説明

多層回路部材とそのためのアセンブリ

【解決手段】多層回路部材は、電気的に接続された第1と第2領域を備えた導電性の基準面を含む。第1の一対の信号線が第1領域に近接し、回路部品が第2領域に近接する。電気的に接続された第1と第2領域の間に、インピーダンスが増加した伸長領域が存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は米国仮特許出願第61/258,976号(2010年5月6日出願)の利益を主張し、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は概して多層回路部材に関し、より詳細には改善された基準回路を有する多層回路部材に関する。
【背景技術】
【0003】
電子機器は、速い速度だけでなく高いデータレートの信号を送信・受信するために一般に多層回路板もしくは部材を用いる。同じまたはより小さい占有面積でより早い速度の電子技術を得るために、多層回路板の密度を増加させる試みが継続して行われている。ある多層回路板では、希望の情報またはデータを回路基板に沿ってまたは回路基板を通して送信するための様々な信号線とともに回路基板内に組み込まれたひとつもしくは複数の基準またはグラウンド面を含む。このような基準面は電気的シールドとして作用する一方、回路基板の様々な信号線の帰還路の一部としても一般的に作用する。回路部品、信号線、または他の信号線の帰還路として作用している別の基準面などの別のソースから、第1基準面に移動するエネルギーもしくはノイズは、第1基準面とつながれた信号線によって導電された信号に影響を与えることもある。言い換えれば、回路基板内のこのようなエネルギーは回路基板内の他の回路に不必要に移動することが時にあり、そのことがシステム内にエラーを生じさせ、システムを信頼性の低い、動作不能にすることがありうる。そのため、信号線がエネルギー源から分離されることがあっても、いかなるエネルギー源も1組の信号線上で持ち得る影響を最小限にすることが望まれる。
【発明の概要】
【0004】
実施例で、多層回路部材は電気的に接続された第1、第2領域を有する導電性の基準面を含む。一対の信号線は第1領域に近接し、回路部品は第2領域に近接する。インピーダンスが増加した領域は電気的に接続された第1領域と第2領域の間に存在する。
【0005】
他の実施例で、多層回路部材は電気的に接続された第1領域と第2領域とともに導電性の基準面を含む。一対の第1信号線は基準面の第1領域に隣接し、一対の第2信号線は基準面の第2領域に隣接する。基準面内のインピーダンスが増加した伸長領域は電気的に接続された第1領域と第2領域の間に位置する。
【0006】
他の実施例で、多層回路部材は導電性の第1領域と第2領域とともに導電性の基準面を含む。第1領域と第2領域は電気的に接続され、両者の間に伸長されたスロットを有する。導電表面は基準面から一定の間隔で離れており、基準面の第1領域に隣接する概して平行な一対の第1信号線を含み、基準面の第2領域に隣接する概して平行な一対の第2信号線を含む。プラグコネクタアセンブリも提供され得る。
【0007】
様々な他の目的、特徴および付随する利点は、同じ参照符号はいくつかの図を通して同じ部分または類似部分を表す添付図面とともに検討されるとき、同じものがより良く理解されるように、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例に従い相手方電気コネクタに整列させたプラグコネクタアセンブリの斜視図である。
【図2】図1のプラグコネクタアセンブリの部分分解斜視図である。
【図3】図2のプラグコネクタアセンブリとともに用いられる回路基板の斜視図である。
【図4】図5の回路基板の様々な導電層の部分分解斜視図である。
【図5】図3の回路基板の第1導電層の斜視図である。
【図6】第2層の導線を第1層の導線に接続するビアのいくつかとともに図3の回路基板の第2導電層を表す斜視図である。
【図7】図3の回路基板の第3導電層の斜視図である。
【図8】第1導電層の導電パッドのいくつかと、様々な導線と相互接続するための導電層の間に拡張する導電性ビアのいくつかとともに第2と第3導電層を表す斜視図である。
【図9】図8の導電層の平面図である。
【図10】図9の線10−10に概して沿った図9の導電層の拡大され、細分化された斜視図である。
【図11】図面を明瞭にするために誘電層を除去した図3の回路基板の斜視図である。
【図12】図11の線12−12に概して沿った図11の導電層の拡大され、細分化された斜視図である。
【図13】図面を明瞭にするために特定の要素を除去した図12の導電層の横断面図である。
【図14】図面を明瞭にするためにさらに要素を除去した図13に類似した概して図式的な横断面図である。
