説明

大腸癌関連遺伝子C20orf20のp120との相互作用

本発明は、大腸癌の処置および予防に有用であるC20orf20とp120との間の相互作用の阻害剤を同定するための方法およびキットを提供する。本発明のスクリーニング方法によって同定された、大腸癌を処置または予防するための組成物、ならびに大腸癌の処置および予防におけるそれらの使用法も本明細書において開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、大腸癌の処置および予防において有用な化合物を同定するための方法およびキット、ならびに大腸癌を処置および予防するための方法および組成物に関する。より詳しくは、本方法は、結腸直腸癌においてアップレギュレートされている大腸癌特異的遺伝子C20orf20(全体が参照として本明細書に組み入れられるPCT公報WO2004/021010を参照されたい)が、増殖関連タンパク質p120と相互作用するという発見に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
結腸直腸癌は世界中で主要な死亡原因である。近年の進歩および治療戦略にもかかわらず、進行した癌の患者の予後は芳しくないままである。分子的研究により、腫瘍抑制遺伝子および/または発癌遺伝子の変化がそれらの発癌に関わることが明らかにされたが、正確なメカニズムはまだ十分には明らかにされていない。
【発明の開示】
【0003】
発明の概要
本発明は、C20orf20とp120とがインビボで相互作用するという知見に基づく。そのデータおよびC20orf20の発現が大腸癌に関連することを考慮し(例えばPCT公報WO2004/021010を参照されたい)、本発明は、C20orf20のp120への結合を阻害する化合物を同定することによって大腸癌を処置するための化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0004】
その他に、C20orf20とp120とが免疫沈降実験において共沈すること、さらに、その沈降物はヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有することが見出されている。よって、本発明は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を調節する化合物を同定することによって大腸癌を予防または処置するための化合物を同定する方法を提供する。
【0005】
従って、大腸癌の処置および予防に有用な化合物をスクリーニングする方法を提供することが本発明の目的である。
【0006】
ある態様において、本発明の方法は以下の工程を含む:
(a)試験化合物の存在下で、C20orf20ポリペプチドのp120結合ドメインを含むポリペプチドを、p120ポリペプチドのC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドと接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;および
(c)ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する工程。
【0007】
一部の態様において、p120結合ドメインを含むポリペプチドはC20orf20ポリペプチドを含みうる。同様に、C20orf20結合ドメインを含むポリペプチドはp120ポリペプチドを含みうる。
【0008】
一部の態様において、p120結合ドメインを含むポリペプチドは生細胞中で発現される。
【0009】
一部の態様において、ポリペプチド間の結合は以下のものを検出する工程を含む方法によって検出される:
(a)p120結合ドメインを含むポリペプチドとC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合;
(b)p120の安定化;または
(c)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性。
【0010】
本発明はまた、大腸癌の処置または予防に有用な化合物をスクリーニングするためのキットを提供する。一部の態様において、本キットは以下のものを含む:
(a)C20orf20ポリペプチドのp120結合ドメインを含む第一のポリペプチド;
(b)p120ポリペプチドのC20orf20結合ドメインを含む第二のポリペプチド、および
(c)第一のポリペプチドと第二のポリペプチドとの間の相互作用を検出する試薬。
【0011】
一部の態様において、第一のポリペプチド、すなわちp120結合ドメインを含むポリペプチドは、C20orf20ポリペプチドを含む。同様に、一部の態様において、第二のポリペプチド、すなわちC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドはp120ポリペプチドを含む。
【0012】
一部の態様において、p120結合ドメインを含むポリペプチドは生細胞中で発現される。
【0013】
一部の態様において、第一のポリペプチドと第二のポリペプチドとの間の相互作用を検出する試薬は以下のものを検出する試薬を含む:
(a)p120結合ドメインを含むポリペプチドとC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合;
(b)p120の安定化;または
(c)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性。
【0014】
本発明はまた、以下の工程を含む、大腸癌の処置または予防に有用な化合物をスクリーニングする方法を提供する:
(a)C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドに試験化合物を接触させる工程;
(b)C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を検出する工程;および
(c)試験化合物の非存在下で検出される活性と比較して、C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する試験化合物を選択する工程。
【0015】
本発明はまた、以下の工程を含む方法によって選択される化合物の薬学的有効量を投与する工程を含む、対象において大腸癌を処置または予防するための方法を提供する:
(a)試験化合物の存在下で、C20orf20ポリペプチドのp120結合ドメインを含むポリペプチドを、p120ポリペプチドのC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドと接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;および
(c)ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する工程;ここで、ポリペプチド間の結合は、以下のものを検出する工程を含む方法によって検出される:
(i)p120結合ドメインを含むポリペプチドとC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合;
(ii)p120の安定化;または
(iii)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性。
【0016】
本発明はまた、対象において大腸癌を処置または予防するための方法を提供する。一部の態様において、本方法は、C20orf20ポリペプチドとp120ポリペプチドと間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量を投与する工程を含む。一部の態様において、本方法は、C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する化合物の薬学的有効量を投与する工程を含む。
【0017】
本発明はまた、大腸癌を処置または予防するための組成物を提供する。一部の態様において、本組成物は、薬学的に許容される担体と、以下の工程を含む方法によって選択される化合物の薬学的有効量とを含む:
(a)試験化合物の存在下で、C20orf20ポリペプチドのp120結合ドメインを含むポリペプチドを、p120ポリペプチドのC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドと接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;および
(c)ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する工程;ここで、ポリペプチド間の結合は、以下のものを検出する工程を含む方法によって検出される:
(i)p120結合ドメインを含むポリペプチドとC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合;
(ii)p120の安定化;または
(iii)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性。
【0018】
一部の態様において、本組成物は、C20orf20ポリペプチドとp120ポリペプチドとの間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む。他の態様において、本組成物は、C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0019】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、添付の図面および実施例と合わせて以下の詳細な説明を読むことにより、さらに十分に明らかとなるであろう。しかし、上記の発明の概要および下記の詳細な説明はいずれも好ましい態様のものであって、発明または他の代替的な発明の態様を限定するものではないことを理解されたい。
【0020】
好ましい態様の詳細な説明
I. 定義
本明細書において用いられる冠詞(a、an、および the)は、特に具体的に示されていない限り「少なくとも1つ」を意味する。
【0021】
本発明の文脈において、「C20orf20ポリペプチド」は、その発現が大腸癌に関連するポリペプチドを指す。例えば、全体が参照として本明細書に組み入れられるPCT公報WO2004/021010を参照されたい。例示的なC20orf20ポリペプチドは、例えば、Genbankアクセッション番号AB085682、SEQ ID NO:2(例えばSEQ ID NO:1にコードされるもの)、ならびにマウスRIKENタンパク質(Genbankアクセッション番号XM_110403)に実質的に同一でありうる。
【0022】
本明細書において、「p120ポリペプチド」は、C末端にブロモドメインを含み、小さなプロリンリッチセグメントを含むタンパク質を指す。p120ポリペプチドは、科学文献において「SMAP」または「甲状腺ホルモン相互作用タンパク質」と呼ばれることもある。例えば、Nielsen et al., Biochim. Biophys. Acta 1306:14-16 (1996); Monden et al., J. Biol. Chem. 272:29834-29841 (1997) を参照されたい。例示的なp120ポリペプチドは、例えば、SEQ ID NO:4(SEQ ID NO:3にコードされるもの)、およびGenbankアクセッション番号AF016270に実質的に同一でありうる。
【0023】
本発明の文脈において、2つのタンパク質間の「結合の阻害」とは、結合を少なくとも減少させることを指し、時にはタンパク質間の結合を完全に防ぐことを指すこともある。場合によっては、サンプル中の結合対のパーセンテージは、適切な(例えば、試験化合物で処置されていない、または非癌サンプル由来の、または癌サンプル由来の)対照と比較して低下している。結合したタンパク質の量における減少は、例えば、対照サンプル中で結合した対よりも、90%、80%、70%、60%、50%、40%、25%、10%、5%、1%よりも少ない、またはより少なく(例えば0%)なりうる。
【0024】
用語「試験化合物」は、本明細書において詳しく述べられるような、C20orf20とp120との間のタンパク質-タンパク質相互作用を阻害しうる任意の(例えば化学的または組換え的に産生された)分子を指す。一部の態様において、試験化合物は1,500ダルトン未満の分子量を有し、場合によっては1,000、800、600、500、または400ダルトン未満の分子量を有する。
【0025】
化合物の「薬学的有効量」とは、個体においてC20orf20を介する疾患を処置および/または改善するのに十分な量である。薬学的有効量の一例は、動物に投与したときにC20orf20とp120との間の相互作用を低下させて、それによって大腸癌を減少または予防するのに必要な量でありうる。相互作用における低下とは、例えば、結合における少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、75%、80%、90%、95%、99%、または100%の変化でありうる。
【0026】
「薬学的に許容される担体」という表現は、薬物の希釈剤または賦形剤として用いられる不活性な物質を指す。
【0027】
