説明

多発エンジン航空機

本発明は多発航空機に関し、この航空機の2つ以上のエンジン(2、3)は、胴体の長手方向垂直対称面に対し対称に胴体翼に固定され、第3のエンジン(7)は、上記の長手方向面で見て尾翼面からなる胴体の後端部に設けられている。尾翼面(9、10)は胴体の長手方向面に対し対称の通路(11)を形成し、第3のエンジン(7)は、長手方向面に対応する、通路の対称面に配置され、その出口が、上記の尾翼面により形成される通路(11)のほぼ入り口に配置されるよう、胴体の上部に、隆起した状態で、尾翼面の前方に搭載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多発エンジン航空機、特に、これに限定するものではないが、3つのエンジンを備えた航空機に関する。これら3つのエンジンのうち2つは、胴体の垂直長手方向面に対し、対称に胴体翼にそれぞれ結合され、第3のものは、尾翼部分にある胴体の後部に設けられている。
【背景技術】
【0002】
ロッキードL1011およびマクドネル・ダグラスDC−10、あるいはMD−11のような3つのエンジンを備え、上記の構造を備えた航空機は既知である。特に、第3のエンジンは、構造的および幾何学的に、水平尾翼部分と垂直尾翼部分との間に配置されて、上記の垂直尾翼部分のフィン(垂直安定板)を保持する。これらの航空機は、その設計が1970年代にまでさかのぼり、その幾つかはまだ運行中であり、長距離飛行を提供する強力なエンジンを備えている。然しこれらが設計された時代が時代だけに、これらのエンジンはかなりの騒音を生じ、高燃比である。特に、第3のエンジンによって生じる騒音は、この第3のエンジンの位置は、胴体の後部近辺で騒音が発散されることを意味するので、機内の後部に位置する乗客および航空機が離着陸する段階時に空港近くに住む居住者には特に不快である。
【0003】
よって、この構造は徐々に放棄されて、より簡単で、同等の性能を有する2つのジェット型構造に変えられてきている。
【0004】
エアバスA−340およびボーイング747のような極長距離型航空機を除いて、現在起こっていることは、旅客機は大部分、胴体翼が、ターボファンのような2つのエンジンを、それぞれ対称に持つ構造になされているということである。特に、強力な高性能ターボファンを発展させ得る技術の進歩は、これら2つの双発ジェット航空機が、短距離飛行および中距離飛行ができるだけでなく、そのうちの最大のものは、2つのエンジンしか使わないのに、また、その片方が作動しなくても全く安全に長距離飛行をおこなうことを保証することを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然しながら、他方、これらの強力なターボファンはどんどん質量と大きさを増やし、それ故ストレス(応力)に耐え得るよう航空機の構造(特に、胴体、翼および着陸装置)を設計する必要があり、また、その過大化のため、エンジン製造者によりこの技術分野において為された進歩にも拘らず、乗客および空港近くに住む居住者の両方にかなりのレベルの騒音を生じる。
【0006】
本発明の目的は、これらの短所を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明によれば、多発エンジン航空機は2つ以上の第1エンジンと、胴体の垂直長手方向対称面に沿って、尾翼部分を含む胴体の後部に設けられる第3エンジンとを備える。上記の尾翼部分は、胴体の長手方向面に対して対称の通路を形成する。上記の第3エンジンは、上記の長手方向に対応する、上記通路の対称面に配置され、その出口が、上記の尾翼部分で形成される通路の入り口に位置するように、上記の胴体の上部に隆起した状態で上記の尾翼部分の前方に搭載される。この航空機は、上記の2つの第1エンジンが、上記の胴体の長手方向垂直対称面に対し対称に胴体翼にそれぞれ結合されていて、上記の通路を形成する尾翼部分はスタビライザーを備えた水平尾翼部分を含み、水平尾翼部分の上記スタビライザーは、上記の胴体の後ろに向け対称に僅かに傾斜せられ、上記の垂直長手方向面に直交する水平面で見て、開いたV形をなし、このV形の先端は、上記のスタビライザーと胴体の後部との連結部に対応することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明により、尾翼部分の設計と、第3エンジンを上記の通路の入り口に配置することにより、胴体の第3エンジンによって生じる騒音が通路によって吸収され、これに沿い、胴体から上方に、即ち、機内の後部に位置する乗客や空港近くに住む居住者から遠く離れて放出されるので、前記の音響問題をかなり軽減することができる。よって、生じる騒音は、音響遮蔽を構成する、胴体の尾翼部分によってマスク(掩蔽)される。
