説明

多段階曲げ式コネクタ

【課題】ブーツの向きの調整がワンタッチで短時間に行えると共に、光ファイバの曲げ半径を十分に採れるように屈曲可能とすることで、伝送損失の増加を抑制できる多段階曲げ式コネクタを提供する。
【解決手段】光ケーブルPの光ファイバ芯線aを挿入して固定すると共に、後端にフランジ21を圧入保持するフェルール2と、フランジ21後端に当接しフェルール2を前方に常時付勢するスプリング4の後端を支持するストップリング5と、これら各部材を覆うプラグフレーム3と、光ケーブルPのケブラP1を前記ストップリング5に固定するカシメ座6と、光ケーブルPのシースP2を前記カシメ座6に固定するカシメリング7と、前記ストップリング5に屈曲可動手段10を介して装着するブーツ8とを有し、前記屈曲可動手段10は、ブーツ8の方向を水平方向に対して複数段階で屈曲可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種光通信機器を接続するために室内壁面に設置された光コンセントアダプタに接続する多段階曲げ式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(fiber to the home)が進み、部屋の中に光コンセントを設置するようになってきている。そこで従来では、特許文献1に開示されているように、室内の壁面に設けたアウトレットボックスに複数の光コンセントを取り付け、当該光コンセント内に保持された接続アダプタに、光ファイバコード等の外部光コネクタプラグを壁面に対し垂直に挿入して接続するアウトレット部品なる技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の外部光コネクタプラグは、壁面に対し垂直に挿入して接続するため、当該外部光コネクタプラグ自体が壁面から垂直に突出した状態となる。このため、外部光コネクタプラグが邪魔になり、周辺機器がこれにぶつかって破損する等の事故が予想される。
【0004】
そこで、ブーツを直角に屈曲変形させて形成し、この先端を光コネクタプラグのストップリングの末端に装着固定してなる所謂多段階曲げ式コネクタを使用する等の何等かの対策を採ることが必要となってきている。このとき、光コネクタプラグのツマミ片側には、接続アダプタのキー孔に挿入可能なガイド突起が形成されている。
【特許文献1】特開2005−106937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、従来においては、多段階曲げ式コネクタプラグのストップリングの末端にブーツを一度装着すると、別部品への変更が必要となり、このため、作業に手間と時間が掛かるものとなっていた。
【0006】
また、従来の多段階曲げ式コネクタは、ツマミ片側に接続アダプタのキー孔に挿入可能なガイド突起が形成されているため、ブーツをストップリングに装着したまま多段階曲げ式コネクタプラグごと向きを変えることは不可能となる。
【0007】
さらに、ブーツを直角に屈曲変形させて形成した場合には、内部の光ファイバ自体が一箇所で直角となって極端に曲げられてしまい、光ファイバの曲げ半径を十分に採れないものとなることから、伝送損失の増加を招いてしまうという問題点を有していた。
【0008】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、別部品への影響がなく、ブーツの向きの調整がワンタッチで短時間に行えると共に、光ファイバの曲げ半径を十分に採れるように屈曲可能とすることで、伝送損失の増加を抑制できるものとした多段階曲げ式コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、光ケーブルの光ファイバが挿入されて固定されると共に、後端にフランジが圧入保持されるフェルールと、フランジ後端に当接しフェルールを前方に付勢するスプリングの後端を支持するストップリングと、これら各部材を覆うプラグフレームと、光ケーブルのケブラを前記ストップリングに固定するカシメ座と、光ケーブルのシースを前記カシメ座に固定するカシメリングと、前記ストップリングに屈曲可動手段を介してブーツを装着した多段階曲げ式コネクタであって、前記屈曲可動手段は、ブーツの曲げ方向を水平方向から対称に複数段階で屈曲可能に形成されていることを特徴とする。
