説明

多成分繊維から製造された不織物

少なくとも1種の水非分散性ポリマーを含む水非分散性ポリマーミクロ繊維であって、5μm未満の等価直径及び25mm未満の短い長さを有する水非分散性ポリマーミクロ繊維を提供する。水非分散性ポリマーミクロ繊維の製造方法であって、a)多成分繊維を切断多成分繊維に切断し、b)繊維含有供給原料を水と接触させて、繊維ミックススラリーを製造し、(ここで、該繊維含有供給原料は、切断多成分繊維を含んでなる)、c)該繊維ミックススラリーを加熱して、加熱された繊維ミックススラリーを製造し、d)任意的に、該繊維ミックススラリーを、剪断ゾーン内で混合し、e)該多成分繊維から、該スルホポリエステルの少なくとも一部を除去して、スルホポリエステル分散物及び水非分散性ポリマーミクロ繊維を含んでなるスラリー混合物を製造しそして、f)該スラリー混合物から、水非分散性ポリマーミクロ繊維を分離することを含んでなる方法も提供する。不織物品の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対するクロスリファレンス
本件特許出願は、2008年4月2日付で出願された米国仮特許出願第61/041,699号及び2003年6月19日付けで出願された特許出願第10/465,698号の一部継続出願である、米国特許第6,989,193号として発行された2004年5月20日付で出願された特許出願第10/850,548号の分割である、2005年8月16日付で出願された特許出願第11/204,868号の一部継続出願である、2006年1月31日付で出願された特許出願第11/344,320号の一部継続出願である、2007年1月3日付で出願された一部継続特許出願第11/648,955号の優先権を主張する一部継続出願である。
【0002】
本発明は、スルホポリエステルを含んでなる水分散性繊維及び繊維状物品に関する。本発明は、更にスルホポリエステル及びマイクロデニール繊維を含む多成分繊維(multi component)並びにそれから製造された繊維状物品に関する。本発明は、また、水分散性で、多成分で、マイクロデニールの繊維のための方法及びそれから製造された不織布に関する。この繊維及び繊維状物品は、水洗可能なパーソナルケア(flushable personal care)製品及び医療製品に於ける用途を有する。
【背景技術】
【0003】
繊維、溶融ブローウエブ及びその他の溶融紡糸繊維状物品は熱可塑性ポリマー、例えばポリ(プロピレン)、ポリアミド及びポリエステルから製造されてきた。これらの繊維及び繊維状物品の一つの一般的な用途は、不織布であり、特に、パーソナルケア製品、例えば拭き取り具(wipes)、女性衛生製品、赤ん坊おむつ、成人失禁ブリーフ、病院/手術及びその他の医療用使い捨て用品、保護用布帛及び層、ジオテキスタイル、工業用拭き取り具及びフィルター媒体に於ける不織布である。残念ながら、従来の熱可塑性ポリマーから製造されたパーソナルケア製品は、処分することが困難で、通常埋め立て地に置かれている。一つの見込みのある処分の代替方法は、これらの製品又はそれらの成分を「水洗可能性」にする、即ち公共下水設備に適合性にすることである。水分散性又は水溶性材料の使用は、パーソナルケア製品のリサイクル性及び再生利用も改良する。パーソナルケア製品で現在使用されている種々の熱可塑性ポリマーは、固有的に水分散性又は水溶性ではなく、従って、容易に崩壊し、そして下水設備で処分できるか又は容易にリサイクルできる物品を作らない。
【0004】
望ましい水洗可能なパーソナルケア製品として、種々の程度の水感応性を有する、繊維、不織布及びその他の繊維状物品についてのニーズがある。これらのニーズに取り組むための種々のアプローチは、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9に記載されている。しかしながら、これらのアプローチは、多数の欠点を有し、湿潤又は乾燥の両方の条件下で、性能特性、例えば引張強度、吸収性、可撓性及び布帛一体性(integrity)の満足できるバランスを有する繊維状物品、例えば繊維又は不織布をもたらさない。
【0005】
例えば典型的な不織技術は、強い一体性及びその他の望ましい特性を有するウエブを形成するために、樹脂結合接着剤で処理された繊維の多方向堆積をベースにしている。しかしながら、得られるアセンブリは、一般的に、劣った水感応性を有し、そして水洗可能性用途には適していない。バインダーの存在も最終製品に於ける望ましくない特性、例えば減少したシート濡れ性、増加した剛性、粘着性及びより高い製造コストになるであろう。使用の間に適切な湿潤強度を示し、なおも処分の際に迅速に分散するバインダーを製造することも困難である。従って、これらのバインダーを使用する不織アセンブリは、環境条件下でゆっくり崩壊するか又は体液の存在下で適切なものよりも低い湿潤強度特性を有するであろう。この問題に取り組むために、pH及びイオン感受性水分散性バインダー、例えば添加された塩と共に、又は添加された塩無しで、アクリル酸又はメタクリル酸を含有するラテックスが公知であり、例えば特許文献1に記載されている。しかしながら、公共下水設備及び住宅汚水処理システムに於けるイオン濃度及びpHレベルは、地理的場所の間で広範囲に変化し得、バインダーが溶解性になるか又は分散するためには充分ではない。この場合に、繊維状物品は処分後に崩壊しないで、排水管又は下水側溝を詰まらせ得る。
【0006】
水分散性成分及び熱可塑性水非分散性成分を含有する多成分繊維が、例えば特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14及び特許文献15に記載されている。例えばこれらの多成分繊維は、造形された又は設計された(shaped or engineered)横断面、例えば海島型、シースコア(shearth core)型、横並び型又は分割されたパイ型形状を有する二成分繊維であってよい。この多成分繊維を水又は希アルカリ性溶液に付し、そこで、水分散性成分を溶解除去して、分離したとき極めて小さい繊度の独立繊維である、水非分散性成分を後に残すことができる。しかしながら、良好な水分散性を有するポリマーは、しばしば、得られる多成分繊維に粘着性を与え、これによって繊維を、特に熱い湿潤条件下で、数日後に巻き取り又は貯蔵中に、一緒に粘着、ブロック又は融合させる。融合を防止するために、しばしば、脂肪酸又は油系仕上げ剤を、繊維の表面に適用する。更に、時々、例えば特許文献16に記載されているように、大きい比率の顔料又は充填剤を、繊維の融合を防止するために水分散性ポリマーに添加する。このような油仕上げ剤、顔料及び充填剤は、追加の加工工程を必要とし、最終繊維に望ましくない特性を与え得る。多くの水分散性ポリマーも、それらの除去のために、アルカリ性溶液(これは、繊維の他のポリマー成分の劣化、例えばインヘレント粘度、靱性及び溶融強度の低下を起こし得る)を必要とする。更に、幾つかの水分散性ポリマーは、ハンドロエンタングル(水絡み合い)(hydroentangle)の間に水に対する曝露に耐えることができず、従って、不織ウエブ及び布帛の製造に適していない。
【0007】
その代わりに、水分散性成分は、不織ウエブに於ける熱可塑性繊維のための結合剤として機能し得る。水に対して曝露したとき、繊維−繊維結合は壊れて、不織布がその一体性を失い、そして個々の繊維に崩壊する。しかしながら、これらの不織ウエブの熱可塑性繊維成分は、水分散性ではなく、水性媒体中に存在したままであり、従って、結局は、自治体の廃水処理プラントから除去しなくてはならない。ハイドロエンタングルは、非常に低レベル(5重量%より低い)の、繊維を結合するために添加するバインダー無しに又はこれと共に、崩壊性不織布を製造するのに使用することができる。これらの布帛は処分の際に崩壊し得るが、これらは、しばしば、水溶性又は水分散性ではなく、そして下水溝システム内で絡み合い及び閉塞になり得る繊維を利用している。任意の添加した水分散性バインダーも、ハイドロエンタングルによって最も少なく影響を受けなくてはならず、ゼリー状堆積又は架橋を形成してはならず、それによって布帛取扱い又は下水関連問題に寄与しなくてはならない。
【0008】
僅かの水溶性又は水分散性ポリマーが入手できるが、一般的に、溶融ブロー繊維形成操作又は溶融紡糸に適用できない。ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクリル酸のようなポリマーは、適当な溶融粘度が得られる点よりも低い温度で起こる熱分解の結果として、溶融加工できない。高分子量ポリエチレンオキシドは、適当な熱安定性を有するが、ポリマー界面で高い粘度溶液を与え、遅い崩壊速度になるであろう。水分散性スルホポリエステルが、例えば特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22及び特許文献23に記載されている。しかしながら、典型的なスルホポリエステルは低分子量の熱可塑性樹脂であり、これは、脆くそして破壊又は砕けない材料のロールを得るための巻取操作に耐えるための可撓性を欠いている。スルホポリエステルはフィルム又は繊維への加工の間に粘着又は融合を示すこともでき、これを回避するためには、油仕上げ剤又は大量の顔料若しくは充填材の使用を必要とするであろう。低分子量ポリエチレンオキシド(更に一般的にはポリエチレングリコールとして知られている)は、また繊維用途のための必要な物理的特性を有しない、弱い/脆いポリマーである。公知の水溶性ポリマーから溶液技術によって繊維を形成することは代替手段であるが、溶媒、特に水を除去することの追加の複雑性は、製造コストを増加させる。
【0009】
従って、水分の存在下で、特に体液に曝露した際に、適切な引張強度、吸収性、可撓性及び布帛一体性を示す、水分散性繊維及びそれから製造された繊維状物品についてのニーズが存在する。更に、繊維状物品は、バインダーを必要とせず、そして住宅又は自治体下水設備中に完全に分散又は溶解することを要求される。潜在的な用途には、これらに限定するものではないが、溶融ブローウエブ、スパンボンド布帛、ハイドロエンタングル布帛、湿式堆積不織布、乾式堆積不織布、二成分繊維成分、接着促進層、セルロース用バインダー、水洗可能性不織布及びフィルム、溶解性バインダー繊維、保護層並びに水中に放出又は溶解すべき活性成分用の担体が含まれる。また、紡糸運転の間にフィラメントの過剰の粘着又は融合を示さず、中性又は僅かに酸性pHで熱水によって容易に除去され、そして不織布を製造するためのハイドロエンタングルプロセスのために適している、水分散性成分を有する多成分繊維についてのニーズも存在する。これらの多成分繊維は、種々の物品を製造するために使用することができるミクロ繊維を製造するために利用することができる。他の押出可能な溶融紡糸繊維状材料も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,548,592号明細書
【特許文献2】米国特許第6,552,162号明細書
【特許文献3】米国特許第5,281,306号明細書
【特許文献4】米国特許第5,292,581号明細書
【特許文献5】米国特許第5,935,880号明細書
【特許文献6】米国特許第5,509,913号明細書
【特許文献7】米国特許出願第09/775,312号明細書
【特許文献8】米国特許出願第09/752,017号明細書
【特許文献9】PCT国際公開第WO01/66666A2号明細書
【特許文献10】米国特許第5,916,678号明細書
【特許文献11】米国特許第5,405,698号明細書
【特許文献12】米国特許第4,966,808号明細書
【特許文献13】米国特許第5,525,282号明細書
【特許文献14】米国特許第5,366,804号明細書
【特許文献15】米国特許第5,486,418号明細書
【特許文献16】米国特許第6,171,685号明細書
【特許文献17】米国特許第5,543,488号明細書
【特許文献18】米国特許第5,853,701号明細書
【特許文献19】米国特許第4,304,901号明細書
【特許文献20】米国特許第6,211,309号明細書
【特許文献21】米国特許第5,570,605号明細書
【特許文献22】米国特許第6,428,900号明細書
【特許文献23】米国特許第3,779,993号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、意外にも、可撓性水分散性繊維をスルホポリエステルから製造できることを見出した。従って、本発明は、
(A)少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル(このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる)、
(B)任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー並びに
(C)任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(ここで、このブレンドは非混和性ブレンドである)、
からなる水分散性繊維であって、この繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている水分散性繊維を提供する。
【0012】
本発明の繊維は、水中に迅速に分散又は溶解し、溶融ブロー又は溶融紡糸によって製造することができる一成分繊維であってよい。この繊維は、単一のスルホポリエステル又はスルホポリエステルと水分散性若しくは水非分散性ポリマーとのブレンドから製造することができる。従って、本発明の繊維には、任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマーが含有されていてよい。更に、この繊維には、任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマーが含有されていてよい(ここで、このブレンドは非混和性ブレンドである)。本発明には、本発明の水分散性繊維を含む繊維状物品も含まれる。従って、本発明の繊維は、種々の繊維状物品、例えばヤーン、溶融ブローウエブ、スパンボンドウエブ及び不織布(これらは、次いで、水分散性又は水洗可能性である)を製造するために使用することができる。本発明のステープル繊維は、紙、不織ウエブ及び織物ヤーン内で、天然又は合成繊維とブレンドすることもできる。
【0013】
本発明の別の面は、
(A)少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる)、
(B)任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた第一の水分散性ポリマー並びに
(C)任意的に、ブレンドを形成するためにスルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(ここで、このブレンドは非混和性ブレンドである)、
を含んでなる水分散性繊維であって、この繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている水分散性繊維である。
【0014】
本発明の水分散性繊維状物品には、パーソナルケア物品、例えば拭き取り具、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、トレーニングパンツ、生理用ナプキン、包帯、創傷ケア及び手術用包帯が含まれる。水分散性であることに加えて、本発明の繊維状物品は、水洗可能である、即ち住宅及び自治体下水設備で処分するために適合しており、適している。
【0015】
本発明は、水分散性スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる多成分繊維も提供する。この繊維は、水非分散性ポリマーが、水非分散性セグメントのためのバインダー又はカプセル化マトリックスとして作用する、介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されているセグメントとして存在するように設計された形状を有する。従って、本発明の別の面は、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル(このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる並びに
(B)このスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のセグメント(ここで、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維であって、この繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている多成分繊維である。
【0016】
このスルホポリエステルは、巻き取り及び長期間貯蔵の間の、繊維の粘着及び融合を大きく減少する、少なくとも57℃のガラス転移温度を有する。
【0017】
このスルホポリエステルは、多成分繊維を水と接触させることによって除去して、水非分散性セグメントをマイクロデニール繊維として後に残すことができる。従って、本発明は、マイクロデニール繊維のための方法でもあって、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる(ここで、この繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている、そして
(B)この多成分繊維を水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる方法も提供する。
【0018】
この水非分散性ポリマーは、DIN規格54900によって決定したとき生物崩壊性であり及び/又はASTM規格方法D6340−98によって決定したとき生物分解性であってよい。この多成分繊維は、繊維状物品、例えばヤーン、布帛、溶融ブローウエブ、スパンボンドウエブ又は不織布を製造するために使用することもでき、そして繊維状物品は繊維の1個又はそれ以上の層からなっていてよい。次いで、多成分繊維を有する繊維状物品を水と接触させて、マイクロデニール繊維を含有する繊維状物品を製造することができる。
【0019】
従って、本発明の別の面は、マイクロデニール繊維ウエブのための方法であって、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる(ここで、この多成分繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、
(B)工程(A)の多成分繊維を重ね、そして集めて、不織ウエブを形成し、そして
(C)この不織ウエブを水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウエブを形成する
ことを含んでなる方法である。
【0020】
本発明は、水分散性不織布の製造方法であって、
(A)水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し(ここで、このポリマー組成物は、
(i)少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル、このスルホポリエステルは、
(a)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(b)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(c)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(d)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる)、
(ii)任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー並びに
(iii)任意的に、ブレンドを形成するためにスルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(ここで、このブレンドは非混和性ブレンドである)、
を含んでなり(ポリマー組成物には、ポリマー組成物の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、
(B)フィラメントを溶融紡糸し、そして
(C)工程Bのフィラメントを重ね、そして集めて、不織ウエブを形成する
ことを含んでなる方法も提供する。
【0021】
本発明の別の面に於いて、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)このスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、このドメインは、ドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)
を含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維であって、
この繊維が、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニール(as-spun denier)を有し、
この水分散性スルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そしてこのスルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含んでなる多成分繊維が提供される。
【0022】
本発明の別の面に於いて、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)このスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(ここで、このドメインは、ドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)
を含んでなる、造形された断面を有する多成分押出物であって、
この押出物が、少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸することができる多成分押出物が提供される。
【0023】
本発明の別の面に於いて、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを紡糸することを含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維の製造方法であって、この多成分繊維が、水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し(このドメインは、ドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており)、この多成分繊維が約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、この水分散性スルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した、約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そしてこのスルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含んでなる、多成分繊維の製造方法が提供される。
【0024】
本発明の別の面に於いて、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押し出して、多成分押出物を製造することを含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維の製造方法であって、
この多成分押出物が、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインが、該ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、この多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を製造する、多成分繊維の製造方法が提供される。
【0025】
別の面に於いて、本発明は、マイクロデニール繊維の製造方法であって、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこの水分散性スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(ここで、この多成分繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、このドメインは、該ドメインの間に介在する、このスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、この多成分繊維は、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、該水分散性スルホポリエステルは、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そしてこのスルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む)並びに
(B)この多成分繊維を水と接触させて該水分散性スルホポリエステルを除去し、それによってこの水非分散性ポリマー(群)のマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0026】
別の面に於いて、本発明は、マイクロデニール繊維の製造方法であって、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこの水分散性スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押し出して、多成分押出物を製造し(ここで、この多成分押出物は、この水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、このドメインは、このドメインの間に介在するこのスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
(B)この多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し、そして
(C)この多成分繊維を水と接触させてこの水分散性スルホポリエステルを除去し、それによってこの水非分散性ポリマー(群)のマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0027】
本発明の別の面に於いて、マイクロデニール繊維ウエブの製造方法であって、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこの水分散性スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(ここで、この多成分繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、このドメインは、このドメインの間に介在する水分散性スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、この多成分繊維は、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、この水分散性スルホポリエステルは、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そしてこのスルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む)、
(B)工程(A)の多成分繊維を集めて、不織ウエブを形成し、そして
(C)この不織ウエブを水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウエブを形成する
ことを含んでなる方法が提供される。
【0028】
本発明の別の面に於いて、マイクロデニール繊維ウエブの製造方法であって、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押し出して、多成分押出物を製造し(ここで、この多成分押出物は、この水非分散性ポリマーからなる複数のドメインを有し、このドメインは、このドメインの間に介在するこのスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
