説明

多段送り装置

【課題】多段送り装置について、二次元以上の動作性・安定性・制御性・安全性・高い送り精度・高速性・動作範囲の拡大化・省スペース・構成の簡潔性・保守点検の簡易性・低価格などを満足させる。
【解決手段】複数の送り機械ユニット111・311・711が複数の段をなして一体的に組み立てられている。互いに隣接する二つの送り機械ユニットのうち、後段の送り機械ユニットが、前段の送り機械ユニットによって支持されている。それぞれの送り機械ユニットにおいて走行路体121・321・721と移動体171・371・771との相対構成で定まる移動体の往復動方向が、水平方向、垂直方向、上下勾配のある傾斜方向、垂直軸線を中心にした回転方向、水平軸線を中心にした回転方向、上下勾配のある傾斜軸線を中心にした回転方向のうちから選択されたいずれかである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人および/または物の搬送・輸送・移送・移動などに供する機械関係の技術分野に属するものであって、移動体を往復動させるための多段送り装置に関する。本発明は、また、ロボット式の作業機械に適用することのできる二次元ないし高次元の作業用多段送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、ロボット式の作業機械が各種の生産部門で多用されている。この種の機械については産業用ロボットなどと称されている。産業用ロボットについていうと、これは巧緻な動作をするロボットアームやロボットハンドに依存して所定の作業を行うものである。
【0003】
このようなことから、ロボットアームやロボットハンドの場合は、前後・左右・上下・回転などの動きが複合するように、かつ、それが巧緻な目的動作となって現出するように構成されている。かかる産業用ロボットには、また、給電ケーブル・通信ケーブル・制御ケーブルなど数多くのケーブルが付帯する。それは自明のとおり、産業用ロボットが駆動用や制御用の電気エネルギを受けて高度に機能する高性能のロボットアーム・ロボットハンドなどを具備しているからである。
【0004】
工場などに配備された産業用ロボットについては、一区域での作業を終えるごと、つぎの一区域(未作業域)へとシフトさせて作業を続行させるのが望ましいこともある。その理由は、このようにすることで産業用ロボットの遊休状態が回避されてロボット稼働率が高まるからである。この技術的要請に対しては産業用ロボットを移動させるだけでよく、したがって簡単に応えられるかのようである。しかしながら実情は、産業用ロボットに付帯する多数のケーブルが当該ロボットを拘束したり自由な移動を阻んだりするので、これを困難なものにしている。
【0005】
また、大きなワークを取り扱う産業用ロボットたとえば大型液晶パネル用のガラスを取り扱う産業用ロボットなどは、それにともないロボットが大型化したりする。これとともにロボットをシフトさせるための送り装置も大型化する。大型化した装置の場合は、シフト速度が低下しがちでサイクルタイムも遅くなるから作業能率を高めるのが困難になる。加えてこれは、巨額の設備費(イニシャルコスト)が要求される上にランニングコストも高く、省エネルギの点でも改善が望まれる。したがって大型化した産業用ロボットについては、ケーブルに起因した課題以外にもハードルの高い課題が残されている。
【0006】
一方、ベルトコンベヤ送り装置・ネジ式送り装置・シリンダ式送り装置・タイミングベルト式送り装置・リフト式送り装置・ロボットなどの送り装置を代替するものとして、特許文献1・2に開示された送り装置がある。
【0007】
特許文献1・2の送り装置は、位置決め精度・長距離搬送・遠隔搬送・制御性・高精密送り・高速送り・低価格・簡潔構成・省スペース・軽量化・発塵対策・事故発生に対する安全対策などを満足させるので望ましいものである。このほかにも、特許文献1・2の送り装置は、運転状態の静穏安定化に基づく高精度化と耐久性の向上と構成のコンパクト化や、線状体の適正な巻き取り巻き戻しに基づく高精度化、耐久性の向上などがはかられているので望ましいといえる。したがって、このような特徴を有する当該文献技術が産業用ロボットなどにも適用できるときは、かなりの範囲内で既述の課題が解消するというような期待感をもつことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−017292号公報
【特許文献2】特開2007−127138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1・2の送り装置は、移動体を往復動させるときの方向が直線的な一種類だけというものである。このような一次元送り装置の場合は前後・左右・上下など自由な動きが要求される産業用ロボットに応えることができない。もちろんこの文献には、高機能で高性能の産業用ロボットに適用する上での技術示唆もみられない。
【0010】
さらに特許文献1・2の送り装置において、たとえば一本の連続した線状体で移動体を三次元的(前後方向・左右方向・上下方向など)に操作可能とする場合は、きわめて複雑な技術内容になることが避けられない。そのように複雑化する送り装置について、これを故障などの起こりがたい安定したものとして提供するには、難度の高い技術創作性が要求される。
【0011】
本発明はこのような技術課題に鑑みなされたものである。すなわち本発明は、線状体を介して移動体を走行させる方式の送り装置について、二次元以上の動作性・安定性・制御性・安全性・高い送り精度・高速性・動作範囲の拡大化・省スペース・構成の簡潔性・保守点検の簡易性・低価格などを満足させることのできる多段送り装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る方法装置は所期の目的を達成するために下記(01)〜(05)の課題解決手段を特徴とするものである。
(01) 複数の送り機械ユニットが複数の段をなして一体的に組み立てられており、かつ、この組み立て構成において互いに隣接する二つの送り機械ユニットのうち、相対的に後段にある送り機械ユニットが、相対的に前段にある送り機械ユニットによって支持されていること、および、
それぞれの送り機械ユニットが走行路体とその走行路体に対して往復動自在に配備された移動体とを具備しており、かつ、それぞれの送り機械ユニットにおいて走行路体と移動体との相対構成で定まる移動体の往復動方向が、水平方向、垂直方向、上下勾配のある傾斜方向、垂直軸線を中心にした回転方向、水平軸線を中心にした回転方向、上下勾配のある傾斜軸線を中心にした回転方向のうちから選択されたいずれかであること、および、
上記における少なくとも二つの送り機械ユニットのそれぞれが、移動体に接続されたものであってその移動体の往動側に配線された線状体と、移動体往動側の線状体を介して移動体と連係しているものであって当該線状体を移動体の往動方向へ引き取ったり復動方向へ追随させたりするための線状体操作機と、移動体に接続されたものであってその移動体の復動側に配線された線状体と、移動体復動側の線状体を介して移動体と連係しているものであって当該線状体を移動体の復動方向へ引き取ったり往動方向へ追随させたりするための線状体操作機とを備えているとともに、移動体と線状体操作機との間で各線状体を保持して案内するための案内部材を備えていること