【0010】
屈曲可動手段は、ストップリングに嵌合固定された第1ヒンジベースと、該第1ヒンジベースに回動自在に連繋された連結チューブと、該連結チューブに回動自在に連繋され且つブーツを固定してなる第2ヒンジベースとを備えてなる。
【0011】
屈曲可動手段は、ブーツ曲げ方向を水平方向から対称に90度まで屈曲回転可能に形成されてなる。
【0012】
屈曲可動手段は、各ヒンジベースに横向きに突設したヒンジアームを、当該ヒンジアームに対向して連結チューブの両端部に横向きに開口させた筒状のヒンジ孔部に枢着され、ヒンジアームの先端外周面に突設した係合突起を、ヒンジ孔部の奥側内周面に貫設した円弧状窓部に係合されてなり、内挿されている光ケーブルを隠蔽された状態で水平方向から対称に屈曲を許容させるよう各ヒンジベースおよび連結チューブそれぞれの内部に曲げスペースを備えている。
【0013】
屈曲可動手段は、光ケーブルを最小曲げ半径に保つよう、第1ヒンジベースおよび第2ヒンジベースに対する連結チューブの45度回転位置で当該連結チューブを係止させるよう連結チューブおよび各ヒンジベースに凹凸状の回転制御部を備えている。
【0014】
前記回転制御部は、これの過度な回転を防ぐために、各ヒンジベースのヒンジアーム基端側に、連結チューブの回転角度に応じて凹設された複数の凹部に、連結チューブのヒンジ孔部の開口側内周面に突設された凸部を係合させてなる。
【0015】
ストップリングに対する第1ヒンジベースの固定は、ストップリング外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部に、第1ヒンジベースの開口端における内周に沿って突設された左右一対の嵌合突部を嵌合させると共に、第1ヒンジベースの開口端に突設した上下一対の係止片を、ストップリング外周を覆うプラグフレームの上下一対のキー溝に係止させるものとしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、別部品への影響がなく、向きの調整がワンタッチで短時間に行えると共に、光ファイバの曲げ半径を十分に採れるように屈曲可能とすることで伝送損失の増加を抑制することができる。
【0017】
すなわち、前記ブーツの向きを、ストップリングに対して複数段階で屈曲可能とした屈曲可動手段を備えたので、ブーツの向きの変更毎に、多段階曲げ式コネクタのストップリングからブーツをわざわざ取り外す必要が無くなり、したがって、ブーツの向きの調整がワンタッチで容易且つ短時間に行える。これと同時に、ストップリングに対してブーツを複数段階で屈曲可能としたので、光ファイバの曲げ半径を十分に採れることから、伝送損失の増加を抑制することができる。
【0018】
屈曲可動手段は、ストップリングに固定された第1ヒンジベースと、該第1ヒンジベースに回動自在に連繋された連結チューブと、該連結チューブに回動自在に連繋され且つブーツを固定してなる第2ヒンジベースとを備えてなるので、連結チューブ両端の各ヒンジベースによって複数段階で屈曲可能となることから、簡単な構成により、ブーツの向きの調整が確実且つスムーズに行える。
【0019】
屈曲可動手段は、各ヒンジベースに横向きに突設したヒンジアームを、当該ヒンジアームに対向して連結チューブの両端部に横向きに開口させた筒状のヒンジ孔部に枢着され、ヒンジアームの先端外周面に突設した係合突起を、ヒンジ孔部の奥側内周面に貫設した円弧状窓部に係合されてなり、内挿されている光ケーブルを隠蔽された状態で水平方向から対称に屈曲を許容させるよう各ヒンジベースおよび連結チューブそれぞれの内部に曲げスペースを備えているので、ストップリングおよびヒンジベースに対するブーツの回転に際し、ヒンジベース内面で光ケーブルを損傷させることが無く、しかも光ケーブルの例えばR15の曲げ半径を曲げスペース内部で常に保つことができる。しかも、ヒンジアームの係合突起とヒンジ孔部の円弧状窓部とによって、ヒンジ孔部からのヒンジアームの抜け止め、および屈曲可動手段の回転角度の制御が可能となる。
