説明

大気圧プラズマ発生装置

【課題】小型かつ高効率のプラズマを発生できる大気圧プラズマ発生装置を提供する。
【解決手段】大気圧プラズマ発生装置1は、管軸方向に放電ガスが流れ高周波電源21からの高周波電力が供給されることによりプラズマを発生する放電管26と、放電管26に高周波電力を伝達するアンテナ25と、高周波電源21とアンテナ25との間に配置された整合回路とを備え、当該整合回路は、高周波電源21の一端とアンテナ25の一端との間に接続されたインダクタ23、高周波電源21の他方の一端とアンテナ25の他方の一端との間に接続された可変コンデンサ24を備え、アンテナ25は、上記整合回路と連続した配線であって放電管26の近傍に配置され実際に電流の流れる第1のアンテナ部251と、放電管26と接触する部分を有する第2のアンテナ部252とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧プラズマ発生装置に関し、特に、アンテナの近傍に放電管を配設したコンパクトな構成の大気圧プラズマ発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル及びコンデンサを含んで構成される整合回路中に、互いに対向する2つの電極を設けてプラズマ発生部を形成し、高周波電源から当該整合回路に高周波電力を供給するとともに、プラズマ発生部に配置した放電管(反応容器)にプラズマ発生用のガスを供給することにより、放電管内にプラズマを発生させるようにした容量結合型のプラズマ(Capacitively Coupled Plasma:CCP)発生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、整合回路と連続配線された巻線形状または波状形態のアンテナ設けてプラズマ発生部を形成し、高周波電源から当該整合回路に高周波電力を供給するとともに、当該アンテナの近傍に配置した放電管にプラズマ発生用のガスを供給することにより、放電管内にプラズマを発生させるようにした誘導結合型のプラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発生装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このようなプラズマ発生装置では、整合回路のパラメータ(例えばコンデンサの容量)を変化させてプラズマ発生部と高周波電源との間のインピーダンス整合を行うことにより、プラズマ発生部に高周波電源から取り出せる最大のエネルギーを作用させて高密度なプラズマを得ることができる。このような構成を有するプラズマ発生装置は、大気圧下でプラズマを発生させることができ、構成が簡易であるため、作業の対象物としての基板端子の局所的な洗浄や表面改質などについて行う小規模なプラズマ処理に適したものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−126898号公報
【特許文献2】特開2009−259626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の容量結合型のプラズマ発生装置では、対向する2つの電極間に形成されるプラズマ発生部にプラズマが発生すると、両電極間の電気的な絶縁状態は破られて整合回路のインピーダンス整合状態が大幅に崩れてしまうため、プラズマを発生させ続けることが困難であるという問題点がある。また、整合回路のインピーダンス整合状態を維持しようとすると、整合回路のパラメータを自動調整する自動整合装置が必要になるが、自動整合装置を備えた場合、装置が大型化するという課題が発生する。
【0006】
一方、前述した従来の誘導結合型のプラズマ発生装置では、放電管に対してアンテナと整合回路とが連続配線されており、プラズマの有無により整合回路の状態は大きく変動しないので、自動整合回路が不要になり、ユニットが小型化できる。しかし、アンテナに流れる電流成分しか活用していないため、プラズマ発生効率が低いという課題が発生する。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、小型かつ高効率のプラズマを発生できる大気圧プラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る大気圧プラズマ発生装置は、大気圧下でプラズマを発生する大気圧プラズマ発生装置であって、管軸方向に放電ガスが流れ高周波電源からの高周波電力が供給されることによりプラズマを発生する放電管と、前記放電管に前記高周波電力を伝達するアンテナ部と、前記高周波電源と前記アンテナ部との間に配置された整合回路とを備え、前記整合回路は、前記高周波電源の一端と前記アンテナ部の一端との間に接続されたインダクタと、前記高周波電源の他端と前記アンテナ部の他端との間に接続され可変コンデンサとを備え、前記アンテナ部は、前記整合回路と連続した配線であって、前記高周波電源からの高周波電流が流れる第1のアンテナ部と、少なくとも前記放電管の長手方向に沿って前記放電管と接触する部分を有する直線形状の、あるいは前記放電管の長手方向に沿って連続的に前記放電管の短手方向の幅内で前記放電管と接触する第2のアンテナ部とで構成されることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の一態様は、前記放電管、前記アンテナ部及び前記整合回路は、同一の基板上に配置されていてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様は、前記第1のアンテナ部は、前記放電管と近接して配置され、両端が前記整合回路に接続され、前記第2のアンテナ部は、前記基板に対する法線方向から見て、前記放電管と交差する部分を有し、一端が前記第1のアンテナ部に接続され、他端が開放されていてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様は、前記アンテナ部は、さらに、前記第2のアンテナ部と対向し、前記基板に対する法線方向から見て、前記放電管と交差する部分を有する、接地された第3のアンテナ部を備えてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、前記第1のアンテナ部は、前記第2のアンテナ部を含み、前記第2のアンテナ部は、前記基板に対する法線方向から見て、前記放電管と重複して配置され、前記第1のアンテナ部の両端は、前記整合回路に接続されていてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様は、前記第1のアンテナ部は、前記第2のアンテナ部を含み、前記基板の法線方向から見て、前記放電管と交差する部分を有し、前記第2のアンテナ部は、前記放電管と近接して配置され、前記第1のアンテナ部の両端は、前記整合回路に接続されていてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様は、前記第1のアンテナ部は、前記第2のアンテナ部を含み、前記第2のアンテナ部は、前記基板の法線方向から見て、前記放電管を横切るように配置され、前記第1のアンテナ部の両端は、前記整合回路に接続されていてもよい。
