説明

多重円板脱水装置

【課題】
濾液通路の目詰りを解消すると共に濾液通路壁面に付着した凝集フロックの除去も併せて行える様にし、濾液通路から排出される濾液量を増大させ、濾過効果を増大させる。
【解決手段】
回転可能な軸体30に円板31、該円板より小径のスペーサ32を交互に多重に嵌設して構成した濾体7を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、該円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群5を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路11を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記濾液通路に向けてジェット水流を噴射する洗浄ノズル37を設け、前記ジェット水流は前記濾液通路を通過可能であると共に噴射方向が前記濾液通路の軸心に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、し尿汚泥、その他産廃汚泥に対して濾過処理をして固形分と濾液とを分離する多重円板脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥、し尿汚泥、その他産廃汚泥に対して濾過処理をして固形分と濾液とを分離する濾過装置の1つに、多重円板脱水装置がある。
【0003】
従来、多重円板脱水装置としては、特許文献1に示されるものがある。斯かる多重円板脱水装置について、図13を参照して概略を説明する。
【0004】
多重円板脱水装置は、主に、多重円板脱水機1及び該多重円板脱水機1に連設された凝集装置2を具備している。
【0005】
前記多重円板脱水機1は、脱水槽3の内部に上部濾体群4と下部濾体群5とがケーキ搬送路6を形成する様に上下に配設されており、該ケーキ搬送路6は下流側に向って断面積が漸次減少し、下流端が前記脱水槽3の壁面に開口して吐出口10を形成すると共に前記上部濾体群4の上流側は前記下部濾体群5に対して短くなっており、前記ケーキ搬送路6の上流端部の上面は開放された形状となっている。
【0006】
前記上部濾体群4、前記下部濾体群5は、それぞれ所要数の濾体7が一部重合する様に連設されて構成されており、該濾体7は前記脱水槽3の両側壁に掛渡って回転可能に設けられ、図示しない駆動装置により前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の対峙部がそれぞれ下流側に向って回転する様に駆動されている。
【0007】
前記濾体7は、回転軸8に多数の円板9がスペーサ(図示せず)を介して固着されており、隣接する濾体7,7の円板9,9はスペーサが形成する隙間に一部嵌入して一部が重合する様になっており、隣接する濾体7,7の円板9,9間に形成される間隙が液を濾過する目となっている。又、前記濾体7には、前記円板9、スペーサを軸心方向に貫通する濾液通路11が形成され、該濾液通路11に漏出した濾液を該濾液通路11により前記濾体7の軸端に導き、前記脱水槽3の側壁から排出する様になっている。
【0008】
前記凝集装置2は凝集槽12を有し、該凝集槽12は凝集原液供給口13によって前記脱水槽3に連設されている。前記凝集槽12には原液供給ライン14及び凝集液供給ライン15が接続され、前記凝集槽12には前記原液供給ライン14から原液供給ポンプ16により原液が供給され、又前記凝集液供給ライン15からは凝集液供給ポンプ17により凝集液が供給される様になっている。
【0009】
前記凝集槽12には攪拌機18が設けられ、該攪拌機18により原液と凝集液が攪拌されることで、原液中の固形分の凝集が促進される。
【0010】
前記原液供給ライン14から原液、前記凝集液供給ライン15から凝集液を供給することで、凝集原液19が前記凝集原液供給口13からオーバフローして前記脱水槽3に供給される。前記凝集原液19の供給量は、前記ケーキ搬送路6の上流端部開放部に自由液面21を形成する様に調整される。
【0011】
前記ケーキ搬送路6に供給された前記凝集原液19は、前記ケーキ搬送路6の上流部では重力による濾過により、濾液が分離され、分離された濾液の大部分は前記円板9,9間の目より落下し、残りの一部は前記濾液通路11に漏出し、該濾液通路11を通って前記脱水槽3の側壁から排出される。
【0012】
又、分離された凝集フロックは、前記下部濾体群5上に着床し、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の回転によって下流側に搬送される。又、凝集フロックは、搬送過程で上下の前記上部濾体群4、前記下部濾体群5により圧搾され、濾液が分離されてケーキとなる。即ち、前記ケーキ搬送路6の上流部は重力脱水部、下流部は圧搾脱水部が形成される。
