多素子トランスデューサの表面マッピング
表面マッピングを用いて、フェイズドアレイの超音波トランスデューサの出力を調整するための方法。トランスデューサ表面は、各トランスデューサ素子の期待される位置に対する各トランスデューサ素子の実際の位置を求めるための、ハイドロホンのようなセンサを用いてマッピングされる。マッピングは、ハイドロホンと各トランスデューサ素子との間の距離を測定することにより実行され得る。ハイドロホン及びトランスデューサの少なくとも1つは、トランスデューサ表面をマッピングするために互いに対して移動可能である。トランスデューサ素子の実際の位置が、期待される位置と異なるか否かの判定が行われる。期待される位置と異なる実際の位置を有する特定のトランスデューサ素子の駆動信号は、トランスデューサの出力を制御するために調整される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、超音波エネルギーを用いて、非侵襲的な外科的処置を行うことに関し、より具体的には、多素子(マルチエレメント)トランスデューサアレイの表面をマッピングするための方法とシステムに関する。
【0002】
背景
超音波(約20キロヘルツより大きい周波数の音波)のような、高密度に集束された音波を用いて、患者の体内の内部組織領域を治療的に処置することができる。例えば、超音波を用いて、患者が侵襲的手術を受ける必要なしに、腫瘍を除去することができる。このために、圧電セラミックトランスデューサは、電気信号により駆動されて超音波エネルギーを生じさせると共に、患者の外部であるが、除去されるべき組織に非常に接近して配置される。トランスデューサは、超音波エネルギーが患者の体内のターゲット組織領域に対応する「焦点区域」で集束されるように、幾何学的に形作られて配置され得る。ターゲット組織領域は、組織が壊死するまで加熱される。トランスデューサは、互いに非常に接近している多数の焦点区域で、順次に焦点を合わせられて付勢され得る。
【0003】
この一連の超音波処理は、周囲の組織を損傷せずに、腫瘍のような組織構造の凝固壊死をもたらすために使用される。これを達成するために、超音波エネルギーは、正確な場所に適切に焦点を合わせられて照射されなければならない。更に、超音波ビームは、予期しないホットスポットが腫瘍区域の外側に発生しないように、適切な鋭さと形状を有する必要がある。
【0004】
トランスデューサの有効性、及び患者に提供される治療に影響を与える1つの重要な要因は、トランスデューサのビームを正確かつ確実に形作り、ターゲット組織に対応する焦点区域にトランスデューサの出力を集束するための能力である。適切に構成または制御されないトランスデューサの素子(エレメント)は、不適切な焦点場所および焦点品質の低下をもたらし、効果の弱い治療という結果になる可能性がある。更に、それらは、周囲の健康な組織に損傷をもたらす可能性がある、副次的なホットスポット、即ち焦点区域を越えた集中加熱領域という結果になる可能性もある。
【0005】
トランスデューサ出力エラーの1つの原因は、トランスデューサ素子がそれらの期待された位置から移動またはシフトすることに起因する。例えば、トランスデューサが球状であると仮定する場合、各トランスデューサ素子を駆動するソフトウェアは一般に、球形モデル又は設計に従って配置されている素子に基づいて、個々のトランスデューサ素子を付勢するように構成される。しかしながら、実際には、トランスデューサ素子は球形モデルに従って配置されないことが多い。代わりに、1つ又は複数のトランスデューサ素子の実際の位置は、製造中、使用中、及び修理中に、それらの期待される位置からシフトされる可能性がある。更に、トランスデューサ素子の位置は、素子が熱により変形する結果としてシフトする(ずれる)可能性もある。これらの変化は、所定の球形モデルに基づいて個々の素子を駆動するようにプログラミングされたソフトウェアにより補償されない永久的な集束エラーという結果になる可能性がある。
【0006】
位置の僅かな偏移でも、トランスデューサ出力の特質に大幅な影響が生じ、副次的なホットスポットを生じる可能性がある。例えば、図1は概して、歪み又は偏移12を有する球形トランスデューサ10の表面に関する断面図を示す。かくして、トランスデューサ表面の実際の位置14は、所定の球形モデルに基づいた期待される位置16から下方にシフトされる。この例において、歪みは、トランスデューサ10の中央で最も大きく、一次元、即ち垂直である。図2は、別のタイプの歪み22を有する球形トランスデューサ20の別の例を示す。このタイプの歪み22は、歪み22がトランスデューサの中央であまり顕著でないことを除いて、図1に示された歪み12に類似する。また、このタイプの歪み22は、焦点エラー、及び副次的なホットスポットも生じる可能性がある。
【0007】
例えば、図1に関して、約1mmの偏移「δ」、約160mmの曲率半径「R」、及び約120mmの開口「A」を有するトランスデューサ10は、超音波出力の位置を約13mmだけシフトする可能性がある。言い換えれば、比較的小さい偏移は、出力の結果としての変化が偏移自体よりもかなり大きいように、トランスデューサの出力を変更する可能性がある。
【0008】
更に、トランスデューサ表面の物理的構造が予想通りであるとしても、個々のトランスデューサ素子は、例えば、製造時に又は修理中に、不適切に配線される可能性がある。不適切な配線により、トランスデューサ素子が、他のトランスデューサ素子用の信号により駆動されるという結果になり、これにより位置エラーと焦点エラーを引き起こす可能性がある。
【0009】
これらの問題を解決しようとする1つの試みは、トランスデューサを水中で焦点に集束させること、及び最大強度の焦点の場所を見つけるためにハイドロホンを使用することを含む。次いで、各トランスデューサ素子は、最強点で別個に付勢され、各信号の位相が測定される。各素子の測定された位相は、期待される位相と比較され、位相偏移を補償するために、駆動信号が調整される。しかしながら、この「位相測定および位相調整」の手法は、多数の欠点を有する。
【0010】
1つの欠点は、この技術が、較正中に焦点の位置に接近している集束場所に適用される点である。フェイズドアレイのトランスデューサは焦点の電子操向を可能にするが、この技術は、焦点の位置が較正中に使用される点を超えた異なる場所に操向される場合に、有効でないかもしれない。更に、この技術は、焦点の場所を見つけるために、正確なスキャナと電子機器を必要とする。従って、「位相測定および位相補償」の手法は、時間がかかる可能性があり、現場での実際の使用において実用的でないかもしれない。
【0011】
このように、既知のトランスデューサアレイは、これまで首尾よく使用されてきたが、これらは改良されることができ、特に、移動および変形により生じたトランスデューサ素子の位置の偏移が、副次的なホットスポットを低減または除去しながらトランスデューサ出力の特質を維持するように補償されるように改良され得る。
【0012】
概要
一実施形態は、フェイズドアレイの超音波トランスデューサのような多素子トランスデューサの表面をマッピングする方法を対象とする。その方法は、各トランスデューサ素子から放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することを含む。その方法は更に、各トランスデューサ素子と前記センサとの間の距離を飛翔時間に基づいて求め、その求めた距離に基づいて、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを含む。
【0013】
別の実施形態は、表面マッピングを用いて多素子超音波トランスデューサの出力を制御する方法を対象とする。その方法は、トランスデューサの各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより、トランスデューサの表面をマッピングし、各トランスデューサの実際の位置および期待される位置の比較に基づいて、1つ又は複数のトランスデューサ素子の駆動信号を調整し、それによりトランスデューサの出力が調整されることを含む。
【0014】
更に代替の実施形態は、多素子超音波トランスデューサの出力を制御する方法を対象とし、その方法は、トランスデューサの表面の形状または設計に基づいて、トランスデューサの各トランスデューサ素子の期待される位置を有する初期ファイルを生成し、各トランスデューサ素子について、トランスデューサ素子の期待される位置に対するトランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより、トランスデューサ素子の表面をマッピングすることを含む。その方法は更に、トランスデューサ素子の実際の位置をトランスデューサ素子のそれぞれの期待される位置と比較し、期待される位置から逸脱している実際の位置を有するトランスデューサ素子の実際の位置を含む更新ファイルを生成することを含む。トランスデューサ素子の駆動信号は、トランスデューサ出力を調整するための更新ファイルを用いて調整される。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、各トランスデューサ素子と、ハイドロホン又はハイドロホンアレイのようなセンサとの間の距離は、トランスデューサ素子により放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することより実行され得る。センサ又はトランスデューサは、飛翔時間の測定が第2の位置で行われるように移動することができる。ハイドロホンアレイが使用される実施形態において、アレイの第1のハイドロホンは付勢されて、トランスデューサ素子により放出されて第1のハイドロホンにより検出されるパルスの第1の飛翔時間を測定し、トランスデューサ素子と第1のハイドロホンとの間の第1の距離を、測定された第1の飛翔時間に基づいて求めることができる。アレイの第2のハイドロホンは付勢されて、トランスデューサ素子により放出されて第2のハイドロホンにより検出されるパルスの第2の飛翔時間を測定し、トランスデューサ素子と第2のハイドロホンとの間の第2の距離を、測定された第2の飛翔時間に基づいて求めることができる。求められた第1及び第2の距離を用いて、トランスデューサ素子の実際の位置を求めることができる。ハイドロホンは、同時に又は異なる時間に活性化されることができ、例えば、それらは順次に活性化され得る。
【0016】
特定のトランスデューサの駆動信号は、それらトランスデューサの実際の位置がそれらの期待される位置から逸脱している場合に、調整され得る一方で、他のトランスデューサの駆動信号は変更されないままにすることができる。調整された駆動信号を用いて、トランスデューサにより生成されるビームの焦点または形状を調整することができる。
【0017】
実施形態は、制限のためではなく、一例として示される。添付図面において、同じ参照符号は、類似した構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】トランスデューサの出力を変更する歪みを含む、既知の球状キャップのトランスデューサ表面の断面図である。
【図2】トランスデューサの出力を変更する異なるタイプの歪みを有する、別の既知の球状キャップのトランスデューサ表面の断面図である。
【図3】トランスデューサの出力を制御するための方法に関する一実施形態を示すフローチャートである。
【図4】実施形態がトランスデューサの出力を制御するために使用され得る、超音波治療システムの略図である。
【図5】種々の実施形態を用いて制御され得る超音波トランスデューサを有する、水で満たされた台上の患者の略側面図である。
【図6】一実施形態による、センサが、固定トランスデューサに対して移動または平行移動される超音波トランスデューサの表面をマッピングするためのシステムを示す図である。
【図7】スキャナにより支持されたセンサを示す図である。
【図8】センサが異なる位置に移動するように平行移動している、図7のスキャナを示す図である。
【図9A】球形トランスデューサの上面図、及びセンサに対して付勢されているトランスデューサ素子を示す図である。
【図9B】球形トランスデューサの上面図、及びセンサに対して付勢されているトランスデューサ素子を示す図である。
【図9C】球形トランスデューサの上面図、及びセンサに対して付勢されているトランスデューサ素子を示す図である。
【図10】一実施形態による、飛翔時間測定法を用いてトランスデューサ素子の実際の位置を求めるフローチャートを示す図である。
