説明

多次元液体クロマトグラフ及びそれを用いた分析方法

【課題】
1次元側のカラムから溶出された成分を効率良く2次元側のカラムに導くことのできる多次元液体クロマトグラフを提供する。
【解決手段】
試料注入手段から電解質溶液を注入する注入タイミングは、洗浄工程への切り替え時期を基準として、第1分離カラムから試料成分を溶出してトラップカラムへ移送するに十分な分析所要時間の分だけ前に設定する。
【効果】
試料成分がトラップカラムに保持されている時間を最短化することが出来、それによってトラップカラム保持中に起こる試料成分の流出を最小限に止めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分離カラムを有する多次元液体クロマトグラフ分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内に発現する多様な蛋白質全体の挙動を網羅的に解析するプロテオミクスの分野において、質量分析装置が主要な分析手段となっている。生体由来の試料を質量分析装置にかける前操作として、試料中に含まれる多種類の蛋白質を分離する必要があるが、その手段の一つとして、多次元液体クロマトグラフが用いられている。
【0003】
多次元液体クロマトグラフでは、分離の原理が異なる複数のカラムを直列に接続して用いることにより、生体試料中に含まれる多種多様な成分を分離する。多次元クロマトグラフでは、通例、第一のカラムによる分離に要求される溶出液と、第二のカラムによる分離に要求される溶出液が異なる。プロテオミクス分野においては、第一の分離カラムとして陽イオン交換カラムなど、溶出液に塩などを含む電解質溶液を用いる分離カラムを用いられることが多い。このような溶液は、質量分析装置による測定に悪影響を及ぼすため、電解質溶液が質量分析装置に導入されないように、第一の分離カラムから溶出された試料を、一旦適切な貯留用カラムに貯留した後、流路切換バルブを切り替え、電解質溶液以外の質量分析装置に導入可能な溶液を、貯留カラムから第2の分離カラムに供給して、分析した試料を質量分析装置に供給する分析方法が取られている。
【0004】
非特許文献1には、1次元側の第1の分離カラム(SCX column)より分離された試料成分を貯留する二つの貯留カラム(enrichment column) と、二つの貯留カラムの接続を切り替える流路切替バルブ(Micro 10-port valve) を備えた装置構成例が示されている。この装置においては、試料を注入して第1の分離カラムに特定の試料を捕捉し、第1の分離カラムから捕捉した試料成分を溶出するために、濃度を変えながら、定期的に塩(Salt)を第1の分離カラムに注入する。塩の注入に応じて溶出された試料成分は、二つの貯留カラムに交互に貯留される。貯留カラムに貯留された試料成分は、流路切替バルブを介して2次元側の第2の分離カラム(C18 RP column) に接続されたほうの貯留カラムに保持された試料成分をNanoflowポンプで押し出して第2の分離カラムを通過させて分析する。
【0005】
即ち、非特許文献1の装置においては、片方の貯留カラムを第1の分離カラムに接続し、第1の分離カラムより溶出された試料成分を保持し、その間に他方の貯留カラムは第2の分離カラムとNanoflowポンプに接続し、第2の分離カラムで分析を行うことで、第1の分離カラムからの塩を注入することによる試料成分の溶出を停止せずに定期的に行うことのできる装置を実現している。
【0006】
【非特許文献1】E. Nagele他,「Journal of Biomolecular Techniques」,Volume 15,2004,pp.134-143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1に示されるような従来技術では、第1の分離カラムにおける試料分離の開始時間(塩の注入開始時間)と、第2の分離カラムにおける試料分離の開始時間(Nanoflowポンプ送液開始時間)は、ほぼ同時に設定されている。すなわち、第1の分離カラムと第2の分離カラムは、ほぼ同じ時間帯で分析ステップを切り替えていくものであるが、第2の分離カラムで分析される試料は、一つ前の分析ステップで第1の分離カラムで分離され、貯留カラムに蓄えられていた試料である。よって、第1の分離カラムから分離されて他の1つの貯留カラムに貯留された成分は、次の分析ステップまで、その貯留カラムに保持されていなければならない。
