説明

多結晶シリコンの製造方法

【課題】多結晶シリコンの回収時間が短い多結晶シリコンの製造方法を提供すること。
【解決手段】反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させて、反応炉内に多結晶シリコンを生成させる第一工程と、907〜1200℃で、該反応炉内に、四塩化珪素のみを供給するか、又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、該第一工程でのモル比よりも小さくなる供給量で、四塩化珪素及び亜鉛を供給する第二工程と、を有することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの製造方法及びそれに用いられる多結晶シリコンの製造装置に関するものであり、更に詳しくは、太陽電池用多結晶シリコンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の太陽電池の普及に伴い、多結晶シリコンの需要は急増している。従来、高純度の多結晶シリコンを製造する方法としてシーメンス法(Siemens Method)が挙げられる。シーメンス法はトリクロロシラン(SiHCl)を水素(H)によって還元する方法である。シーメンス法により製造される多結晶シリコンは純度がイレブン−ナイン(11−N)と非常に高く、半導体用シリコンとして使用されている。太陽電池用シリコンもこの半導体用シリコンとして製造された製品の一部を使用してきたが、11−Nほどの純度を必要としない点とシーメンス法が多くの電力を消費する点から、太陽電池用シリコンに適した安価な製造方法が求められている。
【0003】
このような中、太陽電池用シリコンの製造方法として、亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法が提案されており、その反応は下記式(1):
SiCl + 2Zn = Si + 2ZnCl (1)
により示すものである。
【0004】
亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法では、製造される多結晶シリコンの純度はシックス−ナイン(6−N)程度であり、半導体用シリコンに比べると純度は低いものの、シーメンス法と比較して5倍程度にも達する程反応効率に優れ且つ製造コストも有利な製造方法である。
【0005】
多結晶シリコンの製造方法としては、例えば、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出し、前記混合物を分離容器に収容し、混合物中の塩化亜鉛を分離してのち、多結晶シリコンを分離容器から回収することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法(特許文献1)や、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出してのち、前記混合物中の塩化亜鉛を分離して、多結晶シリコンを回収する多結晶シリコンの製造方法であって、分離された塩化亜鉛を電気分解して金属亜鉛と塩素を回収し、回収された金属亜鉛を再び前記四塩化珪素の還元剤として用いるとともに、回収された塩素を水素と合成させて塩化水素とし、前記四塩化珪素を生成するための金属シリコンの塩化処理に用いることを特徴とする多結晶シリコンの製造方法(特許文献2)が報告されている。
【0006】
特許文献1および2はいずれも液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元している。しかし、溶融亜鉛を用いる方法では、多結晶シリコンが粉状となり、後処理の煩雑さや不純物処理の難しさ及びキャスティングの困難さのために高コストになるという問題がある。
【0007】
そこで、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を用いて亜鉛還元法を行うシリコンの製造方法としては、例えば、鉛直方向に立設された反応管に加熱しながら反応管の側周面に設けられた亜鉛蒸気供給口より亜鉛蒸気を供給するとともに、四塩化珪素蒸気を前記亜鉛蒸気供給口よりも下方から反応管の中心軸に沿って上方に向かって吐出させて、反応管内の温度分布を側周面側よりも中心軸側のほうが低くなるようにしてシリコン粉を製造する方法が報告されている(特許文献3)。
【0008】
また、反応容器内に珪素化合物供給配管と亜鉛供給配管を有し、反応容器内の整流部材を通してシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するシリコン製造装置も報告されている(特許文献4)。
【0009】
特許文献3、4はともにシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するもので、得られるシリコンはシリコン粉である。ところが、粉状のシリコンはインゴット製造のために溶融する際、非常に熔解し難いという問題に加え、単位重量当たりの表面積が大きいことから純度が低くなり利用価値が乏しいという問題があった。
【0010】
このため、得られるシリコンの形状としてはある程度の大きさを有するものが好ましい。針状又はフレーク状のシリコンを製造する方法としては、例えば、高純度四塩化珪素及び高純度亜鉛をそれぞれ気化させて、ガス化雰囲気において反応を行うことにより、製品として取り出すシリコンの多くが針状又はフレーク状である太陽電池用多結晶シリコンの製造方法が報告されている(特許文献5)。
【0011】
特許文献5では、反応炉の内部に通電可能なタンタル芯またはシリコン芯を有し、この芯棒(析出棒)の温度を反応温度よりも上げることで反応炉よりも芯棒に針状、フレーク状のシリコンを析出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−011925号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−092130号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2009−107896号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2009−167022号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2004−018370号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献5のように、反応炉内に針状やフレーク状のシリコンの結晶させる多結晶シリコン製造方法の場合、多結晶シリコンは、反応炉の内壁や析出棒に付着しているため、四塩化珪素と亜鉛との反応を終了させた後、反応炉を冷却し、次いで、反応炉の内壁に付着したシリコンを掻き出し、析出棒に析出した多結晶シリコンを析出棒ごと反応炉から取り出すことにより、反応炉内に生成した多結晶シリコンを反応炉外へ取り出してから、反応炉内の温度を昇温させて、四塩化珪素と亜鉛との反応を再開する必要があった。
【0014】
ところが、このような製造方法では、反応炉の内壁に付着した多結晶シリコンを剥離するのに時間がかかることから、反応の停止時間が長くなってしまうため、また、反応炉内から取り出した析出棒から、多結晶シリコンを剥離するのにも、長時間を要するため、従来の多結晶シリコン製造方法には、多結晶シリコンの製造効率が悪くなるという問題があった。
【0015】
そこで、本発明の目的は、多結晶シリコンの回収時間を短くすることができる多結晶シリコンの製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、製造効率が高い多結晶シリコンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛とを反応させて、多結晶シリコンを生成させる工程を行った後に、四塩化珪素のみを、又は多結晶シリコンの生成工程での四塩化珪素に対する亜鉛のモル比より小さいモル比で、四塩化珪素及び亜鉛を、反応炉内に供給することにより、反応炉の内壁及び析出棒に付着した多結晶シリコンを、反応炉の内壁及び析出棒から容易に剥離させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させて、反応炉内に多結晶シリコンを生成させる第一工程と、
