大環状トリエン化合物を含むポリマー組成物
【課題】被験体に大環状トリエン化合物を送達するのに使用するためのポリマー組成物を記載する。
【解決手段】ポリマー組成物は、大環状トリエン化合物の40−O−ヒドロキシアルキルラパマイシン誘導体を含むポリマー基材からなり、アルキル基は、7〜11の炭素原子を含む。この組成物は、ラパマイシンまたはエベロリウムスに応答する任意の状態を処置するのに有用であり、そしてポリマー組成物を使用する処置方法が、記載される。組成物は、標的部位での固形腫瘍、炎症または創傷の処置における使用のためであり、そして標的部位への注入によって局在され得る注入可能な粒子の懸濁液から構成される。
【解決手段】ポリマー組成物は、大環状トリエン化合物の40−O−ヒドロキシアルキルラパマイシン誘導体を含むポリマー基材からなり、アルキル基は、7〜11の炭素原子を含む。この組成物は、ラパマイシンまたはエベロリウムスに応答する任意の状態を処置するのに有用であり、そしてポリマー組成物を使用する処置方法が、記載される。組成物は、標的部位での固形腫瘍、炎症または創傷の処置における使用のためであり、そして標的部位への注入によって局在され得る注入可能な粒子の懸濁液から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン誘導体を含むポリマー基材から構成されるポリマー組成物に関し、ここでアルキルは7〜11個の炭素原子を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ラパマイシンは、イースター島の土壌サンプルから単離されたStreptomyces属の菌種株(Streptomyces hygroscopicus)から初めに抽出された大環状トリエン化合物である(Vezinaら、J.Antibiot.28:721(1975);米国特許第3,929,992号;同第3,993,749号)。ラパマイシンは、以下の式I:
【0003】
【化2】
に示される構造を有する。本来、抗真菌剤(米国特許第3,929,992号)としての使用を記載され、次いで、癌および腫瘍の処置における使用(米国特許第4,885,171号)、実験的な免疫病理学の予防のための使用(実験的なアレルギー性脳炎およびアジュバント関節炎;Martel,R.,Can.J.Physio.,55:48(1977)、移植の拒絶反応の阻害(米国特許第5,100,899号)および平滑筋細胞増殖の阻害(Morris,R.,J.Heart Lung Transplant,11(pt.2)(1992))を含む他の状態および障害の効果的な薬剤であることが見出されている。
【0004】
しかし、薬学的薬物としての化合物の利用は、非常に低くかつ可変性のバイオアベイラビリティーおよびその毒性によって制限されていた。また、ラパマイシンは、水に極わずかに可溶性であり(1ミリリットルあたり20マイクログラム)、インビボ送達に適切な安定な組成物に処方することが難しい。これらの問題を解決するために、化合物のプロドラッグおよび誘導体が合成されている。グリシネート、プロピオネートおよびピロリジノブチレートのプロドラッグを形成するためのラパマイシン構造のラパマイシン31位および40位を誘導体化することによって調製された水溶性プロドラッグが記載される(米国特許第4,650,803号)。当該分野に記載されるラパマイシンの多数の誘導体としては、以下が挙げられる:モノアシル、誘導体およびジアシル誘導体(米国特許第4,316,885号)、アセタール誘導体(米国特許第5,151,413号)、シリルエーテル(米国特許第5,120,842号)、ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号)ならびにアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニルの誘導体(米国特許第5,665,772号;同第5,258,389号;同第6,384,046号;WO97/35575)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、被験体の内部標的部位に対する大環状トリエン化合物の送達における使用のためのポリマー組成物を含む。組成物は、(i)20〜70重量%のポリマー基材および(ii)30〜80%重量%の以下:
【0006】
【化3】
の構造を有する大環状トリエン化合物を含み、
ここで、RはCH2−X−OHであり、ここでXは、6〜10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキルである。標的部位で細胞に対して配置される場合、組成物は、ラパマイシンまたはエベロリムス大環状トリエン化合物を含む同じポリマー基材によって達成されるよりも実質的に多くの、標的部位細胞中の化合物の取り込みのレベルを達成するのに効果的である。
【0007】
1つの実施形態において、組成物は、標的部位での固形腫瘍、炎症または創傷の処置における使用のためであり、そして標的部位への注入によって局在され得る注入可能な粒子の懸濁液から構成される。
【0008】
別の実施形態において、組成物中のポリマー基材は、生体侵食性ポリマーから形成される。
【0009】
なお別の実施形態において、組成物は、標的部位での固形腫瘍、炎症または創傷の処置における使用のために意図され、そしてポリマー基材および化合物から形成されたパッチの形態をとる。薬物含有パッチは、組織構造の表面(例えば、器官または腫瘍の外面または血管の外面あるいは内面)に配置される。
【0010】
組成物はまた、炎症した組織または創傷の処置における用途を見出し、ポリマー基材は、処置の必要のある組織への適用のための軟膏の形態をとる。
【0011】
組成物はまた、血管壁の損傷部位で再狭窄の阻害における使用を見出し、この組成物は、拡張可能な脈管ステントの血管壁接触部分上に保存されるコーティングを含む。
【0012】
別の実施形態において、組成物は、粘膜表面の細胞への大環状トリエン化合物の送達における使用が意図される。組成物中のポリマー基材は、粘膜組織に対する配置のために適切な粘膜付着性表面コーティングを有する。
【0013】
任意または全てのこれらの使用において、化合物は、1つの実施形態において、RがCH2−X−OHであり、そしてXが6〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、形態の構造を有する。別の実施形態において、RはCH2−X−OHであり、そしてXは6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0014】
別の実施形態において、ポリマー基材は、生分解性ポリマーから構成される。生分解性ポリマーの例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびそれらの混合物が挙げられる。適切なポリ乳酸としては、ポリ(l−ラクチド)、ポリ(d−ラクチド)およびポリ(dl−ラクチド)が挙げられる。
【0015】
別の実施形態において、大環状トリエン化合物は、全組成物重量の35〜80重量%の初期濃度で存在する。
【0016】
これらならびに本発明の他の目的および性質は、以下の本発明の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて読む場合、より十分に明らかとなる。
【0017】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
本明細書中で使用される場合、「ラパマイシン」とは、以下:
【0018】
【化4】
の構造の化合物が意図される。この化合物は、「シロリムス」として当該分野で公知である。
【0019】
「40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン」化合物とは、ラパマイシン化合物中の炭素番号40でヒドロキシル基がヒドロキシアルキルを含むように改変されている化合物をいう。例えば、(CH2)7OHでのヒドロキシル基の水素を置換するための40−O位での改変は、40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンとしていわれる。
【0020】
「エベロリムス」とは、以下:
【0021】
【化5】
の構造の化合物が意図され、ここで、RはCH2CH2OH(ヒドロキシエチル)である。
【0022】
「有効量(efficacious amount)」または「有効量(effective amount)」とは、処置されるべき障害または疾患状態のための処置を提供するのに十分な投薬量が意図される。これは、患者、疾患および実施される処置に依存して変更するが、目的に障害または疾患についての特定の臨床的マーカーを使用して、容易に決定される。例えば、バルーンカテーテルを用いるステントの過剰拡張による血管の移植および損傷の後、ステントの内部の新しい組織増殖の量の断面領域測定は、再狭窄の臨床的マーカーを提供する。腫瘍部位で活性薬物の投薬量の適用の後、腫瘍容積の減少または安定化は、腫瘍処置のための臨床的マーカーを提供する。器官移植または血管グラフト手術に関連する臨床的マーカーは、器官機能をモニターすること、移植の同種移植の引く続く開存性をモニターすることである。皮膚の創傷について、臨床的マーカーは、発赤(redness)、肉芽腫形成または線維症の炎症性マーカー変化を観察することである。前立腺肥大について、臨床的マーカーは、尿管妨害物の再発の任意の減少をモニターすることである。
【0023】
(II.ポリマー組成物)
本発明は、40−O−ヒドロキシアルキル(C7−C11)置換ラパマイシン化合物を含むポリマー組成物に関する。上記のように、ラパマイシンおよびその誘導体の多くは、低いバイオアベイラビリティを有し、薬剤としてのその有用性が制限される。本発明において、ラパマイシンの特定の40−O−ヒドロキシアルキル誘導体は、ポリa−構造に処方される場合、処置のために組織と接触された場合に、改善されたバイオアベイラビリティを提供することが見出されている。ポリマー組成物で使用するためのラパマイシン化合物は、40−O位が以下のように修飾された化合物である:
【0024】
【化6】
ここで、Rは、CH2−X−OHであり、Xは、6〜10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖のアルキル基である。一実施形態において、Xは、6〜10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルであるか、または別の実施形態において、7〜11個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルである。好ましい実施形態において、Xは、6個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。RがCH2−X−OHであり、Xが6、7、8、9または10炭素のアルキルである化合物は、本明細書中で、それぞれ、40−O−ヒドロキシヘプチル、40−O−ヒドロキシオクチル、40−O−ヒドロキシノニル、40−O−ヒドロキシデシルおよび40−O−ヒドロキシウンデシルと呼ばれる。
【0025】
図1は、いくつかの薬物の相対疎水性(Rm値)を示す片対数プロットである。Rm値は、疎水性の尺度として使用される(Biagi G.ら,J.Medicinal Chem.,18(9):873(1975);Ichihaski,T.ら,Pharm.Res.,11(4):508(1994))。Rm値を、逆相薄層クロマトグラフィー技術を使用して、Biagiらの一般的な方法を使用して決定した。この方法により、試験化合物は極性移動相と非極性固定相との間で分配され得る。各化合物の相対移動度の測定により、Rmが決定され得る。逆相クロマトグラフィーを、HPTLC−RP18Fユニボンド(unibond)オクタデシル修飾シリカ薄層クロマトグラフィープレート(Alltech 63077)を使用して実施した。極性移動相は、アセトンを含む種々の濃度の水(v/v)から構成された。254nmでのUVクエンチによって可視化した。以下の化合物についての結果を図1に示す:40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン(黒丸)、エベロリムス(everolimus)(40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン;白四角)ラパマイシン(黒菱形)、パクリタキセル(白三角)およびデキサメタゾン(黒四角)。各化合物のy遮断値を表1に示す。
【0026】
【表1】
このy遮断値はlogであり、従って、40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンは、40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン(エベロシムス)の約7倍疎水性であり、この40−O−ヒドロキシエチルラパマイシンは、ラパマイシンより約1倍以上疎水性である。このデータに基づいて、これらの化合物の相対水溶性は、以下の順序である:
デキサメタゾン>>パクリタキセル>>>ラパマイシン>エベロリムス>>>>>40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン。
【0027】
40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンに関して、ラパマイシンまたはエベロリムスのいずれかが40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンと類似しているよりも、ラパマイシンおよびエベロリムスは、その溶解特性、従ってそのバイオアベイラビリティ特性において互いにより類似している。40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンの乏しい水溶性は、一般に、薬剤として使用するために望ましくない候補であると考えられる。なぜなら、このような難溶性の化合物は、代表的に、乏しいバイオアベイラビリティを有し、投与のために処方することが困難であるからである。しかし、以下に示されるように、この化合物およびラパマイシンの40−O−ヒドロキシアルキル誘導体は、処置部位におけるバイオアベイラビリティのための投与のために所望され得る。
【0028】
従って、1つの局面において、本発明は、40−O−ヒドロキシアルキル(C7−C11)置換ラパマイシン化合物を患者の内部に送達する際に使用するためのポリマー組成物を提供する。代表的に、このポリマー組成物は、20〜70重量%の間の選択されたポリマー、および30〜80重量%の間の40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物から構成される。あるいは、この組成物は、30〜70重量%の間の選択されたポリマー、および30〜70重量%の間の40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を含み得る。
【0029】
上記のように、広範なポリマーおよび処方物が意図され、いくつかの特定の例が以下でより詳細に考察される。一般に、ポリマー組成物は、化合物を含み、かつ標的部位に堆積した後にこの化合物を放出する一連の薬物レザバとして働く。
【0030】
(ポリマー粒子)
例示的なポリマー組成物は、注射によって、またはカテーテルのようなデバイスを使用する堆積によってインビボで配置されるのに適したポリマー粒子の処方物である。このポリマー粒子は、ミクロ細孔性、マクロ細孔性または非細孔性であり得、そして難水溶性の40−O−ヒドロキシラパマイシン化合物を保持し得るポリマーから形成され得る。
【0031】
細孔性ポリマー粒子は、粒子の外側と内側の細孔空間との間の連絡のための粒子表面に向かって開いた相互連結細孔を有する。このようなマクロ細孔性レザバの形成のための例示的な粒子は、例えば、米国特許第5,135,740号(本明細書中で参考として援用される)に記載される。簡単に述べると、細孔性粒子は、例えば、液体−液体系における懸濁重合によって形成される。一般に、モノマーおよび重合触媒を含む溶液(これは水と不混和性である)が形成される。この溶液と混和性であるが水と不混和性の不活性溶媒が、この溶液に含められる。次いで、この溶液は、水溶液に懸濁され、この水溶液は、一般に、懸濁または乳化を促進する添加剤(例えば、界面活性剤および分散剤)を含む。一旦、所望のサイズの個々の液滴を含む懸濁液が確立されると、代表的には、高温または照射によってこれらの反応物を活性化することによって、重合が行われる。一旦、重合が完了すると、得られた固体粒子が、この懸濁液から回収される。これらの粒子は、固体で球形の細孔性構造、すなわち不活性液体の周りに形成され、それにより細孔ネットワークを形成しているポリマーである。ポロゲン(porogen)、すなわち細孔形成剤として働く不活性溶媒は、粒子の細孔を占有する。ポロゲンは、実質的に除去される。
【0032】
マクロ細孔性粒子はまた、生分解性ポリマーまたは非分解性ポリマーのいずれかから溶媒を蒸発させることによって調製され得る。溶媒蒸発プロセスについて、所望のポリマーが有機溶媒に溶解され、次いで、この溶液が所望の粒子サイズの塩化ナトリウム結晶の層の上に注がれる(Mooney,ら,J.Biomed.Mater.Res.37:413−420,(1997))。この溶媒は、一般に、蒸発によって除去され、そして得られる固体ポリマーが、水に浸されて、塩化ナトリウムが除去されて、細孔性ポリマーレザバが得られる。あるいは、塩化ナトリウム結晶が、撹拌によってポリマー溶液中に分散されて、塩化ナトリウム結晶の均一な分散液が得られ得る。次いで、この分散液が、撹拌しながら、ポリマー用の非溶媒に押し出され、塩化ナトリウム結晶の周りにこのポリマーの液滴が沈殿する。この固体ポリマー粒子は、濾過または遠心分離によって回収され、次いで水に浸され、塩化ナトリウムが除去され、細孔性ポリマーレザバが得られる。塩化ナトリウムに対する代替物としては、任意の非毒性の水溶性の塩または低分子量の水溶性ポリマー(これは除去されて所望の間隙率を生じ得る)が挙げられることが理解される。
【0033】
粒子形成の間にポリマー中にこの化合物を含めることによって、または粒子形成の後に粒子を充填することによって、これらの細孔性粒子には1種以上の薬物が充填され得る。粒子形成後の充填(post−particle loading)は、例えば、薬物化合物を溶媒(これは薬物を溶媒和するように作用するが、ポリマーに対して非溶媒である)に溶解し、そしてこの粒子および薬物溶液を撹拌することによって混合することにより実施され得る。この薬物溶液は、粒子に吸収され、自由流動粉末が生じる。次いで、これらの粒子は、必要に応じて、溶媒除去のために処理され得る。
【0034】
別の例示的なポリマー粒子組成物は、非細孔性粒子(例えば、その中に含まれるかまたは分散された化合物を有するマイクロカプセルおよび微粒子)である。マイクロカプセルおよび微粒子の両方は、薬剤および薬物送達産業において周知である(例えば、Baker,R.W.,CONTROLLED RELEASE OF BIOLOGICALLY ACTIVE AGENTS,John Wiley & Sons,NY,1987;Ranade V.およびHollinger,M.,DRUG DELIVERY SYSTEMS,CRC Press,1996を参照のこと)。マイクロカプセルとは、代表的に、ポリマー殻膜により囲まれた活性薬剤のレザバをいう。微粒子とは、代表的に、治療剤がその粒子全体に分散しているモノリシック系をいう。しかし、これら2つの定義の間に含まれる多くの処方物(例えば、マイクロカプセルの凝集物)が存在し、このような処方物もまた本明細書における使用に適切である。
【0035】
マイクロカプセルおよび微粒子は、生分解性ポリマーまたは非生分解性ポリマーから調製され得る。マイクロカプセルは、多数の方法(濃縮、界面重合、溶媒蒸発、および物理的カプセル化法が挙げられる)によって容易に形成される(Baker,R.W.,CONTROLLED RELEASE OF BIOLOGICALLY ACTIVE AGENTS,John Wiley & Sons,NY,1987)。マイクロカプセルは、当該分野で公知の多数の技術によって調製され、1つの簡単な方法は、単に、分散された治療剤を含むポリマーフィルムを適切なサイズに粉砕することである。ポリマー溶液から粒子性治療剤を噴霧乾燥することは、別のアプローチである。生物学的に活性な薬剤のカプセル化のための特定の手順が、米国特許第4,675,189号および米国特許出願20010033868(これらは本明細書中で参考として援用される)に開示される。
【0036】
粒子形成に適切なポリマーは、多く、多様である:一般的な選択基準は、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を送達し得るポリマーである。例示的なポリマーとしては、ポリ(d、l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、メタクリレートポリマー(例えば、ポリブチルメタクリレートなど)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ε−カプロラクトン、エチルビニルヒドロキシル化アセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエステルアミド、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリマーの全ては、安全性の経歴および全身循環における低い炎症性用途を有する。代表的に、20〜70重量%の間のポリマーが、30〜80重量%の間の40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物と結合して、ポリマー組成物を形成する。
【0037】
粒子のサイズは、細孔性であろうと非細孔性であろうと、直径約0.1ミクロンから約100ミクロンまで、好ましくは約0.5ミクロンから約40ミクロンまで、非常に広く変動し得る。これらの粒子は、ニートな粒子として投与され得るか、またはゲル、ペースト、軟膏剤(ointment)、軟膏(salve)または標的部位における塗布のための粘性液体として処方され得る。
【0038】
ポリマー粒子により例示されるように、本発明のポリマー組成物は、ポリマー組成物と標的部位における組織との接触のために、組織標的部位に塗布されるかまたは配置され得る組成物である。当業者は、これらのポリマー粒子が、標的組織との接触を達成する組成物の一例にすぎないことを理解する。多量の疎水性化合物を送達し得るポリマーは、フィルム、パッチ、ペースト、軟膏またはゲルに処方され得、これらの全ては、標的部位に配置され得るかまたは塗布され得る。例えば、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を負荷された、ポリマーから調製される簡単なポリマーパッチが、処置の必要な組織表面に配置され得る。このような組織表面は、血管、器官、腫瘍、または損傷したかまたは創傷を有する身体表面であり得る。
【0039】
(粘膜接着性ポリマー組成物)
別の実施形態において、ポリマー組成物は、粘膜組織に隣接した配置のために、粘膜接着特性を有するポリマー基材からなる。身体内の粘膜組織としては、眼の袋小路、頬空洞、鼻、直腸、膣、歯周ポケット、腸および結腸が挙げられる。粘膜接着送達システムは、粘膜接着性ポリマー内に含まれる化合物の投与のために、粘膜組織への接着を示す。