【0009】
従って、本発明は、騒音被害に結びつく問題を部分的に克服するので、3つのエンジンの構造に戻り、大きなエンジンを備えた双発航空機と同様の全体的力を保持しながら、サイズが小さく、よって、軽くて、うるさくない翼エンジンを備えた航空機を設計することが出来る。
【0010】
更に、(翼エンジンは小さいので)、3つのエンジンを用いても2つのエンジンを有する航空機に比べて航空機の質量の増加はない。また、尾翼部分によって形成される通路の設計に伴う追加の質量は、着陸装置の質量の低下によって大幅に相殺される。その理由は、エンジンが小さいのだから、着陸装置の寸法は小さくなり、容積は少なくなるからである。
【0011】
尾翼部分によって形成される通路は、略U形をするのが好ましく、その基部は、胴体の後部の両側にそれぞれ突出する、水平尾翼部分の2つのスタビライザーに対応し、その側方の分枝部は、上記スタビライザーの端に位置する垂直尾翼部分の2つのフィンに対応する。
【0012】
別の変形例によれば、尾翼部分は、H形で、その上方部が上記の通路に対応する。
【0013】
上記の通路の前方に配置された第3のエンジンは、上記の垂直長手方向面に含まれる、その幾何学上の軸が上記の通路の近辺を通過するように配置されるのが好ましい。こうすれば、エンジンを出て行くガスは通路の底部に”捕獲”され、機尾部分に沿って流れ、その過程で強度を失って行く。
【0014】
上記の胴体の後部の上方部を、胴体の垂直長手方向面に直交する面で平らにするのが好ましい。そうすると、上記の通路がU字形をしている場合、水平尾翼部分が、ほぼ連続的に胴体の平らになった後部を長くする。
【0015】
更に、エンジンを出て行くガスが通路によって最適に吸い込まれるように、よって、生じる騒音を最大にマスクするために、水平尾翼部分のスタビライザーは上方向対称に僅かに傾斜されていて、上記の垂直長手方向面に直交する垂直面で見れば、開いたV形を形成し、このV形の先端は、スタビライザーと胴体の後部との連結部に対応する。
【0016】
更に、民間航空機は、特に、地上にある時補助システムを操作するためエンジンに追加して補助電力発電機を備えていることは既知である。本発明によれば、上記の第3のエンジンが上記の補助電力発電機を作動できる。
【0017】
加えて、第3のエンジンは、2つの翼エンジンと同一でも異なっていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付図面の図により本発明がどのように実施できるかが明確に理解できる。これらの図中、同一の符号を同一の要素を示すのに使用する。
【0019】
図1〜図4に示されている実施例では、航空機(1)は(ターボファン型の)3つのエンジンを備え、そのうちの2つエンジン(2,3)は胴体(6)の翼(4,5)の下方に、胴体の長手方向垂直対称面(P)に対し対称に、それぞれ配置されている。第3のエンジン(7)は、長手方向面(P)に沿い、水平および垂直尾翼部分(9、10)を含む胴体の後部(8)に設けられている。符号(13)は、このような航空機の通常の着陸装置を示す。
【0020】
特に、図1、図4および図5に示されているように、水平および垂直尾翼部分(9、10)は、本発明によれば、通路(11)を形成し、この通路は、この実施例では、略U形で、胴体(6)の長手方向面(P)に対し幾何学的に対称である。第3のエンジン(7)は、通路の対称面、即ち面(P)に配置されており、特に、図2および図3に示されているように、その出口(7A)が通路(11)の入り口に位置するように、水平尾翼部分(9)および垂直尾翼部分(10)の前方、胴体の後部(8)の上方部(8A)に配置するのが好ましい。
【0021】
