説明

多層紙

【課題】紙幣及び諸証券等の偽造防止効果を必要とする用紙に関するものであり、さらには、抄紙機において、3層以上に抄き合わされた多層の用紙における上部紙層の一部と下部紙層の一部を除去して、中間層を露出させるための窓開部を形成して成る用紙に関するものである。
【解決手段】上部紙層1、中間層2及び下部紙層3の少なくとも3層から成る用紙において、中間層2には透明又は半透明における透明部6が形成されており、上部紙層1及び下部紙層3には、透明部6と同じ領域に紙層を除去して窓開部5、7を形成した透明窓8を有する多層紙4を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣及び諸証券等の偽造防止効果を必要とする多層紙に関するものであり、さらには、抄紙機において、3層以上に抄き合わされた多層紙における上部紙層の一部と下部紙層の一部を除去して、中間層を露出させるための窓開部を形成して成る多層紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偽造防止効果が望まれている紙幣及び諸証券等は、印刷による偽造防止対策が施されると共に、紙による偽造防止対策を施すことが望まれている。
【0003】
紙による偽造防止対策の一例として、スレッドが埋設された用紙におけるスレッド上の紙層を一部除去して、スレッドを露出させるための窓を生成する技術があり、長網抄紙機による窓開き、円網抄紙機による窓開き及びウエットパートの組合せによる窓開きがそれぞれ提案されている。
【0004】
円網抄紙機における両面窓開きを有する用紙として、針金又は薄板(金属その他)を切り抜いて作った型をワイヤーパート上に固定するか、高分子樹脂又はハンダ等の金属を溶かしてワイヤーパート上に固定させたものを抄き網として使い、この部分にスレッドを当てて用紙の表面開口部と裏面開口部の位置を合わせながら抄き合わせる偽造防止用紙が提案されている(例えば、特許文献1参照)
【0005】
また、円網抄紙機における片面窓開きを有する用紙として、第1の円網表面の同一円周上に、あらかじめ仮に1cm×1cmの形のテープで1cmの一定間隔で連続して網目をふさぐと、そのテープ部分だけパルプ繊維が存在しなくなり、1cm×1cmのテープ部分が窓となって、その窓の位置にスレッドを挿入し、第二の円網で全面を抄くことにより、紙の片面において、スレッドが露出と埋没を交互に繰り返して成る用紙の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、長網抄紙機又は円網抄紙機における片面窓開きを有する用紙として、用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部に、機能性を有した多層構造のスレッドが露出している偽造防止用紙が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、長網抄紙機又は円網抄紙機における片面窓開きを有し、窓部に機能性を有する用紙として、真珠顔料とバインダーを主体とする塗工液に蛍光発色剤を併用し、その塗工液を塗工した塗工紙を細巾にスリットして成るスレッドを、紙の少なくとも一方の面に抄き込んだ偽造防止用紙が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2000−017598号公報
【特許文献2】特許第3289274号公報
【特許文献3】特許第3262008号公報
【特許文献4】特開平07−056377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、スレッド又はプラスチック製フィルムを挿入した用紙は、用紙幅における一部の幅でしか挿入されておらず、また、抄紙方向の一定方向にしか挿入されていない。そのため、窓部が形成された用紙も、挿入されているスレッド等の抄紙方向の一方向のみでしか形成されておらず、さらにスレッド幅の領域しか形成されておらず、大きさや方向などの設計に制限がある。
【0010】
また、スレッド又はプラスチック製フィルムは、凹凸形状を持つ紙層との接着性が悪く、さらにパルプ繊維との親和性も悪いため、スレッド又はプラスチックフィルムが挿入されている部分で剥離しやすい。
【0011】
また、スレッド又はプラスチック製フィルムと紙層との剥離防止を軽減するために接着剤を用いるが、接着剤を塗工又はラミネートする工程が増える。
【0012】
また、作製工程から見て、プラスチック製フィルム内に機能性の材料を含有させることは困難であり、さらに作製後の手触り感の面から見て、紙とプラスチック製フィルムとでは異質感がある。
