説明

多結晶膜の形成方法

【発明の詳細な説明】
〔発明の目的〕
(産業上の利用分野)
この発明は、多結晶膜を形成する方法に関するものである。
(従来の技術)
これまで知られている多結晶膜の形成方法としては、絶縁基板上に非晶質膜あるいは多結晶膜を形成し、熱アニールすることにより比較的大きな粒径の多結晶膜を得る方法などが試みられている(J.Electrochem.Soc.Vol.134 No.7 p1771 1987)。
また、レーザ光,電子ビームなどを用いるレーザアニール,ビームアニールなどによって、絶縁基板上に形成した非晶質膜あるいは多結晶膜を再結晶化させ、粒界が低減化された多結晶膜を得るようにした方法も発表されている(応用物理,Vol.54,p1274 1985)。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、前者の結晶形成方法においては、成膜時に形成される多結晶膜の粒径を大きくすることに限界があるとともに、粒界の複雑に入った結晶性の良くない結晶しか得られなかった。また、後者のレーザ光や電子ビームを照射する方法においても、形成される結晶は均質でない亜粒界が導入されるため結晶性が悪かった。
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、大粒径化と均質化を図ることができる多結晶膜の形成方法を提供することを目的とするものである。
〔発明の構成〕
(課題を解決するための手段)
この発明は上記目的を達成するために、基板上に非晶質膜結晶化のための核となる結晶子を化学気相成長法により微小島状に形成することで基板上に結晶子のみを点在させる工程と、前記結晶子をアニール処理により再結晶化する工程と、アニール処理した結晶子をエッチングすることによって基板上に残す結晶子の分布及び粒径を調整する工程と、エッチング処理の工程を経た結晶子の上に非晶質膜を堆積する工程と、非晶質膜を堆積した結晶子をアーニル処理することにより非晶質膜を再結晶化して多結晶膜とする工程と、を有することを要旨とする。
(作用)
上記多結晶膜の形成方法によれば、予め行われたアニール処理による再結晶化で結晶子を単結晶に近い状態にし、この後に行なわれるエッチング処理により粒径の小さな結晶子を除去し粒径の大きな結晶子を小さくして基板上に残す結晶子の分布及び粒径を調整する。そして、残った結晶子の上に堆積した非晶質膜にアニール処理を施すと結晶子は核として結晶化情報を正確に伝えて非晶質膜の再結晶化を進めるため、多結晶の大粒径化と均質化を図ることができる。
(実施例)
以下、この発明の実施例を第1図(a)〜(f)を基に説明する。
最初に、例えばシリコンの基板1をCVD装置(図示せず)内にセットし、O2のみまたは水蒸気とともにO2を供給した中で1000℃で加熱し、基板1の鏡面上に第1図(a)に示すように絶縁膜として酸化膜2を約5000Å形成する。
次に、基板1をCVD装置内で1000℃に保持したまま、HclガスとSiH4ガスをそれぞれガス分圧7.2×10-3bar,7.3×10-4barで10秒間供給してCVD反応を行わせる。このCVD反応により、第1図(b)に示すように前記酸化膜2の表面上に、例えば約1000〜数1000Å径のシリコンの2次元核群3が形成密度約104〜105個/cm2で微小島状に形成される。なお、上記反応温度より低温の例えば560℃において、SiH4系のガスを例えば0.8Torr等の低圧で短時間供給し、2次元核群3を形成するようにしてもよい。
このように形成された2次元核群3に対し、Hclガスをガス分圧7.2×10-4barで供給しながら1000℃でエッチング処理する。このエッチング反応により微小な2次元核群3は除去されるとともに、第1図(c)に示すように2次元核群3の核径は例えば数10〜数100Å,形成密度は102〜103個/cm2となり、エッチング反応以前に比べて核径で1/10,形成密度で1/100程に低減される。このようにエッチング処理により核径および形成密度が適切に制御された2次元核群30を結晶子として後述する非晶質膜の再結晶を行うことにより、結晶子が多すぎることによる粒界の増大を防ぎ、大粒径化を促進することができる。
次に、同一CVD装置内にHeガス,N2ガス等の不活性ガスを供給しながら、2次元核群30に対して1200℃で5時間の加熱処理を行う。この熱アニール処理により、2次元核群30は再結晶化され、単結晶に近い状態となる。なお、この熱アニール処理を施した直後に、上述のエッチング処理を行うようにしてもよい。
次に、熱アニール処理された2次元核群300に対し、温度を560℃に低下させるとともに、20%Heガス希釈されたSiH4ガスを0.8Torrで供給することにより、第1図(e)に示すように、例えば約2000Åのシリコンの非晶質膜4を形成する。なお、このように非晶質膜4を形成する以前の2次元核群300に対しては、それぞれ酸素や水蒸気および空気等の酸性ガスとの接触を極力さけるようにしなければならない。すなわち、熱アニールにより再結晶化され単結晶に近くなったと考えられる2次元核群300の表面が酸化膜に覆われていると、その上に堆積された非晶質膜4の結晶子として再結晶化に関与する際に、この非晶質に面方位等の結晶化情報を伝達できなくなってしまうためである。
次に、Heガス,N2ガス等の不活性ガスの中で、非晶質膜4で覆われた基板1を560℃で5時間,600℃で10時間,1000℃で10時間,1200℃で6時間加熱処理する。このような熱アニール処理を施すことにより、前記熱アニール処理された2次元核群300を結晶子として非晶質膜4が再結晶化され、例えば数μm以上の大粒径からなるシリコンの多結晶膜5が形成される。
