説明

多色化粧品

【課題】グラデーション模様を有する多色化粧品を提供すること。
【解決手段】相互に異なる色に着色された複数の化粧料組成物が、透明容器に、最上層を固形状の化粧料組成物又は液状の化粧料組成物とし、その他の層を固形状の化粧料組成物となるように、上下方向に隙間無く積層されて収納された多色化粧品であって、前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である多色化粧品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色化粧品、さらに詳しくは、グラデーション模様を有する多色化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品にとって、その機能はもとより、化粧品に美しさをもたせることは、化粧効果をより発揮させるために重要である。例えば、化粧品を多色で色づけることによってカラフルで審美的な美しさをもたらしている。また、さらに多色にグラデーション模様をもたせることも審美性を向上させる一つの方法である。
【0003】
多色化粧品にグラデーション模様をもたせる技術に関しては、多数開示されているが、多くは粉末系であり、油系又は水系の固形状化粧料組成物を収納した化粧品にグラデーション模様を付与したに関しては、容器に二種の化粧料組成物を充填し、底面側に充填された化粧料組成物の表面が傾斜面に形成された化粧製品の技術(特許文献1参照)が開示されているのみであり、さらに、趣の異なったグラデーション模様を有する多色化粧品を開発することには意義がある。
【0004】
なお、化粧品の技術ではないが、相互に混じり合う二種の溶融透明石鹸素地のうち、一方の石鹸素地を成形型内に注入して冷却し、次いで、前記冷却された石鹸素地が固化する前に、前記冷却された石鹸素地よりも高い温度で加熱溶融したもう一方の石鹸素地を前記成形型内に注入した後、前記二種の溶融透明石鹸素地が固化するまで冷却して多色を有する透明石けんにグラデーション模様をもたせる技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−320268号公報
【特許文献2】特許第3405853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、グラデーション模様を有する多色化粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、異なる色の複数の化粧料組成物を、透明容器に、最上層以外を固形状の化粧料組成物とし、該固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面を、すり鉢状の凹部を有した面とし、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明になるように、上下方向に積層して充填することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、第一発明は、相互に異なる色に着色された複数の化粧料組成物が、透明容器に、最上層を固形状の化粧料組成物又は液状の化粧料組成物とし、その他の層を固形状の化粧料組成物となるように、上下方向に隙間無く積層されて収納された多色化粧品であって、前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である多色化粧品である。
【0009】
また、第二発明は、前記複数の化粧料組成物が全て固形状の化粧料組成物である前記多色化粧品である。
【0010】
また、第三発明は、加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、次いで、前記透明容器内の前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上に、加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で、前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記二種の化粧料組成物を上下に積層した後、前記二種の化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される前記複数の化粧料組成物が全て固形状の化粧料組成物である前記多色化粧品である。
【0011】
また、第四発明は、加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を溶融状態で透明容器内に注入した後、次いで、前記透明容器内の前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上に、加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する化粧料組成物を半溶融状態で、前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記二種の化粧料組成物を上下に積層した後、前記二種の化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される前記複数の化粧料組成物が全て固形状の化粧料組成物である前記多色化粧品である。
【0012】
また、第五発明は、前記上下方向に積層された複数の化粧料組成物の最上層が液状の化粧料組成物である前記多色化粧品である。
【0013】
