説明

多気筒内燃機関の燃料供給装置

【目的】各種運転領域で燃料の微粒化を安定して行い、燃費,排気特性の向上を図る。
【構成】燃料噴射弁21の空気入口22と、当該燃料噴射弁21が配設された#1気筒が吸気行程にあるときに、排気行程にある#3気筒の排気管とを、空気導入通路23I1及び排気導出通路34D3により連通した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の燃料供給装置の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】燃費,排気浄化性能を向上させることを目的として、燃料の微粒化,霧化を促進し、燃焼性を安定させることが行われているが、従来、内燃機関の燃料供給装置として例えば図3に示すようなものがある。図において、燃料噴射弁1はスロットル弁4の上流における大気圧とスロットル弁4の下流における吸気管2内の吸入負圧との差圧により、当該燃料噴射弁1の空気入口1aに空気を導入し、空気により燃料入口1bを介して導入される燃料の微粒化を図る所謂エアアシスト噴射弁である。本図に示す燃料噴射弁1は空気により燃料を微粒化すると共に、吸気ポート3の内壁3aへの燃料付着を極力低減するために、噴射弁噴口部1cまでは、噴霧の助走区間として助走部1dが形成されている。ここで、燃料の噴射量・噴射時期は制御部1eにより調整及び制御がなされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような大気圧と吸入負圧との差圧によりアシストエアを供給する内燃機関の燃料供給装置にあっては、微粒化用空気のエアポンプは不要であるものの、各種運転領域において吸入差圧が幅広く変化するため、微粒化用空気を安定して供給できない。つまり、運転領域によっては、燃料微粒化レベルが低下し、混合気形成が不十分となり燃焼,燃費,排気等が損なわれるという問題が発生する惧れがある。
【0004】一方、自己の気筒の排気管と当該気筒の吸気管に設けられた燃料噴射弁とを連通する通路を設け、自己気筒の排気管より自己気筒の排気を導入し、排気の一部を微粒化用の空気として用いる技術がある(実開平3−83376号公報参照)。しかしながら、自己気筒の排気管より導入した排気の一部を微粒化用の空気として用いるものにあっては、微粒化を行うタイミングにおいて、当該気筒の排気管は大気圧と略同等であり、排気圧と吸気圧との間に大きな差圧が存在せず、もって、排気を導入する効果が低い。一方、微粒化を行う必要がないタイミング,即ち噴射が行われていないタイミングにおいては、例えば排気行程において排気圧は高くなるので、排気圧と吸気圧との間に大きな差圧が存在することとなる。しかしながら、当該タイミングで燃料噴射を行うと、微粒化した燃料は吸気ポートの内壁に付着し壁流となるだけで、かえって、燃焼,燃費,排気等が損なわれてしまうという問題がある。
【0005】本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、燃料微粒化用の空気を供給する内燃機関の燃料供給装置において、他の気筒の高い状態にある排気圧を導入することにより、簡易な構成で、各種運転領域で燃料を安定して供給可能とし、燃費,排気特性の向上を図った内燃機関の燃料供給装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】このため本発明は、燃料噴射弁の気体導入部から気体を導入して燃料微粒化を行うエアアシスト燃料噴射弁を有する多気筒内燃機関の燃料供給装置において、燃料噴射弁の気体導入部と、当該燃料噴射弁が配設された気筒が吸気行程にあるときに排気行程にある気筒の排気管と、を連通して燃料微粒化用の排気を導入する連通路を設ける構成とした。
【0007】
【作用】以上の構成によれば、前記連通路を介して、当該燃料噴射弁が配設された気筒が吸気行程にあるときに排気行程にある気筒の排気管内を流通する排気が、燃料噴射弁の下流側に導入され、燃料は排気と混合・加速され、燃料噴射弁より微粒化されて噴射される。
【0008】ここで、ある気筒が排気行程になっているときの、当該気筒の排気管内圧力は大気圧より高く、もってその時吸気行程になっている気筒における吸気管内負圧との差圧は大きくなる。即ち、当該噴射弁が微粒化を行うタイミングにおいて、より大きな差圧が連通路を介して燃料噴射弁に作用することとなり、燃料の積極的な微粒化が行われる。
【0009】
【実施例】以下に本発明の実施例を図に基づいて説明する。本実施例に係る内燃機関は4気筒内燃機関であり、図1には、#1気筒に係る吸気通路2と排気通路32を示し、以下の説明については、#1気筒に係る構成について代表して説明する。尚、従来例で説明した図3に示す燃料噴射弁1と同一構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】本実施例に係る燃料噴射弁21にあっては、該燃料噴射弁21の下流側に位置する空気入口(気体導入部)22に空気導入通路23I1を介して排気が導入され、該排気により燃料入口1bを介して導入される燃料の微粒化が図られる。また、当該気筒の排気通路32には排気抽出管33が配設され、排気導出通路34を介して排気が燃料噴射弁に供給される。本実施例では、排気抽出管33の先端開口部33aは排気管32内の排気流に対して垂直に開口している。尚、31は排気弁、41は点火栓である。
