説明

多成分分析方法および多成分分析装置

【課題】多種類の対象成分を有する試料の分析に際し、夾雑成分となるたんぱく質を除去すると同時に、性質の大きく異なった多成分の一斉分析を可能とする。
【解決手段】多成分分析方法は、たんぱく質含有試料を除たんぱく質用前処理カラムに負荷し、試料中に含まれる複数種の低分子化合物を除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮するとともに、たんぱく質を排出して除去する第1の工程と、第1の工程で前記除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮された複数種の低分子化合物を溶出して分析カラムに導入し、分析カラムにて対象多成分相互間の分離分析を行う第2の工程とを含む。第2の工程において前処理カラムに供給する溶離液は保持機構を構成して低分子化合物を保持する内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含む。各溶離液は、各内面修飾残基に保持された低分子化合物を溶出する性質と、分析カラムにおいて低分子化合物を分離する性質とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清、血漿、髄液、組織抽出液など生体試料中の代謝物多成分を一斉に分析することを可能にする分析方法および分析装置に関し、高速液体クロマトグラフ等に適用することができる分析方法および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血清、血漿、髄液、組織抽出液など生体試料を分離分析する手法および装置として液体クロマトグラフが広く用いられている。また、夾雑成分が多数含まれる試料の場合、特定の目的成分を保持濃縮すると同時に夾雑成分を排除する機構として保持濃縮機構を有する前処理カラムを備えた液体クロマトグラフが用いられている。
【0003】
血清、血漿、髄液等に代表される生体試料には一般的に多量のたんぱく質、たとえばアルブミンなどが多く含まれる。そのため、液体クロマトグラフによる分析に先立って除たんぱく処理が行われる。この除たんぱく処理は、限外ろ過膜などを用いて手操作で行うか、もしくは切り換えバルブにより自動前処理機構を有した液体クロマトグラフを用いて自動で行われている。
【0004】
従来技術の代表例として、血清、血漿に代表される生体試料中の遊離薬物の分析装置である「遊離型薬物測定方法及び装置」(特許文献1)が挙げられる。この特許文献1では、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を充てんした前処理カラムを用いて特定の血中遊離薬物の分析を行っている。同様の事例として、「生体試料中のペプチド分析方法及び装置」(特許文献2)がある。
【0005】
この他、異なった性質を持つ複数成分の分析に関わるものとして、「液体クロマトグラフ」(特許文献3)に示されるように、複数の切り換えバルブ上にそれぞれ独立した保持濃縮カラムを配置し、個別対象成分を各々保持濃縮する機構を有した前処理機能付液体クロマトグラフが知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−245620号公報
【特許文献2】特開2007−687号公報
【特許文献3】特開2002−372522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液体クロマトグラフを用いた分析は、合成物、天然物、代謝物等を分析対象とする。これら分析対象の内、合成物は試料中に含まれる混合成分の挙動が類似することが多いが、天然物や代謝物の場合には種々の性質のものが混合している。天然物や代謝物の一斉分析は、生化学的研究や臨床診断など多くの需要がある一方で、天然物や代謝物が数種から10種以上の化合物が対象となり、一般にその物性は多岐にわたっているとともに濃度が低いため、そのままでは分析困難である場合が多い。
【0008】
上記した特許文献1あるいは特許文献2では、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を充てんした前処理カラムを用いて、夾雑成分となるたんぱく質を除去するとともに、分析対象成分を保持濃縮することにより生体試料中の化合物分析を可能としている。これら文献1、2に示される手法に用いられている前処理カラムは、保持濃縮の機構が単一である。そのため、その保持濃縮の機構が有効である特定の対象成分あるいは性質が似通った一連の物質に特化することで有用な手法となる。一方、代謝物のように対象成分の性質が多岐にわたる場合には、前処理カラムは一種類の成分のみを保持濃縮するため、多種類の対象成分を一斉に分離分析することは困難である。
【0009】
一方、特許文献3に示される液体クロマトグラフでは、複数の切り換えバルブにそれぞれ独立した前処理カラムを有することによって、複数の成分をそれぞれ保持濃縮することを可能にしている。しかしながら、この方法では、それぞれの前処理カラムから分析カラムへ試料を導入する際に用いる溶媒が各々の前処理カラム毎に異なっている。そのため、各前処理カラムは個別に分析カラムに試料を導入する必要があり、結果的に同時に一斉分析を行うことはできない。
【0010】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、多種類の対象成分を有する試料の分析に際し、夾雑成分となるたんぱく質を除去すると同時に、性質の大きく異なった多成分の一斉分析を可能とすることを目的とする。
