説明

多細胞生物の蛍光測定装置及びその蛍光測定方法

液体のサンプル(102,804)中の多細胞生物の蛍光測定装置及びその蛍光測定方法は、ポンプ機構と、フローセル(104)と、測定値を解析する(100,300,508)方法と、任意選択で仕分け機構(502)とを含んでいる。ポンプ機構は、生じさせる身体的損傷及び/又はストレスを最小にしながら、容器からフローセル(104)を通過させて大型多細胞生物を移動させる(402,836)。サンプル容器/貯蔵器から測定装置を通過させるように生物を駆動する圧力差は、重力(800)、空気圧(412)又は液体圧、あるいはこの3つのある組み合わせから得ることができる。蛍光は、光検出器又は撮像器(106)を使用してサイトメータで測定することができる。一般に、検出要素は、蛍光発光波長を分離するフィルタ(114)を含むことになる。照明は、多波長による同時照明を可能にするために、ダイクロイックミラーの使用と組み合わされたレーザ(112)又はLED(302)によって行ってもよい。さらに、LEDは、散乱/反射LED光(しかし蛍光ではない)を検出要素から遮断しながら最適励起波長を分離するためのフィルタと共に、通常使用されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多細胞生物の蛍光測定装置及びその蛍光測定方法に関し、より詳細には、流動液体中の大型多細胞生物(large multi−cellular organism)の蛍光測定を実施して仕分けするための蛍光測定装置及びその蛍光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WatchFrog(仏国パリ)は、環境中の汚染物質を敏感に試験し、そして製剤試験するための技術を開発してきた。アフリカツメガエルのオタマジャクシ(Xenopus tadpole)は、汚染物質(又は薬物)に反応して「光を発し」(蛍光を示す)、そして同時にいくつかの化学種の存在を表示することができる。これは、遺伝子組み換えのアフリカツメガエルに関する公開されて利用できる文献(例えば、非特許文献1参照)及び特許文献1に記載されており、以下に要約する。
【0003】
基本原理には、顧客が興味を示すことがある分子のどのようなタイプの生理作用にも反応して、GFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)を発現させることができる遺伝子構造を生成することが含まれる。次いで、この「分子線量計(molecular dosimeter)」をアフリカツメガエルの幼虫中に組み込み、これによって、生体内で被験サンプルに反応することができる生化学的調節をすべて勘定に入れる。
【0004】
例えば、外因性内分泌かく乱化学物質(endocrine disrupter)が存在する場合、それは、エストロゲン(estrogen)や甲状腺ホルモン(thyroid hormone)など様々なホルモンの反応要素を活性化して、蛍光タンパク質の合成を始動させることになる。蛍光は、多細胞生物の透明性によって現れ、したがって、動物を犠牲にすることなく、検出し定量化することができる。幼虫は、試験を実施するために液体サンプル中に置く必要があるだけである。遺伝子構造は、様々な破壊的な、又は薬理的な作用に反応するために試験範囲を注文通りにするように必要に応じて変更することができる。
【0005】
この試験方法は、生体内におけるという利点と生体外でのフレキシビリティを兼ね備える。それは、低コストで材料の経済的な使用及び自動化の可能性と共に、高い感度及び特異性で正確な情報を迅速かつ簡単に提供する。
【0006】
アフリカツメガエル(種の選択)は、完全な免疫系を有し、それに加えてより複雑な心臓及び循環系を有する。さらに、内分泌生理学の観点では、アフリカツメガエルと人間の間の生化学的機構(biochemical mechanism)の不変性が実証され証明されている。アフリカツメガエルは、研究世界では調査され認められたモデルである。
【0007】
さらに、アフリカツメガエルは、多くの薬理学上の用途をもたらす。例えば、アフリカツメガエルは、その成長過程中に血管系及び複雑な中枢神経系を極めて迅速に発現させることに、やはり関連性がある。したがって、目標モデルを開発して、血管形成又は神経学的な興味がある新しい分子を試験することができる。
【0008】
本発明の技術分野でやはり知られていることは、粒子を検出する様々な方法である。例えば、本発明者に与えられた特許(例えば、特許文献2参照)には、噴水流サイトメータ(fountain flow cytometer)が開示されており、蛍光標識された細胞のサンプルが、デジタルCCD又はCMOSカメラ及び前置光学系に対してチューブに流れる。このことは図1(従来技術)に示されている。細胞が、透明端部要素を通るレーザによって焦点面上で照明される。細胞(1つ又は複数)がデジタルカメラの焦点面を通過するとき、それは、透明窓及び蛍光発光波長を分離するフィルタを通して、カメラ及びレンズアセンブリによって撮像される。次いで、細胞を浮遊させる液体は、窓を通り過ぎドレインチューブから流出する。
【0009】
