説明

多官能性連鎖シャトリング剤

本発明は、広く、連鎖シャトリング剤(CSAs)、CSAsを調製する方法、CSAと触媒を含んでなる組成物、該組成物を調製する方法、該組成物を用いてポリオレフィン、末端官能性ポリオレフィン、およびテレケリック・ポリオレフィンを調製する方法、ならびに該方法によって調製されたポリオレフィン、末端官能性ポリオレフィン、およびテレケリック・ポリオレフィンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、広く、連鎖シャトリング剤(CSAs)、CSAsを調製する方法、CSAと触媒を含んでなる組成物、該組成物を調製する方法、該組成物を用いてポリオレフィン、末端官能性ポリオレフィン、およびテレケリック・ポリオレフィンを調製する方法、ならびに該方法によって調製されたポリオレフィン、末端官能性ポリオレフィン、およびテレケリック・ポリオレフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
重合触媒含有または由来の金属−リガンド(例えば、アルキルアルミニウム、アリールオキシアルミニウム、アルキル亜鉛、アルコキシ亜鉛等)複合体の交換または再分布反応が知られている。例えば、Healy M.D. et al., Sterically crowded aryloxide compounds of aluminum, Coordination Chemistry Reviews, 1994; 130(1-2): 63-135; and Stapleton R.A., et al., Olefin Polymerization, Organometallics, 2006;25(21):5083-5092を参照のこと。
【0003】
テレケリック重合体の例には、各鎖末端にヒドロキシル基を含む重合体鎖が含まれる。テレケリック重合体は、例えば、ロケット燃料結合剤として、ならびにコーティング剤、封止剤、および接着剤の構成要素として使用できる。
テレケリック重合体は数多くの方法によって調製されきた。米国特許番号第5,247,023号では、その鎖末端または重合体骨格内にボラン基を含有する炭化水素重合体から調製されたテレケリック重合体について言及している。そういったテレケリック重合体では、末端官能基の統計的(すなわち、本質的にランダムな)分布が見られる。
【0004】
ポリオレフィン重合体の例には、ポリオレフィン・ホモ重合体やポリオレフィン・ブロックコポリマーが含まれる。ポリエチレン(別名ポリエテンまたはポリ(メチレン))、ポリプロピレン、およびポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)コポリマーは、産業に広く使用されるポリオレフィン(別名ポリアルケン)の例である。それらは、例えば包装用のコンテナ、チューブ、フィルムおよびシート、ならびに合成潤滑剤を作るのに望ましい。
【0005】
ブロックコポリマーは、ランダム共重合体や重合体混合物の特性よりも優れた特性を有することが多い。ブロックコポリマーの特性、特徴、つまり適用は、ブロックコポリマーがどのように作られたか、そしてそれらを調製するのに使用した触媒の構造物と特徴によって特に影響を受ける。
ブロックコポリマーを調製する一つの方法が、リビング重合である。Domskiらは、リビング重合触媒を使用してオレフィン単量体から調製したブロックコポリマーを概説している(Domski, G. J.; Rose, J. M.; Coates, G. W.; Bolig, A. D.; Brookhart, M., in Prog. Polym. Sci., 2007;32:30-92)。リビング重合方法では、単一型の活性部位を持っている触媒を用いる。ブロックコポリマーの高収量を生むリビング重合方法は、本質的に開始段階と生長段階にのみに関与し、本質的に連鎖停止副反応を欠く。このリビング重合方法は、生長速度と同じ位かまたはそれを上回る開始速度と、本質的に停止または鎖移動反応の不存在を特徴とする。リビング重合によって調製されたブロックコポリマーは、狭いか非常に狭い分子量分布を有し、事実上単分散である(すなわち、分子量分布は事実上1である)。
【0006】
リビング重合によってできるブロックコポリマーの例は、オレフィン・ブロックコポリマー(例えば、ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)ブロックコポリマー)そして特に、両親媒性ジブロックコポリマーである。両親媒性ジブロックコポリマーは、親水性と疎水性の重合鎖を含んでなる。両親媒性ジブロックコポリマーは、特に水溶性混合物向けの界面活性剤、分散剤、乳化剤、安定化剤、および消泡剤;プラスチック向けの表面修飾剤;ならびに重合体混合物および複合物の相溶化剤に有用である(Lu Y. et al., Syntheses of diblock copolymers polyolefin-b-poly(ε-caprolactone) and their applications as the polymeric compatilizer, Polymer, 2005;46:10585-10591)。Lu Y.らは、ポリオレフィン−b−ポリ(ε−カプロラクトン)ジブロックコポリマーを作るための不連続重合方法を報告している。その不連続重合方法では、メタロセン触媒系および連鎖移動剤を用いて選んだオレフィンを重合させ、そして末端のヒドロキシルを持っている得られた中間体ポリオレフィンを単離する。次いで、別の反応器において、その不連続重合方法では、前記中間体ポリオレフィンの末端のヒドロキシルを、塩化ジエチルアルミニウムを用いてアルミニウム・アルコキシド誘導体に変換し、それに続いてε−カプロラクトンのアニオン系開環重合のイニシエーターとして該アルミニウム・アルコキシド誘導体を使用して、ポリオレフィン−b−ポリ(ε−カプロラクトン)ジブロックコポリマーを得る。
【0007】
オレフィン・ブロックコポリマー(OBCs)の調製における著しい利点を報告することで、Arriola DJらは、半結晶性セグメントと無定形セグメントの交互、および多くの望ましい材料特性を有するオレフィン・ブロックコポリマーを生み出す触媒系について言及している(Arriola DJ, et al,, Catalytic Production of Olefin Block Copolymers via Chain Shuttling Polymerization, Science, 2006; 312: 714-719)。その触媒系では、単一の重合反応器内で異なった単量体選択性を有する2種類の異なった触媒間での重合体鎖の移動に連鎖シャトリング剤を使用できる。その触媒系は、経済的に好ましい、連続重合方法下でOBCsを生産する。
【0008】
その結果、連鎖シャトリング剤とオレフィン・ブロックコポリマーが、最近、研究の重要な分野になっている。PCT国際特許出願公開番号WO 2005/073283A1;WO 2005/090425A1;WO 2005/090426A1;WO 2005/090427A2;WO 2006/101595A1;WO 2007/035485A1;WO 2007/035492A1;WO 2007/035493A2では、CSAs、触媒系、およびそれを用いて調製した特定のオレフィン重合体組成物について言及している。例えば、WO 2007/035493 A2は、多中心CSAs、ならびに幅広い、特に多峰性分子量分布を唯一の特徴とするオレフィン重合体組成物を調製するために多中心CSAsを使用する方法について言及している。WO 2007/035493 A2の多中心CSAsは、多価連結基によって接合された2つ以上の連鎖シャトリング部分を含む化合物または分子である。
【0009】
新しい連鎖シャトリング剤、ポリオレフィン、末端官能性ポリオレフィン、およびテレケリック・ポリオレフィンを調製するのと同じものを使用する重合方法、ならびにそれによって調製されたポリオレフィン、末端官能性ポリオレフィン、およびテレケリック・ポリオレフィン、両親媒性ジブロックおよび多ブロックコポリマーを作る方法、それによって調製された両親媒性ジブロックおよび多ブロックコポリマー、ならびにポリオレフィン、末端官能性ポリオレフィン、テレケリック・ポリオレフィン、両親媒性ジブロックおよび多ブロックコポリマーを含んでなる物品が、当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書は、多官能性連鎖シャトリング剤の新発明の概念を示す。本発明の多官能性連鎖シャトリング剤は、少なくとも1個のオレフィン含有ポリメリル鎖が2個以上の触媒部位を持つオレフィン重合触媒の2個以上の触媒部位の間または2個以上のオレフィン重合触媒の間を往復できるような方法で機能でき、かつ、独立に以下の:(a)非オレフィン重合反応が、該多官能性連鎖シャトリング剤によって開始できるか;(b)該多官能性連鎖シャトリング剤の官能基が、連鎖シャトリング中に保護基で保護され、次いでオレフィン含有ポリメリル鎖内に組み込まれることを特徴とするか;または(c)オレフィン含有ポリメリル鎖に官能基が組み込まれた後に、該官能基によって非オレフィン重合反応が開始される、のいずれかとして特徴づけできる単一化合物または分子を含んでなる。
【0011】
好ましい第一実施形態において、多官能性連鎖シャトリング剤は、連鎖シャトリングが可能である1もしくは複数個の部分、保護または重合開始が可能である1もしくは複数個の部分、および少なくとも1個の多価連結基を持つ化合物を含んでなる。連鎖シャトリング部分は、保護/重合開始部分とは異なる。各鎖シャトリング部分と重合開始部分のそれぞれは、独立に金属カチオンを含んでなり、該金属カチオンの各金属は、独立にスズであるか、または元素周期表の第2、12、および13族のいずれかのうちの金属である。それぞれの多価連結基は、独立に、2〜20個の炭素原子;0、1、または2個の炭素−炭素二重結合;および1〜4個のヘテロ原子を含んでなり、そして各ヘテロ原子が、独立に、酸素原子、硫黄原子、水素置換された窒素原子(すなわちN(H))、ヒドロカルビル置換された窒素原子、水素置換されたリン原子(すなわちP(H))、またはヒドロカルビル置換されたリン原子のいずれかである。連鎖シャトリング部分の各金属カチオンは、独立に、同じ多価連結基の異なった炭素原子に、または異なった多価連結基の炭素原子に結合され、そして重合開始部分の各金属カチオンは、独立に、同じ多価連結基の異なったヘテロ原子に、または異なった多価連結基のヘテロ原子に結合され、その結果、該金属カチオンは少なくとも1個の多価連結基によって互いに間隔を置いている。
【0012】
第2の実施形態において、本発明は、本発明の多官能性連鎖シャトリング剤を調製する方法を提供するが、該方法は、以下のステップ:(ヒドロキシ−、チオール−(すなわち−SH)、ヒドロカルビルアミノ−、アミノ(すなわち−NH2)、ヒドロカルビルホスフィノ−、またはホスフィノ−(すなわち−PH2)およびビニル含有多価基をアルキルペルヒドロカルビル金属と接触させて、有機金属中間体、すなわちヒドロカルビル金属ビニル−アルコキシド、ヒドロカルビル金属ビニル−スルフィド、ヒドロカルビル金属ビニル−(ヒドロカルビル)アミン、ヒドロカルビル金属ビニル−アミン、ヒドロカルビル金属ビニル−(ヒドロカルビル)ホスフィン、またはヒドロカルビル金属ビニル−ホスフィンを調製し;そして該有機金属中間体をヒドロカルビル金属モノヒドリドに接触させ、それにより、多官能性連鎖シャトリング剤を調製する、を含んでなるが、各金属は、独立にスズ、または元素周期表の第2、12、および13族のいずれかの金属の陽イオンである。
【0013】
第3の実施形態において、本発明は、多官能性組成物を調製する方法を提供するが、該方法は、以下のステップ:本発明の多官能性連鎖シャトリング剤、本来のオレフィン重合触媒、および本来の共触媒を含んでなる要素を一緒に接触させる、を含んでなるが、その接触を触媒調製条件下(以下に記載)で実施することで、それにより多官能性組成物を調製し、該多官能性組成物が多官能性連鎖シャトリング剤とオレフィン重合触媒として機能できる。
第4の実施形態において、本発明は、第3の実施形態の方法によって調製された多官能性組成物を提供する。
【0014】
第5の実施形態において、本発明は、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤を調製する方法を提供するが、その方法は、以下のステップ:1もしくは複数個のオレフィン重合触媒を含んでなる反応物と少なくとも1個のオレフィン単量体を一緒に接触させる、を含んでなり、該1もしくは複数個のオレフィン重合触媒が第4の実施形態の多官能性組成物を含んでなり、かつ、該接触ステップがオレフィン重合生成条件下で実施され、それにより(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤鎖を調製し、該(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤が前記反応物の反応生成物になる。
第6の実施形態において、本発明は、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤を提供する。
【0015】
第7の実施形態において、本発明は、テレケリック(すなわち末端官能化された)ポリオレフィンを調製する方法を提供するが、該方法は、以下のステップ:(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを末端官能化させるを含んでなり、それによりテレケリック・ポリオレフィンを調製する。
【0016】
第8の実施形態において、本発明は、第7の実施形態の方法によって調製されたテレケリック・ポリオレフィンを提供するが、該テレケリック・ポリオレフィンは、間隔を置いた第1と第2の末端官能基を持つと特徴づけできる、そして該方法では連鎖シャトリング部分からの第1の末端官能基と重合開始または保護部分からの第2の末端官能基を得、そういった部分のそれぞれは(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のものであるが、該第1の末端官能基と第2の末端官能基は構造的に互い異なっている。
第9の実施形態において、本発明は、第8の実施形態のテレケリック・ポリオレフィンを含んでなる物品を提供する。
【0017】
第10の実施形態において、本発明は、末端官能性ポリオレフィンを調製する方法を提供するが、該方法は、以下のステップ:(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを停止させ、それにより式(III)の末端官能性ポリオレフィン:H−ポリオレフィン−CH2−RL−(X−H)w(III){式中、wが1または2の整数であり;各RLが独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレン;そして各Xが独立にO、S、N((C1−C20)ヒドロカルビル)、またはP((C1−C20)ヒドロカルビル)である。}を調製する、を含んでなる。
【0018】
第11の実施形態において、本発明は、第10の実施形態の方法によって調製された末端官能性ポリオレフィンを提供する。
第12の実施形態において、本発明は、第11の実施形態の末端官能性ポリオレフィンを含んでなる物品を提供する。
第13の実施形態において、本発明は、ポリオレフィン/ポリエステル、ポリオレフィン/ポリエーテル、ポリオレフィン/ポリアミド、またはポリオレフィン/ポリイソシアナート多ブロック共重合体(interpolymer)を調製する方法を提供するが、該方法は、以下のステップ:(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤と、ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−、またはポリイソシアナート形成性単量体を含んでなる要素を一緒に接触させる、を含んでなるが;該接触ステップをポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−、またはポリイソシアナート形成条件下で実施し、それによりポリオレフィン/ポリエステル多ブロック共重合体、ポリオレフィン/ポリエーテル多ブロック共重合体、ポリオレフィン/ポリアミド多ブロック共重合体、またはポリオレフィン/ポリイソシアナート多ブロック共重合体を調製する。
【0019】
多官能性連鎖シャトリング剤は、少なくとも2つの互いに両立し得るが、異なった機能活性を有すると特徴づけできる。機能活性の1つには、連鎖シャトリング機能が含まれる。他の機能活性には、保護/重合開始機能が含まれているが、それには、保護基機能または、いくつかの実施形態において、重合開始機能または、いくつかの実施形態において、その両方が含まれる。多官能性連鎖シャトリング剤の使用の状況により、連鎖シャトリング機能には、ポリオレフィン−ポリラジカル鎖の保管、および保管のためのポリオレフィン−ポリラジカル鎖の、1もしくは複数個の異なったオレフィン重合触媒への移動と最終的な元への戻しが含まれる。重合開始機能は、本質的にポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−、またはポリイソシアナート形成反応、特に開環ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−、またはポリイソシアナート形成反応を含めた現行の重合反応を開始することである。
【0020】
多官能性連鎖シャトリング剤の利点は、例えば、単一化合物または分子内への2つの含金属の異なる官能性部分の本発明の取り込みである。別の利点は、連続重合方法において、含金属の異なる官能性部分の一方がシャトリング基として機能することが可能であり、かつ、含金属の異なる官能性部分のもう一方が重合開始基または保護基として機能することが可能であることである。
【0021】
多官能性CSAのさらに別の利点は、化合物または分子の設計に関し、その設計では2つの別個の含金属の異なる官能性部分を互いに両立し得るリンカー基によって切り離す。その設計は、連鎖シャトリングに用いられる含金属官能基に関して、重合開始または基保護のために用いられる含金属官能基の存在下で連鎖シャトリング機能活性を首尾よく実施するための手段を提供する。前記設計はさらに、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを末端官能化する手段または連鎖シャトリングのために用いられる含金属官能基の存在下で重合機能活性を開始する手段を提供する。可能性のある競合官能部分および活性をこれまで考慮してきたかもしれないものの間の互いの両立は、特に連続重合方法における両親媒性ジブロックおよび多ブロック共重合体を作るのに特に貴重である。
【0022】
さらに、追加の利点は、本発明がポリオレフィン、テレケリック・ポリオレフィン、ならびに両親媒性ジブロックおよび両親媒性多ブロック共重合体を調製するための新しい方法を提供することである。
さらに別の利点は、ポリオレフィン/ポリエステル、ポリオレフィン/ポリエーテル、ポリオレフィン/ポリアミド、またはポリオレフィン/ポリイソシアナート多ブロック共重合体の少なくとも一部が、少なくとも1つの独特の特徴、例えば(多分散指数によって示される)多分散度や関連する独特な適用(例えば電池用セパレーター)などのを有すると特徴づけできることである。本発明の追加の利点は、後述とおり可能である。
【0023】
本発明の方法によって調製されたポリオレフィン/ポリエステル、ポリオレフィン/ポリエーテル、ポリオレフィン/ポリアミド、またはポリオレフィン/ポリイソシアナート多ブロック共重合体は、特に水溶性混合物向けの界面活性剤、分散剤、乳化剤、安定化剤、および消泡剤;プラスチックのための表面修飾剤;ならびに重合体混合物や複合物の相溶化剤に有用である。
また、ポリオレフィン(後述のホモ重合体やポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーを含む)、テレケリック・ポリオレフィン、およびポリオレフィン/ポリエステル、ポリオレフィン/ポリエーテル、ポリオレフィン/ポリアミド、またはポリオレフィン/ポリイソシアナート多ブロック共重合体もまた、例えばバッテリー・セパレーター、衛生適用のための(例えばおむつカバーのための)弾性フィルムの製造;電化製品、道具、消費財(例えば歯ブラシの柄)向けの軟性成形製品、スポーツ用品、建築物および構造物、自動車、ならびに医学適用;電化製品のための軟性ガスケットと輪郭(profile)(例えば冷蔵庫のドアのガスケットと輪郭)、建築物、構造物、および自動車への適用;包装(例えば、段ボール箱での使用のための)のための接着剤、衛生適用、テープ、およびラベル;スポーツ用品(例えば発泡材製マット)、包装、消費財、自動車への利用のための発泡材などの多数の物品および適用において有用である。
【0024】
追加の実施形態を、請求項を含めた明細書の残りの部分に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
いくつかの実施形態において、多価連結基は、独立に2〜12個、より好ましくは2〜10個、より一層好ましくは2〜8個の炭素原子;および1〜4個のヘテロ原子を含んでなり、そして各ヘテロ原子は独立にO、S、N(H)、ヒドロカルビル置換された窒素原子、P(H)、またはヒドロカルビル置換されたリン原子のいずれかである。
多官能性連鎖シャトリング剤の好ましい実施形態は、以下の式(I)の化合物であるか、またはその交換生成物である:
【化1】

{式中:
mは、1、2、3、または4の整数であり;rは、1または2の整数であり;tは、1または2の整数であり;n、p、q、およびsのそれぞれは、1の整数であり、そしてrが1であるとき、各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンもしくは(C2−C19)アルケニレンであるか;または(a)rが1であり、かつ、tが2であるか、もしくは(b)rが2であり、かつ、tが1であるか、もしくは(c)mとsのそれぞれが2であり、かつ、rとtのそれぞれが1であるとき、各RLは、独立に(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであるか;あるいは
【0026】
nは、1、2、または3の整数であり;sは、1または2の整数であり;pは、1または2の整数であり;m、q、r、およびtのそれぞれは、1の整数であり;そしてsとpがそれぞれ1であるとき、各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンもしくは(C2−C19)アルケニレンであるか;または(a)sが1であり、かつ、pが2であるか、もしくは(b)sが2であり、かつ、pが1であるとき、各RLは、独立に(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであるか;あるいは
qは、2または3の整数であり;m、n、p、r、s、およびtのそれぞれが、1の整数であり;そして各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C1−C19)アルケニレンであるか;あるいは
【0027】
m、n、およびqのそれぞれは、1の整数であり;p、r、s、およびtのそれぞれは、1または2の整数であり;そしてRLは、(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19))アルケンの4価ラジカルであり、ここで、rとtの一方が1があり、rとtのもう一方が2であり、かつ、pとsの一方が1であり、pとsのもう一方が2であり;
yは、0、1、または2の整数であり、かつ、[y+(n×q×r)の乗法の結果]の合計がM1の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ、すなわち、(M1の形式的酸化状態)=y+(n・q・r);
zは、0、1、2、または3の整数であり、かつ、[z+(m×q×s)の乗法の結果]の合計がM1の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ、すなわち、(M1の形式的酸化状態)=z+(m・q・s);
【0028】
各Xは、独立にO、S、N(H)、N((C1−C20)ヒドロカルビル)、P(H)、P((C1−C20)ヒドロカルビル)であり;
各M1は、元素周期表の第2、12、または13族金属であるが、第2または12族金属が+3の形式的酸化状態であり、第13族金属が+2の形式的酸化状態であり;
各M2は、スズ、または元素周期表の第12または13族金属であるが、第12族金属が+2の形式的酸化状態であり、第13族金属が+3の形式的酸化状態であり、そしてスズが+2または+4の形式的酸化状態であり;
【0029】
各R1は、独立に(C1−C20)ヒドロカルビルであるか;またはyが2であるとき、1つのR1は(C1−C20)ヒドロカルビルであり、かつ、1つのR1はR3N(H)−、(R32N−、R3P(H)−、(R32P−、R3S−、または、R3O−であるか、または2つのR1は一緒になって(C2−C20)ヒドロカルビレンを形成し;かつ
各R2は、独立に水素、(C1−C20)ヒドロカルビルもしくは−D−(C1−C20)ヒドロカルビルであるか;またはzが2または3であるとき、2つのR2は一緒になって(C2−C20)ヒドロカルビレンを形成し;
【0030】
各Dは、−D−(C1−C20)ヒドロカルビルに示されているように、独立に−C(=O)−、−C(=O)−O−、O−C(=O)−、−C(=O)−N((C1−C6)ヒドロカルビル)−、−N((C1−C6)ヒドロカルビル)−C(=O)−、−S(=O)−、−(=O)2−、またはSi((C1−C20)ヒドロカルビル)2−であり;
各R3は、独立に(C1−C20)ヒドロカルビルまたは((C1−C20)ヒドロカルビル)3Si−であり;
【0031】
前述の(C1−C19)アルキレン、(C2−C19)アルケニレン、(C3−C19)アルカン、(C3−C19)アルケン、(C1−C20)ヒドロカルビル、および(C2−C20)ヒドロカルビレンのそれぞれは同じかもしくは異なり、そして独立に置換されていないか、または1もしくは複数個の置換基RSで置換されており;そして
各RSは、独立にハロ、ポリフルオロ、ペルフルオロ、非置換(C1−C18)アルキル、または非置換(C1−C9)ヘテロアリールである。}。
【0032】
式(I)の多官能性連鎖シャトリング剤のより好ましい実施形態は、式(IA)の化合物、またはその交換生成物である:
【化2】