【0013】
圧搾によって、分離した濾液の大半は前記円板9,9間の目を通って落下し、前記下部濾体群5の下方に落下し、残部は前記濾液通路11に漏出し、該濾液通路11を通って前記脱水槽3の側壁から排出される。
【0014】
又、脱水されたケーキは前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の搬送作用により前記吐出口10より吐出される。
【0015】
上記した従来の多重円板脱水装置に於いて、濾液が前記濾液通路11に漏出する際、凝集フロックも一緒に漏出する場合があり、多重円板脱水装置の稼働時間が長くなると、前記濾液通路11が漏出した凝集フロックによって詰る場合が考えられる。この為、適宜前記濾液通路11に溜った凝集フロックを除去する必要がある。
【0016】
前記濾液通路11を洗浄する構成を有する多重円板脱水装置として、例えば特許文献2に示されるものがある。
【0017】
特許文献2に示される従来の多重円板脱水装置では、前記濾液通路11に向けジェット水を噴射し、目詰りした凝集フロックを除去している。
【0018】
然し乍ら、従来の多重円板脱水装置ではジェット水を前記濾液通路11の軸心と平行に噴射し、前記濾液通路11を貫通させることを目的としており、該濾液通路11の壁面に付着したフロックを除去するには充分とはいえなかった。
【0019】
又、上記した従来の多重円板脱水装置に於いて、前記ケーキ搬送路6上流部での濾液分離作用は、重力による液分離となっている。又、濾液が通過する目は隣接する前記濾体7,7同士が重合した部分に形成される隙間だけであり、前記下部濾体群5に形成される濾過面積としては小さく、効果的な濾過作用が得られにくい。前記重力脱水部で充分な脱水が進行しない場合は、前記圧搾脱水部に進入したケーキの含水率が大きく、効果的な圧搾作用が得られない。更に、前記重力脱水部での脱水作用が少ない場合は、前記自由液面21の低下が遅く原液等の供給量が制限され、処理量の増加が見込めない。
【0020】
或は、前記ケーキ搬送路6の上流部、前記吐出口10共に大気に開放されているので、ケーキの含水率については制御することができず、処理する原液の状態によってケーキの含水率が変動する等の問題があった。
【0021】
【特許文献1】特開2004−330060号公報
【0022】
【特許文献2】特開2005−7327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は斯かる実情に鑑み、濾液通路の目詰りを解消すると共に濾液通路壁面に付着した凝集フロックの除去も併せて行える様にし、濾液通路から排出される濾液量を増大させ、濾過効果を増大させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、回転可能な軸体に円板、該円板より小径のスペーサを交互に多重に嵌設して構成した濾体を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、該円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記濾液通路に向けてジェット水流を噴射する洗浄ノズルを設け、前記ジェット水流は前記濾液通路を通過可能であると共に噴射方向が前記濾液通路の軸心に対して傾斜している多重円板脱水装置に係るものであり、又ジェット水流の噴射方向の傾斜が異なる様に、前記洗浄ノズルが複数設けられた多重円板脱水装置に係るものである。
【0025】
又本発明は、前記スペーサに半径方向に延び一端が通路孔に開口し他端がスペーサ周面に開口する溝を形成し、濾液が該溝を通って前記通路孔に漏出する様にした多重円板脱水装置に係るものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、回転可能な軸体に円板、該円板より小径のスペーサを交互に多重に嵌設して構成した濾体を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、該円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記濾液通路に向けてジェット水流を噴射する洗浄ノズルを設け、前記ジェット水流は前記濾液通路を通過可能であると共に噴射方向が前記濾液通路の軸心に対して傾斜しているので、前記ジェット水流が前記濾液通路の壁面に衝突し、又前記ジェット水流の衝突位置は前記濾体の回転と共に移動し、壁面の全長に亘り洗浄が可能であり、又前記ジェット水流は前記濾液通路を通過するので目詰りの解消も行える。
