説明

大型輸送船

【課題】積荷の積載状況に応じて変わる喫水変化に伴うスラミングやプロペラレーシング等の問題を、バラスト水を用いることなく解決できる大型輸送船の提供を課題とする。
【解決手段】船首から少なくとも船体の長手方向の中央位置にかけての船底の形状が、前記長手方向に垂直な断面で見た場合に、船底の幅方向の中央に向かって先細りであり、船底のキールに沿って平底部8が形成されている大型輸送船を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンカー等の大型輸送船に関し、特に、バラスト水が不要な大型輸送船に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタンカー、ばら積船、コンテナ船、LNG船、自動車運搬船などの大型輸送船は、空荷状態における喫水の浅さに基づく各種問題を防止する目的と、重心制御を行う目的とから、バラスト水を搭載する構造を備えている。
すなわち、喫水が浅くなった場合には、
(1)航行中に船底が波に叩かれて衝撃を受ける(いわゆるスラミングを受ける)、
(2)プロペラが全没できずに水面上に露出し、推進性能の低下や、プロペラ及び主機関の負荷変動が増大する(いわゆるプロペラレーシングが発生する)、
といった問題が生じる。
【0003】
これら問題のうち、上記(1)の問題に対しては、船体構造の強化によりある程度対処することができるものの、航行性能に関する上記(2)の問題に対しては、当然ながら、船体構造の強化では対処することができない。したがって、喫水の浅さに起因する各種問題のうち、特に航行能力を左右する上記(2)の問題を解決することが重要であり、その解決手段の一つとして、バラスト水を搭載して喫水を深くすることが従来から行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記バラスト水としては、一般に海水が用いられるが、この海水を搭載海域で搭載した大型輸送船が、他の海域まで航行し、他の海域で荷物を搭載するためにバラスト水である海水を海中に廃棄すると、バラスト水を搭載した海域の海中生物が他の海域に入り込んで生態系を変えてしまう虞がある。この問題を解決する案としては、バラスト水を洋上で交換する、バラスト水を廃棄する前に滅菌するなどの各種対策が提案されているが、いずれも、抜本的な対策としては不十分であった。
また、バラスト水は、船形にもよるが、船体排水量の30%前後に至るため、空荷状態で航行すると、不必要なUnpaid Loadを運搬することになる。したがって、余分な燃料を浪費することとなり、省エネルギーの観点からも問題である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、積荷の積載状況に応じて変わる喫水変化に伴うスラミングやプロペラレーシング等の問題を、バラスト水を用いることなく解決できる大型輸送船の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の請求項1に記載の大型輸送船は、船首と船尾と船底とを備え、総排水量が1000トン以上の大型輸送船であり、前記船首から少なくとも船体の長手方向の中央位置にかけての前記船底の形状が、前記長手方向に垂直な断面で見た場合に、鉛直方向下方に向かって先細りであり、前記船底のキールに沿って第1の平坦部が設けられていることを特徴とする。
上記請求項1に記載の大型輸送船によれば、船首から少なくとも中央位置にかけての船底形状を先細り形状にすることで、従来の平たい船底形状の船体に比較して、平たい船底を削って体積を減らした分だけ、より深く船体を沈めることができる。
これにより、少なくとも船体の前半部分を深く沈めることができるので、喫水が浅くなった場合に生じるスラミングの問題を回避することができる。また、バラスト水を用いずに喫水を深くすることができることから、バラスト水の廃棄に起因する生態系への影響の懸念をも払拭することができる。
また、第1の平坦部を備えたことにより、この大型輸送船の建造時や、この大型輸送船がドック入りした際に、キール部分(第1の平坦部)を通常の平たい治具(盤木)で支持することができる。よって、船底の先細り形状に合わせてV溝が形成された新たな治具を作る必要がない。また、第1の平坦部がない場合のキールに比較して、治具上に載置した際のキールへの応力集中を緩和することもできる。
【0006】
請求項2に記載の大型輸送船は、請求項1に記載の大型輸送船であって、前記船尾に設けられた一対のスケグと、前記船底の、前記各スケグ間の位置に形成された凹所と、を備えることを特徴とする。
上記請求項2に記載の大型輸送船によれば、凹所の形成による断面積の減少分だけ、各スケグの高さ方向長さ寸法を長くすることができるので、これらスケグを、前記凹所を持たない従来の大型輸送船よりも深く沈めることができる。
これにより、喫水が浅くなった場合に生じる、プロペラレーシング等の航行性能に関する各種問題を確実に回避することができる。しかも、一対のスケグを備える二軸式構造(プロペラを2枚備える構造)を採用することにより、一軸式構造(プロペラを1枚備える構造)に比較して、同等の推進力を確保しながらもプロペラの外径寸法を小さくすることができる。よって、プロペラレーシングの問題をより確実に回避することができる。
また、バラスト水を用いずに各スケグを深く沈めることができるので、バラスト水の廃棄に起因する生態系への影響の懸念をより確実に払拭することもできる。
また、バラスト水を搭載せずに空荷状態での航行が可能になることから、余分な燃料を消費することがなく、輸送航行時の省エネルギー化に貢献することもできる。
【0007】
請求項3に記載の大型輸送船は、請求項2に記載の大型輸送船であって、前記船体を前記長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記凸形状の下端縁と、前記各スケグの下端縁とが略同一仮想平面上にあることを特徴とする。
