説明

多方向投影システム、及び多方向投影方法

【課題】投射角を制限することなく、複数の方向に該方向に応じた異なる映像を投影できるとともに、投射距離を短くし、システム全体としてもコンパクトにすることができる多方向システムを提供する。
【解決手段】多方向投影システム101は、スクリーン1と、スクリーン1の後方に配置され、所定範囲に広がる映像光K3をスクリーン1に対してそれぞれ異なる投影角度で投影する複数のプロジェクタ2を備え、スクリーン1は、各プロジェクタ2の映像光K3を、各プロジェクト2毎に同一の拡散角度範囲の拡散光O51として前方に出射し、複数のプロジェクタ2のうち、少なくとも2つのプロジェクタ2の拡散光が互いに重なることにより、これら少なくとも2つの拡散光K3に基づく特定方向の映像が構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に光を出射して、映像を投影する投影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔地にいる者と会議をする際には、テレビ会議という手法が用いられている。
テレビ会議とは、例えば、A地点とB地点が遠隔地である場合に、A地点の会議室にいる出席者a及びB地点の会議室にいる出席者bそれぞれをカメラで撮影して、互いに相手方の映像を見て会話しながら会議をすることである。このテレビ会議では、回線を通じて撮影した映像を相互に送ることにより、出席者aが出席者bの映像をA地点の会議室に設置した映像機器で見て、同様に出席者bが出席者aの映像をB地点の会議室に設置した映像機器で見て、互いに会話を行う。これにより、会議の出席者a及び出席者bは、互いに遠隔地にいる相手の顔を見ながら会話ができるので、コミュニケーションの向上を図ることができるというメリットがある。
【0003】
しかし、上記のテレビ会議では、A地点の会議室に設置した映像機器には、出席者bの一方向からの映像のみが映し出される。よって、出席者aは、出席者bの顔を見ることができるものの、出席者bがどちらの方向を向いているのかを判別することは困難であった。したがって、出席者bが出席者aの中の誰に対して話しているかということを、出席者aには分かりにくいという不都合があった。
【0004】
ここで、映像機器を用いた投影方法において、入射光の方向に応じて拡散光の方向を変化させることができるスクリーンを用いる技術が提案されている(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、複数のプロジェクタをスクリーンに対して異なる方向に配置し、異なる方向から出席者を撮影した画像を各プロジェクタから投影することにより、前方に複数の異なる方向の出席者の映像を表示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tohru Kawakami,Baku Katagiri,Takahiro Ishinabe and Tatsuo Uchida, “Multiple Directional Viewing Projection Display Based on the Incident-Angle-Independent,Diffusion-Angle-Quantizing Technology” Proc.IDW2010,2010.12,p.1479-1482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の方法で使用されるプロジェクタは、該プロジェクタから出射される映像光の角度である投影角が小さくなるように設定されているものである。つまり、該プロジェクタには投影角を小さくするように制御するためにズームインレンズ等が設けられており、そのために大型なプロジェクタとなる。そして、大型なプロジェクタでは、プロジェクタからスクリーンまでの距離である投射距離が長くなるため、システム全体として大規模になるという問題点があった。
【0007】
本発明は、前述の従来技術における問題を解決するために、投影角を制限することなく、複数の方向に該方向に応じた異なる映像を投影できるとともに、投射距離を短くし、システム全体としてもコンパクトな投影方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る多方向投影システムは、スクリーンと、前記スクリーンの後方に配置され、所定範囲に広がる映像光を前記スクリーンに対してそれぞれ異なる投影角度で投影する複数のプロジェクタとを備え、前記スクリーンは、各前記プロジェクタの前記映像光を、各前記プロジェクト毎に同一の拡散角度範囲の拡散光として前方に出射し、複数の前記プロジェクタのうち、少なくとも2つの前記プロジェクタの前記拡散光が互いに重なることにより、これら少なくとも2つの前記拡散光に基づく特定方向の映像が構成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る多方向投影方法は、スクリーンと、前記スクリーンの後方に配置され、所定範囲に広がる映像光を前記スクリーンに対してそれぞれ異なる投影角度で投影する複数のプロジェクタとを備えた多方向投影システムにおける多方向投影方法であって、前記スクリーンとして、各前記プロジェクタの前記映像光を、各前記プロジェクト毎に同一の拡散角度範囲の拡散光として前方に出射するものを使用し、複数の前記プロジェクタのうち、少なくとも2つの前記プロジェクタの前記拡散光が互いに重なるように前記プロジェクタを配置することにより、これら少なくとも2つの前記拡散光に基づく特定方向の映像を構成することを特徴とする。