を特徴とする多段送り装置。
(02) 上記(01)に記載されたものにおいて、
水平方向を移動体の往復動方向とする送り機械ユニットと、垂直方向を移動体の往復動方向とする送り機械ユニットと、回転方向を移動体の往復動方向とする送り機械ユニットとを含むものであることを特徴とする多段送り装置。
(03) 上記(01)または(02)に記載されたものにおいて、
互いに隣接する二つの送り機械ユニットにおいて、相対的に前段にある送り機械ユニットの走行路体が、相対的に後段にある送り機械ユニットの移動体を兼ねるものであることを特徴とする多段送り装置。
(04) 上記(01)〜(03)にいずれか記載されたものにおいて、
それぞれの線状体のための線状体操作機が単一のものからなり、その単一の線状体操作機と移動体とがそれぞれの線状体を介して連係していることを特徴とする多段送り装置。
(05) 上記(01)〜(04)にいずれか記載されたものにおいて、
張力調整用の線状体調整機が線状体に付帯して設けられていることを特徴とする多段送り装置。
【0013】
<用語の意味>
本発明に係る多段送り装置において、送り機械ユニットの説明で用いられる「段」の語は、相互に組み合わされた二つ以上の送り機械ユニットが、上下・前後・左右・内外のうちのいずれか一つ以上の態様で近接していたり、または、重なり合っていたりすることをいうものである。したがって「段」については、「上下に並ぶ段」「前後に並ぶ段」「左右に並ぶ段」「内外に並ぶ段」などがある。さらに「多段」は、「二段以上の段」を意味する語である。
【発明の効果】
【0014】
本発明係る多段送り装置は下記(11)〜(23)のような効果を有する。
(11) 複数の段をなして一体的に組み立てられた複数の送り機械ユニットには、それぞれ往復動自在な移動体がある。これら移動体の移動を総合的にみるとき、これは三次元空間上での二次元動作〜三次元動作ということになる。したがって、各移動体がそれぞれ移動することにより、最終段の移動体が目標点(三次元位置)に到達することとなる。これについて装置姿勢の観点からみると、最終段の移動体が変位して目標点に達することは、装置の一部が姿勢制御されたことと等価になる。ゆえに、このような技術内容のものは、人および/または物の搬送・輸送・移送・移動などに供するところの有用で有益な多段送り装置になり、かつ、ロボット式作業機械にも有効活用することのできる二次元ないし高次元の作業用送り装置にもなる。
(12) それぞれの送り機械ユニットにおける移動体についていうと、これは線状体操作機を介した遠隔操作で往復動するものである。この移動体の往復動に際しては、線状体操作機で線状体を巻き取ったり巻き戻したりするだけであり、たとえば長尺ケーブルなどを引きずりながら移動体を移動させるようなことがないのである。したがって移動体は、ケーブルなどに起因して機能障害を惹起したりケーブルで拘束されたりすることがなく、所定の領域内を自由に移動することができる。このような効果は、送り機械ユニットの段数の多寡にかかわらず確保できるが、とくに装置を高機能化するために送り機械ユニットの段数を多くする実施形態のときは、この効果による利得が大きいものになる。
(13) 送り機械ユニットについては、二つを組み合わせることで二次元動作性が得られ、三つ以上を組み合わせることでそれに応じた高次元の動作性が得られる。これは多本数の多軸化などで所要次元の動作性を得る既存の産業用ロボットと比較した場合、構成の簡潔化を大幅にはかることができる。装置構成が簡潔になるときは、また、価格についてもコストダウンできるようになる。
(14) 送り機械ユニットの移動体は線状体操作機からの牽引力を受けて所定方向に移動するものである。その際、線状体操作機の牽引力は線状体を介して移動体に確実に伝わり、かつ、これで移動する移動体を走行路体が安定に支持する。したがって移動体は往復動するときに確実で安定した動作を行うものとなる。
(15) 線状体操作機と線状体との協働や走行路体による支持で確実かつ安定に移動する移動体の移動制御は、これを的確に行うことが送り精度を高める上できわめて重要な事項といえる。かかる移動制御については、線状体の動きをとらえるという簡単な手段で確実性を期すことができるから、低コストでの高制御が実現することとなる。
(16) 複数の段をなして組み合わされた各送り機械ユニットの稼働状態についていうと、これらのそれぞれは、移動体が走行路体の上を安定移動し、その移動体が線状体で安定牽引されるというものであるから、危険部位などがとくにない。仮に不測のトラブルが発生するとしても移動体が走行路体上のどかで停止するぐらいのものである。したがって装置を全体的にみた場合、高度で複雑な動きをするものではあるが安全性は高い。
(17) 各送り機械ユニットは構成面で共通するところが多いから、構成部品も同種ないし同類のものが多くある。このような場合はその共通性に依存して装置全体の点検や保守が容易に行える。ゆえに保守点検についての簡易性があり、これに要する費用も節減できることとなる。
(18) 走行路体や線状体などに依存して移動(動作)する移動体の場合、設備スペースの有効範囲内において走行路体を長大化したり線状体を長尺化したりすることにより、動作範囲の拡大がはかれるものである。したがって小規模はもちろんのこと、設備スペースを最大限に有効活用した大規模の送りについても、この要求を満たすことができる。しかもそれは、走行路体の長大化や線状体の長尺化を主体にしたものであるから、低コストで簡単に実施することができる。
(19) 各送り機械ユニットは、前後・左右・上下・傾斜・回転など、移動体の往復動方向が定まっているものである。このような装置の場合は、送りによる最終移動体の到達目標点が設備環境や設備条件ごとに異なるときでも、適当な上記方向性をもつ送り機械ユニットを二つ以上組み合せることで対応できるようになる。換言してこれは、設置スペースを有効活用しつつ最終移動体の到達目標点を設定し、それに応じて所定方向性の上記送り機械ユニットを複数組み合せればよいのであるから、設置スペース有効活用による省スペースも簡単にはかれるようになる。
(20) 二つ以上組み合わされた各送り機械ユニットが、水平方向を移動体の往復動方向とするもの、垂直方向を移動体の往復動方向とするもの、さらに回転方向を移動体の往復動方向とするものをも含む場合は、それぞれの移動体が前後・左右・上下などの所定方向に移動するだけでなく、移動体の回転による方向転換もこれに加わるようになるから、実用的で汎用性の高い装置となる。
(21) 互いに隣接する二つの送り機械ユニットにおいて、相対的に前段にある送り機械ユニットの走行路体が、相対的に後段にある送り機械ユニットの移動体を兼ねるものである場合は、その兼用により部品数が削減できるため、それがコストダウンに通じる。
