説明

大便器装置

【課題】排泄量やペーパー使用量が異常でも排水管の詰まりを防止する大便器の提供。
【解決手段】ボウル23を備えた大便器2と、ボウル23内の内容物を排水配管に搬出し便器2を洗浄するために所定量の便器洗浄水をボウル23内に供給する便器洗浄水供給手段24と、便器洗浄水供給手段24が供給する便器洗浄水の供給動作を制御する便器洗浄水供給制御手段9とを備えた大便器装置において、ボウル23内に投棄される前記排泄物を含む排出物量を求める排出物量検出手段8と、求められた排出物量が異常か否か判定する排出物量異常判定手段92とをさらに有するとともに、便器洗浄水供給制御手段91は、排出物量異常判定手段が異常状態と判定した場合は、供給する洗浄水量を通常時より増加させる異常対応モードを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄時に便器外に排出・搬送すべき排出物(以下、本明細書中では、使用者の体内から放出される大小便などの排泄物だけでなく、トイレットペーパーなど排便行為に伴ってボウル23内に投棄される物を総称して、「排出物」と呼ぶ)の量である排出物量が所定値を超えるような異常値を検出した時に便器洗浄シーケンスを変更することに係り、特に排出物が大便器から排出できなかったり、仮に排出できても所定の搬送長さを実現することができずに衛生設備配管内で詰りが発生したりすることを防止することに好適な大便器装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の大便器における便器洗浄シーケンスは、複数の使用者が通常の排便行為で排出する泄物量の分布の調査結果に基づき、排出物量の上限を想定し、その上限量の排出物を排出・搬送するのに充分な洗浄パターンや洗浄水量を設定している。そして、この泄物量の分布は用便の態様(大用・小用)によって大きく異なるため、この態様に関する情報に基づき洗浄水量を変えているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような使用者の用便の態様にではなく、排便設備の態様に応じて、例えば、サイホン式・サイホンゼット式等の便器の種類、標準形・節水形等の便器の構造、あるいは、床排水や壁排水等の排水形態に応じて、最適な洗浄水量に装置設定を変更できる手段を備えたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
更にまた、近年では、省資源としてこの洗浄水の節水が着目されるようになり、大便器自体の洗浄・排出能力向上による洗浄水量の絶対量の低減化が試みられるだけでなく、種々の用便の態様により細かく対応することによってより多くの節水が出来るように、更に多くの段階に洗浄水量を選択指定可能とした大便器装置も考えられている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、前述したいづれの場合においても、排出・搬送すべき排出物の上限量を予め想定して洗浄水量を規定しているため、たとえ用便の態様や排便設備の態様に合った適正な洗浄水量の選択であっても、この想定された排出物量の上限を超えるような量の排出物が大便器内に存在する場合は、排出物が大便器から排出できなかったり、仮に排出できても想定された所定の搬送長さを実現することができず、この大便器に連通されている衛生設備配管内で排出物滞留による詰りが発生する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−256730号公報
【特許文献2】特開平03−090744号公報
【特許文献3】特開2004−124688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、大便器の洗浄毎の標準とする洗浄水量を増加させることなく、異常な排泄や、想定外の使い方が行われた場合でも、排出物が大便器から排出できなかったり、たとえ排出できても所定の搬送長さを実現することができずに衛生設備配管内で詰りが発生したりすることを未然防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、使用者が排泄物を排泄するボウルを備えた大便器と、前記ボウル内の内容物を排水配管に搬出し便器を洗浄するために所定量の便器洗浄水を前記ボウル内に供給する便器洗浄水供給手段と、前記便器洗浄水供給手段が供給する便器洗浄水の供給動作を制御する便器洗浄水供給制御手段とを備えた大便器装置において、前記ボウル内に投棄される前記排泄物を含む排出物量を求める排出物量検出手段と、求められた前記排出物量が異常か否か判定する排出物量異常判定手段とをさらに有するとともに、前記便器洗浄水供給制御手段は、前記排出物量異常判定手段が異常状態と判定した場合は、供給する洗浄水量を通常時より増加させる異常対応モードを実行することにより、異常な排泄や、想定外の使い方が行われた場合でも、排出物が大便器から排出できなかったり、たとえ排出できても所定の搬送長さを実現することができずに衛生設備配管内で詰りが発生したりすることを未然防止することを可能とした。