(B)この多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し、
(C)工程(B)の多成分繊維を集めて、不織ウエブを形成し、そして
(D)この不織ウエブを水と接触させて該スルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウエブを形成する
ことを含んでなる方法が提供される。
【0029】
本発明の別の態様に於いて、水非分散性ポリマーミクロ繊維の製造方法が提供され、この方法は、
a)多成分繊維を切断多成分繊維に切断し、
b)繊維含有供給原料を水と接触させて、繊維ミックススラリーを製造し(ここで、この繊維含有供給原料は、切断多成分繊維を含む)、
c)この繊維ミックススラリーを加熱して、加熱された繊維ミックススラリーを製造し、
d)任意的に、この繊維ミックススラリーを、剪断ゾーン内で混合し、
e)この多成分繊維から、このスルホポリエステルの少なくとも一部を除去して、スルホポリエステル分散物及びこの水非分散性ポリマーミクロ繊維からなるスラリー混合物を製造し、そして
f)このスラリー混合物から、この水非分散性ポリマーミクロ繊維を分離する
ことを含んでなる。
【0030】
本発明の別の態様に於いて、少なくとも1種の水非分散性ポリマーを含む水非分散性ポリマーミクロ繊維であって、5μmよりも小さい等価直径及び25mmよりも短い長さを有する水非分散性ポリマーミクロ繊維が提供される。
【0031】
本発明の別の態様に於いて、水非分散性ポリマーミクロ繊維からの不織物品(nonwoven article)の製造方法であって、
a)多成分繊維から製造された水非分散性ポリマーミクロ繊維を用意し、そして
b)湿式堆積プロセス(wet-laid process)又は乾式堆積プロセス(dry-laid process)を利用して不織物品を製造する
ことを含んでなる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、水分の存在下で、特に体液に曝露した際に、引張強度、吸収性、可撓性及び布帛一体性を示す、水分散性繊維及び繊維状物品を提供する。本発明の繊維及び繊維状物品は、加工の間の繊維の粘着又は融合を防止するための、油、ワックス若しくは脂肪酸仕上げ剤の存在又は大量(典型的には10重量%又はそれ以上)の顔料若しくは充填剤の使用を必要としない。更に、本発明の新規な繊維から製造された繊維状物品は、バインダーを必要とせず、そして家庭又は公共下水設備の中に容易に分散又は溶解する。
【0033】
一般的な態様に於いて、本発明は、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルを含む水分散性繊維であって、このスルホポリエステルは、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(B)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(C)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含んでなる繊維を提供する。本発明の繊維には、任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー及び任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(ここで、このブレンドは非混和性ブレンドである)が含有されていてよい。本発明の繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている。本発明には、これらの繊維を含む繊維状物品も含まれ、そしてパーソナルケア製品、例えば拭き取り具、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、成人失禁ブリーフ、トレーニングパンツ、生理用ナプキン、包帯及び手術用包帯が含まれてよい。この繊維状物品は1個又はそれ以上の繊維の吸収層を有してよい。
【0034】
本発明の繊維は一成分繊維、二成分繊維又は多成分繊維であってよい。例えば本発明の繊維は、単一のスルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドを溶融紡糸することによって製造することができ、そして造形された断面を有するステープル、モノフィラメント及びマルチフィラメント繊維を含む。更に、本発明は、スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、別々に、造形された又は設計された横断形状、例えば「海島型」、シース−コア型、横並び型又は分割されたパイ型形状を有する紡糸口金に通して押し出すことによって製造することができる、例えば特許文献10に記載されているような多成分繊維を提供する。このスルホポリエステルは、後で、界面層又はパイセグメントを溶解することによって除去し、そして水非分散性ポリマー(群)の、より小さいフィラメント又はマイクロデニール繊維を残すことができる。水非分散性ポリマーのこれらの繊維は、スルホポリエステルを除去する前の多成分繊維よりも遙かに小さい繊維サイズを有する。例えばスルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを、そこでポリマーが分割された紡糸口金プレートの中に導入されるポリマー分配システムに供給することができる。ポリマーは、繊維紡糸口金への分離した経路に従い、そして2個の同心円形孔を含んでなり、そうしてシース−コア型繊維を与える紡糸口金孔又は直径に沿って複数の部分に分割されて、横並び型を有する繊維を与える円形紡糸口金孔で一緒にされる。その代わりに、非混和性水分散性スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを、複数の放射状溝を有し、分割されたパイ型断面を有する多成分繊維を製造する紡糸口金の中に別々に導入することができる。典型的には、スルホポリエステルは、シースコア型形状の「シース」コンポーネントを形成するであろう。複数のセグメントを有する繊維断面に於いて、水非分散性セグメントは、典型的には、スルホポリエステルによって互いから実質的に分離されている。その代わりに、多成分繊維は、スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを別々の押出機内で溶融し、そしてポリマー流を、海島型形状断面を有する繊維を与えるために、小さい薄い管又はセグメントの形で複数の分布流路を有する1個の紡糸口金の中に向けることによって形成することができる。このような紡糸口金の例は特許文献14に記載されている。本発明に於いて、典型的には、スルホポリエステルは「海」コンポーネントを形成し、そして水非分散性ポリマーは「島」コンポーネントを形成するであろう。
【0035】
他の方法で示さない限り、明細書及び特許請求の範囲に於いて使用される、成分の量、分子量のような特性、反応条件等を表す全ての数値は、全ての例に於いて、用語「約」によって修正されるとして理解されるべきである。従って、反対に示されない限り、以下の明細書及び付属する特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、本発明によって得ることが探求されている所望の特性に依存して変化し得る近似値である。少なくとも、それぞれの数値パラメーターは、報告された意味のある数字の数に照らして、そして通常の丸め技術を適用することによって、少なくとも解釈すべきである。更に、この開示及び特許請求の範囲に記載された範囲は、特に、終点(群)のみならず、全範囲を含めるように意図される。例えば0〜10であると記載された範囲は、0と10との間の全ての整数、例えば1、2、3、4等、0と10との間の全ての分数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113等並びに終点0及び10を開示するように意図される。また、化学的置換基に付随する範囲、例えば「C1〜C5炭化水素」は、C1及びC5炭化水素並びにC2、C3及びC4炭化水素を、特に含めそして開示するように意図される。
【0036】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメーターが近似値であるにもかかわらず、特別の例に於いて記載した数値は、できるだけ正確に報告する。しかしながら、全ての数値は、固有的に、それらのそれぞれの試験測定値に於いて見出される標準偏差から必然的に得られる一定の誤差を含む。
【0037】
本発明の一成分繊維及び一成分繊維から製造される繊維状物品は、水分散性であり、そして典型的には室温で完全に分散する。それらの分散性又は不織繊維若しくは多成分繊維からの除去速度を加速するために、より高い水温度を使用することができる。一成分繊維及び一成分繊維から製造された繊維状物品に関して本明細書で使用する用語「水分散性」は、用語「水消散性」、「水崩壊性」、「水溶解性」、「水散逸性」、「水溶性」、「水除去性」、「ハイドロソリュブル」及び「ハイドロディスパージブル」と同義語であることを意図し、繊維又は繊維状物品が、水の作用によって、その中に又はそれを通して分散又は溶解することを意味することを意図する。用語「分散した」、「分散性」、「消散する」又は「消散性」は、約60℃の温度で、5日以内の時間内に、繊維又は繊維状物品の緩やかな懸濁液又はスラリーを形成するために充分な量の脱イオン水(例えば100:1 水:繊維重量)を使用して、例えば濾過又は蒸発によって水を除去した際に、認識できるフィラメントが媒体から回収できないように、繊維又は繊維状物品が、媒体をより多く又はより少なく通して分布されている複数の非干渉性片又は粒子に、溶解、崩壊又は分離していることを意味する。従って、本明細書で使用される用語「水分散性」は、繊維アセンブリが水中に単純に壊れて、水の除去によって回収することができる、水中の繊維のスラリーを作る、絡み合っている又は結合しているが別種の水不溶性又は非分散性の繊維のアセンブリの単純な崩壊を含むことを意図しない。本発明の関連で、これらの用語の全ては、本明細書に記載したスルホポリエステルへの、水又は水と水混和性共溶媒との混合物の活性を指す。このような水混和性共溶媒の例には、アルコール、ケトン、グリコール、エーテル、エステル等が含まれる。この専門用語について、スルホポリエステルが溶解して真の溶液を形成する条件並びにスルホポリエステルが水性媒体中に分散する条件を含めることを意図する。しばしば、スルホポリエステル組成物の統計的性質のために、単一のスルホポリエステルサンプルを水性媒体中に置くとき、可溶性画分及び分散した画分を有することが可能である。
【0038】
同様に、多成分繊維又は繊維状物品の一成分としてのスルホポリエステルを参照して本明細書で使用される用語「水分散性」は、用語「水消散性」、「水崩壊性」、「水溶解性」、「水散逸性」、「水溶性」、「水除去性」、「ハイドロソリュブル」及び「ハイドロディスパージブル」と同義語であることも意図し、スルホポリエステル成分を、多成分繊維から充分に除去し、そして水の作用によって分散又は溶解して、その中に含まれている水非分散性繊維の解放及び分離が可能であることを意味することを意図する。用語「分散した」、「分散性」、「消散する」又は「消散性」は、約60℃の温度で、5日以内の時間内に、繊維又は繊維状物品の緩やかな懸濁液又はスラリーを形成するために充分な量の脱イオン水(例えば100:1 水:繊維重量)を使用して、スルホポリエステル成分が、多成分繊維から溶解、崩壊又は分離して、水非分散性セグメントから複数のマイクロデニール繊維を後に残すことを意味する。
【0039】
多成分繊維の造形された断面を記載するために使用される用語「セグメント」又は「ドメイン」又は「ゾーン」は、これらのドメイン又はセグメントが、これらのセグメント又はドメインの間に介在する水分散性スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている、水非分散性ポリマーを含む、断面内の領域を指す。本明細書中に使用される用語「実質的に分離されている」は、セグメント又はドメインが、互いから引き離されていて、スルホポリエステルを除去した際に、セグメント又はドメインが個々の繊維を形成することが可能であることを意味するように意図する。セグメント又はドメイン又はゾーンは、同様のサイズ及び形状のもの又は変化するサイズ及び形状のものであってよい。再び、セグメント又はドメイン又はゾーンは、任意の形(configuration)で配置されていてよい。これらのセグメント又はドメイン又は帯域は、多成分押出物又は繊維の長さに添って「実質的に連続的」である。用語「実質的に連続的」は多成分繊維の少なくとも10cm長さに添った連続を意味する。多成分繊維のこれらのセグメント、ドメイン又はゾーンは、水分散性スルホポリエステルが除去されたときに、水非分散性ポリマーミクロ繊維を作る。
【0040】
本明細書の開示内に記載されたように、多成分繊維の造形された断面は、例えばシースコア、海島、分割されたパイ、中空の分割されたパイ、中心がずれた分割されたパイ等の形状であってよい。
【0041】
本発明の水分散性繊維は、ポリエステル又は、更に詳しくはジカルボン酸モノマー残基、スルホモノマー残基、ジオールモノマー残基及び繰り返し単位を含んでなるスルホポリエステルから製造される。スルホモノマーはジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸であってよい。従って、本明細書で使用される用語「モノマー残基」は、ジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸の残基を意味する。本明細書で使用される用語「繰り返し単位」は、カルボニルオキシ基によって結合された2個のモノマー残基を有する有機構造を意味する。本発明のスルホポリエステルには、繰り返し単位の全モルが100モル%に等しいように、実質的に等しい割合で反応している、実質的に等モル割合の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)が含有されている。従って、本開示に於いて与えられるモル%は、酸残基の全モル数、ジオール残基の全モル数又は繰り返し単位の全モル数を基準にすることができる。例えば全繰り返し単位基準で、30モル%の、ジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸であってよいスルホモノマーを含有するスルホポリエステルは、スルホポリエステルが、100モル%の繰り返し単位の全量中に30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。従って、各100モルの繰り返し単位の中に30モルのスルホモノマーが存在する。同様に、全酸残基基準で30モル%のジカルボン酸スルホモノマーを含有するスルホポリエステルは、スルホポリエステルが、100モル%の酸残基の全量の外に30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。従って、後者の場合に、100モルの酸残基毎の間に30モルのスルホモノマーが存在する。
【0042】
本明細書に記載されたスルホポリエステルは、フェノール/テトラクロロエタン溶媒の60/40重量部溶液中で、25℃で、100mLの溶媒中の約0.5gのスルホポリエステルの濃度で測定した、少なくとも約0.1dL/g、好ましくは約0.2〜0.3dL/g、最も好ましくは約0.3dL/gよりも大きい、インヘレント粘度(以下、「Ih.V.」と略記する)を有する。本明細書で使用される用語「ポリエステル」は、「ホモポリエステル」及び「コポリエステル」の両方を包含し、そして二官能性カルボン酸と二官能性ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーを意味する。本明細書で使用される用語「スルホポリエステル」は、スルホモノマーを含有する全てのポリエステルを意味する。典型的に、二官能性カルボン酸はジカルボン酸であり、そして二官能性ヒドロキシル化合物は、二価アルコール、例えばグリコール及びジオールである。その代わりに、二官能性カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸、例えばp−ヒドロキシ安息香酸であってよく、そして二官能性ヒドロキシル化合物は、2個のヒドロキシ置換基を有する芳香族核、例えばヒドロキノンであってよい。本明細書で使用される用語「残基」は、対応するモノマーを含む重縮合反応によってポリマーの中に含有される任意の有機構造を意味する。従って、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー又はその関連する酸ハライド、エステル、塩、無水物又はこれらの混合物から誘導することができる。従って、本明細書で使用される、用語「ジカルボン酸」はジカルボン酸及び高分子量ポリエステルを製造するためのジオールとの重縮合工程に於いて有用である、その関連する酸ハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物又はこれらの混合物を含むジカルボン酸の任意の誘導体を含むように意図する。
【0043】
本発明のスルホポリエステルには、1種又はそれ以上のジカルボン酸残基が含有されている。スルホモノマーの種類及び濃度に依存して、ジカルボン酸残基は、約60〜約100モル%の酸残基からなっていてよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は約60モル%〜約95モル%及び約70モル%〜約95モル%である。使用することができるジカルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又はこれらの酸の2種若しくはそれ以上の混合物が含まれる。従って、適当なジカルボン酸には、これらに限定されないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4′−オキシジ安息香酸、4,4′−スルホニルジ安息香酸及びイソフタル酸が含まれる。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はジエステルを使用する場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルであり、イソフタル酸及びテレフタル酸の残基が特に好ましい。ジカルボン酸メチルエステルが最も好ましい態様であるが、より高級のアルキルエステル、例えばエチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどを含むことも許容される。更に、芳香族エステル、特にフェニルも使用することができる。
【0044】
スルホポリエステルには、全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)が含まれる。スルホモノマー残基の濃度範囲の追加の例は、全繰り返し単位基準で、約4〜約35モル%、約8〜約30モル%及び約8〜約25モル%である。このスルホモノマーは、スルホネート基を含有するジカルボン酸若しくはそのエステル、スルホネート基を含有するジオール又はスルホネート基を含有するヒドロキシ酸であってよい。用語「スルホネート」は、構造「−SO3M」(式中、Mはスルホネート塩のカチオンである)を有するスルホン酸の塩を指す。スルホネート塩のカチオンは、金属イオン、例えばLi+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等であってよい。その代わりに、スルホネート塩のカチオンは、例えば特許文献19に記載されているような窒素系塩基のような非金属であってよい。窒素系カチオンは、脂肪族化合物、脂環式化合物又は芳香族化合物であってよい窒素含有塩基から誘導される。このような窒素含有塩基の例には、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン及びピペリジンが含まれる。窒素系スルホネート塩を含有するモノマーは、典型的には、溶融物でポリマーを製造するために必要な条件で熱的に安定ではないので、窒素系スルホネート塩基を含有するスルホポリエステルを製造するための本発明の方法は、必要な量の、そのアルカリ金属塩の形でのスルホネート基を含有するポリマーを、水中に分散、消散又は溶解させ、次いでアルカリ金属カチオンを窒素系カチオンで交換することである。
【0045】
スルホネート塩のカチオンとして一価のアルカリ金属イオンを使用するとき、得られるスルホポリエステルは、ポリマー中のスルホモノマーの含有量、水の温度、スルホポリエステルの表面積/厚さなどに依存する分散速度で、水中に完全に分散可能である。二価の金属イオンを使用するとき、得られるスルホポリエステルは、冷水により容易に分散されないが、熱水により一層容易に分散される。単一のポリマー組成物中に1種より多い対イオンを使用することが可能であり、そして得られる製造物品の水応答性を合わせる又は微調整するための手段を提供することができる。スルホモノマー残基の例には、スルホネート塩基が芳香族酸核、例えばベンゼン、ナフタレン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニル及びメチレンジフェニル又は脂環式環、例えばシクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、シクロヘプチル及びシクロオクチルに結合しているモノマー残基が含まれる。本発明に於いて使用することができるスルホモノマー残基の他の例はスルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸又はこれらの組合せの金属スルホネート塩である。使用することができるスルホモノマーの他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸及びそのエステルである。スルホモノマー残基が、5−ソジオスルホイソフタル酸からである場合、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、酸残基の全モル数基準で、約4〜約35モル%、約8〜約30モル%及び約8〜約25モル%である。
【0046】
スルホポリエステルの製造で使用されるスルホモノマーは、公知の化合物であり、そして当該技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。例えばスルホネート基が芳香族環に結合しているスルホモノマーは、芳香族化合物を発煙硫酸によってスルホン化して対応するスルホン酸を得、続いて金属酸化物又は塩基、例えば酢酸ナトリウムと反応させて、スルホネート塩を製造することによって製造することができる。種々のスルホモノマーの製造方法は、例えば特許文献23、米国特許第3,018,272号明細書及び米国特許第3,528,947号明細書に記載されている。
【0047】
ポリマーが分散された形であるとき、例えばナトリウムスルホネート塩及びナトリウムを、亜鉛のような異なったイオンで置き換えるためのイオン交換方法を使用して、ポリエステルを製造することも可能である。この種のイオン交換手順は、ナトリウム塩が、通常、ポリマー反応剤溶融相中で一層可溶性である限りに於いて、二価の塩を有するポリマーを製造するよりも一般的に優れている。
【0048】
スルホポリエステルには、脂肪族グリコール、脂環式グリコール及びアラルキルグリコールを含んでよい、1種又はそれ以上のジオール残基が含有されている。脂環式ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、それらの純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス及びトランス異性体の混合物として存在してよい。本明細書で使用される用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義語であり、そして任意の二価アルコールを意味する。ジオールの例には、これらに限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオール又はこれらのグリコールの1種若しくはそれ以上の組合せが含まれる。
【0049】
ジオール残基には、全ジオール残基基準で約25モル%〜約100モル%の、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)の残基が含有されていてよい。例えば式中、nが2〜6である、低分子量ポリエチレングリコールの限定されない例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールである。これらの低分子量グリコールの中で、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが最も好ましい。式中、nが7〜約500である、より高い分子量のポリエチレングリコール(本明細書に於いて「PEG」と略記する)には、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)(以前は、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide))の製品である、名称CARBOWAX(登録商標)で公知である市販製品が含まれる。典型的には、PEGは、他のジオール、例えばジエチレングリコール又はエチレングリコールと組み合わせて使用する。6超から500までの範囲であるnの値に基づいて、分子量は300超から約22,000g/モルまでの範囲であってよい。分子量とモル%とは互いに逆比例し、特に、指定された親水性度を達成するために、分子量を増加させるとき、モル%は下げられるであろう。例えば1000の分子量を有するPEGは全ジオールの10モル%以下を構成し、一方、10,000の分子量を有するPEGは、典型的には、全ジオールの1モル%よりも少ないレベルで含有され得ると考えるとこの概念を説明するのに役立つ。
【0050】
ある種の二量体、三量体及び四量体ジオールは、プロセス条件を変化させることによって制御できる副反応のために、インシトゥ(in situ)で形成させることができる。例えば変化量のジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールは、重縮合反応を酸性条件下で実施するとき容易に起こる、酸触媒作用脱水反応から、エチレングリコールから生成させることができる。これらの副反応を遅延させるために、当業者に公知である緩衝液の存在を反応混合物に加えることができる。しかしながら、緩衝液を省き、そして二量化、三量化及び四量化反応を進行させる場合に、追加の組成許容範囲が可能である。
【0051】
本発明のスルホポリエステルには、全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)が含有されていてよい。枝分かれモノマーの限定されない例は、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、トレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸又はこれらの組合せである。枝分かれモノマー濃度範囲の別の例は、0〜約20モル%及び0〜約10モル%である。枝分かれモノマーの存在は、これらに限定されないが、レオロジー、溶解度及び引張特性を適合させる能力を含む、本発明のスルホポリエステルへの多数の可能性のある利点になり得る。例えば一定の分子量で、線状類似体に比較した枝分かれスルホポリエステルは、重合後架橋反応を容易にすることができる、より高い濃度の末端基も有するであろう。しかしながら、枝分かれ剤の高い濃度で、スルホポリエステルはゲル化する傾向があろう。
【0052】
