説明

多段ロータリ膨張機およびそれを用いた冷凍サイクル装置

【課題】第2ベーンに適切な差圧力が作用するように改善された2段ロータリ膨張機を提供する。
【解決手段】2段ロータリ膨張機200は、第1シリンダ205と、第1ピストン204と、第2シリンダ210と、第2ピストン209と、第1ピストン204および第2ピストン209が取り付けられたシャフト203と、第1シリンダ205と第1ピストン204との間の空間を第1吸入空間と第1吐出空間とに仕切るための第1ベーン206と、第2シリンダ210と第2ピストン209との間の空間を第2吸入空間と第2吐出空間とに仕切るための第2ベーン211と、第1シリンダ205と第2シリンダ210とを隔てている中板208とを備えている。第2ベーン211と第2ピストン209との接点E4の平均位置が、第2ベーン211の幅方向WDに関する中心線L4よりも第2吐出空間側にオフセットしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段ロータリ膨張機およびそれを用いた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒の膨張エネルギーを膨張機で回収し、その回収したエネルギーを圧縮機の仕事の一部として利用する冷凍サイクル装置が提案されている(特許文献1参照)。冷媒の膨張エネルギーを回収するための膨張機として、図14に示す2段ロータリ膨張機が知られている。
【0003】
図14は、従来の2段ロータリ膨張機を示す縦断面図である。図15Aは、図14に示す2段ロータリ膨張機のX1−X1線における横断面図である。図15Bは、図14に示す2段ロータリ膨張機のX2−X2線における横断面図である。
【0004】
2段ロータリ膨張機100は、密閉容器102と、密閉容器102内の上部に配置された発電機101と、密閉容器102内の下部に配置された膨張機構130とを備えている。密閉容器102の下部には、膨張機構130の周囲が潤滑油で満たされるように、油貯まり102bが形成されている。発電機101は、ステータ101aとロータ101bとによって構成されている。
【0005】
膨張機構130は、第1シリンダ105、第1シリンダ105内に配置された第1ピストン104、第1シリンダ105に対して同心状に配置された第2シリンダ110、第2シリンダ110内に配置された第2ピストン109、第1ピストン104が嵌め合わされた偏心部103aと第2ピストン109が嵌め合わされた偏心部103bとを有するシャフト103、および、第1シリンダ105と第2シリンダ110とを隔てている中板108を備えている。さらに、第1シリンダ105の上部に上軸受113が設けられ、第2シリンダ110の下部に下軸受114が設けられている。
【0006】
図15Aに示すように、第1シリンダ105に形成された第1ベーン溝105aには、第1シリンダ105と第1ピストン104との間の空間を作動室124aと作動室124bとに仕切るための第1ベーン106が摺動可能に配置されている。図15Bに示すように、第2シリンダ110に形成された第2ベーン溝110aには、第2シリンダ110と第2ピストン109との間の空間を作動室129aと作動室129bとに仕切るための第2ベーン111が摺動可能に配置されている。ベーン106,111は、後述する差圧力により、それぞれ、ピストン104,109に接している。なお、起動時にはベーンに差圧力が作用しないので、ベーン106,111の後方に、それぞれ、補助ばね107,112を設けている。
【0007】
上軸受113に形成された吸入ポート105bは、作動室124aに連通している。作動室124bと作動室129aとは、中板108を斜めに貫通するように設けられた貫通孔108aによって連通しており、1つの空間(膨張室)を形成している。第2シリンダ110に形成された吐出ポート110bは、作動室129bに連通している。密閉容器102の上部には吸入管116が接続されている。吐出ポート110bには吐出管117が接続されている。
【0008】
高圧の作動流体は、吸入管116、密閉容器102の内部空間および吸入ポート105bを通じて第1シリンダ105の作動室124aに吸入される。シャフト103の回転に伴って作動室124aの容積が拡大する。シャフト103がさらに回転すると、作動室124aが作動室124bへと移行する。これにより、吸入行程が終了する。高圧の作動流体は、作動室124bおよび作動室129aの合計容積が増加する方向、すなわち、作動室124bの容積が減少し、作動室129aの容積が増加する方向へとシャフト103を回転させ、発電機101を駆動する。作動室129aの容積増加が作動室124bの容積減少よりも大きいので、作動流体が膨張できる。シャフト103の回転に伴って作動室124bが消滅するとともに、作動室129aは作動室129bへと移行する。これにより、膨張行程が終了する。低圧となった作動流体は、吐出ポート110bから吐出管117へと吐出される。
【0009】
図16は、図14の2段ロータリ膨張機をCO2冷凍サイクルに適用した場合における、シャフトの回転角と作動室の圧力との関係を示すグラフである。シャフト103の回転角に関して、ベーン106,111がベーン溝105a,110aに最も押し込まれた瞬間を基準角度(=0°)とする(以下、同様とする)。
【0010】
2段ロータリ膨張機100は、作動流体(CO2)を吸入圧力Psで吸入し、吐出圧力Pdで吐出する。作動室124aでは吸入行程が行われるので、作動室124aの内圧は吸入圧力Psで一定である。作動室124bと作動室129aでは膨張行程が行われ、作動流体は吸入圧力Psから吐出圧力Pdへと減圧する。その際、初期の単相膨張では圧力が急激に下がり、その後、相変化を伴う膨張では圧力の変化が緩やかになる。作動室129bでは吐出行程が行われるので、作動室129bの内圧は吐出圧力Pdで一定である。
