説明

大豆飲料等の冷却装置、大豆飲料等の製造装置及び大豆飲料等の製造方法

【課題】湯葉の発生を防止でき、大豆飲料等の風味等を損なうことなく短時間で冷却できる大豆飲料等の冷却装置等を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明の大豆飲料等の冷却装置13は、加熱殺菌した大豆飲料等Aを投入する投入槽91と、投入槽91内の大豆飲料等Aを冷却する冷却手段92と、投入槽91の下方に位置し、投入槽91に振動を加える加振装置95とを備えている。また大豆飲料等Aの冷却はウォータージャケット105内に供給される冷却水Lによって行われ、加振装置95によって大豆飲料等Aの表面を波立たせて表面積を拡大させた状態で行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば粉末状の大豆原料を使用して大豆成分がまるごと入った大豆飲料を製造する場合に使用される加熱殺菌後の大豆飲料等を所定の温度に冷却する大豆飲料等の冷却装置、該冷却装置を備えた大豆飲料等の製造装置及び該冷却装置を使用することにより実行される冷却工程を備えた大豆飲料等の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、大豆の有するオリゴ糖、サポニン、大豆たんぱく、大豆イソフラボン、レシチン等の成分が体に良いことが知られるようになり、種々の加工食品に大豆が使用されるようになってきている。
また豆乳のように大豆を原料とし、固形成分であるオカラと分離した大豆飲料も従来から商品化されており、さらに最近では大豆をまるごと使用して栄養素の含有量を高めた大豆飲料も登場している。
【0003】
そしてこのような大豆飲料を製造する場合に問題になるのが煮沸後の大豆飲料が冷める過程で、タンパク質が凝固して形成される湯葉の発生である。湯葉は大豆飲料が60°C〜85°C程度から30°C〜40°C程度に冷却される過程で形成される。また当該冷却時間が長くなるほど発生し易くなり、大豆飲料の表面と内部との温度差が大きいほど発生し易くなる傾向がある。
【0004】
また大豆飲料に作用する外部からの冷却媒体の温度を下げれば、大豆飲料の急激な温度低下が期待されるが、冷却媒体の温度が低くなり過ぎると、大豆飲料の風味を損なったり、栄養素の破壊等を招くおそれがある。
また上記冷却媒体は主に大豆飲料の表面に作用し、大豆飲料の内部では、温度低下の進行が遅くなるため、却って湯葉の発生を助長するという事態も想定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景技術及び背景技術が抱えていた問題点の存在を踏まえてなされたものであって、加熱された大豆飲料等を冷却する過程で形成される湯葉の発生を防止すると共に、大豆飲料等の風味等を損なうことなく所定の温度まで短時間で冷却できる大豆飲料等の冷却装置、該冷却装置を備えた大豆飲料等の製造装置及び該冷却装置を使用することによって実行される冷却工程を備えた大豆飲料等の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に記載した発明は、加熱殺菌した大豆飲料等を所定の温度に冷却する大豆飲料等の冷却装置において、加熱殺菌した大豆飲料等を投入する投入槽と、投入槽内の大豆飲料等を冷却する冷却手段と、投入槽の下方に位置し、投入槽に振動を加える加振装置とを備えていることを特徴とする大豆飲料等の冷却装置である。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した大豆飲料等の冷却装置において、前記大豆飲料等の冷却は、容器に充填された状態の大豆飲料等に対して行われ、投入槽の外周部に形成されるウォータージャケット内に冷却水を流入させ、更に加振装置によって大豆飲料等の表面を波立たせて大豆飲料等の表面積を拡大させた状態で冷却するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の冷却装置である。
【0008】