(22) それぞれの線状体のための線状体操作機が各段ごとに単一のものからなり、その各段における単一の線状体操作機と移動体とが、その各段ごとの線状体を介してそれぞれ連係している場合は、各段ごとにそれぞれ一つの線状体操作機を装備するだけでよいので、これもコストダウンに貢献することができ、しかも線状体操作機の数が少ない分だけ、その操作が簡単になる。
(23) 張力調整用の線状体調整機が線状体に付帯して設けられているものの場合は、それぞれの線状体が常に適切に緊張するようになるから、線状体に起因したトラブルが発生しがたいものになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明装置の一実施形態についてその左側領域を示した正面図である。
【図2】本発明装置の一実施形態についてその右側領域を示した正面図である。
【図3】図1の状態からつぎの状態に変化させた左側領域の正面図である。
【図4】図3の状態からつぎの状態に変化させた左側領域の正面図である。
【図5】図4の状態からつぎの状態に変化させた左側領域の側面図である。
【図6】本発明装置の一実施形態における線状体操作機の断面図である。
【図7】図5の状態の全体を示した平面図である。
【図8】図5の状態の全体を示した正面図である。
【図9】図5の状態の全体を示した側面図である。
【図10】本発明装置における最終段の移動体について、別の一例を略示した正面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る多段送り装置の実施形態を以下添付図面に基づき説明する。
【0017】
図1〜図9に例示されたものは本発明装置の一実施形態である。これらの図では、説明の便宜上、一部の部品などを透視して示した箇所がある。図1・図2ついていうと、それは本発明装置が大きいために左側・右側の両領域が分割表示されたものである。
【0018】
図1〜図9に例示された本発明装置において、一つの送り機械ユニット111は、走行路体121・線状体操作機131・線状体調整機151・移動体171のほか、二本の線状体181A・181Bや案内部材191を主たる構成要素として具備するものである。
【0019】
上記送り機械ユニット111において、走行路体121は金属・合成樹脂・複合材など機械的特性の優れた材料からなり、ごく一部の部品がゴム製からなることもある。代表的な一例でいうと、走行路体121の骨格や主要部はそのほとんどが金属製である。図1〜図2を参照して明らかなように、左右方向に長くて断面凹型をなす走行路体121は二つの路面部122a・122bをその上面両側に有している。走行路体121は最下段に位置する支持台ともいうべきものである。このような支持台タイプの走行路体121は周知の例でいうと、枠材・板材・脚材などを組み立てることにより構成される。この場合の通常の態様としては両路面部122a・122bが平坦面で形成される。走行路体121の両路面部122a・122b上には、その一端部(左端部)から他端部(右端部)にわたり、左右一対のレール123a・123bが敷設されている。かかる両レール123a・123bは、その上面をローラ型の車輪が転動したりスライド型の摺動部材が摺動したりするのに適している。
【0020】
上記送り機械ユニット111における線状体操作機131は、図1・図5で明らかなように、走行路体121の一端部においてその内部に配置されている。具体的にいうと、線状体操作機131は枠材・脚材・吊材・台材その他周知の据付部材(図示せず)を介して所定位置や所定高さを満足するように固定配置されている。線状体操作機131については、周方向に正逆回転自在かつ軸方向に往復動自在な巻胴(円筒形)を備えた動力式線状体巻取機であれば、種々のタイプのものを採用することができる。ちなみに図示例の線状体操作機131は、図6で明らかな取付用基盤132・正逆回転自在な巻取機134・原動機141・カップリング143などを主要部品にして構成されているものである。このうちで上記据付部材に取り付けられた取付用基盤132は、所定の間隔をおいてその盤面から立ち上がる一対の軸受スタンド133a・133bと取付スタンド133cとを有するものであり、取付スタンド133cは軸受スタンド133aとの相対間隔を保持しているものである。正逆回転自在な巻取機134は、同軸状に組み合わされた五部品(スプライン軸135・スプライン筒136・管状ないし円筒状の雄ネジ軸137・同じく管状ないし円筒状の雌ネジ軸138・円筒形の巻胴139)を備えている。この五部品は同軸状で周方向に重なり合った多重構造をしているものである。より詳しくいうと、軸心部にはスプライン軸135があり、中間部には雄ネジ軸137と雌ネジ軸138とがあり、最外周部には巻胴139がある。この五部品については、また、それぞれがつぎのような相対構成になっている。その一つは、スプライン軸135の外周面に形成されて軸方向に沿うスプライン凹凸部135aと、スプライン筒136の内周面に設けられて軸方向に沿うスプライン凹凸部136aとが、双方の凹凸部の嵌め合いによりスプライン嵌合されていることである。他の一つは、雄ネジ軸137の外周面に形成された雄ネジ137bと、雌ネジ軸138の内周面に形成された雌ネジ138bとが、その雄ネジ・雌ネジの嵌め合いによりネジ嵌合されていることである。さらに他の一つについていうと、巻胴139と雌ネジ軸138とは互いに干渉することなく内外に嵌り合うものである。このほかは、スプライン筒136や雄ネジ軸137が上記径方向の位置を保持してビス140で巻胴139に取り付けられている。したがってスプライン筒136・雄ネジ軸137・巻胴139の三部品はこれらが一体となって動くものである。巻取機134における上記五部品はつぎのようにも支持されている。スプライン軸135の場合は、周知の軸受(ベアリング)を有する一対の軸受スタンド133a・133bでそのスプライン軸両端部が回転自在に支持されており、かつ、当該スプライン軸135の一端部が一方の軸受スタンド133aを貫通している。そしてスプライン軸135の外周にある三部品(スプライン筒136・雄ネジ軸137・巻胴139など)は当該スプライン軸135に依拠して支持されている。雌ネジ軸138の場合は、これが回転することのないように軸受スタンド133bに固定されて巻胴139側に突出している。かかる支持態様において巻胴139と雌ネジ軸138は、これらの内外周面間に雌ネジ軸138を導入導出するようにしながら軸方向に往復動するものである。その際に巻胴139は正逆回転もするのである。一方、モータとも称される原動機141は、公知ないし周知のサーボモータまたはパルスモータからなり、モータ回転子と一体回転する出力軸142を有しているものである。原動機141は取付スタンド133cの外側面に取り付けられているとともに、その出力軸142が取付スタンド133cをスプライン軸135側へと貫通している。こうした態様とすることにより、巻取機134と原動機141は、巻取機134のスプライン軸135と原動機141の出力軸142とが同一軸線上で互いに対向かつ近接するのである。カップリング143はこのような関係にあるスプライン軸135と出力軸142とを相互に連結している。
