説明

多結晶シリコン製造用の反応炉及びそれを用いる多結晶シリコンの製造方法

【解決課題】亜鉛還元法による多結晶シリコン製造用の反応炉であって、反応炉の側壁と蓋とに異なる材質を用いても、加熱時の熱膨張量の違いによりそれらが破損されることがない反応炉を提供すること。また、亜鉛還元法による多結晶シリコン製造用の反応炉であって、反応炉の側壁と蓋との間のシール性が高いシール構造を有する反応炉を提供すること。
【解決手段】四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを生成させる反応炉であって、円筒形状であり端部につば部を有する反応炉の側壁と、該側壁の端部を塞ぐ蓋と、該側壁のつば部と該蓋との間に挟み込まれるシール部材と、該側壁を加熱するヒーターと、該側壁内の端部近傍に設置される断熱材と、該蓋に付設される不活性ガスの供給管と、を有し、該側壁の端部近傍にヒーターの非設置部分が設けられており、該断熱材がヒーターの設置部分より端部側に設置されていることを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの製造方法及び該多結晶シリコンの製造方法を行うための反応炉に関するものであり、更に詳しくは、太陽電池用高純度多結晶シリコンを製造するための多結晶シリコンの製造方法及び該多結晶シリコンの製造方法を行うための反応炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の太陽電池の普及に伴い、多結晶シリコンの需要は急増している。従来、高純度の多結晶シリコンを製造する方法としてシーメンス法(Siemens Method)が挙げられる。シーメンス法はトリクロロシラン(SiHCl)を水素(H)によって還元する方法である。シーメンス法により製造される多結晶シリコンは純度がイレブン−ナイン(11−N)と非常に高く、半導体用シリコンとして使用されている。太陽電池用シリコンもこの半導体用シリコンとして製造された製品の一部を使用してきたが、11−Nほどの純度を必要としない点とシーメンス法が多くの電力を消費する点から、太陽電池用シリコンに適した安価な製造方法が求められている。
【0003】
このような中、太陽電池用シリコンの製造方法として、亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法が提案されており、その反応は下記式(1):
SiCl + 2Zn = Si + 2ZnCl (1)
により示すものである。
【0004】
亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法では、製造される多結晶シリコンの純度はシックス−ナイン(6−N)程度であり、半導体用シリコンに比べると純度は低いものの、シーメンス法と比較して5倍程度にも達する程反応効率に優れ且つ製造コストも有利な製造方法である。
【0005】
多結晶シリコンの製造方法としては、例えば、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出し、前記混合物を分離容器に収容し、混合物中の塩化亜鉛を分離してのち、多結晶シリコンを分離容器から回収することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法(特許文献1)や、反応容器内で液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元し、生成した多結晶シリコンと塩化亜鉛とを含有する混合物を反応容器外に取り出してのち、前記混合物中の塩化亜鉛を分離して、多結晶シリコンを回収する高純度シリコンの製造方法であって、分離された塩化亜鉛を電気分解して金属亜鉛と塩素を回収し、回収された金属亜鉛を再び前記四塩化珪素の還元剤として用いるとともに、回収された塩素を水素と合成させて塩化水素とし、前記四塩化珪素を生成するための金属シリコンの塩化処理に用いることを特徴とする高純度シリコンの製造方法(特許文献2)が報告されている。
【0006】
特許文献1および2はいずれも液体または気体状態の四塩化珪素を溶融亜鉛で還元している。しかし、溶融亜鉛を用いる方法では、多結晶シリコンが粉状となり、後処理の煩雑さや不純物処理の難しさ並びにキャスティングの困難さのために高コストになるという問題がある。
【0007】
そこで、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を用いて亜鉛還元法を行うシリコンの製造方法としては、例えば、鉛直方向に立設された反応管に加熱しながら反応管の側周面に設けられた亜鉛蒸気供給口より亜鉛蒸気を供給するとともに、四塩化珪素蒸気を前記亜鉛蒸気供給口よりも下方から反応管の中心軸に沿って上方に向かって吐出させて、反応管内の温度分布を側周面側よりも中心軸側のほうが低くなるようにしてシリコン粉を製造する方法が報告されている(特許文献3)。
【0008】
また、反応容器内に珪素化合物供給配管と亜鉛供給配管を有し、反応容器内の整流部材を通してシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するシリコン製造装置も報告されている(特許文献4)。
【0009】
特許文献3、4はともにシリコンを含む反応生成ガスを反応容器外に排出するもので、得られるシリコンはシリコン粉である。ところが、粉状のシリコンはインゴット製造のために溶融する際、非常に熔解し難いという問題に加え、単位重量当たりの表面積が大きいことから純度が低くなり利用価値が乏しいという問題があった。
【0010】
このため、得られるシリコンの形状としてはある程度の大きさを有する針状又はフレーク状が好ましい。針状又はフレーク状のシリコンを製造する方法としては、例えば、高純度四塩化珪素及び高純度亜鉛をそれぞれ気化させて、ガス化雰囲気において反応を行うことにより、製品として取り出すシリコンの多くが針状又はフレーク状である太陽電池用高純度シリコンの製造方法が報告されている(特許文献5)。
【0011】
特許文献5では、反応炉の内部に通電可能なタンタル芯またはシリコン芯を有し、この芯棒の温度を反応温度よりも上げることで反応炉よりも芯棒に針状、フレーク状のシリコンを析出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−011925号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−092130号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2009−107896号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2009−167022号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2004−018370号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献5のような亜鉛還元法では、反応炉内で生成したシリコンを反応炉の外に抜き出すため、反応炉を縦型の円筒型にして、その端部に、開閉が可能な蓋を取り付ける必要がある。そして、該亜鉛還元法では、反応炉内と外気とは遮断されていなければならず、反応炉と蓋との間のシール部分は十分に密閉されていなければならない。
【0014】
このような縦型の反応炉では、縦型の円筒型の側壁の端部の上側に設置される蓋には、種々の部材が付設されており、バッチ反応を繰り返す毎に、これらの部材の付け外しが繰り返し行われる。亜鉛還元法の反応炉には石英が多く用いられているが、石英製の材質には、部材の付け外しにより、破損し易いという欠点がある。また、下側の蓋は、反応炉内に内挿容器等を設置する場合、それらの荷重がかかるため、荷重により壊れ難い材質でなければならない。そのため、蓋には、SUSのような材質を用いることが好ましい。
【0015】
ところが、反応炉の加熱部分、すなわち、側壁は、1,000℃程度の高温になるため、側壁として金属材料を用いる場合には極めて高価な耐熱鋼を使用しなければならず、アルミナ等の耐熱性酸化物材料を用いる場合には、成型性の問題から大型のものが製作困難となることから、コスト面、成型性の面から石英等の高耐熱材を使用することになる。このとき、加熱部分である側壁だけを石英製にして、蓋をSUS等のステンレス鋼をはじめ、石英等と熱膨張係数が大きく異なる材質を用いてしまうと、加熱時に、熱膨張量の違いにより、石英が破損してしまうという問題があった。