【0011】
本発明は、天然物や代謝物に含まれる多成分の一斉分析に好適な分析方法および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤により異なる成分を保持する機能を有するカラムを除たんぱく質用前処理カラムとして用い、方法の態様と装置の態様とすることができる。
【0013】
本発明の多成分分析方法は、たんぱく質含有試料を除たんぱく質用前処理カラムに負荷し、試料中に含まれる複数種の低分子化合物を除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮するとともに、たんぱく質を排出して除去する第1の工程と、第1の工程で前記除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮された複数種の低分子化合物を溶出して分析カラムに導入し、当該分析カラムにて対象多成分相互間の分離分析を行う第2の工程とを含む。
【0014】
第2の工程において前記除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、内面修飾残基に保持された低分子化合物を溶出する性質と、分析カラムにおいて低分子化合物を分離する性質とを備える。
【0015】
また、本発明の多成分分析装置は、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤により異なる保持機構を有するカラムを除たんぱく質用前処理カラムとして備えた前処理部と、たんぱく質含有試料を前処理部に供給する試料導入部と、除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮された低分子化合物を溶出させる溶離液を供給する溶離液供給部と、溶出した低分子化合物を分析する分析部と、試料導入部を除たんぱく質用前処理カラムに接続する分離用流路と、溶離液供給部を前記除たんぱく質用前処理カラムに接続し、この除たんぱく質用前処理カラムからの溶出液を分析部に導く分析用流路との間で流路を切り換える流路切換え部とを備える。
【0016】
除たんぱく質用前処理カラムは、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤による異なる成分を保持する機能を複数の形態で構成することができる。
【0017】
第1の形態は、内面修飾残基を異にする複数の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合充てんする構成である。この第1の態様の除たんぱく質用前処理カラムは、少なくとも2種以上の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合充てんして成り、各内面修飾型除たんぱく質用充てん剤はそれぞれ保持する成分を異にする内面修飾残基を有する。第2の工程において前記除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、各充てん剤がそれぞれ有する内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含む。
【0018】
第2の形態は、1つの内面修飾型除たんぱく質用充てん剤が複数種の内面修飾残基を有する構成である。この第2の態様の除たんぱく質用前処理カラムは、保持する成分を異にする内面修飾残基を少なくとも2種類以上有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を充てんして成る。第2の工程において、除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、充てん剤が有する複数種の内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含む。
【0019】
第3の形態は、複数の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を有し、各内面修飾型除たんぱく質用充てん剤は複数種の内面修飾残基を備える構成である。この第3の態様の除たんぱく質用前処理カラムは、保持する成分を異にする内面修飾残基を少なくとも2種類以上有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を少なくとも2種以上混合充てんして成る。第2の工程において、除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、各充てん剤が有する複数種の内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含む。
【0020】
また、内面修飾残基は、低分子化合物が有する複数の物性に基づいて相互作用する複数の官能基から少なくとも1つを選択することができる。物性は、イオン性の強弱、疎水性の強弱、化学的特性の強弱、物理的特性の強弱、生化学的相互作用の強弱であり、除たんぱく質用前処理カラムは、これら複数の物性から少なくとも2つの物性を任意に選択し、選択した物性と相互作用する官能基を充てん剤に内面修飾する。内面修飾型除たんぱく質用充てん剤に持たせる官能基の組み合わせは、分析対象の成分に応じて定めることができる。
【0021】