907〜1200℃で、該反応炉内に、四塩化珪素のみを供給するか、又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、該第一工程でのモル比よりも小さくなる供給量で、四塩化珪素及び亜鉛を供給する第二工程と、
を有することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多結晶シリコンの回収時間が短い多結晶シリコンの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、製造効率が高い多結晶シリコンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の多結晶シリコンの製造方法で用いられる反応炉の形態例の模式的な端面図である。
【図2】図1中の反応炉の側壁部と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図である。
【図3】反応炉内で生成した多結晶シリコンが剥離する様子を示す模式的な端面図である。
【図4】反応炉内で生成した多結晶シリコンが剥離する様子を示す模式的な端面図である。
【図5】反応炉の側壁部と炭化珪素棒の配置を示す模式的な端面図である。
【図6】四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(B)を示す模式図である。
【図7】四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)を示す模式図である。
【図8】本発明の多結晶シリコンの製造方法に用いられる反応炉の形態例の模式的な端面図である。
【図9】図8中の反応炉の側壁部と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図である。
【図10】本発明の多結晶シリコンの製造方法に用いられる反応炉のうち、反応炉内に内挿容器内が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の多結晶シリコンの製造方法について、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の多結晶シリコンの製造方法に用いられる反応炉の形態例の模式的な端面図である。図2は、図1中の反応炉の側壁部(反応炉)と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図であり、x−x線で水平方向に切ったときの端面図である。図3及び図4は、反応炉内で生成した多結晶シリコンが剥離する様子を示す模式的な端面図である。なお、図2では、説明の都合上、図示したもの以外の記載を省略した。また、図1〜図4では、析出棒として炭化珪素棒を用いる場合の形態例を代表例として記載したが、本発明では、析出棒は炭化珪素棒に限定されるものではない。
【0021】
図1中、反応炉20は、縦長の円筒形状を有する側壁部31と、側壁部31の上下を塞ぐ蓋部32と、反応炉20を加熱するためのヒーター5と、からなる。反応炉20の上部には、四塩化珪素蒸気9の供給管7及び亜鉛蒸気10の供給管8が付設されており、反応炉20の下部には、排出ガス11を排出するための排出管6が付設されている。反応炉20内には、固定部材4を介して4本の炭化珪素棒(析出棒)3が設置されている。また、固定部材4には、四塩化珪素蒸気の供給空間を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13と、亜鉛蒸気の供給空間を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14と、が固定されている。四塩化珪素蒸気の供給管7は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13に繋がっており、亜鉛蒸気の供給管8は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14に繋がっている。そして、固定部材4が、側壁部31の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、炭化珪素棒3は、反応炉20の内部に下向きに突き出るように設置される。また、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13と、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14とが、反応炉20の上部に設置されている。なお、側壁部31と蓋部32とは、例えば、それぞれのつば部の間にシール材を挟み込み、つば部同士をボルト締めすること等により、密閉されている。
【0022】
四塩化珪素蒸気の供給管7の一端は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13に繋がっており、他端は、四塩化珪素の蒸発器に繋がっている。また、亜鉛蒸気の供給管8の一端は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14に繋がっており、他端は、亜鉛の蒸発器に繋がっている。また、排出管6は、排出ガス11、すなわち、四塩化珪素と亜鉛が反応する際に生成する塩化亜鉛ガス及び未反応ガスである四塩化珪蒸気及び亜鉛蒸気を回収するための回収装置に繋がっている。
【0023】
図1及び図2に示すように、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13は、円筒形状の区画壁131と円形の上側部材とからなる。また、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14は、円筒形状の内側の区画壁141と、円筒形状の外側の区画壁142と、ドーナツ形状の上側部材とからなる。そして、区画壁131と、区画壁141と、区画壁142とは、反応炉の中心と同心円状に設置されている。
【0024】
下側の蓋部32の上には、剥離して落下してくる多結晶シリコンを受けるための反応炉内シリコン受け部46が設置されている。
【0025】
図1に示す反応炉を用いる本発明の多結晶シリコンの製造方法について、図1〜図4を参照して説明する。本発明の多結晶シリコンの製造方法では、先ず、図1に示す反応炉20内で、四塩化珪素と亜鉛とを反応させて、多結晶シリコンを生成させる工程を行う。先ず、ヒーター5により反応炉20内を加熱しておき、次いで、四塩化珪素及び亜鉛をそれぞれの蒸発器により気化させて、四塩化珪素蒸気9を四塩化珪素蒸気の供給管7から、亜鉛蒸気10を亜鉛蒸気の供給管8から、反応炉20内に供給しつつ、排出ガス11を該排出管6から、反応炉20の外へ排出する。このとき、反応炉20内では、四塩化珪素と亜鉛が反応して、シリコンが生成するが、反応炉20内には、炭化珪素棒(析出棒)3が設置されているので、図3に示すように、生成したシリコン(多結晶シリコン1)が、炭化珪素棒(析出棒)3に析出する。そして、反応炉20の上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給し、反応炉20の下部から排出ガス11を排出しているので、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、反応炉20の上部から下向きに移動しており、その流れに沿うように炭化珪素棒(析出棒)3が存在しているので、炭化珪素棒(析出棒)3を覆うように、シリコンの結晶が成長する。また、四塩化珪素と亜鉛の反応により、塩化亜鉛も生成するが、塩化亜鉛ガスは、未反応の四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気と共に、排出ガス11として、排出管6から外へ排出される。
【0026】