【図11】トランスデューサ素子の実際の位置に関する座標を示す図である。
【図12】トランスデューサ素子の期待される位置に対する実際の位置の偏移を示す図である。
【図13】別の実施形態による、トランスデューサが固定センサに対して移動または平行移動する超音波トランスデューサの表面をマッピングするためのシステムを示す図である。
【図14】更なる実施形態によるトランスデューサ素子の出力を検出するために使用されるセンサアレイを示す図である。
【図15】一実施形態による、トランスデューサ素子を制御するために、期待される位置座標および実際の位置座標を有するファイル又はデータセットを示すシステムフローチャートである。
【図16A】トランスデューサ素子の期待される位置座標を有するファイルを示す図である。
【図16B】トランスデューサ素子の期待される位置座標と実際の位置座標を有するファイルを示す図である。
【図16C】トランスデューサ素子の実際の位置座標を有するファイルを示す図である。
【図17】別の実施形態による、トランスデューサ素子を制御するために、期待される位置座標および実際の位置座標を有するファイル又はデータセットを示すシステムフローチャートである。
【0019】
例示された実施形態の詳細な説明
実施形態は、個々のトランスデューサ素子の駆動信号がトランスデューサ素子の出力を調整するために補正または調整されるべきであるか否かを判定するために、トランスデューサ表面をマッピングすることにより、従来のトランスデューサ制御システムを改良する。シフト又は変形しておらず、期待される位置を占有するトランスデューサ素子は、例えば、トランスデューサの設計に基づいて、期待される位置データ又は座標に従って制御され得る。シフトした又は変形した他のトランスデューサ素子は、もはやこれらのトランスデューサ素子の真の位置を正確に表していない期待される位置データではなくて、実際の位置データ又は座標を用いて調整され得る。従って、特定の、又は選択されたトランスデューサ素子の駆動信号および出力は、トランスデューサ素子が所望のトランスデューサ出力を生成するために付勢され得るように、表面の偏移を補償するために調整され得る。更に、コントローラの記録またはファイルは、例えば、誤った配線を修正するために、実際の配線の形態を反映するように更新され得る。
【0020】
図3は、一実施形態による、表面マッピングを用いて、超音波トランスデューサの駆動信号および出力を調整するための方法を示す。ステップ300において、各トランスデューサ素子の期待される位置または場所(概して「位置」)が、例えば、トランスデューサの設計に基づいて求められる。素子の期待される位置は、座標として表され得る。ステップ310において、トランスデューサの表面がマッピングされる。これは、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより行われる。ステップ320において、各素子の実際の位置が求められた後、素子の期待される位置と素子の実際の位置との比較が行われ、実際の位置が期待される位置から逸脱するか否かが判定される。ステップ330において、期待される位置から逸脱する位置にある特定のトランスデューサ素子の実際の位置、及び適切に配置された他の素子の期待される位置を用いて、それぞれのトランスデューサ素子の駆動信号および出力を制御する。実際のトランスデューサ素子の位置は、実際の位置が期待される位置からどんな程度まで逸脱したとしても、使用され得る。代案として、実際の位置は、期待される位置から所定量だけ逸脱する場合に、例えば、偏移が所定量より大きい場合に使用され得る。
【0021】
実施形態は、他のトランスデューサ素子が原初の位置データ又は期待される位置データで制御されることを可能にしながら、適切に配置されていない、又はトランスデューサ素子の実際の位置を用いることにより適切に配線されていない特定のトランスデューサ素子を補償する。従って、トランスデューサ出力の位置と焦点は、既知のシステムに比べて改良され、その既知のシステムは、様々な素子の実際の位置が変化し、そのため初期または期待される設計が正確でなくなったとしても、トランスデューサの初期または期待される設計に基づいたデータのみを使用する。代替の実施形態は、図4〜図17に関連して以下で更に詳細に説明される。
【0022】
図4を参照すると、方法およびシステムの実施形態が使用され得る1つの適切な集束超音波システム400は、超音波エネルギーを放出するための超音波トランスデューサ410、トランスデューサ410に電気駆動信号を提供するためのドライバ回路420、及びドライバ回路420からの駆動信号出力の特性、それ故に放出される超音波エネルギー(UEMIT)の特性を制御するためのコントローラ430を含む。トランスデューサ410は、複数のトランスデューサ素子412を含む。各トランスデューサ素子412はドライバ回路420に個々に結合され、複数の離散周波数、好適には例えば、内科治療用途の場合に約0.15MHz〜約3MHz、好適には約0.22MHzの無線周波数(RF)の電気駆動信号がトランスデューサ素子412に供給される。駆動信号がトランスデューサ素子412に供給される場合、トランスデューサ410は内面414から超音波エネルギーを放出する。コントローラ430が、ドライバ回路420に結合され、関連する処理回路440と共に、周波数、位相、及び/又は振幅のような、ドライバ回路420により生成される駆動信号のいくつかの態様を制御する。
【0023】
図5を参照すると、トランスデューサ410は、台のような、液体で満たされたケーシング500内に装着され得る。台500は、脱気水または類似の音響的伝達流体で満たされたチャンバ502を含む。トランスデューサ410は、チャンバ502内でトランスデューサ410を移動し、トランスデューサ410の幾何学的焦点532を調整する位置決めシステム520に接続され得る。例えば、位置決めシステム520は、チャンバ502内でトランスデューサ410を、3つの直交方向の任意の1つの方向、例えば水平方向の前後に、水平方向の左右に、及び垂直方向に移動させるように構成され得る。
【0024】
台500の上面は、マイラー(登録商標)樹脂またはポリ塩化ビニル(PVC)のシートのような、超音波に対して実質的に透過的であるフレキシブルな膜504を含む。更に、台500に横たわる患者530の輪郭に容易に適合することができる、フレキシブルで、液体で満たされたバッグ(図示せず)が一般に、台の上面に沿って設けられる。また、トランスデューサ410は、患者530と接触させる可動アーム(図示せず)に装着された液体で満たされたバッグ内に装着されてもよい。使用中、患者530は、水、及び超音波伝導ゲルなどが患者530とバッグ又は膜504との間に適用された状態で、台500に横たわり、それにより患者530がトランスデューサ410に音響的に結合され得る。整合層(図示せず)は、より高い音響インピーダンス素子412を患者530のより低い音響インピーダンスに整合させることにより、トランスデューサ素子412からのエネルギーの患者530の体内への結合を改善するために使用され得る。
【0025】
トランスデューサ410の出力は、癌性腫瘍または良性腫瘍のような、組織構造内のターゲット組織領域532に向けて集束され得る。トランスデューサ410は、放出される超音波エネルギーをターゲット組織領域532で集束するために、ドライバ回路420からの一組の駆動信号をトランスデューサ410に供給することにより、付勢され得る。例えば、トランスデューサ410は、患者の組織により吸収される熱が消散することを可能にするほど充分な時間の間、不活性化され得る。次いで、トランスデューサ410の出力は、別のターゲット組織領域に集束され、組織構造全体が除去されるまで、プロセスが繰り返される。
【0026】
1つの適切なシステム400に関する追加の情報が米国特許第6,543,272号で提供される。また、本発明の実施形態は他のシステムと使用されることができ、図4及び図5に示された集束超音波システム400は、適切なシステムの一例にすぎない。
【0027】
図6を参照すると、一実施形態に従って、多素子トランスデューサ410の内面414をマッピングして、駆動信号およびトランスデューサ出力410を調整するためのシステムSは、センサ600、及びスキャナ又は平行移動可能な支持体610を含む。他の構成要素を用いてセンサ600を移動させることができるが、本明細書は、説明のためにスキャナ610に言及する。
【0028】
一実施形態によれば、センサ600はハイドロホンである。使用中、トランスデューサ素子412は、短い持続時間、例えば、以降、パルス615と呼ばれる約20サイクル又は他の適切な持続時間の間、付勢される。ハイドロホン600は、水または別の適切な媒体620を介してパルス615を検出するように構成される。第1のパルス615を検出した後、スキャナ610は、ハイドロホン600を第1の位置から第2の位置へ、固定されたトランスデューサ410に対して1つ、2つ、及び/又は3つの方向に平行移動または移動させる。図示された実施形態において、スキャナ610は、3つの方向に平行移動可能であるが、スキャナ610は必要に応じて、1つ及び2つの方向にハイドロホン600を移動させてもよい。
【0029】
図7を参照すると、ハイドロホン600がスキャナ610により支持され、スキャナ610はハイドロホン600を異なる場所に移動させる。図8に示されるように、スキャナ610は、ハイドロホン600を位置1から、位置2へ、位置3などへ移動させるために平行移動することができる。図8は、ハイドロホン600が反時計回り方向に移動していることを示すが、移動の他の順序およびパターンを利用することができる。更に、ハイドロホン600は様々な多数の位置を占めるように移動することができる。更に、異なる開始位置(単数または複数)を利用することができる。従って、図7及び図8は、移動するハイドロホン600を異なる位置に移動させることを含む実施形態を概して示すことが意図されている。
【0030】
図9Aを参照すると、ハイドロホン600が位置1を占める場合、トランスデューサ400の各素子412は短い持続時間、例えば、約20サイクル、又はパルス615を形成するための他の適切な数のサイクルの間、付勢される。図9Aは、例示のために4つの素子412から放出されているパルス615を示すが、パルスは素子412の全てから放出されてもよい。パルス615がトランスデューサ素子412から放出されて、位置1においてハイドロホン600により検出される時間からパルス615の時間「t」又は「飛翔時間(伝導時間)」が測定される。トランスデューサ素子412及びハイドロホン600は、互いに同期して、正確なタイミングと測定を確実にすることができる。
【0031】
位置1における素子412の飛翔時間の測定が完了した後、スキャナ610はハイドロホン600を位置2に移動させる(図9B)。位置2において、素子412の飛翔時間の測定が繰り返される。位置2における飛翔時間の測定が完了した後、スキャナ610はハイドロホン600を位置3に移動させ(図9C)、飛翔時間の測定が繰り返される。次いで、飛翔時間の測定値を用いて、各トランスデューサ素子412の実際の位置を求め、トランスデューサ410の表面414をマッピングする。
【0032】
より具体的には、図10を参照すると、ステップ1000において、各所望の位置で、各トランスデューサ素子412の飛翔時間「t」の測定が完了し、ステップ1010において、トランスデューサ素子412とハイドロホン600との間の距離が、既知の方法を用いて求められる。パルス615が伝わる媒体620、例えば、水は既知である。更に、パルス615が水620を介して伝わる速度、及び飛翔時間の値は既知である。個々のトランスデューサ素子412とハイドロホン600との間の距離Dは、D=vtに従って求められることができ、この場合、「v」は水の媒体620における音速であり、「t」は飛翔時間である。ステップ1020において、各トランスデューサ素子412の実際の位置が、これらの計算に基づいて求められる。
【0033】
一実施形態によれば、トランスデューサ素子412の実際の位置は、三次元座標(x、y、z)として表され得る。3つの飛翔時間測定値および3つの対応する距離計算を用いて、基準点に対するトランスデューサ素子412の実際の三次元位置または座標を求めることができる。例えば、これは、三角測量、又は他の既知の数学的および幾何学的原理により行われ得る。
【0034】
