説明

多層吸音シート

貫通微細孔及び開口を有するフィルム層と、該フィルム層上に配置される繊維性材料層とを含む、多層吸音シートが提供される。また、本開示の該多層吸音シートを提供することと、該多層吸音シートを音響源と音反射面との間に位置付けることとを含む、音を吸収する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、フィルム層及びフィルム層上に配置された繊維性材料層を含む、多層吸音シートに関する。更に、本開示は、概して、多層吸音シートを提供することと、多層吸音シートを音響源と音反射面との間に位置付けることとを含む、音を吸収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の吸音体が、多数の異なる分野で音を吸収するために使用されている。既知の吸音体には、ガラスウール、ロックウール、スポンジ、フェルト、若しくはウレタン発泡体等の開放気泡材料、多孔質焼結板、金属繊維板、若しくは発泡金属板等の多孔質材料、開放気泡白亜板、シート材料及び不織布吸音体の組み合わせ、又は特定のフィルムが挙げられる。
【0003】
ガラスウール又はフェルトは、自動車のエンジンコンパートメントからの音を吸収するために使用されてきた。この場合、吸音係数は、吸音体の厚さに比例して増加し得る。吸音体の重量及び費用は、厚さが増加するほど大きい。
【0004】
電気及び電子機器に様々な吸音体が使用される。そのような機器の小型化及び費用削減が継続的に重視されることから、薄くかつ可撓性の吸音体が望ましい。
【0005】
様々な不織布吸音体の用途が見いだされている。しかし、幾つかの不織布の能力は、3000Hz以下等の低周波で比較的低く、より高い周波数でより高い傾向がある。低周波での吸音は、吸収体がより厚い場合に改善され得る。しかしながら、高周波での吸音能力は低下する。
【0006】
低周波での吸音能力は、多孔質材料及びフィルムの組み合わせを使用することによって改善することができる場合があることが既知である。この場合、吸音体は、比較的薄くすることができるが、最善の低周波性能のために、最小量の裏空隙(例えば、約10mm)が必要とされ得る。更に、高周波での吸音能力は、低い場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
広範囲の周波数で音を吸収することができ、薄く(たとえ裏空隙を含んでも)、かつ可撓性を有する、吸音体又は音を吸収する方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一態様において、貫通微細孔及び開口の両方を有するフィルム層と、フィルム層上に配置される繊維性材料とを含む、多層吸音シートを提供する。本発明の別の態様は、多層吸音シートを提供すること及び多層吸音シートを音響源と音反射面との間に位置付けることを含む、音を吸収する方法を提供する。
【0009】
したがって、一態様において、貫通微細孔及び少なくとも1mmの直径を含む開口を含むフィルム層と、フィルム層上に配置される繊維性材料層とを含む、多層吸音シートが本明細書に開示される。
【0010】
また、貫通微細孔及び少なくとも1mmの直径を含む開口を含むフィルム層と、フィルム層上に配置される繊維性材料層とを含む、多層吸音シートを提供するステップと、多層吸音シートを、音響源と音反射面との間に、多層吸音シートと音反射面との間に裏空隙を有して位置付けるステップとを含む、音を吸収する方法も本明細書に開示される。
【0011】
また、音反射面と、貫通微細孔及び少なくとも1mmの直径を含む開口を含むフィルム層を含む多層吸音シート、並びにフィルム層上に配置される繊維性材料層を含み、多層吸音シートと音反射面との間に裏空隙を有して、音反射面の付近に配置される、多層吸音シートと、を含む、吸音体も本明細書に開示される。
【0012】
本発明の上記の概要は、本発明のそれぞれの図示の実施形態又は全ての実施を説明しようとするものではない。図及び以下の詳細な説明がこれらの実施形態をより具体的に例示する。
【0013】
本発明は種々の修正及び代替の形態に容易に応じるが、その細部は一例として図面に示しており、また詳しく説明することにする。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することにないことを理解するべきである。反対に添付の特許請求の範囲により規定されるように、本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更、等価物、及び代替物を網羅しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の多層吸音シートの一実施形態の断面図。