【0013】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、具体的には、上部紙層、中間層及び下部紙層の少なくとも3層から成る多層紙において、中間層には透明又は半透明から成る透明部が形成されており、上部紙層及び下部紙層には、透明部と同じ領域の紙層を除去して窓開部を形成した多層紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明における多層紙は、上部紙層、中間層及び下部紙層の少なくとも3層から成る多層紙において、上部紙層は、繊維から成り、上部紙層における所定の領域に窓開部が形成されて成り、中間層は、不織布から成り、不織布における所定の領域に透明又は半透明から成る透明部が形成されて成り、下部紙層は、繊維から成り、下部紙層における所定の領域に窓開部が形成されて成り、中間層の透明部の領域上の少なくとも一部に上部紙料層の窓開部の領域を有し、かつ、中間層の透明部の領域下の少なくとも一部に下部紙料層の窓開部の領域を有して透明窓と成ることを特徴とする。
【0015】
本発明における多層紙は、透明窓が、枚葉状態の多層紙に、抄紙機の抄紙方向に対して同一方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明における多層紙は、透明窓が、枚葉状態の多層紙に、抄紙機の抄紙方向に対して異なる方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明における多層紙は、透明部が、樹脂及びラテックスから選ばれる少なくとも1種類の透明化剤を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明における多層紙は、透明部に、さらに、蛍光顔料、パール顔料、発泡性顔料及び発色性顔料から選ばれる少なくとも1種類の機能性材料を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
中間層である不織布の所定の位置に透明層を設け、透明層の領域の上層及び下層を除去することで作製された透明窓を有する多層紙であるため、透明窓は自由に設計できる。具体的には、従来不可能であった抄紙方向以外の方向、例えば、軸方向(抄紙方向と直交する方向)、斜め方向及び複数の方向(抄紙方向と軸方向の組合せ等)に透明窓が形成された多層紙が得られる。
【0020】
透明窓は、透過光のほとんどを遮断しないため、透過で視認した時に真偽判別が容易にでき、かつ、複写機又はスキャナーでコピーした場合は、透明窓を通して照射光のほとんどを受光し、黒く透明窓が再現されることから偽造防止効果が高い。
【0021】
中間層に透明フィルムを用いて多層紙を作製した場合と比較し、本発明の構成では、透明層以外の不織布は繊維であり、上層と下層との剥離強度が強い。一方、フィルムを用いた場合は、上層及び下層と繊維がフィルムに絡み合わないので剥離強度が弱く、耐久性に劣る。
【0022】
不織布を透明にする透明化剤として、抄紙機の乾燥パートにおいて乾燥ドラムや搬送ロール等に熱接着しない透明樹脂を用いるため、形成された透明部は、透明フィルムを挿入した多層紙とは異なる手触り感や、用紙に似たしなやかさを得られ、さらに透明化剤に特殊な機能を有する材料を混ぜ込むため、光学的及び視覚的に機能性を有する透明窓が形成でき、偽造防止効果が高い。
【0023】
透明化剤の付与量を調整することにより、不透明度や光沢度の異なる透明部を簡単に形成でき、さらに、透明化剤の印刷と同時に他の印刷図柄も印刷でき、不織布への多機能加工が容易であることから、偽造防止効果が高くなる。
【0024】
透明フィルム又はホログラム等、機能性を有する材料を用紙の表面及び裏面に貼付した場合と比べ用紙の嵩を均一にできるため、用紙を積み重ねた際の形状安定性が向上する。
【0025】
熱融着性繊維による不織布を用い長網抄紙機により抄紙することで、紙層と不織布層が絡み合い、さらに不織布の透明部以外の部分は上部紙層と下部紙層との親和性が良いため、剥離防止効果に優れ、偽造防止効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、多層紙を示す図である。図2は、図1におけるX−X´断面を示す図である。図3は、透明窓の配置例を示す図である。図4は、空気圧又は液体噴射を利用した窓開部形成器による窓開部の形成方法を示す図である。図5は、ワイヤー上に紙料の載らない撥水性部分又は突起部分を形成することによる窓開部の形成方法を示す図である。
【0027】
