光触媒を形成する。しかしながら、膜中に有機系バインダが存在すると、光触媒活性が損なわれ、充分な光触媒活性が得られないという問題があった。これは、表層に析出した二酸化チタン粒子のみが光触媒活性に関与するに過ぎないためであると考えられる。
【０００３】
これに対して、充分な付着強度を持たせ、かつ、光触媒活性を維持するためには、素材表面に光触媒膜を直接形成する技術が有効である。特許文献１には、気化させたチタンアルコキシドを担体となる不活性ガスとともに、大気圧開放下で加熱された基材表面に吹き付けることで、基材表面に二酸化チタンからなる結晶配向膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、このような方法で得られる酸化チタン結晶配向膜を有する材料は、基材表面に形成された膜の表層が緻密に形成されているため、充分な光触媒活性を得ることができなかった。
【０００４】
また、特許文献２には、大気開放型化学気相析出法を用いて所定の膜厚及び気孔率を有する多孔質光触媒膜を作製する方法が開示されている。この方法では、大気開放下にて基材に原料ガスを吹き付けて、金属酸化物等の薄膜を形成することで、多孔質光触媒膜を作製しているが、実際には形成される空孔を所望の形状に制御することは極めて困難であった。また、この方法では、大気開放型ＣＶＤ装置等の特殊で大型の製造装置を必要とし、製造工程も複雑なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特許第３４５５６５３号公報
【特許文献２】特開２００５−２７９３６６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法及び該多孔質酸化チタン構造体を用いた光触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、酸化チタンを含有し、かつ、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔と、アスペクト比が１．１以下の球状空孔とを有し、前記扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍであり、前記球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである多孔質酸化チタン構造体である。
以下に本発明を詳述する。
【０００８】
本発明者は、鋭意検討の結果、多孔質酸化チタン構造体において、アスペクト比が大きく、平均長径が所定範囲内の扁平状空孔を構造体内に形成することで、光触媒に用いた場合に光拡散効果を向上させることが可能となることを見出した。
更に、このような扁平状空孔に所定の球状空孔を併せて形成することで、気体の通過を促進させ、より優れた光触媒機能を実現可能な多孔質酸化チタン構造体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【０００９】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔を有する。
酸化チタンが光触媒として働くためには、紫外線（波長約４００ｎｍ以下）が必要となるが、空孔のアスペクト比を１．３５以上の扁平状とすることで、強い光散乱を起こし紫外線を有効に活用することができ、その結果、光触媒機能を向上させることができる。
また、光触媒に用いた場合に、ガスの移動距離が長くなることで、光触媒活性点が多くなり、有機分子等の物質の吸着能が高くなるため、充分な光触媒活性が得られる。
上記アスペクト比が１．３５未満であると、比表面積が小さくなり、光触媒機能が低下する。上記アスペクト比の好ましい下限は１．５、好ましい上限は５である。
なお、上記アスペクト比は、長径の長さを短径の長さで割った値であり、その値が１に近いほど、形状は真球に近くなる。
上記アスペクト比は、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析して、空孔の長径及び短径を測定することで求めることができる。
【００１０】
上記扁平状空孔は、平均アスペクト比が１．３６〜４．９６の範囲内であることが好ましい。これにより、更に光触媒機能を向上させることが可能となる。
【００１１】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍである。上記扁平状空孔の平均長径が３００ｎｍ未満であると、紫外線散乱が不充分となることがある。上記扁平状空孔の平均長径が１０００ｎｍを超えると、扁平状空孔が大きすぎて、強度が不足してガス抜けの原因となる。好ましくは３２０〜９７０ｎｍである。
なお、上記平均長径は、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析することで測定することができる。
【００１２】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、アスペクト比が１．１以下の球状空孔を有する。
上記アスペクト比が１．１以下の球状空孔を有することで、光触媒に用いた場合、多孔質酸化チタン構造体内部における気体の通過が促進され、光触媒機能を向上させることができる。
上記アスペクト比が１．１を超えると、気体が通過しにくくなり、光触媒機能が低下する。上記アスペクト比の好ましい上限は１．０９である。
なお、上記アスペクト比は、上記扁平状空孔と同様の方法で求めることができる。
【００１３】
上記球状空孔は、平均アスペクト比が１．００〜１．０８の範囲内であることが好ましい。
これにより、更に光触媒機能を向上させることが可能となる。
【００１４】
本発明の多孔質酸化チタン構造体では、上記アスペクト比が１．１以下の球状空孔の個数が全体の８０％以上であることが好ましい。上記アスペクト比が１．１以下の球状空孔が８０％未満であると、充分な気体通過性が得られないことがある。
【００１５】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである。上記球状空孔の平均長径が１ｎｍ未満であると、球状空孔が小さすぎて、充分な気体通過性が得られない。上記球状空孔の平均長径が１００ｎｍを超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。好ましくは５〜１００ｎｍである。
【００１６】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、扁平状空孔と球状空孔との比率が１：１〜１０：１であることが好ましい。１：１よりも、扁平状空孔が少ないと、充分な紫外線散乱が得られないことがあり、１０：１よりも、扁平状空孔が多いと、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。好ましくは、１：１〜９：１である。
なお、扁平状空孔と球状空孔との比率は、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析して、扁平状空孔の合計面積と、球状空孔の合計面積の比率で表す。
【００１７】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の具体例を図１及び図２に示す。
なお、本発明の多孔質酸化チタン構造体は、これらの具体例に限定されるものではない。
【００１８】
図１は、単層からなる多孔質酸化チタン構造体である。
図１に示すように、多孔質酸化チタン構造体１１は、アスペクト比が１．３５以上で、平均長径が３００〜１０００ｎｍである扁平状空孔１２と、アスペクト比が１．１以下で、平均長径が１〜１００ｎｍである球状空孔１３とを有する。このような単層構造とすることで、例えば、光触媒に用いた場合に、気体を充分に透過させて気体を浄化することができる。
