多様な環境抵抗性植物製造のためのAtBG1遺伝子の用途
本発明は、AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)遺伝子の用途及び前記AtBG1遺伝子が導入された形質転換植物に関するもので、詳細には、植物内に導入されて発現したAtBG1タンパク質が植物ホルモンの一種であるアブシジン酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させることで、植物が多様な環境ストレスに対する抵抗性を有するようにするAtBG1遺伝子の用途及び前記AtBG1遺伝子が導入されてストレスに抵抗性を有する形質転換植物に関するのである。植物内ABAの濃度を増加させる方法によって植物は、低温、塩害、脱水のような多様な環境ストレスに抵抗性を有するようになるので、農産物の生産性増大に大きく寄与することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)遺伝子の用途及び前記AtBG1遺伝子が導入された形質転換植物に関するもので、詳細には、植物内に導入されて発現したAtBG1タンパク質が、植物ホルモンの一種であるアブシジン酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させることにより、植物が多様な環境ストレスに対する抵抗性を有するようにするAtBG1遺伝子の用途及び、前記AtBG1遺伝子が導入されてストレスに抵抗性を有する形質転換植物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アブシジン酸(abscisic acid、ABA)は、植物ホルモンの一種で、種子休眠、発芽そして環境ストレスに対する適応反応を含んだ多様な生理学的過程で重要な役割をする(Finkelstein R.R.等,Plant Cell,2002年,第14巻,515頁;J.K.Zhu.Annu Rev Plant Biol.,2002年,第53巻,247頁;Zeevaart J.A.D.and Creelman R.A.,Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol..1988年,第39巻,439頁;Leung J.and Giraudat J.Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol.,1998年,第49巻,199頁)。ABAは、ほとんど同時にF.T.エジコートとP.F.ウェオイング、二つのグループの研究陣によって発見されたが、十分に熟していない果実の落果を研究したF.T.エジコートの研究グループは、木花の果実から落葉促進物質であるアブシスIIを分離し、木の芽の冬休眠を研究していたP.F.ウェオイングの研究グループは、カバノキの種類であるケカンバ(Betula Pubescence)の葉から休眠誘導物質を分離した後、ドルミン(dormin)と名付けた。1965年にドルミンとアブシスIIが同一物質であることが確認されて、アブシジン酸(abscisic acid、以下ABAと略称する)という名称に統一された。
【0003】
ABAは、休眠中の種子、木の芽、球根などに多量含有されていて、普通発芽の進行につれて含量が減少する。また、ABAは、葉の気孔を閉めるようにする作用をするが、植物が水分欠乏状態になれば、ABA合成が活発になってこれにより葉の気孔が閉まって植物から水分が損失されることを防止する。実際に、フラッカ(flacca)というトマトの突然変異種は、正常植物と比べてABA合成が少なく起きるため気孔が閉まらない。
【0004】
細胞内に存在するABAのレベルは、生理的で環境的な変化に影響を受けて、生合成と分解との間の正確な均衡によって量が調節される。デノボ生合成(de novo protein synthesis)は、ABAレベルの増加に寄与するが、酸化や不活性形態に結合することで現れるABAの分解でそのレベルが減少される(Zeevaart J.A.D.and R.A.Creelman,Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol..1988年,第39巻,439頁;Leung J.and Giraudat J.,Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol.1998年,第49巻,199頁;Cutler A.J.and Krochko J.E.Trends in Plant Science、1999年,第4巻,472頁;Qin X.and Zeevaart J.A..Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1999年,第96巻,15354頁)。
【0005】
低いABAレベルは、早い発芽、枯死そして環境ストレスに対して敏感度が増加するような多様な生理学的欠陥を示めす(Cutler A.J.and Krochko J.E.,Trends in Plant Science,1999年,第4巻,472頁;Koornneef M.等,Theor.Appl.Genet.1982年,第61巻,385頁;Rock C.D.and Zeevaart J.A.,Proc. Natl.Acad.Sci.USA.,1991年,第88巻,7496頁)。これは、合成と分解との間の均衡を通じてABAレベルを維持することが、多様な生理学的反応のために重要であることを示す。ABA分解の一番目経路は、シトクロムP470 CYC707Aによって不安定な8’ハイドロキシABAを作るハイドロキシレーションが起きることだが、この不安定な中間物質は、自然発生的な異性体化(isomerization)によって易しくファゼイン酸(phaseic acid)に転換される(Zeevaart J.A.D.and Creelman R.A.,Ann.Rev.Plant Physiol.、1988年,第39巻,439頁;T.Kushiro等,EMBO J.,2000年,第23巻,1647頁)。
【0006】
ABAレベルが低くなるもう一つの経路は、ABAがグルコースと結合することであるが、この反応は、グルコシルトランスフェラーゼ(glucosyl transferase)によって媒介されて、ABAグルコースエステル(ABA−GE)が生成される反応である(Cutler A.J.and Krochko J.E.,Trends in Plant Science、1999年,第4巻,472頁;Walton D.C.and Li Y.,in Plant Hormones:Physiology,Biochemistry and Molecular Biology,140−157頁;Xu Z.J.等,Plant Physiol.,2002年,第129巻,1285頁)。このように結合したABA−GE分子は、液胞やアポプラスチックスペース(apoplastic space)に運搬されるが(Kaiser W.等,J. Plant Physiology,1985年,第119巻,237頁;Dietz K.J.等,J.Exp.Botany,2000年,第51巻,937頁)これは、保存や保管のための形態であるとは考えられていない。
【0007】
本発明では、ベータグルコシダーゼ(β−glucosidase)の一種であるAtBG1が、ERで伝達されるABA−GEをABA形態に加水分解させて、脱水ストレス下で低分子量AtBG1の早い重合を通じて、細胞内ABA含量を増加させるということを確認した。AtBG1遺伝子にT−DNAが挿入された突然変異シロイヌナズナ(以下「突然変異atbg1」と略称する)では、減少さしたABAレベルと気孔閉鎖の欠陥、葉緑体不足による黄色い葉及び非生物学的ストレスに敏感な表現型をみせた。反対にAtBG1遺伝子を過発現させる形質転換されたシロイヌナズナは、対照区の発現量の2.5倍のABAを蓄積させて環境ストレスに対してさらに強い抵抗性を示した。
【0008】
したがって、本発明者らは、前記AtBG1遺伝子を使用して塩害、冷害、脱水を含む多様な環境ストレスに抵抗性を有する植物を製造することができることを確認することにより本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、植物が多様な環境ストレスに対する抵抗性を有するようにする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、植物に導入することにより対象植物が環境ストレスに対する抵抗性を有するようにする、AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)または、その変異体をコードする遺伝子の用途を提供する。
【0011】
また、本発明は、AtBG1またはその変異体をコードする遺伝子が導入されて環境ストレスに抵抗性を有する形質転換植物を提供する。
【0012】
また、本発明は、植物内ABAの濃度を増加させることで、植物が環境ストレスに抵抗性を有する植物を生産する方法を提供する。
【0013】
併せて、本発明は、AtBG1遺伝子またはAtBG1タンパク質を導入して植物にストレス抵抗性を付与する方法を提供する。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明は、植物に導入することで対象植物が環境ストレスに対する抵抗性を有するようにする、AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)またはその変異体をコードする遺伝子の用途を提供する。
【0016】
アブシジン酸(abscisic acid、ABA)は、植物ホルモンの一種で、種子休眠、発芽そして環境ストレスに対する適応反応を含んだ多様な生理学的過程で重要な役割をする。植物内でABAのレベルが低ければ、早い発芽、枯死のような多様な突然変異表現型が現れる。ABAレベルが低くなる経路の一つは、ABAがグルコシルトランスフェラーゼによって不活性形態であるABAグルコースエステル(ABA−GE)に変化することであるが、本発明ではシロイヌナズナのベータグルコシダーゼ同族体(homolog)であるAtBG1がABA−GEをABA形態に変化させて、ABAレベルを高めることにより植物が環境ストレスに抵抗性を有するようにするということを確認した。前記ストレスは、高温、塩害、乾燥、公害、病源菌、傷、低温、過多な光条件、オゾン、除草剤、過多なUV露出及び浸透圧衝撃(osmotic shock)を含む。
【0017】
まず、多様な環境ストレスによってAtBG1遺伝子が発現されるのかどうかを確認するために、シロイヌナズナに高濃度のNaCl、低温、脱水のような多様な環境ストレスを加えた後、AtBG1遺伝子の発現有無を確認した。その結果、AtBG1遺伝子で形質転換された植物は、NaClストレスによってAtBG1の発現が誘導された一方、他のベータグルコシダーゼ同族体をコードする遺伝子であるGlucとpsr3.1は、発現が誘導されなかった(図2)。これは、ベータグルコシダーゼ同族体の中でAtBG1遺伝子だけが、植物がストレス抵抗性を有するようにするということを示している。
【0018】
本発明者等は、AtBG1が植物に環境ストレスに対する抵抗性を示すようにするのかどうかを調べる間接的な方法として、AtBG1遺伝子にT−DNAが挿入された「突然変異atbg1」がどんな表現型を示すのか観察した。その結果、野生型と異なり葉が黄色くて背が低く(図9及び図10)、正常な植物では気孔は昼に開かれて夜には閉まる一方、「突然変異atbg1」は夜にも昼のように気孔が閉まらなかった(図13)。乾燥した環境時に野生型に比べて水分損失量が、1.5倍程度多く(図15)、脱水もひどく起きて大部分の葉が枯死した(図16)。
【0019】
したがって、「突然変異atbg1」は、AtBG1タンパク質の欠乏によって環境ストレスに対する抵抗力が弱化したことを確認した。
【0020】
本発明者等は、前記の「突然変異atbg1」に再びAtBG1遺伝子を導入したシロイヌナズナ(以下、「遺伝子回復atbg1」と略称する)に前記の「突然変異atbg1」に対する実験と同一実験を実施することにより、前記実験結果で示された「突然変異atbg1」の表現型が、AtBG1遺伝子の突然変異による結果なのかを検証した。
【0021】
その結果、「遺伝子回復atbg1」は、発芽後1週(1w)、2週(2w)(図9)及び4週(図10)後に、野生型と類似な鮮やかな緑を示して背が高く、気孔開閉においても野生型のように昼には気孔が開かれて夜には気孔が閉まることを確認した(図13)。また、脱水実験では、野生型より水分損失が少なく(図15)、乾燥した環境で21日間培養した結果、脱水によって葉が黒っぽく変わる表現型が現れないで正常によく育った(図16)。
【0022】
したがって、「突然変異atbg1」にAtBG1遺伝子を再導入して野生型のような表現型を回復したことから、「突然変異atbg1」の表現型の変化がAtBG1遺伝子の突然変異によるものであることを検証した。
【0023】
AtBG1遺伝子が暗号化するAtBG1タンパク質は、植物内アブシジン酸(abscisic acid)の濃度を増加させることで、環境ストレスに対する抵抗性を示す。
【0024】
本発明の好ましい実施例では、AtBG1タンパク質がABAグルコシルトランスフェラーゼ(glucosyltransferase)によって生成されるABA−GEを加水分解することができるのかどうかを確認するために、正常なAtBG1タンパク質及び正常なAtBG1遺伝子に置換や欠失突然変異を起こした突然変異AtBG1タンパク質を、ABA−GE(abscisic acid glucosyl ester)とともに反応させてHPLCを実施した後、ABA分画を定量した。その結果、正常なAtBG1タンパク質と反応させた方でのみ多量のABAが観察され、突然変異AtBG1タンパク質と反応させた方ではABAが観察されなかったので(図17及び図18)、AtBG1遺伝子が暗号化するAtBG1タンパク質がABA−GEを加水分解してABAの濃度を増加させるということを確認した。
【0025】
「突然変異atbg1」にABAを導入すると、黄色かった葉が正常と同じ緑になり(図12)、夜に気孔が閉まることが誘導されるという実験結果(図14)もまた、AtBG1遺伝子によってABAが活性化すると植物がストレス抵抗性を示すということを示している。
【0026】
前記と共に、AtBG1がアブシジン酸の不活性形態であるABA−GEが存在する細胞内小器官であるERに存在するという観察結果(図23ないし図26)も、AtBG1がABA−GEを加水分解してABAに活性化させる反応を媒介するという事実を間接的に証明する。
【0027】
したがって、本発明は、植物内に導入して対象植物が環境ストレスに抵抗性を有するようにするAtBG1遺伝子及び他の植物のその相同の遺伝子の用途を提供する。本発明の遺伝子は、単独でまたは、ベクターに挿入して公知された植物形質転換方法によって植物内に導入することができる。すなわち、アグロバクテリウム媒介方法、遺伝子銃(gene gun)、PEGを使用した方法及び電気穿孔法(electroporation)など本発明が属する技術分野の当業者に知られた周知の方法を利用することができる。
【0028】
一方、変異体と言うのは、本来のAtBG1タンパク質のアミノ酸配列の中で一部アミノ酸に変異が存在するが、機能的には等価であるタンパク質を意味する。前記変異体は、同一種または他の種のAtBG1タンパク質相同体と構造的、生理学的機能が類似の自然的または人為的突然変異体を全て含む。
【0029】
また、本発明は、AtBG1またはその変異体をコードする遺伝子が導入されてストレス抵抗性を有する形質転換植物を提供する。
【0030】
本発明者等は、環境ストレスに抵抗性を有する形質転換植物を製造するために、AtBG1遺伝子を含む植物発現ベクターpBΙ121::AtBG1を製造し、それをアグロバックテリウム(LBA4404)に形質転換させて、2004年11月18日付けで韓国生命工学研究所遺伝子銀行(KCTC)に寄託した(受託番号:KCTC10729BP)。
【0031】
続いて、前記pBΙ121::AtBG1ベクターで形質転換させたアグロバクテリウムをフローラルディプ(floral dip)法を使用してシロイヌナズナを形質転換させて、形質転換植物を修得した。
【0032】
AtBG1遺伝子が導入された前記形質転換シロイヌナズナが、多様な環境ストレスに対してどんな表現型を示すのか確認してみた。その結果、形質転換されていない野生型は高濃度のNaClで枯死したが、AtBG1で形質転換されたシロイヌナズナは、正常に成長し(図4)、根成長の場合、NaClの濃度を漸次高めて処理した時、形質転換されていない野生型の根成長率は漸次に減少したが、形質転換されたシロイヌナズナは一定濃度まで根成長率が増加した(図5)。