【0040】
種々のポリマー組成物が、粘膜送達処方物において使用される。40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物とともに使用するために特に興味深いものは、親水性特性と疎水性特性との組み合わせを有する粘膜接着剤である。口腔粘膜に接着するための、粘着性の炭化水素ポリマーにおいて、ペクチン、ゼラチン、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムとの組み合わせである接着剤が、例示的である。親水性優勢および疎水性優勢を有する他の粘膜接着剤としては、例えば、軟膏基剤(例えば、分散したポリエチレンを含有する鉱油(米国特許第4,948,580号))中に分散された、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)とゼラチンとのコポリマーが挙げられる。別の親水性/疎水性系は、米国特許第5,413,792号に記載されており、ここで、ポリ有機シロキサンと水溶性ポリマー材料とのペースト様の調製物が開示される。
【0041】
本発明において、粘膜接着性ポリマー基剤および40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物からなるポリマー組成物が意図される。この粘膜接着性ポリマー組成物は、粘膜表面に隣接した配置に適切な送達システムに処方される。この化合物は、粘膜組織に隣接して配置される場合、ポリマー組成物から組織へと溶出される。この送達システムは、処置されるべき組織の表面に配置されるためのパッチの形態を採り得る。この組織は、器官、脈管、腫瘍、または処置を必要とする任意の身体の表面であり得る。
【0042】
(脈管内ステント)
本発明において使用するための別の例示的なポリマー組成物は、拡張可能な脈管ステント上に担持されるポリマーコーティングである。図2および3は、40−O−置換されたラパマイシン化合物を担持するポリマー組成物でコーティングされた、脈管内ステントの概略図である。これらの図において、ステント20が、そのステントの収縮状態(図2)および拡張状態(図3)において示される。このステントは、図3および4を参照して以下にさらに記載されるように、構造部材または本体22、および化合物を保持および放出するための外側コーティングを備える。
【0043】
図2および3に示される実施形態において、ステント本体は、フィラメント(例えば、部材24、26)によって、複数の連結された管状部材から形成される。各部材は、拡張可能なジグザク、鋸歯状、または正弦波状の構造を有する。この部材は、隣接する部材の頂点および谷底をつなぎ合わせる軸連結(例えば、連結28、30)によって連結される。理解され得るように、この構成によって、ステントが、ステントの長さをほとんどまたは全く変化させることなく、図2に示される収縮された状態から、図3に示される拡張された状態に拡張され得る。同時に、隣接する管状部材の頂点と谷底との間の比較的まれな連結によって、ステントが、曲げに適応し得る。この特徴は、ステントが、カテーテル内でまたはカテーテル上で、その収縮された状態で脈管部位に送達される場合に、特に重要であり得る。ステントは、0.5〜2mmの間、より好ましくは、0.71〜1.65mmの間の代表的な収縮状態の直径(図2)、および5〜100mmの間の長さを有する。図3に示されるような拡張状態において、ステントの直径は、その収縮状態のおけるステントの直径の少なくとも2倍、8〜9倍までである。従って、0.7〜1.5mmの収縮直径を有するステントは、2〜8mmの間またはそれ以上の選択された拡張状態へと半径方向に拡張され得る。
【0044】
連結された拡張可能な管状部材のこの一般的なステント−本体構造を有するステントは、例えば、PCT公開番号WO 99/07308に記載されるように、公知であり、これは、本出願と同一人によって所有され、そして本明細書中において明確に参考として援用される。さらなる例は、米国特許第6,190,406号、同第6,042,606号、同第5,860,999号、同第6,129,755号、または同第5,902,317号(これらの特許は、本明細書中において参考として援用される)に記載される。あるいは、ステントの構造部材は、連続的なラセンリボン構成(すなわち、ステント本体が、単一の連続なリボン様コイルから形成される)を有し得る。ステント本体の基礎的な要件は、そのステント本体が脈管損傷部位において展開される際に拡張可能であること、およびそのステント本体が、脈管標的部位を裏打ちする脈管壁(すなわち、組織の内側層、外膜層および内皮層)に薬物含有コーティングに含まれた薬物を送達するために、そのステント本体の外側表面上に薬物含有コーティングを受容するのに適していることである。好ましくは、この本体はまた、格子構造または開構造を有し、外側から内側にステントを「通って」内皮細胞壁が内殖することができる。
【0045】
このステントフィラメントは、ポリマーマトリックス、およびこのマトリックス内に分布されて少なくとも数週間の期間(代表的に、4〜8週間、そして必要に応じて、2〜3ヶ月の期間、またはそれより長期間)にわたってこのステントから放出される40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物からなる薬物放出コーティングでコーティングされる。
【0046】
図4は、拡大された断面図において、全ての側、すなわち、頂部(ステント本体の外部表面を形成するフィラメント側)底部(ステントの内部表面を形成するフィラメント側)および対向するフィラメント側において、完全にフィラメントを覆うコーティング32を有するステントフィラメント24を示す。以下にさらに考察されるように、コーティングは代表的に3〜30ミクロンの厚さを有し、この厚さはコーティングを形成するポリマーマトリクス材料の性質ならびにポリマーマトリクスおよび活性化合物の相対量に依存する。理想的には、コーティングは、可能な限り薄く(例えば、15ミクロン以下)作製されて、損傷部位での脈管中のステントプロファイルを最小化する。
【0047】
コーティングはまた、標的部位にて放出される薬物のむらのない分散を促進するために、上部(外部)表面を横切る厚さにおいて比較的均一であるべきである。ステントフィラメント上の比較的むらのないコーティング厚を作製するための方法が、以下で議論される。
【0048】
ステントフィラメントとコーティングとの間に配置されるポリマー下層34がまた、図4に示される。下層の目的は、コーティングをステント本体フィラメントに接着させることを助けること、すなわち、フィラメント上のコーティングの安定化を助けることである。以下で見られるように、コーティングが高いパーセンテージの化合物(例えば、35〜80重量パーセント化合物)を含むポリマー基材から形成される場合、この機能は特に価値がある。1つの例示的な下層ポリマーは、生体侵食性(ポリ−dl−ラクチド)から形成されるポリマー基材と結合して使用されるパリレンである。他の適切なポリマー下層は、エチレンビニルアルコール(EVOH)、paryLASTTM、パリレン、シリコン、TEFLON(登録商標)TM、および他のフッ素樹脂であり、これらは、プラズマコーティングもしくは他のコーティング、または堆積プロセスにより金属ステント表面上に堆積され得る。この下層は、1〜5ミクロンの代表的な厚さを有する。
【0049】
基材を形成するポリマーは、任意の生体適合性ポリマー物質であり得、この物質から、閉じ込められた化合物が、拡散により放出され得、そして/またはポリマーマトリクスの腐食により放出され得る。基材をコーティングするための2つの周知の非腐食性ポリマーは、ポリメチルメタクリレートおよびエチレンビニルアルコールである。ステント本体への塗布のために適切な形態においてこれらのポリマーを調製するための方法が、例えば、US2001/0027340A1およびWO00/145763において記載され、これらは、参考として本明細書中で援用される。一般に、ポリマーへの薬物添加の限界は、約20〜40重量パーセントの範囲においてである。
【0050】
生体侵食性ポリマー、特に、ポリ−dl−ラクチドポリマーはまた、基材物質をコーティングするために適切である。本発明の、1つの一般的な実施形態において、コーティングは、生体侵食性ポリ−dl−ラクチドポリマー基材、すなわち、ポリ−dl−乳酸ポリマーであり、これは、ポリマー基材中に分散される活性化合物の乾燥重量の80%までを含み得る。より一般的には、コーティングは、活性化合物の乾燥重量の35〜80%およびポリマーの乾燥重量の20〜65%を含む。例示的なコーティングは、25〜50%の乾燥重量ポリマーマトリックスおよび50〜75重量パーセントの活性化合物を含む。このポリマーは、以下で詳説されるように、ステントフィラメント上の堆積のための活性化合物とともに処方される。
【0051】
3〜15ミクロンの間のコーティング厚を有する、1つの好ましいコーティングが、25〜50重量パーセントのポリ−dl−ラクチドポリマー基材および50〜75重量パーセントの大環状トリエン免疫抑制化合物から形成される。下層が、パリレンから形成され、1〜5ミクロンの間の厚さを有する。この実施形態は、代表的にステント長(mm)当たり約15マイクログラムの薬物と等しい量の薬物を含む。
【0052】
例示的な実施形態において、ポリマーコーティングは、15〜35重量パーセントの腐食性ポリマー基材または非腐食性ポリマー基材および65〜85重量パーセントの40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物から形成される。ポリマーコーティング厚は、好ましくは、10〜30ミクロンであり、ステントは1〜5ミクロンのポリマー下層(例えば、パリレン下層)を含み得る。この実施形態は、代表的にステント長(mm)当たり約15マイクログラムの薬物に等しい量の化合物を含む。
【0053】
コーティングは、さらに、関連の疾患または状態を処置するため、あるいは生じ得る任意の予測された二次状態を処置するために有効な第2の生物活性剤を含み得る。例えば、40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシンが、再狭窄の処置のために投与される場合、もとの脈管損傷、ステントの存在によって刺激され得る血液に関連する事象(例えば、凝固)を最小にするため、または損傷部位における脈管の治癒を改善するための第2の化合物が、含まれ得る。例示的な第2の薬剤としては、可溶性結晶形態の抗血小板薬剤、フィブリン溶解性薬剤、または血栓崩壊性薬剤、あるいは内皮細胞の治癒を刺激し、かつ平滑筋細胞の増殖を制御するNOドナーが挙げられる。例示的な抗血小板薬剤、フィブリン溶解性薬剤、または血栓崩壊性薬剤は、ヘパリン、アスピリン、ヒルジン、チクロピジン(ticlopidine)、エプチフィバチド(eptifibatide)、ウロキナーゼ、ストレプドキナーゼ、組織プラスミノゲン賦活剤(TPA)、またはそれらの混合物である。40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシンが、抗腫瘍剤としての使用を意図される場合、新生物疾患の化学療法のために通常使用される第2の薬剤が含まれ得る。例示的な第2の化学療法剤としては、パクリタキセル、白金化合物、シタラビン、5−フルオロウラシル、テニポシド、エトポシド、メトトレキサート、ドキソルビシンなどが挙げられる。ステントコーティング中に含まれる第2の薬剤の量は、その薬剤が治療的効果を提供する必要がある期間によって決定される。第2の薬剤は、公知の方法に従って、ステント本体フィラメントに塗布されるコーティング処方物に含まれ得る。
【0054】
(生体侵食性ステント)
別の一般的な実施形態において、ステント本体およびポリマーコーティングの両方が、生物侵食性ポリマーで形成され、経時的にステントが完全に再吸収されることを可能にする。ステントは、好ましくは、ステント本体を形成しているらせん状のリボンフィラメントを有する拡張可能なコイル型ステントである(示さず)。自己拡張可能なコイルステントは、血管中への移植についての米国特許第4,990,155号に記載されており、本明細書に参考として援用される。
【0055】
コイル型ステントは、このコイルによって処置されるべき血管の内腔のサイズよりも少し大きいように設計されている前形成物(preform)の最終的な拡張直径を有する前形成物を使用して形成され得る(3.5mm OD±1mmが、冠状動脈に対して一般的である)。より一般的には、ステントは、成形によって拡張した形態として形成され得、カテーテルの先端部に取り付けられた場合、血管に送達するためにステントの長軸の周りにねじるか、またはステントに半径方向に力を加えて収縮状態にすることによって収縮状態にする。ステントは、好ましくは約100ミクロンと1000ミクロンとの間の全厚、および0.4cmと10cmとの間の全長を有する。実際は、この型の生体侵食性ステントの重要な利点は、比較的長いステント(例えば、3cmを超える長さ)が、血管傷害部位に容易に送達され得、配置され得ることである。
【0056】
編み込まれた生体侵食性ポリマーフィラメント(例えば、ポリ−l−ラクチド)で形成されるバルーン拡張可能ステントを形成するための方法が、報告されている(米国特許第6,080,177号)。デバイスバージョンもまた、薬物を放出するように適合される(米国特許第5,733,327号)。
【0057】
ステント形成するための好ましいポリマー材料は、ポリ−l−ラクチドまたは、ポリ−dl−ラクチドである(US6,080,177)。上記のように、ステント本体およびコーティングは、一面に含まれる抗再狭窄性化合物を有する単一の拡張可能な繊維状ステントとして、一体として形成され得る。あるいは、下のセクションで詳述するように、生体侵食が可能なコーティングが、前形成された生体侵食性本体に適用され得る。後者の場合において、ステント本体は、1種類の生体侵食が可能なポリマー(例えば、ポリ−l−ラクチドポリマー)から形成され得、そしてコーティングは、第2のポリマー(例えば、ポリ−dl−ラクチドポリマー)から形成され得る。前形成されたステントに対して塗布された場合、このコーティングは、実質的に前述と同じ組成的特徴および厚さ特徴を有し得る。
【0058】
図5は、別々に形成された本体およびコーティングを有する、まさに記載した種類の生体侵食性ステントにおけるフィラメント(例えば、らせん状リボン)の断面図を示す。この図は、生体侵食性コーティング38ですべての側面がコーティングされた内部の生体侵食性ステントフィラメント36を示す。例示のコーティングは、ポリ−dl−ラクチドで形成され、20〜40重量%の間で40−O−置換ラパマイシン化合物、および60〜80重量%のポリマー基材を含む。別の一般的な実施形態において、このコーティングは45〜75重量%の化合物、および、25〜55重量%のポリマーマトリクスを含む。
【0059】
生体侵食性ステントは、大きな閉塞が存在する場合に、血管形成用バルーンによる脈管の先立つ拡張と組み合わせて、または、将来重要な遮断を生じる高いリスクを有する患者への予防的移植としてのいずれかで、一つのデバイスで全脈管を処置できるという独特の利点を有する。このステントは完全に生分解性であるので、「フルメタルジャケット」、すなわち金属性基材を含む薬物溶出ステントのひものようには、後の複雑でない脈管の手術に対する患者の機会に影響しない。
【0060】
第2の薬剤(例えば、上記のような薬剤)は、移植した後で所望の期間にわたりコーティングから放出されるために、コーティングに取り込まれ得る。あるいは、第2の薬剤が使用される場合、それは、ステント本体に塗布されたコーティングが、ステント本体の内部表面を覆っていない場合に、ステント本体フィラメントに取り込まれ得る。金属性フィラメントステント本体に関して下に記載されるコーティング方法もまた、ポリマーフィラメントステント本体を覆うための使用に適している。
【0061】
(ステントコーティング方法)
ここで図面をより詳細に参照して、図5Aおよび5Bは、本発明に従うステントコーティングプロセスの概略図である。ポリマー溶液40を、ポリマーを親和的溶媒に溶解させることで作製する。40−O−置換ラパマイシン化合物および、所望の場合には第2の薬剤を、同じ溶媒または異なる溶媒を使用する懸濁液または溶液のいずれかとして、この溶液に加える。この完成した混合物を、耐圧性リザーバ42に入れる。リザーバを流体加圧ポンプ44に接続する。
【0062】
加圧ポンプは、溶媒混合物をプログラムした速度で溶液送達管46を通って移動させ得る、任意の圧力源であり得る。この加圧ポンプ44は、正確分配システムの分野では周知のように、微小コントローラ(示さず)の制御下にある。例えば、このような微小コントローラは、パーソナルコンピュータによりRS−232C連絡インターフェイスを通じて制御可能である、4−Axis Dispensing Robot Model 番号I&J500−RおよびI&J750−R(I&J Fisnar Inc,Fair Lawn,NJから入手可能)、または正確分配システム(例えば、Automove A−400(Asymtek、Carlsbad,Caから入手可能))を含み得る。RS232Cインターフェイスを制御するための適切なソフトウェアプログラムは、Fluidmove system(これもまた、Asymtek Inc、Carlsbad,Caから利用可能)を含み得る。
【0063】
ステントの表面に溶媒混合物を送達するための溶液送達チューブ48が、レザバ42に接着される(例えば、このレザバの底部で)。加圧可能レザバ42および送達チューブ48は、矢印X1で示されるように、ステントの長手軸に沿って、溶媒送達チューブを小さなステップで(例えば、1ステップあたり0.2mmで)、または連続的に移動させ得る可動支持体(示さず)に搭載される。加圧可能レザバ42および送達チューブ46についての可動支持体もまた、小さなステップで送達チューブの先端部(遠位端部)を移動させて、マイクロフィラメント表面により近づけ得るか、または矢印Y1で示すように、マイクロフィラメント表面から遠ざけ得る。
【0064】
コーティングされていないステントは、少なくとも1つの端部においてこのステントの内と側表面接触している回転チャックによって掴まれる。ステントの軸回転が、当該分野で周知のようなチャックへのステッパーモーターの接着により、小さな角度ステップ(例えば、1ステップあたり0.5度)で達成され、送達チューブによるコーティングのために、このステント構造の最上部の表面を再配置し得る。所望の場合には、このステントは、連続的に回転され得る。少量流体送達デバイスの正確な配置の方法は、X−Y−Z溶媒分配システムの分野において周知であり、本発明に援用され得る。
【0065】
流体加圧ポンプの作用、流体送達チューブのX1およびY1への配置、ならびにステントのR1への配置は、代表的には、デジタル式コントローラーおよびコンピューターソフトウェアプログラムによって協調され得、それによって、正確な要求量の溶液が、ステント表面上の所望の任意の位置に溶着され、そこで溶媒が逃れ得、ステント表面にポリマーと試薬による硬化したコーティングが残る。代表的には、溶媒混合物の粘度は、溶媒量を変えることによって調製され、2センチポアズ〜2000センチポアズの範囲であり、代表的には300〜700センチポアズであり得る。あるいは、送達チューブは、固定位置に保持され得、ステントが、回転移動に加えて長手軸方向に沿って移動され、コーティングプロセスを達成し得る。
【0066】
X−Y−Z配置テーブルおよび可動支持体は、I&J Fisnarから購入され得る。好ましい寸法の溶液送達チューブは、好ましくは、適切な固定コネクタに搭載された18〜28ゲージの間のステンレス鋼ハイポチューブ(hypotube)である。このような送達チューブは、East Providence、RIのEFD Incから取得され得る。特定の目的の先端部についてはEFDの選択ガイドを参照のこと。好ましい先端は、再注文番号5118−1/4−B〜5121−1/4−B「Burr−free passivated stainless steel tips with 1/4”length for fast point−to−point dispensing of particle−filled or thick materials」、再注文番号51150VAL−B「Oval stainless steel tips apply thick pastes,sealants,and epoxies in flat ribbon deposits」、および再注文番号5121−TLC−B〜5125−TLC−B「Resists clogging of cyanoacrylates and provides additional deposit control for low viscosity fluids.Crimped and Teflon lined」である。使い捨て可能な加圧可能溶液レザバはまた、EFDのストック番号1000Y5148〜1000Y5152Fからも入手可能である。本発明と共に使用するための代替的な先端は、約0.0005〜0.002インチ(例えば、0.001インチ)の内径(I.D.)を有するガラスマイクロキャピラリーであり、VWRカタログ番号15401−560「Microhematocrit Tubes」(長さ60mm、内径0.5〜0.6mm)から入手可能である。
【0067】
チューブはさらに、ブンセンバーナーのもとで引張られ、ポリマー/薬物/溶媒混合物の正確な塗付のために所望のI.D.を達成する。ステッパーモーター、およびXYZテーブルを操作するためのプログラム可能なマイクロコントローラーは、Asymtek、Inc.から入手可能である。協調的に機能してコーティングを形成する1種類より多くの流体配分チューブの種類の使用、あるいは異なる先端部を備えるか、またはコーティングを形成するための同じプロセスにおいて異なる粘度の溶液もしくは異なる複数の溶液による化学物組成を含む1つより多くの可動溶液レザバの代替的な使用は、本発明の範囲内である。チャックおよびステッパーモーターシステムは、Edmund Scientific of Barrington、NJから購入され得る。
【0068】
代表的には、上記のように、コーティングは、ステントの外側の支持体表面(単数または複数)上に直接的に塗付され、図6Aおよび6Bに示すような、上述の本発明のコーティングシステムに適用される制御方法に依存して、ステントの内側表面(単数または複数)の全体または一部をカバーするかもしれないし、しないかもしれない。後者の図は、フィラメント50の頂部および側部領域へのコーティング材料52の塗付を示す。あるいは、コーティング物またはコーティング混合物はまた、ステントの内側表面に直接的に塗付され得る。薄い送達先端は、ステント構造の壁中の1つ以上のカットオフ領域(すなわち、ウインドウ)を貫通し得、それによって、所望の領域の内側表面上にコーティング混合物を直接的に塗付し得る。この方法において、フィラメントの外側側面部および内側側面部へ、異なる薬物成分を有する異なるコーティング材料を塗付し得る。例えば、外側のフィラメント表面上のコーティングは、40−O−置換ラパマイシン化合物を含み得、内側のフィラメント表面上のコーティングは、1種類の上記の二次試薬または別の40−O−置換ラパマイシン化合物を含み得る。ステントが、十分に大きな直径を有する場合、薄い「L形状」送達先端は、内側の表面へコーティングを塗付する目的のために、ステントの長手軸に沿ってステントの開端部中に挿入され得る。
【0069】