四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材13に先ず供給されるので、区画部材13により区画されている四塩化珪素蒸気の供給空間132内に拡散する。四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間132に拡散後、四塩化珪素蒸気の供給口133から、反応炉20内に供給される。また、亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材14に先ず供給されるので、区画部材14により区画されている亜鉛蒸気の供給空間143内に拡散する。亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間143に拡散後、亜鉛蒸気の供給口144から、反応炉20内に供給される。なお、反応炉20では、四塩化珪素蒸気の供給口131の形状は円形であり、また、亜鉛蒸気の供給口144の形状はドーナツ形状である。
【0027】
そして、所定時間、四塩化珪素と亜鉛との反応を、反応炉20内で行うことにより、炭化珪素棒(析出棒)3に多結晶シリコン1を析出させる。
【0028】
次いで、反応炉20内の温度907〜1200℃で、反応炉20内に、四塩化珪素蒸気9のみを供給するか、又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、第一工程でのモル比より小さくなるように、四塩化珪素蒸気9及び亜鉛蒸気10を供給する工程を行う。
【0029】
そして、所定時間、反応炉20内に、四塩化珪素蒸気9のみ、又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、第一工程でのモル比より小さくなるように、四塩化珪素蒸気9及び亜鉛蒸気10を供給することで、図4に示すように、多結晶シリコン1が炭化珪素棒(析出棒)3から剥離して、反応炉20の底部の反応炉内シリコン受け部46に落下する。
【0030】
次いで、四塩化珪素蒸気9の供給、又は四塩化珪素蒸気9及び亜鉛蒸気10の供給を止め、不活性ガスの供給管(図示しない。)から、反応炉20内に不活性ガスを供給して、反応炉20内を不活性ガスで置換した後、反応炉20を冷却する。冷却後、蓋部32を開けて、反応炉20内で生成した多結晶シリコン1を回収する。なお、図3及び図4では、作図の都合上、多結晶シリコン1を塊として記載しているが、実際は、棒状、粒状若しくは板状、又は棒状、粒状若しくは板状のものが複数接合した形状である。
【0031】
すなわち、本発明の多結晶シリコンの製造方法は、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させて、反応炉内に多結晶シリコンを生成させる第一工程と、
907〜1200℃で、該反応炉内に、四塩化珪素のみを供給するか、又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、該第一工程でのモル比よりも小さくなる供給量で、四塩化珪素及び亜鉛を供給する第二工程と、
を有することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法である。
【0032】
本発明の多結晶シリコンの製造方法に係る第一工程は、反応炉内で、四塩化珪素と亜鉛を反応させて、反応炉内で多結晶シリコンを生成させる工程である。
【0033】
第一工程で、四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを生成させる方法としては、特に制限されず、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンの結晶生成させる方法であればよい。第一工程において、四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを生成させる方法としては、縦型の反応炉の上部から、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給し、縦型の反応炉の下部から、排出ガスを排出することにより、反応炉内で、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を接触させて、反応させ、反応炉内に多結晶シリコンを生成させる方法(以下、第一工程の形態Aとも記載する。)が、多結晶シリコンの収率が高く且つ反応炉からの多結晶シリコンの取り出しが容易になる点で、好ましい。なお、縦型の反応炉とは、反応炉の上部から反応炉内に供給された四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉の上部から下部に向かって下向きに移動しながら反応するような形状の反応炉を指す。言い換えると、縦型の反応炉とは、原料及び排出ガスが、反応炉の上部から下部に向かって流れる反応炉である。
【0034】
本発明の多結晶シリコンの製造方法では、反応炉内は1,000℃程度の温度となるため、反応炉の材質としては、透明石英、不透明石英、焼結石英などの石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられ、強度面からは、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、また、温度勾配に起因するひび割れが起き難い点からは、石英、窒化珪素が好ましい。また、反応炉の構造等によっては、反応時の加熱温度に耐えられるのであれば、反応炉の材質としては、特に制限されない。また、反応炉の側壁部と蓋部が、異なる材質であってもよい。
【0035】
反応炉の大きさは、特に限定されないが、四塩化珪素及び亜鉛の供給条件によって、適宜選択される。第一工程の形態Aに係る縦型の反応炉の場合、好ましくは、反応炉の縦方向の長さは、1,000〜6,000mmであり、円筒形状の場合、直径が200〜2,000mmである。
【0036】
反応炉には、四塩化珪素及び亜鉛の供給手段が付設されている。第一工程の形態Aに係る縦型の反応炉では、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段が、反応炉の上部に付設され、排出管が、反応炉の下部に付設される。そして、第一工程の形態Aに係る反応炉では、反応炉内で原料蒸気の下方向の流れが形成され、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛の反応を起こさせることができるような位置(上下方向の位置)に、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段と、排出管とが付設される。
【0037】
反応炉の側壁の周囲には、ヒーターが設置される。ヒーターとしては、電気ヒーターが好ましい。
【0038】
四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応では、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉内で激しく撹拌されると、直径が3μm以下の細粒状の多結晶シリコンが生成するが、このような細粒状の多結晶シリコンは、充填密度が低く溶融に時間がかかる。一方、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気とが、反応炉内で穏やかに接触すると、好ましくは線速5cm/秒以下の速度で接触すると、径が大きい棒状、粒状若しくは板状の多結晶シリコン、又は径が大きい棒状、粒状若しくは板状の多結晶シリコンが複数付着した形状の多結晶シリコンが生成するが、このような大きさが大きい多結晶シリコンは、細粒状の多結晶シリコンに比べ、溶融し易く、溶融時間が短くなる。そのため、第一工程、特に、第一工程の形態Aでは、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉内で激しく撹拌されないような条件、すなわち、直径が3μm以下の細粒状の多結晶シリコンが生成し難い条件で、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を、反応炉に供給することが好ましい。つまり、第一工程、特に、第一工程の形態Aでは、径が大きい棒状、粒状若しくは板状の多結晶シリコンが複数付着した形状の多結晶シリコンが生成し易い原料蒸気の供給条件で、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を、反応炉に供給する。このような原料蒸気の供給条件は、反応炉の大きさ、析出棒の設置位置又は設置本数等により、適宜選択される。