構造的には、水平尾翼部分(9)は、胴体の後部に固定され、その面(P)の両側に対称にそれぞれ配置されている2つのスタビライザー(12)から構成されている。これらのスタビライザー(12)は上記の通路(11)のU形の基部を形成し、エンジンにより生じる騒音の伝播を最適に向けるため、胴体に対し上方且つ後方に傾斜されている。
【0022】
よって、スタビライザー(12)が水平に対し対称で、僅かに上方に傾斜せられて、広く開いたVを形成し、その先端が、これらを連結する、胴体の後部の区域(14)に対応することが図1、図4および図5から見られる。よって、U形の通路(11)の基部は僅かに窪んでいる。更に、図3のように上から見ると、これらのスタビライザー(12)は、また、後方向に対称に傾斜せられて、広く開いたV形を形成し、このV形は胴体から出ていて、その先端は連結区域(14)に対応する。勿論、水平後尾部分(9)のスタビライザー(12)はそれぞれ昇降舵(15)を備える。
【0023】
垂直尾翼部分(10)は、面(P)に対称で、スタビライザー(12)の自由端の先端に固定されている2つのフィン(16)で構成されている。上記の自由端は胴体から出ている端部に対向している。これらのフィン(16)は相互に平行で、垂直に配置されていて、特に、図4に示されているように、上記の通路のU形の側方分枝部を形成する。方向舵(17)がフィンの後縁に加えられていて、これらのフィンの前縁は、図2に示すようにその上方端縁の方向に狭まるように傾斜されている。
【0024】
更に、胴体の後部(8)の上方部(8A)は、垂直長手方向面(P)に直交する面で僅かに平らにされており、水平後尾部分のスタビライザー(12)は、特に、図5に示されているように、後部の平らにされた連結区域(14)の上方の輪郭にほぼ連続している。
【0025】
尾翼部分(9、10)とにより形成された通路の前に位置する第3のエンジン(7)は、垂直長手方向面(P)に含まれるその水平幾何学上の軸(A)が上記の通路のU形の底部を通るように配置されている。
【0026】
よって、上記を可能にするため、第3のエンジンは胴体の平らにされた後部に対し隆起して搭載され、その入り口(7B)は図2および図4示されているように、胴体の上方に位置し、その出口(7A)は、上記通路(11)のU字の底部に、即ち、水平尾翼部分との連結区域(14)の近辺だが、それから距離を置いて開いている。
【0027】
よって、エンジン(7)のノズルによって排気されるガスの温度は周囲の構造に影響を与えず、生じる音響波は図2および図3にB1およびB2(下記参照)として略示されているプロフィールで通路(11)に向けられる。
【0028】
U形通路(11)の形に形成された機尾部分と、その通路の前方で、対称面へ第3のエンジンを配置することとの組み合わせにより、エンジンにより生じ、ノズルとファンから出て行く音響波が、胴体の後部(8)の平らにされた端部(14)とスタビライザー(12)との上方に、示されたプロフィールで拡散され、上記のスタビライザーの開いたV形配置により、垂直フィン(17)に向くと共にこれに沿い(図2から図4に)略示されている矢印(f)の方向に上昇し、そこから上方且つ後方、即ち後方の乗客および空港近くに住む居住者から離れて放散されるので、このエンジンの位置に伴う音響問題は大幅に解消される。
【0029】
第3のエンジンを使うことにより、通常の双発航空機よりスラスト(推力)が小さく、従って、騒音が少なく、質量も少ない2つのエンジンを翼下に使うことが出来、よって、着陸装置(13)(主翼ギアおよび機首ギア)の質量が減少し、この質量の減少がU形尾翼部分によって生じる追加の質量を大幅に相殺する。
【0030】
更に、第3のエンジンは、補助電力発電機を作動するのに使用される。
【0031】
勿論、第3のエンジンは、その他の2つのエンジンと異なるパワーを有することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の多発航空機の実施例の斜視図である。
【図2】図1の航空機の側面図である。
【図3】図1の航空機の平面図である。
【図4】図1の航空機の正面図である。
【図5】第3エンジンを備えた、上記胴部の後部の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
