説明

大腸癌転移抑制剤

腫瘍形成や発生過程において重要な役割を担う癌抑制遺伝子APCの遺伝子産物と結合する蛋白質Asefの機能(APC遺伝子産物との結合またはグアニンヌクレオチド交換因子活性)阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤並びに大腸癌転移抑制方法を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)の機能阻害および/またはAsefの発現阻害を特徴とする、大腸癌転移抑制剤および大腸癌転移抑制方法に関する。さらに詳しくは、Asefの発現阻害、AsefとAPC(Adenomatous Polyposis Coli)遺伝子産物との結合阻害、またはAsefのグアニンヌクレオチド交換因子(Guanine nucleotide Exchange Factor;以下、GEFと略称する)活性の阻害を特徴とする、大腸癌転移抑制剤、Asef阻害剤、医薬組成物、大腸癌の防止剤および/または治療剤、大腸癌転移抑制方法、並びに大腸癌の防止方法および/または治療方法に関する。
【背景技術】
Asefは、本発明者らにより大腸癌抑制遺伝子関連蛋白質M1として見出され、既に特許出願されて公開された蛋白質である(特許文献1および非特許文献1)。当該蛋白質は619アミノ酸残基からなる蛋白質であり、Dbl相同(DH)ドメイン、プレックストリン(Preckstrin)相同(PH)ドメイン、Src相同3(SH3)ドメインをそのアミノ酸配列中に保有する。
Asefの作用の1つとして、低分子量GTP結合蛋白質ファミリーの1つであるRhoファミリーに属するRacに対する特異的なGEF活性をもつことが知られている。すなわち、Asefは、Racに結合しGDP/GTP交換反応を促進してRacを活性化し、Racが関与する細胞内情報伝達の下流に位置するNFκB、c−jun、SRE等に作用する。Rhoファミリーに属する蛋白質はアクチンネットワークの再構成に重要な役割を果たし、それにより細胞運動および細胞間接着を調節している。したがって、Asefは、細胞のラメリポディア(葉状仮足)や細胞膜のラッフリングを誘導し、細胞運動および細胞間接着に関与する可能性がある。
Asefは、癌抑制遺伝子APCの遺伝子産物と、該遺伝子産物のアルマジロリピートドメインを介して結合することが明らかになっている。AsefはAPC遺伝子産物によりGEF活性が正に調節される。そのため、APC遺伝子産物によるAsefを介した細胞膜のラッフリングやラメリポディア形成の誘導が、イヌ腎臓由来上皮様細胞であるMDCK細胞で認められている。またAsefは、細胞内においてAPC遺伝子産物と同様に、移動する細胞の微小管先端部位に集積している。このことから、細胞が大腸の絨突起先端(villus tip)ヘクリプト(crypt)から移動する際の移動制御の鍵をAsefが握っている可能性がある。
一方、癌抑制遺伝子APC(非特許文献2)は、家族性腺腫性ポリポーシス(familial adenomatous polyposis:FAP)の原因遺伝子として単離され、散発性大腸癌の約70%〜約80%でその変異が認められている。APC遺伝子産物(以下、APCと称する)は、2,843アミノ酸残基からなる約300kDaの巨大な蛋白質であり、そのアミノ酸配列中には、蛋白質間相互作用の役割を担うアルマジロリピートドメインが存在する。大腸癌細胞で認められる多くの体細胞APC変異は、変異クラスター領域(MCR)と呼ばれるその中央領域内で生じ、例えば、マイクロチュブール、EB1、hDLGへの結合部位、並びにβ−カテニンおよびアキシンに対する少なくとも幾つかの部位が切断された切断APC(truncated APC)を生じる(非特許文献4、5、6、7および8)。しかしながら、Asefへの結合に対応するAPCの領域は、アルマジロリピートドメインであり、ほとんどの変異APC中でその配列が維持されている(非特許文献6、7および8)。APCは、一種の癌遺伝子産物であるβ−カテニンに結合して分解を誘導する作用を有する(非特許文献2、3、4、5および6)。β−カテニンは、Wnt/Winglessシグナル伝達因子の1つであり、カドヘリンの細胞質側ドメインに結合して細胞接着に役割を果たすと同時に、発生過程や腫瘍形成において重要な役割を担っている(非特許文献9および10)。
Asefのアミノ酸配列およびその遺伝子の塩基配列は、GenBankにアクセッション番号AB042199として登録されている。また、APCのアミノ酸配列およびその遺伝子の塩基配列は、GenBankにアクセッション番号NM000038として登録されている。
以下、本明細書において引用した文献を列記する。
特許文献1:特開2001−057888号公報。
非特許文献1:カワサキ(Kawasaki,Y.)ら、「サイエンス(Science)」、2000年、第289巻、p.1194−1197。
非特許文献2:キンツラー(Kinzler,K.W.)ら、「セル(Cell)」、1996年、第87巻、p.159−170。
非特許文献3:ファーンヘッド(Fearnhead)ら、「ヒューマン モレキュラー ジェネティクス(Human Molecular Genetics)」、2001年、第10巻、p.721−733。
非特許文献4:ビーンズ(Bienz,M.)ら、「セル(Cell)」、2000年、第103巻、p.311−320。
非特許文献5:ペリファー(Perifer,M.)ら、「サイエンス(Science)」、2000年、第287巻、p.1606−1609。
非特許文献6:アキヤマ(Akiyama,T.)、「サイトカイン アンド グロースファクター レビューズ(Cytokine and Growth Factor Reviews)」、2000年、第11巻、p.273−282。
非特許文献7:ミヨシ(Miyoshi,Y.)ら、「ヒューマン モレキュラー ジェネティクス(Human Molecular Genetics)」、1992年、第1巻、p.229−233。
非特許文献8:ナガワ(Nagawa,H.)ら、「ヒューマン ミューテーション(Human Mutation)」、1993年、第2巻、p.425−434。
非特許文献9:「セル(Cell)」、1996年、第86巻、p.391−399。
非特許文献10:「ネイチャー(Nature)」、1996年、第382巻、p.638−642。
非特許文献11:ウォン(Wong,M.H.)ら、「プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンス(Proceeding of national academy of science USA)」、1996年、第93巻、p.9588−9593。
非特許文献12:オーシマ(Oshima,H.)ら、「キャンサー リサーチ(Cancer Research)」、1997年、第57巻、p.1644−1649。
非特許文献13:パディソン(Paddison,P.J.)ら、「ジーンズ アンド ディベロプメント(Genes and Development)」、2002年、第16巻、p.948−958。
【発明の開示】
Asefについては、上記のように腫瘍形成や発生過程において重要な役割を担う癌抑制遺伝子APCの遺伝子産物と結合することが知られているが、細胞におけるその作用および疾患との関連は未だ明らかにされていない。Asefの作用を明らかにして、その機能を調節することにより、Asefに起因する疾患の防止および治療が可能になる。