【0033】
したがって、AtBG1が導入された形質転換植物は、高濃度のNaClのような環境ストレスに対して抵抗性を示すということが分かる。
【0034】
本発明には、AtBG1またはその変異体をコードする遺伝子を保有する、形質転換された植物細胞も含まれる。
【0035】
また、本発明の範囲には、前記遺伝子が導入されて環境ストレスに抵抗性を有する形質転換植物の子孫またはクローンである植物及び前記植物の種子、実、穂、塊茎、塊根、樹木、カルスまたは原形質体も含まれる。
【0036】
同時に、本発明は、植物内ABAの濃度を増加させることで、環境ストレスに対する抵抗性を有する植物を生産する方法を提供する。
【0037】
詳細には、前記方法は、I)AtBG1遺伝子/他の植物のその相同遺伝子または前記遺伝子を有するベクターを植物細胞に導入する工程;及び
II)前記植物細胞を組職培養して再分化させる工程を含むことができる。
【0038】
本発明者等は、AtBG1遺伝子を含むpBΙ121::AtBG1ベクターでアグロバクテリウムを形質転換させてフローラルディプ(floral dip)を使用してシロイヌナズナで形質転換させて形質転換植物を修得した。前記形質転換植物は、AtBG1遺伝子の発現産物によって活性化したABAの濃度が増加されるので、多様なストレスに対する抵抗性を示した。
【0039】
同時に、本発明は、AtBG1遺伝子またはAtBG1タンパク質を導入して、植物にストレスに対する抵抗性を付与する方法を提供する。
【0040】
前記のように、AtBG1は、アブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)を加水分解してストレス耐性物質であるアブシス酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させて、植物にストレス抵抗性を付与する。これは、AtBG1の重合によって促進される。
【0041】
本発明者等は、AtBG1−過多発現植物を通じて、脱水ストレス条件下で脱水−誘導重合によるAtBG1の早い活性化は、ABAレベルを増加させる機序で(図27ないし図31参照)、植物は正常成長条件下で日周期性ABA増加を調節するために、AtBG1重合を通じてABA−GEをABAで活性化させることを確認した(図32ないし図34及び図36ないし図38参照)。これは、植物が信号伝達経路を通じないでABA活性化プール(active pool)調節のためにAtBG1を使用することを示す。AtBG1によってABA−GEからABAを生産することは、長くて複雑なデノボ(de novo)生合成経路に比べて、非常に単純でストレスの強度と持続時間によって早くABA活性化プール(active pool)を調節することができる。したがって、ABA−GEからABAを修得する経路が、植物が脱水ストレスに対する抵抗性を示すために使用される理由であると判断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
【0043】
但し、下記実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>形質転換シロイヌナズナの製造
<1−1>cDNAライブラリーからAtBG1遺伝子分離
本発明者等は、浸透圧ストレス中の一つである高濃度のNaClによって発現が誘導される遺伝子が含まれた「部分cDNAライブラリー」(subtraction cDNA library)(Pih K.T.等,Mol.Cells,1997年,第7巻,567頁)を修得した。それから、ベータグルコシダーゼの同族体(homolog)(図1)中の一つをコードするシロイヌナズナ遺伝子であるAtBG1を分離した。配列番号1で表される正方向プライマーと配列番号2で表される逆方向プライマーを使用した。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で1秒及び72℃で1分間50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。
【0045】
<1−2>植物形質転換用発現ベクターの製造
本発明者等は、AtBG1遺伝子で形質転換されたシロイヌナズナを製造するために、まずAtBG1遺伝子を発現ベクターにクローニングした。
【0046】
詳細には、CaMV35Sプローモーターを有していてカナマイシン(kanamycin)抵抗性を有する発現ベクターpBΙ121(Pharmacia LKB Biotechnology)のGUS部位を、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するAtBG1遺伝子で置換して、形質転換用発現ベクターpBΙ121::AtBG1を製造した。前記pBΙ121::AtBG1ベクターは、アグロバクテリウムに導入して前記アグロバクテリウム形質転換体LBA4404を、2004年11月18日付けで韓国生命工学研究所遺伝子銀行に寄託した(受託番号:KCTC10729BP)。
【0047】
<1−3>形質転換シロイヌナズナの製造
本発明者等は、前記実施例<1−2>で製造したAtBG1遺伝子を含む発現ベクターをシロイヌナズナに形質転換させた。
【0048】
詳細には、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)を媒介にした形質転換方法の一つであるフローラルディップ(floral dip)方法を使用した(Steven J.C.and Andrew F.B.The Plant Journal,1998年,第16(6)巻,735−743頁)。形質転換植物を製造するために、シロイヌナズナをMS培地で育てて土に移した後、花軸が延びてくると2回切って状態が良い時、シロイヌナズナの地上に出た部分を切り捨てた。
【0049】
pBΙ121::AtBG1ベクターで形質転換させたアグロバクテリウムを、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエクストラクト、0.5%NaCl)に安定期(stationary phase)まで育てて、遠心分離で回収して接種培地(5%スクロース 、0.05%Silwet L−77(Osi Specialties社))に再懸濁(resuspension)した。懸濁液のOD値が0.8になると、切って準備しておいたシロイヌナズナを懸濁液に逆に浸けて3〜5秒間やわらかく掻きまぜた後、シロイヌナズナを取り出してプラスチックトレーに移した。シロイヌナズナに透明なプラスチックドーム(dome)をかぶせて湿度が維持されるようにしたままで闇の中で、12〜24時間培養してそれから形質転換植物を修得した。
【0050】
<実施例2>多様なストレスによる形質転換シロイヌナズナの変化観察
<2−1>多様なストレスによるAtBG1遺伝子の発現分析
本発明者等は、AtBG1の発現がストレスによって誘導されるのかどうか確認するために、前記形質転換シロイヌナズナに多様な全体RNAを抽出して環境ストレスを加えた後、これをノーザンブロットで分析してAtBG1遺伝子の発現を測定した。
【0051】
詳細には、高濃度のNaCl処理のために、150mMのNaClを加え、低温ストレスを加えるために植物をMSプレートで2週間4℃で培養し、脱水処理のためにはプレートに蓋をしないまま培養した。抽出した全体RNAに、AtBG1、Gluc(AF082157)及びpsr3.1(U72153)cDNAをプローブ(probe)でノーザンブロットを実施した。プローブに使用したGluc(AF082157)とpsr3.1(U72153)遺伝子のcDNAは、配列番号4で表される正方向プライマーと配列番号5で表される逆方向プライマーを使用して、全体cDNAライブラリーを鋳型でPCRを実施して得たものである。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で1秒及び72℃で1分間、50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。
【0052】
ノーザンブロット結果、AtBG1遺伝子が導入された植物は、NaClストレスによってAtBG1の発現が誘導された一方、ベータグルコシダーゼ同族体をコードするAtBG1以外の遺伝子(Leah R.等,J Biol.Chem.,1995年,第270巻,15−789頁;Malboobi M.,and Lefebvre D.D.,Plant Mol.Biol.,1997年,第34巻,57頁)であるGlucとpsr3.1は、環境ストレスによって発現が誘導されなかった(図2)。したがって、他のベータグルコシダーゼ同族体と異なり、AtBG1遺伝子だけが唯一に植物でストレス抵抗性を示すようにする遺伝子であることが分かる。
【0053】
<2−2>多様なストレスに対する形質転換シロイヌナズナの表現型観察
本発明者等は、AtBG1遺伝子に形質転換されたシロイヌナズナが多様な環境ストレスに対してどんな表現型を示すのか確認してみた。
【0054】
詳細には、AtBG1遺伝子で形質転換されたシロイヌナズナであるT1(transformant 1)、T2(transformant 2)及びT3(transformant 3)と対照区に使用する空のベクター(empty vector)であるpBΙ121で形質転換されたシロイヌナズナの全体RNAを得て、AtBG1cDNAをプローブでノーザンブロットを実施した結果、空のベクター(empty vector)で形質転換されたシロイヌナズナを除いたT1、T2及びT3で、AtBG1遺伝子が正常に発現されることを確認した(図3)。
【0055】
この中からT1を選んで10日間土で培養した後、4日間毎日2時間ずつ200mMのNaCl溶液を吸収させる方法で、高濃度のNaClを処理した。根成長は、新しいMSプレートに移してから7日後に測定した(n=50)。
【0056】
その結果、空のベクター(empty vector)であるpBΙ121で形質転換されたシロイヌナズナは、高濃度のNaClを加えた時枯死したが、AtBG1で形質転換されたT1は、高濃度のNaClにも正常に成長した(図4)。
【0057】
根成長の場合、NaClの濃度を漸次に高めた時、AtBG1で形質転換されていない野生型は根成長率が漸次減少したが、AtBG1で形質転換されたT1、T2及びT3は一程濃度(100mM)まで根成長率が増加した(図5)。
【0058】
発現パターンをさらに詳しく調べるために、AtBG1上流をベータグルクロニダーゼ(β−glucuronidase、GUS)暗号化部位の前に位置させた。詳細には、pBΙ121ベクター内35S:GUSから35Sプローモーターを制限酵素で切り取って、配列番号9と10で表されるプライマーを使用して鋳型であるクロモゾーマル(chromosomal)DNAを準備してPCRを実施した。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して、前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で1分間、50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。前記方法で修得したAtBG1上流プローモーター1.7Kbを修得して、これをベクター内に挿入、すなわちAtBG1遺伝子をGUSで標識して前記実施例の方法と同様に前記作製物を植物に導入した。既存論文の方法によって(Hwang I and Sheen J.Nature.,2001年,第413(6854)巻,383−9頁)基質であるX−グルクロナイド(Glucuronide)(Rose Scientific Ltd)を使用して、GUSの活性度を測定した結果、形質転換植物でGUS発現は低く、放射葉(rosette)と茎葉(cauline leaves)の倍数組職(hydathode)に特異的に発現されることを確認した(図6)。また、2週間育てた前記形質転換植物に2週間水を与えない方法で脱水ストレスを加えた後、X−Glucuronideを基質でGUSの活性度を測定した結果、倍数組職、放射葉と茎葉の脈管構造でGUSが標識されたAtBG1の発現が強く誘導された。これは、AtBG1が日照り反応に関与するということを示す(図6)。
【0059】
<実施例3>「突然変異atbg1」の表現型観察
<3−1>「突然変異atbg1」の表現型観察
本発明者等は、AtBG1の生物学的役割を調べるために、AtBG1遺伝子にT−DNAが挿入された「突然変異atbg1」が、多様な環境ストレスにどんな表現型を示すのか観察した。
【0060】
詳細には、米国サルク研究所(SALK institute)で構築したT−DNA挿入突然変異株の中で、AtBG1の9番目イントロンにT−DNAが挿入された突然変異(図7A)を修得した後、前記突然変異のAtBG1遺伝子でT−DNAが挿入されたかどうかをもう一度確認した。配列番号6で表される左側境界プライマーと配列番号7で表される正方向プライマー、配列番号8で表される逆方向プライマーでPCRを実施した。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で1秒及び72℃から1分間、50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。その結果、410bpのPCR産物が生成されたことを観察することにより、T−DNAが挿入されたことを確認した(図7B)。
【0061】
また、配列番号25で表されるAtBG1−特異的な正方向プライマーと配列番号26で表される逆方向プライマーを使用して、前記「突然変異atbg1」の全体RNAに対するRT−PCRを実施した。その結果、図8に示したようにAtBG1転写体(mRNA)がないことを確認し、以後の実験に使用した。
【0062】
野生型と前記T−DNAが挿入された「突然変異atbg1」を、発芽後、1週(1w)、2週(2w)(図9)及び4週(図10)後に観察した結果、野生型と異なり葉が黄色くて背が低かった。
【0063】
1週間育った「突然変異atbg1」に外部からABAを注入して3日間培養した結果、注入するABAの量が増えるほど、黄色かった葉が正常と同じ緑色に変ってきた(図12)。
【0064】
<3−2>「突然変異atbg1」の気孔大きさ測定
本発明者等は、AtBG1の生物学的役割を調べるためのまた他の方法として、「突然変異atbg1」の葉にある気孔の大きさ変化を測定した。
【0065】
詳細には、20℃、70%の相対湿度で光16時間、闇8時間の周期で培養した後、12時と24時に葉にある気孔の大きさを測定した(n=150)(図13)。その結果、正常な植物では気孔が昼に開いて夜には閉まる一方、「突然変異atbg1」は夜にも昼のように気孔が閉まらなかった。
【0066】
また、外部から注入されたABAが闇の中で気孔を閉めるのにどんな影響を与えるのか調べるために、23時にABA10mMと50mMをそれぞれ処理して、24時に気孔の大きさを測定した(図14)。対照区として、気孔が閉まる時にNO合成酵素を抑制することが知られているNAME(L−nitroargininemethylester)100ulを4時から10時間処理して、24時に気孔の大きさを測定した。
【0067】
その結果、野生型にNAMEを処理すると夜にも気孔が閉まらない一方、「突然変異atbg1」にABAを処理すると夜に気孔が閉まることが誘導された。これは、夜に気孔が閉まることがABAによって調節されるということを示す(n=200、バー:標準誤差)。
【0068】
前記のように「突然変異atbg1」に外部ABAを添加すると正常の表現型を回復するということは、AtBG1遺伝子の突然変異によってAtBG1遺伝子が発現されず、ABAが媒介した反応に欠陥が生じたということを示す。
【0069】
<3−3>乾燥した環境で「突然変異atbg1」の表現型観察
本発明者等は、AtBG1の生物学的役割を調べるための最後の方法として、乾燥した環境時での「突然変異atbg1」の水分損失程度と枯死程度を観察した。
【0070】
詳細には、水分損失を比べるために、3時間20℃、10%の乾燥した相対湿度に置いておいた葉の重さを測定した(花芽が形成される前、短い茎に付いている葉であるロゼット葉20枚を全て測定した)。その結果、「突然変異atbg1」は、野生型に比べて水分損失量が1.5倍程度多いことが分かった(図15)。
【0071】
また、野生型と「突然変異atbg1」を土に植え代えて14日(14d)または21日(21d)間、水を与えないまま温室で20℃、70%の相対湿度の条件で培養した。その結果、野生型は脱水によって葉が黒っぽく変わった一方、「突然変異atbg1」は野生型よりさらに脱水が進んで大部分の葉が枯死した(図16)。