【００１９】
また、図２は、複数の層からなる多孔質酸化チタン構造体である。
図２に示すように、多孔質酸化チタン構造体２１は、アスペクト比が１．３５以上で、平均長径が３００〜１０００ｎｍである扁平状空孔２２を有する層（扁平状空孔層）と、アスペクト比が１．１以下で、平均長径が１〜１００ｎｍである球状空孔２３を有する層（球状空孔層）とからなる。また、球状空孔２３を有する層が基板と直接接する構造となっている。
このような複数の層からなる構造とすることで、球状空孔２３を有する層が高い比表面積を有することとなり、例えば、光触媒として用いる場合に、扁平状空孔２２を有する層で浄化しきれなかった気体を、球状空孔２３を有する層で浄化することができる。
【００２０】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、空隙率の好ましい下限が４０％、好ましい上限が８５％である。上記空隙率が４０％未満であると、充分な紫外線散乱が得られないことがあり、８５％を超えると、多孔質酸化チタン構造体の強度が弱くなり耐久性の面で使用に耐えないためである。好ましくは５０％〜８０％である。
なお、上記空隙率は、例えば、厚み方向の切断面を撮影したＳＥＭ写真を画像解析することで測定することができる。また、かさ密度を算出した後、二酸化チタンのアナターゼ構造における真密度を用いて算出することもできる。
【００２１】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、比表面積が５０〜１０００ｍ２／ｇであることが好ましい。上記比表面積が５０ｍ２／ｇ未満であると、多孔質酸化チタン構造体の光触媒活性点が少なくなるため、充分な光触媒活性が得られず、１０００ｍ２／ｇを超えると、作製するのは技術的に難しく、歩留まり等の面でコスト的に成り立たないため、実用的ではない。
【００２２】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の厚みの好ましい下限は０．０５μｍ、好ましい上限は３０μｍである。上記厚みが０．０５μｍ未満であると、多孔質酸化チタン構造体の強度が不充分であることに加えて充分な光学活性が得られず、３０μｍを超えると、製造コストが上昇してしまうことがある。
なお、本発明の多孔質酸化チタン構造体が図２に示すような２層構造である場合は、扁平状空孔層の厚みが０．０５〜２０μｍ、球状空孔層の厚みが０．０５〜１０μｍであることが好ましい。
【００２３】
本発明の多孔質酸化チタン構造体を構成する酸化チタン粒子としては、特に限定されず、例えば、通常ルチル型の二酸化チタン粒子、アナターゼ型の二酸化チタン粒子、ブルッカイト型の二酸化チタン粒子及びこれら結晶性二酸化チタンを修飾した二酸化チタン粒子等を用いることができる。
【００２４】
上記酸化チタン粒子の粒子径としては、一次粒子の平均粒子径の好ましい下限が３．５ｎｍ、好ましい上限が４０ｎｍであり、より好ましい下限は５ｎｍ、より好ましい上限は３０ｎｍである。上記範囲内とすることで、充分な比表面積を得ることができ、また電子と正孔の再結合を防ぐことができる。また、粒子径分布の異なる２種類以上の微粒子を混合してもよい。
【００２５】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、例えば、酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子としては、架橋性モノマーに由来するセグメントを５重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が３００％以上であるものを用い、上記球状空孔用造孔樹脂粒子としては、架橋性モノマーに由来するセグメントを２０重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が２００〜２５０％であるものを用いる方法によって製造することができる。このような多孔質酸化チタン構造体の製造方法もまた本発明の１つである。
【００２６】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程を有する。
【００２７】
上記有機溶剤は溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である。
上記有機溶剤の溶解度パラメータが７．５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２未満であると、酸化チタンが均一に分散しないことがあり、１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２を超えると、スクリーン印刷可能な粘度のペーストを作製できないことがある。
上記有機溶剤としては、具体例には例えば、メタノール、エタノール、１−プロパノール、２−プロパノール、テルピネオール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアミン、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【００２８】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを５重量％以上含有する重合体からなる。
【００２９】
上記架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ（メタ）アクリレート、１，６−ヘキサンジオールジ（メタ）アクリレート、ネオペンチルグリコールジ（メタ）アクリレート、トリメチロールプロパントリ（メタ）アクリレート、テトラメチロールメタントリ（メタ）アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ（メタ）アクリレート等のアクリル系多官能性モノマー、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体等が挙げられる。これら架橋性モノマーは単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。
【００３０】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子を構成する重合体は、上記架橋性モノマーに由来するセグメントと他のモノマーに由来するセグメントとを有する共重合体であってもよい。
上記他のモノマーは特に限定されず、例えば、メチル（メタ）アクリレート、エチル（メタ）アクリレート、プロピル（メタ）アクリレート、ｎ−ブチル（メタ）アクリレート、ｔｅｒｔ−ブチル（メタ）アクリレート、イソブチル（メタ）アクリレート、シクロヘキシル（メタ）アクリレート、２−エチルヘキシル（メタ）アクリレート、イソボルニル（メタ）アクリレート、ｎ−ステアリル（メタ）アクリレート、ベンジル（メタ）アクリレート等が挙げられる。
また、上記他のモノマーには、ポリオキシアルキレン構造を有する（メタ）アクリルモノマーを用いてもよい。上記ポリオキシアルキレン構造は特に限定されず、例えば、ポリオキシプロピレン構造、ポリオキシメチルエチレン構造、ポリオキシエチルエチレン構造、ポリオキシトリメチレン構造、ポリオキシテトラメチレン構造等が挙げられる。
上記単官能（メタ）アクリルモノマーのなかでも、より低温で分解することができることから、メチルメタクリレートが好適である。