【0015】
上記構成の大気圧プラズマ発生装置によれば、第1のアンテナ部は、整合回路と連続した配線で構成されているので、安定した誘導結合型のプラズマを発生させることが可能となり、上記整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路が不要となる。
【0016】
また、アンテナ部は、従来の巻線型や平面波状型ではなく、少なくとも放電管の長手方向に沿って放電管と接触する部分を有する直線形状の、あるいは放電管の長手方向に沿って連続的に放電管の短手方向の幅内で放電管と接触する簡単な形状から構成されているので、銅板等の金属材料の打ち抜きや切断加工やエッチング加工にて容易かつ安価に製造することができる。
【0017】
さらに、整合回路の整合状態を保ちながら、直列側のインダクタの値とコンデンサの容量の組合せを調整しても、リアクタンスの総和が変わらない限り、並列側のリアクタンスを調整することなく整合は維持される。この直列側のリアクタンスを一定にしておく限りアンテナ部に流れる電流は一定に保ったまま、アンテナ全体にかかる対地電圧を自由に調整することができる。可変コンデンサの容量が低いほど、アンテナ部に印加される対接地電圧が大きくなり、この対接地電圧と、放電管の終端方向の無限遠点に想定される接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマの発生効率を向上させることが可能となる。
【0018】
よって、アンテナ部を流れる電流による誘導結合型のプラズマと、アンテナ部に印加される大きな対接地電圧による容量結合型のプラズマとのハイブリッドプラズマを発生することができ、高効率かつ小型のプラズマ発生装置を実現できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の大気圧プラズマ発生装置によれば、アンテナ部に流れる電流と、アンテナ部の対接地電圧とをハイブリッドで利用することにより、自動整合回路不要で小型、かつ、高出力のプラズマを、大気圧下で発生させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る大気圧プラズマ発生装置の概略的な回路図としての構成図である。
【図2A】Tune容量を変化させたときのVHF帯における高周波電力とアンテナ電流との関係を表すグラフである。
【図2B】Tune容量を変化させたときのVHF帯における高周波電力とアンテナ電圧との関係を表すグラフである。
【図3】実施の形態1の変形例に係る大気圧プラズマ発生装置の構成図である。
【図4A】本発明の実施の形態2に係る大気圧プラズマ発生装置の概略的な回路図としての第1の構成図である。
【図4B】本発明の実施の形態2に係る大気圧プラズマ発生装置の概略的な回路図としての第2の構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置の構成図である。
【図6A】本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第1の変形例を示す構成図である。
【図6B】本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第2の変形例を示す構成図である。
【図6C】本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第3の変形例を示す構成図である。
【図6D】本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第4の変形例を示す構成図である。
【図6E】本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第5の変形例を示す構成図である。
【図6F】本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第6の変形例を示す構成図である。
【図7A】従来の容量結合型の大気圧プラズマ発生装置の回路構成図である。
【図7B】従来の誘導結合型の大気圧プラズマ発生装置の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る高周波電力増幅器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る大気圧プラズマ発生装置の概略的な回路図としての構成図である。本構成図に記載された大気圧プラズマ発生装置1は、基板30の上に、可変コンデンサ12及び14と、インダクタ13と、アンテナ15と、放電管16とを備える。以下、図1の構成図により、各構成要素の接続関係を説明する。
【0023】
アンテナ15は、可変コンデンサ14及びインダクタ13に接続され、放電管16に高周波電力を伝達するアンテナ部である。
【0024】
放電管16は、放電ガスが流れ、高周波電源11からの高周波電力が供給されることによりプラズマを発生する。
【0025】
可変コンデンサ12は、高周波電源11に並列に接続されている。可変コンデンサ14は、可変コンデンサ12の基準端子である一端とアンテナ15の一端との間に直列に接続された複数のコンデンサ素子からなるコンデンサ部である。インダクタ13は、可変コンデンサ12の基準端子とアンテナ15の他の一端との間に、直列に接続されたインダクタ素子である。可変コンデンサ14及びインダクタ13、可変コンデンサ12は、高周波電源11とアンテナ15とのインピーダンス整合をとるための整合回路を構成する。可変コンデンサ12及び14は、容量を変化させることにより、整合回路のインピーダンス整合を行うことができる。
【0026】
具体的には、可変コンデンサ12及び14の容量をそれぞれC12及びC14、インダクタ13のインダクタンスをL13、アンテナ15のインダクタンスをL15、直列側回路の回路抵抗をRとすると、上記回路(図1)の並列側インピーダンスは−1/jωC12であり、上記回路の直列側インピーダンスは(R+jωL13+jωL15−1/jωC14)となる。この並列側インピーダンス及び直列側インピーダンスのリアクタンス成分を、可変コンデンサ14の容量値及びインダクタ13のインダクタンス値を調整することにより、高周波電源11から出力される高周波電力を高効率にアンテナ15へ供給することが可能となる。