{式中:
mは、1、2、3、または4の整数であり、nとpのそれぞれは、1の整数であり、そして各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレンであるか;または
nは、1、2、または3の整数であり、mとpのそれぞれは、1の整数であり、そして各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレンであるか;または
pは、2の整数であり、mとnのそれぞれは、1の整数であり、そしてRLは、(C3−C19)アルカンまたは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであり、
【0033】
yは、0、1、または2の整数であり、かつ、y+nの合計がM1の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ;
zは、0、1、2、または3の整数であり、かつ、z+mの合計がM2の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ;そして
X、M1、M2、R1、およびR2は、式(I)について先に規定されたとおりのものであるか;または
m、n、およびpのそれぞれは、1であり、(R1y1は、不存在であり、そしてM2、R2、およびzは、式(I)について先に規定されたとおりのものである。}。
【0034】
ジラジカル基Dなどでは、−C(=O)−はカルボニルを意味し、C(=O)−O−はカルボキシル・ジラジカル(CおよびOラジカル、そしてCラジカルがM2に結合している)を意味し、−O−C(=O)−はカルボキシル・ジラジカル(OおよびCラジカル、そしてOラジカルがM2に結合している)を意味し、−C(=O)−N((C1−C6)ヒドロカルビル)−はN−((C1−C6)ヒドロカルビル)置換されたカルボキシアミド・ジラジカル(CおよびNラジカル、そしてCラジカルがM2に結合している)を意味し、−N((C1−C6)ヒドロカルビル)−C(=O)−はN−((C1−C6)ヒドロカルビル)置換されたカルボキシアミド・ジラジカル(NおよびCラジカル、そしてNラジカルがM2に結合している)を意味し、−S(=O)−はスルフィニル(別名チオニル)を意味し、−S(=O)2−はスルホニルを意味し、そして−Si((C1−C20)ヒドロカルビル)2−はジ((C1−C6)ヒドロカルビル)の置換されたシリル・ジラジカルを意味する。
【0035】
m、n、およびpのそれぞれが1であり、(R1y1が不存在であるいくつかの実施形態において、M2は、式(IA)内のCH2と一緒になって式(II)の多官能性連鎖シャトリング剤、またはその交換生成物を形成する:
【化3】

{式中、gは、0、1、または2の整数であり、かつ、(g+2q)の合計がM2の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ;qは、式(I)の化合物についてと同じように規定され;そしてRL、X、M2、およびR2は、式(IA)の化合物について規定されたとおりのものである。}。溶液中では、式(III)の多官能性連鎖シャトリング剤は、非環式オリゴマー構造を形成すると特徴づけることができる。
【0036】
式(I)の多官能性連鎖シャトリング剤において、各基(R1y1−CH2は、連鎖シャトリング、金属カチオン含有部分の一例を構成するので、CH2は多価連結基CH2−RLに由来している。各基X−M2(R2zは、保護/重合開始、金属カチオン含有部分の一例を構成する。保護基部分には、−OH、−SH、−NH2、−N(H)(C1−C20)ヒドロカルビル、−PH2、または−P(H)(C1−C20)ヒドロカルビルのための保護基が含まれる。好ましくは、前記保護基には、M2(例えば、M2(R2zもしくはその交換生成物)が含まれる。多価連結基CH2−RLのRL部分は、1もしくは複数個の連鎖シャトリング部分を1もしくは複数個の保護/重合開始部分に両立し得るように連結する。
【0037】
他の実施形態において、本発明は、以下の式(I):
【化4】

の化合物、またはその交換生成物を調製する方法を提供するが、その方法は、以下のステップをを含んでなる:
(a)以下の式(1):
【化5】

{式中、M2、R2、およびzは、第1の実施形態において先に規定されたとおりのものである。}のアルキルペルヒドロカルビル金属と式(2):
【化6】

{式中、R4は、水素または(C1−C5)アルキルであり、ならびにRL1は、不存在であるかまたは(C1−C18)炭化水素の多価ラジカルであるが、その(C1−C18)炭化水素は飽和されているかまたはモノ−もしくはジ不飽和であり、かつ、R4およびRL1は、C(R4)基の数tとRL1が1〜19個の炭素原子の総炭素原子数をもつように選択され;そしてX、p、およびrは、第1の実施形態において先に規定されたとおりのものである。}の(ヒドロキシ−、チオール−、アミノ−、ヒドロカルビルアミノ−、ホスフィノ−、またはヒドロカルビルホスフィノ−)およびビニル含有多価基を一緒に接触させて、以下の式(3):
【化7】

のヒドロカルビル金属ビニル−アルコキシド/硫化物/アミド/リン化物を得;そして
(b)式(3)のヒドロカルビル金属ビニル−アルコキシド/硫化物/アミド/リン化物を、nモル当量の、以下の式(4):
【化8】

{式中、y、M1、およびR1は、第1の実施形態において先に規定されたとおりのものである。}のヒドロカルビル金属モノヒドリドと接触させて、以下の式(I):
【化9】

{式中、RL、X、R1、R2、M1、M2、m、n、p、q、r、s、t、y、およびzは、先に規定されたとおりのものである。}の多官能性連鎖シャトリング剤、またはその交換生成物を得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、連鎖シャトリング剤、重合開始剤、保護剤、またはいずれかのその組み合わせとして機能することが可能であると特徴づけできる。いくつかの実施形態において、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、本発明のテレケリック・ポリオレフィン、ポリオレフィン、ポリオレフィン/ポリエーテル、ポリオレフィン/ポリアミド、もしくはポリオレフィン/ポリイソシアナート多ブロック共重合体、またはポリオレフィン/ポリエステル多ブロック共重合体を調製する方法の中間体として機能することが可能であると特徴づけできる。
【0039】
「ポリオレフィン−ポリラジカル」という用語は、少なくとも1個のオレフィン単量体と2個以上のラジカルから成る残基を含んでなる重合基を意味する。ポリオレフィン−ポリラジカルは、少なくとも2つの炭素原子のそれぞれから水素原子を取り出すことによって形式的には得られる。いくつかの実施形態において、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルは、2〜5個のラジカル、より好ましくは2または3個のラジカル、そしてより一層好ましくは2個のラジカルを含んでなる。
【0040】
いくつかの実施形態において、第5の実施形態の反応物は、関連オレフィン重合触媒とオレフィン・コモノマーをさらに含んでなり、この関連オレフィン重合触媒は、元のオレフィン重合触媒とは化学的に異なり、そしてオレフィン単量体に対して異なった選択性を有すると特徴づけでき;調製された(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤が、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)−ポリラジカル−含有多官能性連鎖シャトリング剤である。いくつかの実施形態において、関連オレフィン重合触媒は、元の共触媒によって活性化される。いくつかの実施形態において、反応物は、関連共触媒をさらに含んでなり、その関連共触媒は関連オレフィン重合触媒を活性化するものである。用語「本来のオレフィン重合触媒」と「関連オレフィン重合触媒」は、本発明の方法の特定の実施形態を記載するときに、2種類(もしくはそれ以上)の異なる触媒を区別するために、便宜上使用されている。同様に、用語「本来の共触媒」と「関連共触媒」は、本発明の方法の特定の実施形態を記載するときに、2種類(もしくはそれ以上)の異なる共触媒を区別するために、便宜上使用されている。
【0041】
第5の実施形態の反応物が先に記載の関連オレフィン重合触媒とオレフィン・コモノマーをさらに含んでなる場合、それによって生じる、第6の実施形態の(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)含有多官能性連鎖シャトリング剤である。
【0042】
いくつかの実施形態において、好ましくは(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)−ポリラジカル−含有多官能性連鎖シャトリング剤であり、かつ、ポリオレフィンは、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)である。よって、第7〜第13の実施形態の好ましい態様が提供され、それぞれ以下のとおりである:(第7):テレケリック・ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)を調製する方法;(第8):テレケリック・ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)、そのテレケリック・ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)は末端官能基が非統計的分布を有すると特徴づけできる;(第9):テレケリック・ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)を含んでなる物品;(第10):末端官能性ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)を調製する方法;(第11):末端官能性ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー);(第12):末端官能性ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)を含んでなる物品;および(第13):ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエステル、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエーテル、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリアミド、またはポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリイソシアナート多ブロック共重合体を調製する方法。
【0043】
任意の実施形態において、好ましくは各ポリオレフィン−ポリラジカルは、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)−ポリラジカルであり、そして各ポリオレフィンは、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)多ブロック共重合体である。
好ましくは、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、以下の式(IV):
【化10】

の組成物、またはがその交換生成物を含んでなり、そしてポリ(オレフィン単量体オレフィン・ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、以下の式(IVa):
【化11】

の組成物、またはその交換生成物を含んでなり、ここで、式(IV)および(IVa)において:R1、R2、y、M1、RL、X、m、M2、z、p、およびnは、第1の実施形態で規定されたとおりのものであるか、または第5の実施形態の方法における2個以上の反応物の反応生成物である。その反応生成物の例は、式(IV)または(IVa)の組成物であって、ここで、R1、R2、またはR1およびR2は、独立にオレフィン単量体の反応生成物の残基である。別の例は、式(IVa)の組成物に関するものであって、R1とR2の一方または両方が独立にオレフィン・コモノマーの反応生成物の残基である。
【0044】
第5の実施形態の方法のステップ(a)に関して既述のとおり、その方法は、関連オレフィン重合触媒をさらに利用し、そして第4の実施形態の多官能性組成物は、関連オレフィン重合触媒をさらに含んでなる。そういった実施形態において、本来のおよび関連のオレフィン重合触媒は、独立に同じまたは異なる触媒量で用いられる;本来のおよび関連の共触媒は、独立に同じまたは異なる共触媒量で用いられる;そして本発明の多官能性連鎖シャトリング剤は、これだけに限定されるものではないが、ステップ(a)において重合鎖が本来のオレフィン重合触媒と関連のオレフィン重合触媒の間で行ったり来たり移動するような形で機能すると特徴づけできる。
【0045】
本発明に係る重合体は、本明細書中で、当該ブロック共重合体とまとめて呼ばれることもある。「ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)ブロックコポリマー」という用語は、本明細書中では「オレフィン・ブロックコポリマー」、「OBC」、「エチレン/アルファ−オレフィン・ブロック共重合体」、および「エチレン/アルファ−オレフィン・ブロックコポリマー」という用語と互換的に使用される。「アルファ−オレフィン」という用語は、本明細書中では「α−オレフィン」と互換的に使用される。
【0046】
参照によって内容の取り込みを認める合衆国の特許実務およびその他の特許実務のために、概要または発明の詳細な説明においてその時に参照されたそれぞれの米国特許、米国特許出願、米国特許出願公開、PCT国際特許出願およびWO公開とその同等物の内容の全体を、−別段の表示がない限り−本明細書によって援用する。本明細書中に記載されていることと、援用した特許、特許出願、もしくは特許出願公開、またはその一部に記載されていることに不一致がある事象では、本明細書に記載されていることを確認する。
【0047】
本願において、数値範囲の任意の下限、または該範囲の任意の好ましい下限を、該範囲の任意の上限、または該範囲の任意の好ましい上限と組み合わせて、該範囲の好ましい態様または実施形態を規定することができる。それぞれの数値範囲はすべての数値を含むが、該範囲内の有理数と無理数の両方が組み込まれるわけではない(例えば約1〜約5の範囲には、例えば1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5が含まれる)。
【0048】
化合物名とその構造の間に不一致がある事象では、構造を確認する。
括弧なしに挙げられている単価、例えば、2インチと、括弧でくくって挙げられている対応する単価、例えば(5センチメートル)との不一致がある事象では、括弧なしに挙げられている単価を確認する。
【0049】
本明細書中に使用されるとき、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの(at least one)」、および「1もしくは複数個の(one or more)」は、互換的に使用される。本明細書中に記載した本発明のいずれかの態様または実施形態において、数値を指すフレーズ内の用語「約」がそのフレーズから削除されると、本発明の別の態様または実施形態を与えることもある。用語「約」を用いた先の態様または実施形態において、「約」の意味はその使用の状況から解釈できない。好ましくは「約」は、数値の90パーセント〜100パーセント、数値の100パーセント〜110パーセント、または数値の90パーセント〜110パーセントを意味する。当該明細書中に記載した本発明のいずれかの態様または実施形態において、制限のない用語である(「包含する(including)」、「持つ(having)」、「を特徴とする(characterized by)」の同義語である)「含んでなる(comprising)(comprises)」等は、それぞれの部分的に制限された語句「本質的に〜から成る(consisting essentially of)(consists essentially of)」等、またはそれぞれの制限された語句「から成る(consisting of)(consists of)」等で置き換えて、当該発明の別の態様または実施形態を与えることもできる。本願において、前述の元素(例えば構成要素)の一覧を指すとき、語句「その混合物」、「その組み合わせ」等は、列挙された元素のすべてを含めたいずれか2個以上を意味する。メンバーの列挙で使用される「or」という用語は、別段の記載のない限り、列挙されたメンバーを個別にも、あらゆる組み合わせでも言及し、個々のメンバーのうちのいずれか1つを挙げる追加の実施形態の根拠となる(例えば、語句「10パーセント以上(10 percent or more)」を挙げるある実施形態において、その「or」は「10パーセント」を挙げる他の実施形態および「10パーセント超」を挙げる他の実施形態の根拠となる)。「複数」という用語は、2以上を意味し、それぞれの複数は、別段の表示のない限り、独立に選択される。
【0050】
別段の注記がない限り、「元素周期表」というフレーズは、国際純正応用化学連合(IUPAC)によって刊行された、2007年6月22日付のバージョンの公式な周期表を意味する。また、(単数もしくは複数の)族に対するあらゆる言及は、この元素周期表中に反映された(単数もしくは複数の)族に対するものとする。
【0051】
別段の注記のない限り、「ヒドロカルビル」という一般的な用語は、好ましくは(C1−C20)ヒドロカルビルである。
本明細書中に使用される場合、用語「(C1−C20)ヒドロカルビル」は1〜20個の炭素原子から成る炭化水素ラジカルを意味し、用語「(C2−C20)ヒドロカルビレン」は、2〜20個の炭素原子から成る炭化水素ジラジカルを意味し、このなかで、それぞれの炭化水素ラジカルおよびジラジカルは独立に芳香族もしくは非芳香族の、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐鎖の、(単環式および多環式、融合および非融合多環式を含めた)環状もしくは非環式、またはその2個以上の組み合わせであり;そして各炭化水素ラジカルおよびジラジカルは、それぞれ、別の炭化水素ラジカルおよびジラジカルと同じもしくは異なり、そして1もしくは複数個のRSによって独立に置換された、または好ましくは置換されていない。
【0052】
好ましくは、(C1−C20)ヒドロカルビルは、独立に非置換または置換された(C1−C20)アルキル、(C3−C20)シクロアルキル、(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C10)アルキレン、(C6−C20)アリール、または(C6−C10)アリール−(C1−C10)アルキレンである。より好ましくは、それぞれの前述の基は最大18個の炭素原子を独立に持ち(例えば(C1−C18)アルキル、(C3−C18)シクロアルキル、(C3−C9)シクロアルキル−(C1−C9)アルキレン、(C6−C8)アリール、または(C6−C10)アリール−(C1−C8)アルキレン)、より一層好ましくは、12個の炭素原子を独立に持つ(例えば(C1−C12)アルキル、(C3−C12)シクロアルキル、(C3−C8)シクロアルキル−(C1−C4)アルキレン、(C6−C12)アリール、または(C6)アリール−(C1−C6)アルキレン)。
【0053】
用語「(C1−C20)アルキル」は、非置換または1もしくは複数個のRSで置換された1〜20個の炭素原子の飽和した直鎖または分岐炭化水素ラジカルを意味する。好ましくは、(C1−C20)アルキルは、最大18個の炭素原子、より好ましくは12個の炭素原子、より一層好ましくは8個の炭素原子を持つ。非置換(C1−C20)アルキルの例は、非置換(C1−C18)アルキル;非置換(C1−C10)アルキル;非置換(C1−C5)アルキル;メチル;エチル;1−プロピル;2−プロピル;1−ブチル;2−ブチル;2−メチルプロピル;1,1−ジメチルエチル;1−ペンチル;1−ヘキシル;1−ヘプチル;1−ノニル;および1−デシルである。置換された(C1−C20)アルキルの例は、置換された(C1−C18)アルキル、置換された(C1−C10)アルキル、トリフルオロメチル、および(C25)アルキルである。好ましくは、それぞれの(C1−C5)アルキルは、独立にメチル、エチル、1−プロピル、または2−メチルエチルである。
【0054】
用語「(C6−C20)アリール」は、(そのうちの少なくとも6〜14個が環状炭素原子である)6〜20個の全炭素原子から成る、非置換もしくは(1もしくは複数個のRSによって)置換された一、二、または三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そして一、二、または三環式ラジカルがそれぞれ1、2または3つの環を含んでなり、そこで、2または3つの環が独立に融合されるかもしくは非融合であって、そして1つの環が芳香族であり、且つ、2または3つの環のうちの少なくとも1つが芳香族である。好ましくは、(C6−C20)アリールは、最大18個の炭素原子、より好ましくは10個の炭素原子、より一層好ましくは6個の炭素原子を持つ。非置換(C6−C20)アリールの例は、非置換(C6−C18)アリール、2−(C1−C5)アルキル−フェニル;2,4−ビス(C1−C5)アルキル−フェニル;2,4,6−トリス(C1−C5)アルキル−フェニル;フェニル;フルオレニル;テトラヒドロフルオレニル;インダセニル;ヘキサヒドロインダセニル;インデニル;ジヒドロインデニル;ナフチル;テトラヒドロナフチル;アントラセニル;およびフェナントレニルである。置換された(C6−C20)アリールの例は、置換された(C6−C18)アリール;2,4−ビス[(C6)アルキル]−フェニル;ポリフルオロフェニル;ペンタフルオロフェニル;およびフルオレン−9−オン−1−イルである。
【0055】
用語「(C3−C20)シクロアルキル」は、非置換または1もしくは複数個のRSで置換された、3〜20個の炭素原子から成る飽和環状炭化水素ラジカルを意味する。好ましくは、(C3−C20)シクロアルキルは、最大18個の炭素原子、より好ましくは12個の炭素原子、より一層好ましくは6個の炭素原子を持つ。非置換(C3−C20)シクロアルキルの例は、非置換(C3−C12)シクロアルキル、非置換(C3−C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換された(C3−C20)シクロアルキルの例は、置換された(C3−C12)シクロアルキル、置換された(C3−C10)シクロアルキル、シクロペンタノン−2−イル、および1−フルオロシクロヘキシルである。
【0056】
よって、(C2−C20)ヒドロカルビレンは、(C6−C20)アリール、(C3−C20)シクロアルキル、または(C2−C20)アルキルの非置換または置換されたジラジカル類似体、すなわち、それぞれ(C6−C20)アリーレン、(C3−C20)シクロアルキレン、および(C2−C20)アルキレンを意味する。より好ましくは、それぞれの前述の基は、独立に最大20個の炭素原子を持ち(例えば(C6−C18)アリーレン、(C3−C20)シクロアルキレン、および(C2−C20)アルキレン)、より一層好ましくは12個の炭素原子を持つ(例えば(C6−C12)アリーレン、(C3−C12)シクロアルキレン、および(C2−C12)アルキレン)。いくつかの実施形態において、ジラジカルは、隣接している炭素原子(すなわち、1,2−ジラジカル)、または1、2、またはそれ以上の介在炭素原子によって間隔を隔てられている(例えば、それぞれ1,3−ジラジカル、1、4−ジラジカルなど)。1,2−、1,3−、1,4−、またはアルファ、オメガ−ジラジカルが好まれ、より好ましくは1,2−ジラジカルである。
【0057】
用語「(C1−C19)アルキレン」は、非置換または1もしくは複数個のRSで置換された1〜19個の炭素原子から成る飽和した直鎖または分岐鎖ジラジカルを意味する。非置換(C1−C19)アルキレンの例は、非置換1,2−(C1−C12)アルキレンを含めた非置換(C1−C12)アルキレン、および非置換(C1−C7)アルキレンである。非置換(C1−C7)アルキレンの例は、−CH2−、−CH2CH2−、−(CH23−、
【化12】

