説明

大型ビニールハウス用支柱の先端保護具

【課題】支柱への取付が簡易で、殊に長い年月にわたって支柱の腐食を上手く防止でき、結果としてコストの低減化にも貢献できる大型ビニールハウス用支柱の先端保護具を提案する。
【解決手段】先端部2と、その背部に一体に連ねて形成された本体部3と、この本体部3には後方のみを開放して形成された差込み凹部4と、金属製の支柱5の先端部分5Aを内嵌合させる合成樹脂製のパイプ6と、前記差込み凹部4の底から前記先端部2に貫通するドレン通路7とを備え、前記合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aが前記差込み凹部4内に密に嵌合して一体的に固着され、前記先端部2からこの合成樹脂製のパイプ6の後端6Bより前記先端部2側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型ビニールハウスのビニールフイルムの外壁を支える躯体としての鋼管などの金属製支柱の先端、つまりは土中に埋設される部位の保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
大型ビニールハウスは、木材または鋼材を躯体とし、この躯体の外側を合成樹脂のフィルムで被覆したものである。
従来より、ビニールハウスの簡易な構造のものでは、あらかじめ湾曲させた金属製のパイプを互いに向かい合わせ、一端(先端)を地面に刺して、もう一端を継ぎ手で連結して支柱を形成し、間口が、例えば5.4mのアーチをかたどるようにし、このアーチを奥行き方向に所定の間隔で並設したものが基本的な骨組み(躯体)となり、必要に応じて筋交などの補強を行ったものである。規模の大小は様々であるが、基本的には上記の如き構成のものが多用されている。そして、支柱は裸のままで土中に埋設される手法が採用され、30〜70cm、平均して50cmも埋め込まれる。
【特許文献1】特開平8−116798公報
【特許文献2】登録実用新案第3030667号公報
【特許文献3】特公平8−24501号公報
【非特許文献1】フリー百科事典『ウィキぺディア(Wikipedia)』 カテゴリ:農業|農業スタグ項目 ビニールハウス
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような従来の手段の内、特許文献1〜2並びに非特許文献1に提示される構造では、早期の内に支柱が腐食してしまい、極端な場合には、一年毎に支柱の交換が必要になる。また、特許文献3に提示された構造では、支柱の全長を樹脂皮膜層で覆うものであるから、大変高価になる上に、長大な支柱を要する大型のビニールハウスには全く適用できない。
【0004】
因みに、本発明が対象とする規模は、間口が最小でも3.6m、大きくなれば7.2m以上、また、パイプの径は19.1mm〜31.8mmである。勿論これに限定されること無く、更に大型ものもの対象としている。
【0005】
そこで、この問題点を解決するために、本発明者等は、支柱の先端から地面上に表われる所用の寸法部分、概ね700mmにわたって、保護カバーを施すようにした。この保護カバーとしては、ポリエステルなどの所定長さの筒状の熱収縮性シート状素材を採用し、これを支柱の所用長さ箇所に被せ、次いで、熱湯をかけたり熱風を吹き付けたりすることによって、収縮させて、支柱の外周面に対して密着させるようにしていた。
【0006】
この手法では、支柱の腐食を阻止するには大変有効であったが、この熱収縮性シート状素材を支柱に装着させる作業に大変手間を要した。すなわち、この種支柱は、勿論ハウスの規模や被覆領域の大小にもよるが、一般的にビニールハウス、間口5.4m、奥行き56mを例に取ると、必要とされる支柱の本数は、やや太目の補強パイプは16本、この補強パイプ間に配されるやや細めのパイプは90本強を必要とする。このように、これらの一本一本、しかも左右両端に夫々筒状の熱収縮性シート状素材を被せて、熱で収縮させて被覆する作業がいかに大変であるかが理解される。必然的にコスト高にもなる。更には、土中へ挿入しやすくするために、時としては支柱の先端を扁平に押し潰したりしているので、その作業、そして労力は一層大変なものとなる。
【0007】
本発明は、この従来の手法を種々検討した結果、支柱の先端そして地表の所用長さ箇所にわたって、簡易な構造のアタッチメントを装着することを思い立ち種々実験してみた。その結果、支柱への取付が簡易で、殊に長い年月にわたって支柱の腐食を上手く防止でき、結果としてコストの低減化にも貢献できる先端保護具を開発したので、ここに提案する。
