説明

多血小板血漿濃縮装置および方法

本発明のPRP分離装置および濃縮装置は外傷患者に対する診察室用または急患用に適している。上記PRP分離装置は電動の遠心分離アセンブリと濃縮アセンブリとを備える。上記遠心分離アセンブリは、赤血球補足モジュールと、上記遠心ドラム分離装置に接続された、駆動軸を有するモータを含む遠心ドラム分離装置とを備える。上記濃縮装置アセンブリはPRP濃縮物を調整する水分除去モジュールを備える。上記遠心ドラム分離装置は赤血球のトラップを備える。上記水分除去モジュールは水分吸収ビーズを含むシリンジ装置または水を吸い上げる中空糸モジュールであってもよい。上記中空糸は、血小板の活性化を回避し、かつ上記PRPにおけるほんの微量の赤血球の存在を防止しつつ、繊維膜を介して水を通し、かつ凝固因子と成長因子とを通さない孔を有する膜である。上記凝固因子は組織の封止および接着に有用であり、上記成長因子は治癒に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
組織の封止剤および接着剤として使用するために損傷治癒力を向上させた血小板血漿濃縮物を調整する装置および方法に関する。その産物は、血中よりも数倍高い、十分に活性な(変性されていない)フィブリノゲン濃度、および血中よりも遥かに高い血小板濃度を有している。
【0002】
〔発明の背景〕
血液は、分画することができ、かつ血液の異なる分画は、異なる医療的な必要物として使用される。重力および遠心力の影響下において、血液は、自然に3つの層になって沈降する。平衡状態において、上部の低密度の層は、血漿と呼ばれる淡い黄色の透明な液体である。血漿は、塩、代謝生成物、ペプチド、および小さなもの(インスリン)から大きなもの(補体の構成要素)まで、多くのタンパク質の水溶液である。
【0003】
底部の高い密度の層は、酸素の輸送に特化した不透明な赤色の血液細胞(赤血球)からなる、粘性を有する真紅の液体である。赤血球が有する比重の原因であるキレート鉄またはヘムの高い濃度によって、この赤い色がでる。赤血球からなる全血の相対的な容積は、ヘマトクリットと呼ばれる。そして、正常なヒトにおいて、ヘマトクリットは、全血の約37%から約52%の範囲を変動する。
【0004】
中間の層は、赤血球の上記層の上にあり、かつ血漿の上記層の下にある、最も小さい白色の薄いバンドとして現れる。中間の上記層は、淡黄膜と呼ばれる。上記淡黄膜自体は、2つの主要な構成要素を有している。2つの主要な構成要素とは、有核の白血球(白血球細胞)および血小板(または栓球)と呼ばれる無核のより小さい集団である。白血球は、免疫を与え、かつ細片の捕捉に寄与する。血小板は、血管の裂け目を覆って、出血を止め、かつ損傷部に成長因子および損傷治癒因子を運ぶ。よりゆっくりと、またはより短い時間、遠心することによって、血漿から赤血球および白血球を分離しつつ、より小さい血小板を上記血漿に留まらせることができる。この結果として、多血小板血漿になる。
【0005】
損傷の治癒に使用する組織の封止剤としての、全血からの血漿の濃度を向上させることは、米国特許5,585,007号に記載されている。上記米国特許は、その全体を引用することによって、本明細書に組み入れられる。内科の検査室または外科の手術室(surgical amphitheatre)に設置するために設計された、上記米国特許の装置は、組織封止剤を調整するための使い捨てカートリッジが使用されている。上記装置は、特に、自家組織の封止剤を直ちに調整する目的に適用可能である。手術室において、50mlの患者の血液から5mlの封止剤を調整には、15分未満しかかからず、かつ1つの単純な操作手順のみが必要である。手順が手術室において行われるので、進行上の過失のリスクがない。添加される化学物質は、抗凝血剤(例えば、クエン酸塩)および塩化カルシウムに限定されてもよい。上記使い捨てカートリッジは、手のひらに合い、かつ密封されて、患者の血液の曝露を排除、および無菌性を保障する。生成物の接着力および伸張力は、沈降法を用いて作製されたプール血液フィブリン封止剤と比較して、同等または優れている。上記組織封止剤には、患者の血小板に由来する線維素溶解に対する天然の阻害剤が高濃度に含まれているので、抗線維素溶解剤(アプロチニンなど)を必要としない。また、新しい上記組織封止剤は、傷の治癒を促進する、患者の血小板および付加因子を任意に含んでいる。患者の血小板および付加因子は、購入可能なフィブリン封止剤には含まれていない、治癒因子である。
【0006】
上記装置には、各工程用の分離チャンバを備える新規な使い捨てカートリッジが用いられている。上記装置は、十分な出力を備える通常の医療環境における使用を目的として設計されているので、長期間に渡る耐久性、安全性、および信頼性を目指して設計された上記装置は、比較的に重量のある従来の遠心分離用のモータおよび装備品を用いていた。
【0007】
血液から血小板濃縮物を得るための、小型の、遠心分離装置内蔵型の装置は、2003年3月21日に出願された、同一出願人による係属中の出願番号10/394,828に記載されている。上記出願は、その全体を引用することによって、本明細書に組み入れられる。上記装置は、血液を、赤血球の層、血漿の層および血小板の層に分離し、かつ血小板濃縮物として血小板層を選択的に移動させる。血小板濃縮物は、血小板が血漿に留まっているものである。濃縮されていない形態を有している血漿の上記分画は、止血または組織接着には効果的ではない。
【0008】
〔発明の要約〕
本発明の目的は、十分に活性を有する濃縮された血漿に懸濁されている血小板の濃縮物を生成する、小型および自己充足型のシステムを提供することである。上記血小板は、水の除去によって濃縮され、かつ十分に活性を有する型のフィブリノゲンが残っている血漿に懸濁された実質的に不活性な血小板である。
【0009】
本発明の上記PRP分離装置および濃縮装置は、外傷患者に対する診察室用または急患用に適している。
【0010】
1つの実施形態は、常設のモータセンブリを用いて利用するために設計された、簡単に処分できる、および自己充足型のPRP分離装置および濃縮装置のユニットである。
【0011】
他の実施形態は、内部モータおよび電力供給アセンブリを備えている、自己充足型のおよび簡単に処分できるPRP分離装置および濃縮装置である。
【0012】
さらに他の実施形態は、PRPを調整するための電動の遠心分離ユニットである。
【0013】
上記PRP分離装置は、上記PRPを濃縮するための、電動の遠心分離装置アセンブリおよび付加的な濃縮装置アセンブリを備えている。上記遠心分離装置アセンブリは、遠心分離ドラムを備え、上記遠心分離ドラムは、赤血球補足モジュールおよび上記遠心分離ドラムに接続された駆動軸を有するモータを含んでいる。上記濃縮装置アセンブリは、PRP濃縮物を調整するための水除去システムを備えている。
【0014】
上記遠心分離ドラムは、上端部および下端部を含む内壁表面、ドラムの底、および中心軸を有している。上記ドラムの底は、中心のくぼみおよび上記下端部から上記中心のくぼみの中心に向かって下方に傾斜している床を有していてもよい。
【0015】
本発明の上記PRP分離装置および濃縮装置の携帯用および自己充足型の実施形態において、電動の上記遠心分離アセンブリは、駆動軸を有するモータを含む。上記駆動軸は、上記中心軸と同軸である。上記モータは、少なくとも120秒の間に2000rpmの速度によって上記遠心分離ドラムを回転させる能力を有する。上記モータには、オンオフスイッチまたはタイマースイッチを介してバッテリが接続されていてもよく、上記バッテリは、上記分離処理を完了するために十分な電力を供給する能力を有している。携帯型の上記遠心分離装置は、外部コンテナの中に密閉されていてもよい。上記外部コンテナは、上記中心のくぼみと一直線に配置された無菌シリンジ流入口を備える上部を有している。上記シリンジ流入口には、接続チューブが接続され、かつ上記接続チューブは、上記シリンジ流入口から下方に伸びている。
【0016】
1つの実施形態において、上記赤血球捕捉モジュールは、上記遠心分離装置ユニットの内壁表面に整列しているデプスフィルタであり、上記デプスフィルタは、血液からの赤血球の遠心分離において、上記デプスフィルタが有する孔を移動する赤血球を捕捉し、かつ遠心分離が終了したとき、上記デプスフィルタに赤血球を保持する大きさ形成された孔を有している。用語“デプスフィルタ”とは、本明細書において使用されるとき、ねじれた通路の内部において、主に混入物を保持する濾過手段を意味している。上記デプスフィルタは、上記デプスフィルタ表面に接触する血小板を有為に活性化しない、フェルトのような材料から形成された、開放セル型またはマトリクス状の形態であってもよい。遠心分離において上記血漿を介して外側に移動する赤血球は、上記デプスフィルタ内に移動し、かつ上記デプスフィルタによって捕捉されて、実質的に赤血球を含んでいないPRPが残される。
【0017】
本発明の他の実施形態において、上記遠心分離ドラムの上記内壁表面は、上記中心軸に対して1度〜15度の角度に上記底から外側に傾斜していてもよい。上記遠心分離ドラムの上記上端部は、環状を有する外部の赤血球捕捉チャンバによって囲まれていてもよい。上記赤血球捕捉チャンバは、外壁および内壁を有している。上記外壁は、上記内壁よりも高い上端部を有している。上記内壁の頂部よりも下にある上記赤血球捕捉チャンバの容積は、上記PRPを最小限に保持しつつ、血液における分離された赤血球の総量を保持する大きさに形成されている。この実施形態において、遠心分離において上記血漿を通って外側に移動する赤血球は、上記赤血球捕捉チャンバの上記外壁にぶつかって保持され、遠心分離が終了すると、赤血球は、下方に滑り落ちて、上記赤血球捕捉チャンバの下部にある容積を実質的に満たす。遠心分離において、上記赤血球捕捉チャンバにおいて液体に懸濁されている血小板は、上記頂部に移動し、上記赤血球捕捉チャンバの内面を乗り越え、そして、上記遠心分離ドラムに移動する。結果として、上記血小板は、赤血球の沈殿によって追い出された血漿の流れと共に運ばれる。さらに、上記赤血球捕捉チャンバの上記内壁の内、少なくとも上記上部表面が、上記中心軸に対して少なくとも25度の角度“a”を有している。これによって、遠心分離において、血小板が遠心力に抗し、かつ上記赤血球捕捉チャンバの上端部を乗り越えて流れやすくなる。血漿が上記赤血球捕捉チャンバから遠心分離ドラムに流れるが、血漿を流すための入り口または横断面積は、上記内壁表面の上り坂の傾斜によって、減少される。このため、上記表面を越えて流れる血漿の速度が上昇し、かつ血漿によって首尾よく運ばれる血小板の量を増加させる。
【0018】
1つの実施形態において、PRP分離装置および濃縮装置の上記濃縮装置アセンブリは、水を除去する中空糸カートリッジ、ポンプおよび上記中空糸カートリッジと上記ポンプとを接続する配管を備えている。上記配管は、上記ポンプと上記中空糸カートリッジとを介して上記遠心分離ドラムにおいてPRPを循環させ、それから上記PRPを遠心分離ドラムに戻す。上記中空糸カートリッジにおいて、上記糸(繊維質)は、水が繊維質の膜を通過し、かつ治療に適した成長因子の通過を排除するような孔を有する限外濾過膜である。上記孔の構造および表面は、血小板の活性化およびPRPに残っているいかなる赤血球の崩壊を回避するために選択されている。
【0019】