、−(CH24−、−(CH25−、−(CH26−、および−(CH25C(H)(CH3)−である。置換された(C1−C19)アルキレンの例は、置換された(C1−C10)アルキレン、置換された(C1−C7)アルキレン、−CF2−、および−(CH214C(CH32(CH25−(すなわち、6,6−ジメチル置換されたノルマル−1,20−エイコシレン)である。用語「(C2−C19)アルケニレン」は、非置換または1もしくは複数個のRSで置換された2〜19個の炭素原子から成る、モノもしくはジ不飽和もしくは飽和の直鎖または分岐鎖ジラジカルを意味する。好ましくは、(C2−C19)アルケニレンは、モノ不飽和、すなわち、1つの炭素−炭素二重結合を含んでいる。
【0058】
用語「(C3−C19)アルカン」および「(C3−C6)アルカン」は、それぞれ3〜19個または3〜6個の炭素原子を含んでなる炭化水素分子を意味し、該分子は、非置換または置換された、飽和の、非環式または環式、直鎖または分岐鎖である。
用語「(C3−C19)アルケン」は、3〜19個の炭素原子を含んでなる、モノもしくはジ不飽和炭化水素分子を意味し、該分子は、非置換または置換された、非環式または環式、直鎖または分岐鎖である。好ましくは、(C3−C19)アルケンは、モノ不飽和である、すなわち、1つの炭素−炭素二重結合を含む。
【0059】
用語「(C1−C9)ヘテロアリール」は、1〜9個の環炭素原子と1〜4個の環ヘテロ原子から成る、非置換または(1もしくは複数個のRSで)置換された、単環式または二環式の複素芳香族環式ラジカルを意味し、該ヘテロ原子は、独立に酸素、窒素、リン、または硫黄である。単環式および二環式の複素芳香族ラジカルは、それぞれ1または2つの環を含んでなり、そこでは、二環式複素芳香族ラジカルの2つの環が独立に融合されるかまたは互いに融合されず、そして2つの環のうちの少なくとも1つが芳香族である。好ましくは、(C1−C9)ヘテロアリールは、5−もしくは6員単環化合物、または9もしくは10員二環化合物である。非置換(C1−C9)ヘテロアリールの例は、非置換(C1−C4)ヘテロアリール、ピロール−1−イル;フラン−3−イル;チオフェン−2−イル;ピラゾール−1−イル;イソオキサゾール−2−イル;イソチアゾール−5−イル;イミダゾール−1−イル;オキサゾール−4−イル;チアゾール−2−イル;1,2,4−トリアゾール−1−イル;1,3,4−オキサジアゾール−2−イル;1,3,4−チアジアゾール−2−イル;テトラゾール−1−イル;テトラゾール−2−イル;ピリジン−2−イル;ピリミジン−2−イル;ピラジン−2−イル;インドール−1−イル;ベンゾイミダゾール−1−イル;キノリン−2−イル;およびイソキノリン−1−イルである。
【0060】
「ハロ」という用語は、フルオロ(−F)、クロロ(−Cl)、ブロモ(−Br)、またはヨード(−I)ラジカルを意味する。好ましくは、ハロは、フルオロまたはクロロであり、より好ましくはフルオロである。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)陰イオンを意味する。
【0061】
好ましくは、式(I)の多官能性CSA内には、S(O)またはS(O)2ジラジカル官能基中のO−S結合を除いて、O−O、S−S、またはO−S結合が存在しない。
「飽和」という用語は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基内の)炭素−窒素、炭素−リン、および炭素−ケイ素二重結合を欠いていることを意味する。飽和化学基が1もしくは複数個の置換基RSによって置換された場合、1もしくは複数個の二重および/または三重結合が、置換基RS内に随意に存在しても、しなくてもよい。「不飽和」という用語は、1もしくは複数個の炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基内の)炭素−窒素、炭素−リン、および炭素−シリコン二重結合を含むことを意味するが、もしあれば置換基RSまたはもしあれば(ヘテロ)芳香族環内に存在し得るいずれの二重結合も含まない。
【0062】
用語「連鎖シャトリング剤」は、オレフィン重合条件下、本来のおよび関連のオレフィン重合触媒の少なくとも2つの活性触媒部位の間でポリメリル(すなわち、重合鎖)交換を引き起こすことができる式(I)の多官能性CSAなどの化合物またはそういった化合物の混合物を指す。すなわち、重合フラグメントの移動が、オレフィン重合触媒の1もしくは複数の活性部位で行き来する。
【0063】
連鎖シャトリング剤とは対照的に、「連鎖移動剤」は、重合鎖の成長の停止させ、重合体を触媒から移動剤に1回移動させる。いくつかの重合方法の実施形態、例えばポリオレフィン・ホモ重合体やランダム・ポリオレフィン共重合体を調製するのに有用なものなど、において、多官能性CSAは、連鎖移動剤として機能すると特徴づけできる。すなわち、多官能性CSAは、オレフィン重合触媒から多官能性CSAに、前記重合方法で形成されたポリオレフィン・ホモ重合体またはランダム・ポリオレフィン共重合体生成物の1回の移動があるような形で機能すると特徴づけできる。そういった実施形態において、(1種類の活性触媒部位しか持つことができないまたは使用できない)そういった実施形態では1種類のオレフィン重合触媒だけを通常用いるので、多官能性CSAが可逆的に連鎖シャトルする必要はない。
【0064】
いくつかの態様において、本発明の多官能性連鎖シャトリング剤は、連鎖シャトリング活性比RA-B/RB-Aを有すると特徴づけできる。一般に、いずれか2種類の触媒(A)と(B)において、連鎖シャトリング活性比RA-B/RB-Aは、触媒(A)の活性部位から触媒(B)の活性部位への鎖移動速度(RA-B)を、触媒(B)の活性部位から触媒(A)の活性部位への鎖移動速度(RB-A)で割ることによって計算される。本発明の多官能性連鎖シャトリング剤について、好ましくは連鎖シャトリング活性比RA-B/RB-Aは、0.01〜100であり、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.5〜2.0であり、そしてより一層好ましくは0.8〜1.2である。本発明の多官能性連鎖シャトリング剤とポリメリル鎖の間で形成された中間体は、鎖停止が比較的稀な、十分に安定であることが好ましい。(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、前述の中間体の例である。
【0065】
(本明細書中に記載したように)異なるコモノマー取り込み率ならびに異なる反応性を有するオレフィン重合触媒の異なる組み合わせを選択することによって、そして本発明の多官能性連鎖シャトリング剤を1もしくは複数個の追加の連鎖シャトリング剤と組み合わせることによって、1もしくは複数個の追加的な式(I)の多官能性連鎖シャトリング剤を含んでなる追加的な連鎖シャトリング剤、または1もしくは複数個の本発明品でない連鎖シャトリング剤、あるいはその組み合わせが、異なるポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)多ブロック共重合体生成物を調製できる。こうした別の生成物には、異なるコモノマー密度または濃度のセグメント、異なるブロック長、異なる数のそういったセグメントもしくはブロック、またはその組み合わせがある。例えば、本発明の多官能性連鎖シャトリング剤の連鎖シャトリング活性が1もしくは複数個の触媒の重合鎖生長速度に対して低いのであれば、生成物としてより長いブロック長の多ブロック共重合体および重合体混合物を得ることができる。逆に、連鎖シャトリングが重合鎖生長に対して非常に速いのであれば、よりランダムな鎖構造と、より短いブロック長を有するコポリマー生成物を得る。通常、非常に速い連鎖シャトリング剤は、実質的にランダムなコポリマー特性を有する多ブロック共重合体を生み出すことができる。(単数もしくは複数の)触媒と本発明の多官能性連鎖シャトリング剤の両方の適切な選択によって、比較的に純粋なブロックコポリマー、比較的に大きい重合体セグメントもしくはブロックを含むコポリマー、および/または前述のものと様々なエチレン・ホモ重合体および/またはコポリマーの混合物を、生成物として得ることができる。
【0066】
本発明が先に記載したように、少なくとも1個の追加の連鎖シャトリング剤を含んでなるかまたは利用する場合に、好ましくは本発明は、合計で3種類以下の、より好ましくは合計2種類の連鎖シャトリング剤、総数が少なくとも1つの、式(I)の多官能性連鎖シャトリング剤である連鎖シャトリング剤を含んでなるかまたは利用する。本発明では、いずれの本発明品でない連鎖シャトリング剤も含まないまたは利用しないことが好ましい。しかしながら、いくつかの態様において、1もしくは複数個の本発明品でない連鎖シャトリング剤を利用することが所望されることもある。本発明の多官能性連鎖シャトリング剤に組み合わせるのに好適な本発明品でない連鎖シャトリング剤には、第1、2、12または13族金属化合物を含んでいるか、または少なくとも1個(C1−C20)ヒドロカルビル基、好ましくはアルミニウム、ガリウムもしくは亜鉛化合物で置換された(C1−C12)ヒドロカルビルを含む複合体、ならびにプロトン源とそれの反応生成物が含まれる。好ましい(C1−C20)ヒドロカルビル基は、アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐の(C1−C8)アルキル基である。本発明における使用のための最も好ましいシャトリング剤は、トリアルキルアルミニウムおよびジアルキル亜鉛化合物、特にトリエチルアルミニウム、トリ(i−プロピル)アルミニウム、トリ(i−ブチル)アルミニウム、トリ(n−ヘキシル)アルミニウム、トリ(n−オクチル)アルミニウム、トリエチルガリウム、またはジエチル亜鉛である。追加の好適なシャトリング剤には、前述の有機金属化合物、好ましくはトリ((C1−C8)アルキル)アルミニウムまたはジ((C1−C8)アルキル)亜鉛化合物、特にトリエチルアルミニウム、トリ(i−プロピル)アルミニウム、トリ(i−ブチル)アルミニウム、トリ(n−ヘキシル)アルミニウム、トリ(n−オクチル)アルミニウム、またはジエチル亜鉛を、(ヒドロカルビル基の数を基準とした)化学量論的量未満の一級もしくは二級アミン、一級もしくは二級ホスフィン、チオール、またはヒドロキシル化合物、特にビス(トリメチルシリル)アミン、t−ブチル(ジメチル)シラノール、2−ヒドロキシメチルピリジン、ジ(n−ペンチル)アミン、2,6−ジ(t−ブチル)フェノール、エチル(1−ナフチル)アミン、ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミン)、ジフェニルホスフィン、2,6−ジ(t−ブチル)チオフェノール、または2,6−ジフェニルフェノールと組み合わせることによって形成された反応生成物または混合物が含まれる。望ましくは、金属原子あたり少なくとも1個のヒドロカルビル基が残るように、十分なアミン、ホスフィン、チオール、またはヒドロキシル試薬が使用される。本発明においてシャトリング剤として使用するのに最も所望される前述の組み合わせの主要な反応生成物は、n−オクチルアルミニウム・ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、i−プロピルアルミニウム・ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド)、およびn−オクチルアルミニウム・ジ(ピリジニル−2−メトキシド)、i−ブチルアルミニウム・ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウム・ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウム・ジ(ピリジン−2−メトキシド)、i−ブチルアルミニウム・ビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウム・ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)、n−オクチルアルミニウム・ジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウム・ビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウム・ジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウム・ビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウム・ビス(2,3、6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウム・ビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)、およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)である。他の好適な本発明品でない連鎖シャトリング剤は、WO 2005/073283 A1;WO 2005/090425 A1;WO 2005/090426 A1;WO 2005/090427 A2;WO 2006/101595 A1;WO 2007/035485 A1;WO 2007/035492 A1;およびWO 2007/035493 A2に記載されている。
【0067】
用語「その交換生成物」は、M1またはM2に対する2個以上のリガンドの分子間再分布によるか、またはM1に対する少なくとも1個のリガンドとM2に対する少なくとも1個のリガンドによるか、または式(I)の1個の分子の前述のリガンドのうちの少なくとも1つと式(I)の別の分子の前述のリガンドのうちの少なくとも1つの分子内再分布によるか;または分子内および分子間再分布の組み合わせによって誘導された分子またはオリゴマー物質を意味する。M1に対するリガンドは、R1と式(I)内の「CH2」を指す。M2サブユニットに対するリガンドは、R2と式(I)内の「X」を指す。また、「交換生成物」という用語は、本明細書中では「再分布生成物」と呼ぶこともできる。本発明は、式(I)と(IV)のいずれか一方の多官能性連鎖シャトリング剤を含めた本発明の多官能性連鎖シャトリング剤のいずれかの交換生成物を企図する。
【0068】
式(I)の化合物の交換生成物の例は、以下の式(IB)および(1C):
【化13】

の化合物であって、該式(IB)および(1C)の化合物は2価のRL基を持つ;ならびに以下の式(ID)〜(IK):
【化14】

の化合物であり、そこでは、式(ID)、(IE)、および(IG)〜(IK)の化合物は2価のRL基を持ち、式(IF1)〜(IF4)の化合物は4価のRL基を持つ(式の名称「(II)」(すなわち「いちのi」と発音される)は、前述の式(II)(すなわち該「(II)」はローマ数字の2である)との混同を避けるために直前の構造物の名称から意図的に除いた)。
【0069】
式(I)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、mは、1、2、3、または4の整数であり;rは、1または2の整数であり;tは、1または2の整数であり;n、p、q、およびsのそれぞれは、1の整数であって、すなわち、以下の式(Im):
【化15】

の多官能性CSA、またはその交換生成物であり、そしてrが1であるとき、各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンもしくは(C2−C19)アルケニレンであるか;または(a)rが1であり、かつ、tが2であるか、もしくは(b)rが2であり、かつ、tが1であるか、もしくは(c)それぞれmとsが2であり、かつ、rとtがそれぞれ1であるとき、各RLは、独立に(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであり;そしてy、z、X、M1、M2、R1、およびR2は、式(I)について先に規定されたとおりのものである。
【0070】
式(I)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、nは、1、2、または3の整数であり;sは、1または2の整数であり;pは、1または2の整数であり;m、q、r、およびtのそれぞれは、1の整数であって、すなわち、以下の式(In):
【化16】

の多官能性CSA、またはその交換生成物であり、そしてsとpがそれぞれ1であるとき、各RLは、独立に(C1−C18)アルキレンもしくは(C2−C19)アルケニレンであり;または(a)sが1であり、かつ、pが2であるか、もしくは(b)sが2であり、かつ、pが1であるとき、各RLは、独立に(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであり;そしてy、z、X、M1、M2、R1、およびR2は、式(I)について先に規定されたとおりのものである。
【0071】
式(I)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、qは、2または3の整数であり;m、n、p、r、s、およびtのそれぞれは、1の整数であって、すなわち、以下の式(Iq):
【化17】

の多官能性CSA、またはその交換生成物であり:そして各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレンであり;そして、y、z、X、M1、M2、R1、およびR2は、式(I)について先に規定されたとおりのものである。
【0072】
式(I)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、m、n、およびqのそれぞれは、1の整数であり;p、r、s、およびtのそれぞれは、1または2の整数であって、すなわち、以下の式(Ip):
【化18】

の多官能性CSA、またはその交換生成物であり;そして、RLは、(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19)アルケンの4価ラジカルであり、ここで、rとtの一方が1であり、rとtのもう一方が2であり、かつ、pとsの一方が1であり、pとsのもう一方が2であり;そして、y、z、X、M1、M2、R1、およびR2は、式(I)について先に規定されたとおりのものである。
【0073】
式(I)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、R1とR2は非プロトン性であって、すなわち、R1とR2が、−OH、−NH、−PH、または−SH部分を含まない。
式(IA)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、m、n、およびpのそれぞれは、1の整数であり、そしてRLは、(C1−C19)アルキレンであって、そういった実施形態は、以下の式(Ia):
【化19】

{式中、R1、y、M1、X、M2、R2、およびzは、式(IA)の化合物についてさきに規定されたとおりのものである。}の多官能性CSA、またはその交換生成物である。
【0074】
式(Ia){式中、以下の式(Ia−1):
【化20】

で示されているように、yは2であり、zは2であり、XはOであり、そしてM1とM2のそれぞれは、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0075】
式(Ia){式中、以下の式(Ia−2):
【化21】

で示されているように、yは2であり、zは2であり、XはN((C1−C8)アルキル)であり、そしてM1とM2のそれぞれは、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0076】
式(IA)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、nは1、2、または3の整数であり、mとpのそれぞれは1の整数であり、そしてRLは(C1−C19)アルキレンであって、そういった実施形態は、以下の式(Ib):
【化22】

{式中、R1、y、M1、X、M2、R2、およびzは、式(IA)の化合物について規定されたとおりのものである。}の多官能性CSAである。
式(Ib){式中、以下の式(Ib−1):
【化23】

で示されているように、nは3であり、yは0であり(よって、R1は不存在)、zは2であり、各XはOであり、各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンであり、そしてM1とM2のそれぞれは、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0077】
式(Ib){式中、以下の式(Ib−2):
【化24】

で示されているように、nは2であり、yは0であり(よって、R1は不存在)、zは2であり、各XはOであり、各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンであり、M1は、+2の形式的酸化状態のZnであり、そしてM2は、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0078】
式(IA)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、pは2であり、mとnのそれぞれは1の整数であり、そしてRLは(C3−C6)アルカンの三価ラジカルであって、そういった実施形態は、以下の式(Ic):
【化25】

{式中、R1、y、M1、X、M2、R2、およびzは、式(IA)の化合物について規定されたとおりのものである。}の多官能性CSA、またはその交換生成物である。
式(Ic){式中、式(Ic−1):
【化26】

で示されているように、yは2であり、各zは2であり、各XはOであり、RLは(C3−C19)アルカンの三価ラジカルであり、そしてM1とM2のそれぞれは、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0079】
以下の式(Ic−1a):
【化27】

に示されているような式(Ic−1)の多官能性CSAが、好ましい。
式(IA)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、mは1、2、3、または4の整数であり、nとpのそれぞれは1の整数であり、そしてRLは(C1−C19)アルキレンであって、そういった実施形態は、以下の式(Id):
【化28】

{式中、R1、y、M1、X、M2、R2、およびzは、式(IA)の化合物について規定されたとおりのものである。}の多官能性CSA、またはその交換生成物である。
式(Id){式中、式(Id−1):
【化29】

で示されているように、mは3であり、yは2であり、zは0であり(よって、R1は不存在)、各XはOであり、各RLは、独立に(C1−C19)アルカンであり、そしてM1とM2のそれぞれは、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0080】
式(IA)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、m、nおよびpのそれぞれは1の整数であり、そしてRLは(C2−C19)アルキレンであって、そういった実施形態は、以下の式(Ie):
【化30】

{式中、R1、y、M1、X、M2、R2、およびzは、式(IA)の化合物についてさきに規定されたとおりのものである。}の多官能性CSA、またはその交換生成物である。
式(Ie){式中、以下の式(Ie−1):
【化31】

で示されているように、yは2であり、zは2であり、XはOであり、そしてM1とM2のそれぞれは、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0081】
式(Ie){式中、以下の式(Ie−2):
【化32】

で示されているように、yは2であり、zは2であり、XはN((C1−C8)アルキル)であり、そしてM1とM2のそれぞれは、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能性CSAが、好ましい。
【0082】
式(IA)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、m、n、およびpのそれぞれは1であり、(R1y1は不存在であり、そしてM2は、式(IA)内のCH2と一緒になって、以下の式(II):
【化33】

{式中、gは0、1、または2の整数であり、かつ、(g+2q)の合計がM2の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ、そしてRL、X、M2、およびR2は、式(IA)の化合物について規定されたとおりのものである。}の多官能性連鎖シャトリング剤、またはその交換生成物を形成する。
【0083】
式(II){式中、以下の式(IIa):
【化34】