【0008】
したがって本発明は、支柱への取付が簡易で、殊に長い年月にわたって支柱の腐食を上手く防止でき、結果としてコストの低減化にも貢献できる大型ビニールハウス用支柱の先端保護具を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る大型ビニールハウス用支柱の先端保護具は、先端部と、その背部に一体に連ねて形成された本体部と、この本体部には後方のみを開放して形成された差込み凹部と、金属製の支柱の先端部分を内嵌合させる合成樹脂製のパイプと、前記差込み凹部の底から前記先端部に貫通するドレン通路とを備え、前記合成樹脂製のパイプの先端部分が前記差込み凹部内に密に嵌合して一体的に固着され、前記先端部からこの合成樹脂製のパイプの後端より前記先端部側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設されるものである。
【0010】
このように、先端部と、その背部に一体に連ねて形成される本体部と、この本体部に後方を開放して形成された環状の差込み凹部と、金属製の支柱の先端部分を内嵌合させるために先端部をこの差込み凹部に内嵌合して一体的に固着してある合成樹脂製のパイプとから構成される本発明に係る大型ビニールハウス用支柱の先端保護具は、支柱の先端部分を合成樹脂製のパイプ内に嵌合することによって、所期の支柱先端部分の保護を司る。支柱の先端部分を嵌合した後は、前記先端部からこの合成樹脂製のパイプの後端に至る途中部分までが土中に埋設されて、支柱が立設される。これによって、最も腐食作用を受ける支柱先端部分、また支柱の先端が土中の湿気から隔離される。また、万一支柱内に雨水等が滲みこんで来ても、これをドレン通路を介して土中に流下排水させることができ、金属製の支柱を湿気から逸早く開放する。
【発明の効果】
【0011】
したがって、この発明は以下の効果を奏する。
本発明の請求項1に係る大型ビニールハウス用支柱の先端保護具は、従来品のように、支柱一本一本の先端部分に筒状の熱収縮性シート状素材を装着させるために大変なコストと手間を要し、しかも1年で腐食がはじまるものとは全く違って、少なくとも二〜三年の間は十分に耐蝕性を維持する合成樹脂製のパイプ内に金属製の支柱の先端部分を嵌合して、この部分を覆うようにしたので、先ず第一に、支柱先端部分を保護するこの先端保護具の支柱への装着作業が大幅に改善され、工場出荷の前に行うにしても、現場において農作業に従事する者達が行うにしても、いずれにしても、作業が簡便で大変楽になった。
【0012】
併せて殊に長い年月にわたって支柱の腐食を上手く防止でき、結果としてコストの低減化にも貢献できる。つまり、支柱の先端部分は差込み凹部に嵌合されるものであるから、支柱の先端の保護が難しかった従来の熱収縮性シート状素材で被覆する手法と違って、支柱の先端は完全にこの有底の差込み凹部にあるために、大気や水分に晒される頻度が格段に少なくなり、短期間の内に支柱が腐食されてしまう従来の欠点を上手く解決でき、更に工場生産も可能であるので、コストの低減化に一層貢献できるようになった。
【0013】
殊に、土中に埋設される支柱先端部分ばかりで無く、地表に露出する部位の或る程度の高さ部分まで(現実に地上200mm程迄)をもこの合成樹脂製のパイプで保護できるから、支柱全体を樹脂皮膜で覆うような従来品に比べて、大変廉価な支柱を得ることができ、大型のビニールハウスを一層低廉で、望み通りに得ることができるようになった。
【0014】
また、この発明では、先端部並びに本体部と合成樹脂製のパイプとを分けてあるので、例えばこれが一体成型(ブロー成型)品であるものに比べて、この先端保護具の製造コストを大幅に低減化でき、併せて得られて製品に寸法誤差が無く、精度の高い高品位な先端保護具が得られる。しかも、合成樹脂製のパイプは既存の製品を採用できるので、提供価格をより一層廉価にできる。更には、嵩張らないので、搬送、保管にも好都合である。
【0015】
本発明は以上の構成において、請求項2に記載のように、差込み凹部の底部周壁内面には、合成樹脂製のパイプ並びに金属製支柱の夫々の先端を受け止めるストッパー用の段部が備わっているのが望ましい。