【0016】
また、該亜鉛還元法では、反応炉の温度が1,000℃程度の高温になるため、シール部分に設置されるシール材は、1,000℃程度の高温に耐える材質でなければならない。そのような高温での耐熱性を有するシール材には、渦巻き形ガスケット、メタルジャケット、メタルガスケット等の金属ガスケットのようなシール材しか使用できない。一方、ゴムガスケット、樹脂製ガスケット、ジョイントシートガスケット、膨張黒鉛ガスケット等の非金属製の軟質ガスケットは、シール性能が高いものの、耐熱性が低いために、これらの非金属性の軟質ガスケットを1,000℃程度と高温になる箇所には使用できない。
【0017】
ところが、金属ガスケットで気密性を十分に持たせるためには、強く締める必要がある。亜鉛還元法に多く用いられている石英製の反応炉では、締め付け力が強いと、反応炉のシール部が傷付いたり、締め付け部分が脆くなるために反応炉の耐久性が低下したり、場合によっては、内圧が高い条件になると、必要な締め付け力が高過ぎるために、締め付け力によって反応炉が壊れてしまうというおそれがあった。
【0018】
そこで、本発明の目的は、亜鉛還元法による多結晶シリコン製造用の反応炉であって、反応炉の側壁と蓋とに異なる材質を用いても、加熱時の熱膨張量の違いによりそれらが破損されることがない反応炉を提供することにある。また、本発明の目的は、亜鉛還元法による多結晶シリコン製造用の反応炉であって、反応炉の側壁と蓋との間のシール性が高いシール構造を有する反応炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、反応炉の側壁にヒーターの非設置部分を設け、反応炉内のヒーターの設置空間と非設置空間との間を断熱材により断熱し、且つ、反応炉内のヒーターの非設置空間に不活性ガスを供給することにより、反応時に反応炉内が1,000℃程度に加熱されても、(1)側壁の端部付近及び蓋の温度を低くすることができるので、側壁と蓋との材質が異なっても、これらが破壊されない程度の熱膨張量の差に抑えることができること、(2)耐熱性は低いがシール性能が高く、側壁と蓋との熱膨張量の差を吸収することができる樹脂製等のシール材が適用できる程度まで、側壁の端部付近及び蓋の温度を低くすることができること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
すなわち、本発明(1)は、四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを生成させる反応炉であって、円筒形状であり端部につば部を有する反応炉の側壁と、該側壁の端部を塞ぐ蓋と、該側壁のつば部と該蓋との間に挟み込まれるシール部材と、該側壁を加熱するヒーターと、該側壁内の端部近傍に設置される断熱材と、該蓋に付設される不活性ガスの供給管と、を有し、該側壁の端部近傍にヒーターの非設置部分が設けられており、該断熱材がヒーターの設置部分より端部側に設置されていることを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉を提供するものである。
【0021】
また、本発明(2)は、前記本発明(1)の多結晶シリコン製造用の反応炉用いて、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を該反応炉の上部から供給し、該反応炉の下部から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、多結晶シリコンを該反応炉内に析出させ、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行っている間、不活性ガスを反応炉内のヒーターの非設置空間に供給することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、亜鉛還元法による多結晶シリコン製造用の反応炉であって、反応炉の側壁と蓋とに異なる材質を用いても、加熱時の熱膨張量の違いにより破損されることがない反応炉を提供することができる。また、本発明によれば、亜鉛還元法による多結晶シリコン製造用の反応炉であって、反応炉の側壁と蓋との間のシール性が高いシール構造を有する反応炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の形態例の模式的な端面図である。
【図2】図1中の側壁の上側の端部付近を拡大した図である。
【図3】図1中の断熱材を示す図である。
【図4】四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管の設置位置及び形状の形態例を示す模式図である。
【図5】四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管の設置位置及び形状の形態例を示す模式図である。
【図6】図1中の側壁及び炭化珪素棒を水平方向で切ったときの端面図である。
【図7】本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉のうち、反応炉内に内挿容器が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【図8】本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉のうち、反応炉内に内挿容器が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【図9】本発明の多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の多結晶シリコンの製造方法及び本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉の形態例の模式的な端面図である。また、図2は、図1中の側壁の上側の端部近傍を拡大した図である。また、図3は、図1中の石英板を示す図である。図4及び図5は、四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管の設置位置及び形状の形態例を示す模式図であり、図4の(4−1)及び図5は、四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管を上側から見たときの図であり、図4の(4−2)は、垂直方向に切ったときの端面図である。なお、図3及び図4では、反応炉と四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管のみを記載した。
【0025】
図1中、反応炉20は、縦長の円筒形状を有する側壁1と、該側壁1の上下を塞ぐ蓋2(2a、2b)と、該反応炉20を加熱するためのヒーター5と、からなる。該反応炉20の上部には、四塩化珪素蒸気9の供給管7及び亜鉛蒸気10の供給管8が付設されており、該反応炉20の下部には、排出ガス11を排出するための排出管6が付設されている。また、該反応炉20内には、炭化珪素棒の固定部材4を介して炭化珪素棒3が設置されている。詳細には、該炭化珪素棒の固定部材4が、該側壁部1の内壁に形成されている炉内壁つば部12に引っ掛けられることより、該炭化珪素棒3は、該反応炉20の内部に下向きに突き出るように設置されている。
【0026】
該四塩化珪素蒸気の供給管7の一端は、該反応炉20の内部に位置し、他端は、四塩化珪素の蒸発器に繋がっている。また、該亜鉛蒸気の供給管8の一端は、該反応炉20の内部に位置し、他端は、亜鉛の蒸発器に繋がっている。また、該排出管6は、排出ガス11、すなわち、四塩化珪素と亜鉛が反応する際に生成する塩化亜鉛ガス及び未反応ガスである四塩化珪蒸気及び亜鉛蒸気を回収するための回収装置に繋がっている。
【0027】
図2に示すように、該側壁1のつば部22と該蓋2aとの間には、シール部材18が挟み込まれており、該側壁1のつば部22と該蓋2aとが、ボルト211及びナット212により締め付けられることにより、該側壁1の端部23と該蓋2aとの間が密閉されている。なお、図1では、該シール部材18、該ボルト211及び該ナット212の記載を省略した。
【0028】