【0010】
このような多方向投影システム及び多方向投影方法では、複数のプロジェクタはスクリーンに対してそれぞれ異なる投影角度で映像光を投影し、さらに映像光はプロジェクタ毎に同一の拡散角度範囲の拡散光を出射する。よって、複数の方向に該方向に応じた異なる映像を投影することができる。
また、本発明では、所定範囲に広がる映像光をスクリーンに対して投影するプロジェクタが用いられているので、投射角の制限のない一般的なプロジェクタを用いた場合であっても、所定範囲に広がる映像光をスクリーンに対して投影することができる。これにより、投射距離を短くすることができるため、システム全体としてもコンパクトにすることができる。
また、複数のプロジェクタのうち、少なくとも2つのプロジェクタの拡散光が互いに重なることにより、これら少なくとも2つの拡散光に基づく特定方向の映像が構成される。よって、一のプロジェクタからの拡散光の一部は、他のプロジェクタのうちの少なくとも一のプロジェクタからの拡散光と重なるとともに、重なっている部分にはプロジェクタに備えられた各画像に対応する映像を投影させることができる。
【0011】
また、本発明に係る多方向投影システム及び多方向投影方法では、複数のプロジェクタはスクリーンに対してそれぞれ異なる投影角度で映像光を投影し、さらに映像光はプロジェクタ毎に同一の拡散角度範囲の拡散光を出射する。よって、複数の方向に該方向に応じた異なる映像を投影することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る多方向投影システムによれば、投射角を制限することなく、複数の方向に該方向に応じた異なる映像を投影できるとともに、投射距離を短くし、システム全体としてもコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態で使用されるスクリーンからの拡散光の様子を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態で使用されるスクリーンからの拡散光の様子を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態で使用されるスクリーンに対してプロジェクタの位置を替えた場合におけるスクリーンからの拡散光の様子を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態の配置図である。
【図5】本発明の一実施形態で使用されるプロジェクタをC位置に設置した場合の光の拡散の様子を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態で使用されるプロジェクタをD位置に設置した場合の光の拡散の様子を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態で使用されるプロジェクタをC位置及びD位置に設置した場合の光の拡散の様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る多方向投影システム101で使用されるスクリーン1の構成について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態で使用されるスクリーン1からの拡散光の出射の様子を示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態ではスクリーン1は、積層された2枚のレンチキュラーレンズ11を備えている。
図1の左方向から入射してきた映像光K11乃至K16は、それぞれスクリーン1で拡散され、それぞれ拡散光O11乃至O16として出射される。
【0015】
図2は、本実施形態で使用するスクリーン1と、投影角θ21が制限されているプロジェクタPを用いて、スクリーン1に投影された映像光K21が拡散光O21として出射する様子を示す平面図である。
ここで、映像光K21及び拡散光O21が出射される方向となる紙面方向右側であるX1側を「前方」、紙面方向左側であるX2側を「後方」と称する(以下、同じ)。
また、紙面方向上側を「Y1」側、紙面方向下側を「Y2」側と称する(以下、同じ)。
【0016】
プロジェクタPは、基準線L上におけるスクリーン1の後方の位置C21に配置されている。
プロジェクタPから投影される映像光K21は複数の光線が束状となって構成され、最もY1側の光線L21と最もY2側の光線L´21で挟まれた範囲となる投影角θ21で投影される。映像光K21はスクリーン1において拡散角θ21で出射され、最もY1側の光線M21と最もY2側の光線M´21で挟まれた範囲で拡散光O21として出射される。
【0017】