【図2】本開示の多層吸音シートの別の実施形態の断面図。
【図3】本開示のフィルム層の一実施形態の正面図。
【図4】本開示の多層吸音シートの別の実施形態の断面図。
【図5】様々な開口率を有する多層吸音シートの吸音のグラフ。
【図6】単一フィルム層を有する多層吸音シート、及び二重フィルム層を有する多層吸音シートの吸音のグラフ。
【図7】貫通微細孔を有する、様々なフィルムのガーレー空気透過度のグラフ。
【図8】様々な裏空隙厚さを有する多層吸音シートの吸音のグラフ。
【図9】貫通微細孔を有する、及び有さない、二重フィルム層の吸音のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示のフィルム層は、単一層、二重層、又はより多くの層を含んでもよい。一実施形態に係る多層吸音シートは、異なる弾性率を有するフィルムの二重層を含んでもよい。更に、多層吸音シートは、一実施形態において、比較的薄くてもよい(例えば、約510μm〜約2500μmの厚さを有する)。そのような多層吸音シートは、比較的薄い(例えば、約1mm〜約20mm、約1mm〜約10mm、又は約1mm〜約5mm)裏空隙を使用できるようにする。
【0016】
本開示の音を吸収する方法は、本開示の多層吸音シートを提供することを含む。また、方法は、多層吸音シートを音響源と音反射面との間に提供することも含む。音反射面には、コンピュータ、オーディオ機器、コピー機、洗濯機、若しくは空調装置等の電気及び電子機器の内側面、又は自動車の内側面が挙げられ得るが、これらに限定されない。多層吸音シートと音反射面との間の距離(即ち、裏空隙の厚さ)は、比較的小さくすることができる(例えば、約1mm〜約20mm、約1mm〜約10mm、又は約1mm〜約5mm)。
【0017】
多層吸音シート及び音を吸収する方法は、様々な周波数で効果的な吸音を提供し得る。
【0018】
図1は、本開示の多層吸音シートの一実施形態の断面図である。多層吸音シート100は、フィルム層104及び繊維性材料層102を含む。一実施形態では、フィルム層104は、集合的に、100cc当たり約0.1秒〜100cc当たり約300秒の空気透過度(開口の不在下で、JIS−L−1906に従って測定した際)を有する貫通微細孔108を含む、単一フィルム層を含む。一実施形態では、貫通微細孔は、約10μm〜約200μmの範囲の直径を含む。様々な実施形態では、貫通微細孔は、約77,500穴/m〜約6,100,000穴/m、又は約620,000穴/m〜約1,240,000穴/mの密度で存在する。更に、また、フィルム層104は、少なくとも約1mmの直径を有する開口110も含む。様々な実施形態では、開口は、約25mm、約10mm、約5mm、又は約2mmの最大直径を有することができる。特定の実施形態では、開口は、好適な開口率が維持されるような開口間隔である場合、より大きな直径(例えば、最大100mm)を含むことができる。様々な実施形態では、フィルム層は、約3%〜約50%、又は約10%〜約40%の開口率を有することができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「貫通微細孔」という用語は、フィルム層を完全に貫通する微細穴を意味し、「開口」という用語は、フィルム層を完全に貫通し、かつ貫通微細孔より大きな穴を意味し、「開口率」という用語は、フィルム層の単位面積内の開口面積の百分率を意味する。貫通微細孔、及び/又は開口は、円形であっても非円形であってもよく(本明細書において後に更に詳細に説明されるように)、規則的であっても不規則であってもよい。非円形若しくは不規則な形状の微細孔又は開口の場合、「直径」という用語は、非円形形状の微細孔又は開口の開口部と同一の面積を有する円形開口部の直径を指す。微細孔及び/又は開口は、寸法が様々であってもよい。そのような場合では、直径は、微細孔又は開口の総集団の平均直径を指す。
【0020】
貫通微細孔及び開口の組み合わせを有することによって、本開示の多層吸音シートの、特に比較的高い周波数での吸音効果を改善することができる(例えば、未穿孔フィルムを有する繊維層と比較して)。理論又は機構に束縛されるものではないが、本明細書に開示される多層吸音シートは、例えば、フィルム層の膜振動によって、貫通微細孔内の空気の摩擦によって、繊維層内の空気の摩擦によって、又はこれらの機構の組み合わせによって、音を吸収し得る。
【0021】