【0011】
図17Aは、図15Aの部分拡大図である。点A1および点B1は、第1ベーン106の先端面と側面との境界を表している。点E1は、第1ベーン106と第1ピストン104との接点を表している。第1ベーン106の先端面のA1−E1部分に作用する圧力は、作動室124aの圧力である。同じくB1−E1部分に作用する圧力は、作動室124bの圧力である。密閉容器102の内部空間が吸入圧力Psを有する作動流体で満たされることから、第1ベーン106の背面106cに作用する圧力は、密閉容器102の内圧である吸入圧力Psに略等しい。したがって、これらの圧力のベクトル和が第1ベーン106に作用する差圧力となる。
【0012】
図17Bは、図15Bの部分拡大図である。点A2および点B2は、第2ベーン111の先端面と側面との境界を表している。点E2は、第2ベーン111と第2ピストン109との接点を表している。第2ベーン111の先端面のA2−E2部分に作用する圧力は、作動室129aの圧力である。同じくB2−E2部分に作用する圧力は、作動室129bの圧力である。第2ベーン111の背面111cに作用する圧力は、密閉容器102の内圧である吸入圧力Psである。これらの圧力のベクトル和が第2ベーン111に作用する差圧力となる。
【0013】
図18Aは、シャフトの回転角、第1ベーンに作用する差圧力および第1ベーンの位置の関係を示すグラフである。なお、差圧力に関して、第1ベーン106がシャフト103の回転軸に接近する方向を正としている。第1ベーン106の先端面のA1−E1部分に作用する圧力は常に吸入圧力Psであるから、A1−E1部分と背面106cとの間には差圧力が作用しない。他方、B1−E1部分と背面106cとの間には、作動室124b(膨張室)の圧力の変化に対応した差圧力が作用する。
【0014】
図18Bは、シャフトの回転角、第2ベーンに作用する差圧力および第2ベーンの位置の関係を示すグラフである。先端面のB2−E2部分と背面111cとの間には、一定の差圧力F2が作用する。他方、A2−E2部分と背面111cとの間には、作動室129a(膨張室)の圧力の変化に対応した差圧力が作用する。第2ベーン111に作用する差圧力は、これらの和となる。背面106cに作用する圧力も密閉容器102の内圧である吸入圧力Psである。
【特許文献1】特開2005−106046号公報
【特許文献2】特開2007−77946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図18Aと図18Bとの比較から明らかなように、第2ベーン111に作用する差圧力(図18B)は、第1ベーン106に作用する差圧力(図18A)に比べて相当大きい。言い換えれば、第2ベーン111を第2ピストン109に向けて押し付ける力は、第1ベーン106を第1ピストン104に向けて押し付ける力に比べて大きい。第2ベーン111に過大な押し付け力が作用すると、第2ベーン111と第2ピストン109との間の摺動損失が大きくなることはもとより、第2ピストン109が第2ベーン111に強く押されることに基づいてシャフト103が傾くおそれがある。シャフト103が傾いた状態で回転すると、シャフト103を支える軸受113,114での摺動損失が増大するだけでなく、第1シリンダ105側にもその影響が及び、ひいては2段ロータリ膨張機100の信頼性や効率の低下を招来する。
【0016】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、第2ベーンに適切な差圧力が作用するように改善された2段ロータリ膨張機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明は、
第1シリンダと、
前記第1シリンダ内に回転可能に配置された第1ピストンと、
前記第1シリンダに対して同心状に配置された第2シリンダと、
前記第2シリンダ内に回転可能に配置された第2ピストンと、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが取り付けられたシャフトと、
前記第1シリンダに形成された第1ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第1シリンダと前記第1ピストンとの間の空間を第1吸入空間と第1吐出空間とに仕切るための第1ベーンと、
前記第2シリンダに形成された第2ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第2シリンダと前記第2ピストンとの間の空間を第2吸入空間と第2吐出空間とに仕切るための第2ベーンと、
前記第1吐出空間と前記第2吸入空間とを連通することによって1つの膨張室を形成するための貫通孔を有するとともに、前記第1シリンダと前記第2シリンダとを隔てている中板と、を備え、
前記第2ベーンと前記第2ピストンとの接点の平均位置が、前記第2ベーンの幅方向に関する中心線よりも前記第2吐出空間側にオフセットしている、多段ロータリ膨張機を提供する。
【0018】
上記本発明によれば、第2ベーンの先端面のうち第2吸入空間に面する部分の占める割合が、同じく第2吐出空間に面する部分の占める割合よりも大となる。つまり、第2吐出空間(吐出側の作動室)の圧力が作用する部分の面積よりも、第2吸入空間(膨張室)の圧力が作用する部分の面積が大きくなる。そのため、従来の2段ロータリ膨張機(図14)と比較して、第2ベーンの先端面に作用する圧力と第2ベーンの背面に作用する圧力との差が低減する。すなわち、第2ベーンに作用する差圧力が低減する。
【0019】
別の側面において、本発明は、前記第2ベーンの幅が前記第1ベーンの幅よりも狭い、多段ロータリ膨張機を提供する。
【0020】