例えば、ハイドロホンの位置の座標は(スキャナ制御により)既知である。第1の位置、位置1におけるハイドロホンの座標は、(Xh、Yh、Zh)により表され、トランスデューサ素子、例えば、トランスデューサ素子番号「k」の座標は、(Xk、Yk、Zk)により表される。測定された飛翔時間は、Dikにより表される。所与のトランスデューサ素子412の実際の三次元位置または座標は、Dik2=(Xk−Xh)2+(Yk−Yh)2+(Zk−Zh)2に基づいて求められ得る。
【0035】
特定のトランスデューサ素子番号kについて、3つの未知数、即ちXk、Yk、Zkが存在する。しかしながら、他の変数の全ては、音響的に、又はスキャナ制御により測定される。3つの異なる位置または場所におけるデータを用いて、トランスデューサ素子番号kの実際の位置に関する三次元座標、及び各トランスデューサ素子の実際の位置に関する三次元座標を求めて、トランスデューサ表面の完全な空間マッピングを得ることができる。必要に応じて、精度を向上させるために、追加の式が生成されて、他の位置(例えば、30カ所の位置)における追加の測定値でもって解かれ得る。更に、様々な既知の統計的手法、例えば、線形化法および最小分散法を用いて、冗長な式を解くことができる。従って、実際のトランスデューサの座標を求める上記の測定および方法は、説明および例示のために提供されており、制限するためではない。
【0036】
必要に応じて、ステップ1030において、各トランスデューサ素子412により放出されたパルスの位相も用いて、各素子412の実際の(x、y、z)位置を求めて、トランスデューサ素子412の実際の位置に対する更なる精度を提供することができる。例えば、これは、相関法を用いて行われることができ、向上した精度で、距離が計算されることが可能になる。例えば、約1MHzのトランスデューサ出力において、距離の精度は、約0.1mm又はそれ以上とすることができる。
【0037】
図11を参照すると、飛翔時間の測定結果、及び距離の計算結果は、固定座標または基準座標1110に対する各トランスデューサ素子412の実際の位置を表す座標のセット1100である。例えば、第1のトランスデューサ素子412に関する実際の座標は、(XA1、YA1、ZA1)として表され、第2のトランスデューサ素子412に関する実際の座標は、(XA2、YA2、ZA2)として表される。例示された実施形態において、トランスデューサ素子の実際の位置に関する(x、y、z)座標は、重心のような、トランスデューサ素子412の本体の中心1120に対して求められる。代案として、座標は、素子の上面における中心点のような、トランスデューサ素子412の他の点に基づくことができる。説明および例示のために、本明細書は、トランスデューサ素子412の中心1120を基準とした実際の座標1120に言及する。
【0038】
トランスデューサ素子412の実際の位置1120は、素子の期待される位置から逸脱する場合もあるし、逸脱しない場合もある。例えば、図12は、期待される位置1220から逸脱する実際の位置1120を有するトランスデューサ素子412を示す。この例において、トランスデューサ素子412の実際の位置1120は、「y」方向において値δだけ変化する。また、偏移は、「x」及び「z」方向でも生じるが、図12は例示のために「y」方向の偏移を示す。従って、1つ又は複数、或いは全てのトランスデューサ素子412の実際の位置1120は、1つの方向、2つの方向、又は3つの方向において、期待される位置から変化する可能性がある。
【0039】
例示された例において、期待された位置1220からの偏移は、実際の位置におけるトランスデューサ素子の中心と期待される位置におけるトランスデューサ素子の中心との間の距離δとして表され得る。言い換えると、偏移は、実際の位置におけるトランスデューサ素子412の中心1120と期待される位置におけるトランスデューサ素子の中心との間のベクトルの大きさとして表され得る。代案として、偏移は、x、y、及びz方向のそれぞれの偏移、例えば(δx、δy、δz)として表され得る。
【0040】
上述した実施形態において、トランスデューサ素子412の実際の位置1120及び期待される位置1220は、三次元(x、y、z)で表される。代案として、実際の位置1120及び期待される位置1220は、例えば、トランスデューサ表面414における偏移の数、及び所望の精度に応じて、一次元または二次元で表され得る。
【0041】
例えば、場合によっては、トランスデューサ表面414の形状または位置の偏移が単なる一次元で生じることがわかっている場合には、トランスデューサ素子412の実際の位置1120を1D座標(x1)又は線形偏移として求めることで十分であるかもしれない。係る一次元の偏移の一例が図1に示され、この場合、表面が垂直方向にシフトされている。この偏移は、トランスデューサ表面414に対する垂線に基づいて測定され得る。
【0042】
更なる例として、トランスデューサ表面414の形状または位置の偏移が単なる二次元で生じることがわかっており、一次元が既知であるか又は固定されている場合には、トランスデューサ素子412の実際の位置1120を2D座標(x1y1)として求めることで十分であるかもしれない。この場合、第1のパルス615が、トランスデューサ素子412から第1の位置にある第1のハイドロホン600に放出されることができ、第2のパルス615が、トランスデューサ素子412から第2のハイドロホン600又は第2の位置にあるハイドロホンに放出されることができる。素子412の実際の位置は、パルスの速度がわかっており、パルスが伝わる媒体がわかっており、及び飛翔時間の測定値がわかっているので、既知の数学的手法および幾何学を用いて、これら2つのパルスで求められ得る。
【0043】
このように、実施形態は、一次元、二次元、及び三次元において、トランスデューサ素子の実際の位置および期待される位置を表すために使用され得る。説明のために、本明細書は、三次元で表されている実際の位置および期待される位置に言及する。
【0044】
更に、代替の実施形態は、トランスデューサ素子412とハイドロホン600との間の距離を求めるために様々なシステム及び方法を利用することができる。一実施形態によれば、図9A〜図9Cに示されるように、ハイドロホン600が第1の位置にある際に、パルス615がトランスデューサ素子412から放出されることができ、これは、ハイドロホンが第2の位置および第3の位置にある際に繰り返される。従って、この実施形態において、ハイドロホン600は固定トランスデューサ410に対して異なる位置に移動する。
【0045】
図13を参照すると、代替の実施形態において、システムは、トランスデューサ410の表面414をマッピングするために、ハイドロホン600の位置が固定され、トランスデューサ素子412が固定されたハイドロホン600に対して移動するようにトランスデューサ410が平行移動するように構成される。上述したのと同様な飛翔時間の測定、距離の算定、実際の位置の算定、及び位相の測定が実行され得る。
【0046】
更に代替の実施形態において、図14を参照すると、単一のハイドロホンではなくて、ハイドロホン600a〜600fのアレイ1400が利用され得る。この実施形態において、アレイ1400の第1のハイドロホン600aが付勢され、トランスデューサ素子412が付勢されてパルス615を放出し、そのパルス615は第1のハイドロホン600aにより検出される。上述したように、飛翔時間の測定、並びに距離および実際の位置の算定が実行される。次いで、第1のハイドロホンが不活性化されて、アレイ1400の第2のハイドロホン600bが付勢される。トランスデューサ素子412が付勢されてパルスを放出し、そのパルスは第2のハイドロホン600bにより検出される。同様の手順が、第3のハイドロホン600c及び任意の更なるハイドロホンに関して続く。ハイドロホンのアレイ1400を用いることにより、ハイドロホン及びスキャナの少なくとも1つを移動させることが除去され得る。
【0047】
上述したように、順次に、1つのハイドロホン600が不活性化されて別のハイドロホン600が活性化される。代案として、アレイ1400の多数のハイドロホン600が同時に付勢され得る。この実施形態において、単一のパルス615がトランスデューサ素子412から放出されることができ、単一のパルス615が多数のハイドロホン600により同時に検出され得る。従って、1つのパルスが少なくとも3つのハイドロホンにより同時に検出される場合、3つの飛翔時間の測定値(又は、更なる精度が望まれる場合には追加の飛翔時間測定値)を用いて、素子の実際の位置1120を求めることができる。代案として、受信素子のマトリクスを用いてもよい。
【0048】
従って、各トランスデューサ素子412の実際の位置1120は、静止しているトランスデューサ410と可動ハイドロホン600、可動トランスデューサ410と静止しているハイドロホン600、可動トランスデューサ410と可動ハイドロホン600、及びハイドロホンアレイ1400を用いて求められ得る。様々な実施形態に関して、飛翔時間の測定結果、距離の算定、及び実際の位置の算定は、一次元、二次元または三次元の座標、或いは他の適切な表現またはデータとして表されようと、各トランスデューサ素子412の実際の位置1020を表す座標またはデータのセット1100である。
【0049】
図15及び図16A〜図16Cを参照すると、実際のトランスデューサ素子の位置1120を用いて、特定の又は選択されたトランスデューサ素子412の駆動信号および出力を制御する。特に、図15は、第1のファイル又はデータセット1500が各トランスデューサ素子412の期待される位置1220を含む一実施形態を示す。期待される位置1220は、座標(XEn、YEn、ZEn)として図16Aに示され、ここで、下付き文字「E」は期待される座標を意味する。この第1のファイル又はデータセット1500はメモリ1510に格納される。第2のファイル又はデータセット1520は、期待される位置1220及び/又は実際の位置1120を含むことができる。期待される位置1220又は実際の位置1120が使用されるか否かは、特定のトランスデューサ素子の偏移の程度に依存することができる。
【0050】
一実施形態によれば、第2のファイル1520は、素子412の実際の位置1120がその期待される位置から逸脱していない際の、又は実際の位置が期待される位置1220に対して所定量未満だけ、期待される位置から逸脱している際の、トランスデューサ素子412の期待される位置1220を含む。代案として、第2のファイル1520は、実際の位置が期待される位置に十分に接近している際の実際の位置を含むことができ、その理由は、この場合、実際の位置および期待される位置が同じ、又は実質的に同じであるからである。
【0051】
一実施形態によれば、第2のファイル1520は、実際の位置1120が、期待される位置1220から逸脱する際の、又は実際の位置が所定量よりも大きい量だけ期待される位置から逸脱する際の、選択されたトランスデューサ素子の実際の位置1120を含む。例えば、図16Bに示されるように、第2のファイル1520は、選択された素子の実際の座標1120、及び他の素子の期待される座標1220の双方を含む。各素子412がそれぞれの期待される位置から逸脱する、又は所定量よりも多い量だけその期待される位置から逸脱する場合には、第2のファイル1520は、図16Cに示されるように、実際の位置座標1120だけを含む。
【0052】
従って、表面マッピングの結果が、素子412がそれらの期待される位置から逸脱しない、例えば、全ての素子412が球形モデルに適合する場合、第2のファイル1520は、期待される位置のみを含むことができる。代案として、第2のファイル1520は、実際の位置が同じである、又は期待される位置に十分に接近しているという理由で、及び素子の位置が球形モデルに適合しているという理由で、各素子の実際の位置を含むことができる。
【0053】
例示された実施形態において、第2のファイル1520は、メモリ1510に格納され、第1のファイル1500に取って代わることができる。第2のファイル1520の座標データは、コントローラ430に供給され、コントローラ430はドライバ回路420からの駆動信号出力の特性、それ故に放出された超音波エネルギーの特性およびトランスデューサ400の焦点を制御する。
【0054】