本発明において、用語「機能的に同等」とは、対象ポリペプチドが参照ポリペプチドの生物学的活性を有することを意味する。例えば、C20orf20の機能的同等物は、野生型C20orf20のようにヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するであろう。ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性の測定は周知である(例えば、Ogryzko VV, et al., Cell. Vol.87, 953-959, 1996、特に図2および実験手順を参照されたい)。この測定には、HAタグ付p120とC20orf20の機能的同等物との免疫沈降物を用いることができる。さらに、本発明のC20orf20の機能的同等物はまた、p120の細胞内局在を変化させる能力を有しうる。例えば、C20orf20はp120を細胞質から核へと輸送することが確認されている。または、本発明のC20orf20の機能的同等物はまた、p120の安定性を増強する能力を有しうる(実験のセクションを参照されたい)。
【0028】
用語「単離」および「生物学的に純粋」とは、自然の状態で見られる通常はそれに付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。しかしながら、用語「単離」は、電気泳動ゲルまたは他の分離媒体中に存在する成分を指すことを意図しない。単離された成分はそのような分離媒体を含まず、別の応用にすぐに使用可能な形態にあるか、あるいは既に新しい応用/環境に使用されている。
【0029】
「保存的に改変された変異体」という表現は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一の配列を指す。遺伝コードの縮重により、機能的に同一の核酸の多数が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全て、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定される全ての位置で、そのコドンは、コードするポリペプチドを変化させることなく任意の上記対応コドンに変えることができる。このような核酸変異は「サイレント変異」、つまり保存的に改変された変異の一種である。本明細書において、ポリペプチドをコードする全ての核酸配列は、その核酸の全ての可能なサイレント変異も表す。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUGと、通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。よって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、各開示配列に暗黙のうちに記載されている。
【0030】
アミノ酸配列に関し、コードされた配列中の1個のアミノ酸を、または少ないパーセンテージのアミノ酸を変化、付加、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する置換、欠失、または付加はそれぞれ、その変化がアミノ酸を化学的に類似のアミノ酸と置換する「保存的に改変された変異体」であることを当業者は認識するであろう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野において周知である。このような保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられるものであって、これらを排除するものではない。
【0031】
以下の8群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984) を参照されたい)。
【0032】
本発明の文脈において、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適に整列された配列を比較ウィンドウにわたって比較することにより決定され、このとき比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列部分は、2つの配列の最適な整列について、付加または欠失を含まない参照配列(例えば本発明のポリペプチド)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含んでもよい。このパーセンテージは、同一核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列に現れる位置の数を決定してマッチする位置の数を出し、マッチする位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割り、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを出すことによって計算される。
【0033】
2つもしくはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、用語「同一」またはパーセント「同一性」は、同じ配列である2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。2つの配列が、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いてまたはマニュアル整列と目視検査によって測定された比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大一致するように比較整列された際に、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定のパーセンテージで有する(すなわち、特定領域にわたって、あるいは特定されていない場合は全配列にわたって、60%同一性、任意で65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一性)場合、2つの配列は「実質的に同一」である。任意で、同一性は長さが少なくとも約50ヌクレオチドである領域にわたって存在し、またはより好ましくは長さが100〜500または1000ヌクレオチド以上である領域にわたって存在する。
【0034】
配列比較には、典型的には1つの配列を参照配列とし、これに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを用いてもよく、また、代替的なパラメータを指定してもよい。そして配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、試験配列について参照配列に対するパーセント配列同一性を計算する。
【0035】
本明細書において用いられる「比較ウィンドウ」は、20〜600、一般的には約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなる群より選択される連続位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含み、この内部において、ある配列が同じ数の連続位置の参照配列と最適に整列された後、これら2つの配列が比較されうる。比較するために配列を整列する方法は当技術分野において周知である。例えば、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性整列アルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法、これらアルゴリズムのコンピュータによる実施(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、またはマニュアル整列と目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement) を参照されたい)によって比較用に配列を最適に整列できる。
【0036】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適したアルゴリズムの2つの例がBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワード(word)と整列させた場合にいくつかの正の値の閾値スコアTにマッチするかまたはそれを満たす、クエリー(query)配列中の長さの短いワードWを同定することによって、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを含む。Tは近傍ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)(Altschul et al.、上記)と呼ばれる。これら初期近傍ワードヒットが、これらを含むさらに長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシード(seed)となる。ワードヒットは、累積整列スコアを増加できる限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(マッチする残基対に対するリワード(reward)スコア;常に>0)およびパラメータN(ミスマッチ残基に対するペナルティ(penalty)スコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列に関しては、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの延長は以下の場合に停止される:累積整列スコアが最大達成値から量X分減少する場合;累積スコアが、1つまたは複数の負のスコアの残基整列の蓄積によってゼロ以下になる場合;あるいは、いずれかの配列の終わりに達する場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、整列の感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)はデフォルトとして、word length(ワード長)(W)11、expectation(期待値)(E)10、M=5、N=-4、およびcomparison of both strands(両鎖の比較)を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムはデフォルトとして、word length 3、expectation(E)10、BLOSUM62 scoring matrix(スコアリング マトリックス)(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照されたい)alignment(アライメント)(B)50、expectation(E)10、M=5、N=-4、およびcomparison of both strandsを用いる。
【0037】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的解析を行う(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-7を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度が最小合計確率(smallest sum probability, P(N))であり、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸の参照核酸との比較における最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、この核酸は参照配列に類似すると見なされる。
【0038】
用語「有機低分子」は、薬剤に一般的に用いられる有機分子に相当するサイズの分子を指す。この用語は生物学的高分子(例えば、タンパク質、核酸など)は除外する。好ましい有機低分子はサイズが約5000Daまで、例えば、2000Daまで、あるいは約1000Daまでの範囲である。
【0039】
用語「標識」および「検出可能な標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を指すために本明細書において用いられる。このような標識としては、標識されたストレプトアビジン結合体での染色のためのビオチン、磁気ビーズ(例えばDYNABEADS(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、3H、125I、.35S、14C、または32P)、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAで一般的に用いられる他のもの)、および金コロイドまたは着色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなどの)ビーズなどの熱量測定標識が挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号が挙げられる。このような標識を検出する手段は当業者に周知である。したがって、例えば、放射標識は感光フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出することができ、蛍光マーカーは放出された光を検出する光検出器を用いて検出しうる。酵素標識は典型的には、酵素に基質を提供して酵素の基質に対する作用によって産生された反応産物を検出することによって検出され、熱量測定標識は着色された標識を単純に視覚化することによって検出される。
【0040】