で示されているように、gは1であり、qは1であり、RLは(CH21-6であり、XはOであり、そしてM2は、+3の形式的酸化状態のAlである。}の多官能CSAが、好ましい。
【0084】
式(I)、(IA)、(Ia)、(Ia−1)、(Ib)、(Ib−1)、(Ib−2)、(Ic)、(Ic−1)、(Id)、(Id−1)、(Ie)、(Ie−1)、(II)、または(IIa){式中、各XがOである代わりに、少なくとも1つ、そしてより好ましくはそれぞれのXはN((C1−C6)アルキル)であり、かつ、残りのXは、式(I)について規定されたとおりのものである。}のうちのいずれか1つの多官能性CSA、またはその交換生成物もまた、好ましい。式(I)、(IA)、(Ia)、(Ia−1)、(Ib)、(Ib−1)、(Ib−2)、(Ic)、(Ic−1)、(Id)、(Id−1)、(Ie)、(Ie−1)、(II)、または(IIa){式中、各XがOである代わりに、少なくとも1つ、そしてより好ましくはそれぞれのXは、S、N(H)、P(H)、またはP((C1−C20)ヒドロカルビル)であり、そして残りのXが、式(I)について規定されたとおりのものである。}のうちのいずれか1つの多官能性CSA、またはその交換生成物もまた、好ましい。
【0085】
式(I)(そして、あらゆる下位概念の式、例えば(IA)、(Ia)、(Ia−1)、(Ia−2)、(Ib)、(Ib−1)、(Ib−2)、(Ic)、(Ic−1)、(Id)、(Id−1)、(Ie)、(Ie−1)、(Ie−2)、および(IIa)など)の多官能性CSAのいくつかの実施形態において、特定のRL、X、R1、R2、M1、M2、m、n、p、q、r、s、t、y、およびzが好ましい。
【0086】
好ましくは、M1およびM2は、独立に第2族の金属、すなわちマグネシウム(Mg)またはカルシウム(Ca)、MgまたはCaは+2の形式的酸化状態で存在し;スズ(Sn)、Snは+2または+4の形式的酸化状態であり;第12族の金属、すなわち亜鉛(Zn)、Znは+2の形式的酸化状態であり;または第13族の金属、すなわちホウ素(B)、アルミニウム(Al)、またはガリウム(Ga)であり、B、Al、またはGaは+3の形式的酸化状態である。
【0087】
より好ましくは、各M1は、独立にAl、B、またはGaであって、そのAl、B、またはGaが+3の形式的酸化状態であるか;またはZnもしくはMgであって、そのZnもしくはMgが+2の形式的酸化状態である。いくつかの実施形態において、各M1は、独立にAl、B、またはGaであって、そのAl、B、またはGaが+3の形式的酸化状態である。いくつかの実施形態において、各M1は、+3の形式的酸化状態のAlである。いくつかの実施形態において、各M1は、独立に+2の形式的酸化状態のZnまたはMgである。いくつかの実施形態において、各M1は、+2の形式的酸化状態のZnである。
【0088】
各M2は、Alであって、そのAlが+3の形式的酸化状態であるか、またはZnであって、そのZnが+2の形式的酸化状態であるか;またはSnであって、そのSnが+2もしくは+4の形式的酸化状態であることもまた、好ましい。いくつかの実施形態において、各M2は、+3の形式的酸化状態のAlである。いくつかの実施形態において、それぞれのM2は、独立に+2の形式的酸化状態のZnである。いくつかの態様において、各M2は、独立に+2または+4の形式的酸化状態のSnである。
いくつかの態様において、各M1およびM2は、+3の形式的酸化状態のAlである。いくつかの実施形態において、各M1およびM2は、+2の形式的酸化状態のZnである。
いくつかの実施形態において、RLのためのそれぞれ(CH22-20、(C1−C19)アルキレン、(C2−C19)アルケニレン、(C3−C19)アルカンの三価ラジカル、または(C3−C19)アルケンの三価ラジカルは、独立にそれぞれ(CH22-12、(C1−C12)アルキレン、(C2−C12)アルケニレン、(C3−C12)アルカンの三価ラジカル、または(C2−C12)アルケンの三価ラジカルであり;より好ましくはそれぞれ(CH22-10、(C1−C10)アルキレン、(C2−C10)アルケニレン、(C3−C10)アルカンの三価ラジカル、または(C2−C10)アルケンの三価ラジカルであり;そしてより一層好ましくはそれぞれ(CH22-8、(C1−C8)アルキレン、(C2−C8)アルケニレン、(C3−C8)アルカンの三価ラジカル、または(C2−C8)アルケンの三価ラジカルである。
【0089】
いくつかの実施形態において、それぞれの(C1−C8)アルキレンは、非分岐(C1−C8)アルキレンである。いくつかの実施形態において、それぞれの非分岐(C1−C8)アルキレンは、独立にCH2、CH2CH2、または(CH23である。いくつかの実施形態において、非分岐(C1−C8)アルキレンは、独立に(CH23である。いくつかの実施形態において、非分岐(C1−C8)アルキレンは、独立に(CH24、CH25、(CH26である。いくつかの実施形態において、非分岐(C1−C8)アルキレンは、独立に(CH28である。いくつかの実施形態において、それぞれの(C1−C8)アルキレンは、(C1またはC2)アルキレン(すなわち、CH2またはCH2CH2)である。
【0090】
いくつかの実施形態において、少なくとも1個(C1−C8)アルキレンが、分岐(C3−C8)アルキレンである。
いくつかの実施形態において、(C3−C8)アルカンの三価ラジカルは、(C6)アルカンの三価ラジカルである。いくつかの実施形態において、(C3−C8)アルカンの三価ラジカルは、(C5)アルカンの三価ラジカルである。いくつかの実施形態において、(C3−C8)アルカンの三価ラジカルは、(C4)アルカンの三価ラジカルである。いくつかの実施形態において、(C3−C8)アルカンの三価ラジカルは、(C3)アルカンの三価ラジカルである。(C6)アルカンの三価ラジカルが、さらに好まれる。
【0091】
いくつかの実施形態において、それぞれの(C2−C8)アルケニレンは、非分岐(C2−C8)アルケニレンである。いくつかの実施形態において、それぞれの非分岐(C2−C8)アルケニレンは、−(CH25−C(H)=C(H)−CH2−である。
いくつかの態様において、各R2は、独立に(C1−C40)ヒドロカルビルであり、そしてより好ましくは(C1−C20)ヒドロカルビルである。いくつかの態様において、各R2は、独立に−C(=O)−(C1−C20)ヒドロカルビル(例えば、アセチル、プロピオニル、またはヘキサノイル)である。いくつかの実施形態において、zは2もしくは3であり、そして2つのR2は一緒になって、(C2−C20)ヒドロカルビレンを形成する。
【0092】
いくつかの実施形態において、少なくとも1個の(C1−C40)ヒドロカルビルは、(C1−C40)アルキルである。いくつかの実施形態において、R1は、(C1−C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、R2は、(C1−C20)アルキルである。いくつかの態様において、R1とR2のそれぞれは、独立に(C1−C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、それぞれの(C1−C40)ヒドロカルビルは、(C1−C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、それぞれの(C1−C20)アルキルは、独立に(C1−C10)アルキルであり、より好ましくは(C2−C8)アルキルであり、そしてより一層好ましくは(C3−C6)アルキルである。いくつかの実施形態において、yは2であり、1つのR1が(C1−C20)ヒドロカルビルであり、そして1つのR1が(R32N−、(R32P−、R3S−、またはR3O−である。いくつかの実施形態において、yは2であり、そして2つのR1が一緒になって(C2−C20)ヒドロカルビレンを形成する。
【0093】
いくつかの実施形態において、R3は、(C1−C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態において、R3は、((C1−C20)ヒドロカルビル)3Si−である。
いくつかの実施形態において、各Xは、N(H)である。いくつかの実施形態において、各Xは、Sである。いくつかの実施形態において、各Xは、P(H)である。いくつかの実施形態において、各Xは、P((C1−C20)ヒドロカルビル)である。いくつかの実施形態において、そしてより好ましくは、各Xは、Oである。いくつかの実施形態において、そしてより好ましくは、各Xは、N((C1−C20)ヒドロカルビル)である。いくつかの実施形態において、それぞれの(C1−C20)ヒドロカルビルは、(C1−C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、(C1−C20)アルキルは、(C1−C12)アルキルである。
【0094】
いくつかの実施形態において、前述の(C1−C19)アルキレン、(C2−C19)アルケニレン、(C3−C19)アルカン、(C3−C19)アルケン、(C1−C20)ヒドロカルビル、および(C2−C20)ヒドロカルビレンのそれぞれは、非置換である(すなわち、式(I)の多官能性CSAのすべての基が非置換である)。いくつかの実施形態において、前述の(C1−C19)アルキレン、(C2−C19)アルケニレン、(C3−C19)アルカン、(C3−C19)アルケン、(C1−C20)ヒドロカルビル、および(C2−C20)ヒドロカルビレンの少なくとも1つが、1もしくは複数個の置換基RS、好ましくは1または2RSで置換されている。いくつかの実施形態において、各RSは、独立にフルオロ、非置換(C1−C18)アルキル、または非置換(C1−C9)ヘテロアリールであり、より好ましくは非置換(C1−C9)アルキル、または非置換(C1−C9)ヘテロアリールである。好ましくは、非置換(C1−C9)ヘテロアリールは、ピリジニルである。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の方法で有用な重合可能なオレフィン(すなわち、オレフィン単量体とオレフィン・コモノマー)は、炭素と水素原子から成り、かつ、少なくとも1個、好ましくは3個以下、そしてより好ましくは2個未満の炭素−炭素二重結合を含む(C2−C40)炭化水素であり、ここで、炭素−炭素二重結合が芳香族の炭素−炭素結合を(例えばフェニルなどで)含んでいない。いくつかの実施形態において、(C2−C40)炭化水素の1〜4個の水素原子が、それぞれハロゲン原子、好ましくはフルオロまたはクロロによって置き換えられて、ハロ置換された(C2−C40)炭化水素を得る。(ハロ置換されていない)(C2−C40)炭化水素が好ましい。ポリオレフィンを作るのに有用な好ましい重合可能なオレフィン(すなわち、オレフィン単量体)は、エチレンおよび重合可能な(C3−C40)オレフィンである。(C3−C40)オレフィンには、アルファ−オレフィン、環状オレフィン、スチレン、および環状または非環状ジエンが含まれる。好ましくは、アルファ−オレフィンには、(C3−C40)アルファ−オレフィン、より好ましくは分岐鎖(C3−C40)アルファ−オレフィン、より一層好ましくは直鎖(C3−C40)アルファ−オレフィン、さらにより一層好ましくは式(A)の直鎖(C3−C40)アルファ−オレフィン:CH2=CH2−(CH2kCH3(A){式中、kは0〜37の整数である。}、そしてその上さらにより一層好ましくは直鎖(C3−C40)アルファ−オレフィン、すなわち1−プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、(C8−C40)アルファ−オレフィン、または直鎖(C20−C24)アルファ−オレフィンである。別の好ましいポリオレフィンは、(C8−C40)オレフィン、すなわち非芳香族または芳香族の、ベンゼン(例えば、スチレン、アルファ−メチルスチレンもしくはジビニルベンゼン)またはナフタレン(例えば、ビニル−ナフタレン)の少なくとも1個の誘導体を含む芳香族(C8−C40)オレフィンである。先に述べたのと同様に、(C8−C40)オレフィンは任意に置換されて、ハロ置換された(C8−C40)オレフィン(例えば、4−フルオロスチレン)を得る。好ましくは、環状オレフィンは、(C3−C40)環状オレフィンである。好ましくは、環状または非環状ジエンは、(C4−C40)ジエンであり、好ましくは非環状ジエンであり、より好ましくは非環状の複合化(C4−C40)ジエンであり、より好ましくは非環状1,3−複合化(C4−C40)ジエンであり、そしてより一層好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0096】
本発明の方法によって作られることができるポリオレフィン(例えば、ホモ重合ポリオレフィン、テレケリック・ポリオレフィン、および末端官能性ポリオレフィン)には、例えば直前に示した段落に記載のオレフィン単量体のうちの1つから成る残基を含んでなるオレフィン・ホモ重合体が含まれる。ポリオレフィン・ホモ重合体の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(C3−C40)アルファ−オレフィン、およびポリスチレンである。本発明の方法によって作られることができる他のポリオレフィンには、例えばオレフィン・コポリマー、特にオレフィン・ブロックコポリマー、およびテレケリック・オレフィン共重合体を含めた、オレフィン共重合体が含まれる。いくつかの態様において、エチレンの残基と、1もしくは複数個の重合可能な(C3−C40)オレフィン、例えばポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーを含むオレフィン共重合体である。好ましい重合可能な(C3−C40)オレフィンは、(C3−C40)アルファ−オレフィンである。好ましいオレフィン共重合体は、2種類以上の重合可能なオレフィン、例えばエチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ペンテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/4−メチル−1−ペンテン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレン、エチレン/プロピレン/ブタジエン、エチレン/プロピレン/ヘキサジエン、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン、および他のEPDM三元重合体などの混合物を共重合させることによって調製されたものである。好ましくは、ポリオレフィンは、エチレンホモ重合体(例えば、高密度ポリエチレン)、エチレン/アルファ−オレフィン共重合体(すなわち、ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)コポリマー、例えばポリ(エチレン1−オクテン)など)、またはエチレン/アルファ−オレフィン/ジエン共重合体(すなわち、ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン・ジエン)三元重合体、例えばポリ(エチレン1−オクテン1,3−ブタジエン)など)である。ポリオレフィンには、非ブロック・ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)コポリマーが含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明のポリオレフィンには、少なくとも2種類の異なるポリオレフィンの混合物が含まれ、そのうちの少なくとも1種類が本発明の方法によって作製されることができる。そういった混合物の例には、ポリプロピレン・ホモ重合体の混合物や本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーが含まれる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーは、以下の式:
A−BまたはA−B−A
で表すことができる。ここで、「A」はハードブロックまたはセグメントを表し、そして「B」がソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AsとBsは、分岐または星形様式で連結されるのではなく、線状様式で連結される。
【0099】
本発明の他の実施形態は、以下の式:
A−[(BA)n]またはA−[(BA)nB]
によって表すことができる。ここで、nは少なくとも1であり、好ましくは1より大きな整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であり、「A」がハードブロックまたはセグメントを表し、そして「B」がソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AsおよびBsは、分岐または星形様式で連結されるのではなく、線状様式で連結される。
【0100】
本発明の更なる実施形態は、以下の式:
A−(AB)n−AまたはA−(AB)n−BまたはB−(AB)n−B
によって表すことができる。ここで、nは少なくとも1であり、好ましくは1より大きな整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であり、「A」がハードブロックまたはセグメントを表し、そして「B」がソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AsおよびBsは、分岐または星形様式で連結されるのではなく、線状様式で連結される。
【0101】
他の実施形態において、本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーには、通常、第3のタイプのブロックを持っていない。さらに他の実施形態において、ブロックAおよびブロックBのそれぞれが、ブロック内にランダムに分布した単量体またはコモノマーを持つ。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、ブロックの残りと異なる組成物を持っているチップ・セグメントなどの異なる組成物の2以上のセグメント(またはサブブロック)を含んでならない。
【0102】
他の実施形態において、本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーは、第3のタイプのブロックまたはセグメントを持ち、そしてそれは、以下の式:
A−B−C
で表されることができる。ここで、「A」はハードブロックまたはセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはセグメントを表し、そして「C」はハードもしくはソフトのいずれかのブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、As、Bs、およびCsは、分岐または星形様式で連結されるのではなく、線状様式で連結される。
【0103】
本発明の他の実施形態は、以下の式:
A−(BC)nまたはA−(BC)nBまたはA−(CB)nまたはA−(CB)n
によって表されることができる。ここで、nは少なくとも1であり、好ましくは1より大きな整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であり、「A」はハードブロックまたはセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはセグメントを表し、そして「C」はハードもしくはソフトのいずれかのブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、As、Bs、およびCsは、分岐または星形様式で連結されるのではなく、線状様式で連結される。
【0104】
本発明の更なる実施形態は、以下の式:
A−(BC)n−AまたはA−(BC)n−BまたはA−(BC)n−CまたはB−(AC)n−AまたはB−(AC)n−BまたはB−(AC)n−CまたはC−(AB)n−AまたはC−(AB)n−BまたはC−(AB)n−Cで表されることができる。ここで、nは少なくとも1であり、好ましくは1より大きな整数、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上であり、「A」はハードブロックまたはセグメントを表し、「B」はソフトブロックまたはセグメントを表し、そして「C」はハードもしくはソフトのいずれかのブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、As、Bs、およびCsは、分岐または星形様式で連結されるのではなく、線状様式で連結される。
【0105】
「ハード」ブロックまたはセグメントは、いくつかの実施形態において、エチレンを含む、好ましくはエチレンが約80モルパーセント超、そして好ましくは88モルパーセント超の量で存在している重合化単位の結晶性または半結晶性ブロックを指す。言い換えれば、ハードセグメント内のコモノマー含量は、20モルパーセント未満、そして好ましくは12重量パーセント未満である。いくつかの実施形態において、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてのエチレンを含む。そういったハードブロックは、本明細書中では「濃厚ポリエチレン」ブロックまたはセグメントと呼ばれることもある。
【0106】
その一方で、「ソフト」ブロックまたはセグメントは、コモノマー含量が20モルパーセント超、好ましくは25モルパーセント超、最大100モルパーセントである重合化単位のブロックを指す。いくつかの実施形態において、ソフトセグメントのコモノマー含量は、20モルパーセント超、25モルパーセント超、30モルパーセント超、35モルパーセント超、40モルパーセント超、45モルパーセント超、50モルパーセント超、または60モルパーセント超であることができる。「ソフト」ブロックまたはセグメントは、無定形ブロックまたはセグメントを指すこともあり、「ハード」ブロックまたはセグメントのものより低い結晶度レベルを有する。
【0107】
追加の実施形態には、重合体ブロックの少なくとも1個が無定形(「ソフト」ブロック)であり、他の重合体ブロックの少なくとも1個が結晶可能(「ハード」ブロック)である本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーが含まれる。好ましくは、無定形重合体ブロックの予想されるTg(ガラス転移温度(DSC)、示差走査熱量測定によって計測される)と結晶性重合体ブロックのTm(融解転移温度、DSCによって計測される)の違いは、少なくとも40℃であり、より好ましくは少なくとも80℃、そしてより一層好ましくは少なくとも100℃である。結晶融点(Tm)は、ASTM D−3418試験方法に準拠したDSCによって測定したピーク融点を指す。好ましくは、結晶性重合体ブロックのTmは、無定形重合体ブロックの予想されるTgより高い。より好ましくは、少なくとも1個のブロックが、少なくとも100℃、より一層好ましくは少なくとも105℃、そしてさらにより一層好ましくは少なくとも120℃の結晶融点を有する結晶性または半結晶性であり;かつ、少なくとも1個のブロックが、無定形または非結晶性である。また好ましくは、いずれかの結晶性高分子ブロックの融点に関する融解熱は、DSC分析で測定した場合、少なくとも1グラムあたり20ジュール(J/g)、好ましくは少なくとも40J/g、そしてより好ましくは少なくとも50J/gである。DSC分析は、後記の標準的な方法に準拠する。本発明はさらに、結晶度が核生成剤、熱的アニーリング、および/または歪み(strain)の使用で生じさせるかまたは高められる重合体を含んでいる。本明細書中で使用される場合、重合実体の特性に関して使用されると、「予想される」という用語は、無限分子量に関する方法、すなわち、室温(25℃)、Jozef Bicerano, Prediction of Polymer Properties, 2nd ed., Marcel Dekker, Inc., New York(Bicerano技術)に開示されているアタクチックな重合体の計算によって予測される特性である。その技術はさらに、Molecular Simulations Inc., a subsidiary of Pharmacopeia, Inc. から入手可能である、SYNTHIA(商標)を含めたソフトウェアに組み込まれてもいる。Bicerano技術によって計算された特定の代表的な重合体の予想される特性は、WO 2008/027283とそれに付随する2009年2月10日付で出願された米国特許番号第12/377,034号の中の表1に見られる。いくつかの態様において、ハードセグメントまたはブロックが、すべてまたは少なくとも90モルパーセントのアルファ−オレフィンを含む。そういったハードブロックは、本明細書中では「濃厚ポリ(アルファ−オレフィン)」ブロックまたはセグメントと呼ぶこともできる。アルファ−オレフィンを含有するハード濃厚ポリ(アルファ−オレフィン)ブロックは、例えばポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、またはポリ(4−メチル−1−ペンテン)であり得る。
【0108】
好ましいポリオレフィンには、それぞれThe Dow Chemical Company, Michigan, USAから入手可能である、商標名ATTANE(商標)やAFFINITY(商標)を持つコポリマー(例えば、エチレン/オクテンコポリマー)、およびENGAGE(商標)ポリオレフィン・エラストマー;ならびにThe Dow Chemical CompanyのINSITER(登録商標)技術を使用して作製したオレフィンコポリマー(例えば、エチレン/1−ブテンコポリマー)が含まれる。
【0109】
式(IVa)の組成物であるテレケリック・ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)多ブロックコポリマー、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)多ブロックコポリマー、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエステル多ブロック共重合体、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエーテル多ブロック共重合体、、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリアミド多ブロック共重合体、およびポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリイソシアナート多ブロック共重合体は、少なくとも一部分、すなわちポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)をそれぞれ含む。そのポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)は、複数の繰返しユニットを含んでなり、そして各繰返しユニットが独立にオレフィン単量体もしくはコモノマーの残基、またはオレフィン単量体もしくはコモノマーの残基の誘導体であり、前記ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)の複数の繰返しユニットが、濃厚ポリ(オレフィン単量体)セグメント(すなわち、もしあれば、オレフィン・コモノマーの残基よりオレフィン単量体の残基をより多く含む)および異なるポリ(オレフィン・コモノマー)セグメント(すなわち、もしあれば、ポリ(オレフィン単量体)セグメント中にオレフィン・コモノマーの残基のモルパーセントより高いオレフィン・コモノマーの残基のモルパーセントを含む)を含んでなる。
【0110】
好ましい本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)は、化学的または物理特性の異なる2以上の重合化単量体ユニットのブロックまたはセグメントを持つ多ブロック共重合体であると特徴づけでき、かつ、メソフェーズ分離すると特徴づけできる。そういった重合体は、本明細書中では「メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体」と呼ばれることもある。「好ましくは」それぞれのポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)は、独立に、メソフェーズ分離し、そして1.4以上のPDIを有すると特徴づけできる。
【0111】
より好ましくは、各ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)は独立にポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)である。そのポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)は、エチレン由来ハードセグメントと、アルファ−オレフィンおよびエチレンからの残基を含むソフトセグメントを含んでなる。ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)が濃厚ポリエチレン・セグメントを含んでなる場合、そういった濃厚ポリエチレン・セグメントの結晶化は主としてメソドメインを得るしかなく、そしてそういったポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)は「中間相分離したもの」と呼ばれ得る。
【0112】
好ましくは、ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)は、独立に、メソフェーズ分離し、そして1.4〜8のPDIを有すると特徴づけできる。好ましくは、それぞれのかかるPDIは、ポアソン分布よりむしろシュッツ−フロリー分布を当てはまると特徴づけできる。好ましくは、それぞれのポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)は、独立に、多分散ブロック分布、ならびにブロックサイズの多分散分布の両方を有すると特徴づけでき、それらの特徴が、それぞれのポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)に対して改善され、かつ、区別可能な物理特性を与える。好ましくはまた、それぞれのポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)は、独立に、ポリエチレンと他のブロックの間でアルファ−オレフィン含有量の内容のモルパーセントに違いがあると特徴づけできる。
【0113】
本明細書中に使用される場合、「メソフェーズ分離」という用語は、重合体ブロックが局所的に隔離されて、定序性ドメインを形成する方法を意味する。これらのメソドメインは球状、シリンダー状、ラメラ状の形状、またはブロックコポリマーで知られているその他の形態をとる。
メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体のドメインのサイズは、メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体の分子量を変えるか、またはメソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体のコモノマー含量の差を変更することによって、制御できる。ドメインのサイズもまた、バルクのメソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体と混合成分とを混ぜ合わせることによって改変することができる。好適な混合成分の例には、メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体のそれぞれのブロックまたはセグメントのうちの1つに似た組成を有するホモ重合体またはコポリマー、鉱油などのオイル、およびトルエンまたはヘキサンなどの(希釈剤として使用される)溶媒が含まれる。
【0114】
いくつかの実施形態において、メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体のドメインは、従来の単分散(すなわち、PDI2未満、例えば、PDI約1)ブロックコポリマーのドメインサイズより少なくとも50%大きいサイズを持っていると特徴づけできる。ドメインのサイズは、メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体の分子量を変えることによって、またはメソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体の少なくとも2つのブロック(すなわち、ハードおよびソフトセグメント)がそれにより異なるようにコモノマー含量を変えることによって、制御できる。コモノマーの所望の量は、モルパーセントにより計測することができる。計算は、メソフェーズ分離を達成するために必要とされる量を測定するためにあらゆる所望のコモノマーについても行うことができる。
【0115】
メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体のドメイン・サイズは、通常、約40ナノメートル(nm)〜約300nmの範囲内にある。メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体は、オレフィンブロックコポリマーを含んでなり、そこでは、ソフトセグメント内のコモノマーの量は、ハードセグメントのそれと比較した場合に、メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体がその融解によりメソフェーズ分離を受けるような量である。
【0116】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、エチレン/アルファ−オレフィン共重合体、例えばPCT国際特許出願公開番号WO 2009/097560(本明細書中に援用する)に記載のものなど、好ましくはブロックコポリマーを含んでなり、そのエチレン/アルファ−オレフィン共重合体は、ハードセグメントとソフトセグメントを含んでなり、且つ、約1.4〜約2.8の範囲内のMW/Mnを特徴とし、そして:
(a)少なくとも1つのTm(℃)、およびグラム/立方センチメートル単位の密度dを持ち、そこでは、Tmとdの数値が以下の関係に対応する:または
m>−6553.3+13735(d)−7051.7(d)2
(b)融解熱(ΔH、J/g単位)、および最大の示差走査熱量計測(DSC)ピークと最大の結晶化分析分別法(CRYSTAF)ピークの温度差と規定されるデルタ温度数(ΔT、℃単位)を特徴とし、そこでは、ΔTとΔHの数値には、以下の関係がある:
ゼロ(0)よりも大きくて最大130J/gのΔHについて、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/g超のΔHについて、ΔT≧48℃
【0117】
そこでは、CRYSTAFピークは、累積重合体の少なくとも5パーセントを使用して測定され、そして重合体の5パーセント未満より少ないものが同定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である;または
(c)エチレン/アルファ−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで計測した、300パーセントの歪みおよび1サイクルでのパーセント単位の弾性回復(Re)を特徴とする、グラム/立方センチメートルでの密度dを有する、そこでは、Reおよびdの値は、エチレン/アルファ−オレフィン共重合体が、架橋された相を実質的に含有しないとき、以下の関係を満足する:
e>1481−1629(d);または
【0118】
(d)TREFを使用して分別されたとき、40℃と130℃の間で溶離する分子画分を有し、この画分が、同じ温度の間で溶出する相当のランダムエチレン共重合体画分のものよりも、少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有することを特徴とし、そこでは、この相当するランダムエチレン共重合体は同じコモノマー(群)を有し、エチレン/アルファ−オレフィン共重合体のものの10パーセント以内の、メルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量(全重合体基準)を有する;または
(e)25℃での貯蔵弾性率(G’(25℃))および100℃での貯蔵弾性率(G’(100℃))を有し、そこでは、のG’(25℃)対G’(100℃)の比は、約1:1〜約9:1の範囲内にある;または
(f)ゼロ(0)よりも大きくて最大約1.0の平均ブロック指数を特徴とする;または
【0119】
(g)TREFを使用して分別されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、この画分が、数量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは数量(−0.2013)T+21.07以上のモルコモノマー含量を有することを特徴とし、ここで、Tは℃単位で計測された、TREF画分のピーク溶出温度の数値である;そして
ここで、エチレン/アルファ−オレフィン・ブロック共重合体はメソフェーズ分離する。
【0120】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、エチレン/アルファ−オレフィン共重合体、例えば米国特許番号第US 7,355,089号および米国特許出願公開番号第US 2006-0199930号に記載のものなどを含んでなる。そこでは、共重合体は、好ましくはブロックコポリマーであり、そしてハードセグメントとソフトセグメント、およびエチレン/・アルファ−オレフィン共重合体を含んでなり:
(a)約1.7〜約3.5のMW/Mnを有し、少なくとも1つのTm(℃)、およびグラム/立方センチメートル単位の密度dを有する、そこでは、Tmとdの数値は、以下の関係に対応する:
−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2;または
(b)約1.7〜約3.5のMW/Mnを有し、融解熱、J/g単位のΔH、および最大DSCピークと最大CRYSTAFピークの間の温度差と規定されるデルタ量、ΔT(℃)を特徴とする、ΔTとΔHの数値には、以下の関係がある:
ゼロ超から最高130J/gまでのΔHについて、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/g超のΔHについて、ΔT≧48℃
【0121】
そこでは、CRYSTAFピークは、累積重合体の少なくとも5パーセントを使用して測定され、そして重合体の5パーセント未満より少ないものが同定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である;または
(c)エチレン/アルファ−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで計測した、300パーセントの歪みおよび1サイクルでのパーセント単位のReを特徴とする、グラム/立方センチメートルでの密度dを有する、そこでは、Reおよびdの値は、エチレン/アルファ−オレフィン共重合体が、架橋された相を実質的に含有しないとき、以下の関係を満足する:
e>1481−1629(d);または
(d)TREFを使用して分別されたとき、40℃と130℃の間で溶離する分子画分を有し、この画分が、同じ温度の間で溶出する相当のランダムエチレン共重合体画分のものよりも、少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含量を有することを特徴とし、そこでは、この相当するランダムエチレン共重合体は同じコモノマー(群)を有し、エチレン/アルファ−オレフィン共重合体のものの10パーセント以内の、メルトインデックス、密度、およびモルコモノマー含量(全重合体基準)を有する;または
【0122】
(e)25℃での貯蔵弾性率(G’(25℃))および100℃での貯蔵弾性率(G’(100℃))を有し、そこでは、のG’(25℃)対G’(100℃)の比は、約1:1〜約9:1の範囲内にある;または
(f)TREFを使用して分別されたとき、40℃と130℃との間で溶出する、少なくとも0.5〜最大約1のブロック指数および約1.3超のMW/Mnを有することを特徴とする分子画分を有する;または
(g)ゼロ(0)よりも大きくて最大約1.0の平均ブロック指数、および約1.3超のMW/Mnを有する;または
(h)TREFを使用して分別されたとき、40℃と130℃との間で溶出する分子画分を有し、この画分が、数量(−0.2013)T+20.07以上、より好ましくは数量(−0.2013)T+21.07以上のモルコモノマー含量を有することを特徴とし、ここで、Tは℃単位で計測された、TREF画分のピーク溶出温度の数値である。
【0123】
他の実施形態には、重合体および方法、例えばPCT国際特許出願公開番号WO 2005/090425 A1とそれに付随するUS 2007/0167315 A1、WO 2005/090426 A1とそれに付随するUS 2008/0311812 A1、WO 2005/090427 A2とそれに付随するUS 2007/0167578 A1に記載のものなどが含まれる。
他の実施形態において、当該ブロック共重合体は、PCT国際特許出願公開番号WO 2009/097565に記載のポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)コポリマーならびに関連する過程および方法であり、そこでは、
(a)ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)コポリマーは、異なる化学的または物理特性を含むおよびモルパーセントα−オレフィン含量の差を有する、2つ以上の実質的に均質な分子内ブロックを含み、該分子内ブロックが、最確分子量分布を有することを特徴とし、そこでは、該ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)コポリマーの少なくとも1個(すなわち、エチレン/α−オレフィン共重合体)が、約1.4〜約2.8の範囲の分子量分布、MW/Mn、およびゼロより大きく最大で約1.0の平均ブロック指数を特徴とし;ならびにそこでは、エチレン/α−オレフィン・ブロック共重合体がメソフェーズ分離する;または
【0124】
(b)ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)コポリマーは、異なる化学的または物理特性を含むおよびモルパーセントα−オレフィン量の差を有する、2つ以上の実質的に均質な分子内ブロックを含み、該分子内セグメントが、最確分子量分布を有することを特徴とし、そこでは、該ブロックコポリマーが、1,000g/mole〜1,000,000g/moleの分子量を有し、およびメソフェーズ分離する;または
(c)ポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)コポリマーは、異なる化学的または物理特性を含むおよびモルパーセントα−オレフィン量の差を有する、2つ以上の実質的に均質な分子内ブロックを含み、該分子内セグメントが、最確分子量分布を有することを特徴とし、そこでは、該コポリマーが、40,000g/mol超の平均分子量、約1.4〜約2.8の範囲内の分子量分布、MW/Mn、および約20モルパーセント超の分子内ブロック間のモルパーセントα−オレフィン量の差を特徴とする。
【0125】
ポリオレフィンの単量体およびコモノマー含量は、例えば、赤外線(IR)分光法や核磁気共鳴(NMR)分光法などのいずれかの好適な技術を使用することで計測することができ、NMR分光法に基づく技術が好ましく、そして炭素−13NMR分光法がさらに好ましい。炭素−13NMR分光法を使用するために、10ミリメートル(mm)のNMRチューブ内の0.4gの重合体サンプルに約3gのテトラクロロエタン−d2/オルソジクロロベンゼンの50/50混合物を加えることによって、高密度ポリエチレンまたはポリ(エチレン・アルファ−オレフィン)ブロックコポリマーの重合体サンプルから分析サンプルを調製する。そのチューブと内容物を150℃まで加熱することによって、重合体サンプルを溶解し、そして均質化する。100.5MHzの炭素−13の共振周波数に相当するJEOL Eclipse(商標)400MHz分光計またはVarian Unity Plus(商標)400MHz分光計を使用して、炭素−13NMR分光データを採収する。炭素−13データは、6秒パルス反復遅延(pulse repetition delay)で4000トランジェント/データファイルを使用して取得する。定量分析のための最小シグナル対ノイズを達成するために、多重データファイルを一緒に追加する。スペクトル幅は、32,000データポイントの最小ファイルサイズで25,000Hzである。この分析サンプルを、130℃にて10mmブロードバンドプローブで分析する。コモノマー取り込みを、Randallのトリアド方法(riad method)を使用して、炭素−13データを用いて測定する(Randall, J.C.; JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317(1989)、上記文献の全体を本明細書中に援用する)。
【0126】
いくつかの実施形態において、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーまたはそのセグメント内に組み込まれたオレフィン・コモノマーの量は、コモノマー取り込み指数によって特徴づけられる。本明細書中に使用される場合、「コモノマー取り込み指数」という用語は、代表的なオレフィン重合条件下で調製されたオレフィン単量体/コモノマー・コポリマー、またはそのセグメント内に組み込まれたオレフィン・コモノマーの残基のモルパーセントを指す。
好ましくは、オレフィン単量体はエチレンまたはプロピレンであり、そしてコモノマーは、それぞれ(C3−C40)アルファ−オレフィンまたは(C4−C40)アルファ−オレフィンである。オレフィン重合条件は、100℃にて、4.5メガパスカル(MPa)のエチレン(またはプロピレン)圧(反応器圧力)、92パーセント超(より好ましくは95パーセント超)のオレフィン単量体変換率、および0.01パーセント超のオレフィン・コモノマー変換率での、理想的には炭化水素希釈剤中、定常状態での連続溶液重合条件である。オレフィン・コモノマー取り込み指数に大きな違いがある、本発明の多官能組成物を含めた触媒組成物の選択は、ブロックまたはセグメント特性、例えば密度などに最も大きな差がある2つ以上のオレフィン単量体からのポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーをもたらす。
【0127】
特定の状況下において、コモノマー取り込み指数を、例えば先に記載したNMR分光技術の使用またはIR分光法によって直接的に測定することもできる。NMRまたはIR分光技術を使用できなければ、コモノマー取り込みのいずれかの差は間接的に測定される。複数の単量体から形成された重合体において、この間接的な定量は、単量体反応性に基づく様々な技術によって達成され得る。
【0128】
所定の触媒によって製造されたコポリマーについて、コモノマーとコポリマー中の単量体の相対量は、したがって、コポリマー組成は、コモノマーと単量体の反応の相対速度によって測定される。数学的には、コモノマー対単量体のモル比は、US 2007/0167578 A1の段落番号[0081]〜[0090]に記載の方程式によって与えられる。
このモデルにおいて、その上、重合体組成は、温度依存型反応性比と反応器内のコモノマーモル分率だけの関数である。逆コモノマーまたは単量体挿入が起こり得るとき、または2つより多くの単量体の共重合の場合であっても同様である。
【0129】
前記モデルにおける使用に関する反応性比は、周知の理論手法を使用することで予測できるか、または実際の重合データから経験的に得ることができる。好適な理論手法は、例えばB. G. Kyle, Chemical and Process Thermodynamics, Third Addition, Prentice-Hall, 1999およびRedlich-Kwong-Soave (RKS) Equation of State, Chemical Engineering Science, 1972, pp 1197-1203の中で開示されている。実験由来のデータから反応性比を得る手助けのために、市販のソフトウェアプログラムを使用してもよい。そういったソフトウェアの一例は、Aspen Plus from Aspen Technology, Inc., Ten Canal Park, Cambridge, MA 02141-2201 USAである。
【0130】
時には、本来および関連のオレフィン重合触媒に関する例を援用することも都合がよい。便宜上、かつ、整合性のために、本来および関連のオレフィン重合触媒のうちの一方を、そのため本明細書中では「第1のオレフィン重合触媒」、そして一方を「第2のオレフィン重合触媒」と呼ぶこともある。すなわち、いくつかの実施形態において、第1のオレフィン重合触媒は本来のオレフィン重合触媒と同じであり、かつ、第2のオレフィン重合触媒は関連のオレフィン重合触媒と同じであり;そして他の実施形態において逆もまた同様である。本明細書中に使用される場合、第1のオレフィン重合触媒は、高いコモノマー取り込み指数を有すると特徴づけでき、そして第2のオレフィン重合触媒は、該高いコモノマー取り込み指数の95パーセント未満のコモノマー取り込み指数を有すると特徴づけできる。好ましくは、第2のオレフィン重合触媒は、第1のオレフィン重合触媒の高いコモノマー取り込み指数の90パーセント未満、より好ましくは50パーセント未満、より一層好ましくは25パーセント未満、そしてさらにより一層好ましくは10パーセント未満のコモノマー取り込み指数を有することを特徴とする。
【0131】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、以下の混合物または反応生成物:
(A)第1のオレフィン重合触媒、該第1のオレフィン重合触媒は、高いコモノマー取り込み指数(例えば、コモノマーの15モルパーセント超のコモノマー取り込み指数)を有することを特徴とする;
(B)第2のオレフィン重合触媒、該第2のオレフィン重合触媒は、前記第1のオレフィン重合触媒のコモノマー取り込み指数の90パーセント未満のコモノマー取り込み指数を有することを特徴とする;および
(C)本発明の多官能性連鎖シャトリング剤、
を含んでなる触媒系を用いる。
いくつかの実施形態において、本来のオレフィン重合触媒は第1のオレフィン重合触媒であり、そして関連オレフィン重合触媒は第2のオレフィン重合触媒である。いくつかの実施形態において、本来のオレフィン重合触媒は第2のオレフィン重合触媒であり、そして関連オレフィン重合触媒は第1のオレフィン重合触媒である。
【0132】
「触媒」という用語は、本明細書中で広く使用される場合、金属リガンド複合体の「非活性」型(すなわち、前駆体)または好ましくは(例えば、触媒的に活性な混合物またはその生成物をもたらすための活性化共触媒と「非活性」型の接触後の)その活性型を指すことができる。金属−リガンド複合体の金属は、元素周期表の第3〜15族、好ましくは、第4族のいずれかの金属であり得る。好適な金属−リガンド複合体のタイプの例は、メタロセン、ハーフメタロセン、拘束幾何構造、多価ピリジルアミン−、ポリエーテル−、または他のポリキレート塩基複合体である。そうした金属−リガンド複合体は、WO 2008/027283とそれに付随する米国特許出願番号第12/377,034号に記載されている。他の好適な金属−リガンド複合体は、US 5,064,802;US 5,153,157;US 5,296,433;US 5,321,106;US 5,350,723;US 5,425,872;US 5,470,993;US 5,625,087;US 5,721,185;US 5,783,512;US 5,866,704;US 5,883,204;US 5,919,983;US 6,015,868;US 6,034,022;US 6,103,657;US 6,150,297;US 6,268,444;US 6,320,005;US 6,515,155;US 6,555,634;US 6,696,379;US 7,163,907;およびUS 7,355,089、ならびに出願WO 02/02577;WO 02/92610;WO 02/38628;WO 03/40195;WO 03/78480;WO 03/78483;WO 2009/012215 A2;US 2003/0004286;およびUS 04/0220050;US 2006/0199930 A1;US 2007/0167578 A1;US 2008/0311812 A1に記載されているものである。
【0133】
便宜上、そして整合性のために、「第1のオレフィン重合触媒」は本明細書中では互換的に「触媒(A)」と呼ばれる。「第2のオレフィン重合触媒」は本明細書中では互換的に「触媒(B)」と呼ばれる。第1と第2のオレフィン重合触媒は、異なるエチレンおよび(C3−C40)アルファ−オレフィン選択性を有することが好ましい。
好ましくは、触媒(B)のコモノマー取り込み指数は、触媒(A)のコモノマー取り込み指数の50パーセント未満、より好ましくは5パーセント未満である。好ましくは、触媒(A)のコモノマー取り込み指数は、コモノマーの20mol%、より好ましくは30mol%、より一層好ましくは40mol%超の取り込みである。
【0134】
好ましくは、触媒系の触媒(A)は、独立にUS 2006/0199930 A1;US 2007/0167578 A1;US 2008/0311812 A1;US 7,355,089 B2またはWO 2009/012215 A2に記載の触媒(A)である。同様に好ましくは、触媒系の触媒(B)は、独立にUS 2006/0199930 A1;US 2007/0167578 A1;US 2008/0311812 A1;US 7,355,089 B2;またはWO 2009/012215 A2に記載の触媒(B)である。US 2007/0167578 A1の段落番号[0138]〜[0476]に記載の触媒が、より好ましい。
【0135】
代表的な触媒(A)および(B)は、以下の式(A1)〜(A5)、(B1)、(B2)、(C1)〜(C3)、および(D1)の触媒である:
触媒(A1)は、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウム・ジメチルであって、WO 03/40195、2003US 0204017、2003年5月2日付で出願されたUSSN 10/429,024、およびWO 04/24740の教示に従って調製され、そして以下の構造を有する:
【化35】

