説明

大型車両トレッド/アンダートレッド

80から100phrまでの間の天然ゴムと、0から20phrまでの間の合成ポリイソプレンゴムと、補強フィラーであって、a)30から50phrまでの間の高分散性シリカと、b)Siが高分散性シリカの量を表すC=−0.8Si+44.3の式によって求められたとき、(0.75)C phrから(1.25)C phrまでの間の量のカーボンブラックとを備えている補強フィラーと、シランカップリング剤と、硫黄硬化系であって、1.5から3phrまでの間の遊離硫黄と、Aが硫黄の分量と全補強フィラーのシリカ重量分率の関数である式によって求められる(0.9)A phrから(1.1)A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤とを備える硫黄硬化系と、を備えているゴム組成物から少なくとも部分的に構成された、大型車両タイヤ・トレッド及び/又はアンダートレッドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、タイヤ・トレッドに関し、より詳細には、高いシリカ含有量を有する大型車両タイヤ・トレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ摩耗が多くなると、摩耗したタイヤの交換費用のために車両を稼動させるのがより高価になることから、タイヤ摩耗は、タイヤを購入しなければならない者にとっての関心事である。これは、トラック集団又はバス会社のような大規模な車両集団を稼動させる者にとってのより大きな関心事である。
【0003】
タイヤ摩耗の改善は、例えば転がり抵抗のようなタイヤの別の貴重な物理的特性と引き換えにしなければならない場合が多い。タイヤの転がり抵抗がより大きくなると、燃料消費がより高くなって、稼動コストがより高くなる場合がある。
【0004】
補強材料の選択は、タイヤの物理的特性に影響を及ぼすことがある。カーボンブラックは、補強フィラーの選択肢として長年にわたって用いられている。カーボンブラックで達成することができるよりも一層所望の特徴をしばしば提供する、シリカ及び他の所謂ホワイトフィラーも用いられている。フィラーとしてのシリカの使用例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,227,425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤ性能の最適な組合せを提供する改善された材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特定の実施形態は、トレッド及びアンダートレッドを有する大型車両タイヤを提供し、トレッド、アンダートレッド、又はその両方は、ゴム組成物に基づく材料から少なくとも部分的に構成される。他の実施形態は、ゴム組成物に基づく大型車両タイヤ・トレッドを含む。他の実施形態は、タイヤ・トレッドを含む。他の実施形態は、リトレッドプロセスの間にバフ掛けタイヤと結合させるためのタイヤ・トレッド・バンドを含み、トレッド・バンドは、ゴム組成物に基づく材料から少なくとも部分的に構成される。
【0008】
本発明のゴム組成物の特定の実施形態は、ゴム100重量部に対して、80から100phrまでの間の天然ゴムと、0から20phrまでの間の合成ポリイソプレンゴムとを備えてもよい。ゴムは、a)30から50phrまでの間の高分散性シリカと、b)Siが高分散性の量を表す、
【数1】

の式によって求められたとき、(0.75)C phrから(1.25)C phrまでの間の量のカーボンブラックと、を備えている補強フィラーをさらに備えてもよい。
【0009】
他の成分は、シランカップリング剤と、1.5から3phrまでの間の遊離硫黄及び(0.9)A phrから(1.1)A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤を備えている硫黄硬化系とを含んでもよく、ここでAは、以下の式によって求められ、
【数2】