また、第六発明は、加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、次いで、前記透明容器内の前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上に、前記常温で透明に固化する化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で液状の化粧料組成物を、前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記常温で透明に固化する化粧料組成物と前記常温で液状の化粧料組成物を上下に積層した後、前記常温で透明に固化する化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される前記上下方向に積層された複数の化粧料組成物の最上層が液状の化粧料組成物である前記多色化粧品である。
【0014】
本発明において、「化粧品」とは、化粧料配合成分を組合せ、均一とした状態の組成物が容器に収納されたものをいう。また、「化粧料組成物」とは、化粧料配合成分を組合せ、均一とした状態の着色された組成物をいい、該組成物を積層して、容器に収納することにより、多色化粧品が形成される。
【0015】
また、化粧品の上側とは、収納された一つの化粧料組成物の凹部が形成された側をいい、例えば、化粧品の製造において、容器を正置して容器の開口口部から化粧料組成物を充填した場合、前記口部側が上側であり、また、逆に容器を倒置して容器の底から化粧料組成物を充填した場合には、前記底部側が上側である。いずれの場合も、凹部は化粧料組成物の上面に形成されていることになる。なお、正置状態とは一般的容器におけるように、口部を上にした状態である。
【0016】
また、「境界部」とは、化粧料組成物層の境界部分であって、境界部における層断面においては二つの化粧料組成物が存在し、そのうちの一つの化粧料組成物の割合が0%を越えて100%未満の範囲にある領域をいう。
【0017】
また、透明とは、半透明を含む概念で透明性のあるものをいう。透明性としては、容器をとおして、境界部において、容器にはじめに充填された第一の化粧料組成物を透過して第二の化粧料組成物が官能的に目視できる程度をいう。なお、透明性の尺度としての透明度は、例えば、試料をとおして、文字、図面等を見て、官能的に判断することや、濁度計を用いて測定される。
【0018】
また、液状、固形状、固形等とは、特に温度等の説明の記載があるもの以外は全て常温での状態を表す。また、固形とは、常温において流動性を有しない、例えばゲル状のものであって、そのような状態を固形状という。すなわち、容器に充填された化粧料組成物を常温において傾けた際、表面形状に変化がなく形状を保持する硬さを有した状態を固形状という。また、固化するとは、流動性を有するものが固形状になることをいう。なお、固形状の硬度は、例えば、ゼリー強度計にて、球状や円盤状のアタッチメントを検体に進入させて測定される。また、液状とは、常温において流動性を有する、例えば液体をいう。
【0019】
また、固形状の化粧料組成物の溶融状態、半溶融状態とは、いずれも流動性を有する状態であって、二種の化粧料組成物が接したときに、二種の組成物が互いに自然に混ざり合うものをそれぞれ溶融状態にあるという。したがって、例えば、青色の溶融状態の化粧料組成物と赤色の溶融状態の化粧料組成物が接すると自然に中間色の紫色又は青と赤のマーブル状の一つの化粧料組成物となる。
【0020】
溶融状態の化粧料組成物の温度を下げていくと半溶融状態になる。半溶融状態の化粧料組成物は、他の化粧料組成物と接しても化粧料組成物が互いに自然に混ざり合うことはない。したがって、例えば、半溶融状態の化粧料組成物と半溶融状態の化粧料組成物が接すると、境界部分において、互いに自然に混ざり合わず、はっきりした境界ができる。なお、互に自然に混ざり合わない二種の化粧料組成物は、境界及び境界部を形成する。
【0021】
半溶融及び溶融の状態は化粧料組成物の温度で調整される。半溶融状態から溶融状態に変化する温度は、粉体、ゲル化剤、増粘剤、固形油分等の種類、配合量等化粧料組成物の処方によって変わる。半溶融状態の温度領域は50〜85℃程度である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る多色化粧品は、外観がきれいな多色を呈するとともに、種々の視点から多色の境界部を見ると、きれいなグラデーション模様をみることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、相互に異なる色に着色された複数の化粧料組成物が、透明容器に、最上層を固形状の化粧料組成物又は液状の化粧料組成物とし、その他の層を固形状の化粧料組成物となるように、上下方向に隙間無く積層されて収納された多色化粧品であって、前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である多色化粧品である。
【0024】
[化粧料組成物について]
本発明の前記化粧料組成物としては、固形状の化粧料組成物が用いられる。さらに、液状の化粧料組成物が用いられる場合もある。前記化粧料組成物は、油性であることが好ましい。
【0025】
前記固形状の化粧料組成物としては、例えば、液状油をそれを固化する固形化剤により固形状化したもの、半固形乃至固形状油分配合により固形状としたもの等が挙げられる。
【0026】
前記固形状の化粧料組成物は、常温で安定に存在するものであれば特に限定されず、流動性のないゲル状のような軟らかい形状のものから、固形状油分で固めたような固い固形状のものまでが含まれる。固形状の化粧料組成物の硬さは、例えば、前記固形化剤、半固形乃至固形状油分等の種類、配合量や、液状油の種類等を選択することによって調整される。
【0027】