上記請求項3に記載の大型輸送船によれば、この大型輸送船の建造時やこの大型輸送船がドック入りした際に、前記凸形状の下端縁と各スケグの下端縁との三カ所により船体を床面上に支えることができる。
【0008】
請求項4に記載の大型輸送船は、請求項2に記載の大型輸送船であって、前記船体を前記長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方にあることを特徴とする。
上記請求項4に記載の大型輸送船によれば、各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方に配置されているので、各スケグに設けられるプロペラの鉛直方向位置をより下方に下げることができる。
【0009】
請求項5に記載の大型輸送船は、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の大型輸送船であって、前記各スケグが、前記長手方向に垂直な断面で見た場合にV字形状を有することを特徴とする。
上記請求項5に記載の大型輸送船によれば、各スケグの主要部分が、2枚の単純な平面形状の傾斜面で形作られるため、各スケグの形状を曲面形状とする場合に比較して、容易に製造することができる。
【0010】
請求項6に記載の大型輸送船は、請求項5に記載の大型輸送船であって、前記各スケグの下端縁に沿って第2の平坦部が設けられていることを特徴とする。
上記請求項6に記載の大型輸送船によれば、この大型輸送船の建造時や、この大型輸送船がドック入りした際に、各スケグを通常の平たい治具(盤木)で支持することができる。よって、各スケグの先細り形状に合わせてV溝が形成された新たな治具を作る必要がない。また、平坦部がない場合のスケグに比較して、治具上に載置した際の各スケグの下端縁への応力集中を緩和させることもできる。
【0011】
また、本発明の請求項7に記載の大型輸送船は、船首と船尾と船底とを備え、総排水量が1000トン以上の大型輸送船であり、前記船尾に設けられた一対のスケグと、前記船底の、前記各スケグ間の位置に形成された凹所と、を備えることを特徴とする。
上記請求項7に記載の大型輸送船によれば、凹所の形成による断面積の減少分だけ、各スケグの高さ方向長さ寸法を長くすることができるので、これらスケグを、前記凹所を持たない従来の大型輸送船よりも深く沈めることができる。
これにより、喫水が浅くなった場合に生じる、プロペラレーシング等の航行性能に関する各種問題を確実に回避することができる。しかも、一対のスケグを備える二軸式構造(プロペラを2枚備える構造)を採用することにより、一軸式構造(プロペラを1枚備える構造)に比較して、同等の推進力を確保しながらもプロペラの外径寸法を小さくすることができる。よって、プロペラレーシングの問題をより確実に回避することができる。
また、バラスト水を用いずに各スケグを深く沈めることができるので、バラスト水の廃棄に起因する生態系への影響の懸念を払拭することもできる。
また、バラスト水を搭載せずに空荷状態での航行が可能になることから、余分な燃料を消費することがなく、輸送航行時の省エネルギー化に貢献することもできる。
【0012】
請求項8に記載の大型輸送船は、請求項7に記載の大型輸送船であって、前記船体をその長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記凸形状の下端縁と、前記各スケグの下端縁とが略同一仮想平面上にあることを特徴とする。
上記請求項8に記載の大型輸送船によれば、この大型輸送船の建造時やこの大型輸送船がドック入りした際に、前記凸形状の下端縁と各スケグの下端縁との三カ所により船体を床面上に支えることができる。
【0013】
請求項9に記載の大型輸送船は、請求項7に記載の大型輸送船であって、前記船体をその長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方にあることを特徴とする。
上記請求項9に記載の大型輸送船によれば、各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方に配置されているので、各スケグに設けられるプロペラの鉛直方向位置をより下方に下げることができる。
【0014】
請求項10に記載の大型輸送船は、請求項7〜請求項9の何れか1項に記載の大型輸送船であって、前記各スケグが、前記船体の長手方向に垂直な断面で見た場合にV字形状を有する
ことを特徴とする。
上記請求項10に記載の大型輸送船によれば、各スケグの主要部分が、2枚の単純な平面形状の傾斜面で形作られるため、各スケグの形状を曲面形状とする場合に比較して、容易に製造することができる。
【0015】
請求項11に記載の大型輸送船は、請求項10に記載の大型輸送船であって、前記各スケグの前記下端縁に沿って、第2の平坦部が設けられていることを特徴とする。
上記請求項11に記載の大型輸送船によれば、この大型輸送船の建造時や、この大型輸送船がドック入りした際に、各スケグを通常の平たい治具(盤木)で支持することができる。よって、各スケグの先細り形状に合わせてV溝が形成された新たな治具を作る必要がない。また、平坦部がない場合のスケグに比較して、治具上に載置した際の各スケグの下端縁への応力集中を緩和させることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の大型輸送船は、船首から少なくとも船体の長手方向の中央位置にかけての船底の形状が、前記長手方向に垂直な断面で見た場合に、鉛直方向下方に向かって先細りであり、船底のキールに沿って第1の平坦部が設けられている構成を採用した。この構成によれば、バラスト水を用いずに、少なくとも船体の前半部分を深く沈めることができるので、喫水が浅くなった場合に生じるスラミングの問題を回避することができる。また、バラスト水を用いずに喫水を深くすることができることから、バラスト水の廃棄に起因する生態系への影響の懸念をも払拭することができる。
