説明

多層構造体の製造方法

【課題】熱反応性組成物を反応させて形成される樹脂層と無機層状化合物層との密着性に優れる多層構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法。
(1)無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を基材層表面に塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して、無機層状化合物層(I)を形成する工程
(2)該無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(I)を形成し、予備構造体を製造する工程
(3)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドは、その優れた耐熱性や機械物性から広く工業的に利用され、特にそのフィルムは電子部品用基材として重要である。芳香族ポリイミド製フィルムは、例えば特許文献1に記載のように、溶媒と、熱反応性モノマーである芳香族カルボン酸と芳香族ジアミンとを含む熱反応性組成物溶液を、基材層上に塗工した後、加熱することで、芳香族カルボン酸と芳香族ジアミンとを重合反応させ、製造される。このようにして得られた芳香族ポリイミド製フィルムは、ガスバリア性に劣ることから、その使用方法には限界があり、さらなる用途展開のため、ガスバリア性の向上が求められている。
一方、ガスバリア性に優れる多層構造体として、無機層状化合物を含む層を含む多層構造体が知られている。例えば特許文献2には、熱可塑性樹脂製フィルム上に、無機層状化合物を含む層が積層された多層構造体が、ガスバリア性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−352912
【特許文献2】特開平03−30944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芳香族ポリイミド製フィルムにガスバリア性を付与するためには、特許文献2に開示されているような、無機層状化合物を含む層を芳香族ポリイミド製フィルムに積層することが有効であると考えられる。しかしながら、芳香族ポリイミドのように、基材層上にモノマーを含む熱反応性組成物溶液を塗工し、加熱してそのモノマーを重合反応させることによって形成される樹脂層に、無機層状化合物層を積層すると、密着性が不十分であることがあった。
【0005】
本発明の課題は、熱反応性組成物を反応させて形成される樹脂層と無機層状化合物層との密着性に優れる多層構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法である。
(1)無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を基材層表面に塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して、無機層状化合物層(I)を形成する工程
(2)該無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(I)を形成し、予備構造体を製造する工程
(3)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
また本発明は、他の面において、基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法である。
(1)熱反応性組成物層(I)を基材層表面に形成する工程
(2)該熱反応性組成物層(I)上に、無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して無機層状化合物層(I)を形成し、予備構造体を製造する工程
(3)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
さらに本発明は、他の面において、基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法である。
(1)熱反応性組成物層(I)を基材層表面に形成する工程
(2)該熱反応性組成物層(I)上に、無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して無機層状化合物層(I)を形成する工程
(3)該無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(II)を形成して予備構造体を製造する工程
(4)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)および(II)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
【発明の効果】
【0007】
本発明の多層構造体の製造方法によれば、熱反応性組成物を反応させて形成される樹脂層と無機層状化合物層との密着性に優れた多層構造体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第一の態様は、基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法である。
(1)無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を基材層表面に塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して、無機層状化合物層(I)を形成する工程
(2)該無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(I)を形成し、予備構造体を製造する工程
(3)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
【0009】
第一の態様における工程(1)で用いる無機層状化合物としては、溶媒への膨潤性、劈開性を有する粘土鉱物が好ましく用いられる。無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を形成している物をいう。層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス等の弱い結合力によってほぼ平行に積み重なった構造をいう。無機層状化合物の中でも特に溶媒への膨潤性を持つ粘土鉱物が好ましく用いられる。
【0010】
粘土鉱物は、一般に(i)シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、(ii)シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を両側から挟んでなる3層構造を有するタイプに分類される。(i)の2層構造タイプの粘度鉱物としては、カオリナイト族およびアンチゴライト族等の粘土鉱物が挙げられる。(ii)の3層構造タイプの粘土鉱物としては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族等の粘土鉱物が挙げられる。
【0011】
これらの粘土鉱物としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。また、これら粘土鉱物を有機物でイオン交換等の処理し、分散性等を改良したもの(朝倉書店、「粘土の事典」参照;以下、有機修飾粘土鉱物と称する場合もある)も無機層状化合物として用いることができる。粘土鉱物を処理する前記有機物としては、公知のジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩等の第 4 級アンモニウム塩やフォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩等を用いることができる。
【0012】
上記粘土鉱物の中でもスメクタイト族、バーミキュライト族およびマイカ族の粘土鉱物が好ましく、スメクタイト族が特に好ましい。スメクタイト族としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトが挙げられる。とりわけモンモリロナイトが好ましく用いられる。
2種類以上の無機層状化合物を用いてもよい。
【0013】
該無機層状化合物のアスペクト比は、ガスバリア性が向上するという観点から、20以上のものが好ましく用いられる。また、膨潤し劈開させやすく、ガスバリア性が向上するという観点から、該無機層状化合物のアスペクト比は、10000以下であることが好ましい。なお、無機層状化合物のアスペクト比とは、該無機層状化合物と液体媒体を含む無機層状化合物分散液中での値である。