【0011】さらに、本発明に係る構成として、#1気筒の空気導入通路23I1と、#3気筒の排気導出通路34D3とが連通されており、同様にして、#3気筒の空気導入通路23I3と#4気筒の排気導出通路34D4、#4気筒の空気導入通路23I4と#2気筒の排気導出通路34D2、及び#2気筒の空気導入通路23I2と#1気筒の排気導出通路34D1とが連通している。
【0012】ここで、当該内燃機関にあっては、#1気筒,#3気筒,#4気筒及び#2気筒の順番で点火が行われ、もって、各気筒における吸気行程、排気行程等は図2に示すようになる。次に本実施例に係る作用を説明する。燃料噴射時期には、燃料噴射弁21に制御部1eで燃料噴射の制御が行われる。
【0013】本実施例では、排気導出通路34D3と空気導入通路23I1とを介して、排気行程にある#3気筒の排気管内を流通する排気が、吸気行程にある#1気筒に配設される燃料噴射弁21の空気入口22に導入され、燃料は排気と混合・加速され、燃料噴射弁21より微粒化されて吸気弁開口部10に噴射される。即ち、排気導出通路34D3と空気導入通路23I1とは、燃料噴射弁21の下流側に配設される空気入口22と、当該燃料噴射弁21が配設された#1気筒が吸気行程にあるときに排気行程にある#3気筒の排気管と、を連通して燃料微粒化用の排気を導入する連通路である。
【0014】ここで、#3気筒が排気行程になっているときの、当該#3気筒の排気管内圧力は大気圧より高く、もってその時吸気行程になっている#1気筒における吸気管内負圧との差圧は大きくなる。尚、本実施例では、排気抽出管33の先端開口部33aが排気管32内の排気流に対して垂直に開口しているので、当該排気抽出管33には、排気の全圧がかかり、最も圧力が高い状態で排気を取り出すことが可能である。
【0015】即ち、このようにして、排気圧力の最も高い状態の排気が、#1気筒における燃料噴射弁21下流側の空気入口22に導入される。即ち、当該噴射弁21が微粒化を行うタイミングにおいて、より大きな差圧が排気導出通路34D3と空気導入通路23I1とを介して燃料噴射弁21に作用することとなり、吸気管内2の圧力状態にあまり依存せず安定して微粒化用空気を燃料噴射弁21に供給することが可能となり、燃料の積極的な微粒化が行われる。
【0016】また、他の気筒に設けられる燃料噴射弁についても、同様な作用,効果が奏されるものである。この結果、機関運転状態によらず、燃料噴霧の微粒化が可能となり、噴霧は吸気ポート内壁に壁流として付着することなく、空気と充分混合して、燃焼室へと流入するため、燃焼室内での燃料壁流の形成を防止し、燃料の空間浮遊率を増大することが可能となった。従って、燃料壁流による過渡応答性の問題を解決でき、常に安定した燃焼が行われるようになり、燃費,排気の良い状態での運転が可能となるという効果がある。
【0017】また、高負荷時の中でもスロットル弁が全開に近い領域にあっては、吸入負圧と排気圧力との差圧が少なくなるため、アシストエアの供給が減少するが、当該運転領域では、スロットル弁が全開に近いので、吸気の流速が早いので、あえて燃料を微粒化する必要もない。即ち、何ら制御手段を用いることなく、所定のタイミングで排気を還流でき、簡易な構成のままで、必要なタイミングにおいてはアシストエアが供給され、不必要なときは、燃焼に不安定な残留ガス割合を増大することがなく、全開運転時の充填効率の低下も必要最小限に抑えることができる。
【0018】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれば、燃料噴射弁の気体導入部と、当該燃料噴射弁が配設された気筒が吸気行程にあるときに排気行程にある気筒の排気管と、を連通して燃料微粒化用の排気を導入する連通路を設けるようにしたので、簡易な構成のままで、当該噴射弁が微粒化を行うタイミングにおいてのみ、より大きな差圧が連通路を介して当該噴射弁に作用することとなり、吸気管内の圧力状態にあまり依存せず安定して微粒化用空気を供給することが可能となり、燃料の積極的な微粒化が行われると共に、燃焼室内での燃料壁流の形成が防止され、燃料の空間浮遊率が増大し、常に安定した燃焼が行われるようになり、燃費,排気性能が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料供給装置の実施例の構成を示す縦断面図
【図2】同上実施例における燃焼行程のタイムチャート
【図3】従来の燃料供給装置の構成を示す縦断面図
【符号の説明】
2 吸気管
4 スロットル弁
21 燃料噴射弁
22 空気入口
23 空気導入通路
32 排気通路
33 排気抽出管
34 排気導出通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】燃料噴射弁の気体導入部から気体を導入して燃料微粒化を行うエアアシスト燃料噴射弁を有する多気筒内燃機関の燃料供給装置において、燃料噴射弁の気体導入部と、当該燃料噴射弁が配設された気筒が吸気行程にあるときに排気行程にある気筒の排気管と、を連通して燃料微粒化用の排気を導入する連通路を設けたことを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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