図1は、従来の落射蛍光噴水流サイトメータ(epifluorescent fountain flow cytometer)の概略図である。符号100は、落射蛍光噴水流サイトメータを示している。蛍光生物のサンプル102は、デジタルカメラ106及び前置光学系108に対してフローセル(flow cell)104を通過する。細胞は、レーザ112によって焦点面110上で照明される。次いで、細胞(1つ又は複数)は、CCDカメラの焦点面を通過し、それは、透明なフローセル104の窓を通し、蛍光発光波長を分離するフィルタ114を使用して、CCDカメラ及びレンズアセンブリによって撮像される。次いで、細胞を浮遊させる液体は、窓118を通り過ぎ、廃液120は、フローセル104のドレインチューブ116から流出する(矢印で表された経路中で)。
【0010】
フローブロックは、フローセル104として使用することができ、図2に示されているように、サンプル102が、入力配管208を介して流入チューブ202を通ってフローブロックに流入し、押し上げられ、そして撮像窓118の下方を押し流され、下方に流れて戻り、ドレインチューブ116を通り、そして廃液流出配管206から流出する。
【0011】
図2は、図1に示したサイトメータとともに使用されるアルミニウムのフローブロックのチューブを示す図である。このサイトメータ(フローセル104)において、サンプル102は、ステンレス鋼の流入チューブ202に結合された入力配管208のフレキシブル配管(Tygon(商標)など)を通ってフローセル(フローブロック)104に流入し、そしてステンレス鋼のドレインチューブ116を通って廃液流出配管206に流出する。2つの垂直な8mmの穴が、アルミニウムのフローブロック中にあけられており、それらは、流入穴210及び流出穴214である。サンプルが内部の流入穴210を上方に流れるので、サンプルは、デジタル(例えば、CCD又はCMOS)のカメラ106の焦点面110を通過する。この穴210は、散乱光を減少させるために、一般的に黒く塗られている。テフロン(登録商標)テープのガスケット216が、アルミニウムのフローブロックと円形BK7窓118の間に介装され、ねじ式の黄銅キャップ218よってしっかりと固定される。ガスケットは、窓118を通してサンプルを観察することができるように切断される。次いで、サンプル102は、流出穴214を下方に通ってドレインチューブ116に進む。図3に示すように、LEDによる照明を使用してもよい。
【0012】
図3は、LEDによって照明される従来の落射蛍光噴水流サイトメータを示す図である。符号300は落射蛍光噴水流サイトメータを示している。蛍光標識された細胞のサンプルが、デジタルカメラ106及び前置光学系108に対してフローセル104を通って流れる。細胞は、焦点面上でLED302によって照明される。細胞(1つ又は複数)がCMOSカメラの焦点面110を通過するとき、それは、透明なフローセルの窓118及び蛍光発光波長を分離するフィルタ(図示せず)を通してカメラ及びレンズアセンブリ108によって撮像される。次いで、細胞を浮遊させる液体は、窓118を通り過ぎ、フローセル104のドレインチューブ116から流出する。(注:現在の実施形態では、蠕動ポンプは、使用されない。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0101528号明細書
【特許文献2】米国特許第6765656号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Turque他、2005
【非特許文献2】Demeneix, B and Turque, N. Transgenic clawed frog embryos and use thereof as detectors of endocrine disrupters in the environment. (US Patent Application 2006/0101528)
【非特許文献3】Johnson PE, Votaw AS, Deromedi, AJ. Biodetection with flow cytometry: better, faster, cheaper. In Biodetection Technologies, vol. 1., Brookline, Massachusetts: Knowledge Press; 2002; p 71-83.
【非特許文献4】Johnson PE. Apparatus and methods for high throughput analysis of samples in a translucent flowing liquid. (US Patent 6,765,656; 2004)
【非特許文献5】Johnson, PE, Deromedi, AJ, Lebaron, P, Catala, P., and Cash, J. Rapid detection and enumeration of Escherichia coli in aqueous samples using Fountain Flow Cytometry, in press, Cytometry Part A, 69A, 1212-1221, 2006.