まず、多層紙の構成について説明を行う。
【0028】
図1及び図2に示すように、透明窓(8)を有する多層紙(4)は、繊維から成る上部紙層(1)、不織布から成る中間層(2)及び繊維から成る下部紙層(3)を有して構成されている。
【0029】
本発明の不織布とは、織機を使わずに各種の繊維ウエブを機械的、化学的、熱的又はそれらの組合せによって処理し、接着剤又は繊維自身の融着力によって構成繊維を互いに接合して作った布のことをいう。
【0030】
繊維から成る上部紙層(1)には、所望の位置に窓開部(5)が形成されており、同じく繊維から成る下部紙層(3)にも、上部紙層(1)の窓開部(5)と同一箇所に窓開部(7)が形成されている。さらに、不織布から成る中間層(2)には、上部紙層(1)の窓開部(5)及び下部紙層(3)の窓開部(7)と同一箇所に透明部(6)が形成されている。
【0031】
上部紙層(1)及び下部紙層(3)に使用される繊維は、特に限定されるものではなく、木材及び木綿等の植物繊維を原料とするKP、SP等の化学パルプ、GP、TMP、CTMP等の機械パルプ及び古紙再生パルプ等のパルプを適宜選択して使用できる。
【0032】
不織布から成る中間層(2)に形成されている透明部(6)は、不織布に透明化剤を印刷又は塗工し、透明化剤を含浸させることにより形成される。透明部(6)は、完全な透明状態であっても良いが、完全な透明常態である必要はなく、ある程度の透明度を有した半透明状態であってもかまわない。
【0033】
透明化剤は、抄紙の乾燥時に乾燥ドラムや搬送ロール等に熱接着しない材料であれば、樹脂及びラテックス等、特に限定されるものではない。さらに、蛍光顔料、パール顔料、発泡性顔料又は発色性顔料等の特殊な機能を有する材料を透明化剤に含有することで、光学的及び触覚的に機能性を有する透明部(6)を形成する。
【0034】
枚葉状態の多層紙(4)における透明窓(8)の形状、領域、付与位置及び方向は任意に形成することが可能である。例えば、図3(a)に示すように、抄紙方向とは異なる方向に透明窓を形成する場合、図3(b)に示すように、抄紙方向と抄紙方向とは異なる方向の2方向に透明窓を形成する場合等が挙げられる。図3(a)、(b)においては、透明窓を複数形成しているが、透明窓は枚葉形状の多層紙に対し、一つだけの形成でもかまわない。
【0035】
また、不織布上に形成された透明部(6)と上部紙層に形成された窓開部(5)と下部紙層に形成された窓開部(7)は、各々の一部分が同じ領域で重なっていれば良く、その形状は必ずしも一致しなくても良い。不織布には、透明部(6)以外の領域に他の図柄(9)が印刷されていても良い。
【0036】
多層紙(4)の中間層に不織布(2)を用いることによって、抄紙の際に、下部紙層(3)、不織布から成る中間層(2)及び上部紙層(1)は、互いに繊維が絡み合って結合されるため、層間剥離防止効果に優れる。不織布を構成する繊維は、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール(EVA)又はポリオレフィン系等の熱融着性繊維を用いることにより、より層間剥離防止効果が向上する可能性はあるが、特に限定されるものではなく、何を用いても良い。
【0037】
不織布の厚みは10〜200μm程度であり、10〜60μm程度がより好ましい。不織布(2)の幅は特に限定されることなく、上部紙層(1)と下部紙層(3)の間の全領域に挿入しても良く、短冊状に設けても良い。短冊状に設ける場合は、複数本設けることも可能である。また、上部紙層(1)と下部紙層(3)の一部の領域、具体的には透明窓を設けるために必要な長さ分だけを挿入しても良い。
【0038】
また、多層紙に、その他の偽造防止技術を施すことが可能であり、有色繊維又は細片、無色蛍光繊維又は細片、有色蛍光繊維又は細片、磁性繊維又は細片、金属細片、アルミ細片、赤外吸収特性を有する繊維又は細片、赤外反射特性を有する繊維又は細片及びサーモクロミック繊維又は細片等、少なくとも一種類を混抄することも可能であり、さらに、スレッド又はすき入れ画像等を施すことができる。
【0039】
次に、多層紙の製造方法の説明を行う。
【0040】
不織布から成る中間層(2)に透明化剤を印刷又は塗工し、不織布に透明化剤を含浸させることにより透明部(6)を形成する。印刷方式は、フレキソ印刷、オフセット印刷又はインクジェット印刷等、不織布に印刷可能な方式であれば、特に限定されるものではない。塗工方式は、グラビア塗工、スプレー塗工又はワイヤーバー塗工等、不織布に部分的に塗工できる方式であれば、特に限定されるものではない。
【0041】