【0027】
又、本発明によれば、前記スペーサに半径方向に延び、一端が通路孔に開口し他端がスペーサ周面に開口する溝を形成し、濾液が該溝を通って前記通路孔に漏出する様にしたので、スペーサの周面も濾過作用に寄与し、濾過効率が増大する等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0029】
図1、図2は本発明が実施される多重円板脱水装置の一例、特にケーキ搬送路6が閉鎖構造となっている多重円板脱水装置を示すものである。
【0030】
先ず、多重円板脱水装置について説明する。
【0031】
尚、図1〜図4中、図13中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0032】
脱水槽3内に上部濾体群4、下部濾体群5が上下に対向して設けられ、前記上部濾体群4と前記下部濾体群5間にはケーキ搬送路6が形成される。
【0033】
前記上部濾体群4、前記下部濾体群5は、それぞれ所要数の濾体7が一部重合する状態で連設されて構成されている。尚、該濾体7の構造については、従来の多重円板脱水装置で説明したと同様であるので、説明を省略する。
【0034】
前記ケーキ搬送路6の上流端に上流端濾体群23が設けられる。該上流端濾体群23は、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5と同様、前記濾体7によって構成され、前記上流端濾体群23の上下両端に位置する前記濾体7は、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5の上流端に位置する前記濾体7と一部が重合する様に連設される。
【0035】
従って、前記ケーキ搬送路6は前記脱水槽3の両側壁、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5、前記上流端濾体群23によって閉鎖された空間となる。
【0036】
前記上部濾体群4、前記下部濾体群5、前記上流端濾体群23を構成する前記濾体7はそれぞれ図示しない駆動源に連結され、前記ケーキ搬送路6内の凝集原液、或はフロックに下流方向の力を与える様に回転されている。
【0037】
前記ケーキ搬送路6の下流端に開口する吐出口10には、吐出抵抗付与手段として抵抗板24が設けられている。該抵抗板24は上端を前記脱水槽3に回転自在に支持され、自重で前記吐出口10を閉鎖する様に吊下げられている。又、前記抵抗板24には錘板25が所要枚数着脱可能となっており、該錘板25の枚数で、前記吐出口10の閉鎖力が調整可能となっている。
【0038】
密閉構造の凝集槽12と前記脱水槽3とは凝集原液供給管26によって接続され、該凝集原液供給管26は前記脱水槽3の側壁の前記ケーキ搬送路6の上流端に開口する。
【0039】
前記凝集槽12、又は前記凝集原液供給管26、又は前記ケーキ搬送路6の上流端等の適宜位置には圧力計29が設けられ、前記ケーキ搬送路6の上流部の圧力が検出される様になっている。
【0040】
前記凝集槽12には原液供給ライン14、凝集液供給ライン15が接続され、それぞれ原液供給ポンプ16、凝集液供給ポンプ17により原液、或は凝集液を前記凝集槽12に圧送可能となっている。該凝集槽12は密閉構造であるが、前記ケーキ搬送路6内の圧力変動を吸収可能なアキュムレータ(図示せず)を前記凝集槽12に連設してもよい。
【0041】
該凝集槽12内の原液は攪拌機18により攪拌され、凝集液による凝集作用が促進される。
【0042】
次に、図2〜図5に於いて、前記濾体7等について具体的に説明する。
【0043】
前記脱水槽3の前記下部濾体群5の下方は濾液貯留部27となっており、又前記脱水槽3の両側、又一側には濾液貯留側室28が形成され、前記濾液貯留部27には重力脱水部により落下した濾液、及び圧搾脱水部で分離された濾液を貯留する様になっており、又前記濾液貯留側室28には後述する様に前記上部濾体群4、前記下部濾体群5に形成された濾液通路11に集められた濾液が流入する様になっている。
【0044】
図3、図4は前記濾体7を示しており、軸体30にステンレス鋼板等の金属の円板31と金属又は合成樹脂製のスペーサ32が交互に嵌装され、前記円板31、前記スペーサ32が棒状に多重に重ねられた構造であり、該スペーサ32の外径は前記円板31の外径より小さく、前記スペーサ32の厚みは前記円板31の板厚より僅かに大きくなっている。尚、図3では分り易くする為、前記スペーサ32の厚みを大きく示している。
【0045】
前記濾体7の外周部には前記円板31と前記スペーサ32とによって溝33が形成され、該溝33に隣接する前記濾体7の前記円板31が嵌入することで、前記濾体7と隣接する濾体7とが一部重合する状態となっている。又、前記円板31の先端と前記スペーサ32の周面との間に濾液が通過する目38が形成される。