フィルム層には、可撓性を有する樹脂フィルムを挙げることができるが、これに限定されない。樹脂フィルムに使用することができる代表的な高分子材料には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリブチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はポリビニルアセタール類等のポリビニル樹脂類、三酢酸セルロース又は酢酸セルロース等のセルロースエーテル樹脂類が挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態では、フィルム層の厚さは、約10μm〜約500μm又は約10μm〜約250μmである。一実施形態では、フィルム層の1平方メートル当たりの重量は、約5グラム〜約500グラムである。
【0022】
繊維性材料層102は、これらに限定されないが、織布、不織布、ポリウレタン発泡体若しくはセルロース発泡体等の発泡体、又はフェルトを含むことができる。不織布は、既知のメルトブローン方法によって作製され得る。一実施形態では、繊維性材料層102の厚さは、約500μm〜約2000μmである。一実施形態では、この厚さ範囲の不織布層は、例えば、3〜4mmの厚さの既存の不織布層を取り、不織布を所望の厚さ範囲に圧縮又は緻密化することによって形成することができる。
【0023】
図1の多層吸音シートの総厚さは、比較的薄くてもよい、例えば、約510〜約2500μmであってもよい。
【0024】
吸音効果を生むために、多層吸音シートを音反射面又はその付近に定置することができる。一実施形態では、フィルム層は、音響源(例えば、到来空気伝送音)を面して定置される。更に、多層吸音シートは、繊維性材料層102と音反射面との間に裏空隙(隙間)を有してもよい。本開示の多層吸音シートは、裏空隙が比較的薄い(例えば、約1mm〜約20mm、約1mm〜約10mm、又は約1mm〜約5mm等)場合でさえ、良好な吸音効果を呈し得る。
【0025】
貫通微細孔を含むフィルム層は、任意の既知の方法によって作られ得る。例えば、樹脂フィルムは、針を有するロールを用いて、ニードルパンチングによって微細穿孔して、貫通微細孔を形成することができ、次いで、別個の作業(例えば、機械パンチング)を使用して開口を形成する。様々な形状の貫通微細孔又は開口が使用されてもよい。開口の代表的な形状には、円形、楕円形、三角形、正方形、矩形、多角形、又は星形が挙げられるが、これらに限定されない。円形、楕円形、又は丸みが付けられた形状が好ましい場合がある。貫通微細孔及び開口の両方を有する、得られたフィルム層104、並びに繊維性材料層102は、多層吸音シート100を形成するために、接着、ステープリング、又は縫製等の既知の積層方法によって、共に積層されてもよい。接着では、接着剤、ホットメルト接着剤、接合剤、又は接合テープが使用されてもよい。又は、繊維性材料及びフィルム層を互いに熱積層することができる。結果として生じる多層シート製品は、ロールで保管することができる。
【0026】
図2は、本開示の多層吸音シートの別の実施形態の断面図である。本実施形態では、多層吸音シート200は、繊維性材料層202と、第1のフィルム層204(繊維性材料層202と接触する)と、第2のフィルム層206(音響源に面する)とを含む。本実施形態では、第1のフィルム層204及び第2のフィルム層206は、互いとは異なる弾性率を有してもよく、又は同一の弾性率を有してもよい。第1のフィルム層204の弾性率には、約5MPa〜約3000MPa又は約1000MPa〜約3000MPaが挙げられるが、これらに限定されない。第2のフィルム層206の弾性率には、約5MPa〜約3000MPaが挙げられるが、これに限定されない。第1のフィルム層は、約10μm〜約250μmの厚さを有し、第2の層は、約10μm〜約250μmの厚さを有する。第2の層の厚さは、第1の層と同一であってもよく、又は第1の層とは異なってもよい。第1の層204及び第2の層206は、貫通微細孔及び開口を有する。貫通微細孔の空気透過度及び開口の開口率は、上述される通りであってもよい。第1及び第2のフィルム層の1平方メートル当たりの重量は、上述される通りであってもよい。
【0027】
二重フィルム層は、例えば、熱積層、乾式積層、又は接着等による、第1及び第2のフィルム層の積層等の任意の既知の方法によって作ることができる。層が接着によって積層される際、一実施形態では、第1又は第2のフィルム層の表面に、好適な接着剤が部分的に適用されてもよい。接着剤を部分的に適用するために、例えば、接着剤は、離散位置に適用される、点在して適用される、又はスプレーによって適用される等であってもよい。そのように、フィルム層領域上に接着剤を部分的に適用することによって、結果として、積層されたフィルム層間に空気が存在するようにすることができる。これは、一方又は両方の層の膜振動をもたらし得、これは、多層シートの吸音を改善し得る。別の実施形態では、二重フィルム層は、押出成形によって作ることができる。例えば、第2のフィルム材料の溶融樹脂が、既知の押出成形方法によって、第1のフィルム層上に押出成形されてもよい。