なお、本明細書中において「（メタ）アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【００３１】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子を構成する重合体における上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合の下限は５重量％である。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合が５重量％未満であると、有機溶剤に対する膨潤度が高過ぎて粒子形状を失い、扁平状空孔を形成できないことがある。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合のより好ましい下限は５重量％、好ましい上限は５０重量％である。
【００３２】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子は、上記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が３００％以上である。上記膨潤度を３００％以上とすることで、アスペクト比が１．３５以上の空孔を有する多孔質酸化チタン構造体を好適に製造することができる。
上記膨潤度が３００％未満であると、扁平状空孔のアスペクト比が１に近づき、光散乱効果が落ちて光触媒効果が低下する。
上記膨潤度の好ましい下限は４００％である。
なお、上記膨潤度は、計量した試料を所定の有機溶剤に添加し、２４時間静置後、最初に加えた試料の重量に対する試料に取り込まれた有機溶剤の重量の割合を算出することにより測定することができる。
【００３３】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径は、好ましい下限は２５０ｎｍ、好ましい上限は９５０ｎｍである。上記平均粒子径が２５０ｎｍ未満であると、光拡散効果が不足することがあり、９５０ｎｍを超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は３００ｎｍ、より好ましい上限は８００ｎｍである。
なお、上記平均粒子径は、体積平均粒子径であり、例えば、動的光散乱式粒度分布計（Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ｓｉｚｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍｓ社製、「ＮＩＣＯＭＰ ｍｏｄｅｌ ３８０ ＺＬＳ−Ｓ」）を用いることにより測定することができる。
【００３４】
上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子の添加量の好ましい下限は上記酸化チタンペーストに対して１重量％、好ましい上限は５０重量％である。上記添加量が１重量％未満であると、扁平状空孔が少なく光散乱効果が不足することがあり、５０重量％を超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は２重量％、より好ましい上限は３５重量％である。
【００３５】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを２０重量％以上含有する重合体からなる。
【００３６】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子を構成する重合体における上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合の下限は２０重量％である。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合が２０重量％未満であると、有機溶剤に対する膨潤度が高く、球状空孔を形成できないことがある。上記架橋性モノマーに由来するセグメントの含有割合のより好ましい下限は２０重量％、好ましい上限は８０重量％である。
【００３７】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子は、上記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が２００〜２５０％である。上記膨潤度を上記範囲内とすることで、アスペクト比が１．１以下の球状空孔を好適に形成することができる。
上記膨潤度が２５０％を超えると、扁平状空孔のみが存在する酸化チタン構造体となる。
上記膨潤度の好ましい範囲は２００〜２４０％である。
なお、上記膨潤度は、計量した試料を所定の有機溶剤に添加し、２４時間静置後、最初に加えた試料の重量に対する試料に取り込まれた有機溶剤の重量の割合を算出することにより測定することができる。
【００３８】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径は、好ましい下限は５ｎｍ、好ましい上限は１００ｎｍである。上記平均粒子径が５ｎｍ未満であると、形成される空孔が小さすぎて、充分な気体通過性が得られなくなり、１００ｎｍを超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下することがある。より好ましい下限は７ｎｍ、より好ましい上限は９０ｎｍである。
なお、上記平均粒子径は、体積平均粒子径であり、例えば、動的光散乱式粒度分布計（Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ｓｉｚｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍｓ社製、「ＮＩＣＯＭＰ ｍｏｄｅｌ ３８０ ＺＬＳ−Ｓ」）を用いることにより測定することができる。
【００３９】
上記球状空孔用造孔樹脂粒子の添加量の好ましい下限は上記酸化チタンペーストに対して１重量％、好ましい上限は５０重量％である。上記添加量が１重量％未満であると、球状空孔が少なく、充分な気体通過性が得られなくなることがあり、５０重量％を超えると、得られる多孔質酸化チタン構造体の強度が低下したり、比表面積が小さくなり気体の浄化能力が落ちてしまったりすることがある。より好ましい下限は５重量％、より好ましい上限は３５重量％である。
なお、上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子と球状空孔用造孔樹脂粒子との添加量の比（重量比）は、１：１〜１０：１であることが好ましい。
【００４０】
上記酸化チタン粒子については、上述した通りである。
上記酸化チタンペーストは、バインダ樹脂を含有することが好ましい。上記バインダ樹脂として、例えば、エチルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、ポリビニルブチラール（ＰＶＢ）、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
【００４１】
上記酸化チタンペーストを調製する方法としては、上記酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、有機溶剤及びバインダ樹脂を、例えば、２本ロールミル、３本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、ディスパー、プラネタリーミキサー、自転公転式攪拌装置、ニーダー、押し出し機、ミックスローター、スターラー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【００４２】
本発明の酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタンペーストを塗工する工程を有する。