【0021】
上記の線状体操作機131については、既述の説明と図1で明らかなように、走行路体121の一端部(左端部)に配置されている。これに対して機械ユニット111の線状体調整機151は、図2のごとく走行路体121の他端部(右端部)に配置されている。線状体調整機151で主要な構成要素の一つは、駆動力を発揮するための原動機(モータ)152である。原動機152は上記原動機141と同様のもので、その出力軸153の先端にはネジ軸からなる調整軸154が周知のカップリング155で連結されている。この場合の原動機152は後述のとおり、支持スタンド156を介して所定位置に据え付けられるものであり、調整軸154も後述のように支持スタンド157を介して所定位置で支持されるものである。線状体調整機151で主要な構成要素の他の一つはスライド支持台158であり、さらに他の一つはスライド支持台158上を図2の左右方向にスライドするスライダ159である。スライド支持台158は、直状で互いに平行する両側部(両側縁部)をガイドレールとするか、あるいは、図示しないガイドレールを当該スライド支持台上に有するものである。スライダ159は、スライド支持台158の上記ガイドレールと相対係合自在な摺動部材160をその底面に有している。スライダ159は、また、その上面より立ち上がる前後一対の軸受板161a・161bを具備するとともに、ネジ孔を有してその左端部の上面より立ち上がるネジ孔部162をも具備するものである。スライダ159には、さらに、後述の案内部材191が取り付けられている。それは両軸受板161a・161bにわたって架設された支軸163を介して、案内部材191が回転自在に取り付けられているものである。この線状体操作機151の各構成要素、すなわち、原動機152・スライド支持台158・スライダ159とこれに付帯する各部材については、機械ユニット111の左端部側において走行路体121に組み付けられている。そのために走行路体121の左端部には、適当間隔をおいてそれぞれ配置された二つの支持スタンド156・157とスライド支持台158とが周知の取付手段で取り付けられているものである。このうちで一方の支持スタンド156には原動機152が取り付けられている。他方の支持スタンド157では周知にベアリングを介在して調整軸154が回転自在に支持されていて、この調整軸154が支持スタンド157を貫通している。一方でスライダ159は、図2の左右方向にスライド自在なるようスライド支持台158上に乗せられて摺動部材160がこの状態を保持しているものである。かかる取付態様において、調整軸154とスライダ159のネジ孔部162とが互いに噛み合い連係されている。線状体調整機151は、後述する線状体181A・181Bの張力を検出してその張力を一定に保持するものである。その場合に線状体181A・181Bの伸縮をも吸収するものである。この張力保持は、原動機152の動力を受けて回転する調整軸154が図2の左右方向に進退し、それにともないスライダ159が同方向に移動することで行われるものである。したがってこのような線状体調整機151については、油圧式または空気圧式のシリンダを介してスライダ159を押引するものでもよいことになる。このほか、線状体に対して一定の張力を付与することのできるダンサーローラやテンションローラなども簡便な線状体調整機151になり得る。
【0022】
上記送り機械ユニット111における移動体171は図1やその他図で明らかなテーブル型をしている。図5を参照して明らかなように、移動体171の下面には上記走行路体121の両レール123a・123bと対応する前後一対の摺動部材172a・172bが設けられている。摺動部材172a・172bは、車輪・ローラ・ボールのような回転部材であっても構わない。移動体171の場合は、両レール123a・123bと両摺動部材172a・172bとが互いに係合する態様で走行路体121の両路面部122a・122b上に乗せられ、それで走行路体121上を図1・図2の左右方向に往復動するものである。図示はされていないが、送り機械ユニット111には、移動体171が両レール123a・123b上を図1の左端まで移動して停止したときとか、図2の右端まで移動して停止したときなど、それらの位置に移動体171をロックするためのロック手段が設けられる。この場合のロック手段は雌雄一対のロック部材を主体にして構成されるものである。一例として、雌雄一対のロック部材は相互に対応する電磁マグネットと吸着用の磁性体とからなり、その一方が走行路体121の適当部位に設けられ、その他方が移動体171に設けられる。他の一例として、雌雄一対のロック部材は相互に対応するロックピンとロック孔とからなり、その一方が走行路体121の適当部位に設けられ、その他方が移動体171に設けられる。さらに他の一例として、雌雄一対のロック部材は相互に対応するクランプ部材と被クランプ部材とからなり、その一方が走行路体121の適当部位に設けられ、その他方が移動体171に設けられる。移動体171の他の構成については後述する。
【0023】
上記送り機械ユニット111における二本の線状体181A・181Bは、抗張力性に富む強靱な可撓性の長尺物からなるもである。両線状体181A・181Bの太さはとくに問わないが、細くて丈夫なものが望ましい。両線状体181A・181Bの具体的な材料として金属・合成樹脂(FRPを含む)・これらの複合体などをあげることができ、アラミッド繊維(商品名:ケブラー)製なども使用できる。両線状体181A・181Bの代表的一例としては金属製ワイヤが用いられる。この両線状体181A・181Bは整然とした螺旋巻き状態で巻取機134の巻胴139に巻き取られたり、その巻胴139から巻き戻されたりするものである。この整列螺旋巻きのため、巻胴139の周面には線状体181A・181Bの嵌り込む螺旋溝が形成されていたりする。二本の線状体181A・181Bのうちで、一方の線状体181Aは、その一端部(巻き取り巻き戻し用の端部)が巻胴139の一端部外周面に繋がれて(固定されて)いるとともにその他端部が移動体171の適当部位たとえば図1の固定部173に繋がれている。これに準じて他方の線状体181Bも、その一端部(巻き取り巻き戻し用の端部)が巻胴139の他端部外周面に繋がれているとともにその他端部が移動体171の適当部位(例:固定部173)に繋がれている。この場合の両線状体181A・181Bは一本に繋がったものであってもよいし、二本が別々に切り離されたものであってもよい。両線状体181A・181Bが一本に繋がったものであるとき、それは移動体171に固定する部分において互いに繋がっている。これについては、一方の線状体181Aが巻胴139の中央部から巻胴139の一端部に向けて螺旋巻きされ、他方の線状体181Bが巻胴139の中央部から巻胴139の一端部に向けて螺旋巻きされる。この際のそれぞれの巻き付け方は、巻胴139を正逆回転させたときに両線状体181A・181Bのいずれか一方が巻き取られながらその他方が巻き戻されるというものである。