請求項3に記載した発明は、煮沸した大豆飲料等を所定温度範囲内に保って撹拌しながら一次貯留する貯蔵用攪拌タンクと、所定温度範囲内に保たれた大豆飲料等を容器に充填し、容器の注入口を溶融封鎖後、容器底部を凹陥成形する充填装置と、容器内に充填された大豆飲料等を所定の温度で所定時間加熱殺菌する加熱殺菌装置と、加熱殺菌した大豆飲料等を所定の温度に冷却する冷却装置とを備える大豆飲料等の製造装置において、前記冷却装置として請求項1または2に記載した大豆飲料等の冷却装置を使用したことを特徴とする大豆飲料等の製造装置である。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した大豆飲料等の製造装置において、粉末状の大豆原料等を水に溶かして撹拌させる原料液生成装置と、生成された原料液を蒸気によって加熱し、対流を生じさせた状態で煮沸して大豆飲料等を得る煮沸装置とを更に備えたことを特徴とする大豆飲料等の製造装置である。
【0010】
請求項5に記載した発明は、煮沸した大豆飲料等を所定温度範囲内に保って撹拌しながら一次貯留する一次貯留工程と、所定温度範囲内に保たれた大豆飲料等を容器に充填し、容器の注入口を溶融封鎖後、容器底部を凹陥成形する充填工程と、容器内に充填された大豆飲料等を所定の温度で所定時間加熱殺菌する加熱殺菌工程と、加熱殺菌した大豆飲料等を所定の温度に冷却する冷却工程とを備える大豆飲料等の製造方法において、前記冷却工程では、大豆飲料等の表面を波立たせて大豆飲料等の表面積を拡大させた状態で冷却するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の製造方法である。
【0011】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した大豆飲料等の製造方法において、前記一次貯留工程では、大豆飲料等を60°C〜85°C程度の温度範囲内に保ち、前記加熱殺菌工程では、85°C程度の温度で30分程度の時間、大豆飲料等を加熱殺菌すると共に、前記冷却工程では大豆飲料等を30°C〜40°C程度の温度まで一挙に冷却するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の製造方法である。
【0012】
請求項7に記載した発明は、請求項5または6に記載した大豆飲料等の製造方法において、一次貯留工程の前工程には、粉末状の大豆原料等を水に溶かして撹拌させる原料液生成工程と、生成された原料液を蒸気によって加熱し、対流を生じさせた状態で煮沸して大豆飲料等を得る煮沸工程とが設けられていることを特徴とする大豆飲料等の製造方法である。
【0013】
請求項8に記載した発明は、請求項7に記載した大豆飲料等の製造方法において、前記一次貯留工程の前工程として、更にそのままの大豆等を洗浄し、茹で、潰した後、搾って固形成分と液体成分とに分離する成分分離工程が設けられており、粉末状の大豆原料等を使用する場合には、前記原料液生成工程と煮沸工程を選択し、そのままの大豆等から分離した液体成分を使用する場合には、前記成分分離工程を選択するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の大豆飲料等の冷却装置によれば、投入槽と冷却手段と加振装置とを備えるだけの比較的簡単な構成によって大豆飲料等を冷却することが可能となる。また冷却手段としてウォータージャケット内を流れる冷却水を使用した場合には大豆飲料等の風味等を損なうこともない。
また加振装置によって波立って表面積が拡大した大豆飲料等は、温度低下が速く、しかも振動による撹拌作用も加わって、表面と内部との温度差が小さくなるため、大豆飲料等の表面には湯葉は形成されない。
【0015】
また本発明の大豆飲料等の製造装置によれば、上記本発明の大豆飲料等の冷却装置を使用したことにより、湯葉の存在しない滑らかで風味のある大豆飲料等を効率良く製造することが可能となる。