式中、Sは、遊離硫黄の分量(phr)であり、Yは、補強フィラーの総重量に基づくシリカ補強フィラーの重量分率であり、MWは、スルフェンアミド促進剤の分子量である。
【0010】
本発明の上記及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の本発明の特定の実施形態のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特定の実施形態は、タイヤ・トレッド及びアンダートレッド、特に大型車両タイヤ・トレッド及びアンダートレッドを含んでいるゴム組成物及び物品と、該ゴム組成物及び物品を製造及び使用するための方法とを含む。ゴム組成物は、補強フィラーとしてシリカとカーボンブラックとの両方を有する天然ゴムを含む。他の実施形態は、合成ポリイソプレンゴムをさらに含んでもよい。ゴム組成物は、スルフェンアミド促進剤とシランカップリング剤とを用いる硫黄ベースの加硫系で硬化され又は硬化可能である。発明者らは、硫黄と促進剤との比率及びシリカとカーボンブラックとの比率を調節することによって、得られたゴム組成物からなる大型車両タイヤ・トレッド及び/又はアンダートレッドの摩耗特性をほぼ維持しながら、タイヤの転がり抵抗を改善することができることを発見した。
【0012】
「大型車両タイヤ・トレッド及び/又はアンダートレッド」を含む実施形態は、例えば、トラックタイヤ、バスタイヤ、地下鉄タイヤ、トラクタ、トレーラ、航空機タイヤ、農業、アースムーバ、及び他のオフ・ザ・ロード(OTR)タイヤのような「大型車両」に用いるのに特に適している。本明細書で用いられる場合の「大型車両タイヤ・トレッド及び/又はアンダートレッド」は、新しいタイヤのもの、リトレッド・タイヤのもの、及びリトレッドプロセスの間にバフ掛けタイヤに貼り付けることができるトレッド・バンド(硬化された又は硬化されていない)を含んでもよい。したがって、本発明の特定の実施形態は、乗用車タイヤ及び他の軽負荷タイヤに向けられたものではない。本明細書で用いられる場合のアンダートレッドは、ベルト・パッケージとトレッドとの間に位置するエラストマー組成物として定義される。
【0013】
大型車両タイヤは、それらの用途に応じて分類されることもある。例えば、トラックタイヤは、走行タイヤ(トラックエンジンによって動力を与えられるもの)と、操舵タイヤ(トラックを操舵するのに用いられるもの)とに分類される場合がある。トラクタ−トレーラリグのトレーラのタイヤはまた、別に分類される。本発明の実施形態は、各種の大型車両タイヤに適するものとして認識されるが、他の実施形態は、トラクタ−トレーラリグに用いられるようなトラクタの走行タイヤに特にふさわしく、且つそれに限定される。
【0014】
本発明の特定の実施形態は、シリカとカーボンブラックで補強されたゴム組成物に基づく材料から少なくとも部分的に構成された大型車両タイヤ・トレッド及び/又はアンダートレッドを含む。本明細書で用いられる場合、「に基づく」という用語は、トレッド又は他のゴム物品が、組み立て時点では硬化されていなかった加硫又は硬化されたゴム組成物からなることを認識するものである。したがって、硬化されたゴム組成物は、硬化されていないゴム組成物「に基づく」。言い換えれば、架橋されたゴム組成物は、架橋可能なゴム組成物に基づく。
【0015】
本発明の特定の実施形態においては、トレッドの全体及び/又はアンダートレッドの全体が本明細書で開示されたゴム組成物から構成されてもよいが、他の実施形態においては、トレッドの一部及び/又はアンダートレッドの一部のみがゴム組成物又はその組合せから構成されてもよいことが認識される。例えば、特定の実施形態においては、トレッド上のトレッド・ブロックの一部のみが開示されたゴム組成物からなってもよいが、他の実施形態においては、個々のトレッド・ブロックの一部のみが開示されたゴム組成物からなってもよい。トレッドのトレッド・ブロックは、組成物からなってもよく、及び/又は、他の実施形態において、トレッド・ベースのみが組成物からなってもよい。アンダートレッドは、開示された組成物からなってもよく、又は他の実施形態においては開示された組成物から構成されなくてもよい。
【0016】
本明細書で開示されたゴム組成物の特定の実施形態は、天然ゴムのみ又は天然ゴムと合成ポリイソプレンゴムとの組合せを含むエラストマー組成物を有する。合成ポリイソプレンは、例えば、90モル%よりも多い、又は代替的に98モル%よりも多いシス−1,4結合を有するものとして特徴付けられてもよい、合成シス−1,4ポリイソプレンを含む。本発明の特定の実施形態は、全エラストマー100重量部に対して80から100重量部(phr)までの間の天然ゴム、又は代替的に少なくとも85phrの天然ゴム、少なくとも90phrの天然ゴム、少なくとも95phrの天然ゴム、或いは100phrの天然ゴム含有量を有する。
【0017】