【0024】
図1〜図9の実施形態で送り機械ユニッ111の両線状体181A・181Bは、それぞれの巻き戻し端部が移動体171に連結されるものである。したがってこの二つの線状体181A・181Bは、巻取機134の巻胴139から移動体171へとわたるものである。巻取機134と移動体171との間でそれぞれの線状体181A・181Bは、回転自在なプーリ(またはシーブ)からなる案内部材191すなわち線状体調整機151に組み込まれた案内部材191に掛けられる。したがって両線状体181A・181Bはいずれも巻取機134の巻胴139と移動体171とにわたるものとなり、それで巻き取り巻き戻し自在に配線される。両線状体181A・181Bの索取りは、機能的に問題のないかぎり任意でよく、その索取りいかんで案内部材が増設されたりするものである。その場合、線状体調整機151と関係するのは既述の案内部材191であり、他の案内部材は線状体調整機151と直接関係しないものである。
【0025】
このほか走行路体121の所定部上には線状体用の張力センサ(図示せず)が設けられる。このような張力センサは周知である。その一例として線状体181A・181Bに接触するタイプの接触型があり、他の一例として線状体181A・181Bに接触しないタイプの非接触型(光学式)がある。この張力センサは、線状体181A・181Bの張力を検出してその検出信号を制御器(図示せず)に入力し、それに基づいて制御器が線状体調整機151の原動機152を所定どおりに駆動させるというものである。このような張力センサや制御器は、線状体調整機151に組み込まれていてもよいものである。
【0026】
図1〜図9に例示された本発明装置において、他の一つの送り機械ユニット311は、上記送り機械ユニット111に組み付けられるものである。この場合において、上記送り機械ユニット111の移動体171は、当該送り機械ユニット311の走行路体321をも兼ねるものである。したがって、以下の説明における既述の移動体171は、これを走行路体321ということがある。
【0027】
上記送り機械ユニット311も、図1やその他で明らかなように、走行路体321と線状体操作機331と線状体調整機351と移動体371と線状体381A・381Bと案内部材391とを主たる構成要素として具備するものである。
【0028】
上記送り機械ユニット311の走行路体321について、図1とその他図を参照して説明する。走行路体321の中央部には下方へ突出する筒状部322が設けられている。筒状部322は円筒形をしていて両端が開放されているものである。筒状部322の下部にはギアボックス323・L字形の支持体324・コ字形の取付用基盤325などが一体的に設けられている。このうちで円盤形をなすギアボックス323は中央部が筒状部322の内径と同程度に開口されているとともに周壁の一部も開口されているものである。
【0029】
上記送り機械ユニット311の移動体371を構成する一部の部品ないし部材は、雌ネジ付き歯車341・歯車344・正逆回転自在な巻取機346と、これに付帯する部品群である。そのうちで雌ネジ付き歯車341は、内周面に雌ネジ342を有するとともに外周面に歯車用の歯部343を有するものである。雌ネジ付き歯車341は、周知のベアリングを介在して上記ギアボックス323内に回転自在に収納されており、その歯部343の一部がギアボックス周壁の開口からギアボックス323外に露出しているものである。雌ネジ付き歯車341と対をなす歯車344の場合は、上記ギアボックス323外にあって雌ネジ付き歯車341の歯部343に噛み合うものである。歯車344はスプライン軸345の一端部に取り付けられるものである。
【0030】
上記スプライン軸345・取付用基盤325・巻取機346は他の構成部材とともに線状体操作機431を構成しているものである。かかる線状体操作機431は図6の線状体操作機131とほぼ同様のものであるが、これには図6で述べた原動機141やカップリング143がない。この線状体操作機431についてつぎの段落で簡単に説明する。
【0031】
線状体操作機131の取付用基盤132は一対の軸受スタンド133a・133bを有するものである。線状体操作機431の取付用基盤325もこれと同様、一対の軸受スタンド(図示符号なし)を有するものである。線状体操作機131の正逆回転自在な巻取機134は、同軸状に組み合わされた五部品(スプライン軸135・スプライン筒136・管状ないし円筒状の雄ネジ軸137・同じく管状ないし円筒状の雌ネジ軸138・円筒形の巻胴139)を備えている。線状体操作機431で正逆回転自在な巻取機346もこれと同様、同軸状に組み合わされた五部品(スプライン軸・スプライン筒・管状ないし円筒状の雄ネジ軸・同じく管状ないし円筒状の雌ネジ軸・円筒形の巻胴)を備えている。線状体操作機431のこの五部品では、スプライン軸345・巻取機346のみが符号説明され、その他は図示されているものの符号説明がない。この線状体操作機131は、原動機やカップリングがない点を除き、線状体操作機131と実質的に同様の構成と同様の機能とを有するものである。
【0032】
上記送り機械ユニット311の移動体371を構成する他の部品ないし部材は、中空のネジ軸372・中空のスプライン軸374・テーブル型の台盤376などである。このうちでネジ軸372は、上記雌ネジ付き歯車341の雌ネジ342と対応する雄ネジ373をその外周面に有するものであり、スプライン軸374はその外周面に周知のスプライン凹凸部374aを有するものである。さらに台盤376は、その下面中央部にメカニカルボックス377を有するものである。ネジ軸372については図1やその他で明らかなように、雌ネジ342と雄ネジ373とが互いに噛み合うという態様において雌ネジ付き歯車341の軸心部に組み込まれている。一方でネジ軸372とスプライン軸374とは、雄ネジ373の連結端部(上端部)とスプライン軸374の連結端部(下端部)とが回転自在に連結されて軸方向に連続しているものである。この両軸372・374の連結部間には周知のベアリング375が介在されている。さらにスプライン軸374と台盤376とは、スプライン軸374の一端部(上端部)を台盤下面のメカニカルボックス377に差し込み結合することで互いに連結されている。かくて組み合わされたネジ軸372・スプライン軸374・台盤376は、送り機械ユニット311における移動体371の主要部となるものである。送り機械ユニット311における他の構成として走行路体321と移動体371には、これらをロックするためのロック手段が設けられる。それは一例として図1などに示されているように、雌雄一対のロック部材347・378からなる。このうちで一方のロック部材347は、走行路体321の上面から立ち上がるものであり、かつ、その上端面に凹部348を有するものである。これに対して他方のロック部材378は、台盤376の下面から垂下しているものであり、かつ、その下端面に凸部379を有するものである。両ロック部材347・378の凹部348と凸部379とは、図1のごとく、これらが所定位置で対向したときに互いに嵌り合ってロック状態を呈するものである。