【0027】
可変調整可能なコンデンサ部である可変コンデンサ14は、可変コンデンサ12の基準端子である接地端子とアンテナ15の一端との間に配置された、直列に接続された複数のコンデンサ素子で構成される。図1では、上記複数のコンデンサ素子は、例えば、可変コンデンサであるトリマコンデンサ141と、固定コンデンサ142、143及び144とで構成されている。
【0028】
トリマコンデンサ141により、複数のコンデンサ素子からなる可変コンデンサ14の容量値を調整することが可能となる。さらに、複数のコンデンサ素子を直列に接続することにより、可変コンデンサ14の容量値(以下、Tune容量とも記す)を低減させることが可能となる。複数のコンデンサ素子(141〜144)からなる可変コンデンサ14の容量値(以下、Tune容量と記す)が低いほど、アンテナ15に印加されるアンテナ電圧が大きくなり、このアンテナ電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管の終端方向の無限遠点に想定される電位0V相当の接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマの発生効率を向上させることが可能となる。
【0029】
なお、可変コンデンサ14を構成する複数の容量素子(コンデンサ素子)は、少なくとも1つが可変コンデンサであればよく、その他の固定コンデンサは少なくとも1つあればよい。
【0030】
また、上述したリアクタンス成分の調整によりアンテナ15と高周波電源とのインピーダンス整合を予めとっておけば、アンテナ15、インダクタ13及び可変コンデンサ14のリアクタンス成分の総和を変えなければ、可変コンデンサ12を調整することなくアンテナ15とのインピーダンス整合は継続される。よって上記整合回路に連続的に接続された連続した配線を有するアンテナ15に流れる電流は変化せず、安定した誘導結合型のプラズマを発生させることが可能となる。また、上記容量結合型のプラズマの有無により、上記整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路は不要である。
【0031】
以上により、アンテナ15を流れる電流による誘導結合型のプラズマと、アンテナ15にかかる大きな対接地電圧による容量結合型のプラズマとが合成されたハイブリッドプラズマが発生して、効率の良いプラズマが発生する。
【0032】
また、複数のコンデンサ素子を直列に接続させて1つのコンデンサ部である可変コンデンサ14を構成することにより容量を低減させて可変コンデンサ14に必要とされる耐電圧を分圧させて上記複数のコンデンサ素子の各々の耐電圧性能を緩和できるので、可変コンデンサ14の部品コストを低減することが可能となり、複数のコンデンサ素子からなる小型の耐電圧性能の高いコンデンサ部を構成することができる。
【0033】
以下、大気圧プラズマ発生装置1の構成要素の詳細について、例示して説明する。
【0034】
アンテナ15は、基板30の上に配置される。当該基板上には、高周波電源11と接続するためのコネクタが配設されている。基板30の材質としては、熱伝導性の高いアルミナ、サファイヤ、アルミナイトライド、シリコンナイトライド、窒化ホウ素、及び炭化ケイ素などが好適である。
【0035】
基板上に配置されたアンテナ15の部位には、アンテナ15に近接し、誘電体から成る放電管16が配設される。放電管16の長手方向(管軸方向)上端は、基板の上端近傍に配置されてこの上端からガスを供給するように構成されるとともに、放電管16の長手方向(管軸方向)下端は基板の下端よりも適当距離下方に延出され、その下端から発生されたプラズマを吹き出してプラズマ処理を行うように構成されている。
【0036】
基板のコネクタの配置部位にはコネクタ31における高周波電圧のグランド側が接続されるグランド電極(基準電位の基準端子)が配設されている。
【0037】
整合回路は、アンテナ15と上記コネクタとの間に配設されている。
【0038】
インダクタ13は、その一端がアンテナ15と、そして他端が可変コンデンサ12と電気的に接続されている。
【0039】
可変コンデンサ14は、アンテナ15と可変コンデンサ12に電気的に接続されている。
【0040】
アンテナ15及びインダクタ13を構成する金属材料としては、比抵抗値の低い金属、例えば銅(比抵抗:17.2nΩm(20℃)、温度係数:0.004/℃)、銀(比抵抗:16.2nΩm(20℃)、温度係数:0.004/℃)、金(比抵抗:24.0nΩm(20℃)、温度係数:0.0034/℃)、アルミニウム(比抵抗:28.2nΩm(20℃)、温度係数:0.004/℃)等の金属薄板ないし金属箔を打ち抜き加工したり、切断加工したり、エッチング加工したりして構成したものが好適であるが、銅が最も好適である。また、その厚さは、高周波電流が流れる表面からの深さδの2倍以上、3倍以下のものが好適である。ここで、高周波電流が流れる導体表面からの深さδは、δ=(2/ωμσ)/2(式中、ωは高周波の角周波数、μは透磁率、σは導電率である)で与えられる。具体例を示すと、高周波電流の周波数が100MHzの場合で、100μm程度の厚さのものが好適である。
【0041】
図2Aは、Tune用(調整用)の可変コンデンサ14のTune容量を変化させたときのVHF帯における高周波電力(VHF電力)とアンテナ電流との関係を表すグラフであり、図2Bは、Tune容量を変化させたときのVHF帯における高周波電力(VHF電力)とアンテナ電圧との関係を表すグラフである。
【0042】
アンテナ15は、整合回路に連続的に接続された連続した配線を有しており、Tune容量とインダクタ13とを変化させて整合しても、図2Aに示されるように、Tune容量の変化に対するアンテナ15を流れるアンテナ電流は変化しない。また、プラズマ発生の有無により整合回路の整合度の変動は比較的少ない。
【0043】
一方、図2Bに示されるように、可変コンデンサ14のTune容量が低い値で整合するほど、アンテナ15に印加される対接地電圧であるアンテナ電圧は大きくなる。
【0044】
図2A及び図2Bに表されたグラフより、可変コンデンサ14のTune容量が低いほど、大きなアンテナ電圧を確保することができ、アンテナ電流とアンテナ電圧との相乗効果で規定されるプラズマ出力は大きくなり、高効率化が達成される。
【0045】
なお、VHF帯(VHF:Very High Frequency)(本実施の形態では40.68MHz帯を例示)である40.68MHz帯において、可変コンデンサ14の容量値は10pF以下であることが好ましい。図2Bに示されるように、可変コンデンサ14の容量値が10pF以下の場合、高周波入力電力(VHF電力)の増加によりアンテナ電圧も増加するため、安定してプラズマを発生させることができる。一方、可変コンデンサ14の容量値が10pFより大きい場合、高周波入力電力(VHF電力)を増加してもアンテナ電圧が十分大きくならず、容量結合型プラズマ(CCP)の寄与分が少ないためプラズマが弱い。