【0014】
該無機層状化合物は、ガスバリア性、透明性、製膜性が向上するという観点から、平均粒径が10μm以下であることが好ましい。特に透明性が求められる用途では1μm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明において、無機層状化合物のアスペクト比(Z)は、式:Z=L/aで定義される。式中、Lは無機層状化合物の平均粒径であり、aは、無機層状化合物の単位厚さ、即ち、無機層状化合物の単位結晶層の厚みを示し、粉末X線回析法(「機器分析の手引き(a)」(1985年、化学同人社発行、塩川二朗監修)69頁参照)により求められる。
【0016】
無機層状化合物の平均粒径とは、液体媒体中の回折/散乱法により求めた粒径(体積基準のメジアン径)である。すなわち、無機層状化合物の分散液に光を通過させたときに得られる回折/散乱パターンから、ミー散乱理論等により、上記回折/散乱パターンに最も矛盾のない粒度分布を計算することにより求めることができる。具体的には、例えば粒度分布の測定範囲を適当な区間に分け、それぞれの区間について、代表粒子径を決定し、本来連続的な量である粒度分布を離散的な量に変換させて計算する方法が挙げられる。
【0017】
無機層状化合物としては、具体的には、下記の膨潤性試験による膨潤値が5以上のものが好ましく、膨潤値が20以上のものがより好ましい。また、下記の劈開性試験による劈開値が5以上のものが好ましく、劈開値が20以上のものがより好ましい。
【0018】
〔膨潤性試験〕
100mlメスシリンダーに液体媒体100mlを入れ、これに無機層状化合物2gを徐々に加える。23℃にて24時間静置後、上記メスシリンダー内における無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(膨潤値)が大きい程、膨潤性が高いことを示す。
【0019】
〔劈開性試験〕
無機層状化合物30gを液体媒体1,500ml中に徐々に加え、分散機(浅田鉄工株式会社製、デスパMH−L、羽根径52mm、回転数3,100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて、周速8.5m/分、23℃で90分間分散させた後、この分散液100mlをメスシリンダーに採取する。60分静置後、上記メスシリンダー内における層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から無機層状化合物分散層の体積(ml)を読む。この数値(劈開値)が大きい程、劈開性が高いことを示す。
【0020】
無機層状化合物分散液に含まれる液体媒体としては特に限定されないが、後述の無機層状化合物を膨潤かつ劈開させる液体媒体を用いることが好ましい。
【0021】
無機層状化合物を膨潤し劈開させる液体媒体としては、無機層状化合物が親水性の膨潤性粘土鉱物の場合には、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられるが、とりわけ水、アルコール、水−アルコール混合物が好ましい。
【0022】
また、無機層状化合物が有機修飾粘土鉱物の場合には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、フタル酸ジオクチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、シリコンオイルなどを液体媒体として用いることができる。
【0023】
多層構造体に含まれる無機層状化合物層における無機層状化合物の体積分率としては、90〜100vol%であることが好ましく、95〜100vol%であることがより好ましく、98〜100vol%であることがさらに好ましく、100vol%であることが最も好ましい。
【0024】
無機層状化合物分散液は、液体媒体および無機層状化合物を含む。該無機層状化合物分散液の調製方法は特に限定されないが、上述の劈開性試験と同様に、分散機を用いて、該無機層状化合物を液体媒体に徐々に加えて分散させることが好ましい。
無機層状化合物分散液を調製する場合には、無機層状化合物の分散性の観点から、高圧分散装置を用いて高圧分散処理することが好ましい。高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation 社製超高圧ホモジナイザー(商品名:マイクロフルイダイザー)、ナノマイザー社製ナノマイザー、マントンゴーリン型高圧分散装置、イズミフードマシナリ製ホモゲナイザーが挙げられる。高圧分散処理とは、無機層状化合物分散液を複数本の細管中に高速通過させた後に合流させて、無機層状化合物分散液同士あるいは該無機層状化合物分散液と細管内壁とを衝突させることにより、無機層状化合物分散液に高剪断および/または高圧を付加する処理方法である。高圧分散処理では、無機層状化合物分散液を管径1μm〜1000μm程度の細管中に通過させ、このとき100kgf/cm2以上の最大圧力が印加されるように処理することが好ましい。最大圧力は500kgf/cm2以上であることがより好ましく、1000kgf/cm2以上であることが特に好ましい。また無機層状化合物分散液が細管内を通過する際、該分散液の最高到達速度は100m/s以上であることが好ましく、圧力損失による伝熱速度は100kcal/hr以上であることが好ましい。
【0025】
無機層状化合物は通常、層間に陽イオンを有する。該陽イオンは通常ナトリウムイオンであるが、後述の方法によりナトリウムイオンをリチウムイオンに交換することが好ましく、水素イオンに交換することがより好ましい。
無機層状化合物の層間の陽イオン濃度を調整する方法としては特に限定されないが、公知のイオン交換処理を行えばよい。イオン交換処理とは、例えば水素イオンおよび/またはリチウムイオンを有するイオン交換樹脂と、層間の陽イオンがナトリウムイオンである無機層状化合物および液体媒体を含む分散液とを接触させた後に、イオン交換樹脂の残渣を取り除く方法や、層間の陽イオンがナトリウムイオンである無機層状化合物および液体媒体を含む分散液を、半透膜を介して、水素イオンおよび/またはリチウムイオンを含有する液と接触させ、圧力差あるいは電気透析を利用してイオン交換する方法が挙げられる。無機層状化合物分散液をイオン交換した後は、そのまま無機層状化合物層(I)を形成するための塗工液として用いることができる。
【0026】
このように、層間の陽イオンを交換した無機層状化合物を用いることにより、多層構造体に含まれる無機層状化合物層中の陽イオン濃度を制御することができる。多層構造体に含まれる無機層状化合物層中のナトリウムイオン濃度は、400μmol/g以下であることが好ましく、300μmol/g以下であることがより好ましく、100μmol/g以下であることがさらに好ましい。
また、多層構造体に含まれる無機層状化合物層中のリチウムイオンと水素イオンの合計の濃度が、400μmol/g以上であることが好ましく、500μmol/gであることがより好ましく、600μmol/gであることがさらに好ましい。
さらに好ましくは、ナトリウムイオン濃度が前記した条件を満たし、かつ、リチウムイオンと水素イオンの合計の濃度が、前記した条件を満たすことである。
多層構造体に含まれる無機層状化合物層が、前記したナトリウムイオン濃度や、リチウムイオン濃度、水素イオン濃度の要件を満たす場合には、耐水性に優れた多層構造体とすることができる。
【0027】
多層構造体に含まれる無機層状化合物層中の陽イオンの定性および定量方法については、誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて測定を行う。本発明では、誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて測定したナトリウム濃度、リチウム濃度をそれぞれナトリウムイオン濃度、リチウムイオン濃度とする。また水素イオン濃度については、イオン交換を実施していない無機層状化合物のナトリウムイオン濃度を測定し、その後イオン交換後の無機層状化合物のナトリウムイオン濃度およびリチウムイオン濃度を差し引くことによって求めることができる。
【0028】
無機層状化合物の固形分濃度が判っている無機層状化合物分散液が入手できる場合は、該無機層状化合物分散液から液体媒体を除去した試料を用いて各イオン濃度を測定することができる。また無機層状化合物分散液が入手できない場合は、後述する多層構造体全体の各イオン濃度を測定し、そこから無機層状化合物層以外の層に含まれる陽イオン濃度を差し引くことによって、各イオン濃度を求める方法ことができる。
【0029】
