説明

多次元クロマトグラフィー装置および方法

イオンクロマトグラフィー装置は、(a)第1クロマトグラフィーカラムと、(b)第1クロマトグラフィーカラムの体積の0.9倍以下である体積を有する第2クロマトグラフィーカラムと、(c)さらなる分析のために分離イオン種を第1室から第2室へ選択的に移送することを可能にする、前記第1カラムと第2カラムとの間に配置されるバルビングとを備える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
環境試料中のマトリックスイオンの存在下の微量イオンは通例イオンクロマトグラフィーによって分析される。通常、微量イオンの検出は予備濃縮によって、または「大きいループ」注入と称する、多量の試料を注入することによって向上する。対象の種を濃縮することに加えて、これらの方法はまた、場合によっては望ましくないマトリックスイオンを集中させるか、または濃縮する。予備濃縮の場合は、大きいマトリックスイオン濃縮が濃縮カラム内で溶離液としての機能を果たす傾向があるので、対象の微量イオンを回収し損なう可能性がある。場合によっては、高いレベルおよびさまざまなレベルのマトリックスイオンの存在は、全体的なクロマトグラフィー性能に影響を与えることがあり、保管時間およびピーク応答再現性により大きな変化を引き起こすことがある。加えて、高いレベルのマトリックスイオンはピーク効率および分解能の損失を引き起こし、カラム寿命が短くなることがある。従って、マトリックスイオンの存在下の微量イオンの検出を可能にする、確実なイオンクロマトグラフ法が必要性となる。
【0002】
いくつかのさまざまな方法、例えば、前処理カラムを用いて試料に前処理を施し、中和剤を用いてマトリックスイオンを中和し、そして透析するなどが、マトリックスイオンのレベルを最小にするために文献上で論じられている。最も一般的な方法は、カラムを用いて分離前に試料に前処理を施して、マトリックスイオン濃縮を排除するか、または減らすことである。例えば、マトリックスイオンが塩化物から成る場合に、銀陽イオン交換体が塩化物を沈殿させるのに使用され、試料中の他の微量陰イオンの検出を容易にすることができる。上述の前処理またはマトリックス排除工程はインラインあるいはオフラインで実行される。オフライン工程は面倒で時間がかかる。インライン方法は、分析を自動化するので、好ましい。しかしながら、通常は交換体カラムは廃棄されるか、あるいは再生後に再利用される、従って分析コストおよび/または追加の処理工程が加えられる。実際に、分析を自動化することは有用であろう。
【0003】
これを達成する1つの方法は二次元解析を実行することによる。オンライン多次元クロマトグラフィーは複雑な試料を分析するために使用されている。場合よっては、この方法はカラムスイッチングと呼ばれている。この方法はさらなる分析のために試料分析クロマトグラムを扱いやすい部分に分割することに依存する。二次元方法では、マトリックスイオンは、さらなる分析のために、対象の検体が第2カラムまたは次元へ流れる間に、分流されて廃棄されるか、またはさらなる分析のために第1カラム内へ戻ることもあり得る。場合によっては、その分離は単一の分析ポンプを使用して行われた。ある場合には、2つのシステムが対象の種を分析するために使用された。サプレッサの使用は、二次元液体クロマトグラフ分析を二次元抑制イオンクロマトグラフ分析と区別する。サプレッサは溶離液を弱解離した状態に変える。水酸化物溶離液の場合は、抑制溶離液は、濃縮カラムに集中させることによって、対象の種を濃縮するために良質の液体キャリアを供給する水である。濃縮カラムの集中効果はピーク形状を実質的に劣化させずに検体を可能にする。先行技術の文献は、複数の化学的性質および容量を用いて複数のカラムを示すけれども、対象のイオンの検出感度を向上させるために提供される手段はない。
【0004】
文献は多くの二次元分離を記載している。例えば、非特許文献1は、鎮痛剤中の亜硫酸塩の分析用のハートカットおよびカラムスイッチング方法を用いるマトリックス排除技術を開示している。この方法は濃縮カラムまたはハートカットを濃縮する手段を使用しない。さらにサプレッサはこの作業では使用されない。プリ・カラムおよび分析カラムは単一流量で動作する。
【0005】
非特許文献2は相対的検体濃縮用のカラムスイッチング技術を開示している。この概念は、対象のイオンを第2カラム内へ分流し、対象のピークの分解能を改善することである。この方法は、カラムC1を用いて、分離、切断された所要のハートカットの第1部分を第2カラムC2内へ流す。分析はC2について同じ流量で継続して、対象のピークのより高い分解能の分離を生じる。この種の方法は、マトリックス成分の存在下のイオンの高感度な検出を達成するのに適していない。
【0006】
非特許文献3は、ホワイトリカーおよび希薄再循環リカーの分析を実行するカラムスイッチング方法を記載している。この方法はガードおよび分析カラムを使用し、これらの間で流れの方向を変えられる。塩化物、硫酸塩、および亜硫酸イオンはガードカラムを通過し、次に流れは切り換えられて、分析カラムを通って流れ、その後にガードカラムが先ず続く。この図式により、高度に保有されたチオ硫酸イオンを、弁の切り換えの無い標準方法の30分とは対照的に、妥当な実行時間である9分で溶離することができる。この方法は一定の流量を使用する。
【0007】
上記の方法の別の変形が、非特許文献4によって、カラムの流れをマトリックスイオンで切り換えて、1つのポンプを用いて廃棄し、かつ第2ポンプを用いて対象の種の分析を実行することによって、すべての窒素および燐を分析するために示される。対象の種の分解能の向上とともに実行時間の全体的な短縮が達成された。この方法もまた一定の流量を使用した。
【0008】
非特許文献5は、高レベルの硫酸塩を含有する試料中の燐酸塩の分析を示している。この方法は、対象の検体をある次元から別の次元へ移送することを可能にするカラムスイッチング機構を使用した。いかなるサプレッサもこの作業では使用されなかった。上記の方法では、2つの次元は同じ流量で動作した。
【0009】
非特許文献6は陽イオンの分析を実行するカラムスイッチング手段を開示している。高濃度のナトリウムまたはアンモニアの存在下の微量無機陽イオンの分離が示された。この方法では、予備濃縮は無く、2価陽イオンは1価陽イオンより前に溶離する。また単一ポンプが分析で使用され、カラムは単一流量で動作する。
【0010】
非特許文献7は2工程カラムスイッチング方法を記載している。第1段階で、対象のイオン、蓚酸塩が濃縮カラムに集中している間に、他のイオンは送られて廃棄される。第2段階で、蓚酸塩イオンは異なる勾配方法を用いて分析された。単一ポンプが分析で使用され、カラムは単一流量で動作した。
【0011】