そして、該反応炉20では、該ヒーター5の端部13aより上に、該側壁1が出ている。該ヒーター5により囲まれている部分、すなわち、該ヒーター5の端部13aよりヒーター側(図1では、該ヒーター5の端部13aより下側)が、該ヒーター5の設置部分19であり、該ヒーター5により囲まれていない部分、すなわち、該ヒーター5の端部13aより該側壁1の端部側(図1では、該ヒーター5の端部13aより上側)が、該ヒーター5の非設置部分24である。このように、該反応炉20では、該側壁1の端部23の近傍に、該ヒーター5の非設置部分24が設けられている。
【0029】
また、該反応炉20内には、該側壁1の端部23の近傍に、石英板17が設置されている。該石英板17の設置位置は、該ヒーター5の設置部分19より、該側壁1の端部側である。
【0030】
該石英板17は、図3に示すように、脚部171を有する円形の石英製の板材である。該石英板17を複数枚重ねると、板状部173間に空隙172が形成される。そして、該石英板17は、複数枚重ねられることにより、断熱材として機能する。また、該炭化珪素棒の固定部材4が、不透明石英(内部に気泡を有する石英)、焼結石英(多孔質の石英)等の断熱性を有する材質である場合、該炭化珪素棒の固定部材4は、断熱材としても機能する。
【0031】
また、該反応炉20内には、反応炉内のヒーター非設置空間241が存在する。そして、該蓋2aには、反応炉内のヒーター非設置空間241に、窒素ガス16を供給するための窒素ガスの供給管151が付設されている。なお、該ヒーターの非設置部分の該側壁1に囲まれている該反応炉内の空間を、該反応炉内のヒーター非設置空間241と呼び、該ヒーターの設置部分の該側壁1に囲まれている該反応炉内の空間を、反応炉内のヒーター設置空間191と呼ぶ。
【0032】
該反応炉20では、該側壁1の下側の端部近傍は、該炭化珪素棒の固定部材4の代りに、仕切り部材41が設置され、石英板17及び該仕切り部材41とが、支持部材111により支持されていること以外は、該側壁1の上側の端部近傍と同様な構造を有する。該仕切り部材41には、該炭化珪素棒3(析出棒)上で析出しきれなかった多結晶シリコン及び該炭化珪素棒3(析出棒)上から落下した多結晶シリコンを反応炉の底部で受け止める役割がある。
【0033】
つまり、該側壁1の下側の端部近傍では、該側壁1のつば部22と蓋2bとの間には、図示しないシール部材が挟み込まれており、該側壁1のつば部22と該蓋2bとが、図示しないボルト及びナットにより締め付けられることにより、該側壁1の端部と該蓋2bとの間が密閉されている。
【0034】
そして、該ヒーター5の端部13bより下に、該側壁1が出ている。該ヒーター5により囲まれている部分、すなわち、該ヒーター5の端部13bよりヒーター側(図1では、該ヒーター5の端部5bより上側)が、該ヒーター5の設置部分であり、該ヒーター5により囲まれていない部分、すなわち、該ヒーター5の端部13bより該側壁1の端部側(図1では、該ヒーター5の端部5bより下側)が、該ヒーター5の非設置部分である。このように、該側壁1の端部の近傍に、該ヒーター5の非設置部分が設けられている。
【0035】
また、該側壁1内の端部の近傍に、石英板17が設置されている。該石英板17の設置位置は、該ヒーター5の設置部分より、該側壁1の端部側である。
【0036】
該側壁1の下側も上側と同様に、該石英板17は、脚部171を有する円形の石英製の板材である。そして、該石英板17は、複数枚重ねられることにより、断熱材として機能する。また、該仕切り部材41が、不透明石英(内部に気泡を有する石英)、焼結石英(多孔質の石英)等の断熱性を有する材質である場合、該仕切り部材41は、断熱材としても機能する。
【0037】
また、該反応炉20内には、反応炉内のヒーター非設置空間241が存在する。そして、該蓋2bには、反応炉内のヒーター非設置空間241に、窒素ガス16を供給するための窒素ガスの供給管151が付設されている。
【0038】
該反応炉20を用いて多結晶シリコンを製造する方法について説明する。先ず、四塩化珪素及び亜鉛をそれぞれの蒸発器により気化させて、四塩化珪素蒸気9を四塩化珪素蒸気の供給管7から、亜鉛蒸気10を亜鉛蒸気の供給管8から、該ヒーター5により加熱されている該反応炉20内に供給しつつ、排出ガス11を該排出管6から、該反応炉20の外へ排出する。このとき、該反応炉20内では、四塩化珪素と亜鉛が反応して、多結晶シリコンが生成するが、該反応炉20内には、該炭化珪素棒3が設置されているので、生成した多結晶シリコンが、該炭化珪素棒3に析出する。そして、該反応炉20の上部から四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を供給し、該反応炉20の下部から該排出ガス11を排出しているので、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、該反応炉20の上部から下向きに移動しており、その流れに沿うように該炭化珪素棒3が存在しているので、該炭化珪素棒3を覆うように、多結晶シリコンの結晶が成長する。また、四塩化珪素と亜鉛の反応により、塩化亜鉛も生成するが、塩化亜鉛ガスは、未反応の四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気と共に、排出ガス11として、該排出管6から外へ排出される。そして、この四塩化珪素と亜鉛の反応を行っている間、窒素ガス16を該窒素ガス供給管151から供給する。なお、該窒素ガス供給管151から該反応炉内のヒーター非設置空間241に供給された窒素ガス16は、該側壁1と該炭化珪素棒の固定部材4又は該仕切り部材41との隙間を通って、反応炉内に入り、該排出ガス11と共に該排出管6から反応炉の外へと排出される。
【0039】
このように、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を該反応炉の上部から供給し、該反応炉の下部から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行いつつ、生成する多結晶シリコンを炭化珪素棒に析出させることにより、該反応炉20を用いて、四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを製造することができる。
【0040】
すなわち、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉は、四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを生成させる反応炉であって、円筒形状であり端部につば部を有する反応炉の側壁と、該側壁の端部を塞ぐ蓋と、該側壁のつば部と該蓋との間に挟み込まれるシール部材と、該側壁を加熱するヒーターと、該側壁内の端部近傍に設置される断熱材と、該蓋に付設される不活性ガスの供給管と、を有し、該側壁の端部近傍にヒーターの非設置部分が設けられており、該断熱材がヒーターの設置部分より端部側に設置されていることを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉である。
【0041】
そして、本発明の第1の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉は、該蓋2の材質として、該側壁1とは異なる材質を用いる形態である。また、本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉は、該シール部材18として、金属製のガスケットではない非金属製のガスケットを用いる形態である。
【0042】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉は、円筒形状であり端部につば部を有する該側壁と、該側壁の端部を塞ぐ蓋と、からなる縦長の形状である。つまり、該反応炉の形状は、反応炉の上部から反応炉内に供給された四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉の上部から下部に向かって下向きに移動しながら反応するような縦長の形状である。言い換えると、該反応炉の形状は、原料蒸気及び排出ガスが、反応炉の上部から下部に向かって流れる形状である。
【0043】
該反応炉内は1,000℃程度の温度となるため、該反応炉の側壁の材質としては、透明石英、不透明石英、炭化珪素、窒化珪素等が挙げられ、寿命や析出した多結晶シリコンを取り除く際に取り扱い易い点で、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、また、コスト面からは、石英が好ましい。