上記酸化チタンペーストを塗工する方法としては特に限定されないが、上記扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子の形状を維持したまま塗工できることから、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。
【００４３】
上記スクリーン印刷工程におけるスクリーン版の目開きの大きさ、スキージアタック角、スキージ速度、スキージ押圧力等については、適宜設定することが好ましい。
【００４４】
本発明の多孔質酸化チタン構造体の製造方法は、酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質酸化チタン構造体を形成する工程を有する。
【００４５】
上酸化チタンペーストの乾燥及び焼成は、塗工する基板の種類等により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整することができる。例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下、５０〜８００℃程度の範囲内で、１０秒〜１２時間程度行うことが好ましい。また、乾燥及び焼成は、単一の温度で１回又は温度を変化させて２回以上行ってもよい。
【００４６】
本発明の多孔質酸化チタン構造体は、例えば、酸化チタン粒子、扁平状造孔樹脂粒子、球状造孔樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、上記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、上記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、上記扁平状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．３５以上であり、上記球状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．１以下である方法によっても製造することができる。このような別の態様の製造方法もまた本発明の１つである。
【００４７】
別の態様の製造方法では、平均アスペクト比が１．３５以上である扁平状造孔樹脂粒子、及び、平均アスペクト比が１．１以下である球状造孔樹脂粒子を用いることが特徴部分である。上記扁平状造孔樹脂粒子及び状造孔樹脂粒子を用いることで、所望の空孔形状を有する酸化チタン構造体を簡便に製造することができる。
上記平均アスペクト比が１．３５より低い扁平状造孔樹脂粒子を用いたり、上記平均アスペクト比が１．１より大きい球状造孔樹脂粒子を用いたりした場合、所望の空孔形状を有する酸化チタン構造体を製造することができない。
【００４８】
上記平均アスペクト比が１．３５以上である扁平状造孔樹脂粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、扁平状造孔樹脂粒子を重合する際に、モノマーと重合溶媒とのＳＰ値差が２．５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２以上である組み合わせのモノマーと重合溶媒を用いて、重合する方法等が用いられる。このような方法を用いることで、重合初期にポリマーと重合溶媒との相分離が急激に起こり、重合溶媒を放出して扁平化した扁平状造孔樹脂粒子を得ることができる。また、シェルの厚みに偏りのある中空粒子になった後に赤血球状に扁平化することで扁平化した扁平状造孔樹脂粒子を作製することができる。
更に、モノマー中の架橋成分比率を高くすることによっても、重合初期にポリマーと重合溶媒との相分離が急激に起こるため、扁平化した扁平状造孔樹脂粒子を作製することができる。
なお、上記球状造孔樹脂粒子については、従来公知の方法で作製することができる。
また、上記扁平状造孔樹脂粒子の平均長径は、３００〜１０００ｎｍであることが好ましく、上記球状造孔樹脂粒子の平均長径は１〜１００ｎｍであることが好ましい。
【００４９】
なお、上記扁平状造孔樹脂粒子及び球状造孔樹脂粒子以外の材料や、製造工程については基本的に本発明の酸化チタン構造体の製造方法と同じであるが、別の態様の製造方法においては、扁平状造孔樹脂粒子及び球状造孔樹脂粒子が膨潤するものでなくてもよい。また、使用する有機溶剤についても溶解度パラメータ７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２であるものに限られない。
従って、扁平状造孔樹脂粒子及び球状造孔樹脂粒子や有機溶剤の材質選択の範囲が広がり、より安価な方法で酸化チタン構造体を作製することが可能となる。
【００５０】
本発明の多孔質酸化チタン構造体を用いて光触媒を作製することができる。このようにして得られた光触媒は、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することができる。このような光触媒もまた本発明の１つである。
【発明の効果】
【００５１】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法及び該多孔質酸化チタン構造体を用いた光触媒を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】本発明の多孔質酸化チタン構造体の一例を示す模式図である。
【図２】本発明の多孔質酸化チタン構造体の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【００５３】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【００５４】
（実施例１）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシプロピレンジメタクリレート５重量部（ポリオキシプロピレンユニット数＝約４；日油社製、ブレンマーＰＤＰ−２５０）、メタクリル酸イソブチル９５重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、ノニオン系界面活性剤ＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち０．５重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ７４４ｎｍであった。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の粒子径（体積平均粒子径）は、動的光散乱式粒度分布計（Ｐａｒｔｉｃｌｅ Ｓｉｚｉｎｇ Ｓｙｓｔｅｍｓ社製、「ＮＩＣＯＭＰ ｍｏｄｅｌ ３８０ ＺＬＳ−Ｓ」）を用いることにより測定した。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を、下記の方法で測定したところ、４７０％であった。
【００５５】
［膨潤度測定］
造孔樹脂粒子１ｇを遠沈管に計量し、メチルエチルケトンを、遠沈管も含めて合計３０ｇになるように添加する。２４時間静置後、遠心分離にて粒子を沈降させて上澄みの溶媒を捨てた。膨潤した造孔樹脂粒子の重量を計量し、下記式（１）にて膨潤度を求めた。
膨潤度（％）＝（粒子内の有機溶剤の重量／最初に加えた造孔樹脂粒子の重量）×１００ （１）
【００５６】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート３５重量部、メタクリル酸メチル６５重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち５０重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ６８ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２３７％であった。