他の実施形態において、上記濃縮装置アセンブリは、血漿濃縮シリンジを有している。上記シリンジは、上記遠心分離ドラムの中心または中心のくぼみと接続しているルアー取り付け部を有している。本実施形態において、上記血漿濃縮シリンジは、内面および出入り口を有する円筒形の容器、および上記容器の内面と合わさる外面を有する円筒形の差動ピストンを備えている。乾燥ヒドロゲルなどである濃縮ビーズは、上記ピストンと上記出入り口との間に配置されている。上記出入り口を介して上記濃縮ビーズの漏れを防止するフィルタが、上記出入り口と隣接して配置されている。上記シリンジ濃縮装置の動作において、上記出入り口から離れる方向に上記ピストンを動かすことによって、上記濃縮チャンバの中にPRPが引き込まれる。上記濃縮ビーズによって上記PRPから水が除去される。これによって、上記血小板を活性化することなく、または上記血漿におけるフィブリノゲンを変性させることなく、上記PRPを濃縮する。上記出入り口の方に上記ピストンを動かすことによって、上記出入り口を介して濃縮されたPRPを排出する。
【0020】
本発明の装置が、これらの電源ような通常のバッテリを用いて動作されるので、本発明の装置は、従来技術における遠心分離装置よりもはるかに少ない電力を消費する。これによって、実質的に節電することができる。
【0021】
中心軸を有する本発明のPRP分離装置および濃縮装置のさらなる実施形態は、固定ハウジングおよび回転アッセンブリを備えている。上記回転アセンブリは、上記固定ハウジングにおいて上記中心軸の周りを回転させるために取り付けられている。上記回転可能なアセンブリは、回転可能な遠心分離装置および遠心分離濃縮装置と駆動モータとを備えている。連結部が、上記駆動モータと上記回転可能なアセンブリとを接続しており、上記モータと上記連結部とが配置されて、上記中心軸の周りを上記回転可能なアセンブリを回転させる。
【0022】
上記遠心分離装置は、内部分離チャンバおよび外部赤血球捕捉系を有している。上記濃縮装置は、乾燥ビーズを含む濃縮チャンバを備えている。上記濃縮チャンバは、床および複数の直立遮蔽物支持体を備えており、上記直立遮蔽物支持体は、内面および外面を有している。円筒形の遮蔽物が上記直立遮蔽物支持体の外面に支持されている。
【0023】
軸方向に同軸の固定チューブが、上記ハウジングに固定され、かつ上記濃縮チャンバを通って伸びている。固定ビーズレーキが、上記チューブに固定され、かつ半径方向に向かって外側に伸びている。上記直立遮蔽物支持体の上記内面に隣接して配置されている遠心端を有している。
【0024】
このアセンブリッジによれば、上記固定ハウジングにおいて上記回転アセンブリが低速に回転すると、上記固定レーキを通過するビーズが引っ張られるので、上記ビーズのゲル分極および凝集を低減する。
【0025】
隣接する上記直立遮蔽物支持体の組のそれぞれは、上記レーキの上記遠心端から半径方向に向かって外側に乾燥ビーズを保持する乾燥ビーズ受容部の範囲を決めることができる。高速回転段階における上記レーキによるビーズの破壊が実質的に回避される。
【0026】
上記分離装置および濃縮装置は、モータ制御部を含んでいてもよい。ここで、上記駆動モータは、遠心分離段階およびPRP回収段階において要求される高い回転速度、および乾燥ビーズによって水を除去するために必要な低い回転速度を有する。上記モータ制御部は、上記回転アセンブリの高いおよび低い回転速度を始めるためのスイッチを含んでいる。
【0027】
上記スイッチは、遠心分離段階およびPRP濃縮回収段階において上記回転アセンブリの高い回転速度を起こし、上記PRP濃縮回収段階において上記回転アセンブリの引く緩やかな回転速度を起こす。
【0028】
本発明の他の回転可能なPRP濃縮装置は、中心軸を有する固定ハウジングを備えている。上記濃縮装置は、駆動モータおよび上記駆動モータと上記遠心分離装置とを接続する連結部を有する。上記遠心分離装置は、その中心軸の周りを回転する。上記濃縮装置は、乾燥ビーズを含む濃縮チャンバを備え、上記濃縮チャンバは、床および複数の直立遮蔽物支持体を備えている。上記直立遮蔽物支持体は、内面および外面を有している。円筒形の遮蔽物が、複数の上記直立遮蔽物支持体の上記外面上に支持されている。上記ハウジングに固定されている軸方向に同軸の固定チューブが、上記濃縮チャンバを介して伸びている。固定ビーズレーキが、上記チューブに固定され、上記直立遮蔽物支持体の上記内面に隣接して半径方向に向かって外側に伸びている。
【0029】
上記構成によれば、上記回転アセンブリが上記固定ハウジングに対してゆっくり回転することによって、上記固定レーキを通過するビーズは引き付けられる。結果として、上記ビーズのゲル分極および凝集を低減することができる。
【0030】
隣接する上記直立遮蔽物支持体の組およびそれらの間に伸びている上記遮蔽物部分のそれぞれが、上記レーキの上記遠心端から半径方向の外側に乾燥ビーズを保持する乾燥ビーズ受容部を決める。これによって、高速回転段階における上記レーキによるビーズの破壊を実質的に避けることができる。
【0031】
上記分離装置および濃縮装置は、モータ制御部を含んでいてもよい。ここで、上記駆動モータは、上記PRP回収段階に必要な高い回転速度、および乾燥ビーズによる水の除去に必要な緩やかな回転速度を有している。上記モータ制御部は、上記回転アセンブリの高いおよび低い回転速度を起こすスイッチを含んでいる。上記スイッチは、上記PRP濃縮回収段階において上記回転アセンブリの高い回転速度を起こし、かつ上記PRP濃縮回収段階における上記回転アセンブリの低い緩やかな回転速度を起こす。
【0032】
〔図面の簡単な説明〕
添付の図面とともに以下の詳細な説明を参照することによって、本発明のより全面的な適用例および付随の利点について、容易に理解することができるであろう。
【0033】
図1は、環状の赤血球のトラップを備えている本発明の遠心分離装置の概略的な断面図である。
【0034】
図2は、遠心分離装置、および図1に示す遠心分離装置の環状の赤血球のトラップ部を示す部分断面図である。
【0035】
図2Aは、赤血球のトラップの他の例を示す部分断面図である。
【0036】
図2Bは、空気が外部コンテナへ出入りが可能な、無菌の多孔性シートを用いる、本発明に係る排気系の詳細な部分断面図である。
【0037】
図2Cは、空気が外部コンテナへ出入りが可能な、可塑性を有する風船または隔膜を用いる、本発明に係る排気系の詳細な部分断面図である。
【0038】
図3は、血液を入れた後における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0039】
図4は、回転分離段階における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0040】
図5は、遠心分離の終了後における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0041】
図6は、濃縮装置のシリンジの断面図である。
【0042】
図7は、多血小板血漿が濃縮装置のシリンジに吸い出された後における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0043】
図8は、PRPの使用準備に伴う水の除去段階の後における、PRPを含んでいる濃縮装置のシリンジを示している。
【0044】
図9は、赤血球トラップであるデプスフィルタを備えた、本発明の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0045】
図10は、血液を入れた後における、図9の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0046】
図11は、回転分離段階における、図10の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0047】
図12は、遠心分離の終了後における、図10の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0048】
図13は、多血小板血漿が濃縮装置のシリンジに吸い出された後における、図9の分離分離装置の概略的な断面図である。
【0049】
図14は、本発明の遠心分離装置と中空糸濃縮装置との組み合わせを示す概略図である。
【0050】
図15は、本発明に係る中空糸濃縮装置の概略的な断面図である。
【0051】
図16は、線分16−16において取った、図5の中空糸濃縮装置の断面図である。
【0052】
図17は、図15の中空糸濃縮装置における薄膜弁の概略的な断面図である。
【0053】
図18は、患者の血液に由来するPRP濃縮物を調整するための、自動化されたバネクラッチの概略的な断面図である。
【0054】
図19は、本発明の血漿分離装置および濃縮装置の具体例を示す等角図である。
【0055】
図20は、図19に示されている血漿分離装置および濃縮装置の上面図である。
【0056】
図21は、駆動部の基部の上に分離装置および濃縮装置のアッセンブリを配置する前における、モータ駆動部と駆動部の受容部との関係を示すために、鉛直軸に沿って分解し、かつ線分21−21において取った、図20の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【0057】
図22は、線分22−22において取った、図20の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【0058】
図23は、図22に示されている血漿分離装置および濃縮装置の部分断面図である。
【0059】
図24は、血液が加えられた後における、図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【0060】
図25は、遠心分離段階においてPRPを産生しているときの、図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【0061】
図26は、低速回転濃縮段階における、図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【0062】
図27は、遠心によるPRPの濃縮分離段階における図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【0063】
図28は、本発明の携帯型の一例を示す断面図である。
【0064】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の装置および方法は、フィブリノゲンを変性させることなく、または赤血球を活性化させることなく、血液からPRPを分離し、かつ上記PRPから水を除去する。本発明の1つの局面は、治癒を促進および早める損傷治癒組織封止剤および損傷治癒組織吸着剤として有用な、患者の血液を用いて自家産物を提供する方法を実現するために、必要なもの内蔵した装置である。本発明の1つの局面に係る上記装置は、さらに携帯型の装置である。本発明の他の局面は、上記方法および産物を提供する常設の動力ユニットが用いられている、携帯型の使い捨てシステムである。さらに他の局面は、患者の血液からPRPを生産する携帯型の使い捨てシステムである。
【0065】
本発明の装置は、小型の、携帯型の、および必要なものを内蔵した、使い捨てPRP分離システムである。図1〜図13に係る上記遠心分離モジュールは、本発明の1つの局面である。図1〜図13に係る上記遠心分離モジュールは、数分の間に患者に由来するPRPおよびPRPの濃縮物の調整に過度の訓練を必要とせずに、医療助手または医師によって使用される使い捨てのPRP分離システムとして用いられる。上記PRP分離システムは、血小板を有為に活性化させることなく、血小板の高い回収率を実現する。上記装置は、完全に自動化されており、第1に、充填および装置の作動と、第2に、PRPの回収との間においてユーザの介入を必要としない。上記装置は、異なるヘマトクリットおよび異なる血漿密度の血液を処理することができる。