本明細書で開示されたゴム組成物の特定の実施形態は、天然ゴム及び/又は合成ポリイソプレンゴム以外の、他の不飽和度の高いジエンエラストマーを含まない。他の実施形態は、他の不飽和のジエンエラストマー及び/又は任意の他の本質的に飽和のジエンエラストマーを含まない場合がある。ジエンエラストマー又はゴムは、ジエンモノマー(共役又は非共役のいずれかの、2つの炭素−炭素二重結合をもつモノマー)から少なくとも部分的に得られるエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味すると理解されている。本質的に不飽和のジエンエラストマーは、15モル%よりも多くのジエン起源(共役ジエン)員又は単位の含有量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られるジエンエラストマーを意味すると理解されている。
【0018】
したがって、例えば、ブチルゴム、ニトリルゴム、若しくはエチレン−プロピレンジエン・ターポリマー(EPDM)型の又はエチレン−酢酸ビニル・コポリマー型のジエン及びα−オレフィンのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に含まれず、特に「本質的に飽和の」ジエンエラストマー(ジエン起源単位の低い又は非常に低い含有量、すなわち15モル%未満)として説明される場合がある。本発明の特定の実施形態は、本質的に飽和のジエンエラストマーを含まない。
【0019】
本質的に不飽和のジエンエラストマーのカテゴリに入るのは、特に、50モル%よりも多くのジエン起源(共役ジエン)単位の含有量を有するジエンエラストマーを意味すると理解されている、不飽和度の高いジエンエラストマーである。
【0020】
本明細書で開示されたゴム組成物の特定の実施形態は、補強フィラーとしてカーボンブラックとシリカとの両方を含む。実際に、シリカとカーボンブラックとの比率は、転がり抵抗のような他の重要な特性を犠牲にすることなく、こうしたゴム組成物からなる大型車両タイヤ・トレッドの摩耗特性を達成するための重要な変数であることが判っている。シリカは、30から50phrまでの間、又は代替的に30から45phrまでの間、35から45phrまでの間、或いは40から45phrまでの間の量でゴム組成物に添加されてもよい。これらの量以外の分量で添加されたシリカは、開示されたゴム組成物からなる大型車両タイヤ・トレッド及び/又はアンダートレッドの物理的特性(摩耗及び/又は転がり抵抗)に悪影響を及ぼす。
【0021】
ゴム組成物の特定の実施形態に用いられるシリカは、当業者には公知の任意の補強シリカ、特に、450m2/g未満又は代替的に30から400m2/gまでの間のBET表面積とCTAB比表面積とを有する任意の沈降又は焼成シリカであってもよい。特定の実施形態は、80から200m2/gまでの間、100から190m2/gまでの間、120から190m2/gまでの間、又は140から180m2/gまでの間のCTABを有するシリカを含む。CTAB比表面積は、1987年11月の規格AFNOR−NFT−45007に従って求められた外表面積である。
【0022】
大型車両タイヤ・トレッド及び/又はアンダートレッドを構成するゴム組成物の特定の実施形態は、60から250m2/gまでの間又は代替的に80から200m2/gまでの間のBET表面積を有する。BET比表面積は、Brunauer、Emmet、及びTeller著、「The Journal of the American Chemical Society」、Vol.60、pp.309、1938年2月に記載され、且つ規格AFNOR−NFT−45007(1987年11月)に対応している方法に従って、公知の方法で求められる。
【0023】
特定の実施形態に用いられるシリカは、100から300ml/100gまでの間、又は代替的に150から250ml/100gまでの間のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有するものとしてさらに特徴付けられてもよい。
【0024】
高分散性沈降シリカ(「HDS」と呼ばれる)は、開示されたゴム組成物の特定の実施形態において排他的に用いられ、「高分散性シリカ」は、エラストマー性マトリクス中に非凝集化し分散する実質的な能力を有する任意のシリカを意味すると理解されている。こうした判定は、薄片上の電子顕微鏡検査又は光学顕微鏡検査によって公知の方法で観測されてもよい。公知の高分散性シリカの例は、例えば、Akzo製のPerkasil KS430、Degussa製のシリカBV3380、Rhodia製のシリカZeosil 1165MP及び1115MP、PPG製のシリカHi−Sil 2000、及びHuber製のシリカZeopol 8741又は8745を含む。
【0025】
有機フィラーであるカーボンブラックは、ゴム配合分野の当業者には良く知られている。前述のように、本明細書で開示されたゴム組成物は、補強フィラーとしてシリカとカーボンブラックとの両方を含む。本明細書で開示されたゴム組成物中に含まれるカーボンブラックは、Siが高分散性シリカの量(phr)である次式(1)、すなわち、
【数3】