本発明者らは、AsefのGEF活性およびその細胞内局在から、細胞運動および細胞間接着へのAsefの関与可能性を推察し、Asefが大腸癌、特にAPC変異が認められる大腸癌において、大腸癌細胞の運動性を高め、その転移に関与することを見出した。そして、この知見を利用し、Asefの機能阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害により大腸癌転移が抑制されることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明の一態様はAsefの機能阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤に関する。
また本発明の一態様は、Asef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤に関する。
さらに本発明の一態様は、AsefのAPC遺伝子産物との結合阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤に関する。
さらにまた本発明の一態様は、AsefのGEF活性の阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤に関する。
また本発明の一態様は、Asefの機能阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法に関する。
さらに本発明の一態様は、Asef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法に関する。
さらにまた本発明の一態様は、AsefのAPC遺伝子産物との結合阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法に関する。
また本発明の一態様は、AsefのGEF活性の阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法に関する。
さらに本発明の一態様は、Asef遺伝子の発現に対するRNA干渉を利用することを特徴とするAsef阻害剤に関する。
さらにまた本発明の一態様は、Asef遺伝子の発現に対するRNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドを含んでなるAsef阻害剤に関する。
また本発明の一態様は、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに関する。
さらに本発明の一態様は、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに関する。
さらにまた本発明の一態様は、配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに関する。
また本発明の一態様は、配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに関する。
さらに本発明の一態様は、配列表の配列番号1または配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでなる前記Asef阻害剤に関する。
さらにまた本発明の一態様は、Asef遺伝子の発現に対するRNA干渉を利用することを特徴とするAsef阻害方法に関する。
また本発明の一態様は、Asef遺伝子の発現に対するRNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドを利用することを特徴とするAsef阻害方法に関する。
さらに本発明の一態様は、配列表の配列番号1または3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを利用することを特徴とする前記Asef阻害方法に関する。
さらにまた本発明の一態様は、前記いずれかのAsef阻害剤を含んでなる大腸癌転移抑制剤に関する。
また本発明の一態様は、配列表の配列番号1から4のいずれか1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでなる大腸癌転移抑制剤に関する。
さらに本発明の一態様は、前記いずれかのAsef阻害剤を用いることを特徴とする大腸癌転移抑制方法に関する。
さらにまた本発明の一態様は、配列表の配列番号1から4のいずれか1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする大腸癌転移抑制方法に関する。
また本発明の一態様は、前記いずれかの大腸癌転移抑制剤、または、前記いずれかのAsef阻害剤を含んでなる医薬組成物に関する。
さらに本発明の一態様は、前記いずれかの大腸癌転移抑制剤、または、前記いずれかのAsef阻害剤を含んでなる大腸癌の防止剤および/または治療剤に関する。
さらにまた本発明の一態様は、前記いずれかの大腸癌転移抑制剤、または、前記いずれかのAsef阻害剤を用いることを特徴とする大腸癌の防止方法および/または治療方法に関する。
【図面の簡単な説明】
第1図はAsefをコードするDNAを含むアデノウイルスを感染させたMDCK細胞の細胞間接着が低減したことを説明する。細胞間接着は、縦軸に示したように、凝集塊(Np)数を総細胞(Nc)数で割った数値で示した。図中、Asef−fullは全長Asef遺伝子;APC−armはAPC遺伝子のアルマジロリピートドメイン;Asef−ΔAPCはAPC結合部位を欠失させたAsef変異体遺伝子;Asef−ΔDHはDHドメインを欠失させたAsef変異体遺伝子を含むアデノウイルスで細胞を感染させたことを示す。結果は3回の実験の平均値±標準偏差(SD)である。
第2図はAsef遺伝子発現によるMDCK細胞の細胞運動性の亢進が、アルマジロリピートドメインを含むAPC変異体(APC−arm、APC−876およびAPC−1309)遺伝子の共発現によりさらに促進されたこと、並びにAsef遺伝子発現により亢進された運動性および細胞本来の運動性がAsef−ΔDH遺伝子またはAsef−ABR(AsefのAPC結合領域)遺伝子の発現により低減したことを説明する。結果は、親細胞の遊走に対する相対的遊走(relative migration)で表した。図中Mockとは、空ベクターを導入した細胞を意味する。
第3図aはSW480細胞中でAsefとAPC切断変異体が結合したことを説明する。結合の解析は、抗Asef抗体(Anti−Asef)を用いて免疫沈降により行った。図中、+は免疫沈降前に抗原でプレインキュベーションした抗体を用いたことを示す。
第3図bはAsef−ABR(AsefのAPC結合領域)が、インビトロでのIVT−APC−armとGST−Asef−fullの相互作用を、用量依存的に阻害したことを説明する。図中、MW.は分子量マーカーを示す。
第4図はAsef遺伝子またはAPC結合部位を欠失させたAsef遺伝子(Asef−ΔAPC)の発現により大腸癌細胞SW480の運動性が亢進したが、GEF領域を欠失させたAsef遺伝子(Asef−ΔDH)を発現させても各種大腸癌細胞(SW480、DLD−1、HCT15、WiDrおよびHCT116)の運動性は変化しないか、あるいは低減したことを説明する。結果は、対照であるLacZ遺伝子を発現させた各細胞の遊走に対する相対的遊走(relative migration)で表した。