本発明における使用のためのポリマーとしては、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ε−カプロラクタム、エチルビニルヒドロキシル化アセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ならびに、これらのコポリマーおよびこれらの混合物(クロロホルムまたはアセトン、あるいは他の適切な溶媒に溶解される)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリマーはすべて、全身循環における安全な使用および低炎症性の使用の歴史を有している。
【0070】
金属製ステント表面にイオン結合する40−O−置換ラパマイシン化合物の非ポリマー性コーティングもまた、本発明において使用され得る。
【0071】
記載したコーティングシステムを使用することで、ステントの頂部表面、側部表面、および内側表面の全てをコーティングすることが可能であることが、発見された。ポリマーに対する溶媒の適切な比を注意深く選択することによって、溶液の粘度が調節され、図6Bに示すように、溶液のいくらかが、支柱の側部を下へと移動し、固形化する前に底部表面に実際に至る。ステントの縁に近い送達チューブの休止時間を制御することで、ステントの縁または底部をコーティングするポリマーの量を増大または減少させ得る。図4に示す実施形態において、純粋なポリマーおよび溶媒からなる下部層34が、最初に、本発明のコーティングシステムを使用してステント表面24に塗付され、溶媒が蒸発され得る。次いで、生物活性試薬を含むポリマーからなる第2層32が、塗付される。
【0072】
上記のように、二次試薬が、ポリマー混合物中に取り込まれ得る。例えば、結晶形態のヘパリンが、コーティング中に取り込まれ得る。へパリンの結晶は、およそ1〜5ミクロンの粒子サイズにまで微細化され、ポリマー溶液中に懸濁液として添加される。適切な形態のへパリンとしては、本発明のプロセスに従って塗付された場合に、哺乳動物宿主において生物活性を示す結晶形態のへパリン(ヘパリン塩(すなわち、へパリンナトリウムおよび低分子量形態のへパリン、ならびにそれらの塩)が挙げられる)である。図9に見られるように、血管壁内へ薬物送達ステントが配置される場合、硬化したポリマーのコーティング表面の近くでヘパリンの結晶が溶解し始め、ポリマーの多孔度を増大させる。ポリマーがゆっくりと溶解するにつれて、より多くのへパリンおよび生物活性試薬が、制御された様式で放出される。
【0073】
しかし、図9を参照すると、ステントの内側表面をコーティングすることが常に望ましいわけではないことが、理解されるべきである。例えば、ステントの内側表面をコーティングすることによって、デバイスの縮れた送達プロファイルを増大させ、小血管における運動性を小さくする。そして、脈管内への移植後、内側表面は、ステントを通る血流によって直接的に洗浄され、内側表面上の任意の薬物を放出させ、全身循環中へと消失する。そのために、図4および5に示す実施形態において、バルクの硬化したポリマーおよび試薬が、ステント支持体の外側環境に配置され、そして二次的にその側部に配置される。好ましい実施形態において、最小量のポリマーおよび試薬のみが、ステントの内側表面上に塗付される。所望の場合、ステントの内側表面の少なくとも一部が、コーティングされないか、または曝露されることもまた可能である。
【0074】
さらに、図4および5のコーティングは、選択的な様式で、ステントフィラメント表面に配置され得る。コーティングされるセクションの深さは、組織に呈示するために利用可能である生物活性コーティングの体積に対応し得る。特定の領域(例えば、ステントの展開の間に高いひずみレベルを受け得る領域)からコーティングを制限することが、有利であり得る。
【0075】
均一な下層が、最初に、ステント表面に配置されて、生物活性因子を含有するコーティングの接着を促進し得、そして/またはステント上のポリマーコーティングの安定化を補助し得る。プライマーコートは、当該分野においてすでに公知であるような方法のいずれかを使用することによって、または本発明の精密分配システムによって、塗布され得る。プライマーコートを、異なるポリマー材料(例えば、パリレン(ポリ(ジクロロ−パラ−キシリレン))、またはベース金属基板と、生物活性因子を含有するコーティングとの両方に対して良好な接着を示す任意の他の材料)を使用して塗布することもまた、本発明の範囲内である。パリレン(ポリ(ジクロロ−パラ−キシリレン))は、当該分野において周知であるように、プラズマ技術または蒸着技術によって堆積され得る(米国特許第6,299,604号を参照のこと)。本発明の1つの実施形態において、ヘパリンを含有するコーティングの島または層が、ステントの内側表面に形成され、そして上記のような本発明の薬物を含有する抗増殖コーティングが、ステントの外側表面に形成される。
【0076】
高い薬物/ポリマー基材比を有するコーティングを形成することが望ましい場合、例えば、薬物が、金属ステント基材上のコーティングの40〜80重量%を構成する場合、下層をステントフィラメント上に形成して、基材に対してコーティングを安定させ、そしてしっかりと付着させることが有利である。下層は、さらに加工され得、その後、コーティング材料が、適切な溶媒(例えば、アセトン、クロロホルム、キシレン、またはこれらの混合物)中で膨潤させることによって、堆積される。このアプローチは、エベロリムス(everolimus)対ポリ−dl−ラクチドの高い比を有するステントの調製について、実施例5に記載される。
【0077】
ここで、パリレン下層は、プラズマ堆積によって、ステントフィラメント上に形成され、次いで、この下層は、キシレン中で膨潤され、その後、コーティング材料の最終堆積がなされる。この方法は、5〜10ミクロンのみの厚さを有するコーティングにおいて、ポリ−dl−ラクチドポリマー基材中に、1つの場合においては50%の薬物、そして別の場合においては75%の薬物を含有するコーティングを製造する際に、有効であった。
【0078】
上に記載されるように、本発明のコーティングシステムを使用して、完全に生体侵食性のステントを製造することもまた、本発明の範囲内である。これは、頂部が開いた「C字型」螺旋チャネル(この中に、分配システムがポリマーを堆積させ得る)を使用して、形成されるべきステントの形状に管状前形成物を作製することによって、達成され得る。このプレフォームは、その外径が開いており、その結果、このポリマーは、分配チューブの代表的には1回の通過(しかし必要であればまた、複数の通過)を使用して、プレフォーム内に堆積され得、一方で、ポリマーがプレフォームによって閉じ込められた位置で、ステント構造体の均一な縁部を作製する。このプレフォームは、このように作製される生分解性のステントを溶解しない溶媒中で可溶性である。ポリマーが堆積され、そしてポリマー溶液の溶媒が蒸発した後に、このアセンブリは、プレフォームを溶解する溶媒中に入れられて、完成したステント構造体を解放し得る。プレフォームのための代表的な材料は、スクロースであり、これは、標準的な射出成形技術を使用して、所望のプレフォームの形状に成形され得る。プレフォームのための代表的な溶媒は、水である。
【0079】
(使用方法)
40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物は、ラパマイシンまたはエベロリムスに対する任意の状態応答の処置における使用を意図される。これは、創傷治癒(例えば、血管移植手順または臓器移植手順を含む術後の手順)、腫瘍性疾患に関連する任意の状態を含み、ここで、例えば、ポリマー組成物は、癌(例えば、固形腫瘍)の部位に直接配置される。炎症および感染もまた、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン誘導体によって処置可能な状態である。この化合物はまた、血管処置方法、特に再狭窄に対して使用され得る。化合物は、被験体における内部標的部位への適用のためにポリマー基材へ処方され、例示的なポリマー基材処方物は、上述の通りである。拡張可能なステント上に適用されたポリマーコーティングのポリマー組成物は、再狭窄の処置に特に適している。
【0080】
血管損傷の処置に関して、局所的な血管損傷を受けた患者、または血管閉塞の危険のある患者における再狭窄の危険性および/またはその程度は、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を含むポリマー組成物を使用して最小にされ得る。代表的に、血管損傷は、血管造影手順の間に生じ、部分的に閉塞された血管(例えば、冠状動脈または末梢血管動脈)を開く。血管造影手順において、バルーンカテーテルが閉塞部位に配置され、そして遠位端バルーンが1回以上膨張および収縮されて、閉塞された血管を強制的に開く。この血管の拡張(特に、プラークが外れ得る血管壁における表面の外傷を伴うもの)は、しばしば、血管が、細胞増殖および再閉塞によって、経時的に応答するために十分な局在した損傷を生じる。驚くべきことではないが、再狭窄の発生または重症度は、しばしば、血管造影手順に関与する血管伸長の程度に関連する。特に、過度伸長が35%以上である場合、再狭窄が、高い頻度で、そしてしばしばかなりの重篤度(すなわち、血管閉塞)を伴って、起こる。
【0081】
ステントは、その収縮状態で、代表的に、カテーテルの遠位端において、カテーテル管腔内かまたは遠位端バルーン上での収縮状態のいずれかで、配置される。次いで、遠位カテーテル端が、損傷部位または潜在的閉塞の部位に導かれ、そして例えば、ステントが自己拡張型である場合、トリップワイヤを使用してステントをその部位に解放することによって、またはバルーン膨張によってステントが血管壁に接触するまでバルーン上のステントを拡張することによって、カテーテルから解放され、実際に、ステントをその部位において組織壁に移植する。
【0082】
図7は、完全に生分解性のステントの実施形態を、心臓血管系の血管(例えば、冠状動脈)内へのデバイスの移植に適切な送達カテーテルとともに示す。この図は、ステント53(「薬物コイル」と称される)を、部分的に解放された位置で示す。このステント(これは、自己拡張コイルの型である)は、ポリ乳酸から形成され、そして一種以上の活性な生物学的因子を含む。
【0083】
このコイルは、プレフォームを使用して作製され、このプレフォームの最終拡張直径は、このコイルを用いて処置される血管の内部管腔サイズよりわずかに大きいように定められる。このプレフォームを除去した後に、薬物コイルが、両端を逆方向に捻ることによって、より小さい半径のコイルに巻き付けられ、従って、送達直径が、体温における最終拡張直径の約1/3まで、スライド可能なシースの下で、その全長に沿って圧縮される。薬物コイルは、シースの内径において圧縮されたコイルを形成するための、より締まった半径に容易に屈曲するように、厚さが十分に薄い(およそ25〜125ミクロン)。このシースは、送達カテーテル55の上にスライド可能に配置され、ステントをその圧縮状態で標的血管に送達するために適切である。シース54は、その近位端において把持手段56を有し、これによって、血管形成術者は、送達カテーテルの先端が血管内の適切な位置にある場合に、シースを引き戻し得、そして薬物コイルを完全に解放し得る。
【0084】
送達カテーテル55の中心は、約0.014インチの直径の管腔を有し、この中に、可撓性先端58を有するガイドワイヤ57が、スライド可能に配置され得る。この送達カテーテルは、さらに、血管形成術の分野において周知であるように、内腔をY字型コネクタおよび止血弁に接続するためのルアーハブ59を有する。スライド可能なシースを備える送達カテーテルのODは、2〜4F(フレンチサイズ)の範囲内であり得るか、または末梢動脈が処置される場合には、より大きくあり得る。
【0085】
薬物コイルは、完全に生分解性であるので、このコイルは、全て金属のジャケットのように、血管に対して後に合併症を起こさない手術の患者の機会に影響を与えない。剥き出し金属コイルは、しばしば、特定の神経血管適用において血栓塞栓症および完全な遮断を生じるために、血管内に配置されるが、驚くべきことに、生体適合性ポリマー(ポリ(dl−乳酸)(PDLA)およびその混合物)は、開示される構成において、血管形成術後に損傷した血管を支持するのに十分な機械的強度を提供し、そしてさらに、塞栓症を生じず、従って、本発明の薬物コイルの製造のための例示的な材料であることが実証されている。
【0086】
一旦、その部位において展開されると、ステントは、脈管部位をライニングする細胞内に活性化合物を放出し始め、細胞増殖を抑制する。図8Aは、本発明に従って構築された2つのステント(各々、約10ミクロンの厚さのコーティングを有する)からのエベロリムス放出速度論を示す(黒四角)。薬物放出速度論は、ステントを25%エタノール溶液(これは、ステントコーティングからの薬物放出の速度を大いに加速する)に浸漬することによって、得られた。このグラフは、インビボで予測され得る薬物放出速度論の型を示すが、なおより長い時間スケールにわたってである。
【0087】
図8Bは、金属ステント基材上の、本発明のコーティングからのエベロリムスの薬物放出を示す。上側の曲線のセットは、コーティングが金属表面に直接塗布された場合の薬物放出を示す。下側の曲線のセット(より遅い放出を示す)は、金属ステント表面にパリレンの下層またはプライマーコートを塗布し、次いで、本発明のコーティング系でその表面をコーティングすることによって得られた。見られるように、プライマーは、ステント表面へのコーティングの機械的接着を増大させ、生体侵食性コーティングのより遅い分解および薬物のより遅い放出を生じる。このような構成は、強力に接着したステントコーティングを有することが望ましい場合(これは、薬物溶出ステントの、ガイドカテーテルおよび/または脈管の内側での蛇行した操作の間の繰り返しの摩耗に耐え得る)、ならびに/あるいはデバイスの移植後の移植部位におけるアテローム性動脈硬化症疾患プロセスの延長した処置のために薬物放出を遅くすることが望ましい場合に、有用である。
【0088】
図9は、移植されたステント62を有する脈管領域60を、断面で示す。このステントのコーティングされたフィラメント(例えば、コーティング66を有するフィラメント64)が、断面で見られる。この図は、各フィラメント領域から周囲の脈管壁領域への、抗狭窄化合物の放出を示す。経時的に、脈管壁を形成する平滑筋細胞が、ステントの格子または螺旋状開口部の内部に、そしてこれらを通って成長し始め、最終的に、連続的な内側細胞層を形成し、この層が、ステントを両側で包み込む。ステントの移植が首尾よくいった場合、後のその部位における脈管閉塞の程度は、50%未満である。すなわち、脈管の内側に残っているフローチャネルの断面直径は、移植の時点の拡張したステント直径の少なくとも50%である。
【0089】
Schwartzら(「Restenosis After Balloon Angioplasty−A Practical Proliferative Model in Porcine Coronary Arteries」、Circulation 82:(6)2190−2200、1990年12月)によって一般的に記載されるようなブタ再狭窄動物モデルにおける知見は、本発明のステントが再狭窄の程度を制限する能力、および現在提唱されそして試験されているステントに対するこのステントの利点(特に、重篤な脈管損傷(すなわち、35%より大きい脈管伸長)の場合)を実証する。これらの研究は、実施例4に要約されている。
【0090】
簡単にいえば、これらの研究は、ステント移植の28日後における再狭窄の程度を、剥き出しの金属のステント、ポリマーコーティングされたステント、ならびに高濃度または低濃度のシロリムス(ラパマイシン)およびエベロリムスを含有するポリマーコーティングされたステントにおいて、比較する。
【0091】
実施例4の表1は、ラパマイシンステント(Rapa−highまたはRapa−low)とエベロリムスステント(C−highまたはC−low)の両方が、再狭窄のレベルを大いに低下させたことを示す。最小量の再狭窄は、高用量のエベロリムスステントにおいて観察された。類似の結果が、低い損傷を有する動物に対する研究において得られた(表2)。
【0092】
図10A〜10Cは、剥き出しの金属のS字型ステント(Biosensors International Inc,Newport Beach,CAから入手可能)における、28日目の心内膜形成のステント断面の例である。図11A〜11Cは、ポリマーコーティングされた(薬物なしの)S字型ステントにおける心内膜形成の例である;そして図12A〜12Cおよび13A〜13Cは、エベロリムス/ポリマーコーティングされたステントにおける心内膜形成の例である。一般に、エベロリムスコーティングされたステントで処理された脈管は、十分に確立された内皮層を伴って、十分に治癒したようである。完全な治癒および脈管止血の証拠は、28日目においてである。図13は、91倍の倍率での脈管断面の例であり、移植の28日後における脈管管腔の内側への内皮層の治癒および確立を示す。
【0093】
これらの写真は、28日目における再狭窄の排除のための最も好ましい組み合わせが、C−high処方物またはC−Ulight処方物(実施例4を参照のこと)(これらは、18.7mmの長さのステントに、それぞれ325マイクログラムおよび275マイクログラムの投薬量のエベロリムスを含有した)であることを示す。このデータは、現在市場に出ているむき出しの金属ステント(S字型ステント)と比較して、非近交系の若いブタにおける追跡の28日目における、再狭窄の50%の減少を予測する。このデータはまた、薬物のエベロリムスが、同じステント/ポリマー送達プラットフォーム上の180マイクログラムの投薬量のシロリムスより良好であるか、または少なくとも同等であることを示す。これらの結果は、推計学的分析によって支持される(実施例4)。
【0094】
図15は、S字型ステント上にコーティングされたポリマー中の因子の選択された投薬の、「最適」直線回帰曲線を示す。この曲線は、損傷スコアを、追跡の際の狭窄領域を関係付ける。「狭窄領域」とは、推計学的分析によって決定される、心内膜形成の正確な指標である。この図から見られ得るように、高エベロリムスのステントは、試験されたサンプルの群において、増加する損傷スコアに対する負の傾きを示した唯一のコーティングであった。この分析は、C−highコーティングが、損傷した冠状動脈における再狭窄(これは、事実上、損傷スコアとは無関係である)を制御し得ることを示唆する。試みた他のコーティング処方物は、いずれも、この独特の特徴を示さなかった。
【0095】
図16は、バルーン/動脈比(B/A比)によって測定される場合の脈管のバルーン過度伸長と、動物実験における脈管損傷との間の関係を示す。このデータは、過剰に拡張した血管形成バルーンを使用して非常に制御された脈管損傷を生じることが、予測可能かつ既知の脈管損傷をブタモデルにおいて作製する、合理的に正確な方法であることを示す。
【0096】
図17は、ステント上でなされたポリ(dl−乳酸)のポリマーコーティングからのエベロリムス(黒丸)および40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン(黒四角)の溶出プロファイルを示す。エタノール/水(25/75比)へのポリマーからの化合物の溶出を、時間の関数として測定した。8時間点での40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンの放出は、エベロリムスより約1.7倍大きかった。後の時点で、40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンの放出は、エベロリムスの放出より約1.5倍大きかった。したがって、本発明は、ポリマー基材および40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物から構成されるポリマー組成物を企図し、この組成物は、室温にて、ポリマー基材からエベロリムスの放出より少なくとも1.5倍の速度で、エタノール/水へと化合物を放出する。
【0097】
上記のことから、本発明の種々の目的および特徴がどのように適合されるかがわかり得る。エベロリムスまたはラパマイシンのRm値より実質的に大きいRm値を有する40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を含むポリマー基材が、標的処置部位に投与するための組成物に使用されることが意図される。処置が必要とされる隣接された組織に配置された場合、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物は、ポリマー基材から組織へと溶出する。組成物は、ラパマイシンまたはエベロリムスでの処置に反応する任意の状態(新生物疾患を含む)の処置に適切であり、この状態としては、炎症、感染、創傷治癒、移植拒絶反応および再狭窄が挙げられる。処置のために意図される状態は、ポリマー組成物が、処置が必要とされる部位(例えば、創傷、腫瘍または再狭窄、炎症もしくは感染の部位)に局所的に堆積されるか、配置され得る状態を含む。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、本明細書中のステントの発明を作製および使用する、種々の局面を示す。これらは、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0099】
(実施例1)
(エベロリムスおよびその誘導体の調製)
(工程A.2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシエタノール(TBSグリコール)の合成)
154mlの乾燥THFおよび1.88gのNaHを、窒素雰囲気下で、500mLの丸底フラスコ冷却器中で攪拌する。4.4mLの乾燥エチレングリコールをこのフラスコに添加し、45分間の攪拌後に、大きい沈殿物を生じる。11.8gのtert−ブチルジメチルシリルクロリドをこのフラスコに添加し、そして激しい攪拌を45分間続ける。得られた混合物を950mLのエチルエーテルに注ぐ。このエーテルを420mLのブラインで洗浄し、そして溶液を硫酸ナトリウムで乾燥する。この生成物を、減圧下でのエーテルのエバポレーションによって濃縮し、そしてシリカゲルを充填された27×5.75cmのカラムを使用する、ヘキサン/Et2O(75:25 v/v)溶媒系を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。その生成物を、0℃で保存する。
【0100】
(工程B.2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシエチルトリフレート(TBSグリコールTrif)の合成)
4.22gのTBSグリコールおよび5.2gの2,6−ルチジンを、冷却器を備えた100mLの二つ口フラスコ中で、窒素下で激しく攪拌しながら合わせる。10.74gのトリフルオロメタンスルホン酸無水物を、このフラスコに、35〜45分間かけてゆっくりと添加し、黄色がかった褐色溶液を得る。次いで、この反応を、1mLのブラインを添加することによってクエンチし、そしてこの溶液を、100mLのブライン中で5回洗浄して、最終pH値を6〜7にする。この溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、そして減圧下での塩化メチレンのエバポレーションによって濃縮する。その生成物を、シリカゲルを充填した約24×3cmのフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用して、ヘキサン/Et2O(85:15 v/v)溶媒系を使用して精製し、次いで、0℃で保存する。