合成樹脂製のパイプ並びに金属製支柱の夫々の差込み寸法を確定しやすく、ハウスの全体の肩高や小屋根高をほぼ一定にし易く、後々の管理も容易で、しかも美麗なハウスを得ることができからである。
【0016】
また、請求項3に記載のように、合成樹脂製のパイプの後端の外表面並びにこの合成樹脂製のパイプに差し込まれた金属製支柱の外表面がこの合成樹脂製のパイプの後端を挟んでその前後所定の範囲にわたって水密製のシール材で被覆されるのが望ましい。
合成樹脂製のパイプと金属製支柱との間の隙間に雨水などが浸入するのを上手く防止し、金属製支柱の錆の発生を一層効果的に予防できるからである。
【0017】
また、この発明では請求項4に記載するように、先端部と、その背部に一体に連ねて形成される本体部と、この本体部には後方のみを開放して形成された環状の差込み凹溝と、金属製の支柱の先端部分を内嵌合させる合成樹脂製のパイプと、前記環状の差込み凹溝の底から先端部に貫通するドレン通路とを備え、前記合成樹脂製のパイプの先端部分が前記差込み凹部内に密に嵌合して一体的に固着され、前記先端部からこの合成樹脂製のパイプ後端より前記先端部側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設されることを特徴とする大型ビニールハウス用支柱の先端保護具であっても良い。
【0018】
この構成によれば、環状の差込み凹溝によって合成樹脂製のパイプと金属製の支柱とが内外からこの凹溝の内外壁によってしっかりと支持されることになる。つまりは先端部と本体部に対する合成樹脂製のパイプ及び金属製の支柱との連結強度を一層高めることができる。
【0019】
更に、この発明では請求項5に記載するように、先端部と、その背部に一体に連ねて形成される本体部と、この本体部には後方のみを開放して内外二重の環状の差込み凹溝から形成され環状の差込み凹部と、外側の環状の差込み凹溝内に嵌合される合成樹脂製のパイプと、内側の環状の差込み凹溝の底から先端部に貫通するドレン通路とを備え、前記合成樹脂製のパイプの先端部分が前記差込み凹溝内に密に嵌合されて一体的に固着され、前記内側の環状の差込み凹溝内には金属製の支柱の先端部分が密に嵌合されるようにし、前記先端部からこの合成樹脂製のパイプの後端より前記先端部側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設されることを特徴とする大型ビニールハウス用支柱の先端保護具であっても良い。
【0020】
この構成によれば、金属製の支柱の先端部分を差し込むための内側の環状の差込み凹溝の寸法のみを代えれば良く、先端保護具の他の部位の寸法仕様は、この金属製の支柱の径の大小に拘らず、すべて同じにして製造できるために、コストの低廉化に貢献する。
【0021】
また、請求項6に記載のように、先端部と本体部は本体部後方のみを開放した内部空洞の筒型に形成されているのが望ましい。
先端部及び本体部の構造並びに成型加工が簡単で、しかも軽量で廉価に得られ、一層のコストダウンを図れるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、発明を実施するための最良の形態を示す。しかし、本発明の範囲はかかる実施の形態に制限されるものではない。
【0023】
本発明に係る大型ビニールハウス用支柱の先端保護具を塩化ビニルを採用した場合について以下説明する。
【0024】
先ず、本発明の大型ビニールハウス用支柱の先端保護具1は、図1並びに図2に示すように、基本的には、先端を先鋭にして成る土中への差込先端となる先端部2と、その背部に一体に連ねて形成される本体部3と、この本体部3の後方を開放して形成された差込み凹部4と、金属製の支柱5である鉄パイプ(以下単に鉄パイプと言う)の先端部分を内嵌合させる合成樹脂製のパイプ6と、前記差込み凹部4の底から先端部に貫通するドレン通路7とを備え、前記合成樹脂製のパイプ6の先端部分が前記差込み凹部4内に密に嵌合して、接着剤などの適宜の固着手段によって一体的に固着され、図3に示すように、前記先端部2からこの合成樹脂製のパイプ6の後端より先端部側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設されてなる。
【0025】