【図15】図3に記載の回路基板に類似した回路基板を用いることが可能なプラグコネクタアセンブリの代替の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記の説明は典型的な実施形態を当業者に知らしめるものである。本記載は読者を助けるものであり、本発明を制限するものでないことが理解されよう。それ自体、特徴もしくは形態の引用は1つの実施形態の特徴もしくは形態を記したものであり、全ての実施形態が記載された特徴を有していなければならないことを意味しない。さらに、記載の詳細な説明ではいくつかの特徴を説明していることを留意する必要がある。可能性としてあるシステム設計を説明するために、複数の特徴が組み合わされていることが、これらの特徴は明白には開示されていない他の組み合わせで用いられることもありうる。そのため、記載の組み合わせは他に断りがない限り制限されるものではない。
【0010】
回路基板もしくは回路部材内で回路部品間の電気的分離と電気的遮蔽を増加させることが望まれることが多い。ある速度の速いシステムでは、信号を送るために設計された導線を、信号を受信するために設計された導線と分離するように、ある複数の信号線の分離を増加させることによって性能を向上させることがありうる。回路部材には、シールドとしてだけでなく関連の信号線の帰還路としても機能しうる共通の基準層もしくはグラウンド層を含むことが多いだろう。例えば、1つの信号線もしくは一対の信号線に沿って送信される信号は一般的にいくらかのエネルギーを信号線に隣接する領域もしくは範囲で関連の基準面に分けるだろう。基準面の導電性の性質により、エネルギーは基準面に沿って信号線に隣接する領域から離れた他の領域に移動するだろう。このような離れた領域が他の信号線に隣接するならば、基準面内のエネルギーは他の離れた信号線に沿って送信される信号に負の影響を与えうる。一組の第1信号線からの基準面内のエネルギーは、同じ基準面に関連する他の離れた信号線に関してノイズとして作用する可能性がある。
【0011】
図1と2を参照すると、電気コネクタシステム20が基板実装コネクタアセンブリ22とケーブルアセンブリ30と共に図示される。基板実装コネクタアセンブリ22は回路基板21に実装され、電気コネクタ23とコネクタ23を囲う導電シールドまたはケージ24を有する。図示のように、コネクタ23とケージ24は垂直積層配列の2つのケーブルアセンブリ30を受けるように構成される。コネクタ23は、ケーブルアセンブリ30の導線と電気接続を確立するための一対のスロット27に位置する複数の電気的導電性のコンタクトまたは端子26を持つ誘電体ハウジング25を有する。
【0012】
ケーブルアセンブリ30は、ハウジング内に複数のワイヤー33付きケーブル32と回路基板40を有する2部分からなる導電性ハウジング31およびハウジング上に実装されたラッチ機構34を含む。組立て時に、ワイヤー33が回路基板40上の接触パッド121〜128にはんだ付けされ、保護用の非導電性材料(図示せず)に埋め込むかあるいは外側被覆される。上下のハウジング部品31a、31bはリベット35のような留め具を使用して一緒に固定される。また、リベット35はラッチ機構34をハウジングに固定する。必要に応じて、EMIガスケット36を設けてもよい。
【0013】
図15は第2の別の実施形態のケーブルアセンブリ130を示す。ケーブルアセンブリ130はケーブルアセンブリ30に類似しているが、概ね基板実装コネクタアセンブリ22に類似しているが導電性シールド24をその上に持たないシールドなしのコネクタアセンブリ(図示せず)と係合するように構成される。そのようなシールドなしコネクタアセンブリおよびケーブルアセンブリ130は、外部シールド構造が必要ないデータ処理装置のような電子機器のシャーシまたはハウジング内で使用されてよい。ケーブルアセンブリ130は、ケーブル132のワイヤー(図示せず)に終端処理された回路基板140を内部に持つ誘電体ハウジング131を含む。ラッチ機構134はケーブルアセンブリ130を相手方コネクタアセンブリに固定するために設けられてよい。ケーブルアセンブリ130の回路基板140は、回路基板40と同一または類似の機能および構造を有してもよい。
【0014】
尚、本説明において、上、下、左、右、前、後ろ等の開示された実施形態の各部の構造や動きを説明するために使用される方向性の表現は絶対的であることが意図されず、むしろ相対的であることに留意する。開示された実施形態の各部が図に示された位置にあるときに、これらの表現が適切である。しかしながら、開示した実施形態の参照位置またはフレームが変更された場合は、これらの表現は、開示された実施形態の参照位置またはフレームの変更に従って変更される。
【0015】