また、第1の平坦部を備えたことにより、新たな治具を作ることなく船体を支持することが可能になる。また、第1の平坦部がない場合のキールに比較して、治具上に載置した際のキールへの応力集中を緩和させることも可能になる。
【0017】
また、請求項2に記載の大型輸送船は、船底の各スケグ間の位置に形成された凹所を備える構成を採用した。この構成によれば、凹所を持たない従来の船体に比較して、バラスト水を用いることなくプロペラや舵を確実に深く沈めることができる。しかも、二軸式構造を採用しているので、一軸式よりもプロペラの外径寸法を小さくしてプロペラレーシングの問題をさらに効果的に回避することができる。よって、喫水が浅いことに起因する問題の回避と、バラスト水の使用に起因する問題の回避との双方を、空荷状態の排水量を大きくせずに解決することが可能になる。したがって、積荷の積載状況に応じて変わる喫水の変化に伴うプロペラレーシング等の問題を、バラスト水を用いることなく解決することが可能になる。
【0018】
また、請求項3に記載の大型輸送船は、前記凹所よりも船首側では船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、船体を船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記凸形状の下端縁と、各スケグの下端縁とが略同一仮想平面上にある構成を採用した。この構成によれば、この大型輸送船の建造時やこの大型輸送船がドック入りした際に、船体を床面上に三カ所で支持することができるので、特別な治具(盤木など)を用いることなく、船体を安定した状態に載置することができる。したがって、船体の施工を容易に行うことが可能になる。
【0019】
また、請求項4に記載の大型輸送船は、前記凹所よりも船首側では船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、船体を船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方にある構成を採用した。この構成によれば、各スケグに設けられるプロペラの鉛直方向位置をより下方に下げることができるので、プロペラレーシングの問題をより確実に回避することが可能になる。
【0020】
また、請求項5に記載の大型輸送船は、各スケグが、前記長手方向に垂直な断面で見た場合にV字形状を有する構成を採用した。この構成によれば、各スケグの主要部分が、2枚の平面形状の傾斜面によって構成されるため、各スケグの形状を曲面形状とする場合に比較して製造が容易となり、大型輸送船の建造コストを下げることが可能になる。
【0021】
また、請求項6に記載の大型輸送船は、各スケグの下端縁に沿って第2の平坦部が設けられている構成を採用した。この構成によれば、この大型輸送船の建造やドック入りの時のために新たな治具を作る必要がない。また、第2の平坦部を持たない場合のスケグに比較して、この大型輸送船を治具上に載置した際のスケグの下端縁に作用する応力集中を緩和させることも可能になる。
【0022】
また、請求項7に記載の大型輸送船は、船底の各スケグ間の位置に形成された凹所を備える構成を採用した。この構成によれば、凹所を持たない従来の船体に比較して、バラスト水を用いることなくプロペラや舵を確実に深く沈めることができる。しかも、二軸式構造を採用しているので、一軸式よりもプロペラの外径寸法を小さくしてプロペラレーシングの問題をさらに効果的に回避することができる。よって、喫水が浅いことに起因する問題の回避と、バラスト水の使用に起因する問題の回避との双方を、空荷状態の排水量を大きくせずに解決することが可能になる。したがって、積荷の積載状況に応じて変わる喫水の変化に伴うプロペラレーシング等の問題を、バラスト水を用いることなく解決することが可能になる。
【0023】
また、請求項8に記載の大型輸送船は、前記凹所よりも船首側では船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、この凸形状の下端縁と、各スケグの下端縁とが略同一仮想平面上にある構成を採用した。この構成によれば、この大型輸送船の建造時やこの大型輸送船がドック入りした際に、船体を床面上に三カ所で支持することができるので、特別な治具(盤木など)を用いることなく、船体を安定した状態に載置することができる。したがって、船体の施工を容易に行うことが可能になる。
【0024】
また、請求項9に記載の大型輸送船は、前記凹所よりも船首側では船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方にある構成を採用した。この構成によれば、各スケグに設けられるプロペラの鉛直方向位置をより下方に下げることができるので、プロペラレーシングの問題をより確実に回避することが可能になる。
【0025】
また、請求項10に記載の大型輸送船は、各スケグが、前記長手方向に垂直な断面で見た場合にV字形状を有する構成を採用した。この構成によれば、各スケグの主要部分が、2枚の平面形状の傾斜面によって構成されるため、各スケグの形状を曲面形状とする場合に比較して製造が容易となり、大型輸送船の建造コストを下げることが可能になる。
【0026】