透明化剤を不織布に印刷又は塗工する位置や方向、形状は任意に設定できる。不織布への透明部(6)の形成と同時に、他の図柄(9)の印刷を行っても良い。また、透明化剤の付与量を制御することで、透明部の不透明度や光沢度を調整できる。
【0042】
抄紙機等を用いて、透明部形成済の不織布を紙層内に抄き合わせる。抄紙方法は、長網抄紙方式又は円網抄紙方式のいずれの方式も可能である。
【0043】
長網抄紙方式では、下層紙料供給槽からワイヤー上に供給した下層紙料により下部紙層を形成し、下部紙層の上面に不織布供給装置から帯状の不織布を連続的に供給し、不織布の更に上面に、上層紙料供給槽から供給した上層紙料により上部紙層を形成することで、上部紙層(1)と不織布と下部紙層(3)とが抄き合わされ多層紙が製造される。
【0044】
円網抄紙方式では、第1の円網上に供給された紙層(上部紙層)と第2の円網上に供給された紙層(下部紙層)の間に、帯状の不織布を連続的に供給することで、上部紙層(1)と不織布と下部紙層(3)とが抄き合わされ多層紙が製造される。
【0045】
上部紙層(1)の一部分と下部紙層(3)の一部分を除去して紙層に窓開きを施す方法は、空気圧又は液体噴射を利用した窓開部形成器による方法や、ワイヤー上に紙料の載らない撥水性部分又は突起部分をあらかじめ形成しておく方法等がある。
【0046】
図4に、空気圧又は液体噴射を利用した窓開部形成器による方法を示す。窓開部形成器(10)により下部紙層(3)に窓開部(7)を形成し、この窓開部(7)と不織布の透明部(6)が合うように、下部紙層(3)上に不織布を挿入する。さらに不織布上に上層紙料を供給して上部紙層(1)を形成し、窓開部形成器により不織布の透明部に合わせて上部紙層(1)に窓開部(5)を形成することで、両面窓開きの透明窓が形成される。
【0047】
他の方法として、図5に、ワイヤー上に紙料の載らない撥水性部分又は突起部分を形成することによる透明窓の形成方法を示す。あらかじめ抄紙機のワイヤー上に、撥水性テープ、高分子樹脂又はハンダ等の金属を溶かしたもの、針金又は薄板等の金属を切り抜いて作った型など、撥水性材料(11)を固定しておく、又はワイヤー上に突起を形成しておき、紙料がこの部分を避けて紙層を形成することにより、下部紙層(3)に窓開部(7)が形成される。不織布の透明部(6)は、この部分に合わせて挿入される。窓開部は、空気圧又は液体噴射による窓開部形成器(10)を用いて、透明部に合わせて上部紙層(1)に窓開部(5)を形成することで、透明窓(8)が形成される。円網抄紙法の場合には、第2の円網にも撥水性部分(11)や突起を形成しておくことにより、透明窓(8)を形成することもできる。
【0048】
上部紙層(1)及び下部紙層(3)に窓開部を施す方法は、不織布の透明部に合わせて上下の紙層に窓開部を形成できる方法であれば、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0049】
透明窓(8)が形成され、抄き合わされた多層紙(4)は、搾水ボックスを通過して水分が搾水され、乾燥装置内を通過して乾燥され、リール装置で巻き取り、最終製品として完成される。
【0050】
下層紙料供給槽又は上層紙料供給槽に貯留された原料の紙料特性を異ならせて、色、坪量又は繊維構成の異なる多層紙を作製することも可能である。色の調節については、繊維の種類の違い、顔料、染料の混入、漂白又は未漂白より可能であり、坪量の調節については原料濃度、原料吐出部の調整により可能であり、繊維構成の調節については繊維の種類、配合割合、繊維長及び叩解度等を変化させることで可能である。
【実施例1】
【0051】
透明化剤として、アクリレート系ラテックス(日本ゼオン製、PIT7427)を使用し、中間層となる不織布は、坪量12g/m、厚さ35μmのポリビニルアルコール製のものを用いた。
【0052】
コーター装置を用いて不織布へ透明化剤を塗工し、2×2cmの面積に乾燥重量で40g/mの透明化剤を含浸させた。塗工速度10m/minで塗工し、熱風乾燥温度100℃で乾燥した。
【0053】
長網抄紙機を用いて、多層紙を抄造した。あらかじめ長網抄紙機のワイヤー上に円形(直径2cm)の撥水性テープを貼り、紙料がこの部分を避けて紙層を形成することにより、下部紙層(3)に窓開部を形成した。不織布の透明部をこの部分に合わせて挿入し、窓開部を形成した。窓開部は、水噴射による窓開部形成器を用いて、透明部に合わせて上部紙層(1)に円形の窓開部を形成し、透明窓を形成した。
【0054】
透明窓が形成され、抄き合わされた透明窓を有する多層紙は、搾水ボックスを通過し、さらに50〜110℃の乾燥ドラム装置を通過して乾燥され、透明窓を有する多層紙が完成した。