ここで、映像光K21の投影角θ21、拡散光O21の拡散角θ21は、それぞれ映像光K21又は映像光21の延長線と基準線Lの交差角度、拡散光O21又は拡散光O21の延長線と基準線Lの交差角度を示す。また、投影角θ21のうち基準線LよりY1側を「−」側、基準線LよりY2側を「+」側とする。また、拡散角O21のうち基準線LよりY2側を「−」側、基準線LよりY1側を「+」側とする(以下同じ)。
プロジェクタPから投影される映像光K21の投影角θ21は、所定の狭角範囲に設定されている。ここでは、プロジェクタPの投影角θ21は−9°〜+9°に設定されている。
また、位置C21からスクリーン1と基準線Lが交差する位置S2までの距離である投射距離L1は、ここでは63cmになるように、スクリーン1とプロジェクタPは配置されている。
また、スクリーン1の幅S1は、ここでは20cmである。
なお、上記数字は一例であり、適宜設定可能である。
【0018】
ここで、プロジェクタPの前側に画像を配置して該画像に対して投影すると、該画像は拡散光O21として出射され、映像として投影される。そして、拡散光O21のうち、スクリーン1の上端S3において最もY2側に出射された光線N21と、スクリーン1の下端S4において最もY1側に出射された光線N´21で挟まれた範囲H21において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。
【0019】
次に、図3は、本実施形態で使用するスクリーン1と、投影角θ31乃至θ35がそれぞれ制限されているプロジェクタA31乃至E31とを配置して、スクリーン1からの拡散光O31乃至O35の出射の様子を示す平面図である。
【0020】
プロジェクタA31乃至E31はそれぞれスクリーン1の後方に配置されている。
また、プロジェクタA31は基準線LよりY1側に、プロジェクタB31は基準線よりY1側であり、かつプロジェクタA31よりY2側に、プロジェクタC31は基準線L上に、プロジェクタD31は基準線LよりY2側に、プロジェクタE31は基準線LよりY2側であり、かつプロジェクタD31よりY2側に、それぞれ配置されている。
【0021】
プロジェクタA31からの映像光K31は、最もY1側の光線L31と最もY2側の光線L´31で挟まれた範囲となる投影角θ31で投影される。また、プロジェクタB31からの映像光K32は、最もY1側の光線L32と最もY2側の光線L´32で挟まれた範囲となる投影角θ32で投影される。また、プロジェクタC31からの映像光K33は、最もY1側の光線L33と最もY2側の光線L´33で挟まれた範囲となる投影角θ33で投影される。また、プロジェクタD31からの映像光K34は、最もY1側の光線L34と最もY2側の光線L´34で挟まれた範囲となる投影角θ34で投影される。プロジェクタE31からの映像光K35は、最もY1側の光線L35と最もY2側の光線L´35で挟まれた範囲となる投影角θ35で投影される。
【0022】
映像光K31はスクリーン1において拡散角θ31で出射され、最もY1側の光線M31と最もY2側の光線M´31で挟まれた範囲で拡散光O31として出射される。また、映像光K32はスクリーン1において拡散角θ32で出射され、最もY1側の光線M32と最もY2側の光線M´32で挟まれた範囲で拡散光O32として出射される。また、映像光K33はスクリーン1において拡散角θ33で出射され、最もY1側の光線M33と最もY2側の光線M´33で挟まれた範囲で拡散光O33として出射される。また、映像光K34はスクリーン1において拡散角θ34で出射され、最もY1側の光線M34と最もY2側の光線M´34で挟まれた範囲で拡散光O34として出射される。また、映像光K35はスクリーン1において拡散角θ35で出射され、最もY1側の光線M35と最もY2側の光線M´35で挟まれた範囲で拡散光O35として出射される。
【0023】
また、プロジェクタA31乃至E31から投影される映像光K31乃至K35の投影角θ31乃至θ35は、所定の狭角範囲に設定されている。ここでは、プロジェクタA31の投影角θ31は−41°〜−26°に、プロジェクタB31の投影角θ32は−26°〜−9°に、プロジェクタC31の投影角θ33は−9°〜+9°に、プロジェクタD31の投影角θ34は+9°〜+26°に、プロジェクタE31の投影角θ35は+26°〜+41°に、それぞれ設定されている。
また、スクリーンの幅S1は、ここでは20cmである。
なお、上記数字は一例であり、適宜設定可能である。
【0024】
ここで、プロジェクタA31乃至E31の前側に画像を配置して該画像に対して投影すると、該画像は拡散光O31乃至O35として出射され、映像として投影される。
そして、拡散光O31のうち、光線N31と光線N´31で挟まれた範囲H31において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。また、拡散光O32のうち、光線N32と光線N´32で挟まれた範囲H32において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。また、拡散光O33のうち、光線N33と光線N´33で挟まれた範囲H33において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。また、拡散光O34のうち、光線N34と光線N´34で挟まれた範囲H34において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。また、拡散光O35のうち、光線N35と光線N´35で挟まれた範囲H35において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る多方向投影システム101について、図面を参照して説明する。