図3と4を参照すると、回路基板40は6つの導電層と隣接する導電層間に1つの誘電層を持つ多層回路基板である。また、回路基板40は多様な誘電層を通過し、1つの導電層に位置する導線を1つ以上の他の導電層に位置する1つ以上の導線に相互接続するメッキを施した貫通孔またはビア51〜58を含む。ビアは管のような構造で通常は回路基板に孔を開けて孔の内側にメッキを施して形成される。回路基板40は、図示のように、信号の送信用チャネルと信号の受信用チャネルの特徴のある電気回路を含み、さらに、システム制御、識別、送電等のための特徴のある電気回路を含んでもよい。
【0016】
高速信号を伝送する際、通常、1つのチャネルに関連する高速信号による他のチャネルの高速信号への影響を最小にすることが望ましい。従って、通常、チャネル間の電気的遮蔽を増加させることが望ましく、図示された実施形態においては、送信と受信チャネル間の遮蔽を増加させることが望ましい。共通の基準層または基準面の使用および1つのチャネルの信号線の帰還路として作用する基準面と関連するエネルギーを発生する可能性があり他のチャネルの信号線に関連する基準面にマイナスの影響を及ぼす回路基板内の複数の基準面の相互接続によりこの結果を得ることは複雑である。異なる組の信号線に関連する基準面のエネルギーの伝達によりチャネル間の電気的遮蔽が減少し、性能を低下させる可能性がある。
【0017】
図4を参照すると、回路基板40は6つの導電層100、200、300、400、500および600を有する。導電層100および600は類似、導電層200および500は同一、導電層300および400は同一であり、基板40の高速部品は実質的に同一の機能を持つ。より具体的には、第3と第4の層であり基準層またはグラウンド層として作用する最も内側の導電層300と400は同一である。同様に、第2と第5の層であり概ね信号層として作用する導電層200と500も同一である。第1と第6の層であり主として基準層またはグラウンド層または基準面若しくはグランド面である導電層100と600は概して同一である。導電層100と600は回路基板40の上端の部品を接続し、他の機能を提供するために使用される追加回路を有するという点で異なる。この追加回路は通常回路基板40の高速性能に影響しないように位置する。導電層100〜600の重複(duplicate )の側面の説明はここでは繰り返さない、また、導電層400〜600の部品は導電層100〜300の参照符号と類似の参照符号により識別されるが、各導電層に対応する最初の桁に関しては異なる。
【0018】
一般に、導電層100、300、400および600は基準またはグラウンド導線のみを含み、導電層200および500は信号線のみを含む。導電性ビアは導電層を分離している誘電層を通って伸長し、異なる導電層の多様な導線を接続するために使用される。導電パッドの第1列120は回路基板40の第1端部42に位置し、導電パッドの第2列130は、その間に伸びる基準面101を持つ回路基板の反対側の端部43に位置する。導電パッドの第1列120は間隔を空けた対の基準またはグラウンドパッド129の間に位置する一対の信号パッド121〜128を持つ反復配列のパッドを含む。基準面101に接続された各基準パッド129の端部129aは、ワイヤー33をパッド129に取り付ける工程でパッド129から基準面101に伝わる熱を減少させるために残りの導電パッド129より狭い。これにより、回路基板40に損傷を与えたり品質を低下させることを少なくする低温はんだ工程を使用することができる。各導電パッド121〜129は概ね第1導電層100と第2導電層200の間に伸長するビア52、53、56および57に接続される反対側の端に位置する一対の孔141aと141bを有する。
【0019】
また、導電パッドの第2列130は、各対の信号パッドの反対側に基準パッド139が位置する四対の信号パッド131〜138を持つ導電パッドの配列を含む。各信号パッド131〜138は、電気的に作動するセクション131a〜138aおよび非電気的に作動するセクション131b〜138bを含む。電気的に作動するセクション131a〜138aは信号回路の電気性能を高める短い電気スタブを提供するために、信号パッド121〜128より(回路基板40の縦軸Lに平行方向で)短い。非電気的に作動するセクション131b〜138bは、電気的に作動するセクション131a〜138aから間隔をとり電気的に分けられ、ケーブルアセンブリ30を基板実装コネクタアセンブリ22に挿入する際に、相手方コネクタ23の相手方電気端子26(図1)がスライドできる滑らかな経路を提供する。より具体的には、非電気的に作動するセクション131b〜138bは、より滑らかな面を備え、それゆえメッキを施さない剥き出しの回路基板より相手方電気端子26の摩耗が少ない。
【0020】
接触パッド130の第2列の各電気的に作動するセクション131a〜138aはビア54に電気的に接続された孔142を含み、電気的に作動するセクション131a〜138aを第2導電層200に位置する各信号線211〜218に接続する。導電パッドの第2列130の基準パッド139は、基準パッド129と基準面101の接点で狭いセクション129aを含む第1列120の基準パッド129と対比して均一な幅を有する。