多成分分析装置が備える分析部は、除たんぱく質用前処理カラムからの溶出液を導入して、低分子化合物を分離する分析カラムと、分析カラムで分離した低分子化合物を検出する検出器とを備える。
【0022】
血清、血漿等に代表される生体試料中の代謝物を一斉分析するためには、除たんぱく質前処理が不可欠である。除たんぱく質前処理をオンライン自動化するためにはカラムスイッチング法と内面修飾型除たんぱく質用充てん剤があわせて用いられる。内面修飾型除たんぱく質用充てん剤は、低分子化合物が充てん剤の細孔に浸透し、細孔内に修飾した残基との相互作用によって浸透した成分が保持濃縮される。一方、たんぱく質などの高分子化合物は細孔に浸透することなく排出される。しかしながら、代謝物等の多成分を一斉分析すること想定した場合、対象となる代謝物は一般に多岐にわたる物性を持つことから、単一の保持機構では一斉分析という要求は満足し得ない。
【0023】
この多成分に一斉分析という要求に対して、少なくとも2種類以上の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合充てんした、いわゆるミックスモード充てん型前処理カラムを用いることによって、夾雑成分となるたんぱく質を除去するとともに、それぞれの保持濃縮機構が対象とする成分を保持濃縮することで多成分の同時の保持濃縮が可能となると想定される。
【0024】
本発明は、前処理カラム内に性質の異なった内面修飾残基を複数有することができれば、性質が多岐にわたる代謝物を一斉に保持濃縮することによって多成分の一斉分析が可能となるという想定に基づくものである。
【0025】
ここで、例えば代謝物成分の物性はいくつかに分類することができる。たとえば、イオン性の強弱、疎水性の強弱、特定の成分の化学的特性の強弱、特定の成分の物理的特性の強弱、あるいは、抗原抗体反応に代表される生化学的相互作用の強弱などがある。内面修飾型除たんぱく質用充てん剤は、代謝物成分のこれら物性に対応する官能基を化学修飾することによって当該成分を捕捉し、保持濃縮することができる。
【0026】
例えば、イオン性の強弱の物性の観点では、強イオン交換基もしくは弱イオン交換基の官能基を内面修飾して内面修飾残基とすることで、強イオンあるいは弱イオンの成分を選択的に保持濃縮する。また、疎水性の強弱の物性の観点では、逆相または順相基の官能基を内面修飾して内面修飾残基とすることで、移動相に対する極性の高低によって成分を選択的に保持濃縮する。特定の成分の物理的特性の強弱の物性の観点では、特定成分と官能基の容積の差によって成分を選択的に保持濃縮する。また、抗原抗体反応を有する基質の強弱によって成分を選択的に保持濃縮する。
【0027】
これら物性の間は直交性を有し、相互に干渉せずそれぞれ独立した特性であるため、これら物性を任意に組み合わせることができ、分析対象が有する成分に応じて特定の物性を選択することができる。
【0028】
仮に、イオン交換残基を内面修飾した除たんぱく質用充てん剤と、逆相残基を内面修飾した除たんぱく質用充てん剤とを混合充てんした前処理カラムを用いて除たんぱく質前処理を行った場合には、イオン交換により充てん剤細孔内に保持濃縮される成分、および疎水性相互作用によりに充てん剤細孔内に保持濃縮される成分の、双方の成分が同時に前処理カラム内に保持濃縮される。
【0029】
ここで、一般的にイオン性の強い物質は疎水性が弱く、逆に疎水性の強い物質はイオン性が弱いことが多いと考えることができるため、イオン性の強弱と疎水性の強弱を組み合わせた内面修飾残基を有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合して前処理カラムに充てんすることによって、両性質を相補的に用いた多成分の保持濃縮が可能となる。
【0030】
このように、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤によって、前処理カラムに異なる成分を保持する機能を持たせた場合において、前処理カラムに単に複数の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合充てんしただけでは、各内面修飾型除たんぱく質用充てん剤と分析用溶離液との整合性が必ずしもとることはできず、供給した分析用溶離液では保持濃縮した成分の溶出分離が不十分となる場合がある。成分の溶出分離が不十分であると、前処理カラムから分離を行う分析カラムへ試料を効率よく導入することはできないことになる。
【0031】
このような課題に対して、本発明は、ミックスモード内面修飾型除たんぱく質用充てん剤に保持された分析対象成分を溶出し効率よく分析カラムに導入できるような性質をあわせもった分析カラム用溶離液を用いることによって、前処理カラムに保持された分析対象成分の一斉分析を行うことが可能となる。
【0032】
保持濃縮された成分を前処理カラムから溶出させて分析カラムに導入する工程は、バルブの切り換えにより行う。
【0033】
分析カラムに接続された前処理カラムに分析用溶離液を導入する際に、混合充てんした前処理カラムから対象成分を溶出させ、かつ分析カラムにおいて分離も効率よく行われるように、前処理カラム内の充てん剤の複数の内面修飾残基の性質に適応した複数の溶離液を混合したものを分析用溶離液として用いる。
【0034】
例えば、イオン交換残基を内面修飾した除たんぱく質用充てん剤と、逆相残基を内面修飾した除たんぱく質用充てん剤とを混合充てんした前処理カラムを用い、これによって除たんぱく質前処理を行った場合において、分析カラムとして前処理カラムに比べて作用の強い逆相残基を有する分析カラムを用いた場合には、分析用の溶離液として塩を含む緩衝溶液と有機溶媒の混合溶液と混合したものを用いることで、イオン交換残基の保持された成分と逆相残基に保持された成分とを溶出させると共に、分析カラムにおける分離を効率良く行うことができる。