【0026】
図4に示すように、多方向投影システム101は、上述のスクリーン1と、拡散角が狭角に制限されていない複数のプロジェクタ2とを備える。本実施形態では、プロジェクタ2として、プロジェクタA乃至Fの6つより構成されている。
【0027】
図5、図6は、本実施形態を構成するプロジェクタ2のうちのプロジェクタC、プロジェクタDを単独で配置した場合において、スクリーン1に投影された映像光K3、映像光K4がそれぞれ拡散光O51、拡散光O61として出射する様子を示す平面図である。
また、図7は、上述のプロジェクタC及びプロジェクタDの両方を配置した場合において、スクリーン1に投影された映像光K3及び映像光K4が拡散光51及び拡散光61として出射する様子を示す平面図である。
【0028】
まず、図5、図6を用いて、プロジェクタC、プロジェクタDをそれぞれ単独で配置した場合について、拡散光O51、拡散光O61がそれぞれ出射する様子を説明する。
ここで、プロジェクタC及びプロジェクタDはスクリーン1の後方に配置されている。図7に示すように、プロジェクタCはプロジェクタDよりY2側に配置されている。
プロジェクタCからの映像光K3は、最もY1側の光線L3と最もY2側の光線L´3で挟まれた範囲となる投影角θ3で投影される。また、プロジェクタDからの映像光K4は、最もY1側の光線L4と最もY2側の光線L´4で挟まれた範囲となる投影角θ4で投影される。
【0029】
映像光K3のうちスクリーン1で位置T1から位置T2までの間に入射してきた映像光K3は、光線M51と光線M52で囲まれた範囲で拡散光O51として出射される。また、映像光K3のうちスクリーン1で位置T2から位置T3までの間に入射してきた映像光K3は、光線M52と光線M53で囲まれた範囲で拡散光O52として出射される。
また、映像光K4のうちスクリーン1で位置T1から位置T2までの間に入射してきた映像光K4は光線M61と光線M62で囲まれた範囲で拡散光O61として出射される。また、映像光K4のうちスクリーン1で位置T2から位置T3までの間に入射してきた映像光K4は、光線M62と光線M63で囲まれた範囲で拡散光O62として出射される。
【0030】
また、プロジェクタC、プロジェクタDから投影される映像光K3、映像光K4の投影角θ3、投影角θ4は、狭角範囲に設定されていない。プロジェクタCの投影角θ3は−9°〜+22°に、プロジェクタDの投影角θ4は−26°〜+5°と広く設定されている。
また、プロジェクタCからスクリーン1までの投射距離L51、及びプロジェクタDからスクリーン1までの投射距離L61は、ここでは35cmになるように、スクリーン1とプロジェクタC及びプロジェクタDは配置されている。
なお、上記数字は一例であり、適宜設定可能である。
【0031】
ここで、プロジェクタC、プロジェクタDの前側に画像を配置して該画像に対して投影すると、該画像はそれぞれ拡散光O51、拡散光O61として出射され、映像として投影される。
そして、拡散光O51のうち光線N51と光線N´51で挟まれた範囲H51、及び光線N52と光線N´52で挟まれた範囲H52において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。また、拡散光O61のうち光線N61と光線N´61で挟まれた範囲H61、及び光線N62と光線N´62で挟まれた範囲H62において、投影された画像の映像を視覚にて認識できる。
【0032】
次に、図7を用いて、本実施形態であるプロジェクタC及びプロジェクタDの両方を配置した場合において、プロジェクタC及びプロジェクタDから投影される映像について説明する。
光線N51と光線N´51で挟まれた範囲H51では、拡散光O51のうちスクリーン1の位置T1から位置T2までの間から出射された拡散光O51から投影された映像を視覚にて認識できる。
また、光線N61、光線N´61、M52と光線N´52で挟まれた範囲H71では、拡散光O61のうちスクリーン1の位置T1から位置T2までの間から出射された拡散光O61から投影された映像を視覚にて認識できる。
また、光線N´52と光線N61で挟まれた範囲H72では、拡散光O51のうちスクリーン1の位置T2から位置T3までの間から出射された拡散光O51から投影された映像、及び拡散光O61のうちスクリーン1の位置T1から位置T2までの間から出射された拡散光O61から投影された映像の両方を視覚にて認識できる。
また、光線N52、光線N´52と及び光線N61で挟まれた範囲H73では、拡散光O51のうちスクリーン1の位置T2から位置T3までの間から出射された拡散光O51から投影された映像を視覚にて認識できる。
