説明

天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路

【課題】シーケンサ電源故障時においても天井クレーンのバックアップ運転を可能とした天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路を提供すること。
【解決手段】通常用直流安定化電源AVR1に、バックアップ用としての非常用直流安定化電源AVR2を並列的に追加接続し、通常用直流安定化電源AVR1及び非常用直流安定化電源AVR2の2つの直流安定化電源のプラス側別電源を、2入力1出力のパワーダイオードPDに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路に関し、特に、天井クレーンの運転制御において、直流安定化電源回路に使用している電解コンデンサ等の電子機器の経年劣化による故障、或いは偶発的な故障が発生した場合でもバックアップ運転回路に切り替えて天井クレーンを所定位置まで安全に運行できるようにした天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天井クレーンは、制御部がシーケンサ制御が主流となり直流24Vであることから、図2に示すように交流操作電源から直流安定化電源によりDC24Vを形成し、シーケンサを介して制御するようにした無接点シーケンスによる運転を採用している。
【0003】
しかしながら、シーケンサ、直流安定化電源回路に電解コンデンサ等の電子機器を使用していることから経年劣化、偶発的な故障が発生した場合、クレーンは動作不能となり、特に生産ラインのクレーンでは無線操作運転が主流となっているため、クレーンの故障位置によっては故障したクレーンへ作業者が容易に乗り込み、修理することができないため、復旧に危険と多大な時間がかかるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、天井クレーンにおけるシーケンサ直流安定化電源回路の有する問題点に鑑み、直流安定化電源にバックアップ用直流安定化電源を追加してDC24V電源の共通電源を作成し、シーケンサ回路と非常運転用リレーシーケンス回路を追加する、或いは直流安定化電源に、バックアップ用として非常用バッテリーDC12Vの2台を直列的に接続して追加することで、シーケンサ電源故障時においても天井クレーンのバックアップ運転を可能とした天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路は、通常用直流安定化電源に、バックアップ用としての非常用直流安定化電源を並列に追加接続し、2つの直流安定化電源のプラス側別電源を2入力1出力のパワーダイオードに接続して構成したことを特徴とする。
【0006】
この場合、非常用直流安定化電源の1次側に電源を供給し、2次側の出力を通常時遮断するように構成することができる。
【0007】
また、同じ目的を達成するため、本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路は、通常用直流安定化電源に、バックアップ用電源として非常用バッテリーを追加し、通常時シーケンサ電源とバッテリーに対して電源を供給し、通常用直流安定化電源故障時に非常用バッテリーからシーケンサ電源に電源を供給するように構成したことを特徴とする。
【0008】
この場合、バックアップ用電源として非常用DC12Vバッテリーの2台を直列的に接続して構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路によれば、通常用直流安定化電源に、バックアップ用としての非常用直流安定化電源を並列に追加接続し、2つの直流安定化電源のプラス側別電源を2入力1出力のパワーダイオードに接続して構成しているから、通常用直流安定化電源は、リレーのon/offにより電圧監視し、その接点を非常用直流安定化電源の母線にb接点を割り込むことで通常用直流安定化電源の故障時に非常用直流安定化電源に切替電源を供給できるようにしているので、直流安定化電源回路に電解コンデンサ等の電子機器の経年劣化、偶発的な故障等が発生した場合でも、バックアップ運転回路に切り替えて天井クレーンを所定位置まで安全に運行でき、ここで作業者による修理などを安全に行うことができる。
【0010】
また、非常用直流安定化電源の1次側に電源を供給し、2次側の出力を通常時遮断するようにすることで、非常用直流安定化電源の経年劣化を防止することができる。
【0011】
また、本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路によれば、通常用直流安定化電源に、バックアップ用電源として非常用バッテリーを追加し、通常時シーケンサ電源とバッテリーに対して電源を供給し、通常用直流安定化電源故障時に非常用バッテリーからシーケンサ電源に電源を供給するように構成しているから、簡単な構成で電源故障時においてもシーケンサに安定した電源を供給して天井クレーンを所定位置まで安全に運行でき、ここで作業者による修理などを安全に行うことができる。
【0012】
また、バックアップ用電源として非常用DC12Vバッテリーの2台を直列的に接続して構成することで、バックアップ電源が市販のバッテリーを組み合わせるだけで簡易に構成できるので安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1に、本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路の第1実施例を示す。
本発明では、通常用直流安定化電源AVR1に、バックアップ用としての非常用直流安定化電源AVR2を並列的に追加接続し、通常用直流安定化電源AVR1及び非常用直流安定化電源AVR2の2つの直流安定化電源のプラス側別電源を、2入力1出力のパワーダイオードPDに接続する。
これにより電源の廻り回路を解消することができる。
通常用直流安定化電源AVR1は、リレーAVRXのon/offにより電圧監視し、その接点を非常用直流安定化電源の母線にb接点を割り込むことで通常用直流安定化電源AVR1の故障時に非常用直流安定化電源AVR2に切替電源を供給できるようにするようにする。
【0015】
また、非常用直流安定化電源AVR2の1次側に電源を供給し、2次側の出力を通常時遮断することで非常用直流安定化電源の経年劣化を防止している。
【0016】
シーケンサが故障した場合にハードシーケンス回路へ切り替えるために、シーケンサ内部にシーケンサ正常状態を1点出力するプログラムを作成し、この出力に接続したリレー(シーケンサ異常デクローズ)のb接点をハードシーケンス側コモンの電源供給条件を設け切替運転を可能とする。
【0017】