【0044】
本発明の第1の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該反応炉の蓋の材質としては、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、析出硬化系等のステンレス鋼、鉄、炭素鋼等が挙げられる。本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該側壁の端部近傍及び該蓋の温度が低いため、該蓋に、ステンレス鋼、鉄、炭素鋼等の材質を用い、該側壁に石英材を用いても、該蓋と該側壁との間に、該側壁を破損するほどの熱膨張量の差は生じない。
【0045】
本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該反応炉の蓋の材質としては、透明石英、不透明石英、炭化珪素、窒化珪素、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、析出硬化系等のステンレス鋼、鉄、炭素鋼等が挙げられる。
【0046】
本発明の第1の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該側壁と該蓋は異なる材質であるが、該側壁の材質と該蓋の材質の組み合わせとしては、例えば、表1に示す組み合わせが挙げられる。
【0047】
【表1】

【0048】
本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該側壁と該蓋は、同じ材質であっても異なる材質であってもよく、該側壁の材質と該蓋の材質の組み合わせとしては、例えば、表2に示す組み合わせが挙げられる。
【0049】
【表2】

【0050】
該反応炉の大きさは、特に限定されないが、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給条件によって、適宜選択される。一般的には、好ましくは、該反応炉の縦方向の長さは、1,000〜6,000mmであり、円筒形状の場合、直径が200〜2,000mmである。
【0051】
該シール部材は、該側壁の端部に設けられているつば部と該蓋部との間に挟み込まれることにより、該側壁の端部と該蓋との間を密閉するための部材であり、該シール部材は、下記JIS B8265で定められる締付力で締め付けることにより、シール性能を発揮して、該側壁の端部と該蓋との間から気体が漏れないものであれば、特に制限されない。
<JIS B8265>
締付力は、次のような算式を元に算出される。
Wm1=(π/4)GGP+2πbGmP=(πGP/4)×(G+8bm)
Wm2=πbGy
Wm3=σ3Ag
シールに必要な締付力(Wm)は、上記Wm1、Wm2及びWm3 のうちの最大値とする。
P=内圧
G=ガスケット有効径
b=ガスケット有効幅
m=ガスケット係数
y=最小設計締付圧力
σ3=最小締付面圧
Ag=ガスケット接触面積(投影面積)
【0052】
本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該シール部材は、非金属製の軟質ガスケットであり、ゴムガスケット、樹脂製ガスケット、ジョイントシートガスケット、膨張黒鉛ガスケット等が挙げられ、これらのうち、ゴムガスケット、樹脂製ガスケットが好ましい。該ゴムガスケットの材質としては、バイトン(登録商標)(耐熱温度200℃程度)、カルレッツ(登録商標)(耐熱温度200℃程度)、パーフロ(登録商標)(耐熱温度260℃)等のフッ素系ゴム材、シリコーンゴム(耐熱温度200℃程度)、フロロシリコーンゴム(耐熱温度200℃程度)、アクリルゴム(耐熱温度160℃程度)、ブチルゴム(耐熱温度140℃程度)、エチレンプロピレンゴム(耐熱温度140℃程度)、ニトリルゴム(耐熱温度120℃程度)、クロロプレンゴム(耐熱温度110℃程度)等のゴム材が挙げられ、該樹脂製ガスケットの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(耐熱温度260℃程度)、ポリテトラフルオロエチレンに黒鉛及び/又は無機充填剤を加えたもの(耐熱温度200℃程度)、石綿クロス、ガラスクロス、セラミッククロスのような織布にゴムを塗布したもの(耐熱温度150℃程度)等の樹脂材が挙げられ、該ジョイントシートガスケットの材質としては、ゴム、石綿、ポリアミド繊維、ガラス繊維、膨張黒鉛などを均一に混合したもの(耐熱温度200℃程度)等が挙げられ、該膨張黒鉛ガスケットの材料としては、膨張黒鉛(耐熱温度400℃程度)等が挙げられる。本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該側壁の端部近傍及び該蓋の温度が低いため、該シール部材として、密閉性に優れる非金属製の軟質ガスケット、例えば、該ゴムガスケット、該樹脂製ガスケット、該ジョイントシートガスケット、該膨張黒鉛ガスケットを使用できる。
【0053】
なお、本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に用いられる該シール部材は、JIS B8265などに規定される締付圧力で締め付けることで漏れを防止することができる。そして、本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に用いられる該シール部材の場合、JIS B8265などに規定される締付圧力(面圧)は、1〜50MPa程度、好ましくは1〜30MPa程度であり、金属ガスケットに比べ、締付圧力が低くても十分なシール性能を発揮する。よって、本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該シール部材は、金属製のガスケットとは異なる。
【0054】
本発明の第1の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該シール部材は、特に制限されず、金属ガスケットであっても、本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該シール部材、すなわち、該ゴムガスケット、該樹脂製ガスケット、該ジョイントシートガスケット、該膨張黒鉛ガスケット等の該非金属製の軟質ガスケットであってもよい。これらのうち、本発明の第1の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該シール部材としては、シール性が高くなる点で、本発明の第2の形態の多結晶シリコン製造用の反応炉に係る該シール部材、すなわち、該ゴムガスケット、該樹脂製ガスケット、該ジョイントシートガスケット、該膨張黒鉛ガスケット等の該非金属製の軟質ガスケットが好ましい。
【0055】
該反応炉の側壁の周囲には、ヒーターが設置される。該ヒーターとしては、電気ヒーターが好ましい。
【0056】
該断熱材としては、該反応炉内のヒーターの設置空間の熱を断熱できるものであれば、特に制限されず、不透明石英、焼結石英、綿、耐火断熱レンガ、ケイ酸カルシウムのように、材質そのものが断熱性能を有するものや、例えば、図1に示す該石英板17のように、重ね合わせることにより板状部間に空隙を形成して断熱性能を発揮するものや、熱交換器のように温度を低下させるもの等が挙げられる。また、該断熱材は、複数の断熱材の組み合わせでもよい。
【0057】
また、図1中の該炭化珪素棒の固定部材4や、該仕切り部材41も、断熱性能を有するのであれば、つまり、断熱性能を有する材質で形成されているのであれば、該断熱材に含まれる。
【0058】
該断熱材は、該反応炉内の該側壁の端部近傍に設置されており、該ヒーターの設置部分より、該側壁の端部側に設置されている。言い換えると、該断熱材は、該ヒーターの端部より、該側壁の端部側に設置されている。そのため、該断熱材は、該反応炉内の該ヒーターの非設置空間に設置されている。なお、該断熱材は、全体が該ヒーターの設置部分より該側壁の端部側に設置されていることが好ましいが、該断熱材の一部が該反応炉内のヒーターの非設置空間に存在することにより、断熱性能が発揮されるのであれば、一部が該反応炉内のヒーターの設置空間に存在していてもよい。また、該断熱材は、該蓋に接する位置に設置されていてもよい。
【0059】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該側壁の端部近傍に、該ヒーターの非設置部分が設けられるが、その範囲は、該反応炉の大きさ、反応炉の温度、該断熱材の材質や形状、該断熱材が設置される範囲等により、適宜選択される。