図17を参照すると、代替の実施形態において、第1のファイル又はデータセット1500を第2のファイル又はデータセット1520と置き換えるのではなくて、第2のファイル1520の内容が、第1のファイル1500にマージされるか、又は第1のファイル1500を補足することができる。第2のファイル1520は、選択された素子412の実際の位置1120のみを含み、期待される位置1220から逸脱する選択された素子412の期待される位置1220を、選択された素子412の実際の位置1120と置き換えて、第1のファイル1120にマージされ得る。例えば、第1のファイル1510が素子1〜10の期待される位置を含み、第2のファイル1520が選択された素子2と9の実際の位置を含む場合、第1のファイル1500における選択された素子2と9の期待される位置データは、第2のファイル1520からの素子2と9の実際の位置と置き換えられる。結果としてのファイル又はマージされたファイルは、素子1、3〜8及び10の期待される位置座標1220、及び選択された素子2と9の実際の位置座標1120を含む。全ての素子412の実際の位置1120が、期待される位置1220から逸脱する場合には、マージされたファイルは、実際の位置1120のデータのみを含む。
【0055】
実施形態は、トランスデューサ素子の実際の位置を表していない可能性があるトランスデューサの所定の形状または設計に基づいた信号に依存する代わりに、トランスデューサ素子の実際の位置に対応する信号で各トランスデューサ素子412を有利に駆動することにより、既知のトランスデューサ制御システムにわたって著しい改善を提供する。従って、実施形態は、製造中、輸送中、及び修理中での素子の位置のシフトを補償することができる。更に、実施形態は有利には、熱により生じた素子の変形、及び/又は物理的配線エラー又は「仮想配線エラー」(例えば、誤ったデータファイルが使用されて、素子が付勢される順序を変更する)に起因した位置エラーを補償する。例えば、比較的小さい位置偏移として観測されるトランスデューサの変形とは異なり、配線エラー及びデータエラーは、大きな位置エラーとして観測され、従って、検出が容易であるパターンを有するであろう。このように、表面マッピングを用いることにより、実施形態は、トランスデューサ表面の偏移ならびに配線エラー及びデータエラーを補償することによって、より正確なトランスデューサを治療されるべきターゲット組織に、より正確に提供する。
【0056】
実施形態は、例えば、必要に応じて、一次元、二次元、又は三次元座標のような座標として、異なる態様で表されるトランスデューサ素子の実際の位置に基づいて、特定のトランスデューサ素子の駆動信号を調整するために使用され得る。例えば、トランスデューサ素子が主として1つの方向で移動するが、他の2つの方向が実質的に同じままであると判定される場合には、1つの方向における実際の位置データ、及び他の2つの方向における期待される位置データを利用して、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることができる。更に、トランスデューサ素子に正接である(「x」及び「y」方向における)変形は、トランスデューサ素子の移動がトランスデューサ表面に垂直である方向(例えば、「z」方向)で主として生じる場合には、無視してよいかもしれない。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、超音波エネルギーを用いて、非侵襲的な外科的処置を行うことに関し、より具体的には、多素子(マルチエレメント)トランスデューサアレイの表面をマッピングするための方法とシステムに関する。
【0002】
背景
超音波(約20キロヘルツより大きい周波数の音波)のような、高密度に集束された音波を用いて、患者の体内の内部組織領域を治療的に処置することができる。例えば、超音波を用いて、患者が侵襲的手術を受ける必要なしに、腫瘍を除去することができる。このために、圧電セラミックトランスデューサは、電気信号により駆動されて超音波エネルギーを生じさせると共に、患者の外部であるが、除去されるべき組織に非常に接近して配置される。トランスデューサは、超音波エネルギーが患者の体内のターゲット組織領域に対応する「焦点区域」で集束されるように、幾何学的に形作られて配置され得る。ターゲット組織領域は、組織が壊死するまで加熱される。トランスデューサは、互いに非常に接近している多数の焦点区域で、順次に焦点を合わせられて付勢され得る。
【0003】
この一連の超音波処理は、周囲の組織を損傷せずに、腫瘍のような組織構造の凝固壊死をもたらすために使用される。これを達成するために、超音波エネルギーは、正確な場所に適切に焦点を合わせられて照射されなければならない。更に、超音波ビームは、予期しないホットスポットが腫瘍区域の外側に発生しないように、適切な鋭さと形状を有する必要がある。
【0004】
トランスデューサの有効性、及び患者に提供される治療に影響を与える1つの重要な要因は、トランスデューサのビームを正確かつ確実に形作り、ターゲット組織に対応する焦点区域にトランスデューサの出力を集束するための能力である。適切に構成または制御されないトランスデューサの素子(エレメント)は、不適切な焦点場所および焦点品質の低下をもたらし、効果の弱い治療という結果になる可能性がある。更に、それらは、周囲の健康な組織に損傷をもたらす可能性がある、副次的なホットスポット、即ち焦点区域を越えた集中加熱領域という結果になる可能性もある。
【0005】
トランスデューサ出力エラーの1つの原因は、トランスデューサ素子がそれらの期待された位置から移動またはシフトすることに起因する。例えば、トランスデューサが球状であると仮定する場合、各トランスデューサ素子を駆動するソフトウェアは一般に、球形モデル又は設計に従って配置されている素子に基づいて、個々のトランスデューサ素子を付勢するように構成される。しかしながら、実際には、トランスデューサ素子は球形モデルに従って配置されないことが多い。代わりに、1つ又は複数のトランスデューサ素子の実際の位置は、製造中、使用中、及び修理中に、それらの期待される位置からシフトされる可能性がある。更に、トランスデューサ素子の位置は、素子が熱により変形する結果としてシフトする(ずれる)可能性もある。これらの変化は、所定の球形モデルに基づいて個々の素子を駆動するようにプログラミングされたソフトウェアにより補償されない永久的な集束エラーという結果になる可能性がある。
【0006】
位置の僅かな偏移でも、トランスデューサ出力の特質に大幅な影響が生じ、副次的なホットスポットを生じる可能性がある。例えば、図1は概して、歪み又は偏移12を有する球形トランスデューサ10の表面に関する断面図を示す。かくして、トランスデューサ表面の実際の位置14は、所定の球形モデルに基づいた期待される位置16から下方にシフトされる。この例において、歪みは、トランスデューサ10の中央で最も大きく、一次元、即ち垂直である。図2は、別のタイプの歪み22を有する球形トランスデューサ20の別の例を示す。このタイプの歪み22は、歪み22がトランスデューサの中央であまり顕著でないことを除いて、図1に示された歪み12に類似する。また、このタイプの歪み22は、焦点エラー、及び副次的なホットスポットも生じる可能性がある。
【0007】
例えば、図1に関して、約1mmの偏移「δ」、約160mmの曲率半径「R」、及び約120mmの開口「A」を有するトランスデューサ10は、超音波出力の位置を約13mmだけシフトする可能性がある。言い換えれば、比較的小さい偏移は、出力の結果としての変化が偏移自体よりもかなり大きいように、トランスデューサの出力を変更する可能性がある。
【0008】
更に、トランスデューサ表面の物理的構造が予想通りであるとしても、個々のトランスデューサ素子は、例えば、製造時に又は修理中に、不適切に配線される可能性がある。不適切な配線により、トランスデューサ素子が、他のトランスデューサ素子用の信号により駆動されるという結果になり、これにより位置エラーと焦点エラーを引き起こす可能性がある。
【0009】
これらの問題を解決しようとする1つの試みは、トランスデューサを水中で焦点に集束させること、及び最大強度の焦点の場所を見つけるためにハイドロホンを使用することを含む。次いで、各トランスデューサ素子は、最強点で別個に付勢され、各信号の位相が測定される。各素子の測定された位相は、期待される位相と比較され、位相偏移を補償するために、駆動信号が調整される。しかしながら、この「位相測定および位相調整」の手法は、多数の欠点を有する。
【0010】
1つの欠点は、この技術が、較正中に焦点の位置に接近している集束場所に適用される点である。フェイズドアレイのトランスデューサは焦点の電子操向を可能にするが、この技術は、焦点の位置が較正中に使用される点を超えた異なる場所に操向される場合に、有効でないかもしれない。更に、この技術は、焦点の場所を見つけるために、正確なスキャナと電子機器を必要とする。従って、「位相測定および位相補償」の手法は、時間がかかる可能性があり、現場での実際の使用において実用的でないかもしれない。
【0011】
このように、既知のトランスデューサアレイは、これまで首尾よく使用されてきたが、これらは改良されることができ、特に、移動および変形により生じたトランスデューサ素子の位置の偏移が、副次的なホットスポットを低減または除去しながらトランスデューサ出力の特質を維持するように補償されるように改良され得る。
【0012】
概要
一実施形態は、フェイズドアレイの超音波トランスデューサのような多素子トランスデューサの表面をマッピングする方法を対象とする。その方法は、各トランスデューサ素子から放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することを含む。その方法は更に、各トランスデューサ素子と前記センサとの間の距離を飛翔時間に基づいて求め、その求めた距離に基づいて、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを含む。
【0013】
別の実施形態は、表面マッピングを用いて多素子超音波トランスデューサの出力を制御する方法を対象とする。その方法は、トランスデューサの各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより、トランスデューサの表面をマッピングし、各トランスデューサの実際の位置および期待される位置の比較に基づいて、1つ又は複数のトランスデューサ素子の駆動信号を調整し、それによりトランスデューサの出力が調整されることを含む。
【0014】
更に代替の実施形態は、多素子超音波トランスデューサの出力を制御する方法を対象とし、その方法は、トランスデューサの表面の形状または設計に基づいて、トランスデューサの各トランスデューサ素子の期待される位置を有する初期ファイルを生成し、各トランスデューサ素子について、トランスデューサ素子の期待される位置に対するトランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより、トランスデューサ素子の表面をマッピングすることを含む。その方法は更に、トランスデューサ素子の実際の位置をトランスデューサ素子のそれぞれの期待される位置と比較し、期待される位置から逸脱している実際の位置を有するトランスデューサ素子の実際の位置を含む更新ファイルを生成することを含む。トランスデューサ素子の駆動信号は、トランスデューサ出力を調整するための更新ファイルを用いて調整される。
【0015】
1つ又は複数の実施形態において、各トランスデューサ素子と、ハイドロホン又はハイドロホンアレイのようなセンサとの間の距離は、トランスデューサ素子により放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することより実行され得る。センサ又はトランスデューサは、飛翔時間の測定が第2の位置で行われるように移動することができる。ハイドロホンアレイが使用される実施形態において、アレイの第1のハイドロホンは付勢されて、トランスデューサ素子により放出されて第1のハイドロホンにより検出されるパルスの第1の飛翔時間を測定し、トランスデューサ素子と第1のハイドロホンとの間の第1の距離を、測定された第1の飛翔時間に基づいて求めることができる。アレイの第2のハイドロホンは付勢されて、トランスデューサ素子により放出されて第2のハイドロホンにより検出されるパルスの第2の飛翔時間を測定し、トランスデューサ素子と第2のハイドロホンとの間の第2の距離を、測定された第2の飛翔時間に基づいて求めることができる。求められた第1及び第2の距離を用いて、トランスデューサ素子の実際の位置を求めることができる。ハイドロホンは、同時に又は異なる時間に活性化されることができ、例えば、それらは順次に活性化され得る。