幅の狭いベーンに作用する差圧力は、幅の広いベーンに作用する差圧力よりも小さい。したがって、幅の狭いベーンを第2ベーンとして用いることによって、第2ベーンに作用する差圧力を従来のものと比較して低減できる。
【0021】
さらに別の側面において、本発明は、(a)前記第2ベーン溝から前記第2ベーンが押し出される方向に進むにつれて前記第2ベーン溝の幅が次第に狭くなっている、または、(b)前記第2ベーン溝から前記第2ベーンが押し出される方向に対して傾斜した面を前記第2ベーンおよび前記第2ベーン溝の各々が有し、それら傾斜面が互いに向かい合っているとともに前記第2ベーン溝から前記第2ベーンが押し出されることに応じて互いの距離が縮小する、多段ロータリ膨張機を提供する。
【0022】
シリンダに形成されたベーン溝は、通常、潤滑油でシールされている。そうしないと、ベーンとベーン溝との隙間から作動流体が外部に漏れ、効率が悪くなるからである。上記本発明によれば、第2ベーン溝から押し出される方向に第2ベーンが進むにつれて、第2ベーンの所定部分と第2ベーン溝の壁面との距離が縮小する。そのため、ベーン溝が真っ直ぐ形成されている従来例と比較して、第2ベーン溝から第2ベーンが押し出される際に第2ベーンが潤滑油から受ける抵抗が大きくなる。この結果、第2ベーンに作用する差圧力が低減する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第2ベーンが過大な力で第2ピストンに向けて押されるのを回避できるので、第2ベーンと第2ピストンとの間の摺動損失を低減できるとともに、シャフトが傾いて回転するのを防ぐことができる。これにより、多段ロータリ膨張機の信頼性および効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の縦断面図である。図2Aは、図1の2段ロータリ膨張機のX3−X3線における拡大横断面図である。図2Bは、図1の2段ロータリ膨張機のX4−X4線における拡大横断面図である。
【0026】
図1に示すように、2段ロータリ膨張機200は、密閉容器202と、密閉容器202内の上部に配置された発電機201と、密閉容器202内の下部に配置された膨張機構230とを備えている。密閉容器202の下部には、膨張機構230の周囲が潤滑油で満たされるように、油貯まり202bが形成されている。密閉容器202の上部には、均圧管215が設けられている。密閉容器202の内部は、均圧管215を通じて導入される圧縮冷媒(圧縮機で圧縮された後かつ放熱器で放熱する前の冷媒)で満たされるため、高圧に保たれる(いわゆる高圧シェル)。
【0027】
膨張機構230は、第1シリンダ205、第1シリンダ205内に配置された第1ピストン204、第1シリンダ205に対して同心状に配置された第2シリンダ210、第2シリンダ210内に配置された第2ピストン209、第1ピストン204および第2ピストン209が取り付けられたシャフト203、および、第1シリンダ205と第2シリンダ210とを隔てている中板208を備えている。さらに、第1シリンダ205の下部に下軸受214(第1軸受)が設けられ、第2シリンダ210の上部に上軸受213が設けられている。
【0028】
図2Aに示すように、第1シリンダ205に形成された第1ベーン溝205aには、第1シリンダ205の内周面と第1ピストン204の外周面との間の空間を作動室224a(第1吸入空間)と作動室224b(第1吐出空間)とに仕切るための第1ベーン206が摺動可能に配置されている。図2Bに示すように、第2シリンダ210に形成された第2ベーン溝210aには、第2シリンダ210の内周面と第2ピストン209の外周面との間の空間を作動室229a(第2吸入空間)と作動室229b(第2吐出空間)とに仕切るための第2ベーン211が摺動可能に配置されている。第1ベーン206の後方に第1ばね207が設けられ、第2ベーン211の後方に第2ばね212が設けられている。
【0029】
図1に示すように、シャフト203は、第1シリンダ205と第2シリンダ210を貫通し、上軸受213および下軸受214によって回転可能に支持されている。シャフト203には、第1偏心部203aと第2偏心部203bとが設けられている。第1ピストン204が第1偏心部203aに嵌合し、第2ピストン209が第2偏心部203bに嵌合している。図2Aおよび図2Bでは、シャフト203の回転軸Oに対する第1偏心部203aの偏心方向と第2偏心部203bの偏心方向とが一致しているが、相違していてもよい。
【0030】
第1シリンダ205、第1ピストン204、第2シリンダ210および第2ピストン209の寸法(高さや径)は、適切な膨張比を確保する目的で、作動室229aおよび作動室229b(図2B)の合計容積が、作動室224aおよび作動室224b(図2A)の合計容積よりも大きくなるように設定されている。
【0031】
第1シリンダ205には、膨張させるべき作動流体を作動室224aに導くための吸入ポート205bが形成されている。第2シリンダ210には、膨張した作動流体を作動室229bから外部に導くための吐出ポート210bが形成されている。作動室224bと作動室229aとは、中板208を斜めに貫通するように設けられた貫通孔208aによって連通しており、1つの空間(膨張室)を形成している。吸入ポート205bには吸入管216が接続され、吐出ポート210bには吐出管217が接続されている。なお、吸入ポート205bは下軸受214に形成されていてもよく、吐出ポート210bは上軸受213に形成されていてもよい。
【0032】
膨張機構230の基本動作は、図14を参照して説明した従来の2段ロータリ膨張機のものと同じであるから、ここではその説明を省略する。
【0033】
発電機201は、密閉容器202に固定されたステータ201aと、シャフト203に固定されたロータ201bを有する。膨張機構230で作動流体が膨張するのに伴ってシャフト203およびロータ201bが回転する。これにより、ステータ201aの巻き線に起電力が発生し、電力が得られる。