【0060】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該反応炉内のヒーターの非設置空間に不活性ガスを供給するための該不活性ガスの供給管が設置されている。そして、該不活性ガスの供給管により、不活性ガスを、該反応炉内のヒーターの非設置空間に供給することで、該反応炉内のヒーターの非設置空間の温度をヒーター設置空間よりも低下させることができる。該反応炉内のヒーターの非設置空間に供給された不活性ガスは、該側壁と該炭化珪素棒の固定部材又は該仕切り部材との隙間を通って、反応炉内に入り、該排出ガスとして反応炉外へと排出される。
【0061】
本発明の多結晶シリコン製造用に反応炉では、必要に応じて、該蓋を水冷又は空冷等により冷却するための冷却部材を有してもよい。
【0062】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管が、該反応炉の上部に付設される。また、該排出管は、該反応炉の下部に付設される。そして、該反応炉では、該反応炉内で原料蒸気の下方向の流れが形成され、反応炉内で四塩化珪素と亜鉛の反応を起こさせることができるような位置(上下方向の位置)に、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管と、該排出管とが付設される。
【0063】
該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管の形状及び配置であるが、例えば、図4の(4−1)に示すように、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管の水平部が直線上に並ぶようにし、(4−2)に示すように、供給管の先をL字形状にして、供給管の出口を下向きにする形態例が挙げられる。また、図5に示すように、該四塩化珪素蒸気の供給管及び該亜鉛蒸気の供給管の水平部が直線上に並ばないようにする形態例が挙げられる。図5に示す形態例では、該四塩化珪素蒸気及び該亜鉛蒸気は、該反応炉内を旋回するように移動する。
【0064】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉は、該側壁内(反応炉内)に多結晶シリコンを析出させるための析出棒が設置されていてもよい。該析出棒としては、例えば、炭化珪素棒、窒化珪素棒、タンタル棒、シリコン棒が挙げられ、好ましくは炭化珪素棒である。この形態例の反応炉を用いれば、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行いつつ、生成する多結晶シリコンを該析出棒に析出させることができる。
【0065】
該析出棒は、該反応炉内に設置される。該析出棒の形状としては、角柱状、円柱状が好ましく、特に、円柱状が好ましい。該析出棒の形状が円柱状の場合、該析出棒の直径は、強度や加工面から、1〜20cmが好ましく、2〜10cmが特に好ましい。また、該析出棒の固定部材4の下側から該排出管6の上側の間に存在する該析出棒の長さは、該析出棒の固定部材4の下側から該排出管6の上側までの縦方向の長さに対し20〜120%が好ましく、40〜100%が特に好ましく、50〜90%が更に好ましい。
【0066】
該析出棒のうち該炭化珪素棒は、炭化珪素の成形体であるが、通常、炭化珪素の成形体は、多数の細孔を有する多孔質体である。そして、該炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素にシリコンが含浸されているシリコン含浸炭化珪素棒であることが、含浸されているシリコンが、反応により生成する多結晶シリコンの結晶の種となり、炭化珪素棒への多結晶シリコンの析出を促進できる点で好ましい。該シリコン含浸炭化珪素棒では、炭化珪素:含浸シリコンの質量比が、80:20〜95:5であることが好ましく、80:20〜90:10が特に好ましい。該シリコン含浸炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素棒を、溶融シリコン中に浸漬し、溶融シリコンを炭化珪素の孔に含浸させることにより得られる。
【0067】
また、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒であっても、該反応炉内に設置され、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応が行われた場合、反応の初期の段階では、炭化珪素棒の外側近傍の多孔質構造内で、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気との接触が起こり、そこでシリコンが生成するので、炭化珪素棒の外側近傍は、孔内にシリコンが含浸されているのと同様な状態になる。そのため、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒でもよく、特に、該炭化珪素棒が繰り返し使用される場合は、シリコンが含浸されていない多孔質の炭化珪素棒は、繰り返し使用により、シリコンが含浸されている多孔質の炭化珪素棒と同様な状態になる。
【0068】
該析出棒の設置本数は、1本であっても、2本以上であってもよい。また、該析出棒の設置位置は、特に限定されない。例えば、該炭化珪素棒(該析出棒)が4本の場合、図6に示すように、該炭化珪素棒3は、該側壁1(反応炉)の中心を中心とする円弧上に、等間隔に設置されることが好ましい。なお、該析出棒の設置本数及び設置位置は、原料蒸気の供給条件等の反応条件、反応炉の大きさ等により、多結晶シリコンが効率よく析出するように、適宜選択される。なお、図6は、図1中の側壁及び炭化珪素棒を水平方向で切ったときの断面図である。図6では、説明の都合上、側壁及び炭化珪素棒のみを記載した。
【0069】
なお、図1では、該反応炉1内に、該炭化珪素棒3が設置されている旨記載したが、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉では、該析出棒が該反応炉内に設置されていてもよく、あるいは、設置されていなくてもよい。
【0070】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉のうち、該析出棒が該反応炉内に設置されていない形態例を用いる場合、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を該反応炉の上部から供給し、該反応炉の下部から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行いつつ、該反応炉内に生成する多結晶シリコンを析出させることにより、多結晶シリコンを製造することができる。
【0071】
また、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉は、該反応炉内に内挿容器が設置されていてもよい。
【0072】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉のうち、該反応炉内に該内挿容器が設置されている形態例について、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉のうち、反応炉内に内挿容器内が設置されている形態例を示す模式的な端面図である。
【0073】
図7中、反応炉30aは、縦長の円筒形状を有する側壁1と、該側壁1の上下を塞ぐ蓋2(2a、2b)と、該反応炉30aを加熱するためのヒーター5と、からなる。該反応炉30aの上部には、四塩化珪素蒸気9の供給管7及び亜鉛蒸気10の供給管8が付設されており、該反応炉30aの下部には、排出ガス11を排出するための排出管6が付設されている。該反応炉30a内には、側面が円筒形状であり底面が円形の内挿容器25が設置されている。該内挿容器25の上側には、該内挿容器25の蓋として、内挿容器の蓋部材251が設置されている。該内挿容器の蓋部材251には、炭化珪素棒3と、四塩化珪素蒸気の供給管9と、亜鉛蒸気の供給管10とが固定されている。該炭化水素棒3は、該内挿容器25の内部に下向きに突き出るように設置されている。該内挿容器25の下部には、該内挿容器25内から排出ガス11を排出するための排出口271が形成されており、該排出ガス11が、該排出口271を経て、排出管6から該反応炉30aの外に排出されるようになっている。