また、請求項11に記載の大型輸送船は、各スケグの下端縁に沿って第2の平坦部が設けられている構成を採用した。この構成によれば、この大型輸送船の建造やドック入りの時のために新たな治具を作る必要がない。また、第2の平坦部を持たない場合のスケグに比較して、この大型輸送船を治具上に載置した際のスケグの下端縁に作用する応力集中を緩和させることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、タンカー、ばら積船、コンテナ船、LNG船、自動車輸送船など、排水量が1000トン以上の大型輸送船に関し、特に、バラスト水を不要とする大型輸送船に関する。本発明の大型輸送船の各実施形態の説明を、図1〜図17を参照しながら以下に行うが、本発明がこれらのみに限定解釈されるものでないことはもちろんである。
【0028】
まず、図1〜図5を参照しながら、本発明の大型輸送船の第1実施形態についての説明を以下に行う。
図1において、符号1は船体、符号2はプロペラ、符号3は舵を示している。そして、同図に示す船体1は、紙面右側が船首1h、断面B−Bの位置が船体長手方向の中央位置1m、紙面左側が船尾1tとなっている。
図2(a)〜図2(c)に示すように、本実施形態の大型輸送船は、船首1hから船尾1tにかけての船底1a(底面)の形状が、船体1の長手方向に垂直な断面で見た場合に、鉛直方向下方に向かって先細りとなる凸形状になっている。なお、図2(b)に示す各符号1sは、船底1aの両端角部より鉛直方向上方に向かって連続する側壁をなす、一対のサイドウォールである。また、本実施形態の大型輸送船は、船底1aのキール1a1に沿って平底部8(第1の平坦部)を備えている。この平底部8の詳細については後で説明する。
【0029】
まず、船底1aの先細り形状の詳細について、満載状態を示す図3を用いて以下に説明する。同図に示すように、船底1aは、船体長手方向に垂直な断面で見た場合に、中央CL(最下端であるキール1a1)からその両端1a2にかけて直線的に形成されたV字形状をなしている。さらに、このV字形状は、船底1の主要部分である平行部分(従来の船体形状であれば、平たい船底を有する範囲の部分。中には平行部を持たぬ船体形状もあるが、この場合には、船体の長手方向の中央部分を指すものとする)において、中央CLを間に挟む両傾斜面1a3間の角度αが、60°〜170°の範囲内となっている。ちなみに、同図に2点鎖線で示す船体100は、満載状態における従来の大型輸送船のものであり、平たい平面形状の船底を有している。
前記角度αを60°〜170°の範囲内する理由は、角度αが170°よりも大きくなると、喫水を充分に深くするのに不足となり、また、角度αが60°よりも小さくなると、必要な排水量を確保できなくなるという問題を生じる恐れがあるからである。したがって、角度αとしては、60°〜170°の範囲内とするのが好ましい。
【0030】
本実施形態のように、船体1の船底形状を先細り形状とすることで、従来の平たい船底形状の船体100に比較して、平たい船底を削って体積を減らした分だけ、より深く船体1を沈めることができる。すなわち、同図の満載状態において、従来の船体100の平たい船底の両角部分の体積(斜線aに示す四角形部分)を減らすことにより、図4に示す空荷状態では、従来の船体100の喫水L1よりも深い喫水L2を得ることができる。
【0031】
この場合、減らした体積(斜線aを断面とする部分の体積)は、例えば図3に示すように、船体幅寸法W1を従来の船体幅寸法W2よりも幅広とすることで、補うことが可能である。すなわち、満載状態において、従来よりも幅広の船体幅寸法W1を確保することにより、斜線bを断面とする部分の体積が増える。そして、斜線aを断面とする部分の体積の合計と、斜線bを断面とする部分の体積の合計とが等しくなる船体幅寸法W1を採用することで、トータルとしての排水量が、従来の船体100と同じになる。
このトータルの排水量が等しくなることは、図4に示す空荷状態においても同様である。すなわち、同図に示す斜線dを断面とする部分の体積と、斜線e,f,gを断面とする部分の体積和とが等しくなる。
【0032】
なお、図3の斜線aに示す部分の排水量を補う方法としては、上述のように船体幅寸法W1を幅広とする他に、船体長さを従来の船体100よりも長くしたり、もしくは、船体幅寸法W1と船体長さとの双方を長くするようにしても良いし、さらには、船体を正面から見た場合の鉛直方向高さを高くして、喫水を深くすることで排水量を稼ぐようにしても良い。さらには、平行部以外の排水量を大きくして補ってもよい。
また、本実施形態の大型輸送船は、上述のように、従来と同じ排水量を確保しながらも、空荷状態における喫水を、従来の船体100よりも深くすることができるので、喫水が浅くなった場合に生じるスラミングの問題を回避することができる。
【0033】
また、本実施形態のように船底形状を先細り形状とする構成では、従来のようなバラスト水を用いずに喫水を深くすることができることから、バラスト水の廃棄に起因する生態系への影響の懸念をも払拭することができる。
同様に、バラスト水を搭載せずに空荷状態での航行が可能であることから、余分な燃料を消費することがなく、輸送の省エネルギー化に貢献することができる(言い換えると、同じエネルギーでより多くの輸送物を輸送することが可能となる)。
さらには、船底形状を先細り形状とする構成では、従来の平たい船底形状に比較して、船底面に対するスラミングの衝撃度を軽減させることができる(従来では、船底面に対して垂直に波が当たりやすいが、本発明の先細り形状では、その船底面に対して波が斜めに当たって側方に逃げるので、衝撃を軽減させることができる)という効果を得ることも可能となる。この衝撃軽減の効果は、前記角度αが小さいほど効果的に得られるが、先にも述べたように、必要充分な排水量を確保できる程度に収めることが好ましい。
【0034】
続いて、前記平底部8の詳細についての説明を以下に行う。
図5に示すように、本実施形態の大型輸送船は、所定の幅寸法Waを有する前記平底部8(同図の斜線部分参照)が船底1aに形成されている。