【非特許文献6】Johnson, PE, Deromedi, AJ, Lebaron, P, Catala, P, Havens, C, and Pougnard, C. High throughput, real-time detection of Naegleria lovaniensis in natural river water using LED-illuminated Fountain Flow Cytometry, 103(3), 700-720 J Appl Microbiol, 2007.
【非特許文献7】Johnson PE. Method and system for counting particles in a laminar flow with an imaging device. (US Patent Application 1 1/328,033; 2006)
【非特許文献8】www.watchfrog.fr. Accessed November 11, 2006.
【非特許文献9】Turque, N., Palmier, K., Le Mevel, S., Alliot, C. and Demeneix, B.A. A Rapid, Physiologic Protocol for Testing Transcriptional Effects of Thyroid-Disrupting Agents in Premetamorphic Xenopus Tadpoles. Environmental Health Perspectives, 113, Number 11, November 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、流動液体中の大型多細胞生物の蛍光測定を実施して仕分けするための蛍光測定装置及びその蛍光測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
大型(幅がほぼ1〜5mm)の多細胞生物を含む水性サンプルのリアルタイム蛍光測定を可能にする発明を説明する。本システムは、ポンプサブシステムと、蛍光測定サブシステムと、測定値を処理するためのユニットとを少なくとも含んでいる。さらに、本システムは、さらなる解析のために、多細胞生物をその蛍光に従って容器中に仕分けする仕分けユニットを含むことができる。ポンプユニットに対する1つの制約は、それがサンプル中の多細胞生物に対して非破壊的でなければならないということである。本発明におけるポンプ方法は、空気圧及び/又は重力に基づき、送られる多細胞生物に対して比較的ストレスがない。多細胞生物の蛍光を測定するための好ましい技術がここに提示され、それは、上述した特許文献2に詳細に記載された、LEDによる照明及びデジタル撮像器と結合された噴水流細胞数測定技術(fountain flow cytometry technique)である。
【0017】
多細胞生物にポンプを通過させることなく、サンプル容器からフローセルを通過させて廃棄物容器へ多細胞生物を含む液体サンプルを送るための蛍光測定装置は、サンプルを含むサンプル容器と、サンプル容器と廃棄物容器の間に圧力差を選択的に加えるための供給手段と、サンプル容器をフローセルに結合するための第1の流出口と、廃棄物容器と、フローセルを廃棄物容器に結合するための第2の流出口とを含んでおり、圧力差が加えられたとき、サンプルの部分が、サンプル容器から流れて、第1の流出口を通り、フローセルを通り、そして第2の流出口を通って廃棄物容器に進み、そしてサンプルの部分は、決してポンプを通過しない。
【0018】
多細胞生物は、長さが0.1mmから3cmとなることがあり、例えば、アフリカツメガエル(Xenopus)のオタマジャクシ(tadpole)としてもよい。
【0019】
圧力差を選択的に加えるための供給手段は、サンプル容器に結合された、サンプル容器中の圧力を上昇させるための空気ポンプとすることができる。
【0020】
他の実施形態として、圧力差を選択的に加えるための供給手段は、重力を使用する。圧力差を選択的に加えるための供給手段は、サンプル容器中の液体レベルを第1のレベルまで上昇させることを含み、その第1のレベルは、廃棄物容器中の液体レベルより高い。特徴として、この実施形態は、再測定のために、サンプルの部分を廃棄物容器からサンプル容器に送り戻す能力も含んでもよい。これは、サンプル容器中の液体レベルを第2のレベルまで低下させることによって達成され、その第2のレベルは、廃棄物容器中の液体レベルより低い。バルブによって、再循環されるサンプルの部分が、廃棄物容器からサンプル容器に流れることが可能になる。
【0021】
一般に、第2の実施形態は、サンプル容器中に、第2のレベルより低く多細胞生物を収納するように構成された間仕切りを含んでいる。
【0022】
