説明

多色熱転写プリンタ、多色熱転写プリンタにおける印刷方法、印画物

【課題】多色熱転写プリンタにおける段ムラの発生を抑える。
【解決手段】複数の色インクの画像を印刷する複数の熱転写ユニットを備え、各色の前記色インクが基材上に重ねられるように転写される多色熱転写プリンタにおける印刷方法であって、下地色を印刷するサーマルヘッドを備えた1の前記熱転写ユニットは、当該基材上の下地色が印刷される印画部の印刷開始端に至る前の非印画部に、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に増加する画像を印刷するとともに、前記印画部の印刷終了端より下流の非印画部に、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に減少する画像を印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各色の色インクを転写して画像を形成する複数の熱転写ユニットを直列に連結した多色熱転写プリンタであって、特に、透明フィルム等にカラー画像を形成するための印刷方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各々所定の色インクを転写して画像を形成する複数の熱転写ユニットを直列に連結した熱転写プリンタが知られている。この熱転写プリンタは、各熱転写ユニットにおいて、インクリボンのフィルム基材と共に連続状原反をサーマルヘッドとプラテンとで挟み当該フィルム基材のインクに所定の熱エネルギを加えることによって、各色インクの画像を連続状原反に転写するようになっている。
【0003】
このような熱転写プリンタにおいて、例えば、透明なフィルムで構成される原反にカラー画像を形成する場合には、従来から、透過性の各色インクの網点に、白色や銀色などの下地色を重ね合わせる手法が知られている。また、このような下地色を転写する場合には、原反の流れ方向において、インクが転写される印画領域の印画開始端では、インクの着きを良くするために、熱量を上げてサーマルヘッドの発熱素子を温める必要がある一方で、印画終了端では、インクの切れを良くするために、熱量を下げてサーマルヘッドの発熱素子を下げる必要があることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3197136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した印画開始端や印画終了端のような急激に熱量が変化する場所では、インクリボンやフィルムの速度変動によるテンション変動が発生し、このテンション変動が他のユニットに伝播して、他のユニットで網点を印刷していると、段ムラ(濃度ムラ)が発生するという問題がある。
【0006】
また、特に、透過性の各色インクの網点に下地色としてのベタ印刷を行う場合は、インクの密着不良を防止するために、通常よりも高い熱量で印刷を行うことがあるが、高い熱量を印加すると非印画部との熱量差が非常に大きくなり、他のユニットに上述したテンション変動が伝播して段ムラ(濃度ムラ)が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題の解消を課題の一つとし、透明なフィルムなどにカラー画像を形成する場合に、段ムラの発生を抑え、カラー画像を高精細で多色刷りすることができる多色熱転写プリンタ等を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。なお、本発明の理解を容易にするため括弧付きの符号を付すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
すなわち、請求項1に係る印刷方法は、複数の色インクの画像を印刷する複数の熱転写ユニットを備え、各色の前記色インクが基材上に重ねられるように転写される多色熱転写プリンタにおける印刷方法であって、下地色を印刷するサーマルヘッドを備えた1の前記熱転写ユニットは、当該基材上の下地色が印刷される印画部の印刷開始端に至る前の非印画部に、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に増加する画像を印刷するとともに、前記印画部の印刷終了端より下流の非印画部に、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に減少する画像を印刷することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る印刷方法は、請求項1に記載の印刷方法において、前記基材上の非印画部と印画部に印刷される画像の前記印画濃度は0%〜100%の間で連続的に変化することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る印刷方法は、請求項1、又は2に記載の印刷方法において、前記画像は網点で構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る印画物は、透明な基材上に下地色と各色が重ねられて印刷される印画物であって、下地色が印刷される印画部と、その印画部の印刷開始端に至る前と印刷終了端より下流の非印画部に、走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に変化する画像が印刷されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る多色熱転写プリンタは、複数の色インクの画像を印刷する