【0021】
導電パッドの第1列120は、8つの信号パッドと5つの基準パッド129を含み、第2列130は列の中央に隣接する2つの追加パッド143と144(図5)と共に8つの信号パッド131〜138と6つの基準パッド139を含む。基準パッド143は電気的に作動するセクション143aと非電気的に作動するセクション143bを含む。電気的に作動するセクション143aは、回路部材145に接続され、システム制御または識別などの追加機能を提供する。図示のように、接触パッド144は図示された回路に電気的に接続されていないが、必要に応じて他の機能を追加するために使用することができる。
【0022】
図5を参照すると、第1層100の大部分が基準面またはグラウンド面101である。基準面101の中心スロット102は、概ね回路基板40の長手方向の中心線に沿って伸び、一対の追加スロット103は、概ね中心スロット102に平行であり中心スロットと回路基板40の側面41の間に位置する。中心スロット102は概ね基準面101を2等分または領域104と105に分割する。各領域104と105は、概ねスロット102に平行であるが中心スロット102より基準面101の個々の側面101cに近い追加スロット103をさらに含む。導電パッドの列120に一番近い各追加スロット103の端部103aは回路部材40の縦軸「L」に対してある角度をなし、概ね第2導電層200の信号線の進路を追随する。追加スロット103は、概ね第1領域104を第1および第2サブ領域106と107に分割し、概ね第2領域105を第1および第2のサブ領域108と109に分割する。各サブ領域106〜109は、概ね中心スロット102と追加スロット103に平行に伸び、基準面101を基準面301に電気的に接続するためにビア51に相互接続される2つの直線配列の孔110を含む。基準面101はさらに複数の孔111を含み、各孔は基準面101を基準面301にさらに電気的に接続するためのビア55に接続される基準パッド129と139に隣接する。
【0023】
図4と6を参照すると、第2層200は信号線221〜224の対で構成される8つの信号線221〜218を含むように図示される。図示された実施形態では、信号線211〜214の221と222の対は回路基板40内の送信チャネルの一部分として使用され、信号線215〜218の223と224の対は回路基板40内の受信チャネルの一部分として使用される。送信チャネルに関連する信号線221と222の対と受信チャネルに関連する信号線223と224の対は、共通の対(例えば送信対間または受信対間)の間隔を規定する第1間隔d1 を隔てる。内部送信対222および内部受信対223間の間隔d2 は共通の対間の間隔より大きい(例:d2 >d1 )。この間隔により送信および受信チャネル間のクロストークまたは干渉を低減する。
【0024】
各信号線211〜218は、概ね導電パッドの第2列130の下に位置し、第1導電層100の孔142と各接触パッド131〜138と位置合わせされた概ね円形の端部211a〜218aを含む。導電性ビア54は、各導電パッド131〜138において概ね円形の端部211a〜218aから孔142に伸びる。また、信号線211〜218の反対の端は各円形端から導電パッドの第1列120の各信号パッド121〜128の孔141bへ伸びる導電性ビア52を持つ概ね円形の端211b〜218bを含む。概ね円形のアンカー231は各円形端211b〜218bと長手方向に位置合わせされ、ビア53により導電パッドの第1列120の各信号パッド121〜128の孔141aに接続される。各信号パッド121〜128を各円形アンカー231に固定することにより、信号パッドはより確実に回路基板40に固定されワイヤー33を各パッドにはんだ付けする工程の間または工程後に回路基板の表面から剥がれるにくくなる。同様に、概ね円形のアンカー232aと232bは列120の各基準パッド129の各孔141aと141bとそれぞれ垂直に位置合わせされる。導電性ビア56と57はアンカー232aと232bの間に伸び、機械的および電気的にアンカー232aと232bを各孔141aと141bに接続し、強度を高め、基準パッド129が回路基板40に固定される。
【0025】