いくつかの実施形態では、サンプル容器は、多細胞生物が沈むことができる、サンプル容器の横断面より狭い下側領域を含むように構成される。したがって、第1の流出口は、多細胞生物を吸い出すために、下側領域中に延在するパイプを含んでもよい。パイプは、この下側領域に到達するための湾曲端部を有することができる。
【0023】
圧力差は、サンプル流量が約140ml/分を達成するのに十分であることが好ましい。一般に、蛍光測定装置は、サンプル内の光度を測定するための検出要素を含んでいる。特徴は、多細胞生物が蛍光測定装置を流出した後、測定された光度に従って多細胞生物を仕分けするための機構である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の落射蛍光噴水流サイトメータ(epifluorescent fountain flow cytometer)の概略図である。
【図2】図1に示したサイトメータとともに使用されるアルミニウムのフローブロックのチューブを示す図である。
【図3】LEDによって照明される従来の落射蛍光噴水流サイトメータを示す図である。
【図4】本発明のポンプシステムの第1の好ましい実施形態を示す概略図である。
【図5】本発明によって実施されるプロセスを明らかにするブロック図である。
【図6A】噴出流構成(fountain flow configuration)で使用される本発明のポンプシステムを明らかにする概略図である。
【図6B】サンプル導入ユニットと共にサンプル容器を示す本発明の実施形態の概略図である。
【図7A】本発明において使用することが可能な容器構成を明らかにする図である。
【図7B】本発明において使用することが可能な容器構成を明らかにする図である。
【図7C】本発明において使用することが可能な容器構成を明らかにする図である。
【図8】本発明のポンプシステムの第2の好ましい実施形態を明らかにする概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、液体のサンプル中の大型多細胞生物の蛍光測定装置及びその蛍光測定方法を含んでいる。蛍光測定装置は、2つのポンプ機構を含んでいる。第1のポンプ機構は、図4に示し、空気圧及び重力を使用しており、第2のポンプ機構は、図8に示し、重力だけを使用している。蛍光測定装置が図6Aに示してあり、サンプルを導入するための機構が図6Bに示してある。測定値を解析する方法は、任意選択の仕分け機構を含み、図5に示されている。図7A乃至図7Cに、本発明に適切な貯蔵容器の例を示している。
【0026】
ポンプ機構の実施形態は、生じさせる身体的な損傷及び/又はストレスを最小にしながら、容器からフローセルを通過させて多細胞生物を移動させる。サンプル容器/貯蔵器から測定装置を通過させる、それらの多細胞生物を駆動する圧力差が、重力、空気圧、液体圧、又はその3つのある組み合わせから得ることができる。蛍光は、噴水流サイトメータ中で、CMOS検出器、電荷結合素子、又はすべての他の撮像又は光検出ユニットを含む光検出器又は撮像器を使用して、測定することができる。一般に、検出要素は、蛍光発光波長を分離するフィルタを含むことになる。照明は、多波長による同時照明を可能にするために、ダイクロイックミラーの使用と組み合わされたレーザ又はLEDによって行ってもよい。さらに、LEDは、散乱/反射LED光(しかし蛍光発光ではない)を検出要素から遮断しながら最適励起波長を分離するためのフィルタと共に、通常使用されることになる。
【0027】
好ましい(そして実施するのに簡単化された)実施形態では、被試験生物は、野生型又は遺伝子組み換えが行われているアフリカツメガエルである。本発明の具体的な実施形態は、以下に詳細に述べる。
【0028】
1.<ポンプ>
図4は、本発明のポンプシステムの第1の好ましい実施形態を示す概略図である。具体的な装置は以下に述べる。図4に示されているアフリカツメガエルのポンプサブシステムは、(左側から右側に)バリアック(Variac)(variable voltage transformer:可変電圧変圧器)410と、水槽空気ポンプ412と、サンプル容器402のための環状スタンド支持器と、サンプル容器402と、フローセル104及び廃棄物容器422を含んでいる。サンプル容器402は、オタマジャクシを容器の底隅部に集めるために、約30°傾けられている。空気ポンプ412は、短いステンレス鋼の空気パイプ404中に空気配管414を介して空気を送り込むものである。サンプル102は、容器402中の最下位点から長いステンレス鋼のサンプルパイプ406/Tygon(商標)サンプル配管416の組み合わせを通してフローセル104に送られる。フローセル104からサンプルは、サンプル配管420を介して廃棄物容器422中に流入する。
【0029】