この平底部8は、下端縁L1の延在方向に沿って(すなわち、キール1a1に沿って)形成されており、その幅寸法Waの半分であるWa/2が、船体1の幅寸法Wの半分であるW/2の1/3以下(すなわち、Wa≦W/3)となっている。
この平底部8を備えたことにより、同大型輸送船の建造時や、同大型輸送船がドック入りした際に、平底部8を通常の平たい盤木(図示せず)で床面上に支持することが可能になる。よって、船底1aの鋭角形状に合わせてV溝が形成された新たな盤木(図示せず)などを作る必要がない。また、平底部8がない場合の船底形状に比較して、盤木上に載置した際の船底1aの下端縁L1に作用する応力集中を緩和させることも可能になる。
【0035】
以上説明の本実施形態の大型輸送船の効果を以下に纏める。
本実施形態の大型輸送船は、船首1hから船尾1tにかけての船底1aの形状を、該船底1aの長手方向に垂直な断面で見た場合に、船底幅方向の中央CLに向かって先細り形状とする構成を採用した。この構成によれば、従来の平たい船底形状を有する船体100に比較して、バラスト水を用いることなく喫水をより深くすることができるので、喫水が浅いことに起因する問題の回避と、バラスト水の使用に起因する問題の回避との双方を、空荷状態の排水量を大きくせずに解決することが可能となる。したがって、積荷の積載状況に応じて変わる喫水の変化に伴う問題を、バラスト水を用いることなく解決することが可能になる。
また、本実施形態の大型輸送船は、船底1aが、前記断面で見た場合に、中央CLからその両端にかけて直線的に形成されたV字形状を有する構成を採用した。この構成によれば、船底1aの主要部分が、2枚の平面形状の傾斜面1a3によって構成されるため、船底形状を曲面とする場合に比較して建造が容易となり、大型輸送船の建造コストを下げることが可能となる。
また、本実施形態の大型輸送船は、船底1aが、前記断面で見た場合に、船底中央を間に挟む両傾斜面1a3間の角度αが、60°〜170°の範囲内とする構成を採用した。この構成によれば、喫水を充分に深くすることと、必要な排水量の確保との両方を同時に満足することが可能となる。
なお、本実施形態では、サイドウォール1sと船底1aの両端との接合部分を角形状としたが、これに限らず、緩やかな曲線をもって接合するようにしても良い。
【0036】
次に、図6〜図15を参照しながら、本発明の大型輸送船の第2実施形態についての説明を以下に行う。
図6において、符号11は船体、符号12は一対のプロペラ、符号13は一対の舵、符号15は一対のスケグを示している。そして、同図に示す船体11は、紙面右側が船首11h、断面F−Fの位置が船体長手方向の中央位置11m、紙面左側が船尾11tとなっている。各プロペラ12は、各スケグ15それぞれの後端から水平方向に突出するプロペラシャフト12aの端部にそれぞれ取り付けられている。
図7(a)及び図7(b)に示すように、本実施形態の大型輸送船は、船首11hから中央位置11mにかけての船底11a(底面)の形状が、船体11の長手方向に垂直な断面で見た場合に、鉛直方向下方に向かって先細りとなる凸形状になっている。なお、図7(b)に示す各符号11sは、船底11aの両端角部より鉛直方向上方に向かって連続する側壁をなす、一対のサイドウォールである。また、本実施形態の大型輸送船は、船首11hから中央位置11mにかけての前半部分の船底11aのキール11a1に沿って、平底部18(第1の平坦部)が形成されている。この平底部18の詳細については後で説明する。
【0037】
図8及び図9に示すように、船尾11tの船底11aには、その船尾11tを対向視した場合に鉛直方向下方に向かって凸をなす一対のスケグ15が設けられている。これらスケグ15は、図8に示すように船底11aを対向視した場合には、船体11の長手方向に沿って延在するように形成されている。そして、図6に示すように、これらスケグ15の平行部分(下端縁が船体11の長手方向に対して略平行である部分)の長さ寸法SLが、船底11aの長さ寸法TLの略25%以下となっている。
これらスケグ15の断面形状の詳細について、図9を用いて以下に説明する。なお、同図に2点鎖線で示す船体100Aは、従来の大型輸送船を示しており、鉛直方向下方に向かって凸をなす曲面形状を有する一対のスケグ101と、これらスケグ101間に設けられて鉛直方向下方に向かって凸をなす曲面形状の船底102とを有している。
同図に示すように、本実施形態の各スケグ15は、それぞれ、鋭角な下端縁15aからその両端15bにかけて直線的に形成されたV字形状をなしている。この構成によれば、各スケグ15の主要部分が、2枚の平面形状の傾斜面によって構成されるため、各スケグ15の形状を曲面形状とする場合に比較して製造が容易となり、大型輸送船の建造コストを下げることが可能になっている。
【0038】
同じく図9に示すように、船尾11tを船体11の長手方向に垂直な断面で見た場合に、各スケグ15間の船底11aには、船体11の内部に向かって凹む(すなわち、鉛直方向上方に向かって凹む)凹所16が形成されている。そして、本実施形態の大型輸送船では、同図に示す断面における船体11の断面積が、凹所16がない従来の船体100Aの断面積と略等しくなるように、各スケグ15の高さ寸法15lが船体100Aの各スケグ101よりも長くなっている。この高さ寸法15lは、各スケグ15がなすV字の下端縁15a及び両端15bで形成される三角形の高さ寸法である。
【0039】
そして、図10に示すように、本実施形態の船体11は、凹所16の形成によって前記断面における船底面積を減らした分だけ(すなわち、船底容積を減らした分だけ)、従来の船体100Aに比較して、より深く各スケグ15を沈めることができる。すなわち、従来の船体100Aの船底中央部分の断面積を減らす(すなわち体積を減らす)ことにより、図10に示す満載状態と図11に示す空荷状態との双方において、従来の船体100Aの各スケグ101よりも深く各スケグ15を沈めることができるようになっている。