【0009】
また、請求項2記載の発明のよれば、前記排出物量検出手段は、使用者の排泄行為に伴う前記溜水の溜水変化量を計測する溜水変化量計測手段をさらに備え、
前記溜水量計測手段によって計測される排泄行為前後の溜水の変化量より前記排出物量を求めることを特徴とすることにより、
大便器に対して特段の加工を加えることなく、排出物量の異常検出による便器洗浄シーケンスの変更機能の付加を可能とした。
【0010】
また、請求項3記載の発明のよれば、前記便器洗浄水供給手段は、ボールを水洗するリム吐水手段と、サイホン排出を起動するゼット吐水手段と、を備え、前記便器洗浄水供給制御手段は、前記異常対応モードとしてサイホン起動する前のリム吐水手段のリム吐水量を増加させることを特徴とすることにより、
排水配管内の摩擦抵抗を低減し、排出物の搬送長さ性能の向上を可能とした。
【0011】
また、請求項4記載の発明のよれば、前記便器洗浄水供給手段は、ボールを水洗するリム吐水手段と、サイホン排出を起動するゼット吐水手段と、を備え、前記排出物量が所定値より大きいときは、洗浄シーケンス算出手段はサイホンを起動するゼット吐水手段のゼット吐水量を増加させることを特徴とすることにより、
排出物を便器から排出する性能の向上を可能とした。
【0012】
また、請求項5記載の発明のよれば、前記便器洗浄水供給手段は、ボールを水洗するリム吐水手段と、サイホン排出を起動するゼット吐水手段と、を備え、前記排出物量が所定値より大きいときは、洗浄シーケンス算出手段はサイホン起動した後のリム吐水手段のリム吐水量を増加させることを特徴とすることにより、
排水配管内の排出物を後押しし、排出物の搬送長さ性能の向上を可能とした。
【0013】
また、請求項6記載の発明のよれば、前記排出物量は、大便の容積または質量、尿の容積または質量、および、トイレットペーパーの長さの内、いずれか1つ以上で推定されることを特徴とすることにより、
使用者の身体差に由来する排泄物の量だけでなく、使用者の使い方の差に関連するトイレットペーパーの投入長さも配慮した大便器の便器洗浄性能の向上を可能とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大便器の洗浄毎の標準とする洗浄水量を増加させることなく、異常な排泄や、想定外の使い方が行われた場合でも、排出物が大便器から排出できなかったり、仮に排出できても所定の搬送長さを実現することができずに衛生設備配管内で詰りが発生したりすることを未然防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の大便器装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の大便器装置の機能構成を模式的に示すシステムブロック図である。
【図3】本発明の大便器装置の洗浄水量変更事例を示す一覧表である。
【図4】本発明の大便器装置の便器洗浄シーケンスの動作パターンを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の大便器装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の大便器装置の便器洗浄シーケンスの別の変更方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明を実施した大便器装置1の第一の実施形態を示すトイレ空間の斜視図である。図1を使用して、本実施形態における大便器装置1の全体構成について以下に述べる。
【0017】
大便器装置1は、便器洗浄機能などの通常の便器機能を備えた洋風大便器2と、洋風大便器2の上面に配置された便座3と便座3の背部に一体的に組み込まれた衛生洗浄装置4とから構成される便座装置と、洋風大便器2の背後に設置されたキャビネット5と、使用者が各種操作を行なったり表示を確認するために壁に設けられた操作・表示部6とで構成されている。
【0018】