【0046】
なお、高周波入力電力の周波数が高いほど、アンテナ電圧は低下する。よって、上述した40.68MHz帯では、可変コンデンサ14の上限値を10pFと設定したが、高周波入力電力が高周波になるほど可変コンデンサ14の上限値は厳しく(低く)なり、低周波になるほど可変コンデンサ14の上限値は緩和される(高くなる)。
【0047】
図7Aは、従来の容量結合型の大気圧プラズマ発生装置の回路構成図であり、図7Bは、従来の誘導結合型の大気圧プラズマ発生装置の回路構成図である。
【0048】
図7Aに記載された従来の大気圧プラズマ発生装置500は、可変コンデンサ512及び513と、対向電極515と、放電管516とを備える。また、図7Bに記載された従来の大気圧プラズマ発生装置600は、可変コンデンサ612及び613と、アンテナ615と、放電管616とを備える。
【0049】
従来の容量結合型の大気圧プラズマ発生装置500では、放電管516を介して高周波電源511からの高周波電圧が印加され、ガス供給された放電管516内にプラズマが発生する。本構成では、放電管がプラズマ発生回路の電流パスの一部を構成しているため、放電管516内のプラズマの有無により可変コンデンサ512及び513で構成される整合回路の状態が大きく変化する。つまり、プラズマの有無により回路のインピーダンスが大きく変動するため、自動整合回路が無いとプラズマが維持できない。そのため、調整用のモータが必要となりユニットが大型化してしまう。
【0050】
また、従来の誘導結合型の大気圧プラズマ発生装置600では、放電管616に対してアンテナ615と、可変コンデンサ612及び613で構成される整合回路とが連続して配線されている。このため、プラズマの有無により整合回路の状態は大きく変動せず、放電管616内のプラズマとアンテナ615の電波とのカップリング分のみが変わるため、容量結合型に比べほとんど整合回路は影響を受けない。よって、自動整合回路が不要となり、ユニットが小型化できるという利点を有する。しかし、高周波電源611からの電力供給に対して、アンテナ615に流れる電流成分しか活用できていないため(アンテナ615にかかる電圧を任意に制御できないため)、プラズマ発生効率が低い。
【0051】
これに対し、本発明の実施の形態1に係る大気圧プラズマ発生装置1は、アンテナ15と高周波電源11の一端との間に、可変コンデンサ14を設け、可変コンデンサ14の対抗側にインダクタ13を設け、可変コンデンサ14、インダクタ13及びアンテナ15のリアクタンス成分の和を調整し、可変コンデンサ12のリアクタンス成分と調整して高周波電源11とのマッチングを取ることにより、アンテナ15への印加電圧を大きくしている。上記構成により、アンテナ15に流れる電流とアンテナ15の対地電圧とを、ハイブリッド状態で放電ガスが流れる放電管16によるプラズマ発生により効率的に用いることが可能となる。よって、自動整合回路不要で小型、かつ、高効率のプラズマを大気圧下で発生させることが可能となる。
【0052】
なお、上記実施の形態では、可変コンデンサ12及び14、インダクタ13ならびにアンテナ15の回路構成要素のみを考慮して並列側インピーダンスと直列側インピーダンスとの整合をとる場合を説明したが、配線のインダクタンス成分等も考慮してインピーダンス整合をとることが好ましい。以下、配線のインダクタンス成分等を考慮したインピーダンス整合について説明する。
【0053】
図3は、実施の形態1の変形例に係る大気圧プラズマ発生装置の回路構成図である。同図に記載された大気圧プラズマ発生装置の回路は、図1に記載された大気圧プラズマ発生装置の回路と比較して、配線のインダクタンス成分(l〜l)が付加されている点が異なる。以下、図1に記載された大気圧プラズマ発生装置の回路と同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0054】
図3に記載された大気圧プラズマ発生装置の回路図において、可変コンデンサ12を接続する配線にはインダクタンスl及びlが付加され、インダクタ13を接続する配線には、インダクタンスl及びlが付加され、可変コンデンサ14を接続する配線には、インダクタンスl及びlが付加されている。
【0055】
この場合、並列側のインピーダンスZpは(jω(l+l)−1/jωC12)となり、直列側のインピーダンスZsは(R+jω(L13+L15+l+l+l+l)−1/jωC14)となる。ここで、Zpのリアクタンス成分が容量性の場合には、Zsのリアクタンス成分が誘導性となるようインダクタ13の値を設定し、可変コンデンサ14を調整する。また、Zpのリアクタンス成分が誘導性の場合には、Zsのリアクタンス成分が容量性となるよう、インダクタ13の値を設定し、可変コンデンサ14を調整する。
【0056】
上述したように、配線のインダクタンス成分を考慮することにより、実回路におけるインピーダンス整合の精度が向上するので、より高効率なプラズマ発生を実現することが可能となる。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1では、コンデンサ部の容量を調整し、アンテナ部に印加される対接地電圧と、放電管の終端方向の無限遠点に想定される電位0V相当の接地電圧との電位差を大きくすることにより、容量結合型のプラズマの発生効率を向上させている。これに対して、本実施の形態では、整合回路に対し連続的に接続されるアンテナ部の両端側のいずれかに直列に接続された複数のコンデンサ素子からなるコンデンサ部を配置することにより、アンテナ部に印加される対接地電圧と、放電管の終端方向の無限遠点に想定される電位0V相当の接地電圧との電位差を大きくし、容量結合型のプラズマの発生効率を向上させる。
【0058】
図4Aは、本発明の実施の形態2に係る大気圧プラズマ発生装置の概略的な回路図としての第1の構成図である。本構成図に記載された大気圧プラズマ発生装置300は、基板の上に、可変コンデンサ12及び313と、インダクタ314と、アンテナ315と、放電管316とを備える。実施の形態1に係る大気圧プラズマ発生装置1と比較して、本実施の形態に係る大気圧プラズマ発生装置300は、アンテナ315の両端側にアンテナ315と直列接続された可変コンデンサ313、インダクタ314が互いに対向するように整合回路内に配置されており、この整合回路内における可変コンデンサ313及びインダクタ314の配置関係が逆になっている点、及び、アンテナ315の構成が容量結合型である点が異なる。以下、実施の形態1に係る大気圧プラズマ発生装置1と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0059】