一実施形態では、アフリカツメガエルのオタマジャクシを含んだ容器402は、2つの穴があけられたゴム栓を有した500mlのガラス瓶であり、2つの直径8mmのステンレス鋼のチューブが栓を貫通して挿入されている。パイプ404の一方は、短く、栓を貫通して延在するのにちょうど十分な長さである(図4、図6A及び図6B)。長いパイプ406は、ガラス瓶の底の近くにまで延在する。その下側端部に、オタマジャクシにより良好に到達するために、湾曲端部片408が配置されることが好ましい。120ボルトの交流で動作する安価な水槽空気ポンプ412を用い、空気配管414を介して短いパイプ404中に、空気が送り込まれる。容器402は、オタマジャクシが最下位点に定着することを好むので、傾けられている。ポンプ412からの空気圧によって、オタマジャクシが容器から送り出され、フローセル104を通り、ガラスの「廃棄物」容器422中に進む。
【0030】
流量が、可変変圧器410(「バリアック」)によって制御されるが、何かより基本的なことを開発することができる。(直流電源によって動作する空気ポンプは、良好に働くはずである)。約140ml/分の流量を達成するための電圧は、交流の約25ボルトである。この流量より遅く送ると、オタマジャクシは、配管中に移動しないことになる。
【0031】
フローセル104は、図4に示された、流入チューブ202とドレインチューブ116及び観察領域418とを有したフローブロックとすることができる。測定装置の残された部分は、明確にするために省略されているが、図6A及び図6Bに示している。
【0032】
本システムは、ポンプがインペラーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、歯車ポンプ、又はすべての他の種類の機械的ポンプであろうとも、オタマジャクシがポンプを通り抜けるどのようなシステムよりも優れている。一般に、機械的ポンプは、オタマジャクシなどの大型の軟質粒子にとって、その中を流れることは優しくない。具体的に、研究者は、遠心分離式/インペラーポンプを試みてきたが、オタマジャクシを殺すことなくそれらを働かせる方法を見つけることができない。図4に示された空気ポンプシステムは、オタマジャクシに大変優しく、同じセットのオタマジャクシは、それらを殺すことなく何回か測定装置を通過させることができる。
【0033】
2.<生物の解析及び仕分け>
図5は、本発明によって実施されるプロセスに関する変化を明らかにするブロック図である。空気ポンプ412及びサンプル容器402は、図4に示されている。測定装置508の一例が図6A及び図6Bに示されている。
【0034】
測定ステップからの結果は、蛍光測定からバルブ502を始動させることによって、蛍光に従ってオタマジャクシを仕分けするために使用することができ、これによってオタマジャクシは、蛍光強度に従って2つ以上の瓶504、506に仕分けられる。
【0035】
図6Aは、噴出流構成(fountain flow configuration)で使用される本発明のポンプシステムを明らかにする概略図で、図4からのサンプル容器402及びFFC(Fountain Flow Cytometer;噴水流サイトメータ)測定装置508をフローセル104と共に示す本発明の実施形態の概略図である。
【0036】
LED302によって励起されたオタマジャクシからの発光強度を測定する噴水流サイトメータ(FFC:特許文献2参照)中に、オタマジャクシが送り込まれる。オタマジャクシが、GFP発現について測定されている場合、FFCは、GFPを測定するために励起フィルタ(図示せず)と共に青色LEDを使用し、そしてデジタルカメラ106は、GFPを測定するために発光フィルタ(図示せず)を使用する。CMOSカメラは、フローセル104からの発光を、通常2〜10フレーム/秒の割合で連続的に測定するために使用される。光度測定は、CMOSフレーム中の画素のすべての強度を合計することによって行われる。(他の実施形態では、光電子増倍管又はソリッドステート光検出器が強度をモニタするために使用することができる)。データは、強度測定値の時系列として記録される(ストリップチャート記録器からの出力と同様)。オタマジャクシ事象は、データ中にピークとして出現する。サンプルは、通常、200mlのサンプル中で10〜30のオタマジャクシからなる。解析によって平均強度及び標準誤差が得られ、それらは、遺伝子組み換えのアフリカツメガエルの場合、サンプル中の汚染物質のレベルを表す。
【0037】
測定装置508は、FFCに限定されず、例えば、水性サンプル中の大型粒子の蛍光を測定する任意のシステムとすることができる。
【0038】
図6Bは、サンプル導入ユニットと共にサンプル容器を示す本発明の実施形態の概略図で、オタマジャクシを含むサンプルをサンプル容器中に導入するために、「サンプル導入ユニット」(この場合じょうご606として示す)が取り付けられたサンプル容器402を含む図6Aに示した実施形態の概略図である。
【0039】
このユニットは、サンプル導入バルブ604を有し、これは、一方向に開くとオタマジャクシをサンプル容器402中に導入し、他方向に開くと空気がサンプル導入ユニット/チャンバを通って漏れないように保ちながら空気602をサンプル容器402中に送り込むことを可能にする。
【0040】