また本発明の大豆飲料等の製造方法によれば、湯葉の存在しない滑らかで風味のある大豆飲料等を効率良く製造でき、加えて成分分離工程を追加して選択して使い分けるようにすれば、大豆の液体成分のみを使用した豆乳と、大豆をまるごと使用した大豆飲料との両方を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、下記に示す実施例1を例にとって、本発明に係る大豆飲料等の冷却装置及び大豆飲料等の製造装置について説明し、これらの作動態様の説明と併せて本発明に係る大豆飲料等の製造方法に言及する。
本明細書において使用する大豆飲料等Aとは大豆を原料とし、その液体成分を抽出して得られる豆乳の他、大豆を粉末状に加工した大豆原料Bを水Wで溶いた原料液Cを使用して得られる大豆の成分をまるごと含んだ大豆飲料が含まれる。
【0017】
また大豆の有するオリゴ糖、サポニン、大豆たんぱく、大豆イソフラボンあるいはレシチン等の成分(栄養素でもある)の一部を使用したり、人工的に成分調整したものを原料として生成される大豆飲料、大豆以外の植物性たんぱく質原料や牛乳等の動物性たんぱく質原料、あるいはこれらの成分の一部や人工的に成分調整したものを原料として生成される飲料も大豆飲料等Aには含まれる。
また文字通り飲料として使用されるか否かは問わず、例えば豆腐のような加工食品を製造する際にもっぱら原料として使用されるようなものも大豆飲料等Aには含まれる。要は液体であり、加熱後冷却する過程で液体表面にたんぱく質の膜ができるようなものをすべて包含する意味で大豆飲料等Aの語を本明細書において使用している。
【実施例1】
【0018】
本実施例では、大豆を粉末状に加工した大豆原料Bを水Wで溶いた原料液Cを使用して得られる大豆の成分をまるごと含んだ大豆飲料等Aを製造する場合を例にとって説明する。
本実施例の大豆飲料等の製造装置1は、図1に示すように原料液生成装置3と、煮沸装置5と、貯蔵用攪拌タンク7と、充填装置9と、加熱殺菌装置11と、本発明の大豆飲料等の冷却装置13とを備えている。
【0019】
原料液生成装置3は、粉末状の大豆原料Bを水Wに溶いて撹拌して原料液Cを生成する装置である。原料液生成装置3は図2に拡大して示すように上面が開放された円筒容器状の撹拌槽15を備えている。撹拌槽15の底部中央には生成された原料液Cを排出する排出口17が設けられており、この排出口17には次工程で使用する煮沸装置5に向けて延びる連絡管路19が接続されている。
【0020】
また撹拌槽15の胴心から幾分偏心した位置には撹拌装置21が設けられている。撹拌装置21は駆動源であるモータ23と、モータ23の出力軸に接続され撹拌槽15の底部に向けて垂直に延びるスピンドル25と、スピンドル25の先端に設けられる撹拌羽根27とを備えている。
また撹拌槽15の上面の開口部には水Wを供給するための給水栓29の給水口が臨んでいる。
【0021】
煮沸装置5は、原料液生成装置3によって生成された原料液Cを蒸気Sによって加熱し、対流を生じさせた状態で煮沸して大豆飲料等Aを得る装置である。
煮沸装置5は、図2に拡大して示すように円筒容器状の煮釜31を備えている。煮釜31は釜本体33と、釜本体33の上部開口を閉塞する圧力蓋35とを備えている。
また釜本体33の底部には蒸気Sを煮釜31内に供給する蒸気管37が設けられており、蒸気管37から供給される蒸気Sによって釜本体33内に投入された原料液Cは加熱され、対流が生じた状態で煮沸される。
【0022】
貯蔵用攪拌タンク7は、煮沸装置5によって煮沸され、連絡管路19を通って供給される大豆飲料等Aを所定温度範囲内に保って撹拌しながら一次貯留する装置である。
貯蔵用攪拌タンク7は、図3に拡大して示すように円筒容器状の2槽構造の保温槽39を備えている。保温槽39は内槽41と外槽43とを備える槽本体45と、槽本体45の上部開口を閉塞する蓋体47とから構成されている。
【0023】
また内槽41と外槽43との間には蒸気Sの流入空間49が形成されており、蓋体47には図示のような傾斜姿勢で撹拌装置51が設けられている。
撹拌装置51は駆動源であるモータ53と、モータ53の出力軸に接続され保温槽39の底部中央に向けて延びる回転軸55と、回転軸55の先端寄りに設けられる撹拌羽根57とを備えている。