インダクタ314は、可変コンデンサ12の基準端子であり接地端子である一端と、アンテナ315の一端との間に直列に接続されたインダクタ素子である。可変コンデンサ313は、高周波電源11の他端とアンテナ315の他端との間に、直列に接続された複数のコンデンサ素子(図示せず)である。インダクタ314、可変コンデンサ313及び可変コンデンサ12は、高周波電源とアンテナ315とのインピーダンス整合をとるための整合回路を構成する。可変コンデンサ12及び313は、容量を変化させることにより、整合回路のインピーダンス整合を行うことができる。
【0060】
アンテナ315の他端側に直列に接続された複数のコンデンサ素子(図示せず)からなる可変コンデンサ313により、アンテナ315に印加されるアンテナ電圧が大きくなり、このアンテナ電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管の終端方向の無限遠点に想定される電位0V相当の接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマの発生効率を向上させることが可能となる。
【0061】
また、上述したリアクタンス成分の調整によりアンテナ315と高周波電源とのインピーダンス整合を予めとり、アンテナ315、インダクタ314及び可変コンデンサ313のリアクタンス成分の総和を変えなければ、可変コンデンサ12を調整することなくアンテナ315とのインピーダンス整合は継続される。よって上記整合回路に連続的に接続された連続した配線を有するアンテナ315に流れる電流は一定となり、安定した誘導結合型のプラズマを発生させることが可能となる。また、上記容量結合型のプラズマの有無により、上記整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路は不要である。
【0062】
以上のように、整合回路に対し連続的に接続されるアンテナ315の両端側のいずれかに直列に接続された複数のコンデンサ素子からなるコンデンサ部を配置することにより、アンテナ315の両端側のいずれかにかかる大きな対接地電圧による容量結合型のプラズマが発生して、効率の良いプラズマが発生する。
【0063】
図4Bは、本発明の実施の形態2に係る大気圧プラズマ発生装置の概略的な回路図としての第2の構成図である。本構成図に記載された大気圧プラズマ発生装置400は、基板の上に、可変コンデンサ12及び413と、インダクタ414と、アンテナ415と、放電管416とを備える。上述の大気圧プラズマ発生装置300と比較して、大気圧プラズマ発生装置400は、アンテナ415の構成が異なる。以下、大気圧プラズマ発生装置300と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0064】
アンテナ415は、アンテナ315と異なり、両端がインダクタ414、可変コンデンサ413及び可変コンデンサ12で構成される整合回路に接続された、連続した巻線型の配線である。これにより、放電管416において、誘導結合型のプラズマが発生する。さらに、 アンテナ415の他端側に直列に接続された複数のコンデンサ素子(図示せず)からなる可変コンデンサ413により、アンテナ415に印加されるアンテナ電圧が大きくなり、このアンテナ電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管の終端方向の無限遠点に想定される電位0V相当の接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマを発生させることが可能となる。
【0065】
以上のように、整合回路に対し連続的に接続されるアンテナ415の両端側のいずれかに直列に接続された複数のコンデンサ素子からなるコンデンサ部を配置することにより、アンテナ415を流れる電流による誘導結合型のプラズマと、アンテナ415の両端側のいずれかにかかる大きな対接地電圧による容量結合型のプラズマとが合成されたハイブリッドプラズマが発生して、効率の良いプラズマが発生する。
【0066】
(実施の形態3)
本実施の形態では、容量結合型プラズマ及び誘導結合型プラズマを合成しハイブリッドで発生させることができる、製造容易なアンテナを備える大気圧プラズマ発生装置について説明する。
【0067】
図5は、本発明の実施の形態2に係る大気圧プラズマ発生装置の構成図である。本構成図に記載された大気圧プラズマ発生装置2は、基板30の上に、高周波電源21と並列に接続される可変コンデンサ22及び複数のコンデンサ素子からなるコンデンサ部である可変コンデンサ24と、インダクタ23と、アンテナ25と、放電管26とを備える。可変コンデンサ24とインダクタ23とアンテナ25のアンテナ配線251とは直列に接続される。大気圧プラズマ発生装置2は、実施の形態1に係る大気圧プラズマ発生装置1と比較して、アンテナの構成のみが異なる。以下、大気圧プラズマ発生装置1と同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0068】
高周波電源21、可変コンデンサ22及び24、インダクタ23ならびに放電管26は、それぞれ、実施の形態1に係る高周波電源11、可変コンデンサ12及び14、インダクタ13ならびに放電管16と、構造及び機能は同じである。
【0069】
アンテナ25は、インダクタ23及び可変コンデンサ24で構成された整合回路の両端に接続されている。また、アンテナ25は、当該整合回路と連続した配線であって、高周波電源21からの高周波電流が流れ、放電管26の長手方向(管軸方向)と平行に配置された直線形状の第1のアンテナ部である第1のアンテナ配線251と、第1のアンテナ配線251に接続され、放電管26の長手方向(管軸方向)と垂直であって、基板に対する法線方向(図示、Y軸方向)から見て放電管26と交差し接触する部分を有する第2のアンテナ部である第2のアンテナ配線252と、第2のアンテナ配線252と対向し(に対して平行で)基板に対する法線方向(図示、Y軸方向)から見て放電管26と交差する部分を有し、第2のアンテナ配線252と対向、離間して配置された接地配線である、第3のアンテナ部である第3のアンテナ配線253とを有する。第2のアンテナ配線252は、一端が第1のアンテナ配線251に接続され、他端が開放されている。また、第2のアンテナ配線252に対向する第3のアンテナ配線253は、第2のアンテナ配線252より放電管26のプラズマの吹き出し(照射)側に位置する。
【0070】
上記アンテナ25を有する大気圧プラズマ発生装置2は、例えば、以下のように構成される。