本明細書において用いられる用語「抗体」は、天然抗体および非天然抗体を包含し、例えば、単鎖抗体、キメラ、二機能性、およびヒト化抗体、ならびにそれらの抗原結合断片(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、およびrIgG)を含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL) も参照されたい。例えば、Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York (1998) も参照されたい。このような非天然抗体は固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換え的に産生することも、あるいは例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989) に記載されているように、可変重鎖と可変軽鎖とからなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得ることもできる。例えば、キメラ、ヒト化、CDR移植、単鎖、および二機能性抗体を作成するこれらおよび他の方法は当業者に周知である(Winter and Harris, Immunol. Today 14:243-246 (1993); Ward et al., Nature 341:544-546 (1989); Harlow and Lane, Antibodies: a laboratory manual, Cold Spring Harbor, NY, 1988; Hilyard et al., Protein Engineering: A practical approach (IRL Press 1992); Borrebaeck, Antibody Engineering, 2d ed. (Oxford University Press 1995);これらは各々参照として本明細書に組み入れられる)。
【0041】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を含む。この用語はまた、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)およびヘテロ結合抗体(heteroconjugate antibody)(例えば二重特異性抗体)などの遺伝的に操作された形態を含む。この用語はまた、組換え単鎖Fv断片(scFv)も指す。抗体という用語はまた、二価または二重特異性分子、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体(triabody)、および四重特異性抗体(tetrabody)を含む。二価および二重特異性分子は、例えば、Kostelny et al. (1992) J Immunol 148:1547, Pack and Pluckthun (1992) Biochemistry 31:1579, Holliger et al. (1993) Proc Natl Acad Sci U S A. 90:6444, Gruber et al. (1994) J Immunol 152:5368, Zhu et al. (1997) Protein Sci 6:781, Hu et al. (1996) Cancer Res. 56:3055, Adams et al. (1993) Cancer Res. 53:4026、および McCartney, et al. (1995) Protein Eng. 8:301に記載されている。
【0042】
典型的には、抗体は重鎖および軽鎖を有する。重鎖および軽鎖はそれぞれ定常領域および可変領域(これら領域は「ドメイン」としても知られる)を含む。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる、3つの超可変領域によって中断される4つの「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は規定されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成軽鎖と重鎖のフレームワーク領域を合わせたものは、CDRを3次元空間に位置付け、整列させる。
【0043】
CDRは主として抗原エピトープへの結合を担っている。各鎖のCDRは、典型的にはN末端から順に番号がつけられてCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、また典型的には、その特定のCDRが位置する鎖によって同定される。したがって、VH CDR3はそれが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、VL CDR1はそれが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインのCDR1である。「VH」に関しては抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、またはFabの重鎖を含む。「VL」に関しては免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、dsFv、またはFabの軽鎖を含む。
【0044】
「単鎖Fv」または「scFv」という表現は、通常の2鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが連結して1つの鎖を形成した抗体を指す。典型的にはリンカーペプチドが2つの鎖の間に挿入されており、適正なフォールディングと活性な結合部位の形成とを可能にする。
【0045】
「キメラ抗体」は、(a)異なるまたは変えられた、クラス、エフェクター機能、および/または種の定常領域に、あるいはキメラ抗体に新しい特性を付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに、抗原結合部位(可変領域)が結合するように、定常領域またはその一部分が変えられた、置き換えられた、または交換された;あるいは(b)可変領域またはその一部分が、異なるまたは変えられた抗原特異性を有する可変領域に変えられた、置き換えられた、または交換された、免疫グロブリン分子である。
【0046】
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体には、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域(CDR)に由来する残基でヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)のCDR由来の残基が置き換えられているヒト免疫グロブリンが含まれる。一部の例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、導入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見られない残基を含みうる。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、これらCDR領域の全てまたは実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全てまたは実質的に全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は最適にはまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含む(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988)、 および Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992))。ヒト化は本質的には、Winterと共同研究者(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応配列を置換することによって行うことができる。従って、このようなヒト化抗体はキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、実質的に完全でないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応配列によって置換されている。
【0047】
用語「エピトープ」および「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは連続アミノ酸から、またはタンパク質の三次フォールディングによって近接して並べられた非連続アミノ酸から形成されうる。連続アミノ酸から形成されたエピトープは典型的には変性溶媒にさらされても保持され、三次フォールディングによって形成されたエピトープは典型的には変性溶媒処置で失われる。エピトープは典型的には、独自の空間的高次構造中に少なくとも3、より一般的には少なくとも5または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的高次構造を決定する方法には、例えばx線結晶解析および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996) を参照されたい。
【0048】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して本明細書において相互に交換可能に用いられる。これら用語は、天然アミノ酸ポリマー、修飾残基を含むもの、および非天然アミノ酸ポリマーに適用されるのに加え、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0049】
用語「アミノ酸」は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝コードによってコードされるもの、ならびに例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンで後に修飾されるアミノ酸である。アミノ酸アナログとは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合されたα炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、を有する化合物を指す。このようなアナログは修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有しうるが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸と同様に機能する化学的な化合物を指す。
【0050】
アミノ酸は本明細書において、一般的に知られる3文字表記で表されることもあり、またIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission推奨の1文字表記で表されることもある。ヌクレオチドは同様に、一般的に認められた1文字コードで表されうる。
【0051】
用語「組換え」は、例えば細胞、あるいは核酸、タンパク質、またはベクターなどへの言及と共に用いられる場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸またはタンパク質の導入、あるいは元来の核酸またはタンパク質の変化によって修飾されていること、あるいは細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって例えば、組換え細胞は元来の(非組換え)形態の細胞では見られない遺伝子を発現するか、または元来の遺伝子を異常に発現する、より少なく発現する、または全く発現しない。本明細書における用語「組換え核酸」とは、一般に核酸の操作によって、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いて、最初からインビトロで形成された、天然に普通では見られない形態にある核酸を意味する。このようにして異なる配列の機能的な連結が達成される。このように、通常は繋がっていないDNA分子を連結してインビトロで形成した線状形態の単離核酸または発現ベクターは両方とも、本発明の目的に関して組換え型と見なされる。組換え核酸を作製して宿主細胞または生物体に再び導入すると、これは非組換え的に、すなわちインビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて、複製する;しかし、このような核酸は組換え的に産生されると続いて非組換え的に複製されるが、それでも本発明の目的に関して組換え型と見なされることが理解される。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち上記のような組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。
【0052】
特に定義しない限り、本明細書において用いられる技術的および科学的用語は全て本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、本明細書が定義を含めて統御する。
【0053】
II. C20orf20を介する疾患を処置する化合物の産生および同定
例として提供される事項を考慮し、本発明の一局面は、C20orf20とp120との結合を減少または防ぐ、あるいはp120(任意でC20orf20と会合している場合の)のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を減少させる試験化合物を同定することに関する。
【0054】
