説明

多心ケーブル

【課題】短時間で容易に端末加工を行うことができる多心ケーブルを提供する。
【解決手段】多数本の電線2と、多数本の電線2の外周に形成された外部被覆層4とを有する多心ケーブル1において、多数本の電線2が並列に配置してなる電線群21と電線群21の電線2間に織り込まれる横糸22とからなるフラットケーブル3を有し、フラットケーブル3が縦添えされて収容されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に機器の曲げ・捻回・スライドを伴う部分で信号伝送用として使用される多心ケーブルに係り、特に、短時間で容易に端末加工を行うことができる多心ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機器の曲げ・捻回・スライドを伴う部分で信号伝送用として使用される多心ケーブルには、多数本の同軸ケーブルや絶縁ケーブルが含まれている。その一例を図6,7に示す。
【0003】
図6に示す従来の多心ケーブル70は、信号線としての同軸ケーブル71を複数本集合した同軸ケーブルユニット72と、絶縁ケーブル73を複数本集合した絶縁ケーブルユニット74と、中心介在(テンションメンバ)75と、これらの周囲に巻き付けられたバインドテープ76と、その外周に設けられた一括編組シールド77と、その外周に被覆された外部被覆層78とからなる。また、図7に示すように、冷却チューブ81を有する多心ケーブル80もある。
【0004】
これらの機器の曲げ・捻回・スライドを伴う部分で使用される多心ケーブルは、使用者等の使い勝手として柔らかい(可撓性を有する)多心ケーブルが求められており、例えば、25万回以上の屈曲・捻回・スライドに耐え得る機械特性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−101934号公報
【特許文献2】実開昭60−107521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、信号のデジタル化、データの高速伝送化が求められているため、機器に接続される多心ケーブルにおいては、線心数がさらに増加する傾向にある。しかしながら、このような線心数が増加した多心ケーブルでは、同軸ケーブルに着色できる色数が少ないため、色相が同じ複数の同軸ケーブルが多数本集合されて撚り合わされることとなる。このため、端末加工の際に、両端末から同じ色相の同軸ケーブル毎に導通を確認し、相応の極を探す必要があり、加工効率が非常に悪いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、短時間で容易に端末加工を行うことができる多心ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、多数本の電線と、前記多数本の電線の外周に形成された外部被覆層とを有する多心ケーブルにおいて、前記多数本の電線が並列に配置してなる電線群と前記電線群の電線間に織り込まれる横糸とからなるフラットケーブルを有し、前記フラットケーブルが縦添えされて収容されている多心ケーブルである。
【0009】
請求項2の発明は、前記フラットケーブルは、前記電線群にプラスチック紐が縦添えされている請求項1記載の多心ケーブルである。
【0010】
請求項3の発明は、前記フラットケーブルは、複数本積層された状態で収容されている請求項1又は2記載の多心ケーブルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間で容易に端末加工を行うことができる多心ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多心ケーブルを示す横断面図である。
【図2】本発明の多心ケーブルに用いられるフラットケーブルを示す図であり、(a)は上面図、(b)は横断面図、(c)は変形例である。
【図3】同軸ケーブルを示す横断面図である。
【図4】発泡同軸ケーブルを示す横断面図である。
【図5】絶縁ケーブルを示す横断面図である。
【図6】従来の多心ケーブルを示す横断面図である。
【図7】従来の多心ケーブルを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る多心ケーブルを示す横断面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る多心ケーブル1は、多数本の電線が収容され、その各電線の端末を機器に対応させて接続するためのものであり、多数本の電線は1枚又は複数枚(本実施の形態では、複数枚)のフラットケーブル3とされ、フラットケーブル3は、縦添えされて外部被覆層4内に収容されて構成される。
【0016】
より具体的に説明すると、多心ケーブル1は、中心介在(テンションメンバ)5と、信号線としての複数枚のフラットケーブル3と、これらの周囲に巻き付けられたバインドテープ9と、その外周に設けられた一括編組シールド10と、その外周に被覆された外部被覆層4とを備える。なお、多心ケーブル1は、絶縁ケーブルを複数本集合した絶縁ケーブルユニットや、ケーブルを長手方向に亘って冷却するための冷却チューブなどを更に有してもよい。
【0017】
フラットケーブル3は、図2(a),(b)に示すように、多数本(例えば、32本)の電線2を並べて配置してなる電線群21と、電線群21の電線2間を織り込むための樹脂からなる横糸22とを有する。
【0018】
電線2は、図3に示すように、内部導体31と、内部導体31の外周に設けられた絶縁体層(誘電体層)32と、絶縁体層32の外周に形成された外部導体層33と、外部導体層33の外周に設けられたジャケット34とからなる同軸ケーブル30で構成される。
【0019】
内部導体31は、導線35を複数本(図3では7本)撚り合わせて形成された撚線である。絶縁体層32は、PFA及び/又は発泡PFAからなる。外部導体層33は、導線36を絶縁体層32の外周に横巻きして形成される。