【0071】
アンテナ25は、例えば、基板30の上に、平板状の金属材料にてパターニング形成される。当該基板上には、高周波電源21と接続するためのコネクタが配設されている。基板の材質としては、熱伝導性の高いアルミナ、サファイヤ、アルミナイトライド、シリコンナイトライド、窒化ホウ素、及び炭化ケイ素などが好適である。
【0072】
アンテナ25の上部には、第1のアンテナ配線251に近接し第1のアンテナ配線251に平行に、誘電体から成る放電管26が配設される。放電管26の上端は、基板の上端近傍に配置されてこの上端からガスを供給するように構成されるとともに、放電管26の下端は基板の下端よりも適当距離下方に延出され、その下端から発生されたプラズマを吹き出してプラズマ処理を行うように構成されている。
【0073】
インダクタ23は、その一端がアンテナ25、その他端が可変コンデンサ22と電気的に接続されている。
【0074】
一方、可変コンデンサ22は、その電極の一端がグランド電極側、他端がインダクタ23側に半田付けされ、複数のコンデンサ素子からなる可変コンデンサ24の外側のコンデンサ素子241、244の電極は、それぞれ、第1のアンテナ配線251と可変コンデンサ22側のグランド電極に接続されている。
【0075】
以上の構成の大気圧プラズマ発生装置2によれば、高周波電源21から整合回路を構成するインダクタ23及び可変コンデンサ24を介し、第1のアンテナ配線251に高周波電流が流れる。整合回路は、実施の形態1と同様にして、予めインピーダンス整合が取られているので、当該高周波電流により放電管26に誘導結合型のプラズマが安定的に発生する。さらに、複数のコンデンサ素子からなる可変コンデンサ24の容量値は、実施の形態1と同様にして低く設定されていることから、第2のアンテナ配線252に印加される対接地電圧が大きくなる。これにより、この対接地電圧と、第3のアンテナ配線253の接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマが安定的かつ高効率に発生する。
【0076】
以上により、第1のアンテナ配線251を流れる電流による誘導結合型のプラズマと、第2のアンテナ配線252にかかる大きな電圧による容量結合型のプラズマとが合成されたハイブリッドプラズマが発生して、効率の良いプラズマが発生する。また、第1のアンテナ配線251は、整合回路と連続配線で構成されているので、上記容量結合型のプラズマの有無により、上記整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路は不要である。さらに、アンテナ25は、巻線型や平面波状型ではなく、放電管26に沿う方向に配置される簡単な直線形状から構成されているので、例えば、銅板等の金属材料の打ち抜きや切断加工やエッチング加工にて容易かつ安価に製造することができる。
【0077】
以下、本実施の形態に係る大気圧プラズマ発生装置2に適用されるアンテナの構造の変形例について説明する。
【0078】
図6Aは、本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第1の変形例を示す構成図である。同図に記載されたアンテナ35は、図5に記載されたアンテナ25と比較して、接地された第3のアンテナ配線253が構成されていない点のみが異なる。
【0079】
このアンテナ35を、例えば図5のアンテナ25と入れ替えて構成した大気圧プラズマ発生装置によれば、高周波電源21から第1のアンテナ配線351に高周波電流が流れる。当該高周波電流により、放電管26に誘導結合型のプラズマが安定的に発生する。さらに、可変コンデンサ24の容量値は低く設定されていることから、第2のアンテナ配線352に印加される対接地電圧が大きくなる。これにより、この対接地電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管26の終端方向の無限遠点に想定される接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマが安定的かつ高効率に発生する。よって、整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路は不要である。さらに、アンテナ35は、巻線型や平面波状型ではなく、簡単な直線形状から構成されているので、銅板等の金属材料の打ち抜きや切断加工やエッチング加工にて容易かつ安価に製造することができる。
【0080】
なお、上述したアンテナ35において、放電管26に交差する第2のアンテナ配線352は1本の配線としているが、複数本の配線であってもよい。具体的には、例えば、複数の第2のアンテナ配線352の各々は、放電管26と交差し、一端が第1のアンテナ配線351に接続され、他端が開放されている。また、複数の第2のアンテナ配線352は、互いに等間隔であり平行に配置されている。このような構成であっても、図6Aに記載されたアンテナ35と同様の効果が奏され、さらに、アンテナ35と比較して容量結合プラズマの発生効率が向上する。
【0081】
図6Bは、本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第2の変形例を示す構成図である。同図に記載されたアンテナ45は、図5に記載されたアンテナ25と比較して、第1のアンテナ配線451が、放電管26の近傍ではなく、基板の法線方向(Y軸方向、平面視)から見て放電管26と接触かつ重複して配置されている点が異なる。さらに、第1のアンテナ配線451の両端に接続された第2のアンテナ配線452の両端は、整合回路に連続的に接続されている。第1のアンテナ配線451及び第2のアンテナ配線452は、高周波電源21からの高周波電流が流れる閉じた回路を構成する第1のアンテナ部を構成している。また、第1のアンテナ配線451は、少なくとも放電管26の長手方向に沿って放電管26と接触する部分を有する直線形状あるいは放電管26の長手方向に沿って連続的に放電管26の短手方向の幅内で放電管26と接触する第2のアンテナ部を構成している。
【0082】
このアンテナ45を例えば図5のアンテナ25と入れ替えて構成した大気圧プラズマ発生装置によれば、高周波電源21から第1のアンテナ配線451及び第2のアンテナ配線452に高周波電流が流れる。当該高周波電流により、放電管26に誘導結合型のプラズマが安定的に発生する。さらに、可変コンデンサ24の容量値は低く設定されていることから、第2のアンテナ配線452及び第1のアンテナ配線451に印加される対接地電圧が大きくなる。これにより、この対接地電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管26の終端方向の無限遠点に想定される接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマが安定的かつ高効率に発生する。よって、整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路は不要である。さらに、アンテナ45は、巻線型や平面波状型ではなく、簡単な直線形状から構成されているので、銅板等の金属材料の打ち抜きや切断加工やエッチング加工にて容易かつ安価に製造することができる。