C20orf20/p120結合を決定するための方法には、2つのタンパク質の相互作用を決定するための任意の方法が含まれる。このようなアッセイとしては、従来のアプローチ、例えば、架橋、共免疫沈降、および勾配またはクロマトグラフィーカラムを通した同時精製が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、タンパク質-タンパク質相互作用は、Fieldsと共同研究者によって述べられている酵母ベースの遺伝学的システム(Fields and Song, Nature 340:245-246 (1989); Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991))を用い、Chevray and Nathans (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789-5793 (1992))に開示されているようにモニターすることができる。酵母GALAなどの多くの転写アクチベーターは2個の物理的に別個のモジュラードメインからなり、片方がDNA結合ドメインとして働き、もう片方が転写活性化ドメインとして機能する。上記刊行物に記載の酵母発現システム(一般に「ツーハイブリッドシステム」と呼ばれる)はこの特性を利用して2つのハイブリッドタンパク質を使用しており、片方は標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合しており、もう片方は候補活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GALA活性化プロモーターの制御下にあるGAL1-lacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介するGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素産生性基質で検出される。ツーハイブリッド技術を用いて2つの特異的なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商標))がClontechから市販されている。このシステムを拡張して、特異的タンパク質相互作用に関わるタンパク質ドメインをマッピングすることもできるし、これら相互作用に非常に重要なアミノ酸残基を正確に特定することもできる。
【0055】
本出願では「C20orf20」または「p120」と言及していても、両者の相互作用が解析または操作される場合、これらタンパク質の片方または両方の結合部分を、これらタンパク質の全長コピーのかわりに用いることができることが理解される。p120に結合するC20orf20の断片は、C20orf20の標準的な欠失解析および/または突然変異誘発を用いてp120に結合する断片を同定することによって容易に同定しうる。類似の解析を用いてp120のC20orf20結合断片を同定しうる。
【0056】
p120(任意でC20orf20と会合している場合の)のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する試験化合物を同定する方法は、p120(例えば、細胞から免疫沈降させたもの、または任意でC20orf20も発現する細胞中で発現させたもの)を化合物と接触させ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を検出することによって行われうる。ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性は、当技術分野において公知の任意の方法によって検出しうる。例えば、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性は、ヒストンおよび検出可能に標識されたアセチルCoAをインキュベートし、続いてヒストンが標識されているかどうかを定性的または定量的に検出することによって検出しうる。
【0057】
または、2つのタンパク質の相互作用は、相互作用によって誘導されたヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性についてアッセイすることによって決定できる。ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を決定するための方法は当技術分野において周知である(例えば、Ogryzko VV, et al., Cell Vol. 87, 953-959, (1996) "Figure 2 and experimental procedures"を参照されたい)。
【0058】
本明細書に開示されるように、例えば、タンパク質(抗体を含む)、ムテイン(mutein)、ポリヌクレオチド、核酸アプタマー、ならびにペプチドおよび非ペプチド有機低分子を含む任意の試験化合物が、本発明の試験化合物となりうる。試験化合物は、天然の供給源から単離されてもよく、合成的もしくは組換え的に、またはこれらの任意の組み合わせで調製されてもよい。
【0059】
例えばペプチドは、"Solid Phase Peptide Synthesis" by G. Barany and R. B. Merrifield in Peptides, Vol. 2, edited by E. Gross and J. Meienhoffer, Academic Press, New York, N.Y., pp. 100-118 (1980) に記載されているような固相技術を用いて合成的に産生しうる。同様に核酸も、Beaucage, S.L., & Iyer, R.P. (1992) Tetrahedron, 48, 2223-2311; および Matthes et al., EMBO J., 3:801-805 (1984) に記載されているように固相技術を用いて合成することができる。
【0060】
阻害ペプチドが同定されれば、インビボでのペプチドの安定性を増加させるために、様々なアミノ酸模倣体または非天然アミノ酸で本発明のペプチドを修飾することが特に有用である。安定性は数々の方法でアッセイできる。例えば、ペプチダーゼおよび様々な生物学的媒体、例えばヒト血漿および血清などを用いて安定性が試験されている。例えば、Verhoef et al., Eur. J. Drug Metab Pharmacokinet. 11:291-302 (1986) を参照されたい。当技術分野で公知の他の有用なペプチド修飾にはグリコシル化およびアセチル化が含まれる。
【0061】
組換えおよび化学的合成技術は両方とも、本発明の試験化合物を産生するために用いうる。例えば、試験化合物の核酸は適切なベクターへ挿入して産生することができ、これをコンピテント細胞にトランスフェクトして発現させうる。または、核酸はPCR技術または適した宿主中での発現を用いて増幅しうる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, USAを参照されたい)。
【0062】
ペプチドおよびタンパク質も、当技術分野において周知の組換え技術を用いて、例えば、Morrison, J. Bact., 132:349-351 (1977)および Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology, 101:347-362 (Wu et al., eds, 1983) に記載されているように適した宿主細胞を組換えDNAコンストラクトで形質転換することによって、発現しうる。
【0063】
抗C20orf20および抗p120抗体
本発明の一部の局面において、試験化合物は抗C20orf20または抗p120抗体である。一部の態様において、これら抗体は、ヒト化抗体を含むがこれに限定されないキメラである。場合によっては、本発明の抗体の態様は、これらタンパク質の片方がもう一方に会合する境界面でC20orf20またはp120のいずれかに結合する。一部の態様において、これら抗体は、生理的条件下で少なくとも約105 mol-1、106 mol-1以上、107 mol-1以上、108 mol-1以上、または109 mol-1以上のKaでC20orf20またはp120に結合する。このような抗体は、例えばChemicon, Inc. (Temecula Calif.) などの商業的供給元から購入することができ、あるいは実質的に精製されたC20orf20またはp120タンパク質、例えばヒトタンパク質またはその断片などを、免疫原として用いて作製することができる。提供された免疫原からモノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方を調製する方法は、当技術分野において周知である。精製技術、および特定の免疫原に対する抗体を同定するための方法については、例えば、その内容が参照として本明細書に組み入れられるPCT/US02/07144 (WO/03/077838) を参照されたい。例えば親和性カラムを形成するために抗体親和性マトリックスを用いる抗体精製法も当技術分野において周知で、市販されている(AntibodyShop, Copenhagen, Denmark)。C20orf20/p120の会合を阻害しうる抗体の同定は、試験化合物について全般的に以下に詳述するものと同じ試験アッセイを用いて行われる。
【0064】
変換酵素
変換酵素は本発明の試験化合物となりうる。本発明の文脈において、変換酵素とは、C20orf20、p120、または両方に対して共有結合性翻訳後修飾を行う分子触媒である。本発明の変換酵素は、C20orf20および/またはp120の1つまたは複数のアミノ酸残基を、修飾タンパク質の構造中のアロステリック変化を引き起こすように、あるいはC20orf20とp120との間の結合を妨害するようにC20orf20/p120分子結合部位の化学的性質もしくは修飾タンパク質の構造を変えて、共有結合的に修飾する。これら2分子間の結合の妨害とは、結合のKaにおいて、30℃、イオン強度0.1、界面活性剤の非存在下で測定したこれらタンパク質間の結合のKaと比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることを指す。本発明の例示的な変換酵素には、キナーゼ、ホスファターゼ、アミダーゼ、アセチラーゼ、グリコシダーゼなどが含まれる。
【0065】
試験化合物ライブラリーの構築
試験化合物ライブラリーの構築は当技術分野において周知であるが、本セクションでは、試験化合物の同定と、C20orf20/p120相互作用および/またはC20orf20/p120ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性の有効な阻害剤をスクリーニングするためのこのような化合物のライブラリーの構築とにおけるさらなるガイダンスを提供する。
【0066】
分子モデリング
試験化合物ライブラリーの構築は、求められる特性を有することが知られている化合物の分子構造、ならびに/または阻害する標的分子、すなわちC20orf20およびp120の分子構造の知識によって促進される。さらなる評価に適した試験化合物の予備スクリーニングに対する1つのアプローチが、試験化合物とその標的との間の相互作用のコンピュータモデリングである。本発明において、C20orf20および/またはp120の間の相互作用をモデリングすることにより、相互作用自体の詳細への洞察が提供され、また、可能性のある、相互作用の分子阻害剤を含む、相互作用を阻害するために可能な方法が示唆される。
【0067】
コンピュータモデリングテクノロジーにより、選択した分子の3次元原子構造の視覚化と、その分子と相互作用するであろう新しい化合物の合理的設計とが可能である。3次元構築物は典型的には、選択した分子のx線結晶構造解析またはNMRイメージングのデータに依存する。分子動態は力場データを必要とする。コンピュータグラフィックシステムは、新しい化合物がどのように標的分子と関連するかを予測することができ、結合特異性を完全にするように化合物および標的分子の構造を実験操作することが可能である。片方または両方に小さな変化を起こしたときに分子-化合物間相互作用がどうなるかの予測には、通常ユーザーが使いやすい、分子設計プログラムとユーザーとの間のメニュー駆動型インターフェースと連係した、分子力学ソフトウェアおよび計算集約型コンピュータが必要である。
【0068】
一般的に述べた上記の分子モデリングシステムの一例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, Mass)からなる。CHARMmはエネルギー最小化および分子動態機能を行う。QUANTAは分子構造の構築、グラフィックモデリング、および解析を行う。QUANTAによって、分子の互いの挙動の相互的な構築、修飾、視覚化、および解析が可能である。
【0069】
特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングが多くの論文に概説されている。例えば、Rotivinen, et al. Acta Pharmaceutica Fennica 97, 159-166 (1988); Ripka, New Scientist 54-57 (Jun. 16, 1988); McKinlay and Rossmann, Annu. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29, 111-122 (1989); Perry and Davies, Prog Clin Biol Res.291:189-93(1989); Lewis and Dean, Proc. R. Soc. Lond. 236, 125-140 and 141-162 (1989);および、核酸成分に対するモデル受容体に関し、Askew, et al., J. Am. Chem. Soc. 111, 1082-1090 (1989)。
【0070】
化学物質をスクリーニングし、画像として描写する他のコンピュータプログラムが、BioDesign, Inc., Pasadena, Calif.、Allelix, Inc, Mississauga, Ontario, Canada、およびHypercube, Inc., Cambridge, Ontarioなどの会社から利用可能である。例えば、DesJarlais et al. (1988) J. Med. Chem. 31:722; Meng et al. (1992) J. Computer Chem. 13:505; Meng et al. (1993) Proteins 17:266; Shoichet et al. (1993) Science 259:1445を参照されたい。