【0072】
したがって、「突然変異atbg1」は、野生型に比べて環境ストレスに対する抵抗力が弱化されたことを確認した。
【0073】
<3−4>遺伝子間相補性(complementation)を通じた検証実験
本発明者等は、前記の「突然変異atbg1」の表現型が確実にAtBG1遺伝子の突然変異による結果なのか検証するために、「突然変異atbg1」にAtBG1遺伝子を形質転換させてAtBG1遺伝子を過発現させた後、<実施例2>と同一実験を実施した。
【0074】
詳細には、ウイルスHA(hemagglutinin)で標識された野生型AtBG1cDNA(AtBG1:HA)を植物に形質転換させて、AtBG1が発現されるようにすることで、AtBG1遺伝子の突然変異による損失を相補(complementation)して、前記形質転換体を「遺伝子回復atbg1(rescued atbg1)」とした。
【0075】
「遺伝子回復atbg1」のタンパク質抽出物に対して、抗−HA抗体でウエスタンブロットを遂行した結果、図11に示したようにAtBG1タンパク質が発現されることを確認した。
【0076】
前記「遺伝子回復atbg1」に<実施例3>と同じ実験を実施した結果、発芽後、1週(1w)、2週(2w)(図9)及び4週(図10)後に野生型と類似に鮮かな緑色を示して背が高く、気孔開閉においても、野生型のように昼には気孔を開いて夜には気孔が閉まることを確認した(図13)。脱水実験では、野生型より水分損失が少なかく(図15)、乾燥した環境で21日間培養した結果、脱水によって葉が黒っぽく変わらないで正常によく育った(図16)。
【0077】
したがって、「突然変異atbg1」の表現型は、AtBG1遺伝子の突然変異によるものであることが検証された。
【0078】
<実施例4>AtBG1によるABA−GEの加水分解
<4−1>エライザ(ELISA)によるHPLCのABA分画定量
本発明者等は、AtBG1タンパク質がABAグルコシルトランスフェラーゼ(glucosyltransferase)によって生成されるABA−GEを加水分解することができるのかどうか確認した(Xu Z.J.等,Plant Physiol.,2002年,第129巻,1285頁)。
【0079】
詳細には、AtBG1:HA、AtBG1[E207Q]:HA、AtBG1[△C105]:HA及び対照区である空のベクター(empty vector)でシロイヌナズナを形質転換させた後、24時間経過後タンパク質抽出物を修得した。前記で、AtBG1[E207Q]:HAは、ベータグルコシダーゼの活性化部位である207番目塩基に挿入突然変異(substitution mutation)を有するもので(G. Davies and B.Henrissat,Structure,1995年,第3巻,853頁;Marana S.R.等,Biochim.Biophys.Acta,2001年,第1545巻,41頁)、AtBG1[△C105]は、C末端に105個のアミノ酸がない、欠失突然変異を有しているものである。
【0080】
抗HA抗体を使用して、これら遺伝子から発現されたタンパク質を免疫分離(immunopurification)した後(図17)、分離したタンパク質をABA−GE(APEX ORGANICS LTD.)とともに100mMシトラート緩衝溶液(pH5.5)で、37℃で一時間半反応させた。反応産物は、特定溶媒(40%メタノール、0.1Mアセト酸、10mg/lブチレートハイドロキシトルエン)であらかじめ満たされた(packing)カラム(RT250−4column、MERCK社)が具備されたHPLCで分離した。
【0081】
その結果、AtBG1:HAとAtBG1[207]:HA全てABA位置に新しいピークを作った(図18)。このピークに該当する分画を抗−ABA抗体(ABA−GEは認識することができない)を使用してエライザ(ELISA)で定量した。
【0082】
その結果、AtBG1[E207Q]:HAと反応させて排出されたABAの量は、野生型と反応させて排出されたABAの量に比べて80パーセント減少したが(図19)、これは、207番目塩基配列であるグルタミン酸が他のベータグルコシダーゼと同じく、この酵素の加水分解活性に重要であるということを示す(Davies G.and Henrissat B.,Structure,1995年,第3巻,853頁;Marana S.R.等,Biochim.Biophys.Acta,2001年,第1545巻,41頁)。一方、AtBG1[△C105]:HAやベクター対照区のタンパク質抽出物は、ABA−GEと反応させた時、ABAを生産しなかったが、これは、前記実験結果で「突然変異atbg1」のABA生産が減ったり初めから生成されない結果と一致する。したがって、AtBG1:HAがABA−GEを加水分解してABAを生成させるということが確認された。
【0083】
<4−2>種子内のABAのレベル確認
ABAは、他のどの部位よりも種子に多量含有されているので、前記実験結果をより確実なものにするために、本発明者等は、野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復したatbg1(rescued atbg1)」の種子にあるABAのレベルを測定した。
【0084】
詳細には、液体窒素を加えてつぶした種子から80%エチルアルコールに溶解される成分を抽出して、C18カラム(J.T.Baker社)が装着されたHPLCで、ABAピークに該当する分画を得た。これを抗−ABA抗体(Agdia社)を使用して、エライザ(ELISA)でABAを定量した。
【0085】
その結果、「突然変異atbg1」種子のABA含量は、野生型の約40パーセントである一方(図20)、「遺伝子回復したatbg1」種子のABA含量は、野生型含量の86パーセントから250パーセント範囲にかけて分布した。すなわち、「突然変異AtBG1種子」は、野生型に比べてABA含量が非常に低い一方、「遺伝子回復したatbg1」種子は、野生型と類似かまたは野生型より二倍以上多かった。また、「遺伝子回復したatbg1」種子のAtBG1:HA量を抗−HA抗体で確認した結果(図21)、HPLC結果定量されたABA量(図20)と分布が類似していた。すなわち、ABAの量とAtBG1タンパク質の量との間に密接な関連があることが明らかにされた。
【0086】
<4−3>発芽分析
本発明者等は、前記種子内のABAのレベルが発芽と関連があるのかどうか確認してみた。詳細には、野生型、「突然変異atbg1」及び「遺伝子回復したatbg1(rescued atbg1)」に対して発芽分析(assay)を実施した結果、「突然変異atbg1」の種子は、野生型より早く発芽した一方、「遺伝子回復したatbg1」の種子は、野生型より遅く発芽した(図22)。よって、「突然変異atbg1」が野生型よりさらに低いレベルのABAを含むということを確認した。これは、突然変異atbg1が損失したAtBG1タンパク質によって、ABA−GEがABAで加水分解されないが、自体的に活性化状態であるABA形態を少量含んでいることを示す。
【0087】
<実施例5>蛍光顕微鏡を使用した細胞内AtBG1の位置確認
<5−1>GFP標識されたAtBG1の蛍光顕微鏡象観察
アブシジン酸の不活性化された形態であるアブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)は、ERに存在する。ABA−GEを活性化形態であるABAで加水分解させるAtBG1は、C末端にREELという配列モチーフを有している。これは、ER位置(retention)配列であるKDELと非常に類似している(Davies G.and B.Henrissat,Structure,1995年,第3巻,853頁)。本発明者等は、これを根拠にAtBG1がABA−GEが存在するERに位置するのかどうか確認するために、AtBG1の蛍光顕微鏡象を観察した。
【0088】
詳細には、AtBG1の先行配列(leader sequence)下側(down stream)に緑蛍光タンパク質GFP(green fluorescence protein)を標識した組換え遺伝子であるGFP:AtBG1及びERシャペロン結合タンパク質であるBiP(immunoglobulin binding protein)に、赤色蛍光タンパク質であるREP(red fluorescence protein)を標識した組換え遺伝子であるBiP:RFPを、シロイヌナズナに形質転換させて蛍光顕微鏡で観察した(図24)。
【0089】
GFP:AtBG1は、GFP単独である時の拡散したパターン(図23のパネルa)とは異なり、ER構造を示すマルチプル(multiple)ネットワークパターンを作り(パネルc)、前記GFP:AtBG1のパターンは、ERシャペロン結合タンパク質であるBiP:RFPのパターン(パネルd)と重なった(パネルe)(Jin J.B.等,Plant Cell,2001年,第13巻,1511頁)。すなわち、AtBG1がERに存在するタンパク質であるBiPとともに存在して、これは、AtBG1がBiPと同じくERに位置するということを示す。
【0090】
AtBG1がERに位置するという、より直接的な証拠を捜すために、形質転換された植物で発現されるAtBG1:HAを抗−HA抗体を使用して免疫化学療法(immunohistochemically)で検査した結果、同様に、AtBG1:HAがBiP:RFP蛍光象と重なるER特異的なネットワークパターンを示した(図24)。
【0091】
<5−2>AtBG1の糖質化有無確認
本発明者等は、AtBG1がERに位置するということを、さらに確実にさせるために、AtBG1の糖質化(glycosylation)を検査した。タンパク質は、糖質化によってグリカン(glycan)が形成されて、ERに位置するタンパク質等は、このグリカンが、エンドHとPNGase Fの酵素作用によって切断される特性を有している(Kuznetsov G.等,J.Biol.Chem.,1993年,第268巻,2001頁)。チュニカマイシンは、前記糖質化を抑制する物質である。
【0092】
AtBG1:HAで形質転換された原形質体から得られたタンパク質抽出物を、エンドHとPNG酵素(PNGase)Fで処理したもの(チュニカマイシン非処理)、AtBG1に形質転換されたシロイヌナズナにチュニカマイシンを処理した原形質体から得られたタンパク質抽出物、AtBG1で形質転換されたシロイヌナズナにチュニカマイシンを処理しない原形質体から得られたタンパク質抽出物を、抗−HA抗体でブロッティングした。
【0093】
チュニカマイシン処理した原形質体から得られたAtBG1:HAは、チュニカマイシン処理しない原形質体から得られたものよりタンパク質の大きさが小さかったが、これは、チュニカマイシンによって糖質化が起きなくてグリカンが生成されなかったために現れた結果であると考えられる。また、エンドDとPNGase F処理してグリカンが切断されたAtBG1:HAが、チュニカマイシン処理したAtBG1:HAと大きさが同じなので、前記結果をさらに確実に知ることができる。すなわち、AtBG1:HAのグリカン部位は、エンドとPNGase全てにセンシティブしてグリカンが切断されることで、チュニカマイシン処理したAtBG1と大きさが同じになったことが分かる(図25)。この結果は、AtBG1がERに存在するということを明確に示す。
【0094】
<実施例6>脱水ストレス誘導重合によるAtBG1のABA−GE加水分解活性確認
前記実施例中、脱水させた「遺伝子回復したatbg1」植物でABA含量が相当量増加した原因を明らかにするため、本発明者等は、30%相対湿度条件下に10時間放置して脱水ストレスを加えた「遺伝子回復したatbg1」とABA−GEでABAを生産するように正常条件で育てた「遺伝子回復したatbg1」のマイクロゾームを比べた。植物のマイクロゾームは、ホモゲナイザー緩衝溶液(250mMスクロース 25mM HEPES pH7.0、10mM Mgcl2、1mM DTT)に植物を粉砕して3,000rpmで5分、14,000rpmで5分間それぞれ遠心分離後、上澄み液のみを得て、100,000gで超高速遠心分離機で分離して修得した。マイクロゾーム内のABA量は、前記で修得したマイクロゾームに100mMシトラート緩衝液 pH5.5溶液を添加して反応させた後、ABA抗体が入っているエライザ(ELISA)キット(Agdia社)を使用してABAを定量した。その結果、脱水ストレスを加えた「遺伝子回復したatbg1」のABA生産量が、正常条件で育てた「遺伝子回復したatbg1」のABA生産量より増加したことを確認した(図27)。
【0095】
前記とともに、本発明者等は、ストレスがAtBG1を活性化させる機序が何なのかを調べたが、以前の研究でベータグルコシダーゼの重合形態がモノマーやダイマーよりさらに高い酵素活性を示すという研究結果があったので(Kim and Kim、1998年)、本発明者等は、脱水ストレスがAtBG1を活性化させる機序も、やはりAtBG1重合によるものであるのか実験してみた。そのために、まず、二つ異なって標識されたAtBG1のAtBG1:HAとAtBG1:T7を植物に共形質導入して修得した原形質体から前記実施例と同じ方法で、タンパク質抽出物を修得して抗−T7抗体で共免疫沈降を実施して、抗−HA抗体でウエスタンブロットを実施してAtBG1分子がお互いに結合するのかどうか調べた。その結果、T7抗体で免疫沈降させた沈降物でHA標識されたAtBG1が存在するということが確認された(図35)。さらに、浸透圧ストレスを誘導する化合物質であるPEG8000を原形質体に最終10%PEG8000になるように12時間処理した時、沈降物内のHA標識されたAtBG1の量が約3倍増加した(densitometery softwareで測定、図35)。ゆえに、本発明者等は、AtBG1が浸透圧ストレス下で促進されるホモメリックな(homomeric)相互作用をすると結論付けた。
【0096】
このような可能性をより確実にするために、脱水ストレスを加えたり加えていない「遺伝子回復したatbg1」の葉を、粉砕緩衝溶液(50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、0.15M NaCl、0.02% NaN3、0.1%トリトンX−100)で粉砕した後、14,000gで5分間遠心分離して上澄み液、すなわちタンパク質抽出物を修得した。これをセファクリル(Sephacryl)S−300ハイレゾルーション(high−resolution)カラム(Amersham社)にローディングした後、タンパク質を溶離緩衝溶液(50mM sodium phosphate、pH7.0、0.15M NaCl、0.02% NaN3)を3.0ml分画体積当り0.5ml/分速度で流してやって所望するタンパク質分画を修得した。これを抗−HA抗体を使用してウエスタンブロットで分析した。
【0097】
その結果、対照群植物である脱水ストレスを加えていない「遺伝子回復したatbg1」で AtBG1:HAは、主にモノマーで存在し、若干の高分子形態も存在した(図30)。反対に脱水ストレスを加えた「遺伝子回復したatbg1」のAtBG1:HAは、高分子量の形態で存在し、ダイマーやモノマーでは存在しなかった(図28)。脱水ストレス処理植物でAtBG1の主なピークは、600kDa以上で現れるが、これはAtBG110−merに該当するもので、このような結果は、脱水ストレスがAtBG1の重合を誘導することを明確に示すものである。
【0098】
それとともに、本発明者等は、高分子及び低分子量形態のAtBG1の酵素活性を比べるため、前記実施例と同様にカラムを使用したゲルろ過方法で修得した高分子量分画と低分子量分画を抗−HA抗体で免疫沈降を実施した後、ABA量をエライザ(ELISA)で分析した結果、高分子量形態はABAの量、すなわちAtBG1活性が約4倍増加したが(図29)、これは、脱水ストレスを加えた植物のマイクロゾームで、ABA−GE加水分解活性増加によりABA量が増加したという結果と一致する(図27)。
【0099】
次に、AtBG1が脱水ストレス下で高分子量形態で組み合わされる速度を測定したが、そのために「遺伝子回復したatbg1」に脱水ストレスを加えた後、30分、1時間、3時間、時間別にタンパク質抽出物を修得して、ゲルろ過クロマトグラフィーで分画して抗−HA抗体を使用してウエスタンブロットで確認した。
【0100】
その結果、高分子量形態のAtBG1は、脱水30分後に現れて時間経過にしたがって漸次に量が増加して(図30及び図31)、脱水ストレス10時間後に、80%以上の高分子量AtBG1が観察された(図30及び図31)。ゆえに、AtBG1の高分子量形態への組み合わせは、脱水ストレスを加えるやいなや速く集中的に進行されたことを確認した。
【0101】