【0046】
前記濾体7には、前記円板31、前記スペーサ32を貫通する前記濾液通路11が円周所要等分した位置、例えば図4では円周8等分した位置に形成されている。
【0047】
又、前記スペーサ32の一部、例えば図5に示す様に、5枚毎のスペーサ32について、外周部に欠切部40が形成され、該欠切部40によって前記濾液通路11が開放状態となっている。
【0048】
前記脱水槽3の前記濾液貯留側室28に臨接する側壁34には、前記濾液通路11が設けられている円周と同一径の円周上に所要数の濾液流入口35が穿設されている。該濾液流入口35は前記濾液通路11と同一、若しくは該濾液通路11より大きな直径を有している。従って、前記濾液流入口35と前記濾液通路11とは、該濾液通路11が穿設されているピッチ角度回転することで、該濾液通路11と前記濾液流入口35とが合致する。図示の例では、前記濾体7が45゜回転する毎に前記濾液通路11と前記濾液流入口35が合致する様になっている。
【0049】
前記脱水槽3の他の側壁36の少なくとも1箇所に孔39が設けられ、該孔39に隣接して洗浄ノズル37が設けられ、該洗浄ノズル37からは前記濾液通路11に向ってジェット水流が噴射される様になっている。
【0050】
又、ジェット水流の噴射方向は、前記濾液通路11の軸心に対して傾斜しており、傾斜角θは、前記濾液通路11の全長をL、該濾液通路11の直径をDとすると、0<θ<α≒tan-1(D/L)である。尚、傾斜角は厳密でなくともよく、要はジェット水流が前記濾液通路11を貫通或は通過し、且つ前記濾液通路11の軸心に対して傾斜していればよい。
【0051】
以下、上述した多重円板脱水装置の作用について説明する。
【0052】
前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17を駆動して前記凝集槽12内に原液、凝集液を圧送する。該凝集槽12内で原液、凝集液が攪拌され、原液内の固形分が凝集された凝集原液となり、前記凝集原液供給管26を介して前記ケーキ搬送路6の上流部に送給される。
【0053】
前記抵抗板24により前記吐出口10が閉鎖されているので、前記ケーキ搬送路6が所定圧力に上昇する迄、前記吐出口10からは凝集原液、ケーキのいずれの状態でも吐出されない。
【0054】
前記ケーキ搬送路6内で凝集原液は前記目38で凝集フロックと濾液に分離され、濾液は前記目38を通過して濾液貯留部27に落下し、又前記欠切部40を通って前記濾液通路11に流入し、前記濾液流入口35を通って前記濾液貯留側室28に流出する。
【0055】
前記ケーキ搬送路6の内部が昇圧することで、重力脱水部での濾液分離作用が促進され、濾液分離処理量が増大する。従って、圧搾脱水部に移行したケーキの含水率が低下し、該圧搾脱水部でのケーキ圧搾作用が効果的となり、ケーキからの脱水処理量が増大する。
【0056】
前記重力脱水部で脱水されたケーキは前記ケーキ搬送路6の上流側の圧搾脱水部で圧搾される。
【0057】
圧搾により、ケーキに含有されている液が濾過分離され、圧搾脱水部で分離された濾液の一部は、前記スペーサ32の前記欠切部40を通って前記濾液通路11に漏出し、該濾液通路11を通り前記濾液流入口35を介して前記濾液貯留側室28に流入する。
【0058】
又、前記ケーキ搬送路6が加圧されることで、濾液は前記上部濾体群4の上側にも漏出し、該上部濾体群4上に溜る場合がある。この場合、該上部濾体群4を前記濾液貯留側室28側に下り傾斜となる様に傾斜させるか、或は前記脱水槽3自体を前記濾液貯留側室28側が下となる様に傾斜させる。前記上部濾体群4が傾斜されることで、該上部濾体群4上に溜った濾液は、前記濾液貯留側室28に落下排出される。
【0059】
又前記ケーキ搬送路6内が加圧されることでケーキに吐出方向の力が作用し、更に、ケーキの含水率が低下することで、前記上部濾体群4、前記下部濾体群5によりケーキの搬送力が増大する。搬送されたケーキが前記抵抗板24を押上げ、前記吐出口10から吐出される。尚、前記錘板25の枚数を調整することで、前記抵抗板24による前記吐出口10の閉鎖力が調整でき、ケーキの吐出時の抵抗を変えられることから、ケーキの含水率の調整が可能となる。
【0060】
前記ケーキ搬送路6の内部の圧力の制御は、前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17の供給量を制御することでも実施される。前記圧力計29によって前記ケーキ搬送路6の圧力が検出され、検出結果は前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17の駆動にフィードバックされ、前記ケーキ搬送路6の圧力が所定圧となる様に、原液、凝集液の供給量が制御される。制御される圧力の所定値は、例えば0.05MPA程度が選択される。