【0071】
C20orf20/p120相互作用の推定阻害剤が同定されれば、以下に詳述するように、同定された推定阻害剤の化学的構造に基づき、コンビナトリアルケミカル技術を使用して任意の数の変異体を構築することができる。こうして得られる推定阻害剤または「試験化合物」のライブラリーを本発明の方法を用いてスクリーニングし、C20orf20/p120の会合を阻害するライブラリーの試験化合物を同定することができる。
【0072】
コンビナトリアルケミカル合成
試験化合物のコンビナトリアルライブラリーは、C20orf20/p120相互作用の公知の阻害剤に存在するコア構造の知識を含む合理的薬物設計プログラムの一部として産生しうる。このアプローチは、ライブラリーを妥当なサイズに維持することが可能であり、ハイスループットスクリーニングを促進する。または、単純な、特に短いポリマー分子ライブラリーは、ライブラリーを構成する分子ファミリーの全ての並べ換えを単純に合成することによって構築しうる。この後者のアプローチの一例は、すべてのペプチドが6アミノ酸長のライブラリーであろう。このようなペプチドライブラリーは、全ての6アミノ酸配列の並べ換えを含みうる。このタイプのライブラリーは直線的コンビナトリアルケミカルライブラリーと呼ばれる。
【0073】
コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製は当業者に周知であり、化学的または生物学的合成によって生成されうる。コンビナトリアルケミカルライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号, Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487-493 (1991) および Houghten et al., Nature 354:84-86 (1991) を参照されたい)が挙げられるが、これに限定されない。化学的多様性ライブラリーを生成するための他の化学も用いることができる。このような化学としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ペプチド(例えばPCT公報WO91/19735)、コードされるペプチド(例えばPCT公報WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えばPCT公報WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどのディバーソマー(diversomer)(DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909-6913 (1993))、ビニル性(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmann et al., J. Amer. Chem. Soc. 114:9217-9218 (1992))、低分子化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート(Cho et al., Science 261:1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59:658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、およびSambrook(全て上記)を参照されたい)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号を参照されたい)、抗体ライブラリー(例えばVaughan et al., Nature Biotechnology, 14(3):309-314 (1996) およびPCT/US96/10287を参照されたい)、炭水化物ライブラリー(例えばLiang et al., Science, 274:1520-1522 (1996) および米国特許第5,593,853号を参照されたい)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, Jan 18, page 33 (1993); イソプレノイド、米国特許第5,569,588号; チアゾリジノン(thiazolidinone)およびメタチアザノン(metathiazanone)、米国特許第5,549,974号; ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号; モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号; ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号などを参照されたい)。
【0074】
ファージディスプレイ
別のアプローチは、組換えバクテリオファージを用いてライブラリーを産生する。この「ファージ法」(Scott and Smith, Science 249:386-390, 1990; Cwirla, et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:6378-6382, 1990; Devlin et al., Science, 249:404-406, 1990)を用いて、非常に大きなライブラリーを構築することができる(例えば106〜108化学単位)。第二のアプローチは主に化学的方法を用いるものであり、Geysen法(Geysen et al., Molecular Immunology 23:709-715, 1986; Geysen et al. J. Immunologic Method 102:259-274, 1987)およびFodorらの方法(Science 251:767-773, 1991)がその例である。Furka et al. (14th International Congress of Biochemistry, Volume #5, Abstract FR:013, 1988; Furka, Int. J. Peptide Protein Res. 37:487-493, 1991)、Houghten (米国特許第4,631,211号、 December 1986 発行) 、およびRutter et al. (米国特許第5,010,175号、Apr. 23, 1991 発行)が、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験されうるペプチドの混合物を産生するための方法を記載している。
【0075】
コンビナトリアルライブラリー調製用の装置が市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Woburn, MA, 433A Applied Biosystems, Foster City, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照されたい)。また、多数のコンビナトリアルライブラリー自体が市販されている(例えばComGenex, Princeton, N.J., Tripos, Inc., St. Louis, MO, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MDなどを参照されたい)。
【0076】
試験化合物ライブラリーのスクリーニング
本発明のスクリーニング方法は、C20orf20/p120の会合またはp120/C20orf20ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を妨害する確率が高い試験化合物の効率的で迅速な同定を提供する。一般に、C20orf20/p120の会合またはp120/C20orf20ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を妨害する試験化合物の能力を決定する方法はいずれも本発明と共に使用するのに適する。例えば、ELISA形式の競合および非競合阻害アッセイを利用しうる。対照実験を行ってシステムの最大結合能を決定すべきである(例えば、下記の例においては、結合させたC20orf20をp120と接触させ、C20orf20に結合するp120の量を決定する)。
【0077】
競合アッセイ形式
本発明の試験化合物をスクリーニングするために競合アッセイを用いうる。例として、競合ELISA形式は、固体支持体に結合されたC20orf20(またはp120)を含みうる。この結合されたC20orf20(またはp120)は、p120(またはC20orf20)および試験化合物とインキュベートされる。試験化合物および/またはp120(もしくはC20orf20)をC20orf20(またはp120)に結合させるのに十分な時間の後、基質を洗浄して非結合物質を除く。そしてC20orf20に結合したp120の量を決定する。これは、当技術分野で公知の様々な方法のいずれか、例えば、検出可能な標識でタグ付されたp120(またはC20orf20)種を用いて、あるいは洗浄した基質を標識化抗p120(またはC20orf20)抗体と接触させて、遂行しうる。C20orf20(またはp120)に結合したp120(またはC20orf20)の量は、p120/C20orf20の会合を妨害する試験化合物の能力に反比例するであろう。抗体を含むがそれに限定されないタンパク質の標識は、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988) に記載されている。
【0078】
あるバリエーションでは、C20orf20(またはp120)は親和性タグで標識される。標識されたC20orf20(またはp120)を次に、試験化合物およびp120(またはC20orf20)とインキュベートし、免疫沈降する。そして免疫沈降物を抗p120(またはC20orf20)抗体を用いたウェスタンブロッティングに供する。前記の競合アッセイ形式のように、C20orf20(またはp120)と会合することが見出されたp120(またはC20orf20)の量は、C20orf20/p120の会合を妨害する試験化合物の能力と反比例する。
【0079】
非競合アッセイ形式
非競合結合アッセイも、本明細書に記載されるもののような競合アッセイを用いたスクリーニングに容易に適用できない形式で構築された化合物ライブラリーを試験するための初期スクリーニングとして有用でありうる。このようなライブラリーの一例は、ファージディスプレイライブラリーである(例えば、Barret, et al. (1992) Anal. Biochem 204, 357-364を参照されたい)。
【0080】
ファージライブラリーは、数多くの異なる組換えペプチドの作業量(working quantity)を素速く産生しうる点において有用である。ファージライブラリーはそれ自体は本発明の競合アッセイに向いてはいないが、非競合形式で効率的にスクリーニングされ、どの組換えペプチド試験化合物がC20orf20またはp120に結合するかを決定することができる。次いで、結合すると同定された試験化合物を産生し、競合アッセイ形式を用いてスクリーニングすることができる。ファージおよび細胞ディスプレイライブラリーの産生およびスクリーニングは当技術分野において周知であり、例えば、Ladner et al., WO 88/06630; Fuchs et al. (1991) Biotechnology 9:1369-1372; Goward et al. (1993) TIBS 18:136-140; Charbit et al. (1986) EMBO J 5, 3029-3037; Cull et al. (1992) PNAS USA 89:1865-1869; Cwirla, et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87, 6378-6382に考察されている。
【0081】
例示的な非競合アッセイは、成分の1つ(C20orf20またはp120)の添加なしで、競合アッセイに関して記載したものと類似の手順に従う。しかしながら、非競合形式はC20orf20またはp120に対する試験化合物の結合を決定するので、C20orf20およびp120の両方に結合する試験化合物の能力を各候補について決定する必要がある。したがって、例として、固定化されたC20orf20への試験化合物の結合は、結合していない試験化合物を洗い流し、結合した試験化合物を支持体から溶出させた後に、例えば、質量分析、タンパク質測定(BradfordもしくはLowryアッセイ法、または280nmの吸光度測定)によって溶出物を解析することによって、決定しうる。または、溶出工程を省いて、支持体表面での有機層の分光学的特性における変化をモニターすることによって試験化合物の結合を決定してもよい。表面の分光学的特性をモニターするための方法としては以下のものが含まれるが、これらに限定されない:吸光度、反射率、透過率、複屈折、屈折率、回折、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共鳴ミラー法、格子共役導波管(grating coupled waveguide)技術、および多極共鳴分光法(これらは全て当業者に公知である)。溶出工程の必要を省くために、標識された試験化合物もアッセイに用いうる。この場合、非結合物質を洗い流した後に支持体に会合している標識の量が試験化合物の結合に直接比例する。
【0082】
