説明

多管腔チューブ用の多チャネルカプリング

中に複数の管腔を有する2つの導管を連結するためのコネクタ(10)であって、雄コネクタ部分(12)及び雌コネクタ部分(14)を備え、雄コネクタ部分及び雌コネクタ部分は、相互に係合可能な保持手段を有し、連結されることとなる導管の流通路に対応する複数の流通路を画成し、協働する雄流体流通路連結部分及び雌流体流通路連結部分を有する、コネクタにおいて、コネクタ部分中の流体流通路の軸が、入口ポイントにて、前記部分の出口ポイントから偏倚されている、コネクタが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に限定はしないが、導管を通る流体流を確立するまたは停止させるための医療デバイスの分野における、2つ以上の導管を接合又は分離させるためのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の医療デバイスにおいて、導管を用いることが必要とされ、特に、様々な流体を患者に、及び患者から輸送するために、比較的軟質のプラスチック材料チューブからなる特に可撓性の導管を用いることが必要とされる。例えば、流体源を交換するために、又は例えば患者から流体を受けるレセプタクルを交換するために、デバイスと患者との間の流体流を中断させることが頻繁に必要となる。患者とデバイスとの間に流体流導管を設けることが必要となるデバイスの一例は、医療デバイス技術においてよく知られている局所的陰圧(TNP)治療デバイスである。
【0003】
しばしば、導管は、問題としているデバイス又はアイテムの交換を行なうためには、デバイスに関連付けされたチューブ状スピゴットに対して単に押し付けられるか、又はチューブ状スピゴットから単に引き離されるにすぎない。他の例においては、導管は切断される場合があり、様々なタイプのクランプが切断された導管の開口端部を密封するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特に病院内の患者には、多数の導管が装着される場合があるため、患者に医療デバイスをリンクするために使用される導管中のコネクタが、可能な限りフールプルーフなものであり、コネクタが、デバイスが患者に誤って連結され得ないように、固有な特徴を有することが重要となる。同様に、デバイスが、患者に及び患者から異なる流体を輸送する複数の導管を有する場合があり、かかる導管が、交差し得ない又は誤って連結され得ないことが重要となる。さらに、患者とデバイスとの間の所要の部位への様々な流体の正確な連結が可能であることは、生物学的有害物質及び交差汚染の蔓延を最小限に抑えることにも役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、中に複数の管腔を有する2つの導管を連結するためのコネクタであって、雄コネクタ部分及び雌コネクタ部分を備え、雄コネクタ部分及び雌コネクタ部分は、相互に係合可能な保持手段を有し、連結されることとなる導管の流通路に対応する複数の流通路を画成し、協働する雄流体流通路連結部分及び雌流体流通路連結部分を有する、コネクタが提供される。
【0006】
本発明によるコネクタは、複数の管腔をそれぞれが有する2つの導管内の複数の管腔を同時に連結するためのものである。各導管内の管腔の個数は、例えば3つである。
【0007】
雄コネクタ部分は、コネクタの半部が雄流体流通路連結部分を有することを指し、雌コネクタ部分は、雌流体流通路連結部分を有し、これらの流体流通路連結部分は、相互に協働して、互いにシールを形成し、結合されたコネクタ半部を通る複数の連続する流体流通路を確立する。
【0008】
可能な限り小さなコネクタパッケージ内においてスペースの活用性を最大限にするために、コネクタ半部に進入する流通路の軸と、同一のコネクタ半部から出る対応する流通路の軸とが、相互に同軸でなくともよい。この点に関して、各コネクタ半部内の内部流通路の軸は、互いに対して、入口から出口に偏倚されてよい。
【0009】
各コネクタ半部の導管入口端部にて、直立スピゴット部分が設けられてよく、これらの直立スピゴット部分に対して、適切な導管の管腔が、密閉されるように係合され得る。3つの管腔のための流体流通路を有するコネクタの場合には、外方の2つの管腔が、シールスピゴットを有してよく、第3の管腔である例えば中央の管腔は、シールスピゴットを有さなくてよい。シールスピゴットを有さない管腔の漏出に対する密閉は、導管の外側面が、コネクタ半部内の導管受けソケットの内方壁部に対接してシールを形成することにより達成され得る。残りの2つの管腔がシールスピゴットと密閉的に係合されるため、第3のスピゴットレス管腔が、他の2つのシールされた管腔と交差漏出する危険はない。