より詳しく言うと、図10及び図11に示すように、凹所16の形成によって減った体積(すなわち、同図の斜線部分xを断面とする体積)と、各スケグ15を高さ方向に延ばしたことにより増えた体積(すなわち、同図の一対の斜線部分yを断面とする体積和)とが等しくなる高さ寸法15lを採用することで、船尾11tにおける排水量が、従来の船体100Aと同じになる。
上述のような形状の各スケグ15を採用したことにより、図11に示すように、各プロペラシャフト12aを、従来の船体100Aのプロペラシャフト102aよりも深く沈めることができる。その結果、プロペラレーシングの問題を確実に回避することが可能になっている。
【0040】
さらに、本実施形態の船体11は、各スケグ15の高さ寸法を延ばしたことに伴い、各サイドウォール11sの平面部分が、従来の船体100Aよりも広くなっている。具体的に言うと、図10において、従来の船体100Aでは平面部分の高さがH11であったものを、H12まで延長しており、その結果、サイドウォール11sにおける平面部分の面積を増大させることに成功している。
このような平面部分の面積増大により、船体11の縦曲げ強度(船体11の長手方向が鉛直方向上下に撓むのを抑える強度)を増大させることが可能になっている。
【0041】
また、本実施形態の大型輸送船は、図7(a)及び図7(b)に示したように、凹所16よりも船首11h側では船底11aの形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状を有している。さらに、図9に示すように、船体11をその長手方向に沿って船尾11t側から見た場合に、前記凸形状の下端縁L1と、各スケグ15の下端縁15a,15aとが略同一仮想平面P上に配置されるように構成されている。このような構成を採用することにより、この大型輸送船の建造時やこの大型輸送船がドック入りした際に、前記凸形状の下端縁L1と各スケグ15の下端縁15a,15aとの三カ所により船体11をドックヤードの床面上に安定した状態に支持することができる。
なお、船体11の載置に際しては、図示しない盤木を介して床面上に載置するので、下端縁L1の高さ方向位置と、各下端縁15a,15aの高さ方向位置との間に多少のずれがあっても、盤木の高さ調整のみによってこれを容易に吸収することが可能である。
【0042】
本実施形態の大型輸送船は、図7(c)に示したように、各スケグ15の断面形状がV字形状であってかつその下端縁15aが鉛直方向下方に向かって鋭角である場合を例に説明した。しかしながら、これに限らず、例えば図12に示すように、各下端縁15aの延在方向(すなわち、船体11の長手方向)に沿って、所定の幅寸法を有する平坦部(第2の平坦部)15zが形成された構成を採用してもよい。
この場合、同大型輸送船の建造時や、同大型輸送船がドック入りした際に、平坦部15zを通常の平たい盤木Kで床面上に支持することができる。よって、各スケグ15の鋭角形状に合わせてV溝が形成された新たな盤木(図示せず)などを作る必要がない。また、平坦部15zがない場合のスケグ15に比較して、盤木K上に載置した際のスケグ15の下端縁に作用する応力集中を緩和させることも可能になる。
【0043】
続いて、図13〜図15を参照しながら、凹所16よりも船首11h側における船底11aの形状について以下に説明する。
図13に示すように、凹所16よりも船首11h側の船底11aの断面形状は、船体11の幅方向中央位置を鉛直方向に貫く中央線CL上に位置するキール11a1(前記下端縁L1に同じ)からその両端11a2にかけて直線的に形成されたV字形状をなしている。さらに、このV字形状は、船体11の主要部分である平行部分(従来の船体形状であれば、平たい船底を有する範囲の部分。中には平行部を持たぬ船体形状もあるが、この場合には、船体の長手方向の中央部分を指す)において、中央線CLを間に挟む両傾斜面11a3間の角度αが、60°〜170°の範囲内となっている。
この角度αを60°〜170°の範囲内する理由は、排水量の確保と喫水量の確保との間のバランスを取るためである。すなわち、角度αが170°よりも大きくなると、喫水量を充分に深くするのに不足となり、また、角度αが60°よりも小さくなると、必要な排水量を確保できなくなるという問題を生じる虞がある。このような理由により、角度αとしては、60°〜170°の範囲内とするのが好ましい。
さらに、本実施形態の大型輸送船では、船体1の長手方向に垂直な断面形状が略四角形の従来の船体100A(2点鎖線100a〜100dで囲まれる四角形断面)と同一断面積を有している。
【0044】
本実施形態のように、船底11aの形状を先細り形状とすることで、従来の平たい船底形状の船体に比較して、平たい船底を削って体積を減らした分だけ、より深く船体11を沈めることができる。すなわち、図13の満載状態において、従来の船体の平たい船底の両角部分の体積(すなわち、斜線aに示す一対の四角形部分を断面とする体積和)を減らすことにより、図14に示す空荷状態で、従来の船体100Aの喫水D1よりも、より深い喫水D2を得ることが可能になっている。
【0045】
減らした体積aは、例えば図13に示すように、船体幅寸法W1を従来の船体幅寸法W2よりも幅広とすることで、補うことが可能である。すなわち、満載状態において、従来よりも幅広の船体幅寸法W1を確保することにより、斜線bに示す部分の体積が増える。そして、斜線aの部分の体積の合計と、斜線bの部分の体積の合計とが等しくなるように船体幅寸法W1を採用することで、トータルとしての排水量が、従来の船体100Aと同じになる。
このトータルの排水量が等しくなる状態は、図14に示す空荷状態においても維持される。すなわち、同図に示す斜線rの部分の体積と、斜線s,t,uを断面とする部分の体積和とが等しくなる。
【0046】
