説明

大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置

【課題】大口径送水ホースを使用する大容量泡放水消火システムにおけるホース装着作業を容易にして、消火作業を効率化する泡剤混合装置を提供する。
【解決手段】口径200mm以上の大口径の送水ホース15を使用する大容量泡放水消火システムに使用される泡剤混合装置20である。泡剤混合装置20は、装置本体21を搬送用車両22に着脱自在にし、かつ地上に揚げ降ろし可能に構成されている。装置本体21には泡剤供給ポンプ26と混合導管25とを設け、混合導管25の前後端にそれぞれ送水ホース15の装着金具25aを設けると共に、中間部に泡剤供給ポンプ26に連通する泡剤の注入口27を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置に関し、さらに詳しくは、口径200mm以上の大口径送水ホースを使用する大容量泡放水消火システムにおけるホース装着作業を容易にし、消火作業を効率化する泡剤混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の石油コンビナートで発生した油貯蔵タンクの火災を契機にして、石油コンビナート等災害防止法施行令が改正された。改正前の消火設備には、図5に一例を示すように、毎分3000リットルの放水能力をもつ大型高所放水車51と大型化学車52と泡原液搬送車53とで構成された、いわゆる3点セットが使用されていた(特許文献1等参照)。この3点セットの消火設備による消火作業は、大型化学車52に対して消火栓54から消火水を供給すると共に、泡原液搬送車53から泡剤を供給することにより、大型化学車52で消火水に泡剤を混合した泡混合水を生成し、この泡混合水を大型高所放水車51に供給して、大型高所放水車51から火源に向け放水するというものであった。
【0003】
しかし、最近の石油コンビナートで発生した油貯蔵タンク火災では、上記3点セットの消火設備は油貯蔵タンク火災の消火に十分に機能することができなかった。そのため石油コンビナート等災害防止法施行令が、油貯蔵タンク等を備えた特定事業所の自衛防災組織の機能強化のために改正され、消火設備として毎分1万リットル以上の放水能力をもつ泡放水砲を備えることが義務づけられた。改正前の泡放水砲の放水能力は毎分3000リットル以上であったので、約3倍以上に放水能力を強化するものであった。
【0004】
このように泡放水砲の放水能力が大容量に規定された結果、従来の消火栓設備では放水量を確保できなくなる場合があり、水源として海などの自然水を利用しなければならない場合が生ずるようになった。そのため、自然水を大量に取水するための送水ホースとして口径200mm以上乃至250mm以上の大口径ホースを使用し、これらを長距離に連結して敷設することが必要になってきた。
【0005】
しかし、口径が200mm以上もの大口径ホースになると、連結金具も大口径化するため金具付きのホース全体の重量が増大することになる。そのため、消火作業において操作員が大重量の連結金具が付いた送水ホースを大型化学車のホース装着金具の高さまで持ち上げ、それを装着金具に装着する作業が著しく厳しい重労働にならざるを得なくなる。この重労働化の結果として、消火前の放水準備作業が著しく遅滞し、消火活動が非効率化することが考えられる。
【0006】
また、他の問題として、大口径送水ホースにより大型化学車に大量送水される消火水に対し、泡剤を所望とする混合比になるように混合する適切量を安定して供給する作業も非常に難しくなることが考えられる。
【特許文献1】特開平11−137709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主たる目的は、大口径送水ホースを使用する大容量泡放水消火システムにおけるホース装着作業を容易にし、消火作業を効率化するようにした泡剤混合装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、大口径送水ホースで大量送水するようにしても、泡剤を適量に安定に混合可能にする大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の主目的を達成する本発明の大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置は、口径200mm以上の大口径の送水ホースを使用する大容量泡放水消火システムに使用される搬送用車両に搭載の泡剤混合装置であって、装置本体に泡剤供給ポンプと少なくとも1本の混合導管とを設け、該混合導管の前後端にそれぞれ前記送水ホース連結用の装着金具を設けると共に、中間部に前記泡剤供給ポンプから供給される泡剤の注入口を設け、かつ該装置本体を前記搬送用車両に着脱自在、かつ地上に揚げ降ろし可能にしたことを特徴とするものである。
【0010】
上記泡剤混合装置は、好ましくは、前記搬送用車両に前記装置本体を揚げ降ろしするクレーンを搭載した構成にするとよい。また、前記泡剤供給ポンプに油圧モータを連結すると共に、前記搬送用車両に設けたPTO軸に油圧ポンプを連結し、該油圧ポンプにより前記油圧モータを駆動する構成にするのがよい。