【0074】
該四塩化珪素蒸気の供給管7の一端は、該反応炉30aの内部に位置し、他端は、四塩化珪素の蒸発器に繋がっている。また、該亜鉛蒸気の供給管8の一端は、該反応炉30aの内部に位置し、他端は、亜鉛の蒸発器に繋がっている。また、該排出管6は、排出ガス11、すなわち、四塩化珪素と亜鉛が反応する際に生成する塩化亜鉛ガス及び未反応ガスである四塩化珪蒸気及び亜鉛蒸気を回収するための回収装置に繋がっている。
【0075】
該側壁1のつば部22と該蓋2aとの間には、図示しないシール部材が挟み込まれており、該側壁のつば部22と該蓋2aとが、図示しないボルト及びナットにより締め付けられることにより、該側壁1の端部と該蓋2aとの間が密閉されている。
【0076】
そして、該反応炉30aでは、該ヒーター5の端部13aより上に、該側壁1が出ている。該ヒーター5により囲まれている部分、すなわち、該ヒーター5の端部13aよりヒーター側(図7では、該ヒーター5の端部13aより下側)が、該ヒーター5の設置部分であり、該ヒーター5により囲まれていない部分、すなわち、該ヒーター5の端部13aより該側壁1の端部側(図7では、該ヒーター5の端部13aより上側)が、該ヒーター5の非設置部分である。このように、該反応炉30aでは、該側壁1の端部の近傍に、該ヒーター5の非設置部分が設けられている。
【0077】
また、該反応炉30aでは、該側壁1内の端部の近傍に、仕切り部材41及び石英板17が設置されている。該仕切り部材41及び該石英板17の設置位置は、該ヒーター5の設置部分より、該側壁1の端部側である。
【0078】
図7中の該石英板17は、前記と同様、図3に示すように、脚部171を有する円形の石英製の板材であり、複数枚重ねられることにより、断熱材として機能する。また、該仕切り部材41が、不透明石英(内部に気泡を有する石英)、焼結石英(多孔質の石英)等の断熱性を有する材質である場合、該仕切り部材41は、断熱材としても機能する。
【0079】
また、該反応炉30aには、反応炉内のヒーター非設置空間241が存在する。そして、該蓋2aには、反応炉内のヒーター非設置空間241に、窒素ガス16を供給するための窒素ガスの供給管151が付設されている。
【0080】
該反応炉30aでは、該側壁の下側の端部付近は、該内挿容器の支持部材112が設置され、断熱材17及び仕切り部材41とが、支持部材111により支持されていること以外は、該側壁の上側の端部付近と同様な構造を有する。
【0081】
図7に示す形態例は、該反応炉内に該内挿容器を設置し、該内挿容器の蓋部材に該炭化珪素棒の固定部材も兼ねさせて、該内挿容器の上側に設置することにより、該炭化珪素棒を該内挿容器内に下向きに突き出すように設置する形態例である。
【0082】
図8に示す形態例は、図7に示す形態例の炭化珪素棒3を、該炭化珪素棒の固定部材を兼ねる該内挿容器の蓋部材に固定するのではなく、内挿容器25の底に固定する形態例である。図8に示す形態例では、該炭化珪素棒を該内挿容器内に上向きに突き出すように設置されている。
【0083】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉のうち、該反応炉内に該内挿容器を設置する形態例は、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を該内挿容器内に供給して、該内挿容器内で、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、多結晶シリコンを析出させる形態例である。
【0084】
本発明の多結晶シリコンの製造方法のうち、該反応容器内に該内挿容器を設置する形態例では、該反応炉の側壁と該内挿容器の隙間に不活性ガスを流通させるための不活性ガスの供給管(図7及び図8では、不活性ガスの供給管153)を付設して、不活性ガスを該反応炉の側壁と該内挿容器との隙間に流すことで、該反応炉の側壁と該内挿容器との隙間に、該排出ガスや該内挿容器内へ供給されるべき原料蒸気(四塩化珪素蒸気、亜鉛蒸気)等が漏れて、多結晶シリコンが該反応炉の側壁に析出するのを防止することができる。該反応炉の側壁と該内挿容器との隙間に流通された不活性ガスは、該排出ガスと共に該排出管から反応炉の外へと排出される。
【0085】
本発明の多結晶シリコンの製造方法は、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉用いて、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を該反応炉の上部から供給し、該反応炉の下部から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、多結晶シリコンを該反応炉内に析出させ、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行っている間、不活性ガスを反応炉内のヒーターの非設置空間に供給することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法である。
【0086】
四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を用いる亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造においては、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、反応炉内で激しく撹拌されると、直径が3μm以下の細粒状の多結晶シリコンが生成するが、このような細粒状の多結晶シリコンは、充填密度が低く溶融に時間がかかる。一方、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気とが、該反応炉内で穏やかに接触すると、好ましくは線速5cm/秒以下の速度で接触すると樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンが生成するが、このような樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンは、細粒状の多結晶シリコンに比べ、溶融し易く、溶融時間が短くなる。そのため、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉を用いて、多結晶シリコンを製造する場合、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が、該反応炉内で激しく撹拌されないような条件、すなわち、直径が3μm以下の細粒状の多結晶シリコンが生成し難い条件で、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を、該反応炉に供給する。つまり、樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンが生成し易い原料蒸気の供給条件で、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を、該反応炉に供給する。樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンが生成し易い原料蒸気の供給条件は、該反応炉の大きさ、該炭化珪素棒の設置位置又は設置本数等により、適宜選択される。
【0087】
四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の供給量比率(モル比)は、四塩化珪素蒸気:亜鉛蒸気=0.9:2〜1.2:2であり、好ましくは0.95:2〜1.2:2であり、特に好ましくは1:2〜1.1:2である。また、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気は、窒素ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよく、その場合、四塩化珪素蒸気の希釈率は、体積割合((四塩化珪素蒸気+不活性ガス)/四塩化珪素蒸気)で、好ましくは1.01〜1.5、特に好ましくは1.05〜1.3であり、亜鉛蒸気の希釈率は、体積割合((亜鉛蒸気+不活性ガス)/亜鉛蒸気)で、好ましくは1.01〜1.3、特に好ましくは1.03〜1.2である。
【0088】