非特許文献8は飲用水中の臭素酸塩の分析を示している。彼らは2段階プロセスを使用し、第1段階はマトリックス排除段階であり、その後に臭素酸塩の分析が続いた。この方法は、本発明と類似する溶離液を抑制した後にハートカットを濃縮するために濃縮カラムを使用した。しかしながら、分析は単一流量で実行された。対照的に本発明では、分析はより小さい体積の第2次元カラムで実行され、同じ線流速または総体的に小さい流量で動作した。
【0012】
非特許文献9は高塩分水中の無機イオンの分析を示している。対象の検体は第1次元から第2次元へ分流され、次に第2次元で分析されたのに対して、マトリックスイオンは送られて、第1次元で廃棄された。両次元とも同じ流量で動作した。対照的に本発明では、分析はより小さい体積の第2次元カラムで実行され、同じ線流速または総体的に小さい流量で動作した。
【0013】
特に対象のイオンがマトリックスイオンとともに存在する場合にイオンの検出感度を強化する2次元方法の必要性がある。
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,352,360号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/924,236号明細書
【特許文献3】米国特許第6,225,129号明細書
【非特許文献1】スチーブンRビラセノーア(Steven R.Villasenor)著 「アナル・ケミ(Anal.Chem)63」、1991年、1362〜1366頁
【非特許文献2】ユミールおよびフーバー(Umile and Huber)著 「クロマトグラフィー誌(J.of Chromatography)723」、1996年、11〜17頁
【非特許文献3】ウッツマンおよびキャンプベル(Utzman and Campbell)著 「LC−GC第9,4巻」、301〜302頁
【非特許文献4】コランビーニ(Columbini)らの「クロマトグラフィー誌(J.Chromatography)A822」1998年、162〜166頁
【非特許文献5】ガルセラン(Galceran)およびディエズ(Diez)の「クロマトグラフィー誌(J.Chromatography)A675」1994年、141〜147頁
【非特許文献6】レイ(Rey)らの「クロマトグラフィー誌(J.Chromatography)A、789」1997年、149〜155頁
【非特許文献7】ペルツァス(Peldszus)らの「クロマトグラフィー誌(J.Chromatography)A、793」1998年、198〜303頁
【非特許文献8】ファン(Huang)らの「液体クロマトグラフィー誌(J.Liquid Chromatography)22、14」1999年、2235〜2245頁
【非特許文献9】ブルーノ(Bruno)らの「クロマトグラフィー誌(J.Chromatography)A、1003」2003年、133〜141頁
【発明の開示】
【0015】
本発明の一実施形態に従って、イオンクロマトグラフィー装置が提供され、(a)液体試料の流れの中の1つの正または負の電荷のイオン種を分離する第1分離媒質を含有する第1流入室を画定する第1筐体と、(b)液体試料の流れの中のイオン種を分離する第1分離媒質と同じ電荷の第2分離媒質を含有する第2流入室を画定する第2筐体であって、第2室の体積は第1室の体積の0.9倍以下である第2筐体と、(c)さらなる分析のためにイオン種を第1室から第2室へ選択的に移送することを可能にする、第1室と第2室との間に配置される第1バルビングとを備える。
【0016】
別の実施形態は、(a)1つの正または負の電荷のイオン種を含有する、溶離液含有液体試料の流れを第1流入室内の第1分離媒質を通して流して、イオン種を分離する工程と、(b)イオン種をさらに分離するために、分離されたイオン種の選択された部分とともに溶離液を第1分離媒質から弁と、第2流入室内の第1分離媒質と同じ正または負の電荷の第2分離媒質とを通して流す工程であって、第2分離媒質を通る体積流量は第1分離媒質を通る体積流量の0.9倍以下である工程と、(c)第1流入検出器内で、第2分離媒質から出る水性液体の流れ中のさらに分離されたイオン種を検出する工程と含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
一般に、本発明の装置は、液体試料中の1つの正または負の電荷のイオン種を分離する2つのイオン分離器、通常はクロマトグラフィーカラムを含む、イオンクロマトグラフィー方法および装置に関する。弁は2つの分離器の間に配置される。両分離器は、同様のタイプでもよく、通常はイオン種分離媒質を含有する流入室を画定する筐体を含む。説明を簡潔にするために、分離器を、例えば従来の充填層タイプまたは多孔性モノリシック分離媒質タイプの分離媒質を含む、カラムまたはクロマトグラフィーカラムと呼ぶ。
【0018】
後で説明するように、システムの構成要素、例えば、試料ループおよび濃度、クロマトグラフィーカラムは必ずしも作動しているとは限らない。例えば、バルビングは対象の試料イオンを濃縮器に装填することを可能にする位置にあり、装填位置にある濃縮器からの流出物は無駄になるが、第2カラムへは行かない。とはいえ、クロマトグラフィーカラム間に、少なくとも1つのバルビングモードで、流体連通を施すことが可能なバルビングを備えるシステムについては、2つのカラム間に配置されるバルビングと呼ぶ。
【0019】
2つの直列イオン分離器を備えるシステムは、二次元システムと称する。第1次元は、第1クロマトグラフィーカラムと、任意の関連する管類と、他のデバイス、例えば第1カラムの下流であるが、第2カラムの上流にあるサプレッサおよび検出器とを含む。第2次元は、対象のイオンの第2分離を実行するために使用される第2カラムを指す。第2次元は、使用される場合、濃縮カラムを含む。抑制クロマトグラフィーの場合は、システムは、クロマトグラフィーカラムの下流にあるサプレッサと、対象のイオン種を検出する検出器とを含む。
【0020】
図1は本発明の一実施形態を示す。溶離溶液は、第1次元に流入するために、ポンプ20によって加えられる圧力を受けて源(図示せず)から供給される。溶液は注入ループ24を装着した注入弁22へ管路中を流れる。注入ループは、微量イオンの分析を続けている間は、特に大きい体積を有することが好ましい。4mmのカラム内径用の第1次元の好ましい大きい注入ループサイズは、通常、約1μLから20mLまで、またはより好ましくは10μLから4mLまで、または100μLから2mLまで変化する。より大きいまたはより小さい内径のカラム用の、好ましい注入ループサイズはカラム体積に比例して増減する。
【0021】