図7A乃至図7Cは、本発明において使用することが可能な容器構成を明らかにする図である。これらのサンプル容器は、容器中の最下位点に定着した生物を収容する。図7Aは、その最下位の隅部に到達するために湾曲パイプ708を含む傾けられた容器702を示す図である。図7Bは、くぼみのある容器704を示す図である。図7Cは、先細の容器706を示す図である。
【0041】
多くのアフリカツメガエルのオタマジャクシは、サンプル容器中の最下位点に定着することを好む。オタマジャクシが容器中の底に定着したとき、それらが長いチューブの入力端部の近くに定着するように、サンプル容器の底部を狭める、又は先細にすることは、速くて能率的である。これによって、オタマジャクシが流れ中に飲み込まれることになって長いチューブ中に流されることが容易になる。長いチューブの端部で速度を増加させることも、その直径を端部において先細に狭めることによって可能である(図示せず)。
【0042】
図8は、本発明によるポンプ装置の第2の実施形態を明らかにする概略図である。図8の実施形態は、再循環オタマジャクシポンプ(RTP(Recirculating Tadpole Pump)800といわれ、オタマジャクシを送るために重力だけを使用し、同じサンプル102を何回か測定するための方法を含んでいる。
【0043】
RTP800は、オタマジャクシのそれぞれについてオタマジャクシの蛍光を測定するために、フローセル104を通過させて一定サンプル102(通常、幅が約4mmの、ほぼ40のオタマジャクシを含む0.5から1.0リットル)を送るように設計された、重力によって搬送するポンプシステム(pumping system)である。測定中、オタマジャクシは、第2のシリンダ826中のより高いレベル836と第1のシリンダ806中の液体高さの間の液体の高度差を使用して、第2のシリンダ826からフローセルを介して注ぎ込まれる(pump)。
【0044】
オタマジャクシは、第1のシリンダ806中の液体高さと第2のシリンダ826中の下側液体の高さレベル838の間の水の高度差を使用して、ドレイン812を介して経路816に従って第1のシリンダ806から第2のシリンダ826に送り戻される(最初の導入後、又は各測定後)。
【0045】
第1及び第2のシリンダ806,826の底部は、先細にされて、オタマジャクシがそれぞれの基部中の流出口中に流入するように、促進される。さらに、シリンダの壁に留まろうとするオタマジャクシの自然な性癖に打ち勝つために、洗浄/攪拌水がバルブ810,828中にパイプで送り込まれてシリンダ中に循環が導入されて、オタマジャクシがそこから流されることになる。洗浄水は、シリンダが空になった後、シリンダ中に残ったいずれのオタマジャクシも洗い流すことにも使用することができる。ポンプの速度は、流れに逆らって泳ごうとするオタマジャクシの自然な性癖に打ち勝つために、約150ml/分より高く維持されることが好ましい。
【0046】
「レベラ(leveler)」808,830,832は、シリンダ中の開口部であり、「開口時」、それらそれぞれのシリンダ中の液体レベルに上限値を与える。レベラ830及び808は、レベル維持のための流出であり、水レベルが、決してそれらの高さを超えるはずがないので、バルブは必要でない。レベラ808の口にある間仕切り846が、その点でシステムから出ないようにオタマジャクシを引き留める。レベラ832は、レベルを維持するためのバルブであり、サンプルを第2のシリンダ826に戻すとき、第2のシリンダ826中の液体レベルをレベル838まで低下させるために使用される。間仕切り842が第2のシリンダ826を横切って延在し、その下に、したがってレベラ832から離してオタマジャクシを引き留めておくので、間仕切りは必要でない。さらに、間仕切り842は、オタマジャクシを含むサンプル容積840を小さく保つために使用され、したがって、オタマジャクシは、ドレイン820近くにあり、流れによってフローセル104中に容易に押し流される。
【0047】
実験の終わりに、サンプル102は、フローセル104中に流入する代わりに、ドレインバルブ824を使用して第2のシリンダ826から下方にドレインチューブ822でサンプルを迂回させることによって、システム800から除去することができる。第2のシリンダ826中の液体レベルをレベル836まで上昇させて重力圧を生成し、それによってサンプルにフローセル104を通過させ、そして洗浄/攪拌/補充の両方のために、水槽ポンプ(図示せず)を使用して水をシステム中に送り込んでもよい。
【0048】
以下に測定サイクルについて詳細に説明する。
1.例えば、手動によって導入じょうご802を通して第1のシリンダ806中に、サンプル804を導入する。
【0049】
2.バルブ834を開き、第2のシリンダ826中で間仕切り842の下に、サンプルを導入する。レベラバルブ832によって水レベルが下側レベル838に、すなわち、第1のシリンダ806中の水レベルより下に保持されて、第1のシリンダ806から第2のシリンダ826への流れが維持されている。レベラバルブ832は、このステップ中開けたままにしておいて、第2のシリンダ826中の液体レベルを十分低く保ってもよい。オタマジャクシは、間仕切り842によって第2のシリンダ826中に保たれる。第1のシリンダ806中に残されたすべてのサンプルを洗い流すために、バルブ810を介して少量の洗浄水を加える。