【0136】
触媒(A2)は、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウム・ジメチルであって、WO 03/40195、2003US 0204017、2003年5月2日付で出願されたUSSN 10/429,024、およびWO 04/24740の教示に従って調製され、そして以下の構造を有する:
【化36】

触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウム・ジベンジルであって、そして以下の構造を有する:
【化37】

触媒(A4)は、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイル・ジルコニウム(IV)ジベンジルであって、US-A-2004/0010103の教示に従って実質的に調製され、そして以下の構造を有する:
【化38】

触媒(A5)は、[η2−2,6−ジイソプロピル−N−(2−メチル−3−(オクチルイミノ)ブタ−2−イル)ベンゼンアミド]トリメチルハフニウムであって、WO 2003/051935の教示に従って実質的に調製されて、そして以下の構造を有する:
【化39】

触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウム・ジベンジルであって、そして以下の構造を有する:
【化40】

触媒(B2)は、1、2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウム・ジベンジルであって、そして以下の構造を有する:
【化41】

触媒(C1)は、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウム・ジメチルであって、USP6,268,444の技術に従って実質的に調製され、そして以下の構造を有する:
【化42】

触媒(C2)は、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウム・ジメチルであって、US-A2003/004286の教示に従って実質的に調製され、そして以下の構造を有する:
【化43】

触媒(C3)は、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インデン−1−イル)シランチタニウム・ジメチルであって、US-A-2003/004286の教示に従って実質的に調製され、そして以下の構造を有する:
【化44】

触媒(D1)は、ビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)ジルコニウム・ジクロリドであって、Sigma-Aldrichから入手可能であり、そして以下の構造を有する:
【化45】