試料はオートサンプラー52(例えば、ダイオネクス社(Dionex Corporation)によって供給されるAS40型)によってループ24に適切に注入されて、ループ24をループ装填位置に装填する。ループを装填するのに要する量を超える試料は分流されて、管路54に廃棄される。弁22がループ装填位置にある間に、溶離液はループを迂回し、分析カラム26に直接流入する。通常は、分析カラムは、1つの正または負の電荷の溶離液の流れの中のイオン種を分離するイオン分離媒質を含有する流入室を画定する筐体を含む、クロマトグラフィーカラムである。先ずシステムを陰イオンの分離に関して説明するが、この場合に分離器26内の分離媒質は陰イオン交換物質から成る。媒質は、クロマトグラフィーで使用されるような、任意のイオン分離物質、例えば、従来のクロマトグラフィーカラムで使用されるイオン交換樹脂粒子の充填層、ラテックス凝集イオン交換粒子、多孔性貫通流路を有するイオン交換物質のモノリスなどであり得る。
【0022】
好ましい実施形態では、サプレッサ28は第1次元で使用され、カラム26と検出器30との間に配置される。サプレッサがシステムの残り、特に、濃縮カラム34(使用される場合)からの背圧を処理することが可能であるならば、このサプレッサは任意のイオンクロマトグラフィーサプレッサであり得る。
【0023】
第1次元の装填動作時、試料溶液はイオン分離カラム26を通って流れ、試料イオンは分離され、任意のサプレッサ28に向けられる。図示のように、サプレッサ28は膜サプレッサ型である。一実施形態では、膜サプレッサは例えば特許文献1に示されるようなサンドイッチ膜サプレッサであり、試料溶液は、サプレッサ内の試料流路の両側に隣接再生流路を画定するイオン交換膜によって両側を囲まれる中央液体試料流路を通って流れる。特許文献1のサプレッサのように、検出器30の下流の溶液をサプレッサの再生流路を通して再循環させる。先行技術の任意の適切なサプレッサを本発明で使用することができる。
【0024】
サプレッサ28の液体試料流路(図示せず)からの流出物は、検出器30、通常は電導度検出器を通って、そこから弁32へ流れる。ループ24の装填中、弁32は、検出器30から出る液体が濃縮カラム34を迂回し、サプレッサ28の再生流路(図示せず)へ戻され、次に管路48を流れて廃棄されるモードにある。弁が対象の試料イオンピークを含む流れの部分を濃縮するために切り換えられるまで、流れは濃縮カラムを迂回する。
【0025】
ループ24が装填された後に、弁22は注入位置に切り換えられる。この位置で、溶離溶液はポンプ20によってループ24を通してくみ上げられて、第1次元イオン分離のために試料を分析カラム26内へ搬送する。
【0026】
図で示したシステムは第1次元における抑制クロマトグラフィー用であり、カラム26からの流出物はサプレッサ28を通って流れ、ここで溶離液の電解質は抑制されて、従来のイオンクロマトグラフィーサプレッサのように、弱く解離された状態になる。このシステムはまた第1または第2次元における非抑制クロマトグラフィーにも適用できる。次にサプレッサ28の試料流路の抑制流出物は、対象のイオン種を検出する検出器30へ流れる。イオン電導度検出器または他の最適な検出器の場合、結果として、検出はイオンクロマトグラフとなる。任意の検出器30による検出は、対象の部分を識別する機能を果たし、対象の部分を次の次元に分流させるために使用され得る。
【0027】
試料をループ24に装填する間に、弁32は注入位置にあることが好ましく、濃縮カラム34は検出器30からの流出物の流れから迂回され、検出器30からの流出物の流れは弁32から流出し、サプレッサ28に送られて、再生溶液となる。注入工程中、検出器30からの抑制溶離液の流れは濃縮カラム34を通して送られて、対象のイオンに集中させる。濃縮カラム34から流出する流出物は、再生溶液としての機能を果たすためにサプレッサ28に戻される。任意のガス除去デバイス(図示せず)(例えば、CRDマークでダイオネクス社(Dionex Corporation)によって販売され、かつ2004年8月23日提出の特許文献2に開示されている型)は、集中工程に先立って抑制溶離液の流れから二酸化炭素のようなガスを除去するために、セル30と濃縮カラム34との間に配置されてもよい。
【0028】
弁32が注入位置に切り換えられる場合に、第2次元ポンプ36からの圧力を受けた溶離液は濃縮カラム34を通して送られて、分離の第2段階が実行される第2分析(クロマトグラフィー)カラム38へ流れる、流れる溶離溶液内で対象の種を溶離する。抑制イオンクロマトグラフィーの場合は、対象の分離イオンの流出物は溶離液中を溶離液が抑制されるサプレッサ40へ流れ、対象のイオンは検出器30と同じ型であってもよい検出セル42によって検出される。この例では、サプレッサはサプレッサ28と同じ型の膜サプレッサであってもよい。セル流出物はサプレッサ42へ戻されて、再生流れとして再生流路内へ入り、管路50へ送られて廃棄される。先行技術の任意のサプレッサもサプレッサ28の代わりに使用され得る。
【0029】
本発明の一態様では、試料イオンは、(試料イオンと同じ電荷の)マトリックスイオンとともに、第1次元で第1次元分離カラム26に適している流量で分析される。例えば、一実施形態では、分離カラムは、4mmの内径を有する標準内径クロマトグラフィーカラムである。しかしながら、他のサイズおよび形状のカラムを用いてもよい。例えば、カラム26は毛細管カラム(例えば、内径0.01mm〜0.1mm)または他の直径、例えば0.01mm〜10mmなどであってもよい。カラム26および38の実寸は変わり得る。しかしながら、本発明の一態様は、体積流量、流れに垂直な断面積、および/または第2カラムの第1カラムに対する体積の減少に関する。
【0030】
第2次元では、第1次元で分離された検体は選択的に濃縮され、濃縮カラム34内に保持される。カラム34は、イオン交換粒子の充填層を含む、商標TAC−LP1でダイオネクス社(Dionex Corporation)によって販売されているような従来型であってもよい。
【0031】
イオン種濃縮カラムの機能はイオンを濃縮することである。一方、クロマトグラフィーカラムはイオン種を分解するように主として設計される。種を分解するプロセスにおいて、クロマトグラフィーカラムは試料ゾーンを希釈する。この点で、クロマトグラフィーカラムは、検体に集中させるのに役立つ濃縮カラムとは対照的な希釈装置である。作動中、濃縮カラムは一方向に対象のイオンに集中させ、対象のイオンはカラムから逆方向に溶離されて、著しく未分解の集中した試料スラグを確保する。次に未分解の試料ゾーンは、さらなる分離のためにクロマトグラフィーカラム内に分流される。溶離工程が濃縮工程に対して逆方向であることが好ましいので、濃縮器が対象の種を濃縮するために十分な容量を有している限り、濃縮カラムの体積は重要ではない。通常は、濃縮カラム容量は1ueqv/カラムから約30ueqv/カラムまで変化する。試料イオンの濃度が高いほど、より高い容量の濃縮カラムを必要とする。濃縮カラムの背圧は、オートサンプラーのような試料供給デバイスの圧力要件の関数として最適化されてもよい。試料を感圧試料供給ポンプまたはオートサンプラーポンプから高流量で供給する場合に、より低い背圧の濃縮器が好ましい。
【0032】