第5図はAsef遺伝子およびAPC遺伝子の発現をそれぞれ阻害するショートヘアピンRNAであるshRNA−AsefおよびshRNA−APCが、いずれもAPC変異を有する大腸癌細胞(SW480およびWiDr)の運動性を低減させたが、正常APCを有する大腸癌細胞(HCT116およびLS180)の運動性には影響しなかったことを説明する。比較対照として、Asef遺伝子またはAPC遺伝子の発現を阻害しないショートヘアピンRNAであるmut−shRNA−Asefおよびmut−shRNA−APCを用いた。結果は、mut−shRNA−Asefを遺伝子導入した各細胞の遊走に対する相対的遊走(relative migration)で表した。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、参照によりここに援用されるところの、日本国特許出願番号第2002−382083号からの優先権を請求するものである。
本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、別途定義されていない限り、当業者により普通に理解される意味を持つ。本明細書中では当業者に既知の種々の方法が参照されている。そのような引用されている公知の方法を開示する刊行物等の資料は、引用により、本明細書中にそれらの全体が完全に記載されているものと見なす。
以下、本発明について、発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。以下の詳細な説明は例示であり、説明のためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
本発明においては、Asefが上皮由来細胞の細胞間接着を低減させると共にその運動性を顕著に促進することを見出した。さらに、これらの作用が、APCにより調節されており、特に大多数の大腸癌細胞で同定されている断片化した変異APCがAsefを効率よく活性化することを見出した。これらから、変異APCとAsefとの複合体形成が、大腸癌細胞の異常な運動性の原因の1つと考えた。つまり、腸管上皮細胞の上方への遊走、すなわちクリプトから絨突起先端への遊走に当該複合体が関与していると推定した。実際、APC遺伝子の強制発現が腸管上皮において細胞遊走の異常を引き起こすことが知られている(非特許文献11)。APCノックアウトマウスにおいて、初期腺腫細胞の増殖速度は正常クリプト上皮細胞のものと同じであるが、腺腫細胞はクリプト−絨突起軸に沿う有向遊走をしないことが知られている(非特許文献12)。
このように、APC切断変異体によるAsefの活性化に基づいた異常な遊走態様は、腺腫形成と同様に腫瘍の侵襲性悪性腫瘍への悪化に重要であると考えられる。また、AsefのGEF領域を欠失させた変異体は、細胞間接着を低減させたり細胞運動性を促進したりしないことから、GEF活性がAsefのかかる機能に重要であると推定した。
本発明においては、Asefと変異APCの結合を阻害するドミナントネガティブ変異体、例えばAsefのアミノ酸配列中のAPC結合領域(第73番目から第126番目までのアミノ酸配列)からなる変異体またはAsefのGEF領域を欠失させた変異体を用いて、変異APCを発現する大腸癌細胞の運動性を阻害できることを明らかにした。また、Asef遺伝子またはAPC遺伝子の発現阻害により、同様に、変異APCを発現する大腸癌細胞の運動性を阻害できることを明らかにした。さらに、上記ドミナントネガティブ変異体を発現させたヒト大腸癌細胞の造腫瘍性、増殖性、さらに転移が、かかる変異体を発現させなかった細胞と比較して阻害されることを、重度複合免疫不全マウス(SCIDマウス)を用いたインビボ(in vivo)の検討において見出した。このような阻害は、ドミナントネガティブ変異体を発現させたヒト大腸癌細胞として、変異体発現後にクローン化して得た細胞を用いた検討においても、また標識化した変異体を発現させた後に該標識を指標にして変異体が発現された細胞をセルソーターにより90%以上に濃縮して得たミックスポピュレーションを用いた検討(mix population法)においても、同様に認められた。
このように、Asefの機能阻害により、細胞の運動性を阻害でき、さらには細胞の増腫瘍性並びに腫瘍細胞の増殖性および/または転移を抑制できる。細胞の運動性の阻害はAsef遺伝子またはAPC遺伝子の発現阻害によっても達成できるため、これら各遺伝子の発現阻害により細胞の増腫瘍性並びに腫瘍細胞の増殖性および/または転移の抑制が可能である。
上記知見に基づいて、本発明は、Asefの阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤および大腸癌転移抑制方法を提供する。当該大腸癌転移抑制剤および大腸癌転移抑制方法は、Asefの機能阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害を特徴とする。
Asef遺伝子の発現阻害は、例えばAsef遺伝子の発現に対するRNA干渉(RNA interference)効果を利用することによって実現可能である。RNA干渉は、RNAを利用して遺伝子の発現を抑制する方法として、近年報告された方法である(非特許文献13)。具体的には、Asef遺伝子の発現に対するRNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドを使用して、Asef遺伝子の発現阻害が可能である。かかるオリゴヌクレオチドとして、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるcDNAが例示できる。また、当該cDNAの相補的RNA(配列表の配列番号3)も同様に使用できる。かかるcDNAを含むベクターまたはその相補的RNAを細胞に導入することにより、Asef遺伝子の発現阻害を実現できる。ベクターまたはRNAの細胞への導入は、自体公知の方法、例えばリポフェクション等を利用して実施可能である。したがって、上記オリゴヌクレオチドを含むAsef阻害剤も、本発明の範囲に包含される。かかるAsef阻害剤に含まれるオリゴヌクレオチドは、1種であってよく、また2種以上が含まれていてもよい。また、Asef遺伝子の発現阻害は、Asef遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用によっても、実現可能である。上記RNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドまたは上記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、Asef遺伝子の塩基配列を基に設計したオリゴヌクレオチドから、Asef遺伝子の発現系を用いて、その発現を特異的に阻害するものを選択することにより得ることができる。
Asefの機能阻害は、例えばAsefとAPCとの結合阻害、またはAsefのGEF活性の阻害により実現可能である。阻害の対象となるAsefとAPCとの結合は、好ましくはAsefと正常なAPCとの結合、より好ましくはAsefとAPC変異体との結合、さらに好ましくはAsefとAPC切断変異体との結合、さらにより好ましくはAsefとアルマジロリピートドメインを含むAPC切断変異体との結合である。アルマジロリピートドメインを含むAPC切断変異体としては、APCのアミノ酸配列のN末端第1番目から第876番目の連続するアミノ酸残基からなるポリペプチド、またはAPCのアミノ酸配列のN末端第1番目から第1309番目の連続するアミノ酸残基からなるポリペプチドを例示できる。これらポリペプチドは、APC切断変異体として、多くの大腸癌および家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)で同定されたものである。