なお、図13の斜線aに示す部分の排水量を補う方法としては、上述のように船体幅寸法を広くする他に、船体長さ寸法を従来の船体100Aよりも長くしたり、もしくは、船体幅寸法と船体長さ寸法との双方を長くしたりしても良い。
さらには、例えば図15に示すように、船体11の鉛直方向高さを高くして、喫水を深くすることで排水量を稼ぐようにしても良い。この図15の場合で言うと、船体11の幅寸法W’を従来の船体100Aの幅寸法と同じに確保した状態で、船体11の鉛直方向高さ寸法H’を従来の船体100Aの鉛直方向高さ寸法hよりも高くすることにより、同図に示す斜線r,qの部分の体積和と、斜線sの部分の体積和とが等しくなり、その結果排水量が確保される。
【0047】
続いて、前記平底部18の詳細についての説明を以下に行う。
図14に示すように、本実施形態の大型輸送船は、所定の幅寸法Waを有する前記平底部18(同図の斜線部分参照)が船底11aに形成されている。
この平底部18は、下端縁L1の延在方向に沿って(すなわち、キール11a1に沿って)形成されており、その幅寸法Waの半分であるWa/2が、船体11の幅寸法Wの半分であるW/2の1/3以下(すなわち、Wa≦W/3)となっている。
この平底部18を備えたことにより、同大型輸送船の建造時や、同大型輸送船がドック入りした際に、平底部18を通常の平たい盤木(図示せず)で床面上に支持することが可能になる。よって、船底11aの鋭角形状に合わせてV溝が形成された新たな盤木(図示せず)などを作る必要がない。また、平底部18がない場合の船底形状に比較して、盤木上に載置した際の船底11aの下端縁L1に作用する応力集中を緩和させることも可能になる。
なお、本実施形態の大型輸送船では、船底11aに平底部18を設ける構成を採用したが、必要に応じて、平底部18を省略して鋭角なキール形状を採用してもよい。
【0048】
以上説明のように、本実施形態の大型輸送船は、各スケグ15間の船底11aに形成された凹所16を備え、船尾11tを船体11の長手方向に垂直な断面で見た場合の断面積が、凹所16がない場合の断面積と略等しくなるように、各スケグ15の高さ寸法が設定されている構成を採用した。この構成によれば、凹所16を持たない従来の船体100Aに比較して、バラスト水を用いることなくプロペラ12や舵13の位置を確実に深くすることができる。しかも、二軸式構造を採用しているので、プロペラ12の外径寸法を小さくしてプロペラレーシングの問題をさらに効果的に回避することができる。よって、喫水が浅いことに起因する問題の回避と、バラスト水の使用に起因する問題の回避との双方を、空荷状態の排水量を大きくせずに解決している。したがって、積荷の積載状況に応じて変わる喫水の変化に伴うプロペラレーシング等の問題を、バラスト水を用いることなく解決することが可能になっている。
【0049】
次に、本発明の大型輸送船の第3実施形態について、図16及び図17を参照しながら以下に説明する。以下の説明においては、上記第2実施形態との相違点を中心に説明を行い、その他については上記第2実施形態と同一符号を用いてそれらの説明を省略する。
図16及び図17に示すように、本実施形態の大型輸送船は、船体11をその長手方向に沿って船尾11t側から見た場合に、各スケグ51の下端縁L4が、前記凹所16よりも船首11h側にある前記凸形状の下端縁L1よりも鉛直方向下方にある。
この構成によれば、各スケグ51の下端縁L4が、前記凸形状の下端縁L1よりも鉛直方向下方に配置されているので、各スケグ51に設けられるプロペラシャフト12aの鉛直方向位置(すなわち、プロペラ12の鉛直方向位置)をより下方に下げることができる。したがって、プロペラレーシングの問題をより確実に回避することが可能になる。
なお、本実施形態では前記平底部18を省略しているが、上記第2実施形態と同様にこの平底部18を備える構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の大型輸送船によれば、積荷の積載状況に応じて変わる喫水の変化に伴うプロペラレーシング等の問題を、バラスト水を用いることなく解決することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の大型輸送船の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】同大型輸送船を示す図であって、図2(a)が図1のA−A断面図、図2(b)が図1のB−B断面図、図2(c)が図1のC−C断面図である。
【図3】同大型輸送船の満載状態における船体中央部分を示す図であって、図2(b)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図4】同大型輸送船の空荷状態における船体中央部分を示す図であって、図2(b)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図5】同大型輸送船の平底部を説明するための図であって、図2(b)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図6】本発明の大型輸送船の第2実施形態を示す側面図である。
【図7】同大型輸送船を示す図であって、図7(a)が図6のE−E断面図、図7(b)が図6のF−F断面図、図7(c)が図6のG−G断面図である。
【図8】同大型輸送船の船尾部分を示す底面図であって、図6のH−H矢視図である。
【図9】同船尾部分を示す図であって、図7(c)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図10】同船尾部分の満載状態を示す図であって、図7(c)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図11】同船尾部分の空荷状態を示す図であって、図7(c)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図12】同大型輸送船のスケグの変形例を示す図であって、図7(c)のI部拡大図である。