【0024】
充填装置9は、貯蔵用攪拌タンク7によって所定温度範囲内に保たれた大豆飲料等Aを容器Pに充填し、容器Pの注入口59を溶融封鎖後、容器Pの底部を凹陥成形する装置である。
充填装置9は図4に拡大して示すように、容器Pをその底部を上にした垂直姿勢で搬送する縦向搬送装置61と、容器Pを水平に寝かせた水平姿勢で搬送する横向搬送装置63とを備えている。
【0025】
縦向搬送装置61の前面側の上部には、貯蔵用攪拌タンク7から供給される大豆飲料等Aを一時貯留する角箱状のホッパ65と、ホッパ65の底部に一端が接続され、下方に向けて垂直に延びる筒状の充填ヘッド67が設けられている。
充填ヘッド67は常に一定の量の大豆飲料等Aが容器Pに充填されるように計量機能を備えている。またその下端には大豆飲料等Aの充填、充填の停止の切り換えを行うシャッター装置69と細径のノズル70とが設けられている。
【0026】
また縦向搬送装置61の背面側の上部には容器Pの注入口59を挟むように2基設けられるガスバーナを備えたヒータ装置71が設けられている。ヒータ装置71は大豆飲料等Aが充填された容器Pの注入口59を加熱溶融し封鎖する装置である。またヒータ装置71の容器搬送方向下流側には、加熱溶融した容器Pの注入口59を挟持して圧着させるクランパ73が設けられ、更に下流側の縦向搬送装置61の終端には、容器Pを横向搬送装置63に移し替えるシュート75が設けられている。
【0027】
横向搬送装置63の搬送経路の途中には、容器Pの底部を凹陥成形する図5において拡大して示す凹陥成形装置77が設けられている。凹陥成形装置77は、容器Pの周胴部を保持する胴部ホルダ79と、容器Pの頭部を保持する頭部ホルダ81と、容器Pの底部を押し込むプッシャー83とを備えている。
胴部ホルダ79は横向搬送装置63の一部でもあり、横向搬送装置63の垂直ループ状の容器搬送軌道の全範囲に亘って複数基設けられている。
【0028】
加熱殺菌装置11は、充填装置9によって容器P内に充填された大豆飲料等Aを所定の温度で所定時間加熱殺菌する装置である。
加熱殺菌装置11は、図6に拡大して示すように矩形筐体状の加熱殺菌槽85と、加熱殺菌槽85内に設けられ、容器Pの搬送手段であるネットコンベヤ87と、加熱殺菌槽85内に蒸気S等の加熱媒体を供給する加熱配管89とを備えている。
【0029】
本発明の大豆飲料等の冷却装置13、加熱殺菌装置11によって加熱殺菌した大豆飲料等Aを所定の温度に冷却する装置である。
大豆飲料等の冷却装置13は、図7、8に拡大して示すように投入槽91と、冷却手段92と、加振装置95とを備えている。
投入槽91は容器Pに充填され、加熱殺菌された大豆飲料等Aを投入する円筒容器状の部材で、投入槽91の底部97は中央が幾分高くなるように偏平コーン形状に形成されている。
【0030】
冷却手段92は、本実施例では冷却槽93と、冷却槽93と投入槽91との間に形成されるウォータージャケット105と、ウォータージャケット105内に流入する冷却媒体の一例である冷却水Lとを備えることによって構成されている。
冷却槽93は、投入槽91の周胴部99及び底部97を覆うように設けられる投入槽91より一回り大きな円筒容器状の部材である。
冷却槽93の底部101の下面には、下方へ突出したバネ支持ボス103が複数、周方向に等間隔で配列されている。
また冷却槽93と投入槽91との間には空間が形成されており、この空間がウォータージャケット105となる。ウォータージャケット105内には冷却媒体の一例である冷却水Lが流入し、投入槽91内の大豆飲料等Aを冷却する。
【0031】
またウォータージャケット105内への冷却水Lの供給は、冷却槽93の底部101を貫通してウォータージャケット105内に一端を臨ませ、他端を後述する加振装置95の機枠107に取り付けられているホースジョイント109に接続される中継ホース111によって行われている。
ホースジョイント109の外部には、図示しないチラーユニットや水道栓等からの冷却水Lを供給するための図示しない連絡ホースが接続される。