本発明の繊維のために使用されるスルホポリエステルは、当業者に公知である標準的技術、例えば示差走査熱量法(「DSC」)を使用して、乾燥ポリマーで測定したとき、少なくとも25℃のガラス転移温度(本明細書に於いて、「Tg」と略記する)を有する。本発明のスルホポリエステルのTg測定は、「乾燥ポリマー」、即ち外来の又は吸収された水が、ポリマーを200℃の温度に加熱しそしてサンプルを室温にまで戻すことによって駆逐されるポリマーサンプルを使用して実施される。典型的には、スルホポリエステルを、DSC装置内で、サンプルを水蒸発温度よりも高い温度まで加熱する第一の熱走査を行い、サンプルをこの温度でポリマー中に吸収された水の蒸発が完結する(大きく広い吸熱によって示されるように)まで保持し、サンプルを室温にまで冷却し、次いでTg測定値を得るための第二の熱走査を行うことによって乾燥させる。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の更なる例は少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgが可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃である。
【0053】
本発明の新規な繊維は、前記のスルホポリエステルから本質的になっていてよいか又はなっていてよい。しかしながら、別の態様に於いて、本発明のスルホポリエステルは、単一のポリエステルであってよいか又は得られる繊維の特性を変性するために1種又はそれ以上の補足的ポリマーとブレンドされていてよい。この補足的ポリマーは、用途に依存して水分散性であってよく又は水分散性でなくてよく、そしてスルホポリエステルと混和性であってよく又は非混和性であってよい。補足的ポリマーが水非分散性である場合、スルホポリエステルとのブレンドが非混和性であることが好ましい。本明細書で使用される用語「混和性」は、ブレンドが、単一組成依存性Tgによって示されるように、単一の均一なアモルファス相を有することを意味することを意図する。例えば第二のポリマーと混和性である第一のポリマーは、例えば特許文献20に示されているように、第二のポリマーを「可塑化する」ために使用することができる。反対に、本明細書で使用される用語「非混和性」は少なくとも2個のランダムに混合された相を示し、そして2個以上のTgを示すブレンドを示す。幾つかのポリマーは、スルホポリエステルと非混和性であり、そしてなお相溶性である。混和性及び非混和性ポリマーブレンドの更なる一般的説明及びこれらのキャラクタリゼーションのための種々の分析技術は、Polymer Blend、第1巻及び第2巻、D.R.Paul及びC.B.Bucknall編、2000年、John Wiley & Sons, Inc.に記載されている。
【0054】
スルホポリエステルとブレンドすることができる水分散性ポリマーの限定されない例は、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、イソプロピルセルロース、メチルエーテルデンプン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリエチルオキサゾリン、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリビニルメチルオキサゾリドン、水分散性スルホポリエステル、ポリビニルメチルオキサゾリジモン、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)及びエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーである。スルホポリエステルとブレンドすることができる水非分散性であるポリマーの例には、これらに限定されないが、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンのホモ−及びコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリアミド、例えばナイロン−6、ポリラクチド、カプロラクトン、Eastar Bio(登録商標)(ポリ(テトラメチレンアジペート−共−テレフタレート)、イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Company)の製品)、ポリカーボネート、ポリウレタン並びにポリ塩化ビニルが含まれる。
【0055】
本発明に従って、スルホポリエステルの2種以上のブレンドを、得られる繊維又は繊維状物品、例えば不織布又はウエブの最終使用特性に合わせるために使用することができる。1種又はそれ以上のスルホポリエステルのブレンドは、水分散性一成分繊維について少なくとも25℃のTg及び多成分繊維について少なくとも57℃のTgを有するであろう。従って、ブレンドは、不織物の製造を容易にするために、スルホポリエステルの加工特性を変えるために役立てることもできる。別の例に於いて、ポリプロピレンとスルホポリエステルとの非混和性ブレンドは、真の溶解性が要求されないとき、水中で崩壊しそして完全に分散する一般的な不織ウエブを与えるであろう。この後者の例に於いて、望ましい性能は、スルホポリエステルが製品を実際に使用する間に傍観者にすぎないか又はその代わりに、スルホポリエステルが逃亡者であり、製品の最終形態が利用される前に除去される一方で、ポリプロピレンの物理的特性を維持することに関する。
【0056】
スルホポリエステル及び補足ポリマーは、回分プロセス、半連続プロセス又は連続プロセスでブレンドすることができる。小規模の回分は、当業者に公知である任意の強力混合装置、例えばバンバリーミキサー内で容易に製造し、その後繊維に溶融紡糸することができる。成分は適切な溶媒中の溶液中でブレンドすることもできる。溶融ブレンド方法には、スルホポリエステル及び補足ポリマーを、ポリマーを溶融するために充分な温度でブレンドすることが含まれる。このブレンドは次に使用するために冷却し、そしてペレット化することができ又は溶融ブレンドは、この溶融したブレンドから繊維形状に直接溶融紡糸することができる。本明細書で使用される用語「溶融」には、これらに限定されないが、ポリエステルを単に軟化させることが含まれる。ポリマー技術分野に於いて一般的に知られている溶融混合方法について、「ポリマーの混合及び配合(Mixing and Compounding of Polymers)」(I.Manas-Zloczower及びZ.Tadmor編、Carl Hanser Verlag Publisher、1994年、ニューヨーク、N.Y.)を参照されたい。
【0057】
本発明は、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルからなる水分散性繊維であって、このスルホポリエステルが、
(A)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(B)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(C)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、(iv)全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)からなる水分散性繊維も提供する。前記のように、この繊維には、スルホポリエステルとブレンドされた第一の水分散性ポリマー及び任意的に、ブレンドが非混和性ブレンドであるように、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマーが任意的に含有されていてよい。本発明の繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている。第一の水分散性ポリマーは、前記した通りである。このスルホポリエステルは、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有していなくてはならないが、例えば約35℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃のTgを有していてよい。このスルホポリエステルには、他の濃度、例えば約60〜約95モル%及び約75〜約95モル%のイソフタル酸残基が含有されていてよい。イソフタル酸残基濃度範囲の他の例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%及び約90〜約95モル%である。このスルホポリエステルは、約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基からなっていてもよい。ジエチレングリコール残基濃度範囲の他の例は、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%及び約75〜約95モル%である。このスルホポリエステルには、エチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノール(本明細書に於いて「CHDM」と略記する)の残基が含有されていてもよい。CHDM残基の典型的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。別の態様に於いて、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸の残基及び約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含んでなる。
【0058】
本発明のスルホポリエステルは、適切なジカルボン酸、エステル、無水物又は塩、スルホモノマー及び適切なジオール又はジオール混合物から、典型的な重縮合反応条件を使用して容易に製造される。これらは、連続、半連続及び回分モードの運転によって製造することができ、そして種々の反応器型式を利用することができる。適当な反応器型式の例には、これらに限定されないが、攪拌槽、連続式攪拌槽、スラリー、管型、ワイプド−フィルム(wiped-film)、流下薄膜又は押出反応器が含まれる。本明細書で使用される用語「連続」は、遮断されない方式で、反応剤が導入され、そして生成物が同時に取り出されるプロセスを意味する。「連続」によって、プロセスが、運転に於いて実質的に又は完全に連続であり、「回分」プロセスと対比されるべきであることを意味する。「連続」は、如何なる方法に於いても、例えばスタートアップ、反応器保全又は計画的運転停止期間のために、プロセスの連続性に於ける正常な遮断を禁じることを意味しない。本明細書で使用される用語「回分」プロセスは、全ての反応剤を反応器に添加し、次いで予定された反応のコースに従って処理し、その間に材料を反応器の中に供給せず又は反応器から取り出さないプロセスを意味する。用語「半連続」は、反応剤の幾らかをプロセスの開始時に装入し、そして残りの反応剤を、反応が進行するとき連続的に供給するプロセスを意味する。その代わりに、半連続プロセスには、1種又はそれ以上の生成物を反応が進行するとき連続的に取り出す以外は、全ての反応剤をプロセスの開始時に添加する回分プロセスと同様のプロセスが含まれていてもよい。このプロセスは、スルホポリエステルは、高い温度で長すぎる期間反応器内に滞留させると、外観が損なわれ得るので、経済的理由のためにそしてポリマーの優れた着色を作るために、連続プロセスとして有利に運転する。
【0059】
本発明のスルホポリエステルは、当業者に公知の手順によって製造する。スルホモノマーは、最もしばしば、それからポリマーが製造される反応混合物に直接添加されるが、例えば米国特許第3,018,272号明細書、米国特許第3,075,952号明細書及び米国特許第3,033,822号明細書に記載されているような他の方法が公知であり、使用することもできる。スルホモノマー、ジオール成分及びジカルボン酸成分の反応は、一般的なポリエステル重合条件を使用して実施することができる。例えばエステル交換反応の手段により、即ちジカルボン酸成分のエステル形から、スルホポリエステルを製造するとき、反応プロセスは2段階からなっていてよい。第一の段階に於いて、ジオール成分とジカルボン酸成分、例えばイソフタル酸ジメチルとを、高い温度、典型的には150℃〜250℃で約0.5〜約8時間、約0.0kPaゲージ〜約414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ、「psig」)の範囲内の圧力で反応させる。好ましくは、エステル交換反応のための温度は、約180℃〜約230℃の範囲で、約1〜約4時間であり、その間、好ましい圧力は、約103kPaゲージ(15psig)〜約276kPaゲージ(40psig)の範囲である。その後、反応生成物をより高い温度下で、減圧下で加熱して、ジオール(これは、これらの条件下で容易に揮発し、そしてシステムから除去される)を除去してスルホポリエステルを生成させる。この第二の段階又は重縮合段階を、より高い真空及び一般的に約230℃〜約350℃、好ましくは約250℃〜約310℃、最も好ましくは約260℃〜約290℃の範囲内である温度下で、約0.1〜約6時間又は好ましくは約0.2〜約2時間、インヘレント粘度によって決定する通り所望の重合度を有するポリマーが得られるまで続ける。この重縮合段階は、約53kPa(400トール)〜約0.013kPa(0.1トール)の範囲である減圧下で実施することができる。適切な熱移動及び反応混合物の表面再生を確保するために、両方の段階で、攪拌又は適切な条件を使用する。両方の段階の反応を、適切な触媒、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコレート、有機カルボン酸の塩、アルキルスズ化合物、金属酸化物などによって、容易にする。米国特許第5,290,631号明細書に記載されているものと類似の三段階製造手順も、特に酸及びエステルの混合モノマー供給物を使用するとき、使用することができる。
【0060】
エステル交換反応メカニズムによるジオール成分とジカルボン酸成分との反応が、完結まで駆動されることを確保するために、1モルのジカルボン酸成分に対して、約1.05〜約2.5モルのジオール成分を使用することが好ましい。しかしながら、当業者は、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比が、一般的に、その中で反応プロセスが起こる反応器の設計によって決定されることを理解するであろう。
【0061】
直接エステル化により、即ちジカルボン酸成分の酸形から、スルホポリエステルを製造する際に、スルホポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物を、ジオール成分又はジオール成分の混合物と反応させることによって製造される。この反応は、約7kPaゲージ(1psig)〜約1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)よりも低い圧力で実施され、約1.4〜約10の平均重合度を有する低分子量、直鎖又は分枝鎖スルホポリエステル生成物を製造する。直接エステル化反応の間に使用される温度は、典型的には約180℃〜約280℃の範囲、更に好ましくは約220℃〜約270℃の範囲である。次いで、この低分子量ポリマーを、重縮合反応によって重合させることができる。
【0062】
本発明の水分散性及び多成分繊維並びに繊維状物品には、それらの最終用途に有害な影響を与えない、その他の一般的な添加剤及び成分が含有されていてもよい。例えば充填剤、表面摩擦改良剤、光及び熱安定剤、押出助剤、耐電防止剤、着色剤、染料、顔料、蛍光増白剤、抗菌剤、偽造防止マーカー、疎水性及び親水性増強剤、粘度改良剤、滑剤、強化材、接着促進剤などのような添加剤を使用することができる。
【0063】
本発明の繊維及び繊維状物品は、加工の間の繊維のブロック又は融合を防止するための添加剤、例えば顔料、充填剤、油、ワックス又は脂肪酸仕上げ剤の存在を必要としない。本明細書で使用する用語「ブロック又は融合」は、繊維又は繊維状物品が、繊維を、その意図する目的のために加工又は使用することができないように、一緒に粘着するか又は塊に融合することを意味すると理解する。ブロック及び融合は、繊維若しくは繊維状物品の加工の間に又は数日若しくは数週間に亘って貯蔵する間に起こり得、熱い湿潤条件下で悪化する。
【0064】
本発明の一つの態様に於いて、繊維及び繊維状物品には、繊維又は繊維状物品の全重量基準で10重量%よりも少ないこのようなブロック防止添加剤が含有されるであろう。例えば繊維及び繊維状物品には、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されていてよい。他の例に於いて、繊維及び繊維状物品には、繊維の全重量基準で、9重量%よりも少ない、5重量%よりも少ない、3重量%よりも少ない、1重量%よりも少ない、そして0重量%の顔料又は充填剤が含有されていてよい。ときにはトナーと呼ばれる着色剤を、スルホポリエステルに、所望の中性色相及び/又は光沢を与えるために添加することができる。着色した繊維を望むときは、ジオールモノマーとジカルボン酸モノマーとの反応の間に、顔料又は着色剤を、スルホポリエステル反応混合物中に含有させることができ又はこれらを予備形成したスルホポリエステルと溶融ブレンドすることができる。着色剤を含有させる好ましい方法は、反応性基を有する熱的に安定な有機着色化合物を有する着色剤を使用して、着色剤を共重合させ、そしてスルホポリエステルの中に含有させて、その色相を改良することである。例えばこれらに限定されないが、青及び赤置換アントラキノンを含む、反応性ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を有する染料のような着色剤を、ポリマー鎖の中に共重合させることができる。染料を着色剤として使用するときには、これらは、エステル交換反応又は直接エステル化反応の後で、コポリエステル反応プロセスに添加することができる。
【0065】
本発明の目的のために、用語「繊維」は、織布又は不織布のような二次元又は三次元物品に形成することができる高アスペクト比のポリマー物体を指す。本発明の関連で、用語「繊維」は、「繊維群」と同義語で、1本又はそれ以上の繊維を意味することを意図する。本発明の繊維は、一成分繊維、二成分繊維又は多成分繊維であってよい。本明細書で使用される用語「一成分繊維」は、単一のスルホポリエステル、1種若しくはそれ以上のスルホポリエステルのブレンド又は1種若しくはそれ以上のスルホポリエステルと1種若しくはそれ以上の追加のポリマーとのブレンドを溶融紡糸することによって製造された繊維を意味することを意図し、ステープル、モノフィラメント及びマルチフィラメント繊維を含む。「一成分」は、用語「モノ成分」と同義語であり、そして「二構成物質」又は「多構成物質」繊維を含み、そしてブレンドとして同じ押出機から押し出された少なくとも2種のポリマーから形成された繊維を指す。一成分又は二構成物質繊維は、繊維の断面領域を横断して比較的一定で配置された別個のゾーン内に整列された種々のポリマー成分を有さず、そしてこの種々のポリマーは、通常、繊維の全長に沿って連続しておらず、その代わりに、通常、ランダムで始まり且つ終わるフィブリル又はプロトフィブリルを形成する。従って、用語「一成分」は、少量の添加剤が、着色、帯電防止特性、潤滑、親水性等のために添加されているであろう1種のポリマー又は1種若しくはそれ以上のポリマーのブレンドから形成された繊維を排除することを意図しない。
【0066】
反対に、本明細書で使用される用語「多成分繊維」は、2種又はそれ以上の繊維形成ポリマーを別個の押出機内で溶融し、そして得られる複数のポリマー流を、複数の分配流路を有する1個の紡糸口金に向け、一緒に紡糸して1本の繊維を形成することによって製造された繊維を意味することを意図する。多成分繊維は、ときには、複合繊維又は二成分繊維とも呼ばれる。ポリマーは、複合繊維の断面を横断して実質的に一定に配置された別個のセグメント又はゾーン内に整列され、そして複合繊維の長さに沿って連続的に伸びている。このような多成分繊維の形状は、例えば1種のポリマーが別のポリマーによって取り囲まれているシース/コア型配置であってよく又は横並び型配置、パイ型配置若しくは「海島型」配置であってよい。例えば多成分繊維は、スルホポリエステルと1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーとを、別々に、造形された又は設計された横断形状、例えば「海島型」又は分割されたパイ型形状を有する紡糸口金に通して押し出すことによって製造することができる。多成分繊維は、典型的には、造形された又は丸い断面を有する、ステープル、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維である。殆どの繊維形をヒートセットする。この繊維には、前記のような種々の酸化防止剤、顔料及び添加剤が含まれてよい。
【0067】
モノフィラメント繊維は、一般的に、サイズが約15〜約8000デニール/フィラメント(本明細書に於いて「d/f」と略記する)の範囲内である。本発明の新規な繊維は、典型的には、約40〜約5000の範囲内のd/f値を有するであろう。モノフィラメントは、一成分繊維又は多成分繊維の形であってよい。本発明のマルチフィラメント繊維は、好ましくは、サイズが、溶融ブローウエブについて約1.5μmから、ステープル繊維について約0.5〜約50d/f、そしてモノフィラメント繊維について約5000d/f以下の範囲である。マルチフィラメント繊維は捲縮された又は捲縮されていないヤーン及びトウ(tow)として使用することもできる。溶融ブローウエブ及び溶融紡糸布帛に於いて使用される繊維はマイクロデニールサイズで製造することができる。本明細書で使用される用語「マイクロデニール」は、1d/f又はそれ以下のd/f値を意味することを意図する。例えば本発明のマイクロデニール繊維は、典型的には、1又はそれ以下、0.5又はそれ以下又は0.1又はそれ以下のd/f値を有する。静電紡糸によって、ナノ繊維を製造することもできる。
【0068】
前記のように、スルホポリエステルは造形された断面を有する二成分及び多成分繊維の製造のためにも有利である。本発明者らは、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル又はスルホポリエステルのブレンドが、紡糸及び引き取りの間の繊維のブロック及び融合を防止するために、多成分繊維について特に有用であることを見出した。従って、本発明は、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル、このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる、そして
(B)このスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のセグメント(ここで、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維であって、この繊維は、海島型又は分割されたパイ型断面を有し、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含有する多成分繊維を提供する。
【0069】
このジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー及び枝分かれモノマー残基は、本発明の他の態様について前記した通りである。多成分繊維について、このスルホポリエステルは、少なくとも57℃のTgを有することが有利である。本発明の多成分繊維のスルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドによって示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。更に、少なくとも57℃のTgを有するスルホポリエステルを得るために、1種又はそれ以上のスルホポリエステルのブレンドを、所望のTgを有するスルホポリエステルブレンドを得るために比率を変化させて使用することができる。スルホポリエステルブレンドのTgは、スルホポリエステル成分のTgの重量平均を使用することによって、計算することができる。例えば48℃のTgを有するスルホポリエステルを、65℃のTgを有する別のスルホポリエステルと、25:75重量:重量比でブレンドして、約61℃のTgを有するスルホポリエステルブレンドを得ることができる。
【0070】
本発明の別の態様に於いて、この多成分繊維の水分散性スルホポリエステル成分は、下記、即ち
(A)所望の低デニールにまで紡糸されるべき多成分繊維、
(B)これらの多成分繊維中のスルホポリエステルは、この繊維から形成されたウエブのハイドロエンタングルの間の除去に対して耐性であるが、ハイドロエンタングルの後で上昇した温度で効率的に除去する、
(C)この多成分繊維は、ヒートセットして、安定で強い布帛をもたらすことができる
の少なくとも1個を可能にする特性を表す。
驚くべき予想外の結果を、一定の溶融粘度及びスルホモノマー残基のレベルを有するスルホポリエステルを使用して、これらの目的の推進において達成した。
【0071】
従って、本発明のこの態様に於いては、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)このスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなる複数のドメイン(ここで、該ドメインは、このドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維であって、
この繊維が、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、
この水分散性スルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定された約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そして
このスルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含んでなる
多成分繊維が提供される。
【0072】
これらの多成分繊維中に使用するスルホポリエステルは、一般的に、約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を有する。好ましくは、このスルホポリエステルの溶融粘度は、240℃で1rad/秒の剪断速度で測定したときに、10,000ポアズよりも低く、更に好ましくは6,000ポアズよりも低く、最も好ましくは4,000ポアズよりも低い。別の面に於いて、このスルホポリエステルは、240℃で1rad/秒の剪断速度で測定した、約1000〜12000ポアズ、更に好ましくは2000〜6000ポアズ、最も好ましくは2500〜4000ポアズの溶融粘度を示す。この粘度を決定する前に、サンプルを、真空オーブン内で60℃で2日間乾燥させる。この溶融粘度は、1mm隙間設定で25mm直径の平行板形状を使用するレオメーターで測定する。動的振動スイープ(dynamic frequency sweep)を、1〜400rad/秒の歪み速度範囲及び10%歪み振幅で作動させる。次いで、粘度を、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定する。
【0073】
本発明のこの面に従って使用するためのスルホポリエステル中のスルホモノマー残基のレベルは、一般的に、スルホポリエステル中の全二酸又はジオール残基のパーセントとして報告すると、約25モル%よりも低く、更に好ましくは20モル%よりも低い。更に好ましくは、このレベルは、約4〜約20モル%、なお更に好ましくは約5〜約12モル%、最も好ましくは約7〜約10モル%である。本発明で使用するスルホモノマーは、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)。ソジオスルホイソフタル酸モノマーが特に好ましい。
【0074】
前記のスルホモノマーに加えて、このスルホポリエステルは、好ましくは1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)及び全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)からなる。
【0075】
特に好ましい態様に於いて、このスルホポリエステルは約80〜96モル%のジカルボン酸残基、約4〜約20モル%のスルホモノマー残基及び100モル%のジオール残基を含んでなる(200%の合計モル%、即ち二酸100モル%及びジオール100モル%が存在する)。更に詳しくは、このスルホポリエステルのジカルボン酸部分は、約60〜80モル%のテレフタル酸、約0〜30モル%のイソフタル酸及び約4〜20モル%の5−ソジオスルホイソフタル酸(5−SSIPA)を含んでなる。このジオール部分は約0〜50モル%のジエチレングリコール及び約50〜100モル%のエチレングリコールを含んでなる。本発明のこの態様に従った代表的な配合を、次に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