複数の熱転写ユニットを備え、各色の前記色インクが基材上に重ねられるように転写される多色熱転写プリンタであって、下地色を印刷するサーマルヘッドを備えた1の前記熱転写ユニットは、当該基材上の下地色が印刷される印画部の印刷開始端に至る前の非印画部には、前記サーマルヘッドへ印加される熱エネルギが連続的に増加するように制御され、前記印画部の印刷終了端より下流の非印画部には、前記サーマルヘッドへ印加される熱エネルギが連続的に減少するように制御されて、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に変化する画像が印刷されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非印画部に所定の画像を印刷することで段ムラを抑え、詳細な多色画像を安定して印刷できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る多色熱転写プリンタによって印刷された転写箔の層構成を示す模式図である。
【図2】下地色を印刷する際の画像印刷方式の一例を説明するための図であって、図2(a)は下地色を印刷した際の画像例、図2(b)はサーマルヘッドへの熱エネルギの印加例を示す図である。
【図3】転写箔の画像が転写された射出成形品の層構成を示す模式図である。
【図4】本発明に係る多色熱転写プリンタの一実施形態の概略正面図である。
【図5】多色熱転写プリンタにおける一つの熱転写ユニットの概略正面図である。
【図6】下地色を印刷する際の網点パターン画像例を示し、図6(a)はパターンディザ方式による画像例、図6(b)は誤差拡散方式による画像例、図6(c)、(d)はハーフトーンスクリーン方式による画像例、図6(e)はカスタムパターン方式による画像例である。
【図7】下地色を印刷する際の他の画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
<実施の形態1>
最初に、この多色熱転写プリンタによって印刷された転写箔の一例について説明する。
【0018】
図1に示すように、この転写箔1は、基材層2の上に、離型層3、保護層4、インク受容層5、インク層6が順に積層された層構造になっている。このうち基材層2からインク受容層5に至る層構成部分が連続状原反の一種である連続状転写箔原反7とされ、後述する多色熱転写プリンタに供されて印刷される。
【0019】
基材層2は例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製の透明又は半透明なフィルム等によって形成され、保護層4は例えばUV硬化型のアクリル樹脂によって形成される。離型層3や保護層4も、例示するまでもない周知の材料で形成される。保護層4及びインク受容層5は、インク層6で形成される画像を透視することができるように、透明材又は半透明材で形成される。
【0020】
インク層6は、公知の熱可塑性樹脂インクによって形成される。インク層6は、黄、赤、藍等各色の透過性の色インクと下地色としての白や銀色の色インクが連続状転写箔原反7のインク受容層5上に刷り重ねられることによって形成され、これにより所望の画像を担持した転写箔1が作られる。
【0021】
なお、図2に示すように、この転写箔1の印画部50の搬送方向両端部に有する非印画部51には、下地色としての色インクが印刷される際に、連続的に印刷濃度が変化する画像55が印刷される。具体的に当該画像55は、非印画部51の開始端51aから印画部50の開始端50aに至るまでは、サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印刷濃度が連続的に増加し、印画部50の終了端50bから非印画部51の終了端51bに至るまでは、サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印刷濃度が連続的に減少するように印刷される。なお、この転写箔1における非印画部51と印画部50に印刷される画像の前記1ラインの印画濃度は0%〜100%の間で連続的に変化している。また、当該画像は網点で構成されても構わない。
【0022】
ここで、印画部とは、画像の有効領域を示し、非印画部とは、画像の有効領域外であり元のデザインに存在しない部分を示すものである。
【0023】
このようにすれば、下地色の印刷において、非印画部51と印画部50との境で急激に熱量が変化しないためテンション変動の発生を防止できる。よって、他のユニットにおける段ムラの発生を防止できる。
【0024】
図3に示すように、上記転写箔1は射出成形品8の表面を所望の画像で装飾するために用いられる。
【0025】
すなわち、上記転写箔1をその基材層2が射出成形の金型(図示せず)のキャビティ面に接するように金型内に貼り付けたうえで、溶融した合成樹脂を金型内に射出すると、射出成形と同時に射出樹脂9の表面に転写箔1がそのインク層6側から貼り付く。射出成形品8を金型から取り出したのちに、転写箔1の基材層2等を除去することによって、射出成形品8の表面に転写箔1から写し取られた画像が露出する。これにより、精細で美麗な画像が表示された射出成形品8が完成する。インク層6は保護層4によって表面を覆われ保護されることから、射出成形品8の表面は長期にわたり美麗な画像で装飾される。
【0026】
なお、転写箔1の非印画領域51には、上述した通り、所定の画像が形成されるが、この部分は射出成型品で用いられるときには裁断されるため、この部分が画像として転写されることはない。
【0027】
次に、上記転写箔1を印刷するための多色熱転写プリンタについて説明する。