【0008】
第2の分離カラムでの分離所要時間は、通常1〜2時間程度であるため、貯留カラムに保持された試料成分は、ほぼ1〜2時間程度の間、貯留カラムに保持されている必要がある。しかし、生体試料中に含まれる蛋白質由来の成分の中には、貯留カラム内の充填剤との相互作用が低いものも含まれており、そのような成分は貯留カラムにおける保持時間が長くなるに従って流出していく。プロテオミクスにおいては、試料中に含まれる微量な蛋白質の同定が重要な課題であるため、分析途中における試料成分の脱落は極力避けなければならない。
【0009】
本発明の目的は、1次元側のカラムから溶出された成分を効率良く2次元側のカラムに導くことのできる多次元液体クロマトグラフを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、溶出液を送液する第1の送液手段と、当該第1の送液手段から送液された溶出液に測定対象試料及び電解質溶液を注入する試料注入手段と、当該試料注入手段の下流に設けられ、測定対象試料を保持する第1の分離カラムと、当該第1の分離カラムにより溶出された試料成分を保持する第1及び第2のトラップカラムと、当該トラップカラムに対して溶出液を送液する第2の送液手段と、前記トラップカラムから溶出された試料を分離する第2の分離カラムと、前記第1の分離カラム、前記第1及び第2のトラップカラム、前記第2の分離カラムが接続される切り替えバルブと、前記複数の当該分離カラムから溶出された液を検出する検知器とを備えた多次元液体クロマトグラフであって、前記切り替えバルブは、前記第1の送液ポンプ−前記第1の分離カラム−前記第1のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第2のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第1の状態、前記第1の送液ポンプ−前記第1のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第2のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第2の状態、前記第1の送液ポンプ−前記第1の分離カラム−前記第2のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第1のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第3の状態、前記第1の送液ポンプ−前記第2のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第1のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第4の状態、の上記4つの状態を第1の状態から第4の状態の順に切り替え可能であり、前記第1の状態及び第3の状態において、前記試料注入手段は電解質溶液を注入する工程を有し、当該電解質溶液の注入タイミングは、前記第2の状態及び第4の状態への切り替え時期を基準として、前記第1分離カラムから試料成分を溶出してトラップカラムへ移送するに十分な分析所要時間の分だけ前に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、試料成分がトラップカラムに保持されている時間を最短化することが出来、それによってトラップカラム保持中に起こる試料成分の流出を最小限に止めることが可能である。
【0012】
また、電解質溶液が検知器に導かれる可能性を低減し、高感度に分析を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態である多次元液体クロマトグラフの概略構成図である。
【0014】
図1において、切り替えバルブ1は、ポンプ2からの送液を、試料注入装置3から第1分離カラム4を経由する流路と、十方バルブ5を介してトラップカラム6あるいはトラップカラム7を経由して、廃液ボトル8に送る流路とを切り替える。トラップカラム6,7には、逆相カラムが用いられる。ポンプ2は、溶出液Aを、切り替えバルブ1が接続する流路を介して、一定流量で試料注入装置3に送液を行う。試料注入装置3には、測定試料の入った容器の他に、電解質濃度が低いものから段階的に高くなるように濃度を調整した複数の電解質溶液(塩など)の入った容器が収納される。この試料注入装置3に収納される複数の電解質溶液の電解質濃度,数,注入量は測定試料の分析条件によって随時変更される。試料注入装置3はポンプ2からの溶出液と共に試料を流路に注入した後、後述する図2の分析プログラム12に基づき、電解質溶液を所定のタイミングで流路に注入する。試料注入装置3により注入された試料成分は、第1分離カラム4に送られ、一度カラム内に保持された後、後から注入される電解質溶液の作用により、第1分離カラム4との相互作用の小さい順に溶出される。