【0039】
第一工程、特に、第一工程の形態Aにおいて、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の供給量比率(モル比)は、四塩化珪素蒸気:亜鉛蒸気=0.7:2〜1.3:2であり、好ましくは0.8:2〜1.2:2であり、特に好ましくは0.9:2〜1.1:2である。また、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、窒素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよく、その場合、四塩化珪素蒸気の希釈率は、体積割合((四塩化珪素蒸気+不活性ガス)/四塩化珪素蒸気)で、好ましくは1.01〜1.5、特に好ましくは1.02〜1.3であり、亜鉛蒸気の希釈率は、体積割合((亜鉛蒸気+不活性ガス)/亜鉛蒸気)で、好ましくは1.005〜1.3、特に好ましくは1.01〜1.2である。
【0040】
亜鉛の沸点は、「化学便覧」(日本化学会編)によると907℃であるため、第一工程では、反応炉内の温度が、亜鉛の沸点である907℃以上になるように、反応炉を加熱する。反応炉内の温度は、907〜1,200℃、好ましくは930〜1,100℃である。また、反応炉内の圧力は、好ましくは0〜700kPaG、特に好ましくは0〜500kPaGである。上記範囲に反応条件を設定することで、反応炉内に安定的に多結晶シリコンを析出させることが可能となる。
【0041】
第一工程では、特に、第一工程の形態Aでは、反応炉内に析出棒を設置することが好ましい。反応炉内に、析出棒を設置することにより、多結晶シリコンを析出棒に選択的に析出させることができ、反応炉の壁面への多結晶シリコンの付着を低減できる。
【0042】
析出棒としては、例えば、炭化珪素棒、窒化珪素棒、タンタル棒、シリコン棒が挙げられる。特に、強度面や、不純物の混入による多結晶シリコンへの影響が少ないという点で、析出棒としては、炭化珪素棒が好ましい。析出棒は、反応炉内に設置される。析出棒の形状としては、角柱状、円柱状が好ましく、特に、円柱状が好ましい。析出棒の形状が円柱状の場合、析出棒の直径は、強度や加工面から、1〜20cmが好ましく、2〜10cmが特に好ましい。また、固定部材4の下側から排出管6の上側の間に存在する該析出棒の長さは、固定部材4の下側から該排出管6の上側までの縦方向の長さに対し5〜120%が好ましく、20〜100%が特に好ましく、40〜90%が更に好ましい。
【0043】
析出棒のうち炭化珪素棒は、炭化珪素の成形体であるが、通常、炭化珪素の成形体は、多数の細孔を有する多孔質体である。そして、炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素にシリコンが含浸されているシリコン含浸炭化珪素棒であることが、含浸されているシリコンが、反応により生成する多結晶シリコンの結晶の種となり、炭化珪素棒への多結晶シリコンの析出を促進できる点で好ましい。シリコン含浸炭化珪素棒では、炭化珪素:含浸シリコンの質量比が、80:20〜95:5であることが好ましく、80:20〜90:10が特に好ましい。シリコン含浸炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素棒を、溶融シリコン中に浸漬し、溶融シリコンを炭化珪素の孔に含浸させることにより得られる。
【0044】
また、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒であっても、反応炉内に設置され、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応が行われた場合、反応の初期の段階では、炭化珪素棒の外側近傍の多孔質構造内で、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気との接触が起こり、そこでシリコンが生成するので、炭化珪素棒の外側近傍は、孔内にシリコンが含浸されているのと同様な状態になる。そのため、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒でもよく、特に、炭化珪素棒が繰り返し使用される場合は、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒は、繰り返し使用により、シリコンが含浸されている多孔質の炭化珪素棒と同様な状態になる。
【0045】
析出棒の設置本数は、1本又は2本以上である。また、析出棒の設置位置は、特に限定されない。例えば、図5に示すように、炭化珪素棒(析出棒)が4本(A)又は3本(B)の場合、炭化珪素棒3(析出棒)は、側壁部(反応炉)31の中心を中心とする円19上に、等間隔に設置されることが好ましい。なお、炭化珪素棒の設置本数及び設置位置は、原料蒸気の供給条件等の反応条件、反応炉の大きさ等により、多結晶シリコンが効率よく析出するように、適宜選択される。
【0046】
析出棒の設置方法であるが、図1では、炭化珪素棒(析出棒)3が固定部材4に固定され、固定部材4が、炉内壁つば部12に引っ掛けられることにより、炭化珪素棒(析出棒)が、反応炉内の上部から下向きに設置される旨を記載したが、これに限定されるものではない。
【0047】
また、炭化珪素棒(析出棒)の温度を、反応炉内の温度よりも高温に設定するために、炭化珪素棒(析出棒)の内部には、加熱用のヒーターが装備されていてもよい。例えば、反応炉内の温度(反応炉の側壁温度)を930℃とした場合、炭化珪素棒(析出棒)を1,000℃とすることで、炭化珪素棒(析出棒)により選択的に多結晶シリコンを析出させることが可能となる。また、炭化珪素は、熱伝導率が高く輻射熱を多く受ける材質であるため、炭化珪素棒の場合、反応炉の側壁からの輻射熱を多く受けることになり、炭化珪素棒を加熱しなくてもある程度選択的に炭化珪素棒に多結晶シリコンを析出させることが可能である。
【0048】
第一工程では、窒素ガス等の不活性ガスの供給管を反応炉に付設して、不活性ガスを反応炉内に供給することができる。不活性ガスを反応炉内への供給することにより、反応炉内に外気が侵入するのを防止することができる。
【0049】
そして、第一工程を行うことにより、反応炉内に、多結晶シリコンを生成させる。
【0050】
本発明の多結晶シリコンの製造方法に係る第二工程は、多結晶シリコンを生成させた反応炉内に、907〜1200℃で、四塩化珪素蒸気のみを供給するか又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、第一工程でのモル比よりも小さくなるように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給する工程である。
【0051】
第二工程では、反応炉内の温度907〜1200℃で、好ましくは930〜1100℃で、反応炉内に、四塩化珪素を供給するか、又は第一工程での四塩化珪素に対する亜鉛のモル比より、四塩化珪素に対する亜鉛のモル比を小さくして、四塩化珪素及び亜鉛を供給する。好ましくは、第二工程では、反応炉内の温度907〜1200℃で、好ましくは930〜1100℃で、反応炉内に、四塩化珪素蒸気のみを供給する。
【0052】
第二工程における四塩化珪素に対する亜鉛のモル比は、好ましくは0〜1.5、特に好ましくは0〜1であり、更に好ましくは0である。第二工程における四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、上記範囲にあることにより、反応炉の壁面及び析出棒から、多結晶シリコンが剥離し易くなる。
【0053】
第二工程において、反応炉に、四塩化珪素蒸気、又は四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給する時間は、反応炉内の温度、多結晶シリコンの生成量等により、適宜選択されるが、好ましくは10〜120分、特に好ましくは20〜60分である。
【0054】