【0011】
また、上述の他の目的を達成するための泡剤混合装置としては、上述の構成において、前記混合導管と泡剤注入口の供給管とにそれぞれ流量計を設け、これら流量計の検知信号により前記泡剤注入口に対する泡剤の供給量を予め設定された混合比になるように調整する自動制御部を設けるようにするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、泡剤混合装置を構成する装置本体を搬送用車両に着脱自在にし、地上に揚げ降ろし可能にした構成になっているので、装置本体を地上に降ろすことにより混合導管に対して送水ホースの連結金具の装着位置を低い位置にすることができるので、大重量の連結金具を付けた200mm以上の大口径送水ホースであっても、その送水ホースを混合導管の装着金具に容易に装着することができる。したがって、消火前の放水準備時間を短縮することで、消火作業を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3は大容量泡放水消火システムに使用される本発明の泡剤混合装置の実施形態を例示し、図4は自然水を消火水として採水する場合の大容量泡放水消火システムの一例を例示する。
【0014】
まず、図4を使用して、大容量泡放水消火システムについて一例を説明する。10は毎分1万リットル以上の放水能力をもつ泡放水砲11を装備した放水車、20は本発明の泡剤混合装置、30は海Sから毎分1万リットル以上の海水を汲み上げて送水するポンプ装置、40は泡剤タンク41を搭載した泡剤コンテナである。
【0015】
本発明の泡剤混合装置20は、詳細については後述するが、図5に例示した大型化学車に相当するものであって、装置本体21と搬送用車両22から構成されている。この泡剤混合装置20は、ポンプ装置30から供給された海水等の消火水に対して、泡剤タンク41から供給された泡剤を混合することにより泡混合水を生成し、その泡混合水を放水車10に供給する。
【0016】
ポンプ装置30は、大型ディーゼルエンジンの駆動装置31、この駆動装置31によって駆動される送水ポンプ34及び油圧ポンプ32、その油圧ポンプ32により循環される作動油により毎分1万リットル以上の海水を汲み上げるように駆動される2台の水中ポンプ33、33から構成されている。
【0017】
上記水中ポンプ33、33から汲み上げられた海水(消火水)は、それぞれ吸水ホース16、16を介して送水ポンプ34に供給され、この送水ポンプ34で加圧され、口径200mm以上、好ましくは250mm以上、さらに好ましくは300mm以上の大口径送水ホース15、15を介して泡剤混合装置20に供給され、ここで泡剤タンク41から供給された泡剤と混合され泡混合水となって放水車10に供給され、最後に放水車10の泡放水砲11から火災源Fに向けて放水される。
【0018】
ポンプ装置30及び泡剤コンテナ40は、図示していないが、それぞれ搬送用車両により必要な場所に搬送されるようになっている。
【0019】
図1及び2に示すように、上述のような大容量泡放水消火システムに使用される本発明の泡剤混合装置20は、搬送用車両22に対して装置本体21が着脱自在に搭載され、その装置本体21が搬送用車両22に搭載されたクレーン23によりワイヤ24を介して吊り上げられ、地上に上げ降ろし可能になっている。
【0020】
装置本体21には、泡剤供給ポンプ26が設けられ、かつ4本の平行に並べられた混合導管25、・・25が幅方向に横断するように設置されている。装置本体21に設けられる混合導管25の数としては、1本だけであってもよく、図示の例のように複数本であってもよい。それぞれ混合導管25には、前後両端に送水ホース15の連結金具を連結するための装着金具25aが取り付けられ、かつ中間部の上壁に泡剤の注入口27が設けられている。注入口27には導管27aを介して泡剤供給ポンプ26から泡剤が供給されるようになっている。その泡剤供給ポンプ26には、ホース42を介して泡剤の供給源である泡剤コンテナ40の泡剤タンク41から泡剤が供給されるようになっている。
【0021】
上記泡剤供給ポンプ26は、油圧モータ26aにより駆動される。また、油圧モータ26aは、搬送用車両22の駆動源(ディーゼルエンジン等)から取り出されたPTO軸に連結された油圧ポンプ28から供給チューブ28aを介して循環する作動油により駆動されるようになっている。その作動油は、搬送用車両22上に設けた油クーラ29に循環して冷却され、オーバヒートを防止するようになっている。
【0022】
上述した泡剤混合装置20により火災現場で消火作業を行うときは、泡剤混合装置20は搬送車両22によりポンプ装置30に近い場所か、或いは放水車10に近い場所に移動させて停車する。その停車位置で送水ホース15を混合導管25の装着金具25aに連結する前に、クレーン23を使用して装置本体21を搬送用車両22から地上に降ろす。装置本体21を地上に降ろしたことにより、混合導管25の装着金具25aの高さを地面に近い低い位置に変えるので、送水ホース15が大重量の連結金具を取り付けた口径200mm以上の大口径のものであっても、装着金具25aに対して容易に装着することが可能になる。
【0023】