多くの周知のロボットシステムが液相化学用に開発されてきた。これらシステムとしては、Takeda Chemical Industries, LTD.(Osaka, Japan)によって開発された自動合成器のような自動ワークステーションが挙げられ、多くのロボットシステムがロボットアーム(Zymate II, Zymark Corporation, Hopkinton, Mass.; Orca, Hewlett Packard, Palo Alto, Calif.)を利用しており、化学者によって行われるマニュアル合成操作を模倣する。上記装置はいずれも、本発明と共に使用するのに適している。本明細書において述べられているように操作可能になるようなこれら装置に対する修飾(もしあれば)の性質および実施は、関連技術分野の当業者には明らかであろう。加えて、多数のコンビナトリアルライブラリーはそれ自体が市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc., St. Louis, MO, ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MDなどを参照されたい)。
【0083】
変換酵素のスクリーニング
変換酵素である試験化合物は、アッセイする変換酵素に特異的なコファクターおよび補助基質を用いて非競合形式でアッセイしうる。このようなコファクターおよび補助基質は、調べる変換酵素のタイプが与えられれば、当業者に公知である。
【0084】
変換酵素の1つの例示的なスクリーニング手順は、まず、変換酵素に特徴的なタンパク質の共有結合性修飾を行うのに必要なコファクターおよび補助基質の存在下、好ましくは生理的条件下で、C20orf20および/またはp120を変換酵素と接触させることを含む。修飾されたタンパク質を次に、結合パートナーに結合する能力(すなわちC20orf20のp120に対する結合)について試験する。次に、修飾されたタンパク質の結合パートナーに対する結合を、未修飾の対照対の結合と比較し、上記のKaにおいて要求される変化が達成されたかどうかを決定する。
【0085】
アッセイを行う上でタンパク質の検出を促進するために、当業者に周知の技術を用いて、1つまたは複数のタンパク質を上記のような検出可能な標識で標識してもよい。
【0086】
スクリーニング方法
上記のスクリーニングの態様は、さらなる調査に適する試験化合物のハイスループットな決定に適する。特に、本発明のスクリーニングは、好ましくは1つまたは複数の以下の検出工程を含む:
(a)C20orf20とp120との間の会合を検出する工程;
(b)p120の安定化を検出する工程;
(c)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を検出する工程;または
(d)細胞核におけるp120の局在を検出する工程であって、それによってC20orf20との相互作用が示される工程。
【0087】
または、調査中の試験化合物を増殖中の細胞に加えて、試験化合物を与えていない対照集団の増殖に対する処置細胞の増殖をモニターしてもよい。試験化合物のスクリーニングに適した細胞株は、本明細書に提供される教示から当業者には明らかである。
【0088】
インビボ試験に関しては、認められた動物モデルに試験化合物を投与すればよい。
【0089】
本発明において、C20orf20との同時トランスフェクションによってp120の局在が細胞質から核へと変化した。よって、p120とC20orf20との間の相互作用を阻害することによってC20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドの局在が細胞質から核へと変化することを阻害する化合物は、大腸癌を処置または予防するために有用である。したがって、本発明は、大腸癌を処置または予防するための化合物をスクリーニングする方法を提供する。本スクリーニング方法のある態様は、以下の工程を含む:
(a)p120およびC20orf20を細胞に導入する工程
(b)C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドの細胞質から核への局在の変化を検出する工程
(c)工程(b)の局在の変化を阻害する試験化合物を選択する工程。
【0090】
遺伝子を動物細胞へ導入して外来遺伝子を発現させることは、任意の方法、例えば、エレクトロポレーション法(Chu et al., Nucleic Acids Res 15: 1311-26 (1987))、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama, Mol Cell Biol 7: 2745-52 (1987))、DEAEデキストラン法(Lopata et al., Nucleic Acids Res 12: 5707-17 (1984); Sussman and Milman, Mol Cell Biol 4: 1641-3 (1984))、リポフェクチン法(Derijard, B Cell 7: 1025-37 (1994); Lamb et al., Nature Genetics 5: 22-30 (1993): Rabindran et al., Science 259: 230-4 (1993))などに従って行うことができる。遺伝子はタグ(例えばHAまたはMyc)と融合されたタンパク質を発現しうる。
【0091】
C20orf20およびp120の細胞内局在は免疫組織化学的染色によって調べられる。細胞を、タグ付C20orf20、タグ付p120、またはそれらの組み合わせでトランスフェクトする。局在の画像は蛍光顕微鏡などの顕微鏡を用いて得ることができる。
【0092】
本発明はまた、以下のものを含むキットを提供する:
i)p120およびC20orf20の両方を発現する細胞、ならびに
ii)p120の検出試薬。
【0093】
好ましい態様において、p120およびC20orf20の両方を発現する細胞は、適した細胞株にp120およびC20orf20遺伝子の発現ベクターをトランスフェクションすることによって得ることができる。例えば、HEK293、SW480、またはCOS7細胞を細胞株として用いうる。さらに、検出試薬は好ましくはp120を認識する抗体である。または、p120またはC20orf20をタグとの融合タンパク質として発現させる場合、タンパク質と融合されたタグを認識する抗体も検出試薬として用いうる。本発明のキットにおいて、抗体は蛍光物質(例えば、FITC、TAMRA、またはGFP)で標識してもよい。
【0094】
III. 同定された試験化合物からの薬剤の製剤化
よって、本発明は、大腸癌(ならびにC20orf20のレベルおよび/またはC20orf20とp120の結合が上昇している細胞によって特徴付けられる他の癌)の予防または処置に有用な薬剤および方法を含む。これら薬剤および方法は、C20orf20/p120相互作用を阻害するとして同定された少なくとも1つの本発明の試験化合物を、疾患細胞増殖の減弱化または停止を達成するのに有効な量で含む。より具体的には、本発明の文脈において治療的に有効な量とは、処置対象の進行を防ぐのに、あるいはその既存の症状を改善するのに、有効な量を意味する。
【0095】
本発明の方法で処置される個体としては、例えば、マーカータンパク質C20orf20の発現の上昇によって特徴付けられるか、またはc20orf20/p120ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を示す、大腸癌を含む癌に罹患した任意の個体が含まれる。このような個体は、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはヤギを含む哺乳類などの脊椎動物、あるいは任意の他の動物、特に商業的に重要な動物または家畜化された動物でありうる。本発明の目的に関し、マーカータンパク質の発現の上昇とは、一方または両方のマーカータンパク質について、マーカータンパク質の正常細胞での平均濃度よりも、少なくとも10%、好ましくは15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、またはそれよりも多い、平均細胞マーカータンパク質濃度を指す。
【0096】
治療用量範囲の決定
本発明の薬剤のための有効な用量範囲の決定は、特に本明細書に提供される詳述された開示を鑑みれば、十分に当業者の能力の範囲内である。試験化合物の治療的に有効な用量は、まず細胞培養アッセイおよび/または動物モデルから推定できる。例えば、動物モデルにおいて用量を定め、細胞培養で決定されるIC50(50%の細胞が所望の効果を示す用量)を含む循環濃度範囲を達成することができる。また、試験化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が、治療指数(すなわちLD50とED50の比)である。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これら細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトに用いる用量範囲を定める際に用いうる。このような化合物の用量は、毒性がほとんどないかまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内に収まるであろう。用量は、使用される用量形態および利用される投与経路に従い、この範囲内で変わりうる。厳密な処方、投与経路、および用量は、患者の状態を考慮して個別の医師によって選択されうる。例えばFingl et al., 1975, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p1を参照されたい。用量および間隔は、所望の効果を維持するのに十分な活性試験化合物の血漿レベルを提供するように個別に調整しうる。
【0097】
薬学的に許容される添加物
哺乳類(例えばヒト)に投与する薬剤は、薬学的に許容される添加物、または担体を含みうる。適した添加物およびそれらの製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., 1980, Mack Publishing Co., edited by Oslo et al.に記載されている。水溶性の調製物には、製剤を等張にするために、適切な量の薬学的に許容される塩が製剤中に典型的に用いられる。薬学的に許容される等張添加物の例としては、生理的食塩水、リンゲル液、ハンクス液、およびデキストロース溶液などの液体が含まれるが、これらに限定されない。等張添加物は、注射用製剤に特に重要である。
【0098】
経粘膜投与には、透過させる障壁に適切な浸透剤を製剤に用いる。このような浸透剤は当技術分野において一般的に知られている。
【0099】
添加物は製剤の適正なpHを維持するために用いうる。最適な有効期間のためには、試験化合物を含む溶液のpHは好ましくは約5〜約8、より好ましくは約7〜約7.5である。製剤はまた、凍結乾燥粉末、または、マトリックスが成形品、例えば、フィルム、リポソーム、もしくは微粒子の形態にある、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性調製物を含む本発明に適した他の選択的な添加物を含みうる。例えば、投与経路、投与される試験化合物の濃度、または、処置がタンパク質、試験化合物をコードする核酸、もしくは試験化合物を分泌することができる細胞を有効成分として含む薬剤を用いるかどうかによって、特定の添加物がより好ましい場合があることが当業者には明らかであろう。
【0100】
本発明の薬学的組成物は、それ自体公知の様式で、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸形成、研和、乳化、カプセル化、閉じ込め(entrapping)、または凍結乾燥プロセスによって、製造しうる。適正な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0101】
経口投与には、担体によって、本発明の化合物の処置患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能である。経口用の薬学的調製物は、試験化合物を固体の拡散性添加物と共に製剤化し、得られた混合物を任意ですりつぶして、所望であれば適した補助剤を加えた後に顆粒の混合物を加工して錠剤または糖衣丸コアを得ることによって得ることができる。適した添加物は特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの増量剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの崩壊剤を加えてもよい。
【0102】
本発明の化合物の多くは薬学的に適合性の対イオンとの塩として提供してもよい。薬学的に適合性の塩は、用途によって、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸と共に形成しうる。塩は、水性または対応する遊離塩基形態である他のプロトン性溶媒に、より可溶性である傾向がある。
【0103】
許容可能な添加物に加えて、本発明の製剤は、同定された試験化合物以外の治療剤を含みうる。例えば、製剤は、抗炎症剤、鎮痛剤、化学療法剤、粘液溶解薬(例えばn-アセチル-システイン)などを含みうる。薬剤自体に他の治療剤を含むことに加え、本発明の薬剤はまた、1つまたは複数の他の薬理的物質に連続的にまたは同時に投与しうる。薬剤および薬理的物質の量は、例えば、どのタイプの薬理的物質を用いるか、また、処置される疾患、ならびにスケジュールおよび投与経路に依存する。
【0104】
本発明の薬剤の投与に続いて、熟練した施術者に周知の様々な方法で哺乳類の生理的状態をモニターすることができる。
【0105】
遺伝子療法