【0066】
本発明のさらに高度に自動化された他の分離装置および濃縮装置は、図14に示されている遠心分離装置および中空糸カートリッジ濃縮装置である。図14の分離装置および濃縮装置は、充填および装置の作動と、PRPの回収との間においてユーザの介入を必要としない。
【0067】
図1は、環状の赤血球のトラップを備えている本発明の遠心分離装置の概略的な断面図であり、図2は、遠心分離装置、および図1に示す遠心分離装置の環状の赤血球のトラップを示す部分断面図である。図1および図2を参照すると、上記分離システムは、遠心分離ユニット2およびモータ4を備えている。上記遠心分離ユニットは、上端8および下端10を含む内壁表面6、ドラムの底部12、ならびに中心軸(図示せず)を有する遠心分離ドラム5を備えている。上記ドラムの底部12は、中心のくぼみ14を有しており、ドラムの底部12は、上記下端10から上記中心のくぼみ14まで下方に向かって傾斜している床から成っている。上記モータ4は、上記中心軸と同軸の駆動軸16を有している。上記モータ4は、少なくとも120秒間に2000rpmの速度において、上記遠心分離ドラムを回転させる能力を有している。
【0068】
必要なものを内蔵した完全な上記ユニットは、従来の電源接続を介して接続されているバッテリ18を有している。上記バッテリ18は、上記分離処理を完了するために必要な十分な能力を備えている。上記バッテリ18は、オン時とオフ時の切替器22を介して、手動のつまみ22を接続されている。
【0069】
外部コンテナ24は、上記遠心分離ユニットを囲っている。上記外部コンテナ24は、無菌シリンジ引き込み口28が形成された上部26を有している。無菌シリンジ引き込み口28は、上記中心のくぼみ14と一直線に並べてはめ込まれているルアーであってもよい。接続チューブ29は、上記シリンジ引き込み口28から上記分離チャンバ2に接続され、かつ下方に延長されている。チューブ29は、血液を上記分離チャンバ2に導入するため、およびPRPを上記分離チャンバ2から取り出すために用いられている。これについての更なる詳細は、図2〜6を参照して、後ほど説明する。
【0070】
遠心分離ドラム5の上記内壁表面6は、上記底部12から外側に向かって、上記中心軸に対して75度〜89度の角度に勾配がつけられている。遠心分離ドラム5の上端8は、外部の環状の赤血球捕捉チャンバ30に囲まれている。
【0071】
上記システムのための上記外部コンテナ24は、密閉されて、無菌に維持されていることが好ましい。上記システムにおける液体の出入りによる圧力の変動を防ぐために、上記外部コンテナの壁面には、排気系30が備えられている。上記排気部30は、液体が導入されると、上記コンテナの外に空気を移動させ、かつ液体が取り出されると、上記コンテナの中に空気を移動させることができる。排気部30として好ましいものの詳細については、図2Bおよび図2Cを参照して、後ほど説明する。
【0072】
図2に示すように、上記赤血球捕捉チャンバ31は、外壁32および内壁34を備えている。外壁32は、内壁6の上部8よりも高い位置にある上端36を有している。上記上端と上記上部との間の垂直方向の距離は、小さく、1mm未満であることが好ましい。しかし、上記上端と上記上部との間の垂直方向の距離は、細胞が通過するのに十分な大きさであり、50μmよりも大きいことが好ましい。上記内壁の上部と上記チャンバの上部との間の狭い間隙は、遠心分離ステップの終了後の減速中における渦巻きのうねりによって、上記赤血球捕捉チャンバから上記遠心分離ドラムの中に押し流される赤血球を最小限にとどめることができる。減速中において上記遠心分離ドラムに押し流される赤血球をさらに最小限にとどめるために、上記内壁の上の上記間隙は、デプスフィルタまたは仕切りによってふさがれていてもよい。上記赤血球捕捉チャンバ31の容積は、血液における分離された赤血球および白血球の総量を保持し、かつ最小の容積のPRPを保持する大きさに作られている。環状の蓋38は、遠心分離ドラム5および赤血球捕捉チャンバ31のそれそれの上部と、上記遠心分離ステップ中に遠心分離チャンバから血液および血液からの生成物が漏れることを防止する密封はめ込み部において、固定されている。
【0073】
上記赤血球捕捉チャンバ31の内壁34の上部表面部42は、中心軸と少なくとも25度である角度“a”の傾斜を部分的に有していてもよい。上記傾斜は、赤血球が沈降して、上記赤血球捕捉チャンバ31を満たしたとき、上記赤血球捕捉チャンバ31の上端8を超えて、PRPにおける血小板の流れが容易になる。
【0074】
図1に示すように、上記分離システムは、分離チャンバ2の中に血液を導入するために配置されている、シリンジ44と連結されている。上記シリンジ44は、血液の導入前において広げられた、全部の位置にプランジャーまたはピストン46とともに示されている。
【0075】
図2は、赤血球のトラップの他の例を示す部分断面図である。この他の実施形態において、図2に示されている上記赤血球捕捉チャンバ31の上部表面部48は、反対の壁50の下方にまで伸びている。上部表面部48は、遠心分離中に上記遠心分離チャンバに血小板を移動させるための連続的に傾斜した表面を提供する。表面48は、上記赤血球捕捉チャンバの中心軸(図示せず)に対して角度“a”をなしている。
【0076】
図2Bは、空気が外部コンテナへ出入りが可能な、無菌の多孔性シートを用いる、本発明に係る排気系の詳細な部分断面図である。この実施形態において、外部コンテナ24(図1および図2を参照のこと)の壁54における気流の通路52は、従来の無菌の多孔性シート56を用いて密閉されている。無菌の多孔性シート56は、上記シートを介して空気が自由に移動するために十分な気孔率を有しているが、コンテナ24の中に外部環境からの微生物の移動を妨げる、効果的な微生物障壁である。無菌の多孔性シート56は、上記システムに液体が出入りする間に外部コンテナ24における気圧の変動を、有為に抑制することができる。
【0077】
図2Cは、空気が外部コンテナへ出入りが可能な、可塑性を有する風船または隔膜を用いる、本発明に係る排気系の詳細な部分断面図である。この実施形態において、外部コンテナ24(図1および図2を参照のこと)の壁54における気流の通路52は、風船または可塑性を有する隔膜60を用いて密封されている。上記風船または可塑性を有する隔膜60は、可塑性、および気流の通路56を通って、空気の自由な移動が可能なように容量を十分に有している。上記風船または可塑性を有する隔膜60が有する容量は、上記分離処理中に上記システムに導入される血液の総量と、少なくとも等しいければよい。これは、上記システムにおける液体の出入りの間に外部コンテナ24における圧力の変動を有為に抑制する。上記風船または可塑性を有する隔膜60は、PRPの取り出し中において、外部環境から上記コンテナ24の中への微生物の移動を妨げる効果的な微生物障壁と整合性を有していなければならない。
【0078】
図3〜図5は、図1の装置を用いたPRPの調整における一連の段階を示している。図3は、シリンジ44から血液62を入れた後における、図1の遠心分離装置の概略的な断面図である。シリンジ44は、上記ルアー引き込み口28を介して上記接続チューブ29と取り付けられ、かつ上記接続チューブ29と連絡している。そして、上記プランジャー46が押し下げられると、上記分離チャンバ2に上記シリンジに入っている血液が放出される。
【0079】
図4は、回転分離段階における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。回転分離段階において、図に示すように、上記シリンジ44は取り外されて、無菌キャップまたは分離されたPRP産物を取り出すための新たなシリンジと取り替えられていてもよい。一方において、上記シリンジ44は、上記分離段階の間において、同じ位置に残されて(図示せず)、PRP産物の取り出しに再利用されてもよい。上記回転段階の間において、より密度の高い上記赤血球は、遠心力によって、上記遠心分離ドラム5におけるPRPを離れて上記赤血球捕捉チャンバに回収されるまで、上記血漿を通って外側に移動させられる。
【0080】
図5は、遠心分離の終了後における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。遠心分離が終了して、遠心力がなくなると、密度の高い上記赤血球の層は、上記赤血球捕捉チャンバ30に分離された状態において残り、かつ上記遠心分離ドラムにおける上記PRPの層66は、上記遠心分離チャンバの最下部に集まる。このようにして、上記PRPは、元のシリンジ44(図3)または図3に示したような位置に配置された新たなシリンジを用いて、上記接続チューブ29を通って上記遠心分離ドラム5から取り出さすことができる。
【0081】
ある人が本発明に係るPRP濃縮物を得ようとするならば、ある人は、図6に示されている濃縮装置のシリンジを使用してもよい。図6は、PRPからPRP濃縮物を産生するためのシリンジの具体例を示す断面図である。上記シリンジ装置69は、外壁72を有する処理チャンバ70を備えている。上記処理チャンバ70において、プランジャー74は、フィルタ76の上方に配置されている。上記プランジャー74および上記フィルタ76は、上記処理チャンバ70の濃縮部分または濃縮チャンバ78の位置を決めている。上記濃縮装置チャンバ78は、濃縮用の乾燥ヒドロゲルビーズ80および1つ以上の攪拌器82を有している。フィルタの下方または下流に配置された濃縮チャンバ84は、出入口86を備えている。
【0082】
上記濃縮用の乾燥ヒドロゲルビーズ80は、相当な堆積の水を吸収し、かつ上記血漿に所望ではないかなる汚染物質を導入しない、不溶性のビーズまたはディスクであってもよい。上記濃縮用の乾燥ヒドロゲルビーズ80は、購入可能なデキストラノマーまたはアクリルアミドビーズ(それぞれ、PharmaciaのDebrisanおよびBio−Rad LaboratoriesのBIO−GELTM)であってもよい。一方において、含水SEPHADEXTMまたは水の吸収材(Pharmaciaから購入可能)、シリカゲル、ゼオライト、ならびに架橋アガロースなどのような他の濃縮装置が、不溶性の不活性ビーズという形態において、使用されてもよい。
【0083】
上記攪拌器82は、不活性な金属の球体のような密度の高い物体であってもよい。上記攪拌器82の形状、組成および密度は、全血よりも実質的に高い密度を有している上記攪拌器であれば、本発明の範囲から外れることなく広く変更が可能であるということは、当業者にとって容易に明白となるであろう。上記攪拌器は、血液の成分と反応しないチタンまたはステンレス鋼の球体のような金属の球体、あるいは血液の成分と反応しない不活性な被覆剤によって覆われた密度の高い球体あることが好ましい。
【0084】
上記フィルタ76は、血漿を通過させ、かつ上記ヒドロゲルビーズおよび攪拌器を通過させない、不活性な網目状のまたは多孔性を有するあらゆる材料であってもよい。上記フィルタは、上記濃縮チャンバにおける液体が上記フィルタを通過するとき、上記PRPを通過させ、かつ上記ヒドロゲルビーズおよび上記攪拌器を通過させない、織物または不織物の金属線または不活性な繊維状のフリット、あるいは他のフリット構成物であってもよい。上記フィルタによって、上記ヒドロゲルビーズおよび攪拌器から効率的に上記PRPを分離することの詳細については、後ほど説明する。
【0085】