濃縮カラムは、クロマトグラフィーで使用されるような、任意のイオン分離物質であり得る媒質、例えば、従来のクロマトグラフィーカラムで使用されるイオン交換樹脂粒子の充填層、コアイオン交換樹脂粒子の外側のラテックス凝集イオン交換粒子、多孔性貫通流路を有するイオン交換物質のモノリスなどを含む。
【0033】
対象の集中的な検体はポンプ36からの溶離液によって濃縮カラム34から溶離され、通常は分離カラム26と同じ一般型である第2次元分離カラム38を用いて分析される。
【0034】
濃縮カラム34は、第2次元で分析するために対象の試料イオンを予備濃縮する。カラムは、対象の種を濃縮し、および/またはマトリックスイオンと比較して対象のイオンに対してより高い検出感度を呈するために十分な能力を有する必要がある。洗浄工程を予備濃縮工程中に分析システムに組み込むことができ、さらなるマトリックスイオン除去を促進し、対象の検体の定量分析を可能にする。
【0035】
一実施形態では、第2次元分離カラム38は、分離媒質を保持する、第1カラムよりも小さい断面および/または体積の室を含む。円形寸法を有するカラムの場合は、より小さい断面積はより小さい内径を有するカラムを意味し、この内径もやはりカラム体積がより小さいことを意味する。類似カラム内径を有する第2カラムの場合は、カラムの長さが第1カラムよりも短いならば、体積をより小さくできる。特定の実施形態では、第2分離器は第1カラム36と同じ線速度(L)(cm)/t(分)で動作する。この実施形態は、濃度高感度検出器による、対象の種の検出の増進および対象のピークの感度の向上を可能にする。カラム断面が小さい場合に、第1カラムと同じ線速度で動作するために、第2カラムはより小さい流量で動作する必要がある。小さい流量は分離検体のより低い希釈を意味する。さらに、検体ピークは検出セルを通って小さい流量で伝わるので、ピーク応答は増大する。従って、より高い検出感度は、電導度または紫外線検出器のような濃度高感度検出器を用いて、より小さい流量を使用する場合に観察される。検体の質量が変わらないので、質量高感度検出器は最小の感度変化を示す。
【0036】
一実施形態では、第2カラムを通る体積流量は第1カラムを通る流量の90%以下であり、好ましくは80%、70%、60%、50%、40%、あるいはそれ以下である。
【0037】
別の実施形態では、第2カラムの室は第1カラム室の90%以下、好ましくは80%、70%、60%、50%、40%、あるいはそれ以下の体積を有する。本明細書で規定するように、この室は分離媒質を画定する室の一部である。充満している場合は、それらはほぼ同じであるが、室が部分的に充満している場合は、室体積は媒質と接触する室のその部分を含む。
【0038】
さらに別の実施形態では、第2室の断面積は第1室の90%以下、好ましくは80%、70%、60%、50%、40%、あるいはそれ以下である。
【0039】
本2次元方法の別の利点は、第1次元の注入体積が、第2次元分離のクロマトグラフィー性能に著しい影響を与えることなしに増大され得ることである。これは、第1次元がマトリックスを分流するために使用されるのに対して、第2次元はマトリックスイオンによる妨害なしに検体を選択的に濃縮し、分離するために使用されることに因る。
【0040】
カラム26および38は、分離媒質の断面を画定する従来の円形断面を有することができる。しかしながら、他の幾何学的形状を用いることもあり得る。例えば、分離媒質は、流れに対して直角である比較的方形の室またはチャネルの形で画定されることもあり得る。
【0041】
上述のように、本発明の一態様は、分離器26と比較して、イオン交換媒質と分離器38とを通る体積流量を減らすことである。これは、濃度高感度検出器を用いて、対象のイオン種の検出の増進および対象のピークの感度の向上を可能にする。この方法の利点は、第1次元の注入体積が、第2次元のクロマトグラフィー性能に著しい影響を与えることなしに増大され得ることである。
【0042】
第1分離媒質と比較して第2分離媒質と同じ線速度(L)(cm)/t(分)を達成する1つの方法は、減った流量を維持しながら、第1カラムに対して第2分離カラムの内部断面積および/または体積を減らすことである。分離媒質の断面および体積の近似として、流れに対して垂直であるカラムの断面、および媒質が配置されるカラムの内部の体積を使用してよい。横断断面積の減少による流量の減少を制御するために、第2カラムは、第1カラムの内部断面積の0.9倍以下、好ましくは0.8倍以下、そしてより好ましくは0.5倍以下の内部断面積を有することが好ましい。例えば、1ml/分の流量で動作する第1次元の4×250mmのカラムの場合は、第2次元は2×250mmのカラムを用いて0.25ml/分で動作してもよい。この組み合わせは、第1次元と比較して第2次元に対して期待される4倍の感度増進をもたらすと同時に、線速度を維持する。このシステムは、マトリックス構成要素を最少にし、かつ改善された検出感度を対象のイオンに与える手段を提供する。
【0043】
円筒形カラムの場合は、第1カラムの内径は約0.01mm〜10mmレジーム、より好ましくは1mm〜9mmレジーム、そして最も好ましくは2mm〜4mmレジームであることが適切である。一実施形態では、第2次元は第1次元と同じ長さであるが、より小さい内径を有する。この方法では、第2次元の好ましい内径は0.01mm〜9mm、より好ましくは0.025mm〜2mm、そして最も好ましくは0.5mm〜2mmである。
【0044】
上記の方法は第1および第2カラムを通る類似の線速度を想定する。しかしながら、2つのカラムの液体について別々のポンプを用いることによって、第2カラムの体積流量を、第1および第2カラムのそれぞれの次元を変えずに、第1カラムの体積流量に対して減らすことができる。さらに、関係のあるカラム次元および線流速のパラメータの変化の組み合わせが、検出の所望の増強および対象のピークの検出感度の向上を達成するために用いられるとよい。第1次元の流れを分割し、分割された流れを第2次元分離器に分流することもまた可能である。
【0045】
第1次元分離カラム26において、第2次元における分離に先立って分離され、除去され得る、検体イオンと同じ電荷の高イオン強度のマトリックスイオンの分離および除去を可能にするために、比較的高い容量の分離媒質を使用することが好ましい。例えば、4mmの内径を有する分離カラムの場合は、適切な容量範囲は、1〜1,000μeqv/カラム、好ましくは100〜400μeqv/カラム、そして最も好ましくは約150〜350μeqv/カラムである。この容量は、さもなければ対象の検体イオンの分析を妨げることもあり得る、マトリックスイオンの予想濃度に関係する。この容量は高容量分離媒質を用いることによって、またはカラムの体積を調整することによって、またはその両方によって調整され得る。
【0046】