無機層状化合物分散液には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を含有する無機層状化合物分散液を塗工して、無機層状化合物層を形成することにより、該層と、それに隣接する層との密着性を向上させることができる。該無機層状化合物分散液に含まれる界面活性剤の含有量は、無機層状化合物分散液の重量を100重量%とするときに、密着性を向上させるという観点から、0.001重量%以上であることが好ましい。また、ガスバリア性を損なわないという観点から、界面活性剤の含有量は、5重量%以下であることが好ましい。
【0030】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤など、公知の界面活性剤を用いることができる。とりわけ炭素数6以上、24以下のアルキル鎖を有するカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリジメチルシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体等のエーテル型の非イオン性界面活性剤(シリコーン系非イオン性界面活性剤)や、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド化合物等のフッ素型非イオン性界面活性剤(フッ素系非イオン性界面活性剤)を使用することが密着性向上の観点から好ましい。
【0031】
無機層状化合物分散液を基材層表面に塗工して、塗工膜を形成する方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法等のグラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、ドクターナイフ法、ダイコート法、バーコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法、スピンコート法が挙げられる。本発明の製造方法で得られる多層構造体がフィルムである場合には、均一な厚みの層を設けることができることからグラビア法、スピンコート法あるいはダイコート法を採用することが好ましい。なお、塗工膜は、基材層表面の一部に形成してもよく、全面に形成してもよい。
【0032】
塗工膜を20〜150℃の温度条件下で乾燥処理し、該塗工膜から液体媒体を除去して、無機層状化合物層(I)を形成する。該温度条件は好ましくは30〜140℃であり、より好ましくは40〜130℃であり、さらに好ましくは50〜120℃である。乾燥処理する時間は通常1秒間〜24時間である。乾燥処理時の水蒸気濃度は、好ましくは0〜40g/m3である。該乾燥処理に用いる熱源は特に限定されるものではなく、熱ロール接触、熱媒接触(空気等)、赤外線加熱、マイクロ波加熱等、種々の方法を適用することができる。
【0033】
第一の態様において、工程(2)では、無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(I)を形成し、予備構造体を製造する。
熱反応性組成物とは、常温では液状、半固形状または固形状等であって常温下または加熱下で流動性を示す比較的低分子量の物質であるが、加熱処理により硬化反応や架橋反応を起こして分子量を増大させながら網目状の三次元構造を形成し得る組成物である。本発明で用いる熱反応性組成物は、工程(2)で使用する際には溶剤に可溶であり、工程(3)において加熱処理することによって形成される樹脂層が、溶剤に不溶であるものが好ましい。
【0034】
熱反応性組成物としては、互いに反応する2種類以上のモノマーを含む組成物や、加熱により重合してポリマーを形成するモノマーと、重合開始剤とを含む組成物等が挙げられる。互いに反応する2種類以上のモノマーを含む組成物としては、水酸基を含むモノマーと、カルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物が挙げられる。加熱により重合してポリマーを形成するモノマーとしては、エポキシ系化合物、(メタ)アクリロイル系化合物、アリル系化合物、ビニル系化合物が挙げられる。
熱反応性組成物は、エポキシ系化合物と重合開始剤とを含む組成物か、水酸基を含むモノマーと、カルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物であることが好ましい。
【0035】
上記エポキシ系化合物とは、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物をいう。上記エポキシ系化合物中のエポキシ基の数としては、1分子当たり1個以上であることが好ましく、1分子当たり2個以上であることがより好ましい。ここで、1分子当たりのエポキシ基の数は、エポキシ系化合物中のエポキシ基の総数をエポキシ系化合物中の分子の総数で除算することにより求められる。
【0036】
上記エポキシ系化合物としては、公知のエポキシ基を有する化合物を用いることができ、例えばビスフェノール型エポキシ系化合物、ノボラック型エポキシ系化合物、グリシジルエステル型エポキシ系化合物、グリシジルアミン型エポキシ系化合物、フルオレン型エポキシ系化合物が挙げられるが、分子内に芳香環を有するエポキシ系化合物であることが好ましい。またシルセスキオキサンユニット等のシロキサン結合を分子内に有するエポキシ系化合物も用いることができる。熱反応性組成物は、2種類以上のエポキシ系化合物を含んでいてもよい。
【0037】
エポキシ系化合物用の重合開始剤としては、例えば、ビス(4−アミノシクロヘキシル)、メタンジアミノジフェニルスルホン、1,5−アザビシクロ−(4,3,0)−ノネン−7およびそれらの塩類等のアミン類;無水フタル酸、無水ドデセニルコハク酸等の酸無水物類;ビスフェノ−ルF、フェノ−ルノボラック等の多価フェノ−ル類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;上述のようなアミンのBF3錯体化合物;芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩及びホスホニウム塩等のブレンステッド酸塩類;アジピン酸ジヒドラジッド及びフタル酸ジヒドラジッド等の有機酸ヒドラジッド類;ジシアンジアミド類;アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びカルボキシル基含有ポリエステル等のポリカルボン酸類等が挙げられる。反応速度の点から、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を対アニオンとした、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のイオン性熱潜在性カチオン重合開始剤;N−ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステル等の非イオン熱潜在性カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。また該重合開始剤は、分子内にポリイミド骨格を有することが好ましい。ここでいうポリイミド骨格とは、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された構造をいう。重合開始剤は、2種類以上用いてもよい。
【0038】
水酸基を含むモノマーと、カルボキシル基を含むモノマーとを含む組成物としては、例えば芳香族アルコールと芳香族カルボン酸とを含む組成物等が挙げられる。
具体的には、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせや、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸や、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせ、またこれらの芳香族ヒドロキシカルボン酸の一部を芳香族アミノカルボン酸に置き換えたもの、芳香族ジオールの一部を、フェノール性水酸基を有する芳香族アミンおよび/または芳香族ジアミンに置き換えたもの、を用いることができるが、溶剤への溶解性など取り扱いの容易さから、(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と(2)芳香族ジカルボン酸と(3)芳香族ジアミン、水酸基を有する芳香族アミンあるいは芳香族アミノ酸、とを含むことが好ましい。
【0039】
上記(1)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸などが挙げられるが、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