また、前記液状の化粧料組成物としては、例えば化粧料組成物用の液状油あるいは液状油を増粘したものを配合したもの等が挙げられる。前記液状油を増粘する増粘剤としては前記油ゲル化剤と同様のものが用いられる。これらの液状の化粧料組成物は透明なものを含む。
【0028】
本発明に配合し得る固形化剤としては、化粧料に一般的に用いられているものが用いられるが、例えば、パルミチン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸石けん等の金属石鹸、不定形微粒子無水珪酸等の油ゲル化剤が挙げられる。液状油をこれらの固形化剤で固形化したものは透明なものを含む。
【0029】
また、本発明に配合し得る液状油としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、月見草油、アボガド油、ツバキ油、小麦胚芽油、綿実油、大豆油、ホホバ油、液状ラノリン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、揮発性炭化水素、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ジオクタン酸ペンタエリトリット、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸、オレイン酸、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、パーフロロポリエーテル等が挙げられる。
【0030】
本発明に配合し得る半固形乃至固形状油分としては、例えば、硬化油、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、固形パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、ラノリン、ゲイロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ホホバロウ、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベへン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル等が挙げられる。
【0031】
本発明に係る化粧料組成物の着色は、着色料の配合されないものも含まれるが、一般的には、着色料が用いられ、着色料としては、例えば、タール系染料、天然色素、無機・有機顔料、パール顔料等が挙げられる。本発明に係る化粧料組成物の「異なる色」は、各組成物全てが異なる色でなくてもよく、隣接する組成物の色が異なれば、化粧料組成物の中に同一色のものが含まれても構わない。
【0032】
本発明に係る化粧料組成物には、前記成分の他に、化粧品、医薬部外品、医薬品等に通常用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記任意配合成分としては、例えば、界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、増粘剤、水溶性高分子、皮膜形成剤、油溶性高分子、粉末、低級アルコール、糖類、紫外線吸収剤、アミノ酸類、ビタミン類、美白剤,皮膚賦活剤,血行促進剤,抗脂漏剤,抗炎症剤等の薬剤、植物抽出物、有機酸、有機アミン、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、収斂剤、清涼剤、香料、水等を挙げることができる。
【0033】
前記化粧料組成物を製造するに当たっては、特に限定されず、一般的な方法で製造される。化粧料組成物は、透明容器に、最上層を固形状の化粧料組成物又は液状の化粧料組成物とし、その他の層を固形状の化粧料組成物となるように、上下方向に隙間無く積層されて収納されている。
【0034】
化粧料組成物が、全て固形状の化粧料組成物であると、多色固形化粧品が得られる。また、最上層を液状の化粧料組成物とすることもでき、固形状の化粧料組成物の層に液状の化粧料組成物の層を設けることができ、化粧品の使用性に広がりを持たせることができる。
【0035】
[透明容器について]
本発明透明容器における容器の形状としては、円柱、角柱等の瓶、ブリスター容器等化粧料組成物容器として一般に用いられるものが用いられる。形状は、特に限定されないが、グラデーション模様を美しく見せるために、円筒状が好ましい。また、容器としては、上部に、使用時に容器内の化粧料組成物を吐出するためのエアレスポンプ等を容器本体の口元につけた容器、化粧料組成物塗布用のチップのついた蓋体を設けた容器(容器本体の口元には前記チップをしごくためのしごき部材をつけてもよい。)等のように、容器の上部に部材を設けた容器も用いることができる。また、容器の材質としては、特に限定されないが、例えば硝子、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン等のプラスチック等が挙げられる。
【0036】
[多色化粧品について]
本発明に係る多色化粧品は、以上のように、透明容器内に相互に異なる色に着色された複数の化粧料組成物が上下方向に隙間無く積層されて収納されてなり、前記複数の化粧料組成物は、最上層を固形状の化粧料組成物又は液状の化粧料組成物とし、その他の層を固形状の化粧料組成物とする構成を基本とするものであるが、さらに、前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である。
【0037】
すなわち、上記構成中の、「前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である」点が本発明の一つの特徴である。
【0038】