多成分繊維の水非分散性成分は、本明細書中に記載されたこれらの水非分散性ポリマーのいずれからなっていてもよい。この繊維の紡糸は本明細書中に記載された任意の方法に従って行うこともできる。しかしながら、本発明のこの面に従った多成分繊維の改良されたレオロジー特性は、増大された延伸速度を提供する。スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを押し出して、多成分押出物を製造するとき、この多成分押出物は、本明細書中に記載された任意の方法を使用して、少なくとも約2000m/分、更に好ましくは少なくとも約3000m/分、なお更に好ましくは少なくとも約4000m/分、最も好ましくは少なくとも約4500m/分の速度で、溶融延伸して、多成分繊維を製造することができる。理論によって結び付けることを意図しないが、これらの速度での多成分押出物の溶融延伸は、多成分繊維の水非分散性成分に於ける少なくとも幾らかの配向した結晶化度になる。この配向した結晶化度は、次の加工の間の多成分繊維から製造された不織材料の寸法安定性を増加させることができる。
【0078】
この多成分押出物の別の利点は、それが、6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有する多成分繊維に溶融延伸できることである。多成分繊維サイズの他の範囲には、4デニール/フィラメントよりも小さい、そして2.5デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールが含まれる。
【0079】
従って、本発明の別の態様に於いて、造形された断面を有する多成分押出物は、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)このスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(ここで、該ドメインは、このドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなり、この押出物は少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸することができる。
【0080】
前記多成分繊維は、セグメント又はドメインが、セグメント又はドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている、スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーの複数のセグメント又はドメインを含んでなる。本明細書で使用される用語「実質的に分離されている」は、セグメント又はドメインが、互いに引き離されていて、スルホポリエステルを除去した際に、セグメント、ドメインが個々の繊維を形成することが可能であることを意味するように意図する。例えばセグメント又はドメインは、例えば分割されたパイ型形状に於けるように互いに触れているが、衝撃により又はスルホポリエステルを除去したとき、切り離すことができる。
【0081】
本発明の多成分繊維中のスルホポリエステルの水非分散性ポリマー成分に対する重量比は、一般的に、約60:40〜約2:98の範囲内、又は、別の例に於いて、約50:50〜約5:95の範囲内である。典型的には、スルホポリエステルは多成分繊維の全重量の50重量%又はそれ以下からなる。
【0082】
多成分繊維のセグメント又はドメインは、1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなっていてよい。多成分繊維のセグメント中に使用することができる水非分散性ポリマーの例には、これらに限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースエステル及びポリ塩化ビニルが含まれる。例えば水非分散性ポリマーは、ポリエステル、例えばポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレートなどであってよい。別の例に於いて、水非分散性ポリマーは、DIN規格54900によって決定したときに、生物崩壊性であってよく、そして/又はASTM規格方法D6340−98によって決定したときに、生物分解性であってよい。生物分解性ポリエステル及びポリエステルブレンドの例は米国特許第5,599,858号明細書、米国特許第5,580,911号明細書、米国特許第5,446,079号明細書及び米国特許第5,559,171号明細書に開示されている。本発明の水非分散性ポリマーを参照して本明細書で使用される用語「生物分解性(biodegradable)」は、ポリマーが、環境影響下で、例えば堆肥環境中で、例えばASTM規格方法D6340−98、標題「水性又は堆肥環境中で放射線標識プラスチック材料の好気的生物分解を決定するための規格試験方法」(“Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Materials in an Aqueous or Compost Environment”)によって定義されたような、適切で明示的時間間隔で分解することを意味すると理解する。本発明の水非分散性ポリマーは、ポリマーが、例えばDIN規格54900によって定義されたような堆肥環境中で、容易に断片化することを意味する「生物崩壊性(biodisintegratable)」であってもよい。例えば生物分解性ポリマーは、最初は、熱、水、空気、微生物及び他の因子の作用によって環境中で分子量が減少する。この分子量の減少は、物理的特性(靱性)の低下になり、そしてしばしば繊維破壊になる。ポリマーの分子量が充分に低いと、モノマー及びオリゴマーは次いで、微生物によって同化される。好気的環境中で、これらのモノマー又はオリゴマーは、最終的に、CO2、H2O及び新しい細胞バイオマスにまで酸化される。嫌気的環境中で、モノマー又はオリゴマーは、最終的に、CO2、H2、アセテート、メタン及び細胞バイオマスに転化される。
【0083】
例えば水非分散性ポリマーは脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書に於いて「AAPE」と略記する)であってよい。本明細書で使用される用語「脂肪族−芳香族ポリエステル」は、脂肪族又は脂環式のジカルボン酸又はジオールと、芳香族のジカルボン酸又はジオールとからの残基の混合物からなるポリエステルを意味する。本発明のジカルボン酸及びジオールモノマーに関して、本明細書で使用される用語「非芳香族」は、モノマーのカルボキシル又はヒドロキシル基が、芳香族核によって結合されていないことを意味する。例えばアジピン酸は、その主鎖、即ちカルボン酸基を連結する炭素原子の鎖中に芳香族核を含有しておらず、従って「非芳香族」である。反対に、用語「芳香族」は、例えばテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸のように、ジカルボン酸又はジオールが、主鎖中に芳香族核を含有していることを意味する。従って、「非芳香族」は、例えばジオール及びジカルボン酸のような、主鎖として、飽和性若しくは事実上パラフィン性、不飽和性、即ち非芳香族炭素−炭素二重結合を含む又はアセチレン性であってよく、即ち炭素−炭素三重結合を含んでいてよい、構成炭素原子の直鎖、分枝鎖又は環式配置を含有する、脂肪族及び脂環式構造、の両方を含むことを意図する。従って、本発明の説明及び特許請求の範囲に関連して、非芳香族は、線状及び分枝状鎖構造(本明細書に於いて「脂肪族」として参照する)並びに環式構造(本明細書に於いて「脂環式(alicyclic)」又は「脂環式(cycloaliphatic)」として参照する)を含むことを意図する。しかしながら、用語「非芳香族」は、脂肪族又は脂環式のジオール又はジカルボン酸の主鎖に結合していてよい任意の芳香族置換基を排除することを意図しない。本発明に於いて、二官能性カルボン酸は、典型的には、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸又は芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸である。二官能性ヒドロキシル化合物は、脂環式ジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、線状若しくは分枝状脂肪族ジオール、例えば1,4−ブタンジオール又は芳香族ジオール、例えばヒドロキノンであってよい。
【0084】
AAPEは、炭素数2〜約8の脂肪族ジオール、炭素数2〜約8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数約4〜約12の脂環式ジオールから選択された、1種又はそれ以上の置換又は非置換の、線状又は分枝状ジオールの残基を含むジオール残基を含んでなる、線状若しくは分枝状ランダムコポリエステル及び/又は鎖延長したコポリエステルであってよい。置換されたジオールは、典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立に選択された、1〜約4個の置換基を含むであろう。使用することができるジオールの例には、これらに限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが含まれ、好ましいジオールは、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択された1種又はそれ以上のジオールを含む。AAPEは、二酸残基の全モル数基準で約35〜約99モル%の、炭素数2〜約12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数約5〜約10の脂環式酸から選択された、1種又はそれ以上の置換又は非置換の、線状又は分枝状の非芳香族ジカルボン酸の残基を含有する二酸残基も含む。置換された非芳香族ジカルボン酸には、典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選択された、1〜約4個の置換基が含まれるであろう。非芳香族二酸の限定されない例には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸が含まれる。非芳香族ジカルボン酸に加えて、AAPEは、二酸残基の全モル数基準で約1〜約65モル%の、炭素数6〜約10の1種又はそれ以上の置換又は非置換の芳香族ジカルボン酸の残基を含む。置換された芳香族ジカルボン酸を使用する場合に、これらには、典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選択された、1〜約4個の置換基が含まれるであろう。本発明のAAPEに於いて使用することができる芳香族ジカルボン酸の限定されない例は、テレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸の塩及び2,6−ナフタレンジカルボン酸である。更に好ましくは、非芳香族ジカルボン酸はアジピン酸を含み、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、そしてジオールは1,4−ブタンジオールを含むであろう。
【0085】
本発明のAAPEのための他の可能性のある組成物は、下記のジオール及びジカルボン酸(又はジエステルのような、そのポリエステル形成性等価物)から、二酸成分100モル%及びジオール成分100モル%基準で下記のモル%で製造されたものである。
【0086】
(1)グルタル酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)及び変性ジオール(0〜約10%);
(2)コハク酸(約30〜約95%)、テレフタル酸(約5〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)及び変性ジオール(0〜約10%)並びに
(3)アジピン酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)及び変性ジオール(0〜約10%)。
【0087】
この変性ジオールは、好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びネオペンチルグリコールから選択する。最も好ましいAAPEは、約50〜約60モル%のアジピン酸残基、約40〜約50モル%のテレフタル酸残基及び少なくとも95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含む、線状の、枝分かれした又は鎖延長したコポリエステルである。なお更に好ましくは、アジピン酸残基は約55〜約60モル%を含み、テレフタル酸残基は約40〜約45モル%を含み、そしてジオール残基は約95モル%の1,4−ブタンジオールを含む。このような組成物は、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN)から商標EASTAR BIO(登録商標)コポリエステルで及びBASF社から商標ECOFLEX(登録商標)で市販されている。
【0088】
好ましいAAPEの追加の具体例には、(a)50モル%のグルタル酸残基、50モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基、(b)60モル%のグルタル酸残基、40モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基又は(c)40モル%のグルタル酸残基、60モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレングルタレート−共−テレフタレート);(a)85モル%のコハク酸残基、15モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基又は(b)70モル%のコハク酸残基、30モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレンスクシネート−共−テレフタレート);70モル%のコハク酸残基、30モル%のテレフタル酸残基及び100モル%のエチレングリコール残基を含有するポリ(エチレンスクシネート−共−テレフタレート)並びに(a)85モル%のアジピン酸残基、15モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基又は(b)55モル%のアジピン酸残基、45モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレンアジペート−共−テレフタレート)が含まれる。
【0089】
AAPEは、好ましくは約10〜約1,000個の繰り返し単位、好ましくは約15〜約600個の繰り返し単位を含む。AAPEは、25℃の温度で、フェノール/テトラクロロエタンの60/40重量溶液100mL中の0.5gのコポリエステルの濃度を使用して測定したときに、約0.4〜約2.0dL/g、更に好ましくは約0.7〜約1.6dL/gのインヘレント粘度を有していてよい。
【0090】
AAPEは、任意的に、枝分かれ剤の残基を含有していてよい。枝分かれ剤についてのモル%範囲は、(枝分かれ剤にカルボキシル基又はヒドロキシル基を含有しているか否かに依存して)二酸又はジオール残基の全モル数基準で、約0〜約2モル%、好ましくは約0.1〜約1モル%、最も好ましくは約0.1〜約0.5モル%である。枝分かれ剤は、好ましくは約50〜約5000、更に好ましくは約92〜約3000の重量平均分子量及び約3〜約6の官能度を有する。例えば枝分かれ剤は、3〜6個のヒドロキシル基を有するポリオールのエステル化した残基、3個若しくは4個のカルボキシル基(又はエステル形成性等価基)を有するポリカルボン酸又は合計で3〜6個のヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸であってよい。更に、AAPEは、反応押出の間の過酸化物の添加により枝分かれさせることができる。
【0091】
水非分散性ポリマーのそれぞれのセグメントは、細度に於いて他のものから異なっていてよく、当業者に公知の任意の造形された又は設計された断面形状に配列されていてよい。例えばスルホポリエステル及び水非分散性ポリマーは、例えば横並び型、「海島型」、分割されたパイ型、他の分離可能な型、シース/コア型又は当業者に公知の他の形状のような設計された形状を有する二成分繊維を製造するために使用することができる。他の多成分形状も可能である。続いてサイド、「海」又は「パイ」の一部を除去することによって、非常に微細な繊維になり得る。二成分繊維の製造方法も、当業者に公知である。二成分繊維に於いて、本発明のスルホポリエステル繊維は、約10〜約90重量%の量で存在することができ、一般的にシース/コア型繊維のシース部分に使用されるであろう。典型的には、水不溶性又は水非分散性ポリマーを使用するとき、得られる二成分又は多成分繊維は、完全には水分散性ではない。熱収縮に於いて顕著な差異を有する横並び型組合せを、螺旋型捲縮(spiral crimp)の発生のために利用することができる。捲縮を望む場合、鋸歯又はスタッファーボックス捲縮(stuffer box crimp)が、多くの用途のために一般的に適している。第二のポリマー成分がシース/コア型形状のコア中に存在する場合、このようなコアを任意的に安定化させることができる。
【0092】
スルホポリエステルは、多成分繊維から他の水分散性ポリマーを除去するために時々必要とされる苛性含有溶液に比較して、それらが、分散するために中性又は僅かに酸性である(即ち「軟」水)ことのみを必要とするので、「海島型」又は「分割されたパイ型」断面を有する繊維のために特に有用である。本開示中に使用される用語「軟水」は、水が、5グレイン/ガロン以下のCaCO3を有する(1グレインのCaCO3/ガロンは、17.1ppmに等価である)ことを意味する。従って、本発明の別の面は、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル、このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
からなる並びに
(B)このスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなる複数のセグメント(ここで、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いから実質的に分離されている)、
を含んでなる多成分繊維であって、この繊維は、海島型又は分割されたパイ型断面を有し、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含有する多成分繊維である。
【0093】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、枝分かれモノマー残基及び水非分散性ポリマーは前記した通りである。多成分繊維について、スルホポリエステルは少なくとも57℃のTgを有することが有利である。スルホポリエステルは、単一のスルホポリエステル又は1種若しくはそれ以上のスルホポリエステルポリマーのブレンドであってよい。スルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドによって示すことができるガラス転移温度の更なるは、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。例えばスルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基及び約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含んでいてよい。前記のように、水非分散性ポリマーの例はポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースエステル及びポリ塩化ビニルである。更に、水非分散性ポリマーは生物分解性又は生物崩壊性であってよい。例えば水非分散性ポリマーは、前記のような脂肪族−芳香族ポリエステルであってよい。
【0094】
本発明の新規な多成分繊維は当業者に公知の任意の数の方法によって製造することができる。従って、本発明は、造形された断面を有する多成分繊維のための方法であって、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、繊維に紡糸することを含んでなり、このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなり、繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そして繊維は、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有している方法を提供する。例えば多成分繊維は、スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、別個の押出機内で溶融し、そして個々のポリマー流を、水非分散性ポリマー成分が、介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている小さいセグメント又は薄いストランドを形成するように、複数の分布流路を有する1個の紡糸口金又は押出ダイの中に向けることによって、製造することができる。このような繊維の断面は、例えば分割されたパイ型配置又は海島型配置であってよい。別の例に於いて、スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、紡糸口金オリフィスに別々に供給され、次いで、水非分散性ポリマーが、スルホポリエステル「シース」ポリマーによって実質的に取り囲んでいる「コア」を形成している、シース−コア形状で押し出す。このような同心繊維の場合に、「コア」ポリマーを供給するオリフィスは、紡糸オリフィス出口の中心にあり、そしてコアポリマー流体の流動条件は、紡糸するときの両成分の同心性を維持するように厳密に制御される。紡糸口金オリフィスの変更によって、繊維断面内で得るべきコア及び/又はシースの異なった形状が可能になる。更に別の例に於いて、横並び断面又は形状を有する多成分繊維を、水分散性スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを、別々にオリフィスを通して共押し出しして、そして別々のポリマー流を実質的に同じ速度で集中させて、紡糸口金の前面の下で一緒にした流れとして横並びで合体させることによって、又は(2)この2種のポリマー流を、別々に、紡糸口金の表面で集中しているオリフィスを通して、実質的に同じ速度で供給して、紡糸口金の表面で一緒にした流れとして横並びで合体させることによって製造することができる。両方の場合に、合体の点でのそれぞれのポリマー流の速度は、その計量ポンプ速度、オリフィスの数及びオリフィスのサイズによって決定する。
【0095】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、枝分かれモノマー残基及び水非分散性ポリマーは前記した通りである。スルホポリエステルは少なくとも57℃のガラス転移温度を有する。スルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドによって示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。一つの例に於いて、スルホポリエステルは、全酸残基基準で、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基及び全酸残基基準で約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基並びに全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含んでいてよい。別の例に於いて、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基及び約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含んでいてよい。前記のように、水非分散性ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルである。更に、水非分散性ポリマーは、生物分解性又は生物崩壊性であってよい。例えば水非分散性ポリマーは、前記のような脂肪族−芳香族ポリエステルであってよい。造形された断面の例には、これらに限定されないが、海島型、横並び型、シース−コア型又は分割されたパイ型形状が含まれる。
【0096】
本発明の別の面に於いて、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを紡糸して、多成分繊維を製造することを含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維の製造方法であって、この多成分繊維が、水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、このドメインが、ドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、この水分散性スルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定された約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、このスルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含み、そしてこの多成分繊維が、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有する、多成分繊維の製造方法が提供される。
【0097】
これらの多成分繊維中で使用するスルホポリエステル及び水非分散性ポリマーは本開示中で前に検討した。
【0098】
本発明の別の面に於いて、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押し出して、多成分押出物を製造し(ここで、この多成分押出物は、この水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、このドメインは、このドメインの間に介在するこのスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)そして
(B)この多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成する
ことを含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維の製造方法が提供される。
【0099】
この方法に、この多成分押出物を、少なくとも約2000m/分、更に好ましくは少なくとも約3000m/分、最も好ましくは少なくとも4500m/分の速度で溶融延伸する工程を含むことが、本発明のこの態様の特徴でもある。
【0100】
典型的には、紡糸口金を出る際に、繊維は空気の交差流で急冷され、そこで繊維は固化する。この段階で、種々の仕上げ剤及びサイズを繊維に適用することができる。冷却した繊維は、典型的には、続いて延伸され、そして巻き取りスプールに巻き付ける。乳化剤、耐電防止剤、抗菌剤、消泡剤、潤滑剤、熱安定剤、UV安定剤等のような他の添加剤を、仕上げに有効量で含有させることができる。
【0101】
任意的に、延伸された繊維を加工(textured)し、そして巻き付けてかさ高連続フィラメントを形成することができる。この一工程技術は、当該技術分野で紡糸−延伸−加工(spin-draw-texturing)として知られている。他の態様には、扁平フィラメント(加工無し)ヤーン又はカットステープル繊維(捲縮されているか又は捲縮されていない)が含まれる。
【0102】