によって求められたとき、(0.75)C phrから(1.25)C phrまでの間の量で添加される。代替的に、カーボンブラックは、0.8Cから1.20Cまでの間、0.85Cから1.15C phrまでの間、0.9Cから1.1C phrまでの間、0.95C phrから1.05C phrまでの間、0.97C phrから1.03C phrまでの間、又はC phrの量で添加されてもよい。
【0026】
適切なカーボンブラックは、タイヤ特にトレッドに慣習的に用いられる任意のカーボンブラック、特にタイプHAF、ISAF、及びSAFのブラックである。カーボンブラックの非限定の例は、例えば、N115、N134、N234、N299、N330、N339、N343、N347、及びN375カーボンブラックを含む。大型車両タイヤ・トレッドでは、適切なカーボンブラックの特定の実施形態は、N100〜N300シリーズのカーボンブラックに限定される場合がある。
【0027】
ゴム組成物に添加されるシリカに加えて、比例した量のシランカップリング剤もゴム組成物に添加される。シランカップリング剤は、硬化されたゴム組成物の改善された特性を提供するために、混合中にシリカのシラノール基と反応し且つ加硫中にエラストマーと反応する、硫黄を含有する有機ケイ素化合物である。適切なカップリング剤は、無機フィラーとジエンエラストマーとの間の十分な化学的及び/又は物理的結合を確立することができるもの、例えば、簡略化された一般式「Y−T−X」を有する少なくとも二官能のものであり、ここで、Yは、無機フィラーと物理的及び/又は化学的に結合することができる官能基(「Y」官能基)を表し、こうした結合は、例えば、カップリング剤のケイ素原子と無機フィラーの表面ヒドロキシル(OH)基(例えば、シリカの場合の表面シラノール)との間に確立することができ、Xは、例えば硫黄原子によってジエンエラストマーと物理的及び/又は化学的に結合することができる官能基(「X」官能基)を表し、Tは、YとXを連結することを可能にする二価の有機基を表す。
【0028】
当業者には公知の硫黄を含有する有機ケイ素化合物のいずれも、本発明の実施形態を実施するのに有用である。シラン分子内に2つのケイ素原子を有する適切なシランカップリング剤の例は、3,3’−ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドと、3,3’−ビス(トリエトキシ−シリルプロピル)テトラスルフィド(Si69として知られている)とを含む。これらは両方とも、純粋な形ではないがDegussaからそれぞれX75−S及びX50−Sとして市販されている。Degussaは、X50−Sの分子量を532g/モル、X75−Sを486g/モルと報告している。これらの市販製品は両方とも、50−50重量でN330カーボンブラックと混合された活性成分を含む。シラン分子内に2つのケイ素原子を有する適切なシランカップリング剤の他の例は、2,2’−ビス(トリエトキシシリルエチル(triethoxysilylethyel))テトラスルフィド、3,3’−ビス(トリ−t−ブトキシ−シリルプロピル)ジスルフィド、及び3,3’−ビス(ジ−t−ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを含む。シラン分子内に1つのみのケイ素原子を有するシランカップリング剤の例は、例えば、3,3’(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドと、3,3’(トリエトキシ−シリルプロピル)テトラスルフィドを含む。シランカップリング剤の量は、当業者には公知のように適切な範囲にわたって変化させることができる。典型的に添加される量は、ゴム組成物に添加されたシリカの総重量の7重量%から15重量%までの間、又は代替的に8重量%から12重量%までの間、或いは9重量%から11重量%までの間である。
【0029】
本明細書で開示されたゴム組成物は、遊離硫黄とスルフェンアミド促進剤とを比例した量で含む硫黄硬化系を用いて架橋されるか架橋可能である。適切な遊離硫黄は、例えば、微粉硫黄、ゴムメーカーの硫黄、市販の硫黄、及び不溶硫黄を含む。ゴム組成物中に含まれる遊離硫黄の量は、1.5から3phrまでの間、又は代替的に、1.6から2.8phrまでの間、1.6から2.5phrまでの間、1.75から3phrまでの間、或いは2から2.6phrまでの間の範囲であってもよい。
【0030】
スルフェンアミド促進剤は、硬化系に添加された遊離硫黄の量と比例した量で添加される。本明細書で開示された範囲以外の分量のスルフェンアミド促進剤及び/又は遊離硫黄の添加は、ゴム組成物からなる大型車両タイヤ・トレッドの物理的特性(摩耗及び/又は転がり抵抗)に悪影響を及ぼす。本明細書で開示されたゴム組成物の特定の実施形態は、(0.9)A phrから(1.1)A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤を含み、ここで、Aは、次式(2)によって求められ、
【数4】