【0083】
図6Cは、本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第3の変形例を示す構成図である。同図に記載されたアンテナ55は、図6Bに記載されたアンテナ45と比較して、第2のアンテナ部である第1のアンテナ配線551が、放電管26の長手方向に沿って近接配置されている点、及び、第2のアンテナ配線552の互いに対向して配置される少なくとも一部が、基板の法線方向(Y軸方向、平面視)から見て放電管26と接触かつ交差して配置されている点が異なる。さらに、第1のアンテナ配線551の両端に接続された第2のアンテナ配線552の両端は、整合回路に接続されている。第1のアンテナ配線551及び第2のアンテナ配線552は、高周波電源21からの高周波電流が流れる第1のアンテナ部を構成している。
【0084】
このアンテナ55を例えば図5のアンテナ25と入れ替えて構成した大気圧プラズマ発生装置によれば、高周波電源21から第2のアンテナ配線552を介して第1のアンテナ配線551に高周波電流が流れる。当該高周波電流により、放電管26に誘導結合型のプラズマが安定的に発生する。さらに、可変コンデンサ24の容量値は低く設定されていることから、第2のアンテナ配線552に印加される対接地電圧が大きくなる。これにより、この対接地電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管26の終端方向の無限遠点に想定される接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマが安定的かつ高効率に発生する。よって、整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路は不要である。さらに、アンテナ55は、巻線型や平面波状型ではなく、簡単な直線形状から構成されているので、銅板等の金属材料の打ち抜きや切断加工やエッチング加工にて容易かつ安価に製造することができる。
【0085】
図6Dは、本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第4の変形例を示す構成図である。同図に記載されたアンテナ75は、図5に記載されたアンテナ25と比較して、接地された第3のアンテナ配線253が構成されていない点、第1のアンテナ配線751が放電管26と近接して配置されていない点、及び第1のアンテナ751に接続され放電管26に近接して平行に配置されたアンテナ配線752を備える点が異なる。
【0086】
このアンテナ75を、例えば図5のアンテナ25と入れ替えて構成した大気圧プラズマ発生装置によれば、高周波電源21から第1のアンテナ部である第1のアンテナ配線751に高周波電流が流れる。また、第1のアンテナ配線751と放電管26とが、近傍に配置されている場合、当該高周波電流により、放電管26に誘導結合型のプラズマが発生する。一方、可変コンデンサ24の容量値は低く設定されていることから、第2のアンテナ部である第2のアンテナ配線752に印加される対接地電圧が大きくなる。これにより、この対接地電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管26の終端方向の無限遠点に想定される接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマが安定的かつ高効率に発生する。よって、アンテナ75は、巻線型や平面波状型ではなく、簡単な直線形状から構成されているので、銅板等の金属材料の打ち抜きや切断加工やエッチング加工にて容易かつ安価に製造することができる。
【0087】
図6Eは、実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第5の変形例を示す構成図である。同図に記載されたアンテナ85は、図5に記載されたアンテナ25と比較して、接地された第3のアンテナ配線253が構成されていない点、第1のアンテナ配線851が放電管26と近接して配置されていない点、及び第1のアンテナ751に接続され放電管26を覆うように配置された円筒型の第2のアンテナ配線852を備える点が異なる。
【0088】
このアンテナ85を、例えば図5のアンテナ25と入れ替えて構成した大気圧プラズマ発生装置によれば、高周波電源21から第1のアンテナ部である第1のアンテナ配線851に高周波電流が流れる。また、第1のアンテナ配線851と放電管26とが、近傍に配置されている場合、当該高周波電流により、放電管26に誘導結合型のプラズマが発生する。一方、可変コンデンサ24の容量値は低く設定されていることから、第2のアンテナ部である第2のアンテナ配線852に印加される対接地電圧が大きくなる。これにより、この対接地電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管26の終端方向の無限遠点に想定される接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマが安定的かつ高効率に発生する。
【0089】
図6Fは、本発明の実施の形態3に係る大気圧プラズマ発生装置が備えるアンテナの第6の変形例を示す構成図である。同図に記載されたアンテナ95は、図6Bに記載されたアンテナ45と比較して、第2のアンテナ配線952が、放電管26に斜めに1回の交差にて配置されている点が異なる。さらに、第2のアンテナ配線952の両端に接続された第1のアンテナ配線951の両端は、整合回路に接続されている。第1のアンテナ配線951及び第2のアンテナ配線952は、高周波電源21からの高周波電流が流れる第1のアンテナ部を構成している。
【0090】
このアンテナ95を、例えば図5のアンテナ25と入れ替えて構成した大気圧プラズマ発生装置によれば、高周波電源21から第1のアンテナ配線951及び第2のアンテナ配線952に高周波電流が流れる。当該高周波電流により、放電管26に誘導結合型のプラズマが安定的に発生する。さらに、可変コンデンサ24の容量値は低く設定されていることから、第2のアンテナ部である第2のアンテナ配線952に印加される対接地電圧が大きくなる。これにより、この対接地電圧と、放電管内に発生したプラズマが放電管より照射される放電管26の終端方向の無限遠点に想定される接地電圧との電位差が大きくなるので、容量結合型のプラズマが安定的かつ高効率に発生する。よって、整合回路の整合度の変動は比較的少ないので、自動調整回路は不要である。さらに、アンテナ95は、巻線型や平面波状型ではなく、簡単な直線形状から構成されているので、銅板等の金属材料の打ち抜きや切断加工やエッチング加工にて容易かつ安価に製造することができる。