上記(2)で示される芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられるが、イソフタル酸を含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
上記(3)で示される芳香族ジアミン、水酸基を有する芳香族アミンあるいは芳香族アミノ酸としては、例えば、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、アミノ安息香酸などが挙げられるが、4−アミノフェノールを含むことが好ましい。またこれらを2種類以上用いても構わない。
【0040】
また上記(1)〜(3)は、エステル形成性誘導体を用いてもよい。カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、カルボキシル基が、ポリエステルを生成する反応を促進するような、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い誘導体となっているもの、カルボキシル基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。フェノール性水酸基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、フェノール性水酸基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。アミノ基のエステル形成性誘導体としては、例えば、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、アミノ基がカルボン酸類とエステルを形成しているものなどが挙げられる。
【0041】
熱反応性組成物が、芳香族アルコールと芳香族カルボン酸とを含む組成物である場合、下記に示す非プロトン性溶媒に可溶な範囲で、その一部をあらかじめ予備重合したものを用いても構わない。
非プロトン性溶媒しては、例えば、1−クロロブタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン系溶媒、アセトニトリル、サクシノニトリルなどのニトリル系溶媒、N,N‘−ジメチルホルムアミド、N,N‘−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホランなどのスルフィド系溶媒、ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸などのリン酸系溶媒などが挙げられる。
【0042】
無機層状化合物層(I)上に熱反応性組成物層(I)を形成する方法としては、熱反応性組成物を液体媒体に溶解または分散させた塗工液を、無機層状化合物層(I)上に塗工して塗工膜を形成し、該塗工膜から液体媒体を除去する方法が挙げられる。液体媒体を除去する際には、熱反応性組成物層に含まれるモノマーの反応をできるだけ抑えるよう、低温で乾燥する。その温度は、通常20〜150℃であり、乾燥時間は通常0.1秒間〜1時間である。工程(2)で得られる予備構造体における熱反応性組成物層(I)は、反応が全て完了しておらず、工程(3)において反応を進行させることができる層である。
熱反応性組成物層を形成するために用いる塗工液に含まれる液体媒体としては、該熱反応性組成物が溶解または分散する液体媒体であれば特に限定されないが、例えば上記有機修飾粘土鉱物を膨潤し劈開させる液体媒体や、上記非プロトン性溶媒が挙げられる。該塗工液には、密着性向上の観点から、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の含有量は、通常、該塗工液100重量%中0.001〜5重量%である。
無機層状化合物層(I)上に熱反応性組成物層を形成する方法としては、前記した基材層上に無機層状化合物層(I)を形成する方法と同様の方法が使用できる。
【0043】
第一の態様における工程(3)は、予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程である。本発明では、予備構造体を加熱することによって、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くすると同時に、熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成することが重要である。これによって、無機層状化合物層と樹脂層との密着性に優れる多層構造体を得ることができる。
工程(3)において予備構造体を加熱する条件としては、160〜400℃であることが好ましく、170〜380℃であることがより好ましく、200〜360℃であることがさらに好ましい。また該加熱処理は、水蒸気濃度が50g/m3未満の雰囲気下で実施することが好ましい。加熱処理する時間は通常1秒間〜24時間である。該加熱処理に用いる熱源は特に限定されるものではなく、工程(1)における乾燥処理と同様の方法を適用することができる。
【0044】
熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて形成される樹脂が、芳香族アルコールと芳香族カルボン酸とを含む組成物の熱反応物である場合は、芳香族ジアミン由来の構造単位、水酸基を有する芳香族アミン由来の構造単位、芳香族アミノ酸由来の構造単位、または前記構造単位の2種以上を全構造単位に対して10〜35モル%含むことが好ましい。また該樹脂は、構造単位として以下の式(1)〜(3)で示される構造単位を含み、式(1)で示される構造単位が30〜80モル%、式(2)で示される構造単位が35〜10モル%、式(3)で示される構造単位が35〜10モル%であることが好ましい。
式(1) −O−Ar1−CO−
式(2) −CO−Ar2−CO−
式(3) −X−Ar3−Y−
ここで、Ar1は、1,4−フェニレン、2,6−ナフタレン、または4,4‘−ビフェニレンを表わす。Ar2は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、または2,6−ナフタレンを表わす。Ar3は、1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンを表わす。Xは−NH−であり、Yは、−O−または−NH−を表わす。
【0045】
本発明の製造方法により得られる多層構造体は、基材層を有する。基材層を構成する材料は特に限定されるものではなく、金属や、樹脂、木材、セラミック、ガラス等が挙げられる。また基材層の形態も特に限定されるものではなく、紙や、布、不織布、フィルム等が挙げられる。
金属としては特に限定されないが、銅、鉄、銀、アルミニウム、シリカ、チタン等が挙げられ、またこれらの合金も含まれる。
樹脂としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができる。用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1などのオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体またはそのケン化物、エチレン−α・β不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α・β不飽和カルボン酸共重合体などのエチレン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系樹脂;ナイロン−6(Ny−6)、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6−Ny)等のアミド系樹脂;ポリアリレート;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン;AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂;;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロース等の疎水化セルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などのフッ素系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、セルロース誘導体等の樹脂単位重量あたりの水酸基の重量分率が20〜60%の割合を満たす水素結合性樹脂;カーボネート樹脂、サルホン樹脂、エーテルサルホン樹脂、エーテルエーテルケトン樹脂、フェニレンオキシド樹脂、メチレンオキシド樹脂、イミド樹脂等があげられる。