【００５７】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液２．６７重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．４重量部）及び球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．２重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．０３重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００５８】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００５９】
（実施例２）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシエチレンジメタクリレート２重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝約９；日油社製、ブレンマーＰＤＥ−４００）、トリメチロールプロパントリアクリレート１０重量部、メタクリル酸イソブチル８８重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、ノニオン系界面活性剤ＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち１重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ３２０ｎｍであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％エタノール分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を測定したところ、３４２％であった。
【００６０】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシエチレンジメタクリレート１０重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝約９；日油社製、ブレンマーＰＤＥ−４００）トリメチロールプロパントリアクリレート３０重量部、メタクリル酸メチル６０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１６（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち４０重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ９３ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％エタノール分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２１５％であった。
作製した扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例１と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た（膜厚：５μｍ）。
【００６１】
（実施例３）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート１０重量部、メタクリル酸メチル９０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、ノニオン系界面活性剤ＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち０．５重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ５８９ｎｍであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテトラヒドロフランに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％テトラヒドロフラン分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のテトラヒドロフラン中での膨潤度を測定したところ、５２１％であった。
【００６２】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシプロピレンジメタクリレート５重量部（ポリオキシプロピレンユニット数＝約４；日油社製、ブレンマーＰＤＰ−２５０）、トリメチロールプロパントリアクリレート４５重量部、メタクリル酸イソブチル５０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１６（第一工業製薬社製）１重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち５５重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ４９ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてテトラヒドロフランに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％テトラヒドロフラン分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のテトラヒドロフラン中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２０６％であった。
【００６３】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液４重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．６重量部）及び球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．６６重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．１重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００６４】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００６５】
（実施例４）
（扁平状空孔層用酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、実施例１で得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液４重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．６重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより扁平状空孔層用酸化チタンペーストを調製した。
【００６６】
（球状空孔層用酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、実施例１で得られた球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．３重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．０４５重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより球状空孔層用酸化チタンペーストを調製した。