第二工程において、反応炉への四塩化珪素の供給量は、反応炉の大きさ、多結晶シリコンの生成量等により、適宜選択されるが、好ましくは0.1〜50モル/分、特に好ましくは0.3〜40モル/分である。
【0055】
そして、第二工程を行うことにより、反応炉の壁面に付着した多結晶シリコンが、反応炉の壁面から剥離し、また、反応炉内に析出棒が設置されている場合は、析出棒に析出した多結晶シリコンが、析出棒から剥離し、また、反応炉内に内挿容器が設置されている場合は、内挿容器の壁面に付着した多結晶シリコンが、内挿容器の壁面から剥離する。
【0056】
第二工程で、上記温度範囲で、反応炉内に、四塩化珪素蒸気、又は四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給することにより、反応炉の壁面、析出棒及び内挿容器の壁面から、多結晶シリコンが剥離する理由は、反応炉の壁面、析出棒又は内挿容器の壁面との界面に存在している多結晶シリコンが、四塩化珪素と反応することにより、ガス化して消失するためではないかと推測される。
【0057】
第二工程では、窒素ガス等の不活性ガスの供給管を反応炉に付設して、不活性ガスを反応炉内に供給することができる。不活性ガスを反応炉内への供給することにより、反応炉内に外気が侵入するのを防止することができる。
【0058】
第二工程後、反応炉の壁面、析出棒及び内挿容器から剥離せずに付着したままの多結晶シリコンの量は、反応炉内に生成した多結晶シリコンに対して0質量%であることが最も好ましいが、一部が付着したままであっても、剥離した分の多結晶シリコンを回収するための時間を短くすることができる。第二工程後、反応炉の壁面、析出棒及び内挿容器から剥離せずに付着したままの多結晶シリコンの合計量は、回収効率の観点から、反応炉内に生成した多結晶シリコン全量に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下が特に好ましく、0質量%が最も好ましい。
【0059】
本発明の多結晶シリコンの製造方法に係る第一工程及び第二工程を行った後は、反応炉内で生成した多結晶シリコンを回収する。例えば、第二工程後、四塩化珪素蒸気の供給、又は四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を止め、反応炉内を不活性ガスで置換した後、反応炉を冷却し、次いで、反応炉を開けて、反応炉内に生成した多結晶シリコンを回収する。このとき、反応炉の壁面や析出棒に付着したまま残っている多結晶シリコンがある場合は、反応炉の壁面や析出棒から多結晶シリコンを掻き出して回収する。なお、析出棒に付着したまま残っている多結晶シリコンを、析出棒ごと反応炉外へ取り出し、析出棒から多結晶シリコンを掻き落として回収してもよい。また、内挿容器を用いる場合は、内挿容器ごと反応炉外へ取り出し、中の多結晶シリコンを回収し、内挿容器の壁面に付着したまま残っている多結晶シリコンがある場合は、内挿容器の壁面から多結晶シリコンを掻き出して回収する。なお、反応炉の壁面、析出棒又は内挿容器に付着してまま残っている多結晶シリコンの量が少量の場合は、多結晶シリコンを掻き落さずに、反応炉、析出棒又は内挿容器を、次バッチの多結晶シリコンの製造に用いてもよい。
【0060】
本発明の多結晶シリコンの製造方法では、第二工程を行うことにより、反応炉内で生成し、反応炉の壁面、析出棒又は内挿容器の壁面に析出した多結晶シリコンを、反応炉の壁面、析出棒又は内挿容器の壁面から、剥離させることができるので、本発明の多結晶シリコンの製造方法によれば、多結晶シリコンの回収時間を短くすることができる。特に、縦型の反応炉を用い、反応炉内に析出棒を設置する場合、第二工程を行うことにより、多結晶シリコンを、析出棒から剥離させて、反応炉の底部に落下させることで、反応炉の底部に多結晶シリコンが集まった状態で回収できるので、多結晶シリコンの回収が容易である。そのため、本発明の多結晶シリコンの製造方法では、反応炉の壁面、析出棒又は内挿容器の壁面からの多結晶シリコンを剥離させる作業が、不要になる又は軽減されるので、製造効率が高くなる。
【0061】
また、本発明の多結晶シリコンの製造方法では、第二工程で、四塩化珪素のみ、又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、第一工程でのモル比よりも小さいモル比となるように、四塩化珪素及び亜鉛を供給しているので、第一工程のときに、多結晶シリコンの表面に残存した亜鉛が、第二工程で消費されるので、多結晶シリコン中の亜鉛の含有量を低減することができる。
【0062】
また、本発明の多結晶シリコンの製造方法では、第二工程を行うことにより、排出管内に析出した多結晶シリコンの除去を行うことが容易になる。
【0063】
次に、本発明の多結晶シリコンの製造方法で用いられる縦型の反応炉の形態を説明する。縦型の反応炉の第1の形態は、反応炉内に複数の析出棒が設置されており、反応炉の上部に各析出棒に対して反応炉の中心側から四塩化珪素蒸気を供給する四塩化珪素蒸気供給手段及び各析出棒に対して側壁側から亜鉛蒸気を供給する亜鉛蒸気供給手段を有し、反応炉の下部に排出ガスの排出管を有する反応炉である。
【0064】
縦型の反応炉の第1の形態としては、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段として、以下に示す四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(A)、(B)又は(C)などを有する反応炉が挙げられる。
【0065】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(A)は、例えば、図1及び図2に示すような、四塩化珪素蒸気の供給空間132を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁131と、四塩化珪素蒸気の供給空間132を囲む亜鉛蒸気の供給空間143を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の内側の区画壁141及び外側の区画壁142とを有し、四塩化珪素蒸気の供給空間132が析出棒3より反応炉の中心側に形成され、亜鉛蒸気の供給空間143が析出棒3より側壁側に形成され、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁131と、亜鉛蒸気の供給空間の区画壁141及び142とが、四塩化珪素蒸気の供給空間132の中心と同心円状に設けられている四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段が挙げられる。図1及び図2に示す四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段では、四塩化珪素蒸気の供給管7も四塩化珪素蒸気供給手段の一部であり、また、亜鉛蒸気の供給管8も亜鉛蒸気供給手段の一部である。
【0066】
すなわち、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の(A)は、四塩化珪素蒸気の供給空間を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と、亜鉛蒸気の供給空間を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを有し、四塩化珪素蒸気の供給空間が析出棒より反応炉の中心側に形成され、亜鉛蒸気の供給空間が析出棒より側壁側に形成され、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と、亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とが、反応炉の中心と同心円状に設けられている四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段である。また、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(A)では、四塩化珪素蒸気の供給空間内で、四塩化珪素蒸気が均一に拡散されるように、四塩化珪素蒸気の供給管7の区画部材への接続位置や本数を適宜選択することができ、また、亜鉛蒸気の供給空間内で、亜鉛蒸気が均一に拡散されるように、亜鉛蒸気の供給管8の区画部材への接続位置や本数を適宜選択することができる。