【0137】
いくつかの実施形態において、本来および関連のオレフィン重合触媒は、同じ共触媒(活性化共触媒または共触媒と呼ばれることもある)と接触させることによってもしくは反応させることによって、または活性化技術、例えば金属(例えば、第4族)オレフィン重合反応と使用するために当該技術分野で知られているものなど、を使用することによって触媒的に活性化される。例えば、本来および関連のオレフィン重合触媒の両方を用いるいくつかの実施形態は、本来の共触媒だけをさらに用いる。他の実施形態において、本来の共触媒を本来のオレフィン重合触媒を活性化するのに使用し、そして関連共触媒を関連オレフィン重合触媒を活性化するのに使用する。
【0138】
本明細書中での使用のための好適な共触媒には、アルキル・アルミニウムもしくはオリゴマーアルモキサン(別名、アルミノキサン);中性ルイス酸;および非重合の配位イオン形成化合物(酸化条件下でのそういった化合物の使用を含む)が含まれる。好適な活性化技術は、バルク電解(以下にさらに詳細に説明する)である。前記共触媒および技術の1もしくは複数個の組み合わせもまた企図される。「アルキル・アルミニウム」という用語は、モノアルキル・アルミニウム二水素化物またはモノアルキルアルミニウム・ジハロゲン化物、ジアルキル水素化アルミニウムまたはジアルキル・ハロゲン化アルミニウム、あるいはトリアルキルアルミニウムを意味する。アルミノキサンおよびそれらの調製は、例えば米国特許番号第(USPN)US 6,103,657号で知られている。好ましい重合またはオリゴマーアルモキサンの例は、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾されたメチルアルモキサン、イソブチルアルモキサンである。
【0139】
好ましいルイス酸共触媒は、本明細書中に記載したように1〜3個のヒドロカルビル置換基を含む第13族金属化合物である。より好ましい第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)置換されたアルミニウムまたはトリ(ヒドロカルビル)ホウ素化合物であり、より一層好まれているのは、トリ((C1−C10)アルキル)アルミニウムまたはトリ((C6−C18)アリール)ホウ素化合物およびそのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体、そして、より一層特にトリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、さらにより一層特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの態様において、共触媒は、トリス((C1−C20)ヒドロカルビル)ボラート(例えば、トリチル・テトラフルオロボラート)またはトリ((C1−C20)ヒドロカルビル)アンモニウム・テトラ((C1−C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書中で使用される場合、用語「アンモニウム」は、窒素陽イオン、すなわち((C1−C20)ヒドロカルビル)4+、((C1−C20)ヒドロカルビル)3N(H)+、((C1−C20)ヒドロカルビル)2N(H)2+、(C1−C20)ヒドロカルビルN(H)3+、またはN(H)4+を意味し、そこでは、それぞれの(C1−C20)ヒドロカルビルは、同じであっても異なっていてもよい。
【0140】
中性ルイス酸共触媒の好ましい組み合わせには、トリ((C1−C4)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ(C6−C18)アリール)ホウ素化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの組み合わせを含んでなる混合物が含まれる。
そういった中性ルイス酸混合物と重合もしくはオリゴマーアルモキサンの組み合わせ、ならびに単一中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランと重合もしくはオリゴマーアルモキサンの組み合わせもまた、好まれる。(金属−リガンド複合体):(トリス(ペンタフルオロ−フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば(第4族金属−リガンド複合体):(トリス(ペンタフルオロ−フェニルボラン):(アルモキサン)]のモル数の好ましい比は、1:1:1〜1:10:30であり、さらに好ましくは1:1:1.5〜1:5:10である。
【0141】
以前に、以下のUSPNs:US 5,064,802;US 5,153,157;US 5,296,433;US 5,321,106;US 5,350,723;US 5,425,872;US 5,625,087;US 5,721,185;US 5,783,512;US 5,883,204;US 5,919,983;US 6,696,379;およびUS 7,163,907において異なる金属−リガンド複合体に関して、多くの共触媒および活性化技術が教示されている。好適なヒドロカルビルオキシドの例は、US 5,296,433で開示されている。付加重合触媒のための好適なブレンステ酸性塩の例は、US 5,064,802;US 5,919,983;US 5,783,512で開示されている。
カチオン性酸化剤の好適な塩、および付加重合触媒のための共触媒としての非配位性の適合陰イオンの例は、US 5,321,106に開示されている。付加重合触媒のための共触媒としての好適なカルベニウム塩の例は、US 5,350,723に開示されている。付加重合触媒のための共触媒としての好適なシリリウム塩の例は、US 5,625,087に開示されている。アルコール、メルカプタン、シラノール、およびオキシムとトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランの好適な複合体の例は、US 5,296,433に開示されている。これらの触媒のいくつかは、US 6,515,155 B1の一部(50段の39行目から始まり56段の55行目まで)に記載にも記載されている(上記文献のその部分のみを本明細書中に援用する)。
【0142】
いくつかの実施形態において、前記共触媒の1もしくは複数個が、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C1−C4)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C1−C4)ヒドロカルビル)ボラン、またはホウ酸アンモニウムと、オリゴマーまたは重合アルモキサン化合物との混合物である。
【0143】
本来および関連のオレフィン重合触媒の総モル数と、1もしくは複数個の共触媒の総モル数の比は、1:10,000〜100:1である。好ましくは、前記比は、少なくとも1:5000、より好ましくは少なくとも1:1000;10:1以下、より好ましくは1:1以下である。アルモキサンだけが共触媒として使用されるとき、好ましくは、利用されるアルモキサンのモル数は、本来および関連オレフィン重合触媒のモル数の少なくとも100倍である。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランだけが共触媒として使用されるとき、好ましくは、用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数対1もしくは複数個の本来および関連オレフィン重合触媒の総モル数は、0.5:1〜10:1、より好ましくは1:1〜6:1、より一層好ましくは1:1〜5:1である。残りの共触媒は、一般に、1もしくは複数個の本来および関連オレフィン重合触媒の総モル量とほぼ等しいモル量で用いられる。
【0144】
「触媒調製条件」という用語は、独立に、2時間の反応時間後に関連発明方法から、少なくとも10パーセント(%)、より好ましくは少なくとも20%、そしてより一層好ましくは少なくとも30%の触媒の反応収率を得るために好まれる反応条件、例えば(単数もしくは複数の)溶媒、雰囲気、温度、圧力、時間などを指す。好ましくは、関連発明方法は、独立に、不活性雰囲気下(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、またはそのうちのいずれか2種類以上の混合物から本質的に成る不活性ガス下)で実施される。好ましくは、関連発明方法は、非プロトン性溶媒または2種類以上の非プロトン性溶媒の混合物、例えばトルエンを用いて実施される。好ましくは、関連発明方法は、非プロトン性溶媒を含んでなる反応混合物として実施される。反応混合物は、以前に本明細書中に記載したものなどの追加要素を含み得る。好ましくは、関連発明方法は、−20℃〜約200℃の反応混合物の温度にて実施される。いくつかの実施形態において、前記温度は、少なくとも0℃であり、そしてより好ましくは少なくとも20℃である。他の実施形態において、前記温度は、100℃以下、より好ましくは50℃以下、そしてより一層好ましくは40℃以下である。都合の良い温度は、約周囲温度、すなわち、約20℃〜約30℃である。好ましくは、関連発明方法は、独立に雰囲気圧力、すなわち、約1atm(例えば、約95kPa〜約107kPa、101kPaなど)にて実施される。
【0145】
「触媒量」という用語は、接触反応のための触媒のモルパーセント(mol%)を意味すが、接触反応で用いられる生成物を制限する量論的反応物のモル数の100mol%より低く、かつ、形成され、(例えば、質量分析法によって)検出されるべき接触反応の少なくともいくつかに必要な最小限のmol%値と同じかもしくはそれより高い。そこでは、100mol%は、接触反応で用いられる生成物を制限する量論的反応物のモル数と同じである。
【0146】
最小限の触媒量は、好ましくは0.000001mol%であり、そして0.00001mol%、0.0001mol%、0.001mol%、または0.01mol%であってもよい。好ましくは、オレフィン重合触媒の触媒量は、独立に0.00001mol%〜オレフィン単量体またはコモノマーの50mol%である。
【0147】
本発明のポリオレフィン(例えば、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマー)を作製するために適合させることができるポリオレフィンを作製するための一般的な方法は、PCT国際特許出願公開番号第WO 2007/035485 A1号に開示されている。例えば、そういった方法の1つには、分別重合体組成物または特性の2つの領域またはセグメント、特に異なるコモノマー取り込み指数を含む領域、を含んでなるコポリマーを形成するために、1もしくは複数個の付加重合可能な単量体、好ましくは2個以上の付加重合可能な単量体、特にエチレンと少0なくとも1個の共重合可能なコモノマー、プロピレンと4〜20個の炭素を持つ少なくとも1個の共重合可能コモノマー、または4−メチル−1−ペンテンと4〜20個の炭素を持つ少なくとも1個の別個の共重合体コモノマーの重合のための方法を含んでなり、前述の方法は、以下のステップを含んでなる:
【0148】
付加重合可能な単量体または単量体の混合物を、付加重合条件下、好ましくは一定または均質の重合条件下、反応器または反応器ゾーン内で、少なくとも1個のオレフィンが重合触媒と少なくとも1個の共触媒を含んでなり、そして前述の(単数もしくは複数の)単量体からの重合体セグメントの形成を特徴とする組成物と接触させ;
その反応混合物を第2の反応器または反応器ゾーンに移し、そして前述の移動前、それと同時に、またはその後に、1もしくは複数個の追加の反応物、触媒、単量体または他の化合物を任意に加え;そして
前述の第2の反応器または反応器ゾーン内で重合を起こして、ステップ1)で形成された重合体セグメントと区別される重合体セグメントを形成させる。
【0149】
ステップ3)からの得られた重合体分子の少なくともいくつかが2つ以上の化学的または物理的に区別できるブロックまたはセグメントを含んでなるように、連鎖シャトリング剤を、ステップ1)の前、その間、またはその後に反応混合物に追加することを特徴とする前述の方法である。
先に述べたとおり、本発明の多官能性連鎖シャトリング剤の特徴は、少なくとも1個のオレフィンを含むポリメリル鎖が2つ以上のオレフィン重合触媒の間を往復する形で機能することが可能である単一化合物を含んでなるということである。試験として、往復するそういったポリメリル鎖は、好ましくは、ポリ(エチレン・オクテン)ジブロックコポリマーを調製する方法、先に列挙したステップを含んでなる方法、および代表的なオレフィン重合条件(後で本明細書中に記載する)にて操作される、理想的には、100℃、4.5メガパスカル(MPa)のエチレン圧(反応器圧力)、92パーセント超(より好ましくは95パーセント超)のエチレン転換率、および0.01パーセント超のコモノマー(すなわち、1−オクテン)転換率で、炭化水素希釈剤中での定常状態の連続溶液重合条件、を特徴とする。
好ましくは、前記方法は、2つのオレフィン重合触媒を用い、そのうちの1つが触媒(A1)である。ブロックコポリマーを生み出すための全方法はさらに、1つの反応器内で実施されることもできる。
【0150】
本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーのジブロック・バージョンを形成する場合に便利なので、前記方法を記載したが、3つ以上のブロックを持つポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーを調製することが、本発明の追加の目的である。3つ以上のブロックを持つ本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーはさらに、過剰分岐またはデンドリマー共重合体を含む。3つ以上のブロックを持つそういった共重合体は、カップリング試薬が三官能であり多官能性(例えば、二官能性)カップリング試薬を使用することで第2の反応器またはゾーン(またはいずれかのその後の反応器またはゾーン)を出てゆくポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)含有多官能性連鎖シャトリング剤(例えば、式(IVa)の組成物のように)のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)のカップリングによって調製できるが、該カップリング剤は、過剰分岐またはデンドリマー共重合体の調製に関して三官能性以上である。さらに、3つ以上の反応器が利用されるのであれば、3つ以上のブロックを持つ本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーは、2つ以上の反応器内でのリビング重合によらずに作製できるものと共通点があるが、3つ以上のブロックを持つ前者のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーの各ブロックが分子量と組成物の最確分布の特徴を有するが、しかし一方で後者のリビング重合生成物のブロックはそういった特徴を有さないことに違いがある。特に、3つ以上のブロックを持つ本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーの多分散度は、一般に2.4未満であり、そして2つの反応器で作られた生成物については1.5に近似し得る。
【0151】
一般に、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマー重合体の多官能性カップリング剤促進性のカップリングがないとき、平均ブロック数は用いられた反応器の数と等しくなる。ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマー生成物は、通常、重合条件下で用いられた特定の多官能性連鎖シャトリング剤(およびもしあれば、任意に追加の連鎖シャトリング剤)の有効性に依存した従来の重合体量を含む。
【0152】
本発明は、実質的に栓流条件下で稼働する複数の反応器シリーズの少なくとも最初の反応器または複数のゾーン化反応器内の最初の反応器ゾーンから、(例えば、式(IV)または(IVa)の組成物のような)多官能性連鎖シャトリング剤で処理された重合鎖の形態で、重合鎖の大部分が出るような、重合鎖(すなわち、保管)の寿命を延長する方法として多官能性連鎖シャトリング剤を使用する概念に関与し、そして、該重合鎖は次の反応器または重合ゾーン内で異なる重合条件を与えられる。それぞれの反応器またはゾーンの異なる重合条件には、異なる単量体、コモノマー、または単量体/(単数もしくは複数の)コモノマー比、異なる重合温度、様々な単量体の圧力もしくは分圧、異なる触媒、異なる単量体グラジエント、または区別可能な重合体セグメントを形成につながるその他の違いの使用が含まれる。よって、本方法から生じる重合体の少なくとも一部は、2、3、またはそれより多くの、好ましくは2または3の分別された重合体セグメントを含む。
様々な反応器またはゾーンは単一の特異的な重合体組成物よりむしろ重合体の分布を形成するので、得られた生成物には、ランダム共重合体または単分散ブロックコポリマーを超える改善された特性がある。
【0153】
前述のとおり、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーは、オレフィン重合生成条件下で調製される。オレフィン重合生成条件は、独立に、15分間の反応時間後にポリオレフィンまたはポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマーの少なくとも10パーセント(%)、より好ましくは少なくとも20%、そしてより一層好ましくは少なくとも30%の反応収率を得るために好まれる反応条件、例えば(単数もしくは複数の)溶媒、(単数もしくは複数の)雰囲気、(単数もしくは複数の)温度、(単数もしくは複数の)圧力、(単数もしくは複数の)時間などのを指す。好ましくは、重合方法は、独立に不活性雰囲気下(例えば、本質的に、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、またはいずれか2種類以上の混合物から成る不活性ガス下)で実施される。しかしながら、他の雰囲気も企図され、そしてこれらには、(例えば、重合停止剤としての)ガスや水素ガスの形態の犠牲的オレフィンが含まれる。いくつかの態様において、重合方法は、独立に、まったく溶媒なしに実施される、すなわち、それは前述の構成要素から成る混ぜ物を含まない混合物により行われる、混ぜ物を含まない重合方法である。他の態様において、混ぜ物を含まない混合物にはさらに、溶媒以外の追加の構成要素(例えば、トリフェニルホスフィンなどの触媒安定化剤)が含まれる。さらに、他の態様において、重合方法は、独立に、溶媒または2種類以上の溶媒の混合物を用いて実施される、すなわち、それは前述の構成要素および少なくとも1種類の溶媒、例えば非プロトン性溶媒から成る溶媒含有混合物として実施される溶媒ベースの方法である。好ましくは、前記の混ぜ物を含まない重合方法または溶媒ベースの重合方法は、−20℃〜約250℃、より好ましくは−20℃〜約200℃の混ぜ物を含まない混合物または溶媒含有混合物の温度にて実施される。いくつかの実施形態において、温度は、少なくとも30℃、そしてより好ましくは少なくとも40℃である。他の実施形態において、温度は、175℃以下、より好ましくは150℃以下、そしてより一層好ましくは140℃以下である。都合の良い温度は、約60℃または約70℃である。いくつかの態様において、重合方法は、独立に、1平方インチあたり約1000ポンド(psi)以下、すなわち、約70気圧(atm)または7000キロパスカル(kPa)以下の圧力にて実施される。好ましくは、重合方法は、独立に、約0.9atm〜約50atm(すなわち、約91キロパスカル(kPa)〜5000kPa)の圧力下で実施される。都合の良い圧力は、3000kPa〜4900kPaである。
【0154】
いくつかの実施形態において、式(IV)の組成物は、in situにおいて調製されて、次いで先に記載したように、(例えば、ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−もしくはポリイソシアナート形成方法において、または式(IV)もしくは(IVa)の別の組成物を調製するための連鎖シャトリング剤として)その後の方法ステップで使用されるか;またはその後の使用のために保存されるか;またはその後の使用のために単離されて、そして保存される。同様に、いくつかの実施形態において、式(IVa)の組成物は、in situにおいて調製され、次いで、先に記載したように(例えば、ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−またはポリイソシアナート形成方法において)その後の方法ステップで使用されるか;またはその後の使用のために保存されるか;またはその後の使用のために単離され、そして保存される。
【0155】
いくつかの実施形態において、本発明の方法には、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(例えば、式(IV)の組成物)がポリオレフィンを形成するのを停止させるステップを含む。それにより、ポリオレフィンは多官能性連鎖シャトリング剤から放出され、それと同時に該ポリオレフィンに末端官能基が取り付けられたままにする。そういった停止ステップは、例えば(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤を停止剤に接触させて(すなわち、クエンチング)、ポリオレフィン(例えば、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)ブロックコポリマー)を得ることを含む。好ましくは、停止剤には、プロトン源(例えば、水、酸性水性溶液、またはアルコール、例えば2−プロパノールなど)が含まれる。いくつかの実施形態において、停止剤には、安定化剤、例えば抗酸化剤(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(IRGANOX(商標)1010、Ciba Geigy Corporation製))、リン安定化剤(例えば、IRGAFOS(商標)168、Ciba Geigy Corporation製)、またはその両方などがさらに含まれる。
好ましくは、本発明のテレケリック・ポリオレフィンは、第1および第2末端官能基の非統計的分布を有すると特徴づけできる。
【0156】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを末端官能化させて、本発明のテレケリック・ポリオレフィン(例えば、テレケリック・ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー))を形成するステップを含む。そういった末端官能化は、(例えば、カルボアニオンを含む)ポリオレフィン−ポリラジカルの末端の、ビニル、ヒドロキシル、アミン、シラン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アイオノマー、または他の末端官能基への転換を含む。こうした末端官能化は、既知および確立された技術によって実現される。(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを末端官能化するのに好適な化学物質の例は、脱水素、脱水、加水分解、アミノ分解、シリル化、酸化、酸化的エステル化、および(例えばカルボン酸基を−CO2Na部分に変換するための)イオン交換である。
【0157】
式(IV)に関して、M2への(単数もしくは複数の)接着部における式(IV)からの(単数もしくは複数の)X部分の停止に由来の末端官能基は、XがOであるときには、ヒドロキシル基(すなわち、−OH基)であり;XがN((C1−C20)ヒドロカルビル)であるときには、(C1−C20)ヒドロカルビル置換されたアミノ基(すなわち、−NH−(C1−C20)ヒドロカルビル)であり;XがN(H)であるときには、アミノ基(−NH2)であり;XがSであるときには、−SH基であり;XがP(H)であるときには、−PH2基であり;そしてXがP((C1−C20)ヒドロカルビル)であるときには、(C1−C20)ヒドロカルビル置換されたリン基(すなわち、−PH−(C1−C20)ヒドロカルビル)である。M1への(単数もしくは複数の)接合部における式(IV)からの(単数もしくは複数の)ポリオレフィン−ポリラジカル部分の停止に由来する末端官能基のそれぞれは、独立に、ビニル、ヒドロキシル、アミン、シラン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アイオノマー、または他の末端官能基である。好ましくは、本発明のテレケリック・ポリオレフィンには、式(V):T−ポリオレフィン−CH2−RL−(X−H)w(V){式中、wは1または2の整数であり;各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレンであり;そして各Xは、独立に式(I)について規定されたとおりのものである。}のテレケリック・ポリオレフィンが含まれる。従って、式(IV)の組成物の停止は、式−X−Hの少なくとも1つの末端官能基と、式T−{式中、Tは、ビニル、ヒドロキシル、アミン、シラン、カルボン酸、カルボン酸エステル、アイオノマー、または他の末端官能基である。}の少なくとも1つの末端官能基を持つと特徴づけできるテレケリック・ポリオレフィンを生じ、それにより、末端官能基−X−HおよびT−の非統計的分布を有すると特徴づけできるテレケリック・ポリオレフィンの好ましい実施形態を確立する。
【0158】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを停止させて、式(III)の本発明の末端官能性ポリオレフィンを形成するステップを含む。改めて式(IV)に関して、ポリオレフィン−ポリラジカルの末端プロトン化とそれに続く、式(IV)からのX部分の停止により、式(III)の本発明の末端官能性ポリオレフィンを得る。
式(III)の末端官能性ポリオレフィンと式(V)のテレケリック・ポリオレフィンにおいて、好ましくはwは1である。
いくつかの実施形態において、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルは、多官能性カップリング剤の使用によってカップリングされて、新しいジブロック−、トリブロック−もしくはより高度なブロックコポリマーを形成するが、それには過剰分岐およびデンドリマー誘導体が含まれる。
【0159】
好ましくは、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤は、ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−またはポリイソシアナート形成性単量体の重合生成のための、それぞれの本発明の方法において、ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−またはポリイソシアナート形成性単量体と共に利用され、それにより、本発明のポリオレフィン/ポリエステル、ポリエーテル−、ポリアミド−、またはポリイソシアナート多ブロック共重合体(例えば、本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエステル、/ポリエーテル−、/ポリアミド−、または/ポリイソシアナート多ブロック共重合体)を生じる。好ましくは、ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−またはポリイソシアナート形成性単量体には、ヒドロキシ置換されたカルボン酸;ラクトン;オキセタン;オキシラン(すなわちエポキシド);ラクタム;イソシアナート;ジオールと、ジカルボン酸、ジカルボキシル・ジエステル、ジカルボン酸無水物、またはジカルボキシル・ジハロゲン化物のいずれかを含んでなる混合物;あるいはジカルボン酸とエポキシドを含んでなる混合物が含まれる。いくつかの実施形態において、ポリエステル形成性単量体にはラクトンが含まれ、ポリエステル形成条件にはリビングアニオン開環重合が含まれ、そしてポリオレフィン/ポリエステルブロックコポリマーにはポリオレフィン/開環ポリエステル・ブロックコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、前記ラクトンには、ε−カプロラクトンまたは(D,L)−ラクチドが含まれる。いくつかの実施形態において、ポリエーテル形成性単量体にはエポキシド(好ましくはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)が含まれ、ポリエーテル形成条件にはリビングアニオン開環重合が含まれ、そしてポリオレフィン/ポリエーテルブロックコポリマーにはポリオレフィン/開環ポリエーテル・ブロックコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、ポリアミド形成性単量体にはラクタム(好ましくは3−オキソ−2−アジリジニリデン、1−メチル−2−アゼチジノン、N−メチルブチロラクタム、N−メチルバレロラクタム、またはN−メチル−6−カプロラクタム)が含まれ、ポリアミド形成条件にはリビングアニオン開環重合が含まれ、そしてポリオレフィン/ポリアミド・ブロックコポリマーにはポリオレフィン/開環ポリアミド・ブロックコポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、ポリイソシアナート形成性単量体にはイソシアナート(好ましくはフェニルイソシアナート、トルエンジイソシアナートまたはメチレンジイソシアナート)が含まれ、ポリイソシアナート形成条件にはリビングアニオン重合が含まれ、そしてポリオレフィン/ポリイソシアナート・ブロックコポリマーにはがポリオレフィン・ポリイソシアナート・ブロックコポリマーが含まれる。
【0160】
本発明のポリオレフィン/ポリエステル、ポリオレフィン/ポリエーテル、またはポリオレフィン/ポリアミド多ブロック共重合体のポリエステル、ポリエーテル、またはポリアミド部分を作製するためのポリエステル−、ポリエーテル−、またはポリアミド形成性単量体の重合生成の当該リビングアニオン開環重合ステップが、前述の非オレフィン重合反応の例である。
【0161】
当該ブロック共重合体は、結合して単一の共重合体を形成する2つ以上のブロックまたはセグメントを含んでなり、そして各ブロックまたはセグメントは、(分子量または分子量分布を除いて)化学的または物理的に隣接するブロックまたはセグメントと区別でき、得られたブロック共重合体は、同じ総化学的組成のランダム共重合体と比較して、独特な物理的および化学的特性を有する。いくつかの態様において、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)は、3個以上のブロックまたはセグメントを含み、そのため、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエステル、/ポリエーテル、/ポリアミド、および/ポリイソシアナート多ブロック共重合体が、重合体分子あたり合計4つ以上のブロックまたはセグメントを含む。好ましくは、そのポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)部分は、4つ以上のブロックまたはセグメントを含み、そのため、それぞれの当該ブロックはそれぞれ重合体分子あたり合計5つ以上のブロックまたはセグメントを含む。
【0162】
いくつかの実施形態において、本発明のポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエステル、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエーテル、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリアミド、またはポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリイソシアナート多ブロック共重合体は、高度な多分散度(例えば、3より大きなPDI)を有すると特徴づけできる。いくつかの実施形態において、そのポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)部分は、メソフェーズ分離オレフィン多ブロック共重合体に由来し、かつ、そのメソフェーズ分離特性を有すると特徴づけできる。
【0163】
第13の実施形態のいくつかの態様において、前記方法は、以下のステップ:
多官能性連鎖シャトリング剤の実施形態のいずれか(特に請求項1〜8のいずれか1項から請求項13の後半に間接的に組み込まれた実施形態のいずれか)を含む(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤を含んでなる構成要素を、それぞれポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−、またはポリイソシアナート形成性単量体と一緒に接触させ、を含んでなり;その接触ステップが、ポリエステル−、ポリエーテル−、ポリアミド−、またはポリイソシアナート形成条件下で実施され、それにより、それぞれポリオレフィン/ポリエステル多ブロック共重合体、ポリオレフィン/ポリエーテル多ブロック共重合体、ポリオレフィン/ポリアミド多ブロック共重合体、またはポリオレフィン/ポリイソシアナート多ブロック共重合体を調製する。
【0164】
本発明の物品には、キャスト法、ブロー法、カレンダー法または押し出しコート法によって調製される少なくとも1種類のフィルム層、例えば単層フィルムもしくは多層フィルム中の少なくとも1種類の層を含む物;成形品、例えばブロー成形品、射出成形品、もしくは回転成形品;繊維;および織物もしくは不織布が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の物品には、他の天然または合成ポリマーと、添加物、補強剤、耐着火性添加物、抗酸化剤、安定化剤、着色料、増量剤、架橋剤、発泡剤、および可塑剤とのブレンドを含む本発明の重合体を含む熱可塑性組成物から形成される。
【0165】
好ましくは、本発明の物品は、天然の、好ましくは合成の滑沢剤を含んでなる。より好ましくは、本発明の物品には、衛生適用のための(例えばおむつカバーのための)弾性フィルム;電化製品、道具、消費財(例えば歯ブラシの柄)、スポーツ用品、建築物および構造物を含めた軟性成形製品、自動車部品、または医療用部品(例えばデバイス);軟性ガスケット(例えば冷蔵庫のドアのガスケット);軟性輪郭;接着剤(例えば包装、テープ、またはラベル用);または発泡材(例えばスポーツ用品、包装、消費財、自動車の詰め物、もしくは発泡材のマット)が含まれる。より一層好ましくは、本発明の物品には、フォトニック材料、バリヤフィルム、分離膜(別名、微細多孔性フィルム)、相溶化剤、または電池用セパレーターが含まれる。
【0166】
「フォトニック材料」という用語は、屈折率が交替する周期的相分離メソドメインであって、UV−可視スペクトルにおいてフォトニック・バンド・ギャップを生じさせるサイズの該ドメインを有することを特徴とする物質、例えば米国特許番号第6,433,931号で開示されているものなどを意味する。フォトニック材料の例は、フォトニック結晶、フォトニック・バンド・ギャップ材料、および弾性光干渉フィルムである。フォトニック材料は、特に赤外、可視、または紫外波長における電磁放射線の反射率、透過、またはその両方を必要とする適用に有用である。そういった適用の例は、偽造防止用途、セキュリティー・フィルム、マイクロタガント、ディスプレイ・フィルム、および光学フィルター(例えばバックライト・ディスプレイ)である。
【0167】
バリヤフィルムの例は、靴の中の空気袋(例えばスポーツシューズ)や包装(例えば食品包装)である。分離膜の例は、ガス分離膜、透析/血液透析膜、逆浸透膜、限外濾過膜、および微細孔膜を含めた膜濾過器である。これらのタイプの膜が適用可能であり得る分野は、分析用途、飲料、化学薬品、エレクトロニクス、環境用途、および医薬品が挙げられる。
【0168】
加えて、微細孔高分子膜は、電池用セパレーターとして使用できる。物品に電池用セパレーターが含まれる場合、それを含む当該ブロック共重合体が、微細孔高分子膜の形態であることが好ましい。そういった微細孔高分子膜は、製造の容易さ、化学的不活性、および熱特性のため、電池用セパレーターとして有利に使用される。電池用セパレーターの主要な役割は、イオンに電極間を通行させるが、イオンが電極と接触しないようにすることである。したがって、当該ブロック共重合体を含んでなる微細孔高分子膜は、そこに穴があくのを抑制するかまたは予防するのが好ましい。また、リチウムイオン電池での使用において、微細孔高分子膜は、その電池の熱暴走を予防するために一定の温度で閉鎖(イオン伝導を停止)しなければならない。好ましくは、電池用セパレーターに使用される当該ブロック共重合体は、より薄いかまたはより多孔性の電池用セパレーター、またはその組み合わせを可能にするために大きな温度領域にわたって高い強力を有していなければならない。また、リチウムイオン電池については、より低い閉鎖温度が望ましいが、その微細孔高分子膜は閉鎖後も機械的強度を維持していなければならない。加えて、微細孔高分子膜は、高温にて寸法安定性を維持することが望ましい。
【0169】
本発明の微細孔高分子膜は、これだけに限定されるものではないが、以下の特許および特許公報に記載の方法または用途のいずれかにおいて使用することができる:WO 2005/001956 A2;WO 2003/100954 A2;米国特許番号第6,586,138号;米国特許番号第6,524,742号;US 2006/0188786;US 2006/0177643;米国特許番号第6,749、k961号;米国特許番号第6,372,379号およびWO 2000/34384 A1。好ましくは、フォトニック材料、バリヤフィルム、分離膜、相溶化剤、または電池用セパレーターは、メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体、またはメソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体に由来すると特徴づけでき、かつ、そのメソフェーズ分離特性を有する、ポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエステル、/ポリエーテル、/ポリアミド、もしくは/ポリイソシアナート多ブロック共重合体を含むか、またはそれから調製される。多孔構造の製造のために好適な方法と中間多孔性材料を形成するためのブロックコポリマー鋳型を使用したパターン形成方法が、米国特許番号第7,517,466 B2号に記載されている。フォトニック材料または電池用セパレーターにおける使用のためかまたはその調製のために、メソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体、またはポリ(オレフィン単量体−オレフィン・コモノマー)/ポリエステル、/ポリエーテル、/ポリアミド、または/ポリイソシアナート多ブロック共重合体の少なくともメソフェーズ分離したオレフィン多ブロック共重合体部分のそれぞれは、独立に100nm超のサイズの;1moleあたり500,000グラム未満の平均分子量の重量の;またはその両方がより好ましい少なくとも2つのドメインを持つと特徴づけできる。当該ブロック共重合体によってもたらされるメソフェーズ分離構造は、微細孔高分子膜を形成するための先行技術を超えるいくつかの改善を提供する。それらの秩序化形態は、孔サイズとチャンネル構造に対するより大きな制御度をもたらす結果となる。前記相分離溶融形態は、その溶融物におけるフィルム収縮も制限し、そのため、非相分離材料より大きな融解安定性を付与する。
【0170】
材料と方法
すべての溶媒および試薬は、別段の指示がない限り、市販用の供給元から入手し、そして一般的に認められているように使用した。ヘキサン溶媒は、活性アルミナのカラムを通し、続いてアルミナ上のQ5酸化銅のカラムを通すことによって精製する(Cu-0226SはEngelhard(BASF Corporationの子会社)から入手した)。テトラヒドロフラン(THF)およびジエチルエーテルを、活性アルミナのカラムを通して精製する。すべての金属複合物は、乾燥窒素雰囲気下のVacuum Atmospheres不活性雰囲気グローブボックス内で合成および保存する。NMRスペクトルは、300メガヘルツ(MHz)Varian INOVA分光計により記録する。テトラメチルシランに対する百万分率(δ)単位の、そして重水素化溶媒中の残留プロトンを参照したケミカルシフトを報告する。
【0171】
赤外線の(IR)分光法によって1−オクテンのパーセントの取り込みおよびポリマ濃度を測定する:シリカ・ウエハー上に1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中の各重合体水溶液140マイクロリットル(μL)を乗せ、TCBが蒸発するまで140℃にて加熱し、そしてAutoPro自動サンプラーを備えた7.1バージョンのソフトウェアの入ったNicolet Nexus 670FTIRを使用して解析する。
【0172】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC):
重量である平均分子量(MW)と多分散度指数を測定する:Polymer Labs(商標)210高温ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して分子量とMW/Mnの比(多分散度指数またはPDI)を測定する。
16mLの1,2,4−トリクロロベンゼン(ブチルヒドロキシトルエン(BHT)で安定化された)で希釈したポリエチレン重合体13mgを使用してサンプルを調製し、加熱し、そして160℃にて2時間振盪する。
【0173】
標準的なDSC法:
DSC 2910装置(TA Instruments, Inc.)を使用して、示差走査熱量測定によって融解および結晶化温度、ならびに融解熱を測定する:窒素パージガス下、まず、1分あたり10℃の加熱速度にて室温から180℃にサンプルを加熱する。この温度にて2〜4分間維持し、1分あたり10℃の冷却速度にて−40℃までサンプルを冷却し;サンプルを冷温にて2〜4分間維持し、次いでサンプルを160℃まで加熱する。
【0174】
Varian600MHz NMR装置と重水素化テトラクロルエタンを使用したプロトン−核磁気共鳴(1H−NMR)分光法によって末端基を分析する。
略語(意味):r.t.およびRT(室温);g(グラム);mL(ミリリットル);℃(摂氏温度);mmol(ミリモル);MHz(メガヘルツ);Hz(ヘルツ)。
【実施例】
【0175】
以下の実施例を、本発明の更なる例証のために提供するが、本発明の範囲を制限するものではない。
実施例1:多官能性(二官能性)連鎖シャトリング剤(1)の合成
【化46】