対象の検体をマトリックスイオンに対して優先的に保持するカラム化学反応を使用することが好ましい。例えば、過塩素酸塩分析を実行している間に、分離のために、この段階はマトリックスイオンに対して過塩素酸塩のより高い選択性を示すので、ダイオネクス社(Dionex Corporation)のAS16カラムが使用される。マトリックスイオン濃度がカラム容量を超える場合は、マトリックスイオンを減らす試料前処理を使用してもよい。予備濃縮カラムに留意すると、対象の種を濃縮し、および/または対象の検体に対してより高い選択性を示すために十分な容量を有する必要がある。任意の追加洗浄工程は濃縮工程に組み込まれて、マトリックスイオンのさらなる除去を促進し、対象の検体を保持し、かつ定量分析を容易にすることができる。
【0047】
第1次元(図示せず)の別の実施形態では、大きいループが第2次元への移行中に濃縮カラム34の代わりに用いられる。大きいループは対象のイオンの第2次元への選択的移送を容易にする。ループは対象の試料ゾーンを保持し、これを第2次元へ移送するだろう。この実施形態では、例えばループ24と同じ型の試料ループが濃縮カラム34の代わりに用いられるとよい。
【0048】
任意に、カラムが、対象のイオン種を濃縮し、および/または対象の検体に対してマトリックスイオンよりも高い選択性を示すために、十分な容量を有する限り、(例えば、濃縮器34と同じ型の)予備濃縮カラム(図示せず)が、試料注入ループの代わりに、かつ第1次元でカラム26より前に使用されてもよい。任意の追加洗浄工程は予備濃縮工程に組み込まれて、マトリックスイオンのさらなる除去を促進し、対象のイオンを保持しながら、かつ定量分析を容易にすることができる。
【0049】
上述のように、弁32は第1次元と第2次元との間に配置される。さまざまな工程が2つの次元の各々で分離して用いられるので、第1および第2次元は必ずしも流体連通しているとは限らない。しかしながら、本明細書で用いられるように、2つのカラム間の弁の配置は、分析サイクル時に弁32は、試料が、好ましくは、同様に2つの次元の間に配置される濃縮器デバイスの使用によって第1次元から第2次元へ流れる設定を有することを意味する。
【0050】
第1次元への試料注入を可能にし、体積部分を第1次元分離流から切り取ることを可能にし、そして第2次元への移送を可能にするだろう、標準クロマトグラフィー弁を含む多種多様の弁は、本発明に適しているだろう。好ましい弁は、ダイオネクス社(Dionex Corporation)によって販売されているような6および10接続口構成を含む。弁の液体接触部分はPEEK製であることが好ましい。
【0051】
好ましい実施形態では、弁32によって制御される濃縮カラム34は第1次元と第2次元との間に配置される。試料は第1次元に装填され、切り取られた体積は第2次元へ移送される。本明細書で用いられるように、用語「切り取られた体積」は、第1次元のカラム26から濃縮カラム34へ、最終的にさらなる分析のために第2次元へ分流される体積を意味する。好ましい切り取られた体積は所定の適用流量に対する時間に関して表わされてもよい。切り取られた体積は、0.01〜20分間、またはより好ましくは0.2〜5分間、そして最も好ましくは約2〜4分間変化することが適切である。切り取られる体積は所定の標的検体に対して選ばれ、濃度が変化するマトリックスイオンの存在下で検体に対して最適化される。より大きく切り取られた体積はマトリックスイオンのより大きい部分を第2次元へ分流させることがあるので、より小さい切り取られた体積を使用することが好ましい。切り取られた体積は、マトリックスイオンの最高濃度の存在および非存在下で標準を実施することによって導き出され、カット時間ウインドウを最適化して、対象のピークに対する最大ピーク応答回復を達成することができる。
【0052】
抑制イオンクロマトグラフィーの場合は、サプレッサ40は第2次元で使用される。示すように、サプレッサ40は、検出器42からの流出物がサプレッサの再生流路において再生溶液として使用される、サプレッサ28と同じ膜サプレッサ型であってもよい。サプレッサ40は濃縮カラム34に適応するために背圧制限によって制約されない。
【0053】
2つ以上の切り取られた体積部分は分析のために第2次元へ、ときには別の次元へ分流され得る。適切なバルビング仕組みを用いることによって、濃縮カラムは、マトリックスイオンを分流して廃棄しながら、対象のすべてのピークを選択的に捕捉するために使用されることもあり得る。第2弁と、第2カラムのそれに同様に縮小された次元を有する第3分離カラムとを使用し、かつ第3サプレッサおよび検出器を使用することによって、第3次元を使用することも可能である。3つ以上の次元における分析の場合は、第3以上の次元におけるカラムは第1次元よりも小さい体積流量を有することが好ましく、第1次元と同じ線流速で動作することが好ましい。
【0054】
イオンクロマトグラフィー接続のために用いる導管はカラムの寸法によって決まる。例えば、0.01インチ内径の管は通常4〜9mmカラム用途に使用される。同様に、0.005インチ管は3mmカラムに使用され、0.003インチ内径の管は1mm内径カラムに使用される。大きい口径の管がより大きいバンド分散を生じ得るので、小さい内径の管は小さい内径のカラムに好ましい。より高いバンド分散は期待感度利得を弱めることがあり、従って第2カラム寸法および流量を縮小する場合に接続管の寸法を縮小することが好ましい。
【0055】
上述のように、導管および他のクロマトグラフィー構成要素が、特定の分離のために遅延体積を最小にするために比例して縮小される限り、2つのカラムを同じ線流速で動作させることが好ましい。同じ線流速の使用は、対象の種のより低い希釈および濃度高感度検出器からのより高い応答に因って、より高い感度を与えるという利点を有する。
【0056】
本明細書でFと表わす、第1次元の流量と第2次元のそれとの間の好ましい動作流量比は広い範囲を有し、例えば1〜200,000を超えることもあり得る。感度増進はF比に大体比例する。優れた感度増進は、最小量のマトリックスイオンを有する対象の種を第1次元から第2次元へ集合的に分流させることによって、マトリックスイオンまたはマトリックスイオン効果を排除するか、または最小にすることにより、対象の種について実現され得る。切り取られた体積を所定の適用に対して最適化することによって、優れた回復を実現することもあり得る。例えば、第1次元カラムが1ml/分で動作する4mm内径カラムであり、第2次元が0.05ml/分で動作する1mm内径カラムである場合は、感度増進は20倍のオーダーであろうし、動作流量比によって規定される。この感度レベルはマトリックスイオンの存在下で極く微量の成分の検出を可能にする。
【0057】
マトリックスイオンの濃度は試料源に依存して広い範囲にわたって変化し得る。従って、マトリックスイオンは検体濃度の最低5から10倍、最高1012倍までの濃度を有してもよい。例えば、ある井戸水の試料では、マトリックスイオンを検体イオンのレベル×106の濃度で有していることがある。
【0058】