本発明においては、前記上面に凹部を有する固形状の化粧料組成物以外の固形状の化粧料組成物や、液状の組成物は透明であることが、グラデーション模様をより美しく見られる点から好ましい。なお、前記相互に異なる色に着色された複数の化粧料組成物は、混ざり合うことなく積層されている。
【0039】
前記固形状の化粧料組成物が有する凹部は、面に一つ形成させて、面の中心方向に向かって徐々に深くなるすり鉢状の凹部としてもよく、また、面に複数設けても構わない。
【0040】
本発明においては、前記上面に凹部を有する固形状の化粧料組成物を透明にすることによって、多色化粧品の側面から見ると、化粧料組成物の境界部にグラデーション模様を見ることができる。例えば、青色に着色された固形状の化粧料組成物とその下層の赤色に着色された上面に凹部を有する固形状の透明化粧料組成物の境界部においては、青から紫を経て赤に変化するグラデーション模様を見ることができる。前記凹部の深さが深いと幅の広いグラデーション模様が見られる。また、面には一つ又は複数の凹部が形成されるので、それぞれ異なったグラデーション模様が見られる。例えば、凹部が複数であるとグラデーションの色の変化が複雑となる。また、多色化粧品を下面から見ると、円周状に色調の変化するグラデーション模様を呈する。この模様は、上層部の化粧料組成物を透明にすると下面のみでなく上面からも見ることができる。
【0041】
本発明に係る多色化粧品を製造するに当たっては、特に限定されるものではないが、例えば、加熱溶融した常温で透明に固化する第1の化粧料組成物を透明容器内に注入して、次いで、前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された第2の化粧料組成物、すなわち、他の加熱溶融した常温で固化する化粧料組成物又は常温で液状の化粧料組成物を流動状態で前記透明容器内の溶融された第1の化粧料組成物の上に充填した後、冷却して製造される。前記製造工程中、第2の化粧料組成物を充填する際の化粧料組成物の充填圧力により、前記第1の化粧料組成物の上面に凹部が形成される。
【0042】
本発明においては、前記加熱溶融した常温で固化する第1及び第2の化粧料組成物が、いずれも半溶融状態にあると、特に、互いの化粧料組成物の境界部の混じり合いがないので発現される光学的なグラデーション模様をクリアに見ることができ、好ましい。また、前記第1及び第2の化粧料組成物の一方が溶融状態にあり、他方が半溶融状態にあると、溶融状態の化粧料組成物が半溶融状態の化粧料組成物の境界表層部分を溶解させるのみで化粧料組成物が互いに自然に混ざることはなく、境界線は若干太くなり、また境界表層部分が溶解されることで境界部の強度が強くなる。溶融状態の化粧料組成物の温度が高い程混ざり合い易くなる。なお、二種の溶融状態の化粧料組成物が接したときには、化粧料組成物が互いに自然に混ざり合い、境界が形成できない。
【0043】
前記第2の化粧料組成物の充填の方法としては、充填ノズルを用いて行うことが好ましい。充填ノズルは、化粧料組成物充填に一般に用いられるものが使用され、ノズル口径は1〜5φが好ましく、ノズル口径が小さい程するどく細い流径の化粧料組成物を吐出することができ、得られる凹部は穴径の小さい深いものとなる。
【0044】
前記充填圧力は特に限定されないが、充填ノズルで充填する場合、口径2φのノズルで2〜10g/sが好ましく、その他の充填法においてもそれに相当する圧力で充填されることが好ましい。充填圧力を強くする程深さの深い凹部が形成される。また、凹部の深さは容器に最初に充填された第1の化粧料組成物の充填時の粘度によっても左右され、粘度が低い程深い凹部が形成される。また、第2の化粧料組成物の充填を第1の化粧料組成物の上面の1ヵ所に行えば一つの凹部が得られ、また数ヵ所に行えば複数の凹部が形成される。
【0045】
本発明においては、一般的には、化粧料組成物の充填を透明容器を正置状態にして容器口部から充填し、それによって上面に凹部が形成される。また、透明容器を倒置状態にして容器の底部から充填しても上面に凹部が形成された化粧品が得られ、この場合、化粧料組成物の境界面は、容器口部側に向かって凸部となる面を形成する。また、容器を傾けた状態で充填すると傾いた境界面のものを得ることができる。この傾いた境界面を有する多色化粧品は複雑なグラデーション模様を呈する。
【0046】
本発明に係る多色化粧品の製造においては、透明容器中に、前記多色を形成させるために常温で透明に固化する化粧料組成物の上に後から充填される化粧料組成物の性状によって、複数の化粧料組成物が、全て固形状の化粧料組成物から形成されている、いわゆる多色固形化粧品と、複数の化粧料組成物の最上層が常温で液体の化粧料組成物とする多色化粧品が得られる。
【0047】
以下、本発明の多色化粧品における、前記相互に異なる色に着色された複数の固形状の化粧料組成物が、透明容器に、上下方向に隙間無く積層されて収納された多色固形化粧品であって、前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である多色固形化粧品について詳細に説明する。
【0048】
該多色固形化粧品は、例えば、加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、次いで、前記透明容器内の前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上に、加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で、前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記二種の化粧料組成物を上下に積層した後、前記二種の化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される。