【0035】
緩衝溶液は分析用カラムにおける溶離液pHを一定にし、分析を安定化させるという作用効果とともに、前処理カラムのうちイオン性内面修飾残基に保持された代謝物成分を溶出させて分析カラム側に導入する作用効果の双方の作用効果を兼ね備えることができる。
【0036】
また、分析用移動相に含まれる有機溶媒は、分析用カラムにおける分離の作用効果を奏するほか、前処理カラムのうち逆相内面修飾残基に保持された成分を溶出させ、分析カラム側に導入する作用効果の双方の作用効果を兼ね備えることができる。したがって、結果的に、前処理カラムに保持濃縮された多成分は効率よく分析カラム側に導入され、一斉分析が可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、多種類の対象成分を有する試料の分析に際し、夾雑成分となるたんぱく質を除去すると同時に、性質の大きく異なった多成分を一斉分析することができる。
【0038】
また、本発明によれば、天然物や代謝物に含まれる多成分を一斉分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の多成分分析方法および多成分分析装置に用いる前処理カラムの構成例を説明するための概略図であり、前処理カラム内に充てんする内面修飾型除たんぱく質用充てん剤の概略構成を模式的に示している。
【0041】
図1(a)は前処理カラムの第1の形態を示している。この前処理カラム10Aは、カラム10a内に、内面修飾残基を異にする複数の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20a、20bを混合充てんする構成である。前処理カラム10Aは、少なくとも2種以上の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20a、20bを混合充てんして成る。内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20aが備える内面修飾残基21aと、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20bが備える内面修飾残基21bとは保持する成分を異にする。この構成によって、1つの前処理カラム10Aによって異なる成分の保持濃縮機能を持たせることができる。
【0042】
前処理カラム10Aに対して、各充てん剤がそれぞれ有する内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を供給する。これによって、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20a、20bからそれぞれ保持濃縮されていた成分を溶出させることができる。
【0043】
図1(b)は前処理カラムの第2の形態を示している。この前処理カラム10Bは、カラム10a内に、複数種の内面修飾残基を有する1種の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を充てんする構成である。前処理カラム10Bは、保持する成分を異にする内面修飾残基21cを少なくとも2種類以上有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20cを充てんして成る。図1(b)は、2種類の内面修飾残基21c1、21c2を有する構成例を示している。
【0044】
内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20cが備える内面修飾残基21c1と内面修飾残基21c2とは保持する成分を異にする。この構成によって、1つの前処理カラム10Bによって異なる成分の保持濃縮機能を持たせることができる。
【0045】
前処理カラム10Bに対して、各充てん剤がそれぞれ有する内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を供給する。これによって、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20cに保持濃縮されていた複数種の成分を溶出させることができる。
【0046】
図1(c)は前処理カラムの第3の形態を示している。この前処理カラム10Cは、カラム10a内に、複数の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20d、20eを充てんし、各内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20d、20eは複数種の内面修飾残基21d1、21d2、および21e1、21e2を備える構成である。
【0047】
前処理カラム10Cは、保持する成分を異にする内面修飾残基を少なくとも2種類以上有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を充てんして成る。さらに、各内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20d、20eは保持する成分を異にする内面修飾残基21を少なくとも2種類以上有している。図1(c)は、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20dは、保持する成分を異にする内面修飾残基20d1、20d2を有し、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20eは、保持する成分を異にする内面修飾残基20e1、20e2を有有する構成例を示している。