<実施例7>AtBG1の高分子量形態への重合パターン確認
植物の水分状態は、一日中で正常成長条件下で持続的に変化する。蒸発速度は、日が一番明るい日中に一番高いが、これは周期的に水分含量を低めたり一時的な水分欠乏を惹起する。したがって、本発明者等は、葉でABAレベルが日周期性を経験すると仮定した。特にさらに高い細胞内ABAレベルが、太陽光が一番明るい日中に観察され、低いABAレベルは夜に観察された。
【0102】
前記理論を確認するために本発明者等は、正常成長条件下で6時間ごとに野生型及び 「遺伝子回復したatbg1」植物の葉の上端部を切って80%メタノールを入れてすり鉢で粉砕後、4℃で3時間抽出後上澄液を回収してC−18カラム(BMS)通過させて凍結乾燥後、TBSバッファー(Agdia社)に溶かしてエライザ(ELISA)でABAレベルを測定した。その結果、葉のABAレベルは、午前8時〜午後2時の間で一番低く、一番高い濃度で日周期性を示した(図32)。野生型植物は、類似のABAパターンを示したが全体的に若干低い水準だった。
【0103】
ABAのこのような日周期性増加の原因を調べるために、本発明者等は、AtBG1転写体のみならず野生型植物で一日中多様な時間のデノボ(de novo)ABA生合成に重要なAtABA1、AtABA2及びAtNCED3転写体のレベルを測定した(図36)。詳細には、10mg全体RNA(Superscript RT,Gibco BRL)及び10ngの各々のプライマーを使用してすべて反応体積100ml(RT reaction mixture 5ml)で、94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で30秒で遺伝子レベルによって総15〜35周期を実施した。遺伝子特異的なプライマーは、各々、配列番号11及び12(AtBG1)、配列番号13及び14(ABA1)、配列番号15及び16(ABA2)、配列番号17及び18(NCED3)、配列番号19及び20(陽性対照群CCA1)、配列番号21及び22(陽性対照群TOC1)、配列番号23及び24(陰性対照群アクチン)を使用した。
【0104】
RT−PCT結果、成長条件下でAtBG1とAtABA2 mRNAレベルは、一日中一定に維持されたが(図36ないし図38)、これは植物が成長条件下では、脱水ストレスを経験しなかったことを示し、一日中ABA含量が増加することは、AtBG1発現増加によるものではないことを示す。一方、AtABA1転写体のレベルは、午後2時に約1.7倍増加する変化があり(図36及び図37)、AtNCED3 mRNA発現は、午後8時に1.8倍増加し、午前2時まで増加した状態で残っていたが、午前8時には基本レベルに戻った。前記結果は、AtABA1とAtNCED3 mRNAレベル全てがABAのように日周期性を有するということを意味するが、このようなmRNAレベルの変化パターンは、ABAレベルの変化パターンとは一致しないで、なおかつmRNAの変化程度は2倍よりさらに低かった。
【0105】
前記のように、デノボ(de novo)合成関連遺伝子の発現パターンが、ABAの発現パターンと違うということは、ABAのデノボ(de novo)合成が日中にABAレベルが増加することにほとんど関与しないことを示す。
【0106】
前記実験で、CCA1及びTOC1転写体濃度は、生体リズムに対して陽性対照群に使用し(Wang and Tobin,1998年;Strayer等,2000年)(図36及び図38)。アクチンは、生体リズムに対して陰性対照群に使用した。
【0107】
次に、本発明者等は、ABAレベルの日周期性がAtBG1の重合を通じた活性化によるものであるのかを実験した。
【0108】
詳細には、正常条件で育った「遺伝子回復したatbg1」から時間別に修得した全体タンパク質抽出物を、ゲルろ過カラムを使用して分画して抗−HA抗体を使用してウエスタンブロットで分析した。その結果、高分子量形態のAtBG1が日周期性を示したが(図33及び図34)、午後2時にレベルが最高であり、早く減少して午前8時に一番低かった。午後2時に全体AtBG1の半分が高分子量形態で存在し、一方午前8時には10%未満の高分子量形態のAtBG1が観察された。高分子量形態のAtBG1の濃度は、昼の間葉組職でABAの増加と相当な関連性があった。これは、AtBG1の重合を通じた活性化が日周期性の間、ABA含量の増加をもたらすということを示す。
【産業上の利用可能性】
【0109】
前記で詳しくみたように、本発明のAtBG1遺伝子が導入された形質転換植物は、植物内で発現されたAtBG1タンパク質がアブシジン酸(abscisic acid、ABA)を活性化させて低温、塩害、脱水のような多様な環境ストレスに抵抗性を有するので、農産物の生産性増大に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)のアミノ酸配列を他のベータグルコシダーゼ同族体(homolog)と整列して比べた結果を示した図である。
【図2−6】環境ストレスが、AtBG1の発現を誘導し、AtBG1遺伝子で形質転換された植物は、NaClストレス抵抗性が増加するということを示した図である。
【図2】一週間の間「野生型」シロイヌナズナに多様な化学的処理(低温、脱水、高濃度のNaCl処理)をした後、全体RNAを抽出して、AtBG1、AtGluc(AF082157)及びAtpsr3.1(U72153)のcDNAをプローブ(probe)にして、ノーザンブロットを実施した結果を示したゲル電気泳動写真である。
【図3】AtBG1遺伝子で形質転換させたシロイヌナズナの全体RNAを抽出してノーザンブロットを実施した結果を示したゲル電気泳動写真である。
【図4】AtBG1や空のベクター(empty pBΙ121)で形質転換させたシロイヌナズナを10日間、土で培養した後、4日間NaCl処理した結果を示した写真である。
【図5】MSプレートで4日間培養した植物を、高濃度のNaClを含んだプレートに移して根成長を測定したグラフ(n=50)である。
【図6】組職特異的なAtBG1の発現を示し、AtBG1プロモーターの調節下にGUSを含む形質転換植物を培養した後、1週間(1W)、2週間(2W)及び3週間(3W)後にX−Glucで染色した結果を示した写真である。
【図7】(A)は、T−DNAが挿入されたAtBG1突然変異遺伝子の概路図である。(B)は、T−DNAがAtBG1遺伝子に挿入された突然変異シロイヌナズナ(以下「突然変異atbg1」と略称する)のAtBG1遺伝子を分離して、AtBG1遺伝子特異的なプライマーでPCRを実施することにより、AtBG1にT−DNAが挿入される突然変異が起きたかどうかを検証したゲル電気泳動写真である。
【図8−16】「突然変異atbg1」と「突然変異atbg1」にAtBG1:HA遺伝子を形質転換させることにより遺伝子損失が回復したatbg1(rescued atbg1、以下「遺伝子回復したatbg1」と略称する)の表現型を示したものである。
【図8】「突然変異atbg1」にAtBG1遺伝子特異的なプライマーを使用して RT−PCRを実施することで、AtBG1転写体がないことを確認したゲル電気泳動写真である。
【図9−10】野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復したatbg1」を発芽後、1週(1w)または2週(2w)及び4週後に撮影した写真である。
【図11】「遺伝子回復したatbg1」に、抗−HA抗体(Roche社)を使用してウエスタンブロットを実施することで、AtBG1:HAが発現されることを確認した写真である。
【図12】「突然変異atbg1」にABAを注入することで野生型の表現型が再び現れることを示した写真である。
【図13】光16時間、闇8時間の周期で培養したシロイヌナズナの葉で昼と夜に気孔の大きさを測定し、その結果を示したグラフ(n=150、バー(bar)=標準誤差)である。
【図14】「突然変異atbg1」にABAを注入したり、気孔が閉まる時にNO合成酵素を抑制すると知られたNAMEを処理した後、植物の葉で昼と夜に気孔の大きさを測定して、その結果を示したグラフ(n=200、バー=標準誤差)である。
【図15】水分損失を比べるために、表示された時間、10%の乾燥した相対湿度で 20℃に置いておいた葉の重さを測定して、その結果を示したグラフである。
【図16】野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復したatbg1」を14日(14d)または21日(21d)間、水を与えないまま培養した結果を示した写真である。
【図17−22】AtBG1によるABA−GEの加水分解と、それによる植物内ABAレベルの変化を示した図である。
【図17】AtBG1:HA、AtBG1[E207Q]、AtBG1[△C105]、空のベクター(empty vector)で形質転換させた植物の原形質体を抗−HA抗体を使用し、免疫分離(immunopurification)した結果を示した写真である。
【図18】免疫分離されたAtBG1:HAタンパク質をABA−GEと適切な緩衝溶液で培養して、反応産物をHPLCで分離した結果を示したグラフである。
【図19】HPLCを実施して分離したABA分画を、抗−ABA抗体を使用してエライザ(ELISA)で測定した結果を示したグラフである。
【図20】野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復した(rescued)atbg1」の種子にあるABAのレベルを、抗−ABA抗体(Agdia社)を使用してエライザ(ELISA)で測定した結果を示したグラフである。
【図21】「遺伝子回復した(rescued)atbg1」にあるAtBG1:HAのレベルを、抗−HA抗体で確認した結果を示したグラフである。
【図22】野生型、「突然変異atbg1」及び「遺伝子回復した(rescued)atbg1」に対して発芽分析(assay)を実施したグラフである。
【図23−26】AtBG1の細胞内位置を示した図である。
【図23】AtBG1遺伝子をGFP遺伝子で標識した組換え遺伝子の概路図である。
【図24】ER標識子であるBip:RFPが発現されて細胞内ERの位置を示し、GFPは細胞質溶解タンパク質で細胞質を示した蛍光顕微鏡写真である。
【図25】AtBG1:HAとBiP:RFPの細胞内位置を示した蛍光顕微鏡写真である。
【図26】AtBG1:HAで形質転換されてチュニカマイシン処理しない原形質体から得られたタンパク質抽出物を、エンドHとPNG酵素(PNGase)Fで処理したサンプルと、AtBG1:HAで形質転換されてチュニカマイシン処理した原形質体から得られたタンパク質抽出物を、抗−HA抗体でブロッティングした写真である。
【図27−31】脱水によってマイクロゾームでAtBG1が早く重合されて ABA−GEの加水分解を促進することを示した図である。
【図27】脱水または脱水処理されない「遺伝子回復したatbg1」から修得されたマイクロゾーム分画のABA−GE加水分解活性を測定した結果を示した図である。
【図28】脱水ストレスによってAtBG1が重合されることを示した図である。
【図29】高分子量AtGB1のABA−GE加水分解活性を示した図である。
【図30−31】高分子量AtGB1の形成を測定した結果を示した図である。
【図32−34】ABAレベルに比例して日周期性で高分子量AtBG1が重合されることを示した図である。
【図32】「遺伝子回復したatbg1」でABAレベルの日周期性変化を示した図である。
【図33】一日中「遺伝子回復したatbg1」で修得したタンパク質抽出物中、AtBG1を分析した結果を示した図である。
【図34】高分子量AtBG1を測定した結果を示した図である。
【図35】PEG8000で浸透圧ストレスを加えた形質転換された原形質体から修得されたタンパク質抽出物を、抗−T7抗体で免疫沈降した結果を示した図である。
【図36−38】デノボ(de novo)ABA生合成経路に関連した遺伝子の発現分析に対する図である。
【図36】AtBG1及びデノボ(de novo)生合成関連遺伝子プライマーを使用して半−定量的なRT−PCRを実施した結果を示した図である。
【図37−38】時間帯別に発現レベルを測定した結果を示した図である。
【配列表フリーテキスト】
【0111】
配列番号1と2は、部分cDNAライブラリーからシロイヌナズナ遺伝子であるAtBG1を分離するために使用したプライマー配列である。
【0112】
配列番号3は、AtBG1遺伝子の配列である。
【0113】
配列番号4と5は、全体cDNAライブラリーから使用されたGluc(AF082157)とpsr3.1(U72153)遺伝子を修得するために使用したプライマー配列である。
【0114】
配列番号6、7及び8は、AtBG1遺伝子でT−DNAが挿入されたかどうかを確認するために使用したプライマー配列である。
【0115】
配列番号9と10は、AtBG1上流1.7kb部位を修得するために使用したプライマー配列である。
【0116】
配列番号11と12は、AtBG1特異的なプライマー配列である。
【0117】
配列番号13と14は、ABA1特異的なプライマー配列である。
【0118】
配列番号15と16は、ABA2特異的なプライマー配列である。
【0119】
配列番号17と18は、NCED3特異的なプライマー配列である。
【0120】
配列番号19と20は、陽性対照群CCA1特異的なプライマー配列である。
【0121】
配列番号21と22は、陽性対照群TOC1特異的なプライマー配列である。
【0122】
配列番号23と24は、陰性対照群アクチン特異的なプライマー配列である。
【0123】
配列番号25と26も、AtBG1特異的なプライマー配列である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)遺伝子の用途及び前記AtBG1遺伝子が導入された形質転換植物に関するもので、詳細には、植物内に導入されて発現したAtBG1タンパク質が、植物ホルモンの一種であるアブシジン酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させることにより、植物が多様な環境ストレスに対する抵抗性を有するようにするAtBG1遺伝子の用途及び、前記AtBG1遺伝子が導入されてストレスに抵抗性を有する形質転換植物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アブシジン酸(abscisic acid、ABA)は、植物ホルモンの一種で、種子休眠、発芽そして環境ストレスに対する適応反応を含んだ多様な生理学的過程で重要な役割をする(Finkelstein R.R.等,Plant Cell,2002年,第14巻,515頁;J.K.Zhu.Annu Rev Plant Biol.,2002年,第53巻,247頁;Zeevaart J.A.D.and Creelman R.A.,Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol..1988年,第39巻,439頁;Leung J.and Giraudat J.Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol.,1998年,第49巻,199頁)。ABAは、ほとんど同時にF.T.エジコートとP.F.ウェオイング、二つのグループの研究陣によって発見されたが、十分に熟していない果実の落果を研究したF.T.エジコートの研究グループは、木花の果実から落葉促進物質であるアブシスIIを分離し、木の芽の冬休眠を研究していたP.F.ウェオイングの研究グループは、カバノキの種類であるケカンバ(Betula Pubescence)の葉から休眠誘導物質を分離した後、ドルミン(dormin)と名付けた。1965年にドルミンとアブシスIIが同一物質であることが確認されて、アブシジン酸(abscisic acid、以下ABAと略称する)という名称に統一された。
【0003】
ABAは、休眠中の種子、木の芽、球根などに多量含有されていて、普通発芽の進行につれて含量が減少する。また、ABAは、葉の気孔を閉めるようにする作用をするが、植物が水分欠乏状態になれば、ABA合成が活発になってこれにより葉の気孔が閉まって植物から水分が損失されることを防止する。実際に、フラッカ(flacca)というトマトの突然変異種は、正常植物と比べてABA合成が少なく起きるため気孔が閉まらない。
【0004】