【0028】
第1及び第2のフィルム層を共に積層した後、二重フィルム層は、上述される方法によって、貫通微細孔を提供するために微細穿孔され、開口を形成するために穿孔されてもよい。次いで、貫通微細孔及び開口を有する二重フィルム層を、上述されるもの等の既知の方法によって、繊維性材料層202に積層することができる。得られるシートは、ロールで保管することができる。
【0029】
図2の多層吸音シート(多層フィルムを含む)の総厚さは、約520μm〜約2500μm、又は約900μm〜約2000μm等、比較的薄くてもよい。
【0030】
図3は、本開示のフィルム層の一実施形態の正面図である。フィルム層300は、貫通微細孔308及び開口310の両方を有する、フィルム層304を含む。貫通微細孔は、100cc当たり約0.1秒〜100cc当たり約300秒の空気透過度を提供するように適用することができる。開口の直径及び開口率は、上述されるものと同一であってもよい。
【0031】
図4は、本開示の多層吸音シートの別の実施形態の断面図である。多層吸音シート400は、切断され、図4に示されるような形状に形成されてもよい。シート400は、シート400の一部分が表面420と接触しないように(つまり、裏空隙402が存在するように)、シートを表面420に取り付けられるようにする、フランジ403を有してもよい。シートは、シートの繊維性材料層が内側となり(表面420に面する)、フィルム層が外側上にある(例えば、到来音に面する)ように、音反射面420に対して位置付けられてもよい。この形状では、裏空隙402は、多層吸音シート400と表面420との間に作られてもよい。表面420から離間している多層吸音シート400の一部分と表面420との間の距離は、例えば、約1mm〜約20mm、約1mm〜約10mm、又は約1mm〜約5mmであってもよいが、これらに限定されない。本開示の多層吸音シートは、比較的薄く、かつ可撓性であるため、図4に示される形状に限定されず、様々な形状に形成され得る。例えば、シート400は、特定の表面420の形状と一致するように形成することができる。
【0032】
図5は、開口率と吸音係数との間の関係を図示するグラフである。(比較のため、スペクトル500は、約10mmの厚さの不織布シートの吸音係数を示す。本実施例及び他の実施例では、10mmの不織布シートは、スパンボンドスクリムと共に、約200グラム/mの密度のメルトブローンポリプロピレンウェブを含む)。スペクトル502、504、506、及び508は、約0.9mmの厚さ及び1平方メートル当たり約84グラムの重量を有する不織布(そのような不織布シートを提供するために、約3mm〜約4mmの厚さを有するメルトブローン不織布シートを圧迫することができる)と、38μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、10μmの厚さを有するポリエチレン(PE)フィルムとを含む、多層吸音シートの吸音係数を示す。PETフィルムの弾性率は、約2700MPaであり、PEフィルムの弾性率は、約6MPaであった。PETフィルム上にPEフィルムを形成するために、PE樹脂が押出成形され、固化され、次いで、積層PE−PET層は、微細穿孔され、穿孔された。積層二重フィルム層は、約100μmの直径及び約1,240,000穴/mの密度を有する貫通微細孔と、図5に示される開口率の、約4.5mmの直径を有する開口とを有した。それぞれのスペクトルに、10mmの裏空隙(隙間)が使用された。全ての吸音スペクトル(本実施例及び全ての他の実施例において)は、周知のインピーダンス管試験を使用して、ASTM E 1050に従って生成された。多層吸音シート試料では、試料は、試料の直径が29mmの部分がインピーダンス管の開口部全体にまたがることによってインピーダンス管内に位置付けられ、試料の縁部は、シートが、入射音に対して垂直に配置されるように、両面接着剤を使用して、インピーダンス管の開口部のフランジに接着させた(典型的に、これらの実験では、吸音シートは、音響源が多層シートのフィルム層に面するに位置付けられた)。インピーダンス管の反射面(音響源から見て試料の後方)は、所望の裏空隙を提供するように調節された。不織布試料では、不織布は、空隙なく、インピーダンス管の反射面に対して直接定置された。
【0033】