【0034】
図2Bに示すように、第2ベーン211の幅方向WDに関する中心線L4は、その中心線L4に平行かつシャフト203の回転軸Oを含む基準平面H1からオフセットしている。第2ベーン211の中心線L4が基準平面H1上にない。基準平面H1から見て、第2ベーン211の中心線L4は、作動室229aに開口している貫通孔208aのある側にオフセットしている。つまり、第2ベーン211の中心線L4が基準平面H1からオフセットするように、第2シリンダ210に第2ベーン溝210aが形成されている。
【0035】
なお、幅方向WDとは、第2ベーン211の摺動方向(長手方向)およびシャフト203の回転軸Oに直交する方向である。図2Aおよび図2Bに示すように、本実施形態では、第1ベーン206の幅方向と第2ベーン211の幅方向とが一致しているが、このことは必須ではなく、相違していてもよい。
【0036】
図3に示すように、本実施形態で用いられている第2ベーン211は、一定の幅tを有する。第2ベーン211の先端面211aはR形状を有する。先端面211aの曲率中心Qは中心線L4上に位置している。
【0037】
ここで、第2ベーン211と第2ピストン209との接点をE4、第2ベーン211の先端面211aのエッジ(当該先端面と側面との境界)をA4,B4で表す。図2Bの構成によると、第2ピストン209および第2ベーン211の動きに伴う接点E4の先端面211a上での揺動運動の平均位置が、中心線L4よりも吐出ポート210b側に位置する。言い換えれば、接点E4の平均位置が中心線L4よりも作動室229b側にオフセットしている。そのため、先端面211aにおけるA4−E4部分の面積は、同じくB4−E4部分の面積よりも大きくなる。接点E4の平均位置とは、シャフト203が1回転する期間における、中心線L4から接点E4までの距離の平均値で特定される位置のことである。
【0038】
A4−E4部分には膨張中の作動流体の圧力が作用するので、従来の2段ロータリ膨張機(図14)に比べ、第2ベーン211を第2ばね212に向けて押し返す力が大きい。一方、第2ベーン211の背面に作用する圧力は、密閉容器202の内圧で一定である。したがって、本実施形態によれば、第2ベーン211を第2ピストン209に押し付ける力(差圧力)を低減できる。これにより、第2ベーン211と第2ピストン209との間の摺動損失が低減するとともに、過大な押し付け力に基づいてシャフト203が傾くのを防止できる。
【0039】
第2ベーン211の中心線L4と基準平面H1との距離u4は、第2ベーン211の幅tを基準として、例えばt/3≦u4≦2tの範囲にあるとよい。本実施形態では、貫通孔208aの作動室229aに面する開口および中心線L4が基準平面H1の一方の側に位置し、吐出ポート210bが基準平面L4の他方の側に位置するように設計がなされている。
【0040】
また、図2Aに示すように、第1ベーン206の幅方向WDに関する中心線L3は、基準平面H1からオフセットしている。第1ベーン206の中心線L3が基準平面H1上にない。基準平面H1から見て、第1ベーン206の中心線L3は、作動室224bに開口している貫通孔208aのある側にオフセットしている。つまり、第1ベーン206の中心線L3が基準平面L3からオフセットするように、第1シリンダ205に第1ベーン溝205aが形成されている。
【0041】
第1ベーン206の幅は、第2ベーン211の幅t(図3)に等しい。また、第1ベーン206の先端面206aの曲率半径も第2ベーン211のそれと等しい。
【0042】
第1ベーン206と第1ピストン204との接点をE3、第1ベーン206の先端面206aのエッジ(当該先端面と側面との境界)をA3,B3で表す。図2Aの構成によると、第1ピストン204および第1ベーン206の動きに伴う接点E3の先端面206a上での揺動運動の平均位置が、中心線L3よりも吸入ポート205b側に位置する。そのため、先端面206aにおけるB3−E3部分の面積は、同じくA3−E3部分の面積よりも大きくなる。
【0043】
B3−E3部分には膨張中の作動流体の圧力が作用するので、従来の2段ロータリ膨張機(図14)に比べ、第1ベーン206を第1ばね207に向けて押し返す力が低減する。一方、第1ベーン206の背面に作用する圧力は、密閉容器202の内圧で一定である。したがって、本実施形態によれば、第1ベーン206を第1ピストン204に押し付ける力(差圧力)を増大できる。
【0044】
図18Aを参照して説明したように、従来の2段ロータリ膨張機において、第1ベーンに作用する差圧力は比較的小さく、摺動損失の問題は生じにくい。しかし、差圧力が不足すると、第1ベーンと第1ピストンとが離れ、設計通りの性能を発揮できない可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、第1ベーン206を第1ピストン204に押し付ける力(差圧力)が十分に得られるので、第1ベーン206の先端が第1ピストン204から離れることに基づく作動室224aから作動室224bへの作動流体の漏れを防止できる。
【0045】
第1ベーン206の中心線L3と基準平面H1との距離u3は、第1ベーン206の幅tを基準として、例えばt/3≦u3≦2tの範囲にあるとよい。本実施形態では、貫通孔208aの作動室224bに面する開口および中心線L3が基準平面H1の一方の側に位置し、吸入ポート205bが基準平面H1の他方の側に位置するように設計がなされている。
【0046】
また、図1に示すように、第1シリンダ205および第2シリンダ210を上下から挟むような形で2つの軸受213,214が配置されており、それぞれがシャフト203を支持している。上下両側からシャフト203を支持することによって、第2ベーン211によって強く押されることに基づくシャフト203の傾きを効果的に低減できる。第2ベーン211に作用する押し付け力(差圧力)を調整することに基づく効果と相俟って、シャフト203の傾きをいっそう小さくすることが可能となる。