【0101】
(工程C.40−O−[2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシ]エチル−ラパマイシン(TBS Rap)の合成)
400mgのラパマイシン、10mLのトルエン、および1.9mLの2,6−ルチジンを、55〜57℃に維持した50mLのフラスコ中で混合し、そして撹拌する。別の3mLのセプタムバイアル中で、940μLの2,6−ルチジンを1mLのトルエンに添加し、次いで、2.47gのTBSグリコールTrifを添加する。このバイアルの内容物を50mLフラスコに添加し、そして撹拌しながら、反応を1.5時間進行させる。480μLの2,6−ルチジンおよびさらなる1.236gのTBSグリコールTrifを、この反応フラスコに添加する。撹拌を、さらに1時間続ける。最後に、第二の部分の480μLの2,6−ルチジンおよび1.236gのTBSグリコールTrifをこの混合物に添加し、そしてこの混合物を、さらに1〜1.5時間攪拌する。得られる褐色の溶液を、多孔質ガラスフィルタを通して、減圧を使用して注ぐ。結晶様の沈澱物を、全ての色が除かれるまでトルエンで洗浄する。次いで、その濾液を、60mLの飽和NaHCO3溶液で2回洗浄し、次いで、ブラインで再度洗浄する。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮する。少量のヘキサン/EtOAc(40:60v/v)溶媒を使用して生成物を溶解し、そしてシリカゲルを充填した33×2cmのフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用し、そして同じ溶媒で展開して、精製を達成する。この溶媒を減圧下で除去し、そして生成物を5℃で保存する。
【0102】
(工程D.40−O−(2−ヒドロキシル)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)の合成プロセス。)
パイレックス(登録商標)ガラス皿(150×75mm)を、氷で満たし、そして撹拌プレート上に置く。少量の水を加えて、氷のスラリーを得る。第1に、60〜65mgのTBS−Rapを、8mLのメタノールを加えることによりガラスバイアル中で溶解する。0.8mL 1N HClを、バイアルに加え、この溶液を45分間撹拌し、次いで、3mL飽和NaHCO3水溶液を加えることにより中和する。5mLのブライン、続いて20mLのEtOAcを溶液に加え、その結果、二相が形成される。これらの相の混合後、分液ロートを使用して水層を除く。残る溶媒をブラインで洗って6〜7の最終pHにし、硫酸ナトリウムで乾燥する。硫酸ナトリウムを多孔性ガラスフィルターを使用して除き、そして溶媒を真空中で除去する。生じる濃縮物を、EtOAc/メタノール(97:3)中に溶解し、次いで、シリカゲルで充填された23×2cmフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用し、同じ溶媒系を使用して展開して精製する。この溶媒を真空中で除去し、そして生成物を5℃で保存する。
【0103】
(実施例2)
(ポリ−dl−ラクチドコーティングにおけるエベロリムスを含むステントの調製)
100mgのポリ(dl−ラクチド)を、室温にて2mLアセトン中に溶解した。5mgのエベロリムスをバイアル中に置き、400μLのラクチド溶液を加えた。マイクロプロセッサ制御シリンジポンプを使用して、ステントストラット頂部表面にラクチド溶液を含む10μLの薬物を正確に分配した。溶媒の蒸発が、ステント上の単一ポリマー層を含む均一な薬物を生じた。
【0104】
15μLの体積を同様の様式において使用して、ステント頂部ストラット表面およびステント側部ストラット表面をコーティングし、ステントストラット頂部およびステントストラット側部をコーティングする単一層を生じた。
【0105】
(実施例3)
(ポリ−dl−ラクチドコーティングにおけるエベロリムスを含むステントからのインビトロでの薬物放出)
25%EtOHを含む2mLのpH7.4リン酸緩衝化生理食塩水溶液中にコーティングされたステントを配置し、0.05%(w/v)アジドナトリウムとともに保存し、37℃に保つことによりインビトロ薬物放出を、行なった。全緩衝液体積を薬物測定のために回収しながら、溶液を同じ体積の新鮮な緩衝液(無限の沈降)で置換することによりサンプリングを、定期的に行なった。図8は、この様式で微小分配される単一のポリマー層でコーティングされる2つの類似のステントからの薬物放出を例示する。
【0106】
(実施例4)
(動物移植試験)
(A.ブタにおける安全および用量設定試験のQCA結果)
薬物溶出ステントのための問題のある処置条件は、ひどく損傷した血管であるが、それは、再狭窄(新脈管内膜形成)の程度が脈管損傷の程度と共に直接増加するためである。実験がブタにおいて行われ、薬物でコーティングされたステント移植物の標的であった脈管のかなりの数が、血管形成術バルーンを使用して重篤に損傷された(平均およそ36%過度に伸ばした脈管の損傷)。これは、脈管の内膜および中間層の重篤な引き裂きおよび伸びを引き起こし、移植後28日で極端な再狭窄を生じた。このように、薬物の種々の用量の相対有効性および移植後28日での再狭窄の減少についての同じ金属ステント/ポリマープラットフォームにおけるポリマーに対する薬物重量比を評価することが可能であった。
【0107】
(試験プラットフォーム略語)
「剥き出しのステント」とは、波形の環設計の18.7mmの剥き出しの金属ステントをいう(すなわち、Biosensors Intl.,Inc.により製造されるような、現在市販される「S−ステント」)。
【0108】
「C−高(high)」とは、PDLA(ポリ−dl−乳酸)ポリマーコーティング中の325μgのエベロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0109】
「C−低(low)」とは、PDLAポリマーコーティング中に180μgのエベロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0110】
「ラパマイシン−高(Rapamycin−high)」とは、PDLAポリマーコーティング中に325μgのシロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0111】
「ラパマイシン−低(Rapamycin−low)」とは、PDLAポリマーコーティング中に180μgのシロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0112】
「C−U軽(light)」とは、PDLAポリマーの超薄型コーティングにおける275μgのエベロリムス(ポリマーに対して37%の薬物重量比)を有する18.7mm長のステントをいう。
【0113】
「C−U低(low)」とは、PDLAポリマーの超薄型コーティングにおける180μgのエベロリムスまたはその等価物(37%のポリマーに対する薬物重量比)を有する18.7mm長のステントをいう。
【0114】
「ポリマーステント」とは、PDLAポリマーコーティングのみで覆われた18.7mmのS−ステントをいう。
【0115】
「B/A」は、動脈に対する最後に膨張したバルーンの比であり、脈管の過度の伸びの程度の指標である。
【0116】
「平均管腔喪失(MLL)」とは、移植時でのステント内部管腔内で得られる3つの測定値の平均から、続く血管造影法での3つの測定値の平均を引いたものから決定され、そしてステント内部で形成された新脈管内膜の量を示す。
【0117】
(方法:)
波形環設計の金属ワイヤメッシュ骨格を使用する薬物溶出ステント(すなわち、S−ステント)およびポリマーコーティングを、異なる用量の薬物エベロリムスまたは薬物シロリムスのいずれかを使用して、外で育った未成育のブタ(あるいは28日より長く続く移植研究についてはユカタンミニブタ(Yucatan Minipig))に移植した。移植の際に、Quantitative Coronary Angiography(QCA)を実施して、ステント移植の前および後の脈管の直径を測定した。28日目、または以下の表に具体的に示される場合にはそれより長期間にて、動物をステントの領域においてQCAを再び受けさせ、その後安楽死させる。
【0118】
認可されたプロトコルに従う動物の安楽死に続いて、心臓を動物から除去し、加圧されたホルムアルデヒド溶液を冠動脈中に注入した。次いで、ステントを含む冠動脈のセグメントを、心臓表面から外科的に除去し、続いて、ダイヤモンド刃を用いての横断切片化のためにアクリルプラスチックブロック中に固定した。次いで、近位に、中央に、遠位に位置した脈管の切断面を含むアクリル材料の50ミクロン厚の切片を、光学的に磨き、顕微鏡のスライドに載せた。
【0119】
デジタルカメラを備える顕微鏡を使用して、スライドに載せられた脈管横断切片の高解像度画像を作製した。これらの画像を、以下のような手順により組織形態計測(histomorphometric)分析に供した:
PCベースのシステムのためのA.G.Heinzeスライド顕微鏡を介してコンピューター化された画像化システムImage Pro Plus 4.0を、以下の組織形態計測測定のために使用した:
1.平均断面積および管腔厚(脈管内膜/新脈管内膜−管腔境界により制限される領域);新脈管内膜(管腔と内弾性板(IEL)との間の領域、IELが欠けている場合、管腔と中間弾性板または外弾性板(EEL)の残りとの間の領域);中間(IELとEELとの間の領域);管サイズ(外膜領域を除くEELにより制限される領域);および外膜領域(周辺外膜組織、脂肪組織および心筋層ならびにEELの間の領域)。
2.損傷スコア。脈管損傷の程度を定量化するために、異なる壁構造の裂け目の量および長さに基づくスコアが、使用された。損傷の程度は、以下のように計算された:
0=インタクトなIEL
1=表面媒体層に曝される裂かれたIEL(少ない損傷)
2=より深い媒体層に曝される裂かれたIEL(媒体切開)
3=外膜領域に曝された裂かれたEEL
以下の表は、追跡管理QCAでのQCA分析(再狭窄に起因する平均管腔喪失の測定)の結果を示す。以下の表の「新脈管内膜領域」と題される欄の下のデータは、追跡管理(f/u)でのブタから除かれたステントおよび管の形態計測分析の結果を報告する:
(表1:「高度損傷」実験の結果)
【0120】
【表2】
(B.低損傷研究)
どれほどのエベロリムスの用量が軽く損傷した脈管(合併症でない冠動脈疾患および1つの新しい損傷を有する患者に、より特有である)において最良であるかをさらに決定するために、エベロリムス溶出ステントを、中程度から低い過度伸長損傷(およそ15%)を作製するために移植した。農場のブタを30日の実験のために使用し、そして成体のユカタンミニブタを三ヶ月の安全研究のために移植した。血管造影法の結果は、以下の通りであった:
(表2:「低い損傷」実験のQCA結果)
【0121】
【表3】
上のデータは、エベロリムスのC−UlowまたはC−Uhigh用量のいずれかが、低〜中程度に損傷した管における新内膜形成での45〜48%の減少を作り出すことを予測した。
【0122】
(C.形態計測分析)
ステント内に形成された、各々のステント内の全切断面領域および新しい組織(新脈管内膜)の切断面領域が、コンピューターにより測定され、狭窄領域の割合が、計算された。薬物およびポリマーの各々の形成に対する、平均的管損傷スコア、新脈管内膜領域、およびステントあたり3つのスライスを平均した狭窄領域の割合を、以下の表に示す。
【0123】
(表3:「高度損傷」実験の結果)
【0124】
【表4】
形態計測分析は、ブタ冠動脈モデルにおけるステント内狭窄を測定する高度に正確な方法と考えられる。高度損傷モデルにおいて、C−High調合は、28日での「高度損傷」実験における新脈管内膜形成の最も低い量を作製した;しかし、C−Uhighは、群の最も高度な損傷スコアを有し、0.45の非常に低い狭窄領域の割合をなお管理した。従って、データは、QCA分析の発見を独立して確かめ、そしてヒト臨床試験のための好ましいい調合としてC−Uhighの選択を支持する。
(D.組織学的分析)
C−Uhighおよびsirolimus−lowについてのスライドを、経験を積んだ心臓病理学者に提出した。彼は、炎症、フィブリンおよび新しく治療した血管管腔の内皮化を示す証拠について管断面を再調査した。シロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステントとにより引き起こされた組織学的変化の間の違いは、見出せなかった。一般に、良く定着した内皮層を有する管は、良く治療されており、完治の証拠であり、28日での管恒常性であると見られる。図14は、移植後28日での管腔内部の内皮層の治療および定着を示す倍率91倍の管断面図の例である。
【0125】
(E.発表された結果に対する比較)
Carterらは、ブタにおいてPalmaz Schatz金属ステントを使用してシロリムスでコーティングしたステントの結果を発表した。発表されたCarterの結果の本明細書中のポリマーでコーティングしたステントを使用する実験結果に対して比較する表を、下に示す:
(表4)
【0126】
【表5】
(実施例5)
(高度な薬物装填を有するステントの調製)
長さ14.6mmの市販の金属波形環ステント(S−ステント、波形環設計:Biosensors Intl)を、血漿堆積プロセスを使用してパリレン「C」プライマーコーティングのおよそ2ミクロンの厚さの層でコーティングした。パリレンでコーティングしたステントを周囲温度で終夜キシレン中においた。50μg/μlのポリ乳酸(PDLA)を含むPDLA溶液を、2mLアセトン中100mgのPDLAに溶解することにより調製した。
【0127】
50%のポリマーに対する薬物比を含むステントを調製するために、5mgのエベロリムスを100μlのPDLA貯蔵溶液中に溶解した。さらなる20μLのアセトンを加えて、溶液を調合するのを補助した。ステントをキシレンから除去して、注意深くブロットして溶媒を除去した。総5.1μlのコーティング溶液を、各々のステントの外部表面上で調合した。ステントを周囲温度で乾燥して、終夜デシケーター中においた。これは、ステント当たり212μgのPDLA中に含まれる総212μgのエベロリムスを生じた。
【0128】
75%のポリマーに対する薬物比を含むステントを調製するために、5mgのエベロリムスおよび33.3μLの貯蔵PDLA溶液を、混合した。さらなる33.3μLのアセトンを加え、混合物を溶解した。ステントをキシレンから除去し、上と同様にブロットした。総2.8μLのコーティング溶液を、各ステントの外部表面上で調合した。ステントを、周囲温度で乾燥し、終夜デシケーター中に置いた。これは、ステント当たり70μgのPDLA中に含まれる総212μgのエベロリムスを生じた。
【0129】
最後のステントは、エベロリムス/PDLAのおよそ5ミクロン厚のコーティングまたはわずかに乳濁色の外見を示し、これは頂部表面および側部表面において円滑に分配され、金属ストラット表面に堅く接合された。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、40−O−ヒドロキシヘプチル(黒丸)、エベロリムス(40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン;白抜き四角)、ラパマイシン(シロリムス;黒三菱形)、パクリタキセル(白抜き三角)およびデキサメタゾン(黒四角)のアセトン濃縮(平衡水:balance water)の関数としての相対的な疎水性(Rm値)の半対数プロットである。
【図2】図2は、金属フィラメント本体を有し、そして本発明の1つの実施形態に従って形成される脈管内ステント(ステントは、収縮した状態を示す)を図示する。
【図3】図3は、金属フィラメント本体を有し、そして本発明の1つの実施形態に従って形成される脈管内ステント(ステントは、拡張した状態を示す)を図示する。
【図4】図4は、図2のステントのコーティングされた金属フィラメントの拡大した断面図である。
【図5】図5は、コーティングされた生体侵食性ポリマーステントの拡大した断面図である。
【図6A】図6Aおよび6Bは、ポリマーコーティングステントの生成における使用に適切なポリマーコーティング方法の略図である。
【図6B】図6Aおよび6Bは、ポリマーコーティングステントの生成における使用に適切なポリマーコーティング方法の略図である。
【図7】図7は、脈管部位に送達するためのカテーテルに取り付けられた生体侵食性ポリマーステントを示す。
【図8A】図8Aは、ポリマーコーティングを保持するステントからのエベロリムスの放出を示すプロットである。
【図8B】図8Bは、ポリマーコーティングを保持するステントからのエベロリムスの放出を示すプロットである。
【図9】図9は、脈管部位に展開されたステントの断面図である。
【図10A】図10A〜10Cは、剥き出し金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図10B】図10A〜10Cは、剥き出し金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図10C】図10A〜10Cは、剥き出し金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11A】図11A〜11Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11B】図11A〜11Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11C】図11A〜11Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12A】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12B】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12C】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図13A】図13A〜13Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図13B】図13A〜13Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図13C】図13A〜13Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図14】図14は、図12A〜12Cに利用されるステントのフィラメントに見られる、脈管の拡大組織学的切片であり、治癒される血管壁を形成する新しい組織によって過剰増殖される。
【図15】図15は、種々の異なるステントを用いる、損傷スコアの関数としての移植28日後の狭窄領域のプロットである。
【図16】図16は、ステント移植時の損傷スコア(Y軸)とB/A(バルーン/動脈)比との間の相関プロットを示す。
【図17】図17は、放出された薬物の全量(μg)、エベロリムス(40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン;黒丸)および40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン;(黒四角)についての、時間の関数(時間)としてのステント上に保持されるポリマー基材(ポリ−dl−乳酸)のプロットを示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン誘導体を含むポリマー基材から構成されるポリマー組成物に関し、ここでアルキルは7〜11個の炭素原子を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ラパマイシンは、イースター島の土壌サンプルから単離されたStreptomyces属の菌種株(Streptomyces hygroscopicus)から初めに抽出された大環状トリエン化合物である(Vezinaら、J.Antibiot.28:721(1975);米国特許第3,929,992号;同第3,993,749号)。ラパマイシンは、以下の式I:
【0003】
【化2】
に示される構造を有する。本来、抗真菌剤(米国特許第3,929,992号)としての使用を記載され、次いで、癌および腫瘍の処置における使用(米国特許第4,885,171号)、実験的な免疫病理学の予防のための使用(実験的なアレルギー性脳炎およびアジュバント関節炎;Martel,R.,Can.J.Physio.,55:48(1977)、移植の拒絶反応の阻害(米国特許第5,100,899号)および平滑筋細胞増殖の阻害(Morris,R.,J.Heart Lung Transplant,11(pt.2)(1992))を含む他の状態および障害の効果的な薬剤であることが見出されている。
【0004】
しかし、薬学的薬物としての化合物の利用は、非常に低くかつ可変性のバイオアベイラビリティーおよびその毒性によって制限されていた。また、ラパマイシンは、水に極わずかに可溶性であり(1ミリリットルあたり20マイクログラム)、インビボ送達に適切な安定な組成物に処方することが難しい。これらの問題を解決するために、化合物のプロドラッグおよび誘導体が合成されている。グリシネート、プロピオネートおよびピロリジノブチレートのプロドラッグを形成するためのラパマイシン構造のラパマイシン31位および40位を誘導体化することによって調製された水溶性プロドラッグが記載される(米国特許第4,650,803号)。当該分野に記載されるラパマイシンの多数の誘導体としては、以下が挙げられる:モノアシル、誘導体およびジアシル誘導体(米国特許第4,316,885号)、アセタール誘導体(米国特許第5,151,413号)、シリルエーテル(米国特許第5,120,842号)、ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号)ならびにアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニルの誘導体(米国特許第5,665,772号;同第5,258,389号;同第6,384,046号;WO97/35575)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、被験体の内部標的部位に対する大環状トリエン化合物の送達における使用のためのポリマー組成物を含む。組成物は、(i)20〜70重量%のポリマー基材および(ii)30〜80%重量%の以下:
【0006】
【化3】
の構造を有する大環状トリエン化合物を含み、
ここで、RはCH2−X−OHであり、ここでXは、6〜10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキルである。標的部位で細胞に対して配置される場合、組成物は、ラパマイシンまたはエベロリムス大環状トリエン化合物を含む同じポリマー基材によって達成されるよりも実質的に多くの、標的部位細胞中の化合物の取り込みのレベルを達成するのに効果的である。
【0007】
1つの実施形態において、組成物は、標的部位での固形腫瘍、炎症または創傷の処置における使用のためであり、そして標的部位への注入によって局在され得る注入可能な粒子の懸濁液から構成される。
【0008】
別の実施形態において、組成物中のポリマー基材は、生体侵食性ポリマーから形成される。
【0009】