熱硬化性樹脂としては、公知のフェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、また上記熱反応性組成物の熱反応物からなる樹脂等が挙げられる。
光硬化性樹脂としては、公知のエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0046】
本発明の製造方法で得られる多層構造体がフィルムである場合には、基材層は無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれかであってもよい。
また基材層は、Ny-6/MXD6-Ny/Ny-6やPP/EVOH/PPのような多層フィルムであってもよく、アルミニウム、アルミナ、シリカが蒸着されたフィルムであってもよい。
【0047】
基材層には、これを他の層と積層するにあたり、コロナ処理、オゾン処理、電子線処理、イオン処理、シラン等のガスを用いたフレーム処理、常圧または減圧プラズマ処理等の表面処理を予め施していてもよい。また、基材層表面にアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層は、公知のエチレンイミン系、2液硬化型ウレタン系のアンカーコート剤等を用いて形成することができる。また熱反応性組成物層(I)に無機層状化合物層(I)を積層する場合や、無機層状化合物層(I)に熱反応性組成物層(I)を積層するにあたり、それぞれ熱反応性組成物層(I)や無機層状化合物層(I)についても上記表面処理を施してもよい。
【0048】
本発明の第二の態様は、基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法である。
(1)熱反応性組成物層(I)を基材層表面に形成する工程
(2)該熱反応性組成物層(I)上に、無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して無機層状化合物層(I)を形成し、予備構造体を製造する工程
(3)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
【0049】
第二の態様における熱反応性組成物層(I)は、第一の態様の工程(2)において熱反応性組成物層(I)を形成する際に用いる材料と同様の材料を用いて、同様の方法で形成することができる。第二の態様における工程(1)における熱反応性組成物層(I)、および工程(2)で得られる予備構造体に含まれる熱反応性組成物層(I)は、いずれも、反応が全て完了しておらず、工程(3)において反応を進行させることができる層である。ただし工程(2)における熱反応性組成物層(I)は、工程(1)で形成される熱反応性組成物層(I)よりも、該層に含まれるモノマーの反応が進行していてもよい。
熱反応性組成物層(I)は、基材層表面の一部に形成してもよく、全面に形成してもよい。
また、第二の態様における無機層状化合物層(I)は、第一の態様における無機層状化合物層(I)と同様の材料を用いて、同様の方法で形成することができる。
第二の態様では、工程(3)において予備構造体を加熱することにより、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くすると同時に、熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成する。これによって、無機層状化合物層と樹脂層との密着性に優れる多層構造体を得ることができる。
【0050】
本発明の第三の態様は、基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法である。
(1)熱反応性組成物層(I)を基材層表面に形成する工程
(2)該熱反応性組成物層(I)上に、無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して無機層状化合物層(I)を形成する工程
(3)該無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(II)を形成して予備構造体を製造する工程
(4)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)および(II)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
【0051】
第三の態様は、第二の態様の工程(2)の後、工程(2)で形成した無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(II)を形成して予備構造体を製造する工程を有する。熱反応性組成物層(II)は、第一の態様の工程(2)において熱反応性組成物層(I)を形成する際に用いる材料と同様の材料を用いて、同様の方法で形成することができる。熱反応性組成物層(I)と熱反応性組成物層(II)とは、同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
第三の態様の工程(3)で得られる予備構造体に含まれる熱反応性組成物層(I)および熱反応性組成物層(II)は、いずれも、反応が全て完了しておらず、工程(4)において反応を進行させることができる層である。ただし工程(3)で得られる予備構造体に含まれる熱反応性組成物層(I)は、工程(1)、(2)における熱反応性組成物層(I)よりも、該層に含まれるモノマーの反応が進行していてもよい。
熱反応性組成物層(II)は、無機層状化合物層(I)表面の一部に形成してもよく、全面に形成してもよい。
また、第三の態様における無機層状化合物層(I)は、第一の態様における無機層状化合物層(I)と同様の材料を用いて、同様の方法で形成することができる。
第三の態様では、工程(4)において予備構造体を加熱することにより、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くすると同時に、熱反応性組成物層(I)および(II)中の成分を反応させて樹脂層を形成する。これによって、無機層状化合物層と樹脂層との密着性に優れる多層構造体を得ることができる。
【0052】
本発明で得られる多層構造体を使用する際には、基材層の一部または全部を除去して使用してもよい。除去可能な基材層を構成する材料としては、銅、フッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。基材層を除去する方法としては特に限定されないが、例えば基材層が銅である場合、塩化第2鉄水溶液等に浸漬して、銅を溶解させることにより除去する方法が挙げられる。
基材層を除去する場合、各態様に含まれるいずれの工程の後に行ってもかまわないが、多層構造体を得た後、基材層を除去することが好ましい。
【0053】
本発明の製造方法で得られる多層構造体は、無機層状化合物層、樹脂層および基材層以外の層を有していてもよい。また無機層状化合物層、樹脂層と同じ組成の層をそれぞれ複数層有していてもよい。本発明の製造方法で得られる多層構造体の構成としては、例えば
基材層/無機層状化合物層/樹脂層(構成1)、
基材層/無機層状化合物層/樹脂層/追加層A(構成2)、
基材層/無機層状化合物層/樹脂層/追加層B/追加層C(構成3)、
基材層/無機層状化合物層/樹脂層/追加層D/追加層E/追加層F(構成4)、
基材層/樹脂層/無機層状化合物層(構成5)、
基材層/樹脂層/無機層状化合物層/追加層G(構成5)、
基材層/樹脂層/無機層状化合物層/追加層H/追加層I(構成6)、
基材層/樹脂層/無機層状化合物層/追加層J/追加層K/追加層L(構成7)
が挙げられる。
ここで追加層A、B、D、F、I、Kは無機層状化合物層と同じ組成であってもよく、また追加層C、E、G、H、J、Lは樹脂層と同じ組成であってもよい。
【0054】
本発明の製造方法で得られる多層構造体を構成する各層の厚みは特に限定されるものではない。無機層状化合物層および樹脂層の厚みは、本発明で得られる多層構造体をガスバリア材料として用いる場合、通常1μm〜50μmである。また耐屈曲性の観点から、無機層状化合物層の厚みは樹脂層の厚みよりも薄いことが好ましい。前記した追加層の厚みも通常1μm〜50μmである。基材層上にアンカーコート層を有する場合には、アンカーコート層の厚みは通常0.01〜5μmである。
【0055】
本発明の多層構造体を構成する各層は、必要に応じて紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0056】
本発明の製造方法で得られる多層構造体は、タイヤやねじ、液晶ディスプレイ用、有機EL用などフレキシブルディスプレイ用基板あるいは封止材といった光学部品部材、太陽電池あるいは色素増感太陽電池などの基板、封止材のような電子部品部材、また真空断熱材パネル等が挙げられる。