細胞内に存在するABAのレベルは、生理的で環境的な変化に影響を受けて、生合成と分解との間の正確な均衡によって量が調節される。デノボ生合成(de novo protein synthesis)は、ABAレベルの増加に寄与するが、酸化や不活性形態に結合することで現れるABAの分解でそのレベルが減少される(Zeevaart J.A.D.and R.A.Creelman,Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol..1988年,第39巻,439頁;Leung J.and Giraudat J.,Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol.1998年,第49巻,199頁;Cutler A.J.and Krochko J.E.Trends in Plant Science、1999年,第4巻,472頁;Qin X.and Zeevaart J.A..Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1999年,第96巻,15354頁)。
【0005】
低いABAレベルは、早い発芽、枯死そして環境ストレスに対して敏感度が増加するような多様な生理学的欠陥を示めす(Cutler A.J.and Krochko J.E.,Trends in Plant Science,1999年,第4巻,472頁;Koornneef M.等,Theor.Appl.Genet.1982年,第61巻,385頁;Rock C.D.and Zeevaart J.A.,Proc. Natl.Acad.Sci.USA.,1991年,第88巻,7496頁)。これは、合成と分解との間の均衡を通じてABAレベルを維持することが、多様な生理学的反応のために重要であることを示す。ABA分解の一番目経路は、シトクロムP470 CYC707Aによって不安定な8’ハイドロキシABAを作るハイドロキシレーションが起きることだが、この不安定な中間物質は、自然発生的な異性体化(isomerization)によって易しくファゼイン酸(phaseic acid)に転換される(Zeevaart J.A.D.and Creelman R.A.,Ann.Rev.Plant Physiol.、1988年,第39巻,439頁;T.Kushiro等,EMBO J.,2000年,第23巻,1647頁)。
【0006】
ABAレベルが低くなるもう一つの経路は、ABAがグルコースと結合することであるが、この反応は、グルコシルトランスフェラーゼ(glucosyl transferase)によって媒介されて、ABAグルコースエステル(ABA−GE)が生成される反応である(Cutler A.J.and Krochko J.E.,Trends in Plant Science、1999年,第4巻,472頁;Walton D.C.and Li Y.,in Plant Hormones:Physiology,Biochemistry and Molecular Biology,140−157頁;Xu Z.J.等,Plant Physiol.,2002年,第129巻,1285頁)。このように結合したABA−GE分子は、液胞やアポプラスチックスペース(apoplastic space)に運搬されるが(Kaiser W.等,J. Plant Physiology,1985年,第119巻,237頁;Dietz K.J.等,J.Exp.Botany,2000年,第51巻,937頁)これは、保存や保管のための形態であるとは考えられていない。
【0007】
本発明では、ベータグルコシダーゼ(β−glucosidase)の一種であるAtBG1が、ERで伝達されるABA−GEをABA形態に加水分解させて、脱水ストレス下で低分子量AtBG1の早い重合を通じて、細胞内ABA含量を増加させるということを確認した。AtBG1遺伝子にT−DNAが挿入された突然変異シロイヌナズナ(以下「突然変異atbg1」と略称する)では、減少さしたABAレベルと気孔閉鎖の欠陥、葉緑体不足による黄色い葉及び非生物学的ストレスに敏感な表現型をみせた。反対にAtBG1遺伝子を過発現させる形質転換されたシロイヌナズナは、対照区の発現量の2.5倍のABAを蓄積させて環境ストレスに対してさらに強い抵抗性を示した。
【0008】
したがって、本発明者らは、前記AtBG1遺伝子を使用して塩害、冷害、脱水を含む多様な環境ストレスに抵抗性を有する植物を製造することができることを確認することにより本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、植物が多様な環境ストレスに対する抵抗性を有するようにする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、植物に導入することにより対象植物が環境ストレスに対する抵抗性を有するようにする、AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)または、その変異体をコードする遺伝子の用途を提供する。
【0011】
また、本発明は、AtBG1またはその変異体をコードする遺伝子が導入されて環境ストレスに抵抗性を有する形質転換植物を提供する。
【0012】
また、本発明は、植物内ABAの濃度を増加させることで、植物が環境ストレスに抵抗性を有する植物を生産する方法を提供する。
【0013】
併せて、本発明は、AtBG1遺伝子またはAtBG1タンパク質を導入して植物にストレス抵抗性を付与する方法を提供する。
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明は、植物に導入することで対象植物が環境ストレスに対する抵抗性を有するようにする、AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)またはその変異体をコードする遺伝子の用途を提供する。
【0016】
アブシジン酸(abscisic acid、ABA)は、植物ホルモンの一種で、種子休眠、発芽そして環境ストレスに対する適応反応を含んだ多様な生理学的過程で重要な役割をする。植物内でABAのレベルが低ければ、早い発芽、枯死のような多様な突然変異表現型が現れる。ABAレベルが低くなる経路の一つは、ABAがグルコシルトランスフェラーゼによって不活性形態であるABAグルコースエステル(ABA−GE)に変化することであるが、本発明ではシロイヌナズナのベータグルコシダーゼ同族体(homolog)であるAtBG1がABA−GEをABA形態に変化させて、ABAレベルを高めることにより植物が環境ストレスに抵抗性を有するようにするということを確認した。前記ストレスは、高温、塩害、乾燥、公害、病源菌、傷、低温、過多な光条件、オゾン、除草剤、過多なUV露出及び浸透圧衝撃(osmotic shock)を含む。
【0017】
まず、多様な環境ストレスによってAtBG1遺伝子が発現されるのかどうかを確認するために、シロイヌナズナに高濃度のNaCl、低温、脱水のような多様な環境ストレスを加えた後、AtBG1遺伝子の発現有無を確認した。その結果、AtBG1遺伝子で形質転換された植物は、NaClストレスによってAtBG1の発現が誘導された一方、他のベータグルコシダーゼ同族体をコードする遺伝子であるGlucとpsr3.1は、発現が誘導されなかった(図2)。これは、ベータグルコシダーゼ同族体の中でAtBG1遺伝子だけが、植物がストレス抵抗性を有するようにするということを示している。
【0018】
本発明者等は、AtBG1が植物に環境ストレスに対する抵抗性を示すようにするのかどうかを調べる間接的な方法として、AtBG1遺伝子にT−DNAが挿入された「突然変異atbg1」がどんな表現型を示すのか観察した。その結果、野生型と異なり葉が黄色くて背が低く(図9及び図10)、正常な植物では気孔は昼に開かれて夜には閉まる一方、「突然変異atbg1」は夜にも昼のように気孔が閉まらなかった(図13)。乾燥した環境時に野生型に比べて水分損失量が、1.5倍程度多く(図15)、脱水もひどく起きて大部分の葉が枯死した(図16)。
【0019】
したがって、「突然変異atbg1」は、AtBG1タンパク質の欠乏によって環境ストレスに対する抵抗力が弱化したことを確認した。
【0020】
本発明者等は、前記の「突然変異atbg1」に再びAtBG1遺伝子を導入したシロイヌナズナ(以下、「遺伝子回復atbg1」と略称する)に前記の「突然変異atbg1」に対する実験と同一実験を実施することにより、前記実験結果で示された「突然変異atbg1」の表現型が、AtBG1遺伝子の突然変異による結果なのかを検証した。
【0021】
その結果、「遺伝子回復atbg1」は、発芽後1週(1w)、2週(2w)(図9)及び4週(図10)後に、野生型と類似な鮮やかな緑を示して背が高く、気孔開閉においても野生型のように昼には気孔が開かれて夜には気孔が閉まることを確認した(図13)。また、脱水実験では、野生型より水分損失が少なく(図15)、乾燥した環境で21日間培養した結果、脱水によって葉が黒っぽく変わる表現型が現れないで正常によく育った(図16)。
【0022】
したがって、「突然変異atbg1」にAtBG1遺伝子を再導入して野生型のような表現型を回復したことから、「突然変異atbg1」の表現型の変化がAtBG1遺伝子の突然変異によるものであることを検証した。
【0023】
AtBG1遺伝子が暗号化するAtBG1タンパク質は、植物内アブシジン酸(abscisic acid)の濃度を増加させることで、環境ストレスに対する抵抗性を示す。
【0024】
本発明の好ましい実施例では、AtBG1タンパク質がABAグルコシルトランスフェラーゼ(glucosyltransferase)によって生成されるABA−GEを加水分解することができるのかどうかを確認するために、正常なAtBG1タンパク質及び正常なAtBG1遺伝子に置換や欠失突然変異を起こした突然変異AtBG1タンパク質を、ABA−GE(abscisic acid glucosyl ester)とともに反応させてHPLCを実施した後、ABA分画を定量した。その結果、正常なAtBG1タンパク質と反応させた方でのみ多量のABAが観察され、突然変異AtBG1タンパク質と反応させた方ではABAが観察されなかったので(図17及び図18)、AtBG1遺伝子が暗号化するAtBG1タンパク質がABA−GEを加水分解してABAの濃度を増加させるということを確認した。
【0025】
「突然変異atbg1」にABAを導入すると、黄色かった葉が正常と同じ緑になり(図12)、夜に気孔が閉まることが誘導されるという実験結果(図14)もまた、AtBG1遺伝子によってABAが活性化すると植物がストレス抵抗性を示すということを示している。
【0026】
前記と共に、AtBG1がアブシジン酸の不活性形態であるABA−GEが存在する細胞内小器官であるERに存在するという観察結果(図23ないし図26)も、AtBG1がABA−GEを加水分解してABAに活性化させる反応を媒介するという事実を間接的に証明する。
【0027】
したがって、本発明は、植物内に導入して対象植物が環境ストレスに抵抗性を有するようにするAtBG1遺伝子及び他の植物のその相同の遺伝子の用途を提供する。本発明の遺伝子は、単独でまたは、ベクターに挿入して公知された植物形質転換方法によって植物内に導入することができる。すなわち、アグロバクテリウム媒介方法、遺伝子銃(gene gun)、PEGを使用した方法及び電気穿孔法(electroporation)など本発明が属する技術分野の当業者に知られた周知の方法を利用することができる。
【0028】
一方、変異体と言うのは、本来のAtBG1タンパク質のアミノ酸配列の中で一部アミノ酸に変異が存在するが、機能的には等価であるタンパク質を意味する。前記変異体は、同一種または他の種のAtBG1タンパク質相同体と構造的、生理学的機能が類似の自然的または人為的突然変異体を全て含む。
【0029】
また、本発明は、AtBG1またはその変異体をコードする遺伝子が導入されてストレス抵抗性を有する形質転換植物を提供する。
【0030】
本発明者等は、環境ストレスに抵抗性を有する形質転換植物を製造するために、AtBG1遺伝子を含む植物発現ベクターpBΙ121::AtBG1を製造し、それをアグロバックテリウム(LBA4404)に形質転換させて、2004年11月18日付けで韓国生命工学研究所遺伝子銀行(KCTC)に寄託した(受託番号:KCTC10729BP)。
【0031】
続いて、前記pBΙ121::AtBG1ベクターで形質転換させたアグロバクテリウムをフローラルディプ(floral dip)法を使用してシロイヌナズナを形質転換させて、形質転換植物を修得した。
【0032】
AtBG1遺伝子が導入された前記形質転換シロイヌナズナが、多様な環境ストレスに対してどんな表現型を示すのか確認してみた。その結果、形質転換されていない野生型は高濃度のNaClで枯死したが、AtBG1で形質転換されたシロイヌナズナは、正常に成長し(図4)、根成長の場合、NaClの濃度を漸次高めて処理した時、形質転換されていない野生型の根成長率は漸次に減少したが、形質転換されたシロイヌナズナは一定濃度まで根成長率が増加した(図5)。
【0033】
したがって、AtBG1が導入された形質転換植物は、高濃度のNaClのような環境ストレスに対して抵抗性を示すということが分かる。
【0034】
本発明には、AtBG1またはその変異体をコードする遺伝子を保有する、形質転換された植物細胞も含まれる。
【0035】
また、本発明の範囲には、前記遺伝子が導入されて環境ストレスに抵抗性を有する形質転換植物の子孫またはクローンである植物及び前記植物の種子、実、穂、塊茎、塊根、樹木、カルスまたは原形質体も含まれる。
【0036】
同時に、本発明は、植物内ABAの濃度を増加させることで、環境ストレスに対する抵抗性を有する植物を生産する方法を提供する。
【0037】
詳細には、前記方法は、I)AtBG1遺伝子/他の植物のその相同遺伝子または前記遺伝子を有するベクターを植物細胞に導入する工程;及び
II)前記植物細胞を組職培養して再分化させる工程を含むことができる。
【0038】
本発明者等は、AtBG1遺伝子を含むpBΙ121::AtBG1ベクターでアグロバクテリウムを形質転換させてフローラルディプ(floral dip)を使用してシロイヌナズナで形質転換させて形質転換植物を修得した。前記形質転換植物は、AtBG1遺伝子の発現産物によって活性化したABAの濃度が増加されるので、多様なストレスに対する抵抗性を示した。
【0039】
同時に、本発明は、AtBG1遺伝子またはAtBG1タンパク質を導入して、植物にストレスに対する抵抗性を付与する方法を提供する。
【0040】
前記のように、AtBG1は、アブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)を加水分解してストレス耐性物質であるアブシス酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させて、植物にストレス抵抗性を付与する。これは、AtBG1の重合によって促進される。
【0041】
本発明者等は、AtBG1−過多発現植物を通じて、脱水ストレス条件下で脱水−誘導重合によるAtBG1の早い活性化は、ABAレベルを増加させる機序で(図27ないし図31参照)、植物は正常成長条件下で日周期性ABA増加を調節するために、AtBG1重合を通じてABA−GEをABAで活性化させることを確認した(図32ないし図34及び図36ないし図38参照)。これは、植物が信号伝達経路を通じないでABA活性化プール(active pool)調節のためにAtBG1を使用することを示す。AtBG1によってABA−GEからABAを生産することは、長くて複雑なデノボ(de novo)生合成経路に比べて、非常に単純でストレスの強度と持続時間によって早くABA活性化プール(active pool)を調節することができる。したがって、ABA−GEからABAを修得する経路が、植物が脱水ストレスに対する抵抗性を示すために使用される理由であると判断される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。
【0043】
但し、下記実施例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>形質転換シロイヌナズナの製造
<1−1>cDNAライブラリーからAtBG1遺伝子分離
本発明者等は、浸透圧ストレス中の一つである高濃度のNaClによって発現が誘導される遺伝子が含まれた「部分cDNAライブラリー」(subtraction cDNA library)(Pih K.T.等,Mol.Cells,1997年,第7巻,567頁)を修得した。それから、ベータグルコシダーゼの同族体(homolog)(図1)中の一つをコードするシロイヌナズナ遺伝子であるAtBG1を分離した。配列番号1で表される正方向プライマーと配列番号2で表される逆方向プライマーを使用した。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で1秒及び72℃で1分間50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。