C20orf20/p120の会合の阻害物質(disruptor)として同定されたタンパク質およびペプチド試験化合物は、大腸癌に苦しむ患者に遺伝子療法を用いて治療的に送達しうる。遺伝子療法技術に適用できる例示的試験化合物としては、変換酵素や、立体またはアロステリック阻害によってC20orf20/p120の会合を直接変化させるペプチドが含まれる。一部の局面において、遺伝子療法の態様は、本発明の適した同定された試験化合物をコードする核酸配列を含む。好ましい態様において、核酸配列は、標的細胞における試験化合物の発現に必要な調節エレメントを含む。核酸は、標的細胞のゲノムに安定に挿入されるように準備されうる(例えば、相同組換えカセットベクターの記載について、Thomas, K. R. and Capecchi, M. R. (1987) Cell 51:503を参照されたい)。
【0106】
患者への核酸の送達は直接的でもよいし(この場合、患者は核酸または核酸を含むベクターに直接さらされる)、間接的でもよい(この場合、細胞がまずインビトロで核酸によって形質転換されてから患者に移植される)。これら2つのアプローチはそれぞれインビボまたはエクスビボ遺伝子療法として知られている。
【0107】
遺伝子療法の方法の全般的概説については、Goldspiel et al., (1993) Clinical Pharmacy 12:488-505; Wu and Wu, (1991) Biotherapy 3:87-95; Tolstoshev, (1993) Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 33:573-596; Mulligan, (1993) Science 260:926-932; および Morgan and Anderson, (1993) Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; (1993) TIBTECH 11(5):155-215を参照されたい。用いうる組換えDNA技術の分野で一般的に知られる方法は、Ausubel et al. (eds.), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY; および Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NYに記載されている。
【0108】
IV. スクリーニングおよび処置キット
ある態様において、本発明は、製品、または、大腸癌の処置もしくは予防に有用な化合物をスクリーニングするためのキットであって、以下のものを含むキットを提供する:(a)C20orf20ポリペプチドのp120結合ドメイン;(b)p120ポリペプチドのC20orf20結合ドメイン、および(c)これら2つのポリペプチド間の相互作用を検出する試薬。上記のように、p120結合ドメインを含むポリペプチドは、全長C20orf20ポリペプチドまたはそのp120結合部分を含みうる。同様に、C20orf20結合ドメインを含むポリペプチドは、全長p120ポリペプチドまたはそのC20orf20結合部分を含みうる。
【0109】
2つのポリペプチド間の相互作用を検出する試薬は、好ましくは以下のものを検出する:
(a)p120結合ドメインを含むポリペプチドとC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合;
(b)p120の安定化;または
(c)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性。
【0110】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の病理学的状態を処置するのに有用な物質を含む製品およびキットが提供される。この製品は、本明細書に記載されるような薬剤の容器をラベルと共に含みうる。適した容器には、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。本発明の文脈において、容器とは、細胞増殖性疾患、例えば大腸癌を処置するために有効な活性物質を有する組成物を保持するものである。ある態様においては、組成物中の活性物質は、インビボでC20orf20/p120の会合を阻害しうる同定された試験化合物(例えば、抗体、低分子など)である。容器上のラベルは、異常な細胞増殖によって特徴付けられる1つまたは複数の状態を処置するために組成物が用いられることを示すべきである。ラベルはまた、本明細書に記載するもののような投与およびモニタリング技術に関する指示を示しうる。
【0111】
上記の容器に加え、本発明のキットは、任意で薬学的に許容される希釈剤を収容する第二の容器を含んでもよい。さらに、使用説明書と共に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、およびパッケージ挿入物を含む、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料を含みうる。
【0112】
所望であれば、組成物は、有効成分を含む1つまたは複数の単位用量形態を含みうるパックまたはディスペンサー装置で提供されうる。パックは、例えば、ブリスターパック(blister pack)などの金属またはプラスチックのフォイルを含みうる。パックまたはディスペンサー装置は投与のための説明書を伴いうる。また、適合性の薬学的担体中に製剤化された本発明の化合物を含む組成物は、指示された状態の処置のために調製し、適切な容器に入れてラベルされうる。
【0113】
以下に、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、以下の材料、方法、および例は、本発明の局面を例示するのみであって、本発明の範囲を限定する意図は全くない。このように、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができる。
【0114】
実施例
上記に提供した開示から理解できるように、本発明は広範な応用を有する。よって、以下の実施例は例示目的のために提供するものであって、いずれにしても本発明を限定するものと見なす意図はない。当業者は、本質的に類似の結果を得るために変化または修飾しうる様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0115】
実施例1 - 材料および方法
(a)甲状腺ホルモン受容体共活性化タンパク質(p120)との免疫沈降アッセイ
p120のコーディング領域全体をRT-PCRによって増幅し、pCAGGS-HAベクターにクローニングした。増幅に使用したプライマー配列は、
5’-ATAGAATTCTCTTCTGTCATGAGAAGTGG-3’ (SEQ ID NO.5) および、
5’-ATACTCGAGTCACTTTTTCATCTTC-3’ (SEQ ID NO.6)
であった。本発明者らは、pcDNA3.1Myc/His-C20orf20、pCAGGS-HA-p120、またはそれらの組み合わせでCOS7細胞をトランスフェクトし、抗Mycまたは抗HA抗体を用いて免疫沈降アッセイを行った。細胞をPBSで洗浄し、Protease Inhibitor Cocktail 3(Roche)を添加した150mM NaCl、0.5% NP-40、10mM Tris-HCl (pH7.8) を含むTNEバッファー中で溶解させた。典型的な免疫沈降反応中で、400μgのホールセル抽出物を、1μgの抗Myc(Santa Cruz)または抗HA抗体(Roche)、および20μlのプロテインGセファロースビーズ(Zymed)と共に4℃で2時間インキュベートした。ビーズを1 mlのTNEバッファー中で4回洗浄し、ビーズに結合したタンパク質をLaemmliサンプルバッファー中で煮沸して溶出させた。沈降したタンパク質をSDS-PAGEによって分離し、それぞれラット抗HA抗体またはマウス抗Myc抗体のいずれかを用いてイムノブロット解析を実施した。
【0116】
(b)免疫蛍光法および共焦点顕微鏡観察
pcDNA3.1Mcy/His-C20orf20、pCAGGSHA-p120、またはそれらの組み合わせでトランスフェクトした細胞を4%パラホルムアルデヒドを含むPBSで15分間固定し、次いで0.1% Triton X-100を含むPBSで2.5分間、室温で透過化した。続いて細胞を20分間室温でPBS中の3% BSAで覆い、非特異的ハイブリダイゼーションをブロックした。1000倍希釈のマウス抗mycモノクローナル抗体(Santa Cruz)または1000倍希釈のウサギ抗HA抗体(Roche)を一次抗体に用い、Alexa Fluor-488抗マウスおよびAlexa Fluor-594抗ウサギ二次抗体(Molecular Probes, Eugene, OR)でインキュベートした後、反応を視覚化した。核を4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、二塩酸塩(DAPI)で対比染色した。蛍光画像を共焦点顕微鏡(Leica)下で得た。
【0117】
(c)ウェスタンブロッティング
pcDNA3.1Myc/His-C20orf20およびpCAGGS-HA-p120でトランスフェクトしたHEK293細胞を、MG132(回収前の8時間)ありまたはなしでインキュベートし、トランスフェクションの0、12、24、36、48、および72時間後に回収し、Protease Inhibitor Cocktail 3(CALBIOCHEM)を添加したNonidet P40溶解バッファー(10mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、0.5% NP40)で溶解した。細胞をホモジナイズし、15,000rpmで20分間遠心分離した後、上清をタンパク質濃度に関してLowryアッセイ(Bio-Rad)によって標準化した。タンパク質を8% SDS-PAGEによって分離し、マウス抗myc(Santa Cruz)、ラット抗HA(Roche)、またはマウス抗βアクチン抗体(Sigma)でイムノブロットした。HRP結合ヤギ抗マウスIgG(Amersham)およびヤギ抗ラットIgGをECL Detection System (Amersham) のための二次抗体とした。
【0118】
(d)ノーザンブロッティング
pcDNA3.1myc/His-C20orf20およびpCAGGS-HA-p120のトランスフェクションの0、12、24、36、および48時間後、HEK293細胞から全RNAを抽出した。TRIZOL試薬(GIBCO-BRL)を用いてこれらRNAを単離した。1xモルホリンプロパンスルホン酸(morpholinepropanesulfonic acid)バッファーおよび2%ホルムアルデヒドを含む1%アガロースゲル上でそれぞれの全RNAの5μgアリコートを分離し、ナイロンメンブレンに転写した。ランダムプライミングされた32P標識p120およびC20orf20でこれらブロットをハイブリダイズした。
【0119】
(e)ヒストンアセチルトランスフェラーゼアッセイ
HAタグ付p120タンパク質を、アガロースに結合した抗HA抗体で免疫沈降して調製した。pcDNA3.1Myc/His-C20orf20およびpCAGGS-HA-p120でトランスフェクトしたおよそ5X107のHEK293F細胞をPBSで洗浄し、Protease Inhibitor Cocktail 3(Roche)を添加した150mM NaCl、0.5% NP-40、10mM Tris-HCl (pH7.8) を含む2 mlのTNEバッファー中で溶解した。典型的な免疫沈降反応中、ホールセル抽出物を4℃で2時間100μlの抗HAアガロース結合体(SIGMA)でインキュベートした。ビーズを1 mlのTNEバッファー中で5回洗浄し、ビーズに結合したタンパク質をHAペプチド(SIGMA)によって溶出した。沈降したタンパク質をLowry法(Bio Rad)によって定量した。10μgの沈降タンパク質を、33μg/ml胸腺ヒストン(Sigma Chemical Co.)および6 pmolの[3H]標識アセチルCoA(4.3mCi/mmol, Amersham Life Science Inc.)と共に、50mM Tris-HCl (pH 8.0)、10%グリセロール、1mM DTT、10mM酪酸ナトリウムを含む30μlのバッファー中で、30℃で30分間インキュベートした。標識したヒストンをWhatman P-81ホスホセルロースフィルターペーパーに転写し、0.2 M炭酸ナトリウムバッファー(pH 9.2)で、室温で5分間、2回洗浄した。放射活性を液体シンチレーションカウンターで計測した。
【0120】
実施例2:インビボでのC20orf20とp120との会合
インビボでのC20orf20とp120との会合を証明するため、pcDNA3.1Myc/His-C20orf20、pCAGGS-HA-p120、またはそれらの組み合わせを発現するプラスミドでトランスフェクトしたCOS7細胞を用いて、免疫沈降アッセイを実施した。抗HA抗体での免疫沈降およびその後の抗myc抗体でのウェスタンブロット解析により、Myc/Hisタグ付C20orf20に対応する単一のバンドが現れた(図1、上パネル)。一方、抗myc抗体での免疫沈降およびその後の抗HAでのウェスタンブロット解析により、HAタグ付p120に対応するバンドが示された(図1、下パネル)。これらデータは、C20orf20がインビボでp120と会合することを示唆している。
【0121】
実施例3:C20orf20存在下でのp120の変化した細胞内局在