【0048】
この構成によって、1つの前処理カラム10Cによって異なる成分の保持濃縮機能を持たせることができる。
【0049】
前処理カラム10Cに対して、各充てん剤がそれぞれ有する内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を供給する。これによって、内面修飾型除たんぱく質用充てん剤20d、20eに保持濃縮されていた複数種の成分を溶出させることができる。
【0050】
前処理カラムに充てんする充てん剤は、例えば、外表面がタンパク質に対して不活性になる処理が施され、孔内面に成分を捕捉する化学修飾を施すことで形成することができる。充てん剤の外表面をタンパク質に対して不活性になるように処理する方法としては、例えば、シリカゲルの外表面をタンパク質に対して不活性なポリマーでコーティングしたり、シリカゲルの外表面をアルブミンなどのタンパク質で予めコーティングして新たなタンパク質が吸着しないようにすることなどが挙げられる。
【0051】
充てん剤の孔内面を化学修飾する方法としては、オクタデシル基やイオン交換基等の官能基で化学修飾することなどを挙げることができる。そのような充てん剤を充てんしたカラムの具体的なものとしては、シリカゲルの外表面をタンパク質に対して不活性なポリマーでコーティングし穴内面のみをオクタデシル基で化学修飾した充てん剤を充てんしたもの(製品として、Shim−pack MAYI−ODS:株式会社島津製作所の製品)がある。
【0052】
これらの充てん剤を充てんした内面浸透制限型カラムに血清や血漿などの生体試料を導入すると、タンパク質結合型成分は、たんぱく質のサイズの大きさによってこの充てん剤に捕捉されずに排出され、遊離型の成分は充てん剤の孔に入り化学修飾されている内面に捕捉される。これらの構成については、特許文献1に記載されている。
【0053】
次に、図2を参照して本発明の多成分分析装置の一構成例を説明する。
【0054】
前処理カラム10は内面修飾型除たんぱく質用充てん剤が充てんされ、流路切換え部を構成する切換バルブ9の2つのポートA2、A5間に接続されている。
【0055】
切換バルブ9の他の1つのポートA6には前処理カラム10に試料を試料導入液(トラップ用移動相)により導入するための試料導入部4が接続され、試料導入部4と試料導入液を供給する液だめ1との間には、脱気装置2および送液ポンプ3を備えている。
【0056】
切換バルブ9の他の1つのポートA3にはグラジエントミキサ8が接続され、さらにグラジエントミキサ8には、複数種の分析用溶離液を供給するための溶離液供給部5の溶離液溜め5a、5bが接続され、グラジエントミキサ8と溶離液を供給する各溶離液溜め5a、5bとの間には、それぞれ脱気装置6a、6bおよび送液ポンプ7a、7bを備えている。
【0057】
目的対象物に応じて種々の溶離液を使用することができ、この構成例では、2種類の溶離液を混合してグラジエント分析を行うことができる構成としている。
【0058】
切換バルブ9の他のポートA4には、分析部15が接続されている。分析部15は、高速液体クロマトグラフの分析用カラム11が接続され、分析用カラム11の下流には分析用カラム11からの溶出液から成分を検出するために、フォトダイオードアレイ検出器12、蛍光検出器13が設けられ、廃液部19に排出される。検出器12、13の下流側には質量分析計22を接続してもよい。フォトダイオードアレイ検出器12、蛍光検出器13の検出信号は、データ処理部14によってデータ処理され定性分析、定量分析が行われる。
【0059】
切換バルブ9の他の1つのポートA1は前処理カラム10から流出する液を排出部18に排出する排出用ポートである。
【0060】
流路切換え部を構成する切換バルブ9は、試料導入部4を前処理カラム10に接続する前処理用流路16と、溶離液供給部5を前処理カラム10に接続し前処理カラム10からの溶出液を分析部15に導く分析用流路17との間で流路を切り換える。
【0061】
図2の構成例において、まず切換バルブ9を図中の二重線で示す流路に切り換え、送液ポンプ3から試料導入液を供給し、試料導入部4から分析対象の試料、例えば血漿を注入する。注入された試料は前処理カラム10を通り、試料中のたんぱく質は排出用ポートから排出部18へ排出され、目的とする成分が前処理カラム10に捕捉され保持濃縮される。
【0062】
その後、切換バルブ9を図中の破線で示す流路に切り換える。送液ポンプ7a、7bを作動させ、グラジエントミキサ8で混合した溶離液を切換バルブ9から前処理カラム10に供給し、前処理カラム10に保持濃縮されていた成分を溶出して切換バルブ9から分析用カラム11に導入する。分析用カラム11では溶出された溶出液中の成分を夾雑物から分離し、フォトダイオードアレイ検出器12、蛍光検出器13に導き、定性と定量を行なう。
【実施例1】
【0063】
以下、代謝物の多成分としてトリプトファン代謝物を例としてその実施例を説明する。 トリプトファンは主要天然アミノ酸の一種であり、代表的な代謝経路としてキヌレニンを経由する代謝経路ならびにセロトニンを経由する代謝経路が知られている。 キヌレニン経路による代謝物は、総じてアミノ残基を複数有する陽イオン性が強い物質となる一方、セロトニン経路を経由する代謝物は、比較的疎水性が弱い物質となることが知られている。