【0045】
<1−2>植物形質転換用発現ベクターの製造
本発明者等は、AtBG1遺伝子で形質転換されたシロイヌナズナを製造するために、まずAtBG1遺伝子を発現ベクターにクローニングした。
【0046】
詳細には、CaMV35Sプローモーターを有していてカナマイシン(kanamycin)抵抗性を有する発現ベクターpBΙ121(Pharmacia LKB Biotechnology)のGUS部位を、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有するAtBG1遺伝子で置換して、形質転換用発現ベクターpBΙ121::AtBG1を製造した。前記pBΙ121::AtBG1ベクターは、アグロバクテリウムに導入して前記アグロバクテリウム形質転換体LBA4404を、2004年11月18日付けで韓国生命工学研究所遺伝子銀行に寄託した(受託番号:KCTC10729BP)。
【0047】
<1−3>形質転換シロイヌナズナの製造
本発明者等は、前記実施例<1−2>で製造したAtBG1遺伝子を含む発現ベクターをシロイヌナズナに形質転換させた。
【0048】
詳細には、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)を媒介にした形質転換方法の一つであるフローラルディップ(floral dip)方法を使用した(Steven J.C.and Andrew F.B.The Plant Journal,1998年,第16(6)巻,735−743頁)。形質転換植物を製造するために、シロイヌナズナをMS培地で育てて土に移した後、花軸が延びてくると2回切って状態が良い時、シロイヌナズナの地上に出た部分を切り捨てた。
【0049】
pBΙ121::AtBG1ベクターで形質転換させたアグロバクテリウムを、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエクストラクト、0.5%NaCl)に安定期(stationary phase)まで育てて、遠心分離で回収して接種培地(5%スクロース 、0.05%Silwet L−77(Osi Specialties社))に再懸濁(resuspension)した。懸濁液のOD値が0.8になると、切って準備しておいたシロイヌナズナを懸濁液に逆に浸けて3〜5秒間やわらかく掻きまぜた後、シロイヌナズナを取り出してプラスチックトレーに移した。シロイヌナズナに透明なプラスチックドーム(dome)をかぶせて湿度が維持されるようにしたままで闇の中で、12〜24時間培養してそれから形質転換植物を修得した。
【0050】
<実施例2>多様なストレスによる形質転換シロイヌナズナの変化観察
<2−1>多様なストレスによるAtBG1遺伝子の発現分析
本発明者等は、AtBG1の発現がストレスによって誘導されるのかどうか確認するために、前記形質転換シロイヌナズナに多様な全体RNAを抽出して環境ストレスを加えた後、これをノーザンブロットで分析してAtBG1遺伝子の発現を測定した。
【0051】
詳細には、高濃度のNaCl処理のために、150mMのNaClを加え、低温ストレスを加えるために植物をMSプレートで2週間4℃で培養し、脱水処理のためにはプレートに蓋をしないまま培養した。抽出した全体RNAに、AtBG1、Gluc(AF082157)及びpsr3.1(U72153)cDNAをプローブ(probe)でノーザンブロットを実施した。プローブに使用したGluc(AF082157)とpsr3.1(U72153)遺伝子のcDNAは、配列番号4で表される正方向プライマーと配列番号5で表される逆方向プライマーを使用して、全体cDNAライブラリーを鋳型でPCRを実施して得たものである。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で1秒及び72℃で1分間、50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。
【0052】
ノーザンブロット結果、AtBG1遺伝子が導入された植物は、NaClストレスによってAtBG1の発現が誘導された一方、ベータグルコシダーゼ同族体をコードするAtBG1以外の遺伝子(Leah R.等,J Biol.Chem.,1995年,第270巻,15−789頁;Malboobi M.,and Lefebvre D.D.,Plant Mol.Biol.,1997年,第34巻,57頁)であるGlucとpsr3.1は、環境ストレスによって発現が誘導されなかった(図2)。したがって、他のベータグルコシダーゼ同族体と異なり、AtBG1遺伝子だけが唯一に植物でストレス抵抗性を示すようにする遺伝子であることが分かる。
【0053】
<2−2>多様なストレスに対する形質転換シロイヌナズナの表現型観察
本発明者等は、AtBG1遺伝子に形質転換されたシロイヌナズナが多様な環境ストレスに対してどんな表現型を示すのか確認してみた。
【0054】
詳細には、AtBG1遺伝子で形質転換されたシロイヌナズナであるT1(transformant 1)、T2(transformant 2)及びT3(transformant 3)と対照区に使用する空のベクター(empty vector)であるpBΙ121で形質転換されたシロイヌナズナの全体RNAを得て、AtBG1cDNAをプローブでノーザンブロットを実施した結果、空のベクター(empty vector)で形質転換されたシロイヌナズナを除いたT1、T2及びT3で、AtBG1遺伝子が正常に発現されることを確認した(図3)。
【0055】
この中からT1を選んで10日間土で培養した後、4日間毎日2時間ずつ200mMのNaCl溶液を吸収させる方法で、高濃度のNaClを処理した。根成長は、新しいMSプレートに移してから7日後に測定した(n=50)。
【0056】
その結果、空のベクター(empty vector)であるpBΙ121で形質転換されたシロイヌナズナは、高濃度のNaClを加えた時枯死したが、AtBG1で形質転換されたT1は、高濃度のNaClにも正常に成長した(図4)。
【0057】
根成長の場合、NaClの濃度を漸次に高めた時、AtBG1で形質転換されていない野生型は根成長率が漸次減少したが、AtBG1で形質転換されたT1、T2及びT3は一程濃度(100mM)まで根成長率が増加した(図5)。
【0058】
発現パターンをさらに詳しく調べるために、AtBG1上流をベータグルクロニダーゼ(β−glucuronidase、GUS)暗号化部位の前に位置させた。詳細には、pBΙ121ベクター内35S:GUSから35Sプローモーターを制限酵素で切り取って、配列番号9と10で表されるプライマーを使用して鋳型であるクロモゾーマル(chromosomal)DNAを準備してPCRを実施した。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して、前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で1分間、50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。前記方法で修得したAtBG1上流プローモーター1.7Kbを修得して、これをベクター内に挿入、すなわちAtBG1遺伝子をGUSで標識して前記実施例の方法と同様に前記作製物を植物に導入した。既存論文の方法によって(Hwang I and Sheen J.Nature.,2001年,第413(6854)巻,383−9頁)基質であるX−グルクロナイド(Glucuronide)(Rose Scientific Ltd)を使用して、GUSの活性度を測定した結果、形質転換植物でGUS発現は低く、放射葉(rosette)と茎葉(cauline leaves)の倍数組職(hydathode)に特異的に発現されることを確認した(図6)。また、2週間育てた前記形質転換植物に2週間水を与えない方法で脱水ストレスを加えた後、X−Glucuronideを基質でGUSの活性度を測定した結果、倍数組職、放射葉と茎葉の脈管構造でGUSが標識されたAtBG1の発現が強く誘導された。これは、AtBG1が日照り反応に関与するということを示す(図6)。
【0059】
<実施例3>「突然変異atbg1」の表現型観察
<3−1>「突然変異atbg1」の表現型観察
本発明者等は、AtBG1の生物学的役割を調べるために、AtBG1遺伝子にT−DNAが挿入された「突然変異atbg1」が、多様な環境ストレスにどんな表現型を示すのか観察した。
【0060】
詳細には、米国サルク研究所(SALK institute)で構築したT−DNA挿入突然変異株の中で、AtBG1の9番目イントロンにT−DNAが挿入された突然変異(図7A)を修得した後、前記突然変異のAtBG1遺伝子でT−DNAが挿入されたかどうかをもう一度確認した。配列番号6で表される左側境界プライマーと配列番号7で表される正方向プライマー、配列番号8で表される逆方向プライマーでPCRを実施した。PCR反応条件は、DNA重合酵素(Taq polymerase、Takara社)を使用して前記に記載したプライマー対と鋳型を94℃で5分間変性させて、94℃で30秒、50℃で1秒及び72℃から1分間、50回反応させて、72℃で10分間延長(extension)させて反応を終結した。その結果、410bpのPCR産物が生成されたことを観察することにより、T−DNAが挿入されたことを確認した(図7B)。
【0061】
また、配列番号25で表されるAtBG1−特異的な正方向プライマーと配列番号26で表される逆方向プライマーを使用して、前記「突然変異atbg1」の全体RNAに対するRT−PCRを実施した。その結果、図8に示したようにAtBG1転写体(mRNA)がないことを確認し、以後の実験に使用した。
【0062】
野生型と前記T−DNAが挿入された「突然変異atbg1」を、発芽後、1週(1w)、2週(2w)(図9)及び4週(図10)後に観察した結果、野生型と異なり葉が黄色くて背が低かった。
【0063】
1週間育った「突然変異atbg1」に外部からABAを注入して3日間培養した結果、注入するABAの量が増えるほど、黄色かった葉が正常と同じ緑色に変ってきた(図12)。
【0064】
<3−2>「突然変異atbg1」の気孔大きさ測定
本発明者等は、AtBG1の生物学的役割を調べるためのまた他の方法として、「突然変異atbg1」の葉にある気孔の大きさ変化を測定した。
【0065】
詳細には、20℃、70%の相対湿度で光16時間、闇8時間の周期で培養した後、12時と24時に葉にある気孔の大きさを測定した(n=150)(図13)。その結果、正常な植物では気孔が昼に開いて夜には閉まる一方、「突然変異atbg1」は夜にも昼のように気孔が閉まらなかった。
【0066】
また、外部から注入されたABAが闇の中で気孔を閉めるのにどんな影響を与えるのか調べるために、23時にABA10mMと50mMをそれぞれ処理して、24時に気孔の大きさを測定した(図14)。対照区として、気孔が閉まる時にNO合成酵素を抑制することが知られているNAME(L−nitroargininemethylester)100ulを4時から10時間処理して、24時に気孔の大きさを測定した。
【0067】
その結果、野生型にNAMEを処理すると夜にも気孔が閉まらない一方、「突然変異atbg1」にABAを処理すると夜に気孔が閉まることが誘導された。これは、夜に気孔が閉まることがABAによって調節されるということを示す(n=200、バー:標準誤差)。
【0068】
前記のように「突然変異atbg1」に外部ABAを添加すると正常の表現型を回復するということは、AtBG1遺伝子の突然変異によってAtBG1遺伝子が発現されず、ABAが媒介した反応に欠陥が生じたということを示す。
【0069】
<3−3>乾燥した環境で「突然変異atbg1」の表現型観察
本発明者等は、AtBG1の生物学的役割を調べるための最後の方法として、乾燥した環境時での「突然変異atbg1」の水分損失程度と枯死程度を観察した。
【0070】
詳細には、水分損失を比べるために、3時間20℃、10%の乾燥した相対湿度に置いておいた葉の重さを測定した(花芽が形成される前、短い茎に付いている葉であるロゼット葉20枚を全て測定した)。その結果、「突然変異atbg1」は、野生型に比べて水分損失量が1.5倍程度多いことが分かった(図15)。
【0071】
また、野生型と「突然変異atbg1」を土に植え代えて14日(14d)または21日(21d)間、水を与えないまま温室で20℃、70%の相対湿度の条件で培養した。その結果、野生型は脱水によって葉が黒っぽく変わった一方、「突然変異atbg1」は野生型よりさらに脱水が進んで大部分の葉が枯死した(図16)。
【0072】
したがって、「突然変異atbg1」は、野生型に比べて環境ストレスに対する抵抗力が弱化されたことを確認した。
【0073】
<3−4>遺伝子間相補性(complementation)を通じた検証実験
本発明者等は、前記の「突然変異atbg1」の表現型が確実にAtBG1遺伝子の突然変異による結果なのか検証するために、「突然変異atbg1」にAtBG1遺伝子を形質転換させてAtBG1遺伝子を過発現させた後、<実施例2>と同一実験を実施した。
【0074】
詳細には、ウイルスHA(hemagglutinin)で標識された野生型AtBG1cDNA(AtBG1:HA)を植物に形質転換させて、AtBG1が発現されるようにすることで、AtBG1遺伝子の突然変異による損失を相補(complementation)して、前記形質転換体を「遺伝子回復atbg1(rescued atbg1)」とした。
【0075】
「遺伝子回復atbg1」のタンパク質抽出物に対して、抗−HA抗体でウエスタンブロットを遂行した結果、図11に示したようにAtBG1タンパク質が発現されることを確認した。
【0076】
前記「遺伝子回復atbg1」に<実施例3>と同じ実験を実施した結果、発芽後、1週(1w)、2週(2w)(図9)及び4週(図10)後に野生型と類似に鮮かな緑色を示して背が高く、気孔開閉においても、野生型のように昼には気孔を開いて夜には気孔が閉まることを確認した(図13)。脱水実験では、野生型より水分損失が少なかく(図15)、乾燥した環境で21日間培養した結果、脱水によって葉が黒っぽく変わらないで正常によく育った(図16)。
【0077】
したがって、「突然変異atbg1」の表現型は、AtBG1遺伝子の突然変異によるものであることが検証された。
【0078】
<実施例4>AtBG1によるABA−GEの加水分解
<4−1>エライザ(ELISA)によるHPLCのABA分画定量
本発明者等は、AtBG1タンパク質がABAグルコシルトランスフェラーゼ(glucosyltransferase)によって生成されるABA−GEを加水分解することができるのかどうか確認した(Xu Z.J.等,Plant Physiol.,2002年,第129巻,1285頁)。
【0079】
詳細には、AtBG1:HA、AtBG1[E207Q]:HA、AtBG1[△C105]:HA及び対照区である空のベクター(empty vector)でシロイヌナズナを形質転換させた後、24時間経過後タンパク質抽出物を修得した。前記で、AtBG1[E207Q]:HAは、ベータグルコシダーゼの活性化部位である207番目塩基に挿入突然変異(substitution mutation)を有するもので(G. Davies and B.Henrissat,Structure,1995年,第3巻,853頁;Marana S.R.等,Biochim.Biophys.Acta,2001年,第1545巻,41頁)、AtBG1[△C105]は、C末端に105個のアミノ酸がない、欠失突然変異を有しているものである。
【0080】
抗HA抗体を使用して、これら遺伝子から発現されたタンパク質を免疫分離(immunopurification)した後(図17)、分離したタンパク質をABA−GE(APEX ORGANICS LTD.)とともに100mMシトラート緩衝溶液(pH5.5)で、37℃で一時間半反応させた。反応産物は、特定溶媒(40%メタノール、0.1Mアセト酸、10mg/lブチレートハイドロキシトルエン)であらかじめ満たされた(packing)カラム(RT250−4column、MERCK社)が具備されたHPLCで分離した。
【0081】
その結果、AtBG1:HAとAtBG1[207]:HA全てABA位置に新しいピークを作った(図18)。このピークに該当する分画を抗−ABA抗体(ABA−GEは認識することができない)を使用してエライザ(ELISA)で定量した。
【0082】