図6は、単一フィルム層を含む多層吸音シート、及び二重フィルム層を含む吸音シートの吸音係数を図示する、グラフである。図6は、吸音係数スペクトル602a〜c、及び604を描写する。スペクトル602a〜cは、約0.9mmの厚さを有する不織布(図5の0.9mmの不織布ウェブ)と、貫通微細孔及び開口を有するPETフィルムとを含む、多層吸音シートの吸音係数を示す。PETフィルムの厚さは、602aでは12μm、602bでは38μm、及び602cでは50μmであった。スペクトル604は、約0.9mmの厚さを有する不織布と、38μmの厚さを有するPETフィルムと、10μmの厚さを有するポリエチレン(PE)フィルムとを含む、多層吸音シートの吸音係数を示す。PETフィルムの弾性率は、約2700MPaであり、PEフィルムの弾性率は、約6MPaであった。PEフィルム及びPETフィルムは、多層フィルム構造体を形成するために、PE樹脂をPETフィルム上に押出成形し、それを固化することによって形成された。次いで、多層フィルム構造体は、約100μmの平均直径及び約1,240,000穴/mの密度を有する貫通微細孔と、約4.5mmの直径及び22.7%の開口率を有する開口とを提供するように、上述される方法によって処理された。
【0034】
スペクトル602a〜c及び604は、図5を参照して記載されるものと同じように生成された。
【0035】
図7は、フィルム厚さと空気透過度との間の関係を図示する、グラフである。約1,240,000穴/mの貫通微細孔を有する(及び開口を有さない)フィルム層は、ガーレー方法に従う、図7に示される空気透過度値を用いて、JIS−L−1906に従って特徴付けられた。ガーレー方法における空気透過度値は、100ccの空気がフィルムを通過するのに要する時間を示す(100cc当たりの秒数)。12μm、25μm、38μm、及び50μmの様々な厚さを有するPETフィルムと、10μm、20μm、30μm、40μm、及び50μmの様々な厚さを有するPEフィルムとを含む、様々なフィルム層が測定された。好ましい空気透過度値は、100cc当たり約0.1秒〜100cc当たり約300秒であり得る。この範囲の空気透過度を得るために、様々な寸法及び密度の貫通微細孔を使用することができる。貫通微細孔の代表的な寸法及び密度には、例えば、約10μm〜200μmの範囲の直径及び約620,000穴/m〜約1,240,000穴/mの密度が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
図8は、吸音特性と裏空隙(隙間)との間の関係を図示する、グラフである。スペクトル800は、10mmの厚さを有するメルトブローン不織布シートの吸音係数を示す。スペクトル802、804、806、808、及び810は、38μmの厚さのPETフィルム(第1のフィルム層)と、12μmの厚さのPEフィルム(第2のフィルム層)と、約0.9mmの厚さのメルトブローン不織布シートとを含む、本開示の多層吸音シートの吸音係数を示す。フィルム層(PETフィルム及びPEフィルム)は、約1,240,000穴/mの貫通微細孔(平均直径が約100μmの)と、25%の開口の面積比(開口直径は、約7.3mmであった)とを有した。シートの空気透過度は、100cc当たり1.2秒であった。PETフィルムの弾性率は、約2700MPaであり、PEフィルムの弾性率は、約6MPaであった。スペクトル800、802、804、806、808、及び810は、図8に示される裏空隙を用いて、図5を参照して記載されるものと同じように生成された。
【0037】
図9は、貫通微細孔を有する、及び有さない、二重フィルム層の吸音のグラフである。スペクトル900は、10mmの厚さを有するメルトブローン不織布シートの吸音係数を示す。スペクトル902及び904は、38μmの厚さのPETフィルムと、10μmの厚さのPEフィルムとを含む(不織布が存在しない)、二重層状化フィルムの吸音係数を示す。PETフィルムの弾性率は、約2700MPaであり、PEフィルムの弾性率は、約6MPaであった。スペクトル902の二重層状化フィルムは、約1,240,000穴/mの貫通微細孔を有し、開口は有さず、904のフィルムは、貫通微細孔及び開口を有さなかった。902の二重層状化フィルムの空気透過度は、100cc当たり1.2秒であり、902のフィルムの貫通微細孔の平均直径は、約100μmであった。
【0038】
スペクトル900、902、及び904は、図5を参照して記載されるものと同じように生成された。
【0039】
開示、したがって記載から、本明細書に開示される概念は、多様に変化され得ることが明白であろう。そのような変形は、開示の趣旨及び範囲から逸脱すると見なされず、当業者に明白であり得る全てのそのような修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通微細孔及び少なくとも1mmの直径を備える開口を備えるフィルム層と、前記フィルム層上に配置される繊維性材料層と、を備える多層吸音シート。
【請求項2】
前記貫通微細孔が、100cc当たり0.1秒〜100cc当たり300秒の空気透過度を有し、前記開口が、3%〜50%の開口率を有する、請求項1に記載の多層吸音シート。