また投入槽91の上縁には外側に張り出すように円環状のフランジ部113が設けられており、このフランジ部113を利用して偏平な蓋体部115が手動式のトグルクランプ117等によって固定される。
【0032】
加振装置95は、冷却槽93の下方に設けられており、円筒状の機枠107内の中心には、冷却槽93の底部101に取り付けられる振動体119と、振動体119を回転自在に支持する垂直回転軸121と、垂直回転軸121に固定された上下2枚のアンバランサー123、125が設けられている。
上方のアンバランサー123は一例として平面視略扇形状をしており、下方のアンバランサー125は一例として平面視長方形状をしている。また上下のアンバランサー123、125の位相は一例として45°程ずらせてある。
また振動体119の側傍には、垂直回転軸121を図示しない適宜の駆動伝達手段を介して回転駆動するモータ127が設けられている。
【0033】
機枠107の上部周縁に形成されている肩部129には、冷却槽93の底部101に設けられていたのと同形状のバネ支持ボス131が同一個数、同一配列で設けられている。
また対向して設けられる上下のバネ支持ボス103、131間には、コイルスプリング133が縮設状態で外嵌めされており、投入槽91と冷却槽93は、このコイルスプリング133によって浮動状態で機枠107に支持されている。
【0034】
そしてこのような状態でモータ127が回転を始めると、垂直回転軸121が回転し、アンバランサー123、125の偏心回転運動が開始され、振動体119及び振動体119が取り付けられている冷却槽93が振動するようになる。
これに伴い容器P内に充填されている大豆飲料等Aの表面は大きく波立つようになり、表面積を拡大させて放熱を促進させるため、大豆飲料等Aの温度は短時間で所望の温度まで下がり、湯葉も発生しない。
【0035】
次に本発明の大豆飲料等の冷却方法を下記に示す実施例を例にとって説明する。
本実施例の大豆飲料等の冷却方法は、I.原料液生成工程と、II.煮沸工程と、III.一次貯留工程と、IV.充填工程と、V.加熱殺菌工程と、VI.冷却工程とを備えている。
以下順番に説明して行く。
[I.原料液生成工程](図1、2参照)
原料液生成工程は、上述した原料液生成装置3を作動することによって実行される工程である。
原料として粉末状の大豆原料Bと水Wを用意し、これらを所定の分量ずつ撹拌槽15に投入する。撹拌槽15に投入された大豆原料Bと水Wは、撹拌羽根27によって撹拌され、原料液Cとなって排出口17から排出される。
【0036】
[II.煮沸工程] (図1、2参照)
煮沸工程は、上述した煮沸装置5を作動することによって実行される工程である。原料液生成装置3から排出された原料液Cは連絡管路19を通って煮釜31内に供給される。原料液Cは煮釜31内底部に設けられている蒸気管37から噴射される蒸気Sによって生起される対流に乗って撹拌混合されながら煮沸される。
尚、煮沸された段階で原料液Cは成分的には、大豆飲料等Aになるが製品に至るためには、更に以下の各工程を経ることになる。
【0037】
[III.一次貯留工程] (図1、3参照)
一次貯留工程は、上述した貯蔵用攪拌タンク7を作動することによって実行される工程である。
煮沸装置5によって煮沸された原料液Cは大豆飲料等Aとなって保温槽39に投入される。保温槽39では、湯葉の形成されない温度、具体的には60°C〜85°C程度の温度範囲内に保たれる。
大豆飲料等Aは内槽41内に投入され、外槽43との間に形成されている流入空間49内に供給される蒸気Sによって上記温度範囲内に保温されている。
また湯葉の形成を防止するのに撹拌羽根57による撹拌作用も貢献している。
【0038】
[IV.充填工程] (図1、4、5参照)
充填工程は、上述した充填装置9を作動することによって実行される工程である。
貯蔵用攪拌タンク7内において所定の温度範囲内に保温され一時貯留されていた大豆飲料等Aは、連絡管路19を通って充填装置9の上部のホッパ65内に供給される。
また充填ヘッド67先端のノズル70に容器P底部に形成されている注入口59を挿し込んでおく。そしてシャッター装置69を拡開状態にし、所定分量の大豆飲料等Aを容器P内に充填する(図4(a)参照)。