【0047】
さらに、本実施形態では、容積の小さい第1シリンダ205が下軸受214(第1軸受)側に配置され、容積の大きい第2シリンダ210が上軸受213(第2軸受)側に隣接して配置されている。上軸受213の軸受面(円筒面)の面積は、下軸受214の軸受面(円筒面)の面積より大きい。第1ベーン206に作用する押し付け力は相対的に小さいので、軸受面の面積が小さい軸受(下軸受214)を第1シリンダ205側に設けたとしても、シャフト203からの荷重を当該下軸受214で確実に受けることができ、シャフト203と下軸受214との間における摺動損失も低減できる。他方、第2ベーン211に作用する差圧力は相対的に大きく、第2ベーン211によってシャフト203は強く押されるが、軸受面の面積が大きい軸受(上軸受213)を第2シリンダ210側に設けることによって、シャフト203が傾くのを確実に防げる。さらに、軸受面の面積が大きい軸受(上軸受213)が電動機201側にあると、電動機201の回転に起因するラジアル荷重を上軸受213で受けることができ、軸受面における接触面圧を抑制した信頼性の高い構成を実現しうる。なお、本配置は、他の全ての実施形態に適用しうる。
【0048】
本実施形態は、CO2のような超臨界冷媒が作動流体として用いられる冷凍サイクル装置のための2段ロータリ膨張機として特に好適である。CO2冷凍サイクルでは、膨張前の作動流体の圧力(≒密閉容器202の内圧)と膨張後の作動流体の圧力との差が非常に大きく、第2ベーン211に作用する力が過大になりやすい。また、作動室224aでの作動流体の状態が超臨界であり、作動室224bおよび作動室229a(膨張室)での作動流体の状態が気液二相である。第1ベーン206と第1ピストン204との間に隙間が生じると、作動室224aから作動室224bへの作動流体の漏れが顕著となり、設計通りの性能が発揮されない。したがって、第1ベーン206および第2ベーン211の両者について、押し付け力を最適化することが望ましい。
【0049】
(変形例)
図2Bおよび図3に示す第2ベーン211に代えて、図4Bに示す第2ベーン311を用いることができる。図4Bに示す第2ベーン311の先端面311aはR形状を有する。先端面311aの曲率中心Q2は、第2ベーン311の幅方向WDに関する中心線L4からオフセットした位置にある。この第2ベーン311によれば、中心線L4に関して対称の形状を有するものより、作動室229aに面する部分の面積が大きい。したがって、この第2ベーン311を第2ピストン209に押し付ける力(差圧力)が効果的に低減されうる。
【0050】
同様に、図2Aに示す第1ベーン206に代えて、図4Aに示す第1ベーン306を用いることができる。図4Aに示す第1ベーン306の先端面306aはR形状を有する。先端面306aの曲率中心Q1は、第1ベーン306の幅方向WDに関する中心線L3からオフセットした位置にある。この第1ベーン306によれば、中心線L3に関して対称の形状を有するものより、作動室224bに面する部分の面積が大きい。したがって、この第1ベーン306を第1ピストン204に押し付ける力(差圧力)が効果的に増大されうる。
【0051】
図4Bに示すように、曲率中心Q2と中心線L4との距離s6は、第2ベーン311の幅tを基準として、例えばt/6≦s6≦t/2の範囲にあるとよい。図4Aに示すように、曲率中心Q1と中心線L3との距離s5は、第1ベーン306の幅tを基準として、例えばt/6≦s5≦t/2の範囲にあるとよい。また、曲率中心Q1,Q2が基準平面H1上に位置していてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
図4Aおよび図4Bに示すベーン306,311を用いる場合には、それらベーン306,311の中心線L3,L4がシャフト203の回転軸Oを含む平面上に存在していてもよい。図5Aは、本発明の第2実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の第1シリンダの拡大横断面図であり、図5Bは、第2シリンダの拡大横断面図である。図5Aは、図1のX3−X3線における横断面図に対応し、図5Bは、図1のX4−X4線における横断面図に対応している。
【0053】
図5Aに示すように、本実施形態では、第1ベーン306の中心線L1は、これに平行かつシャフト203の回転軸Oを含む基準平面H1上にある。すなわち、第1ベーン溝305aが従来の2段ロータリ膨張機のものと同じ位置(図17A)に形成されている。同様に、図5Bに示すように、第2ベーン311の中心線L1が基準平面H1上にあり、第2ベーン溝310aが従来の2段ロータリ膨張機のものと同じ位置(図17B)に形成されている。
【0054】
ベーン306,311は、それぞれ、図4Aおよび図4Bを参照して説明したものである。そのため、接点E5の先端面306a上での揺動運動の平均位置が、中心線L1よりも吸入ポート205b側に位置する。接点E5は、第1ベーン306と第1ピストン204との接点である。同様に、接点E6の先端面311a上での揺動運動の平均位置が、中心線L1よりも吐出ポート210b側に位置する。接点E6は、第2ベーン311と第2ピストン209との接点である。このことから明らかなように、本実施形態においても、第1実施形態と同じ効果が得られる。
【0055】
(第3実施形態)
本実施形態の2段ロータリ膨張機では、第1ベーンの幅と第2ベーンの幅とが相違している。具体的には、図6に示すように、幅t1を有する第1ベーン206と、幅t2を有する第2ベーン401とが用いられており、t1>t2である。その他の点は、第1実施形態または第2実施形態と共通である。第1ベーン206は、第1実施形態で用いているものと同一であってもよい。