なお別の実施形態において、組成物は、標的部位での固形腫瘍、炎症または創傷の処置における使用のために意図され、そしてポリマー基材および化合物から形成されたパッチの形態をとる。薬物含有パッチは、組織構造の表面(例えば、器官または腫瘍の外面または血管の外面あるいは内面)に配置される。
【0010】
組成物はまた、炎症した組織または創傷の処置における用途を見出し、ポリマー基材は、処置の必要のある組織への適用のための軟膏の形態をとる。
【0011】
組成物はまた、血管壁の損傷部位で再狭窄の阻害における使用を見出し、この組成物は、拡張可能な脈管ステントの血管壁接触部分上に保存されるコーティングを含む。
【0012】
別の実施形態において、組成物は、粘膜表面の細胞への大環状トリエン化合物の送達における使用が意図される。組成物中のポリマー基材は、粘膜組織に対する配置のために適切な粘膜付着性表面コーティングを有する。
【0013】
任意または全てのこれらの使用において、化合物は、1つの実施形態において、RがCH2−X−OHであり、そしてXが6〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である、形態の構造を有する。別の実施形態において、RはCH2−X−OHであり、そしてXは6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基である。
【0014】
別の実施形態において、ポリマー基材は、生分解性ポリマーから構成される。生分解性ポリマーの例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびそれらの混合物が挙げられる。適切なポリ乳酸としては、ポリ(l−ラクチド)、ポリ(d−ラクチド)およびポリ(dl−ラクチド)が挙げられる。
【0015】
別の実施形態において、大環状トリエン化合物は、全組成物重量の35〜80重量%の初期濃度で存在する。
【0016】
これらならびに本発明の他の目的および性質は、以下の本発明の詳細な説明を添付の図面と組み合わせて読む場合、より十分に明らかとなる。
【0017】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
本明細書中で使用される場合、「ラパマイシン」とは、以下:
【0018】
【化4】
の構造の化合物が意図される。この化合物は、「シロリムス」として当該分野で公知である。
【0019】
「40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン」化合物とは、ラパマイシン化合物中の炭素番号40でヒドロキシル基がヒドロキシアルキルを含むように改変されている化合物をいう。例えば、(CH2)7OHでのヒドロキシル基の水素を置換するための40−O位での改変は、40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンとしていわれる。
【0020】
「エベロリムス」とは、以下:
【0021】
【化5】
の構造の化合物が意図され、ここで、RはCH2CH2OH(ヒドロキシエチル)である。
【0022】
「有効量(efficacious amount)」または「有効量(effective amount)」とは、処置されるべき障害または疾患状態のための処置を提供するのに十分な投薬量が意図される。これは、患者、疾患および実施される処置に依存して変更するが、目的に障害または疾患についての特定の臨床的マーカーを使用して、容易に決定される。例えば、バルーンカテーテルを用いるステントの過剰拡張による血管の移植および損傷の後、ステントの内部の新しい組織増殖の量の断面領域測定は、再狭窄の臨床的マーカーを提供する。腫瘍部位で活性薬物の投薬量の適用の後、腫瘍容積の減少または安定化は、腫瘍処置のための臨床的マーカーを提供する。器官移植または血管グラフト手術に関連する臨床的マーカーは、器官機能をモニターすること、移植の同種移植の引く続く開存性をモニターすることである。皮膚の創傷について、臨床的マーカーは、発赤(redness)、肉芽腫形成または線維症の炎症性マーカー変化を観察することである。前立腺肥大について、臨床的マーカーは、尿管妨害物の再発の任意の減少をモニターすることである。
【0023】
(II.ポリマー組成物)
本発明は、40−O−ヒドロキシアルキル(C7−C11)置換ラパマイシン化合物を含むポリマー組成物に関する。上記のように、ラパマイシンおよびその誘導体の多くは、低いバイオアベイラビリティを有し、薬剤としてのその有用性が制限される。本発明において、ラパマイシンの特定の40−O−ヒドロキシアルキル誘導体は、ポリa−構造に処方される場合、処置のために組織と接触された場合に、改善されたバイオアベイラビリティを提供することが見出されている。ポリマー組成物で使用するためのラパマイシン化合物は、40−O位が以下のように修飾された化合物である:
【0024】
【化6】
ここで、Rは、CH2−X−OHであり、Xは、6〜10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖のアルキル基である。一実施形態において、Xは、6〜10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルであるか、または別の実施形態において、7〜11個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルである。好ましい実施形態において、Xは、6個の炭素原子を有する直鎖アルキルである。RがCH2−X−OHであり、Xが6、7、8、9または10炭素のアルキルである化合物は、本明細書中で、それぞれ、40−O−ヒドロキシヘプチル、40−O−ヒドロキシオクチル、40−O−ヒドロキシノニル、40−O−ヒドロキシデシルおよび40−O−ヒドロキシウンデシルと呼ばれる。
【0025】
図1は、いくつかの薬物の相対疎水性(Rm値)を示す片対数プロットである。Rm値は、疎水性の尺度として使用される(Biagi G.ら,J.Medicinal Chem.,18(9):873(1975);Ichihaski,T.ら,Pharm.Res.,11(4):508(1994))。Rm値を、逆相薄層クロマトグラフィー技術を使用して、Biagiらの一般的な方法を使用して決定した。この方法により、試験化合物は極性移動相と非極性固定相との間で分配され得る。各化合物の相対移動度の測定により、Rmが決定され得る。逆相クロマトグラフィーを、HPTLC−RP18Fユニボンド(unibond)オクタデシル修飾シリカ薄層クロマトグラフィープレート(Alltech 63077)を使用して実施した。極性移動相は、アセトンを含む種々の濃度の水(v/v)から構成された。254nmでのUVクエンチによって可視化した。以下の化合物についての結果を図1に示す:40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン(黒丸)、エベロリムス(everolimus)(40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン;白四角)ラパマイシン(黒菱形)、パクリタキセル(白三角)およびデキサメタゾン(黒四角)。各化合物のy遮断値を表1に示す。
【0026】
【表1】
このy遮断値はlogであり、従って、40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンは、40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン(エベロシムス)の約7倍疎水性であり、この40−O−ヒドロキシエチルラパマイシンは、ラパマイシンより約1倍以上疎水性である。このデータに基づいて、これらの化合物の相対水溶性は、以下の順序である:
デキサメタゾン>>パクリタキセル>>>ラパマイシン>エベロリムス>>>>>40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン。
【0027】
40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンに関して、ラパマイシンまたはエベロリムスのいずれかが40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンと類似しているよりも、ラパマイシンおよびエベロリムスは、その溶解特性、従ってそのバイオアベイラビリティ特性において互いにより類似している。40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンの乏しい水溶性は、一般に、薬剤として使用するために望ましくない候補であると考えられる。なぜなら、このような難溶性の化合物は、代表的に、乏しいバイオアベイラビリティを有し、投与のために処方することが困難であるからである。しかし、以下に示されるように、この化合物およびラパマイシンの40−O−ヒドロキシアルキル誘導体は、処置部位におけるバイオアベイラビリティのための投与のために所望され得る。
【0028】
従って、1つの局面において、本発明は、40−O−ヒドロキシアルキル(C7−C11)置換ラパマイシン化合物を患者の内部に送達する際に使用するためのポリマー組成物を提供する。代表的に、このポリマー組成物は、20〜70重量%の間の選択されたポリマー、および30〜80重量%の間の40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物から構成される。あるいは、この組成物は、30〜70重量%の間の選択されたポリマー、および30〜70重量%の間の40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を含み得る。
【0029】
上記のように、広範なポリマーおよび処方物が意図され、いくつかの特定の例が以下でより詳細に考察される。一般に、ポリマー組成物は、化合物を含み、かつ標的部位に堆積した後にこの化合物を放出する一連の薬物レザバとして働く。
【0030】
(ポリマー粒子)
例示的なポリマー組成物は、注射によって、またはカテーテルのようなデバイスを使用する堆積によってインビボで配置されるのに適したポリマー粒子の処方物である。このポリマー粒子は、ミクロ細孔性、マクロ細孔性または非細孔性であり得、そして難水溶性の40−O−ヒドロキシラパマイシン化合物を保持し得るポリマーから形成され得る。
【0031】
細孔性ポリマー粒子は、粒子の外側と内側の細孔空間との間の連絡のための粒子表面に向かって開いた相互連結細孔を有する。このようなマクロ細孔性レザバの形成のための例示的な粒子は、例えば、米国特許第5,135,740号(本明細書中で参考として援用される)に記載される。簡単に述べると、細孔性粒子は、例えば、液体−液体系における懸濁重合によって形成される。一般に、モノマーおよび重合触媒を含む溶液(これは水と不混和性である)が形成される。この溶液と混和性であるが水と不混和性の不活性溶媒が、この溶液に含められる。次いで、この溶液は、水溶液に懸濁され、この水溶液は、一般に、懸濁または乳化を促進する添加剤(例えば、界面活性剤および分散剤)を含む。一旦、所望のサイズの個々の液滴を含む懸濁液が確立されると、代表的には、高温または照射によってこれらの反応物を活性化することによって、重合が行われる。一旦、重合が完了すると、得られた固体粒子が、この懸濁液から回収される。これらの粒子は、固体で球形の細孔性構造、すなわち不活性液体の周りに形成され、それにより細孔ネットワークを形成しているポリマーである。ポロゲン(porogen)、すなわち細孔形成剤として働く不活性溶媒は、粒子の細孔を占有する。ポロゲンは、実質的に除去される。
【0032】
マクロ細孔性粒子はまた、生分解性ポリマーまたは非分解性ポリマーのいずれかから溶媒を蒸発させることによって調製され得る。溶媒蒸発プロセスについて、所望のポリマーが有機溶媒に溶解され、次いで、この溶液が所望の粒子サイズの塩化ナトリウム結晶の層の上に注がれる(Mooney,ら,J.Biomed.Mater.Res.37:413−420,(1997))。この溶媒は、一般に、蒸発によって除去され、そして得られる固体ポリマーが、水に浸されて、塩化ナトリウムが除去されて、細孔性ポリマーレザバが得られる。あるいは、塩化ナトリウム結晶が、撹拌によってポリマー溶液中に分散されて、塩化ナトリウム結晶の均一な分散液が得られ得る。次いで、この分散液が、撹拌しながら、ポリマー用の非溶媒に押し出され、塩化ナトリウム結晶の周りにこのポリマーの液滴が沈殿する。この固体ポリマー粒子は、濾過または遠心分離によって回収され、次いで水に浸され、塩化ナトリウムが除去され、細孔性ポリマーレザバが得られる。塩化ナトリウムに対する代替物としては、任意の非毒性の水溶性の塩または低分子量の水溶性ポリマー(これは除去されて所望の間隙率を生じ得る)が挙げられることが理解される。
【0033】
粒子形成の間にポリマー中にこの化合物を含めることによって、または粒子形成の後に粒子を充填することによって、これらの細孔性粒子には1種以上の薬物が充填され得る。粒子形成後の充填(post−particle loading)は、例えば、薬物化合物を溶媒(これは薬物を溶媒和するように作用するが、ポリマーに対して非溶媒である)に溶解し、そしてこの粒子および薬物溶液を撹拌することによって混合することにより実施され得る。この薬物溶液は、粒子に吸収され、自由流動粉末が生じる。次いで、これらの粒子は、必要に応じて、溶媒除去のために処理され得る。
【0034】
別の例示的なポリマー粒子組成物は、非細孔性粒子(例えば、その中に含まれるかまたは分散された化合物を有するマイクロカプセルおよび微粒子)である。マイクロカプセルおよび微粒子の両方は、薬剤および薬物送達産業において周知である(例えば、Baker,R.W.,CONTROLLED RELEASE OF BIOLOGICALLY ACTIVE AGENTS,John Wiley & Sons,NY,1987;Ranade V.およびHollinger,M.,DRUG DELIVERY SYSTEMS,CRC Press,1996を参照のこと)。マイクロカプセルとは、代表的に、ポリマー殻膜により囲まれた活性薬剤のレザバをいう。微粒子とは、代表的に、治療剤がその粒子全体に分散しているモノリシック系をいう。しかし、これら2つの定義の間に含まれる多くの処方物(例えば、マイクロカプセルの凝集物)が存在し、このような処方物もまた本明細書における使用に適切である。
【0035】
マイクロカプセルおよび微粒子は、生分解性ポリマーまたは非生分解性ポリマーから調製され得る。マイクロカプセルは、多数の方法(濃縮、界面重合、溶媒蒸発、および物理的カプセル化法が挙げられる)によって容易に形成される(Baker,R.W.,CONTROLLED RELEASE OF BIOLOGICALLY ACTIVE AGENTS,John Wiley & Sons,NY,1987)。マイクロカプセルは、当該分野で公知の多数の技術によって調製され、1つの簡単な方法は、単に、分散された治療剤を含むポリマーフィルムを適切なサイズに粉砕することである。ポリマー溶液から粒子性治療剤を噴霧乾燥することは、別のアプローチである。生物学的に活性な薬剤のカプセル化のための特定の手順が、米国特許第4,675,189号および米国特許出願20010033868(これらは本明細書中で参考として援用される)に開示される。
【0036】
粒子形成に適切なポリマーは、多く、多様である:一般的な選択基準は、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を送達し得るポリマーである。例示的なポリマーとしては、ポリ(d、l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、メタクリレートポリマー(例えば、ポリブチルメタクリレートなど)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ε−カプロラクトン、エチルビニルヒドロキシル化アセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエステルアミド、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリマーの全ては、安全性の経歴および全身循環における低い炎症性用途を有する。代表的に、20〜70重量%の間のポリマーが、30〜80重量%の間の40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物と結合して、ポリマー組成物を形成する。
【0037】
粒子のサイズは、細孔性であろうと非細孔性であろうと、直径約0.1ミクロンから約100ミクロンまで、好ましくは約0.5ミクロンから約40ミクロンまで、非常に広く変動し得る。これらの粒子は、ニートな粒子として投与され得るか、またはゲル、ペースト、軟膏剤(ointment)、軟膏(salve)または標的部位における塗布のための粘性液体として処方され得る。
【0038】
ポリマー粒子により例示されるように、本発明のポリマー組成物は、ポリマー組成物と標的部位における組織との接触のために、組織標的部位に塗布されるかまたは配置され得る組成物である。当業者は、これらのポリマー粒子が、標的組織との接触を達成する組成物の一例にすぎないことを理解する。多量の疎水性化合物を送達し得るポリマーは、フィルム、パッチ、ペースト、軟膏またはゲルに処方され得、これらの全ては、標的部位に配置され得るかまたは塗布され得る。例えば、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を負荷された、ポリマーから調製される簡単なポリマーパッチが、処置の必要な組織表面に配置され得る。このような組織表面は、血管、器官、腫瘍、または損傷したかまたは創傷を有する身体表面であり得る。
【0039】
(粘膜接着性ポリマー組成物)
別の実施形態において、ポリマー組成物は、粘膜組織に隣接した配置のために、粘膜接着特性を有するポリマー基材からなる。身体内の粘膜組織としては、眼の袋小路、頬空洞、鼻、直腸、膣、歯周ポケット、腸および結腸が挙げられる。粘膜接着送達システムは、粘膜接着性ポリマー内に含まれる化合物の投与のために、粘膜組織への接着を示す。
【0040】
種々のポリマー組成物が、粘膜送達処方物において使用される。40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物とともに使用するために特に興味深いものは、親水性特性と疎水性特性との組み合わせを有する粘膜接着剤である。口腔粘膜に接着するための、粘着性の炭化水素ポリマーにおいて、ペクチン、ゼラチン、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムとの組み合わせである接着剤が、例示的である。親水性優勢および疎水性優勢を有する他の粘膜接着剤としては、例えば、軟膏基剤(例えば、分散したポリエチレンを含有する鉱油(米国特許第4,948,580号))中に分散された、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)とゼラチンとのコポリマーが挙げられる。別の親水性/疎水性系は、米国特許第5,413,792号に記載されており、ここで、ポリ有機シロキサンと水溶性ポリマー材料とのペースト様の調製物が開示される。
【0041】
本発明において、粘膜接着性ポリマー基剤および40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物からなるポリマー組成物が意図される。この粘膜接着性ポリマー組成物は、粘膜表面に隣接した配置に適切な送達システムに処方される。この化合物は、粘膜組織に隣接して配置される場合、ポリマー組成物から組織へと溶出される。この送達システムは、処置されるべき組織の表面に配置されるためのパッチの形態を採り得る。この組織は、器官、脈管、腫瘍、または処置を必要とする任意の身体の表面であり得る。
【0042】
(脈管内ステント)
本発明において使用するための別の例示的なポリマー組成物は、拡張可能な脈管ステント上に担持されるポリマーコーティングである。図2および3は、40−O−置換されたラパマイシン化合物を担持するポリマー組成物でコーティングされた、脈管内ステントの概略図である。これらの図において、ステント20が、そのステントの収縮状態(図2)および拡張状態(図3)において示される。このステントは、図3および4を参照して以下にさらに記載されるように、構造部材または本体22、および化合物を保持および放出するための外側コーティングを備える。
【0043】
図2および3に示される実施形態において、ステント本体は、フィラメント(例えば、部材24、26)によって、複数の連結された管状部材から形成される。各部材は、拡張可能なジグザク、鋸歯状、または正弦波状の構造を有する。この部材は、隣接する部材の頂点および谷底をつなぎ合わせる軸連結(例えば、連結28、30)によって連結される。理解され得るように、この構成によって、ステントが、ステントの長さをほとんどまたは全く変化させることなく、図2に示される収縮された状態から、図3に示される拡張された状態に拡張され得る。同時に、隣接する管状部材の頂点と谷底との間の比較的まれな連結によって、ステントが、曲げに適応し得る。この特徴は、ステントが、カテーテル内でまたはカテーテル上で、その収縮された状態で脈管部位に送達される場合に、特に重要であり得る。ステントは、0.5〜2mmの間、より好ましくは、0.71〜1.65mmの間の代表的な収縮状態の直径(図2)、および5〜100mmの間の長さを有する。図3に示されるような拡張状態において、ステントの直径は、その収縮状態のおけるステントの直径の少なくとも2倍、8〜9倍までである。従って、0.7〜1.5mmの収縮直径を有するステントは、2〜8mmの間またはそれ以上の選択された拡張状態へと半径方向に拡張され得る。
【0044】
連結された拡張可能な管状部材のこの一般的なステント−本体構造を有するステントは、例えば、PCT公開番号WO 99/07308に記載されるように、公知であり、これは、本出願と同一人によって所有され、そして本明細書中において明確に参考として援用される。さらなる例は、米国特許第6,190,406号、同第6,042,606号、同第5,860,999号、同第6,129,755号、または同第5,902,317号(これらの特許は、本明細書中において参考として援用される)に記載される。あるいは、ステントの構造部材は、連続的なラセンリボン構成(すなわち、ステント本体が、単一の連続なリボン様コイルから形成される)を有し得る。ステント本体の基礎的な要件は、そのステント本体が脈管損傷部位において展開される際に拡張可能であること、およびそのステント本体が、脈管標的部位を裏打ちする脈管壁(すなわち、組織の内側層、外膜層および内皮層)に薬物含有コーティングに含まれた薬物を送達するために、そのステント本体の外側表面上に薬物含有コーティングを受容するのに適していることである。好ましくは、この本体はまた、格子構造または開構造を有し、外側から内側にステントを「通って」内皮細胞壁が内殖することができる。
【0045】
このステントフィラメントは、ポリマーマトリックス、およびこのマトリックス内に分布されて少なくとも数週間の期間(代表的に、4〜8週間、そして必要に応じて、2〜3ヶ月の期間、またはそれより長期間)にわたってこのステントから放出される40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物からなる薬物放出コーティングでコーティングされる。
【0046】