この実施例において、前記先端部2、本体3、ハイプ6は全てポリ塩化ビニル製である。耐水性、耐薬品性、耐候性が高く、難燃性、電気絶縁性に優れ、また安価であるので、望ましい。その他、必要に応じて、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂、繊維素系樹脂、ポリアミド、ポリスチレン等を用いることもできる。また、必要に応じて各種生分解性樹脂(バイオプラスチック)も採用できる。
【0026】
各部位について更に詳しく説明する。
先端部2、そして本体部3は、外形形状が、砲弾型に形成されている。内部は後方開放の差込み凹部4を兼ねる空洞Cに形成されている。先端部2から本体部3の後端3Bの縁に至る全長の壁厚は、基本的にはほぼ同等の寸法に設定されている。先端部2の先端2Aから本体部3の後端3Bに至る全長は、50〜200mmに寸法設定され、先端部2だけでは約20〜50mm、本体部3は約30〜150mmに寸法設定されている。
【0027】
先端部2の先端2Aには壁を貫通し、内部の空洞Cを外部に連通させるドレン通路7が形成されている。内部に滲みこんで来た雨水などを外部に流下排出するためである。
【0028】
本体3の空洞Cにはその後方開放部から合成樹脂製のパイプ6が挿入される(このパイプ6の後方からは鉄パイプ5の先端部分5Aが内嵌合される)。挿入するに先立って、この合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aの所定寸法部分には接着剤(図外)が塗布され、本体部3へ挿入した後にこの接着剤により、本体部3の内周面に固着されるように構成される。したがって、この合成樹脂製のパイプ6の外径寸法に合わせて本体部3の空洞Cの内径が設定されている。可能な限り水密を確保できるように、合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aの外周面と本体部3の空洞Cの内周面との間に隙間のできないことが肝要である。この合成樹脂製のパイプ6の先端6Cは空洞Cへの挿入を一層容易にするために、図1、2に示するように、先細りになるよう、外周を内側に向けて傾斜状に削ぎ落とすことが望ましい。尚、接着剤に代えて、溶着によっても一体化できる。
【0029】
また、図2に明示するように、先端部2と本体部3との境界部分の内周にはこの合成樹脂製のパイプ6の先端6Cを受け止めてその挿入深さを規制するための係止段部8が設けられている。またこの係止段部8より一段下がって、鉄パイプ5の先端5Cを受け止めてその挿入深さを規制するための係止段部9が設けられている。
【0030】
この鉄パイプ5は冒頭に説明した従来品と違って、特に合成樹脂素材などでコーティングしたものは用いない。廉価に得られるようにするためである。また、鉄パイプ5に代えて、必要に応じて、例えばアルミニウム、ジュラルミン、真鍮、ステンレス等を用いることもできる。この鉄パイプ5の先端5Cは合成樹脂製のパイプ6への挿入を一層容易にするために、図示しないが、前記合成樹脂製のパイプ6の先端6Cと同様に、先細りになるよう、外周を内側に向けて傾斜状に削ぎ落とすことが望ましい。
【0031】
次に、この大型ビニールハウス用支柱の先端保護具の組み立て方について説明する。
図2に示すように、先ず、合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aに接着剤を塗布し、引き続きこの合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aを本体部3の差込み凹部4内に、先端6Cが係止段部8に当接するまで嵌合挿入する。こうすることによって、本体部3と合成樹脂製のパイプ6を一体化する。次いで、現場において、この合成樹脂製のパイプ6内に鉄パイプ5を、その先端5Cが係止段部9に当接するまで、しっかりと嵌合させる。このようにして図1、3に示す組立が完了する。組立が完了したら、図3に示すように、この先端保護具1の所定寸法部分(ほぼ500mm)を土中に埋設し、鉄パイプ5を立設する。この鉄パイプ5は、奥行き56mにわたりほぼ30cm間隔で、太目の補助パイプを含めて、全体として約180〜190本を立設する。その後、立設支柱群の外側をビニールシート(図外)で覆ってハウスを完成される。
【0032】