水を除去する手順は、上記血小板の活性化および上記フィブリノゲンの変性を最小限に留めて、実施されることが重要である。血漿の濃縮物を調整する従来の商業的な手法は、アルブミンからフィブリノゲンを分離する沈降法および上記封止剤を調整する再構成を利用している。上記手法は、上記フィブリノゲンの大部分を失活させ、かつ治癒因子を除去する。結果として、相対的に再構成された沈降物よりも多くのものが、効果的な組織封止を実現するために必要になる。本発明の上記装置を用いれば、水の除去によって上記フィブリノゲンの変性は避けられ、かつ上記血漿における治癒因子は、上記濃縮段階において、上記フィブリノゲンとともに維持される。これによって、より効果的な封止剤および接着剤を産生する。
【0086】
図7および図8は、図5に示されている上記シリンジ濃縮装置を用いた上記PRP濃縮物の調整を示している。図7は、PRPが濃縮装置のシリンジに吸い出された後における、図5の遠心分離装置の概略的な断面図である。図8は、水の除去段階の後における、PRP濃縮物90を含んでいる濃縮装置のシリンジを示している。プランジャーまたはピストン74を動かすことによって、PRP66は、上記遠心分離ドラム5から上記シリンジチャンバに吸い出される。濃縮後においてPRP濃縮物の放出を容易にするために、ある体積の空気もまた上記シリンジの中に吸い出しておく。
【0087】
それから、上記濃縮装置のシリンジを上記遠心分離装置から回収し、かつ上記シリンジの軸方向に、往復運動によって振とうされる。この往復運動によって、上記PRP66における攪拌器の相対的な攪拌動作、上記溶液における上記ヒドロゲルの攪拌、ならびにPRPを混ぜて、上位ビーズの周りにおける局在化した血漿タンパク質の濃度およびゲル分極の低減を行うことができる。これらによって、PRP濃縮物から上記ビーズへの水の移動が容易になる。図8は、PRPの使用準備に伴う水の除去段階の後における、PRP濃縮物90を含んでいる濃縮装置のシリンジを示している。上記プランジャー74を上記出入り口86のほうに動かすと、PRP濃縮物90はアプリケータの針92を通って放出される。ここで、フィルタ76は、上記ヒドロゲルビーズ94および攪拌器82がPRPとともに移動するのを防ぐ。ビーズの間にある隙間の空間に保持されている濃縮されたPRPは、上記プランジャーがさらに押されることによって、放出される。
【0088】
図9は、デプスフィルタ赤血球を用いた本発明の遠心離機の略的な断面図である・この具体例は、また、遠心分離ユニット102およびモータ104を備えている。上記遠心分離ユニットは、底の端部112を含む内壁表面108、ドラムの底部112、および中心軸(図示せず)を有する遠心分離ドラム106を備えている。上記ドラムの底部112は、中心のくぼみ114を有しており、ドラムの底部112は、上記下端10から上記中心のくぼみ14まで下方に向かって傾斜している床から成っている。上記モータ104は、上記中心軸と同軸の駆動軸116を有している。上記モータ104は、500mAh未満の総消費電力によって、少なくとも120秒間に2000rpmの速度において、上記遠心分離ドラム102を回転させる能力を有している。上述のような出力は、従来の9ボルトのアルカリ蓄電池のような小型のバッテリから得ることができる。
【0089】
必要なものを内蔵した完全な上記ユニットは、従来の電源接続を介して接続されているバッテリ118を有している。上記バッテリ118は、上記分離処理を完了するために必要な十分な能力を備えている。上記バッテリ118は、オンオフトグルまたはタイマー切替器120を介して、手動のつまみ22を接続されている。
【0090】
外部コンテナ24は、上記遠心分離ユニットを囲っている。上記外部コンテナ24は、上記中心のくぼみ14と一直線に並べてはめ込まれている無菌シリンジ引き込み口28が形成された上部26を有している。接続チューブ29は、上記シリンジ引き込み口28から上記分離チャンバ2に接続され、かつ下方に延長されている。チューブ29は、血液を上記分離チャンバ2に導入するため、およびPRPを上記分離チャンバ2から取り出すために用いられている。これについての更なる詳細は、図10〜13を参照して、後ほど説明する。遠心分離装置ユニット102の内壁は、孔を有するデプスフィルタ134の表面である。デプスフィルタ134の孔は、血液からの赤血球の遠心分離において、上記孔に赤血球を移動させ、かつ上記遠心分離が終了したとき、上記デプスフィルタの材料に上記赤血球を保持するような大きさに形成されている。上記デプスフィルタの材料は、上記材料の表面に接触した血小板を有為に活性化させない材料から選択されている。
【0091】
上記デプスフィルタ134は、液体および微小粒子を自由に流す、ハニカム状のまたは繊維織物の材料(例えば、フェルトまたはオープンセルのポリウレタン発泡体など)であってもよい。湿ったスポンジのように、上記デプスフィルタは、表面張力によって、ある水頭圧に逆らって液体を保持する。このようにして、遠心分離が停止し、かつ分離された多血小板血漿が重力に基づいて上記デプスフィルタの表面から流れ出すときに、血液細胞または他の懸濁されている粒子は、上記発泡体の中に維持される。発泡体は、剛性または柔軟性を有していてもよく、鋳型による造形または型抜きによって、上記装置に適した環状に形成されていてもいよい。上記部分は、上記遠心分離が停止しているときパック細胞を維持する、上記外部デプスフィルタチャンバ内に上記パック細胞(例えば、赤血球および白血球)の層が十分に含まれるような大きさに形成されている。
【0092】
本装置によれば、遠心分離において上記血漿を通して外側に移動する赤血球は、上記デプスフィルタ134を通り、かつ上記デプスフィルタ134によって捕捉される。また、本装置によれば、遠心分離が終了すると、下方を流れている上記PRPは、実質的に赤血球を含んでいない。これらのより詳細について、図10〜13を参照して、後ほど説明する。
【0093】
図1および図2に示されているシステムに提供されている排気系と同様に、排気系136は、外部コンテナ124に提供されていてもよい。この排気系は、図2Bおよび図2Cを参照して上述したものと同じものであってもよい。
【0094】
図10は、シリンジ140から血液138を入れた後における、図9の遠心分離装置の概略的な断面図である。上記シリンジは、無菌封かん(seal)128を介して、かつ垂直チューブ130に接続されている。上記シリンジには、下に押すことによって、上記分離チャンバ132に上記シリンジの血液成分を放出するプランジャー142が接続されている。
【0095】
図11は、回転分離段階における、図10の遠心分離装置の概略的な断面図である。上記回転分離段階において、上記シリンジ140は、図に示すように、上記シリンジ44は取り外されて、無菌キャップまたは分離されたPRP産物を取り出すための新たなシリンジと取り替えられていてもよい。一方において、上記シリンジ44は、上記分離段階の間において、同じ位置に残されて(図示せず)、PRP産物の取り出しに利用されてもよい。上記回転段階の間において、遠心力によって、より密度の高い上記赤血球は、上記血漿を介して外側の上記デプスフィルタ134に移動し、かつ上記遠心分離ドラム102には実質手的に赤血球のないPRP148が残される。
【0096】
図12は、遠心分離の終了後における、図11の遠心分離装置の概略的な断面図である。遠心分離が終了し、かつ遠心力がなくなると、赤血球のない上記PRP148は、上記分離チャンバ132において、下方に流れて行く。このとき、上記赤血球は、上記デプスフィルタ134に捕捉されてとどまっている。上記遠心分離ドラム102に集まる上記PRP148は、実質的に赤血球および白血球を含んでいない。当業者にとって非常に明らかなことであるように、上記PRP148は、それから、元のシリンジ140(図10)、または新たなシリンジを用いて上記遠心分離ドラム102から取り出される。
【0097】
図13は、PRP148が濃縮装置のシリンジ69に吸い出された後における、図12の遠心分離装置の概略的な断面図である。上記プランジャーまたはピストン73を引き抜いて、上記遠心分離チャンバ132からシリンジの容器150に、PRP148を吸い出す。
【0098】
水が上記PRP148から取り除かれて、PRP濃縮物が産生され、上記PRP濃縮物は、図7および図8を参照して上述したように、上記シリンジから放出される。
【0099】
図14は、本発明の、遠心分離装置および中空糸濃縮装置を合体させた装置を示したものである。分離および濃縮に係る構成は全て、ハウジング160内に納まっている。ハウジング上部には、液体の添加または除去に際して空気が出入りするための無菌の通気口162と、ピストン168を有する標準シリンジ166とピストン駆動部170とが結合するためのルアー取り付け部164とが設けられている。
【0100】
遠心分離装置172は、上記において図1から図5までに示した環状の赤血球トラップシステムを有することができる。もしくは、遠心分離装置172は、上記において図9から図13までで示したデプスフィルタを用いた赤血球トラップシステムを有することができる。
【0101】
駆動モータ174は、基本構造は図1および図9に示した通りであるが、ハウジング160における底部の、遠心分離装置172より下部に配置されている。
【0102】
中空糸濃縮装置システム176を、遠心分離装置172の上方に配置することにより、該濃縮装置の液体輸送構成を簡素化することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ハウジング内における液移送のための配管を適切に配設できる空間があるのであれば、濃縮装置と遠心分離装置とを並設した構成であっても、または、遠心分離装置を濃縮装置の上方に配置した構成であってもよいことは、当業者であれば容易に理解できることである。
【0103】
上記中空糸濃縮装置は、中空糸カートリッジ178とポンプ180とを有している。
【0104】
出口184を有する中央チューブ182は、ルアー取り付け部164から、遠心分離装置172の下部にくぼみ186まで延びている。濃縮分離装置への液速を制限するための流入流速チェックバルブ188は、中央チューブ182の中間部に配置されている。
【0105】
チューブ出口184は、循環PRPに配置される。好ましくは、底部186の手前まで配置されている。
【0106】
帰還チューブ190は、下部くぼみ186から、ポンプ180の流入口に連結したポンプ流入チェックバルブ192まで延びている。ポンプ流入チェックバルブ192は、該ポンプへ向けて直接的に液体の移送を導くことから、チューブ190における逆流を防ぐことができる。第2帰還チューブ194は、ポンプ180と連結したポンプ流出チェックバルブ196から延びている。該ポンプ流出チェックバルブ196は、ポンプから液体が流出するように液体を導き、第2帰還チューブ194からポンプ180への液体の逆流を防ぐために。第2帰還チューブ194は、中空糸カートリッジ濃縮装置178の流入分岐管198へと延びている。第3帰還チューブ200は、中空糸カートリッジ濃縮装置178の流出分岐管202から、チェックバルブ188の上方(上流)にある中央チューブ182へ導く濃縮装置流出チェックバルブ204へ伸びている。第3帰還チューブ200は、中空糸膜を介した濾過をおこなうための液体循環経路内の上流において背圧を生じる液流を制限している。チェックバルブ284は、チューブ182から中空糸カートリッジ濃縮装置178への液体の逆流を防ぐために設けられている。
【0107】