該多層構造体を、例えばディスプレイ用基板として用いた場合、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に比べ、軽量化、大型化という要求にこたえることができ、形状の自由度が高く、曲面表示が可能である。さらにはロールツーロール方式が可能であることからガラスよりも生産性が良くコストダウンの点でも有利である。また従来のプラスチック等を用いた基板と比較して、水蒸気や空気のガスバリア性が高く、例えば液晶セル内の液晶を劣化させ、表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまうといった問題を解決できる。
またシリコン型あるいは色素増感型太陽電池の基板用途として用いた場合、本発明で得られる多層構造体をバックシートあるいは前面板として用いれば、水蒸気や酸素等のガスが電極や半導体、色素、電解質に作用することで起こる光電変換特性の劣化を抑制することができる。また耐熱性にも優れることから、薄膜でシリコン層等を形成する場合にも好適に用いることができる。また電子部品部材として用いる場合、耐熱性に優れ、またエッチングの際の耐アルカリ性、耐酸性に優れることからプリント配線基板用途として用いる場合にも好適である。
また本発明の製造方法で得られる多層構造体を包装材料として用いることにより、該包装材料で包装された内容物の酸素および水蒸気劣化を防ぐことができる。該多層構造体を包装材料として用いる場合、その形状としては、フィルム、袋、パウチ、ボトル、ボトルキャップ、カートン容器、カップ、皿、トレー、タンク、チューブ等が挙げられる。本発明の製造方法で得られる多層構造体により包装される内容物としては、ケーキ、カステラ等の洋菓子、大福、もち等の和菓子、ポテトチップス等のスナック菓子等の菓子類、竹輪や蒲鉾等の水産加工品、味噌、漬物、蒟蒻、ミートボール、ハンバーグ、ハム・ソーセージ等の食品、コーヒー、茶、ジュース等の飲料品、牛乳、ヨーグルト等の乳製品、米飯、カレー等が例示される。また食料品以外に、洗剤、入浴剤、化粧品といったトイレタリー製品、ガソリン、水素ガス等の燃料、粉末剤、錠剤、点眼薬、輸液バック等の医薬品および医療機器、ハードディスク、シリコンウエハ等の電子部品および電子機器等の包装材料としても用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各種物性の測定方法を以下に記す。
【0058】
〔厚み測定〕
0.5μm以上の厚みは、市販のデジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッド MH−15M、日本光学社製)を用いて測定した。0.5μm未満の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)の断面観察より求めた。
【0059】
〔粒径測定〕
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を用いて測定した。後述の塗工液(1)〜(3)を希釈し、該希釈液中の無機層状化合物の平均粒径を、フローセルにて光路長4mmで測定し、得られた平均粒径を無機層状化合物の平均粒径Lとみなした。
なお、該塗工液(1)〜(3)を希釈せずに、該塗工液中の無機層状化合物の平均粒径をペーストセルにて光路長50μmで測定し、この平均粒径と、希釈液で求めた平均粒径Lの値とがほぼ一致したとき、該分散液中で無機層状化合物が充分に膨潤し劈開していると認定した。
【0060】
〔アスペクト比計算〕
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、無機層状化合物そのものについて粉末法による回折測定を行った。これにより無機層状化合物の単位厚さaを求め、上述の方法で求めた粒径Lを用いて、アスペクト比Zを、Z=L/aの式により算出した。
【0061】
〔無機層状化合物の層間距離〕
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、粉末法による回折測定を行い、予備構造体および多層構造体に含まれる無機層状化合物層中の無機層状化合物の層間距離を求めた。
各実施例および比較例で、予備構造体を得るまでに行なった乾燥処理および加熱処理と同じ熱処理を、無機層状化合物を含む塗工液(1)〜(3)に行い、上記手法により層間距離1を求めた。層間距離1を、予備構造体における無機層状化合物層中の無機層状化合物の層間距離とみなした。
また、各実施例および比較例で、多層構造体を得るまでに行なった乾燥処理および加熱処理と同じ熱処理を、無機層状化合物を含む塗工液(1)〜(3)に行い、上記手法により層間距離2を求めた。層間距離2を、多層構造体における無機層状化合物層中の無機層状化合物の層間距離とみなした。
【0062】
〔無機層状化合物の陽イオン濃度測定〕
後述の塗工液(1)〜(3)について、誘導結合プラズマ発光分析装置(VISTA−PRO、Agilent Technologies社製)を用いて、ナトリウムイオンおよびリチウムイオン濃度を測定した。試料の調製方法は以下のとおりである。試料0.5gを蒸発皿に採取したあと、電気炉で乾式灰化(500℃)し、有機物を除去した。蒸発皿上の残渣を36%高純度塩酸0.4mLで溶解し、超純水で10mLに希釈したものを測定供試液とし、塗工液(1)〜(3)中のナトリウムおよびリチウム濃度を測定した。その後、該塗工液(1)〜(3)に分散している無機層状化合物の固形分濃度から、該塗工液(1)〜(3)を用いて形成される無機層状化合物層中のナトリウム濃度およびリチウム濃度を算出し、これをナトリウムイオンおよびリチウムイオン濃度とした。また塗工液(2)を用いて形成される無機層状化合物層中の水素イオン濃度については、塗工液(1)を用いて形成される無機層状化合物層中のナトリウムイオン濃度から、塗工液(2)を用いて形成される無機層状化合物層中のナトリウムイオン濃度およびリチウムイオン濃度を差し引いた値とした。
【0063】
〔密着性評価〕
23℃、50%RH雰囲気下で24時間静置した多層構造体の表面に、カッターナイフで膜を貫通するように、1mm角100目の碁盤目状の切れ込みを入れ、これにテープ(No.2561 ニチバン(株)製)を貼り、次いで垂直方向に剥がして、樹脂層と無機層状化合物層との層間の剥離について、碁盤目100個あたりの剥離数で評価した。
○・・・0〜50%剥離
×・・・51〜100%剥離
【0064】
〔耐水性評価〕
50mm×50mmサイズの多層構造体を、水中に、23℃、1hr浸漬した。その後、塗膜の剥れを目視にて確認し、評価した。
○・・・剥離無し
×・・・一部剥離または全面剥離
【0065】
〔酸素透過率測定〕
JIS K7126に基づき、酸素透過率測定装置(OX−TRANML、MOCON社製)にて23℃、90%RHの条件下で測定を行った。
【0066】
〔水蒸気透過率測定〕
JIS K7129Bに基づき、水蒸気透過率測定装置(PERMATRAN W 3/33)にて、40℃90%RHの条件下で測定を行った。
【0067】
〔塗工液の作製〕
(1)塗工液(1)の作製
攪拌機にて、室温下、イオン交換水1000gを高速攪拌(3,000rpm、周速度=8.2m/分)のもと、該攪拌系に高純度モンモリロナイト(商品名:クニピアG;クニミネ工業(株)製)30gを徐々に加え、添加終了後、室温下にて60分間攪拌を続け、無機層状化合物層を形成するために用いる塗工液(1)を得た。該塗工液(1)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは560nm、粉末X線回折から得られるa値は1.22nmであり、アスペクト比Zは460であった。また該塗工液(1)から形成される無機層状化合物層中のナトリウムイオン濃度は900μmol/g、リチウムイオン濃度は測定限界以下であった。
【0068】
(2)塗工液(2)の作製
塗工液(1)1030gについて、イオン交換樹脂(デュオライト C255LFH;日本水研(株)製)を30g添加し、その後30分間攪拌し、混合液(1)を得た。その後、フィルター(フルイ目の開きが297μm)を用いて、該混合液(1)をろ過してイオン交換樹脂の残渣を除去し、無機層状化合物層を形成するために用いる塗工液(2)を得た。該塗工液(2)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは560nm、粉末X線回折から得られるa値は1.22nmであり、アスペクト比Zは460であった。また該塗工液(2)から形成される無機層状化合物層中のナトリウムイオン濃度は40μmol/g、リチウムイオン濃度は測定限界以下、水素イオン濃度は860μmol/gであった。
【0069】
(3)塗工液(3)の作製