亜鉛の沸点は、「化学便覧」(日本化学会編)によると907℃であるため、該反応炉内の温度が、亜鉛の沸点である907℃以上になるように、該反応炉を加熱する。該反応炉内の温度は、907〜1,200℃、好ましくは930〜1,100℃である。また、該反応炉内の圧力は、好ましくは0〜700kPaG、特に好ましくは0〜500kPaGである。上記範囲に反応条件を設定することで、該炭化珪素棒に安定的に多結晶シリコンを析出させることが可能となる。
【0089】
そして、本発明の多結晶シリコンの製造方法では、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行っている間、不活性ガスを反応炉内のヒーターの非設置空間に供給する。該反応炉内のヒーター非設置空間に供給された不活性ガスは、該側壁と該炭化珪素棒の固定部材4又は該仕切り部材41との隙間を通って、反応炉内に入り、該排出ガスと共に該排出管から反応炉の外へと排出される。
【0090】
該ヒーターの非設置空間への不活性ガスの供給量は、該反応炉の大きさ、反応炉内の温度等により、適宜選択される。
【0091】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉を用いる多結晶シリコンの製造では、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気の供給を止めることにより、多結晶シリコンの製造を終了する。その後、該反応炉を冷却し、該反応炉内から、析出した多結晶シリコンを取り出す。例えば、図1の形態例では、該四塩化珪素蒸気の供給管7や該亜鉛蒸気の供給管8等の付設部材を外した後、該反応炉20の上側の該蓋2aを開け、該側壁1の上側から、該固定部材に固定されている該炭化珪素棒3を取り出す。また、図7及び図8の形態例では、該四塩化珪素蒸気の供給管7や該亜鉛蒸気の供給管8等の付設部材を外した後、該反応炉30a、30bの下側の該蓋2bを開け、該側壁1の下側から、該内挿容器の蓋部材に固定されている該炭化珪素棒3ごと該内挿容器25を取り出す。
【0092】
多結晶シリコンの製造に使用された該析出棒及び該内挿容器は、再び、多結晶シリコンの製造にて、使用される。また、再使用する前に、該析出棒及び該内挿容器を、純水又は塩酸、硝酸、フッ化水素酸等の酸などで洗浄してもよい。
【0093】
このようにして、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉を用いて得られる多結晶シリコンは、亜鉛を還元剤に用いて製造されるため、亜鉛を含有する。本発明の多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコン中の亜鉛含有量は、0.1〜100質量ppm、好ましくは0.1〜10質量ppm、特に好ましくは0.1〜1質量ppmである。多結晶シリコン中の亜鉛含有量が、上記範囲内であることにより、6−N以上の高純度の多結晶シリコンインゴットを製造することができる。なお、多結晶シリコンの純度の分析は高周波誘導プラズマ発光分析法(ICP−AES)により求められる。その分析方法は、以下に示す通りである。
得られた多結晶シリコン1.5gに、38%フッ化水素酸16mlと55%硝酸30mlを加えて、完全に溶解させた後、蒸発乾固させる。次いで、1%硝酸5mlで定溶し、ICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製IRIS Advantage/RP型)により不純物濃度を測定して、多結晶シリコンの純度を算出する。
【0094】
また、本発明の多結晶シリコンの製造方法により得られる多結晶シリコンの主な形状は、樹枝状、針状又は板状であり、直径が3μm以下の細粒状ではない。本発明の多結晶シリコンの製造方法では、樹枝状又は針状にシリコンの結晶が成長するので、大きな樹枝状又は針状のものに成長するが、得られる多結晶シリコン中には、大きな樹枝状又は針状のものの他に、板状になるものや、小さな樹枝状又は針状のものもあり、また、該炭化珪素棒から掻き落す際に樹枝状又は針状のものが砕けて、小さな樹枝状又は針状となったものもある。該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンの大きさは、好ましくは100μm以上、特に好ましくは500μm以上、更に好ましくは1,000μm以上である。そして、該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンとしては、50質量%以上が100μmメッシュサイズのスクリーンを通過しない樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンであることが好ましく、50質量%以上が500μmメッシュサイズのスクリーンを通過しない樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンであることが特に好ましい。なお、該樹枝状とは、図9の(9−1)に示すような、幹部31と該幹部31から伸びる枝部32とからなる形状であり、また、該針状とは、図9の(9−2)に示すような、略直線に伸びた形状であり、また、該板状とは、鱗片状、フレーク状等の略平面方向に広がった形状である。また、該樹枝状の該枝部32から更に分岐して結晶が伸びている形状もある。また、該樹枝状、針状又は板状の多結晶シリコンの大きさとは、樹枝状の場合は結晶の最も長い部分の長さ(図9の(9−1)では符号33aの長さ)を指し、針状の場合は結晶の長さ(図9の(9−2)では符号33bの長さ)を指し、板状の場合は結晶の最も長い径を指す。
【0095】
本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉は、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を反応させるために該反応炉内が1,000℃程度に加熱されても、該側壁の端部近傍及び該蓋の温度が、100〜230℃、好ましくは100〜170℃と、高くならない。
【0096】
そのため、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉によれば、側壁の材質を石英とし、蓋の部材をステンレス鋼としたときのように、反応炉の側壁と蓋とに熱膨張係数が大きく異なる材質を用いても、反応時の温度を、これらが破壊されない程度の熱膨張量の差に抑えることができることができる。
【0097】
また、本発明の多結晶シリコン製造用の反応炉によれば、シール部材として、耐熱性は低いがシール性能が高く、側壁と蓋との熱膨張量の差を吸収することができる該ゴムガスケット、該樹脂製ガスケット、該ジョイントシートガスケット、該膨張黒鉛ガスケット等の該非金属製の軟質ガスケットを使用することができるので、シール性能が高い構造を有する反応炉を提供できる。更には、シール部材として、軟質のガスケットを使用できるので、反応炉が傷付き難く、且つ、シール性を確保するためのシール部材の締付圧力を小さくすることができるので、反応炉の締め付け部分が壊れ難くなり、そのため、反応炉の耐久性が高くなる。
【0098】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
図1に示す反応炉20を用い、下記締付力でシール部材18を締め付け、25℃の空気を四塩化珪素蒸気供給管9から供給し、反応炉内の温度25℃で、反応炉内の圧力を0.1MPaに加圧しながら、上側の蓋2aからの空気のリークテストを行った。なお、側壁の下側の構造は、図1の反応炉20のままにした。
その結果、上側の蓋2aからの空気の漏れは確認されなかった。
<反応炉>
側壁:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
蓋:厚さ20mmの石英製
炭化珪素棒:シリコン含浸炭化珪素棒、炭化珪素:含浸シリコンの質量比は85:15
炭化珪素棒の固定部材4:材質は石英、厚み15mm
石英板17:枚数10枚、板状部の厚さ5mm、脚部の長さ10mm
ヒーター5の非設置部分24の長さ:300mm
ヒーターの端部からヒーターの炭化珪素棒の固定部材の下端までの距離:0mm
側壁の端部23から炭化珪素棒の固定部材の上端までの距離:285mm
<シール材>
バイトン(登録商標:デュポンエラストマー社製、材質はフッ素ゴム)製Oリング、P360(JIS B2401で定められた呼び番号)
<シール材の締付力>