【0010】
導管がN個の管腔を有する場合には、シールスピゴットの個数は、(N−1)であってよい。
【0011】
本発明によるコネクタの相互に係合する保持手段は、コネクタが、ある所定の力レベルにて引き離されるように設けられてよい。この所定の力は、約20〜約40Nの範囲内であってよく、この特徴は、患者に対する絞圧効果の危険及び延在する導管により人を躓かせる危険を最小限に抑えることを意図されている。相互に係合する保持手段は、バヨネットフィンガ及び受け部の構成を含んでよく、バヨネットフィンガは、受け部の縁部に係合するためのラッチショルダを有する。このショルダは、上述のように接合されたコネクタに対する軸方向力によって受け部の端部から係合解除されるように、ならびに、雄コネクタ部分及び雌コネクタ部分の分離が可能となるように、円み形状を有してよい。
【0012】
本発明によるコネクタは、多管腔導管の所定の特定の設計及びサイズに協働するように寸法設定されてよく、又はその逆となるように寸法設定されてよく、又は、両方が共に設計されてよい。
【0013】
両コネクタ半部は、軸方向に延在する壁部部分により画成されるソケット部分を有してよく、この壁部部分は、協働導管の外側面にグリップし、シールを形成する。
【0014】
以下、本発明をさらに十分に理解することができるように、添付の図面を参照として、もっぱら例示として例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるコネクタの雄コネクタ部分の断面図である。
【図2】本発明によるコネクタの雌コネクタ部分の断面図である。
【図3】図1のコネクタ半部の軸方向図である。
【図4】図2のコネクタ半部の軸方向図である。
【図5】共に連結された図1及び図2の2つのコネクタ半部の断面図である。
【図6】図5に図示される接合されたコネクタ半部の連結領域の詳細図である。
【図7A】本発明によるコネクタによって接合されることとなる多管腔導管の断面図である。
【図7B】導管の一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照すると、同一の構成部は、共通する参照番号により示される。
【0017】
コネクタ10が図5に図示され、このコネクタ10は、雄コネクタ部分12(図1及び図3)と、雌コネクタ部分14(図2及び図4)とを含む。雄コネクタ部分12は、中を貫通する3つの流体流通路18、20、22を有する本体部分16と、中を貫通する3つの対応する流体流通路/管腔、及びソケット部分24の断面形状に対応する外側面27を有する導管26(図7を参照)を受けるためのソケット部分24と、以下においてさらに詳細に説明されることとなる、雌部分14上の受け部材と協働するための2つの対向して配設された弾性バヨネットフィンガ28とを備える。導管26は、ソケット24内に押し込まれて、それにより、管腔18及び22が、直立シールスピゴット30、32にそれぞれ係合し、他方でコネクタ半部中の流体流通路20に対応する第3の管腔20が、スピゴット30、32により他の2つの管腔18、22からシールされ、ソケット24の内側面34に対接してシールを形成する導管の外側面27により、コネクタの漏出口外側部に対接してシールされる。雄コネクタ部分12の内方端部にて、3つの直立スピゴット36、38、40が、以下においてさらに詳細に説明されるように、雌半部14内の対応する流体流通路ソケットと密閉的に係合するように設けられている。コネクタ本体部分内の流体流通路18及び22は、異なる軸を有する部分を有し、したがって、例えば、流体流通路18は、スピゴット30に隣接する第1の流れ部分42と、スピゴット36に隣接する第2の流れ部分44とを有し、部分42、44間の接合部は、互いの中に組み込まれる2つの裁頭円錐形の形態をとる。この形状は、最小の寸法においてスペースを最大の効率で活用するためのものであり、小径の流体流通路がコネクタ半部内において使用される場合に生じ得る著しい流れ制限を引き起こすことなく達成され得る。この形状構成の他の理由は、小さな導管26を、導管/コネクタを可能な限り小さくかつ可撓性を有するように保つように使用することを可能にすることである。隆起したリッジガイド部材48が、雄コネクタ部分の外側面50上に設けられ、このガイド部材は、雌コネクタ部分中の適切に寸法設定されたチャネル内に受けられて、コネクタ半部が共に不正確に組み合わされるのを防ぐ。
【0018】