AsefとAPCとの結合阻害は、該結合に対するAsefのドミナントネガティブ変異体を使用して実現できる。例えば、APCと結合できるが、GEF活性を示さないAsef変異体は、AsefとAPCとの結合阻害剤として使用可能である。かかるAsef変異体は、Asefのアミノ酸配列に基づいて設計し、APCとの結合活性を常法により試験することにより得られる。具体的には、AsefのGEF領域を欠失させた変異体が例示できる。あるいはAsefのアミノ酸配列中のAPC結合領域(第73番目から第126番目までのアミノ酸配列)からなるポリペプチドが好ましく用いられる。このポリペブチドのアミノ酸配列に基づいて設計したポリペプチドから、AsefとAPCの結合を阻害するものを選択して用いることも可能である。また、APC遺伝子の発現阻害によっても、AsefとAPCとの結合阻害は達成できる。APC遺伝子の発現阻害は、APC遺伝子の発現に対するRNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドを用いて実現可能である。かかるオリゴヌクレオチドとして、配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるcDNAが例示できる。また、当該cDNAの相補的RNA(配列表の配列番号4)も同様に使用できる。あるいは、APC遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用によっても、APC遺伝子の発現阻害は実現可能である。上記RNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドまたは上記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、APC遺伝子の塩基配列を基に設計したオリゴヌクレオチドから、APC遺伝子の発現系を用いて、その発現を特異的に阻害するものを選択することにより得ることができる。
AsefのGEF活性の阻害は、例えばGEF活性の阻害剤を、Asefを用いて同定し使用することにより実現できる。また、Asef遺伝子の発現を阻害する化合物やAsefとAPCとの結合を阻害する化合物を、Asef遺伝子を用いて、またはAsefおよびAPCを用いて同定して使用してもよい。化合物を同定するためのアッセイ系は、自体公知のスクリーニング系を利用して構築可能である。
Asefの機能および/または発現を阻害する上記物質を有効成分として含むAsef阻害剤を用いることにより、大腸癌の転移を抑制することが可能である。すなわち、Asef阻害剤を含んでなる大腸癌転移抑制剤および上記Asef阻害剤を用いることを特徴とする大腸癌転移抑制方法も、本発明の範囲に包含される。具体的には、例えば、配列表の配列番号1から配列番号4に記載のいずれか1つの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでなる大腸癌転移抑制剤、並びにこれらオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを用いることを特徴とする大腸癌転移抑制方法を挙げることができる。
本発明に係る大腸癌転移抑制剤またはAsef阻害剤を適用することにより、大腸癌の造腫瘍性および転移を抑制することができる。すなわち、上記大腸癌転移抑制剤またはAsef阻害剤は、大腸癌および大腸癌転移の防止および/または治療に使用することができる。この観点から、上記大腸癌転移抑制剤またはAsef阻害剤を有効成分としてその有効量含んでなる大腸癌の防止剤および/または治療剤も本発明の範囲に包含される。また、上記大腸癌転移抑制剤またはAsef阻害剤を使用することを特徴とする、大腸癌の防止方法および/または治療方法を提供可能である。
このように、本発明においては、上記大腸癌転移抑制剤またはAsef阻害剤を含む医薬組成物を提供することが可能である。
本発明に係る医薬組成物の必要な用量範囲は、含有される成分の有効性、投与経路、処方の性質、対象の症状の性質、および担当医師の判断等に応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg〜1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回〜数回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
Asef遺伝子またはAPC遺伝子の発現を阻害し得るオリゴヌクレオチドを用いるときは、遺伝子治療を利用して、当該オリゴヌクレオチドを対象中の細胞内で生成させてもよい。遺伝子治療は公知の方法が利用でき、例えば、オリゴヌクレオチドを注射により直接投与する非ウイルス性のトランスフェクション法、あるいはウイルスベクターを利用したトランスフェクション法のいずれも適用することができる。非ウイルス性のトランスフェクション法においては、オリゴヌクレオチドを注射により直接投与する方法のほか、オリゴヌクレオチドをリポソーム等のリン脂質小胞に封入し、そのリポソームを投与する方法が推奨される。リポソームとしては、カチオン性リポソームの使用がより好ましい。ウイルスベクターを使用するトランスフェクション法においてオリゴヌクレオチドを組込んでトランスフェクションに使用するベクターとしては、好ましくはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター等のDNAウイルスベクター、あるいはRNAウイルスベクターが挙げられる。これらウイルスベクターを用いることにより効率良い投与が可能である。さらに、ウイルスベクターを用いるトランスフェクション法においても、該ベクターをリポソームに封入して、そのリポソームを投与する方法が推奨される。
本発明に係る医薬は、大腸癌転移抑制剤またはAsef阻害剤の有効成分のみを含む医薬となしてもよいが、通常は、1種または2種以上の医薬用担体を用いて医薬組成物を製造することが好ましい。
本発明に係る医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
医薬用担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤や賦形剤等を例示でき、これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択使用される。かかる担体としては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの混合物が挙げられる。担体はこれらに限らず、一般的な医薬の製造に用いられる物質であれば、所望に応じていずれを用いることもできる。
本発明に係る医薬組成物は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することも可能である。
本発明の医薬組成物を投与するときには、該医薬組成物を単独で使用してもよく、あるいは治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。例えば、非経口経路として、通常の静脈内投与、動脈内投与のほか、皮下、皮内、筋肉内等への投与を挙げることができる。あるいは経口による投与も可能である。さらに、経粘膜投与または経皮投与も可能である。あるいは、腫瘍に注射等により直接投与することができる。
投与形態は、当業者によく知られている形態から適宜選択でき、その代表的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等の固体投与形態や、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、懸濁剤、脂肪乳剤、リポソーム製剤、シクロデキストリン等の包接体、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれる。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤(点滴剤、注射剤)、経鼻剤、吸入剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等に分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形、調製することができる。