【0049】
すなわち、以下の工程を含んで製造される。
(1)まず、加熱溶融した常温で透明に固化する第1の化粧料組成物を調製する。
(2)次いで、該第1の化粧料組成物を、半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、その状態を保持する。ここで、第1の化粧料組成物の半溶融状態の保持には、例えば透明容器を保温することにより行われる。また、注入する際の第1の化粧料組成物の温度は、該化粧料組成物が充分に半溶融乃至溶融する温度であればよく、特に限定されない。また、透明容器内への注入は、容器の開口された口部又は開口された底部から行われる。
(3)次いで、前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上に、加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する第2の化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で、前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して、第1の化粧料組成物と第2と化粧料組成物を上下に積層する。
(4)第1の化粧料組成物と第2の化粧料組成物とを充填した後は、これらの上下に積層された化粧料組成物を透明容器内で冷却固化させる。
【0050】
さらに、前記多色固形化粧品は、加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を溶融状態で透明容器内に注入した後、次いで、前記透明容器内の前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上に、加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する化粧料組成物を半溶融状態で、前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記二種の化粧料組成物を上下に積層した後、前記二種の化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される。
【0051】
すなわち、以下の工程を含んで製造される。
(1)まず、加熱溶融した常温で透明に固化する第1の化粧料組成物を調製する。
(2)次いで、該第1の化粧料組成物を、溶融状態で透明容器内に注入した後、溶融状態を保持する。ここで、第1の化粧料組成物の溶融状態の保持には、例えば透明容器を保温することにより行われる。また、注入する際の第1の化粧料組成物の温度は、該化粧料組成物が充分に溶融する温度であればよく、特に限定されない。また、透明容器内への注入は、容器の開口された口部又は開口された底部から行われる。
(3)次いで、前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上に加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する第2の化粧料組成物を半溶融状態で、前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して、第1の化粧料組成物と第2と化粧料組成物を上下に積層する。
(4)第1の化粧料組成物と第2の化粧料組成物とを充填した後は、これらの上下に積層された化粧料組成物を透明容器内で冷却固化させる。
【0052】
次に、本発明の多色化粧品における、前記相互に異なる色に着色された複数の化粧料組成物が、透明容器に、最上層を液状の化粧料組成物とし、その他の層を固形状の化粧料組成物となるように、上下方向に隙間無く積層されて収納された多色化粧品であって、前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である多色化粧品について詳細に説明する。
【0053】
該多色化粧品は、例えば、加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、次いで、前記透明容器内の前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上に、前記常温で透明に固化する化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で液状の化粧料組成物を、前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記常温で透明に固化する化粧料組成物と前記常温で液状の化粧料組成物を上下に積層した後、前記常温で透明に固化する化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される。
【0054】
すなわち、以下の工程を含んで製造される。
(1)まず、加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を調製する。
(2)次いで、前記加熱溶融された常温で透明に固化する化粧料組成物を、半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、その状態を保持する。ここで、半溶融状態の保持には、例えば透明容器を保温することにより行われる。また、注入する際の前記常温で透明に固化する化粧料組成物の温度は、該化粧料組成物が充分に半溶融乃至溶融する温度であればよく、特に限定されない。また、透明容器内への注入は、容器の開口された口部から行われる。