【請求項3】
前記貫通微細孔が、約10μm〜200μmの直径を備える、請求項1又は2に記載の多層吸音シート。
【請求項4】
前記繊維性材料層の厚さが、約500μm〜2000μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項5】
前記フィルム層の厚さが、約10μm〜500μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項6】
前記多層吸音シートの総厚さが、510μm〜2500μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項7】
前記繊維性材料が、織布、不織布、ポリウレタン発泡体、セルロース発泡体、及びフェルトから選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項8】
前記フィルム層が、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、及びポリプロピレンフィルムからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項9】
前記フィルム層が、第1のフィルム層と、該第1のフィルム層上に配置される第2のフィルム層とを有する、多層フィルムを備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項10】
前記第1のフィルム層及び前記第2のフィルム層の厚さが、それぞれ、約10μm〜250μmである、請求項9に記載の多層吸音シート。
【請求項11】
前記第1のフィルム層の弾性率が、約1000〜3000MPaであり、前記第2のフィルム層の弾性率が、約5MPa〜3000MPaである、請求項9又は10に記載の多層吸音シート。
【請求項12】
前記第1のフィルム層の1平方メートル当たりの重量が、約5グラム〜500グラムであり、前記第2のフィルム層の1平方メートル当たりの重量が、約5グラム〜500グラムである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項13】
前記第1及び第2の層が、それぞれ、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、及びポリプロピレンフィルムからなる群から選択される、請求項9〜12のいずれか一項に記載の多層吸音シート。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の多層吸音シートを提供するステップと、
前記多層吸音シートを、音響源と音反射面との間に、前記多層吸音シートと前記音反射面との間に裏空隙を有して位置付けるステップと、を含む、音を吸収する方法。
【請求項15】
前記多層吸音シートと前記音反射面との間の前記裏空隙の厚さが、約1mm〜20mmである、請求項14に記載の音を吸収する方法。
【請求項16】
前記多層吸音シートと前記音反射面との間の前記裏空隙の厚さが、約1mm〜10mmである、請求項14に記載の音を吸収する方法。
【請求項17】
前記多層吸音シートと前記音反射面との間の前記裏空隙の厚さが、約1mm〜5mmである、請求項14に記載の音を吸収する方法。
【請求項18】
音反射面と、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多層吸音シートであって、該多層吸音シートと前記音反射面との間に裏空隙を有して、前記音反射面の付近に配置される、多層吸音シートと、を備える吸音体。
【請求項19】
前記多層吸音シートと前記音反射面との間の前記裏空隙の厚さが、約1mm〜20mmである、請求項18に記載の吸音体。
【請求項20】
前記多層吸音シートと前記音反射面との間の前記裏空隙の厚さが、約1mm〜10mmである、請求項18に記載の吸音体。
【請求項21】
前記多層吸音シートと前記音反射面との間の前記裏空隙の厚さが、約1mm〜5mmである、請求項18に記載の吸音体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−516929(P2011−516929A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505103(P2011−505103)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040192
【国際公開番号】WO2009/129139
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】