【0056】
一般に、ロータリ膨張機(詳細にはローリングピストン型)において、ベーンをピストンに押し付ける力は、ベーンの背面に作用する圧力と作動室の圧力との差だけでなく、圧力が作用する面の面積に応じて変化する。つまり、狭い幅t2を有する第2ベーン401を用いると、第2ベーン401に作用する押し付け力の絶対値は必然的に小さくなる。結果として、第2ベーン401と第2ピストン209との間の摺動損失を低減できる。
【0057】
CO2のように高低圧差が大きい作動流体の使用を前提とする場合、強度不足に直結する部品の薄肉化が可能なのかどうかが問題となる。本実施形態の2段ロータリ膨張機によると、作動流体は、第1シリンダの一方の作動室で超臨界、他方の作動室で気液二相であるのに対し、第2シリンダでは両作動室で気液二相状態である。そのため、第1シリンダの作動室間の圧力差に比べると、第2シリンダの作動室間の圧力差は小さい。圧力差が小さいので、第2ベーンの側面に作用する荷重も比較的小さい。ゆえに、第2ベーンの薄肉化を図ったとしても、強度問題には発展せず、信頼性は損なわれない。
【0058】
他方、先に説明したように、第1ベーンに作用する押し付け力が不足すると、ベーンとピストンとが離れて作動流体が漏れ、効率が悪くなる。本実施形態では、十分な幅t1を有する第1ベーン206を用いているので、十分な押し付け力を確保でき、そうした問題の発生を防止できる。また、作動室間の圧力差が大きい第1シリンダ側での強度不足の問題も生じない。
【0059】
狭い幅t2を有する第2ベーン401は、第1実施形態のようにオフセットしていてもよいし、第2実施形態のようにオフセットしていなくてもよい。また、図4Bに示す第2ベーン311のように、第2ベーン401の先端面401aの曲率中心が、幅方向に関する中心線からオフセットしていてもよい。複数の実施形態を組み合わせることによって、各実施形態での効果を重畳的に得ることができる。
【0060】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の第2シリンダの拡大横断面図である。図8は、図7の部分拡大図である。本実施形態と次の実施形態では、ベーン溝における潤滑油の抵抗を利用して第2ベーンに作用する押し付け力の最適化が図られている。なお、図1の縦断面図に示すように、ベーン溝には油貯まり202bに保持された潤滑油が自由に出入りできる。
【0061】
図7に示すように、本実施形態で用いられている第2ベーン411は、第2ピストン209に接する先端面411aを含む軸部411jと、先端面411aとは反対側において軸部411jに連なっているとともに軸部411jよりも幅方向WDに突出している鍔部411kとを含む。軸部411jの幅は一定である。第2ベーン411の先端面411aはR形状を有する。第2ベーン411の中心線L1は、回転軸Oを含む基準平面H1上にある。
【0062】
図8に示すように、鍔部411kは中心線L1に対して傾斜した面である前面411fを有する。具体的には、前面411fは中心線L1に略垂直である。第2ベーン溝410aは、軸部411jを収容している部分の幅が狭く、鍔部411kおよび第2ばね212を収容している部分の幅が広くなっている。つまり、第2ベーン溝410aは、幅が狭い部分と広い部分との境界を構成する面であって、中心線L1に対して傾斜した面である段付き面410fを有する。段付き面410fにおいて、第2ベーン溝410aの拡幅が行われている。この段付き面410fは、鍔部411kの前面411fと向かい合っている。なお、中心線L1に平行な方向に関して、第2ばね212が配置されている側を後方側、第2ピストン209が配置されている側を前方側と定義する。
【0063】
図7および図8に示す構成によると、第2ベーン411が第2ベーン溝410aから押し出される方向に進む(前進する)ことに応じて、前面411fと段付き面410fとの距離(図示の例では前面411fを形成している部分MP1と段付き面410fとの距離G1)が縮小する。そのため、進行方向と逆向きの抵抗力が第2ベーン411に作用する。進行方向と逆向きの抵抗力は、第2ベーン411を第2ピストン209に向けて押し付ける力を弱める。結果として、第1〜第3実施形態で説明した効果と同じ効果が得られる。
【0064】
また、第2ベーン411の鍔部411kは、後方側に向かって凸の形状を有する。このようにすれば、第2ベーン411が回転軸Oから遠ざかる方向に進む(後退する)際に、第2ベーン411の移動に対する潤滑油の流動抵抗を小さくすることができる。
【0065】
なお、本実施形態を第1〜第3実施形態と組み合わせて実施してもよいことは、本発明の目的および効果から明らかである。このことは、次の第5実施形態についても同様である。
【0066】
(第5実施形態)
図9は、第5実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の第2シリンダの拡大横断面図である。図10は、図9の部分拡大図である。
【0067】
図9および図10に示すように、本実施形態では、幅方向WDに関する第2ベーン溝510aの壁面510fが中心線L1に対して傾斜している。すなわち、第2ベーン溝510aの幅が前方側に向かって次第に狭くなっている。中心線L1に対して傾斜した壁面510fは、第2ベーン溝510aの前端から始まっているとともに、中心線L1に平行な方向に関して第2ベーン211のストローク以上の長さを有する。他方、第2ベーン211は、第1実施形態と同じものであり、一定の幅tを有する。
【0068】