式中、Sは、遊離硫黄の分量(phr)であり、Yは、補強フィラーの総重量に基づくシリカ補強フィラーの重量分率であり、MWは、スルフェンアミド促進剤の分子量である。代替的に、スルフェンアミド促進剤は、0.95A phrから1.05A phrまでの間、0.97A phrから1.03A phrまでの間の量、又はA phrの量で添加されてもよい。発明者らは、他の物理的特性に大きな影響を及ぼすことなく改善された耐摩耗性の驚くべき結果を得るために、ゴム組成物に添加されるスルフェンアミド促進剤の量が、組成物に添加される硫黄の量の関数であるだけでなく、補強フィラーの総重量のシリカ重量分率として組成物に添加されるシリカの量の関数でもあることを発見したことに注目されたい。
【0031】
スルフェンアミド促進剤は、当該技術分野では良く知られている。適切なスルフェンアミド促進剤の例は、n−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N−オキシジエチル−2−ベンズチアゾールスルフェンアミド(MBS)、及びN’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)を含む。特定の実施形態は、スルフェンアミド促進剤としてCBSを単独で用いる。
【0032】
例えば、スルフェンアミド促進剤としてCBS(264g/モルのMW)を含み、且つ2.3phrの遊離硫黄、41.1phrのシリカ、及び13.2phrのカーボンブラックをさらに含む実施形態における式(1)の分量「A」を求めるためには、「A」は、[(0.0059)(2.3)-1.45+(0.0045)(0.756)]*264=スルフェンアミド促進剤の重量の1.36phrと計算されるであろう。
【0033】
本明細書で開示されたゴム組成物の特定の実施形態は、加工油(processing oil)を含まない。こうした油は、当業者には周知であり、一般に石油から抽出され、パラフィン系、芳香族系、又はナフテン系加工油として分類され、MES及びTDAE油を含んでいる。ゴム組成物の幾つかの実施形態は、1つ又は複数のこうした加工油と共に油展される合成ポリイソプレンのようなエラストマーを含んでもよいが、こうした油は、ゴム組成物中でゴム組成物の全エラストマー含有量の10phr以下、又は代替的に、8phr以下、6phr以下、或いは4phr以下であるように制限される。同様に、油展されたエラストマーを含まない本発明に係る特定の実施形態の他のゴム組成物は、前述のような油展されたエラストマー中に含有され得る量と同量以下の加工油を含んでもよい。
【0034】
本明細書で開示されたゴム組成物の特定の実施形態は、可塑化樹脂を含まない。こうした樹脂は、当業者には周知であり、一般に炭化水素ベースのものであり、しばしば石油ベースのものである。しかしながら、本発明の全体はそれに限定されない。
【0035】
本明細書で開示されたゴム組成物に、当該技術分野では公知の他の添加剤を添加することができる。こうした添加剤は、例えば、劣化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸、ワックス、ステアリン酸、酸化亜鉛、及び他の促進剤のうちの幾つか又はすべてを含んでもよい。劣化防止剤及び酸化防止剤の例は、6PPD、77PD、IPPD、及びTMQを含み、0.5から5phrまでの量でゴム組成物に添加されてもよい。酸化亜鉛は、1から6phrまでの間、又は2から4phrまでの間の量で添加されてもよい。ワックスは、1から5phrまでの間の量で添加されてもよい。
【0036】
促進剤は、加硫に要する時間及び/又は温度を制御し、且つ硬化されたゴム組成物の特性を改善するために用いられる。前述のように、本明細書で開示されたゴム組成物における一次促進剤は、添加された硫黄の量と比例した量で添加されるスルフェンアミドである。促進剤の組合せは、硬化されたゴム組成物の特性を改善するためにしばしば有用であり、特定の実施形態は、二次促進剤の添加を含む場合がある。
【0037】
特定の実施形態は、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン(TPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)、o−トリルビグアニド(tolylbigaunide)(OTBG)、又はヘキサメチレンテトラミン(HMTA)のような適度に高速の促進剤の使用を含む。こうした促進剤は、4phrまで、0.5から3phrまでの間、0.5から2.5phrまでの間、又は1から2phrまでの間の量で添加されてもよい。特定の実施形態は、例えば、高速促進剤:ジスルフィド及びベンゾチアゾール、及び、超高速促進剤:チウラム、キサントゲン酸塩、ジチオカルバミン酸塩、及びジチオリン酸塩のような、高速促進剤及び/又は超高速促進剤の使用を除外する場合がある。
【0038】
本発明は、単なる例証であって本発明を全く限定するものではないとみなされるべき以下の実施例によってさらに例証される。実施例において開示された組成物の特性を後述のように評価した。
【0039】
ダンベル状試験片に対し、ASTM規格D412に基づいて23℃の温度で10%(MA10)及び100%(MA100)での伸び率(Moduli of elongation)(MPa)を測定した。第2の伸びにおいて、すなわち、適応サイクル後に、測定値を採った。これらの測定値は、試験片の本来の断面に基づくMPaのセカント係数である。
【0040】
次式に従い、第6の衝撃における60℃での反発によってヒステリシス損失(HL)をパーセントで測定した:
【数5】