【0020】
屈曲可動手段は、第1ヒンジベースおよび第2ヒンジベースに対する連結チューブの45度回転位置で当該連結チューブを係止させるよう連結チューブおよび各ヒンジベースに凹凸状の回転制御部を備えているので、連結チューブの各ヒンジベースに対する過度な回転を未然に防止することができ、これによって光ケーブルを損傷させることが無い。
【0021】
前記回転制御部は、各ヒンジベースのヒンジアーム基端側に、連結チューブの回転角度に応じて凹設された複数の凹部に、連結チューブのヒンジ孔部の開口側内周面に突設された凸部を係合させてなるので、簡単な構成によって屈曲されたブーツの向きの確保が容易となる。
【0022】
ストップリングに対する第1ヒンジベースの固定は、ストップリング外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部に、第1ヒンジベースの開口端における内周に沿って突設された左右一対の嵌合突部を嵌合させると共に、第1ヒンジベースの開口端に突設した上下一対の係止片を、ストップリング外周を覆うプラグフレームの上下一対のキー溝に係止させるものとしているので、ストップリングに第1ヒンジベースを嵌合した際には、プラグフレームのキー溝に嵌合した係止片によって第1ヒンジベース自体に廻り止め機能を付与させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明に係る多段階曲げ式コネクタを実施するための最良の一形態を詳細に説明する。
本発明に係る多段階曲げ式コネクタ1は、図9(a)および図9(b)に示すように、各種光通信機器を接続するために室内の壁面に設置されたアウトレットボックスMに内装された光コンセントアダプタQに接続するものであり、該多段階曲げ式コネクタ1は、図1および図2に示すように、光ファイバ芯線aが挿入されて固定されると共に、後端にフランジ21が圧入保持されるフェルール2と、フランジ21後端に当接しフェルール2を前方に付勢するスプリング4の後端を支持するストップリング5と、これら各部材を覆うプラグフレーム3と、光ケーブルPの抗張力線であるケブラP1を前記ストップリング5に固定するカシメ座6と、光ケーブルPのケブラP1外側を覆う合成樹脂外皮であるシースP2を前記カシメ座6に固定するカシメリング7と、前記ストップリング5に、後述する屈曲可動手段10を介して装着されるブーツ8と、プラグフレーム3およびストップリング5の外側に被せられるツマミ9とから概ね構成されている。
【0024】
フェルール2は、光ファイバ芯線aの先端が挿入後、接着剤等で接着されることにより光ファイバ芯線aを固定するものである。また、フェルール2は、プラグフレーム3に覆われることによりその保護がなされている。
【0025】
スプリング4はコイルばねからなり、フランジ21およびストップリング5の間に挟まれるように配置されることにより、その先端がフランジ21後端に当接され、後端がストップリング5に支持されている。このようにストップリング5に後端が支持されることにより、スプリング4はフランジ21と共にフェルール2を前方に付勢するように作用する。
【0026】
プラグフレーム3には、図3および図4に記載されているように、フェルール2、フランジ21およびスプリング4と共に、ストップリング5の前方部分が挿入されている。この場合、ストップリング5の前方部分における外面上方には凸部5aが形成されており、この凸部5aが、プラグフレーム3に対するストップリング5挿入時のガイドの役割を果たす。一方、ストップリング5の下方に略Cリング状に突設したフック部3aがプラグフレーム3の円弧状の係止孔3bに係止されることで抜け止めの役割を果たす。
【0027】
ストップリング5の後方部分には、当該ストップリング5に対して対称方向に複数段階で屈曲可能としてなる屈曲可動手段10を介してブーツ8が取り付けられ、当該ストップリング5に対してブーツ8が45度の2段階による合計90度まで対称方向に回転可能となるようにしている。すなわち、この屈曲可動手段10によって、ブーツ8をストップリング5に沿った水平位置から上下いずれかの方向(対称方向)に、光ケーブルPの曲げ半径を十分に採れるようにして90度まで屈曲回転できるようにしている。