このスルホポリエステルは、後で、界面層又はパイセグメントを溶解することによって除去し、そして水非分散性ポリマー(群)の、より小さいフィラメント又はマイクロデニール繊維を残すことができる。従って、本発明は、マイクロデニール繊維のための方法であって、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(ここで、このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、そして
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる(ここで、この繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、そして
(B)この多成分繊維を水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0103】
典型的には、多成分繊維を、水と、約25℃〜約100℃、好ましくは約50〜約80℃の温度で約10〜約600秒間接触させ、それによってスルホポリエステルを消散又は溶解させる。スルホポリエステルを除去した後、残留する水非分散性ポリマーミクロ繊維は、典型的には、1d/f又はそれ以下、典型的に0.5d/f又はそれ以下、更に典型的に0.1d/f又はそれ以下の平均繊度を有するであろう。これらの残留する水非分散性ポリマーミクロ繊維の典型的な用途には、不織布、例えば人造皮革、スエード、拭き取り具及びフィルター媒体が含まれる。これらのミクロ繊維から製造されたフィルター媒体は空気又は液体を濾過するために使用することができる。液体用のフィルター媒体には、これらに限定されないが、水、体液、溶媒及び炭化水素が含まれる。スルホポリエステルのイオン的性質は、体液のような食塩水媒体中の有利に劣った「溶解度」にもなる。このような特性は、衛生汚水設備で水洗可能性であるか又は他の方法で処分される、パーソナルケア製品及び清浄拭き取り具に於いて望ましい。選択されたスルホポリエステルは、染浴中の分散剤として及びランドリーサイクルの間の汚れ再堆積防止剤としても利用されてきた。
【0104】
本発明の別の態様に於いて、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこの水分散性スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(ここで、該繊維は、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、このドメインは、このドメインの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、この繊維は、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、この水分散性スルホポリエステルは、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定された約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そしてこのスルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む)、そしてこの多成分繊維を水と接触させてこの水分散性スルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維を形成することを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法が提供される。
【0105】
本発明の別の態様に於いて、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及びこの水分散性スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押し出して、多成分押出物を製造し(ここで、該多成分押出物は、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインは、該ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
(B)該多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し、そして
(C)該多成分繊維を水と接触させて該水分散性スルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法が提供される。
【0106】
この多成分押出物の溶融延伸は、少なくとも約2000m/分、更に好ましくは少なくとも約3000m/分、最も好ましくは少なくとも約4500m/分の速度であることが好ましい。
【0107】
本発明に従って使用するのに適している、このようなスルホモノマー及びスルホポリエステルは、前に説明している。
【0108】
本発明のこの面に従って使用する好ましいスルホポリエステルは、一般的に、次のハイドロエンタングルプロセスの間の除去に対して耐性であるので、多成分繊維からスルホポリエステルを除去するために使用される水は室温よりも高い、更に好ましくは、この水は、少なくとも約45℃、なお更に好ましくは少なくとも約60℃、最も好ましくは少なくとも約80℃であることが好ましい。
【0109】
本発明の別の態様に於いて、水非分散性ポリマーミクロ繊維を製造する別の方法が提供される。この方法は、
a)多成分繊維を切断多成分繊維に切断し、
b)繊維含有供給原料を水と接触させて、繊維ミックススラリーを製造し(ここで、該繊維含有供給原料は、切断多成分繊維を含む)、
c)該繊維ミックススラリーを加熱して、加熱された繊維ミックススラリーを製造し、
d)任意的に、該繊維ミックススラリーを、剪断ゾーン内で混合し、
e)該多成分繊維から、このスルホポリエステルの少なくとも一部を除去して、スルホポリエステル分散物及びこの水非分散性ポリマーミクロ繊維を含むスラリー混合物を製造し、そして
f)該スラリー混合物から、この水非分散性ポリマーミクロ繊維を分離する
ことを含んでなる。
【0110】
この多成分繊維は、不織物品を製造するのに使用することができる任意の長さに切断することができる。本発明の一つの態様に於いて、この多成分繊維は、約1mm〜約50mmの範囲内の長さに切断する。本発明の別の面に於いて、この多成分繊維は、異なった長さの混合物に切断することができる。
【0111】
この繊維含有供給原料は、不織布物品の製造に於いて有用である、任意の他の種類の繊維を含んでいてよい。一つの態様に於いて、この繊維含有供給原料は、セルロース性繊維パルプ、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維及びセルロースエステル繊維からなる群から選択された少なくとも1種の繊維を更に含んでなる。
【0112】
この繊維含有供給原料を、水と混合して、繊維ミックススラリーを製造する。好ましくは、水分散性スルホポリエステルの除去を容易にするために、使用される水は、軟水又は脱イオン水であってよい。軟水は、本開示に於いて前に定義した。本発明の一つの態様に於いて、多成分繊維からの水分散性スルホポリエステルの除去を容易にするために、少なくとも1種の水軟化剤を使用することができる。当該技術分野に於いて公知である任意の水軟化剤を使用することができる。一つの態様に於いて、この水軟化剤は、キレート化剤又はカルシウムイオン封鎖剤である。適用可能なキレート化剤又はカルシウムイオン封鎖剤は、分子当たり複数個のカルボン酸基を含有する化合物であり(ここで、このキレート化剤の分子構造中のカルボキシル基は、2〜6個の原子によって分離されている)。四ナトリウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、隣接するカルボン酸基の間に3個の原子の分離を有する、分子構造当たり4個のカルボン酸部分を含有する、最も一般的なキレート化剤の例である。ポリアクリル酸、ナトリウム塩は、カルボキシル基の間で2個の原子によって分離されているカルボン酸基を含有するカルシウム封鎖剤の例である。マレイン酸又はコハク酸のナトリウム塩は、最も基本的なキレート化剤化合物の例である。適用可能なキレート化剤の更なる例には、分子構造内に複数のカルボン酸基の存在を共通に有する化合物が含まれ、この場合、カルボ酸基は、キレート化剤を二価又は多価カチオンと優先的に結合させる、二価又は多価カチオン、例えばカルシウムとの好ましい立体的相互作用をもたらす、必要な距離(2〜6個の原子単位)によって分離されている。このような化合物には、これらに限定されないが、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン−N,N,N′,N′,N″−五酢酸、ペンテト酸、N,N−ビス(2−(ビス(カルボキシメチル)アミノ)エチル)−グリシン、ジエチレントリアミン五酢酸、[[(カルボキシメチル)イミノ]ビス(エチレンニトリロ)]−四酢酸、エデト酸、エチレンジニトリロ四酢酸、EDTA、遊離塩基、EDTA遊離酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四酢酸、ハンペン(hampene)、ベルセン、N,N′−1,2−エタン ジイルビス−(N−(カルボキシメチル)グリシン)、エチレンジアミン四酢酸、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン、トリグリコラミン酸、トリロンA(trilone A)、α,α′,α″−トリメチルアミントリカルボン酸、トリ(カルボキシメチル)アミン、アミノ三酢酸、ハンプシャーNTA酸、ニトリロ−2,2′,2″−三酢酸、チトリプレックスi、ニトリロ三酢酸及びこれらの混合物が含まれる。
【0113】
必要な水軟化剤の量は、Ca++及び他の多価イオンに関して使用する水の硬度に依存する。
【0114】
この繊維ミックススラリーを加熱して、加熱された繊維ミックススラリーを製造する。この温度は、多成分繊維からスルホポリエステルの一部を除去するのに充分なものである。本発明の一つの態様に於いて、この繊維ミックススラリーを約50℃〜約100℃の範囲内の温度まで加熱する。他の温度範囲は約70℃〜約100℃、約80℃〜約100℃及び約90℃〜約100℃である。
【0115】
任意的に、この繊維ミックススラリーは、剪断ゾーン内で混合する。混合の量は、多成分繊維から水分散性スルホポリエステルの一部を分散させ、除去し、そして水非分散性ポリマーミクロ繊維を分離するのに充分であるものである。本発明の一つの態様に於いて、スルホポリエステルの90%が除去される。別の態様に於いて、スルホポリエステルの95%を除去し、更に別の態様に於いて、スルホポリエステルの98%又はそれ以上が除去する。この剪断ゾーンは、多成分繊維から水分散性スルホポリエステルの一部を分散させ、除去し、そして水非分散性ポリマーミクロ繊維を分離するために必要な剪断作用を与えることができる、任意の形式の装置からなっていてもよい。このような装置の例には、これらに限定されないが、パルプ製造機及びリファイナーが含まれる。
【0116】
多成分繊維中の水分散性スルホポリエステルは、水と接触し、加熱分散し、水非分散性ポリマーミクロ繊維から分離した後、スルホポリエステル分散物及び水非分散性ポリマーミクロ繊維を含むスラリー混合物を作る。次いで、水非分散性ポリマーミクロ繊維を、当該技術分野で公知の任意の手段によって、スルホポリエステル分散物から分離することができる。例えばこのスラリー混合物を、分離装置、例えばスクリーン及びフィルターに通して送ることができる。任意的に、水非分散性ポリマーミクロ繊維を、1回又は多数回洗浄して、より多くの水分散性スルホポリエステルを除去することができる。
【0117】
水分散性スルホポリエステルの除去はスラリー混合物の物理的観察によって決定することができる。水非分散性ポリマーミクロ繊維を洗浄するのに使用した水は、水分散性スルホポリエステルが殆ど除去された場合には透明である。水分散性スルホポリエステルが、まだ除去が続いている場合には、水非分散性ポリマーミクロ繊維を洗浄するのに使用した水は乳状である。更に、水分散性スルホポリエステルが、水非分散性ポリマーミクロ繊維上に残留している場合には、このミクロ繊維は触れると幾らか粘着性であろう。
【0118】
この水分散性スルホポリエステルは、当該技術分野で公知である任意の方法によって、スルホポリエステル分散物から回収することができる。
【0119】
本発明の別の態様に於いて、少なくとも1種の水非分散性ポリマーを含む水非分散性ポリマーミクロ繊維であって、5μmよりも小さい等価直径及び25mmよりも短い長さを有する水非分散性ポリマーミクロ繊維が提供される。この水非分散性ポリマーミクロ繊維は、ミクロ繊維を製造するための前記した方法によって製造する。本発明の別の面に於いて、この水非分散性ポリマーミクロ繊維は3μmよりも小さい等価直径及び25mmよりも短い長さを有する。本発明の他の態様に於いて、この水非分散性ポリマーミクロ繊維は5μmよりも小さい又は3μmよりも小さい等価直径を有する。本発明の他の態様に於いて、この水非分散性ポリマーミクロ繊維は12mmよりも短い、10mmよりも短い、6.5mmよりも短い、3.5mmよりも短い長さを有し得る。この多成分繊維中のドメイン又はセグメントは、分離されたときに、水非分散性ポリマーミクロ繊維を生じる。
【0120】
本発明には、前記の水分散性繊維、多成分繊維、マイクロデニール繊維又は水非分散性ポリマーミクロ繊維を含む繊維状物品も含まれる。用語「繊維状物品」は、繊維を有する又は繊維に似ている任意の物品を意味すると理解する。繊維状物品の限定されない例には、マルチフィラメント繊維、ヤーン、コード、テープ、布帛、湿式堆積ウエブ、乾式堆積ウエブ、溶融ブローウエブ、スパンボンドウエブ、サーモボンドウエブ、ハイドロエンタングルウエブ、不織ウエブ及び布帛並びにこれらの組合せ、1個又はそれ以上の繊維の層を有する品目、例えば多層不織布、ラミネート及びこのような繊維からのコンポジット、ガーゼ、包帯、おむつ、トレーニングパンツ、タンポン、手術用ガウン及びマスク、女性用ナプキン等が含まれる。更に、水非分散性ミクロ繊維は空気濾過、液体濾過、食品製造のための濾過、医学用途のための濾過用並びに製紙プロセス及び紙製品用のフィルター媒体中に使用することができる。更に、繊維状物品には、種々の個人用衛生及びクリーニング製品のための交換インサートが含まれてよい。本発明の繊維状物品は、水分散性であるか又は水分散性ではない他の材料に、結合する、積層する、取り付けることができ又は一緒に使用することができる。繊維状物品、例えば不織布層を、可撓性プラスチックフィルム又は水非分散性材料、例えばポリエチレンのバッキングに結合することができる。このようなアセンブリは、例えば使い捨ておむつの一コンポーネントとして使用することができる。更に、繊維状物品は、別の支持体の上に繊維をオーバーブローして、設計された溶融ブロー、スパンボンド、フィルム又は膜構造の高度に調和された組合せを形成することから得ることができる。
【0121】
本発明の繊維状物品には、不織布及びウエブが含まれる。不織布は、織又は編操作せずに、繊維状ウエブから直接的に製造された布帛として定義する。The Textile Instituteは、不織布を、ヤーンではなくて繊維から直接製造された織物構造体として定義している。これらの布帛は、通常、連続フィラメントから又はこれらに限定されないが、接着剤結合、ニードリング若しくは流体ジェットエンタングルメントによる機械的エンタングルメント、熱結合及びステッチボンドを含む種々の技術を使用する結合によって強化された繊維ウエブ若しくはバットから製造する。例えば本発明の多成分繊維は、任意の公知の布帛形成プロセスによって、布帛に形成することができる。得られる布帛又はウエブは、多成分繊維を分離させるために充分な力を加えることにより又はウエブを水と接触させて、スルホポリエステルを除去して、後に残留するマイクロデニール繊維を残すことにより、マイクロデニール繊維ウエブに転換させることができる。
【0122】
従って、本発明は、マイクロデニール繊維ウエブのための方法であって、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びこのスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる(ここで、この多成分繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含有している)、
(B)工程Aの多成分繊維を重ねそして集めて、不織ウエブを形成し、そして
(C)この不織ウエブを水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウエブを形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0123】
本発明の別の態様に於いて、マイクロデニール繊維ウエブのための方法であって、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(該多成分繊維は、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインは、該ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、該繊維は約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、該水分散性スルホポリエステルは240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そして該スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む)、
(B)工程Aの該多成分繊維を集めて、不織ウエブを形成し、そして
(C)該不織ウエブを水と接触させて該スルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウエブを形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0124】
本発明の別の面に於いて、マイクロデニール繊維ウエブのための方法であって、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び該水非分散性スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分押出物に押し出し(該多成分押出物は、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインは、該ドメインの間に介在する該水分散性スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
(B)該多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を製造し、
(C)工程(B)の該多成分繊維を集めて、不織ウエブを形成し、そして
(D)該不織ウエブを水と接触させて該スルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウエブを形成する
ことを含んでなる方法が提供される。
【0125】
この方法は、好ましくは、工程(C)の前に、不織ウエブの多成分繊維をハイドロエンタングルすることも含む。このハイドロエンタングル工程は、多成分繊維中に含有されているスルホポリエステルの約20重量%よりも少ない損失になることも好ましく、更に好ましくはこの損失は15重量%よりも少なく、最も好ましくは10重量%よりも少ない。ハイドロエンタングルの間のスルホポリエステルの損失を減少させる目標の推進に於いて、このプロセスの間に使用する水は、好ましくは約45℃よりも低い、更に好ましくは約35℃よりも低い、最も好ましくは約30℃よりも低い温度を有する。ハイドロエンタングルの間に使用する水は、多成分繊維からのスルホポリエステルの損失を最小にするために、できるだけ室温に近いことが好ましい。逆に、工程(C)の間のスルホポリエステルポリマーの除去は、好ましくは、少なくとも約45℃、更に好ましくは少なくとも約60℃、最も好ましくは少なくとも約80℃の温度を有する水を使用して実施する。
【0126】
ハイドロエンタングルの後で、工程(C)の前に、不織ウエブは、不織ウエブを、少なくとも約100℃、更に好ましくは少なくとも約120℃の温度に加熱することからなるヒートセット工程に付すことができる。このヒートセット工程は、内部繊維応力を緩和除去し、寸法的に安定な布帛製品を製造する上で助けになる。ヒートセットされた材料を、それがヒートセット工程の間に加熱された温度まで再加熱するとき、それが、その元の表面積の約5%よりも小さい表面積収縮を示すことが好ましい。更に好ましくは、この収縮は、元の表面積の約2%よりも小さく、最も好ましくは、この収縮は約1%よりも小さい。
【0127】
多成分繊維中に使用するスルホポリエステルは、本明細書中に記載した任意のものであってよい。しかしながら、このスルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約6000ポアズよりも低い溶融粘度を有し、全繰り返し単位基準で約12モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含むのが好ましい。これらの種類のスルホポリエステルは、本明細書に於いて前述の通りである。
【0128】
更に、本発明の方法は、好ましくは多成分繊維を、少なくとも2000m/分、更に好ましくは少なくとも約3000m/分、なお更に好ましくは少なくとも約4000m/分、最も好ましくは少なくとも約5000m/分の繊維速度で延伸する工程を含む。
【0129】
本発明の別の態様に於いて、水非分散性ポリマーミクロ繊維を含む不織物品を製造することができる。この不織物品は、水非分散性ポリマーミクロ繊維を含み、乾式堆積プロセス及び湿式堆積プロセスからなる群から選択されたプロセスによって製造される。水非分散性ポリマーミクロ繊維を製造するための多成分繊維及びプロセスは、本明細書に前に開示した。
【0130】
本発明の一つの態様に於いて、少なくとも1%の水非分散性ポリマーミクロ繊維が、不織物品中に含有されている。不織物品中に含有されている水非分散性ポリマーミクロ繊維の他の量は、少なくとも10%、少なくとも25%、及び少なくとも50%である。
【0131】
本発明の別の面に於いて、この不織物品は、少なくとも1種の他の繊維を更に含んでいてよい。この他の繊維は、製造されるべき不織物品の種類に依存して、当該技術分野で公知の任意のものであってもよい。本発明の一つの態様に於いて、この他の繊維は、セルロース性繊維パルプ、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、セルロースエステル繊維及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0132】
この不織物品は、少なくとも1種の添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤には、これらに限定されないが、デンプン、充填剤及びバインダーが含まれる。他の添加剤は、本開示の他のセクションで検討している。
【0133】
一般的に、多成分繊維から製造された水非分散性ミクロ繊維からこれらの不織物品を製造するための製造方法は、下記のグループ、即ち乾式堆積ウエブ、湿式堆積ウエブ及びこれらの方法同士又は他の不織方法との組合せに分けることができる。
【0134】
一般的に、乾式堆積不織物品は、乾燥状態で繊維を取り扱うように設計されているステープル繊維加工機械によって作られる。これらには、機械式プロセス、例えばカーディング、空気力学的及びその他の空気堆積経路が含まれる。このカテゴリーには、トウの形にあるフィラメントから作られた不織物品並びにステープル繊維及びステッチングフィラメント又はヤード(yard)から構成されている布帛、即ちステッチボンド不織布も含まれる。カーディングは、不織ウエブに更に加工するためのウエブを作るための、繊維を解きほぐし、クリーニングし及び混合するプロセスである。このプロセスは、繊維を優勢的に揃え、この繊維は、機械的エンタングルメント及び繊維−繊維摩擦によってウエブとして一緒に保持される。カードは、一般的に、1個又はそれ以上の主シリンダー、ローラー若しくは静止トップ、1個又はそれ以上のドッファー(doffer)又はこれらの基本的コンポーネントの種々の組合せで構成される。カードの一例は、ローラーカードである。カーディング作用は、一連の相互作用するカードローラー上のカードの点の間の、水非分散性ポリマーミクロ繊維の組合せ又は作動である。カードの他の種類には、ウール製品、綿及びランダムカードが含まれる。ガーネットも、これらの繊維を揃えるために使用することができる。
【0135】
乾式堆積プロセスに於ける水非分散性ポリマーミクロ繊維は空気積層(air-laying)によって揃えることもできる。これらの繊維は、空気流によって、フラットコンベヤー又はドラムであってよいコレクターの上に向ける。
【0136】
押出形成ウエブは本発明の多成分繊維から製造することもできる。例にはスパンボンド及び溶融ブローが含まれる。スパンボンド、溶融ブロー及び多孔質フィルム不織物品を製造する。押出技術が使用される。これらの不織物品は、ポリマー押出方法、例えば溶融紡糸、フィルム流延及び押出コーティングを伴う機械で製造される。次いで、この不織物品を、水と接触させて水分散性スルホポリマーを除去し、そうして水非分散性ポリマーミクロ繊維を含む不織物品を製造する。
【0137】
スパンボンドプロセスに於いて、水分散性スルホポリマー及び水非分散性ポリマーは、多成分フィラメントを押し出し、それらを束又は群体として配向し、それらをコンベヤースクリーンの上に置き、そしてそれらをインターロックさせることによって、直接的に布帛に変形する。このインターロックは、熱融合、機械的エンタングル、ハイドロエンタングル、化学的バインダー又はこれらのプロセスの組合せによって実施することができる。
【0138】
溶融ブロー布帛は水分散性スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーからも直接的に製造される。これらのポリマーを溶融し、押し出す。溶融物が押出オリフィスを通過してすぐ、これに空気を高温度で吹き込む。空気流は弱まり、溶融ポリマーを固化させる。次いで、多成分繊維を空気流からウエブとして分離し、加熱したロールの間で圧縮できる。
【0139】
組み合わせたスパンボンド及びメルトボンドプロセスも、不織物品を製造するのに使用することができる。
【0140】
湿式堆積プロセスには、不織物品を製造するための製紙技術の使用が含まれる。これらの不織物品は、パルプ繊維化を伴う機械、例えばハンマーミル及び紙フォーミングで作られる。例えば流体中の短い繊維を取り扱うように設計されている連続スクリーンの上へのスラリーポンプ輸送。
【0141】
湿式堆積プロセスの一つの態様に於いて、水非分散性ポリマーミクロ繊維を水中に懸濁させ、フォーミング装置に送り、そこでフォーミングスクリーンを通して水を排出し、そして繊維をスクリーンワイヤの上に堆積させる。
【0142】
湿式堆積プロセスの別の態様に於いて、水非分散性ポリマーミクロ繊維を、脱水モジュール(サクションボックス、箔及びクラチュア(curature))の上の水力フォーマー(hydraulic former)の開始時に、1500m/分以下の高速で回転する篩又は金網上で脱水する。次いで、このシートを、この針金上に載せ、約20〜30%の固体含有量にまで、脱水を進める。次いで、このシートをプレスし、乾燥する。
【0143】
湿式堆積プロセスの別の態様に於いて、
a)任意的に、水非分散性ポリマーミクロ繊維を水で洗浄し、
b)水を水非分散性ポリマーミクロ繊維に添加して、水非分散性ポリマーミクロ繊維スラリーを製造し、
c)任意的に、他の繊維及び/又は添加剤を、水非分散性ポリマーミクロ繊維又はスラリーに添加し、そして
d)水非分散性ポリマーミクロ繊維含有スラリーを湿式堆積不織ゾーンに移して、不織物品を製造する
ことを含んでなる方法が提供される。
【0144】
工程a)に於いて、洗浄の回数は、水非分散性ポリマーミクロ繊維のために選択される特別の用途に依存する。工程b)に於いて、このミクロ繊維を湿式堆積不織ゾーンに送ることを可能にするために充分な水を、ミクロ繊維に添加する。
【0145】
湿式堆積不織ゾーンは、湿式堆積不織物品を製造するための、当該技術分野で公知の任意の装置を含んでいてよい。本発明の一つの態様に於いて、湿式堆積不織ゾーンは、水非分散性ポリマーミクロ繊維スラリーから水を除去するための、少なくとも1種のスクリーン、メッシュ又は篩を含む。