【００６７】
その後、ガラス基板に、得られた球状空孔層用酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで球状空孔層を形成した（膜厚：２．５μｍ）。
次いで、球状空孔層に、得られた扁平状空孔層用酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで扁平状空孔層を形成し（膜厚：２．５μｍ）、多孔質酸化チタン構造体を得た。
【００６８】
（実施例５）
（扁平状造孔樹脂粒子の製造）
ジビニルベンゼン１００重量部、ノルマルヘプタン７０重量部、過酸化ベンゾイル１重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水９００重量部、アニオン系界面活性剤ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム（第一工業製薬製、ネオコールＳＷ−Ｃ）５重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより２０分間乳化させた後、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、７５℃１２時間反応させ、扁平状造孔樹脂粒子スラリーを得た。ＳＥＭにより求めた扁平状造孔樹脂粒子の平均長径は４５０ｎｍであり、平均短径は３０６ｎｍであった。また、扁平状造孔樹脂粒子の平均アスペクト比は１．４７であった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。
【００６９】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール２５重量部、得られた扁平状造孔樹脂粒子分散液３．２０重量部（扁平状造孔樹脂粒子０．４８重量部）及び実施例３で得られた球状造孔樹脂粒子分散液２．４７重量部（球状造孔樹脂粒子０．３７重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００７０】
（実施例６）
（扁平状造孔樹脂粒子の製造）
トリメチロールプロパントリメタクリレート５０重量部、アクリロニトリル２５重量部、
ポリオキシエチレンジメタクリレート２５重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝１；日本油脂社製、ブレンマーＰＤＥ−５０）、シクロヘキサン６０重量部、酢酸エチル５重量部、過酸化ベンゾイル１重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水６００重量部、
アニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム（第一工業製薬製、ハイテノールＮＦ−１７）５重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより２０分間乳化させた後、セパラブルフラスコに乳化液を投入し、７５℃８時間反応させ、扁平状造孔樹脂粒子スラリーを得た。
ＳＥＭにより求めた扁平状造孔樹脂粒子の平均長径は９２０ｎｍであり、平均短径は４４２ｎｍであった。また、扁平状造孔樹脂粒子の平均アスペクト比は２．０８であった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン分散液を得た。
【００７１】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール２５重量部、得られた扁平状造孔樹脂粒子分散液１．６７重量部（扁平状造孔樹脂粒子０．２５重量部）及び実施例４で得られた球状造孔樹脂粒子分散液１．２７重量部（球状造孔樹脂粒子０．１９重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００７２】
（比較例１）
モノマー成分として、ジビニルベンゼン３０重量部、スチレン７０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ネオゲンＳ−２０Ｆ（第一工業製薬社製）１重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち８重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ１５０ｎｍであった。得られた造孔樹脂粒子のスラリーの溶媒を、遠心分離を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定したところ、１８１％であった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例１と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た（膜厚：５μｍ）。
【００７３】
（比較例２）
モノマー成分として、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート１０重量部（ポリテトラメチレングリコールユニット数＝約１；日立化成社製、ＦＡ−１２４Ｍ）、メタクリル酸イソブチル４５重量部、メタクリル酸メチル４５重量部を混合したモノマー１００重量部全量と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル１重量部とを混合、撹拌した混合溶液の全量を、水溶性乳化剤としてＮＬ−２５０（第一工業製薬社製）１重量％と０．０２重量％ハイドロキノンを含有するイオン交換水４００重量部に添加し、ホモジナイザーにて乳化して、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、上記で得られた乳化懸濁液の全量を一括して投入し、重合器を６０℃まで昇温して重合を開始した。８時間重合した後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ２．５μｍであった。得られた分散液の溶媒を、遠心分離機を用いてエタノールに置換し、造孔樹脂粒子の１５重量％エタノール分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のエタノール中での膨潤度を測定したところ、３５５％であった。
【００７４】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール２５重量部、得られた扁平状造孔樹脂粒子分散液４．３３重量部（扁平状造孔樹脂粒子０．６５重量部）及び実施例２で得られた球状造孔樹脂粒子分散液０．６７重量部（球状造孔樹脂粒子０．１重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストを、スクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した。
【００７５】
（比較例３）
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、実施例１で得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液３．３重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．５重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００７６】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００７７】