ここで、W0は、供給されたエネルギーであり、W1は、回復されたエネルギーである。
【0041】
ASTM D5992に従ってMTS831 Elastomer Test Systemで材料の動的特徴を測定した。10Hzの周波数及び80℃で交互の単一正弦波剪断応力を受けた加硫材料のサンプル(厚さ4mm及び断面400mm2の円筒形試験片)の応答を記録する。0.1〜50%(往路サイクル(outward cycle))の変形振幅、次いで50%〜0.1%(復路サイクル(return cycle))の変形振幅での走査を行う。復路サイクルの間、80℃で損失角tanデルタのタンジェントの最大値(max tanδ)を求めた。
【0042】
100℃での引裂抵抗指数を測定する。各々が3mmの深さを有する3つの切り目を付けられた寸法10×142×2.5mmの試験片に対して、厚さN/mmの破壊荷重(BL)と破断伸び(EB)のパーセントを測定する。引裂抵抗指数は、次式(2)によって与えられる。
【数6】

【0043】
タイヤ試験結果は、相対性能指数として与えられ、こうした結果は、「対照」タイヤを特徴付ける基準指数100と比較されるものである。したがって、このベース100よりも高い性能指数は、特定のタイヤの性能が、対応する「対照」タイヤの性能よりも優れていることを示す。
【0044】
25℃の周囲温度、2800kgの負荷の下、及び90km/時の速度で、試験ドラム上で走らせることによって、試験されるタイヤの各々の転がり抵抗を測定した。タイヤの内圧は8.6バールであった。
【0045】
蛇行路サーキットでトラックの操舵車軸上のタイヤを合計40,000マイルにわたって走らせた後で、残っているゴムの高さの関数である相対摩耗指数によって、各タイヤの耐摩耗性又は耐久性を求めた。この相対摩耗指数は、本発明に係るトレッド上に残っているゴムの高さを、定義により摩耗指数100を有する「対照」トレッド上に残っているゴムの高さと比較することによって得られた。
【0046】
計装走行車軸を有するトラックにタイヤを取り付けることによって、トラクションを試験した。路面上にて公称水深1.5mmの周囲温度条件でタイヤを試験した。試験条件は、研磨コンクリート(polished concrete)上で32及び64km/時であり、アスファルト上で32及び97km/時であった。
【0047】
各試験の間、制動力(Fx)をかけ、ホイール回転のロック、すなわち、ホイール回転の停止を測定した。タイヤのタイヤ角速度(O)がその自由回転角速度(Oo)よりも小さいときに、踏み跡において滑りが発生した。滑り率(SR)は、一般に2つの速度の間の差異を表し、SR=(O/Oo)−(Oo/Oo)と表現される場合がある。例えば、タイヤがロックされるとき、回転速度はゼロであり、滑り率は−1である。
【0048】
試験の間、制動力によりタイヤがロックされるまで、特定のタイヤ角速度(滑り率)のMu値を計算した。Muは、制動力を、各タイヤにかかる一定の垂直荷重で割ることによって求められる。各タイヤの5%から45%滑りまでの平均Mu値を用いて、各々を、比較(Witness)1タイヤの平均Mu値で割ることによって、タイヤの各々のMu値を正規化した。
【実施例】
【0049】
実施例1
表1に示された成分を用いて、当業者には周知の手順を用いて、エラストマー調製物を調製した。表1に示されたエラストマー調製物を形成する各成分の量は、エラストマー100重量部に対する部(phr)で与えられる。表1の調製物F1〜F3に挙げられた「他の」成分には、ZnO、ステアリン酸、6PPD、TMQ、DPG、及びワックスのような硬化剤及び劣化防止剤成分が含まれていた。これらの材料のすべてを、当業者には公知の典型的な量で添加した。比較タイヤは、既製品のMichelinトラックタイヤであった。
【0050】
調製物に用いられるカーボンブラックは、比較の場合N299、F1の場合Evonik Industriesから入手可能なECORAX1990、F2の場合Sid Richardson Carbon Co.から入手可能なSR129、F3の場合N234であった。調製物に用いられる高分散性シリカは、F2の場合Rhodiaから入手可能なZeosil Premium 200MP、F1およびF3の場合Rhodiaから入手可能なZeosil 1165MPであった。Zeosil 200 Premium MPは、230m2/gのBET表面積と196m2/gのCTABを有している高分散性シリカとして特徴付けられてもよい。Zeosil 1165MPは、160m2/gのBET表面積と155m2/gのCTABを有している高分散性シリカとして特徴付けられてもよい。
【0051】
【表1】