【0028】
具体的には、屈曲可動手段10は、図1乃至図4に示すように、ストップリング5に固定された第1ヒンジベース10aと、該第1ヒンジベース10aに回動自在に連繋された連結チューブ10cと、該連結チューブ10cに回動自在に連繋され且つブーツ8を固定してなる第2ヒンジベース10bとから構成され、図5に示すように、連結チューブ10cは第1ヒンジベース10aに対して45度まで対称方向に回転可能となるように枢着され、また、第2ヒンジベース10bは連結チューブ10cに対して45度まで対称方向に回転可能となるように枢着されてなる。
【0029】
すなわち、図3および図4に示すように、第1ヒンジベース10aは、中央に光ケーブルPを挿通させるための孔部を有するフランジを円筒20の一端開口側に一体連設し、該フランジの前面は円弧凹状に成形されている。そして、フランジの一端からは、略円形状のベース部が前方に向けて一体延設されており、その中央には上下に対向する一対の円弧状のヒンジアーム11が横向きに突設されている。この上下のヒンジアーム11同士の幅間隔は光ケーブルPが通れる程度の大きさとなっており、ヒンジアーム11それぞれの先端外周面には係合突起11aが突設されている。また、円筒20の他端開口側には、内周に沿って左右一対の嵌合突部13が突設され、ストップリング5外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部12に当該嵌合突部13を嵌合させると共に、円筒20の他端開口側の上下に突設した一対の係止片14を、ストップリング5外周を覆うプラグフレーム3の上下一対のキー溝15に係止させるものとし、これによって第1ヒンジベース10aはストップリング5およびプラグフレーム3に対して所要の角度で固定保持される。
【0030】
一方、図3、図5(a)乃至図5(c)、および図8(a)乃至(d)に示すように、連結チューブ10cの両端部には、前記ヒンジアーム11に対向して横向きに開口させた筒状のヒンジ孔部17が一体形成され、該ヒンジ孔部17の奥側内周面には上下一対の円弧状窓部17aがそれぞれ穿設されている。この円弧状窓部17aの長さは、連結チューブ10cが第1ヒンジベース10aに対して45度だけ回転できる程度の大きさに設けられている。また、各ヒンジ孔部17の筒周面には、連結チューブ10cの対称方向への回動域内で光ケーブルPが挿通維持できる程度の長さの細長矩形状の開口部18が形成されている。そして、上下一対のヒンジアーム11が連結チューブ10cのヒンジ孔部17内に挿入された際に、当該ヒンジアーム11先端の係合突起11aがヒンジ孔部17の円弧状窓部17aに係合されて回動自在に保持されるようにしてある。こうして、内挿されている光ケーブルPを隠蔽させた状態で対称方向への屈曲を許容させるようにして第1ヒンジベース10aおよび連結チューブ10cそれぞれの内部に曲げスペースS(図2参照)が形成されると共に、第1ヒンジベース10aに対して連結チューブ10cは水平位置から45度まで対称方向に回転可能となる(図5(a)乃至図5(c)参照)。
【0031】
また、第2ヒンジベース10bは、ブーツ8を嵌合させる小径の筒部19の一端に、前記第1ヒンジベース10aと同じ構成による上下一対のヒンジアーム11が形成され、該ヒンジアーム11が連結チューブ10cの他方の端部に形成されたヒンジ孔部17に挿入された際に、当該ヒンジアーム11先端の係合突起11aがヒンジ孔部17の円弧状窓部17aに係合されて回動自在に保持されるようにしてある。こうして、内挿されている光ケーブルPを隠蔽させた状態で対称方向への屈曲を許容させるようにして第2ヒンジベース10bおよび連結チューブ10cそれぞれの内部に曲げスペースS(図2参照)が形成されると共に、連結チューブ10cに対して第2ヒンジベース10bは45度まで対称方向に回転可能となる(図5(a)乃至図5(c)および図6(a)乃至図6(c)参照)。
【0032】