イオン交換樹脂(デュオライト C−20LF;日本水研(株)製)60gと10%塩化リチウム水溶液600gとを混合し、次いで30分間高速攪拌(3,000rpm、周速度=8.2m/分)し、その後、該イオン交換樹脂を回収し、リチウム型イオン交換樹脂を作製した。塗工液(1)1030gについて、該リチウム型イオン交換樹脂を30g添加し、その後30分間攪拌し、混合液(2)を得た。その後、フィルター(フルイ目の開きが297μm)を用いて、該混合液(2)をろ過してイオン交換樹脂の残渣を除去し、無機層状化合物層を形成するために用いる塗工液(3)を得た。該塗工液(3)中の劈開したモンモリロナイト平均粒径Lは560nm、粉末X線回折から得られるa値は1.22nmであり、アスペクト比Zは460であった。また該塗工液(3)から形成される無機層状化合物層中のナトリウムイオン濃度は測定限界以下、リチウムイオン濃度は850μmol/gであった。
【0070】
(4)塗工液(4)の作製
ガラス製容器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸941g(5.0モル)、4−アミノフェノール273g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)および無水酢酸1123g(11モル)を仕込んだ。該容器内を十分に窒素ガスで置換した後、攪拌しながら、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、留出する副生酢酸および未反応の無水酢酸を留去しながら170分かけて320℃まで昇温し、内容物を取り出した。該内容物0.5gをN,N‘−ジメチルアセトアミド9.5gに加え、完全に溶解させ、熱反応性組成物層を形成するために用いる塗工液(4)を得た。
【0071】
(5)塗工液(5)の作製
分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、シクロヘキサノン206gと、クレゾールノボラック型エポキシ系化合物(ユニディックV8000C1 DIC(株)製)25.8g、およびポリイミド骨格含有化合物(ユニディックV8000 DIC(株)製)100gを混合し、高速攪拌し(3000rpm、周速度=8.2m/分)、室温下で30分間攪拌して溶解させ、熱反応性組成物層を形成するために用いる塗工液(5)を得た。
【0072】
[実施例1]
厚さ18μmの銅箔(3EL−VLP 三井金属鉱業(株)製;以下Cu)を基材層として用いた。該基材層のMIII処理面に前述の塗工液(4)を、アプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、基材層上に熱反応性組成物層(I)を形成した。その後、該熱反応性組成物層(I)上に、前述の方法と同様に、塗工液(2)をアプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、無機層状化合物層(I)を形成し、予備構造体(1)を得た。該予備構造体(1)について、窒素雰囲気下にて290℃、3時間加熱処理を行い、基材層、樹脂層および無機層状化合物層からなる多層構造体(1)を得た。該樹脂層の厚みは5μm、無機層状化合物層の厚みは2μmであった。その後該多層構造体(1)について評価を行った。結果を表1に示した。
【0073】
[実施例2]
基材層に厚さ50μmのポリイミドフィルム(カプトン200H/V 東レ・デュポン(株)製:PI)を用いた。該基材層についてコロナ処理を行い、該コロナ処理面に前述の塗工液(5)を、アプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、基材層上に熱反応性組成物層(I)を形成した。その後、該熱反応性組成物層(I)上に、前述の方法と同様に、塗工液(2)をアプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、無機層状化合物層(I)を形成し、予備構造体(2)を得た。該予備構造体(2)について、空気雰囲気下、200℃、1時間加熱処理を行い、基材層、樹脂層および無機層状化合物層からなる多層構造体(2)を得た。該樹脂層の厚みは5μm、無機層状化合物層の厚みは2μmであった。その後該多層構造体(2)について評価を行った。結果を表1に示した。
【0074】
[比較例1]
厚さ18μmの銅箔を基材層として用い、該基材層のMIII処理面に前述の塗工液(4)を、アプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、基材層上に熱反応性組成物層(I)を形成した。その後、290℃、3時間加熱処理を行い、基材層と樹脂層とからなる積層体を形成した。該樹脂層上に、塗工液(2)を用いて前述の方法と同様に、塗工液(2)をアプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、無機層状化合物層(I)を形成し、予備構造体(3)を得た。該予備構造体(3)について、窒素雰囲気下にて290℃、3時間加熱処理を行い、基材層、樹脂層および無機層状化合物層からなる多層構造体(3)を得た。該樹脂層の厚みは5μm、無機層状化合物層の厚みは2μmであった。その後該多層構造体(3)について評価を行った。結果を表1に示した。
【0075】
[比較例2]
厚さ50μmのポリイミドフィルムを基材層として用い、該基材層についてコロナ処理を行い、該コロナ処理面に前述の塗工液(5)を、アプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、基材層上に熱反応性組成物層(I)を形成した。その後、200℃、1時間加熱処理を行い、基材層と樹脂層とからなる積層体を形成した。該樹脂層上に、塗工液(2)を用いて前述の方法と同様に、塗工液(2)をアプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、無機層状化合物層(I)を形成し、予備構造体(4)を得た。該予備構造体(4)について、空気雰囲気下、200℃、1時間加熱処理を行い、基材層、樹脂層および無機層状化合物層からなる多層構造体(4)を得た。該樹脂層の厚みは5μm、無機層状化合物層の厚みは2μmであった。その後該多層構造体(4)について評価を行った。結果を表2に示した。
【0076】
[実施例3]
実施例1の予備構造体(1)の無機層状化合物層(I)上に、さらに塗工液(4)を熱反応性組成物層(I)と同様の方法でアプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、その後乾燥処理(80℃、20分間)し、熱反応性組成物層(II)を形成し、予備構造体(5)を得た。該予備構造体(5)について、窒素雰囲気下にて290℃、3時間加熱処理を行い、基材層、樹脂層、無機層状化合物層、樹脂層からなる多層構造体(5)を得た。該樹脂層の厚みはいずれも5μm、無機層状化合物層の厚みは2μmであった。その後該多層構造体(5)について評価を行った。結果を表2、3に示した。
【0077】
[比較例3]
比較例1の多層構造体(3)の無機層状化合物層上に、さらに塗工液(4)を熱反応性組成物層(I)と同様の方法でアプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、その後乾燥処理(80℃、20分間)し、熱反応性組成物層(II)を形成し、予備構造体(6)を得た。該予備構造体(6)について、窒素雰囲気下にて290℃、3時間加熱処理を行い、基材層、樹脂層、無機層状化合物層、および樹脂層からなる多層構造体(6)を得た。該樹脂層の厚みはいずれも5μm、無機層状化合物層の厚みは2μmであった。その後該多層構造体(6)について評価を行った。結果を表2、3に示した。
【0078】
[実施例4]
塗工液(4)のかわりに塗工液(2)を、塗工液(2)のかわりに塗工液(4)を用いた以外は実施例1と同様にして、予備構造体(7)を得た。該予備構造体(7)について、窒素雰囲気下にて290℃、3時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(7)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(7)について評価を行った。結果を表4に示した。
【0079】
[比較例4]
塗工液(4)のかわりに塗工液(2)を、塗工液(2)のかわりに塗工液(4)を用いた以外は比較例1と同様にして、予備構造体(8)を得た。該予備構造体(8)について、窒素雰囲気下にて290℃、3時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(8)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(8)について評価を行った。結果を表4に示した。