（比較例４）
メタクリル酸メチル１００重量部を、アニオン系界面活性剤（ハイテノールＬＡ−１０、第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち５０重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を2時間掛けて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ８２ｎｍであった。得られた造孔樹脂粒子のスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。
なお、造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定しようとしたが、メチルエチルケトンに樹脂粒子が溶解してしまい測定できなかった。
作製した造孔樹脂粒子分散液を用いて、実施例１と同様にして酸化チタンペーストを調製し、塗工、焼成を行うことにより、多孔質酸化チタン構造体を得た（膜厚：５μｍ）。
【００７８】
（比較例５）
（扁平状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、ポリオキシエチレンジメタクリレート２重量部（ポリオキシエチレンユニット数＝約９；日油社製、ブレンマーＰＤＥ−４００）、トリメチロールプロパントリアクリレート４０重量部、メタクリル酸イソブチル５８重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ネオゲンＳ−２０Ｆ（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち１重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して扁平状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ２３３ｎｍであった。得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、扁平状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、扁平状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を測定したところ、２７６％であった。
【００７９】
（球状空孔用造孔樹脂粒子の作製）
モノマー成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート３０重量部、メタクリル酸メチル７０重量部を混合したモノマー１００重量部全量を、アニオン系界面活性剤ハイテノールＬＡ−１０（第一工業製薬社製）０．５重量％水溶液１００重量部に加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた２リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、水２００重量部を投入し、重合器を７０℃まで昇温したのち、重合開始剤として過硫酸アンモニウム０．５重量部と上記乳化懸濁液のうち８重量部をシードモノマーとして添加し重合を開始した。３０分熟成させた後に残りの乳化懸濁液を２時間かけて滴下した。さらに２時間熟成させた後、重合器を室温まで冷却して球状空孔用造孔樹脂粒子のスラリーを得た。得られた球状空孔用造孔樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ１９８ｎｍであった。
得られたスラリーの溶媒を、遠心分離機を用いてメチルエチルケトンに置換し、球状空孔用造孔樹脂粒子の１５重量％メチルエチルケトン分散液を得た。なお、球状空孔用造孔樹脂粒子のメチルエチルケトン中での膨潤度を、上記の方法で測定したところ、２２４％であった。
【００８０】
（酸化チタンペーストの作製）
二酸化チタン粉末（平均粒子径１５ｎｍ）の２０重量％エタノール分散液２５重量部、エチルセルロース（関東化学社製、ＥＣ−１０）の１０重量％テルピネオール分散液２５重量部、テルピネオール４５重量部、得られた扁平状空孔用造孔樹脂粒子分散液２．６７重量部（扁平状空孔用造孔樹脂粒子０．４重量部）及び球状空孔用造孔樹脂粒子分散液０．６６重量部（球状空孔用造孔樹脂粒子０．１重量部）を添加した後、３本ロールで均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
【００８１】
その後、ガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン版を用いてスクリーン印刷法によって塗工した。
次いで、１５０℃で３０分間乾燥した後、５００℃で３０分間焼成することで多孔質酸化チタン構造体を作製した（膜厚：５μｍ）。
【００８２】
＜評価＞
実施例１〜６及び比較例１〜５で得られた多孔質酸化チタン構造体について以下の評価を行った。結果を表１及び２に示した。
【００８３】
（１）空孔径（平均長径、平均短径）及び平均アスペクト比
得られた多孔質酸化チタン構造体について、ＳＥＭを用いて厚み方向の切断面を撮影し、得られた写真から５０個分の孔を無作為に抽出し、空孔径（長径及び短径）をそれぞれ計測した。また、測定した長径及び短径からアスペクト比を算出した。
次いで、得られたデータに基づいて、５０個の孔のうち、扁平状空孔（アスペクト比１．３５以上）及び球状空孔（アスペクト比１．１以下）の個数をそれぞれ計数するとともに、扁平状空孔及び球状空孔の比率（合計面積比）を算出した。
更に、「扁平状空孔」及び「球状空孔」のそれぞれについて、「平均アスペクト比」、「平均長径」及び「平均短径」を算出した。
なお、「扁平状空孔」、「球状空孔」を有しない場合は、表１に「−」で示した。
【００８４】
（２）多孔質酸化チタン構造体の空隙率
まず、多孔質酸化チタン構造体の重量（Ａ）と膜厚（Ｂ）を測定した後、かさ密度（Ｃ）を下記式（２）を用いて算出した。
かさ密度（Ｃ）＝Ａ（ｍｇ）／［Ｂ（μｍ）×３０×３０］×１０３ （２）
次いで、得られたかさ密度から下記式（３）を用いて空隙率を算出した。
空隙率（％）＝（１−Ｃ（ｇ／ｃｍ３）／３．８４）×１００ （３）
なお、二酸化チタンのアナターゼ構造における真密度は３．８４ｇ／ｃｍ３とした。
【００８５】
（３）多孔質酸化チタン構造体の比表面積測定
得られた多孔質酸化チタン構造体の比表面積を、ＢＥＴ式比表面積計（Ｓｙｓｍｅｘ社製 ＡＵＴＯＳＯＲＢシリーズ）を用いて測定した。
【００８６】
（４）光触媒性能
得られた多孔質酸化チタン構造体について、光触媒性能評価試験法ＩＩａガスバックＡ法（光触媒製品技術協議会）に準拠した方法によって光触媒性能を求めた。なお、この方法では、アセトアルデヒドの分解活性を指標とする。
【００８７】
【表１】
【表２】
【産業上の利用可能性】
【００８８】
本発明によれば、光触媒に用いた場合、大気浄化、脱臭、防汚、抗菌等の優れた光触媒機能を実現することが可能な多孔質酸化チタン構造体、及び、該多孔質酸化チタン構造体の製造方法を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
酸化チタンを含有し、かつ、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔と、アスペクト比が１．１以下の球状空孔とを有し、
前記扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍであり、