尚、図示されるように、先端部2並びに本体部3にわたり空洞Cが形成される構造は素材の節約を意図したものである。しかし、図2中想像線で示すように、先端部2の内側を中実にした構成をも排除するものではない。また、先端部2の先端先鋭な形状は、鉄パイプ5を持って直に土中に挿入できるようにするためで、わざわざ埋設用に穴を掘る必要をなくし、作業の一層の簡素化、効率化を図ったものである。したがってまた、図2中想像線で示すような、単なる円柱状の形状を排除するものではない。
【0033】
次に図4はシール構造を示す。
前記合成樹脂製のパイプ6とこれに内嵌合されている鉄パイプ5との間には幾許かの隙間が生じる場合もあるので、その隙間への雨水などの滲み込みを未然に防止するためのシール構造である。具体的には、前記合成樹脂製のパイプ6の後端6Bの外表面並びにこの合成樹脂製のパイプ6に差し込まれた鉄パイプ5の外表面がこの合成樹脂製のパイプ6の後端6Bを挟んでその前後所定の範囲にわたって水密を保つシール材10で被覆されている。このシール材10は、厚みが10〜20mmの独立気泡を備えたウレタン樹脂(ブリジストン社製「エバーライト」使用)が採用される。全体形状は前記合成樹脂製のパイプ6の直径よりも短い寸法の差込み穴11を中央に備えて、ドーナツ形状に形成される。装着すると差込み穴11の内周面が前記合成樹脂製のパイプ6の後端6Bの外表面並びにこの合成樹脂製のパイプ6に差し込まれた鉄パイプ5の外表面に自己の弾性復元力によって密着し、雨水の浸透を上手く防止する。
【0034】
この実施例のように、先端保護具1を先端部2と、その背部に一体に連ねて形成される本体部3と、この本体部3に後方を開放して形成された環状の差込み凹部4と、鉄パイプ5の先端部分5Aを内嵌合させるために先端部分6Aをこの差込み凹部4に内嵌合して一体的に固着してある合成樹脂製のパイプ6とから構成するので、鉄パイプ5の先端部分5Aを合成樹脂製のパイプ6に嵌合することによって、所期の鉄パイプ5の先端部分5Aの保護を司る。鉄パイプ5の先端部分5Aを嵌合した後は、前記先端部2からこの合成樹脂製のパイプ6の後端6Bに至る途中部分までが土中に埋設されて、鉄パイプ5が立設される。その結果、最も腐食作用を受ける鉄パイプ5の先端5Cや先端部分5Aが土中の湿気から隔離される。また、万一鉄パイプ5内に雨水等が滲みこんで来ても、ドレン通路7を介してこれが土中に流下排水され、鉄パイプ5を湿気から逸早く開放する。
【0035】
したがって、従来品のように、鉄パイプ一本一本の先端部分5Aに筒状の熱収縮性シート状素材を装着させる作業に大変なコストと手間を要し、しかも1年で腐食がはじまるものとは全く違って、少なくとも二〜三年の間は十分に耐蝕性を維持する先端保護具1で鉄パイプ5の先端部分5Aを覆うようにしたので、先ず第一に、鉄パイプ5の先端5C並びに先端部分5Aを保護するこの先端保護具1の鉄パイプ5への装着作業が大幅に改善され、工場出荷の前に行うにしても、現場において農作業に従事する者達が行うにしても、いずれにしても、作業が簡便で大変楽になった。
【0036】
併せて殊に長い年月にわたって鉄パイプ5の腐食を上手く防止でき、結果としてコストの低減化にも貢献できる。つまり、鉄パイプ5の先端部分5Aは差込み凹部4内に嵌合されるものであるから、鉄パイプ5の先端5Cが保護されない従来の熱収縮性シート状素材で被覆する手法と違って、鉄パイプ5の先端5Cは完全にこの有底の差込み凹部4にあるために、大気や水分に晒される頻度が格段に少なくなり、短期間の内に鉄パイプ5が腐食されてしまう従来の欠点を上手く解決でき、更に工場生産も可能であるので、コストの低減化に一層貢献できるようになった。
【0037】
殊に、土中に埋設される鉄パイプ5の先端5C、更には先端部分5Aは言うまでも無く、地表に露出する部位の或る程度の高さ部分まで(現実に地上200mm程まで)をもこの先端保護具1で保護するから、鉄パイプ5全体を樹脂皮膜で覆うような従来品に比べて、大変廉価な支柱を得ることができ、大型のビニールハウスを一層低廉で、望み通りに得ることができるようになった。
【0038】
更に、先端部2と本体部3は本体部3の後方のみを開放した内部に空洞Cを備えた筒型に形成されているので、先端部2並びに本体部3の構造が簡単で、成型加工が簡単になり、しかも廉価に得られ、一層のコストダウンを図れる。
【0039】
また、差込み凹部4の底部周壁内面には、合成樹脂製のパイプ6並びに鉄パイプ5の夫々の先端5C、6Cを受け止めるストッパー用の係止段部8、9が備わっているので、合成樹脂製のパイプ6並びに鉄パイプ5の夫々の差込み寸法を確定しやすく、ハウスの全体の肩高や小屋根高をほぼ一定にし易く、後々の管理も容易で、しかも美麗なハウスを得ることができる。