【0052】
表1で与えられたゴム、シリカ、カップリング剤、及びDPG成分を、65〜70RPMで作動するバンバリーミキサで約45秒間混合し、次いで、カーボンブラックを添加し、次いで、50〜55RPMに下げて約1.8分間混合することによってエラストマー調製物を調製した。次いで、混合物を冷却し、30RPMの速度で作動する2つのシリンダを有するミルに移した。加硫剤を添加し、加硫剤が良く分散されるまで混合を続けた。ミリング時間は10分間以内であった。F1及びF2の場合にのみ、混合物をさらなる処理のためにバンバリーミキサに戻した。この第2混合段階の間、バンバリーミキサは、20から40までの間のRPM速度で約2.5分間作動させた。
【0053】
ゴム組成物をシートにし、150℃で25分間硬化した比較1以外のすべての材料を、150℃の温度で20分間硬化させた。次いで、硬化したシートを、実施例の物理的特徴を求めるのに用いられる試験方法に適した試験片に切断した。
【0054】
タイヤ試験では、表1に示されたゴム化合物からなるトレッドを有するタイヤを生産した。前述のように試験を行い、試験結果を表1に示した。
【0055】
本発明の特許請求の範囲と明細書で用いられる場合、「備えている」、「含んでいる」、及び「有する」という用語は、特定されない他の要素を含む場合がある開放グループを示していると考えられるべきである。本発明の特許請求の範囲と明細書で用いられる場合、「本質的に、〜からなる」という用語は、特許請求される発明の基本的な及び新規な特徴を重大に変化させない限り、特定されない他の要素を含む場合がある部分的な開放グループを示していると考えられるべきである。「ひとつの(a、an)」という用語、及び単語の単数形は、該単語が1つ又は複数の何かが提供されることを意味するように、同じ単語の複数形を含むものとして理解されるべきである。「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」という用語は同義語として用いられる。「1つの」又は「単一の」という用語は、1つ及び1つのみの何かが意図されることを示すために用いられるものである。同様に、「2つの」のような他の特定の整数値は、特定の数のものが意図されるときに用いられる。「好ましくは」、「好ましい」、「好む」、「随意的に」、「であってもよい」という用語、及びそれと類似の用語は、言及される項目、条件、又はステップが本発明の任意の(要求されない)特徴であることを示すために用いられる。「aからbまでの間」と説明される範囲は、「a」及び「b」の値を含むものである。
【0056】
本発明の真の趣旨から逸脱することなく本発明の実施形態に種々の修正及び変更を加えてもよいことが、上記の説明から理解されるべきである。上記の説明は、説明の目的のためにのみ与えられるものであって、限定する意味で解釈されるべきではない。以下の請求項の文言のみが、本発明の範囲を制限するべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド及びアンダートレッドを有する大型車両タイヤであって、前記トレッド、前記アンダートレッド、又はその両方は、ゴム組成物に基づく材料から少なくとも部分的に構成され、前記ゴム組成物が、ゴム100重量部に対して、
80から100phrまでの間の天然ゴムと、
0から20phrまでの間の合成ポリイソプレンゴムと、
補強フィラーであって、a)30から50phrまでの間の量の高分散性シリカと、b)Siが前記高分散性シリカの量(phr)である以下の式によって求められたとき、
【数1】

(0.75)C phrから(1.25)C phrまでの間の量のカーボンブラックと、を備えている補強フィラーと、
シランカップリング剤と、
硫黄硬化系であって、1.5から3phrまでの間の遊離硫黄と、(0.9)A phrから(1.1)A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤とを備え、Aが以下の式によって求められ、
【数2】