【0067】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段(B)は、例えば、図6に示すように、固定部材4に、炭化珪素棒(析出棒)3と、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21と、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22とが固定されており、炭化珪素棒(析出棒)3より反応炉の中心側に、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21が設置され、炭化珪素棒(析出棒)3より反応炉の側壁側に、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22が設置されている四塩化珪素蒸気供給手段及び該亜鉛蒸気供給手段である。図6に示す形態例では、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21の出口の開口213が、四塩化珪素蒸気の供給口であり、また、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22の出口の開口214が、亜鉛蒸気の供給口である。なお、図示しないが、四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管21は、四塩化珪素蒸気の供給管9に、亜鉛蒸気の供給管の分岐管22は、亜鉛蒸気の供給管10に繋がっている。図6中、(A)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(B)を平面方向で切ったときの端面図であり、(B)のx−x線の端面であり、また、(B)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(B)の設置部位の近傍を垂直方向に切った端面図である。
【0068】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段(C)は、例えば、図7に示すように、四塩化珪素蒸気の供給口232が形成されている四塩化珪素蒸気の供給室23と、亜鉛蒸気の供給口243が形成されている亜鉛蒸気の供給室24と、を有し、炭化珪素棒(析出棒)3より反応炉の中心側に四塩化珪素蒸気の供給口232が形成されており、炭化珪素棒(析出棒)3より反応炉の側壁側に亜鉛蒸気の供給口243が形成されている四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段である。四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段(C)では、固定部材4に、炭化珪素棒(析出棒)3と、四塩化珪素蒸気の供給室23と、亜鉛蒸気の供給室24とが固定されている。四塩化珪素蒸気の供給管7は、四塩化珪素蒸気の供給室23に繋がっており、亜鉛蒸気の供給管8は、亜鉛蒸気の供給室24に繋がっている。そして、固定部材4が、側壁部31の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、炭化水素棒(析出棒)3は、反応炉20の内部に下向きに突き出るように設置され、また、四塩化珪素蒸気の供給室23と、亜鉛蒸気の供給室24とは、反応炉20の上部に設置される。
【0069】
四塩化珪素蒸気の供給室23は、円筒形状の側壁231と円形の上側部材及び底部材とからなる。また、亜鉛蒸気の供給室24は、円筒形状の内側の側壁241と、円筒形状の外側の側壁242と、ドーナツ形状の上側部材及び底部材とからなる。そして、側壁231と、側壁241と、側壁242とは、反応炉の中心と同心円状に設置されている。
【0070】
四塩化珪素蒸気の供給室23の側壁又は底部材には、四塩化珪素蒸気の供給口232が形成されている。また、亜鉛蒸気の供給室24の側壁又は底部材には、亜鉛蒸気の供給口243が形成されている。なお、図7中、(A)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)を平面方向で切ったときの端面図であり、(B)のx−x線の端面であり、また、(B)は、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)の設置部位の近傍を垂直方向に切った端面図である。
【0071】
すなわち、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)は、四塩化珪素蒸気の供給口が形成されている四塩化珪素蒸気の供給室と、四塩化珪素蒸気の供給室を囲むように設置され、亜鉛蒸気の供給口が形成されている亜鉛蒸気の供給室とを有し、四塩化珪素蒸気の供給口が析出棒より反応炉の中心側に形成され、亜鉛蒸気の供給口が析出棒より側壁側に形成されている四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段である。
【0072】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給室23に先ず供給されるので、四塩化珪素蒸気の供給室23内で拡散する。四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給室23に拡散後、四塩化珪素蒸気の供給口232から反応炉20内に供給される。また、同様に、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給室24に先ず供給されるので、亜鉛蒸気の供給室24内で拡散する。亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給室24に拡散後、亜鉛蒸気の供給口243から反応炉20内に供給される。
【0073】
四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、四塩化珪素蒸気9は、反応炉20への供給前に、予め、四塩化珪素蒸気の供給室23内で均一に拡散されるので、例えば、四塩化珪素蒸気の供給室23に繋がる四塩化珪素蒸気の供給管7の数が1本であったとしても、各四塩化珪素蒸気の供給口233から、均一に四塩化珪素蒸気が供給され、また、亜鉛蒸気9は、反応炉20への供給前に、予め、亜鉛蒸気の供給室24内で均一に拡散されるため、例えば、亜鉛蒸気の供給室24に繋がる亜鉛蒸気の供給管8の数が1本であったとしても、各亜鉛蒸気の供給口243から、均一に亜鉛蒸気が供給される。
【0074】
また、四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段の形態例(C)では、四塩化珪素蒸気の供給口232及び亜鉛蒸気の供給口243の形成位置及び数を適宜選択することにより、四塩化珪素蒸気の供給空間の形成位置及び亜鉛蒸気の形成位置の設計が容易となる。
【0075】
なお、本発明において、析出棒より反応炉の中心側とは、水平方向に反応炉を切ったときに、析出棒の位置よりも反応炉の中心に近い位置を指し、析出棒より側壁側とは、水平方向に反応炉を切ったときに、析出棒の位置よりも側壁に近い位置を指す。
【0076】
縦型の反応炉の第2の形態は、反応炉の中心と同心円状に四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁及び亜鉛蒸気の供給空間の区画壁が設けられており、内側が四塩化珪素蒸気の供給空間であり、外側が亜鉛蒸気の供給空間である四塩化珪素蒸気の供給手段及び亜鉛蒸気供給手段を有する反応炉である。
【0077】