JIS B8265に基づき、該バイトン(登録商標)製Oリングの締付力を算出したところ、10,630N(ニュートン)であり、ガスケット接触面積は607mmとなり、締付力とガスケット接触面積から算出した締付圧力(面圧)は17.5MPa(N/mm)であった。
【0100】
(実施例2)
シール材として、バイトン(登録商標)製Oリングに代えて、PTFEガスケット(ジャパンゴアテックス株式会社製、商品名トライガードガスケット、外径378mm、内径321mm、厚さ3mm)を用いること、及びシール材の締付力を下記の値とすること以外は、実施例1と同様に行った。
その結果、上側の蓋2aからの空気の漏れは確認されなかった。
<シール材の締付力>
JIS B8265の基づき、PTFEガスケットの締付力を算出したところ、104,449Nであり、ガスケット接触面積は5,222mmとなり、締付力とガスケット接触面積から算出した締付圧力(面圧)は20.0MPa(N/mm)であった。
【0101】
(実施例3)
石英製の蓋に代えて、SUS304製の蓋とすること、シール材として、バイトン(登録商標)に代えて、金属ガスケット(日本バルカー工業株式会社製、商品名ノンアスメタルジャケットガスケットN510、外径400mm、内径360mm、厚さ3.2mm、被覆材料:軟質アルミニウム)を用いること、及びシール材の締付力を下記の値とすること以外は、実施例1と同様に行った。
その結果、上側の蓋2aからの空気の漏れは確認されなかった。また、リークテスト後、蓋2aを側壁1から外し、側壁1及び蓋2aのシール面を確認したところ、ガスケット締め付けによる傷が確認された。
<シール材の締付力>
JIS B8265の基づき、金属ガスケットの締付力を算出したところ、190,267Nであり、ガスケット接触面積は4,757mmとなり、締付力とガスケット接触面積から算出した締付圧力(面圧)は40.0MPa(N/mm)であった。
【0102】
(実施例4)
図1に示す反応炉20を用い、シール部材18として実施例1と同じバイトン製Oリングを用いて締付力10,630Nで締め付け、1,000℃の窒素ガスを、四塩化珪素蒸気の供給管から供給し、反応炉内を930℃に加熱して、40時間加熱し続けた。蓋2aの内側の温度を測定したところ、170℃であった。なお、側壁の下側の構造は、図1の反応炉20のままにした。
<反応炉>
側壁:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
蓋:厚さ20mmの石英製
炭化珪素棒:シリコン含浸炭化珪素棒、炭化珪素:含浸シリコンの質量比は85:15
炭化珪素棒の固定部材4:材質は石英、厚み15mm
石英板17:枚数10枚、板状部の厚さ5mm、脚部の長さ10mm
ヒーター5の非設置部分24の長さ:300mm
ヒーターの端部からヒーターの炭化珪素棒の固定部材の下端までの距離:0mm
側壁の端部23から炭化珪素棒の固定部材の上端までの距離:285mm
反応炉内のヒーターの非設置空間241への窒素ガスの供給量:10L/分
【0103】
なお、170℃における石英製の側壁とSUS製の蓋との熱膨張量の差は側壁のつば部22に取り付けられるボルト211のナット座ピッチ直径(本実施例では直径400mm)において1.2mm以下と小さいため、実施例4の反応炉20の蓋の材質をSUSにして、930℃で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行っても、熱膨張量の差により石英製の側壁が破壊されることはない。
【0104】
(比較例1)
図1に示す反応炉20のヒーターの設置部分を下記に示すように変更して、石英板17を設置せず且つ窒素ガスの供給管151から窒素ガスを供給せずに、1,000℃の窒素ガスを、四塩化珪素蒸気の供給管及び亜鉛蒸気の供給管から供給し、反応炉内を930℃に加熱して、40時間加熱し続けた。蓋2aの内側の温度を測定したところ、900℃であった。なお、側壁の下側の構造は、図1の反応炉20のままにした。
<反応炉>
側壁:内径300mm×長さ2,500mmの石英製反応管を使用
蓋:厚さ20mmの石英製
炭化珪素棒:シリコン含浸炭化珪素棒、炭化珪素:含浸シリコンの質量比は85:15
炭化珪素棒の固定部材:材質は石英、厚み15mm
ヒーターの非設置部分の長さ:200mm
ヒーターの端部からヒーターの炭化珪素棒の固定部材の上端までの距離:85mm
側壁の端部23から炭化珪素棒の固定部材の上端までの距離:285mm
なお、ヒーターの非設置部分の長さが200mmであったため、炭化珪素棒の固定部材は、反応炉内のヒーターの設置空間に存在していた。
【0105】
なお、1,000℃における石英製の側壁とSUS製の蓋との熱膨張量の差は大きいため、比較例1の反応炉の構造では、反応炉の側壁の材質を石英とし、蓋の材質をSUSにして、930℃で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行うと、熱膨張量の差により石英製の側壁が破壊される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、反応炉の密閉をゴム材や樹脂材をシール材として用いること及び蓋にSUS等の金属材料が使用できるので、反応炉の耐久性が向上する。そのため、安価に多結晶シリコンを製造することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 反応炉の側壁
2、2a、2b 蓋
3 炭化珪素棒
4 炭化珪素棒の固定部材
5 ヒーター
6 排出管
7 四塩化珪素蒸気の供給管
8 亜鉛蒸気の供給管
9 四塩化珪素蒸気
10 亜鉛蒸気
11 排出ガス
12、121 炉内壁つば部
13a、13b ヒーターの端部
16 窒素ガス
17 石英板
18 シール部材
19 ヒーターの設置部分
20、30a、30b 反応炉
22 側壁のつば部
23 側壁の端部
24 ヒーターの非設置部分
25 内挿容器
31 幹部
32 枝部
41 仕切り部材
111、112 支持部材
151、153 窒素ガスの供給管
171 脚部
172 空隙
173 板状部
191 反応炉内のヒーター設置空間
211 ボルト
212 ナット
241 反応炉内のヒーター非設置空間
251 内挿容器の蓋部材
271 内挿容器の排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四塩化珪素と亜鉛を反応させて多結晶シリコンを生成させる反応炉であって、円筒形状であり端部につば部を有する反応炉の側壁と、該側壁の端部を塞ぐ蓋と、該側壁のつば部と該蓋との間に挟み込まれるシール部材と、該側壁を加熱するヒーターと、該側壁内の端部近傍に設置される断熱材と、該蓋に付設される不活性ガスの供給管と、を有し、該側壁の端部近傍にヒーターの非設置部分が設けられており、該断熱材がヒーターの設置部分より端部側に設置されていることを特徴とする多結晶シリコン製造用の反応炉。
【請求項2】
前記反応炉内に炭化珪素棒が設置されていることを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン製造用の反応炉。
【請求項3】
前記炭化珪素棒は、多孔質の炭化珪素にシリコンが含浸されているシリコン含浸炭化珪素棒であり、炭化珪素:含浸シリコンの質量比が80:20〜95:5であることを特徴とする請求項2記載の多結晶シリコン製造用の反応炉。
【請求項4】
前記反応炉内に内挿容器が設置されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の多結晶シリコン製造用の反応炉。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の多結晶シリコン製造用の反応炉用いて、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気を該反応炉の上部から供給し、該反応炉の下部から排出ガスを排出して、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行い、多結晶シリコンを該反応炉内に析出させ、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応を行っている間、不活性ガスを反応炉内のヒーターの非設置空間に供給することを特徴とする多結晶シリコンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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