C20orf20およびp120の細胞内局在を免疫組織化学的染色によってさらに調べた。SW480細胞をpcDNA3.1Myc/His-C20orf20、pCAGGS-HA-p120、またはそれらの組み合わせでトランスフェクトした。前記のように、外因性Mycタグ付C20orf20タンパク質は核内に染色された。一方、外因性HAタグ付p120タンパク質は、pCAGGS-HA-p120のみでトランスフェクトされた細胞の細胞質でわずかに染色された(図2、左パネル)。興味深いことに、HAタグ付p120タンパク質は、pCAGGS-HA-p120およびpcDNA3.1Myc/His-C20orf20でトランスフェクトされた細胞の核内にC20orf20と共に局在していた(図2、右パネル)。加えて、核内のHAタグ付p120の染色は細胞質においてよりも有意に高く、細胞内局在の変化によってタンパク質安定性が増加したことを示唆している。
【0122】
実施例4:C20orf20によるp120のタンパク質安定性の増加
タンパク質安定性を検討するため、pcDNA3.1Myc/His-C20orf20ありまたはなしでpCAGGS-HA-p120をHEK293細胞にトランスフェクトし、ウェスタンおよびノーザンブロット解析を実施した。pCAGGS-HA-p120でトランスフェクトした細胞から、およびpCAGGS-HA-p120とpcDNA3.1Myc/His-C20orf20とを同時トランスフェクトしたものからの、抽出物を用いたウェスタンブロット解析により、外因性p120タンパク質の発現がC20orf20の存在下で顕著に増加することが明らかになった(図3a)。これら細胞を用いたノーザンブロット解析により、p120メッセンジャーRNAの発現はC20orf20の共発現によっては変化しないことが明らかになった(図3b)。転写後調節の可能性を検討するため、プロテアーゼ阻害剤MG132の、p120のタンパク質安定性に対する効果を試験した。図3cに示されているとおり、MG132は、C20orf20の非存在下でp120を顕著に蓄積し(レーン2および3)、p120はMG132の非存在下で急速に分解されることが示された。pcDNA3.1Myc/His-C20orf20のpCAGGS-HA-p120との同時トランスフェクションは、MG132の非存在下でのp120安定化を増強し(図3c、レーン4および5)、C20orf20がp120の安定化または分解に関与することが示唆された。
【0123】
実施例5:p120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性
p300/CBP、TAF250、およびGcn5pなどのブロモドメインを含むタンパク質はヒストンアセチラーゼ活性を有し、転写アクチベーターとして機能することから、p120の活性を調べた。HAタグ付p120タンパク質を、pcDNA3.1Myc/His-C20orf20およびpCAGGS-HA-p120の両方でトランスフェクトした細胞から免疫沈降した。イムノブロット解析により、HAタグ付p120およびmycタグ付C20orf20が沈殿剤に含まれることが示された(図4a)。ヒストンの混合物を、3H標識アセチルCoAと共に沈殿剤とインキュベートした。結果として、沈殿剤とインキュベートしたヒストンの放射活性は、偽(mock)細胞からの沈殿剤でインキュベートしたものよりも有意に高かった(図4b)。このデータは、p120またはp120に会合するタンパク質がヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有することを示している。したがって、p120に会合するC20orf20は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性に影響を与え、p120を介する転写活性を調節する。
【0124】
上記の例は本発明を例示するために提供されているが、その範囲を限定することを意図するものではない。本発明の他の変形は当業者には容易に明らかであり、添付の請求の範囲に包含される。
【0125】
産業上の利用可能性
本発明者らは、C20orf20がp120と相互作用することを示し、この相互作用を阻害すると結腸直腸癌細胞の細胞増殖が阻害された。このように、C20orf20とp120との間の結合を阻害し、その活性を妨げる薬剤は、抗癌剤、特に大腸癌の治療および予防のための抗癌剤として、治療的に有用であると考えられる。
【0126】
本明細書に引用される全ての刊行物、データベース、Genbank配列、特許、および特許出願は、これによって参照として本明細書に組み入れられる。
【0127】
本発明は詳細にその具体的な態様を参照して記載されているが、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく様々な変化および修飾をその内に施すことができることは当業者には明らかであり、その境界および範囲は添付の請求の範囲によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】インビボでのC20orf20とp120との間の相互作用を示す。抗HA抗体での免疫沈降とそれに続く抗myc抗体でのウェスタンブロット解析で、C20orf20に対応するバンドが現れ(上パネル)、抗myc抗体での免疫沈降とそれに続く抗HAでのウェスタンブロット解析によって、HAタグ付p120に対応するバンドが示された(下パネル)。
【図2】C20orf20およびp120の細胞内局在を示す。C20orf20の非存在下(左パネル)または存在下(右パネル)で、外因性HAタグ付p120タンパク質の細胞内局在を免疫組織化学的染色によって解析した。C20orf20との同時トランスフェクションによってp120の局在は細胞質から核へと変化した。
【図3】図3a〜3cは、C20orf20によるp120タンパク質のタンパク質安定性の増強を示す。図3aはC20orf20によるp120タンパク質の発現の増加を示す。HAタグ付p120でトランスフェクトしたHEK293細胞(左パネル)と、HAタグ付p120およびMycHisタグ付C20orf20でトランスフェクトしたHEK293細胞(右パネル)とにおけるp120タンパク質の発現をイムノブロット解析により解析した。βアクチンの発現を内部標準とした。図3bは、p120 mRNAの発現は変化しないことを示している。p120のノーザンブロット解析を、C20orf20ありまたはなしでp120でトランスフェクトした細胞を用いて実施した。βアクチンの発現を内部標準とした。図3cはp120タンパク質の安定性に対するC20orf20の効果を示す。MG132ありまたはなしでトランスフェクトした細胞(レーン2および3)における外因性HAタグ付p120を用いたウェスタンブロット解析によって、p120タンパク質安定性を検討した。ウェスタンブロットは抗HA抗体で行った。mycタグ付C20orf20の外因性発現は、MG132の非存在下でp120タンパク質を増加させた(レーン3および5)。ウェスタンブロット解析は抗HA抗体または抗Myc抗体で行った。βアクチンの発現を内部標準とした。
【図4】図4aおよび4bは、p120の免疫沈殿剤を用いたヒストンアセチルトランスフェラーゼアッセイの結果を示す。図4aはHAタグ付p120でトランスフェクトした細胞からの免疫沈殿剤のウェスタンブロット解析の結果を示す。図4bは、HAタグ付p120でトランスフェクトし、抗HA抗体で免疫沈降した細胞からの免疫沈殿剤のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を示す。沈殿剤ありまたはなしでインキュベートした[3H]標識アセチル化ヒストンの放射活性を、シンチレーションカウンター(cpm)によって測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、大腸癌の処置または予防に有用な化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験化合物の存在下で、C20orf20ポリペプチドのp120結合ドメインを含むポリペプチドを、p120ポリペプチドのC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドと接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;および
(c)ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する工程。
【請求項2】
p120結合ドメインを含むポリペプチドがC20orf20ポリペプチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
C20orf20結合ドメインを含むポリペプチドがp120ポリペプチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
p120結合ドメインを含むポリペプチドが生細胞中で発現される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
以下のものを検出する工程を含む方法でポリペプチド間の結合が検出される、請求項1記載の方法:
(a)p120結合ドメインを含むポリペプチドとC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合;
(b)p120の安定化;または
(c)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性。
【請求項6】
以下のものを含む、大腸癌を処置または予防するための化合物をスクリーニングするためのキット:
(a)C20orf20ポリペプチドのp120結合ドメインを含むポリペプチド;
(b)p120ポリペプチドのC20orf20結合ドメインを含むポリペプチド、および
(c)ポリペプチド間の相互作用を検出する試薬。
【請求項7】
p120結合ドメインを含むポリペプチドがC20orf20ポリペプチドを含む、請求項6記載のキット。
【請求項8】
C20orf20結合ドメインを含むポリペプチドがp120ポリペプチドを含む、請求項6記載のキット。
【請求項9】
p120結合ドメインを含むポリペプチドが生細胞中で発現される、請求項6記載のキット。
【請求項10】
ポリペプチド間の相互作用を検出するための試薬が、以下のものを検出する試薬を含む、請求項6記載のキット:
(a)p120結合ドメインを含むポリペプチドとC20orf20結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合;
(b)p120の安定化;または
(c)C20orf20に会合したp120のヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性。
【請求項11】
以下の工程を含む、大腸癌を処置または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験化合物をC20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドに接触させる工程;
(b)C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を検出する工程;および
(c)試験化合物の非存在下で検出される活性と比較して、C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する試験化合物を選択する工程。
【請求項12】
以下の工程を含む、大腸癌を処置または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
(a)p120およびC20orf20を細胞に導入する工程
(b)C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドの細胞質から核への局在の変化を検出する工程
(c)工程(b)の局在の変化を阻害する試験化合物を選択する工程。
【請求項13】
請求項1、11、または12記載の方法によって選択される化合物の薬学的有効量を投与する工程を含む、対象において大腸癌を処置または予防するための方法。
【請求項14】
C20orf20ポリペプチドとp120ポリペプチドとの間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量を投与する工程を含む、対象において大腸癌を処置または予防するための方法。
【請求項15】
C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する化合物の薬学的有効量を投与する工程を含む、対象において大腸癌を処置または予防するための方法。
【請求項16】
請求項1、11、または12記載の方法によって選択される化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、大腸癌を処置または予防するための組成物。
【請求項17】
C20orf20ポリペプチドとp120ポリペプチドとの間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、大腸癌を処置または予防するための組成物。
【請求項18】
C20orf20ポリペプチドに会合したp120ポリペプチドのヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を阻害する化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、大腸癌を処置または予防するための組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−510125(P2008−510125A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503725(P2007−503725)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/JP2005/014886
【国際公開番号】WO2006/016696
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】