図7を参照すると、導電層300は、概ね多様な開口があるソリッドな基準面またはグラウンド面301である。中心スロット302は、導電パッドの第2列130に隣接するエッジ321から回路基板40の縦軸Lに沿って反対のエッジ322に向かって平行に伸びるが、導電パッドの第1列120に通常隣接する反対のエッジ322と間隔がある。中心スロット302は基準面301を第1領域および第2領域304と305に分割し、追加スロット303は概ね中心スロット302に平行に伸び、一方は第1領域304を第1および第2サブ領域306と307に分割し、もう一方は第2領域305を第1および第2のサブ領域308と309に分割する。基準面301の中心スロット302は、中心スロット302がエッジ321に直線的に伸びていること以外は、第1基準面101の中心スロット102と実質的に同じである。追加スロット303は、基準面101の追加スロット103と比較してサイズと向きが同じである。各サブ領域306〜309は、第1基準面101の直線配列の孔110と位置合わせされ、概ね基準面301の縦軸と垂直である2つの直線配列の孔310を含む。
【0026】
基準面301はさらに、概ねエッジ321に隣接し、第1基準面101の孔111と位置合わせする孔311を含む。基準面301は、概ね基準面の反対側のエッジ322に隣接する3つの追加横直線配列の孔312、313、314を含む。直線配列の孔312は概ね回路部材40の縦軸「L」に垂直であり、導電パッドの列120に隣接する基準面101の孔111と位置合わせする。孔313の配列は概ね孔312に平行であり、各孔が導電パッドの第1列120の基準パッド129の孔141bに位置合わせされる。直線配列の孔314はエッジ322に最も近く縦軸「L」を横断し、各孔が第1基準面101の基準パッド129の孔141aの1つと位置合わせされる。孔315は、電気接触なしに基準面301を通過する多様な層の信号成分の間の導電性ビア58(図3)に経路を提供するための基準面301に設けられる。突起部またはフィンガー316は基準面301のエッジ321から伸長し、導電層100の列130と導電層600の列630の信号パッド間に追加的な垂直遮蔽を設けるために第1導電層100の導電パッドの第2列130の信号パッド131〜138と位置合わせされる。
【0027】
上記のように、導電層100と600は類似し、導電層200と500は、導電層300と400と同様に同一である。従って、導電層400〜600の説明は省略する。しかしながら、導電層400〜600を含む図では、導電層400〜600の部品は、導電層100〜300の参照符号と類似した参照符号で識別されるが、各導電層に対応する最初の1桁を使用する。例えば、第3導電層の基準面301は中心スロット302を含む。第4導電層400では、基準面は401と識別され、中心スロットは403となる。
【0028】
図8〜10を参照すると、開示された実施形態の特定の側面の説明を深めるために、導電層100〜300の特定の部品のみ図示される。基準面301は、多様な基準面を相互接続するいくつかのビアと共に導電パッド121〜124、131〜134も併せて、第2導電層200の信号線と図示される。より具体的には、基準面301は基準面の上に位置する各信号対221〜224と図示される。対221は、回路基板40の一方の端部42で導電パッド121と122に接続され、回路基板の反対側の端部43で導電パッド131と132に接続されるように示される。図10を参照すると、信号線211〜214の概ね円形の端部211a〜214aはビア54により接触パッド131〜134の円形の孔142に接続されるように示される。
【0029】
図4、11〜13を参照すると、回路基板40は、一定の低速回路部品および配線を除いて、基本的に同一の上下半分からなる。導電層100、300、400および600は、電気的に接続し、導電性の基準面間に導電性の低い経路を提供する複数のビア51と55により相互接続される。第1層100の導電パッドの第1列120は第6の導電層600の導電パッドの第1列620(図4)と位置合わせされる。同様に、第1導電層100の導電パッドの第2列130は第6導電層600の導電パッドの第2列630と位置合わせされる。第1導電層100の中心スロット102は第3基準面301の中心スロット302、基準面401の中心スロット402および導電層600の基準面601の中心スロット602と位置合わせされる。同様に、第1導電層100の基準面101の追加スロット103は、第3導電層300の基準面301の追加スロット303、第4導電層400の基準面401の追加スロット403および第6導電層600の基準面601の追加スロット603と位置合わせされる。第2導電層200の信号線の各対221〜224は第1導電層100の基準面101および第3導電層300の基準面301の間に位置する。同様に、導電対521〜524は、第4導電層400の第4基準面401および第6導電層の第6基準面601の間に位置する。
【0030】