縦型の反応炉の第2の形態としては、例えば、図8及び図9に示す反応炉26が挙げられる。反応炉26内には、固定部材4を介して1本の炭化珪素棒(析出棒)3が設置されている。また、固定部材4には、四塩化珪素蒸気の供給空間332を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33と、亜鉛蒸気の供給空間342を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34と、が固定されている。四塩化珪素蒸気の供給管7は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33に繋がっており、亜鉛蒸気の供給管8は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34に繋がっている。そして、固定部材4が、側壁部31の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、炭化珪素棒3は、反応炉26の内部に下向きに突き出るように設置され、また、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33と、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34とは、反応炉26の上部に設置される。なお、図8は、本発明の多結晶シリコンの製造方法に用いられる反応炉の第2の形態の形態例の模式的な断面図である。また、図9は、図8中の反応炉の側壁部(反応炉)と炭化珪素棒と四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを示す端面図であり、x−x線で水平方向に切ったときの端面図である。
【0078】
反応炉26では、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33は、円筒形状の区画壁331と円形の上側部材とからなる。また、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34は、円筒形状の区画壁341と、ドーナツ形状の上側部材とからなる。そして、区画壁331と、区画壁341とは、四塩化珪素蒸気の供給空間332の中心と同心円状に設置されている。なお、反応炉26では、四塩化珪素蒸気の供給空間側の亜鉛蒸気の供給空間は、区画壁331により区画されている。
【0079】
そして、反応炉26では、四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材33に先ず供給されるので、区画部材33により区画されている四塩化珪素蒸気の供給空間332内に拡散する。四塩化珪素蒸気9は、四塩化珪素蒸気の供給空間332に拡散後、四塩化珪素蒸気の供給口333から、反応炉26内に供給される。また、亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間の区画部材34に先ず供給されるので、区画部材34により区画されている亜鉛蒸気の供給空間342内に拡散する。亜鉛蒸気10は、亜鉛蒸気の供給空間342に拡散後、亜鉛蒸気の供給口343から、反応炉26内に供給される。このことにより、析出棒3への四塩化珪素蒸気9の供給位置が、亜鉛蒸気10の供給位置より近くなる。また、析出棒3を中心に、析出棒3を囲むように四塩化珪素蒸気が供給され、四塩化珪素蒸気を亜鉛蒸気が囲むように亜鉛蒸気が供給される。なお、反応炉26では、四塩化珪素蒸気の供給口333の形状はドーナツ形状であり、また、亜鉛蒸気の供給口343の形状はドーナツ形状である。
【0080】
すなわち、縦型の反応炉の第2の形態は、反応炉内への四塩化珪素蒸気の供給位置が、亜鉛蒸気の供給位置より、析出棒に近い反応炉である。更に、縦型の反応炉の第2の形態は、好ましくは、反応炉の中心と同心円状に四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁及び亜鉛蒸気の供給空間の区画壁が設けられており、内側が四塩化珪素蒸気の供給空間であり、外側が亜鉛蒸気の供給空間である四塩化珪素蒸気の供給手段及び亜鉛蒸気供給手段を有する反応炉である。
【0081】
また、本発明の多結晶シリコンの製造方法で用いられる反応炉は、反応炉内に内挿容器が設置されていてもよい。内挿容器の材質としては、透明石英、不透明石英、焼結石英などの石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられ、強度面からは、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、また、温度勾配に起因するひび割れが起き難い点からは、石英、窒化珪素が好ましい。
【0082】
以下では、本発明の多結晶シリコンの製造方法で用いられる反応炉に内挿容器が設置されている形態例について、図10を参照して説明する。なお、以下では、反応炉内に内挿容器が設置されていない形態例と異なる点のみ説明し、同様な点については省略する。図10は、本発明の多結晶シリコンの製造方法で用いられる反応炉のうち、反応炉内に内挿容器が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【0083】
図10中、反応炉30内には、側面が円筒形状であり底面が円形の内挿容器25が設置されている。内挿容器25の下部には、内挿容器25内から排出ガス11を排出するための排出口27が形成されており、排出ガス11が、排出口27を経て、排出管6から反応炉30の外に排出されるようになっている。
【0084】
本発明の多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコンは、亜鉛を還元剤に用いて製造されるため、亜鉛を含有する。本発明の多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコン中の亜鉛含有量は、0.01〜1質量ppm、好ましくは0.01〜0.8質量ppm、特に好ましくは0.01〜0.5質量ppmである。多結晶シリコン中の亜鉛含有量が、上記範囲内であることにより、6−N以上の高純度の多結晶シリコンインゴットを製造することができる。なお、多結晶シリコンの純度の分析は高周波誘導プラズマ発光分析法(ICP−AES)により求められる。その分析方法は、以下に示す通りである。
得られた多結晶シリコン1.5gに、38%フッ化水素酸16mlと55%硝酸30mlを加えて、完全に溶解させた後、蒸発乾固させる。次いで、1%硝酸5mlで定溶し、ICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製IRIS Advantage/RP型)により不純物濃度を測定して、多結晶シリコンの純度を算出する。
【0085】
本発明の多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコンの主な形状は、径が大きい棒状、粒状若しくは板状、又は径が大きい棒状、粒状若しくは板状のものが複数付着した形状であり、直径が3μm以下の細粒状ではない。多結晶シリコンの大きさは、好ましくは100μm以上、特に好ましくは500μm以上、更に好ましくは1,000μm以上である。多結晶シリコンとしては、50質量%以上が100μmメッシュサイズのスクリーンを通過しない多結晶シリコンであることが好ましく、50質量%以上が500μmメッシュサイズのスクリーンを通過しない多結晶シリコンであることが特に好ましい。
【0086】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
(第一工程)
下記反応炉において、窒素ガスと共に、亜鉛蒸気の供給管から950℃に加熱して気化させた亜鉛蒸気を、供給速度52g/分で、反応炉内に供給し、四塩化珪素蒸気の供給管から950℃に加熱して気化させた四塩化珪素蒸気を、供給速度74g/分で、反応炉内に供給し、反応炉内を950℃にして、四塩化珪素と亜鉛の反応を、22時間行った。このとき、四塩化珪素に対する亜鉛のモル比は、1.82である。
<反応炉(図1に示す形態例で、炭化珪素棒の設置本数が3本の形態例)>
反応炉:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
炭化珪素棒:シリコン含浸炭化珪素棒、炭化珪素:含浸シリコンの質量比は85:15、外径16mm×長さ390mm、本数3本(反応炉の中心を中心とする円弧上に、等間隔に設置)
反応炉出口の排出管内径:100mm
四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁部分の径:内径50mm