【0039】
縦向搬送装置61を起動して大豆飲料等Aが充填された容器Pをその底部を上にした垂直姿勢で水平ループ状の容器搬送軌道上を搬送させる。容器搬送軌道背面側のヒータ装置71の設置部位に容器Pが至ると、容器Pの注入口59はヒータ装置71によって加熱され溶融して封鎖される(図4(b)参照)。
更に容器搬送軌道上を搬送されるとクランパ73の設置部位に至り、容器Pの注入口59はクランパ73によって挟持されて圧着され(図4(c)参照)、容器搬送軌道終端に設けられている下方のシュート75上に至ったところでクランパ73を拡開状態にして容器Pをシュート75上に落下させる。
【0040】
容器Pはシュート75上を滑りながら姿勢変更され、下方の横向搬送装置63上に至る。横向搬送装置63には垂直ループ状の容器搬送軌道の全範囲に亘って胴部ホルダ79が複数基設けられており、その一つの胴部ホルダ79によって水平姿勢で保持される(図5(a)参照)。
次に頭部ホルダ81が前進し、容器Pの頭部を保持し(図5(b)参照)、更に続いてプッシャー83が伸張して(図5(c)参照)、容器Pの底部を押圧して凹陥状態に成形する(図5(d)参照)。
【0041】
[V.加熱殺菌工程] (図1、6参照)
加熱殺菌工程は、上述した加熱殺菌装置11を作動することによって実行される工程である。
凹陥成形された大豆飲料等Aが充填された容器Pは、図示しないベルト式の水平コンベヤ及び傾斜コンベヤによって搬送され、加熱殺菌槽85内に投入される。
加熱殺菌槽85では一例として85°C程度の温度で30分程度の時間加熱殺菌され、加熱殺菌された大豆飲料等A(容器P)は、ネットコンベヤ87によって搬送され加熱殺菌槽85内から浮上し搬出される。
【0042】
[VI.冷却工程] (図1、6〜8参照)
冷却工程は、上述した本発明の大豆飲料等の冷却装置13を作動することによって実行される工程である。
ネットコンベヤ87の終端下方には図1、6に示すように冷却装置13が設置されており、ネットコンベヤ87によって排出された大豆飲料等A(容器P)は、冷却装置13における投入槽91内に投入される。
投入槽91内に投入された大豆飲料等A(容器P)は、冷却手段92である冷却槽93との間に形成されているウォータージャケット105内に供給される冷却水Lによって冷却される。
【0043】
また加振装置95によって生起される振動によって容器P内では大豆飲料等Aの表面は図8に示すように大きく波立ち、表面積を拡大させて活発に放熱するようになり、大豆飲料等Aの冷却促進が図られる。また加振装置95によって生起される振動は、大豆飲料等Aを撹拌するという作用も奏しており、これらの相乗的な作用によって大豆飲料等Aの表面には湯葉は形成されない。
そして大豆飲料等Aは湯葉の発生のおそれがない30°C〜40°C程度以下の温度まで短時間で冷却され、爾後の梱包、冷蔵等の次工程に向けて搬送される。
【0044】
以上、本発明を実施するための最良の形態、その具体的実施例について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの形態や実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
例えば、加振装置95の構造は上述の実施例のようにアンバランサー123、125を使用した構造に限らず、振動コンベヤ等に適用されている板バネやカム等を使用したもの等、種々の構造が採用できる。またウォータージャケット105内に供給する冷却媒体としては上述の実施例のように冷却水Lに限らず、冷却作用を発揮し得る種々の液体、気体等が採用可能である。
また冷却手段92の構成も種々改良でき、例えば投入槽91に直接、冷却水Lを充填して冷却させるような構成も採用可能である。
【0045】
また本発明の大豆飲料等の製造装置1の構成として図1において併せて示し、図9、10において拡大して示すような成分分離装置135を付加した構成、あるいは原料液生成装置3と煮沸装置5とに差し替えて成分分離装置135を設置する構成を採用することも可能である。