本発明に係る医薬組成物を遺伝子治療に使用する場合、一般的には、注射剤、点滴剤、あるいはリポソーム製剤として調製することが好ましい。また、プロタミン等の遺伝子導入効率を高める物質と共に投与されるような形態に調製することもできる。
散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤は、ラクトース、グルコース、シュークロースおよびマンニトール等の賦形剤、澱粉およびアルギン酸ソーダ等の崩壊剤、マグネシウムステアレートおよびタルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースおよびゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。錠剤やカプセルを製造するには、固体の製薬担体が用いられる。
懸濁剤は、水、シュークロース、ソルビトールおよびフラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール(PEG)等のグリコール類、油類を使用して製造できる。
注射用の溶液は、塩溶液、グルコース溶液、または塩水とグルコース溶液の混合物からなる担体を用いて調製可能である。
リポソーム化は、例えばリン脂質を有機溶媒(クロロホルム等)に溶解した溶液に、当該物質を溶媒(エタノール等)に溶解した溶液を加えた後、溶媒を留去し、これにリン酸緩衝液を加え、振とう、超音波処理および遠心処理した後、上清をろ過処理して回収することにより行い得る。
脂肪乳剤化は、例えば当該物質、油成分(大豆油、ゴマ油およびオリーブ油等の植物油並びにMCT等)、乳化剤 リン脂質等)等を混合、加熱して溶液とした後に、必要量の水を加え、乳化機(ホモジナイザー、例えば高圧噴射型や超音波型等)を用いて、乳化・均質化処理して行い得る。また、これを凍結乾燥化することも可能である。なお、脂肪乳剤化するとき、乳化助剤を添加してもよく、乳化助剤としては、例えばグリセリンや糖類(例えばブドウ糖、ソルビトールおよび果糖等)が例示される。
シクロデキストリン包接化は、例えば当該物質を溶媒(エタノール等)に溶解した溶液に、シクロデキストリンを水等に加温溶解した溶液を加えた後、冷却して析出した沈殿をろ過し、滅菌乾燥することにより行い得る。この際、使用されるシクロデキストリンは、当該物質の大きさに応じて、空隙直径の異なるシクロデキストリン(α、β、γ型)を適宜選択すればよい。
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
まず、以下の実施例で用いたAsefまたはAPC、あるいはそれらの変異体について説明する。当該蛋白質および当該変異体は、略称で記載する。
Asef−fullは、野生型の全長Asefからなる蛋白質である。ヘマグルチニン(Haemagglutinin;HA)タグを付加した融合蛋白質(HA−tagged wild−type Asef)、またはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(Glutathione S−transferase;GST)との融合蛋白質(GST−Asef−full)として発現させた。
Asef−ΔAPCは、AsefのN末端側APC結合領域を欠失させた変異体である。この変異体は野生型Asefより強いGEF活性を有する。
Asef−ΔDHは、AsefのDH領域(GEF領域)を欠失させた変異体である。該変異体はGEF活性を示さない。
Asef−ABRは、Asefのアミノ酸配列中のAPC結合領域(第73番目から第126番目までのアミノ酸配列)からなるポリペプチドである。マルトース結合たんぱく質(MBP)との融合蛋白質(MBP−Asef−ABR)として発現させた。
APC−armは、APCのアルマジロリピートドメインからなるポリペプチドであり、Mycタグを付加した融合蛋白質(Myc−tagged APC−arm)として発現させた。
APC−876は、APCのアミノ酸配列のN末端第1番目から第876番目までの連続するアミノ酸残基からなるポリペプチドであり、アルマジロリピートドメインを含んでいる。
APC−1309は、APCのアミノ酸配列のN末端第1番目から第1309番目までの連続するアミノ酸残基からなるポリペプチドであり、アルマジロリピートドメインを含んでいる。
APC−876およびAPC−1309は、大腸癌および家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)で同定されたAPC切断変異体である。
これら蛋白質またはポリペプチドのいずれかをコードするDNAを含むアデノウイルスの作製は、アデノ−XTMエクスプレッションシステム(クロンテック社)を用いて、各蛋白質をコードするポリヌクレオチドを、アデノウイルスベクターpAdeno−Xにクローン化することにより行った。以下、AdAsef−fullとは、Asef−fullをコードするDNAを含むアデノウイルスを意味する。上記その他の蛋白質またはポリペプチドをコードするDNAを含むアデノウイルスも同様に、各DNAの呼称にAdを付して表わす。
上記蛋白質またはポリペプチドのいずれかをコードするDNAを含むプラスミドの作製は、常法にしたがって行った。
細胞の培養および上記プラスミドのトランスフェクションは、以下のように行った。MDCK細胞(正常なイヌの腎から樹立された上皮様細胞株)およびWiDr細胞はダルベッコ改変イーグル培地に10%牛胎児血清(FCS)を加えて培養した。SW480細胞はレイボビッツL−15培地に10%FCSを加えて培養した。DLD−1細胞およびHCT15細胞は、RPMI1640培地に10%FCSを加えて培養した。HCT116細胞はマッコイ5A培地に10%FCSを加えて培養した。これら細胞に、リポフェクトアミン2000(ライフテクノロジー社)を用いて、上記プラスミドをトランスフェクションした。
蛋白質の発現および作製は、次のように行った。GSTとの融合蛋白質またはMBPとの融合蛋白質は、大腸菌で合成し、グルタチオン−セファロース(GSH−Sepharose;ファルマシア社)またはアミロースレジン(amylose resin;ニューイングランドバイオラボズ社)への吸着により単離した。
RNA干渉試験に用いるショートヘアピンRNA(以下、shRNAと略称する)である、shRNA−AsefおよびshRNA−APCは、それぞれAsef遺伝子およびAPC遺伝子の発現を抑制するように設計した。shRNA−AsefおよびshRNA−APCの塩基配列は配列表の配列番号1および配列番号2にそれぞれ記載した。また、shRNA−AsefおよびshRNA−APCにそれぞれ変異を加え、Asef遺伝子およびAPC遺伝子の発現を抑制しないshRNAである、mut−shRNA−Asefおよびmut−shRNA−APCを作成し、配列表の配列番号5および配列番号6にそれぞれ記載した。
【実施例1】
細胞間接着および細胞形態に対するAsefの効果を検討するため、MDCK細胞に上記アデノウイルスを感染させた。使用したアデノウイルスは、AdAsef−full、AdAsef−ΔAPC、AdAsef−ΔDHおよびAdAPC−armである。対照として、AdLacZを用いた。MDCK細胞へのアデノウイルスの感染効率は、免疫蛍光染色での検討により、90%以上であることを確認した。また、これらアデノウイルスはそれぞれ、MDCK細胞に感染させると予想通りの大きさの蛋白質を生産することを、イムノブロッティングにより確認した。