【0040】
また、合成樹脂製のパイプ6の後端6Bの外表面並びにこの合成樹脂製のパイプ6に差し込まれた鉄パイプ5の外表面がこの合成樹脂製のパイプ6の後端6Bを挟んでその前後所定の範囲にわたって水密性のシール材10で被覆されるので、合成樹脂製のパイプ6と鉄パイプ5との間の隙間に雨水などが浸入するのを上手く防止し、鉄パイプ5の錆の発生を一層効果的に予防できる。
【0041】
次に、図5、そして図6、7に示す構造は、夫々特に前記差込み凹部4の変形例を示したもので、前記合成樹脂製のパイプ6並びに鉄パイプ5を重合させて、或いは別々に差し込むための環状の凹溝で形成されている点に構造上の特徴がある。
【0042】
先ず、図5に示す構造は、基本的には、先端を先鋭にして成る土中への差込先端となる先端部2と、その背部に一体に連ねて形成される本体部3と、この本体部3の後方を開放して形成された差込み凹部4の一例としての環状の差込み凹溝14と、支柱5の先端を内嵌合させるために先端部6をこの差込み凹溝14に密に内嵌合して一体的に固着してある合成樹脂製のパイプ6とから構成されている。
【0043】
各部位について更に詳しく説明する。
先端部2は円錐形の中実ブロック体で、中央に先端2Aから後端に貫通するドレン通路7が設けられている。
【0044】
本体3はこの先端部2の背部から後方に一体に立ち上げた内外二重の周壁を備え、その間に形成される環状の溝が前記差込み凹溝14となっている。外側の周壁14Aの外側の直径は先端部2の後端2Bの直径と同じ寸法に設定されている。また、前記差込み凹溝14の溝幅は、前記合成樹脂製のパイプ6と鉄パイプ5との夫々の先端部分6A、5Aの肉厚を合算した寸法に設定されている。更に具体的には、前記差込み凹溝14内には前記合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aが内嵌合されている。このパイプ6は内嵌合される際に、外面に適宜の接着剤(図外)が塗布された状態で内嵌合され、本体部3と一体になるようにしてある。必然的に、前記合成樹脂製のパイプ6の外径はこの差込み凹溝14の外側の内周面間の直径よりほんの僅か小径である。
【0045】
また、前記鉄パイプ5の外径はこれを内嵌合する合成樹脂製のパイプ6の内径とほぼ同等に形成されている。そして、この鉄パイプ5はその先端部分5Aを前記合成樹脂製のパイプ6内に嵌合されるとともに、先端部分5Aが前記合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aと重合した形で前記差込み凹溝14内に嵌合される。したがって、前記合成樹脂製のパイプ6の内面と内側の周壁14Bの外周面との間に存在する隙間は、この鉄パイプ5の先端部分5Aを嵌合させるためで、この鉄パイプ5の肉厚とほぼ同等な隙間寸法になるように構成されている。
【0046】
また、図示されるように、内側の周壁14Bの内側は先端部2の後端2Bにまで凹入された凹入部C1が設けられている。素材の節約を意図したものである。しかし、内側の周壁14Bの内側も中実である構成を排除するものではない。更に、図中想像線で示すように、図1に示す場合と同様に、先端部2側にまで凹入させて空洞Cを備えた構造も排除するものではない。また、先端部2の先端2Aの先鋭な形状は、鉄パイプ5を直に土中に挿入できるようにするためで、わざわざ埋設用に穴を掘る必要をなくし、作業の一層の簡素化、効率化を図ったものである。したがってまた、図中想像線で示すような、単なる円柱状の形状を排除するものではない。
【0047】
次に、この図5に示された構造に係る大型ビニールハウス用支柱の先端保護具の組み立て方について説明する。
基本的には図2に示すのと同様に、先ず、合成樹脂製のパイプ5の先端部分5Aに接着剤を塗布し、引き続きこのパイプ5の先端部分5Aを本体部3の差込み凹溝14内に嵌合挿入する。こうすることによって、本体部3と合成樹脂製のパイプ6を一体化する。次いで、現場において、この合成樹脂製のパイプ6内に鉄パイプ5を嵌合して行き、その先端5Cが差込み凹溝14の底に接当するまでしっかりと嵌合させる。このようにして、図5に示す組立が完了する。組立が完了したら、図2に示す場合と同様に、この先端保護具1の所定寸法部分を土中に埋設し、鉄パイプ5を立設する。その後、立設支柱群の外側をビニールシート(図外)で覆ってハウスを完成される。