上記した中空糸膜を有した中空糸カートリッジは、大きな治癒促進因子を残したまま、血漿から、水と塩とを効率的に除くことができる。中空糸材料や孔径の選択は、重要な因子となる。なぜなら、血小板に致命的なダメージを与えることなく迅速に脱水をおこなう必要があるからである。また、局所的な濃縮やゲル分極による膜表面の肥厚が生じるため、血漿中のタンパク質濃度が高くても良くない。従って、中空糸膜およびその構成は、血漿を通過させ、分極を崩し、血漿成分を再配分することによって、膜表面の一掃を容易におこなうことを可能にしておくべきである。さらに、本発明に係る装置は、自己充足型で携帯型であることが最良の形態であるため、中空糸カートリッジは、エネルギー消費を最小に抑えた限外濾過機能を実行することができるものであることが好ましい。これにより、分離および濃縮を、従来の小型のバッテリ(例えば、9ボルトトランジスタ)によって実現することが可能となる。
【0108】
ポンプ180は、従来公知のピストンまたはダイヤフラムポンプを用いることができる。該ダイヤフラムポンプは、中空糸濃縮装置316を介した血漿の必須循環を、余計なエネルギーを使うこと無しに実現することができる。好ましくは、ポンプ180は、9ボルトのアルカリ蓄電池のような小型のバッテリから得られる電力である500mAhよりも小さな電力消費で血漿の濃縮をおこなう能力を備えている。
【0109】
駆動モータ174およびポンプ180への電力供給は、従来公知の配線と、濃縮処理を実行することができるだけの充分な電力を提供できる能力をもった小型バッテリ(図示せず)とによって実現される。これには、小型(標準の9ボルトトランジスタラジオ)バッテリを用いることができる。なお、ユニットが標準的な補助電源と共に用いられているならば、代わりに、ビジネス用や住居用の電源を使用した従来の電力供給システムを用いることもできる。
【0110】
図14に示すシステムの動作は次の通りである。まず、シリンジ166を用いて、シリンジ166に充填した血液を、ルアー取り付け部164から遠心分離装置に供給する。具体的には、アクチュエータ170の下方への動作により、ピストン168が下方に移動し、シリンジの内容物が、ルアー取り付け部164と流入口チェックバルブ188とを介して、チューブ182に流れ、遠心分離装置172の底部に放出される。シリンジの内容物が全て放出されると、このシリンジは取り外すことができ、濃縮処理の間にルアー取り付け部164から液体が排出されることを防ぐための新たなシリンジ、または密閉するためのキャップが取り付けられる。
【0111】
遠心分離装置172は、放出された上記の血液サンプルから赤血球と白血球とを除去する。この際、遠心を完了させた後に遠心チャンバの底にあるPRPが残る。
【0112】
ポンプ180は、遠心分離装置の底部のくぼみ186から、PRPをポンプ180のポンピングチャンバ(図示せず)へ、チューブ190とポンプ流入チェックバルブ192とを介して汲み上げる。これにより、PRPが、ポンプ180と、ポンプ流出チェックバルブ196を流れる。PRPは、チェックバルブ194から、チューブ194を通って、中空糸カートリッジ濃縮装置178の流入分岐管198へ流れ、そして、中空糸カートリッジ濃縮装置178へ流入する。
【0113】
水と塩とが部分的に除去されたPRPは、その後、流入制御チューブ200および濃縮装置流出チェックバルブ204を介して、上記中空糸濃縮装置178の流出分岐管202から流入チューブ182へ流れる。そして、その後、チェックバルブ188を介して、他のPRPと混合する遠心分離装置172の底部へ流れる。この循環は連続し、所望の濃度のPRPを得ることができるまで、水と塩の除去が行われる。
【0114】
本発明の装置によれば、赤血球を除去して、血小板を3倍に濃縮したPRPを、自動的に5分以内で実現することができる。また、例えば止血に用いるために上記のものよりも更に高いPRP濃度のものが必要な場合は、操作を5分よりも長く行うことによって、5倍以上の濃縮を実現することができる。
【0115】
図15は、図14に示した中空糸濃縮装置の断面図である。また、図16は、図15に示す中空糸濃縮装置を、切断線16−16において切断した状態を示した断面図である。
【0116】
図15に示した中空糸濃縮装置178は、抽出液体貯蔵部206と合体している。また、中空糸濃縮装置178は外部ハウジング208を有している。外部ハウジング208には、流入分岐管198と、流出分岐管202と、複数の限外濾過中空糸210と、抽出液体チャンバ212とが入っている。中空糸210の各々には、壁214と、軸流路216と、流入端218と、流出端220とを有している。各中空糸210の流入端218は、流入分岐板222において、従来公知の手法で、孔径が厳密に制御されており、液体が抽出液体チャンバ212へ流入してしまうことを回避しつつ、中空糸流路216と、流入分岐管198との連結を確立している。各中空糸210の流出端220は、流出分岐板226において、従来公知の手法によって、孔径が厳密に制御されており、その液体内容物が抽出液体チャンバ212へ流入してしまうことを回避しつつ、中空糸流路216と、流出分岐管202との連結を確立している。
【0117】
図15および図16に示すように、抽出液体チャンバ212は、外部ハウジング208の内壁面213と、中空糸210の外壁面と、流入分岐板222および流出分岐板226とによって規定された空間である。抽出液体チャンバ212は、限界濾過処理中に中空糸210を通過する液体を捕らえる。
【0118】
図14に示した第2帰還チューブ194の流出端は、流入分岐管導管230を介して、流入分岐管232に連結している。また、図14に示した第3帰還チューブ200は、流出分岐管導管228を介して、流出分岐管202と連結している。
【0119】
脱水処理中、加圧された血漿は、第2帰還チューブ194から、流入分岐管導管230を介して、流入分岐管198に流れ、その後、中空糸210に流れる。各流路で中空糸の壁の孔を通じて水と塩とが抽出液体チャンバ212に流れる。濃縮された血漿は、その後、流出分岐管202に流れ、流出分岐管導管228を通って、第3帰還チューブ200へ流れる。
【0120】
抽出液体貯蔵部206には、オーバーフロー流路236に連結した貯蔵ハウジング234が設けられている。抽出液体貯蔵部206には、通気口200が設けられている。
【0121】
図17は、図15に示した中空糸濃縮装置にある膜バルブ通気口238の断面図である。バルブ238は、下部の多孔性親水膜240と、上部の多孔性親水膜242とを有している。ここで、下部の多孔性親水膜240は、抽出液体貯蔵部206の内部と連結している。また、上部の多孔性親水膜242は、抽出液体貯蔵部206の周りの外部空間と連結している。抽出液体貯蔵部206は、抽出液体チャンバ213の許容量を超えた抽出液、およびオーバーフロー流路236を通じて抽出液体貯蔵部206に流出した抽出液を、捕らえる。抽出液体チャンバ内の空気は、親水性膜140が浸潤して、液体のレベルが膜に達するまで、多孔性親水膜240および242を通じて流入してくる液体によって、追い出される。抽出液体貯蔵部206からの抽出液の流出は、疎水性膜242によって回避される。
【0122】
PRP濃縮物が除かれる際の、上記したバルブによるシステム内の空気の移動の防止は、次のようにして行われる。遠心分離装置172(図14)からのPRP濃縮物の除去では、システム内で不完全真空が起きる。そして、この不完全真空に応じたバルブ238を介した空気の移動は、液浸潤した親水性膜240によって防止される。
【0123】
図18は、患者の血液サンプルからPRP濃縮物を調製するための自動バネクラッチシステムの概略断面図である。本発明のこのような他の実施形態であっても、使い捨てのシステムは、12オンスの飲料缶よりも小さなコンパクト携帯型装置に納めることができる。
【0124】
図18に示す外部ハウジング252は、血液流入口254と、PRP濃縮物回収口256と、無菌の通気口258とを除いた部分を全てシールしている。PRP濃縮物回収口256は、硬質のPRP濃縮物回収チューブ260の一端である。硬質のPRP濃縮物回収チューブ260のPRP濃縮物回収口256は、外部ハウジング252に確実に支持されており、回転式の分離装置の中心軸としての役割を担うとともに、PRP濃縮物回収チューブ260としての役割も担っている。該分離装置は、上部の回転式遠心分離ハウジング262と、下部の回転式脱水システムハウジング264とを備えている。これら2つのハウジングは、円筒型のウエスト部266を、ユニタリーハウジング構造部と一体化することによって結合させることができる。脱水システムハウジング264は、PRP濃縮物回収チューブ260の下部の開口部270と連結しているPRP濃縮物貯蔵部268を備えている。
【0125】
回転式の構造体は、2方向と2速度のモータ274の駆動軸272上に支持されている。2方向と2速度のモータ274は、電線用導管278に接続された従来公知のモータ制御部276によって制御される。モータ制御部276の作動は、スイッチ280によっておこなわれる。
【0126】
外部ハウジング252内における複数の回転式構造体の相対的な配置は、ローラベアリング軌道構造体によって管理される。この構造体は、複数のローラベアリング282を有しており、ローラベアリング282は、外部ハウジング252に支持された1つの外部リングフランジ284と、上部の回転式遠心分離ハウジング262に支持された1つの内部リングフランジ286との間に配置されている。
【0127】
回転アッセンブリッジの上部ハウジング262内に収容される遠心型血液分離構造体は、円筒型の回転式遠心分離装置292が、円筒型のデプスフィルタ294に裏打ちされた、外壁の内表面を有しているという点で、上記の図9から図13において示した他の血液分離装置と、構造上および機能上類似している。また、遠心分離装置の本形態では、床298と、分離処理を施す血液の量を制御または調整するための機能をもつ一体的な壁部300とによって規定された血液オーバーフロー貯蔵部296が設けられている。この血液オーバーフロー貯蔵部296により、もし、上記した脱水による濃縮が効率的に実行できる血液量を超えた量の血液が遠心分離装置に供給された場合であっても、所定量の血液を分離処理にかけることができる。分離中における遠心分離装置の回転時には、余剰の血液は壁部300に沿って上昇し、PRP貯蔵部296へ流れる。遠心分離装置による分離が終了して、回転数が減少すると、床298上の壁部300が液の流出を防ぐ。
【0128】
適切なデプスフィルタ材料は、図9から図13を用いて上述している。なお、デプスフィルタおよびオーバーフロー貯蔵部294の代わりに、赤血球トラップや図1から図8を用いて説明した機能を有するものを用いることができることは、当業者であれば容易に理解できるものである。
【0129】
遠心分離中に血漿から分離した赤血球は、デプスフィルタ294に流れ込み、PRPの層が該デプスフィルタの外に残る。
【0130】
遠心分離が完了して遠心分離が終了すると、PRPは遠心分離装置の底部に流れる。該遠心分離装置の底部は、分離ハウジングの床304に対してバルブ板302でシールされている。
【0131】
床304に対するバルブ板302のシールは、バネクラッチアセンブリの作用によって開放される。バルブ板302は、バルブアセンブリの構成要素の1つである。該バルブアセンブリは、バルブ板302と一体的になっている円筒型の中空の上部バルブステム306を有しており、中空の上部バルブステム306には、硬質のチューブ260が貫通している。これにより、チューブ260上で、バルブアセンブリは安定配置している。バルブアセンブリの下部は、雌ネジ310を有した外部円筒部308である。
【0132】
上記外部円筒部308には、その内部に更に内部円筒部312を有している。内部円筒部312には、外部円筒部308に形成された雌ネジ310と咬合する雄ネジ314が設けられている。バネクラッチ288は、硬質チューブ260の周りに巻きつくように配置されており、固定された回転式の内部円筒部312と、硬質チューブ260との間に配置されている。バネクラッチ288は、固定された回転式の内部円筒部312と、硬質チューブ260との間での遠心分離処理中のスリップベアリングとして機能する。これは、固定ロッド260の周りのスプリングの移動方向が、スプリングを開放し、その後、滑り摩擦を低減することになるからである。