検出器30および42は任意の従来の型であってもよい。例えば、感度増進は、電導度、アンペロメトリー紫外線、蛍光、スペクトロメトリー、または他の種類の検出器のような、濃度高感度検出器について観測され得る。ポストカラム誘導体化が第2次元分離後に対象の検体に実行されて、対象の検体の検出を容易にすることができる。
【0059】
別の実施形態では(図示せず)、第1次元からの対象の切り取られた体積は図2に示すように直接第2次元に分流される。この実施形態では、濃縮カラムは使用されず、弁32が切り取られた体積を第2分離カラム38内に分流するために使用される。試料は前のように装填され、カラム26で分離される。分流弁32の装填段階中、対象の切り取られた体積または部分は第2次元カラム38内に分流され、この間にポンプ36からの流れは再生流としてサプレッサ28内に分流される。分流弁32の注入段階で、ポンプ36からの流れはカラム38へ向け直され、分離はマトリックスイオンによる妨害無しに前のように達成される。図示した実施形態のように、第2次元は第1次元よりも小さい体積流量を有し、同じ線流速で動作することが好ましく、そして本発明によりこの設定は感度の増強をもたらす。この実施形態では、サプレッサが第1次元で使用される場合に、それは第2次元からの背圧を処理できなければならない。サプレッサは第1または第2次元で除外され得る。
【0060】
図3に示す別の実施形態では、本発明は、単一ポンプおよび第1次元と第2次元との間で切り換わるカラム切り換え弁とから成る単一システムを用いて実施されることもあり得る。この設定はただ1つのポンプ20を使用する。ポンプからの流れは、弁位置を切り換えることによって、切り換え弁60を経由して第1次元カラム26または第2次元カラム38へ向けられ得る。この設定では、試料は上に説明したように弁22を用いて注入され、分離はカラム26で達成される。対象の切り取られた体積はカラム38内へ分流される。次にカラム38内に保持される試料は、第1次元分離よりも小さい体積流量でポンプ20を作動することによって分析され、同じ線流速で動作することが好ましい。本発明のこの設定は対象のピークの検出感度の増進をもたらす。上記のことは、システムを手動でリプランブし、流れを2つの次元の間に向けることによって実施されることもあり得ることに留意する必要がある。
【0061】
別の実施形態では、炭酸塩または重炭酸塩溶離液が使用される場合は、切り取られた体積中の抑制溶離液によって生じる残留背景は濃縮工程に先立って除去されてもよい。抑制後の残留炭酸は弱く解離され、対象の種を濃縮カラムから溶離させることができる。二酸化炭素の除去は、商標CRDでダイオネクス社(Dionex Corporation)によって販売されているようなガス透過性膜を含む、デバイスによって達成されてもよい。
【0062】
炭酸は弱く解離されて重炭酸塩陰イオンとなり、予備濃縮中に高濃度で溶離液として作用して、対象の検体の回復低下を生じ得る。CRDデバイスを濃縮カラムの前に配置することによって、切り取られた体積からのCO2の除去が達成され、これによって検体は大部分が水である背景で濃縮される。水酸化物溶離液を用いる他の応用では、大きいレベルのCO2の存在は予備濃縮工程または第2次元分離工程を妨げることがある。これらの状態の下でCRD様デバイスを必要とすることがある。本実施形態のCRD様デバイスはアンモニアのような他の揮発性種を除去するのにも有用であろう。
【0063】
図4を参照すると、特許文献3に示され、かつダイオネクス社(Dionex Corporation)によって販売されている型のような、溶離液生成モジュール56および58(図示せず)を用いる、本発明の2次元発明の別の実施形態が示されている。同じ部品は図1および4の実施形態について同じ数字で表わされる。ポンプ20および36は水、好ましくは脱イオン水をポンプで注入するために使用され、溶離液生成モジュール56および58を通して、溶離液生成カートリッジ(図示せず)と、溶離液を精製するために連続再生トラップカラム(商標CRTCで販売)とを含む。モジュール56および58からの精製溶離液は、爆鳴気を除去するために、上述の型のようなガス抜きモジュール(図示せず)を通して送られるとよい。溶離液は溶離液生成カートリッジ56を出て、図2に示すように、注入弁22および32それぞれを通して送られる。サプレッサ40からのサプレッサ廃棄物が溶離液生成モジュール58に戻されて、ガス除去デバイスおよび溶離液生成脱ガスジュール(図示せず)を通って流れる再生流に給水することを除いて、配管および個別構成要素の説明の残りは図1に関して述べたものと同様である。次に廃棄物の流れは管路48および50を通して送られて廃棄される。
【0064】
濃縮カラムが用いられる図1および4の好ましい実施形態の動作において、対象の検体は第1次元から濃縮カラム32内へ分流される。第2次元カラムはより小さい体積を有し、第1次元カラムと同じ線流速で動作することが好ましい。
【0065】
図1および4のシステムはリサイクル動作モードを示す。しかしながら、必要に応じて、外部源からの水がサプレッサおよびガス除去デバイスの再生流として使用される、外部水動作モードが使用されてもよい。
【0066】
次の例は本発明の細部を示すさまざまな制限の無い例を示す。
【0067】
例1: この例はマトリックスイオンの存在下の臭素酸塩分析用の先行技術の方法の制約を示す。ダイオネクス社(Dionex Corporation)からの市販のイオン・クロマトグラフィー・システムICS3000がこの作業に使用された。第1次元カラムは、下記の概略のように30CにおけるKOH傾度を用いて動作する4mmAG19/AS19カラムであった。
【表1】

【表2】

【0068】
4mmASRSウルトラ(Ultra)IIサプレッサがこの作業で使用され、113mAの定電流を用いて動作した。500uL注入ループがこの作業で使用された。マトリックス濃度(NaClおよびNa2SO4)の臭素酸塩ピ−クに与える影響が第1次元設定を用いて調査された。図5は、いろいろなマトリックス試料を用いて生成されるクロマトグラムのオーバーレイを示す。符号1がついているピ−クは臭素酸塩の5ppb試料である。マトリックス濃度が0から250ppmへ増大したとき、臭素酸塩ピ−クはより広くなり、ピ−クを取り込むことが困難であったことは明らかである。
【0069】
図6は、例1のリストに載っている条件を用いたダイオネクス社(Dionex Corporation)による7陰イオン標準P/N56933の1000倍希釈を加えた5ppb臭素酸塩の例を示し、差し込み図Bは追加のマトリックスイオンが加えられない場合であり、差し込み図Aは250ppmの塩化物(ピ−ク2)および硫酸塩(ピ−ク3)イオンが加えられた場合である。この結果は、マトリックス濃度が増大したとき、臭素酸塩を取り込み、定量することが困難になることをもう一度示している。
【0070】