【0050】
3.バルブ832及び834を閉じる。
【0051】
4.洗浄/攪拌/補充水バルブ828を開き、水を第2のシリンダ826中に送り込むことによって(ポンプは図示せず)、第2のシリンダ826に水を補充する。第2のシリンダ826中の液体レベルがレベル836に一度達すると、測定を開始するためにバルブ814を開き、そうするとサンプルがフローセル104を貫流して、フローセル1047から第1のシリンダ806へ経路818をたどって進む。上側レベルを維持するための流出830が水頭を一定レベル836に維持して、フローセル104を通る流速を一定に保つ。
【0052】
5.オタマジャクシのすべてが容器を出てしまうまで搬送が継続される。
【0053】
6.ここで、オタマジャクシは第1のシリンダ806にあり、ステップ1に戻ってシリンダAへ再導入できる状態になる。
【0054】
バルブのすべては、現在手動で操作されているが、容易にコンピュータによって操作することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 サイトメータ
102 サンプル
104 フローセル
106 デジタルカメラ
108 光学系
110 焦点面
112 レーザ
114 フィルタ
116 ドレインチューブ
118 窓
120 廃液
202 流入チューブ
206 廃液流出配管
208 ポンプからの配管
210 流入穴
214 流出穴
216 ガスケット
218 ねじ式キャップ
300 LEDサイトメータ
302 LED
402 サンプル容器
404 空気パイプ
406 サンプルパイプ
408 湾曲端部
410 バリアック(可変変圧器)
412 空気ポンプ
414 サンプル容器への配管
416 フローセルへの配管
418 観察領域
420 廃棄物容器への配管
422 廃棄物容器
502 バルブ
504、506 瓶
508 測定装置
602 送り込まれる空気
604 サンプル導入バルブ
606 サンプル導入じょうご
702、704、706 容器構成
708 湾曲パイプ
800 重力による実施形態
802 サンプル導入じょうご
804 サンプル
806 第1のシリンダ
808 第1のシリンダレベルを維持するための流出
810 第1のシリンダ水の補充バルブ
812 第1のシリンダから第2のシリンダへのドレイン
814 フローセルから第1のシリンダへのバルブ
816 第1のシリンダから第2のシリンダへのサンプル経路
818 フローセルから第1のシリンダへのサンプル経路
820 第2のシリンダからフローセルへのドレイン
822 ドレインチューブ
824 ドレインバルブ
826 第2のシリンダ
828 第2のシリンダ水の補充バルブ
830 第2のシリンダレベルを維持するための流出
832 第2のシリンダレベルを維持するためのバルブ
834 第2のシリンダのサンプル入力バルブ
836、838 第2のシリンダの補充レベル
840 第2のシリンダのサンプル容積
842 第2のシリンダの間仕切り
846 第1のシリンダの間仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを介して多細胞生物を通過させることなく、フローセル(104)を介して前記多細胞生物を含む液体サンプル(102,804)をサンプル容器(402,826)から廃棄物容器(806,422)に送るための蛍光測定装置であって、
前記サンプル(102,804)を含むサンプル容器(402,826)と、
該サンプル容器(402,826)と前記廃棄物容器(806,422)の間に圧力差を選択的に加える供給手段と、
前記サンプル容器を前記フローセル(104)に結合するための第1の流出口(406,416,820)と、
廃棄物容器(806,422)と、
前記フローセルを前記廃棄物容器に結合するための第2の流出口(420,818,814)とを備え、
前記供給手段により圧力差が加えられたとき、前記サンプルの部分が、前記サンプル容器から前記第1の流出口と前記フローセルと前記第2の流出口を通って前記廃棄物容器に流れ、
前記サンプルの部分が、前記ポンプを介して通過しないことを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
前記多細胞生物は、長さが0.1mmから3cmであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項3】
前記多細胞生物は、アフリカツメガエルのオタマジャクシであることを特徴とする請求項2に記載の蛍光測定装置。
【請求項4】