【0133】
PRPの遠心分離が完了した後は、モータ274は逆方向にゆっくりと回転するようになる。バネクラッチ288は、硬質チューブ260の周りを、スプリングをしめる方向に回転して、スプリングを硬質チューブ260に対して固定する。外部円筒部308が、固定された内部円筒部312の周りを回転するので、外部円筒部308が上昇し、シールされていないバルブ板306が持ち上がる。この際、上部バルブステム306の上面318が、つば部318と接触するまでの間の動きは、硬質チューブ260によって支持されている。
【0134】
バルブ板302が開放されると、遠心分離装置290の下部にあったPRPは、下部円筒部の外面322と、ウエスト円筒266の内面324とによって規定されたチャネル320を通って下方に流れる。チャネル320を通って下方に流れたPRPは、下部ハウジング264内にある回転式の脱水システムに流れ込み、乾燥ゲルビーズ326と接触する。脱水システムからの液体の直接流入は、Oリングシール327によって防止される。
【0135】
下部ハウジング264内にある下部の回転脱水システム328は、放射状に内側に延びた櫛型素子332を有する回転式で円筒型の遮蔽素子330と、レーキシステム(rake system)とを備えている。下部ハウジング264内の底部には、開口部があり、この開口部は、硬質チューブ260に対応するように円筒型のフランジ333となっている。Oリング327は、フランジ333と硬質チューブ260との間に配置され、これらの間から液体が流出することを防止する。上記レーキシステムは、レーキシリンダー334を有している。レーキシリンダー334には、上記櫛型素子332とかみ合う、放射状に内側に向けて延びたレーキ素子336が設けられている。レーキシリンダー334は、ローラベアリング338によって硬質チューブ260から離間されている。これにより、遠心時の高速回転中におけるレーキシリンダー334と硬質チューブ260との摩擦が低減される。レーキシリンダーは、張り出したスプライン340を有している。スプライン340は、下部バルブステム308内にて垂直の凹溝とかみ合っている(図示している状態)。バルブステムの昇降の全てにおいて、下部バルブステム308外部シリンダー308と、レーキシリンダー334とのかみ合いを維持するために、スプライン340は、上記溝内を昇降するように配置されている。スプライン340は、バネクラッチがかみ合っている間、レーキシリンダー334を不動チューブ260に固定して、レーキを介して櫛形素子が回転する間のレーキシリンダーの回転を防いでいる。
【0136】
乾燥ゲルビーズ326によってPRPから水分が除去されると、ゲルの分極が起き、ビーズ内部への吸水が遅くなる。そこで、脱水処理中、円筒型遮蔽素子とレーキ素子とをモータ274によって穏やかに回転させて、ビーズをゆっくりと攪拌する。ゲルビーズ326と櫛型空間320とを介したレーキ素子336のこのような動作によって、ビーズは攪拌され、また、ビーズの塊を崩すことができるので、脱水効率を高めることができる。この処理は、下記のようにして得られる。
【0137】
脱水が完了すると、モータ制御部276が駆動軸272の回転方向を逆にして、硬質チューブ260からバネクラッチ288のかみ合いを外し、且つ、分離アセンブリ素子が1つのユニットとして高速回転するのを可能にさせる。この高速回転中に、濃縮されたPRPは、円筒型の遮蔽素子330を通じて、ビーズ270から落下し、PRP濃縮物貯蔵部268に回収される。その後、PRP濃縮物は、硬質チューブ260を通じてPRP濃縮物貯蔵部268から回収され、PRP濃縮物回収口256から外部へ出される。
【0138】
図19は、本発明に係る血漿分離および濃縮装置の一形態を示した等角図である。また、図20は、図19に示す装置の上面図である。本形態の装置は、使い捨ての分離および濃縮装置モジュール350と、モータおよび制御システムを搭載した使い捨てではない基材352とを備えている。分離および濃縮装置モジュール350は、ハウジング354と、ハウジング上部356とを有している。ハウジング上部356は、血液流入口358と、血漿濃縮物排出口360とを有している。基材352は、制御スイッチ364が設けられた基材ハウジング362と、外部電源接続装置366(図20)とを有している。このコンパクトなユニットは、ほんの数分で、患者の血液サンプルからPRPを分離して、該PRPを脱水して、患者の自己PRP濃縮物を得ることができる。
【0139】
図21は、図20に示す切断線21−21において図20に示した装置を切断した状態を示した断面図である。図21は、ドライバ基材上に集約された使い捨ての分離および濃縮装置の配置に先駆けて、モータドライバおよびドライバレセプターとの関係性を垂直軸方向に示している。ドライバ基材368は、複数の基材脚372によって支持されている基材ハウジング370を備えている。基材ハウジング370は、分離および濃縮装置モジュール350の基材受け部376の形状とマッチする形状の回転式のアセンブリガイド面を有している。ドライバ基材368は、上部支持面382を有する環状支持面380を有しており、ドライバ基材368上において、分離および濃縮装置モジュール350を支持し、且つ位置調整される。ドライバ基材368内部には、複数の支持冶具388によって支持された支持板386上にモータ384が搭載されている。モータ384は、ドライバコネクタ390を有しており、ドライバコネクタ390は、上記回転式のアセンブリドライバレセプター392と安定して接続している。ドライバ基材368は、従来公知のコンダクター(図示せず)を有するモータに電気的に接続することができる一般的な電源コネクタ366およびモータ制御スイッチ364を備えている。モータ制御スイッチ364には、従来公知のタイマーが設けられている。このタイマーは、上述した分離および濃縮工程のさまざまな時点でのモータ速度を制御している。
【0140】
回転するユニットは、PRP濃縮物排出口を支持するハウジング上部356を有したハウジング354を備えている。ハウジング354は、基材レセプター376を有する基材394を有している。上記基材レセプター376の形状およびサイズは、上部支持面374のそれとマッチしており、基材374上での分離および濃縮装置モジュール350の支持と位置調整とをガイドする。軸方向に同軸であるベアリングアセンブリ396は、分離および濃縮装置モジュール350を、ドライバコネクタ390およびドライバレセプター392とかみ合うことができる位置に支持できるように配置されている。ドライバコネクタ390およびドライバレセプター392は、一体化したユニットとなるように、互いの形状が合っている。ドライバコネクタ390とドライバレセプター392とは、ドライバコネクタ390がドライバレセプター392の内部で回動してしまわない形状であればどのような断面形状であってもよく、図示しているような四角形以外であってもよい。また、例えば、断面が多角形であってもよく、卵型であってもよい。また、従来公知の技術によって形成することができるのであれば、円形断面であってもよく、本発明において奏する作用効果が実現できるものであれば特に限定されない。
【0141】
分離および濃縮アセンブリ378は、定置固定されたチューブ398によって形成される垂直軸を中心に回転する。チューブ398はまた、PRP濃縮物流路を構成している。チューブ398は、PRP濃縮物排出口360につながっている。チューブ398は、外部ハウジング354の上部356と連結していることによって、該チューブの中心軸が回転に対して充分な強度を有している。チューブ398の下端部398には、PRP濃縮物流入口400とレーキハブ402とが設けられており、レーキハブ402は、チューブ398にしっかりと連結しており、回転する構成部材が上述したように回転している間であっても安定した状態を維持することができる。
【0142】
分離および濃縮アセンブリ378は、回転式のハウジング378に、ドライバレセプター392を有したテーパー形状の底部404が設けられている。分離および濃縮アセンブリ378は、無菌の通気口408が設けられた上板406を有しており、スリーブベアリング410によってチューブ398上での位置が支持されている。
【0143】
PRPの脱水に用いる乾燥ゲルビーズは、図21から図23には図示を省略しているが、図24から図27において示している。
【0144】
分離および濃縮アセンブリ378は、分離および濃縮処理中に、血液サンプルを隔離するための外壁412を有している。ハウジング378の上部には、血漿を遠心分離する遠心分離装置が配置されている。該遠心分離装置は、円筒型の血液貯蔵部416を有している。血液貯蔵部416は、外側に向けて傾斜している内面418と、内壁部420とを有している。内壁部420は、チューブ398の周りに設けられており、チューブ398に対して自由に回転することができるように構成されている。上述した構成は、分離工程の遠心動作中、血液貯蔵部の軸位置を管理する。血液貯蔵部416の周辺部には、円筒型のデプスフィルタ424が在り、その上部には、環状の血液オーバーフロー貯蔵部426が設けられている。図23のデプスフィルタ424および血液オーバーフロー貯蔵部426の構成および機能に関しては、上述したものと同じである。
【0145】
血液貯蔵部416およびデプスフィルタ424の下部には、濃縮アセンブリ428が設けられている。濃縮アセンブリ428は、互いに同心円上で回転する遮蔽素子430と濃縮基材432とによって構成される濃縮バスケット429を有している。遮蔽素子430は、円筒形状の断面を有しており、円形配列をなした複数の垂直支持体434によって支持されている。遮蔽素子430の周辺部には、垂直方向に延びた側壁438とテーパー形状の底部404とを有する同心円のPRP濃縮物貯蔵部が設けられている。テーパー形状の底部404の中心は、チューブ398の流入孔400の近傍に在る。
【0146】
図22は、図20に示した血漿分離および濃縮装置を、図20に示す切断線22−22において切断した状態を示す断面図であり、図21および図23と合わせて本発明に対する理解を充分深めるために示している。図21において説明した構成に加えて、図22では、ハウジング上部356によって支持された血液流入口358と、レーキハブ402に搭載されたレーキ素子440とを示している。
【0147】
図22に示した分離濃縮装置の部分断面図を、図23に示す。上板442は、外壁412の上部に固定されており、遠心分離中に血液を分離装置に留める機能を有している。上板442は、血液が分離装置に導入されたときにまず流入する血液分配チューブ444を支持している。血液分配チューブ444は、上板442の下方に位置していて、且つ、血液流入口358と位置合わせされている。
【0148】
環状の血液オーバーフロー貯蔵部426は、上板442近傍にある血液フロー流入孔448と、半径方向に関して該血液フロー流入孔448よりも内側に位置する第2の通気口450とを有する上板446を備えている。この構成を備えていることによって、遠心分離中にオーバーフローする血液を血液フロー流入孔448から血液オーバーフロー貯蔵部426に流入させ、血液オーバーフロー貯蔵部426内の空気を第2の通気口450から排気させることができる。
【0149】
血液貯蔵部のテーパー形状の外壁418は、チップエッジ449を有している。
【0150】
PRPフロー流路451は、外部分離チャンバ453から濃縮バスケット429へ導くように構成されている。