キャビネット5はトイレットペーパー、生理用品、清掃用具などの備品を収納出来るようになっている。壁にはトイレットペーパーを保持する紙巻器7が取り付けられている。洋風大便器2は陶器製または樹脂製または樹脂と陶器のハイブリッド製であり、洋風大便器2の上部には樹脂製の便座3が上下方向に回動自在に取り付けられている。なお、本実施形態では一般的に採用される便蓋を省略したものを示しているが、便蓋が取り付けられていても良い。便蓋を採用しないものは、医療機関などの施設において、便蓋を上下方向に回動させる動作が、身体に疾病を抱えている患者にとっては負担になるということに配慮したときに採用される仕様である。操作・表示部6は、洋風大便器2に便器洗浄動作を指示するリモコン61と、衛生洗浄装置操作用のリモコン62で構成されている。
【0019】
図2は、本発明の大便器装置1の構成を機能的に示すシステムブロック図である。図2を使用して、本実施形態における大便器装置1の構成と動作について以下に述べる。
【0020】
洋風大便器2には、使用者が排泄物を排泄し、トイレットペーパーを廃棄するボウル23と、図示しない建物の排水配管とボウル23とを連通し、ボウル23の内容物を洗浄水とともに排出する排出管路とが備えられ、排出管路の途中には逆U字形状部を有したトラップ21が設けられている。そして、このトラップ21によって、通常の待機時のボウル23の内部には、排出管路の連通を遮断して排水配管起因の臭気や害虫がトイレ空間1に侵入しないような封水として機能する水位まで溜水22が形成されている。
【0021】
さらに、ボウル23内に排出された排泄物やトイレットペーパーなどを含めた排出物を建物の排水配管に排出するとともにボウル23内面を洗浄するための便器洗浄水をボウル23内に供給する便器洗浄水供給手段24を備えている。そして、便器洗浄水供給手段24は、リム吐水口25aから吐水する水を供給するリム給水手段25と、ゼット吐水口26aから吐水する水を供給するゼット給水手段26とを備えている。。
【0022】
そのために、給水源となる市水に接続された給水管路は途中で分岐され、各々、ボウル23の上部のリム20に向けて開口するリム吐水口25aに連通するリム給水管路25bと、トラップ21に向けて開口するゼット吐水口26aに連通するゼット給水管路26bとが形成されて、更に、それぞれの管路を開閉する管路管路開閉手段が備えられている。
なお、管路管路開閉手段としては、開閉弁と管路切り替え弁、あるいは各々の管路に開閉弁等通常用いられている構成が適用可能である。
【0023】
以上のような構成で、使用者の排泄行為が終了した後の操作・表示部6に設けられた洗浄選択スイッチ等の便器洗浄方法選択手段63からの便器洗浄信号により、便器洗浄水供給手段24は以下のような便器洗浄シーケンスを実行する。即ち、まずリム吐水手段25に洗浄水を供給(以下、この給水による洗浄を前リム洗浄と称する)してボウル23内を水洗する。次いでゼット吐水手段26に分岐部27経由でトラップ21に洗浄水を供給(以下、この給水による洗浄をゼット洗浄と称する)してサイホンを起動して、排出物混じりの溜水22を建物の排水配管に排出する。排出が終わると、再びリム吐水手段25に洗浄水を供給(以下、この給水による洗浄を後リム洗浄と称する)してボウル23内を再び水洗するとともに、ボウル23内に封水のための溜水22を供給して溜水水位を復帰させる。
【0024】
便器洗浄水供給手段24に対して前述の便器洗浄シーケンスの実行を指示するのが、制御部9に組み込まれた便器洗浄水供給制御手段91であり、操作・表示部6からの便器洗浄信号に応じて予め決められた便器洗浄シーケンスの実行を指示する。
【0025】
以上ここまで説明した内容は、従来の大便器装置でも同様であるが、本発明を実施した大便器装置1においては、その便器洗浄動作において、便器洗浄シーケンスとして通常のパターンのものを実行する通常モードの他に、ボウル23内に投棄される前述した排出物が通常想定している量よりも多いときに特別なパターンを実行する異常モードを備えている。以下で、本発明の特徴点である排出物量の異常時の便器洗浄動作について詳説する。
【0026】
本実施形態における大便器装置1には、装置全体の各動作を制御する制御部9が設けられ、この制御部9には、ボウル23内に投棄される排出物の量を推定する排出物量検出手段8と、投棄された排出物の量が使用者によって選択された便器洗浄方法に対して予め決められた量以上であるか否かを判定する排出物量異常判定手段92とが備えられている。
【0027】