細胞形態は、感染させた細胞を12ウエルの組織培養プレートの各ウエルに細胞数3.0×10となるように播種し、37℃で3時間インキュベーションした後、アデノウイルスで感染させ〔感染多重度:multiplicity of infection(m.o.i)=200〕、さらに36時間培養後、位相差顕微鏡で観察した。AdAsef−ΔAPCで感染させた細胞は基底上で平面状になり、膜のラッフリングおよびラメリポディアを示した。一方、AdAsef−ΔDHで感染させた細胞は、形態変化を示さず、未感染の細胞と変わりなかった。
細胞間接着は、感染させた細胞を0.02%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中でプレートから剥がし、20回ピペッティングした後に、細胞クラスター(粒子)の数を計数した。細胞クラスターを総細胞数で割った値(Np/Nc)で、細胞間接着を評価した。ピペッティングにより分散させると、AdAsef−ΔAPCで感染させた細胞は効率よく分離したが、未感染細胞およびAdAsef−ΔDHまたはAdLacZで感染させた細胞は凝集塊のままであった(第1図)。これらの結果から、Asefが細胞間接着を低減させる機能を持つこと、またそのGEF活性がこの機能に必須であることが明らかになった。
さらに、AdAsef−fullまたはAdAsef−ΔAPCを過剰発現させると、細胞間接触部位に局在するE−カドヘリン量が減少し、細胞質に局在するE−カドヘリン量が増加することを、抗E−カドヘリン抗体を使用した免疫組織化学分析により明らかにした。免疫組織化学分析は、アデノウイルス感染36時間後に、MDCK細胞をPBS中3.7%のホルムアルデヒドで固定して行った。固定した細胞はE−カドヘリンに対するラットモノクローナル抗体(ECCD−2;カルビオケム社)およびトリメチルローダミンイソチオシアネート結合ファロイジン(TRITC−conjugated phalloidin;モレキュラープローブス社)、またはE−カドヘリンに対するラットモノクローナル抗体およびβ−カテニンに対するウサギポリクローナル抗体(サンタクルスバイオテクノロジー社)で室温にて60分間二重染色した。抗E−カドヘリン抗体および抗β−カテニン抗体により得られた染色パターンは、フルオレセインイソチオシアネート標識抗ラットIgG抗体およびTRITC標識抗ラビットIgG抗体を用いて可視化した。細胞はカールツァイスLSM510レーザースキャニングマイクロスコープを用いて撮影した。抗β−カテニン抗体で染色すると、細胞間接触部位に局在するβ−カテニン量が減少したことが明らかになったが、この減少はE−カドヘリンほど顕著ではなかった。一方、AdAsef−ΔDHまたはAdLacZで感染させた細胞は、E−カドヘリンまたはβ−カテニンの局在について変化を示さなかった。これらから、AsefのGEF活性がこれら分子の局在の変化に重要であると考えられた。MDCK細胞の溶解物のイムノブロット解析によれば、E−カドヘリンまたはβ−カテニンの総量はAdAsef−fullまたはAdAsef−ΔAPCでの感染で著しい変化はなかった。これらから、Asef遺伝子の発現の結果生じる細胞間接着の低減は、細胞間接触部位でのE−カドヘリンおよびβ−カテニンの減少によることが判明した。
【実施例2】
細胞の運動性に対するAsefの効果を、上記プラスミドを用いてAsef遺伝子またはAPC遺伝子、あるいはそれらの変異体遺伝子を発現させたMDCK細胞を用いて検討した。細胞の運動性は、トランスウエルマイグレーションチャンバーを用いた細胞遊走試験により行った。該チャンバーは、MDCK細胞には直径12mmでポアサイズ12μmのものを用いた(コスター社)。トランスフェクション18時間後に、細胞数3.0×10のMDCK細胞をチャンバーの上室に加え、18時間で上室の下側へ遊走させた。細胞遊走は、ポリカーボネートフィルターの低層側に遊走した細胞を計数して測定した。
Asef−fullをコードするDNAを含むプラスミドをトランスフェクションした細胞は、親細胞(MDCK)またはベクターをトランスフェクションした細胞(Mock)と比較して運動性が促進した(第2図)。Asef−full遺伝子と共に、APC−arm遺伝子、APC−876遺伝子およびAPC−1309遺伝子のいずれか1つを共発現させた細胞は、Asef−full遺伝子のみをトランスフェクションしたものよりも運動性が促進した。Asefの細胞運動性促進能に対するAPCの効果は、APC−arm、APC−876およびAPC−1309の方がAPC−fullより強かった。一方、APC−armのみでは遊走を刺激しなかった。また、Asef−ΔAPC遺伝子をトランスフェクションした細胞は、Asef−full遺伝子およびAPC−arm遺伝子をコトランスフェクションしたものよりもさらに亢進した遊走反応を示した。これらから、AsefはMDCK細胞の遊走を促進する能力を保有することが明らかになった。Asefのこのような能力は、APC、特にアルマジロリピートドメインを含むAPC切断変異体(Asef−Arm)によりさらに促進されることが判明した。さらに、Asef−ΔDHがMDCK細胞の遊走を促進しなかったことから、AsefのGEF活性がこのような遊走刺激活性に必要であると考えられた。
一方、Asef−ABR遺伝子をAPC−1309遺伝子と共に発現させたとき、細胞遊走の促進はほぼ完全に阻害された。Asef−ΔDHもAPC−1309が介する細胞遊走の促進を阻害した。これらから、大腸癌またはFAPで同定されたAPC変異体であるAPC−879およびAPC−1309は、Asefと相互作用してその活性を促進し、それにより細胞遊走を促進すると考えられた。しかし、全長APC遺伝子をMDCK細胞にトランスフェクションしても、Asefが誘導する遊走の促進はみられなかった(第2図)。このことから、大腸癌細胞においてAPCが変異による切断によって活性化されないと、APCはAsefの有効な活性剤にはならないと考えられた。
次に、AsefおよびAPC切断変異体を含むことが知られているSW480細胞の運動性について検討した。Asef−ABRをコードするDNAを含むプラスミドをSW480細胞にトランスフェクションしたところ、当該細胞の遊走は、親株またはMockより約50%低減した(第2図)。同様に、Asef−ΔDHプラスミドをトランスフェクションしたSW480細胞の遊走は約40%低減した。このことから、細胞で発現されたAsef−ABRまたはAsef−ΔDHが、AsefとAPC切断変異体の結合に対してドミナントネガティブに作用し、Asef−ABRまたはAsef−ΔDHによる細胞遊走を阻害することが判明した。
【実施例3】
大腸癌細胞において、APC切断変異体とAsefとの結合について検討した。まず、細胞数5.0×10のSW480細胞を、1%トリトンX−100を含むバッファーA〔50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、5mM EDTA、2mM バナジン酸ナトリウム(NaVO)、10mM フッ化ナトリウム〕500μl中で溶解した。溶解物を2μgの抗Asef抗体で4℃にて1時間インキュベーションした後、4℃で2時間かけて免疫複合体をプロテインG−セファロース6Bに吸着させた。0.1%トリトンX−100を含むバッファーAで何度も洗浄した後、試料をSDS−PAGEにより分離し、ポリビニリデン ジフルオリド膜フィルター(Immobilon P;ミリポア社)に転写した。ブロットは、アルカリホスファターゼを結合させたマウス抗ウサギIgG抗体(プロメガ社)を二次抗体として使用して、イムノブロッティング分析に付した。用いたウサギ抗Asefポリクローナル抗体は、従前の方法で作製した(非特許文献1)。