その結果、AtBG1[E207Q]:HAと反応させて排出されたABAの量は、野生型と反応させて排出されたABAの量に比べて80パーセント減少したが(図19)、これは、207番目塩基配列であるグルタミン酸が他のベータグルコシダーゼと同じく、この酵素の加水分解活性に重要であるということを示す(Davies G.and Henrissat B.,Structure,1995年,第3巻,853頁;Marana S.R.等,Biochim.Biophys.Acta,2001年,第1545巻,41頁)。一方、AtBG1[△C105]:HAやベクター対照区のタンパク質抽出物は、ABA−GEと反応させた時、ABAを生産しなかったが、これは、前記実験結果で「突然変異atbg1」のABA生産が減ったり初めから生成されない結果と一致する。したがって、AtBG1:HAがABA−GEを加水分解してABAを生成させるということが確認された。
【0083】
<4−2>種子内のABAのレベル確認
ABAは、他のどの部位よりも種子に多量含有されているので、前記実験結果をより確実なものにするために、本発明者等は、野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復したatbg1(rescued atbg1)」の種子にあるABAのレベルを測定した。
【0084】
詳細には、液体窒素を加えてつぶした種子から80%エチルアルコールに溶解される成分を抽出して、C18カラム(J.T.Baker社)が装着されたHPLCで、ABAピークに該当する分画を得た。これを抗−ABA抗体(Agdia社)を使用して、エライザ(ELISA)でABAを定量した。
【0085】
その結果、「突然変異atbg1」種子のABA含量は、野生型の約40パーセントである一方(図20)、「遺伝子回復したatbg1」種子のABA含量は、野生型含量の86パーセントから250パーセント範囲にかけて分布した。すなわち、「突然変異AtBG1種子」は、野生型に比べてABA含量が非常に低い一方、「遺伝子回復したatbg1」種子は、野生型と類似かまたは野生型より二倍以上多かった。また、「遺伝子回復したatbg1」種子のAtBG1:HA量を抗−HA抗体で確認した結果(図21)、HPLC結果定量されたABA量(図20)と分布が類似していた。すなわち、ABAの量とAtBG1タンパク質の量との間に密接な関連があることが明らかにされた。
【0086】
<4−3>発芽分析
本発明者等は、前記種子内のABAのレベルが発芽と関連があるのかどうか確認してみた。詳細には、野生型、「突然変異atbg1」及び「遺伝子回復したatbg1(rescued atbg1)」に対して発芽分析(assay)を実施した結果、「突然変異atbg1」の種子は、野生型より早く発芽した一方、「遺伝子回復したatbg1」の種子は、野生型より遅く発芽した(図22)。よって、「突然変異atbg1」が野生型よりさらに低いレベルのABAを含むということを確認した。これは、突然変異atbg1が損失したAtBG1タンパク質によって、ABA−GEがABAで加水分解されないが、自体的に活性化状態であるABA形態を少量含んでいることを示す。
【0087】
<実施例5>蛍光顕微鏡を使用した細胞内AtBG1の位置確認
<5−1>GFP標識されたAtBG1の蛍光顕微鏡象観察
アブシジン酸の不活性化された形態であるアブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)は、ERに存在する。ABA−GEを活性化形態であるABAで加水分解させるAtBG1は、C末端にREELという配列モチーフを有している。これは、ER位置(retention)配列であるKDELと非常に類似している(Davies G.and B.Henrissat,Structure,1995年,第3巻,853頁)。本発明者等は、これを根拠にAtBG1がABA−GEが存在するERに位置するのかどうか確認するために、AtBG1の蛍光顕微鏡象を観察した。
【0088】
詳細には、AtBG1の先行配列(leader sequence)下側(down stream)に緑蛍光タンパク質GFP(green fluorescence protein)を標識した組換え遺伝子であるGFP:AtBG1及びERシャペロン結合タンパク質であるBiP(immunoglobulin binding protein)に、赤色蛍光タンパク質であるREP(red fluorescence protein)を標識した組換え遺伝子であるBiP:RFPを、シロイヌナズナに形質転換させて蛍光顕微鏡で観察した(図24)。
【0089】
GFP:AtBG1は、GFP単独である時の拡散したパターン(図23のパネルa)とは異なり、ER構造を示すマルチプル(multiple)ネットワークパターンを作り(パネルc)、前記GFP:AtBG1のパターンは、ERシャペロン結合タンパク質であるBiP:RFPのパターン(パネルd)と重なった(パネルe)(Jin J.B.等,Plant Cell,2001年,第13巻,1511頁)。すなわち、AtBG1がERに存在するタンパク質であるBiPとともに存在して、これは、AtBG1がBiPと同じくERに位置するということを示す。
【0090】
AtBG1がERに位置するという、より直接的な証拠を捜すために、形質転換された植物で発現されるAtBG1:HAを抗−HA抗体を使用して免疫化学療法(immunohistochemically)で検査した結果、同様に、AtBG1:HAがBiP:RFP蛍光象と重なるER特異的なネットワークパターンを示した(図24)。
【0091】
<5−2>AtBG1の糖質化有無確認
本発明者等は、AtBG1がERに位置するということを、さらに確実にさせるために、AtBG1の糖質化(glycosylation)を検査した。タンパク質は、糖質化によってグリカン(glycan)が形成されて、ERに位置するタンパク質等は、このグリカンが、エンドHとPNGase Fの酵素作用によって切断される特性を有している(Kuznetsov G.等,J.Biol.Chem.,1993年,第268巻,2001頁)。チュニカマイシンは、前記糖質化を抑制する物質である。
【0092】
AtBG1:HAで形質転換された原形質体から得られたタンパク質抽出物を、エンドHとPNG酵素(PNGase)Fで処理したもの(チュニカマイシン非処理)、AtBG1に形質転換されたシロイヌナズナにチュニカマイシンを処理した原形質体から得られたタンパク質抽出物、AtBG1で形質転換されたシロイヌナズナにチュニカマイシンを処理しない原形質体から得られたタンパク質抽出物を、抗−HA抗体でブロッティングした。
【0093】
チュニカマイシン処理した原形質体から得られたAtBG1:HAは、チュニカマイシン処理しない原形質体から得られたものよりタンパク質の大きさが小さかったが、これは、チュニカマイシンによって糖質化が起きなくてグリカンが生成されなかったために現れた結果であると考えられる。また、エンドDとPNGase F処理してグリカンが切断されたAtBG1:HAが、チュニカマイシン処理したAtBG1:HAと大きさが同じなので、前記結果をさらに確実に知ることができる。すなわち、AtBG1:HAのグリカン部位は、エンドとPNGase全てにセンシティブしてグリカンが切断されることで、チュニカマイシン処理したAtBG1と大きさが同じになったことが分かる(図25)。この結果は、AtBG1がERに存在するということを明確に示す。
【0094】
<実施例6>脱水ストレス誘導重合によるAtBG1のABA−GE加水分解活性確認
前記実施例中、脱水させた「遺伝子回復したatbg1」植物でABA含量が相当量増加した原因を明らかにするため、本発明者等は、30%相対湿度条件下に10時間放置して脱水ストレスを加えた「遺伝子回復したatbg1」とABA−GEでABAを生産するように正常条件で育てた「遺伝子回復したatbg1」のマイクロゾームを比べた。植物のマイクロゾームは、ホモゲナイザー緩衝溶液(250mMスクロース 25mM HEPES pH7.0、10mM Mgcl2、1mM DTT)に植物を粉砕して3,000rpmで5分、14,000rpmで5分間それぞれ遠心分離後、上澄み液のみを得て、100,000gで超高速遠心分離機で分離して修得した。マイクロゾーム内のABA量は、前記で修得したマイクロゾームに100mMシトラート緩衝液 pH5.5溶液を添加して反応させた後、ABA抗体が入っているエライザ(ELISA)キット(Agdia社)を使用してABAを定量した。その結果、脱水ストレスを加えた「遺伝子回復したatbg1」のABA生産量が、正常条件で育てた「遺伝子回復したatbg1」のABA生産量より増加したことを確認した(図27)。
【0095】
前記とともに、本発明者等は、ストレスがAtBG1を活性化させる機序が何なのかを調べたが、以前の研究でベータグルコシダーゼの重合形態がモノマーやダイマーよりさらに高い酵素活性を示すという研究結果があったので(Kim and Kim、1998年)、本発明者等は、脱水ストレスがAtBG1を活性化させる機序も、やはりAtBG1重合によるものであるのか実験してみた。そのために、まず、二つ異なって標識されたAtBG1のAtBG1:HAとAtBG1:T7を植物に共形質導入して修得した原形質体から前記実施例と同じ方法で、タンパク質抽出物を修得して抗−T7抗体で共免疫沈降を実施して、抗−HA抗体でウエスタンブロットを実施してAtBG1分子がお互いに結合するのかどうか調べた。その結果、T7抗体で免疫沈降させた沈降物でHA標識されたAtBG1が存在するということが確認された(図35)。さらに、浸透圧ストレスを誘導する化合物質であるPEG8000を原形質体に最終10%PEG8000になるように12時間処理した時、沈降物内のHA標識されたAtBG1の量が約3倍増加した(densitometery softwareで測定、図35)。ゆえに、本発明者等は、AtBG1が浸透圧ストレス下で促進されるホモメリックな(homomeric)相互作用をすると結論付けた。
【0096】
このような可能性をより確実にするために、脱水ストレスを加えたり加えていない「遺伝子回復したatbg1」の葉を、粉砕緩衝溶液(50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、0.15M NaCl、0.02% NaN3、0.1%トリトンX−100)で粉砕した後、14,000gで5分間遠心分離して上澄み液、すなわちタンパク質抽出物を修得した。これをセファクリル(Sephacryl)S−300ハイレゾルーション(high−resolution)カラム(Amersham社)にローディングした後、タンパク質を溶離緩衝溶液(50mM sodium phosphate、pH7.0、0.15M NaCl、0.02% NaN3)を3.0ml分画体積当り0.5ml/分速度で流してやって所望するタンパク質分画を修得した。これを抗−HA抗体を使用してウエスタンブロットで分析した。
【0097】
その結果、対照群植物である脱水ストレスを加えていない「遺伝子回復したatbg1」で AtBG1:HAは、主にモノマーで存在し、若干の高分子形態も存在した(図30)。反対に脱水ストレスを加えた「遺伝子回復したatbg1」のAtBG1:HAは、高分子量の形態で存在し、ダイマーやモノマーでは存在しなかった(図28)。脱水ストレス処理植物でAtBG1の主なピークは、600kDa以上で現れるが、これはAtBG110−merに該当するもので、このような結果は、脱水ストレスがAtBG1の重合を誘導することを明確に示すものである。
【0098】
それとともに、本発明者等は、高分子及び低分子量形態のAtBG1の酵素活性を比べるため、前記実施例と同様にカラムを使用したゲルろ過方法で修得した高分子量分画と低分子量分画を抗−HA抗体で免疫沈降を実施した後、ABA量をエライザ(ELISA)で分析した結果、高分子量形態はABAの量、すなわちAtBG1活性が約4倍増加したが(図29)、これは、脱水ストレスを加えた植物のマイクロゾームで、ABA−GE加水分解活性増加によりABA量が増加したという結果と一致する(図27)。
【0099】
次に、AtBG1が脱水ストレス下で高分子量形態で組み合わされる速度を測定したが、そのために「遺伝子回復したatbg1」に脱水ストレスを加えた後、30分、1時間、3時間、時間別にタンパク質抽出物を修得して、ゲルろ過クロマトグラフィーで分画して抗−HA抗体を使用してウエスタンブロットで確認した。
【0100】
その結果、高分子量形態のAtBG1は、脱水30分後に現れて時間経過にしたがって漸次に量が増加して(図30及び図31)、脱水ストレス10時間後に、80%以上の高分子量AtBG1が観察された(図30及び図31)。ゆえに、AtBG1の高分子量形態への組み合わせは、脱水ストレスを加えるやいなや速く集中的に進行されたことを確認した。
【0101】
<実施例7>AtBG1の高分子量形態への重合パターン確認
植物の水分状態は、一日中で正常成長条件下で持続的に変化する。蒸発速度は、日が一番明るい日中に一番高いが、これは周期的に水分含量を低めたり一時的な水分欠乏を惹起する。したがって、本発明者等は、葉でABAレベルが日周期性を経験すると仮定した。特にさらに高い細胞内ABAレベルが、太陽光が一番明るい日中に観察され、低いABAレベルは夜に観察された。
【0102】
前記理論を確認するために本発明者等は、正常成長条件下で6時間ごとに野生型及び 「遺伝子回復したatbg1」植物の葉の上端部を切って80%メタノールを入れてすり鉢で粉砕後、4℃で3時間抽出後上澄液を回収してC−18カラム(BMS)通過させて凍結乾燥後、TBSバッファー(Agdia社)に溶かしてエライザ(ELISA)でABAレベルを測定した。その結果、葉のABAレベルは、午前8時〜午後2時の間で一番低く、一番高い濃度で日周期性を示した(図32)。野生型植物は、類似のABAパターンを示したが全体的に若干低い水準だった。
【0103】
ABAのこのような日周期性増加の原因を調べるために、本発明者等は、AtBG1転写体のみならず野生型植物で一日中多様な時間のデノボ(de novo)ABA生合成に重要なAtABA1、AtABA2及びAtNCED3転写体のレベルを測定した(図36)。詳細には、10mg全体RNA(Superscript RT,Gibco BRL)及び10ngの各々のプライマーを使用してすべて反応体積100ml(RT reaction mixture 5ml)で、94℃で30秒、50℃で30秒及び72℃で30秒で遺伝子レベルによって総15〜35周期を実施した。遺伝子特異的なプライマーは、各々、配列番号11及び12(AtBG1)、配列番号13及び14(ABA1)、配列番号15及び16(ABA2)、配列番号17及び18(NCED3)、配列番号19及び20(陽性対照群CCA1)、配列番号21及び22(陽性対照群TOC1)、配列番号23及び24(陰性対照群アクチン)を使用した。
【0104】
RT−PCT結果、成長条件下でAtBG1とAtABA2 mRNAレベルは、一日中一定に維持されたが(図36ないし図38)、これは植物が成長条件下では、脱水ストレスを経験しなかったことを示し、一日中ABA含量が増加することは、AtBG1発現増加によるものではないことを示す。一方、AtABA1転写体のレベルは、午後2時に約1.7倍増加する変化があり(図36及び図37)、AtNCED3 mRNA発現は、午後8時に1.8倍増加し、午前2時まで増加した状態で残っていたが、午前8時には基本レベルに戻った。前記結果は、AtABA1とAtNCED3 mRNAレベル全てがABAのように日周期性を有するということを意味するが、このようなmRNAレベルの変化パターンは、ABAレベルの変化パターンとは一致しないで、なおかつmRNAの変化程度は2倍よりさらに低かった。
【0105】
前記のように、デノボ(de novo)合成関連遺伝子の発現パターンが、ABAの発現パターンと違うということは、ABAのデノボ(de novo)合成が日中にABAレベルが増加することにほとんど関与しないことを示す。
【0106】
前記実験で、CCA1及びTOC1転写体濃度は、生体リズムに対して陽性対照群に使用し(Wang and Tobin,1998年;Strayer等,2000年)(図36及び図38)。アクチンは、生体リズムに対して陰性対照群に使用した。
【0107】
次に、本発明者等は、ABAレベルの日周期性がAtBG1の重合を通じた活性化によるものであるのかを実験した。
【0108】
詳細には、正常条件で育った「遺伝子回復したatbg1」から時間別に修得した全体タンパク質抽出物を、ゲルろ過カラムを使用して分画して抗−HA抗体を使用してウエスタンブロットで分析した。その結果、高分子量形態のAtBG1が日周期性を示したが(図33及び図34)、午後2時にレベルが最高であり、早く減少して午前8時に一番低かった。午後2時に全体AtBG1の半分が高分子量形態で存在し、一方午前8時には10%未満の高分子量形態のAtBG1が観察された。高分子量形態のAtBG1の濃度は、昼の間葉組職でABAの増加と相当な関連性があった。これは、AtBG1の重合を通じた活性化が日周期性の間、ABA含量の増加をもたらすということを示す。