【0151】
レーキ440は、終端チップエッジ452を有している。終端チップエッジ452は、直立した遮蔽素子支持体434の内壁454に隣接しているため、回転中に内壁454を一掃することができるように構成されている。直立した遮蔽素子支持体434には、厚さを有していており、且つ、高速遠心時にゲルビーズを回収するための開口部456が設けられている。これらが、レーキのチップエッジ452を超えて位置している。
【0152】
遮蔽素子430は、ゲルビーズからのPRPの最終遠心濃縮が行われている間、濃縮濃縮チャンバからゲルビーズが流出することを防ぐべく、非常に小さなサイズのメッシュを有している。
【0153】
図24から図27には、血液分離濃縮時の図19から図23の装置の状態を示したものである。図24は、図19から図23の装置において血液が既に添加されている状態を示したものであり、図25は、PRPを生成する遠心分離工程中の装置の状態を示したものであり、図26は、低速回転で遠心分離している状態の装置を示しており、図27は、遠心されたPRP濃縮物を分離する工程における装置の状態を示している。
【0154】
本発明に係る血液分離濃縮装置は、次の通りである。
【0155】
図24によれば、ゲルビーズによって濃縮(脱水)するのに適した量の血液458が流入孔442および血液分配チューブ444を通じて、血液貯蔵部416に供給される。血液458は、シリンジの針から供給されるか、他の装置から供給することができる。最終的に、血液は、血液貯蔵部416の底部に貯蔵される。
【0156】
図25によれば、モータ384が分離濃縮装置アセンブリ378に対して高速回転のための動力を供給する。これにより、PRPから、血中の高い密度の赤血球を遠心分離することができる。中央チューブ360およびレーキ440は、上記の高速回転時においても位置固定されたままであり、ゲルビーズ460は回転する構成要素によって落下し、固定レーキチップ440のチップ452のリーチを超えて、遮蔽素子430に対する遠心力によって保持される。遠心力は、血液458を血液貯蔵部416の内面418に沿って押し上げ、更に、図25に示すように、チップエッジ449を超えて、デプスフィルタ424に集められる。分離は、細胞密度の作用で実現され、最も密度の高い赤血球を外側に送り、デプスフィルタ424の流路を流れる。血小板は、デプスフィルタ424に対して形成されたPRP層462に留まる。
【0157】
細胞分離後、分離濃縮装置アセンブリ378の回転は遅くなる。PRPフロー流路451は、外部分離チャンバ453から濃縮バスケット429へ導く。PRP462は、デプスフィルタ424の孔および表面から、PRPフロー流路451を下方に流れて、濃縮バスケット429まで流れる。赤血球は、デプスフィルタ424の孔および表面に残留するので、濃縮バスケット429に到達したPRP463には、赤血球が含まれていない。
【0158】
図26によれば、PRP463が流れて、濃縮バスケット429の基材432に集約された乾燥ゲルビーズ460と接触する。乾燥ゲルビーズ460はPRP463から吸水すると、ビーズは、表面が肥厚して粘着性を有するようになる。そこで、濃縮バスケット429が引き続き低速で回転して、位置固定されたレーキ440および直立した遮蔽素子支持体434を通過する濃縮バスケット429の低速回転によって、ビーズ460が攪拌され、ビーズ表面のゲル分極を低減させ、ビーズの塊を崩すことができる。このような回転構成部材による低速回転は、脱水処理が完了するまでおこなわれる。
【0159】
その後、モータ速度が高速スピンモードに変わると、遠心力によって、ゲルビーズ460が遮蔽素子430表面に移動する。スピンによって生じる遠心力は、PRP濃縮物464をビーズ表面から吹き飛ばす。PRP濃縮物は、その後、遮蔽素子430を通って、図27に示すPRP貯蔵部に回収される。PRP濃縮物は、チューブ398およびPRP排出口360を通じて、シリンジを用いて取り出すことが可能である。
【0160】
図28によれば、本発明に係る携帯型の装置の断面図を示す。本形態の装置は、図19から図23に示した血液分離濃縮システムと同じ血液分離濃縮システムを、上部ハウジング354内に配設している。なお、上述した構成と同一のものについては、説明が重複するのを防ぐため説明を省略する。これらの構成については、図19から図27に基づいた構成要素の説明を、本形態においても適用することができる。血液分離濃縮システムの詳細については、上述した図19から図23までの説明を適用できる。
【0161】
図19から図23に示したシステムは、使い捨ての血液分離濃縮ユニットと、使い捨てではないモータ制御ユニットとを備えている。このアセンブリは、実験室用として最適であるとともに、病院や診療所での外科的な目的で用いるのに最適である。
【0162】
なお、従来公知の電源から動力を得る永久使用できるモータや制御システムを実際には使用できないという形態の場合は、全ての構成要素を使い捨てのものにした形態としてもよい。図24に示した構成との大きな差異としては、モータと電源装置と制御システムとを集積して、血液分離濃縮システムを備えたシステムとして一体化している点である。具体的には、下部のケースもしくはハウジング470に、モータ472と、電源装置474と、制御システム476とが納められている。モータ472は、モータ支持サスペンション上に搭載されたモータ支持板478に固定されている。モータ支持サスペンション480は、血液分離濃縮ユニットの回転素子の軸に対するモータの軸方向の配置を管理できる位置に、基材484の下部表面482を固定する。モータドライブシャフトは、連結部485によって、血液分離濃縮ユニットに固定されている。モータ472は、バッテリ電源装置474および制御システム476と、従来公知の電気回路を用いて連結されている。バッテリ電源装置は、従来公知の電気的連結手段486によって、制御システム476と連結している。従来公知の着脱可能な板487は、下部ハウジング489の下部に着脱可能なかたちで固定されており、外した状態のときに電源装置474を挿入できる位置に配置されている。これにより、該システムの配備もしくは使用の直前の、アクティブなバッテリの挿入を可能とさせている。
【0163】
制御システム476は、従来公知のモータ制御部およびタイマーである。制御システム476は、血液分離工程で遠心をおこなう際の高速回転時や、濃縮工程での回転時や、濃縮工程での低速回転時におけるモータ速度を設定および制御することができる。これらの工程は、図24から図27を用いて上述したものと同一である。
【0164】
分離装置および濃縮装置の重量およびサイズは、省エネルギーで、標準的な9ボルトバッテリによって充分動作し得る程度のものを用いる。このように構成すれば、外部電源を用いることなく、装置を携帯することができる。すなわち、本装置は、可動式のユニットや、電源内蔵型で且つ携帯型であることが望まれる医療分野に好適に用いることができる。
【0165】
図28に示す形態の動作は、図24から図27に示したものと同一である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】環状の赤血球のトラップを備えている本発明の遠心分離装置の概略的な断面図である。
【図2】遠心分離装置、および図1に示す遠心分離装置の環状の赤血球のトラップ部を示す部分断面図である。
【図2A】赤血球のトラップの他の例を示す部分断面図である。
【図2B】空気が外部コンテナへ出入りが可能な、無菌の多孔性シートを用いる、本発明に係る排気系の詳細な部分断面図である。
【図2C】空気が外部コンテナへ出入りが可能な、可塑性を有する風船または隔膜を用いる、本発明に係る排気系の詳細な部分断面図である。
【図3】血液を入れた後における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図4】回転分離段階における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図5】遠心分離の終了後における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図6】濃縮装置のシリンジの断面図である。
【図7】多血小板血漿が濃縮装置のシリンジに吸い出された後における、図1の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図8】PRPの使用準備に伴う水の除去段階の後における、PRPを含んでいる濃縮装置のシリンジを示している。
【図9】赤血球トラップであるデプスフィルタを備えた、本発明の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図10】血液を入れた後における、図9の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図11】回転分離段階における、図10の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図12】遠心分離の終了後における、図10の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図13】多血小板血漿が濃縮装置のシリンジに吸い出された後における、図9の分離分離装置の概略的な断面図である。
【図14】本発明の遠心分離装置と中空糸濃縮装置との組み合わせを示す概略図である。
【図15】本発明に係る中空糸濃縮装置の概略的な断面図である。
【図16】線分16−16において取った、図5の中空糸濃縮装置の断面図である。
【図17】図15の中空糸濃縮装置における薄膜弁の概略的な断面図である。
【図18】患者の血液に由来するPRP濃縮物を調整するための、自動化されたバネクラッチの概略的な断面図である。
【図19】本発明の血漿分離装置および濃縮装置の具体例を示す等角図である。
【図20】図19に示されている血漿分離装置および濃縮装置の上面図である。
【図21】駆動部の基部の上に分離装置および濃縮装置のアッセンブリを配置する前における、モータ駆動部と駆動部の受容部との関係を示すために、鉛直軸に沿って分解し、かつ線分21−21において取った、図20の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【図22】線分22−22において取った、図20の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【図23】図22に示されている血漿分離装置および濃縮装置の部分断面図である。
【図24】血液が加えられた後における、図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【図25】遠心分離段階においてPRPを産生しているときの、図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【図26】低速回転濃縮段階における、図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【図27】遠心によるPRPの濃縮分離段階における図19〜23の血漿分離装置および濃縮装置の断面図である。
【図28】本発明の携帯型の一例を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外傷患者に対する診察室用または急患用に適している、携帯用の、密閉された、簡単に処分できる、自己充足型の、および使い捨てのPRP分離装置であって、
上記PRP分離装置は、
遠心分離ユニットとモータとを備え、
500mAh未満の総消費電力を用いて3分未満の間に、血液から赤血球を分離して、PRPを生成することができ;