また、図7(a)乃至図7(c)に示すように、屈曲可動手段10には、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bに対する連結チューブ10cの45度回転位置で当該連結チューブ10cを係止させるために、連結チューブ10cおよび各ヒンジベース10a、10bに凹凸状の回転制御部16を備えている。
【0033】
具体的には、この回転制御部16は、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの各ヒンジアーム11基端側におけるベース部に、連結チューブ10cの水平位置から対称方向への45度までの回転角度に応じて凹設された3つの凹部16a、16b、16cと、該凹部16a、16b、16cに対向して連結チューブ10cのヒンジ孔部17の開口側内周面に突設された1つの凸部16dとからなる。
【0034】
これによって、図5(a)に示すように、ブーツ8が水平位置にある場合は、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの中央の凹部16bに連結チューブ10cの凸部16dが係合し、図5(c)に示すように、ブーツ8を上側90度方向に回転させると、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの上側の凹部16aに連結チューブ10cの凸部16dが係合し、図5(b)に示すように、ブーツ8を下側90度方向に回転させると、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの下側の凹部16cに連結チューブ10cの凸部16dが係合する。したがって、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bに対する連結チューブ10cの回転角度の制御がなされる。
【0035】
ストップリング5の後部には、共に金属からなるカシメ座6およびカシメリング7が配置されている。これらのカシメ座6およびカシメリング7は、ストップリング5に対して光ケーブルPのケブラP1とシースP2とをそれぞれ保持するものである。
【0036】
すなわち、図1および図2に示したように、カシメ座6は、大径の前側筒部6aと小径の後側筒部6bとが略中央の段差部6cを介して連設されて成り、前側筒部6aは、光ケーブルPの切断されたシースP2内側のケブラP1と共にストップリング5の後部外周に嵌着される。また、後側筒部6bには、シースP2の切断端部を被せた状態にしてから、カシメリング7を外側からかしめることにより当該シースP2は固定される。
【0037】
また、プラグフレーム3は、丸型構造に形成されると共に、当該プラグフレーム3の上下対称位置には、ツマミ9に形成された上下対称位置のキー孔に対応して一対のガイド部を形成してある。このガイド部は、プラグフレーム3にツマミ9を装着する際に、当該ツマミ9に形成された上下対称位置のキー孔に対し1方向で嵌挿されるよう当該ガイド部は互いに異なった幅員となるように形成されている。
【0038】
さらに、図1(a)に示すように、ツマミ9の片側には、光コンセントアダプタQに対して一方向からの接続を可能とするようにガイドさせるために、接続アダプタのキー孔に挿入可能なガイド突起9aが形成されている。
【0039】
図9(a)および図9(b)は多段階曲げ式コネクタの使用の一例を示すもので、Mは光分岐ボックスBに可撓性パイプ15を介して連結されたアウトレットボックス、QはアウトレットボックスMの正面板に取り付けられた光コンセントアダプタである。
【0040】
同図において、光コンセントアダプタQは後端において光分岐ボックスBに光ケーブルPを介して接続される。一方、前端においてパソコンRに光ケーブルPを介して接続された多段階曲げ式コネクタ1が着脱自在に接続される。
【0041】
次に、以上のように構成された本発明多段階曲げ式コネクタの最良の形態についての組立・使用の一例について説明する。