導電性ビア51は第1基準面101の直線配列の孔110、基準面301の直線配列の孔310、基準面401の直線配列の孔410および基準面601の直線配列の孔610に伸長し、電気的に接続される。これらのビアは、概ね基準面101、301、401および601に垂直に伸長し、基準面の組み合わせにより、信号線221〜224、521〜524(図13)の各対を概ね取り囲む導電性の経路を作る。すなわち、信号線の経路に沿って概ね平行にビア51を配置することにより、信号線はEMIシールドおよび帰還路として機能する隣接する比較的均一な基準面を有する。より具体的には、水平基準面は信号線の長さに基準面101、301、401、601により設けられ、垂直基準導線は比較的均一な間隔でビア51により設けられる。ビアの数とビアの間隔は回路基板40のシステム要件内で必要に応じて変更できる。
【0031】
1つの信号対に関連するエネルギーは基準面の1つに沿って伝達されるか、あるいはビアを通り別の信号対に伝わり、ノイズを信号対に伝えることにより他の信号対に負の影響を与えるかもしれない。一対の信号線が他の対に与える影響を制限するために、スロット102、103、302、303、402、403、602、603は基準面101、301、401、601に組み込まれる。これらのスロットは基準面内の回路遮断として作用し、基準面の領域間の経路長を増やす。例えば、図7と9を参照すると、スロット302は基準面301の第1と第2領域304と305間の経路長を増やす。これは、第1と第2領域304と305の間に、基準面301内の電流をスロット302を迂回させるように強制的に伝える増加したインピーダンス領域と低下した導電性(スロット302の形で)を与えることにより達成される。結果として、第1領域304に隣接した基準面301に沿って伝わるエネルギーは、接触パッドの列120の隣接以外は、スロット302により直接接続から第2の領域305に電気的に分離される。結果として、第1領域304のエネルギーは、第2領域305に達する前に基準面301上でより大きい距離を伝わらなければならない。従って、第2領域に隣接する信号対223と224への影響がスロット302が無い場合より少ない。第1と第2領域304と305間の電気経路が長いと、さらなるエネルギーの消散につながり、それゆえ、回路基板40の送信チャネルと関連する信号線211〜214が回路基板の受信チャネルに関連する信号線215〜218からの遮蔽を増大する。
【0032】
図示された実施形態において、導電パッドの列120に隣接する領域304と305の端部は、回路のループインダクタンスがスロット302の利点を無くすポイントまで上がらないように電気的に接続され続ける。領域304と305の反対側の端部(列130に隣接)は、導電層100のビア55と基準パッド139で電気的に接続されているので、基準面301内では接続されない。より具体的には、列130に隣接する領域304と305の端部の間に、ビア55、基準面101により規定される経路を通り、導電性基準パッド139に沿って、係合コネクタアセンブリ22まで続く電気経路が存在する。より短い経路が必要であれば、スロット301は回路基板40の端部43に伸長しないように構成することができる。すなわち、場合によっては、領域304と305の両端(それぞれ列120と列130の導電パッドに隣接)を相互接続することが望ましいかもしれない。また他の例では、スロット302を回路基板40の両端42と43まで伸びるように伸長することが望ましいかもしれない。スロット302と303は、信号線211〜218の長さの約70から90%であるように図示される。しかしながら、スロットの長さは所望の電気的性能とシステム条件次第で、より長く、またはより短くすることができる。短いスロットは信号対間の電気的遮蔽を減少させるが、いくつかの帰還路を短くする可能性があると考えられている。同様に、スロットを長くすると電気的遮蔽を増加させるが、そのような基準面に関連するいくつかの帰還路を長くする。基準面301は信号対221〜224に関連する回路の一部を形成するので、帰還路の長さとスロット302と303により作られる回路遮断の量の適当なバランスをとることが望ましい。
【0033】
回路基板40の送信チャネルと関連する信号線211〜214が回路基板の受信チャネルと関連する信号線215〜218に与える影響を制限する(すなわち、送受信チャネル間の電気的遮断を増加させる)ために、中心スロット102が基準面101に設けられ、中心スロット302が基準面301に設けられる。同様に、回路基板40の送信チャネルの信号線511〜514を回路基板の受信チャネルの信号線515〜518から電気的遮蔽を増加させるために中心スロット403が基準面401に設けられ、中心スロット603が基準面601に設けられる。どちらの対も送信チャネルで信号伝達に使用されていても信号線の第1の対221を信号線の第2の対222からさらに遮蔽するために、基準面101の領域104の追加スロット103と位置合わせした基準面301の追加スロット303は必要に応じて設けられてよい。同様に、信号線の第3の対223と信号線の第4の対224の間の電気的遮蔽を増加させるために、もう一方の追加スロット103は基準グランス(glance)101の領域105に設けられ、追加スロット303は基準面301の領域305に設けられてもよい。同様に、信号対621、622と623、624の間の遮蔽を増加させるために追加スロット403と603が設けられてよい。