2・3…第1エンジン、6…胴体、7…第3のエンジン、7A…第3エンジンの出口、9・10…尾翼部分(9…水平尾翼部分、10…垂直尾翼部分)、11…通路、12…スタビライザー、16…フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2基以上の第1エンジン(2、3)と第3のエンジン(7)とを備えた多発航空機であって、第3のエンジン(7)は、胴体の長手方向垂直対称面に沿って、尾翼部分を含む、胴体の後部に設けられ、上記の尾翼部分(9、10)は上記の胴体の長手方向面に対し対称である通路(11)を形成し、上記の長手方向面に対応する上記の通路の対称面に第3のエンジンが配置され、その出口(7A)が上記の尾翼部分によって形成される通路(11)のほぼ入り口に位置するように、上記の胴体の上方部分に隆起した状態で上記の尾翼部分の前方に搭載されるものにおいて、
上記の2基の第1エンジン(2、3)が胴体の長手方向垂直対称面に対し対称に胴体翼にそれぞれ接合せられ、上記の通路(11)を形成する尾翼部分が、スタビライザー(12)を備えた水平尾翼部分を含み、この水平尾翼部分の上記スタビライザー(12)は、上記胴体(6)の後方に向け対称に僅かに傾斜され、上記の垂直長手方向面に直交する水平面で見ると、開いたV形を形成し、このV形の先端がスタビライザーと胴体の後部との接続部に対応することを特徴とするもの。
【請求項2】
請求項1に記載の航空機であって、尾翼部分で形成された上記の通路(11)がほぼU形を有し、そのU形の基部は、胴体の後部の両側にそれぞれ突出する水平尾翼部分(9)の2つのスタビライザーに対応し、その側方分枝部は、上記のスタビライザーの端に位置する垂直尾翼部分(10)の2つのフィン(16)に対応することを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項1に記載の航空機であって、その尾翼部分がほぼH形を形成し、このH形の上方部が上記の通路(11)に対応することを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機であって、上記の通路(11)の前方に配置された第3エンジンが、上記の長手方向垂直対称面に含まれるその幾何学上の軸が上記の通路の基部近辺を通過するように配置されていることを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の航空機であって、上記の胴体(6)の後部が、胴体の上記長手方向垂直対称面に直交する面で平らにされていることを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の航空機であって、水平尾翼部分の上記スタビライザー(12)が上方向、対称に僅かに傾斜されて、上記の垂直長手方向面に直交する垂直面で見て、開いたV形を形成し、このV形の先端が上記のスタビライザーと上記の胴体の後部との連結部に対応することを特徴とするもの。
【請求項7】
補助電力発電機を備えたタイプの請求項1から6のいずれか1項に記載の航空機であって、上記の第3エンジン(7)が、上記の補助電力発電機を作動できることを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機であって、上記のエンジン(2、3、7)が同一であることを特徴とするもの。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機であって、上記の第3エンジン(7)が、その他の2つの翼エンジン(2、3)と異なっていることを特徴とするもの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−506576(P2008−506576A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520855(P2007−520855)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001649
【国際公開番号】WO2006/016031
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(506355257)エアバス フランス (117)