【0028】
図4に示すように、この多色熱転写プリンタは、各々所定の色インクの画像を連続状転写箔原反7に印刷する複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVが、直列で配列されることにより構成される。
【0029】
連続状転写箔原反7の多色熱転写プリンタ内における流れ方向に見て、上流側には未印刷の連続状転写箔原反7を繰り出す繰り出しロール7aが設置され、下流側には既印刷の連続状転写箔原反7を巻き取る巻き取りロール7bが設置される。繰り出しロール7aと巻き取りロール7bの各巻芯には、各々ベクトルインバータモータ24,25の回転軸が連結される。両ロール7a,7bは、連続状転写箔原反7が両ロール7a,7b間を所定速度で走行するようにベクトルインバータモータ24,25によって回転を制御される。
【0030】
熱転写ユニットI,II,III,IVは、上記繰り出しロール7aと上記巻き取りロール7bとの間において、連続状転写箔原反7の上流側から下流側に向かって、藍、赤、黄、下地色としての白の各色インクを刷るように並べられる。もちろん、この熱転写ユニットI,II,III,IVの配列は、藍、赤、黄、白の順に限られるものではない。また、四ユニットに限られるものでもなく、三色刷りの三ユニット、二色刷りの二ユニットにしてもよいし、他の色インクをさらに印刷することができるようにユニットを四基からさらに増設してもよい。
【0031】
図5に示すように、藍色インクの熱転写ユニットIには、水平方向に走行する連続状転写箔原反7を上方向に迂回させるためのガイドローラ10,11が設けられる。これらガイドローラ10,11の上方には、迂回する連続状転写箔原反7を走行させるプラテン12が配置される。プラテン12の上方には、サーマルヘッド13がプラテン12に対向するように配置される。プラテン12とサーマルヘッド13との間には藍色のインクリボン14が配置される。
【0032】
プラテン12は、表面がゴムで覆われたロールである。
【0033】
図5に示すように、プラテン12とサーマルヘッド13との間を通る連続状転写箔原反7を、サーマルヘッド13の前後でプラテン12に対して各々押圧するニップローラ15,15が必要に応じて設けられる。このニップローラ15,15により連続状転写箔原反7がプラテン12の表面に押し付けられることによって、連続状転写箔原反7とプラテン12との間での滑りが防止される。これにより、画像がより精細、美麗に印刷されることとなる。
【0034】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタは、プラテン12を加温する加温手段を備えている。この加温手段には、例えば、図5に示すように、遠赤外線ヒータ16が用いられ、この遠赤外線ヒータ16は、プラテン12の下方に設置される。この遠赤外線ヒータ16は、この多色熱転写プリンタが印刷を開始する前にプラテン12が所定の温度(好ましくは連続印刷時の飽和温度)に加温制御される。プラテン12はその表面がゴムでできているため、印刷し続けることにより蓄熱し、径が変動し、それに伴い連続状転写箔原反7の走行速度が変化するが、この加温手段によってプラテン12をあらかじめ連続印刷時の飽和温度まで加温しておくことによって、そのような不都合を解消することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、加温手段として遠赤外線ヒータ16を用いたが、特にこの形態に限られるものではなく、公知の技術を用いることが可能である。
【0036】
サーマルヘッド13は、垂直方向に上下に移動可能であり、画像を印刷する際には、図5に示すようにインクリボン14をプラテン12に向かって押し付けるようになっている。
【0037】
このサーマルヘッド13は、その走査方向にライン状に配列され解像度分の抵抗を備えた複数の発熱素子を備えている。そして、サーマルヘッド13の各発熱素子に所定の熱エネルギを加え、各発熱素子に対応する当該インクリボン14のインクが連続状転写箔原反7に転写されることで所定の印刷画像を形成するためのインク層6が形成される。
【0038】
また、本実施形態の多色熱転写プリンタは、サーマルヘッド13を加温する加温手段を備えている。本実施形態の加温手段は、図示しないが、印刷前にサーマルヘッド13が所定の温度(連続印刷時の飽和温度)まで加温制御され、サーマルヘッド13周辺の温度とプラテン12周辺の温度とがほぼ一定に保たれるように制御される。なお、このようなサーマルヘッド13を加温する加温手段は、従来から公知の他の加温手段を適用することができる。
【0039】
ところで、図5に示すように、藍色インクの熱転写ユニットIにおけるインクリボン14は、連続状フィルム等の表面に藍色インクが塗布されてなるもので、その繰り出しロール14aと巻き取りロール14bが、プラテン12及びサーマルヘッド13を連続状転写箔原反7の上流側と下流側から挟むように配置される。インクリボン14の繰り出しロール14aと巻き取りロール14bは、図5に示す印刷時において、インクリボン14がプラテン12の回りを連続状転写箔原反7と同じ速度で走行するように制御される。
【0040】
プラテン12が回転すると、連続状転写箔原反7がプラテン12の周速度と同じ一定速度でプラテン12とサーマルヘッド13との間をインクリボン14と重なった状態で通過しつつ、その表面に藍色インクの画像が熱転写される。
【0041】