図9および図10に示す構成によると、第2ベーン211と第2ベーン溝510aとの隙間がくさび形状を示す。第2ベーン211が前進することに応じて、第2ベーン211の所定部分MP2と第2ベーン溝510aの壁面510fとの距離G2が縮小する。そのため、第2ベーン211が前進する際における潤滑油の流動抵抗が大きくなる。隙間がくさび形状を有することに基づく流動抵抗は、第2ベーン211を後方側に押し戻す方向に作用し、第2ベーン211を第2ピストン209に向けて押し付ける力を弱める。結果として、第1〜第3実施形態で説明した効果と同じ効果が得られる。なお、所定部分MP2は、本実施形態では、第2ベーン溝510aの傾斜した壁面510fに向かい合う、第2ベーン211の側面の任意の部分である。
【0069】
(膨張機一体型圧縮機への適用)
本発明の2段ロータリ膨張機は、膨張機一体型圧縮機に適用できる。図11に示すように、膨張機一体型圧縮機600は、密閉容器601と、密閉容器601内に配置された圧縮機構603と、密閉容器601内に配置された膨張機構605と、圧縮機構603と膨張機構605との間に配置された電動機609と、圧縮機構603、電動機609および膨張機構605を連結しているシャフト607とを備えている。膨張機構605として、各実施形態の2段ロータリ膨張機を用いることができる。
【0070】
(冷凍サイクル装置への適用)
図11に示す膨張機一体型圧縮機600を用いて、冷凍サイクル装置を構成できる。図12に示す冷凍サイクル装置700は、膨張機一体型圧縮機600と、圧縮機構603で圧縮された作動流体を冷却するための放熱器701と、膨張機構605で膨張した作動流体を蒸発させるための蒸発器703とを備えている。
【0071】
図13に示す他の冷凍サイクル装置800は、圧縮機801、放熱器701、膨張機803および蒸発器703を備えている。膨張機803として、各実施形態の2段ロータリ膨張機を用いることができる。
【0072】
図12に示す冷凍サイクル装置700では、作動流体から回収した動力がシャフト607を介して圧縮機構603に直接伝達されるのに対し、図13に示す冷凍サイクル装置800では、作動流体から回収した動力が回生電力に変換される。これらの冷凍サイクル装置700,800は、給湯機や空調機等の機器に用いられる。CO2などの冷媒が作動流体として用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の2段ロータリ膨張機は、冷凍サイクルにおける冷媒の膨張エネルギーを回収する動力回収手段として有用であるとともに、冷凍サイクルにおける冷媒以外の圧縮性流体からのエネルギー回収手段としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の縦断面図
【図2A】図1の2段ロータリ膨張機のX3−X3線における拡大横断面図
【図2B】図1の2段ロータリ膨張機のX4−X4線における拡大横断面図
【図3】第2ベーンの拡大平面図
【図4A】他の好適な第1ベーンの拡大平面図
【図4B】他の好適な第2ベーンの拡大平面図
【図5A】本発明の第2実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の第1シリンダの拡大横断面図
【図5B】本発明の第2実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の第2シリンダの拡大横断面図
【図6】本発明の第3実施形態にかかる2段ロータリ膨張機に用いられた第1ベーンおよび第2ベーンの拡大平面図
【図7】本発明の第4実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の第2シリンダの拡大横断面図
【図8】図7の部分拡大図
【図9】本発明の第5実施形態にかかる2段ロータリ膨張機の第2シリンダの拡大横断面図
【図10】図9の部分拡大図
【図11】膨張機一体型圧縮機の模式図
【図12】膨張機一体型圧縮機が用いられた冷凍サイクル装置の構成図
【図13】他の冷凍サイクル装置の構成図
【図14】従来の2段ロータリ膨張機を示す縦断面図
【図15A】図14に示す2段ロータリ膨張機のX1−X1線における横断面図
【図15B】図14に示す2段ロータリ膨張機のX2−X2線における横断面図
【図16】図14の2段ロータリ膨張機をCO2冷凍サイクルに適用した場合における、シャフトの回転角と作動室の圧力との関係を示すグラフ
【図17A】図15Aの部分拡大図
【図17B】図15Bの部分拡大図
【図18A】シャフトの回転角、第1ベーンに作用する差圧力および第1ベーンの位置の関係を示すグラフ
【図18B】シャフトの回転角、第2ベーンに作用する差圧力および第2ベーンの位置の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0075】
200 2段ロータリ膨張機
201 電動機
202 密閉容器
203 シャフト
204 第1ピストン
205 第1シリンダ
205a,305a 第1ベーン溝
205b 吸入ポート
206,306 第1ベーン
206a,306a 先端面
208 中板
208a 貫通孔
209 第2ピストン
210 第2シリンダ
210a,310a,410a,510a 第2ベーン溝
210b 吐出ポート
211,311,401,411 第2ベーン
211a,311a,401a,411a 先端面
213 上軸受(第2軸受)
214 下軸受(第1軸受)
224a,224b,229a,229b 作動室
410f 段付き面
411f 前面(傾斜面)
510f 壁面
600 膨張機一体型圧縮機
700,800 冷凍サイクル装置
701 放熱器
703 蒸発器
801 圧縮機
803 膨張機
WD 幅方向
L1,L3,L4 中心線
H1 基準平面
Q,Q1,Q2 曲率中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダと、
前記第1シリンダ内に回転可能に配置された第1ピストンと、