【0064】
本実施例では、陽イオン交換内面修飾型除たんぱく質用充てん剤として、島津製作所製 Shim−pack MAYI−SCX充てん剤を用い、逆相内面修飾型除たんぱく質用充てん剤として、同社製Shim−pack MAYI−ODS充てん剤を、例えば1:1の混合比率となるように内径4.6 mm、、長さ10 mmのステンレス管に混合充てんし、図2の前処理カラム10に示したように切換えバルブ9上に配置して用いた。
【0065】
なお、充てん剤の混合比率は、上記した1:1に限られるものではなく、分析対象の各成分に比率に応じて定めることができる。
【0066】
また、本実施例における代謝物一斉分析システムは、島津製作所製 HPLC Prominence UFLCシリーズを用いて、図2に示した流路概念図の流路構成とした。分析対象成分の分離には、島津製作所製 Shim−pack XR−ODS (内径 3.0mm、長さ50mmのC18カラム)などを分析カラム11として用いることができる。
【0067】
検出には、紫外可視検出器、蛍光検出器あるいは液体クロマトグラフ質量分析計など液体クロマトグラフ用の主要な検出器が利用可能である。本実施例では、紫外可視検出器である島津製作所 SPD−M20A フォトダイオードアレイ検出器(図2の12)と、蛍光検出器である同社製 RF−10AXL(図2の13)を併用して用い、双方の検出器から得られるデータはデータ処理部14により波形処理を行った。
【0068】
本実施例の作用を示すための試料として、トリプトファン代謝物として知られている主要14成分を用い、試験研究用として市販されている牛血漿標準品に添加した標準添加血漿試料を利用した。なお、混合標準試料には、キヌレニン経路、セロトニン経路に代表されるトリプトファンの主な代謝経路により代謝された物性の大きく異なった代謝成分が含まれている。
【0069】
図2に示した装置において、標準添加血漿試料を試料導入部(インジェクタ部)4より負荷すると、切換えバルブ9のポート接続は、二重線で示したようにA1−A2、A3−A4、A5−A6となっているため、負荷試料は溶媒溜め1に満たした試料導入液(ア)によって切り換えバルブ9上に配置した前処理カラム10に導かれる。本実施例では、試料導入液(ア)は2.5 mmol/Lりん酸水溶液であり、流量1.0 mL/min、3分間の前処理カラム10への保持濃縮を行った。この間に代謝物成分は前処理カラム10内の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤の細孔に浸透し、陽イオン交換もしくは疎水性相互作用により保持濃縮される。
【0070】
一方、夾雑物となる血漿中たんぱく質は、細孔内に浸透することなく前処理カラム10から廃液部18に排出される。
【0071】
次に、切り換えバルブ9のポート間接続を切り換えて、破線で示したA6−A1、A2−A3、A4−A5のように接続する。同時に溶離液溜め5aに満たした分析用溶離液(イ)と溶離液溜め5bに満たした分析用溶離液(ウ)によるグラジエント溶出を開始する。分析用溶離液(イ)は、100 mmol/L りん酸ナトリウム緩衝溶液pH3.3であり、分析時の分析カラム11におけるpHの安定化に伴う分析精度の向上に作用することに加えて、分析用溶離液(イ)中のナトリウムイオンが前処理カラム10における陽イオン交換基に対する溶離イオンとして作用する。したがって、前処理カラム10中の陽イオン交換内面修飾型充てん剤により保持濃縮された代謝物成分は、前処理カラム10から分析カラム11へ導入される。
【0072】
一方、分析用溶離液(ウ)はアセトニトリルであり、分析時に分析カラム11におけるグラジエント溶出による分離に作用することに加えて、分析用溶離液(ウ)は前処理カラム10における逆相内面修飾型充てん剤により保持された代謝物成分を溶出させ、分析カラム11へ導入する作用も兼ねている。
【0073】
分析カラム11は前処理カラム10に比べて、十分な長さ、容量を有しているため、分析用溶離液(イ)または分析用溶離液(ウ)により前処理カラム10から溶出され、分析カラム11に導入された代謝物成分は、分析用溶離液(イ)および分析用溶離液(ウ)のグラジエント溶出により相互に分離され、分析カラ11ムから溶出した後、フォトダイオーダアレイ検出器12および蛍光検出器13に導入されて検出される。
【0074】
フォトダイオーダアレイ検出器12および蛍光検出器13により得られた溶出ピーク強度/時間曲線はデータ処理部14により処理され、いわゆる蛍光強度クロマトグラムあるいは吸光度クロマトグラムとして解析される。
【0075】
図3(a)のAおよび図3(b)のBは、本実施例で得られた蛍光強度クロマトグラムおよび吸光度クロマトグラムの一例である。
【0076】
本例のようなクロマトグラムにより、一般に標準試料との対比から定量あるいは定性が可能となる。本実施例では、図3(a)のAおよび図3(b)のB上に現れる標準添加したトリプトファン主要代謝14成分に相当するピークを各々P1からP14として示した。
【0077】
図3(a)のAは、標準試料添加血漿の吸光度クロマトグラムであり、測定波長範囲190nmから600 nmから抽出した350 nmの吸光度クロマトグラムである。また、図3(b)のBは、標準試料添加血漿の蛍光クロマトグラムであり、励起波長280 nm、蛍光波長 370nmとしている。