その結果、AsefはAPC切断変異体と共免疫沈降した(第3図a)。また、AsefとAPC変異体との共沈は、抗体をその抗原の過剰量とともに4℃で2時間プレインキュベーションすることにより阻害された。これらから、AsefはSW480細胞中でAPC変異体と協働することが判明した。
次に、インビトロにおいて、GST−Asef−fullとAPC−armとを共免疫沈降させ、Asef−ABR添加の影響を検討した。まず、APC−Armをインビトロ翻訳により作製し(IVT−APC−Arm)、セファロースに結合させたGST−Asef−fullとMBP−Asef−ABRの存在下でインキュベーションした。MBP−Asef−ABRに対するAPC−Arm量の比は、第3図bに示したように変化させた。GST−Asef−full−Sepharoseに結合したAPC−armは、SDS−PAGEに次いでオートラジオグラフィーを行って可視化した(第3図bの上パネル)。また、反応混合物に添加したMBP−Asef−ABRはゲルをクマシーブルー染色することにより可視化した(第3図bの下パネル)。その結果、Asef−ABRを加えるとその量の増加に伴って、GST−Asef−fullとAPC−armとの共免疫沈降物が用量依存的に減少した。すなわち、インビトロにおいて、Asef−ABRがAsefとAPC変異体との結合を阻害することが明らかになった。
このように、AsefとAPC変異体との結合をドミナントネガティブな形で阻害するAsef−ABRを用いて、SW480細胞の遊走を阻害することができた。
【実施例4】
各種大腸癌細胞株に、Asef−full、Asef−ΔAPC、またはAsef−ΔDHをコードするDNAを含むアデノウイルスを感染させ、実施例2と同様に細胞遊走試験を行った。用いた大腸癌細胞株は、SW480、DLD−1、HCT15、WiDrおよびHCT116である。SW480細胞、DLD−1細胞、HCT15細胞、およびWiDr細胞は、APC切断変異体を含む。HCT116細胞は、正常APCを含むが、β−カテニンに変異が認められる。
結果を第4図に示す。SW480細胞は、AdAsef−fullまたはAdAsef−ΔAPCを感染させると、その運動性が促進した。また、SW480細胞、DLD−1細胞、HCT15細胞およびWiDr細胞は、AdAsef−ΔDHで感染させると、その運動性が部分的に阻害された。一方、HCT116細胞は、AdAsef−ΔDHにより阻害されなかった。このことから、HCT116中の全長APCはAsefを活性化できないと考えられた。これらの結果から、AsefはAPC切断変異体を含む大腸癌細胞で活性化されるが、正常APCを含む細胞では活性化されないまたは活性化されにくいことが判明した。また、当該活性化は、Asef−ΔDHにより阻害されることが明らかになった。
【実施例5】
大腸癌細胞の遊走におけるAsefとAPC変異体との相互作用を、RNA干渉試験により検討した。当該試験は、pSHAG−1ベクターシステムを用いて行った(非特許文献13)。用いた大腸癌細胞株は、SW480細胞、WiDr細胞、LS180細胞およびHCT116細胞である。SW480細胞およびWiDr細胞は、APC切断変異体を含む。LS180細胞およびHCT116細胞は、正常APCを含むが、β−カテニンに変異が認められる。
shRNA−AsefまたはshRNA−APCのいずれかを含む発現ベクターをトランスフェクションした各種大腸癌細胞について、実施例2と同様に細胞遊走試験を行った。その結果、shRNA−AsefまたはshRNA−APCのいずれかをトランスフェクションしたSW480細胞およびWiDr細胞は、mut−shRNA−Asefまたはmut−shRNA−APCをトランスフェクションした細胞に比べて、運動性が低減した(第5図)。
一方、LS180細胞およびHCT116細胞では、このような現象は認められなかった。
次に、shRNA−Asef、shRNA−APC、mut−shRNA−Asefおよびmut−shRNA−APCのいずれか1つのオリゴヌクレオチドを含む発現ベクターをトランスフェクションした細胞について、イムノブロッティング分析を実施例3と同様に実施した。このとき、対照として、α−チューブリンの変化を測定した。その結果、shRNA−AsefおよびshRNA−APCは、それぞれAsef遺伝子およびAPC遺伝子の発現をほぼ完全に阻害した。
これらから、Asef遺伝子またはAPC遺伝子の発現阻害により、APC切断変異を有する大腸癌細胞の運動性が低減されることが判明した。すなわち、大腸癌細胞の遊走に、APC変異体とAsefとの相互作用が重要な役割を果たすと考えられた。
【実施例6】
ヒトSW480大腸癌細胞に、Asefドミナントネガティブ変異体であるAsef−ABRを発現させて作成した細胞を、それぞれSCIDマウスに移植し、造腫瘍性や増殖の変化を観察した。Asef−ABRプラスミドは、SW480大腸癌細胞に、リポフェクションにより導入した。得られた3つのクローンをそれぞれ、G418を1mg/ml(終濃度)含有するL−15培地を使用してインビトロで培養し、一群当たり2〜4匹のSCIDマウス(8週齢)の側腹部皮下に、細胞数1×10/0.1ml/マウス移植した。腫瘍移植後20日目に腫瘍塊を摘出して重量を測定した。また、各クローンを移植したマウスの腫瘍塊の重量(T)を対照群の値(C)で割り、阻害比(IRと略称する)として百分率で表した〔IR(%)=T/C×100〕。移植した細胞でAsef−ABRが発現されていることは、常法により確認した。
Asef−ABRのみを安定的に発現する3クローンのうち、2クローンで造腫瘍性の低下や増殖の遅延が見られた(表1)。これらから、Asefが造腫瘍性や腫瘍細胞増殖に関与すると考えられた。

【実施例7】
ヒトHT29大腸癌細胞株で作製したAsef−ABRクローン(実施例6参照)をSCIDマウスに移植し、造腫瘍性や増殖の変化を観察した。Asef−ABRプラスミド15μgは、細胞数5×10のHT29細胞に、リポフェクションにより導入した。得られた5つのクローンをそれぞれ、G418を1mg/ml(終濃度)含有するDMEM培地を使用してインビトロで培養し、一群あたり4匹のSCIDマウス(8週齢)の脾臓内に、細胞数1×10/0.05ml/マウス移植した。腫瘍細胞移植後18日目に尾静脈内にインクを注入後、エーテル麻酔下で放血屠殺し、脾臓および肝臓を摘出して重量を測定した。
HT29細胞で作製したAsef−ABRドミナントネガティブ変異体安定発現株5クローン中4クローンにおいて、脾臓や肝臓での腫瘍形成が認められなかった(表2)。実施例6でSW480大腸癌細胞を用いて作製した3クローンについても同様な現象が得られた。すなわち、Asefは造腫瘍性や腫瘍細胞増殖に関与することが判明した。またAsef−ABRドミナントネガティブ変異体安定発現株で、肝臓の腫瘍形成が認められなかったことから、Asef−ABRドミナントネガティブ変異体が、腫瘍の転移を抑制することが判明した。

【産業上の利用可能性】
本発明においては、Asefが細胞の運動性を促進し、さらに細胞間接着を低減すること、Asefのこの機能が癌抑制遺伝子APCの遺伝子産物により活性化されることを見出した。また、大腸癌、特にAPC変異が認められる大腸癌において、Asefが大腸癌細胞の運動性を高め、その造腫瘍性および転移に関与することを見出した。これらに基づいて本発明において提供する、Asefの機能阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤並びに大腸癌転移抑制方法は、大腸癌および大腸癌の転移の防止および/または治療に多大な効果を有するものである。