例2: この例では、臭素酸塩試料は本発明により分析された。第1次元分離条件は例1に概略を述べたものに類似していた。
【0071】
切り取られた体積は、約7.5〜9.5分(2ml)、第1次元からTAC−ULP1濃縮カラム内へ分流され、保持されたイオンは、下記の概略のように30CにおけるKOH傾度を用いて0.25ml/分で動作する2mmAG19およびAS19カラムを用いて第2次元で分析された。
【表3】

【0072】
2mmASRSウルトラ(Ultra)IIサプレッサが29mAで使用された。図6と同じ臭素酸塩試料(5ppbの臭素酸塩)がこの作業で使用された。この結果はマトリックスイオンの存在下で臭素酸塩の優れた回復を示し、図7に示すようにピークの形状に影響を与えなかった(差し込み図Aは追加マトリックスイオンが存在する場合であり、差し込み図Bは脱イオン水の場合である)。
【0073】
例3: 次の表は、第1次元の試薬水中の5ppb臭素酸塩のピーク応答を本発明の第2次元方法と比較している。
【表4】

【0074】
上の例の感度は理論によって予想されるように大体4倍増大し、第2次元に対する第1次元の流量の比Fに比例したことに留意する必要がある。
【0075】
例4: マトリックス濃度の臭素酸塩回復に与える影響が、本発明により例2のリストに載っている条件を用いてこの例で調査された。
【0076】
さまざまなマトリックス濃度(0ppm〜250ppmの塩化物および硫酸塩)に対する5ppbの臭素酸塩イオンの回復が以下に示される。
【表5】

【0077】
本発明の方法がさまざまなマトリックス濃度の下で優れた回復を生じることは、上の結果から明らかである。一貫した感度増強が上記試料について観測される。
【0078】
例5: この例では、マトリックスイオンの非存在下と、1000ppmの塩化物、重炭酸塩、および硫酸塩イオンから成るマトリックスイオンの存在下との5ppbの過塩素酸塩の第1次元分析が、大きいループ(4ml注入)ならびにAG20およびAS20化学を用いて行われた。溶離液は1ml/分の35mH KOHであった。ASRSウルトラ(Ultra)II 4mmサプレッサが87mAの設定電流でここに使用された。この結果(図8)は、大きい試料体積の直接注入を用いたマトリックスの存在下で過塩素酸塩の弱い回復およびピーク形状(差し込み図Aの符号1が付いているピーク)を示した。差し込み図Bは、マトリックスイオンを加えずに分析した場合の過塩素酸塩ピーク(符号1が付いているピーク)を示す。
【0079】
例6: この例では、5ppb過塩素酸塩の本発明による2次元分析が例5の試料を用いて示される。第1次元条件は例5で述べたものと類似していた。19〜24分(5ml)切り取られた体積は、本発明によりTAC−ULP1濃縮カラム内へ分流され、続いて第2次元で分析された。第2次元分析は、60mH KOHから成る溶離液を用いる0.25ml/分で動作する2mmAG20/AS20カラムを用いて行われた。ASRSウルトラ(Ultra)II 2mmサプレッサが第2次元で使用され、38mAの設定電流で動作した。図9に示すようにこの結果は、マトリックスイオンの存在下の過塩素酸塩の優れた回復(差し込み図Aの符号1が付いているピーク)を示した。過塩素酸塩応答はマトリックス有り(差し込み図A)と無し(差し込み図B)でおおよそ類似していた。ピーク形状もまた図9に示すように維持された。これらの結果は過塩素酸塩分析用の本方法の優れた有用性を示す。
【0080】
例7: 次の表は、第1次元の試薬水中の5ppb過塩素酸塩のピーク応答を本発明の第2次元方法と比較している。
【表6】

【0081】
上の結果は第1次元方法に対する本発明の感度の向上を明示している。
【0082】
例8: 次の表は、さまざまなマトリックス(塩化物、硫酸塩、および重炭酸塩)濃度での5ppbの過塩素酸塩の回復を示す。ピーク応答の優れた回復が本発明によって観察される。この回復レベルは大きいループ状態下の第1次元方法では可能ではない。これらの結果はまた本発明による一貫した感度の向上を明示している。本方法によりさらに、第2次元のピーク応答に影響を与えずに大きい体積を第1次元に注入することが可能である。
【表7】

【0083】
例9: この例は、臭素酸塩を分析する本方法を用いた、0ppm〜200ppmのさまざまなマトリックス濃度(塩化物および硫酸塩)下の5ppbの臭素酸塩の分析を示す。9mM炭酸ナトリウム溶離液を用いるAS9HCカラムが、4mmAAESサプレッサおよび電導度検出とともにこの作業で使用された。臭素酸塩(符号1が付いているピーク)ピーク幅が、マトリックス濃度の増大とともに、ピーク回復が悪化するまで増大することは、図10に示す結果から明らかである。この例は電導度検出を示すけれども、マトリックスイオンの存在が、ポストカラム誘導体化および紫外線検出を用いるピーク形状に影響を与えるだろうことは明らかである。
【表8】

【0084】
例10: この例では、臭素酸塩ピークを含む4.3〜6.8分(2.5ml)切り取られた体積は濃縮カラムで濃縮され、0.25ml/分の流量で動作する2mmAS9HCカラムを用いて分析された。炭酸の存在は図11に示すように分析を妨害し、臭素酸塩ピークは、追加マトリックス(100ppmの塩化物および硫酸塩)イオン有り(差し込み図A)および無し(差し込み図B)の試料について、これらの条件の下で検出されないことが明らかである。CRDデバイスが本発明により第1次元のサプレッサと濃縮カラムとの間に装着される場合に、かなりの量のCO2が切り取られた体積から除去されて、図12に示すように臭素酸塩の回復の改善をもたらす(差し込み図Aはマトリックスイオン有りの場合であり、差し込み図Bはマトリックスイオン無しの場合である)。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明によるシステムの概略図である。
【図2】本発明によるシステムの概略図である
【図3】本発明によるシステムの概略図である。
【図4】本発明によるシステムの概略図である。
【図5】先行技術の方法を用いるクロマトグラムを示す。
【図6】先行技術の方法を用いるクロマトグラムを示す。
【図7】本発明の使用を示すクロマトグラムである。
【図8】先行技術の方法を用いるクロマトグラムを示す。
【図9】本発明の使用を示すクロマトグラムである。
【図10】先行技術の方法を用いるクロマトグラムを示す。
【図11】本発明の使用を示すクロマトグラムである。
【図12】本発明の使用を示すクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンクロマトグラフィー装置であって、
(a)液体試料の流れの中の1つの正または負の電荷のイオン種を分離する第1分離媒質を含有する第1流入室を画定する第1筐体と、
(b)液体試料の流れの中のイオン種を分離する前記第1分離媒質と同じ電荷の第2分離媒質を含有する第2流入室を画定する第2筐体であって、前記第2室は前記第1室の体積の0.9倍以下の体積を有する第2筐体と、