(3)次いで、前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上に、該化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で液状の化粧料組成物を、流動状態で、前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して、常温で透明に固化する化粧料組成物と常温で液状の化粧料組成物を上下に積層する。ここで、常温で液状の化粧料組成物は、加温してもよいが、常温で充分であり、温度としては20〜100℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、前記常温で透明に固化する化粧料組成物の半溶融状態での温度と同程度の50〜80℃である。
(4)前記常温で透明に固化する化粧料組成物と常温で液状の化粧料組成物とを充填した後は、これらの上下に積層された化粧料組成物を透明容器内で冷却し、前記常温で透明に固化する化粧料組成物を固化する。
【0055】
前記複数の固形状の化粧料組成物の組成は、着色料以外は同一であっても、異なっていてもよい。また、着色されない1種類の組成物を調製し、複数に分け、それぞれに異なった着色料を添加し着色して調製しても構わない。
【0056】
本発明における溶融又は半溶融された常温で固化する化粧料組成物の冷却方法は、特に限定されず、冷却する媒体として、水冷、空冷等が挙げられ、温度領域として5〜10℃である。また、自然放冷でも構わない。また、冷却された化粧料組成物の目標温度は20〜30である。
【0057】
なお、本発明に係る前記多色化粧品の製造方法においては、前記工程を含むものであれば、固形状の化粧料組成物は二種に限定されるものではなく、何種の固形状の化粧料組成物を組み合わせてもよい。例えば、三種の固形状の化粧料組成物のうち、第1の固形状の化粧料組成物と第2の固形状の化粧料組成物を前記いずれかの製造法で透明容器に充填した後、さらに第2の固形状の化粧料組成物の上に、第3の固形状の化粧料組成物を充填して、三層の多色固形化粧品を製造することもできる。なお、前記第3の固形状の化粧料組成物を、前記二種の固形状の化粧料組成物を積層させた方法と同様の方法で充填すれば、各層の境界部にグラデーション模様を有する多色固形化粧品が製造される。また、さらに、この上に、常温で液体の化粧料組成物を充填すれば、4層の多色化粧品が製造される。
【0058】
本発明に係る多色化粧品は、外観が多色を呈するとともに、側面から見ると、多色の境界部に一方の化粧料組成物からもう一方の化粧料組成物へかけて色調の変化するグラデーション模様を呈し、下面から見ると、円周状に色調の変化するグラデーション模様を呈する。この模様は、上層部の化粧料組成物を透明にすると下面のみでなく上面からも見ることができる。
【実施例】
【0059】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。
【0060】
[化粧料組成物の製造]
表1に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の化粧料組成物を以下の方法で製造した。
【0061】
(製造法)
成分1〜6を混合後、100℃まで加熱混合溶解し、成分7〜13を投入混合する。
【0062】
【表1】

【0063】
表中、
PET:ポリエチレンテレフタレート
PMMA:ポリメタクリル酸メチル
【0064】
表1の化粧料組成物の物性を同じ表1に示した。
【0065】
[多色化粧品の製造]
以下、多色化粧品の製造例を本発明の実施例として示す。
【0066】
[実施例1]
化粧料組成物Aを50〜80℃に加熱溶融して正置状態の透明容器(縦長の円柱状PET製容器)内に開口された口部から所定量の約半分量になるように注入充填し、半溶融状態とした後、前記透明容器を保温して半溶融状態を保持した。次いで、前記状態を保持しながら、加熱溶融した化粧料組成物Bを半溶融状態とし、50〜80℃にて半溶融状態で充填ノズル(ノズル口径2φ)から前記正置された透明容器内の半溶融状態の化粧料組成物Aの上面の中央部1ヵ所に吐出して所定量になる量を充填して化粧料組成物Aと化粧料組成物Bを上下に積層した後、5〜10℃にて冷却し、前記二種の化粧料組成物を固化させた後、容器の口部に透明な蓋をして、前記化粧料組成物Aの上面が一つのすり鉢状の凹部を有した面である多色固形化粧品を得た。
【0067】
実施例1で得られた多色固形化粧品の斜視図を図1に示した。また、実施例1で得られた多色固形化粧品の側面から見た二種の化粧料組成物の境界部のグラデーション模様の図を図2に示した。なお、図1、2中、1は多色固形化粧品、2は化粧料組成物A、3は化粧料組成物B、4は容器、5は蓋である。
【0068】
図1及び図2から明らかなように、実施例1で得られた多色固形化粧品は、二種の固形状の化粧料組成物の境界部に一つの凹部を形成した境界面を有するものであり、外観はきれいな多色を呈するとともに、多色固形化粧品を側面から見ると、境界部に赤色の化粧料組成物から青色化粧料組成物にかけて凹型のきれいなクリアーなグラデーション模様を観察することができた。
【0069】
また、多色固形化粧品を上方口部及び下方底部側から見ると、いずれも円周状に赤及び青の色調の変化するグラデーション模様を呈していた。以上から、実施例1の多色固形化粧品は、多色の美しさと、きれいなグラデーション模様を呈するという審美性を併せ持つものであった。
【0070】
[実施例2]