図4は、拡大された断面図において、全ての側、すなわち、頂部(ステント本体の外部表面を形成するフィラメント側)底部(ステントの内部表面を形成するフィラメント側)および対向するフィラメント側において、完全にフィラメントを覆うコーティング32を有するステントフィラメント24を示す。以下にさらに考察されるように、コーティングは代表的に3〜30ミクロンの厚さを有し、この厚さはコーティングを形成するポリマーマトリクス材料の性質ならびにポリマーマトリクスおよび活性化合物の相対量に依存する。理想的には、コーティングは、可能な限り薄く(例えば、15ミクロン以下)作製されて、損傷部位での脈管中のステントプロファイルを最小化する。
【0047】
コーティングはまた、標的部位にて放出される薬物のむらのない分散を促進するために、上部(外部)表面を横切る厚さにおいて比較的均一であるべきである。ステントフィラメント上の比較的むらのないコーティング厚を作製するための方法が、以下で議論される。
【0048】
ステントフィラメントとコーティングとの間に配置されるポリマー下層34がまた、図4に示される。下層の目的は、コーティングをステント本体フィラメントに接着させることを助けること、すなわち、フィラメント上のコーティングの安定化を助けることである。以下で見られるように、コーティングが高いパーセンテージの化合物(例えば、35〜80重量パーセント化合物)を含むポリマー基材から形成される場合、この機能は特に価値がある。1つの例示的な下層ポリマーは、生体侵食性(ポリ−dl−ラクチド)から形成されるポリマー基材と結合して使用されるパリレンである。他の適切なポリマー下層は、エチレンビニルアルコール(EVOH)、paryLASTTM、パリレン、シリコン、TEFLON(登録商標)TM、および他のフッ素樹脂であり、これらは、プラズマコーティングもしくは他のコーティング、または堆積プロセスにより金属ステント表面上に堆積され得る。この下層は、1〜5ミクロンの代表的な厚さを有する。
【0049】
基材を形成するポリマーは、任意の生体適合性ポリマー物質であり得、この物質から、閉じ込められた化合物が、拡散により放出され得、そして/またはポリマーマトリクスの腐食により放出され得る。基材をコーティングするための2つの周知の非腐食性ポリマーは、ポリメチルメタクリレートおよびエチレンビニルアルコールである。ステント本体への塗布のために適切な形態においてこれらのポリマーを調製するための方法が、例えば、US2001/0027340A1およびWO00/145763において記載され、これらは、参考として本明細書中で援用される。一般に、ポリマーへの薬物添加の限界は、約20〜40重量パーセントの範囲においてである。
【0050】
生体侵食性ポリマー、特に、ポリ−dl−ラクチドポリマーはまた、基材物質をコーティングするために適切である。本発明の、1つの一般的な実施形態において、コーティングは、生体侵食性ポリ−dl−ラクチドポリマー基材、すなわち、ポリ−dl−乳酸ポリマーであり、これは、ポリマー基材中に分散される活性化合物の乾燥重量の80%までを含み得る。より一般的には、コーティングは、活性化合物の乾燥重量の35〜80%およびポリマーの乾燥重量の20〜65%を含む。例示的なコーティングは、25〜50%の乾燥重量ポリマーマトリックスおよび50〜75重量パーセントの活性化合物を含む。このポリマーは、以下で詳説されるように、ステントフィラメント上の堆積のための活性化合物とともに処方される。
【0051】
3〜15ミクロンの間のコーティング厚を有する、1つの好ましいコーティングが、25〜50重量パーセントのポリ−dl−ラクチドポリマー基材および50〜75重量パーセントの大環状トリエン免疫抑制化合物から形成される。下層が、パリレンから形成され、1〜5ミクロンの間の厚さを有する。この実施形態は、代表的にステント長(mm)当たり約15マイクログラムの薬物と等しい量の薬物を含む。
【0052】
例示的な実施形態において、ポリマーコーティングは、15〜35重量パーセントの腐食性ポリマー基材または非腐食性ポリマー基材および65〜85重量パーセントの40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシン化合物から形成される。ポリマーコーティング厚は、好ましくは、10〜30ミクロンであり、ステントは1〜5ミクロンのポリマー下層(例えば、パリレン下層)を含み得る。この実施形態は、代表的にステント長(mm)当たり約15マイクログラムの薬物に等しい量の化合物を含む。
【0053】
コーティングは、さらに、関連の疾患または状態を処置するため、あるいは生じ得る任意の予測された二次状態を処置するために有効な第2の生物活性剤を含み得る。例えば、40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシンが、再狭窄の処置のために投与される場合、もとの脈管損傷、ステントの存在によって刺激され得る血液に関連する事象(例えば、凝固)を最小にするため、または損傷部位における脈管の治癒を改善するための第2の化合物が、含まれ得る。例示的な第2の薬剤としては、可溶性結晶形態の抗血小板薬剤、フィブリン溶解性薬剤、または血栓崩壊性薬剤、あるいは内皮細胞の治癒を刺激し、かつ平滑筋細胞の増殖を制御するNOドナーが挙げられる。例示的な抗血小板薬剤、フィブリン溶解性薬剤、または血栓崩壊性薬剤は、ヘパリン、アスピリン、ヒルジン、チクロピジン(ticlopidine)、エプチフィバチド(eptifibatide)、ウロキナーゼ、ストレプドキナーゼ、組織プラスミノゲン賦活剤(TPA)、またはそれらの混合物である。40−O−ヒドロキシアルキル置換されたラパマイシンが、抗腫瘍剤としての使用を意図される場合、新生物疾患の化学療法のために通常使用される第2の薬剤が含まれ得る。例示的な第2の化学療法剤としては、パクリタキセル、白金化合物、シタラビン、5−フルオロウラシル、テニポシド、エトポシド、メトトレキサート、ドキソルビシンなどが挙げられる。ステントコーティング中に含まれる第2の薬剤の量は、その薬剤が治療的効果を提供する必要がある期間によって決定される。第2の薬剤は、公知の方法に従って、ステント本体フィラメントに塗布されるコーティング処方物に含まれ得る。
【0054】
(生体侵食性ステント)
別の一般的な実施形態において、ステント本体およびポリマーコーティングの両方が、生物侵食性ポリマーで形成され、経時的にステントが完全に再吸収されることを可能にする。ステントは、好ましくは、ステント本体を形成しているらせん状のリボンフィラメントを有する拡張可能なコイル型ステントである(示さず)。自己拡張可能なコイルステントは、血管中への移植についての米国特許第4,990,155号に記載されており、本明細書に参考として援用される。
【0055】
コイル型ステントは、このコイルによって処置されるべき血管の内腔のサイズよりも少し大きいように設計されている前形成物(preform)の最終的な拡張直径を有する前形成物を使用して形成され得る(3.5mm OD±1mmが、冠状動脈に対して一般的である)。より一般的には、ステントは、成形によって拡張した形態として形成され得、カテーテルの先端部に取り付けられた場合、血管に送達するためにステントの長軸の周りにねじるか、またはステントに半径方向に力を加えて収縮状態にすることによって収縮状態にする。ステントは、好ましくは約100ミクロンと1000ミクロンとの間の全厚、および0.4cmと10cmとの間の全長を有する。実際は、この型の生体侵食性ステントの重要な利点は、比較的長いステント(例えば、3cmを超える長さ)が、血管傷害部位に容易に送達され得、配置され得ることである。
【0056】
編み込まれた生体侵食性ポリマーフィラメント(例えば、ポリ−l−ラクチド)で形成されるバルーン拡張可能ステントを形成するための方法が、報告されている(米国特許第6,080,177号)。デバイスバージョンもまた、薬物を放出するように適合される(米国特許第5,733,327号)。
【0057】
ステント形成するための好ましいポリマー材料は、ポリ−l−ラクチドまたは、ポリ−dl−ラクチドである(US6,080,177)。上記のように、ステント本体およびコーティングは、一面に含まれる抗再狭窄性化合物を有する単一の拡張可能な繊維状ステントとして、一体として形成され得る。あるいは、下のセクションで詳述するように、生体侵食が可能なコーティングが、前形成された生体侵食性本体に適用され得る。後者の場合において、ステント本体は、1種類の生体侵食が可能なポリマー(例えば、ポリ−l−ラクチドポリマー)から形成され得、そしてコーティングは、第2のポリマー(例えば、ポリ−dl−ラクチドポリマー)から形成され得る。前形成されたステントに対して塗布された場合、このコーティングは、実質的に前述と同じ組成的特徴および厚さ特徴を有し得る。
【0058】
図5は、別々に形成された本体およびコーティングを有する、まさに記載した種類の生体侵食性ステントにおけるフィラメント(例えば、らせん状リボン)の断面図を示す。この図は、生体侵食性コーティング38ですべての側面がコーティングされた内部の生体侵食性ステントフィラメント36を示す。例示のコーティングは、ポリ−dl−ラクチドで形成され、20〜40重量%の間で40−O−置換ラパマイシン化合物、および60〜80重量%のポリマー基材を含む。別の一般的な実施形態において、このコーティングは45〜75重量%の化合物、および、25〜55重量%のポリマーマトリクスを含む。
【0059】
生体侵食性ステントは、大きな閉塞が存在する場合に、血管形成用バルーンによる脈管の先立つ拡張と組み合わせて、または、将来重要な遮断を生じる高いリスクを有する患者への予防的移植としてのいずれかで、一つのデバイスで全脈管を処置できるという独特の利点を有する。このステントは完全に生分解性であるので、「フルメタルジャケット」、すなわち金属性基材を含む薬物溶出ステントのひものようには、後の複雑でない脈管の手術に対する患者の機会に影響しない。
【0060】
第2の薬剤(例えば、上記のような薬剤)は、移植した後で所望の期間にわたりコーティングから放出されるために、コーティングに取り込まれ得る。あるいは、第2の薬剤が使用される場合、それは、ステント本体に塗布されたコーティングが、ステント本体の内部表面を覆っていない場合に、ステント本体フィラメントに取り込まれ得る。金属性フィラメントステント本体に関して下に記載されるコーティング方法もまた、ポリマーフィラメントステント本体を覆うための使用に適している。
【0061】
(ステントコーティング方法)
ここで図面をより詳細に参照して、図5Aおよび5Bは、本発明に従うステントコーティングプロセスの概略図である。ポリマー溶液40を、ポリマーを親和的溶媒に溶解させることで作製する。40−O−置換ラパマイシン化合物および、所望の場合には第2の薬剤を、同じ溶媒または異なる溶媒を使用する懸濁液または溶液のいずれかとして、この溶液に加える。この完成した混合物を、耐圧性リザーバ42に入れる。リザーバを流体加圧ポンプ44に接続する。
【0062】
加圧ポンプは、溶媒混合物をプログラムした速度で溶液送達管46を通って移動させ得る、任意の圧力源であり得る。この加圧ポンプ44は、正確分配システムの分野では周知のように、微小コントローラ(示さず)の制御下にある。例えば、このような微小コントローラは、パーソナルコンピュータによりRS−232C連絡インターフェイスを通じて制御可能である、4−Axis Dispensing Robot Model 番号I&J500−RおよびI&J750−R(I&J Fisnar Inc,Fair Lawn,NJから入手可能)、または正確分配システム(例えば、Automove A−400(Asymtek、Carlsbad,Caから入手可能))を含み得る。RS232Cインターフェイスを制御するための適切なソフトウェアプログラムは、Fluidmove system(これもまた、Asymtek Inc、Carlsbad,Caから利用可能)を含み得る。
【0063】
ステントの表面に溶媒混合物を送達するための溶液送達チューブ48が、レザバ42に接着される(例えば、このレザバの底部で)。加圧可能レザバ42および送達チューブ48は、矢印X1で示されるように、ステントの長手軸に沿って、溶媒送達チューブを小さなステップで(例えば、1ステップあたり0.2mmで)、または連続的に移動させ得る可動支持体(示さず)に搭載される。加圧可能レザバ42および送達チューブ46についての可動支持体もまた、小さなステップで送達チューブの先端部(遠位端部)を移動させて、マイクロフィラメント表面により近づけ得るか、または矢印Y1で示すように、マイクロフィラメント表面から遠ざけ得る。
【0064】
コーティングされていないステントは、少なくとも1つの端部においてこのステントの内と側表面接触している回転チャックによって掴まれる。ステントの軸回転が、当該分野で周知のようなチャックへのステッパーモーターの接着により、小さな角度ステップ(例えば、1ステップあたり0.5度)で達成され、送達チューブによるコーティングのために、このステント構造の最上部の表面を再配置し得る。所望の場合には、このステントは、連続的に回転され得る。少量流体送達デバイスの正確な配置の方法は、X−Y−Z溶媒分配システムの分野において周知であり、本発明に援用され得る。
【0065】
流体加圧ポンプの作用、流体送達チューブのX1およびY1への配置、ならびにステントのR1への配置は、代表的には、デジタル式コントローラーおよびコンピューターソフトウェアプログラムによって協調され得、それによって、正確な要求量の溶液が、ステント表面上の所望の任意の位置に溶着され、そこで溶媒が逃れ得、ステント表面にポリマーと試薬による硬化したコーティングが残る。代表的には、溶媒混合物の粘度は、溶媒量を変えることによって調製され、2センチポアズ〜2000センチポアズの範囲であり、代表的には300〜700センチポアズであり得る。あるいは、送達チューブは、固定位置に保持され得、ステントが、回転移動に加えて長手軸方向に沿って移動され、コーティングプロセスを達成し得る。
【0066】
X−Y−Z配置テーブルおよび可動支持体は、I&J Fisnarから購入され得る。好ましい寸法の溶液送達チューブは、好ましくは、適切な固定コネクタに搭載された18〜28ゲージの間のステンレス鋼ハイポチューブ(hypotube)である。このような送達チューブは、East Providence、RIのEFD Incから取得され得る。特定の目的の先端部についてはEFDの選択ガイドを参照のこと。好ましい先端は、再注文番号5118−1/4−B〜5121−1/4−B「Burr−free passivated stainless steel tips with 1/4”length for fast point−to−point dispensing of particle−filled or thick materials」、再注文番号51150VAL−B「Oval stainless steel tips apply thick pastes,sealants,and epoxies in flat ribbon deposits」、および再注文番号5121−TLC−B〜5125−TLC−B「Resists clogging of cyanoacrylates and provides additional deposit control for low viscosity fluids.Crimped and Teflon lined」である。使い捨て可能な加圧可能溶液レザバはまた、EFDのストック番号1000Y5148〜1000Y5152Fからも入手可能である。本発明と共に使用するための代替的な先端は、約0.0005〜0.002インチ(例えば、0.001インチ)の内径(I.D.)を有するガラスマイクロキャピラリーであり、VWRカタログ番号15401−560「Microhematocrit Tubes」(長さ60mm、内径0.5〜0.6mm)から入手可能である。
【0067】
チューブはさらに、ブンセンバーナーのもとで引張られ、ポリマー/薬物/溶媒混合物の正確な塗付のために所望のI.D.を達成する。ステッパーモーター、およびXYZテーブルを操作するためのプログラム可能なマイクロコントローラーは、Asymtek、Inc.から入手可能である。協調的に機能してコーティングを形成する1種類より多くの流体配分チューブの種類の使用、あるいは異なる先端部を備えるか、またはコーティングを形成するための同じプロセスにおいて異なる粘度の溶液もしくは異なる複数の溶液による化学物組成を含む1つより多くの可動溶液レザバの代替的な使用は、本発明の範囲内である。チャックおよびステッパーモーターシステムは、Edmund Scientific of Barrington、NJから購入され得る。
【0068】
代表的には、上記のように、コーティングは、ステントの外側の支持体表面(単数または複数)上に直接的に塗付され、図6Aおよび6Bに示すような、上述の本発明のコーティングシステムに適用される制御方法に依存して、ステントの内側表面(単数または複数)の全体または一部をカバーするかもしれないし、しないかもしれない。後者の図は、フィラメント50の頂部および側部領域へのコーティング材料52の塗付を示す。あるいは、コーティング物またはコーティング混合物はまた、ステントの内側表面に直接的に塗付され得る。薄い送達先端は、ステント構造の壁中の1つ以上のカットオフ領域(すなわち、ウインドウ)を貫通し得、それによって、所望の領域の内側表面上にコーティング混合物を直接的に塗付し得る。この方法において、フィラメントの外側側面部および内側側面部へ、異なる薬物成分を有する異なるコーティング材料を塗付し得る。例えば、外側のフィラメント表面上のコーティングは、40−O−置換ラパマイシン化合物を含み得、内側のフィラメント表面上のコーティングは、1種類の上記の二次試薬または別の40−O−置換ラパマイシン化合物を含み得る。ステントが、十分に大きな直径を有する場合、薄い「L形状」送達先端は、内側の表面へコーティングを塗付する目的のために、ステントの長手軸に沿ってステントの開端部中に挿入され得る。
【0069】
本発明における使用のためのポリマーとしては、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ε−カプロラクタム、エチルビニルヒドロキシル化アセテート(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ならびに、これらのコポリマーおよびこれらの混合物(クロロホルムまたはアセトン、あるいは他の適切な溶媒に溶解される)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリマーはすべて、全身循環における安全な使用および低炎症性の使用の歴史を有している。
【0070】
金属製ステント表面にイオン結合する40−O−置換ラパマイシン化合物の非ポリマー性コーティングもまた、本発明において使用され得る。
【0071】
記載したコーティングシステムを使用することで、ステントの頂部表面、側部表面、および内側表面の全てをコーティングすることが可能であることが、発見された。ポリマーに対する溶媒の適切な比を注意深く選択することによって、溶液の粘度が調節され、図6Bに示すように、溶液のいくらかが、支柱の側部を下へと移動し、固形化する前に底部表面に実際に至る。ステントの縁に近い送達チューブの休止時間を制御することで、ステントの縁または底部をコーティングするポリマーの量を増大または減少させ得る。図4に示す実施形態において、純粋なポリマーおよび溶媒からなる下部層34が、最初に、本発明のコーティングシステムを使用してステント表面24に塗付され、溶媒が蒸発され得る。次いで、生物活性試薬を含むポリマーからなる第2層32が、塗付される。
【0072】
上記のように、二次試薬が、ポリマー混合物中に取り込まれ得る。例えば、結晶形態のヘパリンが、コーティング中に取り込まれ得る。へパリンの結晶は、およそ1〜5ミクロンの粒子サイズにまで微細化され、ポリマー溶液中に懸濁液として添加される。適切な形態のへパリンとしては、本発明のプロセスに従って塗付された場合に、哺乳動物宿主において生物活性を示す結晶形態のへパリン(ヘパリン塩(すなわち、へパリンナトリウムおよび低分子量形態のへパリン、ならびにそれらの塩)が挙げられる)である。図9に見られるように、血管壁内へ薬物送達ステントが配置される場合、硬化したポリマーのコーティング表面の近くでヘパリンの結晶が溶解し始め、ポリマーの多孔度を増大させる。ポリマーがゆっくりと溶解するにつれて、より多くのへパリンおよび生物活性試薬が、制御された様式で放出される。
【0073】
しかし、図9を参照すると、ステントの内側表面をコーティングすることが常に望ましいわけではないことが、理解されるべきである。例えば、ステントの内側表面をコーティングすることによって、デバイスの縮れた送達プロファイルを増大させ、小血管における運動性を小さくする。そして、脈管内への移植後、内側表面は、ステントを通る血流によって直接的に洗浄され、内側表面上の任意の薬物を放出させ、全身循環中へと消失する。そのために、図4および5に示す実施形態において、バルクの硬化したポリマーおよび試薬が、ステント支持体の外側環境に配置され、そして二次的にその側部に配置される。好ましい実施形態において、最小量のポリマーおよび試薬のみが、ステントの内側表面上に塗付される。所望の場合、ステントの内側表面の少なくとも一部が、コーティングされないか、または曝露されることもまた可能である。
【0074】
さらに、図4および5のコーティングは、選択的な様式で、ステントフィラメント表面に配置され得る。コーティングされるセクションの深さは、組織に呈示するために利用可能である生物活性コーティングの体積に対応し得る。特定の領域(例えば、ステントの展開の間に高いひずみレベルを受け得る領域)からコーティングを制限することが、有利であり得る。
【0075】
均一な下層が、最初に、ステント表面に配置されて、生物活性因子を含有するコーティングの接着を促進し得、そして/またはステント上のポリマーコーティングの安定化を補助し得る。プライマーコートは、当該分野においてすでに公知であるような方法のいずれかを使用することによって、または本発明の精密分配システムによって、塗布され得る。プライマーコートを、異なるポリマー材料(例えば、パリレン(ポリ(ジクロロ−パラ−キシリレン))、またはベース金属基板と、生物活性因子を含有するコーティングとの両方に対して良好な接着を示す任意の他の材料)を使用して塗布することもまた、本発明の範囲内である。パリレン(ポリ(ジクロロ−パラ−キシリレン))は、当該分野において周知であるように、プラズマ技術または蒸着技術によって堆積され得る(米国特許第6,299,604号を参照のこと)。本発明の1つの実施形態において、ヘパリンを含有するコーティングの島または層が、ステントの内側表面に形成され、そして上記のような本発明の薬物を含有する抗増殖コーティングが、ステントの外側表面に形成される。
【0076】
高い薬物/ポリマー基材比を有するコーティングを形成することが望ましい場合、例えば、薬物が、金属ステント基材上のコーティングの40〜80重量%を構成する場合、下層をステントフィラメント上に形成して、基材に対してコーティングを安定させ、そしてしっかりと付着させることが有利である。下層は、さらに加工され得、その後、コーティング材料が、適切な溶媒(例えば、アセトン、クロロホルム、キシレン、またはこれらの混合物)中で膨潤させることによって、堆積される。このアプローチは、エベロリムス(everolimus)対ポリ−dl−ラクチドの高い比を有するステントの調製について、実施例5に記載される。
【0077】