【0091】
なお、本実施の形態において、図5に記載された可変コンデンサ24が、複数のコンデンサ素子からなるコンデンサ部でない場合であっても、本実施の形態に係る第1のアンテナ部及び第2のアンテナ部からなり容量結合型及び誘導結合型が合成されたハイブリッドプラズマを生成可能な大気圧プラズマ発生装置は構成可能である。
【0092】
以上、本発明の大気圧プラズマ発生装置について、実施の形態1〜3に基づいて説明してきたが、本発明に係る大気圧プラズマ発生装置は、上記実施の形態1〜3に限定されるものではない。実施の形態1〜3における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態1〜3に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る大気圧プラズマ発生装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0093】
例えば、実施の形態2の係る大気圧プラズマ発生装置300及び400におけるアンテナ部の構成を、実施の形態3に係るアンテナ25、35、45、55、75、85及び95に置き換えた構成も、本発明の範囲であり、同様の効果を奏する。
【0094】
なお、実施の形態3において、第1のアンテナ配線及び第2のアンテナ配線と放電管の長手方向(管軸方向)とが平行または垂直(交差)の位置関係にあることを説明したが、当該平行及び当該垂直とは、それぞれ、第1のアンテナ配線及び第2のアンテナ配線と放電管の管軸方向とのなす角度が厳密に180度及び90度であることに限定されず、常識的に許容される範囲の誤差が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の大気圧プラズマ発生装置は、基板端子の局所的な洗浄や表面改質などについて行う小型かつ高効率のプラズマ処理に有用である。
【符号の説明】
【0096】
1、2、500、600 大気圧プラズマ発生装置
11、21、511、611 高周波電源
12、22、24、313、413、512、513、612、613 可変コンデンサ
13、23、314、414 インダクタ
14 可変コンデンサ、コンデンサ部
15、25、35、45、55、75、85、95、315、415、615 アンテナ
16、26、316、416、516、616 放電管
30 基板
31 コネクタ
141 トリマコンデンサ、コンデンサ素子
142、143、144 固定コンデンサ、コンデンサ素子
251、351、451、551、751、851、951 第1のアンテナ配線
252、352、452、552、752、852,952 第2のアンテナ配線
253 第3のアンテナ配線
515 対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧下でプラズマを発生する大気圧プラズマ発生装置であって、
管軸方向に放電ガスが流れ高周波電源からの高周波電力が供給されることによりプラズマを発生する放電管と、
前記放電管に前記高周波電力を伝達するアンテナ部と、
前記高周波電源と前記アンテナ部との間に配置された整合回路とを備え、
前記整合回路は、
前記高周波電源の一端と前記アンテナ部の一端との間に接続されたインダクタと、
前記高周波電源の他端と前記アンテナ部の他端との間に接続され可変コンデンサとを備え、
前記アンテナ部は、
前記整合回路と連続した配線であって、前記高周波電源からの高周波電流が流れる第1のアンテナ部と、
少なくとも前記放電管の長手方向に沿って前記放電管と接触する部分を有する直線形状の、あるいは前記放電管の長手方向に沿って連続的に前記放電管の短手方向の幅内で前記放電管と接触する第2のアンテナ部とで構成される
大気圧プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記放電管、前記アンテナ部及び前記整合回路は、同一の基板上に配置されている
請求項1に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記第1のアンテナ部は、前記放電管と近接して配置され、両端が前記整合回路に接続され、
前記第2のアンテナ部は、前記基板に対する法線方向から見て、前記放電管と交差する部分を有し、一端が前記第1のアンテナ部に接続され、他端が開放されている
請求項2に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記アンテナ部は、さらに、
前記第2のアンテナ部と対向し、前記基板に対する法線方向から見て、前記放電管と交差する部分を有する、接地された第3のアンテナ部を備える
請求項3に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記第1のアンテナ部は、前記第2のアンテナ部を含み、
前記第2のアンテナ部は、前記基板に対する法線方向から見て、前記放電管と重複して配置され、
前記第1のアンテナ部の両端は、前記整合回路に接続されている
請求項2に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項6】
前記第1のアンテナ部は、前記第2のアンテナ部を含み、前記基板の法線方向から見て、前記放電管と交差する部分を有し、
前記第2のアンテナ部は、前記放電管と近接して配置され、
前記第1のアンテナ部の両端は、前記整合回路に接続されている
請求項2に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項7】
前記第1のアンテナ部は、前記第2のアンテナ部を含み、
前記第2のアンテナ部は、前記基板の法線方向から見て、前記放電管を横切るように配置され、
前記第1のアンテナ部の両端は、前記整合回路に接続されている
請求項2に記載の大気圧プラズマ発生装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2013−77474(P2013−77474A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217225(P2011−217225)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】