【0016】
特定のトランスデューサの駆動信号は、それらトランスデューサの実際の位置がそれらの期待される位置から逸脱している場合に、調整され得る一方で、他のトランスデューサの駆動信号は変更されないままにすることができる。調整された駆動信号を用いて、トランスデューサにより生成されるビームの焦点または形状を調整することができる。
【0017】
実施形態は、制限のためではなく、一例として示される。添付図面において、同じ参照符号は、類似した構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】トランスデューサの出力を変更する歪みを含む、既知の球状キャップのトランスデューサ表面の断面図である。
【図2】トランスデューサの出力を変更する異なるタイプの歪みを有する、別の既知の球状キャップのトランスデューサ表面の断面図である。
【図3】トランスデューサの出力を制御するための方法に関する一実施形態を示すフローチャートである。
【図4】実施形態がトランスデューサの出力を制御するために使用され得る、超音波治療システムの略図である。
【図5】種々の実施形態を用いて制御され得る超音波トランスデューサを有する、水で満たされた台上の患者の略側面図である。
【図6】一実施形態による、センサが、固定トランスデューサに対して移動または平行移動される超音波トランスデューサの表面をマッピングするためのシステムを示す図である。
【図7】スキャナにより支持されたセンサを示す図である。
【図8】センサが異なる位置に移動するように平行移動している、図7のスキャナを示す図である。
【図9A】球形トランスデューサの上面図、及びセンサに対して付勢されているトランスデューサ素子を示す図である。
【図9B】球形トランスデューサの上面図、及びセンサに対して付勢されているトランスデューサ素子を示す図である。
【図9C】球形トランスデューサの上面図、及びセンサに対して付勢されているトランスデューサ素子を示す図である。
【図10】一実施形態による、飛翔時間測定法を用いてトランスデューサ素子の実際の位置を求めるフローチャートを示す図である。
【図11】トランスデューサ素子の実際の位置に関する座標を示す図である。
【図12】トランスデューサ素子の期待される位置に対する実際の位置の偏移を示す図である。
【図13】別の実施形態による、トランスデューサが固定センサに対して移動または平行移動する超音波トランスデューサの表面をマッピングするためのシステムを示す図である。
【図14】更なる実施形態によるトランスデューサ素子の出力を検出するために使用されるセンサアレイを示す図である。
【図15】一実施形態による、トランスデューサ素子を制御するために、期待される位置座標および実際の位置座標を有するファイル又はデータセットを示すシステムフローチャートである。
【図16A】トランスデューサ素子の期待される位置座標を有するファイルを示す図である。
【図16B】トランスデューサ素子の期待される位置座標と実際の位置座標を有するファイルを示す図である。
【図16C】トランスデューサ素子の実際の位置座標を有するファイルを示す図である。
【図17】別の実施形態による、トランスデューサ素子を制御するために、期待される位置座標および実際の位置座標を有するファイル又はデータセットを示すシステムフローチャートである。
【0019】
例示された実施形態の詳細な説明
実施形態は、個々のトランスデューサ素子の駆動信号がトランスデューサ素子の出力を調整するために補正または調整されるべきであるか否かを判定するために、トランスデューサ表面をマッピングすることにより、従来のトランスデューサ制御システムを改良する。シフト又は変形しておらず、期待される位置を占有するトランスデューサ素子は、例えば、トランスデューサの設計に基づいて、期待される位置データ又は座標に従って制御され得る。シフトした又は変形した他のトランスデューサ素子は、もはやこれらのトランスデューサ素子の真の位置を正確に表していない期待される位置データではなくて、実際の位置データ又は座標を用いて調整され得る。従って、特定の、又は選択されたトランスデューサ素子の駆動信号および出力は、トランスデューサ素子が所望のトランスデューサ出力を生成するために付勢され得るように、表面の偏移を補償するために調整され得る。更に、コントローラの記録またはファイルは、例えば、誤った配線を修正するために、実際の配線の形態を反映するように更新され得る。
【0020】
図3は、一実施形態による、表面マッピングを用いて、超音波トランスデューサの駆動信号および出力を調整するための方法を示す。ステップ300において、各トランスデューサ素子の期待される位置または場所(概して「位置」)が、例えば、トランスデューサの設計に基づいて求められる。素子の期待される位置は、座標として表され得る。ステップ310において、トランスデューサの表面がマッピングされる。これは、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより行われる。ステップ320において、各素子の実際の位置が求められた後、素子の期待される位置と素子の実際の位置との比較が行われ、実際の位置が期待される位置から逸脱するか否かが判定される。ステップ330において、期待される位置から逸脱する位置にある特定のトランスデューサ素子の実際の位置、及び適切に配置された他の素子の期待される位置を用いて、それぞれのトランスデューサ素子の駆動信号および出力を制御する。実際のトランスデューサ素子の位置は、実際の位置が期待される位置からどんな程度まで逸脱したとしても、使用され得る。代案として、実際の位置は、期待される位置から所定量だけ逸脱する場合に、例えば、偏移が所定量より大きい場合に使用され得る。
【0021】
実施形態は、他のトランスデューサ素子が原初の位置データ又は期待される位置データで制御されることを可能にしながら、適切に配置されていない、又はトランスデューサ素子の実際の位置を用いることにより適切に配線されていない特定のトランスデューサ素子を補償する。従って、トランスデューサ出力の位置と焦点は、既知のシステムに比べて改良され、その既知のシステムは、様々な素子の実際の位置が変化し、そのため初期または期待される設計が正確でなくなったとしても、トランスデューサの初期または期待される設計に基づいたデータのみを使用する。代替の実施形態は、図4〜図17に関連して以下で更に詳細に説明される。
【0022】
図4を参照すると、方法およびシステムの実施形態が使用され得る1つの適切な集束超音波システム400は、超音波エネルギーを放出するための超音波トランスデューサ410、トランスデューサ410に電気駆動信号を提供するためのドライバ回路420、及びドライバ回路420からの駆動信号出力の特性、それ故に放出される超音波エネルギー(UEMIT)の特性を制御するためのコントローラ430を含む。トランスデューサ410は、複数のトランスデューサ素子412を含む。各トランスデューサ素子412はドライバ回路420に個々に結合され、複数の離散周波数、好適には例えば、内科治療用途の場合に約0.15MHz〜約3MHz、好適には約0.22MHzの無線周波数(RF)の電気駆動信号がトランスデューサ素子412に供給される。駆動信号がトランスデューサ素子412に供給される場合、トランスデューサ410は内面414から超音波エネルギーを放出する。コントローラ430が、ドライバ回路420に結合され、関連する処理回路440と共に、周波数、位相、及び/又は振幅のような、ドライバ回路420により生成される駆動信号のいくつかの態様を制御する。
【0023】
図5を参照すると、トランスデューサ410は、台のような、液体で満たされたケーシング500内に装着され得る。台500は、脱気水または類似の音響的伝達流体で満たされたチャンバ502を含む。トランスデューサ410は、チャンバ502内でトランスデューサ410を移動し、トランスデューサ410の幾何学的焦点532を調整する位置決めシステム520に接続され得る。例えば、位置決めシステム520は、チャンバ502内でトランスデューサ410を、3つの直交方向の任意の1つの方向、例えば水平方向の前後に、水平方向の左右に、及び垂直方向に移動させるように構成され得る。
【0024】
台500の上面は、マイラー(登録商標)樹脂またはポリ塩化ビニル(PVC)のシートのような、超音波に対して実質的に透過的であるフレキシブルな膜504を含む。更に、台500に横たわる患者530の輪郭に容易に適合することができる、フレキシブルで、液体で満たされたバッグ(図示せず)が一般に、台の上面に沿って設けられる。また、トランスデューサ410は、患者530と接触させる可動アーム(図示せず)に装着された液体で満たされたバッグ内に装着されてもよい。使用中、患者530は、水、及び超音波伝導ゲルなどが患者530とバッグ又は膜504との間に適用された状態で、台500に横たわり、それにより患者530がトランスデューサ410に音響的に結合され得る。整合層(図示せず)は、より高い音響インピーダンス素子412を患者530のより低い音響インピーダンスに整合させることにより、トランスデューサ素子412からのエネルギーの患者530の体内への結合を改善するために使用され得る。
【0025】
トランスデューサ410の出力は、癌性腫瘍または良性腫瘍のような、組織構造内のターゲット組織領域532に向けて集束され得る。トランスデューサ410は、放出される超音波エネルギーをターゲット組織領域532で集束するために、ドライバ回路420からの一組の駆動信号をトランスデューサ410に供給することにより、付勢され得る。例えば、トランスデューサ410は、患者の組織により吸収される熱が消散することを可能にするほど充分な時間の間、不活性化され得る。次いで、トランスデューサ410の出力は、別のターゲット組織領域に集束され、組織構造全体が除去されるまで、プロセスが繰り返される。
【0026】
1つの適切なシステム400に関する追加の情報が米国特許第6,543,272号で提供される。また、本発明の実施形態は他のシステムと使用されることができ、図4及び図5に示された集束超音波システム400は、適切なシステムの一例にすぎない。
【0027】
図6を参照すると、一実施形態に従って、多素子トランスデューサ410の内面414をマッピングして、駆動信号およびトランスデューサ出力410を調整するためのシステムSは、センサ600、及びスキャナ又は平行移動可能な支持体610を含む。他の構成要素を用いてセンサ600を移動させることができるが、本明細書は、説明のためにスキャナ610に言及する。
【0028】
一実施形態によれば、センサ600はハイドロホンである。使用中、トランスデューサ素子412は、短い持続時間、例えば、以降、パルス615と呼ばれる約20サイクル又は他の適切な持続時間の間、付勢される。ハイドロホン600は、水または別の適切な媒体620を介してパルス615を検出するように構成される。第1のパルス615を検出した後、スキャナ610は、ハイドロホン600を第1の位置から第2の位置へ、固定されたトランスデューサ410に対して1つ、2つ、及び/又は3つの方向に平行移動または移動させる。図示された実施形態において、スキャナ610は、3つの方向に平行移動可能であるが、スキャナ610は必要に応じて、1つ及び2つの方向にハイドロホン600を移動させてもよい。
【0029】
図7を参照すると、ハイドロホン600がスキャナ610により支持され、スキャナ610はハイドロホン600を異なる場所に移動させる。図8に示されるように、スキャナ610は、ハイドロホン600を位置1から、位置2へ、位置3などへ移動させるために平行移動することができる。図8は、ハイドロホン600が反時計回り方向に移動していることを示すが、移動の他の順序およびパターンを利用することができる。更に、ハイドロホン600は様々な多数の位置を占めるように移動することができる。更に、異なる開始位置(単数または複数)を利用することができる。従って、図7及び図8は、移動するハイドロホン600を異なる位置に移動させることを含む実施形態を概して示すことが意図されている。
【0030】