【産業上の利用可能性】
【0109】
前記で詳しくみたように、本発明のAtBG1遺伝子が導入された形質転換植物は、植物内で発現されたAtBG1タンパク質がアブシジン酸(abscisic acid、ABA)を活性化させて低温、塩害、脱水のような多様な環境ストレスに抵抗性を有するので、農産物の生産性増大に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】AtBG1(Arabidopsis thaliana β−glucosidase 1)のアミノ酸配列を他のベータグルコシダーゼ同族体(homolog)と整列して比べた結果を示した図である。
【図2−6】環境ストレスが、AtBG1の発現を誘導し、AtBG1遺伝子で形質転換された植物は、NaClストレス抵抗性が増加するということを示した図である。
【図2】一週間の間「野生型」シロイヌナズナに多様な化学的処理(低温、脱水、高濃度のNaCl処理)をした後、全体RNAを抽出して、AtBG1、AtGluc(AF082157)及びAtpsr3.1(U72153)のcDNAをプローブ(probe)にして、ノーザンブロットを実施した結果を示したゲル電気泳動写真である。
【図3】AtBG1遺伝子で形質転換させたシロイヌナズナの全体RNAを抽出してノーザンブロットを実施した結果を示したゲル電気泳動写真である。
【図4】AtBG1や空のベクター(empty pBΙ121)で形質転換させたシロイヌナズナを10日間、土で培養した後、4日間NaCl処理した結果を示した写真である。
【図5】MSプレートで4日間培養した植物を、高濃度のNaClを含んだプレートに移して根成長を測定したグラフ(n=50)である。
【図6】組職特異的なAtBG1の発現を示し、AtBG1プロモーターの調節下にGUSを含む形質転換植物を培養した後、1週間(1W)、2週間(2W)及び3週間(3W)後にX−Glucで染色した結果を示した写真である。
【図7】(A)は、T−DNAが挿入されたAtBG1突然変異遺伝子の概路図である。(B)は、T−DNAがAtBG1遺伝子に挿入された突然変異シロイヌナズナ(以下「突然変異atbg1」と略称する)のAtBG1遺伝子を分離して、AtBG1遺伝子特異的なプライマーでPCRを実施することにより、AtBG1にT−DNAが挿入される突然変異が起きたかどうかを検証したゲル電気泳動写真である。
【図8−16】「突然変異atbg1」と「突然変異atbg1」にAtBG1:HA遺伝子を形質転換させることにより遺伝子損失が回復したatbg1(rescued atbg1、以下「遺伝子回復したatbg1」と略称する)の表現型を示したものである。
【図8】「突然変異atbg1」にAtBG1遺伝子特異的なプライマーを使用して RT−PCRを実施することで、AtBG1転写体がないことを確認したゲル電気泳動写真である。
【図9−10】野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復したatbg1」を発芽後、1週(1w)または2週(2w)及び4週後に撮影した写真である。
【図11】「遺伝子回復したatbg1」に、抗−HA抗体(Roche社)を使用してウエスタンブロットを実施することで、AtBG1:HAが発現されることを確認した写真である。
【図12】「突然変異atbg1」にABAを注入することで野生型の表現型が再び現れることを示した写真である。
【図13】光16時間、闇8時間の周期で培養したシロイヌナズナの葉で昼と夜に気孔の大きさを測定し、その結果を示したグラフ(n=150、バー(bar)=標準誤差)である。
【図14】「突然変異atbg1」にABAを注入したり、気孔が閉まる時にNO合成酵素を抑制すると知られたNAMEを処理した後、植物の葉で昼と夜に気孔の大きさを測定して、その結果を示したグラフ(n=200、バー=標準誤差)である。
【図15】水分損失を比べるために、表示された時間、10%の乾燥した相対湿度で 20℃に置いておいた葉の重さを測定して、その結果を示したグラフである。
【図16】野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復したatbg1」を14日(14d)または21日(21d)間、水を与えないまま培養した結果を示した写真である。
【図17−22】AtBG1によるABA−GEの加水分解と、それによる植物内ABAレベルの変化を示した図である。
【図17】AtBG1:HA、AtBG1[E207Q]、AtBG1[△C105]、空のベクター(empty vector)で形質転換させた植物の原形質体を抗−HA抗体を使用し、免疫分離(immunopurification)した結果を示した写真である。
【図18】免疫分離されたAtBG1:HAタンパク質をABA−GEと適切な緩衝溶液で培養して、反応産物をHPLCで分離した結果を示したグラフである。
【図19】HPLCを実施して分離したABA分画を、抗−ABA抗体を使用してエライザ(ELISA)で測定した結果を示したグラフである。
【図20】野生型、「突然変異atbg1」、「遺伝子回復した(rescued)atbg1」の種子にあるABAのレベルを、抗−ABA抗体(Agdia社)を使用してエライザ(ELISA)で測定した結果を示したグラフである。
【図21】「遺伝子回復した(rescued)atbg1」にあるAtBG1:HAのレベルを、抗−HA抗体で確認した結果を示したグラフである。
【図22】野生型、「突然変異atbg1」及び「遺伝子回復した(rescued)atbg1」に対して発芽分析(assay)を実施したグラフである。
【図23−26】AtBG1の細胞内位置を示した図である。
【図23】AtBG1遺伝子をGFP遺伝子で標識した組換え遺伝子の概路図である。
【図24】ER標識子であるBip:RFPが発現されて細胞内ERの位置を示し、GFPは細胞質溶解タンパク質で細胞質を示した蛍光顕微鏡写真である。
【図25】AtBG1:HAとBiP:RFPの細胞内位置を示した蛍光顕微鏡写真である。
【図26】AtBG1:HAで形質転換されてチュニカマイシン処理しない原形質体から得られたタンパク質抽出物を、エンドHとPNG酵素(PNGase)Fで処理したサンプルと、AtBG1:HAで形質転換されてチュニカマイシン処理した原形質体から得られたタンパク質抽出物を、抗−HA抗体でブロッティングした写真である。
【図27−31】脱水によってマイクロゾームでAtBG1が早く重合されて ABA−GEの加水分解を促進することを示した図である。
【図27】脱水または脱水処理されない「遺伝子回復したatbg1」から修得されたマイクロゾーム分画のABA−GE加水分解活性を測定した結果を示した図である。
【図28】脱水ストレスによってAtBG1が重合されることを示した図である。
【図29】高分子量AtGB1のABA−GE加水分解活性を示した図である。
【図30−31】高分子量AtGB1の形成を測定した結果を示した図である。
【図32−34】ABAレベルに比例して日周期性で高分子量AtBG1が重合されることを示した図である。
【図32】「遺伝子回復したatbg1」でABAレベルの日周期性変化を示した図である。
【図33】一日中「遺伝子回復したatbg1」で修得したタンパク質抽出物中、AtBG1を分析した結果を示した図である。
【図34】高分子量AtBG1を測定した結果を示した図である。
【図35】PEG8000で浸透圧ストレスを加えた形質転換された原形質体から修得されたタンパク質抽出物を、抗−T7抗体で免疫沈降した結果を示した図である。
【図36−38】デノボ(de novo)ABA生合成経路に関連した遺伝子の発現分析に対する図である。
【図36】AtBG1及びデノボ(de novo)生合成関連遺伝子プライマーを使用して半−定量的なRT−PCRを実施した結果を示した図である。
【図37−38】時間帯別に発現レベルを測定した結果を示した図である。
【配列表フリーテキスト】
【0111】
配列番号1と2は、部分cDNAライブラリーからシロイヌナズナ遺伝子であるAtBG1を分離するために使用したプライマー配列である。
【0112】
配列番号3は、AtBG1遺伝子の配列である。
【0113】
配列番号4と5は、全体cDNAライブラリーから使用されたGluc(AF082157)とpsr3.1(U72153)遺伝子を修得するために使用したプライマー配列である。
【0114】
配列番号6、7及び8は、AtBG1遺伝子でT−DNAが挿入されたかどうかを確認するために使用したプライマー配列である。
【0115】
配列番号9と10は、AtBG1上流1.7kb部位を修得するために使用したプライマー配列である。
【0116】
配列番号11と12は、AtBG1特異的なプライマー配列である。
【0117】
配列番号13と14は、ABA1特異的なプライマー配列である。
【0118】
配列番号15と16は、ABA2特異的なプライマー配列である。
【0119】
配列番号17と18は、NCED3特異的なプライマー配列である。
【0120】
配列番号19と20は、陽性対照群CCA1特異的なプライマー配列である。
【0121】
配列番号21と22は、陽性対照群TOC1特異的なプライマー配列である。
【0122】
配列番号23と24は、陰性対照群アクチン特異的なプライマー配列である。
【0123】
配列番号25と26も、AtBG1特異的なプライマー配列である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のβ−グルコシダーゼ(β−glucosidase)1(AtBG1)または、その変異体をコードする遺伝子を含む植物の環境ストレス抵抗性増進用組成物。
【請求項2】
前記遺伝子が、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の植物の環境ストレス抵抗性増進用組成物。
【請求項3】
前記環境ストレスが、高温、塩害、乾燥、公害、病源菌、傷、低温、過多な光条件、オゾン、除草剤、過多なUV露出及び浸透圧衝撃(osmotic shock)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)を加水分解してアブシジン酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させることで、植物にストレス抵抗性を付与することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記遺伝子が、ベクターに導入されたことを特徴とする、請求項1に記載の植物の環境ストレス抵抗性増進用組成物。
【請求項6】
前記ベクターが、pBIG:AtBG1:HA(寄託番号KCTC10729BP)であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項5に記載のベクターで形質転換された植物細胞。
【請求項8】
請求項7に記載の植物細胞を含む形質転換植物。
【請求項9】
請求項8に記載の形質転換植物の子孫またはクローン。
【請求項10】
請求項8に記載の形質転換植物の種子、実、穂、塊茎、塊根、樹木、カルスまたは原形質体。
【請求項11】
I)請求項1に記載の遺伝子、また該遺伝子を有するベクターを植物細胞に導入する工程;及び
II)前記植物細胞を組織培養して再分化させる工程を含む、環境ストレスに対する抵抗性を有する植物を生産する方法。
【請求項12】
Arabidopsis thaliana由来のβ−glucosidase 1(AtBG1)遺伝子の発現を増加させて植物にストレス抵抗性を付与する方法。
【請求項13】
アブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)を加水分解してアブシジン酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させることによって植物ストレス抵抗性を付与することを特徴とする、請求項12に記載の植物にストレス抵抗性を付与する方法。
【請求項14】
アブシジン酸グルコースエステル加水分解が、AtBG1重合によって促進されることを特徴とする、請求項13に記載の植物にストレス抵抗性を付与する方法。
【請求項1】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のβ−グルコシダーゼ(β−glucosidase)1(AtBG1)または、その変異体をコードする遺伝子を含む植物の環境ストレス抵抗性増進用組成物。
【請求項2】
前記遺伝子が、配列番号3で表されるヌクレオチド配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の植物の環境ストレス抵抗性増進用組成物。
【請求項3】
前記環境ストレスが、高温、塩害、乾燥、公害、病源菌、傷、低温、過多な光条件、オゾン、除草剤、過多なUV露出及び浸透圧衝撃(osmotic shock)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
アブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)を加水分解してアブシジン酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させることで、植物にストレス抵抗性を付与することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記遺伝子が、ベクターに導入されたことを特徴とする、請求項1に記載の植物の環境ストレス抵抗性増進用組成物。
【請求項6】
前記ベクターが、pBIG:AtBG1:HA(寄託番号KCTC10729BP)であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項5に記載のベクターで形質転換された植物細胞。
【請求項8】
請求項7に記載の植物細胞を含む形質転換植物。
【請求項9】
請求項8に記載の形質転換植物の子孫またはクローン。
【請求項10】
請求項8に記載の形質転換植物の種子、実、穂、塊茎、塊根、樹木、カルスまたは原形質体。
【請求項11】
I)請求項1に記載の遺伝子、また該遺伝子を有するベクターを植物細胞に導入する工程;及び
II)前記植物細胞を組織培養して再分化させる工程を含む、環境ストレスに対する抵抗性を有する植物を生産する方法。
【請求項12】
Arabidopsis thaliana由来のβ−glucosidase 1(AtBG1)遺伝子の発現を増加させて植物にストレス抵抗性を付与する方法。
【請求項13】
アブシジン酸グルコースエステル(ABA−GE)を加水分解してアブシジン酸(abscisic acid、ABA)の濃度を増加させることによって植物ストレス抵抗性を付与することを特徴とする、請求項12に記載の植物にストレス抵抗性を付与する方法。
【請求項14】
アブシジン酸グルコースエステル加水分解が、AtBG1重合によって促進されることを特徴とする、請求項13に記載の植物にストレス抵抗性を付与する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公表番号】特表2008−525015(P2008−525015A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548090(P2007−548090)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004482
【国際公開番号】WO2006/068442
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500345478)ポステック・ファウンデーション (25)
【出願人】(507209355)エフエヌピー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004482
【国際公開番号】WO2006/068442
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(500345478)ポステック・ファウンデーション (25)
【出願人】(507209355)エフエヌピー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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