成分分離装置135は、そのままの大豆Dを洗浄する図示しない洗浄装置と、洗浄した大豆Dを茹でる図示しないボイル装置と、茹でた大豆Dを摺り潰す摺潰し装置137と、摺り潰した大豆原料Eを搾って固形成分であるオカラFと大豆飲料等Aとしての豆乳とに分離する搾り装置139とを一例として備えている。
【0046】
またこのような成分分離装置135と原料液生成装置3及び煮沸装置5を両方備え、これらを適宜切り換えて使用できる場合には、本発明の大豆飲料等の製造方法として以下のような構成を採用することが可能である。
即ち、一次貯留工程の前工程として、原料液生成工程及び煮沸工程に加えて上記成分分離装置135を作動することによって実行される成分分離工程を設け、粉末状の大豆原料B等を使用する場合には、原料液生成工程と煮沸工程を選択し、そのままの大豆D等を原料とし、分離された液体成分を使用する場合には、成分分離工程を選択するという構成を採用することが可能となる。
因みにこのような構成を採用した場合には成分の異なる2種類の大豆飲料等Aの製造を一部の構成を製造装置1に追加するだけで実行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例に係る大豆飲料等の製造装置の全体構成を示すレイアウト図である。
【図2】大豆飲料等の製造装置における原料液生成装置と煮沸装置を示す正面図である。
【図3】大豆飲料等の製造装置における貯蔵用攪拌タンクを示す側断面図である。
【図4】大豆飲料等の製造装置における充填装置による充填・溶融・圧着・排出の流れを示す説明図である。
【図5】大豆飲料等の製造装置における充填装置による凹陥成形の流れを示す説明図である。
【図6】大豆飲料等の製造装置における加熱殺菌装置と冷却装置を示す正面図である。
【図7】大豆飲料等の製造装置における冷却装置を分解して示す斜視図である。
【図8】大豆飲料等の製造装置における冷却装置を示す側断面図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る大豆飲料等の製造装置において備えられる成分分離装置の摺潰し装置を示す正面図及び側面図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る大豆飲料等の搾り装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 (大豆飲料等の)製造装置 3 原料液生成装置 5 煮沸装置
7 貯蔵用攪拌タンク 9 充填装置 11 加熱殺菌装置
13(大豆飲料等の)冷却装置 15 撹拌槽 17 排出口
19 連絡管路 21 撹拌装置 23 モータ
25 スピンドル 27 撹拌羽根 29 給水栓 31 煮釜
33 釜本体 35 圧力蓋 37 蒸気管 39 保温槽
41 内槽 43 外槽 45 槽本体 47 蓋体
49 流入空間 51 撹拌装置 53 モータ 55 回転軸
57 撹拌羽根 59 注入口 61 縦向搬送装置
63 横向搬送装置 65 ホッパ 67 充填ヘッド
69 シャッター装置 70 ノズル 71 ヒータ
73 クランパ 75 シュート 77 凹陥成形装置
79 胴部ホルダ 81 頭部ホルダ 83 プッシャー
85 加熱殺菌槽 87 ネットコンベヤ 89 加熱配管
91 投入槽 92 冷却手段 93 冷却槽 95 加振装置
97 底部 99 周胴部 101 底部 103 バネ支持ボス
105 ウォータージャケット 107 機枠
109 ホースジョイント 111 中継ホース 113 フランジ部
115 蓋体部 117 トグルクランプ 119 振動体
121 垂直回転軸 123 アンバランサー(上方の)
125 アンバランサー(下方の) 127 モータ 129 肩部
131 バネ支持ボス 133 コイルスプリング
135 成分分離装置 137 摺潰し装置 139 搾り装置
A 大豆飲料等 B 大豆原料(粉末状) C 原料液 D 大豆
E 大豆原料(摺潰した) F オカラ W 水 S 蒸気