先ず、図3に示すように、ブーツ8の開口端に嵌め込まれている第2ヒンジベース10bの筒部19の一端に形成された左右一対のヒンジアーム11を、連結チューブ10cの一方のヒンジ孔部17に挿着する。また、第1ヒンジベース10aの一端に形成された左右一対のヒンジアーム11を、連結チューブ10cの他方のヒンジ孔部17に挿着する。このとき、ヒンジアーム11先端の係合突起11aがヒンジ孔部17の円弧状窓部17aに係合されて回動自在に保持される。同時にブーツ8に予め挿入されている光ケーブルPの切断端部は、第2ヒンジベース10bの筒部19、連結チューブ10c両端の開口部18、第1ヒンジベース10aのフランジの孔部それぞれを通って当該第1ヒンジベース10aの円筒20から外方へ引き出しておく。
【0042】
そして、光ケーブルPの切断端部からシースP2およびケブラP1を剥き出し状態にしてから、カシメ座6の後側筒部6bに、シースP2の切断端部を被せておき、カシメリング7を外側からかしめ固定する。
【0043】
そして、カシメ座6の前側筒部6aを、シースP2の切断端部から拡げられたケブラP1と共にストップリング5の後部外周に嵌着する。
【0044】
しかる後、前記ブーツ8と共に屈曲可動手段10を光ケーブルPの切断端部側に移動させ、ストップリング5の嵌合凹部12に、第1ヒンジベース10aの嵌合突部13を自らの撓曲によって嵌合させる。そして、ストップリング5外周の嵌合凹部12に、第1ヒンジベース10aの円筒20の嵌合突部13を嵌合させると共に、円筒20の上下一対の係止片14を、ストップリング5外周を覆うプラグフレーム3の上下一対のキー溝15に係止させる(図3および図4参照)。
【0045】
また、光ファイバ芯線aの先端はフェルール2に挿入され、接着剤等で接着されることにより光ファイバ芯線aが固定される。フェルール2はその後端にフランジ21が圧入保持されている。
【0046】
そして、フェルール2のフランジ21後端からスプリング4が挿入され、さらにプラグフレーム3およびストップリング5が所定の位置にそれぞれ挿入配置される。このとき、ストップリング5の上方に設けられた凸部5aがプラグフレーム3に対する挿入用ガイドとなり、一方、ストップリング5の下方に設けられたフック部3aがプラグフレーム3の係止孔3bに係止されることで抜け止めの役割を果たす。
【0047】
このとき、スプリング4は、フェルール2後端のフランジ21およびストップリング5の間に挟まれるように配置され、フェルール2を前方に常時付勢させるように作用する。
【0048】
最後に、ツマミ9がプラグフレーム3およびストップリング5の外側に被せられる。このとき、ツマミ9に形成された上下対称位置のキー孔に対し、プラグフレーム3が1方向で嵌挿される(図1および図2参照)。
【0049】
多段階曲げ式コネクタ1の使用に際しては、図9(a)に示すように、各種光通信機器を接続するために室内の壁面に設置されたアウトレットボックスMに内装された光コンセントアダプタQに当該多段階曲げ式コネクタ1を接続する。
【0050】
例えば、パソコンRからの相手側の光コネクタプラグ1を光コンセントアダプタQの相手側端子に接続させるに際し、図2(b)および図9(b)に示すように、前記パソコンRが光コンセントアダプタQの下方側に配置されている場合には、屈曲可動手段10における連結チューブ10cを第1ヒンジベース10aに対して下側45度まで回転させ、第2ヒンジベース10bを連結チューブ10cに対して下側45度まで回転させる。こうして、ブーツ8および光ケーブルPが下向きに延長されるように回転される。
【0051】
一方、前記パソコンRが光コンセントアダプタQの上方側に配置されている場合には、屈曲可動手段10における連結チューブ10cを第1ヒンジベース10aに対して上側45度まで回転させ、第2ヒンジベース10bを連結チューブ10cに対して上側45度まで回転させる。こうして、ブーツ8および光ケーブルPが上向きに延長されるように回転される。
【0052】
また、図5(a)に示すように、ブーツ8が水平位置にある場合は、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの中央の凹部16bに連結チューブ10cの凸部16dが係合する。
【0053】
また、図5(c)に示すように、ブーツ8を上側90度方向に回転させたときには、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの上側の凹部16aに連結チューブ10cの凸部16dが係合する。