ここで、パリレン下層は、プラズマ堆積によって、ステントフィラメント上に形成され、次いで、この下層は、キシレン中で膨潤され、その後、コーティング材料の最終堆積がなされる。この方法は、5〜10ミクロンのみの厚さを有するコーティングにおいて、ポリ−dl−ラクチドポリマー基材中に、1つの場合においては50%の薬物、そして別の場合においては75%の薬物を含有するコーティングを製造する際に、有効であった。
【0078】
上に記載されるように、本発明のコーティングシステムを使用して、完全に生体侵食性のステントを製造することもまた、本発明の範囲内である。これは、頂部が開いた「C字型」螺旋チャネル(この中に、分配システムがポリマーを堆積させ得る)を使用して、形成されるべきステントの形状に管状前形成物を作製することによって、達成され得る。このプレフォームは、その外径が開いており、その結果、このポリマーは、分配チューブの代表的には1回の通過(しかし必要であればまた、複数の通過)を使用して、プレフォーム内に堆積され得、一方で、ポリマーがプレフォームによって閉じ込められた位置で、ステント構造体の均一な縁部を作製する。このプレフォームは、このように作製される生分解性のステントを溶解しない溶媒中で可溶性である。ポリマーが堆積され、そしてポリマー溶液の溶媒が蒸発した後に、このアセンブリは、プレフォームを溶解する溶媒中に入れられて、完成したステント構造体を解放し得る。プレフォームのための代表的な材料は、スクロースであり、これは、標準的な射出成形技術を使用して、所望のプレフォームの形状に成形され得る。プレフォームのための代表的な溶媒は、水である。
【0079】
(使用方法)
40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物は、ラパマイシンまたはエベロリムスに対する任意の状態応答の処置における使用を意図される。これは、創傷治癒(例えば、血管移植手順または臓器移植手順を含む術後の手順)、腫瘍性疾患に関連する任意の状態を含み、ここで、例えば、ポリマー組成物は、癌(例えば、固形腫瘍)の部位に直接配置される。炎症および感染もまた、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン誘導体によって処置可能な状態である。この化合物はまた、血管処置方法、特に再狭窄に対して使用され得る。化合物は、被験体における内部標的部位への適用のためにポリマー基材へ処方され、例示的なポリマー基材処方物は、上述の通りである。拡張可能なステント上に適用されたポリマーコーティングのポリマー組成物は、再狭窄の処置に特に適している。
【0080】
血管損傷の処置に関して、局所的な血管損傷を受けた患者、または血管閉塞の危険のある患者における再狭窄の危険性および/またはその程度は、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を含むポリマー組成物を使用して最小にされ得る。代表的に、血管損傷は、血管造影手順の間に生じ、部分的に閉塞された血管(例えば、冠状動脈または末梢血管動脈)を開く。血管造影手順において、バルーンカテーテルが閉塞部位に配置され、そして遠位端バルーンが1回以上膨張および収縮されて、閉塞された血管を強制的に開く。この血管の拡張(特に、プラークが外れ得る血管壁における表面の外傷を伴うもの)は、しばしば、血管が、細胞増殖および再閉塞によって、経時的に応答するために十分な局在した損傷を生じる。驚くべきことではないが、再狭窄の発生または重症度は、しばしば、血管造影手順に関与する血管伸長の程度に関連する。特に、過度伸長が35%以上である場合、再狭窄が、高い頻度で、そしてしばしばかなりの重篤度(すなわち、血管閉塞)を伴って、起こる。
【0081】
ステントは、その収縮状態で、代表的に、カテーテルの遠位端において、カテーテル管腔内かまたは遠位端バルーン上での収縮状態のいずれかで、配置される。次いで、遠位カテーテル端が、損傷部位または潜在的閉塞の部位に導かれ、そして例えば、ステントが自己拡張型である場合、トリップワイヤを使用してステントをその部位に解放することによって、またはバルーン膨張によってステントが血管壁に接触するまでバルーン上のステントを拡張することによって、カテーテルから解放され、実際に、ステントをその部位において組織壁に移植する。
【0082】
図7は、完全に生分解性のステントの実施形態を、心臓血管系の血管(例えば、冠状動脈)内へのデバイスの移植に適切な送達カテーテルとともに示す。この図は、ステント53(「薬物コイル」と称される)を、部分的に解放された位置で示す。このステント(これは、自己拡張コイルの型である)は、ポリ乳酸から形成され、そして一種以上の活性な生物学的因子を含む。
【0083】
このコイルは、プレフォームを使用して作製され、このプレフォームの最終拡張直径は、このコイルを用いて処置される血管の内部管腔サイズよりわずかに大きいように定められる。このプレフォームを除去した後に、薬物コイルが、両端を逆方向に捻ることによって、より小さい半径のコイルに巻き付けられ、従って、送達直径が、体温における最終拡張直径の約1/3まで、スライド可能なシースの下で、その全長に沿って圧縮される。薬物コイルは、シースの内径において圧縮されたコイルを形成するための、より締まった半径に容易に屈曲するように、厚さが十分に薄い(およそ25〜125ミクロン)。このシースは、送達カテーテル55の上にスライド可能に配置され、ステントをその圧縮状態で標的血管に送達するために適切である。シース54は、その近位端において把持手段56を有し、これによって、血管形成術者は、送達カテーテルの先端が血管内の適切な位置にある場合に、シースを引き戻し得、そして薬物コイルを完全に解放し得る。
【0084】
送達カテーテル55の中心は、約0.014インチの直径の管腔を有し、この中に、可撓性先端58を有するガイドワイヤ57が、スライド可能に配置され得る。この送達カテーテルは、さらに、血管形成術の分野において周知であるように、内腔をY字型コネクタおよび止血弁に接続するためのルアーハブ59を有する。スライド可能なシースを備える送達カテーテルのODは、2〜4F(フレンチサイズ)の範囲内であり得るか、または末梢動脈が処置される場合には、より大きくあり得る。
【0085】
薬物コイルは、完全に生分解性であるので、このコイルは、全て金属のジャケットのように、血管に対して後に合併症を起こさない手術の患者の機会に影響を与えない。剥き出し金属コイルは、しばしば、特定の神経血管適用において血栓塞栓症および完全な遮断を生じるために、血管内に配置されるが、驚くべきことに、生体適合性ポリマー(ポリ(dl−乳酸)(PDLA)およびその混合物)は、開示される構成において、血管形成術後に損傷した血管を支持するのに十分な機械的強度を提供し、そしてさらに、塞栓症を生じず、従って、本発明の薬物コイルの製造のための例示的な材料であることが実証されている。
【0086】
一旦、その部位において展開されると、ステントは、脈管部位をライニングする細胞内に活性化合物を放出し始め、細胞増殖を抑制する。図8Aは、本発明に従って構築された2つのステント(各々、約10ミクロンの厚さのコーティングを有する)からのエベロリムス放出速度論を示す(黒四角)。薬物放出速度論は、ステントを25%エタノール溶液(これは、ステントコーティングからの薬物放出の速度を大いに加速する)に浸漬することによって、得られた。このグラフは、インビボで予測され得る薬物放出速度論の型を示すが、なおより長い時間スケールにわたってである。
【0087】
図8Bは、金属ステント基材上の、本発明のコーティングからのエベロリムスの薬物放出を示す。上側の曲線のセットは、コーティングが金属表面に直接塗布された場合の薬物放出を示す。下側の曲線のセット(より遅い放出を示す)は、金属ステント表面にパリレンの下層またはプライマーコートを塗布し、次いで、本発明のコーティング系でその表面をコーティングすることによって得られた。見られるように、プライマーは、ステント表面へのコーティングの機械的接着を増大させ、生体侵食性コーティングのより遅い分解および薬物のより遅い放出を生じる。このような構成は、強力に接着したステントコーティングを有することが望ましい場合(これは、薬物溶出ステントの、ガイドカテーテルおよび/または脈管の内側での蛇行した操作の間の繰り返しの摩耗に耐え得る)、ならびに/あるいはデバイスの移植後の移植部位におけるアテローム性動脈硬化症疾患プロセスの延長した処置のために薬物放出を遅くすることが望ましい場合に、有用である。
【0088】
図9は、移植されたステント62を有する脈管領域60を、断面で示す。このステントのコーティングされたフィラメント(例えば、コーティング66を有するフィラメント64)が、断面で見られる。この図は、各フィラメント領域から周囲の脈管壁領域への、抗狭窄化合物の放出を示す。経時的に、脈管壁を形成する平滑筋細胞が、ステントの格子または螺旋状開口部の内部に、そしてこれらを通って成長し始め、最終的に、連続的な内側細胞層を形成し、この層が、ステントを両側で包み込む。ステントの移植が首尾よくいった場合、後のその部位における脈管閉塞の程度は、50%未満である。すなわち、脈管の内側に残っているフローチャネルの断面直径は、移植の時点の拡張したステント直径の少なくとも50%である。
【0089】
Schwartzら(「Restenosis After Balloon Angioplasty−A Practical Proliferative Model in Porcine Coronary Arteries」、Circulation 82:(6)2190−2200、1990年12月)によって一般的に記載されるようなブタ再狭窄動物モデルにおける知見は、本発明のステントが再狭窄の程度を制限する能力、および現在提唱されそして試験されているステントに対するこのステントの利点(特に、重篤な脈管損傷(すなわち、35%より大きい脈管伸長)の場合)を実証する。これらの研究は、実施例4に要約されている。
【0090】
簡単にいえば、これらの研究は、ステント移植の28日後における再狭窄の程度を、剥き出しの金属のステント、ポリマーコーティングされたステント、ならびに高濃度または低濃度のシロリムス(ラパマイシン)およびエベロリムスを含有するポリマーコーティングされたステントにおいて、比較する。
【0091】
実施例4の表1は、ラパマイシンステント(Rapa−highまたはRapa−low)とエベロリムスステント(C−highまたはC−low)の両方が、再狭窄のレベルを大いに低下させたことを示す。最小量の再狭窄は、高用量のエベロリムスステントにおいて観察された。類似の結果が、低い損傷を有する動物に対する研究において得られた(表2)。
【0092】
図10A〜10Cは、剥き出しの金属のS字型ステント(Biosensors International Inc,Newport Beach,CAから入手可能)における、28日目の心内膜形成のステント断面の例である。図11A〜11Cは、ポリマーコーティングされた(薬物なしの)S字型ステントにおける心内膜形成の例である;そして図12A〜12Cおよび13A〜13Cは、エベロリムス/ポリマーコーティングされたステントにおける心内膜形成の例である。一般に、エベロリムスコーティングされたステントで処理された脈管は、十分に確立された内皮層を伴って、十分に治癒したようである。完全な治癒および脈管止血の証拠は、28日目においてである。図13は、91倍の倍率での脈管断面の例であり、移植の28日後における脈管管腔の内側への内皮層の治癒および確立を示す。
【0093】
これらの写真は、28日目における再狭窄の排除のための最も好ましい組み合わせが、C−high処方物またはC−Ulight処方物(実施例4を参照のこと)(これらは、18.7mmの長さのステントに、それぞれ325マイクログラムおよび275マイクログラムの投薬量のエベロリムスを含有した)であることを示す。このデータは、現在市場に出ているむき出しの金属ステント(S字型ステント)と比較して、非近交系の若いブタにおける追跡の28日目における、再狭窄の50%の減少を予測する。このデータはまた、薬物のエベロリムスが、同じステント/ポリマー送達プラットフォーム上の180マイクログラムの投薬量のシロリムスより良好であるか、または少なくとも同等であることを示す。これらの結果は、推計学的分析によって支持される(実施例4)。
【0094】
図15は、S字型ステント上にコーティングされたポリマー中の因子の選択された投薬の、「最適」直線回帰曲線を示す。この曲線は、損傷スコアを、追跡の際の狭窄領域を関係付ける。「狭窄領域」とは、推計学的分析によって決定される、心内膜形成の正確な指標である。この図から見られ得るように、高エベロリムスのステントは、試験されたサンプルの群において、増加する損傷スコアに対する負の傾きを示した唯一のコーティングであった。この分析は、C−highコーティングが、損傷した冠状動脈における再狭窄(これは、事実上、損傷スコアとは無関係である)を制御し得ることを示唆する。試みた他のコーティング処方物は、いずれも、この独特の特徴を示さなかった。
【0095】
図16は、バルーン/動脈比(B/A比)によって測定される場合の脈管のバルーン過度伸長と、動物実験における脈管損傷との間の関係を示す。このデータは、過剰に拡張した血管形成バルーンを使用して非常に制御された脈管損傷を生じることが、予測可能かつ既知の脈管損傷をブタモデルにおいて作製する、合理的に正確な方法であることを示す。
【0096】
図17は、ステント上でなされたポリ(dl−乳酸)のポリマーコーティングからのエベロリムス(黒丸)および40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン(黒四角)の溶出プロファイルを示す。エタノール/水(25/75比)へのポリマーからの化合物の溶出を、時間の関数として測定した。8時間点での40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンの放出は、エベロリムスより約1.7倍大きかった。後の時点で、40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシンの放出は、エベロリムスの放出より約1.5倍大きかった。したがって、本発明は、ポリマー基材および40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物から構成されるポリマー組成物を企図し、この組成物は、室温にて、ポリマー基材からエベロリムスの放出より少なくとも1.5倍の速度で、エタノール/水へと化合物を放出する。
【0097】
上記のことから、本発明の種々の目的および特徴がどのように適合されるかがわかり得る。エベロリムスまたはラパマイシンのRm値より実質的に大きいRm値を有する40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物を含むポリマー基材が、標的処置部位に投与するための組成物に使用されることが意図される。処置が必要とされる隣接された組織に配置された場合、40−O−ヒドロキシアルキル置換ラパマイシン化合物は、ポリマー基材から組織へと溶出する。組成物は、ラパマイシンまたはエベロリムスでの処置に反応する任意の状態(新生物疾患を含む)の処置に適切であり、この状態としては、炎症、感染、創傷治癒、移植拒絶反応および再狭窄が挙げられる。処置のために意図される状態は、ポリマー組成物が、処置が必要とされる部位(例えば、創傷、腫瘍または再狭窄、炎症もしくは感染の部位)に局所的に堆積されるか、配置され得る状態を含む。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、本明細書中のステントの発明を作製および使用する、種々の局面を示す。これらは、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【0099】
(実施例1)
(エベロリムスおよびその誘導体の調製)
(工程A.2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシエタノール(TBSグリコール)の合成)
154mlの乾燥THFおよび1.88gのNaHを、窒素雰囲気下で、500mLの丸底フラスコ冷却器中で攪拌する。4.4mLの乾燥エチレングリコールをこのフラスコに添加し、45分間の攪拌後に、大きい沈殿物を生じる。11.8gのtert−ブチルジメチルシリルクロリドをこのフラスコに添加し、そして激しい攪拌を45分間続ける。得られた混合物を950mLのエチルエーテルに注ぐ。このエーテルを420mLのブラインで洗浄し、そして溶液を硫酸ナトリウムで乾燥する。この生成物を、減圧下でのエーテルのエバポレーションによって濃縮し、そしてシリカゲルを充填された27×5.75cmのカラムを使用する、ヘキサン/Et2O(75:25 v/v)溶媒系を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。その生成物を、0℃で保存する。
【0100】
(工程B.2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシエチルトリフレート(TBSグリコールTrif)の合成)
4.22gのTBSグリコールおよび5.2gの2,6−ルチジンを、冷却器を備えた100mLの二つ口フラスコ中で、窒素下で激しく攪拌しながら合わせる。10.74gのトリフルオロメタンスルホン酸無水物を、このフラスコに、35〜45分間かけてゆっくりと添加し、黄色がかった褐色溶液を得る。次いで、この反応を、1mLのブラインを添加することによってクエンチし、そしてこの溶液を、100mLのブライン中で5回洗浄して、最終pH値を6〜7にする。この溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、そして減圧下での塩化メチレンのエバポレーションによって濃縮する。その生成物を、シリカゲルを充填した約24×3cmのフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用して、ヘキサン/Et2O(85:15 v/v)溶媒系を使用して精製し、次いで、0℃で保存する。
【0101】
(工程C.40−O−[2−(t−ブチルジメチルシリル)オキシ]エチル−ラパマイシン(TBS Rap)の合成)
400mgのラパマイシン、10mLのトルエン、および1.9mLの2,6−ルチジンを、55〜57℃に維持した50mLのフラスコ中で混合し、そして撹拌する。別の3mLのセプタムバイアル中で、940μLの2,6−ルチジンを1mLのトルエンに添加し、次いで、2.47gのTBSグリコールTrifを添加する。このバイアルの内容物を50mLフラスコに添加し、そして撹拌しながら、反応を1.5時間進行させる。480μLの2,6−ルチジンおよびさらなる1.236gのTBSグリコールTrifを、この反応フラスコに添加する。撹拌を、さらに1時間続ける。最後に、第二の部分の480μLの2,6−ルチジンおよび1.236gのTBSグリコールTrifをこの混合物に添加し、そしてこの混合物を、さらに1〜1.5時間攪拌する。得られる褐色の溶液を、多孔質ガラスフィルタを通して、減圧を使用して注ぐ。結晶様の沈澱物を、全ての色が除かれるまでトルエンで洗浄する。次いで、その濾液を、60mLの飽和NaHCO3溶液で2回洗浄し、次いで、ブラインで再度洗浄する。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧下で濃縮する。少量のヘキサン/EtOAc(40:60v/v)溶媒を使用して生成物を溶解し、そしてシリカゲルを充填した33×2cmのフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用し、そして同じ溶媒で展開して、精製を達成する。この溶媒を減圧下で除去し、そして生成物を5℃で保存する。
【0102】
(工程D.40−O−(2−ヒドロキシル)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)の合成プロセス。)
パイレックス(登録商標)ガラス皿(150×75mm)を、氷で満たし、そして撹拌プレート上に置く。少量の水を加えて、氷のスラリーを得る。第1に、60〜65mgのTBS−Rapを、8mLのメタノールを加えることによりガラスバイアル中で溶解する。0.8mL 1N HClを、バイアルに加え、この溶液を45分間撹拌し、次いで、3mL飽和NaHCO3水溶液を加えることにより中和する。5mLのブライン、続いて20mLのEtOAcを溶液に加え、その結果、二相が形成される。これらの相の混合後、分液ロートを使用して水層を除く。残る溶媒をブラインで洗って6〜7の最終pHにし、硫酸ナトリウムで乾燥する。硫酸ナトリウムを多孔性ガラスフィルターを使用して除き、そして溶媒を真空中で除去する。生じる濃縮物を、EtOAc/メタノール(97:3)中に溶解し、次いで、シリカゲルで充填された23×2cmフラッシュクロマトグラフィーカラムを使用し、同じ溶媒系を使用して展開して精製する。この溶媒を真空中で除去し、そして生成物を5℃で保存する。
【0103】
(実施例2)
(ポリ−dl−ラクチドコーティングにおけるエベロリムスを含むステントの調製)
100mgのポリ(dl−ラクチド)を、室温にて2mLアセトン中に溶解した。5mgのエベロリムスをバイアル中に置き、400μLのラクチド溶液を加えた。マイクロプロセッサ制御シリンジポンプを使用して、ステントストラット頂部表面にラクチド溶液を含む10μLの薬物を正確に分配した。溶媒の蒸発が、ステント上の単一ポリマー層を含む均一な薬物を生じた。
【0104】
15μLの体積を同様の様式において使用して、ステント頂部ストラット表面およびステント側部ストラット表面をコーティングし、ステントストラット頂部およびステントストラット側部をコーティングする単一層を生じた。
【0105】
(実施例3)
(ポリ−dl−ラクチドコーティングにおけるエベロリムスを含むステントからのインビトロでの薬物放出)
25%EtOHを含む2mLのpH7.4リン酸緩衝化生理食塩水溶液中にコーティングされたステントを配置し、0.05%(w/v)アジドナトリウムとともに保存し、37℃に保つことによりインビトロ薬物放出を、行なった。全緩衝液体積を薬物測定のために回収しながら、溶液を同じ体積の新鮮な緩衝液(無限の沈降)で置換することによりサンプリングを、定期的に行なった。図8は、この様式で微小分配される単一のポリマー層でコーティングされる2つの類似のステントからの薬物放出を例示する。
【0106】
(実施例4)
(動物移植試験)
(A.ブタにおける安全および用量設定試験のQCA結果)
薬物溶出ステントのための問題のある処置条件は、ひどく損傷した血管であるが、それは、再狭窄(新脈管内膜形成)の程度が脈管損傷の程度と共に直接増加するためである。実験がブタにおいて行われ、薬物でコーティングされたステント移植物の標的であった脈管のかなりの数が、血管形成術バルーンを使用して重篤に損傷された(平均およそ36%過度に伸ばした脈管の損傷)。これは、脈管の内膜および中間層の重篤な引き裂きおよび伸びを引き起こし、移植後28日で極端な再狭窄を生じた。このように、薬物の種々の用量の相対有効性および移植後28日での再狭窄の減少についての同じ金属ステント/ポリマープラットフォームにおけるポリマーに対する薬物重量比を評価することが可能であった。
【0107】
(試験プラットフォーム略語)
「剥き出しのステント」とは、波形の環設計の18.7mmの剥き出しの金属ステントをいう(すなわち、Biosensors Intl.,Inc.により製造されるような、現在市販される「S−ステント」)。
【0108】