【0146】
本発明の別の態様に於いて、水非分散性ポリマーミクロ繊維スラリーは、湿式堆積不織ゾーンに移す前に混合する。
【0147】
不織物品を製造するために、ウエブ結合プロセスを使用することもできる。これらは、化学的プロセスと物理的プロセスとに分けることができる。化学的結合は、繊維及び/又は繊維状ウエブを一緒に結合するために、水性ポリマー及び溶媒性ポリマーを使用することを指す。これらのバインダーは、飽和、含浸、スプレー、印刷又はフォームとしての適用によって適用することができる。物理的結合プロセスには、熱的プロセス、例えばカレンダリング及び熱風結合並びに機械的プロセス、例えばニードリング及びハイドロエンタングルが含まれる。ニードリング又はニードルパンチングプロセスは、繊維の幾らかを、近水平位置から近垂直位置にまで物理的に動かすことによって、繊維を機械的にインターロックさせる。ニードルパンチングは、ニードルルーム(needleloom)によって行うことができる。ニードルルームには、一般的に、ウエブ供給メカニズム、針を保持するニードルボードを含むニードルビーム、ストリッパー板、ベッド板及び布帛引取メカニズムが含まれる。
【0148】
ステッチボンドは、繊維ウエブをインターロックさせるために、ヤーン有り又は無しで、編み要素を使用する機械的結合方法である。ステッチボンド機械の例には、これらに限定されないが、Maliwatt、Arachne、Malivlies及びArabevaが含まれる。
【0149】
この不織物品は、1)ウエブ又はマット内の機械的繊維凝集及びインターロック、2)バインダー繊維の使用、ある種のポリマー及びポリマーブレンドの熱可塑性特性を利用することを含む、種々の繊維の融合技術、3)結合樹脂、例えばデンプン、カゼイン、セルロース誘導体又は合成樹脂、例えばアクリルラテックス若しくはウレタンの使用、4)粉末接着バインダー又は5)これらの組合せによって、一緒に保持することができる。この繊維は、しばしば、ランダム方式で堆積されるが、一方向に配向させ、続いて上記の方法の一つを使用して結合することが可能である。
【0150】
本発明の繊維状物品は、1個又はそれ以上の、水分散性繊維、多成分繊維又はマイクロデニール繊維の層を更に含んでいてもよい。この繊維層は、1個又はそれ以上の不織布層、緩やかに結合したオーバーラッピング繊維の層又はこれらの組合せであってよい。更に、この繊維状物品には、パーソナル及び健康ケア製品、例えばこれらに限定されないが、子供ケア製品、例えば乳幼児用おむつ;子供トレーニングパンツ;成人ケア製品、例えば成人用おむつ及び成人用失禁パッド;女性ケア製品、例えば女性用ナプキン、パンティライナー及びタンポン;拭き取り具;繊維含有クリーニング製品;医療及び手術ケア製品、例えば医療用拭き取り具、ティッシュ、ガーゼ、検査ベッドカバー、手術マスク、ガウン、包帯及び創傷包帯;布帛;エラストマー性ヤーン、拭き取り具、テープ、他の保護バリヤー並びに包装材料が含まれてよい。繊維状物品は、液体を吸収するために使用することができ又は種々の液体組成物で予め湿らせておき、そしてこれらの組成物を表面に送るために使用することができる。液体組成物の限定されない例には、洗剤;湿潤剤;クリーニング剤;スキンケア製品、例えば化粧品、軟膏、薬物、皮膚緩和薬及び香料が含まれる。繊維状物品には、吸収性を改良するための又は輸送媒体としての種々の粉末及び粒子が含有されていてもよい。粉末及び粒子の例には、これらに限定されないが、タルク、デンプン、種々の水吸収性、水分散性又は水膨潤性ポリマー、例えば超吸収性ポリマー、スルホポリエステル及びポリ(ビニルアルコール)、シリカ、顔料並びにマイクロカプセルが含まれる。特別の用途のために必要であるとき、添加剤も存在してもよいが、必須ではない。添加物の例には、これらに限定されないが、酸化安定剤、UV吸収剤、着色剤、顔料、不透明化剤(艶消し剤)、光学増白剤、充填材、核生成剤、可塑剤、粘度調節剤、表面改良剤、抗菌剤、消毒剤、常温流れ抑制剤、枝分かれ剤及び触媒が含まれる。
【0151】
水分散性であることに加えて、上記の繊維状物品は水洗可能であってよい。本明細書で使用される用語「水洗可能」は、一般的なトイレで水で流すことができ、そしてトイレ又は汚水システムで障害又は閉塞を起こすことなく、公共汚水システム又は住宅汚水処理システムの中に導入することができることを意味する。
【0152】
繊維状物品は、第二の水分散性ポリマーを含む水分散性フィルムを更に含んでいてよい。第二の水分散性ポリマーは、本発明の繊維及び繊維状物品で使用される前記の水分散性ポリマーと同じか又はこれとは異なっていてよい。一つの態様に於いて、例えば第二の水分散性ポリマーは、
(A)全酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(B)全酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(C)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも15モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(D)全繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を順に含んでなる、追加のスルホポリエステルであってよい。追加のスルホポリエステルは、得られる繊維状物品の特性を修正するために、前記のような1種又はそれ以上の補足的ポリマーとブレンドすることができる。この補足的ポリマーは、用途に依存して水分散性であってよく又はそうでなくてよい。この補足的ポリマーは、追加のスルホポリエステルと混和性であってよく又は非混和性であってもよい。
【0153】
追加のスルホポリエステルには、他の濃度、例えば約60〜約95モル%及び約75〜約95モル%のイソフタル酸残基が含有されていてよい。イソフタル酸残基濃度範囲の更なる例は約70〜約85モル%、約85〜約95モル%及び約90〜約95モル%である。追加のスルホポリエステルは約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基からなっていてもよい。ジエチレングリコール残基濃度範囲の更なる例には、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%及び約75〜約95モル%が含まれる。追加のスルホポリエステルには、エチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基が含まれてもよい。CHDM残基の典型的な濃度範囲は約10〜約75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は約10〜約75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。別の態様に於いて、追加のスルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸の残基及び約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含んでなる。
【0154】
本発明に従って、繊維状物品のスルホポリエステルフィルム成分は単層フィルム又は多層フィルムとして製造することができる。単層フィルムは一般的な流延技術によって製造することができる。多層フィルムは一般的な積層方法などによって製造することができる。このフィルムは、任意の便利な厚さのものであってよいが、全厚さは通常約2〜約50ミルであろう。
【0155】
フィルム含有繊維状物品には、1個又はそれ以上の、前記のような水分散性繊維の層が含まれていてよい。この繊維層は、1個又はそれ以上の不織布層、緩く結合したオーバーラッピング繊維の1層又はこれらの組合せであってよい。更に、フィルム含有繊維状物品には、前記のようなパーソナル及び健康ケア製品が含まれてよい。
【0156】
前記のように、繊維状物品には、吸収性を改良するための又は輸送媒体としての種々の粉末及び粒子が含有されていてもよい。従って、一つの態様に於いて、本発明の繊維状物品には、本明細書に前記した水分散性ポリマー成分と同じか又はこれとは異なっていてよい第三の水分散性ポリマーを含む粉末を含んでなる。粉末及び粒子の他の例には、これらに限定されないが、タルク、デンプン、種々の水吸収性、水分散性又は水膨潤性ポリマー、例えばポリ(アクリロニトリル)、スルホポリエステル及びポリ(ビニルアルコール)、シリカ、顔料並びにマイクロカプセルが含まれる。
【0157】
本発明の新規な繊維及び繊維状物品は、前記の用途に加えて、多くの可能性のある用途を有する。一つの新規な用途には、平らな、湾曲した又は造形した表面の上にフィルム又は不織布を溶融ブローして、保護層を与えることが含まれる。このような一つの層は、輸送の間に耐久性の装置に表面保護を与えるであろう。到着地で、装置を設備の中に置く前に、スルホポリエステルの外側層を洗浄除去することができる。この一般的用途概念の更なる態様には、幾つかの再使用可能な又は限定使用衣類若しくはカバーのための一時的バリヤー層を与えるためのパーソナル保護の物品が含まれてよい。軍隊のために、活性炭及び化学吸収剤を、コレクターの直前の減衰フィラメントパターンの上にスプレーして、溶融ブローマトリックスを露出された表面上にその全部を固定することができる。化学吸収剤は、別の層への溶融ブローによって前兆が現れるとき、先行操作領域内で交換することもできる。
【0158】
スルホポリエステルに固有の主な利点は、イオン性部分(即ち塩)を添加することによるフロキュレーション又は沈殿により、水性分散液からポリマーを除去又は回収するための容易な能力である。他の方法、例えばpH調節、非溶媒の添加、凍結等を使用することもできる。従って、上着保護衣類のような繊維状物品は、成功裡の保護バリヤー使用の後でポリマーが危険な廃棄物とされた場合でも、潜在的に、焼却のような許容されたプロトコルを使用する処分のために、遙かに小さい体積で安全に取り扱うことができる。
【0159】
溶解されない又は乾燥したスルホポリエステルは、これらに限定されないが、和毛状パルプ(fluff pulp)、綿、アクリル、レーヨン、リヨセル(lyocell)、PLA(ポリラクチド)、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、コポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ステンレススチール、アルミニウム、処理したポリオレフィン、PAN(ポリアクリロニトリル)及びポリカーボネートを含む、多様な支持体に対する強い接着結合を形成することが知られている。従って、本発明の不織布は熱、高周波(RF)、マイクロ波及び超音波方法のような公知の技術によって結合することができる積層接着剤又はバインダーとして使用することができる。RF活性化を可能にするためのスルホポリエステルの適応は、多数の最近の特許に開示されている。従って、本発明の新規な不織布は、接着特性に加えて、二重又は多重機能性を有するであろう。例えば本発明の不織布が、最終アセンブリの水応答性接着剤及び流体管理成分の両方として機能する場合、使い捨て乳幼児用おむつを得ることができる。
【0160】
本発明は、水分散性繊維のための方法であって、
(A)水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し(ここで、このポリマー組成物は、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、そして
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなり、ポリマー組成物には、ポリマー組成物の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている、並びに(II)フィラメントを溶融紡糸することを含んでなる方法も提供する。前記のように、水分散性ポリマーを、任意的に、スルホポリエステルとブレンドすることができる。更に、水非分散性ポリマーを、任意的に、スルホポリエステルとブレンドして、ブレンドが非混和性ブレンドであるようなブレンドを形成することができる。本明細書で使用される用語「流動点」は、ポリマー組成物の粘度が、紡糸口金又は押出ダイを通過する押出又は加工の他の形態を許容する温度を意味する。ジカルボン酸残基は、スルホモノマーの種類及び濃度に依存して、酸残基の約60〜約100モル%を構成してよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は約60モル%〜約95モル%及び約70モル%〜約95モル%である。好ましいジカルボン酸残基はイソフタル酸、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はジエステルが使用される場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルであり、イソフタル酸及びテレフタル酸の残基が特に好ましい。
【0161】
スルホモノマーはスルホネート基を含有するジカルボン酸若しくはそのエステル、スルホネート基を含有するジオール又はスルホネート基を含有するヒドロキシ酸であってよい。スルホモノマー残基についての濃度範囲の追加の例は全繰り返し単位基準で、約4〜約25モル%、約4〜約20モル%、約4〜約15モル%及び約4〜約10モル%である。スルホネート塩のカチオンは、金属イオン、例えばLi+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等であってよい。その代わりに、スルホネート塩のカチオンは、前記のように窒素系塩基のような非金属であってよい。本発明の方法に於いて使用することができるスルホモノマー残基の例はスルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホネート塩又はこれらの組合せである。使用することができるスルホモノマーの別の例は5−ソジオスルホイソフタル酸又はそのエステルである。スルホモノマー残基が5−ソジオスルホイソフタル酸からである場合、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、全酸残基基準で、約4〜約35モル%、約8〜約30モル%及び約10〜約25モル%である。
【0162】
本発明のスルホポリエステルには、脂肪族、脂環式族及びアラルキルグリコールを含んでよい1種又はそれ以上のジオール残基が含まれる。脂環式族ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、それらの純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス及びトランス異性体の混合物として存在してよい。低分子量ポリエチレングリコール(例えば式中nが2〜6である)の限定されない例はジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールである。これらの低分子量グリコールの内、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが最も好ましい。スルホポリエステルには、任意的に枝分かれモノマーが含有されていてよい。枝分かれモノマーの例は前記の通りである。枝分かれモノマー濃度範囲の更なる例は0〜約20モル%及び0〜約10モル%である。本発明の新規な方法のスルホポリエステルは少なくとも25℃のTgを有する。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の更なる例は少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgが可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃である。
【0163】
水分散性繊維は溶融ブロー方法によって製造する。ポリマーは押出機内で溶融し、そしてダイを通して押し出す。ダイから出た押出物は、熱い高速空気によって極細直径にまで急速に細くする。繊維の配向、冷却速度、ガラス転移温度(Tg)及び結晶化速度は、これらが、細くなる間のポリマーの粘度及び加工特性に影響を与えるので重要である。このフィラメントは、再生可能な表面、例えば移動ベルト、円筒形ドラム、回転するマンドレル等の上に集める。ペレットの予備乾燥(必要な場合)、押出機ゾーン温度、溶融温度、スクリュー設計、押出量、空気温度、空気流(速度)、ダイ空気ギャップ及びセットバック(set back)、ノーズチップ孔サイズ、ダイ温度、ダイ−コレクター(DCP)距離、急冷環境、コレクター速度及び後処理は、製品特性、例えばフィラメント直径、坪量、ウエブ厚さ、細孔サイズ、柔軟度及び収縮に影響を与える全ての要因である。高速度空気を、著しい絡み合いを生じる、幾らかランダムな方式でフィラメントを移動させるのに使用することもできる。移動ベルトがダイの下を通過する場合、不織布を、フィラメントのオーバーラッピングレイダウン(over-lapping laydown)、機械的凝集及び熱結合の組合せによって製造することができる。スパンボンド又はバッキング層のような別の支持体の上へのオーバーブローも可能である。フィラメントを回転するマンドレル上に引き取る場合、円筒形製品が形成される。水分散性繊維レイダウンも、スパンボンド方法によって製造することができる。
【0164】
従って、本発明は、水分散性不織布のための方法であって、
(A)水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し(ここで、このポリマー組成物は、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含み、スルホポリエステルは少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有し、ポリマー組成物には、ポリマー組成物の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、
(B)フィラメントを溶融紡糸し、そして
(C)工程(B)のフィラメントを重ねそして集めて、不織布を形成する
ことを含んでなる方法を更に提供する。前記のように、水分散性ポリマーは、任意的に、スルホポリエステルとブレンドすることができる。更に、水非分散性ポリマーは、任意的に、スルホポリエステルとブレンドして、ブレンドが非混和性ブレンドであるようなブレンドを形成することができる。ジカルボン酸、スルホモノマー及び枝分かれモノマー残基は前記の通りである。スルホポリエステルは少なくとも25℃のTgを有する。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の更なる例は少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgが可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃である。本発明を下記の実施例によって更に例示する。
【実施例】
【0165】
全てのペレットサンプルを、真空下で室温で少なくとも12時間予備乾燥させた。表3に示す分散時間は、不織布サンプルの完全な分散又は溶解についてのものである。表2及び表3で使用した略語「CE」は、「比較例」を意味する。
【0166】
実施例1
76モル%のイソフタル酸、24モル%のソジオスルホイソフタル酸、76モル%のジエチレングリコール及び24モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有し、0.29のIh.V.及び48℃のTgを有するスルホポリエステルを、公称6−インチダイ(ノーズピースに於いて30孔/インチ)を通して、表1に示す条件を使用して、円筒形コレクターの上に溶融ブローした。インターリーフィング(interleafing)紙は、必要なかった。ロール巻き付け操作の間にブロックしなかった、軟質の取扱い可能な可撓性ウエブが得られた。物理的特性を表2に示す。この不織布の小片(1インチ×3インチ)は、表3中のデータによって示すように、僅かな攪拌で室温(RT)の水及び50℃の水の両方に容易に分散した。
【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

【0170】
実施例2
89モル%のイソフタル酸、11モル%のソジオスルホイソフタル酸、72モル%のジエチレングリコール及び28モル%のエチレングリコールを含有し、0.4のIh.V.及び35℃のTgを有するスルホポリエステルを、6−インチダイを通して、表1に於けるものと同様の条件を使用して溶融ブローした。ロール巻き付け操作の間にブロックしなかった、軟質の取扱い可能な可撓性ウエブが得られた。物理的特性を表2に示す。この不織布の小片(1インチ×2インチ)は、表3のデータによって示されるように、50℃及び80℃で容易にそして完全に分散し、RT(23℃)で、この布帛は完全に分散するのに、より長い時間を必要とした。
【0171】
実施例1及び2の組成物は、他の不織支持体の上にオーバーブローできることが見出された。一般的なウエブコレクターの代わりに使用される造形された又は輪郭を合わせた(contoured)形状を凝縮及び包むことも可能である。従って、ウエブの円形「粗紡(roving)」又はプラグ形を得ることも可能である。
【0172】
比較例1〜3
89モル%のイソフタル酸、11モル%のソジオスルホイソフタル酸、72モル%のジエチレングリコール及び28モル%のエチレングリコールを含有し、0.4のIh.V.及び35℃のTgを有するスルホポリエステルのペレットを、ポリプロピレン(Basell PF008)ペレットと、
75PP:25スルホポリエステル(例3)
50PP:50スルホポリエステル(例4)
25PP:75スルホポリエステル(例5)
の二成分比(重量%)で一緒にした。
【0173】
このPPは、800のMFR(メルトフローレート)を有していた。溶融ブロー操作を、24インチ幅ダイを取り付けたライン上で実施して、表2に示す物理的特性を有する取扱い可能で軟質で可撓性であるが非ブロッキング状のウエブを得た。不織布の小片(1インチ×4インチ)は、表3に報告したように容易に崩壊した。しかしながら、不溶性ポリプロピレン成分のために、繊維の何れも完全に水分散性ではなかった。
【0174】
実施例3
実施例2で製造した不織布の円形片(4インチ直径)を、2枚の綿布のシートの間の接着層として使用した。ハンニフィン(Hannifin)溶融プレスを使用して、35psigの圧力を200℃で30秒間適用することによって、2枚の綿のシートを一緒に融合した。得られたアセンブリは、異常に強い結合強度を示した。この綿支持体は、接着又は結合破壊(bond fuilure)の前に、切れ切れに裂けた。他のセルロース系材料及びPETポリエステル支持体でも、同様の結果が得られた。超音波結合技術によっても、強い結合が作られた。
【0175】
比較例4
1200MFRを有するPP(Exxon3356G)を、24インチダイを使用して溶融ブローして、ブロックせず、ロールから容易にほどかれた可撓性不織布を得た。小片(1インチ×4インチ)は、水中にRT又は50℃で15分間浸漬したとき、水に対して如何なる応答も示さなかった(即ち崩壊又は坪量に於ける損失無し)。
【0176】
実施例4
82モル%のイソフタル酸、18モル%のソジオスルホイソフタル酸、54モル%のジエチレングリコール及び46モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有し、55℃のTgを有するスルホポリエステルの一成分繊維を、ラブ・ステープル(lab staple)紡糸ライン上で245℃(473°F)の溶融温度で溶融紡糸した。紡糸時(as-spun)デニールは、約8d/fであった。巻き取りチューブ上で幾らかのブロッキングがあったが、10本フィラメントストランドは、攪拌しない脱塩水中で82℃及び5〜6のpHで、10〜19秒以内に容易に溶解した。
【0177】
実施例5
それぞれ、82モル%のイソフタル酸、18モル%のソジオスルホイソフタル酸、54モル%のジエチレングリコール及び46モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有するスルホポリエステル(55℃のTg)並びに91モル%のイソフタル酸、9モル%のソジオスルホイソフタル酸、25モル%のジエチレングリコール及び75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有するスルホポリエステル(65℃のTg)のブレンド(75:25)から得られた一成分繊維を、ラブ・ステープル紡糸ライン上で溶融紡糸した。このブレンドは、成分スルホポリエステルのTgの重量平均を得ることによって計算したとき、57℃のTgを有する。10本フィラメントストランドは、巻き取りチューブ上で如何なるブロッキングも示さず、攪拌しない脱塩水中で82℃及び5〜6のpHで、20〜43秒以内に容易に溶解した。
【0178】
実施例6
実施例5に記載したブレンドを、PETと共に共紡糸して、二成分海島型繊維(islands-in-the-sea)を得た。スルホポリエステル「海」が、80重量%のPET「島」を含む繊維の20重量%である形状が得られた。この紡績糸伸びは、紡糸した直後で190%であった。この紡績糸を、紡糸後1週間でボビンから満足に解き、加工したとき、ブロッキングは起こらなかった。次の操作で、紡績糸を88℃の軟水浴中に通すことによって「海」を溶解し、微細なPETフィラメントのみを残した。
【0179】
実施例7
この予言実施例は、本発明の多成分及びマイクロデニール繊維の、特殊紙の製造への可能性のある用途を示す。実施例5に記載したブレンドを、PETと共に共紡糸して、二成分海島型繊維を得る。この繊維は、約35重量%のスルホポリエステル「海」成分及び約65重量%のPET「島」を含む。捲縮しない(uncrimped)繊維を、1/8インチ長さに切断する。シミュレートした製紙に於いて、これらの短く切断した二成分繊維を、リファイニング操作に添加する。スルホポリエステル「海」は、攪拌した水性スラリー中に除去され、それによってマイクロデニールPET繊維をミックスの中に解放する。同程度の重量で、マイクロデニールPET繊維(「島」)が、粗い(coarse)PET繊維の添加よりも、紙引張強度を増加させるために一層有効である。
【0180】
比較例8
海構造中に108個の島を有する二成分繊維を、ダイプレート内に合計2222個のダイ孔を有する、Hills Inc.、フロリダ州Melbourneからの24インチ幅二成分紡糸口金ダイを使用するスパンボンドラインで製造した。2台の押出機を、次いで繊維スピンダイ内の両成分のための入口に連結されている溶融物ポンプに連結した。一次押出機(A)を、海島型繊維断面構造内の島ドメインを形成するために、Eastman F61HC PETポリエステルの流を計量する入口に連結した。押出ゾーンを、ダイに入るPETを、285℃の温度で溶融するように設定した。二次押出機(B)で、約0.35のインヘレント粘度並びにRheometric Dynamic Analyzer RDAII(Rheometrics Inc.、ニュージャージー州Piscataway)レオメーターに於いて、240℃及び1rad/秒の剪断速度で測定した約15,000ポアズの溶融粘度及び240℃及び100rad/秒の剪断速度で測定した9,700ポアズの溶融粘度を有する、Eastman Chemical Company(Kingsport TN.)からのEastman AQ55Sスルホポリエステルポリマーを加工した。溶融粘度測定を実施する前に、サンプルを、真空オーブン内で60℃で2日間乾燥した。粘度試験は、1mm隙間設定で25mm直径の平行板形状を使用して実施した。動的振動スイープを、1〜400rad/秒の歪み速度範囲及び10%歪み振幅で作動させた。次いで、粘度を、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した。次の実施例に於いて使用したスルホポリエステル材料の粘度を決定する際に、この手順に従った。二次押出機は、AQ55Sポリマーを255℃の溶融温度で溶融し、紡糸口金ダイに供給するように設定した。これらの2種のポリマーを、0.6g/孔/分の処理量で押し出すことによって、二成分押出物に成形した。二成分押出物中のPET対AQ55Sの体積比を、60/40及び70/30比を生じるように調節した。