【0048】
また、図6、7に示す構造は基本的には、先端を先鋭にして成る土中への差込先端となる先端部2と、その背部に一体に連ねて形成される本体部3と、この本体部3の後方を開放して形成された差込み凹部4の一例としての内外二重の環状凹溝14と、外側の環状の差込み凹溝14a内に嵌合される合成樹脂製のパイプ6とから構成されている。
【0049】
各部位について更に詳しく説明する。
先端部2は円錐形の中実ブロック体で、中央に先端2Aから後端に貫通するドレン通路7が設けられている。
【0050】
本体3はこの先端部2の背部から後方に一体に立ち上げた内外二重の周壁を備え、その間に形成される環状の溝が前記差込み凹部4の一例としての凹溝14となっている。外側の周壁14Aの外側の直径は先端部2の後端2Bの直径と同じ寸法に設定されている。また、前記差込み凹溝14の内、外側の凹溝14aには前記合成樹脂製のパイプ6の先端部分6Aが内嵌合されている。このパイプ6は内嵌合される際に、内外面、或いは何れか一方に適宜の接着剤(図外)が塗布された状態で内嵌合され、本体部3と一体になるようにしてある。また、内側の周壁14Bの内側には更に周壁14Cが存在していて、前記内側の周壁14Bとこの更に内側の周壁14Cとの間に形成される凹溝14b内に、鉄パイプ5の先端部分5Aが内嵌合されている。
【0051】
図中、12は前記内側の周壁14Bの内面で、周方向所定間隔置きに、この周壁14Bの後端から前記先端部2の後端2Bまでの間に穿設された雨水などの流下流路である。また、13は前記先端部2の後端2B上に、周方向所定間隔置きに突設された突起で、鉄パイプ5の先端5Cをこの先端部2の後端2Bからやや浮き上がらせ、前記滲み込んで来る雨水が前記ドレン通路7へ流下するのを妨げないようにしてある。この突起13に代えて、先端部2の後端2Bの面上で、採用される鉄パイプ5の内で、最も小径の鉄パイプの内周面が位置する部位に相当する箇所にわたって、突条を設ける構成でも良い。更には、前記流下流路12の下端から、採用される鉄パイプ5の内で、最も小径の鉄パイプの内周面が位置する部位に相当する箇所にわたって、この先端部2の後端2Bの面上に流下隘路を穿つ構造でも同様の排水機能を発揮できる。
【0052】
尚、本例においても、図示しないが、図5と同様に、内側の周壁14Bの内側は先端部2の後端2Bにまで凹入される凹入部C1を備えた構造を採用できる。素材の節約を意図するためである。この場合には、前記内側の凹溝1bは存在せず、これに代わって凹入部C1が存在することとなる。しかし、内側の周壁14Bの内側も中実である構成を排除するものではない。更に、図中想像線で示すように、先端部2側にまで凹入させて空洞Cを備えた構造も排除するものではない。また、先端部2の先端2Aの先鋭な形状は、鉄パイプ5を直に土中に挿入できるようにするためで、わざわざ埋設用に穴を掘る必要をなくし、作業の一層の簡素化、効率化を図ったものである。したがってまた、図中想像線で示すような、単なる円柱状の形状を排除するものではない。
【0053】
この構成によれば、鉄パイプ5の先端部分5Aを差し込むための内側の環状の差込み凹溝14bの寸法を、採用される鉄パイプ5の径に合わせて大小変えれば良く、先端保護具1の他の部位の寸法仕様は、この鉄パイプ5の径の大小に拘らず、すべて同じにして製造できるために、コストの低廉化に貢献する。また、内側の周壁14Bの内側を凹入部C1にした場合には、凹入部C1の内径とそれよりも細い径の鉄パイプ5との間には隙間が生じるが、その隙間には適宜の肉厚のスペーサー(図外)を嵌入すれば良い。更には、必要に応じて、前記内側の周壁14Bには、周方向所定間隔置きで、その後端から先端側に所定寸法距離にわたって、複数本のスリット(図外)を設けるのが望ましい。内側の凹溝14bや凹入部C1に多少の寸法誤差があっても、これを上手く吸収して、鉄パイプ5の嵌入を容易にできる。
【0054】
本発明においては、図1〜7に示される各構造は、発明の目的を意図しない限りにおいて、互いに組み合わせて採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る大型ビニールハウス用支柱の先端保護具の実施例を示し、一部を切欠いて断面表示した正面図である。
【図2】図1に示される各部品の組立作用図である。
【図3】一部を取り出して拡大表示した要部の拡大図を含む使用状態の説明図である。