P 容器 L 冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱殺菌した大豆飲料等を所定の温度に冷却する大豆飲料等の冷却装置において、加熱殺菌した大豆飲料等を投入する投入槽と、投入槽内の大豆飲料等を冷却する冷却手段と、投入槽の下方に位置し、投入槽に振動を加える加振装置とを備えていることを特徴とする大豆飲料等の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載した大豆飲料等の冷却装置において、前記大豆飲料等の冷却は、容器に充填された状態の大豆飲料等に対して行われ、投入槽の外周部に形成されるウォータージャケット内に冷却水を流入させ、更に加振装置によって大豆飲料等の表面を波立たせて大豆飲料等の表面積を拡大させた状態で冷却するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の冷却装置。
【請求項3】
煮沸した大豆飲料等を所定温度範囲内に保って撹拌しながら一次貯留する貯蔵用攪拌タンクと、所定温度範囲内に保たれた大豆飲料等を容器に充填し、容器の注入口を溶融封鎖後、容器底部を凹陥成形する充填装置と、容器内に充填された大豆飲料等を所定の温度で所定時間加熱殺菌する加熱殺菌装置と、加熱殺菌した大豆飲料等を所定の温度に冷却する冷却装置とを備える大豆飲料等の製造装置において、前記冷却装置として請求項1または2に記載した大豆飲料等の冷却装置を使用したことを特徴とする大豆飲料等の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載した大豆飲料等の製造装置において、粉末状の大豆原料等を水に溶かして撹拌させる原料液生成装置と、生成された原料液を蒸気によって加熱し、対流を生じさせた状態で煮沸して大豆飲料等を得る煮沸装置とを更に備えたことを特徴とする大豆飲料等の製造装置。
【請求項5】
煮沸した大豆飲料等を所定温度範囲内に保って撹拌しながら一次貯留する一次貯留工程と、所定温度範囲内に保たれた大豆飲料等を容器に充填し、容器の注入口を溶融封鎖後、容器底部を凹陥成形する充填工程と、容器内に充填された大豆飲料等を所定の温度で所定時間加熱殺菌する加熱殺菌工程と、加熱殺菌した大豆飲料等を所定の温度に冷却する冷却工程とを備える大豆飲料等の製造方法において、前記冷却工程では、大豆飲料等の表面を波立たせて大豆飲料等の表面積を拡大させた状態で冷却するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載した大豆飲料等の製造方法において、前記一次貯留工程では、大豆飲料等を60°C〜85°C程度の温度範囲内に保ち、前記加熱殺菌工程では、85°C程度の温度で30分程度の時間、大豆飲料等を加熱殺菌すると共に、前記冷却工程では大豆飲料等を30°C〜40°C程度の温度まで一挙に冷却するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載した大豆飲料等の製造方法において、一次貯留工程の前工程には、粉末状の大豆原料等を水に溶かして撹拌させる原料液生成工程と、生成された原料液を蒸気によって加熱し、対流を生じさせた状態で煮沸して大豆飲料等を得る煮沸工程とが設けられていることを特徴とする大豆飲料等の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載した大豆飲料等の製造方法において、前記一次貯留工程の前工程として、更にそのままの大豆等を洗浄し、茹で、潰した後、搾って固形成分と液体成分とに分離する成分分離工程が設けられており、粉末状の大豆原料等を使用する場合には、前記原料液生成工程と煮沸工程を選択し、そのままの大豆等から分離した液体成分を使用する場合には、前記成分分離工程を選択するようにしたことを特徴とする大豆飲料等の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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