排出物量検出手段8は、排便行為前後の溜水22の変化量を測定する溜水変化量測定手段81を備え、この溜水変化量測定手段81から得られる排便行為による溜水変化量によって、排出物の量を推定する。
【0028】
本実施形態ではこの溜水変化量測定手段81として、前述したゼット給水管路26aの途中に設けた分岐部27から導かれた測定管路82aに生じる水圧変化を圧力センサーによって計測して溜水水位を求める溜水水位測定手段82を備え、排便行為開始時の水位を溢流水位としたままの状態で、排便行為を行なっている間の水圧変化を継続して計測し、得られる水圧変化情報を記憶されている検量線を使用して換算することによって溜水量変化を得る構成としている。この方法によると、構成が簡単となるため低コストの装置となる。
【0029】
より正確に溜水量の変化を求める場合は、排便開始時の水位を溢流水位より所定量だけ低下させた状態で計測を開始して、溜水水位測定手段82で水位変化を測定する構成とすることも可能である。
【0030】
また、溜水量測定手段81のその他の例として、洋風大便器2の外表面に設置する超音波センサーを使用して溜水水位を測定して本実施形態と同様にして溜水変化量を求める構成にすれば、洋風大便器2に対して大きな加工を要することが無く効率的で好適である。
【0031】
操作・表示部6は、例えば大小洗浄選択スイッチで構成される便器洗浄方法選択手段63が設けられており、便器洗浄方法選択手段63の入力結果、つまり大便洗浄か小便洗浄かの便器洗浄方法の種別を情報として排出物量異常判定手段92に出力する。
【0032】
排出物量異常判定手段92は、排出物量検定手段8によって求められた排出物の量と、操作・表示部6に設けられた便器洗浄方法選択手段63によって指定される大便洗浄か小便洗浄かの便器洗浄方法の種別との情報を考慮して、排便行為によって溜水22に投棄された排出物の量が予め定められた量を超える異常状態か否か、の判断を行なう。
【0033】
そして、排出物量異常判定手段92によって所定値を超える異常値であると判定された場合には、排出物量異常判定手段92が便器洗浄水供給制御手段91に、便器洗浄水供給手段24が実行させる便器洗浄シーケンスを異常モード用に変更するための信号を出力するようになっている。
【0034】
図3は、本実施形態における大便器装置1の便器洗浄動作シーケンスで実行される便器洗浄水量の変更事例を示す一覧表である。図3を使用して、本実施形態における便器洗浄のの動作モードを選択決定するための方法について以下に述べる。
【0035】
一般的に一回の排泄行為で便器のボウル内に排泄される排泄物の体積は、多くの場合を測定した結果より統計的に推定すると、大便排泄行為時の大便量は最大250mL、大便排泄行為時の小便量は最大800mLとされており、それを超える場合は各々の行為においては異常状態であり、大便の場合は洋風大便器2から排出できなかったり、排水配管における搬送長さ10mの基準を満足できない距離しか搬送できなかったりする恐れがある。
【0036】
従って、図3において、使用者によって大便洗浄が選択された場合は4.8L、小便洗浄が選択された場合は4Lを便器洗浄水量として使用する便器の事例である。そして、一回の排泄行為の結果として求められる排出物量が所定値、即ち、大便250mLおよび小便排泄800mLを超えるため、排出すべき排出物量が異常であると排出物量異常判定手段92が判定した場合は、便器の洗浄水量を6Lに変更することを示している。
【0037】
排便行為時には、トイレットペーパーを使用することも多く、使用後は排泄物同様に、便器のボウル内に投棄されるため、便器洗浄時には便器外への搬送対象となる。ここで、一般的なトイレットペーパーの使用量は前述の排泄物と同様な調査結果より最大5mとされており、それ以上使用される場合は異常状態であり、洋風大便器2から排出できなかったり、例えば財団法人ベターリビングが定めている排水配管における搬送長さ10mの基準を満足できなかったりする恐れがある。
【0038】
従って、本発明の排出物として適用対象とすることも可能である。その場合は、排出物量異常判定手段92の判定は、図3に併せて示したように、紙巻器7にトイレットペーパー長さ測定手段71を設けておき、求められるトイレットペーパーの使用量を排出物量異常判定手段92によって行なわれる異常判定のパラメータに加えて判定する構成とすれば良い。
【0039】
また,排出物の体積については、溜水水位変化を介して測定する方法を示したが、温度変化や導電率など他の変化指標であってもよいし、画像認識で大便の大きさを認識したり、大便の移動速度をマイクロ波センサーなどで測定する方法であっても良い。