【0033】
送り機械ユニット311について、その線状体操作機331・線状体調整機351・線状体381A・381Bなどは送り機械ユニット111のそれらと実質的に同じか、または、それらに準ずるものである。したがってこれらの詳細は、送り機械ユニット111で説明した既述の内容を参照することで省略する。
【0034】
図1〜図9の実施形態で送り機械ユニット311の線状体381A・381Bは、それぞれの巻き戻し端部が、当該送り機械ユニット311における移動体371の一部(巻取機346)に連結されるものである。したがって両線状体381A・381Bは、巻取機134の巻胴139から移動体371の一部(巻取機346)へとわたり、かつ、線状体調整機351に組み込まれた案内部材391に掛けられるものである。さらにいうと、移動体371の巻取機346に対して両線状体381A・381Bは、巻取機134の巻胴139に対するのと同様、当該巻取機346に固定されてそのドラム周面に巻き付けられているものである。ゆえに両線状体381A・381Bも巻取機134の巻胴139と移動体371とにわたるものとなり、それで巻き取り巻き戻し自在に配線される。両線状体381A・381Bの索取りについて、機能的に問題のないかぎり任意でよいことや、その索取りいかんで案内部材が増設されたりすることは既述のとおりである。
【0035】
上述した送り機械ユニット311の主たる機能は、後述で明らかなように図1の上下方向に沿う往復動である。この送り機械ユニット311については、少しの部品ないし部材を追加することで周方向(回転方向)に往復動させるための機械ユニットも兼ねるようになる。そのための枢要な部品の一つはスプラインドラムからなる移動体571である。この移動体571は線状体用のドラム(巻胴)を主体にしたものであって、その内周面にスプライン凹凸部572を有するものである。移動体571のスプライン凹凸部572は上記スプライン軸374のスプライン凹凸部374aと対応する。よってこの移動体571は、機械ユニット311の走行路体321上においてスプライン軸374の外周にスプライン嵌合されている。
【0036】
送り機械ユニット311を利用して構成される周方向の往復動ユニット(正逆回転自在な送り機械ユニット)についても、移動体571を操作するための線状体操作機531とか線状体581A・581Bを一定張力に保持するための線状体調整機551とかが構成要素として組み合わされる。これらの構成要素も送り機械ユニット111のそれらと実質的に同じか、または、それらに準ずるものである。したがってこれらの詳細は、送り機械ユニット111で説明した既述の内容を参照することで省略する。
【0037】
図1〜図9の実施形態で周方向の往復動ユニット(正逆回転自在な送り機械ユニット)は、上述の送り機械ユニット311を要部として兼用するものである。この往復動ユニットの両線状体581A・581Bは、それぞれの巻き戻し端部が移動体571に連結されるものである。したがって両線状体581A・581Bも、巻取機134の巻胴139から移動体571へとわたり、かつ、線状体調整機551に組み込まれた案内部材591に掛けられるものである。さらにいうと、両線状体581A・581Bは移動体571に固定されてその周面に巻き付けられているものである。ゆえに両線状体581A・581Bも巻取機134の巻胴139と移動体571とにわたるものとなり、それで巻き取り巻き戻し自在に配線される。両線状体581A・581Bの索取りについて、機能的に問題のないかぎり任意でよいことや、その索取りいかんで案内部材が増設されたりすることは既述のとおりである。
【0038】
図1〜図9に例示された本発明装置において、残る一つの送り機械ユニット711は、上記送り機械ユニット311に組み付けられるものである。この場合において、上記送り機械ユニット311の移動体371(台盤376)は、当該送り機械ユニット711の走行路体721をも兼ねるものである。したがって以下の説明で既述の台盤376については、これを走行路体721ということがある。
【0039】
上記送り機械ユニット711の走行路体721について、図1・図4やその他の図を参照して説明する。走行路体721の上面には一対のレール722a・722bが敷設されている。
【0040】
上記送り機械ユニット711でその線状体操作機731・線状体調整機751・線状体781A・781Bなどは、送り機械ユニット111のそれらと実質的に同じか、あるいは、それらに準ずるものである。したがってこれらの詳細は、送り機械ユニット111で説明した既述の内容を参照することで省略する。
【0041】
上記送り機械ユニット711の移動体771については、図1・図4やその他の図で明らかなように、全体的にみてテーブル型をしているとともに、その基部を除く部分が、格子状またはフォーク状に形成されているものである。図1や図4などで明らかなように、移動体771の下面には上記走行路体721の両レール722a・722bと対応する一対の摺動部材772a・772bが設けられている。この送り機械ユニット711の移動体771は、両レール722a・722bと両摺動部材772a・772bとが互いに係合する態様において走行路体721上に乗せられ、それで走行路体121上を所定方向に往復動するものである。
【0042】
上記送り機械ユニット711における両線状体781A・781Bは、それぞれの巻き戻し端部が当該送り機械ユニット711の移動体771の固定部773に連結されるものである。したがって両線状体781A・781Bは巻取機134の巻胴139から移動体771へとわたり、かつ、線状体調整機751に組み込まれた案内部材791dにも掛けられる。両線状体781A・781Bは、さらに所定の配線とするため案内部材791d以外の案内部材にも掛けられている。これについては以下のとおりである。一方の線状体781Aは、線状体操作機731(巻取機134)の巻胴139→案内部材791a→案内部材791b→案内部材791cを経由して移動体771の固定部773に連結されている。他方の線状体781Bは、線状体操作機731(巻取機134)の巻胴139→線状体調整機751内にある案内部材791d→案内部材791e→案内部材791f→案内部材791gを経由して移動体771の固定部773に連結されている。各案内部材791a〜791gのうちで、二つの案内部材791a・791eは上記支持体324に周知の手段で回転自在に取り付けられ、他の二つの案内部材791b・791fは上記メカニカルボックス377内に周知の手段で回転自在に取り付けられ、さらに他の二つの案内部材791c・791gは軸受アームなどを利用した周知の手段で上記走行路体721の両端部に回転自在に取り付けられている。案内部材791dは既述のとおり線状体調整機751に組み込まれているものである。両線状体781A・781Bを索取りするときには、また、線状体を通すために必要な開口や隙間が適宜設けられたりする。