以上実施例によれば、酸化膜2の表面に再結晶化のための核となる2次元核群3を所要の密度で形成するか、あるいは一端形成された2次元核群3にエッチッグ処理等を施すことにより所要の密度に調節し、このようにして得られた2次元核群30を熱アニール処理により再結晶化した上に非晶質膜4を堆積し、この非晶質膜4に熱アニールを行い、前記熱アニールにより単結晶に近い状態となった2次元核群300を結晶子として非晶質膜4の再結晶化をスムーズに進め、大粒径で均質化が図られた多結晶膜5を得ている。また、レーザ光や電子ビームを用いた形成方法のようにビーム径によって再結晶される領域が限定されることがなく、用いるCVD装置を選定することにより多数の大面積基板を処理することが可能であるため、結晶性が良好な多結晶膜5を安価に形成することができる。
なお、上記実施例においては、2次元核群3を減圧CVDで形成しているが、その他プラズマCVD,MOCVD,光CVD,スパッタ法,蒸着法,ECRプラズマCVD法などの一般に非晶質半導体もしくは多結晶半導体を得るために行われている方法を用いてもよい。
また上記実施例においては、熱酸化により形成した酸化膜2の上に2次元核群を堆積するようにしているが、熱酸化による酸化膜2以外にCVDによる酸化膜,窒化膜あるいは炭化膜や、Al2O3,SiC,ガラス基板等であってもよい。
また上記実施例においては、シリコンの基板1に酸化膜2を形成し、この酸化膜2の上にシリコンの多結晶膜5を形成するというシリコン半導体の形成プロセスを取り上げているが、ゲルマニウム半導体やガリウムひ素半導体等の形成プロセスにも応用できることはいうまでもない。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明の多結晶膜の形成方法によれば、予め行われたアニール処理による再結晶化で結晶子を単結晶に近い状態にし、この後に行なわれるエッチング処理により粒径の小さな結晶子を除去し粒径の小さな結晶子を小さくして基板上に残す結晶子の分布及び粒径を調整する。そして、残った結晶子の上に堆積した非晶質膜にアニール処理を施すと結晶子は核として結晶化情報を正確に伝えて非晶質膜の再結晶化を進めるようにしているため、大粒径化と均質化を図ることができ、もって粒界長の短い良質な多結晶膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)は酸化膜を形成した状態を示す基板の部分断面図,第1図(b)は酸化膜の上にCVDで2次元核群を形成した状態を示す部分断面図,第1図(c)はスパッタ処理により2次元核群を低減化させた状態を示す部分断面図,第1図(d)は熱アニールされた基板の状態を示す部分断面図,第1図(e)は2次元核群の上に非晶質膜を堆積させた状態を示す部分断面図,第1図(f)は非晶質膜を熱アニールにより再結晶化した状態を示す部分断面図である。
1……基板、2……酸化膜
3,30,300……2次元核群
4……非晶質膜、5……多結晶膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】基板上に非晶質膜結晶化のための核となる結晶子を化学気相成長法により微小島状に形成することで基板上に結晶子のみを点在させる工程と、前記結晶子をアニール処理により再結晶化する工程と、アニール処理した結晶子をエッチングすることによって基板上に残す結晶子の分布及び粒径を調整する工程と、エッチング処理の工程を経た結晶子の上に非晶質膜を堆積する工程と、非晶質膜を堆積した結晶子をアニール処理することにより非晶質膜を再結晶化して多結晶膜とする工程と、を有することを特徴とする多結晶膜の形成方法。

【第1図(a)】
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【第1図(b)】
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【第1図(c)】
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【第1図(d)】
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【第1図(e)】
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【第1図(f)】
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【特許番号】第2743370号
【登録日】平成10年(1998)2月6日
【発行日】平成10年(1998)4月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−74755
【出願日】昭和63年(1988)3月30日
【公開番号】特開平1−248511
【公開日】平成1年(1989)10月4日
【審査請求日】平成7年(1995)2月24日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(999999999)日産自動車株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭61−260621(JP,A)
【文献】特開 昭62−76715(JP,A)
【文献】特開 昭57−194517(JP,A)