【0054】
さらに、図5(b)に示すように、ブーツ8を下側90度方向に回転させたときには、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの下側の凹部16cに連結チューブ10cの凸部16dが係合する。こうして、第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bに対する連結チューブ10cの回転角度の制御がなされる。
【0055】
このようにしてブーツ8は屈曲可動手段10を介して90度だけ対称方向に屈曲回転されることから、光コンセントアダプタQが壁面の下側もしくは上側、あるいは天井等の如何なる場所に設置されていても、光コンセントアダプタQに接続された外部の多段階曲げ式コネクタ1自体が周辺機器の障害とはならないのである。しかも、ブーツ8は上下いずれかの方向にそれぞれ45度だけ回転する2段階の屈曲可動手段10を介して合計90度に屈曲回転されることから、光ケーブルPの曲げ半径(例えばR15)を十分に採れるものとなって伝送損失の増加を抑制する。
【0056】
尚、本形態においては、屈曲可動手段10を第1ヒンジベース10aおよび第2ヒンジベース10bの2箇所の曲げ(光ケーブルPの曲げ半径R15に対応)に基づいて説明してあるが、本発明はこれに限定されず、3箇所またはそれ以上の曲げ部分によって形成されていることで、光ケーブルPをR15以上の曲げ半径で屈曲可能となるように設定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における多段階曲げ式コネクタの一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は平面側から見た断面図である。
【図2】同じく多段階曲げ式コネクタの内部構造を示すもので、(a)は側面から見た断面図、(b)は屈曲可動手段によりブーツを下方向に90度だけ屈曲した状態を側面から見た断面図である。
【図3】同じくプラグフレーム、ストップリング、カシメリング、屈曲可動手段(第1ヒンジベース、連結チューブ、第2ヒンジベース)、ブーツを分解した状態の斜視図である。
【図4】同じくプラグフレーム、ストップリング、カシメリング、屈曲可動手段(第1ヒンジベース、連結チューブ、第2ヒンジベース)、ブーツを組み付けた状態の斜視図である。
【図5】同じく屈曲可動手段の動作を説明するもので、(a)はブーツが直線上に延びている状態の側面図、(b)はブーツを下方向に90度だけ屈曲した状態の側面図、(c)はブーツを上方向に90度だけ屈曲した状態の側面図である。
【図6】同じく屈曲可動手段の動作を説明するもので、(a)は連結チューブに対して第2ヒンジベースが水平位置にある状態の側面図、(b)は連結チューブに対して第2ヒンジベースが45度だけ下側に回転させた状態の側面図、(c)は連結チューブに対して第2ヒンジベースが45度だけ上側に回転させた状態の側面図である。
【図7】同じく屈曲可動手段における回転制御部の構成の一例を示すもので、(a)は連結チューブを第1ヒンジベースに装着する前の状態の一部切欠側面図、(b)は連結チューブを第1ヒンジベースに装着した後の状態の一部切欠側面図、(c)は連結チューブを第1ヒンジベースに装着する前の状態の側面図である。
【図8】同じく屈曲可動手段の構成を示すもので、(a)は連結チューブを第1ヒンジベースおよび第2ヒンジベースに装着する前の状態の側面図、(b)は(a)のX−X断面図、(c)は連結チューブを第1ヒンジベースおよび第2ヒンジベースに装着した後の状態の側面図、(d)は(c)のY−Y断面図である。
【図9】多段階曲げ式コネクタの使用状態の一例を示すもので、(a)は多段階曲げ式コネクタを壁面に設置されたアウトレットボックス内に設けられた光コンセントアダプタに接続する状態の一部切欠断面図、(b)はパソコンが光コンセントアダプタの下方側に配置されている場合での使用状態を示す一部切欠断面図である。
【符号の説明】
【0058】
P 光ケーブル
P1 ケブラ
P2 シース
Q 光コンセントアダプタ
R パソコン
S 曲げスペース
M アウトレットボックス