【0015】
第1分離カラム4により溶出された各成分は、切り替えバルブ1と十方バルブ5で構成される流路に送られ、トラップカラム6あるいは7で貯留される。何れのトラップカラムに送られるかは、切り替えバルブ1によって制御される。切り替えバルブ1には、ポンプ9と第2分離カラム10が接続され、ポンプ9は溶出液J及び溶出液Kをその組成比を変化させながら、後述する図2の分析プログラム14に基づいて、何れかのトラップカラムに送液する。何れのトラップカラムに送液されるかは、切り替えバルブ1によって制御される。ポンプ9からの送液を受けたトラップカラム内の試料は、第2分離カラム10に溶出し、分離が開始され、その後、検知器11によって検出される。
【0016】
図2は本発明の分析プログラムの模式図である。12は第1分離カラム4の分析プログラム、14は第2分離カラム10の分析プログラム、13は第1分離カラム4に接続されているトラップカラムを表す。
【0017】
分析プログラム12において、15は試料注入装置3により試料を注入するタイミングである。また、16,19,20は、電解質溶液を試料注入装置3により注入するタイミングであり、それぞれ分析所要時間17の間、電解質溶液が注入される。分析プログラム12の高さ方向は、電解質溶液の電解質濃度を示しており、電解質濃度の低い溶液から高い溶液の順にステップ毎に注入する。また、分析所要時間17の後には、洗浄時間18が設けられ、トラップカラムの洗浄を行う。
【0018】
分析プログラム14において、21,22,23は、ポンプ9による溶出液K,Jを用いたグラジエントプログラムの分析開始時間である。
【0019】
図2に示された、電解質溶液を試料注入装置3により注入するタイミング、すなわち第1分離カラム4での分析開始時間16は、次のステップの第2分離カラム10での分析開始時間21から、第1分離カラムにおける分析所要時間17と、後述するトラップカラム6あるいはトラップカラム7に保持された電解質溶液の成分を溶出液Aによる洗浄時間
18との合計の時間だけ前に設定される。
【0020】
第1分離カラム4での分析所要時間17とは、本実施形態の場合、試料注入装置3から電解質溶液が流路に注入されてから第1分離カラム4での試料成分の溶出が行われるのに充分な時間を指し、電解質溶液の注入量とポンプ2の送液速度から求めることが出来る。
【0021】
図3は、切り替えバルブ1と十方バルブ5の流路を示す概略構成図である。切り替えバルブ1と十方バルブ5により、流路は図3の(i)(ii)(iii) (iv)に示す4通りに切り替えられる。
【0022】
切り替えバルブ1及び十方バルブ5が図3の(i)に示す流路の状態である場合は、試料注入装置3から試料が注入され、第1分離カラム4において、目的の試料成分の保持が行われる。その後、分析所要時間17において、試料注入装置3から電解質溶液が第1分離カラム4に対して注入される。電解質溶液が第1分離カラム4に導入されることにより、第1分離カラム4で保持されていた試料成分が溶出され、その後トラップカラム6に保持される。保持されない溶出液の大半はトラップカラム6から廃液ボトル8に送られる。また、トラップカラム7は、図1に示すポンプ9と第2分離カラム10及び検知器11に流路を介して接続されている。
【0023】
電解質溶液注入時間16から分析所要時間17が経過した後、切り替えバルブ1の流路は、図3の(ii)に示す状態に切り替えられる。このとき、トラップカラム6には、図3の(i)の状態とは逆方向から溶出液Aが送液され、トラップカラム6内に滞留していた電解質溶液の成分がトラップカラム6より溶出され、廃液ボトル8に送られる(トラップカラムは、逆送カラムを用いているため、試料成分は吸着するが電解質溶液は吸着しないため、内部で滞留しているのみである。このため、溶出液Aを流すことにより、試料成分はトラップカラム内に保持したまま、電解質溶液のみを洗い流すことができる)。これにより、トラップカラムに滞留する電解質溶液を効率的に洗浄することができる。電解質溶液としては、塩を用いることが多いが、塩が検知器11に送液されると汚染の原因となる。特に、検知器11が質量分析装置の場合、塩がイオン源の汚染原因となる。また、電解質溶液は試料よりもイオン化効率が高いため、試料のイオン化効率を落としてしまう原因にもなる。したがって、電解質溶液の洗浄時間18を設けることにより、検知器11の汚染防止と、目的とする試料の検出の高感度化を図ることが可能となる。