(c)さらなる分析のためにイオン種を第1室から第2室へ選択的に移送することを可能にするように構成される、前記第1室と前記第2室との間に配置される第1バルビングと、
を備える前記装置。
【請求項2】
(d)前記第1室の下流であるが、前記第2室の上流にある第1流入室と流体連通する第1サプレッサをさらに備える請求項1記載の装置。
【請求項3】
(e)前記第1サプレッサの下流であるが、前記第2室の上流に配置される第1検出器をさらに備える請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記第1サプレッサが、前記第1室と流体連通する液体試料流路を第1再生流路から分離する膜を備える膜サプレッサであり、前記装置が、
(f)前記第1検出器と前記第1再生流路との間の第1流体管
をさらに備える請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記第2流入室の下流にあり、それと流体連通する第2検出器をさらに備える請求項3記載の装置。
【請求項6】
(f)前記第2室と前記第2検出器との間に配置される第2サプレッサ
をさらに備える請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記第2サプレッサが、前記第2室と流体連通する液体試料流路を第2再生流路から分離する膜を備える膜サプレッサであり、前記装置が、
(f)前記第2検出器と前記第2再生流路との間の流体管
をさらに備える請求項6記載の装置。
【請求項8】
(d)前記弁に配置され、それと流体連通する流入イオン種濃縮器
をさらに備える請求項1記載の装置。
【請求項9】
(e)前記第1流入室と前記濃縮カラムとの間に配置されるガス除去デバイス
をさらに備える請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記バルビングが、前記第1室からの液体流が前記濃縮器と流体連通する第1位置と、前記第1室からの液体流が前記濃縮器を迂回する第2位置とを有する請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記第1室を通して液体をくみ上げる第1ポンプを前記第1室の上流にさらに備える請求項1記載の装置。
【請求項12】
前記第2室を通して液体をくみ上げる第2ポンプを前記第1室の下流であるが、前記第2室の上流にさらに備える請求項11記載の装置。
【請求項13】
(d)前記第1室の上流側と流体連通する電解溶離液生成器
をさらに備える請求項1記載の装置。
【請求項14】
イオンクロマトグラフィー装置であって、
(a)液体試料の流れの中の1つの正または負の電荷のイオン種を分離する第1分離媒質を含有する第1流入室を画定する第1筐体と、
(b)液体試料の流れの中のイオン種を分離する前記第1分離媒質と同じ電荷の第2分離媒質を含有する第2流入室を画定する第2筐体であって、前記第2流入室は前記第1流入室の断面積の0.9倍以下の流れに垂直な断面積を有する第2筐体と、
(c)さらなる分析のためにイオン種を第1室から第2室へ選択的に移送することを可能にするように構成される、前記第1室と前記第2室との間に配置される第1バルビングと、
を備える前記装置。
【請求項15】
イオンクロマトグラフィー方法であって、
(a)1つの正または負の電荷のイオン種を含有する溶離液含有液体試料流を第1流入室内の第1分離媒質を通して流して、前記イオン種を分離する工程と、
(b)前記第1分離媒質、および第2流入室内の前記第1分離媒質同じ正または負の電荷の第2分離媒質からの前記分離イオン種の選択された部分とともに溶離液を流して、前記イオン種をさらに分離する工程であって、前記第2分離媒質を通る体積流量が前記第1分離媒質を通る体積流量の0.9倍以下である工程と、
(c)第1流入検出器で、前記第2分離媒質から出る水性液体中の別の分離イオン種を検出する工程と、
を含む前記方法。
【請求項16】
(d)前記第1室から出た後、前記第2室に流入する前に、前記液体試料の流れの中の溶離液の電導度を抑制する工程
をさらに含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記抑制が、前記液体試料の流れと連通する液体試料流路と再生流路を分離する選択透過性膜を備える膜サプレッサで実行される請求項16記載の方法であって、
(e)前記第1分離室から出る前記試料の流れの中のイオン種を、前記第2室に流入する前に第2流入検出器で検出する工程と、
(f)前記第2検出器を出る前記液体試料の流れの少なくとも一部を前記再生流路を通して流す工程と、
をさらに含む前記方法。
【請求項18】
(d)前記試料の流れを濃縮器内のイオン種濃縮媒質を通して流すことによって、前記第1分離室から出る前記試料の流れの中の前記イオン種を、前記第2室に流入する前に濃縮する工程
をさらに含む請求項15記載の方法。
【請求項19】
(e)工程(d)中に、前記濃縮媒質から出る水性溶液を、前記液体試料の流れと連通する液体試料流路と再生流路を分離する選択透過性膜を備える膜サプレッサ内の再生流路へ流す工程
をさらに含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
(d)前記第2室から出る前記試料の流れの中の溶離液の電導度を抑制する工程
をさらに含む請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記抑制が、前記第2室から出る前記液体試料の流れと連通する液体試料流路と再生流路を分離する選択透過性膜を備える膜サプレッサで実行される請求項20記載の方法であって、
(e)前記第2室から出る前記液体試料の流れの少なくとも一部を前記再生流路を通して流す工程
をさらに含む前記方法。
【請求項22】
前記第2流入室が前記第1流入室の体積の0.9倍以下の体積を有する請求項15記載の方法。
【請求項23】
流れに垂直な前記第2流入室の断面積が前記第1流入室の断面積の0.9倍以下である請求項15記載の方法。
【請求項24】
前記溶離液が二酸化炭素ガスを含む請求項18記載の方法であって、
(e)二酸化炭素ガスを前記試料の流れから前記濃縮カラムの下流で除去する工程
をさらに含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−509138(P2009−509138A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531242(P2008−531242)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035438
【国際公開番号】WO2007/035324
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)