(a)上記遠心分離ユニットは、遠心分離ドラムを備えており、
上記遠心分離ドラムは、上端部および下端部を含む内壁表面、ドラムの底、ならびに中心軸を有し、
上記遠心分離ドラムの床は上記下端部から上記ドラムの底まで傾斜しており;
(b)上記モータは、上記遠心分離ユニットと接続された駆動軸を備え、
少なくとも120秒間に2000rpmの速度によって上記遠心分離ドラムを回転させることができる、
PRP分離装置。
【請求項2】
上記モータには、少なくとも500mAhの電力を上記モータに供給するバッテリが、スイッチを介して接続されている請求項1に記載のPRP分離装置。
【請求項3】
上記分離装置は、外部コンテナに密閉されており、
上記外部コンテナは、排気口と、中心のくぼみと一直線に配置された滅菌シリンジ流入口とを有しており、
接続チューブが、上記シリンジ流入口に接続され、かつ上記シリンジ流入口から下方に延長されている
請求項1に記載のPRP分離装置。
【請求項4】
上記遠心分離ユニットの内壁表面が、赤血球を捕捉し、かつ保持する通路を有するデプスフィルタであり、
上記通路は、血液から赤血球を遠心分離する間において、上記通路の孔の中に移動する赤血球を捕捉し、かつ遠心分離が終了したとき、上記デプスフィルタに上記赤血球を保持する大きさを有し、
上記デプスフィルタは、上記デプスフィルタの表面と接触する血小板を有為に活性化させない材料から選択され、
赤血球は、遠心分離の間において血漿を介して外側に移動して、上記デプスフィルタを通り、かつ上記デプスフィルタによって捕捉され、
上記中心のくぼみに流れて行く上記PRPは、遠心分離が終了すると、実質的に赤血球が取り除かれている
請求項1に記載の携帯用の分離装置。
【請求項5】
上記遠心分離の上記内壁表面は、上記中心軸から1度〜15度の角度において、上記底から外側に傾斜しており、
上記遠心分離ドラムの上端は、外部の環状を有する赤血球捕捉チャンバによって取り囲まれ、かつ上記赤血球捕捉チャンバと一体化されており、
上記赤血球捕捉チャンバは、外壁、内壁および下部容量を備え、
上記外壁は、上記内壁よりも高い頂部を有し、
上記赤血球捕捉チャンバの上記下部容量は、上記内壁の下にある容量であり、かつ有為な量の上記PRPを保持することなく、血液から分離された赤血球の総量を保持する大きさを有しており、
遠心分離の流れの間において上記血漿を介して外側に移動する赤血球は、遠心分離において上記赤血球捕捉チャンバの上記外壁にぶつかって保持され、かつ遠心分離が終了すると、上記赤血球捕捉チャンバの上記下部容量に集まる
請求項1に記載の携帯用の分離装置。
【請求項6】
上記赤血球捕捉チャンバの上記内壁は、上記中央軸に対して相対的に少なくとも25度の角度“a”を形成する傾斜を有する上部を含み、
上記傾斜は、遠心分離の間において、上記PRPにおける血小板の流れが、上記赤血球捕捉チャンバから逆流し、かつあふれ出し易くする
請求項5に記載の携帯用の分離装置。
【請求項7】
上記遠心分離ドラムの上記底に向かう上記接続チューブと接続するためのルアー取り付け部を有する血漿濃縮シリンジと組み合わせた
請求項1に記載の携帯用の分離装置。
【請求項8】
上記血漿濃縮シリンジは、
内面および出入り口を有する円筒形の容器、
上記容器の上記内面と合わさる外面を有する円筒形の作動ピストン、
上記ピストンと上記出入り口との間配置された濃縮用乾燥ヒドロゲルビーズ、ならびに
上記出入り口を隣接して配置され、かつ上記出入り口からの上記濃縮用乾燥ヒドロゲルビーズの漏れを防止するフィルタ
を備えており、
上記出入り口から離れる方向へ上記ピストンが移動することによって、上記濃縮チャンバにPRPが引き込まれ、かつ上記濃縮用乾燥ヒドロゲルによって上記PRPから水が除去され、これによって、血漿における血小板の活性化またはフィブリノゲンの変性を起こさせることなく、上記PRPを濃縮し、かつ
上記出入り口に向かって上記ピストンを移動させることによって、上記出入り口を介して濃縮されたPRPを放出する
上記血漿濃縮シリンジと組み合わせた
請求項8に記載の分離装置。
【請求項9】
外傷患者に対する診察室用または急患用に適している、携帯用の、密閉された、簡単に処分できる、自己充足の、および使い捨てのPRP分離装置および濃縮装置であって、
上記PRP分離装置は、遠心分離ユニットとモータとを備え、
上記PRP分離装置および濃縮装置は、
500mAh未満の総消費電力用いて、PRPを分離および濃縮する能力を有し;
(a)上記遠心分離ユニットが、遠心分離ドラム、上記遠心分離ドラムの中に延長されている流入チューブ、および上記遠心分離ドラムの中に延長されている流出チューブを含み、
上記遠心分離ドラムが、上端部および下端部を含む内壁表面、くぼみおよび上記上端部からくぼみまで下方に傾斜する床を有するドラムの底、ならびに中心軸を有する
上記ドラムの底が、くぼみおよび上記上端部からくぼみまで下方に傾斜する床を有し、
上記流出チューブが、上記くぼみと隣接して配置された注入口を有する上記遠心分離ユニットと;
(b)駆動軸を有する駆動モータが、上記遠心分離ユニットと接続され;
(c)中空糸カートリッジが、カートリッジの入り口、カートリッジの出口、および薄膜フィルタを有し、
上記薄膜フィルタが、水および塩を移動させ、かつ血液中に存在する凝固因子および治癒因子の移動を阻害する複数の孔を有し、
上記カートリッジの入り口が、流路を介して上記流出チューブに接続されており;
(d)引き込み口および引き出し口を有するポンプであって、上記引き込み口が流路を介して上記カートリッジの出口と接続され、かつ引き出し口が流路を介して上記流入チューブと接続されている
PRP分離装置および濃縮装置。
【請求項10】
上記中空糸カートリッジは、中空糸、上記中空糸を取り囲む抽出液体チャンバ、および上記抽出液体チャンバと連絡している抽出液体排出チャンバを含んでいる請求項9に記載のPRP分離装置および濃縮装置。
【請求項11】
上記抽出液体排出チャンバは、上壁および上記上壁にある通気口を有し、上記通気口は、下部の親水性膜および上部の疎水性膜によって塞がれており、
上記排出チャンバが満ちていくと、上記通気口を介して空気が排出され、
上記排出チャンバが満たされると、上記親水性膜および上記疎水性膜を浸す液体が液体の流れを阻害し、
上記システムにおける内圧が、上記排出チャンバから液体を引き込んでいるとき、浸された上記親水性膜が、上記排出チャンバに空気が流れ込むことを防止する
請求項10に記載のPRP分離装置および濃縮装置。
【請求項12】
中心軸を有するPRP分離装置および濃縮装置であって、
固定ハウジング、および上記固定ハウジングにおいて上記中心軸の周りを回転するために取り付けられた回転アセンブリを備え、
上記固定ハウジングについて、
回転可能な上記アセンブリが、回転可能な遠心分離装置および濃縮装置、駆動モータ、および上記モータと回転可能な上記アセンブリと接続する連結部とを含み、上記モータおよび駆動連結は、回転可能な上記アセンブリを、上記回転軸の周りを回転させるために配置されており、
上記遠心分離装置は、内部の分離チャンバおよび外部の赤血球補足系を有し、
上記濃縮装置は、乾燥ビーズを含む濃縮チャンバを備え、上記濃縮チャンバは、床および複数の直立遮蔽物支持体を有し、上記直立遮蔽物支持体は、内面および外面を有し、上記直立遮蔽物支持体の上記外面に円筒形の遮蔽物が支持されており、
軸方向に同軸の固定チューブが、上記ハウジングに固定され、かつ上記固定チューブに固定された固定ビーズレーキを有する上記濃縮チャンバを介して伸びており、半径方向の外側に広がっている上記レーキは、上記直立遮蔽物支持体の内面に隣接している遠心端を有し、
上記固定ハウジングに対して上記回転アセンブリが低速に回転することによって、上記固定レーキを通過した上記ビーズが引っ張られ、ゲル分極が低下し、かつ上記ビーズが凝集する
PRP分離装置および濃縮装置。
【請求項13】
隣接する直立遮蔽物支持体の組のそれぞれが、上記レーキの上記遠心端から半径方向の外側に乾燥ビーズを保持する乾燥ビーズ受容部を決定しており、高速回転段階における上記レーキによるビーズの破壊が実質的に回避される請求項12に記載のPRP分離装置および濃縮装置。
【請求項14】
モータ制御部をさらに含み、
上記駆動モータは、遠心による赤血球の分離およびPRP回収段階に必要な高い回転速度を有し、かつ乾燥ビーズによる水の除去に必要な低い回転速度を有し、
上記モータ制御部は、上記回転アセンブリの高いおよび低い回転速度を開始させるスイッチを含んでいる
請求項13に記載のPRP分離装置および濃縮装置。
【請求項15】
上記スイッチは、遠心分離段階およびPRP濃縮回収段階において上記回転アセンブリの高い回転速度を起こし、かつPRP濃縮回収段階において上記回転アセンブリの低い回転速度を起こす請求項14に記載のPRP分離装置および濃縮装置。
【請求項16】
中心軸を有する固定ハウジングを備える回転可能なPRP濃縮装置であって、
PRP濃縮装置は、駆動モータおよび回転可能な遠心分離PRP濃縮分離装置、上記駆動モータと接続している連結部、ならびに中心軸を有し、かつその中心軸の周りを回転する遠心分離PRP分離装置を備え、
上記PRP分離装置は、乾燥ビーズを含む濃縮チャンバを備え、上記濃縮チャンバは、床および直立遮蔽物支持体を有し、上記直立遮蔽物支持体は、内面および外面を有し、円筒形の遮蔽物が上記直立遮蔽物支持体の上記外面上に支持されており、
軸方向に同軸の固定チューブが、上記ハウジングに固定され、かつ上記濃縮チャンバを介して伸びており、固定ビーズレーキが、上記チューブに固定され、かつ半径方向の外側に広がって上記直立遮蔽物支持体の内面と隣接しており、
上記固定ハウジングに対して上記回転アセンブリが低速に回転することによって、上記固定レーキを通過した上記ビーズが引っ張られ、ゲル分極が低下し、かつ上記ビーズが凝集する
PRP濃縮装置。
【請求項17】
隣接する直立遮蔽物支持体の組、およびそれらの間に伸びている遮蔽部分のそれぞれが、上記レーキの上記遠心端から半径方向の外側に乾燥ビーズを保持する乾燥ビーズ受容部を決定しており、高速回転段階における上記レーキによるビーズの破壊が実質的に回避される請求項16に記載のPRP濃縮装置。
【請求項18】
モータ制御部をさらに含み、
上記駆動モータは、PRP回収段階に必要な高い回転速度を有し、かつ乾燥ビーズによる水の除去に必要な低い回転速度を有し、
上記モータ制御部は、上記回転アセンブリの高いおよび低い回転速度を開始させるスイッチを含んでいる
請求項16に記載のPRP濃縮装置。
【請求項19】
上記スイッチは、PRP濃縮回収段階において上記回転アセンブリの高い回転速度を起こし、かつPRP濃縮回収段階において上記回転アセンブリの低い回転速度を起こす請求項18に記載のPRP濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公表番号】特表2008−529596(P2008−529596A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554193(P2007−554193)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/003599
【国際公開番号】WO2006/086201
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507266369)ハヌマン リミテッド ライアビリティ カンパニー (7)
【出願人】(507266370)バイオメット バイオロジックス,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】