【0034】
スロットは一連の直線と角のある部分を有しているように図示されるが、スロットの形状は信号線の経路に基づいて図示された実施形態で構成される。他の形状のスロットは、寸法やアスペクト比を使用できる。さらに、スロットは基準面領域間の経路長を増やすための、基準面内で回路遮断として作用する導電性の材料が無いように図示されているが、他の構造と部品をその目的のために使用することもできる。例えば、状況次第では、斜交平行や粗い面を持つ領域を使用して、導電性を減少させ、増加したインピーダンスまたは低下した導電性の領域を作ることが可能かもしれない。さらに、スロットを誘導子やコンデンサのような回路部品によってブリッジし、システムまたは信号が動作する周波数に基づき、スロット全体にわたり通信経路を制御することも可能かもしれない。適当な誘導子をスロット全体にわたり使用することにより、例えば、所定の値を超える周波数はスロット周辺および増加した経路長に沿って強制され、より低い周波数は誘導子を経由してスロットを通過する。
【0035】
図14は、図13をいくぶん略した断面図であり、特定の側面のみを示し、他の側面は変更した。より具体的には、第2導電層200の信号線の対221〜224および導電性の基準面301のみが示される。信号線の対223を通る信号が基準面301に隣接するエネルギー源「E」として作用する範囲で、電流は301cで基準面301に沿って通過してよい。しかしながら、基準面301のスロット302のために、基準面301に沿ってさらに電流が移動し、信号線の対221と222に直接向かうさらなる動きは防止される。信号線の対222に直接隣接する基準面301のサブ領域307に到達するために、基準面301の電流またはエネルギーはスロット302の周りのより長いルートを流れる必要がある(路長を長くする)。路長がより長いと信号線の対222に隣接する基準面301上のエネルギー量を減少させ、エネルギー源「E」は他の信号線の対に影響を及ぼすことが少ない。追加スロット303が設けられると、基準面301上の電流もまた追加スロットを迂回して流れる必要がある。追加スロットは信号線の対223を各他方の対221、223、224から電気的遮蔽を増加させる。
【0036】
提供された開示は示された実施形態に関して記載されているが、本開示は限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。様々な代替形態および修正形態が、上記開示を読んだ後当業者には恐らく明らかになるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲および趣旨の範囲内で、多数の他の実施形態、修正形態ならびに変形形態が、本開示の検討から当業者には明らかになろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に接続された第1と第2領域を含む導電性の基準面、
該基準面の前記第1領域に隣接する第1の一対の信号線、
前記基準面の前記第2領域に隣接する第2の一対の信号線、及び、
前記電気的に接続された第1と第2領域の間に位置する前記基準面内のインピーダンスが増加した伸長領域
を含む多層回路部材。
【請求項2】
インピーダンスが増加した前記伸長領域が前記基準面内のスロットである、請求項1に記載の多層回路部材。
【請求項3】
導電性の第2基準面をさらに含み、前記第1と第2の一対の信号線が前記基準面と前記第2基準面との間に位置する、請求項2に記載の多層回路部材。
【請求項4】
前記第2基準面は該第2基準面内の第2スロットにより分割された電気的に接続された第1と第2領域を含み、前記第2基準面の前記電気的に接続された第1と第2領域は前記基準面の前記電気的に接続された第1と第2領域に概ね整列され、前記第2基準面の前記第2スロットは前記基準面の前記スロットに概ね整列されている、請求項3に記載の多層回路部材。
【請求項5】
前記基準面と前記第2基準面に電気的に接続する複数の第1と第2導電性部材をさらに含み、前記複数の第1導電性部材が前記第1の一対の信号線の反対側に位置し、前記複数の第2導電性部材が前記第2の一対の信号線の反対側に位置する、請求項4に記載の多層回路部材。
【請求項6】
前記複数の第1導電性部材は、前記スロットと前記第2スロットとの一方側において前記第1の一対の信号線と概ね平行に位置し、前記複数の第2導電性部材は、前記スロットと前記第2スロットとの反対側において前記第2の一対の信号線と概ね平行に位置する、請求項5に記載の多層回路部材。
【請求項7】
前記スロットが前記基準面の概ね端まで延設されている、請求項2に記載の多層回路部材。
【請求項8】