藍色インクの熱転写ユニットIは、以上のように構成されるが、他の色インクの熱転写ユニットII,III,IVも同様に構成される。ただ、インクリボン14のインクの色が異なるのみである。従って、他の色インクの熱転写ユニットII,III,IVについての詳細な説明は省略する。
【0042】
連続状転写箔原反7は各色の熱転写ユニットI,II,III,IVのプラテン12によって各ユニットI,II,III,IV内のサーマルヘッド13下を互いに同一の一定速度で走行するが、その状態で印刷を続行すると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化し、これが色ずれの発生の原因となる。張力が低すぎると連続状転写箔原反7が弛んで蛇行や印刷開始時の位置ずれの原因となり、張力が高すぎるとフィルムが駆動ローラとの間でスリップして正常に搬送されなくなる。
【0043】
これを防止するために、図4に示すように、所定箇所、例えば連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと先頭の熱転写ユニットIとの間や、後尾の熱転写ユニットIVと巻き取りロール7bとの間に、張力検出器18及び張力調整ローラ19a,19bが各々設けられる。
【0044】
張力調整ローラ19a,19bの一方には例えばサーボモータ23が接続される。張力検出器18により検出された張力と適正張力とのズレは図示しない他の制御部を介しサーボモータ23に送られるようになっている。このサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19bに伝達されることによって、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、色ずれのない画像が印刷される。
【0045】
また、張力検出器18は、上記連続状転写箔原反7の繰り出しロール7aと巻き取りロール7bを各々回転させるベクトルインバータモータ24,25に対しても設けられる。この張力検出器18により検出された張力と適正張力とのズレも上記図示しない他の制御部を介しベクトルインバータモータ24,25に送られる。このベクトルインバータモータ24,25の制御された駆動力が繰り出しロール7aと巻き取りロール7bに各々伝達されることによって、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれる。
【0046】
本実施形態の多色熱転写プリンタは、特に、印画部50へのインク転写時に加えられる熱エネルギの、印画部50と非印画部51との間の熱量差やその周辺の環境温度変動によって発生する摩擦力の変化により段ムラが発生することを防止すべく、印刷時に加えられる印画部50と非印画部51の熱量差を近づけて、摩擦力を一定に保ち、段ムラの発生を防止するようになっている。
【0047】
具体的には、白色や銀色などの下地色の印刷時において、印画部50には画面間で切れ目のないベタ画像となるため、印画部50と非印画部51との間の熱量差が高くなる。そのため、この印画部50と非印画部51との境界において摩擦力の変化が生じ、他のユニットにおいて段ムラ(濃淡ムラ)が発生する。そこで、本実施形態の多色熱転写プリンタでは、図2に示すように、下地色における印画部50へのインク転写時において、この印画部50の搬送方向両端部に有する非印画部51には、連続的に印刷濃度が変化する網点又は画像55が印刷されるように、サーマルヘッド13へ印加される熱エネルギを徐々に高める(又は下げる)。具体的に当該網点又は画像55は、非印画部51の開始端51aから印画部50の開始端50aに至るまでは、サーマルヘッド13へ印加される熱エネルギEを徐々に高めるように制御し、走査方向の1ラインにおける印刷濃度が連続的に増加するように印刷され、印画部50の終了端50bから非印画部51の終了端51bに至るまでは、サーマルヘッド13へ印加される熱エネルギEを徐々に下げるように制御し、走査方向の1ラインにおける印刷濃度が連続的に減少するように印刷される。このようにすれば、下地色の印刷において、非印画部51と印画部50との境で急激に熱量が変化しないためテンション変動の発生を防止できる。よって、他のユニットにおける段ムラの発生を防止し、刷り出しから印刷終了まで安定した印画を得ることができる。
【0048】
ここで、非印画領域に印刷される網点としては、例えば、図6(a)に示すパターンディザや図6(b)に示す点の密度で濃淡を表わすFMスクリーン又は点の大きさで濃淡を表わすAMスクリーンなど誤差拡散法により濃淡を表わす網点、図6(c)、(d)、(e)に示すスクリーン線の形状や太さ、又は角度を変えて濃淡を表わすハーフトーンスクリーンや岩などの画像を複数重ね合わせて濃淡を表したカスタムパターンにより濃淡を表わす網点が用いられる。
【0049】
また、非印画部に印刷される画像としては、例えば、図7に示すような三角形状のベタ画像であって、この画像は、上述したように印画部50の搬送方向両端部の非印画部51に印刷される。この画像は、上述した三角形状に限定されるものではなく、上述したように、走査方向の1ラインの総熱量が段階的に上昇又は下降する画像であればどのような形状であっても構わない。
【0050】
次に、上記多色熱転写プリンタの動作等について図4を用いて説明する。
【0051】
印刷の開始にあたり、上述したようにプラテン12の加温手段、サーマルヘッド13の加温手段の両方を用いて、プラテン12やサーマルヘッド13を連続印刷時の飽和温度まで加温制御する。
【0052】
また、連続状転写箔原反7の巻き取りロール7aと繰り出しロール7bとが各々のベクトルインバータモータ24,25の駆動によって回転し、連続状転写箔原反7が各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内を走行する。