【0024】
洗浄時間18が経過した後、切り替えバルブ1と十方バルブ5は図3の(iii) に示す状態に切り替えられる。このときトラップカラム6は、ポンプ9と第2分離カラム10及び検知器11に流路を介して接続される。ポンプ9は、溶出液J及び溶出液Kをその組成比を変化させながら、トラップカラム6に送液する。これにより、トラップカラム6に保持された試料成分は、トラップカラム6から試料成分の吸着が離れて溶出され、第2分離カラム10に送られ、第2分離カラム10との相互作用の小さい順に分離されて溶出される。溶出された成分は質量分析装置である検知器11に送られ、質量分析装置によって成分の質量数情報が得られる。
【0025】
この図3の(iii) に示す状態においては、トラップカラム7は第1分離カラム4に接続されると共に、廃液ボトル8に廃液を供給する流路に接続され、溶出液Aによって平衡化される。その後、次のステップの分析開始時間22から、第1分離カラム4での分析所要時間17と、トラップカラム7に保持された電解質成分が充分に溶出するための洗浄時間18とを合計した時間だけ前のタイミング19で、試料注入装置3から前記の電解質溶液よりも電解質濃度の高い電解質溶液が流路に注入される。この電解質溶液の作用によって第1分離カラム4から溶出された試料成分はトラップカラム7に送られてそこで保持される。この時、保持されない溶出液の大半はトラップカラム7から廃液ボトル8に送られる。
【0026】
第1分離カラム4での分析所要時間17が経過した後、切り替えバルブ1は図3の(iv)に示す状態に切り替えられる。このとき、トラップカラム7には図3の(iii) の状態とは逆方向から溶出液Aが送液され、トラップカラム7に保持されていた電解質成分がトラップカラム7より溶出され、廃液ボトル8に送られる。
【0027】
第1分離カラム4での分析所要時間17が経過した後、切り替えバルブ1と十方バルブ5は図3の(i)に示す状態に切り替えられ、トラップカラム7はポンプ9と第2分離カラム10及び検知器11に流路を介して接続され、トラップカラム6に保持された試料成分の第2分離カラム10による分離が開始される。また、トラップカラム6においては、新たな試料成分の保持が行われる。
【0028】
このように、切り替えバルブ1と十方バルブ5は測定中、図3の(i)→(ii)→(iii) →(iv)→(i)・・・というように接続状態を順次切り替えていく。なお、ポンプ2,9,切り替えバルブ1,十方バルブ5の動作は動作制御部(図示せず)により、図2に模式的に示した分析プログラムに従って制御される。
(分析例)
図1に示した装置を用いて行った分析例をここで示す。
【0029】
第1分離カラム4として陽イオン交換カラム(グレイス・ヴァイダック社製400VHP8.305 (内径300μm,長さ50mm,粒子径5μm,細孔径900Å))を、第2分離カラム10として逆相カラム(ニューオブジェクティブ社製ピコフリット(内径75μm,長さ50mm,プロテオペップIIC18,粒子径5μm))を、トラップカラム6および7として逆相型トラップカラム(エスジーイー社製プロテコルトラップカラム(内径300μm,長さ5mm,粒子径5μm,細孔径300Å))を使用した。
【0030】
また、ポンプ2によって送液される溶出液Aには水/アセトニトリル/ギ酸=98/2/0.1(v/v) 混合溶液、試料注入装置3により注入される溶出液Bには溶出液A+
1Mギ酸アンモニウム、ポンプ9で送液する溶出液Jには溶出液Aと同じ組成の溶液、溶出液Kには水/アセトニトリル/ギ酸=2/98/0.1(v/v) 混合溶液を用いた。溶出液Bの注入量は90μL、ポンプ2の流速は10μL/min 、ポンプ9の流速は200nL/min とし、ポンプ9で行われるグラジエントプログラムを溶出液K5%−65%
(第2分離カラム10の分析開始0分−60分),100%(60.1分−80分),5%(80.1分−100分)と設定した。
【0031】