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:Asef遺伝子の発現を抑制するために、ヒトAsefの塩基配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチド。
配列番号2:APC遺伝子の発現を抑制するために、ヒトAPCの塩基配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチド。
配列番号3:Asef遺伝子の発現を抑制するために、ヒトAsefの塩基配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチド。
配列番号4:APC遺伝子の発現を抑制するために、ヒトAPCの塩基配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチド。
配列番号5:配列番号1に記載の塩基配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチド。
配列番号6:配列番号2に記載の塩基配列に基づいて設計したオリゴヌクレオチド。
【配列表】


【図1】

【図2】


【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)の機能阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤。
【請求項2】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤。
【請求項3】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)のAPC(Adenomatous Polyposis Coli)遺伝子産物との結合阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤。
【請求項4】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)のグアニンヌクレオチド交換因子(Guanine nucleotide Exchange Factor)活性の阻害を特徴とする大腸癌転移抑制剤。
【請求項5】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)の機能阻害および/またはAsef遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法。
【請求項6】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)遺伝子の発現阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法。
【請求項7】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)のAPC(Adenomatous Polyposis Coli)遺伝子産物との結合阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法。
【請求項8】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)のグアニンヌクレオチド交換因子(Guanine nucleotide Exchange Factor)活性の阻害を特徴とする大腸癌転移抑制方法。
【請求項9】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)遺伝子の発現に対するRNA干渉を利用することを特徴とするAsef阻害剤。
【請求項10】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)遺伝子の発現に対するRNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドを含んでなるAsef阻害剤。
【請求項11】
配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
配列表の配列番号1または3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでなる請求の範囲第10項に記載のAsef阻害剤。
【請求項16】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)遺伝子の発現に対するRNA干渉を利用することを特徴とするAsef阻害方法。
【請求項17】
Asef(APC−stimulated guanine nucleotide exchange factor)遺伝子の発現に対するRNA干渉効果を示すオリゴヌクレオチドを利用することを特徴とするAsef阻害方法。
【請求項18】
配列表の配列番号1または3に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを利用することを特徴とする請求の範囲第17項に記載のAsef阻害方法。
【請求項19】
請求の範囲第9項、第10項および第15項のいずれか1項に記載のAsef阻害剤を含んでなる大腸癌転移抑制剤。
【請求項20】
配列表の配列番号1から4のいずれか1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを含んでなる大腸癌転移抑制剤。
【請求項21】
請求の範囲第9項、第10項および第15項のいずれか1項に記載のAsef阻害剤を用いることを特徴とする大腸癌転移抑制方法。
【請求項22】
配列表の配列番号1から4のいずれか1に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを用いることを特徴とする大腸癌転移抑制方法。
【請求項23】
請求の範囲第1項から第4項、第19項および第20項のいずれか1項に記載の大腸癌転移抑制剤、または、請求の範囲第9項、第10項および第15項のいずれか1項に記載のAsef阻害剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項24】
請求の範囲第1項から第4項、第19項および第20項のいずれか1項に記載の大腸癌転移抑制剤、または、請求の範囲第9項、第10項および第15項のいずれか1項に記載のAsef阻害剤を含んでなる大腸癌の防止剤および/または治療剤。
【請求項25】
請求の範囲第1項から第4項、第19項および第20項のいずれか1項に記載の大腸癌転移抑制剤、または、請求の範囲第9項、第10項および第15項のいずれか1項に記載のAsef阻害剤を用いることを特徴とする大腸癌の防止方法および/または治療方法。

【国際公開番号】WO2004/047867
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【発行日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554957(P2004−554957)
【国際出願番号】PCT/JP2003/010449
【国際出願日】平成15年8月19日(2003.8.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2002年8月25日 日本癌学会発行の「第61回日本癌学会総会記事」に発表
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】