【0020】
横糸22は、電線群21の各電線2間を一本毎に飛び越しながら結んでいて、且つ電線群21の長手方向の一端から他端(図示左側から右側)まで螺旋状の形で幅方向の一側から他側(図示上側から下側)へジグザグに往復しながら、電線群21を長手方向でフラット形状に固定するように織り込まれる。この横糸22としては、銅線と銅めっきPET素線とからなる混合糸などを用いるとよい。
【0021】
横糸22は、電線群21の全長に亘って織り込まれるが、機器との接続時に接続端末(コネクタ)23を接続する際に、コネクタ23の接続を容易にするために、フラットケーブル3の両側の横糸22は除去される。
【0022】
横糸22の織り込み密度は、電線群21の中央部よりも両端部において粗くされるとよい。これにより、電線群21をフラットに保持すると共に、コネクタ23の接続時の横糸除去作業が容易になる。また、繰り返し屈曲、スライドされるフラットケーブル3の中央部分の耐屈曲性、耐スライド性を向上させることができる。また、横糸22の織り込み密度は、図2(c)に示すように、電線群21の全長に亘って一定であっても構わない。
【0023】
なお、電線2としては、上述の同軸ケーブル30に限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、内部導体31の外周に発泡絶縁体層41、補強層42をさらに設けた発泡同軸ケーブル40を用いてもよい。このように、絶縁体層を発泡絶縁体層41で形成することで、絶縁体層の低誘電率化が可能となり、信号の伝送速度を向上できる。
【0024】
各フラットケーブル3は、それぞれ色違いにされ見分けがつくように形成されていてもよい。具体的には、各フラットケーブル3に電線2と異なる色で、且つそれぞれ異なる色のプラスチック紐を縦添えし、これを電線群21と共に横糸22で編み込む。なお、フラットケーブル3の表裏(電線2の整列順)が判別できるように、プラスチック紐は電線群21の最外位置など電線群21の中央以外の位置に配置するとよい。
【0025】
これらフラットケーブル3は、中心介在5を中心軸として対称に配置されることが好ましい。また、フラットケーブル3は、複数本積層された状態で収容されている。なお、使用する電線2の本数によっては(電線2の本数が少ない場合には)単層状態で収容されていてもよい。
【0026】
外部被覆層4は、例えば、ふっ素樹脂、ポリウレタンチューブ、シリコーンチューブのいずれかからなる。これら材料は、所望のケーブル特性によって適宜選択するとよい。
【0027】
なお、上述したように多心ケーブル1が絶縁ケーブルユニットを有する場合には、絶縁ケーブルユニットを構成する各絶縁ケーブルとして、例えば図5に示すように、内部導体51と、内部導体51の外周に設けられた絶縁体層(誘電体層)52とからなるケーブル6を用いる。内部導体51は、例えば導線53を複数本(例えば、7本或いは19本(図5では7本))撚り合わせて形成された撚線である。
【0028】
この多心ケーブル1は、例えば、超音波診断装置とプローブとを接続するプローブケーブルとして用いられる。
【0029】
次に、多心ケーブル1を用いた機器の接続を説明する。
【0030】
先ず、多心ケーブル1の両端部の外部被覆層4、一括編組シールド10、バインドテープ9を剥いてフラットケーブル3をそれぞれ露出させる。
【0031】
その後、例えば各フラットケーブル3をそのプラスチック紐の色及び配置により判別し、これらフラットケーブル3の両端部をそれぞれコネクタ23の対応する電極に接続する。次いで、両端のコネクタ23を機器に接続することで機器間が接続される。
【0032】
このように、本実施の形態に係る多心ケーブル1では、信号線としての電線2がフラットケーブル3としてまとめられており、その配列が固定され、さらに異なる色のプラスチック紐によりフラットケーブル3自体の判別が可能なため、両端末で各電線2の導通を確認しながら接続する必要がない。
【0033】
従って、多心ケーブル1によれば、短時間で容易に端末加工を行うことができる。
【0034】
以上要するに、本実施の形態に係る多心ケーブルでは、フラットケーブルが縦添えされて収容されていることにより、フラットケーブルを構成する各電線が多心ケーブルの長手方向に亘って一定の位置に配線されるため、導通によって電線の両端を探すなどの作業を行うことなく電線の両端を容易に識別することができる。また、多心ケーブルに曲げ、捻回、スライドなどが加えられた場合に、電線がよじれて破断したりするのを防止することができる。
【0035】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 多心ケーブル
2 電線
3 フラットケーブル
4 外部被覆層
21 電線群
22 横糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の電線と、前記多数本の電線の外周に形成された外部被覆層とを有する多心ケーブルにおいて、
前記多数本の電線が並列に配置してなる電線群と前記電線群の電線間に織り込まれる横糸とからなるフラットケーブルを有し、前記フラットケーブルが縦添えされて収容されていることを特徴とする多心ケーブル。
【請求項2】
前記フラットケーブルは、前記電線群にプラスチック紐が縦添えされている請求項1記載の多心ケーブル。
【請求項3】
前記フラットケーブルは、複数本積層された状態で収容されている請求項1又は2記載の多心ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−204421(P2011−204421A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69539(P2010−69539)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】