【0040】
図4は、本発明の大便器の前述した図3における異常モードで採用する便器洗浄シーケンスの各変更事例を通常モードの場合と対比して示すタイミングチャートである。図4を使用して、本実施形態における各種の異常状態に対応した便器洗浄シーケンスの変更について以下に述べる。
【0041】
図4の(a)は、排泄量が予め想定された量以下の場合の、基準となる通常モードの便器洗浄シーケンス例を比較のために示している。図4の(b)には、トイレットペーパーの使用量が異常である場合の便器洗浄シーケンス例が示され、この場合は配管内の摩擦抵抗によって排水配管における搬送長さが未達になることが想定されるため、搬送長さ向上のために前リム洗浄の水量を増やすことが示されている。また、図4の(c)には、排泄物のうち大便の排泄量が異常である場合の便器洗浄シーケンス例が示され、この場合は洋風大便器2から排出することを重視する必要があることから、排出力向上のためにゼット洗浄の水量を増やすことが示されている。更にまた、図4の(d)には、排泄物のうち小便の排泄量が異常である場合の便器洗浄シーケンス例が示され、この場合は溜水の換水率を重視する必要があることから、換水率向上のために後リム洗浄の水量を増やすことが示されている。
【0042】
図4は上述の考え方を採用していづれも一回の洗浄で使用する洗浄水量を増加させる例であるが、いづれも、吐水量率は一定のものを用いることとして、各吐水工程ごとの動作継続時間を通常より長くなるように変更して対応する例を示している。
【0043】
この方法では、給水弁等の給水手段の構成が広く使用されているものが適用可能となるため、安価に製作できるが、異常時には単位時間当たりの吐水量である吐水量率の変更を行なって、洗浄水量を増加させる方法でも良い。
【0044】
図5は、以上の考え方を基にして設計された本実施形態における大便器装置1の動作を示すフローチャートである。図5を使用して、動作フローについて以下に述べる。
【0045】
S101で使用者を人体検知センサが検知するステップであり、排出物量を測定するためにS102で検知準備のための動作を行なう。S103で使用者が便座に着座したことを検知すると、S104で水位測定を開始して溜水22の水位(排泄前水位)を記憶する。
【0046】
使用者が排泄、及びトイレットペーパーの使用する排泄行為が終了後、使用者はS105で大便か小便かを指定した便器洗浄操作を実施する。S106で洗浄開始に先立ってそのときの溜水水位(排泄後水位)を測定して排泄前後の溜水水位変化を算出し、各情報を勘案してS107で排出物量を推定する。推定された排出物量はS108で所定値と比較して、便器洗浄シーケンスを選定する。
【0047】
推定された排出物量が所定値より小さい場合、排出物量は正常と判定しS109で通常の吐水量となる通常シーケンスを選定し、所定値より大きい場合は排出物量が異常と判定しS110で異常状態に応じて通常の吐水量より多い吐水量となる大容量シーケンスを選定する。S111は選定されたシーケンスに従って便器洗浄を実施するステップであり、便器洗浄完了後に便器洗浄シーケンスは停止する。
【0048】
図6は、本発明に適用可能な別の便器洗浄のための洗浄水量変更方法を示す説明図である。図6を使用して、本実施形態におけるの大便器装置1の洗浄水量変更に関する別方法について以下に述べる。
【0049】
今まで図3で説明した例は、排出物量が所定値と比較して異常値であることを検出した場合は、洗浄水量を一定量だけ大きくする方法を示したが、洗浄水量の変更方法としては、排出物量に応じて洗浄水量を変化させるものであっても良い。本図は本発明における排出物が排泄物である大便のみの場合の事例であり、多数の使用者の大便の排泄量(体積)の分布と便器洗浄水量との関係を模式的に示すものである。
【0050】
このように、一般的な大便の体積は通常の場合100〜250mlの分布であるから、250mlを排泄量の所定値とし、排泄量がこの所定値以下の場合の洗浄水量は、予め定められた一定の吐水量としている。しかし、ごくまれには大便の排泄量が所定値を超えることがあるが、その場合、洋風大便器2の外側に排出するために必要なゼット吐水量が多く必要になることから、図示するように、このゼット吐水量を排出物量に合わせて増加させるようにしている。
【0051】
本例の場合、排水配管内の摩擦抵抗を低下させる前リム吐水量、および溜水22の換水率を向上させる後リム吐水量は、あまり効果が期待されないことから、ゼット吐水量を大便量が所定値をこえたことに合わせて一定割合だけ増加させるアルゴリズムとしている。