混合導管25の前後両端の装着金具25a、25aに、それぞれポンプ装置30から延長する送水ホース15と放水車10に延長させる送水ホース15とを連結し、さらに後者の送水ホース15を必要本数を連結して放水車10に連結する。このように送水ホース15を連結状態にした後、泡剤混合装置20の混合導管25にポンプ装置30から消火水を供給すると共に、泡剤注入口27に泡剤供給ポンプ26から泡剤を供給すると、混合導管25内において泡混合水が連続的に生成され、それが後端側の送水ホース15を介して放水車10に供給される。
【0024】
図3は、上述した泡剤混合装置20において、ポンプ装置30から送水された大容量の消火水に予め設定された混合比に泡剤を適正に混合するための制御装置を示す。
【0025】
図3に示すように、4本設けられた混合導管25にそれぞれ逆止弁64と流量計60が設けられている。また、泡剤注入口27に連結された導管27aからの分枝管61に、逆止弁65のほか上流側に絞り弁62と流量計63が設けられている。混合導管25の流量計60及び分枝管61の絞り弁62と流量計63は、それぞれ電気的に制御盤66に接続され、さらに4箇所の制御盤66は主制御操作盤67に接続されている。
【0026】
各制御盤66は、混合導管25の流量計60が検出した流量信号と、泡剤注入口27に設けた流量計63が検出した流量信号を入力し、両信号から演算れた混合比を予め適正値として設定された混合比と比較し、泡剤注入口27に注入する泡剤の供給量が適正か否かを算出する。その計算において、泡剤の供給量が適正値の混合比に対して過剰であったり、或いは不足している場合は、その過剰または不足する過不足信号を絞り弁62の駆動部に出力し、その絞り弁62の絞りを泡剤注入口27に注入する泡剤量を適正値の混合比になるように調整する。また、主制御操作盤67は各制御盤66からの信号を入力し、それに基づいて泡剤供給ポンプ26からの泡剤供給量を調整する。
【0027】
したがって、本発明の泡剤混合装置20によれば、口径200mm以上の大口径送水ホースにより大量送水する場合であっても、泡混合水を常に適正な混合比になるように泡剤の供給量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の泡剤混合装置の実施形態を例示する側面図である。
【図2】図1の泡剤混合装置から装置本体を地上に降ろして消火作業する情況を示す平面図である。
【図3】本発明の泡剤混合装置に設けられた制御装置を例示する概略図である。
【図4】本発明の泡剤混合装置が使用される大容量泡放水消火システムの一例を示す説明図である。
【図5】従来の泡放水消火システムの例示する説明図である。
【符号の説明】
【0029】
10 放水車
15 送水ホース
16 吸水ホース
20 泡剤混合装置
21 装置本体
22 搬送用車両
23 クレーン
24 ワイヤ
25 混合導管
25a 装着金具
26 泡剤供給ポンプ
26a 油圧モータ
27 泡剤注入口
28 油圧ポンプ
30 ポンプ装置
31 駆動装置
32 油圧ポンプ
33 水中ポンプ
34 送水ポンプ
60、63 流量計
62 絞り弁
66 制御盤
67 主制御操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口径200mm以上の大口径の送水ホースを使用する大容量泡放水消火システムに使用される搬送用車両に搭載の泡剤混合装置であって、装置本体に泡剤供給ポンプと少なくとも1本の混合導管とを設け、該混合導管の前後端にそれぞれ前記送水ホース連結用の装着金具を設けると共に、中間部に前記泡剤供給ポンプから供給される泡剤の注入口を設け、かつ該装置本体を前記搬送用車両に着脱自在、かつ地上に揚げ降ろし可能にした大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置。
【請求項2】
前記搬送用車両に前記装置本体を揚げ降ろしするクレーンを搭載した請求項1に記載の大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置。
【請求項3】
前記泡剤供給ポンプに油圧モータを連結すると共に、前記搬送用車両に設けたPTO軸に油圧ポンプを連結し、該油圧ポンプにより前記油圧モータを駆動するようにした該請求項1又は2に記載の大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置。
【請求項4】
前記混合導管と泡剤注入口に対する供給管とにそれぞれ流量計を設け、これら流量計の検知信号に基づき前記泡剤注入口に対する泡剤供給量が予め設定された混合比になるように調整する自動制御部を設けた請求項1、2又は3に記載の大容量泡放水消火システムの泡剤混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−93199(P2008−93199A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278817(P2006−278817)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000215822)帝国繊維株式会社 (24)
【Fターム(参考)】