窒素をパージしたグローブボックス内に反応を準備し、そして実施する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コートした撹拌子を入れたガラスジャーにトリイソブチルアルミニウム(3.4g、17mmol)を秤量し、そして20mLのヘキサン中に溶解する。5−ヘキセン−1−オール(2.0mL、17mmol)を小さいガラスバイアル内にに秤量し、そして5mLのヘキサン中に溶解する。両方の溶液を−40℃の冷凍庫内に置く。溶液を取り除き、そして撹拌しながら半分の5−ヘキセン−1−オール溶液をトリイソブチルアルミニウム溶液に滴下して加える。約半分の5−ヘキセン−1−オール溶液を加えた後に、溶液を冷凍庫内に戻して−40℃まで再び冷やす。約10分後に溶液を取り除き、5−ヘキセンlオール溶液の残りを撹拌している反応液に滴下して加える。得られた組み合わせ溶液を室温(RT)にて2時間撹拌する。組み合わせ溶液を減圧下に置いて、溶媒を取り除く。1H−NMRおよび13C−NMR分光法(C66)によって得られた中間体(3.68g、15mmol)を分析する。中間体を10mLのトルエン中に溶解する。得られたトルエン混合物に水素化ジイソブチルアルミニウム(2.18g、15.3mmol)を加える。得られた混合物を、アルミ製ヒーティング・ブロックの中で50℃にて一晩撹拌する。得られた無色の溶液を減圧下に置いて、トルエンを取り除く。得られた粘稠の液体生成物は、d6−ベンゼン(C66)中に溶けない。d8−THF中で1H−NMRスペクトルを採取する:スペクトルの中のオレフィン・ピークを観察し;約17重量%のサンプルがオレフィンであるとNMRによって推定される。生成物(4.23g)の大部分を別のガラスジャーに移し、そしてトルエン(10mL)中にそれを溶解する。水素化ジイソブチルアルミニウム(0.47g)を加える。得られた溶液をPTFEコート撹拌子で50℃にて一晩撹拌する。減圧下で溶媒を取り除き、そして得られた最終生成物を別のジャーに移す。最終生成物をd8−THF中でNMRによって分析する;NMRスペクトルは(1)と一致している。
【0176】
実施例2:多官能性連鎖シャトリング剤(2)の合成
【化47】

窒素をパージしたグローブボックス内に反応を準備し、そして実施する。PTFEコートした撹拌子を入れたガラスジャーにトリイソブチルアルミニウム(3.47g)を秤量し、トルエン(20mL)中に溶解する。アリルアルコール(1.0g)を小さいガラスバイアルに秤量し、トルエン(10mL)中に溶解する。PTFEで内側をコートしたキャップで両方の溶液に封をし、それらを−40℃にて10分間冷凍庫内に置く。溶液を冷凍庫から取り出し、そして撹拌しながらアルミニウム溶液にアルコール水溶液をゆっくり加える。アルコール水溶液の約半分を加えた後に、溶液を冷凍庫内で−40℃まで再び冷却する。冷凍庫から溶液を取り出し、アルコールの残りをゆっくり加える。混合物を室温(RT)にて約2時間撹拌する。溶液を減圧下に置いて、溶媒を取り除き、無色の液体(3.18g、FW182、28)を得る。d−ベンゼン中で液体のプロトンNMRスペクトルを採取する:そのスペクトルは、所望の中間体が存在していることを示している。(単離した生成物に対して)1モル当量の水素化ジイソブチルアルミニウムを液体に加える。得られた溶液をアルミ製ヒーティング・ブロックの中で60℃まで撹拌および加熱し、そして合計8時間撹拌する。1H‐NMRスペクトルは、4時間および8時間後に反応が完了していないことを示している。溶液を軽く封をしただけで(イソブチレンの損失を考慮する)75℃にて一晩撹拌する。液体を減圧下に置く:イソブチレンの損失による可能性がある少量のガスが溶液から出て来る。残っている液体のNMRスペクトルを採取する:複数の架橋種の形成と一致した非常に乱雑なスペクトルにもかかわらず、ビニル基の大部分が変換された。液体をバイアルに移す:3.48g。液体のサンプルを小さいバイアルに移し、そして重水素化塩化メチレン中に溶解する。重水素化メタノールを加える:激しい反応と著しい白色の固体を観察する。溶液を1時間以上撹拌する。溶液をより多くの重水素化塩化メチレンで希釈し、そして0.45ミクロンの使い捨てPTFEシリンジ・フリットを通して濾過する。1Hおよび13C−NMRスペクトルを採取する:スペクトルは、CH2DCH2CH2ODおよびCH2D−CH(CH32の存在と一致している。この結果は(2)を含む液体と一致している。
【0177】
実施例3:(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(3)を得るための、多官能性連鎖シャトリング剤(1)を用いた1−オクテンの重合
【化48】

窒素をパージしたグローブボックス内に反応を準備し、そして実施する。実施例1の多官能性連鎖シャトリング剤(1)(0.31g)を、PTFEコートした撹拌子を入れたガラスジャーに秤量し、そして1−オクテン(22.4g)を加える。多官能性連鎖シャトリング剤(1)は1−オクテン中で白色の固体になる。トルエン(40mL)を加える。得られた混合物を45℃に加熱して、多官能性連鎖シャトリング剤(1)の大部分を溶解する。重合反応にそれらを加える約5分前に、先に示した触媒(A1)の溶液(トルエン中の0.005M溶液、0.20mL)と、共触媒の溶液(共触媒=ビス(オクタデシル)メチルアンモニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート[HNMe(C18372][B(C654]、BOMATPBと略記)(0.22mLの0.005M溶液)を組み合わせることによって触媒液を形成する。触媒液を重合反応に加えて、反応混合物を得る。反応混合物中に熱電対を置いて、温度を観察する。温度は安定化の30分前に約58℃まで上がる。溶液は粘稠になる。温度の上昇が止まった時点で、反応混合物をアルミ製ヒーティング・ブロックから外し、そして冷凍庫内において−40℃に冷やす。減圧下で反応混合物から溶媒を取り除き、そして(3)を含む得られた反応生成物を減圧下で60℃にて一晩維持する。d8−トルエン中で反応生成物サンプルの1Hおよび13C−NMRスペクトルを採取する:スペクトルが(3)と一致していることを観察する。
【0178】
実施例4:多官能性連鎖シャトリング剤(1)を用いたD,L−ラクチドの重合
【化49】

1日目.N2グローブボックス内で、撹拌子および0.249gのイニシエーターを入れた20mLのバイアルに5mLのトルエンを加えるが、該イニシエーターは実施例1の多官能性連鎖シャトリング剤(1)である。そのイニシエーターは室温では完全には溶解しない。2.38gのD,L−ラクチドをバイアルに加え、続いて11mLのトルエンを加える。
反応混合物にふたをし、そして熱電対、熱制御型グローブボックスを使用してそれを70℃まで加熱する。(午前10時30分に加熱をはじめ、そして温度は午前10時40分に70℃に達する。)反応物を70℃にて一晩撹拌する。
【0179】
2日目.午前8時の時点で、反応混合物で撹拌が停止していたことを観察する。バイアル・キャップを外し、そしてセプタムと置き換える。グローブボックスからバイアルを取り出し、そしてそれを約0.3mLの1M HCl溶液でクエンチする。CDCl3中のサンプルのNMRスペクトルを採取する。反応混合物を約50mLのメタノールの入ったフラスコに移す。濁った混合物をドライアイス/アセトン浴を使用して冷やす。濁った溶液から得られた粘稠の重合体をすくい出し、そしてそれを小さいバイアルに入れた。N2ガスを一晩サンプルに吹きかけて、溶媒を取り除き、最終重合生成物を得た。
【0180】
3日目.CDCl3中の最終重合生成物の1H‐NMRスペクトルを採取する。スペクトルは、ポリ(D,L−ラクチド)を含んでなる最終重合生成物と一致している。
【0181】
実施例5:ポリ(オクテン−(D,L)−ラクチド)ジブロックコポリマーの調製
【化50】

多官能性連鎖シャトリング剤(1)を使用する代わりに(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(3)を使用することを除いて、実施例4の手順を繰り返して、ポリ(オクテン−(D,L)−ラクチド)ジブロックコポリマーを得る。ポリ(オクテン−(D,L)−ラクチド)ジブロックコポリマーは、ポリオクテンブロックとポリ((D,L)−ラクチド)ブロックを持つと特徴づけられるでの、ポリオクテンブロックとポリ((D,L)−ラクチド)ブロックの酸素結合を遮断する。
【0182】
実施例6a:テレケリック・ポリオクテンの調製
【化51】

(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(3)を、脱水素条件に接触させ(例えば、R2Alの、過剰なアルファ−オレフィン、例えばIsopar E中のイソブチレンなどでの置き換え)、続いて酸性化処理に接触させて、(ビニルおよびヒドロキシル末端官能基を例示するように描かれている)テレケリック・ポリオクテン(4)を得る。
【0183】
実施例6b:テレケリック・ポリオクテンの調製
【化52】

トルエン中の(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(3)懸濁液を、60℃にて1.5時間、酸素流と接触させる(前例に関してBurfield, Polymer 1984;25:1817-1822を参照のこと)。反応が完了した後に、反応をメタノール中のHClの添加によってクエンチし、そしてテレケリック・ポリオクテン(4)を得る。
【0184】
実施例7:多官能性連鎖シャトリング剤(5)の合成
【化53】