【0043】
本発明に係る多段送り装置は、人および/または物を搬送・輸送・移送・移動などをしたりする場合に、人および/または物を搭載することのできる移動体とくに移動体771を、三次元的に走行移動させるものである。図1〜図9に例示された実施形態においてこのような走行移動を実施するときは以下のようになる。
【0044】
図1・図2の走行路体121において、左端部と右端部のいずれを所期位置(出発点)にするかは任意でよい。ちなみに走行路体121の右端部が出発点で移動体171が図1の左端部にあるとき、その移動体171は送り機械ユニット111の線状体操作機121で操作された後のものである。このような状態にするときは、線状体操作機131の原動機141をオンの状態にしてこれを正回転させる。原動機141の回転は、出力軸142やカップリング143を介してスプライン軸135に伝達されるので、巻取機134の巻胴139が正回転するようになる。そして正回転する巻取機134の巻胴139により、線状体181Aが巻き取られると同時に線状体181Bが巻胴139から巻き戻される。このようにして正回転するときの巻胴139には、雄ネジ軸137(雄ネジ137b)と雌ネジ軸138(雌ネジ138b)とによる軸方向の推進力が作用する。それで正回転時の巻胴139はスプライン軸135をガイドにして軸方向の一端側へと移動するようにもなる。したがって、巻胴139に巻き取られるときの線状体181Aは、整然とした密接したスパイラル巻き状態で巻胴139に巻き取られることとなり、線状体181Bも同様に巻胴139から整然と巻き戻されることとなる。この巻胴139による線状体181Aの巻き取り量と線状体181Bの巻き戻し量は互いに等しいものである。図2の右端部にあった移動体171は、かかる運転で線状体181Aが巻取機134の巻胴139に巻き取られて図1の左端部へ引き取られるため、その線状体181Aによる牽引力で図1の左方へと走行することとなる。すなわちこれは、移動体171が走行路体121を右→左に移動し、線状体181Bがその移動体171に追随して図1の左方へと繰り出されるのである。
【0045】
移動体171が図1の位置まで移動(往動)したあとは、送り機械ユニット311を運転状態にする。すなわち線状体操作機331の原動機141をオンにする。原動機141のオンで上記と同様に巻取機134の巻胴139が正回転するから、線状体操作機331については線状体381Aが巻き取られると同時に線状体381Bが巻胴139から巻き戻される。このような巻き取りや巻き戻しがあると、両線状体381A・381Bを介して移動体371における線状体操作機431の巻取機346が所定方向に回転し、これと共にスプライン軸345や歯車344も所定方向に回転する。さらに歯車344が回転したことにより、雌ネジ付き歯車341も回転する。雌ネジ付き歯車341が回転すると、雌ネジ付き歯車341の雌ネジ342とネジ軸372の雄ネジ373とによる送りがそのネジ軸372にかかり、ネジ軸372が上昇する。これと共にネジ軸372の上端部と連結状態にあるスプライン軸374も上昇するから、スプライン軸374の上端部で支持された送り機械ユニット311の走行路体721(台盤376)や移動体771も上昇することとなる。その上昇のときに、走行路体721と共に上昇したロック部材378の凸部379がロック部材347の凹部348から離脱するので、送り機械ユニット311の走行路体321(送り機械ユニット111の移動体171)と送り機械ユニット711の走行路体721(送り機械ユニット311の台盤376)とがロック解除状態になる。
【0046】
上記のあとは線状体操作機531の原動機141をオンにする。この場合も既述の内容と同様に巻取機134の巻胴139が正回転するから、線状体操作機531にあっては線状体581Aが巻き取られると同時に線状体581Bが巻胴139から巻き戻される。このような巻き取りや巻き戻しがなされると、両線状体581A・581Bを介して移動体571(スプラインドラム)が所定方向に回転し、スプライン凹凸部374a・572を介して移動体571とスプライン嵌合しているスプライン軸374もこれと同方向に同時回転する。具体的一例でいうと、移動体571やスプライン軸374はこの場合に90度ほど回転する。さらにスプライン軸374で支えられている送り機械ユニット711の走行路体721やこの走行路体721上に乗せられた移動体771もスプライン軸374と共に回転する。これを具体的一例でいえば、走行路体721とその上の移動体771とが90度方向変換したということである。
【0047】
このあとは、送り機械ユニット711を運転状態にする。すなわち線状体操作機731の原動機141をオンにする。かかる原動機オンで、巻取機134の巻胴139が正回転するから、線状体操作機731にあっては線状体781Aが巻き取られると同時に線状体781Bが巻胴139から巻き戻される。かかる巻き取りや巻き戻しにともない、移動体771が線状体981Aを介して案内部材791c側へ引き寄せられるので、当該移動体771が走行路体721上を同方向へと移動(往動)することとなる。
【0048】
図1〜図9に実施形態では、搬送物の一例として板ガラスGが移動体771上に載置されている。出発点を基準にしてこの板ガラスGの動きを追跡してみると、1番目は図1の左方へ移動し、2番目は上方へ移動し、3番目は90度回転し、4番目(最後)は前方へ移動している。これは三次元空間を板ガラスGが高次移動しているということである。
【0049】
以上は本発明装置の往復動について巻取機134の巻胴139をそれぞれ正回転させたときの「往動」を述べたものである。本発明装置については、巻取機134の巻胴139をそれぞれ逆回転させることで各部が旧位に復すから、それが復動となる。
【0050】
本発明に係る多段送り装置について既述の実施形態は一例にすぎないものである。既述の実施形態では、搬送物を左右(水平方向)・上下(垂直方向)・回転(回転方向)・前後(水平方向)などの各方向に送るものであったが、これについては二方向以上であればいずれの送り方向であってもよく、その場合の各方向についても、同方向の組み合わせ・異方向の組み合わせなど自由でよい。したがって他の実施形態として、送り機械ユニットの組み合わせ数を図示例よりも多くしたり少なくしたりすることがある。また、それぞれの送り機械ユニットにおいて走行路体と移動体との相対構成で定まる移動体の往復動方向については、水平方向、垂直方向、上下勾配のある傾斜方向、垂直軸線を中心にした回転方向、水平軸線を中心にした回転方向、上下勾配のある傾斜軸線を中心にした回転方向のうちから選択されたいずれであっても構わないものである。さらに、走行路体が曲線状の走行路面を有するものであって、その曲線状走行路面を移動体が往復動するものであってもよい。そのほか、図示例の本発明装置において、水平状態にある走行路体を垂直状態に変更したり傾斜状態に変更したりする実施態様もある。