図6を参照すると、図5において円で囲まれた、雄コネクタ部分12と雌コネクタ部分14との間の連結領域の詳細が図示されている。流体流通路18の入口部分42が示され、これは、軸90を有し、さらに流体流通路18の出口部分44が示され、これは軸92を有する。したがって、流体流通路18の軸90は、入口ポイントにて、雄コネクタ部分12の出口部分における流体流通路18の軸92から偏倚されている。さらに、同一の原理が、雄コネクタ部分12内の流体流通路22に対して、さらに雌コネクタ部分14内の流体流通路18及び22に対して適用される。雄コネクタ部分及び雌コネクタ部分におけるこの軸偏倚の結果として、これらのコネクタは全体として、よりコンパクトに、及びより嵩張らずに作製され得る(図1の雄コネクタ部分に図2の雌部分14を連結するためには、それらの一方が、流通路を中心として180°にわたり回転されなければならないことに留意されたい)。
【0019】
雌コネクタ部分14は、本体部分52と、バヨネットフィンガ28の受け部54と、導管受けソケット56とを備える。本体部分52は、3つのスピゴット受けソケット60、62、64を有し、これらは、スピゴット36、38、40をそれぞれ密閉的に受ける。導管を受けるソケット部分56においては、2つの直立スピゴット66、68が設けられて、導管26と同一の第2の導管の管腔18、22にそれぞれ密閉的に係合し、第3の管腔20は、雄コネクタ半部内の導管と同一の態様において、ソケット56にシールする。雌コネクタ部分14は、雄コネクタ部分を正確な位置合わせにおいて受けるために、短い軸方向ソケット部分を有し、この短いソケット部分は、受け部54を包含する外周壁部70によって画定される。外周壁部70は、2つのコネクタ半部の不正確な組付けを防ぐために、雄コネクタ半部のガイド部材48を受ける凹部72を有する。さらに、雌コネクタ半部を貫通する流体流通路18、22は、雄コネクタ半部内の流体流通路と同様の態様において偏倚される。
【0020】
雄コネクタ半部12及び雌コネクタ半部14が、共に押されると、スピゴット36、38、40は、シールソケット60、62、64にそれぞれ進入して、接合されたコネクタ10及び導管26を貫通するシールされた流体流通路18、20、22を形成する。バヨネットフィンガ28は、受け部54に進入し、コネクタ半部が、完全に係合すると、フィンガ28上のショルダ80が、受け部54の端部82に弾性的に係合する。ショルダ80は、湾曲した曲面状形状部81を備え、それにより、例えば導管が患者に巻きつく又はある者が延在する導管に躓くなど、予期しない強い力が接合されたコネクタ部分に加えられると、曲面状形状部81により、バヨネットフィンガ28が、内方に移動することが可能となり、ショルダ80が、受け部70から係合解除され得るようになる。受け部70及びコネクタ部分12、14からバヨネットフィンガ28を係合解除させるためには、20〜40Nの範囲内の軸方向力が十分なものとなり得る。コネクタ半部の不慮の分離は、雌コネクタ部分上のキャップ部分84によって防止され、このキャップ部分84は、例えばバヨネットフィンガが偶然に手によって内方に押し込まれるのを防ぎ、2つのコネクタ半部が分離されるのを可能にする。しかし、キャップ部分84は、上述のような危険を成立させる予期しない強い軸方向力によるコネクタ部分の分離は妨げない。
【0021】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたって、「備える(comprise)」及び「含む(contain)」の語、ならびに、例えば「備えている(comprising)」及び「備える(comprises)」などのそれらの語の異形語は、「含むがそれに限定されない」ということを意味し、他の部分、付加物、構成要素、完全体、又はステップを排除するようには意図していない(そして排除しない)。
【0022】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたって、単数形は、文脈に応じて別の解釈が必要とならない限り、複数形を包含する。とりわけ、定冠詞が使用される場合には、本明細書は、文脈に応じて別の解釈が必要とならない限り、単数形のみならず複数形も意図されているものとして理解されるべきである。
【0023】
本発明の特定の態様、実施形態、もしくは実施例と組み合わせて説明される、特徴、完全体、特性、化合物、化学的部分、又は化学基は、適合不能でない限り、本明細書において記載される任意の他の態様、実施形態、又は実施例に対して適用可能なものとして理解されるべきである。
【符号の説明】
【0024】
10 コネクタ
12 雄コネクタ部分
14 雌コネクタ部分
16 本体部分
18 流体流通路