化粧料組成物Aを50〜80℃に加熱溶融して正置状態の透明容器(縦長の円柱状PET製容器)内に開口された口部から所定量の約半分量になるように注入充填し、半溶融状態とした後、前記透明容器を保温して半溶融状態を保持した。次いで、前記状態を保持しながら、化粧料組成物Cを50〜80℃にて液体状態で充填ノズル(ノズル口径2φ)から前記正置された透明容器内の半溶融状態の化粧料組成物Aの上面の中央部1ヵ所に吐出して所定量になる量を充填して化粧料組成物Aの上に化粧料組成物Cを積層した後、5〜10℃にて冷却し、前記化粧料組成物Aを固化させた後、容器の口部に透明な蓋をして、前記化粧料組成物Aの上面が一つのすり鉢状の凹部を有した面である多色化粧品を得た。
【0071】
実施例2で得られた多色化粧品は、実施例1と同様に、二種の化粧料組成物の境界部に一つの凹部を形成した境界面を有するものであり、外観はきれいな多色を呈するとともに、多色化粧品を側面から見ると、境界部に赤色の化粧料組成物から無色化粧料組成物にかけて凹型のきれいなグラデーション模様を観察することができた。
【0072】
また、多色形化粧品を上方口部及び下方底部側から見ると、いずれも円周状に赤及び無色の色調の変化するグラデーション模様を呈していた。以上から、実施例2の多色化粧品は、多色の美しさと、きれいなグラデーション模様を呈するという審美性を併せ持つものであった。
【0073】
[実施例3]
化粧料組成物Aを50〜80℃に加熱溶融して45°に傾けた状態の透明容器(縦長の円柱状PET製容器)内に開口された口部から所定量の約半分量になるように注入充填し、半溶融状態とした後、前記透明容器を保温して半溶融状態を保持した。次いで、前記透明容器を正置状態に戻した後、加熱溶融した化粧料組成物Bを半溶融状態とし、50〜80℃にて半溶融状態で充填ノズル(ノズル口径2φ)から半溶融状態の化粧料組成物Aの上面の中央部1ヵ所に吐出して所定量になる量を充填して化粧料組成物Aと化粧料組成物Bを上下に積層した後、5〜10℃にて冷却し、前記二種の化粧料組成物を固化させた後、容器の口部に透明な蓋をして、前記化粧料組成物Aの斜めの上面が一つのすり鉢状の凹部を有した面である多色固形化粧品を得た。
【0074】
実施例3で得られた多色固形化粧品は、二種の固形状の化粧料組成物の境界部に一つの凹部を形成した斜めの境界面を有するものであり、外観はきれいな多色を呈するとともに、多色固形化粧品を側面から見ると、境界部に赤色の化粧料組成物から青色化粧料組成物にかけて斜面に凹型のきれいで複雑なクリアーなグラデーション模様を観察することができた。
【0075】
また、多色固形化粧品を上方口部及び下方底部側から見ると、いずれも円周状に赤及び青の色調の変化するグラデーション模様を呈していた。以上から、実施例3の多色固形化粧品は、多色の美しさと、きれいで複雑なグラデーション模様を呈するという審美性を併せ持つものであった。
【0076】
[実施例4]
化粧料組成物Aを80〜100℃に加熱溶融して正置状態の透明容器(縦長の円柱状PET製容器)内に開口された口部から所定量の約半分量になるように注入充填し、前記透明容器を保温して溶融状態を保持した。次いで、前記状態を保持しながら、加熱溶融した化粧料組成物Bを半溶融状態とし、50〜80℃にて半溶融状態で充填ノズル(ノズル口径2φ)から前記正置された透明容器内の溶融状態の化粧料組成物Aの上面の複数ヵ所に吐出して所定量になる量を充填して化粧料組成物Aと化粧料組成物Bを上下に積層した後、5〜10℃にて冷却し、前記二種の化粧料組成物を固化させた後、容器の口部に透明な蓋をして、前記化粧料組成物Aの上面が複数のすり鉢状の凹部を有した面である多色固形化粧品を得た。
【0077】
実施例4で得られた多色固形化粧品の斜視図を図3に示した。また、実施例4で得られた多色固形化粧品の側面から見た二種の化粧料組成物の境界部のグラデーション模様の図を図4に示した。なお、図3、4中、1は多色固形化粧品、2は化粧料組成物A、3は化粧料組成物B、4は容器、5は蓋である。
【0078】
図3及び図4から明らかなように、実施例4で得られた多色固形化粧品は、二種の固形状の化粧料組成物の境界部に複数の凹部を形成した境界面を有するものであり、外観はきれいな多色を呈するとともに、多色固形化粧品を側面から見ると、境界部に赤色の化粧料組成物から青色化粧料組成物にかけて複数の凹型のきれいな不規則で複雑なグラデーション模様を観察することができた。
【0079】
また、多色固形化粧品を上方口部及び下方底部側から見ると、いずれも円周状に赤及び青の色調の変化するグラデーション模様を呈していた。以上から、実施例4の多色固形化粧品は、多色の美しさと、きれいな不規則で複雑なグラデーション模様を呈するという審美性を併せ持つものであった。
【0080】
[実施例5]
化粧料組成物Aを50〜80℃に加熱溶融して正置状態の透明容器(PET製ブリスター容器)内に開口部から所定量の約半分量になるように注入充填し、半溶融状態とした後、前記透明容器を保温して半溶融状態を保持した。次いで、前記状態を保持しながら、加熱溶融した化粧料組成物Bを半溶融状態とし、50〜80℃にて半溶融状態で充填ノズル(ノズル口径2φ)から前記正置された透明容器内の半溶融状態の化粧料組成物Aの上面の中央部1ヵ所に吐出して所定量になる量を充填して化粧料組成物Aと化粧料組成物Bを上下に積層した後、5〜10℃にて冷却し、前記二種の化粧料組成物を固化させた後、前記開口部をアルミラミネートフィルムにて封じて前記化粧料組成物Aの上面が一つのすり鉢状の凹部を有した面である多色固形化粧品を得た。
【0081】
実施例5で得られた多色固形化粧品は、二種の固形状の化粧料組成物の境界部に一つの凹部を形成した境界面を有するものであり、外観はきれいな多色を呈するとともに、多色固形化粧品を側面から見ると、境界部に赤色の化粧料組成物から青色化粧料組成物にかけて凹型のきれいなクリアーなグラデーション模様を観察することができた。
【0082】