【図4】シール構造を示す図1に対応する一部を切欠いて断面表示した正面図である。
【図5】差込み凹部の変形例を示す図1に対応する一部を切欠いて断面表示した正面図である。
【図6】差込み凹部の更に別の例を示す図1に対応する一部を切欠いて断面表示した正面図である。
【図7】図6中A−A断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…先端保護具
2…先端部
2A…先端
2B…後端
3…本体部
3B…後端
4…差込み凹部
5…支柱
5A…先端部分
5B…後端
5C…先端
6…合成樹脂製のパイプ
6A…先端部分
6B…後端
6C…先端
7…ドレン通路
8…係止段部
9…係止段部
10…シール材
14…差込み凹溝
14A…外側の周壁
14B…内側の周壁
14a…外側の凹溝
14b…内側の凹溝
C…空洞
C1…凹入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と、その背部に一体に連ねて形成された本体部と、この本体部には後方のみを開放して形成された差込み凹部と、金属製の支柱の先端部分を内嵌合させる合成樹脂製のパイプと、前記差込み凹部の底から前記先端部に貫通するドレン通路とを備え、前記合成樹脂製のパイプの先端部分が前記差込み凹部内に密に嵌合して一体的に固着され、前記先端部からこの合成樹脂製のパイプの後端より前記先端部側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設されることを特徴とする大型ビニールハウス用支柱の先端保護具。
【請求項2】
差込み凹部の底部周壁内面には、合成樹脂製のパイプ並びに金属製支柱の夫々の先端を受け止めるストッパー用の段部が備わっている請求項1記載の大型ビニールハウス用支柱の先端保護具。
【請求項3】
合成樹脂製のパイプの後端の外表面並びにこの合成樹脂製のパイプに差し込まれた金属製支柱の外表面がこの合成樹脂製のパイプの後端を挟んでその前後所定の範囲にわたって水密性のシール材で被覆されている請求項1〜2のいずれかに記載の大型ビニールハウス用支柱の先端保護具。
【請求項4】
先端部と、その背部に一体に連ねて形成される本体部と、この本体部には後方のみを開放して形成された環状の差込み凹溝と、金属製の支柱の先端部分を内嵌合させる合成樹脂製のパイプと、前記環状の差込み凹溝の底から先端部に貫通するドレン通路とを備え、前記合成樹脂製のパイプの先端部分が前記差込み凹部内に密に嵌合して一体的に固着され、前記先端部からこの合成樹脂製のパイプ後端より前記先端部側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設されることを特徴とする大型ビニールハウス用支柱の先端保護具。
【請求項5】
先端部と、その背部に一体に連ねて形成される本体部と、この本体部には後方のみを開放して内外二重の環状の差込み凹溝から形成され環状の差込み凹部と、外側の環状の差込み凹溝内に嵌合される合成樹脂製のパイプと、内側の環状の差込み凹溝の底から先端部に貫通するドレン通路とを備え、前記合成樹脂製のパイプの先端部分が前記差込み凹溝内に密に嵌合されて一体的に固着され、前記内側の環状の差込み凹溝内には金属製の支柱の先端部分が密に嵌合されるようにし、前記先端部からこの合成樹脂製のパイプの後端より前記先端部側へ所定寸法寄った位置までが土中に埋設されることを特徴とする大型ビニールハウス用支柱の先端保護具。
【請求項6】
先端部と本体部は本体部後方のみを開放した内部空洞の筒型に形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の大型ビニールハウス用支柱の先端保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−113609(P2008−113609A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299883(P2006−299883)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(506371419)九州コパロン販売株式会社 (1)
【出願人】(397021936)日大工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】