【0052】
洋風大便器2の各工程における洗浄水量と排出性能・搬出性能の関係は、便器の種類毎に異なるものであるから、異常検出時の処置内容は便器の種類毎で各々選定されれば良い。即ち、例えば便器からの排出性能がトイレットペーパー量の影響を受けやすい便器であった場合は、トイレットペーパー異常値に対してゼット吐水量を増やす等、各吐水量の変更方法は設計上、上述の内容に固定されるものではく、種々の方法が選択可能である。
【符号の説明】
【0053】
1・・・大便器装置
2・・・洋風大便器
20・・・リム
21・・・トラップ
22・・・溜水
23・・・ボウル
24・・・便器洗浄水供給手段
25・・・リム吐水手段
25a・・・リム吐水口
25b・・・リム給水管路
26・・・ゼット吐水手段
26a・・・ゼット吐水口
26b・・・ゼット給水管路
27・・・分岐部
3・・・便座
4・・・衛生洗浄装置
5・・・キャビネット
6・・・操作・表示部
61・・・リモコン
62・・・リモコン
63・・・便器洗浄方法選択手段
7・・・紙巻器
71・・・トイレットペーパー長さ測定手段
8・・・排出物量検出手段
81・・・溜水変化量測定手段
82・・・溜水水位測定手段
83・・・検量線記憶手段
9・・・制御部
91・・・便器洗浄水供給制御手段
92・・・排出物量異常判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が排泄物を排泄するボウルを備えた大便器と、
前記ボウル内の内容物を排水配管に搬出し便器を洗浄するために所定量の便器洗浄水を前記ボウル内に供給する便器洗浄水供給手段と、
前記便器洗浄水供給手段が供給する便器洗浄水の供給動作を制御する便器洗浄水供給制御手段とを備えた大便器装置において、
前記ボウル内に投棄される前記排泄物を含む排出物量を求める排出物量検出手段と、
求められた前記排出物量が異常か否か判定する排出物量異常判定手段とをさらに有するとともに、
前記便器洗浄水供給制御手段は、前記排出物量異常判定手段が異常状態と判定した場合は、
供給する洗浄水量を通常時より増加させる異常対応モードを実行する
ことを特徴とする大便器装置。
【請求項2】
前記排出物量検出手段は、使用者の排泄行為に伴う前記溜水の溜水変化量を計測する溜水変化量計測手段をさらに備え、
前記溜水量計測手段によって計測される排泄行為前後の溜水の変化量より前記排出物量を求める
ことを特徴とする請求項1に記載の大便器装置。
【請求項3】
前記便器洗浄水供給手段は、ボールを水洗するリム吐水手段と、サイホン排出を起動するゼット吐水手段と、を備え、
前記排出物量が所定値より大きいときは、前記便器洗浄水供給制御手段は、前記異常対応モードとしてサイホン起動する前のリム吐水手段のリム吐水量を増加させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の大便器装置。
【請求項4】
前記便器洗浄水供給手段は、ボールを水洗するリム吐水手段と、サイホン排出を起動するゼット吐水手段と、を備え、
前記排出物量が所定値より大きいときは、
前記便器洗浄水供給制御手段は、前記異常対応モードとして、サイホンを起動するゼット吐水手段のゼット吐水量を増加させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の大便器装置。
【請求項5】
前記便器洗浄水供給手段は、ボールを水洗するリム吐水手段と、サイホン排出を起動するゼット吐水手段と、を備え、
前記排出物量が所定値より大きいときは、
前記便器洗浄水供給制御手段は、前記異常対応モードとして
サイホン起動した後のリム吐水手段のリム吐水量を増加させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の大便器装置。
【請求項6】
前記排出物量は、大便の容積または質量、尿の容積または質量、および、トイレットペーパーの長さの内、いずれか1つ以上で推定される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいづれか1項に記載の大便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−58201(P2011−58201A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206961(P2009−206961)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】