【0061】
而して、検出圧力が所定値となる様に凝集原液の圧送を行う様にし、濾過状態を凝集原液の状態に適合させることができ、濾過効率の維持向上が図れる。
【0062】
尚、アキュムレータを具備している場合は、圧力の変動がアキュムレータによって吸収されるので、前記原液供給ポンプ16、前記凝集液供給ポンプ17の供給量は定量供給とすることができる。
【0063】
凝集原液の濾過、脱水を継続することで、凝集フロックが前記円板31に付着し、又前記濾液通路11の内壁にも付着する。前記円板31に付着した凝集フロックは重合した円板31,31間の摺動により掻取られ除去される。
【0064】
又、前記濾液通路11の内壁に付着した凝集フロック、或は該濾液通路11を詰らせた凝集フロックは、前記洗浄ノズル37からジェット水流を前記濾液通路11に噴出することで除去される。
【0065】
尚、図6(A)、図6(B)、図6(C)に示される様に、該濾液通路11の洗浄は、ジェット水流の噴出方向が該濾液通路11の軸心に対して傾斜していることから、前記濾体7が回転すると、ジェット水流は最初、前記洗浄ノズル37側(手前)の壁面に衝突し(図6(A)参照)、次に前記濾体7の回転と共に当接位置は次第に奥に移動し(図6(B)参照)、最後は前記濾液通路11を貫通する(図6(C)参照)。従って、ジェット水流により該濾液通路11の貫通と該濾液通路11の壁面の洗浄とを同時に行うことができる。
【0066】
又、前記洗浄ノズル37を複数設け、各洗浄ノズル37からのジェット水流の噴射方向を変えることで、各洗浄ノズル37毎に前記濾液通路11の壁面の異なる部分の洗浄が可能となり、該濾液通路11の壁面全体を洗浄することができる。更に、前記洗浄ノズル37からのジェット水流の方向が前記濾液通路11の軸心と平行のものを組合わせてもよい。
【0067】
上記した様に、濾液の大部分は前記目38(図3参照)を濾過、分離される。又、例えば前記下部濾体群5の前記ケーキ搬送路6に面する大部分は、前記スペーサ32が占めている。上記した実施の形態でも、該スペーサ32に前記濾液通路11と連通する前記欠切部40を形成し、該欠切部40を通して濾液を前記濾液通路11に漏出させているが、前記欠切部40は極一部に形成されるのみであり、濾過には充分でなく、更に該欠切部40を形成することで形成される目は前記スペーサ32に貫通する前記濾液通路11の直径に相当する程度に長いスリット孔となり、前記スペーサ32での濾過量を増大させる為、前記欠切部40を多く形成すると凝集フロックの漏出が多くなり、濾過効果が低減するという不具合が生ずる。
【0068】
次に、図7〜図10に於いて第2の実施の形態について説明する。
【0069】
ここで、図7〜図10は濾体7を構成する円板31、スペーサ32を一体化したスペーサ付の円板47を示している。該円板47は例えば、合成樹脂により一体成形されたものであり、中央に軸体30(図3参照)が貫通する嵌合孔48が形成され、該嵌合孔48の周囲は厚肉のボス部49となっている。該ボス部49の周囲には濾液通路11を形成する為の通路孔51が穿設されている。該通路孔51の周囲には、円周所要ピッチで楔状の突起52が全周に亘って形成されている。該突起52が形成されている箇所の厚みは前記ボス部49の厚みと同一となっている。
【0070】
又、図9で見られる様に、前記突起52,52の間には濾過溝53が形成され、該濾過溝53は外周側が狭く、中心側が広いテーパ形状をしている。
【0071】
前記円板47を前記軸体30に組込み、前記円板47,47を重合させると、前記突起52が隣接する円板47に当接して、前記濾過溝53が径方向に延びる濾過孔として機能する。又、前記突起52は、図4、図5で示した前記スペーサ32として機能する。形成された濾過孔は外端がスペーサ32の周面に開口すると共に内端も前記通路孔51に連通する様に開口している。又、前記濾過溝53は中心側の断面積が広くなっているので、凝集フロックが流入した場合も抜けがよく、前記濾過孔51が目詰りすることが防止される。又、外周に開口する開口の大きさは、該通路孔51の間隔を適宜設定して目38(図3参照)と同等の大きさとすることができる。
【0072】
前記円板47の外周には所要間隔で突部50が突設されている。該突部50は、前記円板47の前記目38に臨接する部分に付着した凝集フロックを掻取るものである。
【0073】
又、前記濾過孔を形成する別の方法として、従来の様に前記円板31と別途製作したスペーサとの組合わせとしてもよい。