【0055】
多層紙に形成された透明窓は、透明フィルムとは異なる手触り感や紙に似たしなやかさを持ち、異質感のない多層紙を作製することができた。
【実施例2】
【0056】
透明化剤として、アクリレート系ラテックス(日本ゼオン製、PIT7427)に、蛍光発光顔料(東芝社製、SPD−116S)を25wt%配合したものを使用した。中間層となる不織布は、坪量12g/m、厚さ35μmのポリビニルアルコール製のものを用いた。
【0057】
コーター装置を用いて、不織布へ透明化剤を塗工し、含浸させた。塗工条件は実施例1記載と同様とする。
【0058】
長網抄紙機を用いて、多層紙を抄造した。抄造条件、窓開部形成方法等は、実施例1記載と同様とする。
【0059】
多層紙に形成された透明窓は、透明フィルムとは異なる手触り感や紙に似たしなやかさを持ち、さらに可視光下で無色透明だが、紫外光下で赤色系に蛍光発光する偽造防止効果の高い多層紙を作製することができた。
【実施例3】
【0060】
透明化剤として、アクリレート系ラテックス(日本ゼオン製、PIT7427)に、蛍光発光顔料(根元特殊化学社製、D1230)を15wt%配合したものを使用した。中間層となる不織布は、坪量12g/m、厚さ35μmのポリビニルアルコール製のものを用いた。
【0061】
コーター装置を用いて、不織布へ透明化剤を塗工し、含浸させた。塗工条件は実施例1記載と同様とする。
【0062】
長網抄紙機を用いて、多層紙を抄造した。抄造条件、窓開部形成方法等は、実施例1記載と同様とする。
【0063】
多層紙に形成された透明窓は、透明フィルムとは異なる手触り感や紙に似たしなやかさを持ち、さらに可視光下で無色透明だが、紫外光下で青色系に蛍光発光する偽造防止効果の高い多層紙を作製することができた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施例における、多層紙を示す図である。
【図2】図1におけるX−X´断面を示す図である。
【図3】本発明の一実施例における、透明窓の配置例を示す図である。
【図4】本発明の一実施例における、窓開部の形成方法を示す図である。
【図5】本発明の一実施例における、窓開部の形成方法を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 上部紙層
2 不織布から成る中間層
3 下部紙層
4 多層紙
5 窓開部
6 透明部
7 窓開部
8 透明窓
9 不織布上の印刷図柄
10 窓開部形成器
11 撥水性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部紙層、中間層及び下部紙層の少なくとも3層から成る多層紙において、
前記上部紙層は、繊維から成り、前記上部紙層における所定の領域に窓開部が形成されて成り、
前記中間層は、不織布から成り、前記不織布における所定の領域に透明又は半透明から成る透明部が形成されて成り、
前記下部紙層は、繊維から成り、前記下部紙層における所定の領域に窓開部が形成されて成り、
前記中間層の透明又は半透明部の領域上の少なくとも一部に、前記上部紙料層及び前記下部紙料層の窓開部の領域を有し、透明窓と成ることを特徴とする多層紙。
【請求項2】
前記透明窓は、枚葉状態の前記多層紙に、抄紙機の抄紙方向に対して同一方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の多層紙。
【請求項3】
前記透明窓は、枚葉状態の前記多層紙に、抄紙機の抄紙方向に対して異なる方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載の多層紙。
【請求項4】
前記透明部は、樹脂及びラテックスから選ばれる少なくとも1種類の透明化剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3記載の多層紙。
【請求項5】
前記請求項4記載の前記透明部に、さらに蛍光顔料、パール顔料、発泡性顔料及び発色性顔料から選ばれる少なくとも1種類の機能性材料を含むことを特徴とする請求項1乃至4記載の多層紙。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−13531(P2009−13531A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176820(P2007−176820)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】