【0181】
アスピレーターデバイス(aspirator device)を使用して、この二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を製造した。アスピレーターチャンバーを通過する空気の流は、得られた繊維を引き下げた。アスピレーターアセンブリを下方に流れる空気の量を、アスピレーターに入る空気の圧力によって制御した。この例に於いて、二成分押出物を溶融延伸するためにアスピレーター内で使用した空気の最高圧力は25psiであった。この値よりも上では、二成分押出物に強いられる溶融延伸速度が、二成分押出物の固有延性(inherent ductility)よりも大きいので、アスピレーターを通過する空気流が、この溶融延伸紡糸プロセスの間に押出物を破断させた。二成分繊維は、95g/m2(gsm)の布帛重量を有する不織ウエブに下方に堆積された。光学鏡検法によるこの不織ウエブ中の二成分繊維の評価は、PETが、繊維構造の中心に島として存在したが、二成分繊維の外側周辺部の周りのPET島は、殆ど一緒に凝集して、繊維の周囲の周りのPETポリマーの殆ど連続した環を形成した(これは望ましくない)ことを示した。鏡検法は、不織ウエブ中の二成分繊維の直径が、一般的に、約2.5デニール/フィラメント(dpf)の平均繊維紡糸時デニールに対応する、15〜19μmであったことを見出した。これは、約2160m/分の溶融延伸繊維速度を表す。紡糸時デニールは、溶融押出及び溶融延伸工程で得られた繊維のデニール(9000m長さの繊維のグラムでの重量)として定義される。二成分繊維直径に於ける変動は、繊維のスパン−ドローイング(spun-drawing)に於ける不均一性を示した。
【0182】
この不織ウエブサンプルを、強制空気オーブン内で、120℃で5分間コンディショニングした。この熱処理したウエブは、加熱する前のウエブの初期面積の僅か約12%にまで減少する、不織ウエブの面積での顕著な収縮を示した。理論によって結び付けられることを意図しないが、繊維中に使用したAQ55Sスルホポリエステルの高い分子量及び溶融粘度のために、この二成分押出物は、繊維中のPETセグメントの歪み誘導結晶化を起こすために必要な程度まで溶融延伸することができなかった。全体的に、この特別のインヘレント粘度及び溶融粘度を有するAQ55Sスルホポリエステルは、二成分押出物として許容できず、所望の微細デニールまで均一に溶融延伸できなかった。
【0183】
実施例8
市販のEastman AQ55Sポリマーと同じ化学組成を有するスルホポリエステルポリマーを製造した。しかしながら、その分子量は、約0.25のインヘレント粘度によって特徴付けられる、より低い値に制御した。このポリマーの溶融粘度は、240℃及び1rad/秒の剪断速度で測定した3300ポアズであった。
【0184】
実施例9
16−セグメントのセグメント化パイ型構造を有する二成分押出物を、スパンボンド装置で、24インチ幅のダイプレート内に合計2222個のダイ孔を有する、Hills Inc.、フロリダ州Melbourneからの二成分紡糸口金ダイを使用して製造した。2台の押出機を、2種のポリマーを溶融し、この紡糸口金ダイに供給するために使用した。一次押出機(A)を、セグメント化パイ型(segmented pie)断面構造内にドメイン又はセグメントスライスを形成するためにEastman F61HC PETポリエステル溶融物を供給する入口に連結した。押出ゾーンを、紡糸口金ダイに入るPETを、285℃の温度で溶融するように設定した。二次押出機(B)は、実施例8のスルホポリエステルポリマーを溶融し、供給した。二次押出機は、このスルホポリエステルポリマーを255℃の溶融温度で、紡糸口金ダイの中に押し出すように設定した。使用した紡糸口金ダイ及びスルホポリエステルポリマーの溶融粘度以外は、この実施例に於いて使用された手順は、比較例8に於けるものと同じであった。孔当たりの溶融物処理量は、0.6g/分であった。二成分押出物中のPET対スルホポリエステルの体積比は約70/30の重量比を表す70/30に設定した。
【0185】
比較例8に於いて使用した同じアスピレーターを使用して、この二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を製造した。最初に、アスピレーターへの流入空気を25psiに設定し、この繊維は、約14〜15μmの均一な直径外形を示す二成分繊維で、約2.0の紡糸時デニールを有していた。アスピレーターへの空気を、溶融延伸の間に溶融押出物を破断することなく、45psiの最高利用可能圧力まで増加させた。45psiの空気を使用して、二成分押出物を、顕微鏡下で観察したとき11〜12μmの直径を示す二成分繊維で、約1.2の紡糸時デニールを有する繊維まで下方に溶融延伸した。溶融延伸プロセスの間の速度は、約4500m/分であると計算された。理論によって結び付けられることを意図しないが、この速度に近づく溶融延伸速度で、溶融延伸プロセスの間のPETの歪み誘導結晶化が起こり始めると考えられる。前記のように、続く加工の間に、不織ウエブが一層寸法的に安定であるように、繊維溶融延伸プロセスの間に、PET繊維セグメント内の幾らか配向した結晶化を形成することが望ましい。
【0186】
この二成分繊維を、45psiのアスピレーター空気圧を使用して、140g/m2(gsm)の重量を有する不織ウエブに堆積させた。この不織ウエブの収縮を、この材料を、強制空気オーブン内で、120℃で5分間コンディショニングすることによって測定した。この実施例は、比較例8の繊維及び布帛と比較して、収縮に於ける顕著な減少を表している。
【0187】
140gsmの布帛重量を有するこの不織ウエブを、種々の温度で静止脱イオン水浴中に5分間浸漬させた。浸漬された不織ウエブを乾燥させ、種々の温度での脱イオン水中の浸漬に起因する重量損失パーセントが、表4に示すように測定した。
【0188】
【表5】

【0189】
このスルホポリエステルは、約25℃の温度で、脱イオン水の中に非常に容易に消散した。不織ウエブ中の二成分繊維からのスルホポリエステルの除去は、重量損失%によって示す。二成分繊維からのスルホポリエステルの徹底的な又は完全な除去は、33℃又はそれ以上の温度で観察された。実施例8の本発明のスルホポリエステルポリマーからなるこれらの二成分繊維の不織ウエブを製造するためにハイドロエンタングルを使用する場合、水温が環境よりも高いと、スルホポリエステルポリマーが、ハイドロエンタングル水ジェットによって徹底的に又は完全に除去されると予想されるであろう。ハイドロエンタングル工程の間に、非常に僅かなスルホポリエステルポリマーが、これらの二成分繊維から除去されることが望まれる場合には、約25℃よりも低い、低い水温を使用すべきである。
【0190】
実施例10
下記の二酸及びジオール組成、即ち二酸組成(71モル%のテレフタル酸、20モル%のイソフタル酸及び9モル%の5−(ソジオスルホ)イソフタル酸)及びジオール組成(60モル%のエチレングリコール及び40モル%のジエチレングリコール)を有するスルホポリエステルポリマーを製造した。このスルホポリエステルは、真空下で高温度ポリエステル化によって製造した。エステル化条件は、約0.31のインヘレント粘度を有するスルホポリエステルを製造するように制御した。このスルホポリエステルの溶融粘度は、240℃及び1rad/秒剪断速度で、約3000〜4000ポアズの範囲内であると測定された。
【0191】
実施例11
実施例10のスルホポリエステルポリマーを、実施例9に記載したのと同じ手順に従って、二成分セグメント化パイ型繊維及び不織ウエブに紡糸した。一次押出機(A)は、セグメント化パイ型構造内に、より大きいセグメントスライスを形成するために、Eastman F61HC PETポリエステル溶融物を供給した。押出ゾーンを、紡糸口金ダイに入るPETを、285℃の温度で溶融するように設定した。二次押出機(B)は、紡糸口金ダイの中に255℃の溶融物温度で供給された、実施例10のスルホポリエステルポリマーを加工した。孔当たりの溶融物処理量速度は、0.6g/分であった。二成分押出物中のPET対スルホポリエステルの体積比は、約70/30の重量比を表す70/30に設定した。二成分押出物の断面は、PETの楔形状ドメインを分離するスルホポリエステルポリマーと共に、これらのドメインを有していた。
【0192】
比較例8に於いて使用した同じアスピレーターアセンブリを使用して、この二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を製造した。延伸の間にこの二成分繊維を破断することのない、アスピレーターへの空気の最高利用可能圧力は45psiであった。45psiの空気を使用して、二成分押出物を、顕微鏡下で観察したとき約11〜12μmの直径を示す二成分繊維で、約1.2の紡糸時デニールを有する二成分繊維まで下方に溶融延伸した。溶融延伸プロセスの間の速度は、約4500m/分であると計算された。
【0193】
この二成分繊維を、140gsm及び110gsmの重量を有する不織ウエブに堆積させた。このウエブの収縮を、この材料を、強制空気オーブン内で、120℃で5分間コンディショニングすることによって測定した。収縮後のこの不織ウエブの面積は、このウエブの開始面積の約29%であった。
【0194】
この溶融延伸した繊維及び不織ウエブから採った繊維の断面の顕微鏡検査によって、非常に良好なセグメント化パイ型構造(ここで、個々のセグメントは、明瞭に規定され、同様のサイズ及び形状を示した)を示した。PETセグメントは、それらが、二成分繊維からスルホポリエステルを除去した後に、8個の分離した、パイ−スライス形状を有するPET一成分繊維を形成するように、互いに完全に分離していた。
【0195】
110gsmの布帛重量を有するこの不織ウエブを、種々の温度で静止脱イオン水浴中に8分間浸漬させた。浸漬された不織ウエブを乾燥させ、種々の温度での脱イオン水中の浸漬に起因する重量損失パーセントが、表5に示すように測定された。
【0196】
【表6】

【0197】
このスルホポリエステルポリマーは、重量損失によって示されるように、51℃よりも高い温度で、非常に徹底的又は完全に繊維からスルホポリエステルポリマーを除去すると、約46℃よりも高い温度で、脱イオン水の中に非常に容易に消散した。約30%の重量損失は、不織ウエブ中の二成分繊維からのスルホポリエステルの完全な除去を表した。このスルホポリエステルからなる二成分繊維のこの不織ウエブを加工するためにハイドロエンタングルを使用する場合、このポリマーは、40℃よりも低い水温でハイドロエンタングル水ジェットによって徹底的に除去されないであろうと予測されるであろう。
【0198】
実施例12
140gsm及び110gsmの坪量を有する実施例11の不織ウエブを、Fleissner,GmbH、ドイツ国Egelsbachによって製作されたハイドロエンタングル装置を使用して、ハイドロエンタングルさせた。この機械は、合計5個のハイドロエンタングルステーション(そこで、3組のジェットが、不織ウエブの上面側と接触しており、2組のジェットが、不織ウエブの反対側と接触していた)を有していた。この水ジェットは、2フィート幅のジェットストリップ内に機械加工された、直径が約100μmの一連の微細なオリフィスからなっていた。ジェットへの水圧は、60バール(ジェットストリップ#1)、190バール(ジェットストリップ#2及び#3)並びに230バール(ジェットストリップ#4及び#5)で設定した。ハイドロエンタングルプロセスの間に、ジェットへの水の温度は、約40〜45℃の範囲内であると見出された。ハイドロエンタングル装置から出る不織布は、一緒に強く束ねられていた。連続繊維は一緒に絡まって、両方向に引っ張ったとき、引裂に対する高い耐性を有する、ハイドロエンタングルさせた不織布を製造した。
【0199】
次に、その周辺の周りに一連のピンを有する硬質の長方形枠からなるテンター枠の上に、このハイドロエンタングルさせた不織布を固定した。この布を、それを加熱したときに収縮から布を抑えるために、ピンに固定した。布サンプルを有する枠を強制空気オーブン内に130℃で3分間置いて、この布を、抑えながらヒートセットさせた。ヒートセットの後、コンディショニングした布を、測定したサイズのサンプル試験片に切断し、この試験片を、テンター枠で抑えずに130℃でコンディショニングした。このコンディショニングの後のハイドロエンタングルさせた不織布の寸法を測定し、僅かな最小の収縮(寸法に於いて0.5%未満の減少)が観察された。ハイドロエンタングルさせた不織布のヒートセットは、寸法的に安定な不織布を製造するのに充分であったことが明らかであった。
【0200】
ハイドロエンタングルさせた不織布を、上記のようにヒートセットした後、90℃の脱イオン水で洗浄して、スルホポリエステルポリマーを除去して、ハイドロエンタングルさせた不織布中に留まっているPET一成分繊維セグメントを残した。洗浄を繰り返した後、乾燥した布は、約26%の重量損失を示した。ハイドロエンタングルの前に不織布を洗浄することは、31.3%の重量損失を示した。従って、ハイドロエンタングルプロセスは、不織ウエブからスルホポリエステルの幾らかを除去したが、この量は比較的小さかった。ハイドロエンタングルの間に除去されたスルホポリエステルの量を少なくするために、ハイドロエンタングルジェットの水温を、40℃よりも低く下げるべきである。
【0201】
実施例10のスルホポリエステルは、良好なセグメント分布を有するセグメント化パイ型繊維を与えることが見出され、この場合、スルホポリエステルポリマーが除去された後、水非分散性ポリマーセグメントは、同様のサイズ及び形状の個々の繊維を形成した。このスルホポリエステルのレオロジーは、約1.0のように低い紡糸時デニールを有する微細デニール二成分繊維を達成するために、二成分押出物を高速で溶融延伸することを可能にするのに適切であった。これらの二成分繊維は、スルホポリエステルポリマーの顕著な損失を経験することなくハイドロエンタングルさせて、不織布を製造することができる不織ウエブに堆積させることが可能である。不織ウエブをハイドロエンタングルさせることによって製造された不織布は、高い強度を示し、約120℃又はそれ以上の温度でヒートセットして、優れた寸法安定性を有する不織布を製造することができた。スルホポリエステルポリマーは、洗浄工程に於いて、ハイドロエンタングルさせた不織布から除去した。これは、より軽い布重量並びに遙かに大きい可撓性及びより柔らかい手触りを有する、強い不織布製品になった。この不織布製品中の一成分PET繊維は、楔形状であり、約0.1の平均デニールを示した。
【0202】
実施例13
下記の二酸及びジオール組成、即ち二酸組成(69モル%のテレフタル酸、22.5モル%のイソフタル酸及び8.5モル%の5−(ソジオスルホ)イソフタル酸)及びジオール組成(65モル%のエチレングリコール及び35モル%のジエチレングリコール)を有するスルホポリエステルポリマーを製造した。このスルホポリエステルは、真空下で高温度ポリエステル化によって製造した。エステル化条件は、約0.33のインヘレント粘度を有するスルホポリエステルを製造するように制御した。このスルホポリエステルの溶融粘度は、240℃及び1rad/秒剪断速度で、約3000〜4000ポアズの範囲内であると測定された。
【0203】
実施例14
実施例13のスルホポリエステルポリマーを、スパンボンドライン上で、16個の島を有する二成分海島型断面形状に紡糸した。一次押出機(A)は、海島型構造内の島を形成するために、Eastman F61HC PETポリエステル溶融物を供給した。押出ゾーンを、紡糸口金ダイに入るPETを、約290℃の温度で溶融するように設定した。二次押出機(B)は、紡糸口金ダイの中に約260℃の溶融物温度で供給された、実施例13のスルホポリエステルポリマーを加工した。二成分押出物中のPET対スルホポリエステルの体積比は、約70/30の重量比を表す70/30に設定した。紡糸口金を通過する溶融物処理量速度は、0.6g/孔/分であった。二成分押出物の断面は、PETの丸い形状の島ドメインを分離するスルホポリエステルポリマーと共に、これらのPETのドメインを有していた。
【0204】
アスピレーターアセンブリを使用して、この二成分押出物を溶融延伸した。溶融延伸の間にこの二成分繊維を破断することのない、アスピレーターへの空気の最高利用可能圧力は50psiであった。50psiの空気を使用して、二成分押出物を、顕微鏡下で見たとき約12μmの直径を示す二成分繊維で、約1.4の紡糸時デニールを有する二成分繊維まで下方に溶融延伸した。延伸プロセスの間の速度は約3900m/分であると計算された。
【0205】
実施例15
実施例13のスルホポリエステルポリマーを、二成分押出ラインを使用して、64個の島繊維を有する二成分海島型断面繊維に紡糸した。一次押出機は、海島型繊維断面構造内の島を形成するために、Eastman F61HCポリエステル溶融物を供給した。二次押出機は、海島型二成分繊維中の海を形成するために、スルホポリエステルポリマー溶融物を供給した。ポリエステルのインヘレント粘度は0.61dL/gであり、一方、乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は、前記の溶融粘度測定手順を使用して、240℃及び1rad/秒歪み速度で測定して、約7000ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、198個の孔を有する紡糸口金及び0.85g/分/孔の処理量速度を使用して製造した。「島」ポリエステルと「海」スルホポリエステルとの間のポリマー比は、65%対35%であった。これらの二成分繊維を、ポリエステル成分のために280℃の押出温度及びスルホポリエステル成分のために260℃の押出温度を使用して紡糸した。この二成分繊維は、多数のフィラメント(198本のフィラメント)を含有しており、約530m/分の速度で溶融紡糸されて、約14の公称デニール/フィラメントを有するフィラメントを形成した。Goulston Technologiesからの24重量%PT769仕上げ剤の仕上げ溶液を、キスロールアプリケーター(kiss roll applicator)を使用して、二成分繊維に適用した。次いで、二成分繊維のフィラメントを、ライン内で、それぞれ90℃及び130℃に加熱した2組のゴデットロール(godet roll)の一組並びに約1750m/分の速度で作動する最終延伸ロールを使用して延伸して、約3.3Xのフィラメント延伸比を与えて、約4.5の公称デニール/フィラメント又は約25μmの平均直径を有する、延伸した海島型二成分フィラメントを形成させた。これらのフィラメントは、約2.5μmの平均直径を有するポリエステルミクロ繊維「島」からなっていた。
【0206】
実施例16
実施例15の延伸した海島型二成分繊維を、3.2mm及び6.4mm切断長さの短尺繊維に切断し、それによって、64個の海島型断面形状を有する短尺二成分繊維を製造した。これらの短い切断二成分繊維は、ポリエステルの「島」及び水分散性スルホポリエステルポリマーの「海」からなっていた。島及び海の断面分布は、これらの短い切断二成分繊維の長さに沿って、本質的に一貫していた。
【0207】
実施例17
実施例15の延伸した海島型二成分繊維を、軟水中に約24時間浸漬し、次いで、3.2mm及び6.4mm切断長さの短尺繊維に切断した。短尺繊維に切断する前に、水分散性スルホポリエステルを、少なくとも部分的に乳化させた。従って、海成分からの島の部分的分離が行われ、それによって、部分的に乳化した短尺海島型二成分繊維が製造された。
【0208】
実施例18
実施例16の短尺海島型二成分繊維を、80℃で軟水を使用して洗浄して、水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、二成分繊維の「島」成分であったポリエステルミクロ繊維を解放した。洗浄したポリエステルミクロ繊維を、25℃で軟水を使用して濯いで、「海」成分の大部分を本質的に除去した。洗浄したポリエステルミクロ繊維の光学顕微鏡観察によって、約2.5μmの平均直径並びに3.2mm及び6.4mmの長さが示された。
【0209】
実施例19
実施例17の短い切断長さの部分的に乳化した海島型二成分繊維を、80℃で軟水を使用して洗浄して、水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、この繊維の「島」成分であったポリエステルミクロ繊維を解放した。洗浄したポリエステルミクロ繊維を、25℃で軟水を使用して濯いで、「海」成分の大部分を本質的に除去した。洗浄したポリエステルミクロ繊維の光学顕微鏡観察によって、約2.5μmの平均直径並びに3.2mm及び6.4mmの長さのポリエステルミクロ繊維が示された。
【0210】
比較例20
下記の手順を使用して、湿式堆積手(wet-laid hand)シートを製造した。7.5gの、International Paper、米国テネシー州MemphisからのAlbacel Southern Bleached Softwood Kraft(SBSK)及び188gの室温水を、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、パルプ化混合物を製造した。このパルプ化混合物を、7312gの室温水と一緒に8Lの金属製ビーカーの中に移して、約0.1%濃度(7500gの水及び7.5gの繊維状材料)のパルプスラリーを製造した。このパルプスラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このパルプスラリーから手抄きシート(hand sheet)を作るための手順は、下記の通りであった。このパルプスラリーを、撹拌を続けながら、25cm×30cmの手抄きシート金型の中に注いだ。落下バルブを引っ張り、パルプ繊維をスクリーンの上に排出して、手抄きシートを形成させた。750g/m2(gsm)の吸取紙を、形成された手抄きシートの上に置き、吸取紙を手抄きシートの上に伸ばした。スクリーン枠を持ち上げ、きれいな剥離紙の上に逆にし、10分間置いたままにした。スクリーンを、形成された手抄きシートから垂直に持ち上げて除去した。2枚の750gsmの吸取紙のシートを、形成された手抄きシートの上面に置いた。手抄きシートを、3枚の吸取紙と一緒に、Norwood Dryerを使用して、約88℃で15分間乾燥させた。1枚の吸取紙を取り除いて、手抄きシートのそれぞれの側に1枚の吸取紙を残した。手抄きシートを、Williams Dryerを使用して、65℃で15分間乾燥させた。次いで、手抄きシートを、40kgドライプレスを使用して、12〜24時間、更に乾燥させた。吸取紙を取り除いて、乾燥手抄きシートサンプルを得た。手抄きシートを、試験のために21.6cm×27.9cm寸法にトリミングした。
【0211】
比較例21
下記の手順を使用して、湿式堆積手抄きシートを製造した。7.5gの、International Paper、米国テネシー州MemphisからのAlbacel Southern Bleached Softwood Kraft(SBSK)、0.3gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプン及び188gの室温水を、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、パルプ化混合物を製造した。このパルプ化混合物を、7312gの室温水と一緒に8Lの金属製ビーカーの中に移して、約0.1%濃度(7500gの水及び7.5gの繊維状材料)にして、パルプスラリーを製造した。このパルプスラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このパルプスラリーから手抄きシートを作るための残りの手順は、比較例20に於けると同じであった。
【0212】
実施例22
下記の手順を使用して、湿式堆積手抄きシートを製造した。6.0gの、International Paper、米国テネシー州MemphisからのAlbacel Southern Bleached Softwood Kraft(SBSK)、0.3gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプン、1.5gの、実施例16の3.2mmの切断長さ海島型繊維及び188gの室温水を、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、繊維ミックススラリーを製造した。この繊維ミックススラリーを、82℃まで10秒間加熱して、海島型繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化し、除去して、ポリエステルミクロ繊維を解放した。次いで、この繊維ミックススラリーを濾して、スルホポリエステルからなるスルホポリエステル分散液並びにパルプ繊維及びポリエステルミクロ繊維からなるミクロ繊維含有混合物を製造した。このミクロ繊維含有混合物を、500gの室温水を使用して更に濯いで、ミクロ繊維含有混合物から水分散性スルホポリエステルを更に除去した。このミクロ繊維含有混合物を、7312gの室温水と一緒に8Lの金属製ビーカーの中に移して、約0.1%濃度(7500gの水及び7.5gの繊維状材料)にして、ミクロ繊維含有スラリーを製造した。このミクロ繊維含有スラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このミクロ繊維含有スラリーから手抄きシートを作るための残りの手順は、比較例20に於けるのと同じであった。
【0213】
比較例23
下記の手順を使用して、湿式堆積手抄きシートを製造した。7.5gの、Johns Manville、米国コロラド州Denverから入手可能なMicroStrand 475−106ミクロガラス繊維、0.3gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプン及び188gの室温水を、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、ガラス繊維混合物を製造した。このガラス繊維混合物を、7312gの室温水と一緒に8Lの金属製ビーカーの中に移して、約0.1%濃度(7500gの水及び7.5gの繊維状材料)にして、ガラス繊維スラリーを製造した。このガラス繊維スラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このガラス繊維スラリーから手抄きシートを作るための残りの手順は、比較例20に於けると同じであった。
【0214】
実施例24
下記の手順を使用して、湿式堆積手抄きシートを製造した。3.8gの、Johns Manville、米国コロラド州Denverから入手可能なMicroStrand 475−106ミクロガラス繊維、3.8gの、実施例16の3.2mmの切断長さ海島型繊維、0.3gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプン及び188gの室温水を、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、繊維ミックススラリーを製造した。この繊維ミックススラリーを、82℃まで10秒間加熱して、海島型二成分繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化し、除去して、ポリエステルミクロ繊維を解放した。次いで、繊維ミックススラリーを濾して、スルホポリエステルからなるスルホポリエステル分散液並びにガラスミクロ繊維及びポリエステルミクロ繊維からなるミクロ繊維含有混合物を製造した。このミクロ繊維含有混合物を、500gの室温水を使用して更に濯いで、ミクロ繊維含有混合物からスルホポリエステルを更に除去した。このミクロ繊維含有混合物を、7312gの室温水と一緒に8Lの金属製ビーカーの中に移して、約0.1%濃度(7500gの水及び7.5gの繊維状材料)にして、ミクロ繊維含有スラリーを製造した。このミクロ繊維含有スラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このミクロ繊維含有スラリーから手抄きシートを作るための残りの手順は、比較例20に於けると同じであった。
【0215】
実施例25