【0051】
本発明に係る多段送り装置において、一部の送り機械ユニットとして電動式・油圧式・空気圧式などの送り機械ユニットが組み合わされてもよいものである。
【0052】
本発明に係る多段送り装置において、線状体操作機131にあるカップリング143は電磁クラッチや機械式クラッチなどに変更してよい。走行路体に設けられるレールに関しては、モノレールでもよいし、二本の平行レールでもよいし、三本以上の平行レールでもよい。
【0053】
上述した図示の実施形態では、走行路体721上を走行する最終段の移動体771が一基のみであったが、このような最終段の移動体については、これを図10(A)(B)のごとく複数基にするという実施形態もある。以下、図10(A)(B)の実施形態について簡単に説明する。
【0054】
図10(A)(B)を参照して明らかなように、走行路体721の上面には、二組(二対)のレール7721x・7722x・7721y・7722yが互いに平行する態様で敷設されている。このうちで一組のレール7721x・7722xは移動体771X用のもの、他の一組のレール7721y・7722yは移動体771Y用のものである。走行路体721上に搭載される複数(二つ)の移動体771X・771Yは、かかるレールに対応して、それぞれ下面に摺動部材7723x・7724x・7723y・7724yが設けられている。この二つの移動体771X・771Yは、一方の摺動部材7723x・7724xが一方側のレール7721x・7722xに嵌り込み、かつ、他方の摺動部材7723y・7724yが他方側のレール7721y・7722yに嵌り込むという態様において、それぞれ走行路体721上に走行自在(往復動自在)に搭載されている。こうして走行路体721上に搭載されたそれぞれの移動体771X・771Yに対しては、既述の線状体操作機731とこれに付帯する案内部材その他が二組用意され、それが装置に組み込まれるものである。そして二組の線状体操作機731におけるそれぞれ一対の線状体781A・781Bが、それぞれ対応する移動体771X・771Yに繋ぎ止められることとなる。したがって各移動体771X・771Yは、それぞれの線状体操作機731を介して走行路体721上を往復動することとなる。
【0055】
図10(A)の左右方向に移動する両移動体771X・771Yについては、その使用態様において、そのいずれか一方のみが単独移動したり、その両方が同時移動したり、または、その一方が先行してその他方が後続するというように時間差移動したりするものである。こうしたうちには、両移動体771X・771Yのうちのいずれか一方が物品供給用でその他方が物品回収用という使用態様があり得る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、線状体を駆使するところの多段送り装置として、二次元以上の動作性・安定性・制御性・安全性・高い送り精度・高速性・動作範囲の拡大化・省スペース・構成の簡潔性・保守点検の簡易性・低価格などを満足させるものである。したがって産業上の利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0057】
111 送り機械ユニット
121 走行路体
131 線状体操作機
151 線状体調整機
171 移動体
181A 線状体
181B 線状体
191 案内部材
311 送り機械ユニット
321 走行路体
331 線状体操作機
351 線状体調整機
371 移動体
381A 線状体
381B 線状体
391 案内部材
431 線状体操作機
551 線状体調整機
571 移動体
581A 線状体
581B 線状体
711 送り機械ユニット
721 走行路体
731 線状体操作機
751 線状体調整機
711 移動体
781A 線状体
781B 線状体
791a 案内部材
791b 案内部材
791c 案内部材
791d 案内部材
791e 案内部材
791f 案内部材
791g 案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送り機械ユニットが複数の段をなして一体的に組み立てられており、かつ、この組み立て構成において互いに隣接する二つの送り機械ユニットのうち、相対的に後段にある送り機械ユニットが、相対的に前段にある送り機械ユニットによって支持されていること、および、
それぞれの送り機械ユニットが走行路体とその走行路体に対して往復動自在に配備された移動体とを具備しており、かつ、それぞれの送り機械ユニットにおいて走行路体と移動体との相対構成で定まる移動体の往復動方向が、水平方向、垂直方向、上下勾配のある傾斜方向、垂直軸線を中心にした回転方向、水平軸線を中心にした回転方向、上下勾配のある傾斜軸線を中心にした回転方向のうちから選択されたいずれかであること、および、
上記における少なくとも二つの送り機械ユニットのそれぞれが、移動体に接続されたものであってその移動体の往動側に配線された線状体と、移動体往動側の線状体を介して移動体と連係しているものであって当該線状体を移動体の往動方向へ引き取ったり復動方向へ追随させたりするための線状体操作機と、移動体に接続されたものであってその移動体の復動側に配線された線状体と、移動体復動側の線状体を介して移動体と連係しているものであって当該線状体を移動体の復動方向へ引き取ったり往動方向へ追随させたりするための線状体操作機とを備えているとともに、移動体と線状体操作機との間で各線状体を保持して案内するための案内部材を備えていること
を特徴とする多段送り装置。
【請求項2】
水平方向を移動体の往復動方向とする送り機械ユニットと、垂直方向を移動体の往復動方向とする送り機械ユニットと、回転方向を移動体の往復動方向とする送り機械ユニットとを含むものである請求項1に記載された多段送り装置。
【請求項3】
互いに隣接する二つの送り機械ユニットにおいて、相対的に前段にある送り機械ユニットの走行路体が、相対的に後段にある送り機械ユニットの移動体を兼ねるものである請求項1または2に記載された多段送り装置。
【請求項4】
それぞれの線状体のための線状体操作機が各段ごとに単一のものからなり、その各段における単一の線状体操作機と移動体とが、その各段ごとの線状体を介してそれぞれ連係している請求項1〜3のいずれかに記載された多段送り装置。
【請求項5】
張力調整用の線状体調整機が線状体に付帯して設けられている請求項1〜4のいずれかに記載された多段送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−38548(P2011−38548A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183905(P2009−183905)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(504134759)SKマシナリー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】