図4は、トラップカラムに保持された電解質成分の洗浄時間18を0分,3分,5分,7分,10分と設定した時の試料成分の回収率を、0分設定時の回収量を100%として求めた結果をまとめたグラフである。サンプルはアンジオテンシンI,ブラジキニン,リシルブラジキニン各100fmol/μLを含むペプチド混合溶液を用いた。このとき、3分以内では90%以上の成分を回収できているが、5分以上では徐々に回収率が低下していくことが示されたため、洗浄効果と試料成分の回収率のバランスを考慮し、本実施例におけるトラップカラムに保持された電解質成分の洗浄時間18を3分と設定した。
【0032】
図5は前記の条件において、第1分離カラム4での分析所要時間17を10分,20分,30分,40分,50分,90分とした時の、前記の各ペプチドの回収率を10分設定時の回収量を100%として求めた結果をまとめたグラフである。これからわかるように、第1分離カラム4の分析所要時間17が20分以内であれば各ペプチド成分とも90%以上の回収率であるが、ブラジキニン,リシルブラジキニンのようなトラップカラムとの相互作用が小さいペプチド成分は時間とともに回収率が低下し、90分では回収率30%程度まで低下する。すなわち、第1分離カラム4から分離された試料成分がトラップカラムに保持されている時間が短いほど回収率は向上する。
【0033】
本発明により、第1分離カラム4の分析開始時間を、次の分析ステップの分析開始時間から、第1分離カラム4での分析所要時間17とトラップカラム6およびトラップカラム7に保持された電解質成分の洗浄時間18の合計分だけ前にすることで、第1分離カラム4の分析開始時間と次の分析ステップの第2分離カラムでの分析開始時間の間の時間を最短化することが可能となり、本発明に係る多次元液体クロマトグラフ分析装置の測定を高感度化することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の多次元液体クロマトグラフ分析装置の概略構成図である。
【図2】本発明の分析プログラムの模式図である。
【図3】本発明における切り替えバルブと十方バルブによる流路切り替えを説明する図である。
【図4】洗浄時間を変更した場合の試料成分の回収率を示すグラフである。
【図5】分析所要時間を変更した場合の試料成分の回収率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1…切り替えバルブ、2,9…ポンプ、3…試料注入装置、4…第1分離カラム、5…十方バルブ、6,7…トラップカラム、8…廃液ボトル、10…第2分離カラム、11…質量分析装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶出液を送液する第1の送液手段と、当該第1の送液手段から送液された溶出液に測定対象試料及び電解質溶液を注入する試料注入手段と、当該試料注入手段の下流に設けられ、測定対象試料を保持する第1の分離カラムと、当該第1の分離カラムにより溶出された試料成分を保持する第1及び第2のトラップカラムと、当該トラップカラムに対して溶出液を送液する第2の送液手段と、前記トラップカラムから溶出された試料を分離する第2の分離カラムと、前記第1の分離カラム、前記第1及び第2のトラップカラム、前記第2の分離カラムが接続される切り替えバルブと、前記複数の当該分離カラムから溶出された液を検出する検知器とを備えた多次元液体クロマトグラフであって、
前記切り替えバルブは、
前記第1の送液ポンプ−前記第1の分離カラム−前記第1のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第2のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第1の状態、
前記第1の送液ポンプ−前記第1のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第2のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第2の状態、
前記第1の送液ポンプ−前記第1の分離カラム−前記第2のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第1のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第3の状態、