前記基準面はさらに前記第1領域に電気的に接続された隣接する第3領域と、前記第2領域に電気的に接続された隣接する第4領域を含み、さらに前記基準面の前記第3領域に隣接する第3の一対の信号線と前記基準面の前記第4領域に隣接する第4の一対の信号線をさらに含む、請求項1に記載の多層回路部材。
【請求項9】
前記基準面にてインピーダンスが増加した第2と第3伸長領域をさらに含み、インピーダンスが増加した前記第2領域は電気的に接続された前記第1と第3領域の間に位置し、インピーダンスが増加した前記第3領域は電気的に接続された前記第2と第4領域の間に位置している、請求項8に記載の多層回路部材。
【請求項10】
前記第1と第3の一対の信号線は信号を送信する前記回路部材のチャネルに電気的に接続され、前記第2と第4の一対の信号線は信号を受信する前記回路部材のチャネルに電気的に接続される、請求項8に記載の多層回路部材。
【請求項11】
前記基準面は絶縁層間に位置する形状が概ね平面な部材であり、前記第1と第2領域の間の電気的な接続は前記基準面の平面内にある、請求項1に記載の多層回路部材。
【請求項12】
前記基準面と前記第2基準面のそれぞれは、前記第1領域に電気的に接続された隣接する第3領域と、前記第2領域に電気的に接続された隣接する第4領域を含み、さらに前記第3領域の間に隣接する第3の一対の信号線を含み、前記第4領域の間に、隣接する第4の一対の信号線を含む、請求項4に記載の多層回路部材。
【請求項13】
前記基準面と前記第2基準面のそれぞれは、第2と第3スロットを含み、前記第2スロットは電気的に接続された前記第1と第3領域の間に位置し、前記第3スロットは電気的に接続された前記第2と第4領域の間に位置する、請求項12に記載の多層回路部材。
【請求項14】
前記第1と第2の一対の信号線の導線のそれぞれは、長さを有し、インピーダンスが増加した領域の長さは前記信号線の前記長さの少なくとも約75%に等しい、請求項1に記載の多層回路部材。
【請求項15】
空間的に離れ、電気的に接続された導電性の第1基準面と第2基準面とであって、電気的に接続された第1領域と第2領域とを含む第1基準面と、電気的に接続された第3領域と第4領域とを含む第2基準面、
前記第1基準面と前記第2基準面との間に位置し、前記第1基準面の前記第1領域と前記第2基準面の前記第3領域とに隣接する一対の信号線、
前記第1基準面の前記第2領域と前記第2基準面の前記第4領域とに近接した回路部品、及び、
前記第1基準面の電気的に接続された前記第1領域と前記第2領域の間でインピーダンスが増加した第1領域と、前記第2基準面の電気的に接続された前記第3領域と前記第4領域の間でインピーダンスが増加した第2領域を備える多層回路部材。
【請求項16】
ハウジング、
該ハウジング内の多層回路部材であって、該多層回路部材が電気的導電性のある第1と第2領域を持つ導電性の基準面を含み、前記第1と第2領域は電気的に接続され両領域の間に伸長されたスロットを有し、前記多層回路部材が前記基準面の前記第1領域に隣接し概ね平行な第1の一対の信号線と、前記基準面の前記第2領域に隣接し概ね平行な第2の一対の信号線とを含む、多層回路部材、及び、
該多層回路部材の一部分と相互接続されている複数の導線を有する結線を含むケーブルアセンブリ。
【請求項17】
前記ハウジングが導電性のある材料で構成される請求項16に記載のケーブルアセンブリ。
【請求項18】
導電性の第2基準面をさらに含み、前記第1と第2の一対の信号線は前記基準面と前記第2基準面の間に位置する請求項16に記載のケーブルアセンブリ。
【請求項19】
前記第2基準面は該第2基準面の第2スロットに分割された電気的に接続された第1と第2領域を含み、前記第2基準面の電気的に接続された前記第1と第2領域は前記基準面の電気的に接続された前記第1と第2領域に概ね整列され、前記第2基準面の前記第2スロットは前記基準面の前記スロットに概ね整列されている請求項18に記載のケーブルアセンブリ。
【請求項20】
前記基準面と前記第2基準面に電気的に接続している複数の第1と第2導電性ビアをさらに含み、前記複数の第1導電性ビアは前記第1の一対の信号線の反対側で配列内に位置し、前記複数の第2導電性ビアは前記第2の一対の信号線の反対側で配列内に位置する請求項19に記載のケーブルアセンブリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2013−510407(P2013−510407A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537993(P2012−537993)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/055453
【国際公開番号】WO2011/056977
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】