【0080】
[実施例5]
塗工液(5)のかわりに塗工液(2)を、塗工液(2)のかわりに塗工液(5)を用いた以外は実施例2と同様にして、予備構造体(9)を得た。該予備構造体(9)について、空気雰囲気下、250℃、1時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(9)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(9)について評価を行った。結果を表5、6に示した。
【0081】
[実施例6]
塗工液(2)のかわりに塗工液(3)を用いた以外は実施例5と同様にして、予備構造体(10)を得た。該予備構造体(10)について、空気雰囲気下、250℃、1時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(10)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(10)について評価を行った。結果を表5、6に示した。
【0082】
[実施例7]
実施例5と同様にして、予備構造体(11)を得た。該予備構造体(11)について、空気雰囲気下、200℃、1時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(11)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(11)について評価を行った。結果を表5、6に示した。
【0083】
[比較例5]
塗工液(2)のかわりに塗工液(1)を用いた以外は実施例5と同様にして、予備構造体(12)を得た。該予備構造体(12)について、空気雰囲気下、250℃、1時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(12)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(12)について評価を行った。結果を表5、6に示した。
【0084】
[比較例6]
厚さ50μmのポリイミドフィルムを基材層として用い、該基材層についてコロナ処理を行い、該コロナ処理面に前述の塗工液(2)を、アプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、基材層上に無機層状化合物層(I)を形成した。その後、250℃、1時間加熱処理を行い、基材層と無機層状化合物層とからなる積層体を形成した。該無機層状化合物層上に、塗工液(5)を用いて前述の方法と同様に、塗工液(5)をアプリケーターにて塗工(クリアランス150μm)し、乾燥処理(80℃、20分間)し、熱反応性組成物層(I)を形成し、予備構造体(14)を得た。該予備構造体(14)について、空気雰囲気下、250℃、1時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(14)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(14)について評価を行った。結果を表5、6に示した。
【0085】
[比較例7]
塗工液(2)のかわりに塗工液(3)を用いた以外は比較例7と同様にして、予備構造体(15)を得た。該予備構造体(15)について、空気雰囲気下、250℃、1時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(15)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(15)について評価を行った。結果を表5、6に示した。
【0086】
[実施例8]
実施例5と同様にして、予備構造体(11)を得た。該予備構造体(11)について、空気雰囲気下、350℃、1時間加熱処理を行い、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(18)を得た。該無機層状化合物層の厚みは2μm、樹脂層の厚みは5μmであった。その後該多層構造体(18)について評価を行った。結果を表7、8に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
【表7】

【0094】
【表8】

【0095】
〔参考例1〕
アプリケーターにて塗工するかわりに、スピンコーターにて塗工(回転速度1000rpm、10秒間)したこと以外は実施例5と同様にして、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(16)を得た。該無機層状化合物層の厚みは0.05μm、樹脂層の厚みは1μmであった。その後該多層構造体(16)について酸素透過度を測定したところ、10cc/m・day・atmであった。
【0096】
〔参考例2〕
アプリケーターにて塗工するかわりに、スピンコーターにて塗工(回転速度1000rpm、10秒間)したこと以外は比較例5と同様にして、基材層、無機層状化合物層および樹脂層からなる多層構造体(17)を得た。該無機層状化合物層の厚みは0.05μm、樹脂層の厚みは1μmであった。その後該多層構造体(17)について酸素透過度を測定したところ、50cc/m・day・atmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法。
(1)無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を基材層表面に塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して、無機層状化合物層(I)を形成する工程
(2)該無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(I)を形成し、予備構造体を製造する工程
(3)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
【請求項2】
基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法。
(1)熱反応性組成物層(I)を基材層表面に形成する工程
(2)該熱反応性組成物層(I)上に、無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して無機層状化合物層(I)を形成し、予備構造体を製造する工程
(3)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
【請求項3】
基材層、無機層状化合物層および樹脂層を含む多層構造体の製造方法であって、以下の工程を全て含む多層構造体の製造方法。
(1)熱反応性組成物層(I)を基材層表面に形成する工程
(2)該熱反応性組成物層(I)上に、無機層状化合物および液体媒体を含む無機層状化合物分散液を塗工して、塗工膜を形成し、次いで20〜150℃の温度条件下で乾燥処理を行い、該塗工膜から液体媒体を除去して無機層状化合物層(I)を形成する工程
(3)該無機層状化合物層(I)上に、熱反応性組成物層(II)を形成して予備構造体を製造する工程
(4)該予備構造体を加熱して、無機層状化合物層(I)における無機層状化合物の層間距離を狭くし、かつ熱反応性組成物層(I)および(II)中の成分を反応させて樹脂層を形成して、多層構造体を得る工程
【請求項4】
無機層状化合物分散液中の無機層状化合物のアスペクト比が、20〜10000である請求項1〜3のいずれかに記載の多層構造体の製造方法。
【請求項5】
多層構造体に含まれる無機層状化合物層における無機層状化合物の体積分率が、90〜100vol%である請求項1〜4いずれかに記載の多層構造体の製造方法。
【請求項6】
多層構造体に含まれる無機層状化合物層中のナトリウムイオン濃度が、400μmol/g以下である請求項1〜5いずれかに記載の多層構造体の製造方法。
【請求項7】
多層構造体に含まれる無機層状化合物層中のリチウムイオンと水素イオンの合計の濃度が、400μmol/g以上である請求項1〜6いずれかに記載の多層構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の多層構造体から、基材層を除去して積層体を製造する方法。

【公開番号】特開2012−24758(P2012−24758A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140338(P2011−140338)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】