【0078】
このクロマトグラム中のP1〜P14に示すピークは、P1が3-ヒドロキシキヌレニン、P2が キヌレニン、P3が3-ヒドロキシアントラニル酸、P4がキサンツレン酸、P5がキヌレン酸、P6がキナルジン酸、P7がアントラニル酸、P8が5-ヒドロキシトリプトファン、P9が5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)、P10がトリプトファン、P11がインドール 3-酢酸、P12がインドール 3-エタノール、P13がインドール 3-プロピオン酸、P14がインドール3-酪酸を示している。
【0079】
本発明の態様によれば、試料を保持機構の異なる内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合充てんした前処理カラムに導入して、除たんぱく処理を行うと共に代謝物多成分を保持濃縮し、また、前処理カラムに保持濃縮された代謝物多成分を分析カラムに導入し、同時に相互間の分離を行う溶離液を用いることによって、物性の異なった代謝物多成分の一斉分析が可能となる。
【0080】
一斉分析、すなわち多種の対象成分を1回の分析で定性、定量できることは、分析に対しての時間あるいは費用の削減という経済的効果に加えて、各成分相互間のバランスなどに関する情報も同時に得られるという利点がある。これらの利点は臨床診断における効率化や新たな情報の提供、あるいは生化学的メカニズムの解明など多くの要求に対応するものである。
【0081】
なお、実施例では分析カラムとして、粒子径2.2 μmの微粒子充てん剤を充てんした分析カラムを用い、分析の高速化にも配慮した。このため、全体の分析時間は15分以下である。しかしながら、高速分離法の場合、分析カラムより前段部分の内部容量の増加が分析結果に対して悪影響を及ぼす場合があることが知られている。このため、たとえば異なった保持機構を有する前処理カラムを、それぞれ個別に複数の切り換えバルブに配置するような構成(例えば、特許文献3)の場合、分析カラム外の内部容量増加に伴うピークの広がりにともなう分析結果に対する影響が懸念されるが、本実施例では前処理カラムおよび切り換えバルブはそれぞれ単一であり、内部容量も最小限となっているため、分析カラムより前段部分の内部容量の増加による分析結果への悪影響は小さく抑制することができるため、高速分離法にも適合することができる。
【0082】
また、実施例では、検出器としてフォトダイオードアレイ検出器および蛍光検出器を利用し、それぞれに適応した対象成分ピーク同定を行っている。さらに、質量分析計などを接続して複数の検出器を併用することにより、それぞれの対象成分の定性、定量の精度向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の分析方法および分析装置は、血清、血漿、髄液、組織抽出液など生体試料中の代謝物多成分の一斉分析に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の多成分分析方法および多成分分析装置に用いる前処理カラムの構成例を説明するための概略図である。
【図2】本発明の多成分分析装置の一構成例を説明するための図である。
【図3】本実施例で得られた蛍光強度クロマトグラムおよび吸光度クロマトグラムの一例である。
【符号の説明】
【0085】
1…液溜め、2…脱気装置、3…送液ポンプ、4…試料導入部(インジェクタ)、5…溶離液供給部、5a、5b…溶離液溜め、6、6a、6b…脱気装置、7、7a、7b…送液ポンプ、8…グラジエントミキサ、9…切り換えバルブ、10…前処理カラム、11…分析カラム、12…フォトダイオードアレイ検出器、13…蛍光検出器、14…データ処理部、(ア)… 試料導入液、(イ)…分析用溶離液第一液、(ウ)…分析用溶離液第二液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面修飾型除たんぱく質用充てん剤により異なる成分を保持する機能を有するカラムを除たんぱく質用前処理カラムとして用い、
たんぱく質含有試料を前記除たんぱく質用前処理カラムに負荷し、前記試料中に含まれる複数種の低分子化合物を前記除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮するとともに、たんぱく質を排出して除去する第1の工程と、
前記第1の工程で前記除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮された複数種の低分子化合物を、溶出して分析カラムに導入し、当該分析カラムにて対象多成分相互間の分離分析を行う第2の工程とを含み、
前記第2の工程において前記除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、
各内面修飾残基に保持された低分子化合物を溶出する性質と、分析カラムにおいて当該低分子化合物を分離する性質とを備えることを特徴とする、多成分分析方法。
【請求項2】
前記除たんぱく質用前処理カラムは、少なくとも2種以上の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合充てんし、各内面修飾型除たんぱく質用充てん剤はそれぞれ保持する成分を異にする内面修飾残基を有し、
前記第2の工程において前記除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、前記各充てん剤がそれぞれ有する内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多成分分析方法。