通常用直流安定化電源AVR1にAC100Vの電流が流れると、リレーAVRXがonとなり、通常用直流安定化電源AVR1に接続される接点はa接点で、通常用直流安定化電源AVR1からパワーダイオードPDに電力は供給され、モータは正常に動作して、クレーンは走行するが、非常用直流安定化電源AVR2側に接続されるリレーAVRXの接点はb接点なのでoffとなり、非常用直流安定化電源AVR2からの電源供給は停止する。
【0018】
しかし、通常用直流安定化電源AVR1に、電解コンデンサ等の電子機器の経年劣化或いは偶発的な故障にて異常が発生した場合、リレーAVRXの電圧はオフとなり、リレーAVRXもoffとなる。これにより、通常用直流安定化電源AVR1からのモータへの電力供給は停止するも、非常用直流安定化電源AVR2側に接続されるリレーAVRXの接点はb接点なのでonとなり、非常用直流安定化電源AVR2からパワーダイオードPDに電力が供給されてモータは正常に動作して、クレーンは走行することができる。
このようにして、通常用直流安定化電源AVR1、非常用直流安定化電源AVR2のいずれか一方から電源がシーケンサ母線を経由して供給されるのでクレーンの継続運転を行うことができる。
【0019】
また、シーケンサ及びインバータINVに電源が供給されると、シーケンサから「シーケンサ正常出力」信号がonされ、バックアップ用のリレー回路であるバックアップ基板及び非常用母線には電流が流れない。これは非常用母線に接続されたリレーSEQRUNXがb接点なので「正常時off」となり、バックアップ基板に電流が流れていないので機能せず、非常用母線に電流が流れないものとなるためである。
【0020】
しかし、シーケンサに異常が発生した場合、リレーSEQRUNXの接点がb接点なので「異常時on」となり、非常用母線に電流が流れ、バックアップ用のリレー回路での運転が可能となる。
このように、本発明は通常用直流安定化電源AVR1の電解コンデンサ等の電子機器の故障時或いはシーケンサの異常時において、リレーAVRX或いはSEQRUNXの接点の切り替えで継続してインバータINV及びモータへ電源が供給されるので、クレーンを継続走行させることができる。
【実施例2】
【0021】
図2,3に、本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路の第2実施例を示す。
この第2実施例は、通常用直流安定化電源にバックアップ用として非常用DC12Vバッテリーの2台並列に追加接続して、DC24V電源の共通電源を作成し、シーケンサ電源1次側にDA/DAコンバータを追加して直流安定化電源故障時のバックアップ運転を可能とするものである。
【0022】
天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転では、通常用直流安定化電源が正常に作動している場合は、図2のAに示すように、非常用DC12Vバッテリー2台とシーケンサ電源側に電源を供給して正常運転を行いつつ、非常用DC12Vバッテリーにも充電するようにする。
そして、通常用直流安定化電源を構成する電解コンデンサ等の電子機器の経年劣化、偶発的な故障が発生して電源供給不能になった場合、図3のBに示すように、非常用DC12Vバッテリー2台からシーケンサにDA/DAコンバータを介して電源を供給することができる。
これにより、天井クレーンを所定の位置まで安全に運行して、ここで作業者による修理などを安全に行うことができる。
【0023】
なお、この場合、バッテリーの特徴として、出力電圧の変動が発生し、一定電圧をシーケンサに供給できないが、DA/DAコンバータを経由させることでシーケンサに安定した電源を供給することができる。
【0024】
以上、本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更或いは実施例を組み合わせることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路は、シーケンサ、直流安定化電源回路に使用している電解コンデンサ等の電子機器の経年劣化等にて故障が発生した場合でもバックアップ運転回路に切り替えて運転を継続できるという特性を有していることから、天井クレーンの安全運転の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路の第1実施例を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す回路図である。
【図3】本発明の第2実施例におけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転を示す回路説明図である。
【図4】従来の天井クレーンにおけるシーケンサ直流安定化電源回路図である。
【符号の説明】
【0027】
AVR1 通常用直流安定化電源
AVR2 非常用直流安定化電源
PD パワーダイオード
AVRX リレー
INV インバータ
SEQRUNX リレー
DA/DA コンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常用直流安定化電源に、バックアップ用としての非常用直流安定化電源を並列に追加接続し、2つの直流安定化電源のプラス側別電源を2入力1出力のパワーダイオードに接続して構成したことを特徴とする天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路。
【請求項2】
非常用直流安定化電源の1次側に電源を供給し、2次側の出力を通常時遮断するように構成したことを特徴とする請求項1記載の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路。
【請求項3】
通常用直流安定化電源に、バックアップ用電源として非常用バッテリーを追加し、通常時シーケンサ電源とバッテリーに対して電源を供給し、通常用直流安定化電源故障時に非常用バッテリーからシーケンサ電源に電源を供給するように構成したことを特徴とする天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路。
【請求項4】
バックアップ用電源として非常用DC12Vバッテリーの2台を直列的に接続して構成したことを特徴とする請求項3記載の天井クレーンにおけるシーケンサ電源故障時のバックアップ運転回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−81316(P2008−81316A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131546(P2007−131546)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】