また、多色固形化粧品を下方の化粧料組成物Aの側から見ると、円周状に赤及び青の色調の変化するグラデーション模様を呈していた。以上から、実施例3の多色固形化粧品は、多色の美しさと、きれいなグラデーション模様を呈するという審美性を併せ持つものであった。
【0083】
[実施例6]
化粧料組成物Aを50〜80℃に加熱溶融して倒置状態の透明な蓋が閉められ底部が開口された透明容器(円柱状PE(ポリエチレン)製チューブ容器)内に底部から所定量の約半分量になるように注入充填し、半溶融状態とした後、前記透明容器を保温して半溶融状態を保持した。次いで、前記状態を保持しながら、加熱溶融した化粧料組成物Bを半溶融状態とし、50〜80℃にて半溶融状態で充填ノズル(ノズル口径2φ)から前記透明容器内の半溶融状態の化粧料組成物Aの上面の中央部1ヵ所に吐出して所定量になる量を充填して化粧料組成物Aと化粧料組成物Bを上下に積層した後、5〜10℃にて冷却し、前記二種の化粧料組成物を固化させた後、容器の底部を封じて、前記化粧料組成物Aの上面が一つのすり鉢状の凹部を有した面である多色固形化粧品を得た。
【0084】
実施例6で得られた多色固形化粧品は、二種の固形状の化粧料組成物の境界部に一つの凹部を形成した境界面を有するものであり、外観はきれいな多色を呈するとともに、多色固形化粧品を側面から見ると、境界部に赤色の化粧料組成物から青色化粧料組成物にかけて凹型のきれいなクリアーなグラデーション模様を観察することができた。
【0085】
以上から、実施例6の多色固形化粧品は、多色の美しさと、きれいなグラデーション模様を呈するという審美性を併せ持つものであった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1に係る多色固形化粧品の斜視図である。
【図2】図1の多色固形化粧品の側面から見た二種の化粧料組成物の境界部のグラデーション模様の図である。
【図3】実施例4に係る多色固形化粧品の斜視図である。
【図4】図3の多色固形化粧品の側面から見た二種の化粧料組成物の境界部のグラデーション模様の図である。
【符号の説明】
【0087】
1 多色固形化粧品
2 化粧料組成物A
3 化粧料組成物B
4 容器
5 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なる色に着色された複数の化粧料組成物が、透明容器に、最上層を固形状の化粧料組成物又は液状の化粧料組成物とし、その他の層を固形状の化粧料組成物となるように、上下方向に隙間無く積層されて収納された多色化粧品であって、前記最上層以外の固形状の化粧料組成物の少なくとも一つの上面が、一つ又は複数のすり鉢状の凹部を有した面であり、かつ前記凹部上面を有する固形状の化粧料組成物が透明である多色化粧品。
【請求項2】
複数の化粧料組成物が、全て固形状の化粧料組成物である請求項1記載の多色化粧品。
【請求項3】
加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、次いで、前記透明容器内の前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上に、加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で、前記半溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記二種の化粧料組成物を上下に積層した後、前記二種の化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される請求項2記載の多色化粧品。
【請求項4】
加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を溶融状態で透明容器内に注入した後、次いで、前記透明容器内の前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上に、加熱溶融した前記第1の化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で固化する化粧料組成物を半溶融状態で、前記溶融状態の第1の化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記二種の化粧料組成物を上下に積層した後、前記二種の化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される請求項2記載の多色化粧品。
【請求項5】
前記上下方向に積層された複数の化粧料組成物の最上層が液状の化粧料組成物である請求項1記載の多色化粧品。
【請求項6】
加熱溶融した常温で透明に固化する化粧料組成物を半溶融乃至溶融状態で透明容器内に注入した後、半溶融状態とし、次いで、前記透明容器内の前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上に、前記常温で透明に固化する化粧料組成物とは異なる色に着色された常温で液状の化粧料組成物を、前記半溶融状態の常温で透明に固化する化粧料組成物の上面の1乃至数ヵ所に吐出して充填して前記常温で透明に固化する化粧料組成物と前記常温で液状の化粧料組成物を上下に積層した後、前記常温で透明に固化する化粧料組成物が固化するまで冷却する工程を含んで製造される請求項5記載の多色化粧品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−261949(P2007−261949A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85009(P2006−85009)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)
【Fターム(参考)】