【請求項3】
前記除たんぱく質用前処理カラムは、保持する成分を異にする内面修飾残基を少なくとも2種類以上有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を充てんし、
前記第2の工程において、前記除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、前記充てん剤が有する複数種の内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多成分分析方法。
【請求項4】
前記除たんぱく質用前処理カラムは、保持する成分を異にする内面修飾残基を少なくとも2種類以上有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を少なくとも2種以上混合充てんし、
前記第2の工程において、前記除たんぱく質用前処理カラムに供給する溶離液は、前記各充てん剤が有する複数種の内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含むことを特徴とする、請求項1に記載の多成分分析方法。
【請求項5】
前記内面修飾残基は、低分子化合物が有する複数の物性と相互作用を行う複数の官能基から少なくとも1つを選択することを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の多成分分析方法。
【請求項6】
前記物性は、イオン性の強弱、疎水性の強弱、化学的特性の強弱、物理的特性の強弱、生化学的相互作用の強弱であり、
前記除たんぱく質用前処理カラムは、前記複数の物性から少なくとも2つの物性を任意に選択し、当該選択した物性に基づいて低分子化合物と相互作用する官能基を充てん剤に内面修飾することを特徴とする、請求項5に記載の多成分分析方法。
【請求項7】
内面修飾型除たんぱく質用充てん剤により異なる保持機構を有するカラムを除たんぱく質用前処理カラムとして備えた前処理部と、
たんぱく質含有試料を前処理部に供給する試料導入部と、
前記除たんぱく質用前処理カラムに保持濃縮された低分子化合物を溶出させる溶離液を供給する溶離液供給部と、
前記溶出した低分子化合物を分析する分析部と、
前記試料導入部を前記除たんぱく質用前処理カラムに接続する分離用流路と、前記溶離液供給部を前記除たんぱく質用前処理カラムに接続し当該除たんぱく質用前処理カラムからの溶出液を前記分析部に導く分析用流路との間で流路を切り換える流路切換え部と
を備えたことを特徴とする、多成分分析装置。
【請求項8】
前記除たんぱく質用前処理カラムは、少なくとも2種以上の内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を混合充てんし、各内面修飾型除たんぱく質用充てん剤はそれぞれ保持する成分を異にする内面修飾残基を有するカラムであり、
前記溶離液は、前記各充てん剤がそれぞれ有する内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含むことを特徴とする、請求項7に記載の多成分分析装置。
【請求項9】
前記除たんぱく質用前処理カラムは、異なる保持機構を有する官能基を少なくとも2種類以上内面修飾した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を充てんしたカラムであり、
前記溶離液は、前記充てん剤が有する複数種の内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含むことを特徴とする、請求項7に記載の多成分分析装置。
【請求項10】
前記除たんぱく質用前処理カラムは、保持する成分を異にする内面修飾残基を少なくとも2種類以上有した内面修飾型除たんぱく質用充てん剤を少なくとも2種以上混合充てんしたカラムであり、
前記溶離液は、前記各充てん剤が有する複数種の内面修飾残基に対応する複数種の溶離液を含むことを特徴とする、請求項7に記載の多成分分析装置。
【請求項11】
前記保持機構を構成する内面修飾残基は、低分子化合物が有する複数の物性と相互作用する複数の官能基から選択することを特徴とする、請求項7から10の何れか1つに記載の多成分分析装置。
【請求項12】
前記物性は、イオン性の強弱、疎水性の強弱、化学的特性の強弱、物理的特性の強弱、生化学的相互作用の強弱であり、
前記除たんぱく質用前処理カラムは、前記複数の物性から少なくとも2つの物性を任意に選択し、当該選択した物性に基づいて低分子化合物と相互作用する官能基を充てん剤に内面修飾することを特徴とする、請求項11に記載の多成分分析装置。
【請求項13】
前記分析部は、前記除たんぱく質用前処理カラムからの溶出液を導入して、低分子化合物を分離する分析カラムと、
前記分析カラムで分離した低分子化合物を検出する検出器とを備えることを特徴とする、請求項7に記載の多成分分析装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−304435(P2008−304435A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154288(P2007−154288)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)