20 流体流通路
22 流体流通路
24 ソケット部分
26 導管
27 外側面
28 弾性バヨネットフィンガ
30 直立シールスピゴット
32 直立シールスピゴット
36 直立スピゴット
38 直立スピゴット
40 直立スピゴット
42 第1の流れ部分、入口部分
44 第2の流れ部分、出口部分
48 リッジガイド部材
50 外側面
52 本体部分
54 受け部
56 導管受けソケット
60 スピゴット受けソケット
62 スピゴット受けソケット
64 スピゴット受けソケット
66 直立スピゴット
68 直立スピゴット
70 受け部、外周壁部
72 凹部
80 ショルダ
81 湾曲した曲面状形状部、曲面状形状部
82 端部
84 キャップ部分
90 軸
92 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に複数の管腔を有する2つの導管を連結するためのコネクタであって、
雄コネクタ部分及び雌コネクタ部分を備え、
前記雄コネクタ部分及び前記雌コネクタ部分が、相互に係合可能な保持手段を有し、
前記雄コネクタ部分及び前記雌コネクタ部分が、連結されることとなる前記導管の流通路に対応する複数の流通路を画成し、
前記雄コネクタ部分及び前記雌コネクタ部分が、協働する雄流体流通路連結部分及び雌流体流通路連結部分を有する、
コネクタにおいて、
前記コネクタ部分中の流体流通路の軸が、入口ポイントにて、出口ポイントから偏倚されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記雄コネクタ部分及び前記雌コネクタ部分の一方が、内部接合部にて、他方の前記雄コネクタ部分及び前記雌コネクタ部分内の対応するソケットと協働する流体流シールスピゴットを有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記導管管腔を密閉的に受けるための直立スピゴットが、前記雄コネクタ部分及び前記雌コネクタ部分の導管受けソケット部分内の少なくともいくつかの管腔のために設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
(N−1)個の直立スピゴット部分が存在し、ここで、Nは、前記導管内の管腔の総数であることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
全ての管腔が直立スピゴットを有し、それにより前記直立スピゴットと共にシールを形成することを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記導管受けソケットは、外周壁部部分によって画成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記導管の外側面が、前記外周壁部部分に対接してシールを形成することを特徴とする請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
3つの流通路が存在することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記相互に係合可能な保持手段は、バヨネットフィンガ及び受け部の構成を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記バヨネットフィンガは、前記受け部と係合するためのラッチショルダを備えることを特徴とする請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記ラッチショルダは、約20〜約40Nの範囲内の力のレベルで受け部から係合解除するように丸められていることを特徴とする請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
実質的に添付の明細書及び図面において前述で説明された、中に複数の管腔を有する2つの導管を連結するためのコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2011−507567(P2011−507567A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538912(P2010−538912)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/051080
【国際公開番号】WO2009/081178
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】