B 光分岐ボックス
a 光ファイバ芯線
1 多段階曲げ式コネクタ
2 フェルール
3 プラグフレーム
3a フック部
3b 係止孔
4 スプリング
5 ストップリング
5a 凸部
6 カシメ座
6a 前側筒部
6b 後側筒部
6c 段差部
7 カシメリング
8 ブーツ
9 ツマミ
10 屈曲可動手段
10a 第1ヒンジベース
10b 第2ヒンジベース
10c 連結チューブ
11 ヒンジアーム
11a 係合突起
12 嵌合凹部
13 嵌合突部
14 係止片
15 キー溝
16 回転制御部
16a、16b、16c 凹部
16d 凸部
17 ヒンジ孔部
17a 円弧状窓部
18 開口部
19 筒部
20 円筒
21 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルの光ファイバが挿入されて固定されると共に、後端にフランジが圧入保持されるフェルールと、フランジ後端に当接しフェルールを前方に付勢するスプリングの後端を支持するストップリングと、これら各部材を覆うプラグフレームと、光ケーブルのケブラを前記ストップリングに固定するカシメ座と、光ケーブルのシースを前記カシメ座に固定するカシメリングと、前記ストップリングに屈曲可動手段を介してブーツを装着した多段階曲げ式コネクタであって、前記屈曲可動手段は、ブーツの曲げ方向を水平方向から対称に複数段階で屈曲可能に形成されていることを特徴とする多段階曲げ式コネクタ。
【請求項2】
屈曲可動手段は、ストップリングに嵌合固定された第1ヒンジベースと、該第1ヒンジベースに回動自在に連繋された連結チューブと、該連結チューブに回動自在に連繋され且つブーツを固定してなる第2ヒンジベースとを備えてなる請求項1記載の多段階曲げ式コネクタ。
【請求項3】
屈曲可動手段は、ブーツ曲げ方向を水平方向から対称に90度まで屈曲回転可能に形成されてなる請求項1または2記載の多段階曲げ式コネクタ。
【請求項4】
屈曲可動手段は、各ヒンジベースに横向きに突設したヒンジアームを、当該ヒンジアームに対向して連結チューブの両端部に横向きに開口させた筒状のヒンジ孔部に枢着され、ヒンジアームの先端外周面に突設した係合突起を、ヒンジ孔部の奥側内周面に貫設した円弧状窓部に係合されてなり、内挿されている光ケーブルを隠蔽された状態で水平方向から対称に屈曲を許容させるよう各ヒンジベースおよび連結チューブそれぞれの内部に曲げスペースを備えている請求項1または2記載の多段階曲げ式コネクタ。
【請求項5】
屈曲可動手段は、第1ヒンジベースおよび第2ヒンジベースに対する連結チューブの45度回転位置で当該連結チューブを係止させるよう連結チューブおよび各ヒンジベースに凹凸状の回転制御部を備えている請求項1乃至3のいずれかに記載の多段階曲げ式コネクタ。
【請求項6】
前記回転制御部は、各ヒンジベースのヒンジアーム基端側に、連結チューブの任意な回転角度に応じて凹設された複数の凹部に、連結チューブのヒンジ孔部の開口側内周面に突設された凸部を係合させてなる請求項4記載の多段階曲げ式コネクタ。
【請求項7】
ストップリングに対する第1ヒンジベースの固定は、ストップリング外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部に、第1ヒンジベースの開口端における内周に沿って突設された左右一対の嵌合突部を嵌合させると共に、第1ヒンジベースの開口端に突設した上下一対の係止片を、ストップリング外周を覆うプラグフレームの上下一対のキー溝に係止させるものとしている請求項1乃至5のいずれかに記載の多段階曲げ式コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−163108(P2009−163108A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2168(P2008−2168)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(391005581)三和電気工業株式会社 (66)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】