【0053】
また、各色の熱転写ユニットI,II,III,IV内では、プラテン12が速度一定制御式サーボモータの駆動によって一定速度で回転しつつ連続状転写箔原反7をその上流側から下流側へと送る。その際プラテン12上にサーマルヘッド13がインクリボン14を連続状転写箔原反7に押し付け、該当する色インクを画像として連続状転写箔原反7に転写させる。
【0054】
なお、下地色としての色インクを転写させる際において、上述したように、この印画部50の搬送方向両端部に有する非印画部51には、連続的に印刷濃度が変化する網点又は画像が印刷されるように、サーマルヘッド13へ印加される熱エネルギを徐々に高め、又は徐々に下げるように下地色用の熱転写ユニットIVを制御する。
【0055】
全色が刷られることにより画像が形成された連続状転写箔原反7は連続状の転写箔1として巻き取りロール7aに巻き取られる。
【0056】
上記印刷が続行されると、連続状転写箔原反7の張力が徐々に変化する可能性がある。そこで、印刷中張力検出器18により連続状転写箔原反7の張力が検出され、適正張力と比較されたうえでズレを解消するための信号が図示しない制御部を介しベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23に送られる。
【0057】
このベクトルインバータモータ24,25やサーボモータ23の制御された駆動力が張力調整ローラ19aや繰り出しロール7a、巻き取りロール7bに伝達されることにより、連続状転写箔原反7は張力が一定に保たれつつ上記複数個の熱転写ユニットI,II,III,IVを通過し、これにより、色ずれのない精細かつ美麗な画像が印刷される。
【0058】
巻き取りロール7bとして巻き取られた連続状転写箔原反7は、巻かれた状態で成型機に取り付けられて転写箔1として使用される。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変更可能である。例えば、本実施形態では、インモールド成型に関する印刷例を示しているが、本願発明は、インモールド成型だけに留まらず、熱転写印刷全てに応用可能であるため、本実施形態に示す連続状転写箔原反7に限られず一般的な印画物としても適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
I,II,III,IV…熱転写ユニット
7…連続状転写箔原反
12…プラテン
13…サーマルヘッド
14…インクリボン
15…ニップローラ
16…予熱手段
18…張力検出器
19a,19b…張力調整ローラ
20a,20b…フィードローラ
23…サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色インクの画像を印刷する複数の熱転写ユニットを備え、各色の前記色インクが基材上に重ねられるように転写される多色熱転写プリンタにおける印刷方法であって、
下地色を印刷するサーマルヘッドを備えた1の前記熱転写ユニットは、
当該基材上の下地色が印刷される印画部の印刷開始端に至る前の非印画部に、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に増加する画像を印刷するとともに、前記印画部の印刷終了端より下流の非印画部に、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に減少する画像を印刷することを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記基材上の非印画部と印画部に印刷される画像の前記印画濃度は0%〜100%の間で連続的に変化することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記画像は網点で構成されていることを特徴とする請求項1、又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
透明な基材上に下地色と各色が重ねられて印刷される印画物であって、
下地色が印刷される印画部と、その印画部の印刷開始端に至る前と印刷終了端より下流の非印画部に、走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に変化する画像が印刷されていることを特徴とする印画物。
【請求項5】
複数の色インクの画像を印刷する複数の熱転写ユニットを備え、各色の前記色インクが基材上に重ねられるように転写される多色熱転写プリンタであって、
下地色を印刷するサーマルヘッドを備えた1の前記熱転写ユニットは、
当該基材上の下地色が印刷される印画部の印刷開始端に至る前の非印画部には、前記サーマルヘッドへ印加される熱エネルギが連続的に増加するように制御され、前記印画部の印刷終了端より下流の非印画部には、前記サーマルヘッドへ印加される熱エネルギが連続的に減少するように制御されて、前記サーマルヘッドの走査方向における1ラインの印画濃度が連続的に変化する画像が印刷されることを特徴とする多色熱転写プリンタ。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−76326(P2012−76326A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222560(P2010−222560)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】