図9Aを参照すると、ハイドロホン600が位置1を占める場合、トランスデューサ400の各素子412は短い持続時間、例えば、約20サイクル、又はパルス615を形成するための他の適切な数のサイクルの間、付勢される。図9Aは、例示のために4つの素子412から放出されているパルス615を示すが、パルスは素子412の全てから放出されてもよい。パルス615がトランスデューサ素子412から放出されて、位置1においてハイドロホン600により検出される時間からパルス615の時間「t」又は「飛翔時間(伝導時間)」が測定される。トランスデューサ素子412及びハイドロホン600は、互いに同期して、正確なタイミングと測定を確実にすることができる。
【0031】
位置1における素子412の飛翔時間の測定が完了した後、スキャナ610はハイドロホン600を位置2に移動させる(図9B)。位置2において、素子412の飛翔時間の測定が繰り返される。位置2における飛翔時間の測定が完了した後、スキャナ610はハイドロホン600を位置3に移動させ(図9C)、飛翔時間の測定が繰り返される。次いで、飛翔時間の測定値を用いて、各トランスデューサ素子412の実際の位置を求め、トランスデューサ410の表面414をマッピングする。
【0032】
より具体的には、図10を参照すると、ステップ1000において、各所望の位置で、各トランスデューサ素子412の飛翔時間「t」の測定が完了し、ステップ1010において、トランスデューサ素子412とハイドロホン600との間の距離が、既知の方法を用いて求められる。パルス615が伝わる媒体620、例えば、水は既知である。更に、パルス615が水620を介して伝わる速度、及び飛翔時間の値は既知である。個々のトランスデューサ素子412とハイドロホン600との間の距離Dは、D=vtに従って求められることができ、この場合、「v」は水の媒体620における音速であり、「t」は飛翔時間である。ステップ1020において、各トランスデューサ素子412の実際の位置が、これらの計算に基づいて求められる。
【0033】
一実施形態によれば、トランスデューサ素子412の実際の位置は、三次元座標(x、y、z)として表され得る。3つの飛翔時間測定値および3つの対応する距離計算を用いて、基準点に対するトランスデューサ素子412の実際の三次元位置または座標を求めることができる。例えば、これは、三角測量、又は他の既知の数学的および幾何学的原理により行われ得る。
【0034】
例えば、ハイドロホンの位置の座標は(スキャナ制御により)既知である。第1の位置、位置1におけるハイドロホンの座標は、(Xh、Yh、Zh)により表され、トランスデューサ素子、例えば、トランスデューサ素子番号「k」の座標は、(Xk、Yk、Zk)により表される。測定された飛翔時間は、Dikにより表される。所与のトランスデューサ素子412の実際の三次元位置または座標は、Dik2=(Xk−Xh)2+(Yk−Yh)2+(Zk−Zh)2に基づいて求められ得る。
【0035】
特定のトランスデューサ素子番号kについて、3つの未知数、即ちXk、Yk、Zkが存在する。しかしながら、他の変数の全ては、音響的に、又はスキャナ制御により測定される。3つの異なる位置または場所におけるデータを用いて、トランスデューサ素子番号kの実際の位置に関する三次元座標、及び各トランスデューサ素子の実際の位置に関する三次元座標を求めて、トランスデューサ表面の完全な空間マッピングを得ることができる。必要に応じて、精度を向上させるために、追加の式が生成されて、他の位置(例えば、30カ所の位置)における追加の測定値でもって解かれ得る。更に、様々な既知の統計的手法、例えば、線形化法および最小分散法を用いて、冗長な式を解くことができる。従って、実際のトランスデューサの座標を求める上記の測定および方法は、説明および例示のために提供されており、制限するためではない。
【0036】
必要に応じて、ステップ1030において、各トランスデューサ素子412により放出されたパルスの位相も用いて、各素子412の実際の(x、y、z)位置を求めて、トランスデューサ素子412の実際の位置に対する更なる精度を提供することができる。例えば、これは、相関法を用いて行われることができ、向上した精度で、距離が計算されることが可能になる。例えば、約1MHzのトランスデューサ出力において、距離の精度は、約0.1mm又はそれ以上とすることができる。
【0037】
図11を参照すると、飛翔時間の測定結果、及び距離の計算結果は、固定座標または基準座標1110に対する各トランスデューサ素子412の実際の位置を表す座標のセット1100である。例えば、第1のトランスデューサ素子412に関する実際の座標は、(XA1、YA1、ZA1)として表され、第2のトランスデューサ素子412に関する実際の座標は、(XA2、YA2、ZA2)として表される。例示された実施形態において、トランスデューサ素子の実際の位置に関する(x、y、z)座標は、重心のような、トランスデューサ素子412の本体の中心1120に対して求められる。代案として、座標は、素子の上面における中心点のような、トランスデューサ素子412の他の点に基づくことができる。説明および例示のために、本明細書は、トランスデューサ素子412の中心1120を基準とした実際の座標1120に言及する。
【0038】
トランスデューサ素子412の実際の位置1120は、素子の期待される位置から逸脱する場合もあるし、逸脱しない場合もある。例えば、図12は、期待される位置1220から逸脱する実際の位置1120を有するトランスデューサ素子412を示す。この例において、トランスデューサ素子412の実際の位置1120は、「y」方向において値δだけ変化する。また、偏移は、「x」及び「z」方向でも生じるが、図12は例示のために「y」方向の偏移を示す。従って、1つ又は複数、或いは全てのトランスデューサ素子412の実際の位置1120は、1つの方向、2つの方向、又は3つの方向において、期待される位置から変化する可能性がある。
【0039】
例示された例において、期待された位置1220からの偏移は、実際の位置におけるトランスデューサ素子の中心と期待される位置におけるトランスデューサ素子の中心との間の距離δとして表され得る。言い換えると、偏移は、実際の位置におけるトランスデューサ素子412の中心1120と期待される位置におけるトランスデューサ素子の中心との間のベクトルの大きさとして表され得る。代案として、偏移は、x、y、及びz方向のそれぞれの偏移、例えば(δx、δy、δz)として表され得る。
【0040】
上述した実施形態において、トランスデューサ素子412の実際の位置1120及び期待される位置1220は、三次元(x、y、z)で表される。代案として、実際の位置1120及び期待される位置1220は、例えば、トランスデューサ表面414における偏移の数、及び所望の精度に応じて、一次元または二次元で表され得る。
【0041】
例えば、場合によっては、トランスデューサ表面414の形状または位置の偏移が単なる一次元で生じることがわかっている場合には、トランスデューサ素子412の実際の位置1120を1D座標(x1)又は線形偏移として求めることで十分であるかもしれない。係る一次元の偏移の一例が図1に示され、この場合、表面が垂直方向にシフトされている。この偏移は、トランスデューサ表面414に対する垂線に基づいて測定され得る。
【0042】
更なる例として、トランスデューサ表面414の形状または位置の偏移が単なる二次元で生じることがわかっており、一次元が既知であるか又は固定されている場合には、トランスデューサ素子412の実際の位置1120を2D座標(x1y1)として求めることで十分であるかもしれない。この場合、第1のパルス615が、トランスデューサ素子412から第1の位置にある第1のハイドロホン600に放出されることができ、第2のパルス615が、トランスデューサ素子412から第2のハイドロホン600又は第2の位置にあるハイドロホンに放出されることができる。素子412の実際の位置は、パルスの速度がわかっており、パルスが伝わる媒体がわかっており、及び飛翔時間の測定値がわかっているので、既知の数学的手法および幾何学を用いて、これら2つのパルスで求められ得る。
【0043】
このように、実施形態は、一次元、二次元、及び三次元において、トランスデューサ素子の実際の位置および期待される位置を表すために使用され得る。説明のために、本明細書は、三次元で表されている実際の位置および期待される位置に言及する。
【0044】
更に、代替の実施形態は、トランスデューサ素子412とハイドロホン600との間の距離を求めるために様々なシステム及び方法を利用することができる。一実施形態によれば、図9A〜図9Cに示されるように、ハイドロホン600が第1の位置にある際に、パルス615がトランスデューサ素子412から放出されることができ、これは、ハイドロホンが第2の位置および第3の位置にある際に繰り返される。従って、この実施形態において、ハイドロホン600は固定トランスデューサ410に対して異なる位置に移動する。
【0045】
図13を参照すると、代替の実施形態において、システムは、トランスデューサ410の表面414をマッピングするために、ハイドロホン600の位置が固定され、トランスデューサ素子412が固定されたハイドロホン600に対して移動するようにトランスデューサ410が平行移動するように構成される。上述したのと同様な飛翔時間の測定、距離の算定、実際の位置の算定、及び位相の測定が実行され得る。
【0046】
更に代替の実施形態において、図14を参照すると、単一のハイドロホンではなくて、ハイドロホン600a〜600fのアレイ1400が利用され得る。この実施形態において、アレイ1400の第1のハイドロホン600aが付勢され、トランスデューサ素子412が付勢されてパルス615を放出し、そのパルス615は第1のハイドロホン600aにより検出される。上述したように、飛翔時間の測定、並びに距離および実際の位置の算定が実行される。次いで、第1のハイドロホンが不活性化されて、アレイ1400の第2のハイドロホン600bが付勢される。トランスデューサ素子412が付勢されてパルスを放出し、そのパルスは第2のハイドロホン600bにより検出される。同様の手順が、第3のハイドロホン600c及び任意の更なるハイドロホンに関して続く。ハイドロホンのアレイ1400を用いることにより、ハイドロホン及びスキャナの少なくとも1つを移動させることが除去され得る。
【0047】
上述したように、順次に、1つのハイドロホン600が不活性化されて別のハイドロホン600が活性化される。代案として、アレイ1400の多数のハイドロホン600が同時に付勢され得る。この実施形態において、単一のパルス615がトランスデューサ素子412から放出されることができ、単一のパルス615が多数のハイドロホン600により同時に検出され得る。従って、1つのパルスが少なくとも3つのハイドロホンにより同時に検出される場合、3つの飛翔時間の測定値(又は、更なる精度が望まれる場合には追加の飛翔時間測定値)を用いて、素子の実際の位置1120を求めることができる。代案として、受信素子のマトリクスを用いてもよい。
【0048】
従って、各トランスデューサ素子412の実際の位置1120は、静止しているトランスデューサ410と可動ハイドロホン600、可動トランスデューサ410と静止しているハイドロホン600、可動トランスデューサ410と可動ハイドロホン600、及びハイドロホンアレイ1400を用いて求められ得る。様々な実施形態に関して、飛翔時間の測定結果、距離の算定、及び実際の位置の算定は、一次元、二次元または三次元の座標、或いは他の適切な表現またはデータとして表されようと、各トランスデューサ素子412の実際の位置1020を表す座標またはデータのセット1100である。
【0049】
図15及び図16A〜図16Cを参照すると、実際のトランスデューサ素子の位置1120を用いて、特定の又は選択されたトランスデューサ素子412の駆動信号および出力を制御する。特に、図15は、第1のファイル又はデータセット1500が各トランスデューサ素子412の期待される位置1220を含む一実施形態を示す。期待される位置1220は、座標(XEn、YEn、ZEn)として図16Aに示され、ここで、下付き文字「E」は期待される座標を意味する。この第1のファイル又はデータセット1500はメモリ1510に格納される。第2のファイル又はデータセット1520は、期待される位置1220及び/又は実際の位置1120を含むことができる。期待される位置1220又は実際の位置1120が使用されるか否かは、特定のトランスデューサ素子の偏移の程度に依存することができる。