下記の手順を使用して、湿式堆積手抄きシートを製造した。7.5gの、実施例16の3.2mmの切断長さ海島型繊維、0.3gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプン及び188gの室温水を、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、繊維ミックススラリーを製造した。この繊維ミックススラリーを、82℃まで10秒間加熱して、海島型繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化し、除去して、ポリエステルミクロ繊維を解放した。次いで、繊維ミックススラリーを濾して、スルホポリエステル分散液及びポリエステルミクロ繊維を製造した。このスルホポリエステル分散液は、水分散性スルホポリエステルを含んでいた。このポリエステルミクロ繊維を、500gの室温水を使用して濯いで、ポリエステルミクロ繊維からスルホポリエステルを更に除去した。これらのポリエステルミクロ繊維を、7312gの室温水と一緒に8Lの金属製ビーカーの中に移して、約0.1%濃度(7500gの水及び7.5gの繊維状材料)にして、ミクロ繊維スラリーを製造した。このミクロ繊維スラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このミクロ繊維スラリーから手抄きシートを作るための残りの手順は、比較例20に於けると同じであった。
【0216】
例20〜25の手抄きシートサンプルを試験し、特性を下記の表に示す。
【0217】
【表7】

【0218】
手抄きシート坪量は、手抄きシートを秤量し、重量をg/m2(gsm)で計算することによって計算した。手抄きシート厚さは、Ono Sokki EG−233厚さゲージを使用して測定し、ミリメートルでの厚さとして報告した。密度は、重量をg/cm3として計算した。多孔度は、1.9×1.9cm平方開口ヘッド及び100cc容量を有する、Greiner Porosity Manometerを使用して測定した。多孔度は、サンプルを通過するための、100ccの水についての秒での平均時間(4回繰り返し)として報告する。引張特性は、6個の30mm×105mm試験片について、インストロンModel TMを使用して測定した。それぞれのサンプルについて、6個の測定値の平均を報告する。これらの試験データから、湿式繊維状構造体の引張特性に於ける顕著な改良が、本発明のポリエステルミクロ繊維の添加によって得られることを観察することができる。
【0219】
実施例26
実施例13のスルホポリエステルポリマーを、二成分押出ラインを使用して、37個の島繊維を有する二成分海島型断面繊維に紡糸した。一次押出機は、海島型繊維断面構造内の「島」を形成するために、Eastman F61HCポリエステルを供給した。二次押出機は、海島型二成分繊維中の「海」を形成するために、水分散性スルホポリエステルポリマーを供給した。ポリエステルのインヘレント粘度は0.61dL/gであり、一方、乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は、前記の溶融粘度測定手順を使用して、240℃及び1rad/秒歪み速度で測定して、約7000ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、72個の孔を有する紡糸口金及び1.15g/分/孔の処理量速度を使用して製造した。「島」ポリエステルと「海」スルホポリエステルとの間のポリマー比は、2対1であった。これらの二成分繊維を、ポリエステル成分のために280℃の押出温度及び水分散性スルホポリエステル成分のために255℃の押出温度を使用して紡糸した。この二成分繊維は、多数のフィラメント(198本のフィラメント)を含有しており、約530m/分の速度で溶融紡糸されて、19.5の公称デニール/フィラメントを有するフィラメントを形成した。Goulston Technologiesからの24重量%PT769仕上げ剤の仕上げ溶液を、キスロールアプリケーターを使用して、二成分繊維に適用した。次いで、二成分繊維のフィラメントを、ライン内で、それぞれ95℃及び130℃に加熱した2組のゴデットロールの一組並びに約1750m/分の速度で作動する最終延伸ロールを使用して延伸して、約3.3Xのフィラメント延伸比を与えて、約5.9の公称デニール/フィラメント又は約29μmの平均直径を有する、延伸した海島型二成分フィラメントを形成させた。これらのフィラメントは、約3.9μmの平均直径のポリエステルミクロ繊維「島」を含んでいた。
【0220】
実施例27
実施例26の延伸した海島型二成分繊維を、3.2mm及び6.4mm切断長さの短尺二成分繊維に切断し、それによって、37個の海島型断面形状を有する短尺繊維を製造した。これらの繊維は、ポリエステルの「島」及び水分散性スルホポリエステルポリマーの「海」を含んでいた。島及び海の断面分布は、これらの二成分繊維の長さに沿って、本質的に一貫していた。
【0221】
実施例28
実施例27の短い切断長さ海島型繊維を、80℃で軟水を使用して洗浄して、水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、二成分繊維の「島」成分であったポリエステルミクロ繊維を解放した。洗浄したポリエステルミクロ繊維を、25℃で軟水を使用して濯いで、「海」成分の大部分を本質的に除去した。洗浄したポリエステルミクロ繊維の光学顕微鏡観察によって、約3.9μmの平均直径並びに3.2mm及び6.4mmの長さが示された。
【0222】
実施例29
実施例13のスルホポリエステルポリマーを、二成分押出ラインを使用して、37個の島繊維を有する二成分海島型断面繊維に紡糸した。一次押出機は、海島型繊維断面構造内の「島」を形成するために、ポリエステルを供給した。二次押出機は、海島型二成分繊維中の「海」を形成するために、水分散性スルホポリエステルポリマーを供給した。ポリエステルのインヘレント粘度は0.52dL/gであり、一方、乾燥水分散性スルホポリエステルの溶融粘度は、前記の溶融粘度測定手順を使用して、240℃及び1rad/秒歪み速度で測定して、約3500ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、それぞれ175個の孔を有する2個の紡糸口金及び1.0g/分/孔の処理量速度を使用して製造した。「島」ポリエステルと「海」スルホポリエステルとの間のポリマー比は、70%対30%であった。これらの二成分繊維を、ポリエステル成分のために280℃の押出温度及びスルホポリエステル成分のために255℃の押出温度を使用して紡糸した。この二成分繊維は、多数のフィラメント(350本のフィラメント)を含有しており、100℃に加熱された引取ロールを使用して約1000m/分の速度で溶融紡糸されて、約9の公称デニール/フィラメント及び約36μmの平均繊維直径を有するフィラメントを形成した。24重量%PT769仕上げ剤の仕上げ溶液を、キスロールアプリケーターを使用して、二成分繊維に適用した。二成分繊維のフィラメントを一緒にし、次いで、延伸ライン上で、100m/分の延伸ロール速度及び38℃の温度で3.0X延伸して、約3の平均デニール/フィラメント及び約20μmの平均直径を有する、延伸した海島型二成分フィラメントを形成させた。これらの延伸した海島型二成分繊維を、約6.4mm長さの短尺繊維に切断した。これらの短尺海島型二成分繊維は、約2.8μmの平均直径のポリエステルミクロ繊維「島」を含んでいた。
【0223】
実施例30
実施例29の短い切断長さ海島型二成分繊維を、80℃で軟水を使用して洗浄して、水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、この繊維の「島」成分であったポリエステルミクロ繊維を解放した。洗浄したポリエステルミクロ繊維を、25℃で軟水を使用して濯いで、「海」成分の大部分を本質的に除去した。洗浄した繊維の光学顕微鏡観察によって、約2.8μmの平均直径及び約6.4mmの長さのポリエステルミクロ繊維が示された。
【0224】
実施例31
下記の手順を使用して、湿式堆積ミクロ繊維原料手抄きシートを製造した。56.3gの、実施例16の3.2mmの切断長さ海島型二成分繊維、2.3gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプン及び1410gの室温水を、2Lのビーカーに入れて、繊維スラリーを製造した。この繊維スラリーを撹拌した。この繊維スラリーの四分の一量、約352mLを、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化した。この繊維スラリーを、82℃まで10秒間加熱して、海島型二成分繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化し、除去して、ポリエステルミクロ繊維を解放した。次いで、繊維スラリーを濾して、スルホポリエステル分散液及びポリエステルミクロ繊維を製造した。これらのポリエステルミクロ繊維を、500gの室温水を使用して濯いで、ポリエステルミクロ繊維からスルホポリエステルを更に除去した。352mLのミクロ繊維スラリーを製造するために充分な室温水を添加した。このミクロ繊維スラリーを、7000rpmで30秒間、再パルプ化した。これらのミクロ繊維を、8Lの金属製ビーカーの中に移した。繊維スラリーの残りの四分の三を、同様にパルプ化し、洗浄し、濯ぎ、再パルプ化し、そして8Lの金属製ビーカーに移した。次いで、6090gの室温水を添加して、約0.49%濃度(7500gの水及び36.6gのポリエステルミクロ繊維)にして、ミクロ繊維スラリーを製造した。このミクロ繊維スラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このミクロ繊維スラリーから手抄きシートを作るための残りの手順は、比較例20に於けると同じであった。約490gsmの坪量を有するこのミクロ繊維原料手抄きシートは、約2.5μmの平均直径及び約3.2mmの平均長さのポリエステルミクロ繊維からなっていた。
【0225】
実施例32
下記の手順を使用して、湿式堆積手抄きシートを製造した。7.5gの、実施例31のポリエステルミクロ繊維原料手抄きシート、0.3gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプン及び188gの室温水を、1000mLのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化した。このミクロ繊維を、7312gの室温水と一緒に8Lの金属製ビーカーの中に移して、約0.1%濃度(7500gの水及び7.5gの繊維状材料)にして、ミクロ繊維スラリーを製造した。このミクロ繊維スラリーを、高速羽根混合機を使用して、60秒間撹拌した。このスラリーから手抄きシートを作るための残りの手順は、比較例20に於けると同じであった。約2.5μmの平均直径を有するポリエステルミクロ繊維の100gsmの湿式堆積手抄きシートが得られた。
【0226】
実施例33
実施例29の6.4mm切断長さ海島型二成分繊維を、80℃で軟水を使用して洗浄して、水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、この二成分繊維の「島」成分であったポリエステルミクロ繊維を解放した。洗浄したポリエステルミクロ繊維を、25℃で軟水を使用して濯いで、「海」成分の大部分を本質的に除去した。洗浄したポリエステルミクロ繊維の光学顕微鏡観察によって、約2.5μmの平均直径及び6.4mmの長さが示された。
【0227】
実施例34
実施例16、実施例27及び実施例29の短い切断長さ海島型二成分繊維を、二成分繊維の重量基準で約1重量%の、Sigma-Aldrich Company、ジョージア州Atlantaからのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(Na4EDTA)を含有する、80℃の軟水を使用して別々に洗浄して、水分散性スルホポリエステル「海」成分を除去し、それによって、この二成分繊維の「島」成分であったポリエステルミクロ繊維を解放した。少なくとも1種の水軟化剤、例えばNa4EDTAの添加は、海島型二成分繊維からの水分散性スルホポリエステルポリマーの除去に於いて助けになる。洗浄したポリエステルミクロ繊維を、25℃で軟水を使用して濯いで、「海」成分の大部分を本質的に除去した。洗浄したポリエステルミクロ繊維の光学顕微鏡観察によって、ポリエステルミクロ繊維の優れた解放及び分離が示された。水中の水軟化剤、例えばNa4EDTAの使用は、スルホポリエステルの水分散性に悪影響を与え得る、スルホポリエステルでの任意のCa++イオン交換を防止する。典型的な軟水は、15ppm以下のCa++イオン濃度を含有するであろう。本明細書中に記載されたプロセスに於いて使用される軟水は、Ca++及びその他の多価イオンの本質的にゼロ濃度を有するべきか又はその代わりにこれらのCa++イオン及びその他の多価イオンを結合するために充分な量の水軟化剤、例えばNa4EDTAを使用すべきであることが望ましい。これらのポリエステルミクロ繊維は、前に開示された実施例の手順を使用して湿式堆積シートを製造する際に使用することができる。
【0228】
実施例35
実施例16及び実施例27の短い切断長海島型二成分繊維を、下記の手順を使用して別々に加工した。17gの、Avebe、オランダ国FoxholからのSolivitose N 予備ゼラチン化第四級カチオン性ジャガイモデンプンを、蒸留水に添加した。デンプンが全部溶解又は加水分解した後、次いで、429gの短い切断長海島型二成分繊維を、この蒸留水にゆっくり添加して、繊維スラリーを製造した。Williams Rotary Continuous Feed Refiner(5インチの直径)を作動させて、水分散性スルホポリエステルを、ポリエステルミクロ繊維から分離させるために充分な剪断作用を与えるように、繊維スラリーを精錬又は混合した。原料チェストの内容物を、24Lのステンレススチール容器の中に注ぎ、蓋を閉めた。このステンレススチール容器をプロパンコンロの上に置き、海島型繊維中のスルホポリエステル成分を除去し、ポリエステルミクロ繊維を解放するために、繊維スラリーが約97℃で沸騰し始めるまで加熱した。繊維スラリーが沸騰に達した後、それを、手動撹拌櫂で撹拌した。ステンレススチール容器の内容物を、30メッシュの網を備えた27インチ×15インチ×深さ6インチのFalse Bottom Knucheの中に注いで、スルホポリエステル分散液及びポリエステルミクロ繊維を製造した。このスルホポリエステル分散液は、水及び水分散性スルホポリエステルからなっていた。ポリエステルミクロ繊維を、Knuche内で17℃で10Lの水で15秒間濯ぎ、圧搾して過剰の水を除去した。
【0229】
20gのポリエステルミクロ繊維(乾燥繊維基準)を、70℃で2000mLの水に添加し、Hermann Manufacturing Companyによって製作された2L3000rpm3/4馬力のハイドロパルパーを使用して3分間撹拌(9,000回転)して、1%濃度のミクロ繊維スラリーを製造した。比較例20に於いて前記した手順を使用して、手抄きシートを作った。
【0230】
これらの手抄きシートの光学及び走査型電子顕微鏡観察によって、ポリエステルミクロ繊維の優れた分離及び生成が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水非分散性ポリマーを含んでなる水非分散性ポリマーミクロ繊維であって、5μm未満の等価直径及び25mm未満の長さを有する水非分散性ポリマーミクロ繊維。
【請求項2】
前記水非分散性ポリマーミクロ繊維が3μm未満の等価直径並びに25mm未満、10mm未満、6.5mm未満及び3.5mm未満からなる群から選択された長さを有する請求項1に記載の水非分散性ポリマーミクロ繊維。
【請求項3】
a)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、該ミクロ繊維ドメインは、該ミクロ繊維ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなる、造形された断面を有する、切断多成分繊維を用意し、そして
b)該水分散性スルホポリエステルから水非分散性ポリマーミクロ繊維を分離すること
を含んでなる方法によって製造された、請求項1又は2に記載の水非分散性ポリマーミクロ繊維。
【請求項4】
前記多成分繊維が、造形された断面を有し、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで該ミクロ繊維ドメインの間に介在するこのスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)を含んでなり
該水分散性スルホポリエステルが240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そして該スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない、少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含んでなる、
請求項3に記載の水非分散性ポリマーミクロ繊維。
【請求項5】
前記多成分繊維が、造形された断面を有し、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルで、該スルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、該官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、該官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなり、そして
(B)該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、該ミクロ繊維ドメインは、該ミクロ繊維ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなる、
請求項3に記載の水非分散性ポリマーミクロ繊維。
【請求項6】
前記多成分繊維が、造形された断面を有し、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、該ミクロ繊維ドメインは、該ミクロ繊維ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなり、
該繊維が、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、そして
該水分散性スルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そして
該スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で、約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含んでなる、
請求項3に記載の水非分散性ポリマーミクロ繊維。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の非分散性ポリマーミクロ繊維を含んでなる不織物品。
【請求項8】
該不織物品が乾式堆積プロセス又は湿式堆積プロセスによって製造される請求項7に記載の不織物品。
【請求項9】
少なくとも1%の前記水非分散性ポリマーミクロ繊維が前記不織物品中に含有されている請求項8に記載の不織物品。
【請求項10】
少なくとも25%の前記水非分散性ポリマーミクロ繊維が、前記不織物品中に含有されている請求項8に記載の不織物品。
【請求項11】
少なくとも50%の前記水非分散性ポリマーミクロ繊維が前記不織物品中に含有されている請求項8に記載の不織物品。
【請求項12】
前記水非分散性ポリマーミクロ繊維がポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースエステル及びポリ塩化ビニルからなる群から選択された少なくとも1種のポリマーを含んでなる請求項7に記載の不織物品。
【請求項13】
前記不織物品がフィルター媒体、不織布、不織ウエブ、食品製造のためのフィルター媒体、医学用途のためのフィルター媒体及び紙からなる群から選択された物品である請求項7に記載の不織物品。
【請求項14】
少なくとも1種の他の繊維を更に含む請求項7に記載の不織物品。
【請求項15】
少なくとも1種の添加剤を更に含む請求項7に記載の不織物品。
【請求項16】
不織物品の製造方法であって、
a)多成分繊維から製造された水非分散性ポリマーミクロ繊維を用意し、そして
b)湿式堆積プロセス又は乾式堆積プロセスを利用して該不織物品を製造する
ことを含んでなる方法。
【請求項17】
前記多成分繊維が、造形された断面を有する多成分繊維であり、該多成分繊維が、
A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
B)該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、該ミクロ繊維ドメインは該ミクロ繊維ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記多成分繊維が造形された断面を有し、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、該ミクロ繊維ドメインは、該ミクロ繊維ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている
を含んでなり、
該水分散性スルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そして
該スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含んでなる、
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
該多成分繊維が、造形された断面を有し、
(A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルで、該スルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、芳香族又は脂環式環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで、該官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(ここで、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜約500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(ここで、該官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなり、そして
(B)該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、該ミクロ繊維ドメインは、該ミクロ繊維ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている、
を含んでなる請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記多成分繊維が、造形された断面を有し、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び
(B)該スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のミクロ繊維ドメイン(ここで、該ミクロ繊維ドメインは、該ミクロ繊維ドメインの間に介在する該スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている、
含んでなり、
該繊維が、約6デニール/フィラメントよりも小さい紡糸時デニールを有し、そして
該水分散性スルホポリエステルが、240℃で1rad/秒の歪み速度で測定した約12,000ポアズよりも低い溶融粘度を示し、そして
該スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の合計モル数基準で約25モル%よりも少ない少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含んでなる、
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
水非分散性ポリマーミクロ繊維の製造方法であって、
a)多成分繊維を切断多成分繊維に切断し、
b)繊維含有供給原料を水と接触させて、繊維ミックススラリーを製造し(ここで、該繊維含有供給原料は、切断多成分繊維を含む)、
c)該繊維ミックススラリーを加熱して、加熱された繊維ミックススラリーを製造し、
d)任意的に、該繊維ミックススラリーを、剪断ゾーン内で混合し、
e)該多成分繊維から、該スルホポリエステルの少なくとも一部を除去して、スルホポリエステル分散物及び水非分散性ポリマーミクロ繊維を含んでなるスラリー混合物を製造し、そして
f)該スラリー混合物から該水非分散性ポリマーミクロ繊維を分離すること
からなる方法。
【請求項22】
前記水非分散性ポリマーミクロ繊維が湿式堆積プロセス又は乾式堆積プロセスに於いて使用される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水非分散性ポリマーミクロ繊維スラリーが、セルロース性繊維パルプ、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維及びセルロースエステル繊維からなる群から選択された少なくとも1種の繊維を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
工程16bの水が少なくとも1種の水軟化剤を含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記水軟化剤がキレート化剤又はカルシウムイオン封鎖剤である請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記水軟化剤がポリアクリル酸ナトリウム塩、マレイン酸又はコハク酸のナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン−N,N,N′,N′,N″−五酢酸、ペンテト酸、N,N−ビス(2−(ビス(カルボキシメチル)アミノ)エチル)−グリシン、ジエチレントリアミン五酢酸、[[(カルボキシメチル)イミノ]ビス(エチレンニトリロ)]−四酢酸、エデト酸、エチレンジニトリロ四酢酸、EDTA、遊離塩基、EDTA遊離酸、エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四酢酸、ハンペン、ベルセン、N,N′−1,2−エタン ジイルビス−(N−(カルボキシメチル)グリシン)、エチレンジアミン四酢酸、N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン、トリグリコラミン酸、トリロンA、α,α′,α″−トリメチルアミントリカルボン酸、トリ(カルボキシメチル)アミン、アミノ三酢酸、ハンプシャーNTA酸、ニトリロ−2,2′,2″−三酢酸、チトリプレックスi、ニトリロ三酢酸及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
不織物品を製造するための湿式堆積プロセスであって、
a)任意的に、前記水非分散性ポリマーミクロ繊維を洗浄し、
b)水を該水非分散性ポリマーミクロ繊維に添加して、水非分散性ポリマーミクロ繊維スラリーを製造し、
c)任意的に、他の繊維及び/又は添加剤を、該水非分散性ポリマーミクロ繊維又は水非分散性ポリマーミクロ繊維スラリーに添加し、そして
d)水非分散性ポリマーミクロ繊維含有スラリーを湿式堆積不織ゾーンに移して該不織物品を製造すること
からなる湿式堆積プロセス。

【公表番号】特表2011−516740(P2011−516740A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502934(P2011−502934)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/001717
【国際公開番号】WO2009/123678
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】