「C−高(high)」とは、PDLA(ポリ−dl−乳酸)ポリマーコーティング中の325μgのエベロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0109】
「C−低(low)」とは、PDLAポリマーコーティング中に180μgのエベロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0110】
「ラパマイシン−高(Rapamycin−high)」とは、PDLAポリマーコーティング中に325μgのシロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0111】
「ラパマイシン−低(Rapamycin−low)」とは、PDLAポリマーコーティング中に180μgのシロリムスを有する18.7mm長のステントをいう。
【0112】
「C−U軽(light)」とは、PDLAポリマーの超薄型コーティングにおける275μgのエベロリムス(ポリマーに対して37%の薬物重量比)を有する18.7mm長のステントをいう。
【0113】
「C−U低(low)」とは、PDLAポリマーの超薄型コーティングにおける180μgのエベロリムスまたはその等価物(37%のポリマーに対する薬物重量比)を有する18.7mm長のステントをいう。
【0114】
「ポリマーステント」とは、PDLAポリマーコーティングのみで覆われた18.7mmのS−ステントをいう。
【0115】
「B/A」は、動脈に対する最後に膨張したバルーンの比であり、脈管の過度の伸びの程度の指標である。
【0116】
「平均管腔喪失(MLL)」とは、移植時でのステント内部管腔内で得られる3つの測定値の平均から、続く血管造影法での3つの測定値の平均を引いたものから決定され、そしてステント内部で形成された新脈管内膜の量を示す。
【0117】
(方法:)
波形環設計の金属ワイヤメッシュ骨格を使用する薬物溶出ステント(すなわち、S−ステント)およびポリマーコーティングを、異なる用量の薬物エベロリムスまたは薬物シロリムスのいずれかを使用して、外で育った未成育のブタ(あるいは28日より長く続く移植研究についてはユカタンミニブタ(Yucatan Minipig))に移植した。移植の際に、Quantitative Coronary Angiography(QCA)を実施して、ステント移植の前および後の脈管の直径を測定した。28日目、または以下の表に具体的に示される場合にはそれより長期間にて、動物をステントの領域においてQCAを再び受けさせ、その後安楽死させる。
【0118】
認可されたプロトコルに従う動物の安楽死に続いて、心臓を動物から除去し、加圧されたホルムアルデヒド溶液を冠動脈中に注入した。次いで、ステントを含む冠動脈のセグメントを、心臓表面から外科的に除去し、続いて、ダイヤモンド刃を用いての横断切片化のためにアクリルプラスチックブロック中に固定した。次いで、近位に、中央に、遠位に位置した脈管の切断面を含むアクリル材料の50ミクロン厚の切片を、光学的に磨き、顕微鏡のスライドに載せた。
【0119】
デジタルカメラを備える顕微鏡を使用して、スライドに載せられた脈管横断切片の高解像度画像を作製した。これらの画像を、以下のような手順により組織形態計測(histomorphometric)分析に供した:
PCベースのシステムのためのA.G.Heinzeスライド顕微鏡を介してコンピューター化された画像化システムImage Pro Plus 4.0を、以下の組織形態計測測定のために使用した:
1.平均断面積および管腔厚(脈管内膜/新脈管内膜−管腔境界により制限される領域);新脈管内膜(管腔と内弾性板(IEL)との間の領域、IELが欠けている場合、管腔と中間弾性板または外弾性板(EEL)の残りとの間の領域);中間(IELとEELとの間の領域);管サイズ(外膜領域を除くEELにより制限される領域);および外膜領域(周辺外膜組織、脂肪組織および心筋層ならびにEELの間の領域)。
2.損傷スコア。脈管損傷の程度を定量化するために、異なる壁構造の裂け目の量および長さに基づくスコアが、使用された。損傷の程度は、以下のように計算された:
0=インタクトなIEL
1=表面媒体層に曝される裂かれたIEL(少ない損傷)
2=より深い媒体層に曝される裂かれたIEL(媒体切開)
3=外膜領域に曝された裂かれたEEL
以下の表は、追跡管理QCAでのQCA分析(再狭窄に起因する平均管腔喪失の測定)の結果を示す。以下の表の「新脈管内膜領域」と題される欄の下のデータは、追跡管理(f/u)でのブタから除かれたステントおよび管の形態計測分析の結果を報告する:
(表1:「高度損傷」実験の結果)
【0120】
【表2】
(B.低損傷研究)
どれほどのエベロリムスの用量が軽く損傷した脈管(合併症でない冠動脈疾患および1つの新しい損傷を有する患者に、より特有である)において最良であるかをさらに決定するために、エベロリムス溶出ステントを、中程度から低い過度伸長損傷(およそ15%)を作製するために移植した。農場のブタを30日の実験のために使用し、そして成体のユカタンミニブタを三ヶ月の安全研究のために移植した。血管造影法の結果は、以下の通りであった:
(表2:「低い損傷」実験のQCA結果)
【0121】
【表3】
上のデータは、エベロリムスのC−UlowまたはC−Uhigh用量のいずれかが、低〜中程度に損傷した管における新内膜形成での45〜48%の減少を作り出すことを予測した。
【0122】
(C.形態計測分析)
ステント内に形成された、各々のステント内の全切断面領域および新しい組織(新脈管内膜)の切断面領域が、コンピューターにより測定され、狭窄領域の割合が、計算された。薬物およびポリマーの各々の形成に対する、平均的管損傷スコア、新脈管内膜領域、およびステントあたり3つのスライスを平均した狭窄領域の割合を、以下の表に示す。
【0123】
(表3:「高度損傷」実験の結果)
【0124】
【表4】
形態計測分析は、ブタ冠動脈モデルにおけるステント内狭窄を測定する高度に正確な方法と考えられる。高度損傷モデルにおいて、C−High調合は、28日での「高度損傷」実験における新脈管内膜形成の最も低い量を作製した;しかし、C−Uhighは、群の最も高度な損傷スコアを有し、0.45の非常に低い狭窄領域の割合をなお管理した。従って、データは、QCA分析の発見を独立して確かめ、そしてヒト臨床試験のための好ましいい調合としてC−Uhighの選択を支持する。
(D.組織学的分析)
C−Uhighおよびsirolimus−lowについてのスライドを、経験を積んだ心臓病理学者に提出した。彼は、炎症、フィブリンおよび新しく治療した血管管腔の内皮化を示す証拠について管断面を再調査した。シロリムス溶出ステントとエベロリムス溶出ステントとにより引き起こされた組織学的変化の間の違いは、見出せなかった。一般に、良く定着した内皮層を有する管は、良く治療されており、完治の証拠であり、28日での管恒常性であると見られる。図14は、移植後28日での管腔内部の内皮層の治療および定着を示す倍率91倍の管断面図の例である。
【0125】
(E.発表された結果に対する比較)
Carterらは、ブタにおいてPalmaz Schatz金属ステントを使用してシロリムスでコーティングしたステントの結果を発表した。発表されたCarterの結果の本明細書中のポリマーでコーティングしたステントを使用する実験結果に対して比較する表を、下に示す:
(表4)
【0126】
【表5】
(実施例5)
(高度な薬物装填を有するステントの調製)
長さ14.6mmの市販の金属波形環ステント(S−ステント、波形環設計:Biosensors Intl)を、血漿堆積プロセスを使用してパリレン「C」プライマーコーティングのおよそ2ミクロンの厚さの層でコーティングした。パリレンでコーティングしたステントを周囲温度で終夜キシレン中においた。50μg/μlのポリ乳酸(PDLA)を含むPDLA溶液を、2mLアセトン中100mgのPDLAに溶解することにより調製した。
【0127】
50%のポリマーに対する薬物比を含むステントを調製するために、5mgのエベロリムスを100μlのPDLA貯蔵溶液中に溶解した。さらなる20μLのアセトンを加えて、溶液を調合するのを補助した。ステントをキシレンから除去して、注意深くブロットして溶媒を除去した。総5.1μlのコーティング溶液を、各々のステントの外部表面上で調合した。ステントを周囲温度で乾燥して、終夜デシケーター中においた。これは、ステント当たり212μgのPDLA中に含まれる総212μgのエベロリムスを生じた。
【0128】
75%のポリマーに対する薬物比を含むステントを調製するために、5mgのエベロリムスおよび33.3μLの貯蔵PDLA溶液を、混合した。さらなる33.3μLのアセトンを加え、混合物を溶解した。ステントをキシレンから除去し、上と同様にブロットした。総2.8μLのコーティング溶液を、各ステントの外部表面上で調合した。ステントを、周囲温度で乾燥し、終夜デシケーター中に置いた。これは、ステント当たり70μgのPDLA中に含まれる総212μgのエベロリムスを生じた。
【0129】
最後のステントは、エベロリムス/PDLAのおよそ5ミクロン厚のコーティングまたはわずかに乳濁色の外見を示し、これは頂部表面および側部表面において円滑に分配され、金属ストラット表面に堅く接合された。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、40−O−ヒドロキシヘプチル(黒丸)、エベロリムス(40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン;白抜き四角)、ラパマイシン(シロリムス;黒三菱形)、パクリタキセル(白抜き三角)およびデキサメタゾン(黒四角)のアセトン濃縮(平衡水:balance water)の関数としての相対的な疎水性(Rm値)の半対数プロットである。
【図2】図2は、金属フィラメント本体を有し、そして本発明の1つの実施形態に従って形成される脈管内ステント(ステントは、収縮した状態を示す)を図示する。
【図3】図3は、金属フィラメント本体を有し、そして本発明の1つの実施形態に従って形成される脈管内ステント(ステントは、拡張した状態を示す)を図示する。
【図4】図4は、図2のステントのコーティングされた金属フィラメントの拡大した断面図である。
【図5】図5は、コーティングされた生体侵食性ポリマーステントの拡大した断面図である。
【図6A】図6Aおよび6Bは、ポリマーコーティングステントの生成における使用に適切なポリマーコーティング方法の略図である。
【図6B】図6Aおよび6Bは、ポリマーコーティングステントの生成における使用に適切なポリマーコーティング方法の略図である。
【図7】図7は、脈管部位に送達するためのカテーテルに取り付けられた生体侵食性ポリマーステントを示す。
【図8A】図8Aは、ポリマーコーティングを保持するステントからのエベロリムスの放出を示すプロットである。
【図8B】図8Bは、ポリマーコーティングを保持するステントからのエベロリムスの放出を示すプロットである。
【図9】図9は、脈管部位に展開されたステントの断面図である。
【図10A】図10A〜10Cは、剥き出し金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図10B】図10A〜10Cは、剥き出し金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図10C】図10A〜10Cは、剥き出し金属ステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11A】図11A〜11Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11B】図11A〜11Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図11C】図11A〜11Cは、ポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12A】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12B】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図12C】図12A〜12Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図13A】図13A〜13Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図13B】図13A〜13Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図13C】図13A〜13Cは、エバロリムスを含有するポリマーコーティングを有する金属フィラメントステントの移植28日後の血管の組織学的切片である。
【図14】図14は、図12A〜12Cに利用されるステントのフィラメントに見られる、脈管の拡大組織学的切片であり、治癒される血管壁を形成する新しい組織によって過剰増殖される。
【図15】図15は、種々の異なるステントを用いる、損傷スコアの関数としての移植28日後の狭窄領域のプロットである。
【図16】図16は、ステント移植時の損傷スコア(Y軸)とB/A(バルーン/動脈)比との間の相関プロットを示す。
【図17】図17は、放出された薬物の全量(μg)、エベロリムス(40−O−ヒドロキシエチルラパマイシン;黒丸)および40−O−ヒドロキシヘプチルラパマイシン;(黒四角)についての、時間の関数(時間)としてのステント上に保持されるポリマー基材(ポリ−dl−乳酸)のプロットを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管損傷部位で再狭窄を阻害するために、該部位での配置のための脈管内ステントであって、該脈管内ステントは、以下:
半径方向に拡張可能な、接続されたフィラメントの格子から形成される管状部材であって、各フィラメントは、外側の支持体表面、側面の支持体表面および内側の支持体表面を有する、管状部材、および
再狭窄阻害薬物を含む薬物放出層であって、該層は、該フィラメントの外面がコーティングされているが、内面はコーティングされていない、薬物放出層
を含む、脈管内ステント。
【請求項2】
前記層が、前記フィラメントの外面および側面をコーティングする、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記フィラメントと前記薬物放出層との間に堆積される下層をさらに含む、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記層が、(i)20〜60重量%のポリdl−ラクチドポリマー基材および(ii)40〜80重量%の抗再狭窄化合物から構成され、そして前記下層がポリマー下層である、請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記層に含まれる前記再狭窄阻害薬物が、大環状トリエン免疫抑制化合物である、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
請求項5に記載のステントであって、前記化合物が、以下
【化1】
の形態を有し、
ここで、(i)Rは、HまたはCH2−X−OHであり、そしてXは、1〜7個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基である、ステント。
【請求項7】
R’がHであり、そしてXが−CH2である、請求項6に記載のステント。
【請求項8】
前記ステント本体の内面が、第2の薬物を含む第2の薬物放出層でコーティングされている、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記フィラメントの外面上の前記層の深さが、不均一である、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
血管損傷部位で再狭窄を阻害する際に使用するための薬物溶出ステントを形成する方法であって、該方法は、以下:
半径方向に拡張可能な、接続されたフィラメントの格子から形成される管状部材を支持する工程であって、各フィラメントは、外側の支持体表面、側面の支持体表面および内側の支持体表面を有する、工程、および
該フィラメントの内面ではなく外面に硬化するのに有効な流体組成物を堆積し、該フィラメント上に堆積した後、再狭窄阻害薬物を含む薬物放出層を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
前記堆積する工程は、前記フィラメントの外面および側面の両方に前記組成物を堆積する工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記堆積する工程は、前記ステント本体が送達管に対して動く間、直接的に送達管から前記フィラメントの外面に減圧下で、前記流体組成物を排出する工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記管が、移動可能なアーム上に保存され、そしてアームの移動がコンピューターの制御下にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、前記流体組成物が、適切な溶媒中に非溶媒成分として、以下:(i)20〜60重量%のポリ−dl−ラクチドポリマー基材および(ii)40〜80重量%の抗再狭窄化合物を含む溶液である、方法。
【請求項15】
前記流体組成物が適用される前記ステント本体フィラメントの外面が、ポリマー下層でコーティングされる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ステント本体フィラメントの内面に第2の薬物を含む第2の層を適用する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積する工程が行われ、その結果前記ステントフィラメントの外面に不均一なコーティングを生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項1】
血管損傷部位で再狭窄を阻害するために、該部位での配置のための脈管内ステントであって、該脈管内ステントは、以下:
半径方向に拡張可能な、接続されたフィラメントの格子から形成される管状部材であって、各フィラメントは、外側の支持体表面、側面の支持体表面および内側の支持体表面を有する、管状部材、および
再狭窄阻害薬物を含む薬物放出層であって、該層は、該フィラメントの外面がコーティングされているが、内面はコーティングされていない、薬物放出層
を含む、脈管内ステント。
【請求項2】
前記層が、前記フィラメントの外面および側面をコーティングする、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記フィラメントと前記薬物放出層との間に堆積される下層をさらに含む、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記層が、(i)20〜60重量%のポリdl−ラクチドポリマー基材および(ii)40〜80重量%の抗再狭窄化合物から構成され、そして前記下層がポリマー下層である、請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記層に含まれる前記再狭窄阻害薬物が、大環状トリエン免疫抑制化合物である、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
請求項5に記載のステントであって、前記化合物が、以下
【化1】
の形態を有し、
ここで、(i)Rは、HまたはCH2−X−OHであり、そしてXは、1〜7個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基である、ステント。
【請求項7】
R’がHであり、そしてXが−CH2である、請求項6に記載のステント。
【請求項8】
前記ステント本体の内面が、第2の薬物を含む第2の薬物放出層でコーティングされている、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記フィラメントの外面上の前記層の深さが、不均一である、請求項1に記載のステント。
【請求項10】
血管損傷部位で再狭窄を阻害する際に使用するための薬物溶出ステントを形成する方法であって、該方法は、以下:
半径方向に拡張可能な、接続されたフィラメントの格子から形成される管状部材を支持する工程であって、各フィラメントは、外側の支持体表面、側面の支持体表面および内側の支持体表面を有する、工程、および
該フィラメントの内面ではなく外面に硬化するのに有効な流体組成物を堆積し、該フィラメント上に堆積した後、再狭窄阻害薬物を含む薬物放出層を形成する工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
前記堆積する工程は、前記フィラメントの外面および側面の両方に前記組成物を堆積する工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記堆積する工程は、前記ステント本体が送達管に対して動く間、直接的に送達管から前記フィラメントの外面に減圧下で、前記流体組成物を排出する工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記管が、移動可能なアーム上に保存され、そしてアームの移動がコンピューターの制御下にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、前記流体組成物が、適切な溶媒中に非溶媒成分として、以下:(i)20〜60重量%のポリ−dl−ラクチドポリマー基材および(ii)40〜80重量%の抗再狭窄化合物を含む溶液である、方法。
【請求項15】
前記流体組成物が適用される前記ステント本体フィラメントの外面が、ポリマー下層でコーティングされる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ステント本体フィラメントの内面に第2の薬物を含む第2の層を適用する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積する工程が行われ、その結果前記ステントフィラメントの外面に不均一なコーティングを生成する、請求項10に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−11847(P2009−11847A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209129(P2008−209129)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【分割の表示】特願2003−587323(P2003−587323)の分割
【原出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【出願人】(504395257)バイオセンサーズ インターナショナル グループ、リミテッド (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【分割の表示】特願2003−587323(P2003−587323)の分割
【原出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【出願人】(504395257)バイオセンサーズ インターナショナル グループ、リミテッド (16)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]