【図13】同大型輸送船の満載状態における船体中央部分を示す図であって、図7(b)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図14】同大型輸送船の空荷状態における船体中央部分を示す図であって、図7(b)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図15】同大型輸送船の変形例を示す図であって、図7(b)と同じ断面で見た場合の断面図である。
【図16】本発明の大型輸送船の第3実施形態を示す側面図である。
【図17】同大型輸送船の空荷状態を示す図であって、図12のJ−J矢視図である。
【符号の説明】
【0052】
1,11 船体
1a,11a 船底
1a1,11a1 キール
1h,11h 船首
1t、11t 船尾
8,18 平底部(第1の平坦部)
15 スケグ
15z 平坦部(第2の平坦部)
16 凹所
P 仮想平面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首と船尾と船底とを備え、総排水量が1000トン以上の大型輸送船であり、
前記船首から少なくとも船体の長手方向の中央位置にかけての前記船底の形状が、前記長手方向に垂直な断面で見た場合に、鉛直方向下方に向かって先細りであり、
前記船底のキールに沿って第1の平坦部が設けられている
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項2】
請求項1に記載の大型輸送船であって、
前記船尾に設けられた一対のスケグと、
前記船底の、前記各スケグ間の位置に形成された凹所と、
を備える
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項3】
請求項2に記載の大型輸送船であって、
前記船体を前記長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、
前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記凸形状の下端縁と、前記各スケグの下端縁とが略同一仮想平面上にある
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項4】
請求項2に記載の大型輸送船であって、
前記船体を前記長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、
前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方にある
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項5】
請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の大型輸送船であって、
前記各スケグが、前記長手方向に垂直な断面で見た場合にV字形状を有する
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項6】
請求項5に記載の大型輸送船であって、
前記各スケグの下端縁に沿って第2の平坦部が設けられている
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項7】
船首と船尾と船底とを備え、総排水量が1000トン以上の大型輸送船であり、
前記船尾に設けられた一対のスケグと、
前記船底の、前記各スケグ間の位置に形成された凹所と、
を備える
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項8】
請求項7に記載の大型輸送船であって、
前記船体をその長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、
前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記凸形状の下端縁と、前記各スケグの下端縁とが略同一仮想平面上にある
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項9】
請求項7に記載の大型輸送船であって、
前記船体をその長手方向に垂直な各断面で見た場合に、前記凹所よりも前記船首側では前記船底の形状が鉛直方向下方に向かって先細りになる凸形状をなし、
前記船体を前記船尾側から前記長手方向に沿って見た場合に、前記各スケグの下端縁が、前記凸形状の下端縁よりも鉛直方向下方にある
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項10】
請求項7〜請求項9の何れか1項に記載の大型輸送船であって、
前記各スケグが、前記船体の長手方向に垂直な断面で見た場合にV字形状を有する
ことを特徴とする大型輸送船。
【請求項11】
請求項10に記載の大型輸送船であって、
前記各スケグの前記下端縁に沿って、第2の平坦部が設けられている
ことを特徴とする大型輸送船。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−18812(P2008−18812A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191482(P2006−191482)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(501385396)財団法人日本造船技術センター (2)