【0050】
一実施形態によれば、第2のファイル1520は、素子412の実際の位置1120がその期待される位置から逸脱していない際の、又は実際の位置が期待される位置1220に対して所定量未満だけ、期待される位置から逸脱している際の、トランスデューサ素子412の期待される位置1220を含む。代案として、第2のファイル1520は、実際の位置が期待される位置に十分に接近している際の実際の位置を含むことができ、その理由は、この場合、実際の位置および期待される位置が同じ、又は実質的に同じであるからである。
【0051】
一実施形態によれば、第2のファイル1520は、実際の位置1120が、期待される位置1220から逸脱する際の、又は実際の位置が所定量よりも大きい量だけ期待される位置から逸脱する際の、選択されたトランスデューサ素子の実際の位置1120を含む。例えば、図16Bに示されるように、第2のファイル1520は、選択された素子の実際の座標1120、及び他の素子の期待される座標1220の双方を含む。各素子412がそれぞれの期待される位置から逸脱する、又は所定量よりも多い量だけその期待される位置から逸脱する場合には、第2のファイル1520は、図16Cに示されるように、実際の位置座標1120だけを含む。
【0052】
従って、表面マッピングの結果が、素子412がそれらの期待される位置から逸脱しない、例えば、全ての素子412が球形モデルに適合する場合、第2のファイル1520は、期待される位置のみを含むことができる。代案として、第2のファイル1520は、実際の位置が同じである、又は期待される位置に十分に接近しているという理由で、及び素子の位置が球形モデルに適合しているという理由で、各素子の実際の位置を含むことができる。
【0053】
例示された実施形態において、第2のファイル1520は、メモリ1510に格納され、第1のファイル1500に取って代わることができる。第2のファイル1520の座標データは、コントローラ430に供給され、コントローラ430はドライバ回路420からの駆動信号出力の特性、それ故に放出された超音波エネルギーの特性およびトランスデューサ400の焦点を制御する。
【0054】
図17を参照すると、代替の実施形態において、第1のファイル又はデータセット1500を第2のファイル又はデータセット1520と置き換えるのではなくて、第2のファイル1520の内容が、第1のファイル1500にマージされるか、又は第1のファイル1500を補足することができる。第2のファイル1520は、選択された素子412の実際の位置1120のみを含み、期待される位置1220から逸脱する選択された素子412の期待される位置1220を、選択された素子412の実際の位置1120と置き換えて、第1のファイル1120にマージされ得る。例えば、第1のファイル1510が素子1〜10の期待される位置を含み、第2のファイル1520が選択された素子2と9の実際の位置を含む場合、第1のファイル1500における選択された素子2と9の期待される位置データは、第2のファイル1520からの素子2と9の実際の位置と置き換えられる。結果としてのファイル又はマージされたファイルは、素子1、3〜8及び10の期待される位置座標1220、及び選択された素子2と9の実際の位置座標1120を含む。全ての素子412の実際の位置1120が、期待される位置1220から逸脱する場合には、マージされたファイルは、実際の位置1120のデータのみを含む。
【0055】
実施形態は、トランスデューサ素子の実際の位置を表していない可能性があるトランスデューサの所定の形状または設計に基づいた信号に依存する代わりに、トランスデューサ素子の実際の位置に対応する信号で各トランスデューサ素子412を有利に駆動することにより、既知のトランスデューサ制御システムにわたって著しい改善を提供する。従って、実施形態は、製造中、輸送中、及び修理中での素子の位置のシフトを補償することができる。更に、実施形態は有利には、熱により生じた素子の変形、及び/又は物理的配線エラー又は「仮想配線エラー」(例えば、誤ったデータファイルが使用されて、素子が付勢される順序を変更する)に起因した位置エラーを補償する。例えば、比較的小さい位置偏移として観測されるトランスデューサの変形とは異なり、配線エラー及びデータエラーは、大きな位置エラーとして観測され、従って、検出が容易であるパターンを有するであろう。このように、表面マッピングを用いることにより、実施形態は、トランスデューサ表面の偏移ならびに配線エラー及びデータエラーを補償することによって、より正確なトランスデューサを治療されるべきターゲット組織に、より正確に提供する。
【0056】
実施形態は、例えば、必要に応じて、一次元、二次元、又は三次元座標のような座標として、異なる態様で表されるトランスデューサ素子の実際の位置に基づいて、特定のトランスデューサ素子の駆動信号を調整するために使用され得る。例えば、トランスデューサ素子が主として1つの方向で移動するが、他の2つの方向が実質的に同じままであると判定される場合には、1つの方向における実際の位置データ、及び他の2つの方向における期待される位置データを利用して、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることができる。更に、トランスデューサ素子に正接である(「x」及び「y」方向における)変形は、トランスデューサ素子の移動がトランスデューサ表面に垂直である方向(例えば、「z」方向)で主として生じる場合には、無視してよいかもしれない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多素子トランスデューサの表面をマッピングする方法であって、
各トランスデューサ素子から放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定し、
各トランスデューサ素子と前記センサとの間の距離を前記飛翔時間に基づいて求め、
前記求めた距離に基づいて、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを含む、方法。
【請求項2】
前記距離を求めることが、
トランスデューサ素子により放出されて、センサにより検出される第1のパルスの飛翔時間を測定し、
前記センサを第1の位置から第2の位置まで移動させ、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2の位置にある前記センサにより検出される第2のパルスの飛翔時間を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記飛翔時間を測定することが、
トランスデューサ素子により放出されて、ハイドロホンにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記距離を求めることが、
各トランスデューサ素子とハイドロホンアレイの1つ又は複数のハイドロホンとの間の距離を求めることを含む、請求項3に記載に方法。
【請求項5】
前記ハイドロホンアレイの第1のハイドロホンを付勢し、
トランスデューサ素子により放出されて、前記第1のハイドロホンにより検出されるパルスの第1の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第1のハイドロホンとの間の第1の距離を前記測定された第1の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ハイドロホンアレイの第2のハイドロホンを付勢し、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2のハイドロホンにより検出されるパルスの第2の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第2のハイドロホンとの間の第2の距離を前記測定された第2の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1及び第2の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2のハイドロホンが同時に活性化する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のハイドロホンを不活性化することを更に含み、前記第1及び第2のハイドロホンは、前記第2のハイドロホンが活性化している際に前記第1のハイドロホンが活性化していないように、順次に付勢される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記トランスデューサの表面をマッピングすることが、トランスデューサに対してセンサを移動させることにより、又は固定されたセンサに対して前記トランスデューサを移動させることにより、実行される、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
多素子超音波トランスデューサの出力を制御する方法であって、
前記トランスデューサの各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより、前記トランスデューサの表面をマッピングし、
各トランスデューサの実際の位置および期待される位置の比較に基づいて、1つ又は複数のトランスデューサ素子の駆動信号を調整し、それにより前記トランスデューサの出力が調整されることを含む、方法。
【請求項11】
前記トランスデューサにより生成されるビームの焦点または形状が調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
トランスデューサ素子の駆動信号は、前記トランスデューサ素子の実際の位置が前記トランスデューサ素子の期待される位置から所定量だけ逸脱している場合に、前記トランスデューサ素子の実際の位置を用いて調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
特定のトランスデューサ素子の駆動信号が、前記特定のトランスデューサ素子のそれぞれの実際の位置に基づいて調整され、他のトランスデューサ素子の駆動信号が、前記他のトランスデューサ素子のそれぞれの期待される位置に基づいて調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
トランスデューサ素子の期待される位置が、フェイズドアレイの超音波トランスデューサの表面の形状または設計に基づいている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記表面をマッピングすることが、
各トランスデューサ素子から放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定し、
各トランスデューサ素子と前記センサとの間の距離を前記飛翔時間に基づいて求め、
各トランスデューサ素子の実際の位置を前記求めた距離に基づいて求めることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記距離を求めることが、
トランスデューサ素子により放出されて、センサにより検出される第1のパルスの飛翔時間を測定し、
第1の位置から第2の位置に前記トランスデューサを移動させ、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2の位置にある前記センサにより検出される第2のパルスの飛翔時間を測定することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記飛翔時間を測定することが、
トランスデューサ素子により放出されて、ハイドロホンにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することを含み、
前記距離を求めることが、
各トランスデューサ素子とハイドロホンアレイの1つ又は複数のハイドロホンとの間の距離を求めることを含む、請求項15に記載に方法。
【請求項18】
前記ハイドロホンアレイの第1のハイドロホンを付勢し、
トランスデューサ素子により放出されて、前記第1のハイドロホンにより検出されるパルスの第1の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第1のハイドロホンとの間の第1の距離を前記測定された第1の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求め、