ここに記載したことを除いて、実施例1の手順を繰り返す。ヘキサンの代わりにトルエン(30mL)を使用して、トリイソブチルアルミニウム(10.9g)を溶解し;5−ヘキセン−1−オールの代わりに2,7−オクタジエン−1−オール(8.0mL)を使用し;ヘキサンの代わりにトルエン(10mL)を使用して、2,7−オクタジエン−1−オールを溶解し;中間体のジイソブチルアルミニウム2,7−オクタジエン−1−オキシド(14.3g)を得、そして1H−NMR分光法(C66)によってその中間体を分析する。(注意事項、トルエン中のトリイソブチルアルミニウム溶液へのトルエン中の2,7−オクタジエン−1−オール溶液の添加中にガスは激しく放出される。)混ぜ物を含まない水素化ジイソブチルアルミニウム(3.8g、1.05mole当量)を中間体の一部(6.76g)に加え、そして得られた混合物を60℃にて6時間加熱する。1H−NMR分光法(d8−THF)は末端オレフィン官能基の不完全な転換を示す。追加の混ぜ物を含まない水素化ジイソブチルアルミニウム(0.4mL)を加え、そして60℃にて一晩撹拌する。ヘキサンを加えて、無色の溶液を得る。減圧下でヘキサンを取り除いて、無色のオイルを得る。1.1g部分を取り出し、残りを取っておく。得られた無色のオイルの溶解性を測定する:無色のオイルの1.1g部分に5mLのヘキサンを加える;混合する;0.3gの固体から成る底のゲルを分離する;1.1g部分の残りはヘキサン中に溶解したままである。無色のオイルの残りを150mLのガラスジャーに入れ、そして1−オクテン(5mL)をそれに加えて、余分な水素化アルミニウム種を消費する。ジャーに封をし、そしてアルミ製ヒーティング・ブロックの中で75℃にて3時間撹拌し、次いで室温にて一晩撹拌する。残った1−オクテンを減圧下で24時間以上取り除いて、無色のオイルとして多官能性連鎖シャトリング剤(5)を得た(6.1g);1H−NMR分光法(d8−THF)は(5)と一致している。
【0185】
実施例8:(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(6)を得るための多官能性連鎖シャトリング剤(5)を用いた1−オクテンの重合
【化54】

多官能性連鎖シャトリング剤(1)の代わりに実施例7の多官能性連鎖シャトリング剤(5)を使用したことを除いて、実施例3の手順を繰り返して、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(6)を得る。
【0186】
実施例9:多官能性連鎖シャトリング剤(5a)の合成
【化55】

実施例7のものと類似した手順において、窒素をパージしたグローブボックス内で反応は準備し、そして実施する。中間体のジイソブチルアルミニウム2,7−オクタジエン−1−オキシド(10.0g、37.5mmol、実施例7のように調製した)を、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)コートした撹拌子を入れたガラスジャーに秤量する。これに水素化ジイソブチルアルミニウム(5.4g、37.5mmol)を撹拌しながら室温(RT)にて加える。ガラスジャーに封をし、そして得られた混合物を60℃にて6時間撹拌する。撹拌した混合物の1H−NMR分光法は、有意量の反応を起こしていないビニル基がまだ存在していることを示している。別の80mgの水素化ジイソブチルアルミニウムを加え、そして新しい混合物50℃にて一晩を撹拌する。1−オクテン(20mL)を新しい撹拌した混合物に加え、そして得られた溶液を、その溶液上に還流冷却器を伴って100℃にて4時間撹拌する。減圧下で揮発物を取り除き、そして、残留生産物を1H−NMR分光法(d8−THF)によって分析する。1H−NMRデータは、多官能性連鎖シャトリング剤(5a)と一致し、そして中間体のジイソブチルアルミニウム2,7−オクタジエン−1−オキシド中の1のアルミニウムにつき約1のイソブチル−Al基が(5a)に示したn−オクチルAl基に転換されることを示している。
【0187】
実施例10:(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(6a)を得るための多官能性連鎖シャトリング剤(5a)を用いた1−オクテンの重合
【化56】

窒素をパージしたグローブボックス内に反応を準備し、そして実施する。多官能性連鎖シャトリング剤(5a)(1.5g、約3.0mmol、実施例9)をPTFEコートした撹拌子を入れた120mLのガラスジャー内に秤量する。ジエチル亜鉛(0.10g、0.75mmol)を加え、そして得られた混合物を25mLのトルエンで希釈する。1−オクテン(3mL、19mmol)を得られた溶液に撹拌しながら加える。撹拌した溶液を60℃に設定した(ガラスジャーへの)外付けのアルミ製加熱ブロックの中に置き、熱電対プローブを用いて溶液の内部温度を観察する。別個に、小さいガラスバイアルの中で、触媒(A1)(トルエン中の0.005M溶液、0.3mL)をBOMATPB(トルエン中の0.005M溶液、0.36mL)と組み合わせる。バイアル中の得られた内容物を溶液に加え、反応液を得る。追加の1−オクテンを反応液に10分ごとに3mLの速度で加える。30分後には、顕著な発熱は認められず、触媒(A1)とBOMATPB(従来のように調製)の新しい溶液の反応液への2つの別個の添加をそのように行う(全体的に加えられる総触媒量:4.5μmolの触媒(A1)および5.4μmolのBOMATPB)。得られた反応液の温度を67℃に上げる。外付けアルミ製ヒーティング・ブロックの温度を下げることによって、67℃未満の温度を維持する。全体として27mL(173mmol)の1−オクテン総量まで、10分ごとに約3mLの速度にて追加の1−オクテンを加える。これで、in situにおいて(ポリオクテン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(6a)を調製する。それにメタノールを加えることによって反応をクエンチする。得られたメタノール含有混合物を60℃にて4時間撹拌して、すべてのアルキルアルミニウム化合物を完全にクエンチする。減圧下で溶媒(トルエン、メタノール、余分な1−オクテン)を取り除き、そして得られた残渣を減圧下で60℃にて一晩乾燥させて、11.8gの初期バッチ(ポリオクテン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤(6a)を得る。初期バッチ(6a)の分子量をViscotekゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置により分析する:Mnは2,446g/molであり、PDIは3.63である。多官能性連鎖シャトリング剤(5a)およびジエチル亜鉛を欠いていることを除いた同一反応条件下で、ポリオクテンの天然のMnが141,000g/mol超なので、分子量データから、AlとZnの両方が(触媒(A1)およびBOMATPBから調製した)触媒を用いた前記反応中に鎖を移動していると結論づけられる。
【0188】
初期バッチ(6a)の溶剤処理.初期バッチ(6a)を少量のトルエン中に溶解し、そして60mLのメタノールを加える。得られた混合物を60℃にて2時間撹拌する。得られた液体を固体から抜き、そして、熱メタノールで固体を洗浄する。洗浄した固体を減圧下で100℃にて一晩乾燥させて、溶媒処理した(6a)を得る。溶媒処理した(6a)を1H−NMR分光法(CDCl3)によって分析する。末端アルコキシ−Al基が4.1ppmで存在しおり、274オクチレン単量体単位あたり1つの末端アルコキシ−Al基の割合で存在している(CH3側鎖の組込みによって測定される)。溶媒処理した(6a)をViscotek GPCによって以前のとおり分析する。溶媒処理した(6a)についてMnが5,060g/molそしてPDIが1.86であると決定する。溶媒処理した(6a)の分子量分布は、約1000(1030)ダルトン未満の鋭いカットオフを示す。初期バッチ(6a)中の低分子量の重合体成分は、溶剤処理によって取り除かれたと思われる。1H−NMRスペクトルと分子量データから、溶媒処理した(6a)の16mol%の重合鎖がアルコキシ−Al基によって終結していると推定される。
【0189】
実施例によって示されたとおり、本発明の多官能性連鎖シャトリング剤は、少なくとも2つの互いに両立でき、その上異なる機能活性を有すると特徴づけできる。機能活性の1つには、連鎖シャトリング機能が含まれる。機能活性のもう1つには、保護/重合開始機能が含まれる。それには、保護基機能もしくはいくつかの実施形態において、重合開始機能が含まれるか、またはいくつかの実施形態において、その両方が含まれる。多官能性連鎖シャトリング剤は、少なくとも2つの含金属の異なる官能性部分を単一化合物または分子内に組み込む。往復する連鎖シャトリングのために用いられる含金属官能基は、重合開始または基保護のために用いられた含金属官能基の存在下で首尾よく連鎖シャトリング機能活性を実現する。本発明は、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを末端官能化するために提供するか、または鎖シャトリングのために用いられた含金属官能基の存在下で重合を開始する機能活性のために重要性を持つ。これまで潜在的な競合官能基および活性であると考えられてきたものの間でのそういった相互互換性は、両親媒性ジブロックおよび多ブロックコポリマーを作る際に、特に連続重合方法において特に貴重である。
【0190】
本発明を、その好ましい態様または実施形態によってここまで説明してきたが、それをこの開示の要旨と範囲の中で修飾することができる。そのため、本出願は、本明細書中に開示された一般原理を使用した本発明のあらゆるバリエーション、用途、または適応にまで及ぶものとする。さらに、本出願は、当該発明が関係し、そして以下の請求項の制限の範囲内にある当該技術分野で既知または慣例になるような本開示からの逸脱にも及ぶものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一化合物を含む多官能性連鎖シャトリング剤であって、少なくとも1本のオレフィン含有ポリメリル鎖が、2個以上の触媒部位を持つオレフィン重合触媒の2個以上の触媒部位の間または2個以上のオレフィン重合触媒の間を往復できるような形で機能でき、かつ、独立に以下の:(a)非オレフィン重合反応を、該多官能性連鎖シャトリング剤によって開始できるか;(b)該多官能性連鎖シャトリング剤の官能基が、連鎖シャトリング中に保護基で保護され、その後オレフィン含有ポリメリル鎖内に組み込まれることを特徴とできるか;または(c)オレフィン含有ポリメリル鎖に官能基が組み込まれた後に、該官能基によって非オレフィン重合反応を開始できるか、のいずれかとして特徴づけできる前記多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項2】
連鎖シャトリングが可能である1もしくは複数個の部分、保護または重合開始が可能である1もしくは複数個の部分、および少なくとも1個の多価連結基を持つ化合物を含む多官能性連鎖シャトリング剤であって;該連鎖シャトリング部分が、保護/重合開始部分とは異なり、各鎖シャトリング部分と重合開始部分のそれぞれが、独立に金属カチオンを含んでなり、そして該金属カチオンの各金属が、独立にスズであるか、または元素周期表の第2、12、および13族のいずれかのうちの金属であり;それぞれの多価連結基が、独立に2〜20個の炭素原子;0、1、または2個の炭素−炭素二重結合;および1〜4個のヘテロ原子を含んでなり、そして各ヘテロ原子が、独立に酸素原子、硫黄原子、水素置換された窒素原子、ヒドロカルビル置換された窒素原子、水素置換されたリン原子、またはヒドロカルビル置換されたリン原子のいずれかであり;連鎖シャトリング部分の各金属カチオンが、独立に同じ多価連結基の異なった炭素原子に、または異なった多価連結基の炭素原子に結合し、そして重合開始部分の各金属カチオンが、独立に同じ多価連結基の異なったヘテロ原子に、または異なった多価連結基のヘテロ原子に結合し、その結果、該金属カチオンが少なくとも1個の多価連結基によって互いに間隔を置いている前記多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項3】
以下の式(I):
【化1】

{式中:
mは、1、2、3、または4の整数であり;rは、1または2の整数であり;tは、1または2の整数であり;n、p、q、およびsのそれぞれは、1の整数であり、そしてrが1であるとき、各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンもしくは(C2−C19)アルケニレンであるか;または(a)rが1であり、かつ、tが2であるか、もしくは(b)rが2であり、かつ、tが1であるか、もしくは(c)mとsのそれぞれが2であり、かつ、rとtのそれぞれが1であるとき、各RLは、独立に(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであるか;あるいは
nは、1、2、または3の整数であり;sは、1または2の整数であり;pは、1または2の整数であり;m、q、r、およびtのそれぞれは、1の整数であり;そしてsとpがそれぞれ1であるとき、各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンもしくは(C2−C19)アルケニレンであるか;または(a)sが1であり、かつ、pが2であるか、もしくは(b)sが2であり、かつ、pが1であるとき、各RLは、独立に(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであるか;あるいは
qは、2または3の整数であり;m、n、p、r、s、およびtのそれぞれが、1の整数であり;そして各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C1−C19)アルケニレンであるか;あるいは
m、n、およびqのそれぞれは、1の整数であり;p、r、s、およびtのそれぞれは、1または2の整数であり;そしてRLは、(C3−C19)アルカンもしくは(C3−C19))アルケンの4価ラジカルであり、ここで、rとtの一方が1であり、rとtのもう一方が2であり、かつ、pとsの一方が1であり、pとsのもう一方が2であり;
yは、0、1、または2の整数であり、かつ、[y+(n×q×r)の乗法の結果]の合計がM1の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ、すなわち、(M1の形式的酸化状態)=y+(n・q・r);
zは、0、1、2、または3の整数であり、かつ、[z+(m×q×s)の乗法の結果]の合計がM1の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ、すなわち、(M1の形式的酸化状態)=z+(m・q・s);
各Xは、独立にO、S、N(H)、N((C1−C20)ヒドロカルビル)、P(H)、P((C1−C20)ヒドロカルビル)であり;
各M1は、元素周期表の第2、12、または13族金属であるが、第2または12族金属が+3の形式的酸化状態であり、第13族金属が+2の形式的酸化状態であり;
各M2は、スズ、または元素周期表の第12または13族金属であるが、第12族金属が+2の形式的酸化状態であり、第13族金属が+3の形式的酸化状態であり、そしてスズが+2または+4の形式的酸化状態であり;
各R1は、独立に(C1−C20)ヒドロカルビルであるか;またはyが2であるとき、1つのR1は(C1−C20)ヒドロカルビルであり、かつ、1つのR1はR3N(H)−、(R32N−、R3P(H)−、(R32P−、R3S−、または、R3O−であるか、または2つのR1は一緒になって(C2−C20)ヒドロカルビレンを形成し;かつ
各R2は、独立に水素、(C1−C20)ヒドロカルビルもしくは−D−(C1−C20)ヒドロカルビルであるか;またはzが2または3であるとき、2つのR2は一緒になって(C2−C20)ヒドロカルビレンを形成し;
各Dは、−D−(C1−C20)ヒドロカルビルに示されているように、独立に−C(=O)−、−C(=O)−O−、O−C(=O)−、−C(=O)−N((C1−C6)ヒドロカルビル)−、−N((C1−C6)ヒドロカルビル)−C(=O)−、−S(=O)−、−(=O)2−、またはSi((C1−C20)ヒドロカルビル)2−であり;
各R3は、独立に(C1−C20)ヒドロカルビルまたは((C1−C20)ヒドロカルビル)3Si−であり;
前述の(C1−C19)アルキレン、(C2−C19)アルケニレン、(C3−C19)アルカン、(C3−C19)アルケン、(C1−C20)ヒドロカルビル、および(C2−C20)ヒドロカルビレンのそれぞれは同じかもしくは異なり、そして独立に置換されていないか、または1もしくは複数個の置換基RSで置換されており;そして
各RSは、独立にハロ、ポリフルオロ、ペルフルオロ、非置換(C1−C18)アルキル、または非置換(C1−C9)ヘテロアリールである。}で表される化合物またはその交換生成物である、請求項1または2に記載の多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項4】
以下の式(IA):
【化2】

{式中:
mは、1、2、3、または4の整数であり、nとpのそれぞれは、1の整数であり、そして各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレンであるか;または
nは、1、2、または3の整数であり、mとpのそれぞれは、1の整数であり、そして各RLは、独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレンであるか;または
pは、2の整数であり、mとnのそれぞれは、1の整数であり、そしてRLは、(C3−C19)アルカンの三価ラジカルまたは(C3−C19)アルケンの三価ラジカルであり、
yは、0、1、または2の整数であり、かつ、y+nの合計がM1の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ;
zは、0、1、2、または3の整数であり、かつ、z+mの合計がM2の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ;そして
X、M1、M2、R1、およびR2は、式(I)について先に規定されたとおりのものであるか;または
m、n、およびpのそれぞれは、1であり、(R1y1は、不存在であり、そしてM2、R2、およびzは、式(I)について先に規定されたとおりのものである。}で表される化合物またはその交換生成物である、請求項3に記載の多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項5】
前記m、n、およびpのそれぞれが1であり、(R1y1が不存在であり、そしてM2が、式(IA)内のCH2と一緒になって式(II):
【化3】

{式中、gは、0、1、または2の整数であり、かつ、(g+2q)の合計がM2の形式的酸化状態と等しくなるように選ばれ;qは、式(I)の化合物についてと同じように規定され;そしてRL、X、M2、およびR2は、式(IA)の化合物について規定されたとおりのものである。}で表される多官能性連鎖シャトリング剤、またはその交換生成物を形成する、請求項4に記載の多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項6】
式(IA){式中、m、n、およびpのそれぞれが1の整数であり、そしてRLが(C1−C19)アルキレンである。}で表される化合物であり、それゆえ、以下の式(Ia):
【化4】

{式中、R1、y、M1、X、M2、R2、およびzは、請求項4において規定されたとおりのものである。}で表される化合物またはその交換生成物である、請求項4に記載の多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項7】
式(Ia){式中、yが2であり、zが2であり、XがOであり、そしてM1とM2のそれぞれが、+3の形式的酸化状態のAlである。}で表される化合物であり、それゆえ、以下の式(Ia−1):
【化5】

{式中、R1およびR2が、請求項6において規定されたとおりのものである。}で表される化合物である、請求項6に記載の多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項8】
式(IA){式中、m、nおよびpのそれぞれが1の整数であり、そしてRLが(C2−C19)アルキレンである。}で表される化合物であり、それゆえ、以下の式(Ie):
【化6】

{式中、R1、y、M1、X、M2、R2、およびzは、請求項4において規定されたとおりのものである。}で表される化合物、またはその交換生成物である、請求項4に記載の多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項9】
以下のステップ:(ヒドロキシ−、チオール−(すなわち−SH)、ヒドロカルビルアミノ−、アミノ(すなわち−NH2)、ヒドロカルビルホスフィノ−、またはホスフィノ−(すなわち−PH2)およびビニル含有多価基をアルキルペルヒドロカルビル金属と接触させて、有機金属中間体、すなわちヒドロカルビル金属ビニル−アルコキシド、ヒドロカルビル金属ビニル−スルフィド、ヒドロカルビル金属ビニル−(ヒドロカルビル)アミン、ヒドロカルビル金属ビニル−アミン、ヒドロカルビル金属ビニル−(ヒドロカルビル)ホスフィン、またはヒドロカルビル金属ビニル−ホスフィンを調製し;そして該有機金属中間体をヒドロカルビル金属モノヒドリドに接触させ、それにより、多官能性連鎖シャトリング剤を調製する、を含み、各金属が、独立にスズ、または元素周期表の第2、12、および13族のいずれかの金属の陽イオンである、請求項1または2に記載の多官能性連鎖シャトリング剤の製造方法。
【請求項10】
以下のステップ:請求項1〜8のいずれか1項に記載の多官能性連鎖シャトリング剤、本来のオレフィン重合触媒、および本来の共触媒を含んでなる要素を一緒に接触させる、を含み、その接触を触媒調製条件下で実施することで、それにより多官能性組成物を製造し、該多官能性組成物が多官能性連鎖シャトリング剤とオレフィン重合触媒として機能できる、多官能性組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法によって製造された多官能性組成物を含む多官能性組成物。
【請求項12】
以下のステップ:1もしくは複数個のオレフィン重合触媒を含んでなる反応物と少なくとも1個のオレフィン単量体を一緒に接触させる、を含み、ここで、該1もしくは複数個のオレフィン重合触媒が請求項11に記載の多官能性組成物を含み、かつ、該接触ステップがオレフィン重合生成条件下で実施され、それにより(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤鎖を製造し、該(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤が前記反応物の反応生成物になる、(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって製造された(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤を含む(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤。
【請求項14】
以下のステップ:請求項13に記載の(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを末端官能化させ、それによりテレケリック・ポリオレフィンを製造する、を含み、ここで、該テレケリック・ポリオレフィンは、間隔を置いた第1と第2の末端官能基を持つと特徴づけでき、そして該方法では連鎖シャトリング部分からの第1の末端官能基と重合開始または保護部分からの第2の末端官能基を得、該部分のそれぞれは(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のものであるが、該第1の末端官能基と第2の末端官能基は構造的に互い異なっている、テレケリック・ポリオレフィンの製造方法。
【請求項15】
前記テレケリック・ポリオレフィンが、第1および第2の末端官能基の非統計的分布を有すると特徴づけできる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法によって製造されたテレケリック・ポリオレフィンを含んでなるテレケリック・ポリオレフィン。
【請求項17】
以下のステップ:請求項13に記載の(ポリオレフィン−ポリラジカル)含有多官能性連鎖シャトリング剤のポリオレフィン−ポリラジカルを停止させ、それにより式(III)の末端官能性ポリオレフィン:H−ポリオレフィン−CH2−RL−(X−H)w(III){式中、wが1または2の整数であり;各RLが独立に(C1−C19)アルキレンまたは(C2−C19)アルケニレン;そして各Xが独立にO、S、N(H)、N((C1−C20)ヒドロカルビル)、P(H)、またはP((C1−C20)ヒドロカルビル)である。}を製造する、を含む、末端官能性ポリオレフィンの製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法によって製造された式(III)の末端官能性ポリオレフィンを含む末端官能性ポリオレフィン。
【請求項19】
請求項16に記載のテレケリック・ポリオレフィンまたは請求項18に記載の末端官能性ポリオレフィンを含む物品。
【請求項20】
前記物品が電池用セパレーターを含む、請求項19に記載の物品。

【公表番号】特表2013−501093(P2013−501093A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522989(P2012−522989)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/043483
【国際公開番号】WO2011/014533
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】