前記第1の送液ポンプ−前記第2のトラップカラムの流路、前記第2の送液手段−前記第1のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路が形成される第4の状態、
の上記4つの状態を第1の状態から第4の状態の順に切り替え可能であり、
前記第1の状態及び第3の状態において、前記試料注入手段は電解質溶液を注入する工程を有し、当該電解質溶液の注入タイミングは、前記第2の状態及び第4の状態への切り替え時期を基準として、前記第1分離カラムから試料成分を溶出してトラップカラムへ移送するに十分な分析所要時間の分だけ前に設定することを特徴とする多次元液体クロマトグラフ。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の状態において、前記第1のトラップカラムは、前記第1の送液ポンプから溶出液が送液され、前記第1のトラップカラム内に滞留する電解質溶液の洗浄が行われ、
前記第4の状態において、前記第2のトラップカラムは、前記第1の送液ポンプから溶出液が送液され、前記第2のトラップカラム内に滞留する電解質溶液の洗浄が行われることを特徴とする多次元液体クロマトグラフ。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2及び第4の状態で、前記第1及び第2のトラップカラムに前記第1の送液ポンプから送液される溶出液の流れは、前記第1及び第3の状態で、前記第1及び第2のトラップカラムに前記第1の送液ポンプから送液される溶出液の流れと反対方向であることを特徴とする多次元液体クロマトグラフ。
【請求項4】
請求項1において、
上記第2の状態及び第4の状態である時間は、3分以内であることを特徴とする多次元液体クロマトグラフ。
【請求項5】
請求項1において、
前記分析所要時間は、20分以内であることを特徴とする多次元液体クロマトグラフ。
【請求項6】
溶出液を送液する第1の送液手段と、当該第1の送液手段から送液された溶出液に測定対象試料及び電解質溶液を注入する試料注入手段と、当該試料注入手段の下流に設けられ、測定対象試料を保持する第1の分離カラムと、当該第1の分離カラムにより溶出された試料成分を保持する第1及び第2のトラップカラムと、当該トラップカラムに対して溶出液を送液する第2の送液手段と、前記トラップカラムから溶出された試料を分離する第2の分離カラムと、前記第1の分離カラム、前記第1及び第2のトラップカラム、前記第2の分離カラムが接続される切り替えバルブと、前記複数の当該分離カラムから溶出された液を検出する検知器とを備えた多次元液体クロマトグラフを用いた分析方法であって、
前記第1の送液ポンプ−前記第1の分離カラム−前記第1のトラップカラムの流路、及び、前記第2の送液手段−前記第2のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路を形成する第1のステップと、
前記第1の送液ポンプ−前記第1のトラップカラムの流路、及び、前記第2の送液手段−前記第2のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路を形成する第2のステップと、
前記第1の送液ポンプ−前記第1の分離カラム−前記第2のトラップカラムの流路、及び、前記第2の送液手段−前記第1のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路を形成する第3のステップと、
前記第1の送液ポンプ−前記第2のトラップカラムの流路、及び、前記第2の送液手段−前記第1のトラップカラム−前記第2の分離カラムの流路を形成する第4のステップとを有し、
前記第1のステップ及び第3のステップにおいて、前記試料注入手段は電解質溶液を注入する工程を有し、当該電解質溶液の注入は、前記第2の状態及び第4の状態への切り替え時期を基準として、前記第1分離カラムから試料成分を溶出してトラップカラムへ移送するに十分な分析保持時間の分だけ前に行われることを特徴とする多次元液体クロマトグラフを用いた分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−284188(P2006−284188A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100477(P2005−100477)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)