前記球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体。
【請求項２】
扁平状空孔を有する扁平状空孔層と、球状空孔を有する球状空孔層とを有することを特徴とする請求項１記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項３】
扁平状空孔と球状空孔との比率が１：１〜１０：１であることを特徴とする請求項１又は２記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項４】
空隙率が４０〜８５％であることを特徴とする請求項１、２又は３記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項５】
比表面積が５０〜１０００ｍ２／ｇであることを特徴とする請求項１、２、３又は４記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項６】
請求項１、２、３、４又は５記載の多孔質酸化チタン構造体を用いてなることを特徴とする光触媒。
【請求項７】
請求項１、２、３、４又は５記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法であって、
酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、
前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、
前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、
前記扁平状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを５重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が３００％以上であり、
前記球状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを２０重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が２００〜２９５％である
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項８】
請求項１、２、３、４又は５記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法であって、
酸化チタン粒子、扁平状造孔樹脂粒子、球状造孔樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、
前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、
前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、
前記扁平状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．３５以上であり、前記球状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．１以下である
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項１】
酸化チタンを含有し、かつ、アスペクト比が１．３５以上の扁平状空孔と、アスペクト比が１．１以下の球状空孔とを有し、
前記扁平状空孔の平均長径が３００〜１０００ｎｍであり、
前記球状空孔の平均長径が１〜１００ｎｍである
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体。
【請求項２】
扁平状空孔を有する扁平状空孔層と、球状空孔を有する球状空孔層とを有することを特徴とする請求項１記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項３】
扁平状空孔と球状空孔との比率が１：１〜１０：１であることを特徴とする請求項１又は２記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項４】
空隙率が４０〜８５％であることを特徴とする請求項１、２又は３記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項５】
比表面積が５０〜１０００ｍ２／ｇであることを特徴とする請求項１、２、３又は４記載の多孔質酸化チタン構造体。
【請求項６】
請求項１、２、３、４又は５記載の多孔質酸化チタン構造体を用いてなることを特徴とする光触媒。
【請求項７】
請求項１、２、３、４又は５記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法であって、
酸化チタン粒子、扁平状空孔用造孔樹脂粒子、球状空孔用造孔樹脂粒子、及び、溶解度パラメータが７．５〜１５（ｃａｌ／ｃｍ３）１／２である有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、
前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、
前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、
前記扁平状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを５重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が３００％以上であり、
前記球状空孔用造孔樹脂粒子は、架橋性モノマーに由来するセグメントを２０重量％以上含有する重合体からなり、前記有機溶剤に２４時間浸漬させた場合の膨潤度が２００〜２９５％である
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【請求項８】
請求項１、２、３、４又は５記載の多孔質酸化チタン構造体の製造方法であって、
酸化チタン粒子、扁平状造孔樹脂粒子、球状造孔樹脂粒子、及び、有機溶剤を含有する酸化チタンペーストを調製する工程、
前記酸化チタンペーストを塗工する工程、及び、
前記酸化チタンペーストを乾燥し、焼成することにより、酸化チタン構造体を形成する工程を有し、
前記扁平状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．３５以上であり、前記球状造孔樹脂粒子は、平均アスペクト比が１．１以下である
ことを特徴とする多孔質酸化チタン構造体の製造方法。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１２−１７９５５５（Ｐ２０１２−１７９５５５Ａ）
【公開日】平成２４年９月２０日（２０１２．９．２０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−４４２９６（Ｐ２０１１−４４２９６）
【出願日】平成２３年３月１日（２０１１．３．１）
【出願人】（０００００２１７４）積水化学工業株式会社 (5,781)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年９月２０日（２０１２．９．２０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年３月１日（２０１１．３．１）
【出願人】（０００００２１７４）積水化学工業株式会社 (5,781)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]