式中、Sは、遊離硫黄の分量(phr)であり、Yは、補強フィラーの総重量に基づくシリカ補強フィラーの重量分率であり、MWは、スルフェンアミド促進剤の分子量である、硫黄硬化系と、
を備えている、大型車両タイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物が、100phrの天然ゴム及び0phrの合成ポリイソプレンゴムを備える、請求項1に記載の大型車両タイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物が、100phrの天然ゴム及び合成ポリイソプレンゴムを備える、請求項1に記載の大型車両タイヤ。
【請求項4】
前記スルフェンアミド促進剤がCBSである、請求項1に記載の大型車両タイヤ。
【請求項5】
前記補強フィラーが、30から45phrまでの間の高分散性シリカを備える、請求項1に記載の大型車両タイヤ。
【請求項6】
前記硫黄硬化系が、1.6から2.8phrまでの間の遊離硫黄を備える、請求項1に記載の大型車両タイヤ。
【請求項7】
前記硫黄硬化系が、0.97Aから1.03A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤を備える、請求項1に記載の大型車両タイヤ。
【請求項8】
前記カーボンブラックが、0.9Cから1.1C phrまでの間のカーボンブラックの量で添加される、請求項1に記載の大型車両タイヤ。
【請求項9】
ゴム組成物に基づく材料から少なくとも部分的に構成された大型車両タイヤ・トレッドであって、前記ゴム組成物が、ゴム100重量部に対して、
80から100phrまでの間の天然ゴムと、
0から20phrまでの間の合成ポリイソプレンゴムと、
補強フィラーであって、a)30から50phrまでの間の量の高分散性シリカと、b)Siが前記高分散性シリカの量(phr)である以下の式によって求められたとき、
【数3】

(0.75)C phrから(1.25)C phrまでの間の量のカーボンブラックと、を備えている補強フィラーと、
シランカップリング剤と、
硫黄硬化系であって、1.5から3phrまでの間の遊離硫黄と、(0.9)A phrから(1.1)A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤とを備え、Aが以下の式によって求められ、
【数4】

式中、Sは、遊離硫黄の分量(phr)であり、Yは、補強フィラーの総重量に基づくシリカ補強フィラーの重量分率であり、MWは、スルフェンアミド促進剤の分子量である、硫黄硬化系と、
を備えている、大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項10】
前記ゴム組成物が、100phrの天然ゴム及び0phrの合成ポリイソプレンゴムを備える、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項11】
前記ゴム組成物が、100phrの天然ゴム及び合成ポリイソプレンゴムを備える、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項12】
前記スルフェンアミド促進剤がCBSである、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項13】
前記補強フィラーが、30から45phrまでの間の高分散性シリカを備える、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項14】
前記硫黄硬化系が、1.6から2.8phrまでの間の遊離硫黄を備える、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項15】
前記硫黄硬化系が、0.97Aから1.03A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤を備える、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項16】
前記カーボンブラックが、0.97Cから1.03C phrまでの間のカーボンブラックの量で添加される、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項17】
前記タイヤ・トレッドが、リトレッドプロセスの間にバフ掛けタイヤと結合させるためのトレッド・バンドである、請求項9に記載の大型車両タイヤ・トレッド。
【請求項18】
トレッド及びアンダートレッドを有する大型車両タイヤであって、前記トレッドは、ゴム組成物に基づく材料から少なくとも部分的に構成され、前記ゴム組成物が、ゴム100重量部に対して、
80から100phrまでの間の天然ゴムと、
0から20phrまでの間の合成ポリイソプレンゴムと、
補強フィラーであって、a)30から50phrまでの間の量の高分散性シリカと、b)Siが前記高分散性シリカの量(phr)である以下の式によって求められたとき、
【数5】

(0.75)C phrから(1.25)C phrまでの間の量のカーボンブラックと、を備えている補強フィラーと、
シランカップリング剤と、
硫黄硬化系であって、1.5から3phrまでの間の遊離硫黄と、(0.9)A phrから(1.1)A phrまでの間のスルフェンアミド促進剤とを備え、Aが以下の式によって求められ、
【数6】

式中、Sは、遊離硫黄の分量(phr)であり、Yは、補強フィラーの総重量に基づくシリカ補強フィラーの重量分率であり、MWは、スルフェンアミド促進剤の分子量である、硫黄硬化系と、
を備えている、大型車両タイヤ。

【公表番号】特表2012−514092(P2012−514092A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544400(P2011−544400)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/088437
【国際公開番号】WO2010/077232
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】