前記第1シリンダに対して同心状に配置された第2シリンダと、
前記第2シリンダ内に回転可能に配置された第2ピストンと、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが取り付けられたシャフトと、
前記第1シリンダに形成された第1ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第1シリンダと前記第1ピストンとの間の空間を第1吸入空間と第1吐出空間とに仕切るための第1ベーンと、
前記第2シリンダに形成された第2ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第2シリンダと前記第2ピストンとの間の空間を第2吸入空間と第2吐出空間とに仕切るための第2ベーンと、
前記第1吐出空間と前記第2吸入空間とを連通することによって1つの膨張室を形成するための貫通孔を有するとともに、前記第1シリンダと前記第2シリンダとを隔てている中板と、を備え、
前記第2ベーンと前記第2ピストンとの接点の平均位置が、前記第2ベーンの幅方向に関する中心線よりも前記第2吐出空間側にオフセットしている、多段ロータリ膨張機。
【請求項2】
前記第2ベーンの幅方向に関する中心線が、その中心線に平行かつ前記シャフトの回転軸を含む基準平面から前記第2吸入空間側にオフセットした位置にある、請求項1に記載の多段ロータリ膨張機。
【請求項3】
前記第2ベーンの先端面がR形状を有し、
R形状を有する前記先端面の曲率中心が前記中心線から前記第2吐出空間側にオフセットした位置にある、請求項1または2に記載の多段ロータリ膨張機。
【請求項4】
前記第2ベーンの幅が前記第1ベーンの幅よりも狭い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多段ロータリ膨張機。
【請求項5】
第1シリンダと、
前記第1シリンダ内に回転可能に配置された第1ピストンと、
前記第1シリンダに対して同心状に配置された第2シリンダと、
前記第2シリンダ内に回転可能に配置された第2ピストンと、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが取り付けられたシャフトと、
前記第1シリンダに形成された第1ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第1シリンダと前記第1ピストンとの間の空間を第1吸入空間と第1吐出空間とに仕切るための第1ベーンと、
前記第2シリンダに形成された第2ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第2シリンダと前記第2ピストンとの間の空間を第2吸入空間と第2吐出空間とに仕切るための第2ベーンと、
前記第1吐出空間と前記第2吸入空間とを連通することによって1つの膨張室を形成するための貫通孔を有するとともに、前記第1シリンダと前記第2シリンダとを隔てている中板と、を備え、
前記第2ベーンの幅が前記第1ベーンの幅よりも狭い、多段ロータリ膨張機。
【請求項6】
第1シリンダと、
前記第1シリンダ内に回転可能に配置された第1ピストンと、
前記第1シリンダに対して同心状に配置された第2シリンダと、
前記第2シリンダ内に回転可能に配置された第2ピストンと、
前記第1ピストンおよび前記第2ピストンが取り付けられたシャフトと、
前記第1シリンダに形成された第1ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第1シリンダと前記第1ピストンとの間の空間を第1吸入空間と第1吐出空間とに仕切るための第1ベーンと、
前記第2シリンダに形成された第2ベーン溝に摺動可能に設けられ、前記第2シリンダと前記第2ピストンとの間の空間を第2吸入空間と第2吐出空間とに仕切るための第2ベーンと、
前記第1吐出空間と前記第2吸入空間とを連通することによって1つの膨張室を形成するための貫通孔を有するとともに、前記第1シリンダと前記第2シリンダとを隔てている中板と、を備え、
(a)前記第2ベーン溝から前記第2ベーンが押し出される方向に進むにつれて前記第2ベーン溝の幅が次第に狭くなっている、または、
(b)前記第2ベーン溝から前記第2ベーンが押し出される方向に対して傾斜した面を前記第2ベーンおよび前記第2ベーン溝の各々が有し、それら傾斜面が互いに向かい合っているとともに前記第2ベーン溝から前記第2ベーンが押し出されることに応じて互いの距離が縮小する、多段ロータリ膨張機。
【請求項7】
前記シャフトを支持するように前記第1シリンダ側に配置された第1軸受と、
前記シャフトを支持するように前記第2シリンダ側に配置された第2軸受と、をさらに備え、
前記第2軸受の軸受面の面積が前記第1軸受の軸受面の面積よりも大きい、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多段ロータリ膨張機。
【請求項8】
作動流体を圧縮するための圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された作動流体を冷却するための放熱器と、
前記放熱器で冷却された作動流体を膨張させるための膨張機と、
前記膨張機で膨張した作動流体を蒸発させるための蒸発器と、を備え、
前記膨張機として、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多段ロータリ膨張機が用いられた、冷凍サイクル装置。
【請求項9】
作動流体が二酸化炭素である、請求項8に記載の冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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