前記圧力差を選択的に加える供給手段は、前記サンプル容器に結合された、前記サンプル容器中の圧力を上昇させるための空気ポンプ(412)であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項5】
前記圧力差を選択的に加える供給手段は、重力を使用することを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項6】
前記圧力差を選択的に加える供給手段は、前記サンプル容器中の液体レベルを第1のレベル(836)まで上昇させるための手段(828,832,814)を備え、
前記第1のレベルは、前記廃棄物容器中の液体レベルより高いことを特徴とする請求項5に記載の蛍光測定装置。
【請求項7】
前記廃棄物容器から前記サンプル容器に前記サンプルの部分を送り戻すための手段をさらに備え、
前記サンプル容器中の液体レベルを前記廃棄物容器中の液体レベルより低く第2のレベル(838)まで低下させる手段(832)と、前記サンプルの部分が前記廃棄物容器から前記サンプル容器に流れることを可能にするためのバルブ(834)とを備えていることを特徴とする請求項6に記載の蛍光測定装置。
【請求項8】
前記サンプル容器中に、前記第2のレベルの下に(840)前記多細胞生物を収容するように構成された間仕切り(842)をさらに備えていることを特徴とする請求項7に記載の蛍光測定装置。
【請求項9】
前記サンプル容器は、前記多細胞生物がその中に沈むことができる、前記サンプル容器の横断面より狭い下側領域を有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項10】
前記第1の流出口は、前記多細胞生物を吸い出すための前記下側領域中に延在したパイプ(406,708)を備えていることを特徴とする請求項9に記載の蛍光測定装置。
【請求項11】
前記パイプは、前記下側領域中に延在するように湾曲した端部(408,708)を備えていることを特徴とする請求項10に記載の蛍光測定装置。
【請求項12】
前記圧力差は、約140ml/分のサンプル流量を達成するのに十分であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項13】
前記サンプル内の光度を測定するための検出要素(100,300,508)を備え、前記多細胞生物が流出した後に、測定された光度に従って前記多細胞生物を仕分けするための機構(508,502)をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項14】
多細胞生物の蛍光測定方法であって、
サンプル容器(402、826)内に前記多細胞生物を含む液体サンプル(102,804)を配置するステップと、
廃棄物容器(806,422)を提供するステップと、
前記サンプル容器と前記廃棄物容器の間の流れの結合中に蛍光測定装置(104)を配置するステップと、
前記サンプルの部分が前記サンプル容器から前記蛍光測定装置を介して通過して前記廃棄物容器中に流れるように、前記サンプル容器と前記廃棄物容器の間に圧力差を選択的に加えるステップとを有し、
ポンプを介して前記サンプルの部分を通過させるステップを含まないことを特徴とする蛍光測定方法。
【請求項15】
前記圧力差を加えるステップは、前記サンプル容器中に空気を送り込む(412)ステップを有することを特徴とする請求項14に記載の蛍光測定方法。
【請求項16】
前記圧力差を加えるステップは、前記廃棄物容器中の液体レベルより高く前記サンプル容器中の液体レベル(836)を上昇させる(828,832,814)ステップを有することを特徴とする請求項14に記載の蛍光測定方法。
【請求項17】
前記廃棄物容器内の液体レベルより下に(838)前記サンプル容器内の液体レベルを低下させることによって(832)、前記サンプル容器に前記サンプルを移動させて戻すステップをさらに有することを特徴とする請求項16に記載の蛍光測定方法。
【請求項18】
前記多細胞生物は、アフリカツメガエルのオタマジャクシであることを特徴とする請求項14に記載の蛍光測定方法。
【請求項19】
前記蛍光測定装置中の前記サンプル内の光を検出する(100,300,508)ステップと、検出された光に従って前記多細胞生物を仕分けする(508,502)ステップとをさらに有することを特徴とする請求項14に記載の蛍光測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−509610(P2010−509610A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537168(P2009−537168)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/023729
【国際公開番号】WO2008/105855
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508206955)ユニバーシティ オブ ワイオミング (2)
【Fターム(参考)】