前記ハイドロホンアレイの第2のハイドロホンを付勢し、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2のハイドロホンにより検出されるパルスの第2の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第2のハイドロホンとの間の第2の距離を前記測定された第2の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1及び第2の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2のハイドロホンが同時に活性化する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のハイドロホンを不活性化することを更に含み、前記第1及び第2のハイドロホンは、前記第2のハイドロホンが活性化している際に前記第1のハイドロホンが活性化していないように、順次に付勢される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記トランスデューサの設計に基づいて、各トランスデューサ素子の期待される位置を有する初期ファイルを生成し、
前記初期ファイルに基づいて、各トランスデューサ素子の実際の位置が前記トランスデューサ素子の期待される位置から逸脱しているか否かを判定し、
前記期待される位置から逸脱するトランスデューサ素子の実際の位置を有する更新ファイルを生成し、
前記更新ファイルに基づいて、トランスデューサ素子の駆動信号を調整することを更に含む、請求項10〜20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
前記初期ファイルを生成することが、各トランスデューサ素子の期待される座標を有する初期ファイルを生成することを含み、
前記更新ファイルを生成することが、前記期待される位置から逸脱する実際の位置を有する特定のトランスデューサ素子の実際の座標、及び他のトランスデューサ素子の期待される座標を含む更新ファイルを生成することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項1】
多素子トランスデューサの表面をマッピングする方法であって、
各トランスデューサ素子から放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定し、
各トランスデューサ素子と前記センサとの間の距離を前記飛翔時間に基づいて求め、
前記求めた距離に基づいて、各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを含む、方法。
【請求項2】
前記距離を求めることが、
トランスデューサ素子により放出されて、センサにより検出される第1のパルスの飛翔時間を測定し、
前記センサを第1の位置から第2の位置まで移動させ、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2の位置にある前記センサにより検出される第2のパルスの飛翔時間を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記飛翔時間を測定することが、
トランスデューサ素子により放出されて、ハイドロホンにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記距離を求めることが、
各トランスデューサ素子とハイドロホンアレイの1つ又は複数のハイドロホンとの間の距離を求めることを含む、請求項3に記載に方法。
【請求項5】
前記ハイドロホンアレイの第1のハイドロホンを付勢し、
トランスデューサ素子により放出されて、前記第1のハイドロホンにより検出されるパルスの第1の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第1のハイドロホンとの間の第1の距離を前記測定された第1の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ハイドロホンアレイの第2のハイドロホンを付勢し、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2のハイドロホンにより検出されるパルスの第2の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第2のハイドロホンとの間の第2の距離を前記測定された第2の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1及び第2の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2のハイドロホンが同時に活性化する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のハイドロホンを不活性化することを更に含み、前記第1及び第2のハイドロホンは、前記第2のハイドロホンが活性化している際に前記第1のハイドロホンが活性化していないように、順次に付勢される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記トランスデューサの表面をマッピングすることが、トランスデューサに対してセンサを移動させることにより、又は固定されたセンサに対して前記トランスデューサを移動させることにより、実行される、請求項1〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
多素子超音波トランスデューサの出力を制御する方法であって、
前記トランスデューサの各トランスデューサ素子の実際の位置を求めることにより、前記トランスデューサの表面をマッピングし、
各トランスデューサの実際の位置および期待される位置の比較に基づいて、1つ又は複数のトランスデューサ素子の駆動信号を調整し、それにより前記トランスデューサの出力が調整されることを含む、方法。
【請求項11】
前記トランスデューサにより生成されるビームの焦点または形状が調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
トランスデューサ素子の駆動信号は、前記トランスデューサ素子の実際の位置が前記トランスデューサ素子の期待される位置から所定量だけ逸脱している場合に、前記トランスデューサ素子の実際の位置を用いて調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
特定のトランスデューサ素子の駆動信号が、前記特定のトランスデューサ素子のそれぞれの実際の位置に基づいて調整され、他のトランスデューサ素子の駆動信号が、前記他のトランスデューサ素子のそれぞれの期待される位置に基づいて調整される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
トランスデューサ素子の期待される位置が、フェイズドアレイの超音波トランスデューサの表面の形状または設計に基づいている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記表面をマッピングすることが、
各トランスデューサ素子から放出されて、センサにより検出されるパルスの飛翔時間を測定し、
各トランスデューサ素子と前記センサとの間の距離を前記飛翔時間に基づいて求め、
各トランスデューサ素子の実際の位置を前記求めた距離に基づいて求めることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記距離を求めることが、
トランスデューサ素子により放出されて、センサにより検出される第1のパルスの飛翔時間を測定し、
第1の位置から第2の位置に前記トランスデューサを移動させ、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2の位置にある前記センサにより検出される第2のパルスの飛翔時間を測定することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記飛翔時間を測定することが、
トランスデューサ素子により放出されて、ハイドロホンにより検出されるパルスの飛翔時間を測定することを含み、
前記距離を求めることが、
各トランスデューサ素子とハイドロホンアレイの1つ又は複数のハイドロホンとの間の距離を求めることを含む、請求項15に記載に方法。
【請求項18】
前記ハイドロホンアレイの第1のハイドロホンを付勢し、
トランスデューサ素子により放出されて、前記第1のハイドロホンにより検出されるパルスの第1の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第1のハイドロホンとの間の第1の距離を前記測定された第1の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求め、
前記ハイドロホンアレイの第2のハイドロホンを付勢し、
前記トランスデューサ素子により放出されて、前記第2のハイドロホンにより検出されるパルスの第2の飛翔時間を測定し、
前記トランスデューサ素子と前記第2のハイドロホンとの間の第2の距離を前記測定された第2の飛翔時間に基づいて求め、その求められた第1及び第2の距離を用いて、前記トランスデューサ素子の実際の位置を求めることを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2のハイドロホンが同時に活性化する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のハイドロホンを不活性化することを更に含み、前記第1及び第2のハイドロホンは、前記第2のハイドロホンが活性化している際に前記第1のハイドロホンが活性化していないように、順次に付勢される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記トランスデューサの設計に基づいて、各トランスデューサ素子の期待される位置を有する初期ファイルを生成し、
前記初期ファイルに基づいて、各トランスデューサ素子の実際の位置が前記トランスデューサ素子の期待される位置から逸脱しているか否かを判定し、
前記期待される位置から逸脱するトランスデューサ素子の実際の位置を有する更新ファイルを生成し、
前記更新ファイルに基づいて、トランスデューサ素子の駆動信号を調整することを更に含む、請求項10〜20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
前記初期ファイルを生成することが、各トランスデューサ素子の期待される座標を有する初期ファイルを生成することを含み、
前記更新ファイルを生成することが、前記期待される位置から逸脱する実際の位置を有する特定のトランスデューサ素子の実際の座標、及び他のトランスデューサ素子の期待される座標を含む更新ファイルを生成することを含む、請求項21に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【公表番号】特表2009−545905(P2009−545905A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522354(P2009−522354)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002140
【国際公開番号】WO2008/015523
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(508154863)インサイテック・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002140
【国際公開番号】WO2008/015523
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(508154863)インサイテック・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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