また、光線N62と光線N´62で挟まれた範囲H62では、拡散光O61のうちスクリーン1の位置T2から位置T3までの間から出射された拡散光O61から投影された映像を視覚にて認識できる。
【0033】
次に、本実施形態の多方向投影システム101の作用について説明する。
このように構成された多方向投影システム101では、プロジェクタC、プロジェクタDと同様に、プロジェクタA、プロジェクタB、プロジェクタE、及びプロジェクタFもスクリーンに対してそれぞれ異なる投影角で映像光を投影する。さらに、映像光はプロジェクタ毎に同一の拡散角の拡散光を出射する。
範囲H51ではプロジェクタCからの拡散光O51で投影された映像を、範囲H62ではプロジェクタDからの拡散光O61で投影された映像を、それぞれ表示することができる。よって、それぞれのプロジェクタに異なる画像を配置することにより、複数の方向に該方向に応じた異なる映像を投影することができる。
【0034】
例えば、遠隔地の会議室における会話者を右方向から撮影した画像をプロジェクタAに配置し、該会話者を正面から撮影した画像をプロジェクタCに配置し、該会話者を左方向から撮影した画像をプロジェクタFに配置する。すると、スクリーン1のY1側端には該会話者を右方向から撮影した画像を、スクリーン1の中央部には該会話者を正面から撮影した画像を、スクリーン1のY2側端には該会話者を左方向から撮影した画像を、それぞれ映像として投影することができる。よって、該会話者が正面を向いて会話している場合はスクリーン1の中央部には該会話者の正面の顔が、スクリーン1のY1側端には該会話者の右側の顔がそれぞれ映し出される。また、該会話者が右方向を向いて会話している場合は、スクリーン1の中央部には該会話者の左側の顔が、スクリーン1のY2側端には該会話者の正面の顔がそれぞれ映し出される。よって、遠隔地の会議室における会話者が、どちらの方向に向かって話しているかを判別することができる。
【0035】
また、狭角範囲に設定されているプロジェクタPの投影角θ21は−9°〜+9°である。一方、本実施形態の一部であるプロジェクタCの投影角θ3は−9°〜+22°である。よって、本実施形態では、所定範囲に広がる映像光をスクリーン1に対して投影するプロジェクタA乃至Fが用いられているので、投射角の制限のない一般的なプロジェクタを用いた場合であっても、所定範囲に広がる映像光をスクリーンに対して投影することができる。これにより、投射距離を短くすることができるため、システム全体としてもコンパクトにすることができる。
【0036】
また、例えば、光線N´52と光線N61で挟まれた範囲H72では、プロジェクタCから出射された拡散光O51と、プロジェクタDから出射された拡散光O61が互いに重なっている。そして、範囲H72では、拡散光O51のうちスクリーン1の位置T2から位置T3までの間から出射された映像と、拡散光O61のうちスクリーン1の位置T1から位置T2までの間から出射された映像の両方が投影される。よって、一のプロジェクタからの拡散光の一部は、他のプロジェクタのうちの少なくとも一のプロジェクタからの拡散光と重なるとともに、重なっている部分にはプロジェクタに備えられた各画像に対応する映像を投影させることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、前述の実施形態では、プロジェクタを6つ用いた例を示したが、6つに限らず2つ以上用いればよく、各プロジェクタから出射された拡散光のうち少なくとも二つ以上の拡散光が重なればよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンと、
前記スクリーンの後方に配置され、所定範囲に広がる映像光を前記スクリーンに対してそれぞれ異なる投影角度で投影する複数のプロジェクタとを備え、
前記スクリーンは、各前記プロジェクタの前記映像光を、各前記プロジェクト毎に同一の拡散角度範囲の拡散光として前方に出射し、
複数の前記プロジェクタのうち、少なくとも2つの前記プロジェクタの前記拡散光が互いに重なることにより、これら少なくとも2つの前記拡散光に基づく特定方向の映像が構成されることを特徴とする多方向投影システム。
【請求項2】
スクリーンと、
前記スクリーンの後方に配置され、所定範囲に広がる映像光を前記スクリーンに対してそれぞれ異なる投影角度で投影する複数のプロジェクタとを備えた多方向投影システムにおける多方向投影方法であって、
前記スクリーンとして、各前記プロジェクタの前記映像光を、各前記プロジェクト毎に同一の拡散角度範囲の拡散光として前方に出射するものを使用し、
複数の前記プロジェクタのうち、少なくとも2つの前記プロジェクタの前記拡散光が互いに重なるように前記プロジェクタを配置することにより、これら少なくとも2つの前記拡散光に基づく特定方向の映像を構成することを特徴とする多方向投影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−237798(P2012−237798A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105148(P2011−105148)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】