亜鉛蒸気の供給空間の区画壁部分の径:炭化珪素棒側の外径180mm、側壁側の内径230mm
【0088】
(第二工程)
第一工程を行った後、次いで、反応炉内の温度を950℃に保ったまま、四塩化珪素蒸気のみを、供給速度74g/分で、反応炉内に、1時間供給した。このとき、四塩化珪素に対する亜鉛のモル比は、0である。
【0089】
(シリコン回収工程)
次いで、反応炉内を950℃に保ったまま、窒素ガスを、供給速度50L/分で、反応炉内に、1時間供給した。次いで、反応炉を24時間かけて25℃まで放冷した。次いで、反応炉の下側の蓋部を開け、蓋部に設置されている反応炉内シリコン受け部に落下した多結晶シリコンを回収した。
【0090】
(結果)
回収した多結晶シリコンの量は10.4kgであった。多結晶シリコン中の亜鉛含有量は、0.2ppmであった。また、反応炉の内壁を目視にて確認したところ、多結晶シリコンの付着は観察されなかった。また、析出棒を取り出して、表面を目視にて確認したところ、多結晶シリコンの付着は観察されなかった。
【0091】
(比較例1)
実施例1と同じ反応炉において、実施例1と同様の方法で、第一工程を行った。
次いで、反応炉内を950℃に保ったまま、窒素ガスを、供給速度50L/分で、反応炉内に、1時間供給した。次いで、反応炉を24時間かけて25℃まで放冷した。
次いで、反応炉の上側の蓋部を開け、四塩化珪素蒸気の供給管、亜鉛蒸気の供給管等の付設部材を外してから、炭化珪素棒を固定部材ごと、反応炉の外に取り出した。
つまり、比較例1では、実施例1の第二工程を行わなかった。
【0092】
(結果)
析出棒には、大部分の多結晶シリコンが付着していた。また、反応炉の内壁を目視にて確認したところ、多結晶シリコンの付着は観察されなかった。析出棒に析出した多結晶シリコンを掻き落として、多結晶シリコンを回収した。回収した多結晶シリコンの量は10.1kgであった。多結晶シリコン中の亜鉛含有量は、2.1ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、多結晶シリコンの回収時間を短くすることができるので、製造効率が高くなるため、安価に多結晶シリコンを製造することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 多結晶シリコン
2 反応炉内の空間
3 炭化珪素棒
4 固定部材
5 ヒーター
6 排出管
7 四塩化珪素蒸気の供給管
8 亜鉛蒸気の供給管
9 四塩化珪素蒸気
10 亜鉛蒸気
11 排出ガス
12 炉内壁つば部
13、33 四塩化珪素蒸気の供給空間の区画部材
14、34 亜鉛蒸気の供給空間の区画部材
19 析出棒を配置している反応炉の中心を中心とする円
20、26、30 反応炉
21 四塩化珪素蒸気の供給管の分岐管
22 亜鉛蒸気の供給管の分岐管
23 四塩化珪素蒸気の供給室
24 亜鉛蒸気の供給室
25 内挿容器
27 排出口
31 反応炉の側壁
32 蓋部
46 反応炉内シリコン受け部
131 四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁
132、332 四塩化珪素蒸気の供給空間
133、213、232、333 四塩化珪素蒸気の供給口
141 内側の亜鉛蒸気の供給空間の区画壁
142 外側の亜鉛蒸気の供給空間の区画壁
143、342 亜鉛蒸気の供給空間
144、214、243、343 亜鉛蒸気の供給口
231 側壁
241 中心側の側壁
242 側壁側の側壁
331 四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁
341 亜鉛蒸気の供給空間の区画壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉内で四塩化珪素と亜鉛を反応させて、反応炉内に多結晶シリコンを生成させる第一工程と、
907〜1200℃で、該反応炉内に、四塩化珪素のみを供給するか、又は四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、該第一工程でのモル比よりも小さくなる供給量で、四塩化珪素及び亜鉛を供給する第二工程と、
を有することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。
【請求項2】
前記第二工程での四塩化珪素に対する亜鉛のモル比が、0〜1.5であることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項3】
前記第一工程において、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給することにより、四塩化珪素と亜鉛を反応させることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項4】
前記反応炉が、上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給し、下部より排出ガスを排出する縦型の反応炉であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項5】
前記反応炉内には、析出棒が設置されていることを特徴とする請求項4記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項6】
前記反応炉が、反応炉内への四塩化珪素蒸気の供給位置が、亜鉛蒸気の供給位置より、前記析出棒に近い反応炉であることを特徴とする請求項5記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項7】
前記反応炉が、反応炉の中心と同心円状に四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁及び亜鉛蒸気の供給空間の区画壁が設けられており、内側が四塩化珪素蒸気の供給空間であり、外側が亜鉛蒸気の供給空間である四塩化珪素蒸気の供給手段及び亜鉛蒸気供給手段を有する反応炉であることを特徴とする請求項5又は6記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項8】
前記反応炉が、反応炉内に複数の析出棒が設置されており、該反応炉の上部に各析出棒に対して反応炉の中心側から四塩化珪素蒸気を供給する四塩化珪素蒸気供給手段及び各析出棒に対して側壁側から亜鉛蒸気を供給する亜鉛蒸気供給手段を有し、該反応炉の下部に排出ガスの排出管を有する反応炉であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項9】
前記四塩化珪素蒸気供給手段及び前記亜鉛蒸気供給手段が、前記析出棒より反応炉の中心側に四塩化珪素蒸気の供給空間を区画するための四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と、前記析出棒より側壁側に亜鉛蒸気の供給空間を区画するための亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とを有し、析出棒側の四塩化珪素蒸気の供給空間の区画壁と、析出棒側の亜鉛蒸気の供給空間の区画壁とが、前記反応炉の中心と同心円状に設けられている四塩化珪素蒸気供給手段及び亜鉛蒸気供給手段であることを特徴とする請求項8記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項10】
前記析出棒が、炭化珪素棒であることを特徴とする5〜9いずれか1項記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項11】
前記炭化珪素棒が、多孔質の炭化珪素にシリコンが含浸されているシリコン含浸炭化珪素棒であり、炭化珪素:含浸シリコンの質量比が80:20〜95:5であることを特徴とする請求項10記載の多結晶シリコンの製造方法。
【請求項12】
前記反応炉内に内挿容器が設置されていることを特徴とする請求項4〜11記載の多結晶シリコンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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