【0074】
図11、図12は、濾過孔を形成するスペーサ54を示している。該スペーサ54は、リング状の薄板を断面が矩形波状となる様にプレス加工して径方向に延びる濾過孔55を形成したものである。
【0075】
前記スペーサ54を前記円板31に嵌込み、カシメ等所要の手段で固着し、前記スペーサ54が一体化された円板47を前記軸体30に所定数嵌合して、濾体7が構成される。
【0076】
上記第2の実施の形態では、前記濾体7の全周に亘り開口する濾過孔が形成され、該濾過孔を通して濾液が濾液通路11に導かれる。前記濾体7の全周に亘って前記濾過孔が形成されることで、下部濾体群5の全体に均一な濾過の為の目が形成されるので、濾過効率が大幅に向上する。
【0077】
上記第2の実施の形態では、前記円板47に合成樹脂が使用される場合があるが、合成樹脂の円板を使用した場合、上部濾体群4、前記下部濾体群5の重力脱水部には合成樹脂の円板47を使用し、圧搾脱水部には金属板を使用する等、負荷によって使分けをしてもよい。又、合成樹脂の円板に対して所要枚数毎に金属板の円板を介設して補強する等してもよい。或は、前記円板47の外周部をステンレス鋼等の金属材料とし、中心部を合成樹脂製とし、外周部と中心部とを圧入、或は成形時に鋳込む等して一体成形する等して補強してもよい。
【0078】
尚、上記実施の形態は、ケーキ搬送路6が閉鎖した多重円板脱水装置について説明したが、図13に示したケーキ搬送路6が開放している多重円板脱水装置に実施することが可能であることは言う迄もない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す概略説明図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に於ける下部濾体群の部分平面図である。
【図4】図3のB−B矢視図である。
【図5】図3のB−B矢視図相当図であり、スペーサに欠切部が欠切された場合を示す。
【図6】(A)、(B)、(C)は本発明の第1の実施の形態の作用を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に使用される円板の正面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に使用される円板の側面図である。
【図9】図7のC部拡大図である。
【図10】図8のD部拡大図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に使用される円板の他の例を示し、円板を構成するスペーサ部分正面図である。
【図12】本発明の円板を構成するスペーサ部分平面図である。
【図13】従来の多重円板脱水装置を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
3 脱水槽
4 上部濾体群
5 下部濾体群
6 ケーキ搬送路
7 濾体
8 回転軸
10 吐出口
11 濾液通路
13 凝集原液供給口
14 原液供給ライン
15 凝集液供給ライン
16 原液供給ポンプ
17 凝集液供給ポンプ
23 上流端濾体群
24 抵抗板
30 軸体
31 円板
32 スペーサ
33 溝
37 洗浄ノズル
38 目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な軸体に円板、該円板より小径のスペーサを交互に多重に嵌設して構成した濾体を、前記円板の一部が重合する様所要数連設し、該円板の重合部分の隙間から濾過する様にした濾体群を具備する多重円板脱水装置に於いて、前記円板、前記スペーサを貫通する濾液通路を形成して該濾液通路に漏出した濾液を前記濾体の軸端から排出する様にし、前記濾液通路に向けてジェット水流を噴射する洗浄ノズルを設け、前記ジェット水流は前記濾液通路を通過可能であると共に噴射方向が前記濾液通路の軸心に対して傾斜していることを特徴とする多重円板脱水装置。
【請求項2】
ジェット水流の噴射方向の傾斜が異なる様に、前記洗浄ノズルが複数設けられた請求項1の多重円板脱水装置。
【請求項3】
前記スペーサに半径方向に延び一端が通路孔に開口し他端がスペーサ周面に開口する溝を形成し、濾液が該溝を通って前記通路孔に漏出する様にした請求項1の多重円板脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−807(P2007−807A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185360(P2005−185360)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】